JP2012059570A - リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法 Download PDF

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江鋒 倪
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賢二 志田
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哲男 境
Yoshiteru Kawabe
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正典 森下
Masaharu Watada
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Abstract

【解決課題】LiMnPOに代表されるリン酸遷移金属リチウム化合物を用い、充放電サイクル性能に優れたリチウム二次電池とすることのできる正極活物質を提供する。
【解決手段】メカニカルミリングにより機械的に結晶格子を歪ませ、エックス線回折ピークのうち、回折強度の上位10個のピークについてシェラー式を適用して得られたD値の平均が250〜350Åの範囲であるリン酸遷移金属リチウム化合物を用いることで、上記課題を解決できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、リン酸遷移金属リチウム化合物を含むリチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法に関する。
近年、ノートパソコン、携帯電話、PDA等の携帯電子機器の普及に伴い、これらの機器をより軽量化し、且つ、長時間の使用を可能とするため、電源として使用される二次電池の小型化及び高エネルギー密度化が要求されている。二次電池としては、従来、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池等が主流であったが、上記した小型化及び高エネルギー密度化の要請から、リチウム二次電池の使用が増大する傾向にある。
現在、一般的にリチウム二次電池では、正極としてコバルト酸リチウム(LiCoO)、負極としてカーボン電極、電解質としてプロピレンカーボネート等の有機溶媒にリチウムイオンを溶解させた非水電解液が使用されている。他の正極としては、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn)等のリチウムイオンを含む遷移金属酸化物が知られている。
LiCoOの一般的な製造方法としては、出発材料として炭酸リチウム(LiCO)と水酸化コバルト(Co(OH))を用い、高温で焼成する方法が広く知られている。しかしながら、コバルトは可採埋蔵量が840万tと極端に少ないため、将来コバルトの価格が上昇する可能性を考慮し、また、電池の低コスト化の要求に応えるためにも、LiCoOの代替材料が求められている。
例えば、Mnをベースとした正極材料として、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn)について、次世代の低コスト正極材料として研究開発が盛んに行われている。LiMnは空間群Fd3mを有し、対リチウム二次電池で約4Vの高い電位を示す。また、合成も容易であることから、有望な材料である。しかしながら、スピネル型マンガン酸リチウムの放電容量は約100mAh/gであり、LiCoOの放電容量より小さく、加えて、高温での充放電時には、3価のマンガンが電解液中に溶出し、炭素負極上に溶出したマンガンが析出するため、充放電特性が著しく劣化するという問題点がある。
電池材料系における活物質は、単に既存物質の新しい組み合わせを示しただけでは、良好な電池特性を発揮しないことが多く、予測可能性がない。このため、電池材料系の評価は、例え既存物質であっても、電池として評価し、その有用性を結果から証明することが必要とされる。言い換えれば、物質自身が既存であっても、これまでに電池として評価が成されていなければ、電池材料系においては未知物質であるといえる。さらに、電池とは、システムとして動作しなければ無意味であるため、いかに有用な活物質材料であっても、バインダー、導電助剤、集電体等との相性も十分に考慮する必要がある。
そこで、本発明者らは、LiCoOより安価で、LiMnより放電容量が大きく、従来のバインダーや導電助剤、集電体等との相性も良好であることを考慮して安定な結晶構造を有する正極材料を探索し続け、高容量、高安全性の正極材料として、オリビン構造を有するリン酸遷移金属リチウム化合物に注目した。
リン酸遷移金属リチウム化合物は、酸素が六方最密充填構造を有するものであり、たとえば、例えば、LiMnPO、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO等を挙げることができる。LiMnPOの結晶構造は、図1に示すように、酸素は六方最密充填構造で、LiとMnは六配位八面体を占有し、Pは四配位四面体を占有している。
このうち、LiFePOは、3.4Vの高い電位を示し、理論容量も170mAh/gと大きい。しかも、LiFePOは、Fe−P−O結合が強力なため、高温時でも酸素が抜け出し難いため、短絡の際の発熱でも燃焼しにくく安全性に優れた活物質といえる。
