JP2012059601A - 色素増感太陽電池用電極とその製造方法、色素増感太陽電池 - Google Patents

色素増感太陽電池用電極とその製造方法、色素増感太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】既存の増感色素を用いた場合でも光電変換効率の高い高性能の色素増感太陽電池の提供。
【解決手段】基材の表面に多孔質酸化チタン層を形成して電極基材を作製する工程と、次いで前記電極基材を増感色素溶液に浸漬して前記多孔質酸化チタン層に増感色素を吸着させて色素増感太陽電池用電極を作製する工程とを含む色素増感太陽電池用電極の製造方法において、前記増感色素溶液中に、テトラブチルアンモニウムカチオンを添加することを特徴とする色素増感太陽電池用電極の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、色素増感太陽電池用電極とその製造方法、色素増感太陽電池に関する。
近年、地球温暖化防止のために、炭酸ガスの排出量を低減するための各種の方策が世界的に検討されている。特に発電においては、従来の火力、原子力及び水力発電などの大規模集中発電に加えて、太陽エネルギー、風力及び地熱などの再生可能エネルギー(自然エネルギー)などを利用した分散発電を用いて、炭酸ガスの総排出量を低減する取り組みが行われている。
特に太陽電池は、シリコン系太陽電池を中心に既に実用化されている。しかしながら、シリコン系太陽電池は、原料である高純度シリコンの安定的な供給及びコスト高などの課題がある。従って、太陽電池の更なる普及のために、安価であり、かつ製造が容易である新規な太陽電池が望まれている。
この要望に対応する太陽電池として、有機太陽電池が挙げられる。有機太陽電池の中でも、光電変換効率が特に高い色素増感太陽電池が注目されている。色素増感太陽電池は、比較的容易に製造でき、原材料が安く、かつ光電変換効率が高いので、次世代太陽電池の有力候補と考えられている。
一般に、色素増感太陽電池は、透明基材表面に透明電極層と多孔質酸化チタン層とを順に積層し、さらに多孔質酸化チタン層に増感色素を吸着させた色素増感太陽電池用電極と、基材表面に白金(Pt)などの導電体薄膜を形成した対向電極とを用意し、これらの色素増感太陽電池用電極と対向電極とを所定間隔をおいて配置し、それらの隙間に電解液を充填した構造になっている。
この色素増感太陽電池において、酸化チタン層の役割は、1)増感色素の吸着、2)励起した増感色素からの電子注入受け入れ、3)導電層への電子輸送、4)ヨウ化物イオンから色素への電子移動(還元)反応場の提供、並びに5)光散乱及び光閉じこめ等である。
従来、色素増感太陽電池用の増感色素としては、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(N3と呼ばれることがある)、該シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)のビス−テトラブチルアンモニウム塩(N719と呼ばれることがある)、トリ(チオシアナト)−(4,4’,4’’−トリカルボキシ−2,2’:6’,2’’−ターピリジン)ルテニウムのトリス−テトラブチルアンモニウム塩(ブラックダイと呼ばれることがある)などのルテニウム色素系等が用いられていた。
そして、従来よりも光電変換効率の高い高性能の色素増感太陽電池を提供するために、該電池の各構成要素の改良が種々検討されており、前記増感色素についても種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
例えば、特許文献1には、一般式ML(Mは周期表第8族遷移金属、Xは、ハロゲン原子、シアノ基、チオシナネート基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、イソシアニド基、ヒドロキシ基、またはX同士が結合した2座配位子を表す。L、Lは芳香環を含む配位子であり、LまたはLのいずれかにCOOH基またはPO(OH)を有する官能基を有する。)で表される金属錯体からなる金属酸化物半導体電極用光増感剤であり、配位子LまたはLを介して金属酸化物半導体電極に吸着したとき、LとLのGAUSSIAN03量子化学のプログラム計算を用いて算出した、それぞれの励起状態のエネルギーレベルの差△Lが0.25eV以上であることを特徴とする光増感剤が開示されている。
特願2009−280789号公報
本発明は、光電変換効率の高い高性能の色素増感太陽電池を提供するための新たなアプローチとして、既存の増感色素を用いた場合でも光電変換効率の高い高性能の色素増感太陽電池を提供することが可能な方法の提供を課題とする。
前記目的を達成するため、本発明は、基材の表面に多孔質酸化チタン層を形成して電極基材を作製する工程と、次いで前記電極基材を増感色素溶液に浸漬して前記多孔質酸化チタン層に増感色素を吸着させて色素増感太陽電池用電極を作製する工程とを含む色素増感太陽電池用電極の製造方法において、前記増感色素溶液中に、テトラブチルアンモニウムカチオンを添加することを特徴とする色素増感太陽電池用電極の製造方法を提供する。
本発明の色素増感太陽電池用電極の製造方法において、前記テトラブチルアンモニウムカチオンは、水酸化テトラブチルアンモニウム又はテトラブチルアンモニウム塩の中から選択される1種又は2種以上の水溶液の状態で前記増感色素溶液に添加することが好ましい。
本発明の色素増感太陽電池用電極の製造方法において、前記増感色素がシス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)、または該シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)のビス−テトラブチルアンモニウム塩の一方又は両方であることが好ましい。
