JP2012060890A - 酸性水中油型乳化組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温耐性に加え、使用時に繰り返し発生する加圧シェアと温度変化に対し、高度な安定性を有する、ジアシルグリセロールを高濃度で含有する酸性水中油型乳化組成物の提供。
【解決手段】次の(A)、(B)及び(C):
(A)ジアシルグリセロール含量が20質量%以上であり、かつジアシルグリセロールを構成する脂肪酸の80質量%以上が不飽和脂肪酸である油脂
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、炭素数14〜18の飽和脂肪酸が50質量%以上であり、かつグリセリンの平均重合度が20以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(C)卵黄
を含有する酸性水中油型乳化組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸性水中油型乳化組成物に関する。
近年、ジアシルグリセロールが肥満防止作用、体重増加抑制作用等を有することが明らかにされるに至り(特許文献1〜3)、これを各種食品に配合する試みがなされている。そして、ジアシルグリセロールを高濃度に含むグリセリド混合物を油相に用いれば、脂肪量を低減した場合においても豊かな脂肪感を有し、風味が良好な食用水中油型乳化組成物が得られることが報告されている(特許文献4)。また、酸性水中油型乳化組成物中の全リン脂質に対しその15%(リン量基準)以上をリゾリン脂質とすることにより、安定的な水中油型乳化組成物が得られることが報告されている(特許文献5)。
しかし、酸性水中油型乳化組成物の油相としてジアシルグリセロール高含有油脂を使用した場合、冷蔵庫内条件下(−5℃〜5℃)において乳化破壊を生じ、油水分離が発生する場合がある。原因としてジアシルグリセロールはトリアシルグリセロールよりも融点が高いため、冷蔵庫条件下ではジアシルグリセロールの一部が結晶化することによるものと考えられた。
そこで、冷蔵庫内条件下(−5℃〜5℃)での低温耐性を向上させるために、油脂の結晶抑制剤として用いられる乳化剤について検討がなされており、特定範囲の乳化剤が結晶抑制剤として有効であることが報告されている(特許文献6)。
一方で、実用化を想定すると、冷蔵庫条件下での低温耐性のみならず、寒冷地での輸送を考慮した条件についても耐性が求められる。すなわち、−5℃での低温耐性では不十分であり、たとえば−10℃での耐性など、更なる低温耐性の向上が求められる。
また、マヨネーズは開封後、腐敗防止の観点から冷蔵庫に保管され、使用時には室温に戻され、使用後には再度冷蔵庫に戻されるという温度変化が幾度となく繰り返される。また、寒冷地において、夜間寒気にさらされたものが、昼間暖房により暖められるケースもある。このような温度変化に伴って、乳化状態が不安定化することがある。更に、樹脂製の一般的なマヨネーズ容器に充填したマヨネーズ等の酸性水中油型乳化組成物は、使用するたびに押し圧が加わるため乳化が不安定化し、乳化が破壊され、離水等の品質低下が引き起こされることもあった。
そのため、ジアシルグリセロール含量の高い油脂を油相として用いた酸性水中油型乳化組成物には、低温耐性のほか、使用時に繰り返し発生する温度変化と加圧シェアに対し、物性と風味の点で高度な安定性を有することが求められる。
トリアシルグリセロールを主成分とする油脂の結晶化を抑制する技術としては、飽和脂肪酸含量の多いポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる技術(特許文献7〜9)や、エルシン酸含量の高いポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる技術が既に知られている(特許文献10、11)。
国際公開第99/48378号パンフレット 特開平4−300826号公報 特開平10−176181号公報 特開平3−8431号公報 特開2001−138号公報 特開2002−176952号公報 米国特許第2266591号明細書 特開平10−313820号公報 特開昭63−63343号公報 特開2004−248518号公報 特開2002−212587号公報
上記特許文献に記載されている乳化剤では、使用時に繰り返し発生する加圧シェアと温度変化に対する耐性が不十分であり、乳化破壊を生じ、油水が分離してしまう場合があった。
従って、本発明の課題は、低温耐性に加え、使用時に繰り返し発生する加圧シェアと温度変化に対し、高度な安定性を有する、ジアシルグリセロールを高濃度で含有する酸性水中油型乳化組成物を提供することにある。
