JP2005281607A - 藻生育塗料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 経済性、作業性を向上する共に、長期に亘る藻の生育効果を見込むことができる藻生育塗料を提供する。
【解決手段】 樹脂に多孔質材を含有させて多数の微細孔2aを有する多孔質塗膜2を形成する塗料であって、該塗料に、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、亜鉛、銅、及びマンガンもしくはこれらの化合物の中から選ばれた1又は2以上の混合物を栄養源として、また、陽イオン交換機能を有するゼオライトを含有させることによって、簡単に良好な藻4の生育や植物プランクトンの増殖を促進することができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、海岸の岩礁の磯焼けや河の珪藻生育不良により魚や海草の生育不良すなわち生態系不良の問題に対処するものであって、荒れた海及び河川に藻を生育させることにより環境を改善させる環境保護の技術分野に属する。
一般に、豊かな海・河川には、魚の生息に森林が深く係わっていることが知られている。森林から流れ出る水には、魚の餌となるプランクトンの繁殖に欠かせない栄養分、特にフルボ酸鉄という鉄分などが含まれている。一方、海水中にもフルボ酸鉄は存在するが、上記栄養分として十分な量ではない。これに対して、豊かな森林から流れ出る水には海水中に含まれる100〜1000倍ものフルボ酸鉄が含まれており、森林から海・河川への絶え間ない水の流入が豊かな海・河川を作っているといえる。
ところで、広葉樹の森が作り出す腐植土がフルボ酸鉄の生成に大きく関与しており、この腐植土の生成は自然の営みそのものにより行われ、人工的に作れるものではない。一方、腐植土が人工的に作れないのであれば、山に広葉樹林を造林するという方法があるが、この方法は時間が掛かりすぎるという問題がある。
一方、荒れた海・河川の環境を改善させるための対策として人工礁による試みが行われている。これは例えば、古くは廃船を沈めたもの、コンクリートブロック、間伐材、鉄工礁、ポーラスコンクリートの中に遊離する有機物質を詰めたものなどがある。
上記人工礁の例として、特許文献1に開示されいている植生ブロックは、多孔質のブロックに、フルボ酸鉄、栄養分を吸着させ、養殖池等でブロックに海藻類を活着、植生させる。そして、海藻類の生育の確認後、該ブロックを磯焼けした岩礁、藻場に投棄して、環境回復を図っている。
特開2003−116399号公報
しかしながら、これらの人工礁の試みは、効果があると期待できるものほどコストが掛かるという事実があり、特に工事性において課題がある。
特許文献1に記載の植生ブロックは、該ブロックに栄養分を吸着させ、海藻類を活着、植生させた後、磯焼けを起こしている岩礁、藻場に運搬しなければならず、作業性や作業効率が低いという問題がある。また、この植生ブロックは、ブロックに海藻類を植生させるまで待機する必要がある。さらに、自然活着、植生を図るためにフルボ酸鉄、栄養分を吸着させたブロックを投棄した場合には、ブロック表面に吸着させたフルボ酸鉄、栄養分等が水流により流れてしまい、海藻の生育の促進効果の持続性が低下する。
そこで、本発明は、経済性、作業性を向上する共に、長期に亘る藻の生育効果を見込むことができる藻生育塗料を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、樹脂に、活性炭、高温間伐木炭、瓦廃材、及び珪藻土の中から選ばれた1又は2以上を混合した多孔質材を含むことにより多孔質塗膜が形成されることを特徴とする。
次に、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の藻生育塗料において、樹脂に、活性炭、高温間伐木炭、瓦廃材、及び珪藻土の中から選ばれた1又は2以上を混合した多孔質材を含むことにより多孔質塗膜が形成されることを特徴とする。
次に、請求項3に記載の発明は、上記請求項1または請求項2に記載の藻生育塗料において、樹脂は、ポリアミドであることを特徴とする。
次に、請求項4に記載の発明は、上記請求項1から請求項3のいずれかに記載の藻生育塗料において、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、亜鉛、銅、及びマンガンもしくはこれらの化合物の中から選ばれた1又は2以上の混合物が栄養源として多孔質塗膜に含有されていることを特徴とする。