また本発明は、前記色素増感太陽電池用電極の製造方法によって得られたものであることを特徴とする色素増感太陽電池用電極を提供する。
また本発明は、前記色素増感太陽電池用電極を含むことを特徴とする色素増感太陽電池を提供する。
本発明の色素増感太陽電池用電極の製造方法は、多孔質酸化チタン層に増感色素を吸着させる際に、テトラブチルアンモニウムカチオンを添加した増感色素溶液を用いたことによって、テトラブチルアンモニウムを添加せずに作製した色素増感太陽電池用電極を用いた太陽電池よりも光電変換効率を高めることができる。
従って、本発明によれば、既存の増感色素を用いた場合でも光電変換効率の高い高性能の色素増感太陽電池を提供することができる。
色素増感太陽電池用電極の製造に用いる電極基材の一例を示す断面図である。 色素増感太陽電池の一例を示す断面図である。 本発明の実施例の結果を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
[1] 電極基材の作製
図1は、本発明の色素増感太陽電池用電極の製造に用いる電極基材の一例を示す断面図である。図1に示す電極基材1は、基材2と、基材2の一方の表面2aに積層された多孔質酸化チタン層3とを備える。基材2は、基材本体4と、該基材本体4の一方の表面4aに積層された導電層5とを有する。導電層5の基材本体4が積層されている一方の面5aとは反対側の他方の表面5bに、多孔質酸化チタン層3が積層されている。多孔質酸化チタン層3は、酸化チタン微粒子同士が焼結された多孔質構造になっており、さらに比較的大きな空隙が分散して設けられた空隙構造を有していてもよい。なお、図1では、多孔質酸化チタン層3は略図的に示されており、多孔質構造及び空隙構造の図示は省略されている。
前記電極基材1を得る際には、例えば、先ず、酸化チタン含有ペーストを基材2の上に塗布し、基材上に酸化チタン含有ペースト層を形成する。
次に、前記酸化チタン含有ペースト層を500℃以下で1時間以上加熱処理することにより、前記酸化チタン粒子を焼結させて基材上に多孔質酸化チタン層を形成する。
また、前記空隙構造を形成するために、酸化チタン含有ペーストに焼成時に消滅する合成樹脂粒子からなる加熱消滅性樹脂粒子を配合した酸化チタン含有ペースト層を用いることもできる。この場合には、前記加熱処理によって前記酸化チタン粒子を焼結させるとともに、前記加熱消滅性樹脂粒子の一部又は全部を消滅させて、基材上に空隙構造を有する多孔質酸化チタン層を形成することができる。
このようにして、前記電極基材を得ることができる。なお、前記酸化チタン含有ペースト層を加熱する際に、前記加熱消滅性樹脂粒子の大部分は消失する。前記多孔質酸化チタン層を形成する工程において、前記加熱消滅性樹脂粒子を99質量%以上消失させるように加熱処理することが好ましく、99.5質量%以上消失させるように加熱処理することがより好ましく、99.9質量%以上消失させるように加熱処理することが更に好ましい。
(1)基材
本発明の製造方法において用いられる基材は、可視光を透過する透明基材であり、前記基材はガラス基材又はプラスチック基材であることが好ましい。特に、色素増感太陽電池の光電変換効率を高めるためには、基材の可視光透過率が高いほどよく、基材の可視光透過率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、85%以上であることが特に好ましい。ここで可視光とは、波長400〜780nmの光を意味する。また基材の可視光透過率は、積分球付きの透過率光度計にて測定できる。
前記基材の材料であるガラスとしては、特に限定されず、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、バイコールガラス、無アルカリガラス、青板ガラス及び白板ガラスなどの一般的なガラスが挙げられる。
前記基材の材料であるプラスチックとしては、特に限定されず、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリアミド樹脂等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(PET)は、透明耐熱フィルムとして大量に生産及び使用されている。薄く、軽く、かつフレキシブルな色素増感太陽電池を製造する観点からは、前記基材はPETフィルムであることが好ましい。
前記多孔質酸化チタン層を形成する際には、基材上に前記酸化チタン含有ペーストを塗布し、焼結させる方法が一般的である。酸化チタンの加熱処理温度(焼成温度)は後述するが、一般に300℃以上の焼成温度が好ましいことから、耐熱性の劣るプラスチック基材よりもガラス基材の方が好ましい。低温焼成可能な酸化チタン含有ペーストを用いる場合には、プラスチック基材を用いてもよい。
前記基材は、導電性を有することが好ましく、導電性基材であることが好ましい。前記電極基材を色素増感太陽電池に用いる場合、光電極材料である多孔質酸化チタン層において光反応により生じた電子を外部に取り出すためには、多孔質酸化チタン層が導電材料と接しており、この導電材料を通じて電子が外部に取り出されることが必要である。
導電性を有するように、前記基材は、表面に導電層を有することが好ましく、基材本体と、該基材本体の表面に積層された導電層とを有することが好ましい。前記基材は、基材本体と、該基材本体の表面に積層された導電層とを有する導電性基材であることが好ましい。多孔質酸化チタン層が接する基材の表面層全体が導電性を有すると、内部抵抗が減少し、この結果色素増感太陽電池において、トータルとしての光電変換効率が向上する。