本発明者が検討した結果、ジアシルグリセロール高含有油脂と卵黄を用いた酸性水中油型乳化組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中、炭素数14〜18の飽和脂肪酸含量が50質量%以上であり、かつグリセリンの平均重合度が20以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することにより、寒冷地輸送条件として設定した−10℃での低温耐性を向上させると同時に、加圧シェア耐性、温度変化耐性を有し、乳化物の物性が変化しないことを見出した。
すなわち、本発明は、次の(A)、(B)及び(C):
(A)ジアシルグリセロール含量が20質量%以上であり、かつジアシルグリセロールを構成する脂肪酸の80質量%以上が不飽和脂肪酸である油脂
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、炭素数14〜18の飽和脂肪酸が50質量%以上であり、かつグリセリンの平均重合度が20以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(C)卵黄
を含有する酸性水中油型乳化組成物を提供するものである。
本発明によれば、ジアシルグリセロールを高濃度で含有する油脂を用いた酸性水中油型乳化組成物でありながら、−10℃での低温耐性を有し、更に使用時に繰り返し発生する加圧シェアと温度変化に対し、顕著な安定性を維持することができる。
本発明の酸性水中油型乳化組成物は、(A)ジアシルグリセロール含量が20質量%以上であり、かつジアシルグリセロールを構成する脂肪酸の80質量%以上が不飽和脂肪酸である油脂、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、炭素数14〜18の飽和脂肪酸が50質量%以上であり、かつグリセリンの平均重合度が20以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(C)卵黄を含有する。
本発明の酸性水中油型乳化組成物は、油相と水相とを乳化することにより得られるものである。本発明の酸性水中油型乳化組成物の製品形態としては、例えば日本農林規格(JAS)で定義されるドレッシング、半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、マヨネーズ、サラダクリーミードレッシング等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではなく、広くマヨネーズ類、マヨネーズ様食品、ドレッシング類、ドレッシング様食品といわれるものが該当する。
本発明の酸性水中油型乳化組成物には(A)油脂が含有されるが、油脂(A)の含有量は、脂質代謝改善食品又は体脂肪蓄積抑制食品としての有効性と食品としての風味の点から、酸性水中油型乳化組成物中に8〜80質量%(以下、単に「%」とする)、更に15〜75%、特に30〜75%、殊更60〜70%であることが好ましい。本願発明の油脂は、油相成分として用いられるものである。
本発明の酸性水中油型乳化組成物で使用する(A)油脂において、ジアシルグリセロールの含有量は、脂質代謝改善食品又は体脂肪蓄積抑制食品としての有効性、工業的生産性の観点から、20%以上であり、好ましくは35〜99.9%、特に49〜95%であることが好ましい。
本発明において用いるジアシルグリセロールは、低融点であることが好ましい。具体的には、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の炭素数が8〜24、特に16〜20である不飽和脂肪酸であることが好ましい。また、ジアシルグリセロール中の不飽和脂肪酸残基の量は、全構成脂肪酸残基の80%以上であるが、更に80〜100%、特に90〜100%であるのが好ましい。
なかでも、構成脂肪酸残基におけるオレイン酸は栄養学上好ましい脂肪酸とされている。したがって、その含有量は全構成脂肪酸残基の30%以上であることが好ましく、更に40〜90%、特に50〜90%であるのが好ましい。ただし、ジアシルグリセロール中の構成脂肪酸残基におけるオレイン酸の割合が高くなるほど、結晶化しやすくなってしまう。結晶化しやすいオレイン酸高含有ジアシルグリセロールを含有する酸性水中油型乳化組成物中であっても、本発明によって安定化することができる。
(A)油脂にはジアシルグリセロール以外に、トリアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸を含有させることができる。
(A)油脂中のトリアシルグリセロールの含有量は、乳化性、風味、生理効果、工業的生産性の点で80%以下であるのが好ましく、更に0.1〜65%、特に5.0%〜51%であるのが好ましい。トリアシルグリセリドの構成脂肪酸は、工業的生産性の点でジグリセリドの構成脂肪酸と同じであるのが好ましい。
