JP2012061777A - ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成形時の成形安定性、特には射出成形あるいは押出成形時の計量安定性に優れたメタキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】キシリレンジアミンとセバシン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、有機核剤(B)を0.1〜50質量部含有してなるポリアミド樹脂組成物を溶融混練得られるポリアミド樹脂組成物ペレットであって、該ペレットに結晶化処理を施すことにより、ポリアミド樹脂組成物ペレットの結晶化度を、結晶化処理前の結晶化度より5%以上高くすることを特徴とし、かつ、有機核剤(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高いポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法による。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法に関し、さらに詳しくは、成形時の成形安定性、特には射出成形あるいは押出成形時の計量安定性に優れたポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法に関する。
ポリアミド樹脂は、耐衝撃性、耐摩擦・摩耗性などの機械的強度に優れ、耐熱性、耐油性などにも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、自動車部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、機械部品、建材・住設関連部品などの分野で広く使用されており、近年更に使用分野が広がっている。
ポリアミド樹脂には、例えばポリアミド6、ポリアミド66など多くの種類が知られているが、キシリレンジアミンとアジピン酸等のα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66などとは異なって主鎖に芳香族環を有し、高い機械的強度と弾性率を有し、低吸水率で、耐油性に優れ、また成形においては、成形収縮率が小さく、引けやソリが小さいことから精密成形にも適しており、極めて優れたポリアミド樹脂として位置付けられる。また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂をガラス繊維、無機フィラー等で強化したものは、エンジニアリングプラスチックのなかでも最高ランクの強度と剛性を実現することができ、金属代替材料として構造部品等にも適用可能である。これらのことから、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の様々な分野での成形材料として近年ますます広く利用されてきている。
ところで、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂を成形して成形品を得るには、ポリアミド樹脂に、所望のスペックに対応して、各種の添加剤や強化材をコンパウンディングしたペレットを、通常は射出成形又は押出成形にて製造されることが多い。例えば、射出成形では、射出成形機の加熱シリンダー内にはスクリューが回転自在に且つ進退自在に配設され、スクリューの回転と進退の作動操作によって、1)ホッパーから投入された樹脂ペレットの前方への供給搬送(供給工程)、2)スクリューによる混練・圧縮による可塑化融解(圧縮工程)、そして3)1ショット分の計量(計量工程)、最後に4)射出ノズルからの射出(射出工程)の一連の動作が行われる。
ところがキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を原料ペレットとして使用し、このような成形を行う場合に、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、通常のポリアミド樹脂に比べ、成形の安定性が充分ではなく、成形が不安定になる状況が起きやすい。すなわち、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットをホッパーから投入し、供給工程、圧縮工程を経て、ペレット溶融物が計量工程に至ると、計量が不安定になるという状況が生じやすい。この計量工程は、溶融した1ショット分の樹脂材料を、スクリュー前方にあって、スクリューヘッドと逆流防止リング及びシーリングを有するヘッド部に蓄える工程であるが、その計量は、通常、1ショット分の所定量となる時間(計量時間)でモニターする等の方法で行われている。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の場合は、その計量時間にバラツキが生じやすく、例えば初期の設定時間を5秒と設定していても、ショットを繰り返すうちに、計量時間がその2〜3倍近くまで跳ね上がるといったような計量不安定が起きやすいことが判明した。
このような計量不安定は、圧縮工程での溶融が不十分であることに起因するものと通常は考えられるが、計量不安定が、ポリアミド樹脂ペレットの全てに対してではなく、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの場合に頻発することから、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレット固有のなんらかの事情に起因するものと考えられる。
従来からキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂あるいはこれにガラス繊維を配合したキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物の成形性を改良するため、各種の提案がなされている。例えば、ポリアミド66を配合して成形サイクル時間を短縮する方法(特許文献1参照)があるが、ポリアミド66を配合しただけでは、この計量不安定に改良はみられない。