前記導電層の材料としては、金属、金属酸化物及び導電性高分子等が挙げられる。前記電極基材を色素増感太陽電池に用いる場合には、導電層を有する基材は透明であることが好ましい。従って、前記導電層の材料は、金属酸化物又は導電性高分子等の透明導電材料であることが好ましい。前記電極基材を形成する際に、前記酸化チタン含有ペーストを焼成させるため、前記導電層の材料は、金属酸化物であることが好ましい。金属酸化物は、導電性高分子よりも耐熱性が高い。
金属酸化物である透明導電材料としてよく知られている材料としては、酸化インジウム/酸化スズ(ITOと呼ぶことがある)、フッ素ドープ酸化スズ(FTOと呼ぶことがある)、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATOと呼ぶことがある)、酸化インジウム/酸化亜鉛(IZOと呼ぶことがある)、酸化ガリウム/酸化亜鉛(GZOと呼ぶことがある)及び酸化チタン等が挙げられ、これらが好適に用いられる。これらの中でも、伝導度が高いITOと耐熱性及び耐候性に優れたFTOとが特に好適に用いられる。前記導電層の材料は、ITO及びFTOの内のいずれか1種を含むことが好ましい。前記導電層は、単層であってもよく、複数層であってもよい。耐熱性の向上を目的として、ITO導電層上にATO導電層を積層した積層透明導電層等を使用できる。
(2)多孔質酸化チタン層
前記多孔質酸化チタン層を形成する際には、前記基材上に、酸化チタン含有ペーストを塗布する。塗布方法は特に限定されず、従来より公知の方法が用いられる。該塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、スピンコート法、スキージ法及びドクターブレード法等が挙げられる。基材本体と、基材本体の表面に導電層とを有する基材を用いる場合には、前記酸化チタン含有ペーストは、導電層上に塗布される。
前記酸化チタン含有ペーストは、(a)酸化チタン粒子と、(b)有機バインダ樹脂と、(c)溶剤とを含む。また、前記多孔質酸化チタン層に前記空隙構造を形成する場合には、(d)加熱消滅性樹脂粒子をさらに配合する。また、前記酸化チタン含有ペーストには、必要に応じて(e)添加剤を配合してもよい。
(a)酸化チタン粒子
前記酸化チタン含有ペーストに含まれている酸化チタン粒子は特に限定されない。酸化チタン粒子は、酸化チタン含有ペーストの加熱処理(焼成)により、多孔質酸化チタン層となる原料である。多孔質酸化チタン層は、表面積が大きいほど色素を効率よく吸着する。このため、原料である酸化チタン粒子の表面積もできるだけ大きいことが好ましい。
酸化チタン粒子の表面積を大きくするためには、酸化チタンの一次粒径はできるだけ小さい方が好ましい。このため、酸化チタン粒子の一次粒径は、3〜500nmであることが好ましく、3〜200nmであることがより好ましい。酸化チタン粒子100質量%中、一次粒径3〜500nmである酸化チタン粒子の含有量は60質量%以上であることが好ましい。一次粒径が3nm以上であると、粒子界面での相互作用が小さくなり、粒子の分散が容易になり、更に粒子の合成が容易になって、粒子が安価になる。一次粒径が500nm以下であると、酸化チタン層の表面積がより一層大きくなる。一次粒径は小さいほどよいが、例えば粒径3〜5nmの小さな酸化チタン粒子のみでは粒子同士が密に合着し、多孔質酸化チタン層の表面積が十分に大きくならない可能性がある。このため、粒径3〜50nmの酸化チタン粒子を主として用いてもよいし、粒径3〜50nmの酸化チタン粒子と、粒径50〜500nmの酸化チタン粒子との2種を混合して用いてもよいし、更に3種以上の異なる粒径の酸化チタン粒子を混合して用いてもよい。
酸化チタン粒子の結晶型としては、アナターゼ、ルチル及びブルカイトの3種類が知られている。酸化チタン粒子の結晶型は、アナターゼ型であることが好ましい。アナターゼ型酸化チタンはルチル型酸化チタンよりも反応活性が高く、色素からの電子注入が効率的に起こる。このため、色素増感太陽電池用途において、アナターゼ型酸化チタンは好適に用いられる。
酸化チタン粒子の形状としては、特に限定されず、球状又はその類似形、正八面体状又はその類似形、星状又はその類似形、針状、板状、並びに繊維状等が挙げられる。特に、球形又は正八面体状の類似形の酸化チタン粒子は、入手が容易である。
光散乱効果及び光閉じこめ効果をより一層高める観点からは、酸化チタンの結晶型は、ルチル型であることが好ましい。ルチル型酸化チタンは屈折率が高いため、光散乱効果及び光閉じこめ効果をより一層高めることができ、従って多孔質酸化チタン層における光利用効率を高めることができる。この結果、色素増感太陽電池における光電変換効率を高めることができる。また、長繊維状等の繊維状の酸化チタンを用いて、光散乱効果の向上と電子移動の効率化との双方を、より一層高くすることも可能である。
酸化チタン粒子の市販品としては、例えば、日本アエロジル社製P25及びP90等が挙げられる。ただし、本発明で用いられる酸化チタン粒子は、これらの市販品に限定されない。また、繊維状の酸化チタン粒子は、例えば特開2005−162584号公報に示された方法等により合成できる。さらに、繊維状の酸化チタン粒子の市販品を用いてもよい。
(b)有機バインダ樹脂
前記酸化チタン含有ペーストは、有機バインダ樹脂を含むことが好ましい。該有機バインダ樹脂は、溶剤に溶解して、酸化チタン含有ペーストの粘度を調整する役割を有する。さらに、前記有機バインダ樹脂は、酸化チタン粒子及び前記加熱消滅性樹脂粒子の分散状態を安定化する役割を有する。前記有機バインダ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
前記有機バインダ樹脂は、前記加熱消滅性樹脂粒子と同様に、酸化チタン含有ペーストの加熱処理時に、消失する性能を有することが好ましい。前記有機バインダ樹脂は、酸化チタン粒子が良好に分散する性能、及び極性溶剤に溶けやすい性能を有することも好ましい。このような観点から、前記有機バインダ樹脂は適宜選択して用いられる。
