JP2012052469A - NOx吸放出材、排気ガス浄化触媒及び排気ガス浄化システム - Google Patents

NOx吸放出材、排気ガス浄化触媒及び排気ガス浄化システム Download PDF

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Abstract

【課題】NOxとHCのトレードオフを解消し、NOやNH生成を抑制し、耐硫黄性にも優れる排気ガス浄化触媒を実現し得るNOx吸放出材、これを用いた排気ガス浄化触媒及び排気ガス浄化システムを提供すること。
【解決手段】空燃比(A/F)がリーンのときにNOxを吸収し、空燃比がストイキ乃至リッチのときにNOxを放出するNOx吸放出材である。リーンのときにKTi17で表される組成、ストイキ乃至リッチのときにKTiで表される組成を有するチタン酸カリウム含む。排気ガス浄化触媒は、NOx吸放出材に触媒金属を担持して成る。
排気ガス浄化システムは、エンジン40の排気系50に設置されたNOx触媒10と、熱交換型水素生成器21、熱交換機22及び水素タンク23を有する空燃比制御手段20を備えている。NOx触媒10はNOx吸放出材を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、NOx吸放出材、排気ガス浄化触媒及び排気ガス浄化システムに係り、更に詳細には、排気ガスの空燃比がリーン時にNOxを吸収し、ストイキ乃至リッチ時にNOxを放出するNOx吸放出材、これを用いた排気ガス浄化触媒及び排気ガス浄化システムに関する。
本発明のNOx吸放出材は、排気ガスの浄化、特にリーン・バーンで運転する内燃機関からの排気ガスを有効に浄化するのに好適に使用できる。
近年、地球環境に対する配慮から、二酸化炭素(CO)排出量の低減が叫ばれており、自動車の内燃機関の燃費向上を目的に各種の方策が試みられている。希薄燃焼化(リーン・バーン化)はその最も有効な方策の一つである。
しかしながら、ガソリンのリーン・バーンエンジン、直噴エンジン、更にはディーゼルエンジンからの排気ガスには、酸素が多く含まれており、従来の三元触媒では、窒素酸化物(NOx)を還元浄化することができない。特に、ディーゼルエンジンからの排気ガスを効率良く浄化するための種々の技術開発が進められている。
一つの有効な方法は、NOxトラップ触媒の使用であり、このNOxトラップ触媒は、流入する排気ガスの空燃比(A/F)がリーンのときには排気ガス中のNOxをトラップし、流入する排気ガスのA/Fがストイキ(理論空燃比)又はリッチのときにはトラップしたNOxを放出し、還元するものである。したがって、NOxトラップ量がその容量を超える前に排気ガスのA/Fをストイキ乃至はリッチとすることにより、トラップしたNOxは放出され、還元される。
このとき、排気A/Fのリッチの度合いを高めることにより、排気ガス中の還元剤(水素(H)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC))を増加させることができ、NOxの還元浄化率を高めることができる。しかし、この一方で、余剰の還元剤、特に余剰のHCがNOx還元に消費されずに放出されると、これが排気を悪化させる要因になる。
また、上述のように還元剤を増加すべく、排気ガスの空燃比を急激に理論空燃比乃至はリッチとすることは、運転性及び燃費の悪化を起こすために、好ましくない。
そこで、NOx還元に対して、より有効な還元剤、特に水素を活用する試みがなされている。たとえば、排気中のHC成分の水蒸気改質反応、COのシフト反応などを促進させてHを生成する機能を強化する触媒が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、十分な反応速度を得るためには素早い熱量供給が求められる、すなわち高温条件を要することになるので、実際の運転モード条件下では十分なNOx浄化効果が得られるとは言い難い。一方、COシフト反応は、低温ほど平衡的に有利になるが、反応速度が遅くなるため、現状の低温活性触媒でも十分な反応速度は得られていない。
また、内燃機関の運転中は条件変動により水分とHC成分、COとの比率が目まぐるしく変化するため、比較的低い水分比率の条件にも対応する必要が生じる。
一方、排気ガスの空燃比をリッチ化する手段によりNOx還元浄化率を高める場合、排気悪化要因となる未反応のHCを除去するための触媒を追加設置する方法も提案されている。
例えば、1つの有効な方策として、HC吸着触媒を設置する方法も提案されている(特許文献3参照)。これは、リーンバーンエンジンの排気管にHC吸着触媒とNOx吸着触媒の双方を設けて、HC吸着触媒とNOx吸着触媒の温度がそれぞれ所定値に達したら、エンジンの空燃比をリーンになるように制御することで脱離HCを効率的に浄化するとともに、この時のNOxは吸着(吸蔵)後に浄化することが記載されている。