また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のペレットの製造に関して、溶融ストランドを冷却固化する際、冷媒中の粉末の粒径と量を特定以下として、成形品の異物含量を低下させようとする方法(特許文献2参照)、冷媒の温度、溶融ストランド、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の半結晶化時間との関係で定義されるパラメータの値を特定範囲として、ペレット造粒工程における異形ペレット、破砕片、粉体等の産業廃棄物の発生を抑制しようとする方法(特許文献3参照)等が提案されてはいるが、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの成形時の計量性の安定化につながるような提案はなされていない。
さらに、近年、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂として、キシリレンジアミンとセバシン酸からのポリアミド樹脂(以下、「キシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂」ともいう。)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂として従来から汎用されているポリメタキシリレンアジパミド樹脂(以下、「MXD6」ともいう。)に比べて、耐薬品性や耐衝撃性に優れることから、各種部品用の材料として大いに期待されてきている。しかしながら、上記した問題点は、キシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂において、さらに顕著である。
こうした状況下、成形時の成形安定性、特には射出成形あるいは押出成形時の計量安定性に優れたキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法の開発が強く望まれていた。
特公昭54−32458号公報 特開2005−2298号公報 特開2003−327692号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、成形時の成形安定性、特には射出成形あるいは押出成形時の計量安定性に優れたキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、キシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂は、他のポリアミド樹脂やMXD6に比べ、さらに結晶化速度が遅いため、結晶化が十分でないペレットを成形機に送り込むと、成形機内で結晶化が進行してペレットの収縮が起ってしまい、収縮したペレットはシリンダー内のスクリューに抱きつく結果となり、シリンダーとペレットの間に空間ができる。そして、この空間の影響で、シリンダーの熱がペレットに十分に伝わらず、ペレットの溶融が不十分かつ不安定になり、その結果、計量もうまく行われにくくなり、計量が安定しないのではないかと推察するに至った。そこで、ペレットの結晶化を十分に行ってペレットの結晶化度を予め高めておけば、ペレットの収縮が小さく、供給工程、圧縮工程でのペレットの溶融が十分均一に行われ、計量が安定して行われるのではないかと考え、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、キシリレンジアミンとセバシン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、有機核剤(B)を0.1〜50質量部含有してなるポリアミド樹脂組成物を溶融混練し、ストランド状に押出し、冷却、切断して得られるポリアミド樹脂組成物ペレットであって、該ペレットに、結晶化処理後の結晶化度が結晶化処理前よりも5%以上高くなるに十分な結晶化処理を施すことを特徴とし、かつ、有機核剤(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高いポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度と有機核剤(B)の結晶化温度の温度差が50℃以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、結晶化処理が、ペレットを空気雰囲気中、温度100〜160℃にて、15分間以上保持することにより行われることを特徴とするポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、ポリアミド樹脂(A)の融点と有機核剤(B)の融点の差が60℃以上であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度と有機核剤(B)の結晶化温度の温度差が40℃以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、有機核剤(B)が、ポリアミド66であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、さらに、ガラス繊維(C)を、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、10〜250質量部含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法が提供される。
本発明のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法によれば、成形時の成形安定性、特には射出成形あるいは押出成形時の計量安定性に優れたキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂組成物ペレットを得ることができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[1.概要]
本発明のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法は、キシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂(A)と、有機核剤(B)を含有してなるポリアミド樹脂組成物を、溶融混練し、押出し、冷却、切断して得られたポリアミド樹脂組成物ペレットであって、該ペレットに、結晶化処理後の結晶化度が結晶化処理前よりも5%以上高くなるに十分な結晶化処理を施すことを特徴とし、かつ、有機核剤(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高いことを特徴とする。
