JP2012051511A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 入力軸と出力軸の嵌合部にねじれ変位規制部を設ける電動パワーステアリング装置において、入力軸と出力軸を大外径厚肉化することなく、それらのねじれ変位規制部の耐久強度を向上すること。
【解決手段】 電動パワーステアリング装置10において、入力軸12と出力軸14のねじれ変位規制部120が設けられている部分の外周に、環状部材200を嵌着してなるもの。
【選択図】 図5

Description

本発明は電動パワーステアリング装置に関する。
電動パワーステアリング装置として、特許文献1に記載の如く、操舵ハンドルが接続される入力軸と、車輪側に接続される出力軸と、入力軸と出力軸とを連結し、入力軸に付与された操舵トルクに応じて弾性的にねじれ変位するトーションバーと、トーションバーのねじれ量に応じた検出トルク信号を出力するトルクセンサと、トルクセンサの検出トルク信号に応じて駆動される電動モータと、電動モータの回転を出力軸に伝える動力伝達装置とを有してなるものがある。
特開2001-88719
ところで、この電動パワーステアリング装置では、例えば車輪が路肩に接触したような場合、或いは急操舵時にラックエンドまで操舵ハンドルを回したような場合には、入力軸と出力軸との間で大きなトルクが伝達されてトーションバーに大きなトルクが付与されるおそれがある。このような場合、トーションバーがその弾性限界を超えて塑性変形すると、操舵トルクゼロの基準点が変わってしまい、電動パワーステアリング装置の制御機能を損なうことになる。
そこで、従来の電動パワーステアリング装置は、図7、図8に示す如く、入力軸1と出力軸2とをトーションバー3により連結し、入力軸1と出力軸2とを相対回転可能に嵌合する嵌合部4に、それらの両軸1、2の最大相対回転角度を制限角度に制限するねじれ変位規制部5を設けている。具体的には、入力軸1と出力軸2の嵌合部4が、入力軸1の軸端に設けた異形凸部1Aを、出力軸2の軸端に設けた異形凹部2Aに相対回転可能に嵌合している。そして、異形凸部1Aと異形凹部2Aの相対回転方向で相対する壁面1B、2B同士が、互いに当接したときにそれらの相対回転を制止するねじれ変位規制部5を形成するようにしている。
しかしながら、電動パワーステアリング装置では、入力軸1と出力軸2の嵌合部4で、異形凸部1Aと異形凹部2Aの相対する壁面1B、2B同士が互いに当接してトルクが作用したときに、それらの壁面1B、2Bが変形(トルクが作用する方向への倒れ)することを防止し、それらの壁面1B、2Bの耐久強度を確保する必要がある。従来技術では、入力軸1の異形凸部1Aが嵌合する出力軸2の異形凹部2Aまわりの壁部であって、ねじれ変位規制部5を形成する壁部を環状かつ厚肉化しており、結果として出力軸2の外径が大径化せざるを得ない。このことは、電動パワーステアリング装置の全体寸法の大型化、大重量化を招くことを意味する。
本発明の課題は、入力軸と出力軸の嵌合部にねじれ変位規制部を設ける電動パワーステアリング装置において、入力軸と出力軸を大外径厚肉化することなく、それらのねじれ変位規制部の耐久強度を向上することにある。
請求項1に係る発明は、操舵ハンドルが接続される入力軸と、車輪側に接続される出力軸と、入力軸と出力軸とを連結し、入力軸に付与された操舵トルクに応じて弾性的にねじれ変位するトーションバーと、トーションバーのねじれ量に応じた検出トルク信号を出力するトルクセンサと、トルクセンサの検出トルク信号に応じて駆動される電動モータと、電動モータの回転を出力軸に伝える動力伝達装置とを有し、入力軸と出力軸とを相対回転可能に嵌合する嵌合部に、それらの両軸の最大相対回転角度を制限角度に制限するねじれ変位規制部を設けてなる電動パワーステアリング装置において、入力軸と出力軸のねじれ変位規制部が設けられている部分の外周に、環状部材を嵌着してなるようにしたものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記入力軸と出力軸の嵌合部が、入力軸と出力軸の一方の軸端に設けた異形凸部を、入力軸と出力軸の他方の軸端に設けた異形凹部に相対回転可能に嵌合してなり、異形凸部と異形凹部の相対する壁面同士がねじれ変位規制部を形成するようにしたものである。