前記有機バインダ樹脂としては、特に限定されず、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコールアセタール変性物、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びデキストリン等が挙げられる。これらの中でも、色素増感太陽電池の酸化チタン電極を形成するためのペーストの原料としては、更に種々のペースト及びインク類の原料として、実績があるのはエチルセルロースである。エチルセルロースは、入手が容易である。エチルセルロースの市販品としては、米国ダウケミカルカンパニーから種種のグレートで販売されている「エトセル(登録商標)」等がある。
エチルセルロースのグレードは、トルエン:エタノール=80:20の溶剤に5%濃度で溶解した際の粘度にて表される。エチルセルロースを用いる場合、該エチルセルロースのグレードは、酸化チタン粒子の粒径又は配合量、前記加熱消滅性樹脂粒子の粒径又は配合量、溶剤の種類、及び界面活性剤の配合の有無などにより適宜選択される。前記グレード(粘度)で7〜100cPのエチルセルロースが好適に用いられ、10〜45cPのエチルセルロースがより好適に用いられる。
(c)溶剤
本発明に係る酸化チタン含有ペーストに含まれている溶剤は、特に限定されない。前記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
前記溶剤は、適度な極性と、適度な沸点及び蒸気圧とを有することが好ましい。このような観点から、前記溶剤は適宜選択して用いられる。
前記溶剤の極性は、酸化チタン粒子の分散性に影響する。酸化チタン粒子の表面には酸素原子が配置しているため、前記溶剤は、水素結合可能な水酸基を有するアルコール類又はアミド類であることが好ましい。酸化チタン含有ペーストの保存時に各成分の濃度が大きく変化しないように、溶剤はある程度沸点が高く、飽和蒸気圧が低いことが好ましい。また、焼成時に、揮発するように、酸化チタン含有ペーストの焼成温度(例えば500℃)以下の沸点を有し、かつ、揮発前に分解等により残渣を形成しない溶剤が好ましい。
前記溶剤としては、例えば、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、アミン類、環状エーテル類、エステル類、天然アルコール類及び水等が挙げられる。前記アルコール類としては、ブチルアルコール、ベンジルアルコール及びブチルカルビトール等が挙げられる。前記アミド類としては、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等が挙げられる。前記スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。前記アミン類としては、n−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。前記環状エーテル類としては、ジオキサン等が挙げられる。前記グリコールエーテル類としては、エチルセロソルブ及びメチルセロソルブ等が挙げられる。前記エステル類としては、ジブチルフタレート等が挙げられる。前記天然アルコール類としては、テルピネオール等が挙げられる。これらの中でも、ペーストの溶剤として実績があり、本発明の目的に合致したものとして、テルピネオールが挙げられる。テルピネオールは市販されており、安価であり、かつ大量に容易に入手できる。
(d)加熱消滅性樹脂粒子
前記酸化チタン含有ペーストに配合される加熱消滅性樹脂粒子は、基材上に形成した酸化チタン含有ペースト層を加熱する際に、確実に消失させることができる合成樹脂材料、例えば、ポリスチレン、アクリル系樹脂などが挙げられる。
前記加熱消滅性樹脂粒子の粒径は、10nm〜1μmであることが好ましい。粒径が10nm以上であると、酸化チタン層における空隙が十分に大きくなり、電解質溶液との接触による反応場提供及び光散乱による光の利用効率向上の効果をより一層十分に得ることができる。粒径が1μm以下であると、空隙が大きくなりすぎず、多孔質酸化チタン層の表面積がより一層大きくなる。この結果、多孔質酸化チタン層における吸着色素数が増加し、色素増感太陽電池における発電効率が高くなる。さらに、粒径が1μm以下であると、大きすぎる空隙が形成され難くなるため、酸化チタン電極自体の強度を高くすることができる。前記加熱消滅性樹脂粒子の粒径のより好ましい下限は20nm、更に好ましい下限は30nm、より好ましい上限は500nm、更に好ましい上限は300nmである。
前記加熱消滅性樹脂粒子を酸化チタン含有ペーストに配合する際、異なる粒径の2種以上の前記加熱消滅性樹脂粒子を複合して用いてもよい。この場合、複合して用いられる加熱消滅性樹脂粒子の粒径は、その配合量によって適宜変更することができ、必ずしも前記粒径範囲内である必要はなく、少量の大粒径粒子を用いたり、比較的多量の小粒径粒子を用いたりしてもよい。
(e)添加剤
前記酸化チタン含有ペーストは、必要に応じて、(a)酸化チタン粒子、(b)有機バインダ樹脂、(c)溶剤、(d)加熱消滅性樹脂粒子以外の添加剤を含んでいてもよい。
前記添加剤としては、界面活性剤などの分散剤、分散安定剤、消泡剤、酸化防止剤、着色剤及び粘度調整剤等が挙げられる。
酸化チタン含有ペーストを安定化させるためには、前記酸化チタン含有ペーストは、分散剤をさらに含むことが好ましい。
塩などの強イオン性の分散剤は、酸化チタンへのアルカリ金属等の付着による性能変化を引き起こす可能性が高い。このため、非アルカリ金属性の分散剤が好ましい。ノニオン性又はイオン性であっても、非アルカリ金属性の分散剤は好適に用いられる。