[2.ポリアミド樹脂(A)]
本発明のポリアミド樹脂組成物に用いるポリアミド樹脂(A)は、キシリレンジアミンとセバシン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂である。
キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンを単独又はこれらを混合して用いてもよく、メタキシリレンジアミン40〜100モル%とパラキシリレンジアミン60〜0モル%の範囲で用いるのが好ましい。パラキシリレンジアミンが60モル%を超えると得られるキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂の融点が高くなりすぎ、成形時の加熱による熱劣化を引き起こしやすく、また、結晶化速度が速くなりすぎ外観が悪くなる場合がある。
メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンを混合して使用する場合は、その混合割合は、好ましくは、パラキシリレンジアミンが15〜60モル%、メタキシリレンジアミンが85〜40モル%、より好ましくはパラキシリレンジアミンが15〜45モル%、メタキシリレンジアミンが85〜55モル%であり、最も好ましくは、パラキシリレンジアミンが20〜40モル%、メタキシリレンジアミンが80〜60モル%とからなる混合ジアミンである。パラキシリレンジアミンの量が、15モル%未満では、結晶化速度が低下し、成形サイクルが長くなる場合があり、十分な融点の向上が見られにくく耐熱性が不足する場合があり、60モル%を超えると融点が高くなりすぎ、重合時及び成形時に熱劣化等の不都合を生じるおそれがあるので好ましくない。混合ジアミンにおけるジアミンとしては、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミン以外に、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及び脂環族ジアミン等の他のジアミンを混合して使用してもよく、他のジアミンの使用割合は、好ましくは全ジアミンの10モル%以下であり、より好ましくは全ジアミンの5モル%以下である。脂肪族ジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等が挙げられ、芳香族ジアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等が挙げられ、脂環族ジアミンとしては、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
もう一方の縮合原料であるセバシン酸は、セバシン酸を単独で使用するのでもよく、他のジカルボン酸を混合して使用してもよい。
混合して使用するジカルボン酸としては、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは6〜9の脂肪族ジカルボン酸であり、具体例としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられ、このうち特に好ましいのは、アジピン酸である。他のジカルボン酸の使用割合は、好ましくは全ジカルボン酸の10モル%以下であり、より好ましくは全ジカルボン酸の5モル%以下である。また、脂肪族ジカルボン酸以外に少量の芳香族ジカルボン酸を使用することもでき、芳香族ジカルボン酸としては、1,5−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸を使用する場合の使用量は、好ましくは、全ジカルボン酸の10モル%以下であり、より好ましくは全ジカルボン酸の5モル%以下である。
ポリアミド樹脂(A)の相対粘度(96%硫酸中、濃度1g/100ml、温度25℃の測定条件)は、好ましくは1.6〜3.5であり、より好ましくは1.7〜3であり、最も好ましくは1.8〜2.8である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分な場合があり、高すぎると成形性が低下しやすい。
[3.有機核剤(B)]
本発明におけるポリアミド樹脂組成物は、有機核剤(B)を含有する。
有機核剤としては、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6T、ポリアミド9T等の結晶化速度の速いポリアミド樹脂や、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド66/6T/6I等の高融点のポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂(A)以外のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が挙げられる。なお、上記「I」はイソフタル酸由来成分、「T」はテレフタル酸由来成分を示す。
ポリアミド樹脂(A)以外のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂とは、ポリアミド樹脂(A)の原料であるキシリレンジアミンと、セバシン酸以外のジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂であり、好ましくは、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から得られるポリメタキシリレンアジパミド樹脂(MXD6)やメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合ジアミンとアジピン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂(ポリアミドMP6)などが挙げられる。