そのため、LiFePOとの構造類似物であるLiMnPO、LiCoPO、LiNiPO等も理想的な正極活物質といえ、事実、非常に高い放電電圧と高い容量を示す物質であることが知られている。例えば、LiMnPOだと、Mn3+/Mn2+のレドックスで約4.1V(対リチウム電位)の電圧を示し、約170mAh/gもの高い理論電気容量を示す。
しかし、これらの物質の結晶格子は非常に安定なため、充放電によりLiイオンの脱離・挿入がしにくく、また、電子及びイオン導電性が非常に乏しいため、活物質としての機能を十分に発揮できていなかった。そのため、理論的な電気容量と比べ実質的な電気容量は少なかった。
そこで、電子導電性の問題を解決するため、特許文献1には、LiFePO粒子の表面が炭素系材料でコーティングされている技術が開示されている。すなわち、カーボンを被覆した構造により導電性を改善している。
しかし、上記のように単に導電性を向上させるような方法を採用しても、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO等の物質を基本組成とする、オリビン構造を有するリン酸化合物は正極材料として用いる場合、十分に機能を発揮することができなかった。
そこで、特許文献2には、LiMnPOのMnの一部をFeで置換した構造を有するLiMnFe1−xPOが、Mn3+に起因するヤーン・テラー効果を希釈することができるため、結晶構造のひずみを抑制することができる旨が記載されている。しかし、理論容量が170mAh/gであることを考えると十分な容量を有しているとはいえない。
特開2003−292308号公報 特開2009−259853号公報
本発明者らは、上記した課題に鑑み、鋭意研究した結果、機械的に結晶格子を歪ませたリン酸遷移金属リチウム化合物をリチウム二次電池用活物質として用いることによって、既知のリン酸遷移金属リチウム化合物と比べ、充放電サイクル性能に優れたものとすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
我々は、リン酸遷移金属リチウム化合物に、例えば50Gといった非常に強い重力加速度で機械的な力を加えることで、結晶格子にリチウムイオンの挿入・脱離が容易になるような適度な歪みを与える技術を確立した。従来正極活物質(例えば、LiCoO、LiNiOやLiMn等)では、50G以上の重力加速度で機械的な力を加えると、結晶格子は崩壊し、正極活物質として機能しにくく、容量が大幅に低下することが知られている。しかし、リン酸遷移金属リチウム化合物であると、ある程度の機械的な力であっても、遷移金属とリン酸との結合が非常に強固なため、結晶格子は崩壊しにくい。このように、リン酸ネットワークは強固なため、結晶格子は維持したまま、結晶格子に歪みを与えることができる。リン酸遷移金属リチウム化合物の結晶格子に歪みを生じた状態であると、格子欠陥が生成してリチウムイオンの拡散が容易になるため、Liの挿入・脱離が起こしやすい。
すなわち、本発明は、オリビン型結晶構造を有し、組成式1:AMPO(式中、Aは、Liを含み、Li、Na及びKからなる群から選択される一種又は二種以上のアルカリ金属元素であり、Mは、M1を含む金属元素であり、M1は、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される一種又は二種以上の遷移金属元素である。)で表されるリン酸遷移金属リチウム化合物であって、前記化合物に由来する放射光エックス線回折ピークのうち、回折強度の上位10個のピークについてシェラー式を適用して得られたD値の平均が250〜350Åの範囲であるリン酸遷移金属リチウム化合物を含有するリチウム二次電池用活物質である。
ここで、シェラー式は、D=0.9λ/B cosθ(λ:エックス線波長、B:半値幅、θ:回折角)で表されるものである。
また、本発明のリチウム二次電池用活物質は、前記Mは、M2を含有し、M2は、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta及びWからなる群から選ばれた一種又は二種以上の金属元素であることを特徴としている。
また、本発明のリチウム二次電池用活物質は、組成式2:LiαM3βγ(式中、M3は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Au及びPbからなる群から選択される一種又は二種以上の金属元素であり;0<α≦6、1≦β≦5、0<γ≦12である。)で表される化合物を粒子表面に備えていることを特徴としている。
また、本発明は、オリビン型結晶構造を有する化合物を重力加速度50G以上の条件で、メカニカルミリング処理を行う工程を含む、前記リチウム二次電池用活物質の製造方法である。
また、本発明のリチウム二次電池用活物質の製造方法は、前記メカニカルミリング処理を行う工程において炭素材料を共存させることを特徴としている。
また、本発明のリチウム二次電池用活物質の製造方法は、リン酸遷移金属リチウム化合物粉末を分散した溶媒にリチウムアルコキシドと前記元素M3のアルコキシドを添加して、分散液を得る工程と、スプレードライ法にて溶媒を除去し、造粒物を作製する工程と、を備えることを特徴としている。
また、本発明は、前記リチウム二次電池用活物質を含有するリチウム二次電池用正極である。
