JP2012056983A - 鉄キレート発生塗料とこれを用いる鉄キレート発生材および水中の生物環境改善方法 - Google Patents

鉄キレート発生塗料とこれを用いる鉄キレート発生材および水中の生物環境改善方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鉄イオンを継続して発生することができ、かつ、発生した鉄イオンをイオン状態のまま水中に存在させることができ、しかも、海流や潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、容易に所定の位置に固定することができ、所望の位置での継続的な鉄イオン発生を可能とする、鉄キレート発生塗料とこれを用いる鉄キレート発生材および水中の生物環境改善方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる鉄キレート発生塗料は、造膜成分、鉄粉、炭粉およびキレート化材料を含むものであり、本発明にかかる鉄キレート発生材は、前記本発明の鉄キレート発生塗料からなる塗膜を、水流に流されないようにして水中で留め置き可能な支持体に形成してなるものであり、本発明にかかる水中の生物環境改善方法は、前記本発明の鉄キレート発生材を水中で留め置くものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、水中で鉄キレートを発生する鉄キレート発生塗料とこれを用いる鉄キレート発生材および水中の生物環境改善方法に関する。
水質環境の改善のため、水中に鉄イオンを供給することが有効であることが明らかとなってきた。すなわち、植物プランクトンの増加は、動物プランクトンや微生物の増加を引き起こすので、川底や湖底のコロイド性沈殿物(ヘドロ)の浄化や水産資源の増大を促すことが期待される。さらに、植物プランクトンは光合成によって二酸化炭素を消費し、酸素を放出するので、水中、ひいては、大気中における二酸化炭素の低減、したがって、地球温暖化の抑制に資することが期待される。植物プランクトンは、このように、水質環境の改善に寄与するとともに、食物連鎖における生産者でもあって、生態系に欠くことのできない存在であるが、鉄イオンは、この植物プランクトンの栄養源として不可欠であることが明らかとなってきたからである。
そこで、鉄、鉄化合物を利用して海藻を増殖させる護岸設備の磯焼け防止方法として、鉄、鉄化合物または鉄キレート化合物の少なくとも一つ以上を含有する塗料を、護岸設備の外部表面に塗布する方法が知られている(特許文献1参照)。
この技術は、鉄、鉄化合物または鉄キレート化合物から鉄イオンを溶出させるものであるとされているが、実際には、鉄、鉄化合物、鉄キレート化合物のいずれか単独では充分な効果が得られず、鉄や鉄化合物と、鉄キレート化合物とを併用することによって、溶解鉄を増大させているものと理解される。
すなわち、特許文献1の段落[0017]の「塗膜2’の鉄、鉄化合物からは3価鉄イオンが溶出し、鉄キレート化合物或いはその他の鉄還元促進物質例えばEDTA、硫化化合物、タンニン酸や植物プランクトン等によって、3価鉄が還元され2価鉄となり、溶解鉄の増加をもたらす」なる記載に見るように、鉄や鉄化合物から3価鉄イオンを溶出させるとともに、この3価鉄イオンを鉄キレート化合物などの還元剤で還元することにより、溶解鉄の増大をもたらし、その結果、海藻の増殖がなされると理解される。
したがって、この鉄キレート化合物は、鉄イオンを安定的に存在させることを意図したものではない。
また、水中に鉄イオンを供給する手段として、酸化鉄と発泡基材とをセメントに配合し、成型、固化させてなる気泡コンクリートからなる漁礁も提案されている(特許文献2参照)。この気泡コンクリートは、その内部に、表面積の大きい連続した空隙を有していて漁礁本体に使えるようになっている。この技術は、この気泡コンクリート製魚礁本体の中空部に鉄と、鉄に比べて電位の高い物質、例えば、グラファイト、活性炭などとの混合物を充填して海水中に沈めることにより、鉄イオンを溶出させるようにした技術である。
この気泡コンクリートには、任意の個所に中空部も設けて魚礁構造を形成しておき、この気泡コンクリートを海底に沈めておくと、この魚礁構造内を海水が自由に出入りし、流入する海水とともに多くの酸素が供給されて、中空部や空隙内を好気性雰囲気に維持することができる。そのため、海水中に生息する微生物が上記の中空部、空隙の内部および気泡コンクリートの表面に大量に付着繁殖して、生物皮膜層が形成される。そして、この生物皮膜層が海水中の有機物を分解し、有機物の無機化を進行させることで、海藻類および微生物の増殖を促進し、その結果、水中での生物環境が改善されるのである。