有機核剤(B)としては、ポリアミド66やポリアミドMP6が好ましく、価格が安く入手が容易であること、結晶化速度が速く、流動性も良いことから、ポリアミド66が特に好ましい。
(B)成分としてのこのようなポリアミド樹脂の相対粘度(96%硫酸中、濃度1g/100ml、温度25℃の測定条件)は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1.8〜3.5であり、さらに好ましくは2〜3.2であり、最も好ましくは2〜3である。この範囲を外れると核剤効果の発現が不十分となる場合があり、また機械的強度が不十分となったり、成形性が低下したりする場合がある。
ポリアミド樹脂(A)の結晶化速度は、他のポリアミド樹脂に比べてかなり遅いため、本発明においては、以下の条件を満たすように、有機核剤(B)の種類を選択し、その配合量を調整することが好ましい。
すなわち、まず、ポリアミド樹脂組成物(後記する結晶化処理を施した後のもの)とした際の有機核剤(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高くなるように、有機核剤(B)を選択することが好ましい。両者の融点差が50℃以下であると、ポリアミド樹脂組成物を溶融させ冷却して成形品を得る際、有機核剤(B)の結晶化が遅くなり過ぎ、ポリアミド樹脂(A)の結晶化促進効果が不十分となる場合がある。融点差が50℃を超えるような組み合わせとすることで、得られる成形品を高い結晶化度のものとすることができる。また、このようにして得られた成形品は、機械的物性に優れ、吸水しても機械的物性の低下が少ない優れたものである。好ましい融点差は、60℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上である。
有機核剤(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高くするためには、ポリアミド樹脂(A)および有機核剤(B)の種類を選択する方法や、ポリアミド樹脂組成物を得る際の製造条件、例えば、溶融混練時の温度、時間、スクリュー回転数等の条件を調整する方法等を採用すればよい。
本発明においては、さらに、ポリアミド樹脂組成物(後記する結晶化処理を施した後のもの)とした際の、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度と有機核剤(B)の結晶化温度の温度差が50℃以下であることが好ましい。このような温度差とすることにより、有機核剤(B)をポリアミド樹脂(A)の結晶化が起こる領域近くの温度で結晶化させることが容易となる。すなわち、ポリアミド樹脂(A)が結晶化しやすい温度領域で有機核剤(B)が結晶化することにより、結晶化した有機核剤(B)がポリアミド樹脂(A)の結晶核剤として機能し、ポリアミド樹脂(A)の結晶化を促進することができて、得られる成形品を高い結晶化度のものとすることが可能となる。両者の温度差は、好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度と有機核剤(B)の結晶化温度との温度差を50℃以下とするためには、ポリアミド樹脂(A)および有機核剤(B)の種類を選択し、これらの含有量と、また必要により添加する窒化ホウ素、タルク等の無機核剤の量を調製する方法等を採用すればよい。
なお、本発明において、ポリアミド樹脂(A)および有機核剤(B)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)法において、窒素雰囲気下、10℃/分の速度で昇温した際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度として定義される。また、ポリアミド樹脂(A)と有機核剤(B)の結晶化温度は、DSC測定において、窒素雰囲気下、溶融状態から20℃/分の速度で降温した際に観測される発熱ピークのピークトップの温度として定義される。
具体的には、後記する結晶化処理を施した後のポリアミド樹脂組成物ペレットを、室温で12時間放置後、ペレットから10mgの試料を切り出し、DSCに供する。条件としては、窒素雰囲気下、30℃から有機核剤(B)の融点+30℃程度まで10℃/分の速度で昇温し、ポリアミド樹脂(A)成分と有機核剤(B)成分に対応する吸熱ピークのピークトップの温度からそれぞれの融点が求められ、その後、30℃まで20℃/分の速度で降温し、ポリアミド樹脂(A)成分と有機核剤(B)成分に対応する発熱ピークのピークトップの温度からそれぞれの結晶化温度が求められる。
結晶化温度の調整、成形性及び物性のバランスから、有機核剤(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜50質量部であり、好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは3〜30質量部である。このような含有比率とすることにより、核剤効果に優れ、かつ成形時の成形性が安定しやすい傾向にある。有機核剤(B)の含有量が、0.1質量部より少ない場合は期待される結晶化速度の向上効果が得られにくく、50質量部より多い場合は、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度と有機核剤(B)の結晶化温度の温度差を50℃以下とすることが困難となりやすい傾向にあり、この場合は、有機核剤(B)自体の結晶化が素早く進行してしまい、本来の目的であるポリアミド樹脂(A)の結晶化が促進されにくくなり、それにより、剛性等の機械的強度も低下する場合があるので、好ましくない。
[4.ガラス繊維]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形品に反り性能および剛性等の機械的強度を付与させるために、ガラス繊維を含有させることも好ましい。その含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、10〜250質量部が好ましく、より好ましくは20〜200質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは30〜120質量部である。ガラス繊維が、10質量部未満では、機械部品等としての強度、剛性を発揮するのが十分でない場合があり、250質量部を超えるとポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が非常に高くなって射出成形等によって成形品を製造するのが困難となりやすい。
