JP2012047948A - 赤外線透過黒色膜、赤外線透過黒色膜を用いた膜付き基材及び画像表示装置 - Google Patents

赤外線透過黒色膜、赤外線透過黒色膜を用いた膜付き基材及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】可視光線に対しては優れた遮光性を有し、かつ赤外線に対しては一定値以上の透過性を有する赤外線透過黒色膜と該赤外線透過黒色膜を用いた膜付き基材、及び該赤外線透過黒色膜を用いた画像表示装置を提供すること。
【解決手段】 黒色材料及び樹脂成分を含んでなり、
前記黒色材料の膜中における平均分散粒子径が1nm以上50nm以下であり、
波長560nmにおける厚さ1μmあたりの透過率(T560)が40%未満であり、かつ波長560nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD560)と波長950nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD950)との比(OD950/OD560)が、0.35以下である赤外線透過黒色膜である。
【選択図】なし

Description

本発明は、可視光線を遮蔽するとともに赤外線を透過可能な赤外線透過黒色膜と、該赤外線透過黒色膜を用いた膜付き基材及び画像表示装置に関する。さらに詳しくは、可視光線である波長380nmから800nmの光を遮光して黒色を呈する一方で、近赤外光線である波長800nmから2500nmの光に対して一定値以上の透過率を有することで、赤外線透過フィルターやブラックマトリックス等に好適に用いることができる赤外線透過膜と赤外線透過黒色膜を用いた膜付き基材、及び赤外線透過黒色膜を用いた画像表示装置に関する。
通常、ワイヤレスリモートコントローラ(リモコン)などの信号には、波長950nmLEDが、また、工業的には波長1064nm帯ファイバーレーザーなどが用いられている。これらの信号源や受光素子に対しては、可視光線による誤動作の防止や外観上の点から、可視光線を遮蔽し近赤外線等の赤外線を透過する部材を用いたカバー等を設けることが一般的である。このため、外観上は黒色を呈するにもかかわらず、使用する近赤外線から赤外線の波長を有する光線に対して十分な透過性を有する赤外線透過黒色膜や、該赤外線透過黒色膜を用いた赤外線透過フィルターが必要とされている。
また、次世代の液晶パネルにおいては、アレイ側に直接ブラックマトリックスが形成されるCOA(カラーフィルターオンアレイ)方式、またはBOA(ブラックマトリックスオンアレイ)方式が主流になると考えられるが、これらの方式では、アレイ側に形成した黒色塗布乾燥膜をパターニングして、黒色膜であるブラックマトリックスを作製するため、アレイに対して直接ブラックマトリックスパターンの位置合わせを行う必要がある。この位置合わせには、850〜950nmの赤外線が使用されるため、位置合わせ信号を読み取るために、この波長領域の光を透過する黒色塗布乾燥膜がブラックマトリックス材料として望まれている。
なお、ブラックマトリックス部材の場合は、透過率の指標として光学濃度(OD値:Optical Density)を用いることが一般的である。これは、膜の透過率をT(%)とすると、以下の式(1)で示される。
OD=−log(T/100) ・・・(1)
また、一般的にブラックマトリックス部材の場合は、厚み1μmあたりのOD値を遮光性の指標とすることが多い。
従来の黒色膜においては、黒色材料として、主に、カーボンブラック、チタンブラック(酸窒化チタン)、酸化鉄、クロム及び銀微粒子等の金属材料や無機材料が用いられており、これらの黒色材料を有機樹脂や無機樹脂などに分散した材料を用いて形成した黒色膜が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、黒色材料として有機顔料や染料を用いた、赤外線透過型フィルターの提案もされている(例えば、特許文献3、4参照)。
特開平5−127433号公報 特開2005−189561号公報 特開2005−67007号公報 特開2005−257721号公報
しかしながら、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、クロム及び銀微粒子等の金属材料や無機材料は、その光吸収能に波長依存性を持たないか、持っていてもその変化量が小さいため、これらの黒色材料を有機樹脂や無機樹脂などに分散した材料を用いて形成した黒色膜においては、可視光線の遮蔽性を向上させると、近赤外等の赤外線域を含めたすべての波長領域で透過率が低下してしまい、赤外線透過黒色膜として機能しなくなるという問題がある。
また、黒色材料として有機顔料や染料を用いた場合においては、太陽光や、蛍光灯などからの紫外線によって有機顔料や染料が分解や劣化を起こし、例えばこれらを用いたフィルターの退色が発生することが懸念されている。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、可視光線に対しては優れた遮光性を有し、かつ赤外線に対しては一定値以上の透過性を有する赤外線透過黒色膜と該赤外線透過黒色膜を用いた膜付き基材、及び該赤外線透過黒色膜を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、銀錫合金微粒子と、銀粒子の混合物を、有機樹脂または、無機樹脂、もしくはこれらの混合物に分散するとともに、その平均分散粒子径を1nm以上100nm以下とすることで、高い可視光線の遮蔽性を有しつつも、800nm以上の近赤外領域等の赤外線領域の波長の光を透過することを見出した。