また、本発明は、前記リチウム二次電池用正極を備えるリチウム二次電池である。
本発明によれば、リン酸遷移金属リチウム化合物を含有し、充放電サイクル性能に優れたリチウム二次電池とすることのできるリチウム二次電池用活物質及びその製造方法を提供できる。また、充放電サイクル性能に優れたリチウム二次電池を提供できる。
LiMnPOの結晶構造を示す図である。 実施例及び比較例に係る放射光エックス線回折スペクトルである。 実施例及び比較例に係る放射光エックス線回折スペクトルの部分拡大図である。 実施例に係るSEM観察像である。 実施例に係るSEM観察像である。 比較例に係るSEM観察像である。 実施例電池及び比較例電池の初期充放電曲線である。 実施例電池の高率放電特性を示す図である。 実施例電池の高率放電特性を示す図である。 比較例電池の高率放電特性を示す図である。 実施例電池の50℃での初期充放電曲線である。 実施例電池の50℃でのサイクル性能を示す図である。 実施例電池及び比較例電池の複素インピーダンス測定結果を示す図である。 実施例及び比較例に係るXPS測定結果を示す図である。
(1)リン酸遷移金属リチウム化合物
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、リン酸遷移金属リチウム化合物であって、機械的に結晶格子が歪んだ(アモルファスに近づいた)ことを特徴とするリチウム二次電池用活物質である。
機械的エネルギーを用いて結晶格子を歪ませるとは、衝撃・引張り・摩擦・圧縮・せん断等の外力をリン酸遷移金属リチウム化合物に与え、結晶格子を歪ませることである。例えば、メカニカルミリング装置、擂潰機、ホモジナイザー、フルイダイザー、ペイントシェイカー、ミキサー等を用いれば容易に機械的エネルギーを結晶格子に与えることができる。しかし、リン酸遷移金属リチウム化合物の結晶格子は非常に強固で、当該結晶格子を歪ませるほどの外力を得ることを考慮するとメカニカルミリング装置を用いることが好ましい。メカニカルミリング処理には、転動ミル、振動ミル、遊星ミル、揺動ミル、水平ミル、アトライターミル、ジェットミルなどが挙げられる。例えば、遊星ミルでは、成分となるリチウム遷移金属リン酸化物系をモース硬度8〜10のボールと共に容器に入れ、自転と公転をさせることによって生じる力学的エネルギーにより、原料粉末を粉砕・混合又は固相反応させるものである。この方法によれば、ナノオーダーまで粉砕される。ナノオーダーまで小さくなった粒子は、同様にナノオーダーまで小さくなった別の種類の粒子と容易に固溶体を形成することが知られている。特に、原料粉末が固相のままでのアモルファス相やナノ結晶相及び非平衡固溶体の合成が可能であり、その簡便さ、合金種選択の自由度の大きさ、量産の可能なことなどから材料開発の分野で注目されている。
我々は、自転と公転の速度を高め、さらに力学的エネルギーを大きくすると、リン酸遷移金属リチウム化合物の結晶格子が歪んだ構造になることを発見した。本発明はこの発見に基づくものであり、当該格子が歪んだリン酸遷移金属リチウム化合物をリチウム二次電池の正極として用いたところ、通常のリン酸遷移金属リチウム化合物と比較して非常に良好な電池特性を示したので、本発明を完成するに至った。
以下に、メカニカルミリングによる結晶格子を歪ませる方法を記載する。
重力加速度が50G未満であると、結晶格子は歪みにくく、処理時間が非常に長くなる。そのため、重力加速度が50G以上の機械的エネルギーを加えることが好ましいが、非常に高いエネルギーであるので、モース硬度8以上のボール及び容器等を用いるとよい。モース硬度が8未満であると、ボール及び容器等が磨耗・破損が激しく、製造物に不純物を多く含有してしまうため、耐久性に優れたモース硬度8〜10の素材を用いるとよい。モース硬度8〜10の材料には、ジルコニア、炭化ホウ素、炭化珪素、チッ化珪素、アルミナ、ジュラコン、タングステンカーバイド、ステンレス鋼、チタニア、トパーズ、コランダム、ダイアモンド等が挙げられる。重力加速度が200Gを超えると、その力に耐えうる材料が非常に高価な材料に限られるため、量産性が乏しくなり、また装置も大掛かりなものとなるため、重力加速度は200Gとすることが好ましい。
リン酸遷移金属リチウム化合物の組成は、メカニカルミリング処理後において、組成式1:AMPO(式中、Aは、Liを含み、Li、Na及びKからなる群から選択される一種又は二種以上のアルカリ金属元素であり、Mは、M1を含む金属元素であり、M1は、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される一種又は二種以上の遷移金属元素である。)で表されるオリビン構造を有する化合物であることが好ましい。アルカリ金属元素Aは、Li以外にNa又はKを含んでいてもよい。アルカリ金属元素AがLi以外にNa又はKを含むことにより、充放電容量が若干低下する傾向があるが、リチウムを吸蔵・放出する際の体積膨張・収縮を抑制することができる。但し、Li以外のアルカリ金属元素の量が多くなると、リン酸遷移金属リチウム化合物中のLi量が低下することから、正極容量が低下する。このため、アルカリ金属元素A中に占めるLi以外の元素比率は、30モル原子%以下であることが好ましいが、上記したNa又はKを含むことによる効果を十分に発揮させるためには、1モル原子%以上20モル原子%以下程度とすることがより好ましい。