即ち、この提案では、吸着したHCをリーンシフトによる過剰酸素を用いて酸化することにより浄化しており、触媒を追加することで対応しているのである。
また、別の方策として、HC吸着材と水蒸気改質触媒を組み合わせ、理論空燃比の酸素の少ない条件でも、水を使ってHCを浄化する方法が提案されている(特許文献4参照)。
この方法では、炭化水素吸着材層とその表面に形成された触媒層とから成り、触媒層に、少なくともジルコニアを含む担体にロジウムを担持した触媒を含ませた排ガス浄化用触媒が提案されている。
この触媒は、HC吸着材層の厚さを厚くすることなく、触媒層に担持されている触媒金属が活性化するまでの間に排出されるHC量を低減する目的で提案されており、Rh/ZrO触媒がHCの水蒸気改質を促進し、HとCOを生成することにより、HCとしての排出が抑制されることが記載されている。
しかしながら、この提案においては、HCとしてメタンを用いた低空間速度(GHSV)でのモデル実験では良好な結果が示されているものの、エンジン評価では、理論空燃比付近(A/F=13.5〜15.5)での運転で三元触媒を用いると、HCの脱離浄化性能は40%程度と比較的低い。また、NOx還元浄化性能が不明である。更には、NOxトラップ触媒とHC吸着触媒との組み合わせの効果も不明である。
以上の提案では、いずれにしても内燃機関(エンジン)を還元剤の供給器として用いていることから、排気触媒の入口ガス条件はエンジンの運転条件に左右されるため、HC成分からのH生成効率は必ずしも高くはならない。
これに対して、排気系とは独立した別のH生成系を持つことで、燃料改質条件に対して高い制御性を確保して高いH生成効率を実現し、燃料消費量の最小限化及び高NOx浄化率を実現しようとする試みがある。この場合は、エンジンの運転性低下、トルク変動などを起こさないという利点もある。
たとえば、特許文献5では、Rh系触媒を用い、燃料に対する酸素の比率を特定値以下とすることにより生成した低CO含有改質Hガスを還元剤とすることで、200℃以下の低排気温度条件でもNOxトラップ型触媒を用いて高いNOx浄化率が得られるとしている。
を還元剤としてNOxトラップ型触媒を使う方法は、HC,CO排出のトレードオフを生じないため非常に有効と考えられ、実用化に向けて多くの検討がなされてきた。しかし、その過程で、新たな問題点も明確になってきた。
たとえば、実機においては、HCとして多種の成分が存在し、その中にはHの作用を妨害するものも存在することがわかってきた。上記特許文献5における触媒評価は、ラボモデルガスによるものであり、HCとしてはCを共存させているのみで、多種のHC種が共存している実排気ガスの条件とは乖離している。
また、Hを還元剤とする場合、特に、350℃未満の比較的排気温度の低い条件下では、NOxがNにまで還元されず、NOが生成すること、更には、NHの生成も起こり得ることもわかってきた(非特許文献1)。また、ディーゼルエンジンにNOxトラップ型触媒を適用する場合には、依然として硫黄被毒の本質的問題が存在している。
特許第3741303号公報 特許第4441845号公報 特開2003−206758号公報 特開2002−282697号公報 特開2002−106338号公報
川村,佐藤,野内,長沼,山根,高木,自動車技術会学術講演前刷集,No.82−08,399−20085257(2008)
上述のように、NOxトラップ触媒を用いる方法には、NOxとHCのトレードオフの問題があり、その解決策として検討されている車上生成Hを還元剤とする方法にもNOやNH生成の問題があり、更には硫黄被毒の問題は避けられない。
このため、排気ガスの高度クリーン化のためには、燃費悪化、触媒容量及び触媒量の増加を免れなかった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、NOxとHCのトレードオフを解消し、NOやNH生成を抑制し、耐硫黄性にも優れる排気ガス浄化触媒を実現し得るNOx吸放出材、これを用いた排気ガス浄化触媒及び排気ガス浄化システムを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、リーン時、ストイキ乃至リッチ時に所定組成を採る特定のチタン酸カリウムが優れたNOx吸放出性を発揮することを知見し、これを用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のNOx吸放出材は、排気ガスの空燃比(A/F)がリーンのときにNOxを吸収し、空燃比(A/F)がストイキ乃至リッチのときにNOxを放出するNOx吸放出材である。