しかし、上記公知の技術では、鉄と炭素との混合物を気泡コンクリートの内部に単に充填しただけのものであるので、該混合物が海流、潮の満ち引きなどの水流で容易に流されてしまったりするほか、鉄と炭素の接触が解除されたりして、鉄イオンを継続的に発生させることが困難であると言う問題があり、さらに、鉄が錆び易いため、鉄イオンの発生が短期間で終わるなどの問題もあった。
また、効率的な鉄イオンの溶出を長期に亘りコンスタントに持続させることができる技術として、水中に没する状態にすることにより水中に2価の鉄イオンを発生させる鉄イオン溶出体であって、粉状の鉄と炭をデンプン糊などの水溶性バインダーと共に混合して固めた多数の小塊を、粘土粉などの非水溶性バインダーで固めて板状に成形してなる鉄イオン溶出体も提案されている(特許文献3参照)。
しかし、上記特許文献3の技術では、溶出した鉄イオンが酸化されやすいため、水中で難溶性の酸化鉄などとなり、凝集・沈殿してしまうものであった。そのため、植物プランクトンが鉄イオンを十分に摂取することができず、他の水中生物の増殖や活性化を促したり、水質を浄化するといった目的が十分に達成されるものではなかった。
また、上記特許文献3の技術によれば、鉄イオン供給体の形状を板状としたことで、海底や河川の底に溜まった泥やヘドロの中に沈み込んで埋もれてしまうことを抑制することができると共に、海流、潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、定置性を高めることができるようになる、とされるが、未だ、改良の余地があった。すなわち、上記特許文献3の技術における鉄イオン供給体は、水中において、水溶性バインダーが徐々に溶解し、鉄が鉄イオンとして徐々に溶出していくものであるため、内部の空洞化や鉄イオン供給体の軽量化が起こり、水流により流されやすくなる傾向があったのである。
特開平07−127029号公報 特開平06−206804号公報 特開2007−268511号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、鉄イオンを継続して発生することができ、かつ、発生した鉄イオンをイオン状態のまま水中に存在させることができ、しかも、海流や潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、容易に所定の位置に固定することができ、所望の位置での継続的な鉄イオン発生を可能とする、鉄キレート発生塗料とこれを用いる鉄キレート発生材および水中の生物環境改善方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行い、以下の知見を得て、本発明を完成した。
まず、鉄イオンが酸化鉄になるため鉄イオンの発生が短時間で終わるという問題は、鉄イオンをキレート化させた状態で発生させるようにすることで解消できる。鉄キレートは、容易には、酸化鉄にならないからである。そして、鉄イオン発生機構を、海流や潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、所望の位置に長期間、留め置くことは、鉄キレート発生塗料からなる塗膜を、水流に流されないようにして水中で留め置き可能な支持体に形成しておくことで、解消される。支持体によって水中で留め置き可能となっているため、前記鉄キレート発生塗料からなる塗膜が溶解しても、留め置き状態が解除されることはないからである。このように、水中で留め置き可能な鉄キレート発生材を鉄イオン発生機構として採用すれば、鉄イオンを継続して長期間、発生させることができ、かつ、発生した鉄イオンをキレートとしてイオン状態のまま水中に長く存在させることができる。すなわち、海流や潮の満ち引きなどの水流に左右されずに、長期間にわたり、所望の位置における水質環境を改善することができるのである。
本発明は、これらの確認をも経て、完成するに至ったものである。
すなわち、本発明にかかる鉄キレート発生塗料は、造膜成分、鉄粉、炭粉およびキレート化材料を含む、ことを特徴とする。
また、本発明にかかる鉄キレート発生材は、上記本発明の鉄キレート発生塗料からなる塗膜を、水流に流されないようにして水中で留め置き可能な支持体に形成してなるものである。
そして、本発明にかかる水中の生物環境改善方法は、上記本発明の鉄キレート発生材を水中で留め置くようにするものである。
なお、上記特許文献1の技術は、塗料という形態を採用している点、および、鉄キレート化合物の使用を示唆している点で、本発明に一見類似しているようであるが、上に述べたように、この技術は、炭を用いていない点で本発明とは異なるものであり、また、鉄キレート化合物は、鉄または鉄化合物から溶出される3価鉄イオンを還元して2価鉄イオンとするための還元剤として用いられているものであって、この点においても、鉄イオンをキレート化材料でキレート化して安定させる本発明とは全く異なる技術である。