すなわち、本発明は、
〔1〕 黒色材料及び樹脂成分を含んでなり、前記黒色材料の膜中における平均分散粒子径が1nm以上100nm以下であり、波長560nmにおける厚さ1μmあたりの透過率(T560)が40%未満であり、かつ波長560nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD560)と波長950nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD950)との比(OD950/OD560)が0.35以下である赤外線透過黒色膜、
〔2〕 波長560nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD560)と、波長800nm以上2500nm以下の近赤外線(NIR)波長領域における各波長での透過率に基づく光学濃度(ODNIR)との比(ODNIR/OD560)が、0.40以下である上記〔1〕に記載の赤外線透過黒色膜、
〔3〕 前記黒色材料の体積分率が、1.0体積%以上25体積%以下である上記〔1〕または〔2〕に記載の赤外線透過黒色膜、
〔4〕 前記黒色材料が、銀及び錫を主成分とする金属微粒子である上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の赤外線透過黒色膜、
〔5〕 前記金属微粒子が、銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子からなり、当該銀錫合金微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下、もしくは当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下である上記〔4〕に記載の赤外線透過黒色膜、
〔6〕 上記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の赤外線透過黒色膜を有する膜付き基材、及び
〔7〕 上記〔1〕乃至〔5〕のいずれか1に記載の赤外線透過黒色膜を有する画像表示装置、
を提供するものである。
本発明によれば、可視光線に対しては優れた遮光性を有し、かつ赤外線に対しては一定値以上の透過性を有する赤外線透過黒色膜と、該赤外線透過黒色膜を用いた膜付き基材、及び該赤外線透過黒色膜を用いた画像表示装置を提供することができる。
実施例1で得られた赤外光透過黒色膜断面の電子顕微鏡観察写真である。 比較例1で得られた黒色膜断面の電子顕微鏡観察写真である。
以下、本発明を実施形態により説明する。
[赤外線透過黒色膜]
本実施形態の赤外線透過黒色膜(以下、単に「黒色膜」という場合がある)は、黒色材料及び樹脂成分を含んでなり、該黒色材料の膜中における平均分散粒子径が1nm以上100nm以下であり、波長560nmにおける厚さ1μmあたりの透過率(T560)が40%未満であり、かつ波長560nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD560)と波長950nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD950)との比(OD950/OD560)が0.35以下であることを特徴とする(以下、「透過率に基づく光学濃度」を単に「光学濃度」という場合がある)。
なお、本実施形態において、可視光線の波長域は、JIS−Z8120の記載「短波長限界は360〜400nm,長波長限界は760〜830nm」に基き、380nm以上800nm未満とする。また、波長800nm以上1mm以下の光を赤外線、波長800nm以上2500nm以下の光を近赤外線とする。さらに前記「光学濃度」とは、透過率T(%)としたとき前記式(1)で示されるものである。また、本実施形態における「赤外線透過黒色膜」とは、前記赤外線を3.0%以上透過する膜を意味する。
なお、本実施形態において透過率を示す指標として波長560nmにおける透過率(T560)を選択したのは、当該波長が可視光波長域のほぼ中央にあり、可視光線を代表する波長として広く用いられているためである。
ここで、T560を40%未満としたのは、可視光透過率が40%未満であれば、外観上(目視的に見て)、膜を黒色とみなすことができるためである。すなわち、リモコンの発光部や受光部を覆う部材の可視光透過率が40%未満であれば、部材を通して内部の発光素子や受光素子を見ることが難しくなり、内部が黒色膜により遮光隠蔽された状態とみなし得るようになるためである。T560は37%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。なお、T560の下限には特段の限定はないが、測定装置の検出限界は0.000001%程度である。
また、波長560nmにおける光学濃度(OD560)と波長950nmにおける光学濃度(OD950)との比(OD950/OD560)が0.35以下であれば、特にワイヤレスリモートコントローラに多用される波長950nmの光に対して、必要とする透過光量を得ることができる。
OD950/OD560は0.32以下であることが好ましく、0.30以下であることがより好ましい。なお、OD950/OD560の下限は0.1程度である。