このNOx吸放出材は、空燃比(A/F)がリーンのときにKTi17で表される組成を有し、且つストイキ乃至リッチのときにKTiで表される組成を有するチタン酸カリウム含むことを特徴とする。
また、本発明の排気ガス浄化触媒は、上述のようなNOx吸放出材に触媒金属を担持して成ることを特徴とする。
更に、本発明の排気ガス浄化システムは、上述の如き排気ガス浄化触媒と、この排気ガス浄化触媒の入口における排気ガスの空燃比(A/F)を変動させる空燃比制御手段を備える。
この排気ガス浄化システムでは、排気ガスの空燃比(A/F)がリーン条件のときに上記排気ガス浄化触媒にNOxを吸収させ、次いで、該排気ガス浄化触媒の入口に上記空燃比制御手段から水素(H)を供給して空燃比(A/F)を変動させることにより、吸収させたNOxを浄化することを特徴とする。
本発明によれば、リーン時、ストイキ乃至リッチ時に所定組成を採る特定のチタン酸カリウムを用いることとしたため、NOxとHCのトレードオフを解消し、NOやNH生成を抑制し、耐硫黄性にも優れる排気ガス浄化触媒を実現し得るNOx吸放出材、これを用いた排気ガス浄化触媒及び排気ガス浄化システムを提供することができる。
本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す構成図である。 実施例及び比較例の触媒のNOx飽和吸収量を示したグラフである。 実施例及び比較例の触媒のリーン/リッチ切り替え時によるNOx還元浄化率を示したグラフである。 実施例及び比較例の触媒のSO暴露処理前後のリーン/リッチ切り替え時によるNOx還元浄化率を示したグラフである。 硝酸カリウムを担持乃至はNOxを吸収した後のNOx吸放出材のXRDチャートである。 NOxを放出・還元した後のNOx吸放出材のXRDチャートである。
以下、本発明のNOx吸放出材について説明する。
上述の如く、このNOx吸放出材は、排気ガスの空燃比(A/F)がリーンのときにNOxを吸収し、空燃比(A/F)がストイキ乃至リッチのときにNOxを放出するNOx吸放出材である。
また、空燃比(A/F)がリーンのときにKTi17で表される組成を有し、且つストイキ乃至リッチのときにKTiで表される組成を有するチタン酸カリウム含む。
ここで、このチタン酸カリウムとしては、排気ガスの空燃比(A/F)がリーンで且つNOxが存在するとき、上記チタン酸カリウムが、次式(1)
Ti17・αKNO…(1)
(式中のαはKNOのモル数を示す。)で表される組成を有する。ここで、式中のαは0.8〜5.0であることが好ましく、更には、0.8〜4.0であることが好ましい。
αが0.8未満では、NOx吸収や還元性能が不十分となり、5.0を超えると、耐硫黄被毒性が悪化することがある。
なお、(1)式で表されるチタン酸カリウムにおけるKNOの比率は、以下のようにして質量比(質量%)に換算することができる。
質量%=13.8α/(1+0.138α)
よって、この関係から、α=0.8〜4.0は10〜35質量%に相当する。
かかるチタン酸カリウムが、低温域、具体的には150℃程度から優れたNOx吸放出性能を発揮することの詳細は必ずしも明らかではないが、現時点では以下のようなメカニズムによるものと考えられる。
即ち、このチタン酸カリウム化合物は結晶格子中に空孔を有し、周囲雰囲気、具体的には空燃比の変動に応じて結晶構造の変化を起こし、それに伴って、カリウム(K)が当該空孔に出入りする。このKの移動がNOxの吸放出を促進するものと考えられる。
なお、このチタン酸カリウムが(1)式で表される組成を有する場合には、かかるKの移動により結晶表面に出てきたKは硝酸塩(KNO)部分で分解されるので、上記の空孔に入り易くなり、これに応じてNOxの吸収性が向上し、この結果、更に良好なNOx吸放出性能が発揮されるものと思われる。
また、このようなKTi17へのKNO担持により高いNOx吸収容量を実現するとともに、上記A/F変動による構造変化の応答性を高め、吸収NOxの放出・還元処理を促進できるものと考えられる。
また、このチタン酸カリウムは、通常、チタニアナノチューブないしはチタニアナノベルトと称される薄膜状材料であるため、外表面積の割合が極めて高く、しかも上述のようなNOx吸放出に関与する、いわゆる活性点が分散性をもって材料表面に存在するため、反応ガス成分の拡散性・接触性が良好となり、触媒の有効利用効率が高くなる。このような点からもNOx吸放出性が促進されるものと思われる。