本発明の鉄キレート発生塗料は、鉄イオンを長期間、継続して発生することができ、かつ、発生した鉄イオンをキレートとしてイオン状態のまま水中に存在させることができる。しかも、塗料であるため、被塗装物を適宜選択することにより、海流や潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、容易に所定の位置に固定することもできる。本発明の鉄キレート発生材およびこれを用いる生物環境改善方法は、前記被塗装物として、水流に流されないようにして水中で留め置き可能な支持体を選択したものであるので、海流や潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、所望の位置での長期間にわたる継続的な鉄イオン発生が可能である。
本発明にかかる鉄キレート発生材を表す図である。 実施例の性能評価1における鉄キレート発生材(1)の試験結果を示すグラフである。 実施例の性能評価2における試験結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔鉄キレート発生塗料〕
本発明にかかる鉄キレート発生塗料は、塗膜となったときに、鉄キレートを継続的に発生するものであり、具体的には、造膜成分、鉄イオンを発生させる鉄粉および炭粉、鉄イオンをキレート化するキレート化材料を含み、必要に応じて、その他の塗料成分を含んでいてもよい。ブドウ糖をも含むものであることが好ましい。
<造膜成分>
造膜成分としては、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、塩化ゴムなどの合成樹脂などや、ロジン、ギルソナイト、エステルガムなどの天然樹脂などを挙げることができ、これらは1種または2種以上併用することができる。
本発明の鉄キレート発生塗料は、後述のように、水中で塗膜が容易に溶解することが望ましく、かつ、近年の環境問題にも配慮し、水性塗料であることが好ましい。このような観点から、造膜成分としては、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂などのエマルションタイプが好ましく、アクリル樹脂エマルションが特に好ましい。
<鉄粉>
鉄粉としては、鉄原子を含有する粉であればよく、合金や酸化物であってもよい。例えば、微粉状鉄粉、破砕削り合金鉄粉、鉄鋳物粉などが挙げられる。
鉄粉の粒径としては、10〜50μmが好ましい。
<炭粉>
炭粉は、炭素原子を含有する粉であればよく、例えば、木炭、ピッチコークス、活性炭、竹炭などの粉体が好ましく挙げられ、その他にも、黒鉛、石炭の粉体など、種々のものが採用できる。
特に好ましくは、木炭、ピッチコークス、活性炭および竹炭の粉体を用いる。活性化木炭粉と造膜成分(アクリル樹脂エマルション)を含む「チャコペイント」(商品名、日の丸産業社製)のように、上述の造膜成分と炭粉が混合された材料を用い、ここに、ピッチコークス、活性炭および竹炭の各粉体を混合するなどしてもよく、このように、その混合形態は、特に問わない。
炭粉の粒径としては、10〜50μmが好ましい。
(木炭)
木炭とは、木材を炭化して得られる炭素を主成分とする固体生成物のことである。
前記木炭を材料とする炭粉としては、木材の細片すなわちチップを炭化させてなる木材チップ炭化物を粉砕して粉体化したものを用いることができる。
木材チップの原木としては、主に、杉材、ヒマラヤ杉材、赤松材などの針葉樹材が用いられ、特に赤松材が好ましい。木材製品として利用し難く安価な細い木材や廃材を利用することができる。パルプ製造やボード建材の原料として大量に工業生産されている木材チップ製品を用いることもできる。木材チップの炭化方法は、基本的には通常の木炭の製造方法と共通する技術が利用できる。具体的には、特許第2561433号公報に開示された方法が適用できる。
得られた木材チップ炭化物は、内部に微かな細孔を有する多孔質構造である。木材チップ炭化物を粉砕して粒径を調整した炭粉とすることができる。粉砕は、通常の粉砕手段が採用される。木材チップの原料、炭化処理、粉砕処理、あるいは、粒径などの条件によって、炭化物の多孔質構造に違いが生じる。使用目的や要求性能に合わせて、所望の特性を有する木材チップ炭化物粉を選択したり、特性の異なる複数種類の木材チップ炭化物粉を組み合わせて用いることができる。
木材チップ炭化物の焼成温度については、特に限定はなく、たとえば、600℃程度以上に設定するとよい。炭粉の表面に、カップリング剤による表面処理を施しておくことで、上述の造膜成分との接着性を向上させることができる。
木炭を材料とする炭粉としては、また、備長炭、松の実の殻が炭化され粉砕されてなる炭素粉なども挙げられる。
松の実の殻とは、赤松、黒松、チョウセンゴヨウマツなどの松科の植物の実を構成し、いわゆる松ぼっくりあるいは松かさとも呼ばれ、外殻を構成する鱗片状の硬質材部分である。殻の内部には、狭義の松の実と呼ばれる本来の種子が収容されている。