リン酸遷移金属リチウム化合物に由来する放射光エックス線回折スペクトルにおいて、シェラー式を回折強度の上位10個のピークについて適用して得られたD値の平均が、250〜350Åの範囲で示されるリチウム二次電池用活物質が好ましい。ここで、シェラー式とは、D=0.9λ/B cosθ(λ:エックス線波長、B:半値幅、θ:回折角)で示される式をいう。リン酸遷移金属リチウム化合物に由来する放射光エックス線回折スペクトルでは、主要なピークは2θ=5〜30°の範囲にすべて現れるので、この範囲を測定すればよい。D値の平均が、上記記載の範囲内であれば、正極材料として用いた際、充放電サイクル性能も優れた電極となる。
D値の平均が、350Åを超えていると、リン酸遷移金属リチウム化合物の結晶格子の歪みが少ないため、Liイオンの挿入・脱離が起こりにくく、結果の電池特性の向上が顕著ではない。250Å未満(エックス線回折パターンではブロード化して一見アモルファス状に見える)であると、結晶格子の歪みが大きすぎて、オリビン構造を維持しにくいため、電池の特性が乏しくなる。
また、前記Mは、M2(M2は、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta及びWからなる群から選ばれた一種又は二種以上の金属元素)を含んでいてもよい。これら元素M2は、オリビン構造を有するリン酸遷移金属リチウム化合物の結晶中において、主として、元素Mの一部と置換して遷移金属サイトに存在するものである。このため、元素Mのイオンサイズに近いイオンサイズの元素が好ましく、具体的には、Mg、Sc、Ti、Cr、Cu、Zr及びNbからなる群から選択される一種又は二種以上の遷移金属元素が好ましい。
これら元素M2は、成分となるLi源と、M1源、M2源と、P源とを秤量して組成調合しても良いし、合成されたリン酸遷移金属リチウム化合物粒子に元素M2を含有する金属単体又は化合物を添加して、同様にメカニカルミリング処理等により得てもよい。前記M2及びM1のモル原子数の和に対するM2のモル原子数の比をTとしたとき、0<T≦0.1の範囲であることが好ましく、0.005≦Tであることがより好ましい。
(2)導電性向上の処理
上記した方法で得られるリン酸遷移金属リチウム化合物は、機械的に結晶格子が歪んだ特徴を有するが、結晶構造が歪むと導電率が多少低下するため、炭素質材料を含有させることで導電性を向上させることが考えられる。
従来、リン酸遷移金属リチウム化合物の電子導電性を向上させるため、炭素前躯体(グルコース、クエン酸、ピッチ等)を混合或いは被覆し、次いで600〜900℃で加熱処理を施して炭素前躯体を炭化させ、導電性を得る方法が知られている。しかしながら、この方法では、例え出発材料の格子が歪を有していても、当該熱処理プロセスにより歪みが除去され、結晶性の良い活物質となっていた。本発明においては、歪んだ格子状態のまま炭素を複合化させるため、メカニカルミリング処理を施す工程で、さらに炭素を混合するとよい。これにより、リチウム二次電池用正極活物質として、より良好な電池特性を有するものとなる。
炭素の含有量については、少なすぎると導電性を向上させる効果が十分ではなく、一方、多すぎると電池容量が低下する。このため、リン酸遷移金属リチウム化合物100wt%に対して、炭素が0.1〜15wt%の範囲であることが好ましく、1〜10wt%の範囲とすることがより好ましい。
炭素とは、導電性を有していれば、特に限定されることはないが、KB(ケッチンブラック)、AB(アセチレンブラック)、ファーネスブラック、鱗片状黒鉛、繊維状炭素、活性炭等を用いることができる。上記KBやABは、比表面積が50〜3000m/gのものが好ましい。これらKBやABが50〜3000m/gであることにより、正極活物質との接触面積を充分に確保して内部抵抗の低減を実現するとともに、正極合剤含有ぺーストの調製にあたって必要とされる溶剤の使用量を適正化させ、それによって、正極合剤層の密度を向上させて高容量を達成することができる。また、黒鉛系導電助剤は比表面積が50〜1000m/gであることが好ましい。すなわち、黒鉛系導電助剤の比表面積が50〜1000m/gであることによって、それらと正極活物質との接触面積を充分に確保して内部抵抗の低減を実現するとともに、正極合剤含有ぺーストの調製にあたって必要とされる溶剤の使用量を適正化させ、それによって、正極合剤層の密度を向上させ、正極の高容量化を達成することができる。
(3)リチウム遷移金属酸化物の被覆
前記リン酸遷移金属リチウム化合物の粒子表面に、耐酸化性に優れたリチウムイオン伝導性を有するリチウム遷移金属酸化物を被覆することで、動作電圧が4Vを超えるような活物質を従来の電解液で使用することができる。即ち、リン酸遷移金属リチウム化合物の遷移金属、例えばNiやCoの2価⇔4価のレドックス電位は非常に高いため、電解液から電子を奪い酸化分解する虞があるが、耐酸化性のリチウム遷移金属酸化物を被覆することで、活物質が直接電解液に触れることを防ぐことができるため、上記効果が奏される。リチウム遷移金属酸化物とは、具体的には、LiαM3βγで示されるリチウムイオン伝導性を有する酸化物である。M3は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Au及びPbからなる群から選択される少なくとも一種以上の金属元素であり、0<α≦6、1≦β≦5、0<γ≦12、0≦a/b≦4とすることができる。