ガラス繊維の組成は任意であるが、溶融ガラスよりもガラス繊維化が可能な組成が良い。好ましい組成としては、Eガラス組成、Cガラス組成、Sガラス組成、耐アルカリガラス等が挙げられる。通常、入手が容易である点でEガラスが好ましい。ガラス繊維の引張り強度は、任意であるが、290kg/mm以上が好ましい。
ガラス繊維は、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤などで表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の付着量は、通常ガラス繊維質量の0.01質量%以上であることが好ましい。
更に、必要に応じ、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩化合物などの帯電防止剤、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの被膜形成能を有する樹脂混合物、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤などを併用したもの等によって表面処理されたガラス繊維を使用してもよい。
ポリアミド樹脂組成物には、さらに他の充填材を配合することができ、炭素繊維、セラミック繊維などの無機繊維類、ステンレススチール繊維などの金属繊維類、液晶性全芳香族ポリアミド等の有機繊維類、マイカ、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、ウォラストナイト等が挙げられる。
[5.その他の添加成分]
また、本発明におけるポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、可塑剤、ハロゲン化銅系(例えば、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅)及び/又はハロゲン化アルカリ金属塩系(例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等)等の安定剤や、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系等の酸化防止剤、離型剤、無機核剤、顔料、染料、分散剤、紫外線吸収剤、抗菌剤及びその他の周知の添加剤を配合することができる。
成形加工時の離型性の向上、成形サイクルの短縮および良好な表面外観の成形品を得る目的で、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤としては、高級脂肪酸アルカリ(土類)金属塩、高級脂肪酸(ビス)アミド、ポリオレフィン系ワックス等が挙げられ、高級脂肪酸アルカリ(土類)金属塩、高級脂肪酸(ビス)アミドが好ましい。
高級脂肪酸アルカリ(土類)金属塩は、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、高級脂肪酸のアルカリ土類金属塩であり、その高級脂肪酸としては炭素数10〜30、好ましくは14〜24のものが、揮発性が低く、分散性が良好であることから好ましい。
高級脂肪酸の具体例としては、例えば、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられ、好ましくはステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられる。
高級脂肪酸アルカリ(土類)金属塩としては、これらの高級脂肪酸のカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
高級脂肪酸金属塩の具体例としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
これらの中でも、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムがより好ましい。
これらの高級脂肪酸アルカリ(土類)金属塩は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
高級脂肪酸(ビス)アミドは、高級脂肪酸のアミド、高級脂肪酸のビスアミドであり、高級脂肪酸及び/又は多塩基酸とジアミンとの脱水反応によって得られる化合物が好ましい。高級脂肪酸としては、炭素数16以上、例えば炭素数16〜30の飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましく、具体的には、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられる。
多塩基酸としては、二塩基酸以上のカルボン酸で、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸類及びフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸並びにシクロヘキシルジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
高級脂肪酸(ビス)アミドとしては、具体的には、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミドなどが挙げられる。また、高級脂肪酸ビスアミドとしては、上記の高級脂肪酸と炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の脂肪族ジアミンとの反応により得られる高級脂肪酸ビスアミドが挙げられ、具体的には、メチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリルアミド等が挙げられる。これらのうち、ヤケ、メヤニの発生防止効果の点で、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミドが好ましい。
これらの高級脂肪酸(ビス)アミドは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