松の実の殻を炭化させるには、通常の木炭の製造技術が適用される。具体的には、木炭製造用の平窯や土窯に松の実の殻を入れて、薪などの燃料を燃やして加熱し、松の実の殻を炭化させる。炭化温度は、通常450〜500℃程度に設定するのが好ましい。炭化処理に用いる松の実の殻には、本来の種子部分は含まず殻だけからなるものが好ましいが、本発明の目的を阻害しない範囲で種子部分が含まれていても構わない。松の実の殻だけを得るには、松の実の殻を割って内部の種子部分を取り出せばよい。また、種子部分を含む松の実の全体を圧潰して搾り、油分あるいは液体分として種子部分を取り除けば、殻の部分のみが残渣として得られる。
炭化した松の種子の殻は粉砕されて炭素粉となる。粉砕は、炭化が終了して乾燥した状態の炭化物に対して行うのが好ましい。粉砕には通常の粉砕機が使用される。なお、松の種子の殻を炭化する前に予めある程度の大きさに粉砕しておいて、炭化処理後にさらに細かく粉砕して炭素粉を得ることもできる。
また、前記木炭として、活性化木炭を用いることもできる。
活性化木炭とは、木炭の原料、炭化処理条件などを適切に設定することによって、物理的および化学的に活性化した木炭である。
活性化木炭の製造方法は、木材チップを450〜550℃で熱処理して炭化させる低温炭化工程と、低温炭化工程に引き続いて、木材チップの炭化物を800〜900℃、480〜960秒で熱処理して、さらに炭化させる高温炭化工程と、高温炭化工程の終了時点で、炭化物に水を接触させる活性化工程とを含む。
このような活性化木炭の製造方法としては、例えば、特開2000−226207号公報に開示された技術などが適用できる。
(ピッチコークス)
ピッチコークスは、コールタールや石油を蒸留して得られるピッチを原料にして製造されたコークスである。製鉄分野で使用されている材料である。
ピッチコークスは、炭素を主成分としており、木炭と同様の特性を有している。特に、炭素率98%以上のピッチコークスは、木炭と同等あるいは上回る特性を有している。
ピッチコークスは、木炭などに比べて安価である。
(活性炭)
活性炭は、木炭などを賦活することにより得られるものである。賦活方法としては、例えば、水蒸気賦活、薬品賦活その他の方法が挙げられるが、特に、水蒸気賦活が好ましい。
活性炭の原料としては、木炭、果実炭、石炭、ピッチコークスなどの公知の原料が使用できるが、特にヤシ殻を原料とするヤシ殻活性炭を用いることが好ましい。
水蒸気賦活は、例えば、1000〜1200℃において木炭などの原料に水蒸気を通じて行う。
薬品賦活は、例えば、木炭などの原料を乾燥後粉砕し、塩化亜鉛、リン酸、亜硫酸、アルカリなどの溶液に浸し、次いで、焼成、炭化して行う。不純物は水洗、除去しても良い。
その他の方法としては、例えば、木炭などの原料を、空気、二酸化炭素、塩素ガス中で加熱し、原料の一部を酸化する方法、炭を減圧下に強熱する方法、赤熱した炭を水、硝酸中に浸す方法などが挙げられる。
(竹炭)
竹炭は、竹材を焼成することで得ることができ、その焼成条件としては、特に限定されない。
例えば、焼成窯として、土窯が使用できる。焼成温度としては、500〜850℃が採用できる。焼成時間は42〜46時間程度とすることができる。焼成雰囲気は、通常、自然状態である。焼成工程の途中で温度などの条件を変えて焼成を行うこともできる。
(その他の炭)
上に述べた以外に黒鉛や石炭などの種々の炭を材料として用いることができる。
<キレート化材料>
本発明における「キレート化材料」は、鉄イオンをキレート化する働きを有する材料であればよく、該キレート化材料としては、キレート化成分を含有する材料を用いることができるほかに、キレート化成分そのものを用いることもできる。
キレート化成分を含有する材料としては、焼酎の滓、柑橘類の滓、稲や麦などのイネ科植物などが挙げられるが、以下に説明する、焼酎の滓や柑橘類の滓を用いることが特に好ましい。
焼酎滓は、焼酎の製造過程で生じる残渣である。通常、焼酎は、製麹、一次発酵、二次発酵、蒸留の工程を経て製造されている。まず、麦、サツマイモ、米などの原材料に麹菌を加えて培養し、麹が作られる(製麹)。麹をタンクなどで発酵させ、もろみが作られる(一次発酵)。もろみの中へ上述した原材料をさらに投入し、発酵させる(二次発酵)。二次発酵で生成した発酵液を蒸留し(蒸留)、焼酎が製造される。蒸留した後に残る残渣が、いわゆる焼酎滓と呼ばれるものである。焼酎滓は、蒸留した残りの液体と固形物との混合体からなる。
柑橘類の滓は、みかんなどの柑橘類の果実の絞り滓である。柑橘類の果実を原料として食品や飲料に加工する際に排出される滓が用いられる。
焼酎滓および柑橘類の滓は、海洋投棄や焼却などで処分されており、廃棄物として処理に苦慮しているものであるが、これらの滓を鉄キレート発生塗料や鉄キレート発生材の材料として有効に再利用することができる。このため、これら廃棄物の処理コストも低減され、循環型社会形成の推進にも寄与することとなる。