更に、このチタン酸カリウムの有するNOxの捕捉性及び放出特性に由来して、このチタン酸カリウムに触媒金属を担持させた排気ガス浄化触媒は、低温から優れたNOx吸収、放出、還元性能を発揮し、例えば、Hを還元剤とした場合、200℃未満の低排気温度条件下でもNOやNHの生成することなく、効果的にNOxを還元浄化できる。
また、このチタン酸カリウムは、従来公知のNOx吸放出材、具体的には、酸化バリウムなどのアルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物よりも、耐硫黄被毒性に優れており、特に内燃機関のリーンバーン運転やディーゼルエンジンからの排気ガスを浄化するのに適している。
なお、この優れた耐硫黄被毒性は、ベース材料であるチタニアが硫黄と安定な化合物を形成し難いという特性を持つことに起因するものと思われる。
上述のチタン酸カリウムは、酸化チタン(TiO)粉末(好ましくはアナターゼ型とルチル型の混合物)を水酸化カリウム(KOH)水溶液と共にオートクレーブ中で水熱処理し、得られた固体生成物をろ過し、水洗、乾燥して得られる。
また、得られたチタン酸カリウム(KTi17)へのKNOの添加、担持((1)式参照)は、該チタン酸カリウムを硝酸カリウム(KNOの)の水溶液に浸し、撹拌、混合、乾燥、焼成することによって行うことができる。
かかるチタン酸カリウムは、X線回折分析において、2θ=23.6゜29.5゜、32.7゜、43.0゜、47.8゜近傍に特徴的な回折ピークを有する。
本発明のNOx吸放出材は、以上に説明したようなチタン酸カリウムを含むことを条件とし、当該チタン酸カリウムのみから構成されていてもよいが、他の成分を含めることも可能である。
ここで、他の成分としては、他のNOx吸放出材を挙げることができ、具体的には、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物又は希土類金属酸化物及びこれらの混合物に係る酸化物、代表的には、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、セリウム(Ce)、セシウム(Cs)、及びサマリウム(Sm)などの酸化物を使用することができる。
なお、この場合、チタン酸カリウムと他のNOx吸放出材との混合比は、適宜変更できるが、代表的には、チタン酸カリウムが70〜100質量%に対し、他のNOx吸放出材30〜0質量%程度である。
他のNOx吸放出材が30質量%を超えると、耐硫黄被毒性に悪影響を及ぼす可能性がある。
次に、本発明の排気ガス浄化触媒について説明する。
この排気ガス浄化触媒は、上述の如きチタン酸カリウムと、触媒金属を含有するものである。
ここで、触媒金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、鉄(Fe)又はコバルト(Co)、及びこれらの混合物を挙げることができる。
なお、従来、通常の三元触媒やNOxトラップ触媒においては、ストイキを挟んで比較的広いA/F領域においても十分に高いNOx転化率を発揮するためには、Rhが必須成分とされていたが、本発明によれば、Ptのみでも比較的高いNOx還元率が得られるため、Rhの使用量を無くすか又は減らすことができる。
本発明の排気ガス浄化触媒は、上記のチタン酸カリウムと触媒金属を含有するものであり、この2成分のみから構成されていてもよいが、他の成分を含んでもよいのはいうまでもない。
例えば、アルミナなどの無機多孔質基材(多孔質担体)や、セリアやジルコニアなどの触媒助剤を用いることができ、更には、セラミックス製や金属製のモノリス型ハニカム担体などの一体構造型担体を用いることもできる。
この排気ガス浄化触媒は、上述のようにして得られたチタン酸カリウム粉末を触媒金属の水溶液に浸し、撹拌、混合、乾燥、焼成することにより製造することができ、これにより、チタン酸カリウムに触媒金属が担持される。
チタン酸カリウムに予めKNOを付加していない場合、チタン酸カリウム粉末を、触媒金属と硝酸カリウム(KNO)の混合水溶液に浸し、撹拌、混合、乾燥、焼成すれば、触媒金属とKNOをチタン酸カリウムに担持することができる。
なお、本発明の排気ガス浄化触媒は、通常は粉末形態で調製に供され、典型的には、モノリス型触媒担体上に担持して使用される。
本発明の排気ガス浄化触媒は、通常のNOxトラップ型触媒と同様に使用することが好ましいが、三元触媒と同様の使い方もできる。
本発明の排ガス浄化触媒の効果的な使用法としては、排気ガス空燃比(A/F)がリーン条件のときに該触媒にNOxを吸収させ、NOx吸収量が飽和に達する前に該触媒入口にHを供給することにより排気ガス空燃比(A/F)を変動させ、吸収したNOxを放出し、還元浄化する手法を例示することができる。