離型剤の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、0.05〜1.2質量部がより好ましく、0.07〜0.8質量部がさらに好ましい。含有量が0.01質量部未満であると、十分な離型性向上効果が得られにくく、2質量部を超えると、機械的強度が低下したり、樹脂組成物の溶融混練時や樹脂組成物の成形時に、押出機や射出成形機のスクリューが滑って十分な練りが得られない場合があるだけでなく、成形時のモールドデポジットが多くなり成形品外観が低下したり、生産性が悪くなったりする等の問題が発生する場合がある。
さらに、本発明におけるポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、前記した以外の他の樹脂を配合してもよい。このような他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂(A)及び有機核剤(B)以外のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、及び、ポリエステル系、ポリオレフィン系、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等の変性、未変性エラストマー等が挙げられる。また、配合できる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。この様な他の樹脂を含む場合の他樹脂の含有量は、好ましくはポリアミド樹脂(A)100質量部に対して100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
[6.ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造]
このようなポリアミド樹脂組成物のペレットを製造するには、先ず、押出機を使用して、押出機のホッパーにポリアミド樹脂(A)と有機核剤(B)、必要により、ガラス繊維等を投入するか、又はガラス繊維はサイドフィードするか、あるいはまた、予めこれらを混合して得られた予備混合物をホッパーに投入し、これを溶融混練する。
押出機としては、樹脂組成物原料を加熱してスクリューを用いて連続的にダイから押出すタイプのものであって、単軸式押出機、ベント付押出機、多軸式押出機等が通常用いられるが、スクリューを有しない押出機を用いることも可能である。
このような押出機により、ポリアミド樹脂組成物は、溶融混練され、ダイノズルよりストランドとして押出される。ストランドの断面は、円又は楕円等の円に近い形状であることが好ましく、その径は通常1〜5mm、好ましくは1.5〜4.5mmであり、より好ましくは2〜4mmである。
ダイノズルより押出されたストランドは、240〜400℃の高温溶融状態であり、このままではペレタイザーによるカッティングができないため、融点以下の150℃〜常温に冷却固化する必要がある。通常、この冷却には水が用いられ、ダイノズルより押出されたストランドは水にて冷却される。水冷するには、通常、水を含有する水槽を用い、ストランドを通過させる方法が一般的であるが、ストランドをコンベアベルト上で搬送しながらシャワーを浴びせ冷却する方法も好ましい。冷却に用いる水の温度としては、通常20〜80℃であり、好ましくは30〜60℃である。
冷却されたストランドは、ペレタイザーによりカッティングされることによりペレットとなる。ペレットの形状としては、通常、円筒状であり、その長さは通常1〜25mm、好ましくは2〜15、より好ましくは2〜8mmである。
[7.結晶化処理]
得られたポリアミド樹脂組成物ペレットには、結晶化処理が施される。ポリアミド樹脂組成物ペレットの結晶化度を、結晶化処理前の結晶化度より5%以上高くなるに十分な結晶化処理を行う。このような結晶化の好ましい方法としては、空気雰囲気中、温度100〜160℃にて、15分間以上保持することが挙げられる。温度が100℃未満では結晶化はあまり進行せず、160℃を超えて長い時間保持すると、ペレットが変色するおそれがある。より好ましい結晶化の条件は、ガラス繊維の含有量によっても異なるが、温度110〜150℃にて、15〜60分間程度である。また、結晶化処理による成形時の計量安定性の点から、ガラス繊維(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、150質量部以下であることがより好ましく、120質量部以下が特に好ましい。このようなガラス繊維含有量の樹脂組成物は、ペレット製造時の溶融混練後において、樹脂組成物中の非晶部分の割合が高いので、結晶化処理による成形時の計量安定性効果が顕著となる傾向にある。
ここで結晶化処理の前後での結晶化度は、以下のようにして測定される。
すなわち、本発明の樹脂組成物ペレットの製造方法において、結晶化処理を施さない樹脂組成物ペレットの結晶化度D(%)は以下の方法に基づき測定することができる。
溶融混練後得られた樹脂組成物ペレットを、室温で12時間放置後10mgの試料を切り出し、示差走査熱量測定(DSC)法を用い、30〜300℃あるいは予想される融点以上まで10℃/分の速度で昇温し、昇温時の発熱ピークと吸熱ピークの熱量を求め、以下の式により、結晶化度を算出する。
結晶化度D(%)=[吸熱ピークの熱量(J/g)−発熱ピークの熱量(J/g)]/[ポリアミド樹脂(A)の理論融解熱量(J/g)]×100
なお、吸熱ピークが複数ある場合(例えば、ポリアミド樹脂(A)由来のものと、有機核剤(B)由来のもの)は、複数ピークの熱量を合計する。発熱ピークが複数ある場合も同様であり、上記式により得られる結晶化度D(%)は、複数ピークの合計の結晶化度となる。また、ポリアミド樹脂(A)、有機核剤(B)以外の結晶性樹脂(a)を含有する場合の上記式における結晶化度D(%)は、ポリアミド樹脂(A)、有機核剤(B)及び結晶性樹脂(a)の合計の結晶化度をいう。この場合、ポリアミド樹脂(A)由来の吸熱/発熱ピークと、有機核剤(B)由来の吸熱/発熱ピークと、結晶性樹脂(a)由来の吸熱/発熱ピークが観測される(それぞれの吸熱ピーク、発熱ピークがそれぞれ重なる場合もある)が、上記式における吸熱ピークとは、それぞれの樹脂由来の吸熱ピークの合計であり、上記式における発熱ピークとは、それぞれの樹脂由来の発熱ピークの合計である。