上記のごとき焼酎の滓、柑橘類の滓、稲や麦などのイネ科植物などにはキレート化成分が含まれているので、これらは、鉄キレートを生じさせるためのキレート化材料として、そのまま用いることができるが、上述のように、本発明における「キレート化材料」はキレート化成分そのものをいう場合も含むので、例えば、前記のごとき焼酎の滓、柑橘類の滓、イネ科植物などからキレート化成分を抽出・単離して用いる場合も、本発明の範囲に含まれる。
なお、上記におけるキレート化成分としては、特に限定されず、配位子を有し、鉄イオンに結合して錯体を形成するものであればよい。
カルボキシル基を2以上有する有機酸が好ましく挙げられる。このような有機酸としては、例えば、シュウ酸、ムギネ酸、クエン酸などが好ましく挙げられ、これらを1種または2種以上併用することができる。
<その他の塗料成分>
その他成分としては、ブドウ糖、焼成無機粉末、ワックス、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、乾燥調整剤などを挙げることができる。これらその他成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
特に、ブドウ糖を用いることが好ましく、ブドウ糖を用いることで、動物プランクトンの発生が顕著になり、ひいては魚介類の増殖が促される。
焼成無機粉末は、原料を焼成することで得られた無機粉末であり、その粒径が非常に小さな焼成無機微粒が好ましい。焼成無機粉末を用いることで、水質の還元化という利点がある。
焼成無機粉末は、炭の周囲に存在して、その機能を高めるものであり、高い相乗効果が期待できる。
焼成無機粉末として、具体的には、鉱物や粘土などの天然原料を焼成したセラミックやガラスなどを粉砕したものが用いられる。有機物と無機物とを含む原料を焼成することで、無機物だけを残したものでも良い。焼成無機粉末の焼成温度は、高いほうが好ましい。通常は、800℃以上の焼成温度が好ましい。高温焼成された無機粉末は、炭の機能を損なうことなく、相乗的な機能の向上を果たすことができる。
焼成無機粉末としては、例えば、平均粒径0.1〜0.5mmの焼成無機微粒が使用できる。
ワックスを用いることで、塗膜表面の耐磨耗性を向上させることができる。例えば、カルナバワックス、みつろう、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイド、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
<各成分の配合>
上記各成分を材料とする鉄キレート発生塗料を用いる場合、例えば、以下のような配合とすることが好ましい。
鉄粉の配合割合については、特に限定はないが、好ましくは造膜成分(固形分)に対して30〜50重量%であり、さらに好ましくは造膜成分(固形分)に対して30〜35重量%である。鉄粉の配合が30重量%未満であると、本発明の効果が十分に得られにくくなるおそれがある。他方、鉄粉の配合が50重量%を超えると、造膜性が阻害され塗膜を形成することが困難となるおそれがある。
炭粉の配合割合については、特に限定はないが、好ましくは造膜成分(固形分)に対して30〜50重量%であり、さらに好ましくは造膜成分(固形分)に対して30〜35重量%である。炭粉の配合が30重量%未満であると、本発明の効果が十分に得られにくくなるおそれがある。他方、炭粉の配合が50重量%を超えると、鉄粉の配合割合に対して炭粉の配合割合が相対的に過剰となり、鉄イオンの発生効率、ひいては鉄キレートの発生効率が低下するおそれがある。
キレート化材料の配合割合については、特に限定はないが、好ましくは造膜成分(固形分)に対して3〜10重量%であり、さらに好ましくは造膜成分(固形分)に対して3〜5重量%である。キレート化材料の配合が3重量%未満であると、鉄キレートが十分量発生しないおそれがある。他方、キレート化材料の配合が10重量%を超えると、造膜性が阻害され塗膜を形成することが困難となるおそれがある。
ブドウ糖の配合割合については、特に限定はないが、好ましくは造膜成分(固形分)に対して1〜10重量%であり、さらに好ましくは造膜成分(固形分)に対して1〜3重量%である。ブドウ糖の配合が1重量%未満であると、ブドウ糖配合による効果が得られないおそれがある。他方、ブドウ糖の配合が10重量%を超えると、高コストとなるおそれがある。
焼成無機粉末の配合割合については、特に限定はないが、好ましくは造膜成分(固形分)に対して5〜30重量%であり、さらに好ましくは造膜成分(固形分)に対して5〜10重量%である。焼成無機粉末の配合が5重量%未満であると、水質の還元力が弱くなるおそれがある。他方、焼成無機粉末の配合が30重量%を超えると、鉄粉と炭粉のバランスが不安定となるおそれがある。
また、上述したその他の塗料成分については、その配合量は特に限定されるものではない。