(A)油脂中のモノアシルグリセロールの含有量は、乳化性、風味、工業生産性の点から5%以下であるのが好ましく、更に0〜2%、特に0.1〜1.5%であるのが良い。モノアシルグリセロールの構成脂肪酸は、工業的生産性の点でジアシルグリセロールの構成脂肪酸と同じであるのが好ましい。
(A)油脂中の遊離脂肪酸(塩)の含有量は、乳化性、風味、工業的生産性の点で1%以下であるのが好ましく、更に0〜0.5%、特に0.05〜0.2%であるのが好ましい。
本発明の(A)油脂は、植物油、動物油等の原料油脂とグリセリンとのエステル交換反応、又は上記原料油脂由来の脂肪酸組成物とグリセリンとのエステル化反応等任意の方法により得られる。反応方法は、アルカリ触媒等を用いた化学反応法、リパーゼ等の油脂加水分解酵素を用いた生化学反応法のいずれでもよい。また、本発明の(A)油脂は、前記反応により得られた油脂と原料油脂とを混合して用いてもよい。
本発明で使用する(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、構成脂肪酸中の炭素数14〜18の飽和脂肪酸含量は50%以上であるが、好ましくは70%以上、更に80%以上、特に100%であるのが、低温耐性、加圧シェア耐性、温度変化耐性の点から好ましい。
炭素数14〜18の飽和脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、構成脂肪酸中のミリスチン酸及びパルミチン酸含量は20%以上であるのが好ましく、更に80%以上、特に100%であるのが、低温耐性、加圧シェア耐性、温度変化耐性の点から好ましく、特にパルミチン酸含量が100%であるのが好ましい。また、構成脂肪酸中のステアリン酸含量は70%以下であるのが好ましく、更に0〜50%であるのが、同様の点から好ましい。
また、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、炭素数14〜18の飽和脂肪酸以外の構成飽和脂肪酸を含有していてもよい。
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、構成脂肪酸中の飽和脂肪酸含量は90%以上であるのが好ましく、より好ましくは95%以上、更に98%以上であるのが、低温耐性、加圧シェア耐性、温度変化耐性の点から好ましい。
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、グリセリンの平均重合度は20以上であるが、更に25以上、特に30以上、殊更35以上であるのが、低温耐性、加圧シェア耐性、温度変化耐性の点から好ましい。本発明において、グリセリンの平均重合度は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンの水酸基価から算出したものである。
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は50%以上が好ましく、更に70%以上、特に80%以上であるのが、低温耐性、加圧シェア耐性、温度変化耐性の点から好ましい。ここで、エステル化率とは、ポリグリセリン1分子中の全水酸基数に対する、ポリグリセリン脂肪酸エステル1分子中のエステル化された水酸基数を百分率で表した数値(%)のことである。
本発明において、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルは油相成分として用いられるものであり、(B)の含有量は、油相質量に対して0.05〜2質量%であるのが好ましく、更に0.1〜1.5%、特に0.3〜1.2%、殊更0.5〜1%であるのが、低温耐性改善効果及び食品としての風味の観点から好ましい。
本発明に用いる(C)卵黄は、生、凍結、粉末、加塩、加糖等任意の形態でよく、また卵白を含んだ全卵の形態で配合してもよい。組成物中の卵黄の含有量は、風味向上の観点から、液状卵黄換算で5〜25%であるのが好ましく、更に7〜23%、特に10〜20%であるのが好ましい。本発明の卵黄は、水相成分として用いられる。
また、(C)卵黄の一部又は全部が酵素処理されたものであることが、乳化安定性の点から好ましい。卵黄の酵素処理に用いる酵素としては、エステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼが好ましく、リパーゼ、ホスホリパーゼがより好ましく、ホスホリパーゼが特に好ましい。ホスホリパーゼの中でも、ホスホリパーゼA、すなわちホスホリパーゼA1及びA2が好ましく、特にホスホリパーゼA2が好ましい。