前記分散剤としては、特に限定されず、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸類、及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等が挙げられる。
酸化チタン粒子、加熱消滅性樹脂粒子及び添加剤の種類及び濃度により、分散性を高めるために、前記分散剤は適宜選択される。高い分散性を得る観点からは、前記分散剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸類であることが好ましい。
酸化チタン含有ペースト100質量%中、酸化チタン粒子の含有量は5〜40質量%であることが好ましい。酸化チタン含有ペースト100質量%中、酸化チタン粒子の含有量のより好ましい下限は10質量%、より好ましい上限は30質量%である。酸化チタン粒子の含有量が前記下限を満たすと、適度な膜厚にペーストを塗布でき、また、粘度調整のために有機バインダ樹脂等を過剰に加える必要がなくなる。酸化チタン粒子の含有量が前記上限を満たすと、ペーストの粘度が適度になり、ペーストの塗布が容易になり、更にペーストの塗布後の膜厚が厚くなりすぎない。前記酸化チタン粒子の含有量が10〜30質量%であると、全体の濃度調整が比較的容易になり、また、適度な厚みの多孔質酸化チタン層を形成できる。
酸化チタン含有ペースト100質量%中、前記加熱消滅性樹脂粒子の含有量は3〜60質量%であることが好ましい。酸化チタン含有ペースト100質量%中、前記加熱消滅性樹脂粒子の含有量のより好ましい下限は10質量%、より好ましい上限は40質量%である。前記加熱消滅性樹脂粒子の含有量が前記下限を満たすと、多孔質酸化チタン層に適度な空隙構造を形成でき、多孔質酸化チタン層の表面積を十分に大きくすることができる。前記加熱消滅性樹脂粒子の含有量が前記上限を満たすと、焼成後に得られる多孔質酸化チタン層の密度が十分に高くなり、電極としての電導性が高くなり、更に多孔質酸化チタン層の強度がより一層高くなる。前記加熱消滅性樹脂粒子の含有量が10〜40質量%であると、前記加熱消滅性樹脂粒子の添加による効果が顕著に高くなり、焼成後に得られる多孔質酸化チタン層の表面積が大きくなり、より一層好ましい多孔質構造となり、光電変換効率がより一層高い色素増感太陽電池を提供することが可能になる。
酸化チタン含有ペースト100質量%中、前記有機バインダ樹脂の含有量は3〜30質量%であることが好ましい。前記有機バインダ樹脂の含有量が前記下限を満たすと、ペーストの分散安定性がより一層高くなる。前記有機バインダ樹脂の含有量が前記上限を満たすと、ペーストの粘度が高くなりすぎず、ペーストを基材に容易に塗布できる。
前記酸化チタン含有ペーストを調製する際に、ペースト成分の混合順は特に限定されない。酸化チタン粒子及び加熱消滅性樹脂粒子が良好な分散状態となるように、適宜の混合順でペースト成分は混合される。
ペースト成分を混合する際に、分散機を用いることが好ましい。該分散機としては、従来公知の分散機を用いることができる。前記分散装置としては、特に限定されず、ボールミル、ビーズミル、ブレンダーミル、超音波ミル、ペイントシェイカー、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌羽根式ミキサー、3本ロール、ヘンシェルミキサー及び自転公転型ミキサー等が挙げられる。また、混合時に、加熱、冷却、加圧又は減圧を行ってもよい。
酸化チタン含有ペーストは、例えば、以下のようにして得ることができる。ただし、酸化チタン含有ペーストの調製方法は、以下の方法に限定されない。
酸化チタン粒子を、低粘度及び低沸点である溶剤(例えばエタノール)に添加し、混合し、自転公転型ミキサー又は撹拌羽根式ミキサーにて分散させ、分散液を得る。得られた分散液を、ボールミル又はビーズミルなどにて、より激しく更に撹拌し、一次粒子レベルまで分散を行う。分散の程度をレーザー散乱又は回折方式等の粒度分布計等にて確認して、撹拌条件、温度及び時間をそれぞれ好ましい範囲にて、分散を行う。次に、分散液に、有機バインダ樹脂(例えばエチルセルロース)を溶解させた溶剤(例えばターピネオール)を添加し、分散機(例えば自転公転型ミキサー)にて混合する。その後、分散液を撹拌しながら減圧し、低沸点溶剤を除去し、分散安定性に優れた酸化チタン含有ペーストを得る。
酸化チタン含有ペースト中に分散剤を添加する場合は、該分散剤は、最初の低粘度及び低沸点である溶剤と酸化チタンの混合時に添加してもよいし、高沸点溶剤の混合時に添加してもよい。また、低粘度及び低沸点である溶剤中に、有機バインダ樹脂を予め溶解させてもよいし、低粘度及び低沸点である溶剤を用いずに、酸化チタン粒子を高沸点溶剤に添加してもよい。前記加熱消滅性樹脂粒子を添加する場合には、低粘度及び低沸点である溶剤、有機バインダ樹脂とともに真空中で混練する際に加え、その後に、酸化チタンとともに混練してペーストを作製することが好ましい。
前記多孔質酸化チタン層を形成する際には、前記基材上に、酸化チタン含有ペーストを塗布する。塗布方法は特に限定されず、塗布方法として公知の方法が用いられる。塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、スピンコート法、スキージ法及びドクターブレード法等が挙げられる。基材本体と、基材本体の表面に導電層とを有する基材を用いる場合には、前記酸化チタン含有ペーストは、導電層上に塗布されることが好ましい。