この使用方法によれば、供給する還元剤量を必要最小限に抑えることができ、余分なHC、COを生成しないで済むため、他の触媒の追加が不要であり、燃費及びエンジンの運転性に対する悪影響が極めて小さい。
上述の効果的な使用方法において、排気ガスA/Fがリーン条件のときに上記触媒にNOxを吸収させた後、Hを該触媒入口に供給することにより、排気ガスA/F条件をストイキ乃至リッチに制御することが更に好ましい。
かかるA/F制御は、この排気ガス浄化触媒が設置される内燃機関の吸気制御やH添加により行うことができるが、両者を併用してもよい。
この場合、HC、CO成分が排気ガス浄化触媒に流入し、HによるNOx還元を阻害することがあるため、当該排気ガス浄化触媒の上流側にHC成分を除去する機能材料を配設することが好ましい。この機能材料には、HCを酸化する機能を持たせることも有効である。更には、吸着したHC成分からHを生成する機能材料を組み合わせることも効果的である。
次に、本発明の排気ガス浄化システムについて説明する。
本発明の排気ガス消化システムは、上述の如き排気ガス浄化触媒と、この排気ガス浄化触媒の入口における排気ガスの空燃比(A/F)を変動させる空燃比制御手段を備える。
この排気ガス浄化システムでは、排気ガスの空燃比(A/F)がリーン条件のときに上記排気ガス浄化触媒にNOxを吸収させ、次いで、該排気ガス浄化触媒の入口に上記空燃比制御手段から水素(H)を供給して空燃比(A/F)を変動させることにより、吸収させたNOxを浄化する。
ここで、空燃比制御手段としては、水素(H)を供給でき上記排気ガス浄化触媒の入口での空燃比(A/F)を変動させることが可能な限り特に限定されるものではなないが、内燃機関の排気系とは別の系から水素(H)を供給できる水素供給手段、例えば、改質触媒を備えた燃料改質器、部分酸化反応器のような水素生成供給手段や水素ボンベなどの他、内燃機関の吸気制御手段などを挙げることができる。
内燃機関の吸気制御手段において、通常は、内燃機関を加速すると空燃比はリッチ化され、減速するとリーン化される。
これらの空燃比制御手段は、単独で又は組み合わせて使用することができ、例えば、リッチ条件で比較的多く生成するCOを共存水分と反応させて水素を生成することのできるシフト反応器を内燃機関の吸気制御手段と併用することは効果的である。
かかる水素供給手段としては、上記の空燃比(A/F)をストイキ乃至リッチに制御できるものが好ましい。これにより、上述のNOx吸放出材の機能を十分に発揮させることができ、高いNOx浄化率を実現できる。
上述のように、本発明の排気ガス浄化システムでは、Hを排気ガス浄化触媒入口に供給して空燃比制御を行う。
はクリーン且つ効率的な還元剤である。このため、必要最小限の還元剤量で効率的なNOx放出・還元処理が可能になり、実際の過渡的な運転条件において余分な量の還元剤が触媒に供給されても、余分なHC、COを生成しないため、触媒の追加などが不要となる。従って、燃費及びエンジンの運転性に対する悪影響もほとんど与えない。
上記空燃比制御手段として水素供給手段と内燃機関(エンジン)の吸気制御を併用することは有効であるが、この場合、HC、CO成分が残留することがある。特に、HC成分はHによるNOx還元を阻害することも予想されるため、排気系における排気ガス浄化触媒の上流側にHC成分を除去するHC除去手段を付加することが好ましい。
かかるHC除去手段としては、HC成分を除去する機能材料として公知のゼオライトを含む手段を挙げることができる。
このようなHCトラップ材としては、HCを吸収・脱離できれば特に限定されるものではないが、シリカ/アルミナ比が20以上60未満のMFIゼオライト及びβゼオライトの少なくとも一方を好適に用いることができる。
また、上記HCトラップ材には、HCを酸化する機能を持たせることも効果的であり、このためには、Fe、Coのような遷移金属や、Pt、Pdなどの貴金属の担持が有効である。
更には、吸着したHC成分からHを生成する機能材料を組み合わせることも効果的であり、セリア(CeO)やジルコニア(ZrO)などをベースとしてRhを担持した触媒材料を組み込むことができる。
なお、本発明の排気ガス浄化システムにおいては、空燃比制御手段としてEGR(排気ガス循環)装置と吸入空気可変装置の組み合わせを用いることが可能であり、この両装置をH供給のタイミングと同調させて作動させる手法も効果的である。
この場合、特許第3918402号に開示されている予測制御に基づいて排気中のO濃度をより細かく制御することができるため、高いNOx還元浄化率を実現できる。
また、空燃比制御手段として、排気ガス中の酸素濃度を計測しながら排気ガス浄化触媒入口に二次空気を導入する手段も用いることができ、上述の如く、これらの手段は適宜組み合わせて用いることも可能である。