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において更に、前記入力軸と出力軸の一方の軸端に設けられる異形凸部が、環状部材の内周に接する複数の円弧面と、相隣る円弧面をつなぐ係合壁面とからなる外周を有し、前記入力軸と出力軸の他方の軸端の中心軸まわりに設けられる複数の突き出し片により異形凹部を囲み形成し、各突き出し片が環状部材の内周に接する円弧面と、異形凸部の係合壁面に相対する係合壁面を有してなるようにしたものである。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、前記環状部材が、出力軸に設けられる動力伝達装置用ウォームホイールのボスからなるようにしたものである。
(請求項1)
(a)入力軸と出力軸のねじれ変位規制部が設けられている部分の外周に、環状部材が嵌着される。
従って、入力軸と出力軸の他方の軸端の異形凹部まわりの壁部であって、ねじれ変位規制部を形成する壁部が、薄肉の環状をなしていたり、又は複数の突き出し片からなっていて、入力軸と出力軸が大外径厚肉化されていないにもかかわらず、入力軸と出力軸が最大相対回転角度に達してそれらのねじれ変位規制部に作用するトルクによる該ねじれ変位規制部の変形を、両軸のねじれ変位規制部が設けられている部分の外周に嵌着されている環状部材により抑え込む。これにより、ねじれ変位規制部の変形を防止し、ねじれ変位規制部の耐久強度を向上できる。
(請求項2)
(b)入力軸と出力軸の嵌合部が、入力軸と出力軸の一方の軸端に設けた異形凸部を、入力軸と出力軸の他方の軸端に設けた異形凹部に相対回転可能に嵌合してなり、異形凸部と異形凹部の相対する壁面同士がねじれ変位規制部を形成する。
従って、入力軸と出力軸の他方の軸端の異形凹部まわりの壁部であって、ねじれ変位規制部を形成する壁部が、薄肉の環状をなしていたり、又は複数の突き出し片からなっていて、入力軸と出力軸が大外径厚肉化されていないにもかかわらず、それらのねじれ変位規制部の耐久強度を向上できる。即ち、入力軸と出力軸が最大相対回転角度に達してそれらのねじれ変位規制部に作用するトルクによる該ねじれ変位規制部の変形を、両軸のねじれ変位規制部が設けられている部分の外周に嵌着されている環状部材により抑え込む。これにより、ねじれ変位規制部の変形を防止し、ねじれ変位規制部の耐久強度を向上できる。
(請求項3)
(c)入力軸と出力軸の一方の軸端に設けられる異形凸部が、環状部材の内周に接する複数の円弧面と、相隣る円弧面をつなぐ係合壁面とからなる外周を有し、前記入力軸と出力軸の他方の軸端の中心軸まわりに設けられる複数の突き出し片により異形凹部を囲み形成し、各突き出し片が環状部材の内周に接する円弧面と、異形凸部の係合壁面に相対する係合壁面を有する。
従って、入力軸と出力軸の他方の軸端の異形凹部まわりの壁部であって、ねじれ変位規制部を形成する壁部が複数の突き出し片からなり、この突き出し片は入力軸と出力軸の一方の軸端の異形凸部の全外周が嵌合する如くの環状をなすものでない。ねじれ変位規制部を形成する異形凸部と異形凹部が、環状部材の内周の各所にそれぞれ嵌着する同一外径をなし、かつそれらの変形を環状部材により防止できる。これにより、入力軸と出力軸を小外径化かつ薄肉化しながら、それらのねじれ変位規制部の耐久強度を向上できる。
(請求項4)
(d)出力軸に設けられるウォームホイールのボスを、上述(a)〜(c)の環状部材として兼用でき、簡素な構成により上述(a)〜(c)を実現できる。
図1は電動パワーステアリング装置の全体を示す断面図である。 図2は図1の一部を示す断面図である。 図3は図2の要部拡大断面図である。 図4は本発明の一実施例に係る入力軸と出力軸の嵌合部を示す断面図である。 図5は図4のV-V線に沿う断面図である。 図6は入力軸と出力軸の嵌合部を分解して示す斜視図である。 図7は従来例に係る入力軸と出力軸の嵌合部を示す断面図である。 図8は図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