本発明で用いられる卵黄のうち、卵黄の全リン脂質に対するリゾリン脂質の質量比率(以下「リゾ比率」と記載する)がリン量基準で15%以上、更に25%以上であることが好ましく、より好ましくは25〜75%、更に29〜70%、特に45〜70%、殊更50〜70%とすることが、乳化安定性の点から好ましい。リゾリン脂質は、上述のように卵黄由来であることが好ましいが、大豆由来のものを用いることもでき、また卵黄由来のものと大豆由来のものを併用することもできる。
酵素処理条件は、卵黄の全部に酵素処理卵黄を用いる場合、リゾ比率が15%以上となるような条件を適宜選択すればよい。具体的には、酵素添加量は、酵素活性が10,000IU/mLの場合、卵黄液に対して0.0001〜0.1%、特に0.001〜0.01%が好ましい。反応温度は20〜60℃、特に30〜55℃が好ましい。反応時間は1時間〜30時間、特に5時間〜25時間が好ましい。また、卵黄の一部に酵素処理卵黄を用いる場合、酵素未処理卵黄と酵素処理卵黄の合計のリゾ比率が上記範囲となるように酵素処理条件を選択すればよい。この場合、卵黄全体に対する酵素未処理卵黄の含有量を1〜85%、更に10〜70%、特に15〜50%、殊更20〜30%とすることが、低温耐性、温度変化耐性、加圧シェア耐性の点から好ましい。かかる酵素処理は、各原料を混合して乳化処理する以前の段階で行うことが好ましい。
本発明においては、血中コレステロール低下作用を有する植物ステロール(PS)及び/又は植物ステロール脂肪酸エステル(PSE)を含有することができる。ジグリセリドと植物ステロール類との併用により、脂質代謝改善食品としての有用性を更に高めることができる。ここで植物ステロール(PS)とは遊離体のことで、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、ブラシカステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、ブラシカスタノール、スチグマスタノール、エルゴスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等が挙げられる。また、植物ステロール脂肪酸エステル(PSE)は、上記植物ステロールと脂肪酸とのエステル化反応、上記植物ステロールと油脂又は部分グリセライドとのエステル交換反応により得られたものを用いることができるが、天然油脂からの抽出濃縮生成物なども挙げられる。本発明においては、これらのフェルラ酸エステル、桂皮酸エステルなどのエステル体、配糖体、及びそれらの混合物を一種又は二種以上用いることができる。
本発明の酸性水中油型乳化組成物において、PS及び/又はPSEの含有量は、成分(A)に対して、1〜10%、更に1.2〜10%、特に2〜7%であるのが好ましい。なお、本発明において、PS及び/又はPSEの含有量は、遊離の植物ステロールに換算した量である。
本発明の酸性水中油型乳化組成物の水相には、水相成分として、例えば水;米酢、酒粕酢、リンゴ酢、ブドウ酢、穀物酢、合成酢等の食酢;食塩;グルタミン酸ナトリウム等の調味料;砂糖、水飴等の糖類;酒、みりん等の呈味量;各種ビタミン;クエン酸等の有機酸及びその塩;香辛料;レモン果汁等の各種野菜又は果実の搾汁液;キサンタンガム、ジェランガム、グァーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、トラガントガム等の増粘多糖類;馬鈴薯澱粉等の澱粉類、それらの分解物及びそれらを化工処理した澱粉類;ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等の合成乳化剤;レシチン又はその酵素分解物等の天然系乳化剤;牛乳等の乳製品;大豆タンパク質、乳タンパク質、小麦タンパク質等のタンパク質類、あるいはこれらタンパク質の分離物や分解物等のタンパク質系乳化剤;各種リン酸塩等を含有させることができる。本発明においては、目的とする組成物の粘度、物性等に応じて、これらを適宜配合できる。
かかる水相のpHは、風味と保存性の観点から酸性であるが、好ましくは2〜6、特に3〜5であるのが好ましい。水相のpH調整には、上記した食酢、有機酸、有機酸の塩類、果汁類等の酸味料を使用できる。
本発明の酸性水中油型乳化組成物における油相成分と水相成分との配合比(質量比)は、10/90〜80/20であるのが好ましく、更に20/80〜75/25、特に35/65〜72/28、殊更60/40〜70/30であるのが好ましい。