本発明の鉄キレート発生塗料は、後述のように、被塗装物として、例えば、竹、木杭などのような材料、海岸などの工作物、テトラブロックなどのコンクリートなどに好ましく適用されるものであるので、常温乾燥型が好ましく、したがって、例えば、ラッカータイプの塗料であることが好ましい。
本発明の鉄キレート発生塗料は、後述のように、特に、「水流に流されないようにして水中で留め置き可能な支持体」を被塗装物とすることで、海流や潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、容易に所定の位置に固定することができるのであるが、被塗装物はこれに限定されるものではない。例えば、海流や潮の満ち引きなどに水流によって流されるおそれのない場所であれば、砂利や河原石などを被塗装物としても良いのである。
本発明の鉄キレート発生塗料は、また、水中で塗膜が容易に溶解することが望ましく、かつ、近年の環境問題にも配慮し、水性塗料であることが好ましい。具体的には、前述した造膜成分、鉄粉、炭粉およびキレート化材料を水に分散させて得られたものが好ましい。
〔鉄キレート発生材〕
本発明にかかる鉄キレート発生材は、上記本発明にかかる鉄キレート発生塗料の好ましい使用形態であり、上記本発明にかかる鉄キレート発生塗料からなる塗膜を、水流に流されないようにして水中で留め置き可能な支持体に形成してなるものである。
<支持体>
「水流に流されないようにして水中で留め置き可能な支持体」とは、例えば、地面に打ち込み可能な杭(竹などの木杭や金属杭など)、護岸のために海岸、河岸、湖岸などに沿って設けられた工作物、漁網などの他、テトラブロックなどのコンクリートブロック、レンガなど、単に置くだけで自重により流されないようになっているものも含む。すなわち、自重により流されないようになっている場合、海流などで少し動くこともあるが、このような場合も含む概念である。
中でも、竹や木杭などは、重さはそれほど重くないため、運搬が容易であるとともに、その先端部が円錐、角錐といった形状を有しておれば、土中に打ち込むことにより水中に容易に留め置き可能であるため、好ましい。
支持体に鉄キレート発生塗料を塗布する際の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装法、エアー霧化静電塗装法、エアレス静電塗装法、刷毛やローラーによる直接塗装法、凸版印刷法、平版印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法など、従来公知の方法が採用できる。
乾燥膜厚は、例えば、0.2〜0.4mmとすることができる。
本発明にかかる鉄キレート発生材は、例えば、河川、湖沼、海の水中や底などに配置して用いることができる。水中で塗膜が溶解すると、炭よりも電気陰性度が低い鉄が酸化されて鉄イオンが溶出する。そして、この鉄イオンが、キレート化成分と錯形成して、鉄キレートとして、水中で安定的に存在することとなる。
鉄キレート発生材は、植物プランクトンの重要な栄養源である鉄イオンを持続的に供給するとともに、生じた鉄イオンは鉄キレートとして存在するので、イオン状態のまま安定に水中を漂うこととなる。これにより、食物連鎖の基礎である植物プランクトンが鉄イオンを摂取して増殖してゆき、これを餌とする水中生物の活性化を促して、結果として、水質環境を改善させるのである。
具体的には、例えば、植物プランクトンの増殖は、食物連鎖における第一消費者である動物プランクトンや水中生物の増殖、活性を促し、結果として、ヘドロなどの浄化および水産資源の増殖を促し、水質環境の改善をもたらす。
また、水質環境の改善により水生植物の増殖をも促し、そして、これらの水生植物および植物プランクトンは、光合成により酸素を排出するとともに、二酸化炭素を消費する。したがって、温室効果ガスとして地球温暖化の原因の1つとして考えられている二酸化炭素の減少にも寄与することとなる。
鉄キレート発生材の他の利用方法として、鉄キレート発生材を牡蠣や真珠貝などの貝類の養殖筏などに配置し、貝類の養殖に利用することもできる。鉄キレート発生材を養殖筏に配置しておけば、上述のように、鉄キレートが生成されるので、植物プランクトンが栄養源として鉄分を摂取でき、植物プランクトンの増殖が促進される。この植物プランクトンは、牡蠣や真珠貝などの餌として摂取されるので、このような貝類の養殖にも効果的に利用することができる。
〔水中の生物環境改善方法〕
本発明にかかる鉄キレート発生材を、河川、湖沼、海の水中や底などに配置して用いる水中の生物環境改善方法について説明する。
例えば、図1(a)に示すように、支持体11として地面に打ち込み可能な杭を用い、その表面に、鉄キレート発生塗料からなる塗膜12を形成してなる鉄キレート発生材10が挙げられる。このような鉄キレート発生材であれば、川底、湖底、海底などの地面30に打ち込んで固定することができるので、海流、潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、所望の位置での鉄イオン発生が可能である。