以下、まず図1〜図3の参考例に係る電動パワーステアリング装置10により、電動パワーステアリング装置10の基本的構造を示す。次に、図4〜図6の本発明実施例に係る電動パワーステアリング装置10により、本発明による入力軸12と出力軸14の嵌合構造について説明する。
即ち、図1〜図3は、本発明が適用される電動パワーステアリング装置10の基本的構造を説明するためのものであり、図外操舵ハンドルがアッパーシャフト11に連結され、このアッパーシャフト11に入力軸12がセレーション結合される。また、車輪側の図外ステアリングギヤに、ユニバーサルジョイントのヨーク等の車輪側接続部材13を介して出力軸14が接続される。即ち、電動パワーステアリング装置10は、操舵ハンドルに接続される入力軸12と、車輪側に接続される出力軸14と、入力軸12と出力軸14の間に設けられるトーションバー15を有し、車両の運転者が操舵ハンドルに加える操舵トルクを、入力軸12、トーションバー15、出力軸14、車輪側接続部材13、ステアリングギヤを介して車輪にその舵角が変化するように伝える。ステアリングギヤは、例えば操舵トルクにより回転するピニオンに噛合うラックの変位をタイロッド、ナックルアーム等を介して車輪に伝えるラックアンドピニオン式ステアリングギヤを採用できる。
電動パワーステアリング装置10は、入力軸12、出力軸14、トーションバー15をハウジング20に内蔵している。ハウジング20は、操舵ハンドル側の第1ハウジング21に、第2ハウジング22をOリング23を介して液密に嵌合し、それらハウジング21、22を図外ボルトにより連結して構成され、第1ハウジング21に筒状のコラム24を圧入により取付けている。アッパーシャフト11がボールベアリング等の軸受25によりコラム24に枢支され、入力軸12がボールベアリング等の軸受26により第1ハウジング21に枢支され、出力軸14がボールベアリング等の軸受27により第2ハウジング22に後述する如くに枢支される。
入力軸12と出力軸14の同軸をなす中心孔に弾性棒材からなるトーションバー15が挿入される。トーションバー15の一端は入力軸12にピン15Aにより連結され、トーションバー15の他端係合部15Bが出力軸14に係合される。トーションバー15は入力軸12に付与された操舵トルクに応じて弾性的にねじれ変位する。入力軸12と出力軸14は操舵トルクに応じて中心軸まわりに弾性的に相対回転する。
電動パワーステアリング装置10は、ハウジング20(21、22)に、トルクセンサ30と電動モータ40とウォームギヤ50とウォームホイール60を設けている。
トルクセンサ30は、第1ハウジング21の内部で、入力軸12及び出力軸14まわりに配置される。トルクセンサ30は、操舵ハンドルから入力軸12に入力された操舵トルクが、トーションバー15を弾性ねじり変形させた結果、トーションバー15のねじれ量に応じた検出トルク信号を出力する。第1ハウジング21の外面にはトルクセンサ30の一部を構成する検出回路基板31が取付けられている。
電動モータ40は、第1ハウジング21の外面に取付けられ、トルクセンサ30の検出トルク信号に応じて駆動される。電動モータ40の回転軸に取付けられるウォームギヤ50と、出力軸14の外周に後述する如くに取付けられるウォームホイール60が、ハウジング20(21、22)の内部に配置され、互いに噛合いされる。ウォームギヤ50とウォームホイール60は、電動モータ40の回転を出力軸14に伝える動力伝達装置を構成する。これにより、トルクセンサ30の検出トルク信号に応じて駆動される電動モータ40の回転により生ずる操舵アシスト力が、ウォームギヤ50、ウォームホイール60の噛合いにより減速されて出力軸14に伝えられる。出力軸14に伝えられた操舵アシスト力は、車輪側接続部材13、ステアリングギヤを介して車輪に伝えられる。
電動パワーステアリング装置10は、ウォームホイール60の歯64を、ウォームギヤ50の歯とともに、ハウジング20(21、22)に区画した潤滑室70内に収容するように配置している。潤滑室70内で、ウォームホイール60の歯64にグリースが塗布されるものになる。