また、複数の吸熱/発熱ピークが存在する場合の、上記式における理論融解熱量とは、各樹脂の理論融解熱量にその割合をかけたものを合計した熱量である。例えば、理論融解熱量Qaのポリアミド樹脂(A)を90質量%及び理論融解熱量Qbの有機核剤(B)(例えば、ポリアミド66)を10質量%の割合で含有する組成物の場合、理論融解熱量は、「Qa×0.9+Qb×0.1」と計算される。
ここで、本発明における各樹脂の理論融解熱量の測定法を、ポリアミド樹脂(A)の例を用いて説明する。
様々な結晶化度を有するポリアミド樹脂(A)の融点における吸熱ピーク熱量を、それぞれDSCにより測定し、得られた吸熱ピーク熱量と結晶化度を2軸にプロットして検量線を作成し、検量線の結晶化度100%外挿点における熱量を理論融解熱量とする。なお、DSC測定に使用したポリアミド樹脂(A)の結晶化度は、一般に使用されている密度勾配管法を採用し、JIS K7112規格に準拠して測定することができる。
有機核剤(B)、その他の結晶性樹脂(a)の場合も、上記と同様の方法で理論融解熱量を求めることができる。
また、結晶化処理を施した樹脂組成物ペレットにおける結晶化度D(%)も、結晶化処理後の樹脂組成物ペレットを室温に12時間放置後10mgの試料を切り出し、上記結晶化度Dの測定と同様の方法で求めることができる。
本発明においては、得られたポリアミド樹脂組成物ペレットに結晶化処理を施して、処理後の結晶化度が、結晶化処理前の結晶化度より5%以上高くなるように行う。結晶化処理前の結晶化度は、通常10〜20%程度であるが、これを結晶化処理により、23〜35%程度まで向上させるのが好ましい。このように、ペレットの結晶化度を5%以上高くすることによって、得られたペレットは、実際の成形品製造時における成形機内での供給工程、圧縮部での溶融が十分均一に行われ、計量が安定して行われる。
[8.成形方法]
本発明で得られるポリアミド樹脂組成物ペレットから成形品を得る方法は、特に限定されず、ポリアミド樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。それらの例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法などが挙げられる。
本発明のペレットを使用し成形して得られた成形品は、計量不足による外観不良などの欠陥がないものが得られる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
なお、実施例及び比較例で用いた測定・評価法および使用材料は、以下のとおりである。なお、ポリアミド樹脂の相対粘度は、96%硫酸溶液中、濃度1g/100ml、温度25℃の条件で測定した。
<使用材料>
ポリアミド樹脂(A)(「MXD10」)
本発明におけるポリアミド樹脂(A)として、以下の方法で製造したものを使用した。
反応缶内でセバシン酸(伊藤製油製、TAグレード)を170℃にて加熱し溶融した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製、MXDA)をセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、260℃まで昇温した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂は、下記記載の方法で測定された融点が190℃であった。また、相対粘度が2.1であった。
有機核剤(B)
(B−1)ポリアミド66(「PA66」)
東レ社製、商品名「アミラン(登録商標)CM−3001N」、下記記載方法で測定された融点は262℃であった。また、相対粘度は3.0であった。
(B−2)ポリアミドMP6(「MP6」)
以下の方法で製造したものを使用した。
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置などを装備した容量が3リットルのフラスコに、アジピン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を160℃に昇温してアジピン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミンを30モル%、メタキシリレンジアミンを70モル%含有する混合キシリレンジアミン680gを、約2.5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には270℃に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、275℃の温度で攪拌し反応を続け、1時間後反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。得られたポリアミド樹脂は、下記記載の方法で測定された融点は258℃であった。また、相対粘度は2.1であった。
ガラス繊維(C)
(C−1)ガラス繊維(「GFA」)
日本電気硝子社製チョップドストランド、商品名「ECS03T−275H」
(C−2)ガラス繊維(「GFB」)
オーウェンスコーニング製造社製チョップドストランド
商品名「CS03JAFT2」
離型剤(D)
モンタン酸カルシウム
クラリアントジャパン社製、商品名「リコモントCaV102」
無機核剤(E)
タルク、林化成社製、商品名「ミクロンホワイト#5000S」
(実施例1〜6、比較例1〜4)
<樹脂組成物の製造方法>
(1)ガラス繊維(C)を除く上記(A)、(B)、(D)及び(E)成分を表1に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製「TEM35B」)の基部から投入して溶融した後、ガラス繊維(C)を含有する場合はこれをサイドフィードして、樹脂組成物ペレットを作成した。押出機の温度設定は、サイドフィード部まで280℃、サイドフィード部からは260℃、吐出量は20kg/時間とした。
(2)次に、得られたペレットをタンクに入れ、表1に示す温度及び時間で保持し、結晶化処理を行った。このようにして得られたペレットを用い、下記記載の方法で融点及び結晶化温度を測定した。
<評価方法>
[融点及び結晶化温度]