また、図1(b)に示すように、支持体21としてレンガを用い、その表面に、鉄キレート発生塗料からなる塗膜22を形成してなる鉄キレート発生材20も挙げられる。このような鉄キレート発生材であれば、単に置くだけで自重により流されないようになっているので、海流、潮の満ち引きなどの水流に左右されることなく、所望の位置での鉄イオン発生が可能である。
鉄キレート発生塗料からなる塗膜12、22は、支持体11、21表面の全体にわたって形成する必要はなく、例えば、図1(a)に示すように、支持体11における地面から突出した部分の一部に形成することとしても良い。
このような鉄キレート発生材は、例えば、水質を改善したい範囲の川底に、多数の鉄キレート発生材をマトリクス状に配置することができる。配置のし易さの観点からは、鉄キレート発生材の配置は、川底などが現れている時間帯あるいは水深が浅くなっている時間帯に行うと良い。鉄キレート発生材の配置間隔は、鉄キレート発生材の大きさや形状によるので、適宜調節すればよい。例えば、大きな鉄キレート発生材を用いる場合には、間隔を広めに配置すればよい。鉄キレート発生材の配置は、これらの配置手法に限定されるものではなく、水質を改善したい範囲に鉄キレートを十分に行き渡らせることができる限り、種々の配置手法が採用できる。
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。
〔実施例1〕(レンガを支持体とする鉄キレート発生材)
活性化木炭粉2.5部とアクリル樹脂15部を含む「チャコペイント」(商品名、日の丸産業社製)50部に、鉄粉15部、ピッチコークス粉15部、ヤシ殻活性炭粉15部、キレート化材料としての乾燥焼酎滓を0.75部、ブドウ糖0.75部、竹炭粉1.5部を加えて十分に混合し、鉄キレート発生塗料を得た。
次に、縦4cm×横5cm×厚み3cmで重さ12.69gのレンガに、前記鉄キレート発生塗料を、乾燥膜厚0.3mmで塗布し、鉄キレート発生材(1)を得た。
〔実施例2〕(木杭を支持体とする鉄キレート発生材)
図1(a)に示すごとく先端を円錐状に尖らせた直径5cm、長さ60cmの木杭に、上記実施例1で得られた鉄キレート発生塗料を、乾燥膜厚0.3mmで塗布することにより、鉄キレート発生材(2)を得た。
〔比較例1〕(鉄粉およびキレート化材料の両方を含まない塗料を塗布してなる木杭)
活性化木炭粉とアクリル樹脂を含む上述の「チャコペイント」(商品名、日の丸産業社製)を比較用塗料とし、この比較用塗料を、実施例2と同様の木杭に、乾燥膜厚0.3mmで塗布し、比較用の木杭(1)を得た。
〔比較例2〕(木杭そのもの)
実施例2と同様の木杭に何らの塗装処理も施さず、これを比較用の木杭(2)とした。

〔性能評価1〕
上記のようにして得られた鉄キレート発生材(1)を用いて、以下のとおりにして、水中の生物環境改善効果を評価した。
すなわち、まず、人工海水培地を入れた水槽を準備した。
ここで、人工海水培地とは、人工海水1Lに対し、下記試薬A〜Dを各1mLの割合で添加してなるものである。
(試薬A)
蒸留水100mLに、NaNOを7.5g、NaHPO・2HOを0.5g、NaSiO・9HOを3.0g溶解して調製したもの。
(試薬B)
下記試薬b900mLに下記試薬a5mLを加え、蒸留水で1Lとしたもの。
試薬a:蒸留水100mLに、CuSO・5HOを0.98g、ZnSO・7HOを2.2g、CoCl・6HOを1.0g、MnCl・4HOを18.0g、NaMoO・2HOを0.63g溶解して調製したもの。
試薬b:蒸留水900mLにNaEDTAを4.36g溶解して調製したもの。
(試薬C)
蒸留水100mLに、塩酸チアミンを0.1g、ビオチンを0.5mg、ビタミンB12を0.5mg溶解して調製したもの。
(試薬D)
10nMセレン溶液。

上記人工海水培地3Lを入れた水槽に、上記鉄キレート発生材(1)を設置した上で、該水槽に、珪藻Thalassiosira weissflogiiの前培養を30mL添加し、温度24℃、光周期を明12時間・暗12時間の実験条件の下、10日間にわたって静置して培養した。
そして、上記水槽について、植物プランクトン量の指標として汎用されるクロロフィル蛍光値を蛍光光度計「10−AU fluorometer」(Turner Designs社製)で毎日測定することで、その増殖特性を評価した。
なお、蛍光値を測定する際には、水槽をピペットで均一になるまで掻き混ぜた後、植物プランクトンの培養液4mLをねじ口試験管に採取した。培養液は、3本の試験管に採取し、それぞれについてクロロフィル蛍光強度を測定した。

また、比較のため、鉄キレート発生材を設置していない水槽、および、塩化第二鉄を11mMの濃度で添加した水槽において、上記と同様に培養と植物プランクトンの増殖特性の評価を行った。

<結果と考察>
上記性能評価1において、得られたクロロフィル蛍光値を培養日数に対してプロットした結果を図2に示す。