尚、ウォームホイール60は、図3に示す如く、出力軸14の外周に嵌合されるボス61と、ボス61から外方に延びるディスク62(ボス61から放射状に延びる複数本のアームでも可)と、ディスク62の外縁に設けたリム63とを有し、リム63の外周に歯64を備えている。ボス61とディスク62を芯金により形成して強度を確保し、歯64を備えるリム63を樹脂により形成してウォームギヤ50との噛合い音の静粛を図っている。
以下、電動パワーステアリング装置10において、(A)出力軸14及びウォームホイール60の支持構造、(B)潤滑室70の封止構造について詳述する。
(A)出力軸14及びウォームホイール60の支持構造(図3)
出力軸14の外周を、車輪側接続部材13のヨーク環状部13Aが嵌合する大径部14Aと、ウォームホイール60のボス61が嵌合する中径部14Bと、入力軸12の孔内に挿入される小径部14Cとする。
そして、出力軸14の中径部14Bの外周にウォームホイール60のボス61を嵌合し、このボス61の外周に嵌合した軸受27を第2ハウジング22の中央筒部22Aの内周に挿着して支持する。
このとき、ウォームホイール60の軸方向で、ボス61の軸受27が嵌合する外周の少なくとも一部(ボス61のヨーク環状部13A寄り端面〜ボス61のディスク62が立上る立上り面61A)がウォームホイール60の歯64の歯巾の範囲内に配置される。本実施例では、立上り面61Aが歯64の中心線に合致している。
また、軸受27の位置決めは以下によりなされる。
(1)軸受27の内輪は、軸方向で、出力軸14の外周に嵌合されているウォームホイール60のボス61からの立上り面61Aと、出力軸14の外周に取着される車輪側接続部材13のヨーク環状部13Aの端面とにより挟持されて固定される。
軸受27の外輪は、車輪側接続部材13のヨーク環状部13A側で、第2ハウジング22の中央筒部22Aの内周に係着した止め輪28により係止される。
(2)出力軸14の外周に嵌合されたウォームホイール60のボス61は、出力軸14の中径部14Bに圧入されて位置決めされ、又は出力軸14の中径部14Bに設けた止め輪65に係止して位置決めされる。止め輪65を加締めることにより、ウォームホイール60のボス61を車輪側接続部材13のヨーク環状部13Aの端面との間で隙間なく固定できる。
(3)出力軸14の外周に取着された車輪側接続部材13のヨーク環状部13Aは、出力軸14の大径部14Aに圧入されて位置決めされ、又は出力軸14の大径部14Aに設けた止め輪66に係止して位置決めされる。
本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)出力軸14の外周にウォームホイール60のボス61が嵌合され、このボス61の外周に嵌合した軸受27がハウジング20(22)に支持される。従って、ウォームホイール60のボス61と軸受27を出力軸14の径方向に積み重ねる如くに配置するものになり、ハウジング20(22)内で出力軸14を支持する軸方向スペースを小さくできる。
(b)ウォームホイール60の軸方向で、ボス61の軸受27が嵌合される外周の少なくとも一部が該ウォームホイール60の歯64の歯巾の範囲内に配置される。これにより、出力軸14上におけるウォームホイール60の歯64のセンターと、軸受27のセンターとを、出力軸14の軸方向で合致又は近接配置できる。ウォームホイール60に作用する噛合い荷重を、ウォームホイール60の上記ボス61に嵌合した上記軸受27だけで安定的に支持できるものになり、ウォームホイール60を設けた出力軸14を唯1個の軸受27で安定的にハウジング20(22)に支持できる。
(c)軸受27が軸方向で、出力軸14の外周に嵌合されているウォームホイール60のボス61からの立上り面61Aと、出力軸14の外周に取着される車輪側接続部材13の端面とにより挟持されて固定される。出力軸14上での軸受27の位置決め構造に、ウォームホイール60自体と車輪側接続部材13とを用いることで、出力軸14の外周に環状突起やナット等の位置決め専用構造を付加する必要がない。これによっても、ハウジング20(22)内における出力軸14の支持スペースを小さくできる。