さらに、本実施形態の赤外線透過黒色膜においては、OD560と、波長800nm以上2500nm以下の近赤外線(NIR)波長領域における各波長での光学濃度(ODNIR)との比(ODNIR/OD560)が、0.40以下であることが好ましい。ODNIR/OD560が0.40以下であれば、可視光に対する遮光性を有しつつ、工業用の各種近赤外線レーザーや、ブラックマトリックスパターン位置合わせ用の赤外線等に対して十分な透過光量を得ることができるので、赤外線透過黒色膜として好適に用いることができる。
ODNIR/OD560は0.37以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましい。なお、ODNIR/OD560の下限は0.01程度である。
また、本実施形態の赤外線透過黒色膜において、前記黒色材料の体積分率は、1.0体積%以上25体積%以下とすることが好ましい。体積分率をこの範囲とすることにより、黒色膜を形成したときに可視光域において十分な遮光性を確保できるとともに、近赤外域以上の光についても高い透過率を得ることができる。すなわち、黒色材料の体積分率が1.0体積%未満では、黒色材料が少なすぎるために可視光域の遮光性が不足する虞がある。一方、黒色材料の体積分率が25体積%を越えると、赤外線透過黒色膜が金属光沢性を帯びるために近赤外域以上の光の透過率も低下する可能性があること、また金属光沢性を生じない場合でも、黒色材料の量が多すぎるために近赤外域以上の光の透過率も低下する虞があるためである。上記黒色材料の体積分率は2.0体積%以上20体積%以下とすることがより好ましく、2.0体積%以上15体積%以下であればさらに好ましい。
なお、本実施形態の黒色膜において、上記黒色材料の体積分率は、赤外線透過黒色膜を構成する各成分の密度と、塗料作製時に添加するこれらの各成分の重量から、各成分の体積を計算することで求めることができる。
また、樹脂成分は比較的低温で分解や酸化により揮散するのに対し、黒色材料は金属のため高温まで安定であることから、熱重量分析(TG)による黒色膜の重量変化量から当該黒色膜中の樹脂成分と黒色材料との重量割合を求めることができ、一方、成分分析により樹脂成分と黒色材料それぞれの物質を特定すれば両物質の比重を求めることができるので、得られた重量割合と各成分の比重とから、本実施形態の黒色膜における黒色材料の体積分率を求めてもよい。
(黒色材料)
本実施形態における黒色材料としては、銀及び錫を主成分とする金属微粒子が好適に選択される。ここで、上記「銀及び錫を主成分とする」とは、金属微粒子において、少なくとも銀及び錫の両成分を含んでおり、かつ、銀及び錫の合計の含有量が金属微粒子全体に対して50質量%以上であることをいう。すなわち、成分及び含有量は金属微粒子全体に対して規定されるものであって、個々の粒子自体の成分及び含有量を規定するものではない。
従来より、粒子径が1nmから数百nm程度の金属微粒子(ナノメートルサイズの金属微粒子)は、金属の表面プラズモン吸収により様々な色調を呈することが知られており、また、この色調(すなわち吸収波長)は金属微粒子の組成や粒子径により変化することも知られている。本実施形態においては、組成や粒子径を調整することにより、可視光領域において黒色を呈するとともに赤外線領域において一定値以上の透過性を示す金属微粒子を選択すればよく、このような黒色金属微粒子として、銀及び錫を主成分とする金属微粒子を選択することができる。
この銀及び錫を主成分とする金属微粒子としては、銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子を好適に用いることができる。
ここで、銀及び錫を主成分とする金属微粒子が銀錫合金微粒子である場合、当該銀錫合金微粒子中における銀成分の含有率、すなわち銀及び錫の合計量に対する銀成分の比率(銀/(銀+錫):質量%)は、45質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上92質量%以下である。
また、銀及び錫を主成分とする金属微粒子が銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子である場合、当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子中における銀成分の含有率、すなわち銀及び錫の合計量に対する銀成分の比率(銀/(銀+錫):質量%)は、45質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上92質量%以下である。
前記銀成分の含有率を上記の範囲に限定した理由は、該銀成分の比率が45質量%以上95質量%以下であると、可視光の反射率が高くならず十分な黒色度を有する黒色膜となり、十分な光遮蔽性を得ることができるとともに、該黒色膜は赤外線の透過性も有しているからである。
なお、前記銀成分の好適な含有率範囲は、前記銀錫合金微粒子、もしくは前記銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子を一定量取ったとき、その微粒子全体における銀成分の好適な含有率範囲を示すものであって、個々の粒子における銀成分の好適な含有率範囲を示すものではない。
また、本実施形態における黒色材料の黒色膜中の平均分散粒子径は、1nm以上100nm以下であればよいが、2nm以上80nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であればより好ましい。上記膜中の平均分散粒子径が100nm以下であれば、黒色材料の微粒子が存在することに起因する、赤外線領域でのレイリー散乱やミー散乱が抑制され、赤外線の透過率減少を抑えることができる。