次に、請求項5に記載の発明は、上記請求項1から請求項4のいずれかに記載の藻生育塗料において、多孔質塗膜の微細孔に、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、亜鉛、銅、及びマンガンもしくはこれらの化合物の中から選ばれた1又は2以上の混合物が栄養源として吸着されていることを特徴とする。
次に、請求項6に記載の発明は、上記請求項1から請求項5のいずれかに記載の藻生育塗料において、陽イオン交換機能を有するゼオライトが多孔質塗膜に含有されていることを特徴とする。
次に、請求項7に記載の発明は、上記請求項1から請求項5のいずれかに記載の藻生育塗料において、多孔質塗膜の微細孔に、陽イオン交換機能を有するゼオライトが吸着されていることを特徴とする。
そして、請求項8に記載の発明は、上記請求項1から請求項7のいずれかに記載の藻生育塗料において、樹脂100重量部に対して、多孔質材、栄養源、及びゼオライトの少なくとも1つにより構成された添加物を5〜80重量部配合されることを特徴とする。
まず、請求項1に記載の発明によれば、海や河川における、磯焼けした岩礁や、テトラポット、魚場、防波堤、階段、イカダの足場等の藻を生育させたい場所に多数の微細孔を有する多孔質塗膜が形成される塗料を塗布することにより、または石、木、金属、コンクリートなどに上記塗料を塗布してこれらを水に投入・水没させることによって藻の自然活着及び生育を促進し、海や河川の環境回復を図ることができる。つまり、塗膜に形成された微細孔に水中に浮遊する藻の胞子や藻の栄養源を蓄積することができ、これにより藻の自然活着及び生育の促進を図ることができる。このように、本発明によれば藻を生やしたい場所に上記塗料を塗布するだけでよいので、大掛かりな工事・ブロック等の運搬などの作業は必要とせず、作業性に優れ、低コストな施工を実施することができる。
また、塗膜の多孔質性により透水性が確保され、その結果水流により塗膜が剥がれて水に流されることを抑制することができ、長期に亘る藻の生育促進効果の持続を図ることができる。
次に、請求項2に記載の発明によれば、活性炭、高温間伐木炭、瓦廃材、珪藻土の中から選ばれた1又は2以上を混合した多孔質体を資材としての樹脂に含ませることにより、多孔質塗膜を形成することができる。上記多孔質材は、多数の空隙を有する物質であり、これを樹脂に含ませることにより得られた塗膜には上記空隙が微細孔として形成される。
次に、請求項3に記載の発明によれば、ポリアミドは、水に対して安定で、藻の胞子が付着しやすいという特性を有するので、塗料の資材にポリアミドを採用することによって、より良好な藻の生育を図ることができる。また、ポリアミドは、強靭で耐摩耗性に優れているという特性もあり、塗料の耐久性を確保することができるという利点もある。
次に、請求項4に記載の発明によれば、塗料に鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、亜鉛、銅、及びマンガンもしくはこれらの化合物の中から選ばれた1又は2以上の混合物を栄養源(ミネラル源)として含有させることにより、微細孔から遊離した栄養源が水中に滲み出すことになり、藻の生育の促進をより一層高めることができる。一方、微細孔部分にない塗膜部分に含有された栄養源は、より一層、長時間に亘って徐々に水中に放出されることになる。
また、上記栄養源の鉄としてフルボ酸鉄を含むことによって、水中の植物プランクトンの増殖を促進することができる。同様に鉄として硫化鉄を含むことによって、硫化鉄は海水中の塩素成分と反応すると黒錆が発生し、この黒錆が藻の栄養源になる。さらに、上記栄養源として、バクハン石や阿蘇ミネラル土などが挙げられる。バクハン石は、愛知県や岐阜県等の古代地層から産出される天然石で、ミネラル成分の豊富さからミネラルウォータの基として用いられている。阿蘇ミネラル土は、阿蘇地方の古代地層から産出される天然土壌で、ミネラル成分が70種類ほど確認されている。
次に、請求項5に記載の発明によれば、多孔質塗膜の微細孔に、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、亜鉛、銅、及びマンガンもしくはこれらの化合物の中から選ばれた1又は2以上の混合物を栄養源として外部から吸着させることにより、上記請求項4と同等の効果が得られる。