この方法は、例えば、排気温度が低く、排気ガス触媒が作動し難い場合に有効であり、供給したHの一部を効果的に燃焼させて触媒層温度を部分的に高めることにより、触媒を活性化させたり、HCやCOのHへの変換を促すことができ、NOxのみならずHC、COも含めて総合的な排気クリーン化が実現できる。
上述の如く、本発明の排気ガス浄化システムは、所定のNOx吸放出材を含む排気ガス浄化触媒と、該触媒入口に水素を供給して空燃比(A/F)を変動させる空燃比制御手段とを必須の構成手段とするが、これ以外にも各種手段を付加することが可能である。
例えば、排気ガス浄化触媒のNOx吸収量を予測し又は計測する手段を設けることができ、規定吸収量を超えた時点で、排気ガスの空燃比を理論空燃比又はリッチにし、且つ排気O濃度を上記のように制御することにより、NOxの効果的還元浄化のみならず流入排気中のHC、COの転換を促進することができる。
また、上記のHC除去手段としてHCトラップ材を用いる場合には、HCトラップ量を予測し又は計測する手段を設けてもよく、規定トラップ量を超えた時点で、排気ガスの温度に応じて排気空燃比を制御してHCを脱離、変換させることが可能である。
更に、上記のNOx吸収量の予測・計測手段とこのHCトラップ量予測・計測手段を併設することにより、還元浄化すべきNOx量と酸化浄化すべきHC量との収支を合致させることが可能となり、極めて効率的に、NOx、HC及びCOの処理を行うことができるようになる。
なお、上記のNOx吸収量予測・計測手段、HCトラップ量予測・計測手段としては、特に限定されるものではないが、触媒量、トラップ材種、トラップ材量、機関回転数、アクセル開度、負荷、排気ガス温度・ガス量などのパラメータを関連付けた特性マップを格納したCPUを備えた制御システム装置等を例示することができる。
また、本発明では、NOx及びHCを放出・浄化するタイミングも重要となるが、通常、HCの放出は、当該HCトラップ材のHC脱離温度以上に加熱することにより行う。よって、HCの脱離タイミングを制御すべく、HCトラップ材の温度制御手段を設けることが好ましい。
かかるHCトラップ材の温度制御手段としては、特に限定されるものではないが、HCトラップ材近傍に設けた温度センサーと各種ヒータ、必要に応じてCPUを有する装置を例示することもできる。
本発明の排気ガス浄化触媒や排気ガス浄化システムをディーゼルエンジンの排気に適用する場合、特にNOxとHC、COを同時に高度浄化するには、対象する排気中のO濃度を0.8〜1.5vol%とすることが好ましい。
濃度が0.8vol%未満では、HCのH及びCOへの転換が不十分となり、HCの有効利用率向上効果が得られないことがある。逆にO濃度が1.5vol%を超えると、還元剤の酸化反応が優勢になり、有効な還元剤であるHが消費されることがある。更にまた、触媒がO被毒を受けて部分酸化反応活性が不十分となり、HCの浄化性能の低下及びNOx還元性能の低下も引き起こされることがある。
NOx還元とHCの転換の面から、好ましい条件としては、A/F=13.0以下、更に、A/F=11.0〜12.0で、O濃度の範囲は、1.1〜1.4%の範囲となる。
図1は、本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す構成図である。
同図に示すように、この排気ガス浄化システムは、エンジン40の排気系50に設置された排気ガス浄化触媒の一例であるNOx触媒10と、熱交換型水素生成器21、熱交換機22及び水素タンク23を有する空燃比制御手段20を備えている。
また、NOx触媒10はNOx吸放出材を有しており、水素生成器21は排気系50と繋がっており排気ガスの一部を水素生成に活用できる構成となっているが、燃料噴射装置24から燃料を供給されてもよい。また、空燃比制御手段20は、NOx触媒10の入口に水素ガスを放出するガス噴射装置25を有している。
更に、排気系50におけるNOx触媒10の上流側には、HC除去手段の一例であるHCトラップ触媒が設置されている。
なお、この排気ガス浄化システムには、図示しないNOx吸収量予測・計測手段や、HCトラップ量予測・計測手段、更にはこれらからの計測情報を演算処理するCPUを備える制御システム手段を付加することが可能である。
この例では、NOx触媒10が通常のNOxトラップ触媒の1/3〜1/4のサイズでも同等以上のNOx還元浄化率を実現できるため、コンパクトで且つ低コストな排気ガス浄化システムが提供される。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例)
[NOx吸放出材及び排気ガス浄化触媒の製造]
<チタン酸カリウムの製造>