すなわち、前記のように本実施形態における黒色材料は赤外線領域において光透過性を有しているが、従来のように樹脂中に分散させる金属微粒子の平均一次粒子径を1nm以上200nm以下の範囲にするだけでは、赤外線領域においても発生するレイリー散乱やミー散乱を抑制することができず、結果として十分な赤外線透過特性が得られない。しかし、本実施形態のように黒色膜中の平均分散粒子径を100nm以下としてレイリー散乱やミー散乱を抑制することにより、赤外線領域においても十分な透過特性が得ることができる。
なお、光学素子において可視光のレイリー散乱やミー散乱の影響を防ぐためには、分散させた微粒子の平均分散粒子径が20nm以下であることが好ましいとされている。ただし、レイリー散乱やミー散乱は、その発生機構に基く波長依存性を有することから、可視光に比べて波長の長い赤外線の場合には許容される粒子径が拡大すること、また本実施形態における赤外線透過性は、光学素子ほどの高い透過性を必要とせず多少の散乱は許容されることから、平均分散粒子径の大きさを100nmまで拡大することができる。
一方、本実施形態における黒色材料の平均分散粒子径は1nm以上である。その理由として、平均粒子径が1nm未満の場合、粒子の結晶性が低下するために可視光の吸収状態が不安定になり、十分な黒色度が得られなくなる可能性があるためである。
本実施形態における赤外線透過黒色膜中における黒色材料の平均分散粒子径は、得られた赤外線透過黒色膜を、FIB(集束イオンビーム)等を用いて断面方向に薄片状に切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて該薄片中の黒色材料の粒子を観察して求めることができる。すなわち、TEM写真中から無作為に特定個数(通常数10個以上)の粒子を選択してその粒子径を測定し、その平均値を平均分散粒子径とすればよい。なお、本実施形態の粒子はほぼ球状であるため、各粒子の最大径を該粒子の粒子径とすればよい。
なお本実施形態において、前記銀錫合金微粒子とは、銀錫合金の結晶構造を有することで明確に銀錫合金と判断できるものだけではなく、銀の結晶構造を有するものを含んでもよい。
まず、銀錫合金の結晶構造を有するものの例としては、銀錫合金を化学式Ag1-XSnX(Xは実数)で表した場合のXの範囲として、0.118≦X≦0.2285のζ相及び0.237≦X≦0.25のε相が知られている(Binary Alloy Phase Diagram,p.94−97による)。また、銀の結晶構造を有するものとしては、銀結晶の構造を保った状態で、銀結晶中の銀原子の一部を錫原子が置換したものとなるが、前記文献では(Ag)相として示されており、この銀結晶構造を有する銀錫合金を化学式Ag1-YSnY(Yは実数)で表した場合、Yは、0<Y≦0.115と考えられている。
なお、上記においてY=0(Ag1Sn0)は銀単独相、すなわち銀微粒子に相当するため、銀錫合金微粒子として規定される上記Yの範囲からは除いてある。ただし、本黒色材料として好適に用いられる銀及び錫を主成分とする金属微粒子としては、銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子が好適であることから、本黒色材料中には、Y=0のものを含んでもかまわない。
また、この銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子からなる黒色材料は、実質的に錫微粒子を含有していない。ここで、実質的に錫微粒子を含有していないとは、X線回析法により錫の結晶構造を有する物質の存在が確認されないことを意味する。この黒色材料が錫微粒子を含有していると、該黒色材料を用いて形成した黒色遮光膜の光遮蔽性が大幅に低下する。
本実施形態における黒色材料の製造方法としては、上記の組成と粒子径が得られるものであれば特に制限はなく、気相反応法、噴霧熱分解法、液相反応法、凍結乾燥法、水熱合成法などの金属微粒子合成法を適用することができるが、特に黒色材料として、銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子を選択する場合においては、これらの微粒子が容易に得られる液相反応法を用いることが好ましい。
液相反応法としては、水系の反応系を用いることが好ましく、例えば、錫コロイド分散液中に銀化合物溶液を滴下し、錫と銀とを合金化させる方法、あるいは、銀コロイドと錫コロイドとが共存する分散液中に酸化剤や還元剤を添加することで、銀と錫とを合金化させる方法等を用いて、銀錫合金微粒子と銀微粒子とを生成させることができる。この製造方法であれば、反応条件(例えば、錫と銀(銀イオン)との比率、反応液のpH、反応温度、反応時間、酸化剤や還元剤の種類や量など)を適宜調整することにより、銀錫合金微粒子の生成量、銀微粒子の生成量(実質的に生成されない場合、すなわち銀錫合金微粒子のみが生成される場合を含む)、さらに銀錫合金微粒子と銀微粒子との生成量比を任意に制御することができる。
また、この黒色材料を樹脂成分中に均一に分散させるためや、黒色材料と樹脂成分との親和性を高めるために、黒色材料の表面を表面処理剤や分散剤により処理しておくことが好ましい。これらの表面処理剤や分散剤は、樹脂成分の材質や、樹脂成分中に黒色材料を分散させる方法に合わせて、公知のものの中から選択すればよいが、後述のように、表面処理剤や分散剤の種類とともに、分散方法や分散条件を併せて調整し、黒色材料を樹脂成分に良好に分散させることにより、本実施形態の赤外線透過黒色膜を得ることができる。