(d)ウォームホイール60のボス61は、出力軸14に圧入されて位置決めされ、又は該出力軸14の一側に設けた止め輪65に係止して位置決めされる。
(e)車輪側接続部材13は、出力軸14に圧入されて位置決めされ、又は該出力軸14の他側に設けた止め輪66に係止して位置決めされる。
(B)潤滑室70の封止構造(図3)
ウォームホイール60の歯64の両側のそれぞれに、潤滑室70の潤滑剤(例えばグリース)を該潤滑室70内に封止する第1と第2の封止手段80、90を設ける。
ウォームホイール60の歯64の一側(ハウジング20(21)内でトルクセンサ30が設けられるトルクセンサ室32の側)に設けられる第1の封止手段80を、第1ハウジング21の潤滑室70とトルクセンサ室32とを区画する隔壁21Aの壁面と、ウォームホイール60の樹脂リム63(ディスク62でも可)の側面の一方に固定され、他方に摺接するシールリング81からなるものにする。本実施例では、第1ハウジング21の隔壁21Aのウォームホイール60に臨む壁面における出力軸14の中心軸まわりに設けた環状溝21Bの溝底側にバックアップ用Oリング82を装填し、その溝内におけるOリング82上にテフロン(登録商標)等からなるシールリング81を装填した。Oリング82により環状溝21Bの外方に向けて弾発的に加圧されるシールリング81がウォームホイール60のリム63の側面に摺接するものになる。
ウォームホイール60を設けた出力軸14が唯1個の軸受27によりハウジング20(22)に支持され、軸受27がウォームホイール60の歯64の他側に設けられるシール付軸受とされ、このシール付軸受27をウォームホイール60の歯64の他側に設けられる第2の封止手段90とする。
このとき、軸受27は、前述の如く、出力軸14の外周に嵌合したウォームホイール60のボス61の外周に嵌合される状態で、第2ハウジング22の中央筒部22Aに支持される。そして、ウォームホイール60の軸方向で、ボス61の軸受27が嵌合する外周の少なくとも一部(ボス61のヨーク環状部13A寄り端面〜ボス61のディスク62が立上る立上り面61A)がウォームホイール60の歯64の歯巾の範囲内に配置される。
尚、ウォームホイール60を設けた出力軸14を、該ウォームホイール60を両側から挟む2個の軸受によりハウジング20(21、22)に支持するものにしても良い。ウォームホイール60の歯64の一側に上述の例えばシールリング81からなる第1の封止手段80とシールなし軸受を配置し(第1の封止手段80をシールなし軸受よりも半径方向の潤滑室70寄りに配置し、第1の封止手段80がシールなし軸受を介することなく、直接的に潤滑室70に臨んで接することが好ましい)、ウォームホイール60の歯64の他側に上述の例えば軸受27からなる第2の封止手段90となるシール付軸受を配置する。
本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)ウォームホイール60の歯64の少なくとも一側に設けられる封止手段80が、ハウジング20(21)の壁面とウォームホイール60の側面の一方に固定され、他方に摺接するシールリング81からなるものとすることにより、潤滑室70を簡易に封止できる。潤滑室70のグリース等の潤滑剤を封止し、ウォームホイール60の他の潤滑不良を回避する他、潤滑剤がトルクセンサ30の側に侵入して樹脂部品を膨潤化したり、電気的ショートを引き起こすおそれを回避することができる。
(b)上述(a)のシールリング81が、他の軸受等を介することなく、潤滑室70に直接的に臨んで接するように設けられるとき、該シールリング81の摺接部を潤滑剤により常に十分確実に潤滑し、該シールリング81のシール性能を向上し、その寿命を簡易に確保できる。