多孔質酸化チタン層の厚みは、酸化チタンの多孔度により適宜選択される。電極基材を色素増感太陽電池に用いることを考慮すると、焼結後の多孔質酸化チタン層の厚みは、好ましくは1〜30μm、より好ましくは3〜20μmである。多孔質酸化チタン層の厚みが1μm以上であると、光を十分に活用することができ、色素増感太陽電池における光電変換効率がより一層高くなる。多孔質酸化チタン層の厚みが30μm以下であると、光を有効利用でき、酸化/還元反応種の拡散抵抗が小さくなり、電極自体の抵抗が小さくなるため、色素増感太陽電池における光電変換効率がより一層高くなる。多孔質酸化チタン層の厚みは、焼結後における厚みである。焼結前の前記酸化チタン含有ペースト層の厚み、すなわち塗布厚みは、一般的に焼結後の多孔質酸化チタン層の厚みよりも厚くされる。焼結前の前記酸化チタン含有ペースト層の厚みと、焼結後の多孔質酸化チタン層の厚みとは、酸化チタン含有ペーストにおける各成分の濃度及び各成分の配合比により適宜選択される。実際に塗布及び焼結して、厚みを調整することが好ましい。
基材上に酸化チタン含有ペーストを塗布した後、加熱処理して、酸化チタン粒子を焼結させる。加熱処理の温度は、好ましくは200〜500℃であり、より好ましくは300〜500℃である。加熱温度が200℃以上であると、酸化チタンを十分に焼結させることができ、多孔質酸化チタン層に有機バインダ樹脂の残渣等の不純物が残り難くなり、電極抵抗が低くなる。加熱温度が500℃以下であると、導電層が劣化し難くなり、更に基材と多孔質酸化チタン層との熱線膨張係数の差が小さくなり、多孔質酸化チタン層が破断し難くなる。
焼結に用いる熱源及び装置としては、公知の熱源及び装置を使用することができる。熱源としては、電熱ヒーター、遠赤外線、誘導加熱又はマイクロ波等を用いた熱源が挙げられる。前記装置としては、通常のオーブン等を用いることができる。前記装置は、ガス置換により酸素を低減できる機構、又は減圧できる機構を有することが好ましい。前記オーブンは、金属又は他の不純物のコンタミネーションを防止できるクリーンなオーブン等であることが好ましい。
加熱処理時間(焼結時間)は、酸化チタン含有ペーストに含まれている各成分、用いる装置等により、適宜選択される。加熱処理時間は、通常10分から10時間、好ましくは30分から3時間である。加熱処理時間は、1時間以上であることが特に好ましい。加熱処理時間が10分未満であると、多孔質酸化チタン層に有機バインダ樹脂等が残りやすくなる。さらに、酸化チタン粒子同士の溶融接合等も起こりにくくなる可能性がある。加熱処理時間が10時間を超えると、電極基材の生産性が大きく低下し、製造コストが高くなりすぎる可能性がある。
酸化チタン粒子を焼結させるために、特定の温度にて一定時間加熱処理(焼成)してもよいし、連続的又は段階的に温度を上げて加熱処理してもよい。酸化チタン含有ペーストの性状に応じて、好ましい加熱処理方法が適宜採用される。連続的又は段階的に温度を上げて加熱処理する方法が特に好ましい。この方法により、多孔質酸化チタン層と基材との線膨張係数の違いによる多孔質酸化チタン層の剥離及び割れなどを生じ難くすることができる。
段階的に温度を挙げて加熱処理する方法としては、例えば、100℃〜180℃程度の温度まで加熱する第一のステップの後、更に20℃ずつ昇温する中間ステップを経て、200℃〜450℃程度の温度まで加熱する最終ステップを経る方法を例示できる。中間ステップの昇温の度合いは、例えば、20〜100℃の範囲で適宜調整される。更に、連続的な温度上昇と段階的な温度上昇とを組み合わせて加熱処理してもよい。
加熱処理後は、温度が十分に下がってから、電極基材を取り出すことが好ましい。これは酸素による透明性又は導電性の低下を防止するためである。電極基材を得る各工程を、真空中又は不活性ガス中で行う場合には、比較的温度が高い状態にて、電極基材を外部に取り出すこともできる。
前記多孔質酸化チタン層を形成するために、基材上に、同一の酸化チタン含有ペーストを複数回重ねて塗布してもよいし、異なる酸化チタン含有ペーストを複数回重ねて塗布してもよい。異なる酸化チタン含有ペーストを重ねて塗布する際には、1回の塗布が終了した後に加熱処理して、加熱処理後にさらに塗布が行われてもよいし、加熱処理前にまとめて塗布してもよい。また、1回の塗布が終了した後に加熱焼成する際にも、塗布された複数の酸化チタン含有ペースト層をそれぞれ、異なる温度で加熱処理してもよい。このように複数回の塗布を行うと、数μm以上の厚みの多孔質酸化チタン層を形成する際に、剥離及び割れを抑制できる。さらに、異なる酸化チタン含有ペーストを複数重ねて塗布する際には、例えば、多孔質酸化チタン層における多孔度、密度及び表面積等を傾斜構造にすることができる。たとえば、基材に近い多孔質酸化チタン層を緻密な層とし、基材から遠ざかるにつれて、徐々に粗い層とすることにより、光電変換効率が高い色素増感太陽電池を得ることができる。
前記酸化チタン粒子は、四塩化チタン及びチタンアルコキシド等で表面処理されていてもよい。また、基材上に塗布された酸化チタン含有ペースト層は、四塩化チタン及びチタンアルコキシド等で表面処理されていてもよい。これらの処理により、加熱処理時に、酸化チタン粒子同士の結合を促進でき、多孔質酸化チタン層の表面積を大きくすることができる。
[2] 色素増感太陽電池用電極の作製
次に、前記電極基材の多孔質酸化チタン層に増感色素を吸着させて色素増感太陽電池用電極を作製する。
本発明において、電極基材を用いて色素増感太陽電池用電極を製造する方法としては、増感色素を溶剤に溶かし、さらにテトラブチルアンモニウムカチオン(以下、テトラブチルアンモニウムをTBAと記す)を添加して作製した増感色素溶液に、前記電極基材を浸漬し、多孔質酸化チタン層に増感色素及びTBAを吸着させる方法が用いられる。