上記の方法(2)で得られた樹脂組成物ペレットを室温で12時間放置後、10mgの試料を切り出し、得られた試料を、セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6200」を用いて、窒素雰囲気下、30℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温し、MXD10((A)成分)とPA66、MP6((B)成分)に対応する吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めた。300℃で3分保持後、300℃から30℃まで20℃/分の速度で降温し、MXD10、PA66、MP6成分に対応する吸熱ピークのピークトップの温度から結晶化温度を求めた。
[結晶化度]
上記の方法で得られた樹脂組成物ペレット(結晶化処理前と処理後のもの)を、室温で12時間放置後、10mgの試料を切り出し、得られた試料を、セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6200」を用いて、窒素雰囲気下、30〜300℃まで10℃/分の速度で昇温し、前述した測定法に従って、結晶化処理前の結晶化温度Dと処理後の結晶化温度Dを測定した。
[計量時間および計量性]
上記の方法で得られた結晶化処理済み樹脂組成物ペレットを用い、ファナック社製射出成形機「100T」を使用し、シリンダー温度設定280℃(一律)、計量値55mm、計量初期設定時間5秒、回転数80rpm、背圧3MPaの条件で100×100×2mm厚の試験片を20ショット成形し、上記条件で成形した際の各ショット毎の計量時間から計量時間の平均値を求めた。また、成形時の計量性は、以下の基準で評価した。計量時間が安定しているということは、成形機スクリューへのペレットのくい込みがよく、成形サイクルも安定するので好ましいことを示す。
○(計量安定):計量時間の最大値及び最小値が、計量時間の平均値の±0.5秒未満である。
△(計量不安定):計量時間の最大値及び/又は最小値が、計量時間の平均値の±2.0秒以上である
×(計量できず):ペレットの溶融が不十分かつ不安定であり、スクリューへのペレットのくい込みが悪く計量できない
以上の評価結果を表1に示した。
Figure 2012061777
実施例1〜6から分かるように、結晶化処理後の有機核剤(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高く、かつ、結晶化処理後の結晶化度が5%以上上昇するように十分な結晶化処理を施すことにより、計量性が極めて安定していることがわかる。一方、結晶化処理後の結晶化が不十分で結晶化度の上昇が5%未満の比較例1〜4では、計量性が非常に悪くなり、計量時間の平均値が、初期設定時間5秒に対し、2倍程度に跳ね上がっていることがわかる。また、各ショットの計量時間のばらつきも大きくなっている。
従って、上記の実施例及び比較例から、成形時の成形安定性、特には射出成形あるいは押出成形時の計量安定性に優れたものが得られるという効果は、本発明の構成により、はじめて得られるものであることが確認された。
本発明のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法によれば、成形時の成形安定性、特には射出成形あるいは押出成形時の計量安定性に優れたキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂組成物ペレットが得られるので、これを原料とする自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の広い分野の成形品の成形に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。

Claims (7)

  1. キシリレンジアミンとセバシン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、有機核剤(B)を0.1〜50質量部含有してなるポリアミド樹脂組成物を溶融混練し、ストランド状に押出し、冷却、切断して得られるポリアミド樹脂組成物ペレットであって、該ペレットに、結晶化処理後の結晶化度が結晶化処理前よりも5%以上高くなるに十分な結晶化処理を施すことを特徴とし、かつ、有機核剤(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高いポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
  2. ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度と有機核剤(B)の結晶化温度の温度差が50℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
  3. 結晶化処理が、ペレットを空気雰囲気中、温度100〜160℃にて、15分間以上保持することにより行われることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
  4. ポリアミド樹脂(A)の融点と有機核剤(B)の融点の差が60℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
  5. ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度と有機核剤(B)の結晶化温度の温度差が40℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
  6. 有機核剤(B)が、ポリアミド66であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
  7. さらに、ガラス繊維(C)を、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、10〜250質量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。
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