本発明の酸性水中油型乳化組成物は、例えば以下の方法により製造することができる。まず、(A)ジグリセリド含有油脂、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルの油性成分を混合して油相を調製する。必要に応じて、PS/PSE等の成分を油相に混合してもよい。また、(C)卵黄、その他の水溶性原料を混合して水相を調製する。該水相に該油相を添加し、必要により予備乳化を行い、均質化することにより、酸性水中油型乳化組成物を得ることが出来る。均質機としては、例えばマウンテンゴウリン、マイクロフルイダイザーなどの高圧ホモジナイザー、超音波式乳化機、コロイドミル、アジホモミキサー、マイルダー等が挙げられる。
このようにして製造された酸性水中油型乳化物は容器に充填され、容器入り乳化食品として、通常のマヨネーズ、ドレッシング等と同様に使用することができる。例えば、タルタルソース等のソース、サンドイッチ、サラダの他、焼き物、炒め物、和え物といった調理に使用できる。
容器としては通常、マヨネーズ、ドレッシング等の酸性水中油型乳化食品に用いられるものであれば、いずれでも良い。特に、瓶に比べて使い勝手の良い可撓性容器、例えばプラスチック製のチューブ式容器が好ましい。プラスチック製容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン性酢酸ビニル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性プラスチックの一種又は二種以上を混合して中空成型したものや、これらの熱可塑性プラスチックからなる層を二層以上に積層して中空成形したもの等を用いることができる。
本発明によれば、ジアシルグリセロール高含有油脂と卵黄を用いた酸性水中油型乳化組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中、炭素数14〜18の飽和脂肪酸含量が50質量%以上であり、かつグリセリンの平均重合度が20以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することにより、−10℃での低温耐性を向上させると同時に、加圧シェア耐性、温度変化耐性を有し、乳化物の物性が変化しない酸性水中油型乳化組成物が得られる。
さらに、ジアシルグリセロール高含有油脂を構成する脂肪酸残基におけるオレイン酸含量が高いと、低温耐性が弱く、加圧シェア耐性、温度変化耐性も満たすことは困難であったが、上記のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することにより、油脂を構成する脂肪酸の種類にかかわらず優れた低温耐性、加圧シェア耐性及び温度変化耐性を示す酸性水中油型乳化組成物が得られる。
〔分析方法〕
(1)油脂のグリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
(2)油脂の脂肪酸組成
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定した。
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価
日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「ヒドロキシル価(ピリジン無水酢酸法 2.3.6.2−1996)」に従い、首長の丸底フラスコに油脂サンプル約5gを計量し、アセチル化試薬5mlを加え、フラスコの首に小さな漏斗をのせ、フラスコの底部を加熱浴に約1cmの深さに沈めて95〜100℃に加熱した。1時間後、加熱浴からフラスコを取り出し冷却し、漏斗から1mlの蒸留水を加え、再度加熱浴に入れ10分間加熱した。再び常温まで冷却し、漏斗やフラスコの首に凝縮した液を5mlの中性エタノールでフラスコ内に洗い流し、0.5mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液でフェノールフタレイン指示薬を用いて滴定した。なお、本試験と並行して空試験を行い、滴定結果から下記の式をもとに算出した値を「水酸基価(mg−KOH/g)」(OHV)とした。
水酸基価=(A−B)×28.05×F/C+酸価
(A:空試験の0.5mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)、B:本試験の0.5mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)、F:0.5mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター、C:試料採取量(g))