前記増感色素は特に限定されるものではなく、一般に色素増感太陽電池に使用されている増感色素を用いることができる。前記増感色素としては、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)、該シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)のビス−TBA塩、トリ(チオシアナト)−(4,4’,4’’−トリカルボキシ−2,2’:6’,2’’−ターピリジン)ルテニウムのトリス−テトラブチルアンモニウム塩(ブラックダイと呼ばれることがある)などのルテニウム色素系等が挙げられる。また、前記色素としては、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、チオフェン系、インドリン系、キサンテン系、カルバゾール系、ペリレン系、ポルフィリン系、フタロシアニン系、メロシアニン系、カテコール系及びスクアリリウム系等の各種有機色素等が挙げられる。さらに、これらの色素を組み合わせたドナー−アクセプター複合色素等を、前記色素として用いることともできる。
本発明の好適な実施形態において、前記増感色素は、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(以下、N3と記す)、該シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)のビス−TBA塩(以下、N719と記す)の一方又は両方を用いることが好ましい。
前記増感色素溶液を調製するために用いる溶剤としては、アルコール、ニトリル、エーテル、エステル、ケトン、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の各種溶剤の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。
前記アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記ニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロホルムなどが挙げられる。
本発明の好ましい実施形態において、前記増感色素としてN3又はN719を用いる場合、増感色素溶液を調製するための溶剤としては、例えば、t−ブチルアルコール(t−BuOH)とアセトニトリル(MeCN)との混合溶剤を用いることが好ましい。
前記増感色素溶液に添加されるTBAカチオンは、水酸化TBA又はTBA塩を、適当な溶剤に溶解又は分散させた状態で、前記増感色素溶液に添加することが好ましい。
前記TBA塩としては、臭化TBA(TBAB)、ヨウ化TBA(TBAI)などが挙げられる。
本発明の好ましい実施形態として、前記増感色素溶液に添加されるTBAカチオンは、水酸化TBAを水に溶解したTBA水溶液の状態で、該TBA水溶液を前記増感色素溶液に添加することが好ましい。
前記増感色素溶液に添加されるTBAカチオンの量は、増感色素溶液に含まれる増感色素のモル当たり、0.1〜3.0当量の範囲が好ましく、0.3〜2.5当量の範囲がより好ましく、0.5〜1.5当量の範囲がさらに好ましい。TBAカチオンの添加量が0.1当量未満であると、TBAカチオンの添加効果が不十分であり、光電変換効率がTBAカチオン無添加の場合と同様になってしまう。TBAカチオンの添加量が3.0当量を超えると、TBAカチオンの添加効果が頭打ちになり好ましくない。
前記増感色素溶液において、前記増感色素の濃度は特に限定されないが、通常は0.05〜1.0mMの範囲が好ましく、0.1〜0.5mMの範囲がより好ましい。
前記増感色素溶液に前記電極基材を浸漬する方法は、特に限定されず、容器に入れた増感色素溶液中に電極基材を浸漬し、一定温度で一定時間保持し、その後電極基材を引き上げる方法、増感色素溶液中に電極基材を移動させながら連続的に投入・浸漬・引き上げを行う方法などを採用し得る。
浸漬時の溶液温度は特に限定されない。該溶解温度は10〜90℃であることが好ましい。浸漬時間は、30分〜50時間であることが好ましい。浸漬温度と浸漬時間との組み合わせは、用いる増感色素と酸化チタン層の組合せに応じて設定できる。
浸漬後に電極基材を前記溶液から取り出し、必要に応じてアルコール洗浄し、乾燥させる。
以上の操作によって、前記電極基材における多孔質酸化チタン層に増感色素及びTBAを吸着させて、増感色素及びTBAが吸着された多孔質酸化チタン層が形成された本発明に係る色素増感太陽電池用電極が得られる。
[3] 色素増感太陽電池
図2に、前記色素増感太陽電池用電極を用いて構成された本発明に係る色素増感太陽電池の一例を模式的に断面図で示す。
図2に示す色素増感太陽電池11は、電極基材1における多孔質酸化チタン層3に増感色素及びTBAを吸着させて得られた多孔質酸化チタン層3A(以下、これを多孔質酸化チタン層と記す)を形成した前記色素増感太陽電池用電極1Aを備えて構成されている。
なお、図2では、多孔質酸化チタン層3Aは略図的に示されており、多孔質構造及び空隙構造の図示は省略されている。
色素増感太陽電池11は、前記色素増感太陽電池用電極1Aの対向電極として、基材12と、該基材の一方の表面12aに積層された導電層13とを備える積層体を有する。多孔質酸化チタン層3Aと、導電層13との間に、電解質溶液14が配置されている。導電層5と導電層13との間には、外部の回路に光電変換により生じた電力を供給するためのリード線15が接続されている。前記電解質溶液は、熱可塑性樹脂などの適当な封止材料によって各電極間に封止されている。
色素増感太陽電池11により発電を行う際には、例えば、基材2の多孔質酸化チタン層3Aが積層されている一方の表面2aとは反対側の他方の表面2b側から、図2に矢印Xを付して示すように光が照射される。