(c)ウォームホイール60を設けた出力軸14が唯1個の軸受27によりハウジング20(22)に支持され、該軸受27がウォームホイール60の歯64の他側に設けられるシール付軸受27とされ、このシール付軸受27がウォームホイール60の歯64の他側に設けられる封止手段90を構成するものとする。ウォームホイール60の歯64の一側に設けられる封止手段80を上述のシールリング81により簡易に構成するとともに、出力軸14を支持する軸受27を唯1個にして簡素化しながら、この軸受27をシール付としてウォームホイール60の歯64の他側に設けられる封止手段90に兼用するものになる。ウォームホイール60を設けた出力軸14の支持構造を簡素化するとともに、ウォームホイール60の歯64の潤滑室70を簡易に封止できる。
(d)上述(c)の軸受27が出力軸14の外周に嵌合したウォームホイール60のボス61の外周に嵌合される状態で、ハウジング20(22)に支持され、ウォームホイール60の軸方向で、ボス61の軸受27が嵌合される外周の少なくとも一部が該ウォームホイール60の歯64の歯巾の範囲内に配置される。これにより、出力軸14上におけるウォームホイール60の歯64のセンターと、軸受27のセンターとを、出力軸14の軸方向で合致又は近接配置できる。ウォームホイール60に作用する噛合荷重を、ウォームホイール60の上記ボス61に嵌合した上記軸受27だけで安定的に支持できるものになり、ウォームホイール60を設けた出力軸14を唯1個の軸受27で安定的にハウジング20(22)に支持できる。
しかるに、図4〜図6の本発明実施例に係る電動パワーステアリング装置10は、図1〜図3に示した参考例における入力軸12と出力軸14の嵌合構造を改めたものであり、入力軸12と出力軸14の間に大きなトルクが付与された場合でも、トーションバー15に塑性変形を生じないようにするため、以下の構成を具備する。
ここで、入力軸12の軸端101の外径部101Aと、出力軸14の軸端102の外径部102Aを同一径にしてある。入力軸12の外径部101Aの外周をウォームホイール60のボス61に摺接可能に嵌合するとともに、出力軸14の外径部102Aの外周をウォームホイール60のボス61に圧入して嵌合する。更に、入力軸12の軸端101の先端小外径部101Bを、出力軸14の軸端102の内奥小内径部102Bに互いに摺接して相対回転可能に嵌合する。
そして、入力軸12と出力軸14は、トーションバー15の周囲でそれらの軸端101、102同士が相対回転可能に嵌合する嵌合部110を有し、それらの両軸12、14の最大相対回転角度を制限角度(例えば±5度)に制限するねじれ変位規制部120を嵌合部110に設けている。ねじれ変位規制部120が設けられる入力軸12と出力軸14の嵌合部110は、入力軸12の軸端101の軸方向における外径部101Aと先端小外径部101Bの間に設けられる異形凸部111と、出力軸14の軸端102の軸方向における外径部102Aの先端部分に形成される異形凹部112とを相対回転可能に嵌合してなるものである。
また、入力軸12と出力軸14のねじれ変位規制部120が設けられている部分の外周には、環状部材200、本実施例ではウォームホイール60のボス61により形成される環状部材200が嵌合して嵌着される。
具体的には、入力軸12と出力軸14の嵌合部110が、図4〜図6に示す如く、入力軸12の軸端101の軸方向における外径部101Aと先端小外径部101Bの間に設けた異形凸部111を、出力軸14の軸端102の軸方向における外径部102Aの先端部分に形成した異形凹部112に相対回転可能に嵌合してなり、異形凸部111と異形凹部112の相対する壁面同士がねじれ変位規制部120を形成する。
即ち、入力軸12の軸端101に設けられる異形凸部111が、環状部材200の内周に圧入されて接する複数、本実施例では同一直径上に位置する2個の円弧面111Aと、相隣る円弧面111A、111Aをつなぐ2個の係合壁面111Bとからなる外周を有する。係合壁面111Bは本実施例では平面をなす。
また、出力軸14の軸端102の中心軸まわりに設けられる複数、本実施例では同一直径上に位置する2個の突き出し片113により異形凹部112を囲み形成し、2個の突き出し片113、113の間に異形凸部111を嵌着可能にする。各突き出し片113は、弓形断面状をなし、環状部材200の内周に摺接する円弧面113Aと、異形凸部111の係合壁面111Bに一定の隙間g(図5)を介して相対する係合壁面113Bを有する。係合壁面113Bは本実施例では平面をなす。