前記LiαM3βγを被覆する工程は、ゾル−ゲル法、固相反応法、メカノフュージョン法、スプレードライ法等が適用できる。例えばゾル−ゲル法とは、リチウムアルコキシドとM3アルコキシドの非水系混合溶液の加水分解反応により得られたLiαM3βγの前駆体ゾルをリン酸遷移金属リチウム化合物の粉末にスプレーコートした後、300〜500℃で熱処理することにより、LiαM3βγをリン酸遷移金属リチウム化合物の粒子表面に被覆する方法である。固相反応とは、リン酸遷移金属リチウム化合物の粉末を分散した溶媒にリチウム塩とM3金属塩の混合溶液を添加した分散液を作製後、該分散液の溶媒を除去した後に600〜2000℃で加熱処理し、LiαM3βγをリン酸遷移金属リチウム化合物の粒子表面に被覆する方法である。メカノフュージョン法とは、粉末粒子に機械的エネルギーを与えて、粒子表面におけるメカノケミカル的な反応により、粒子間に強固な表面融合を起こさせ、微粒子複合素材を得る技術であるメカノフュージョン法によりLiαM3βγをリン酸遷移金属リチウム化合物と粉末との粒子表面に被覆する方法である。スプレードライ法とは、熱風中にて分散液を微細な霧状にして噴霧し、瞬間的に粉状の乾燥物を得る方法である。液体を霧状噴霧にする方法としては、遠心噴霧や圧力ノズルによる加圧噴霧等の既存の方法が適用可能である。
しかし、500℃を超える熱処理は、活物質の格子歪みが除去される恐れがあるため、比較的熱処理温度が低温で、且つ、連続で大量生産ができ、球形の流動性のよい粒子が得られることからスプレードライ法が最も好ましい。
スプレードライ法にて用いられる分散液は、リン酸遷移金属リチウム化合物の粉末を分散した溶媒にリチウムアルコキシドとM3アルコキシドを添加して混合したものであり、この混合液の溶媒を除去して、300℃以上で熱処理することで、LiαM3βγをリン酸遷移金属リチウム化合物の粒子表面に被覆することができる。熱処理温度が、300℃未満だと、固相反応が十分でなく、LiαM3βγが生成ににくく、500℃を超える場合は使用する加熱機が大掛かりのものとなり、製造コストも高くなるばかりか、活物質の格子歪みが除去される恐れがある。熱処理時間は、特に限定はしないが、0.5時間以上施せば十分である。熱処理時間が1時間未満であると、処理温度と同様、固相反応が十分でなく、LiαM3βγが生成ににくく、逆に12時間を超える場合はコスト高となる。そのため、好ましい熱処理条件は、処理温度が300〜500℃、処理時間が0.5時間〜12時間であり、より好ましくは、300〜450℃、1時間〜5時間である。
上記のスプレードライ法にて用いられる分散液は、平均粒径0.01〜0.95μmのリン酸遷移金属リチウム化合物の粉末を使用することが好ましい。0.95μmを超えると分散性が悪くなり、0.01μm未満の粒子は製造することが難しい。
しかし、活物質粒子径が0.01〜0.95μmであっても、後に説明する電極作製時でのスラリー塗布・乾燥工程で、粒子間の応力が強くなるため、活物質層にひび割れ等が発生しやすく、集電体からの脱落因子にもなりうる。そのため、前記に記載した分散液は、スプレードライ法等にて溶媒を除去し、平均粒径が1〜20μmのLiαM3βγが被覆した造粒物を作製してもよい。例えば、平均粒径が1〜20μmの範囲内であれば、電極作製時でのスラリー塗布・乾燥工程で、粒子間の応力を抑制することができ、集電体からの脱落因子も極力除外することができ、充放電サイクル性能に優れた電池とすることができる。
リチウムアルコキシドとは、例えば、LiOC、LiO−C、LiO−C、LiO−C11が挙げられ、これら物質はる構造異性体であってもかまわない。
M3アルコキシドとは、例えば、M(OCH、M(OC、M(O−C、M(O−C、M[N(CH、M[N(C、M(O−i−C(C1119、MO(OCH、MO(OC、MO(O−C、VO(O−C、M(OCH、M(OC、M(O−C、M(O−C等が挙げられる。
(4)リチウム二次電池用正極活物質
上記したリン酸遷移金属リチウム化合物は、いずれもリチウム二次電池用正極活物質として有効に使用できる。この正極活物質を用いる正極は、通常のリチウム二次電池用正極と同様の構造とすることができる。
例えば、上記したリン酸遷移金属リチウム化合物に、アセチレンブラック(AB)、ケッチンブラック(KB)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等の導電助剤、ポリフッ化ビニリデン(poly(vinylidine fluoride):PVdF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、等のバインダー、水、エタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、キシレン、トルエン、等の溶媒を加えてペースト状として、これを集電体に塗布することによって正極を作製することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、正極活物質100質量部に対して、20〜100質量部程度とすることができる。また、バインダーの使用量についても、特に限定的ではないが、例えば、正極活物質100質量部に対して、10〜20質量部程度とすることができる。