次に、請求項6に記載の発明によれば、塗料に陽イオン交換機能を有するゼオライトを含有させることにより、塗膜近傍の水のpH値を調整することができる。すなわち、ゼオライト中の陽イオンは水溶液中で異なった陽イオンと接すると、これらを互いに交換するイオン交換機能を有している。陽イオン交換機能は、例えば、ゼオライトの結晶格子の中心部にある珪素(Si)の一部が、アルミニウム(Al)によって置換えられ、このときゼオライトは陽イオンの欠損が生じる。そして、その陽イオンの不足分をナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)の陽イオンを外部から取り込んで補う。このように、水中のイオンを任意に交換することによりpH値を変化させることができる。従って、塗料を塗布する場所の周辺の水のpH値を予め検出し、水が藻が最も生えやすいpH値になるように塗料に所定量のゼオライトを含有させることにより、藻の生育をより一層促進することができる。特に、ゼオライトの塩基置換容量は永久荷電と呼ばれ、周囲の環境に影響されずに長期間安定に維持される。
また、ゼオライトは、多孔質性を有する物質であり、これを塗料に含有させることによっては多孔質樹脂の多孔質性を阻害することがない。
次に、請求項7に記載の発明によれば、多孔質塗膜の微細孔に、イオン交換機能を有するゼオライトを吸着させることによって、上記請求項6と同等の効果が得られる。
そして、請求項8に記載の発明によれば、樹脂100重量部に対して、多孔質材、栄養源、及びゼオライトの少なくとも1つにより構成された添加物を5〜80重量部配合することにより、塗料の多孔質性、耐久性、藻の生育環境などをより良好なものとすることができる。このとき、添加物の配合を5重量部以下とすると、藻の栄養不足や塗膜の多孔質性などが不足することになり、一方、添加物の配合を80重量部以上とすると、樹脂ひいてはポリアミドによる塗膜の安定性、耐久性が十分に確保できないことになる。
[第1実施例]
塗料の調製
図1に示す配合で塗料を調製した。すなわち、第1実施例においては、ポリアミド300gに対して活性炭60gと鉄60g(鉄として60gを含む鉄化合物、以下同じ)とを含有させて練り込んで塗料Aを得た。
塗料の塗布
河川の護岸壁表面に、塗料Aを約300mm×300mmの領域に厚さ約1mmで一様にはけ塗りした。
藻生育実験
図2に示すように、塗布から14日後、コアマモ、アオノリなどの藻が塗膜表面に発芽し始めると共に、緑藻、ケイ藻等の植物プランクトンなどが塗膜表面に付着し始めたことが確認された。塗布から75日後、上記藻が塗膜表面の中央部を除く一面に発芽生育が確認され、また、塗膜上の一面に上記植物プランクトンが付着したことが確認された。塗布から125日後、塗膜表面一面が上記藻でフサフサした状態になった。
実験の状態を図3に基づいて説明すると、護岸壁1の表面に形成された塗膜2は、活性炭を含むことにより多数の微細孔2a…2aを形成しており、この微細孔を介して塗膜に含有される栄養源としての鉄が水3側に滲み出す(矢印A参照)。その結果、塗膜2の表面に付着した藻4の胞子が上記栄養源を採取して、藻4の発芽生育が促進される。さらに、上記鉄は、植物プランクトンの餌でもあるから、塗膜表面に付着した植物プランクトンは、鉄を採取して増殖し、塗膜表面に堆積することになる(図3において、植物プランクトンの堆積物に符号5を付す)。
一方、ポリアミド300gに対して活性炭と鉄との合計重量を240g以下としたときには、水流に耐え得る耐久性を有した塗膜が得られることが確認された。また、活性炭を5〜235gに変化させて実験を行ったが、活性炭が少なくなるほど藻の発芽密度が減少する傾向にあったが、この場合でも期間を経ると塗膜表面一面において藻が生育し、植物プランクトンが堆積することが確認された。一方、鉄を5〜235gに変化させて実験を行った。このとき、鉄が少なくなるほど藻の発芽時期が遅くなり、生育速度が減少する傾向にあったが、この場合でも期間を経ると同様に塗膜表面一面において藻が生育し、植物プランクトンが堆積することが確認された。
なお、多孔質材として、高温間伐木炭、瓦廃材、または珪藻土及びこれらの混合物を使用したときも、多孔質性が向上して良好な藻の生育が確認されている。
[第2実施例]
塗料の調製
図1に示す配合で塗料を調製した。すなわち、第2実施例においては、ポリアミド300gに対して活性炭60gとリン60g(リンとして60gを含むリン化合物、以下同じ)とを含有させて練り込んで塗料Bを得た。
塗料の塗布
上記第1実施例と同様に塗料Bを塗布した。
藻生育実験
塗布から15日後、コアマモ、アオノリなどの藻が塗膜表面に発芽し始めると共に、緑藻、ケイ藻等の植物プランクトンなどが塗膜表面に付着し始めたことが確認された。塗布から88日後、上記藻が塗膜表面の中央部を除く一面に発芽生育が確認され、また、塗膜上の一面に上記植物プランクトンが付着したことが確認された。塗布から141日後、塗膜表面一面が上記藻でフサフサした状態になった。