酸価については、日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「酸価(2.3.1−1996)」に従い、三角フラスコにサンプル約5gを計量し、エタノール:酢酸エチル=1:1の溶媒を100mL加え溶解した。0.1mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液でフェノールフタレイン指示薬を用いて滴定し、滴定結果から下記の式をもとに算出した値を「酸価(mg−KOH/g)」とした。
酸価=5.611×D×F2/E
(D:0.1mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)、E:試料採取量(g)、F2:0.1mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター)
(4)ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの平均重合度の測定方法
阪本薬品工業株式会社発行「ポリグリセリンエステル(P75)」記載の方法にて、ポリグリセリン脂肪酸エステルをポリグリセリン部と脂肪酸部とに分けた。得られたポリグリセリン部はグリセリン平均重合度の分析に、脂肪酸部は構成脂肪酸の分析に供した。
ポリグリセリンを、カラムはTSK2500PWXL(東ソー(株))、溶媒は蒸留水(トリフルオロ酢酸を0.1%添加)、流量は1mL/min、検出器はRID、温度40℃、注入量50μLの条件でGPCにより分析した。ポリエチレングリコールで検量線を作成し、ポリエチレングリコール換算のポリグリセリンの重量平均分子量(Mw2)、グリセリンの重量平均分子量(Mw1)を測定した。次にグリセリンの換算係数(F)を次式(1)により算出した。
F=92/Mw1 (1)
(式中、F=グリセリンの換算係数、Mw1=グリセリンの重量平均分子量)
ポリグリセリンの「グリセリン平均重合度」は、上記で求めた重量平均分子量(Mw2)から、次式(2)により求めた。
n=(Mw2×F−18)/74 (2)
(式中、n=グリセリン重量平均重合度、F=グリセリンの換算係数、Mw2=ポリグリセリン重量平均分子量)
(5)ポリグリセリンエステルの脂肪酸組成
油脂の脂肪酸組成と同様の方法により測定した。
(6)リゾ比率の測定
まず反応物をクロロホルム/メタノール(3:1)混合溶媒により繰り返し抽出を行い、反応物中の全脂質を得た。得られた脂質混合物を薄層クロマトグラフィーに供した。一次元=クロロホルム:メタノール:水(65:25:49)、二次元=ブタノール:酢酸:水(60:20:20)による二次元薄層クロマトグラフィーにより分画した。分画した各種のリン脂質を分取し、リン脂質中のリン量を市販の測定キット(過マンガン酸塩灰化法、リン脂質テストワコー、和光純薬工業株式会社製)を用いて測定した。リゾ比率(%)は(リゾリン脂質画分中のリン質量/全リン脂質中のリン質量)×100により求めた。
〔酵素処理卵黄の調製〕
食塩濃度10%の卵黄液750g、水150g及び食塩15gを混合し、希釈加塩卵黄を得た。次いで、反応温度で十分予備加熱後、卵黄液に対して酵素活性10,000IU/mLのホスホリパーゼA2を0.004%添加し、50℃にて20時間反応を行い、酵素活性10,000IU/mLのホスホリパーゼA2を0.02%添加し、50℃にて20時間反応を行い、酵素処理卵黄を得た。リゾ比率は88%であった。
〔油脂組成物の調製〕
表1に示す配合組成により、ジアシルグリセロール(DAG)高含有油脂(1)又は(2)に、ポリグリセリン脂肪酸エステル並びに植物ステロール(PS)及び植物ステロール脂肪酸エステル(PSE)を添加し、70℃にて加熱溶解し、油脂組成物A〜Lを調製した。ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの平均重合度、エステル化率及び脂肪酸組成を表1に示し、ジアシルグリセロール高含有油脂(1)、(2)のグリセリド組成及びジアシルグリセロールの脂肪酸組成を表2に示す。
Figure 2012060890
Figure 2012060890
〔マヨネーズの製造〕
表1示す油脂組成物A〜Lを油相とし、常法に従い表3に示す水相を調製し、次いで水相を攪拌しながら油脂組成物を添加して均質化し、平均粒子径2.0〜3.5μmのマヨネーズを製造した。得られたマヨネーズをプラスチック製のチューブ式容器に充填し、サンプルとした。酵素処理卵黄として上記酵素処理卵黄を、酵素未処理卵黄として上記希釈加塩卵黄を用い、表3における卵黄トータルのリゾ化率は68%であった。
Figure 2012060890
〔低温耐性〕
サンプルを−8℃1週間、及び−10℃で1日間保存した後、約4時間室温に放置し、その外観を6名のパネラーの協議により、以下の評価基準に従って、目視で評価した。
(チューブ入りマヨネーズの外観)
○:良好、変化なし
○−:良好だが、若干の外観変化が認められる
△:やや不良、一部に割れ、分離等が認められる