酸化チタンとして、デグサ製P−25(平均粒子径約25nm,アナターゼ/ルチル混合比(質量比)=3:1,比表面積=約45m/g)25gを10MのKOH水溶液1000mLに分散させ、1時間撹拌した。これをオートクレーブに移し、130℃で96時間水熱処理を行った。
放冷後、オートクレーブの内容物をろ過し、得られた固体生成物をイオン交換水で4回洗浄し、120℃で一昼夜乾燥して水分を除去した後粉砕してNOx吸放出材(担体粉末)を得た。
<触媒の製造;硝酸カリウム(KNO)及び触媒(Pt)の担持>
上述のようにして得られた担体粉末を塩化白金酸(HPtCl)及び硝酸カリウム(KNO)の濃度を変えた混合水溶液に浸漬し、次いで、120℃での乾燥後に500℃で1時間焼成することにより、硝酸カリウム担持量の異なる触媒粉末を調製した。得られた触媒粉末の仕様を表1(実施例1〜7)に示した。
なお、上記NOx吸放出材に硝酸カリウムを担持したもののXRDデータを図5に示す。
また、Ptの代わりに、Pd、Rh、Fe、Coの硝酸塩を用いて同様の操作を繰り返し、各種の触媒粉末を得た(実施例8〜11)。表2に触媒仕様を示す。
Figure 2012052469
Figure 2012052469
(比較例)
従来型NOxトラップ触媒の調製を以下のように行った。
比表面積約180m/gのγアルミナ粉末を硝酸バリウムとジニトロジアンミン白金の混合水溶液に浸漬し、上記実施例と同様の乾燥、焼成工程を経て、Ptが1質量%及びBaOが10質量%担持されたPt−Ba/Al触媒粉末を得た。
<ラボモデルガスによる触媒のNOx吸収量評価及びNOx還元浄化性能評価>
上記実施例1〜7及び比較例の触媒のNOx吸収量の測定及びNOx還元浄化性能評価を、流通式反応装置を用いて行った。
石英製反応管に、500及び700μmの篩を用いて整粒した粒子状触媒を充填し、下記反応ガスを用いてNOx吸収量及びNOx還元浄化性能を評価した。触媒層の温度は触媒層内に挿入した熱電対によって計測した。触媒の前処理は、5%H/Heガス流中で350℃で30分行った。
(1)NOx吸収量の計測
触媒層温度=350℃
NO=1000ppm
=5%
He=バランス
触媒充填層に上記反応ガスを流通させ、出口のガス濃度を質量分析計(マススペクトルメーター)によって計測し、吸収破過特性から触媒の飽和NO吸収量を求めた。
(2)NOx吸収−還元浄化
リーン/リッチ排気模擬ガス組成
リーンガス組成;
NO=1000ppm
=5%
O=3.5%
He=バランス
リッチガス組成;
NO=200ppm
=3%
O=3.5%
He=バランス
反応は、触媒層温度200℃及び300℃で行い、リーンとリッチを交互に繰り返す条件でNOx還元浄化率を測定した。リーン/リッチの時間比は、120秒/20秒とした。
図2に、NOx飽和吸収量を示した。本発明に属する実施例の触媒系では、従来のNOxトラップ触媒に比較して大きなNOx吸収量を示すことが分かる。
特に、KNO担持効果がNOx吸収性能に大きく影響する。KNO担持量は30〜35質量%の範囲にNOx飽和吸収量の極大値を持つが、担持量が40質量%を超えて多くなると、NOx吸放出材の比表面積が低下し、また耐久性の観点から好ましくない。KNO担持量は35質量%以下、より好ましい担持量範囲は10〜35質量%である。
但し、触媒の使い方によっては、NOx吸収量が低くても効果的にNOx還元浄化が可能になる。例えば、リーンとリッチの時間比の制御で、リーンの期間を少なく設定し、細かくリッチ条件を入れる方法においては、少ないNOx吸収量でも対応可能である。リーンとリッチの時間比制御は、排出NOx量、排気温度、排気ガス量などによって最適に制御されるべきである。
図3に、リーン/リッチ切替制御におけるNOx還元浄化率を示した。
特に、KNOが20〜33質量%の範囲で95%を超える高い浄化率を示しており、この場合にKTi17とKTiの構造変化が効果的にサイクルしているものと思われる。図6にH還元後の該NOx吸放出材のXRDプロファイルを示す。還元後はKNOに由来するピークが消失し、KTiに帰属するピークが現れている。
また、このときの触媒出口NO及びNHを計測した結果、比較例の触媒では、特に200℃の反応条件ではNOが顕著に生成したのに対して、実施例の触媒ではそれらはほとんど検出されなかった、このことは、NOを選択的にNにまで還元していることを示す。
<排気触媒の耐硫黄性評価試験>
触媒粒子充填層にSO約50ppm含有Heバランスガスを350℃で1時間流通させた後、Heガスにて1時間のパージを行った。その後、上記のリーン/リッチ交互切り替え評価を行った。
図4に示すように、本発明に属する実施例1〜7の触媒では、SO処理後の性能低下が小さく、耐硫黄性にも優れていることがわかる。