また、塗料に含有させる栄養分としては、上記第1実施例の鉄に限らず、本実施例で使用したリンの他、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、銅、及びマンガンもしくはこれらの化合物の中から選ばれた1または2以上の混合物を使用しても、藻の発芽時期、藻の生育速度などに差はあったが、良好に藻が生えたことが確認されている。さらに、フルボ酸鉄を含有する広葉樹林の腐植土、またはミネラル源を多く含有するバクハン石や阿蘇ミネラル土、及びフルボ酸鉄、窒素、リン、カリウム、ミネラル源を含有する牛糞完熟堆肥を栄養源として使用した場合でも、藻の発芽生育及び植物プランクトンの堆積が確認された。
[第3実施例]
塗料の調製
図1に示す配合で塗料を調製した。すなわち、第3実施例においては、ポリアミド300gに対して活性炭60gと鉄60gとゼオライト60gとを含有させて練り込んで塗料Cを得た。
塗料の塗布
上記第1実施例と同様に塗料Cを塗布した。
藻生育実験
図2に示すように、塗布から10日後、コアマモ、アオノリなどの藻が塗膜表面に発芽し始めると共に、緑藻、ケイ藻等の植物プランクトンなどが塗膜表面に付着し始めたことが確認された。塗布から67日後、上記藻が塗膜表面の中央部を除く一面に発芽生育が確認され、また、塗膜上の一面に上記植物プランクトンが付着したことが確認された。塗布から102日後、塗膜表面一面が上記藻でフサフサした状態になった。
この実施例においては、実験の前に予め塗布箇所近傍の水のpH値を検出しており、藻の生育に適したpHよりもアルカリ性であることが確認された。そこで、塗料に、所定のイオン交換機能によりpH値を下げる効果を有するゼオライトを含有させることにより、塗膜近傍の水のpH値を藻の生育に適したものに変化させることに成功したと考えられ、これにより上記第1、第2実施例の場合よりも藻の早期発芽及び早期生育が実現されたと考えられる。
なお、栄養源及びゼオライトは、ポリアミドと多孔質材によって形成された多孔質塗膜に外部から吸着させたときでも、上記第1〜第3実施例の予め含有させて練り込んだときと同様に良好な藻の生育促進作用が得られた。また、上記第1〜第3実施例に示した塗料は、河川に限らず海においてテトラポット等に塗布した場合でも良好な藻の生育を促進することが確認されている。
本発明は、経済性、作業性を向上する共に、長期に亘る藻の生育効果を見込むことができる藻生育塗料を提供する。本発明は、海岸の岩礁の磯焼けや河の珪藻生育不良により魚や海草の生育不良すなわち生態系不良の問題に対処するものであって、荒れた海及び河川に藻を生育させることにより環境を改善させる環境保護の技術分野に広く好適である。
本発明の実施例で調製した塗料における各配合量を示す表である。 藻生育実験の結果を示す表である。 藻の生育状態を示す説明図である。
符号の説明
2 多孔質樹脂
2a 微細孔

Claims (8)

  1. 多数の微細孔を有する多孔質塗膜が形成されることを特徴とする藻生育塗料。
  2. 樹脂に、活性炭、高温間伐木炭、瓦廃材、及び珪藻土の中から選ばれた1又は2以上を混合した多孔質材を含むことにより多孔質塗膜が形成されることを特徴とする請求項1に記載の藻生育塗料。
  3. 樹脂は、ポリアミドであることを特徴とする請求項2に記載の藻生育塗料。
  4. 鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、亜鉛、銅、及びマンガンもしくはこれらの化合物の中から選ばれた1又は2以上の混合物が栄養源として多孔質塗膜に含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の藻生育塗料。
  5. 多孔質塗膜の微細孔に、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、亜鉛、銅、及びマンガンもしくはこれらの化合物の中から選ばれた1又は2以上の混合物が栄養源として吸着されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の藻生育塗料。
  6. 陽イオン交換機能を有するゼオライトが多孔質塗膜に含有されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の藻生育塗料。
  7. 多孔質塗膜の微細孔に、陽イオン交換機能を有するゼオライトが吸着されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の藻生育塗料。
  8. 樹脂100重量部に対して、多孔質材、栄養源、及びゼオライトの少なくとも1つにより構成された添加物を5〜80重量部配合されることを特徴とする請求項2から請求項7に記載の藻生育塗料。

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