×:不良、著しい割れ、分離等が認められる
〔加圧シェア耐性〕
サンプルを40℃にて1週間静置して熟成したのち、チューブから内容量の20質量%のマヨネーズを減量し、チューブの中央を凹ませ空気を抜いた状態にして5℃、24時間静置した。次いで、上下位置を固定し指の背で左右交互に往復シェアを500回加えた。チューブ入りのマヨネーズについて、その外観を6名のパネラーにより、低温耐性の評価と同じ評価基準に従って目視で評価した。
〔温度変化耐性〕
充填した乳化物を、12時間毎に一定条件で温度が変化する恒温槽に1ヶ月間保存した(25℃2時間保持後、30分間で0℃に低下、次いで0℃で9時間保持後、30分間で25℃に上昇)。その後、恒温槽より取り出し、約4時間室温静置し、チューブ入りのマヨネーズについて、その外観を6名のパネラーにより、低温耐性の評価と同じ評価基準に従って目視で評価した。
〔風味評価〕
サンプルを20℃にて1ヶ月間静置して熟成したものに対し、その風味を6名のパネラーの協議により下記評価基準に従い評価した。
○:特に良好
○−:良好
△:少し異味、異臭を感じる
×:不良
Figure 2012060890
結果を表4に示した。
ジアシルグリセロール高含有油脂を使用した油脂組成物A〜Fを油相として使用してマヨネーズのような酸性水中油型乳化組成物とした実施例1〜6は、油脂を構成する脂肪酸の種類にかかわらず、優れた低温耐性、加圧シェア耐性、温度変化耐性を示した(表4)。実施例2は実施例1に植物ステロール脂肪酸エステルを添加したものだが、低温耐性ほか全ての評価において実施例1と同等の効果を有していた。
これに対し、比較例1と2は平均重合度10のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたものであり、特に温度変化耐性が弱かった。また、比較例3は構成脂肪酸組成がラウリン酸100%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたものであり、低温耐性を向上させる効果は認められなかった。比較例4はオレイン酸を高率で含有することにより調製したポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたものであり、低温耐性がなかった。
比較例5は平均重合度4で、ベヘン酸及びオレイン酸を高率で含有することにより調製したポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたものであり、低温耐性、温度変化耐性がなかった。比較例6はポリグリセリン脂肪酸エステルを配合しておらず、十分な低温耐性、加圧シェア耐性、温度変化耐性を有さなかった。また、風味に関してはいずれも問題なかった。

Claims (6)

  1. 次の(A)、(B)及び(C):
    (A)ジアシルグリセロール含量が20質量%以上であり、かつジアシルグリセロールを構成する脂肪酸の80質量%以上が不飽和脂肪酸である油脂
    (B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、炭素数14〜18の飽和脂肪酸が50質量%以上であり、かつグリセリンの平均重合度が20以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
    (C)卵黄
    を含有する酸性水中油型乳化組成物。
  2. (B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、ミリスチン酸及びパルミチン酸含量が80質量%以上である請求項1記載の酸性水中油型乳化組成物。
  3. ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸の50質量%以上がオレイン酸である請求項1または2項記載の酸性水中油型乳化組成物。
  4. 卵黄の一部又は全部が酵素処理卵黄である請求項1〜3のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化組成物。
  5. 卵黄の全リン脂質に対するリゾリン脂質の質量比率がリン量基準で15質量%以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化組成物。
  6. 成分(A)に対して、植物ステロール(遊離体)及び/又は植物ステロール脂肪酸エステルを、遊離体に換算して、1〜10質量%含むものである請求項1〜5のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化組成物。
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