特に、KNOが10〜35質量%でNOx転化率が90%を超える高い浄化率を示しており、この場合にKTi17とKTiの構造変化が効果的にサイクルしているものと思われる。
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
本発明によれば、NO,NHの生成を抑制し、NOxを高効率で還元浄化できる。更に、車上で生成したHを還元剤として活用すれば、還元剤の消費を必要最小限に抑えることが可能であり、エンジンの燃費と運動性への悪影響を抑制できる。
10 NOx触媒
20 空燃比制御手段
21 水素生成器
22 熱交換器
23 水素タンク
24 燃料噴射装置
25 ガス噴射装置
30 HCトラップ触媒
40 エンジン
50 排気系

Claims (13)

  1. 排気ガスの空燃比(A/F)がリーンのときにNOxを吸収し、空燃比(A/F)がストイキ乃至リッチのときにNOxを放出するNOx吸放出材において、
    空燃比(A/F)がリーンのときにKTi17で表される組成を有し、且つストイキ乃至リッチのときにKTiで表される組成を有するチタン酸カリウム含むことを特徴とするNOx吸放出材。
  2. 排気ガスの空燃比(A/F)がリーンで且つNOxが存在するとき、上記チタン酸カリウムが、次式(1)
    Ti17・αKNO…(1)
    (式中のαは担持した硝酸カリウムのモル数を示す。)で表される組成を有することを特徴とする請求項1に記載のNOx吸放出材。
  3. (1)式のαが0.8〜4.0であることを特徴とする請求項2に記載のNOx吸放出材。
  4. アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び希土類金属酸化物から成る群より選ばれた少なくとも1種の酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のNOx吸放出材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のNOx吸放出材に触媒金属を担持して成ることを特徴とする排気ガス浄化触媒。
  6. 上記触媒金属が、コバルト(Co)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)及びロジウム(Rh)から成る群より選ばれた少なくとも1種の金属であることを特徴とする請求項5に記載の排気ガス浄化触媒。
  7. 上記チタン酸カリウムは、KTi17で表されるチタン酸カリウムに硝酸カリウム(KNO)を35質量%以下の割合で含有させたものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の排気ガス浄化触媒。
  8. 請求項5〜7のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化触媒と、この排気ガス浄化触媒の入口における排気ガスの空燃比(A/F)を変動させる空燃比制御手段を備え、
    排気ガスの空燃比(A/F)がリーン条件のときに上記排気ガス浄化触媒にNOxを吸収させ、次いで、該排気ガス浄化触媒の入口に上記空燃比制御手段から水素(H)を供給して空燃比(A/F)を変動させることにより、吸収させたNOxを浄化することを特徴とする排気ガス浄化システム。
  9. 上記排気ガス浄化触媒入口への水素供給により、排気ガスの空燃比(A/F)をストイキ乃至リッチに制御することを特徴とする請求項8に記載の排気ガス浄化システム。
  10. 上記空燃比制御手段が、当該排気ガス浄化システムが設置された内燃機関の吸気制御と水素供給とを併用することにより、上記排気ガス浄化触媒入口の空燃比(A/F)を変動させることを特徴とする請求項8又は9に記載の排気ガス浄化システム。
  11. 上記排気ガス浄化触媒の排気ガス上流側に、炭化水素を除去する機能を有する手段を配置したことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
  12. 上記排気ガス浄化触媒の排気ガス上流側に、炭化水素を吸着し且つ酸化する触媒機能を有する手段を配置したことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
  13. 上記排気ガス浄化触媒の排気ガス上流側に、炭化水素を吸着し且つ酸化及び水素を生成する機能を有する手段を配置したことを特徴とする請求項8〜10に記載の排気ガス浄化システム。
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