集電体としては、特に限定はなく、従来からリチウム二次電池用正極として使用されている材料、例えば、アルミニウム箔、アルミニウムメッシュ、ステンレス鋼メッシュなどを用いることができる。
上記したリチウム二次電池用正極を用いるリチウム二次電池は、公知の手法により製造することができる。例えば、負極材料としては、公知の負極材料、例えば、黒鉛等の炭素系負極材料、CuSn等の合金系負極材料、SnO、SiO等の酸化物系負極材料、LiN等の窒化物系負極材料等を用いることができる。
また、本発明の正極を用いるリチウム二次電池は、リチウムイオンを含有する必要があることから、電解質塩としてはリチウム塩が好ましい。このリチウム塩としては特に制限されないが、具体例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウムなどを挙げることができる。これらのリチウム塩は、1種単独又は2種以上混合して用いることができる。上記のリチウム塩は、電気的陰性度が高くイオン化しやすいことから、充放電サイクル特性に優れ、二次電池の充放電容量を向上させることができる。
上記電解質の溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等を用いることができ、これらの溶媒を一種単独又は2種以上混合して用いることができる。特に、プロピレンカーボネート単体、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物又はγ−ブチロラクトン単体が好適である。なお、上記エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物の混合比は、一方の成分が10体積%以上90体積%以下となる範囲で任意に調整することができる。
なお、歪んだリン酸遷移金属リチウム化合物は、充放電の過程で遷移金属が溶出しやすくなるため、予め、活物質を酸で処理し、粒子表面の遷移金属を溶出させることで、Mn、Co、Ni、Fe等の遷移金属が電解液に溶出することを防ぐ効果がある。また、遷移金属が抜けた粒子表面には、高電圧においても安定にリチウムイオンの移動ができうる固体電解質リン酸リチウム層が形成され、これまで高電位によって分解していた電解液を好適に使用することができ、長寿命化にとって効果的である。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
以下に述べるメカニカルミリング処理は、いずれも、モース硬度8のジルコニア製バルブ付ミルポットに所定粉末とジルコニア製ボール(φ5mm)を入れ、このミル容器内を常圧のアルゴンガスを封入し、遊星ボールミル装置(栗本ハイジー社製)を用いた。処理後の試料はドライルーム内で取り出した。
[実施例1〜8]
オリビン構造を有するLiMPOを出発原料とし、モース硬度8のジルコニア製のボール及び容器にて、メカニカルミリング処理(常温、常圧、アルゴンガス雰囲気下)をすることにより、本発明の歪んだ結晶格子を有するリン酸遷移金属リチウム化合物を作製した。実施例1〜8で用いた出発原料及び合成条件(重力加速度、時間)を表1に示す。
[実施例9〜14]
実施例9〜14では、実施例4で作製した試料に更に種々の金属粉を加えてミリング処理(重力加速度100G、2時間、常温、常圧、アルゴンガス雰囲気下)した。実施例9〜14で用いた金属粉の種類とその配合比率を表2に示す。配合比率の欄は、出発材料が含有するMnのモル数と配合する金属粉のモル数との和に対する金属粉のモル数の比率を表している。
[実施例15〜16](炭素との複合化)
実施例15では、実施例4で作製した試料に更に炭素(AB)を加えてミリング処理(重力加速度100G、2時間、常温、常圧、アルゴンガス雰囲気下)することにより、本発明の歪んだ結晶格子を有するリン酸遷移金属リチウム化合物と炭素が混合した活物質(炭素とリン酸遷移金属リチウム化合物の質量比は2:98)を作製した。実施例16は、実施例4に代わって実施例13で作製した試料を用いた他、実施例15と同様である。以上の処理条件を表3に示す。
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[実施例17〜22](リチウム遷移金属酸化物の被覆)
実施例17〜19では、スプレードライ法により、実施例7で作製した試料に更にリチウム遷移金属酸化物を被覆した。被覆の方法としては、スプレードライ法を採用した。使用した分散液は、リチウムエトキシド、チタンイソプロポキシドのエタノール溶液に平均粒径0.4μmのリン酸遷移金属リチウム化合物の粉末を分散させた。この分散液を70℃のベッセル中に流速4.5mL/minでスプレーして乾燥し、次いで加熱処理(400℃、1h)を施すことにより、チタンサンリチウムが表面に被覆されたLiCoPOを得た。実施例20〜22では、実施例7に代わって実施例4で作製した試料を用い、チタンイソプロポキシドに代わってジルコニウムブトキシドを用いた他、実施例17〜19と同様である。以上の処理条件を表4に示す。
[比較例1〜3]
比較例1〜3は、それぞれ、オリビン構造を有するLiMnPO、LiCoPO及びLiNiPOであって、上記メカニカルミリング処理を行う前のものである。
[参考例1〜4]