入力軸12と出力軸14は、例えば車輪が路肩に接触したような場合、或いは急操舵時にラックエンドまで操舵ハンドルを回したような場合に、両軸12、14の間に大きなトルクが伝達されると、それらの嵌合部110で、異形凸部111の係合壁面111Bが異形凹部112を形成する各突き出し片113の係合壁面113Bに対しそれらの隙間g分(前述の制限角度に相当する)だけ相対回転した後、それらの係合壁面111Bがその相対回転方向で係合壁面113Bに当接してその相対回転を制止される。即ち、異形凸部111の係合壁面111Bと、異形凹部112を形成する各突き出し片113の係合壁面113Bが、入力軸12と出力軸14のねじれ変位規制部120を形成するものになる。これにより、入力軸12と出力軸14とを連結しているトーションバー15に過大トルクが付与されることを回避し、トーションバー15がその弾性限界を超えて塑性変形することを防止する。
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)入力軸12と出力軸14のねじれ変位規制部120が設けられている部分の外周に、環状部材200が嵌着される。
従って、出力軸14の軸端102の異形凹部112まわりの壁部であって、ねじれ変位規制部120を形成する壁部が、複数の突き出し片113からなっていて、入力軸12と出力軸14が大外径厚肉化されていないにもかかわらず、入力軸12と出力軸14が最大相対回転角度に達してそれらのねじれ変位規制部120に作用するトルクによる該ねじれ変位規制部120の変形を、両軸12、14のねじれ変位規制部120が設けられている部分の外周に嵌着されている環状部材200により抑え込む。これにより、ねじれ変位規制部120の変形を防止し、ねじれ変位規制部120の耐久強度を向上できる。
(b)入力軸12と出力軸14の嵌合部110が、入力軸12の軸端101に設けた異形凸部111を、出力軸14の軸端102に設けた異形凹部112に相対回転可能に嵌合してなり、異形凸部111と異形凹部112の相対する係合壁面111B、113B同士がねじれ変位規制部120を形成する。
従って、出力軸14の軸端102の異形凹部112まわりの壁部であって、ねじれ変位規制部120を形成する壁部が、複数の突き出し片113からなっていて、入力軸12と出力軸14が大外径厚肉化されていないにもかかわらず、それらのねじれ変位規制部120の耐久強度を向上できる。即ち、入力軸12と出力軸14が最大相対回転角度に達してそれらのねじれ変位規制部120に作用するトルクによる該ねじれ変位規制部120の変形を、両軸12、14のねじれ変位規制部120が設けられている部分の外周に嵌着されている環状部材200により抑え込む。これにより、ねじれ変位規制部120の変形を防止し、ねじれ変位規制部120の耐久強度を向上できる。
(c)入力軸12の軸端101に設けられる異形凸部111が、環状部材200の内周に接する複数の円弧面111Aと、相隣る円弧面111Aをつなぐ係合壁面111Bとからなる外周を有し、出力軸14の軸端102の中心軸まわりに設けられる複数の突き出し片113により異形凹部112を囲み形成し、各突き出し片113が環状部材200の内周に接する円弧面113Aと、異形凸部111の係合壁面111Bに相対する係合壁面113Bを有する。
従って、出力軸14の軸端102の異形凹部112まわりの壁部であって、ねじれ変位規制部120を形成する壁部が複数の突き出し片113からなり、この突き出し片113は入力軸12の軸端101の異形凸部111の全外周が嵌合する如くの環状をなすものでない。ねじれ変位規制部120を形成する異形凸部111と異形凹部112が、環状部材200の内周の各所にそれぞれ嵌着する同一外径をなし、かつそれらの変形を環状部材200により防止できる。これにより、入力軸12と出力軸14を小外径化かつ薄肉化しながら、それらのねじれ変位規制部120の耐久強度を向上できる。
(d)出力軸14に設けられるウォームホイール60のボス61を、上述(a)〜(c)の環状部材200として兼用でき、簡素な構成により上述(a)〜(c)を実現できる。