前記電解質溶液14としては、アセトニトリル又はプロピオニトリルなどの非水系電解質溶剤等が挙げられる。また、前記電解質溶液としては、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム又はヨウ化ブチルメチルイミダゾリウムなどのイオン液体などの液体成分に、ヨウ化リチウム等の支持電解質と、ヨウ素とが混合された溶液等が挙げられる。なお、前記電解質溶液は、上述の電解質溶液に限定されない。逆電子移動反応を防止するために、前記電解質溶液は、t−ブチルピリジンを含むことがある。近年、色素増感太陽電池の耐久性を向上させるため、擬固体又は固体電解質が用いられることもある。前記電解質溶液の材料として、擬固体及び固体電解質を用いてもよい。
前記色素増感太陽電池は、多孔質酸化チタン層に増感色素を吸着させる際に、TBAカチオンを添加した増感色素溶液を用いたことによって、TBAカチオンを添加せずに作製した色素増感太陽電池用電極を用いた太陽電池よりも光電変換効率を高めることができる。
従って、本発明によれば、既存の増感色素を用いた場合でも光電変換効率の高い高性能の色素増感太陽電池を提供することができる。
[実施例]
(1)電極基材の作製
透明導電成膜(FTO)を有するガラス基材の透明導電性膜上に、酸化チタンペースト(ソラロニクス社製;T/SP)をスクリーン印刷法にて塗布し、窒素大気圧雰囲気下で200℃10分、200℃10分、500℃15分、500℃30分加熱(時間を置いて、通しで2回実施)し、焼成し、多孔質酸化チタン層を形成して、電極基材を得た。多孔質酸化チタン層の厚みは20μmであった。
(2)色素増感太陽電池用電極の作製
0.02Mの増感色素溶液(ソラロニクス社製;N719、溶剤はt−BuOH:MeCN=1:1)に、10%水酸化TBA水溶液を、増感色素モル当たり0.5当量、1.0当量及び1.5当量となるように添加し、TBA添加量の異なる3種類の溶液(増感色素+TAB溶液)を作製した。それぞれの前記溶液を室温にて撹拌し、MgSOを加えて乾燥させた後、綿栓ろ過を行った。その後、溶剤(t−BuOH:MeCN=1:1)で希釈し、色素濃度が0.3mMの浸漬用色素溶液を調製した。
TBA添加量の異なる3種類の前記浸漬用溶液に、(1)で作製した電極基材をそれぞれ浸し、室温にて18時間浸漬して多孔質酸化チタン層に増感色素とTABを吸着させた。浸漬終了後、電極を浸漬用溶液から取り出し、溶剤で洗浄し、乾燥させて、TBA添加量が0.5当量、1.0当量及び1.5当量である3種類の色素増感太陽電池用電極を作製した。
(3)色素増感太陽電池の簡易セルの作製
前記色素増感太陽電池用電極の多孔質酸化チタン層の周りに、30μm厚みのシリコンゴムシートをスペーサーとして設置した。ここに、電解液(ソラロニクス社製;Iodolyte50)を注入し、その上に、気泡を巻き込まないように、対向電極として白金コーティング付きガラスを重ねて、ダブルクリップにて圧着させ、色素増感太陽電池の簡易セルを得た。有効面積は4mm角とした。
(4)変換効率の測定
ソーラーシミュレーター及びIV特性測定装置を接続した評価装置にて、AM1.5及び100mW/cmにて、得られた簡易セルの光電変換効率を評価した。結果を図3に記す。
[比較例]
水酸化TBA水溶液を添加しなかったこと以外は、前記実施例と同様にして色素増感太陽電池の簡易セルを作製(TBA添加量が0当量)し、該簡易セルついて実施例と同様に変換効率を測定した。結果を図3に記す。
図3に示した通り、水酸化TBA水溶液を添加しなかった比較例(TBA添加量が0当量)に比べ、水酸化TBA水溶液を増感色素溶液に添加した実施例(TBA添加量が0.5当量、1.0当量及び1.5当量)は、変換効率が高くなった。変換効率の平均値は、TBA添加量が0当量で9.15%、TBA添加量が0.5当量で9.16%、TBA添加量が1.0当量で9.40%、TBA添加量が1.5当量で9.21%であった。
1…電極基材
1A…色素増感太陽電池用電極
2…基材
2a,2b…表面
3,3A…多孔質酸化チタン層
4…基材本体
4a…表面
5…導電層
5a,5b…表面
11…色素増感太陽電池
12…基材
12a…表面
13…導電層
14…電解質溶液
15…リード線

Claims (5)

  1. 基材の表面に多孔質酸化チタン層を形成して電極基材を作製する工程と、
    次いで前記電極基材を増感色素溶液に浸漬して前記多孔質酸化チタン層に増感色素を吸着させて色素増感太陽電池用電極を作製する工程とを含む色素増感太陽電池用電極の製造方法において、
    前記増感色素溶液中に、テトラブチルアンモニウムカチオンを添加することを特徴とする色素増感太陽電池用電極の製造方法。
  2. 前記テトラブチルアンモニウムカチオンは、水酸化テトラブチルアンモニウム又はテトラブチルアンモニウム塩の中から選択される1種又は2種以上の水溶液の状態で前記増感色素溶液に添加することを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用電極の製造方法。
  3. 前記増感色素がシス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)、または該シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)のビス−テトラブチルアンモニウム塩の一方又は両方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池用電極の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池用電極の製造方法によって得られたものであることを特徴とする色素増感太陽電池用電極。
  5. 請求項4に記載の色素増感太陽電池用電極を含むことを特徴とする色素増感太陽電池。
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