参考例1〜3は、比較例1〜3のそれぞれに対して、重力加速度30Gの条件で、メカニカルミリング処理を施し、作製した。参考例4は、比較例1に対して、重力加速度250Gの条件で、メカニカルミリング処理を施し、作製した。参考例1〜4で用いた出発原料及び合成条件(重力加速度、時間)を表5に示す。
<結晶構造解析>
実施例4、実施例15、比較例1で得たリン酸遷移金属リチウム化合物について、放射光エックス線回折測定を行った。使用した測定装置は、"Spring-8" BL1902であり、測定波長は0.7Åである。それぞれのスペクトルを図2に示す。また、図2における拡大図を図3に示す。リートベルト解析により、実施例4のLiMnPO相は、a軸長さが10.454(4)Å、b軸長さが6.108(2)Å、c軸長さが4.748(2)Åであり、格子体積が303.16Åであった。実施例15のLiMnPO相は、a軸長さが10.455(6)Å、b軸長さが6.108(3)Å、c軸長さが4.747(2)Åであり、格子体積が303.15Åであった。比較例1のLiMnPO相は、a軸長さが10.444(1)Å、b軸長さが6.102(1)Å、c軸長さが4.744(1)Åであり、格子体積が302.35Åであった。ここで、括弧内の数字は小数4桁目の誤差範囲を示し、例えば「10.454(4)」は「10.454±0.0004」を意味するものとする。以上の結果を表6にまとめて示す。
実施例4或いは実施例15に由来する放射光エックス線回折スペクトルにおいて、シェラー式を回折強度の上位10個のピークについて適用して得られたD値の平均は、約300Åであった。一方、参考例4のD値の平均は250Å未満であり、比較例1及び参考例1のD値の平均は350Åを超えていた。
さらに、精密結晶構造解析を施したところ、LiMnPOの結晶構造はオリビン型構造であり、表7に示す原子座標を有することがわかった(gはサイト占有率、x、y、zはそれぞれのベクトル、Bは等方性原子パラメータを示す)。
<SEM観察>
実施例4、実施例15及び比較例1で得たLiMnPOの走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示す。メカニカルミリング処理の条件を変えても、一次粒子径に大きな差がないことが確認できる。
<電池試験>
実施例1〜22、参考例1〜4及び比較例1〜3のそれぞれの試料を正極活物質として用い、ドライルーム内にて、これらを用いて試験極を作成した(正極活物質の組成:活物質80質量%、導電助剤(アセチレンブラック)10質量%、バインダー(PVdF)10質量%)。
対極として金属リチウム箔を用い、電解液として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比1:1で混合した溶媒にLiPFを1mol/Lの濃度で溶解した溶液を用いて、2極式評価セル(コイン2032型セル)を作製し、30℃で充放電サイクル試験を行った。充電は、電流0.05C、上限電圧4.5Vの定電流充電とし、放電は、電流0.05C、下限電圧2.2Vの定電流放電とした。実施例1〜13及び比較例1の各試料を正極活物質とした電池についての初期放電容量と40サイクル目の各放電容量維持率を各表に示す。
実施例4、実施例15及び比較例1の各試料を正極活物質とした電池についての初期充放電曲線を図5に示す。
実施例4、実施例15及び比較例1の試料を正極活物質とした電池についての高率放電特性を図6〜8に示す。
実施例13の試料を正極活物質として用いた電池について、上記した30℃での充放電試験に代えて、50℃で同様の方法で充放電試験を行った。初期充放電曲線を図9に、サイクル性能を図10に示す。
<インピーダンス試験>
30サイクル目における実施例4、実施例15及び比較例1の電池の交流複素インピーダンス測定を行った結果を図11に示す。
<エックス線光電子分光分析(XPS)>
実施例7と実施例21のXPS(表面分析)を図12に示す。なお、実施例21は、20ÅエッチングしてXPS測定をしたものも同図に示す。
電池試験結果をD値平均と共に以下の表に整理した。それぞれの実施例、比較例又は参考例に係るリン酸遷移金属リチウム化合物を含有するリチウム二次電池用活物質を用いたリチウム二次電池の性能値から、次のことがわかる。
(1)表8からわかるように、LiMnPOに対して50G〜150Gの重力加速度でメカニカルミリング処理を行った実施例1〜実施例6は、メカニカルミリング処理を行っていない比較例1に比べて、初期放電容量及び容量維持率が共に顕著に向上した。これは、ミリング処理によって結晶格子に歪みが生じ、Liイオンの挿入・脱離反応が起こりやすくなり、結果として正極活物質容量が向上したものと考えられる。なかでも、100Gの重力加速度で、2時間ミリング処理をした実施例4が最も良好な電池特性を示した。このことから、ミリング処理時間は0.5時間〜5時間であればよく、なかでも2時間以下が好ましいことがわかる。なお、30Gの重力加速度を採用した参考例1では向上が見られなかった。よって、少なくとも30Gの重力加速度を超えるメカニカルミリング処理が必要といえる。LiCoPO、LiNiPOを用いた場合においても同様の結果が見られた。なお、250Gの重力加速度を採用した参考例4では容量維持率において向上が見られたものの、初期放電容量が低下してしまう結果となった。