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、入力軸に異形凹部を設け、出力軸に異形凸部を設けても良い。
また、環状部材は、ウォームホイールの如くの動力伝達装置用歯車のボスに限らず、出力軸又は入力軸に設けられる軸受、又はトルクセンサを構成するように出力軸又は入力軸に設けられる検出用環状体からなるものを兼用できる。
また、環状部材は、入力軸と出力軸のねじれ変位規制部の変形を防止するように専用され、入力軸と出力軸のねじれ変位規制部が設けられている部分の外周に嵌着される専用部材からなるものでも良い。
本発明は、操舵ハンドルが接続される入力軸と、車輪側に接続される出力軸と、入力軸と出力軸とを連結し、入力軸に付与された操舵トルクに応じて弾性的にねじれ変位するトーションバーと、トーションバーのねじれ量に応じた検出トルク信号を出力するトルクセンサと、トルクセンサの検出トルク信号に応じて駆動される電動モータと、電動モータの回転を出力軸に伝える動力伝達装置とを有し、入力軸と出力軸とを相対回転可能に嵌合する嵌合部に、それらの両軸の最大相対回転角度を制限角度に制限するねじれ変位規制部を設けてなる電動パワーステアリング装置において、入力軸と出力軸のねじれ変位規制部が設けられている部分の外周に、環状部材を嵌着してなるものである。これにより、入力軸と出力軸の嵌合部にねじれ変位規制部を設ける電動パワーステアリング装置において、入力軸と出力軸を大外径厚肉化することなく、それらのねじれ変位規制部の耐久強度を向上することができる。
10 電動パワーステアリング装置
12 入力軸
14 出力軸
15 トーションバー
30 トルクセンサ
40 電動モータ
60 ウォームホイール(動力伝達装置)
61 ボス
101 軸端
102 軸端
110 嵌合部
111 異形凸部
111A 円弧面
111B 係合壁面
112 異形凹部
113 突き出し片
113A 円弧面
113B 係合壁面
120 ねじれ変位規制部
200 環状部材

Claims (4)

  1. 操舵ハンドルが接続される入力軸と、
    車輪側に接続される出力軸と、
    入力軸と出力軸とを連結し、入力軸に付与された操舵トルクに応じて弾性的にねじれ変位するトーションバーと、
    トーションバーのねじれ量に応じた検出トルク信号を出力するトルクセンサと、
    トルクセンサの検出トルク信号に応じて駆動される電動モータと、
    電動モータの回転を出力軸に伝える動力伝達装置とを有し、
    入力軸と出力軸とを相対回転可能に嵌合する嵌合部に、それらの両軸の最大相対回転角度を制限角度に制限するねじれ変位規制部を設けてなる電動パワーステアリング装置において、
    入力軸と出力軸のねじれ変位規制部が設けられている部分の外周に、環状部材を嵌着してなることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記入力軸と出力軸の嵌合部が、入力軸と出力軸の一方の軸端に設けた異形凸部を、入力軸と出力軸の他方の軸端に設けた異形凹部に相対回転可能に嵌合してなり、
    異形凸部と異形凹部の相対する壁面同士がねじれ変位規制部を形成する請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記入力軸と出力軸の一方の軸端に設けられる異形凸部が、環状部材の内周に接する複数の円弧面と、相隣る円弧面をつなぐ係合壁面とからなる外周を有し、
    前記入力軸と出力軸の他方の軸端の中心軸まわりに設けられる複数の突き出し片により異形凹部を囲み形成し、各突き出し片が環状部材の内周に接する円弧面と、異形凸部の係合壁面に相対する係合壁面を有してなる請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記環状部材が、出力軸に設けられる動力伝達装置用ウォームホイールのボスからなる請求項1〜3のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
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