図2において、○印は上記鉄キレート発生材を設置した場合の結果を表しており、▲印は塩化第二鉄を11mMの濃度で添加した場合の結果を表しており、*印は鉄キレート発生材を設置していない場合の結果を表している。
図2に示す結果から明らかなように、本発明にかかる鉄キレート発生材の設置によって、植物プランクトンである珪藻の増殖を促進する効果が発揮されている。

〔性能評価2〕
上記鉄キレート発生材(2)、比較用の木杭(1)、比較用の木杭(2)のそれぞれを干潟に設置し、底質土壌の経時的な改善効果を評価した。
具体的には、12m×12mの区画に、等間隔に16本の木杭を配置した後、60日間にわたって、底質土壌の変化を調査する試験を行った。
12m×12mの区画における中心地点を測定地点とした。
底質土壌の変化は、硫化物量を測定することより行うこととし、詳しくは、上記各杭を設置している地点に近接する位置における硫化物量をブランクとし、該ブランクに対する硫化物量の相対比で評価した。
硫化物量が多いほど、底泥上の有機性沈降物が多く、底質が汚染されていることを意味する。これは、硫酸還元細菌が、硫酸塩を最終電子受容体として有機性沈降物を酸化し、その結果、硫化水素が生成されるとともに、この硫化水素が底質中の金属などと結合して硫化物が増加するからである。
硫化物量の測定は、硫酸酸性下で測定試料から硫化水素を追い出し、この硫化水素量を検知管によって測定するという方法を採用し、具体的には、以下のようにして行った。
検知管としては、「ヘドロテック−S用検知管No.201L」(目盛範囲:0.002〜0.020mg)または「ヘドロテック−S用検知管No.201H」(目盛範囲:0.02〜0.20mg)を用いた(いずれもガステック社製)。
測定試料0.5〜2gを正確に量りとり、少量の蒸留水でガス発生管に移し、キャップを取り付ける。
次に、上述した検知管の両端を、前記ガス発生管と吸引ポンプにつなぎ、ガス発生管に18N硫酸を2ml加えたのち、ガス発生管に発生した硫化水素をポンプレバーを引いて検知管に吸引する。
検知管の変色位置がとまるまでポンプ操作を繰り返し、変色層の先端で硫化水素量を読み取る。
検知管の読みと、S1:試料量(湿重量g)、S2:乾物%(100−含水率)とから、下式により硫化物量を算出する。
硫化物量S(mg/乾物g)=(検知管の読み)×100/(S1×S2)
<結果と考察>
性能評価2の結果を図3に示す。
図3に示す結果から、実施例2のキレート発生材(2)では、日数の経過とともに、杭なしのブランクに対する相対比が1を下回り(すなわち、自然状態であるブランクよりも硫化物量が低減されており)、かつ、この低減傾向が60日間にわたって維持されている。
これに対して、比較例1の木杭(1)は、杭なしのブランクに対する相対比が1近辺であり(すなわち、自然状態であるブランクと比較して硫化物量が低減されておらず)、また、比較例2の木杭(2)は、何らかの原因で杭なしのブランクに対する相対比が一旦1を下回る水準まで低下しているものの、その後、上昇に転じて、最終的には、やはり、1近辺(≒自然状態)に戻っている。
本発明は、鉄キレートの働きを利用するため、水中において鉄キレートを発生させる必要がある分野であれば、河川、池、湖、海、風呂、水槽、水の配管など各種の分野において使用することができる。
10、20 鉄キレート発生材
11、21 支持体
12、22 鉄キレート発生塗料からなる塗膜
30 地面

Claims (10)

  1. 造膜成分、鉄粉、炭粉およびキレート化材料を含む、鉄キレート発生塗料。
  2. 前記造膜成分がアクリル樹脂エマルションであり、水性塗料である、請求項1に記載のキレート発生塗料。
  3. 前記炭粉が、木炭、ピッチコークス、活性炭および竹炭から選ばれる少なくとも1種の粉体である、請求項1または2に記載の鉄キレート発生塗料。
  4. 前記木炭が活性化木炭である、請求項3に記載の鉄キレート発生塗料。
  5. ブドウ糖をも含むものである、請求項1から4までのいずれかに記載の鉄キレート発生塗料。
  6. 前記キレート化材料が、焼酎の滓(かす)および/または柑橘類の滓である、請求項1から5までのいずれかに記載の鉄キレート発生塗料。
  7. 請求項1から6までのいずれかに記載の鉄キレート発生塗料からなる塗膜を、水流に流されないようにして水中で留め置き可能な支持体に形成してなる、鉄キレート発生材。
  8. 前記支持体の形状が土中に打ち込み可能な形状である、請求項7に記載の鉄キレート発生材。
  9. 前記支持体が自重により容易に移動することのないものである、請求項7または8に記載の鉄キレート発生材。
  10. 請求項7から9までのいずれかに記載の鉄キレート発生材を水中で留め置く、水中の生物環境改善方法。
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