(2)放射光エックス線回折スペクトルの結果から、実施例1〜8においてはD値の平均は250〜350Åの範囲内であったのに対し、比較例1〜3、参考例1〜3ではD値の平均は250〜350Åの範囲外であった。また、リートベルト解析より、メカニカルミリング処理を施すことによって、格子体積が大きくなっていることがわかった。これは、強力なミリング処理を施したことにより、格子欠陥や欠損等が生じたためと思われる。よって、エックス線回折スペクトルにおいて、一見アモルファス化しているように見えた原因は、粒子が粉砕されたためではなく、結晶格子が歪んだためと考えられる。
(3)表9からわかるように、実施例4の試料に更に金属元素を加えてミリング処理した実施例9〜14の試料は、何も添加していない実施例4の試料と比較して、サイクル性能が向上した。金属元素のうち、特にCuでの効果が顕著であり、実施例4の試料と比較しても、高率放電特性を向上させ、且つ電圧放電プラトーが高いことがわかる。また、実施例12〜14をそれぞれ比較して、M2の配合モル比率Tが0.02の実施例13が良好な充放電サイクル性能を示した。なお、実施例9は元素M2を用いるものではないが、手順が共通していることから、一つの表に例示した。実施例9〜14の初期放電容量が実施例4に比べて低下した原因については必ずしも明らかではないが、ミリング処理を施した実施例4の試料に対してさらにミリング処理を施したために、ミリング処理が過度になってしまった要因の存在が考えられる。予めLi源、M1源、M2源、P源、を配合しておくことによって、同様に所望の歪んだ結晶格子を有するリン酸遷移金属リチウム化合物を作製することが好ましい。
(4)実施例13の試料を正極活物質として用いた電池について、上記した30℃での充放電試験に代えて、50℃で同様の方法で充放電試験を行ったところ、30℃での充放電試験と比較して、50℃での充放電試験の方が高い放電容量を示し、且つサイクル性能も安定していることから、高温時での電池特性がよいことが確認できた。
(5)表10からわかるように、実施例4で作製した試料に更にABを加えミリング処理した実施例15は、実施例4の充放電曲線と比較して、高電位で放電プラトーを示した。また、実施例4と比較例1の充放電曲線から、実施例4は放電容量こそ高いが、比較例1の方が高電位で放電プラトーを示している。さらに、実施例4、実施例15及び比較例1のインピーダンスの結果も踏まえると、ミリング処理をすることで、インピーダンスが大きくなり導電性が乏しくなるが、ABを加えることで当該問題が解決できることが示唆される。
(6)表11からわかるように、LiTi12を被覆した実施例17〜22は、実施例7や実施例4と比較して、サイクル性能が向上した。これは、LiTi12を被覆することにより、リン酸遷移金属リチウム化合物を構成する遷移金属と電解液の接触を防ぐことができたため、電解液の分解が抑制できたものと思われる。

Claims (8)

  1. オリビン型結晶構造を有し、組成式1:AMPO(式中、Aは、Liを含み、Li、Na及びKからなる群から選択される一種又は二種以上のアルカリ金属元素であり、Mは、M1を含む金属元素であり、M1は、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される一種又は二種以上の遷移金属元素である。)で表されるリン酸遷移金属リチウム化合物であって、前記化合物に由来する放射光エックス線回折ピークのうち、回折強度の上位10個のピークについてシェラー式を適用して得られたD値の平均が250〜350Åの範囲であるリン酸遷移金属リチウム化合物を含有するリチウム二次電池用活物質。
  2. 前記Mは、M2を含有し、M2は、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta及びWからなる群から選ばれた一種又は二種以上の金属元素である請求項1記載のリチウム二次電池用活物質。
  3. 組成式2:LiαM3βγ(式中、M3は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Au及びPbからなる群から選択される一種又は二種以上の金属元素であり;0<α≦6、1≦β≦5、0<γ≦12である。)で表される化合物を粒子表面に備えている請求項1又は2記載のリチウム二次電池用活物質。
  4. オリビン型結晶構造を有する化合物を重力加速度50G以上の条件で、メカニカルミリング処理を行う工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池用活物質の製造方法。
  5. 前記メカニカルミリング処理を行う工程において炭素材料を共存させることを特徴とする請求項4記載のリチウム二次電池用活物質の製造方法。
  6. リン酸遷移金属リチウム化合物粉末を分散した溶媒にリチウムアルコキシドと前記元素M3のアルコキシドを添加して、分散液を得る工程と、スプレードライ法にて溶媒を除去し、造粒物を作製する工程と、を備えることを特徴とする、請求項3記載のリチウム二次電池用活物質の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池用活物質を含有するリチウム二次電池用正極。
  8. 請求項7記載のリチウム二次電池用正極を備えるリチウム二次電池。
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