上記分散剤としては、高分子分散剤が好ましく、例えば、ウレタン系分散剤、変性ポリエステル系分散剤、ポリカルボン酸塩、ポリアルキル硫酸塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド等を挙げることができる。
また、後述の黒色塗料より、樹脂成分原料を硬化させて赤外線透過黒色膜を形成する際において、黒色材料の分散性を維持できるのに好ましい構造の高分子分散剤としては、ランダムコポリマー、櫛型コポリマー、ABA型コポリマー、BAB型コポリマー、両末端親水基含有ポリマー、片末端親水基含有ポリマーなどを選択することができる。これらの中で、後述の樹脂成分原料や樹脂成分原料と相溶性の高い溶剤に対する相溶性が高いこと、言い換えれば、樹脂成分、樹脂成分原料、樹脂成分原料と相溶性の高い溶剤中における黒色材料の分散性が高いことを考慮すると、ランダムコポリマー、ならびに櫛型コポリマーが好ましい。
上記分散剤の具体例としては、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)、KP(信越化学社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)などを挙げることができる。
また、前記表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤等を挙げることができる。
この黒色材料は、材料自身の特性により、黒色度が高く可視光の遮光性に優れるとともに、赤外線透過性を有している。そして、分散粒子径を制御することにより、粒子に起因する赤外線の散乱も抑制されている。さらに、無機材料により構成されているために、化学的な安定性も高く、太陽光や、蛍光灯などの紫外線にさらされても、退色などの懸念がない。
(樹脂成分)
樹脂成分としては、上記黒色材料が分散可能であって、使用する赤外線の波長領域に強い吸収を有さないものであれば、無機系樹脂、有機系樹脂のいずれでも良く、特に限定されるものではないが、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの有機樹脂、ならびに液晶用やMEMS用レジスト化合物などを好適に用いることができる。また、膜の硬度を向上させるためや、膜の屈折率を調整するための無機物質からなるフィラー材や、塗布基材との密着性を向上させるための添加剤などを添加してもかまわない。
アクリル系樹脂としては、例えば後述の樹脂成分原料に記載のアクリル系樹脂モノマー、オリゴマー、プレポリマーから選択される1種ないし2種以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを基とする重合体から選択することができるが、重合体の例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ−トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びポリ−ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂などを挙げることができる。なお、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。以下同様である。
また、エポキシ系樹脂としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスヘノールメタン型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートとスチレンの共重合体エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートとスチレンとメチル(メタ)アクリレートの共重合体エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートとシクロヘキシルマレイミドの共重合体エポキシ樹脂、及びフルオレン系エポキシ樹脂などを挙げることができる。
ポリエステル系樹脂としては、塗料に一般的に用いられているものなら限定はされないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸などの多価カルボン酸とエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールの重縮合物などが挙げられる。また、ポリウレタン系樹脂も、塗料に一般的に用いられているものなら限定はされず、例えば、イソシアネート基とポリオールを反応させて鎖延長されたポリウレタン樹脂が好ましい。上記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。
(その他の成分)
本実施形態の赤外線透過黒色膜には、前記黒色材料及び樹脂成分以外に、フィラー材等の種々の成分が含まれていてもよい。
フィラー材は、赤外線透過黒色膜の硬度を向上させるためや屈折率を調整することを目的として、添加することが可能である。当該フィラー材としては、無機物質、特に無機酸化物が安定であり好ましい。このフィラー材の分散粒子径は、赤外線の散乱を起こさない必要があることから、黒色膜中の平均分散粒子径が50nm以下であることが好ましい。
赤外線透過黒色膜の硬度を向上させるためのフィラー材としては、樹脂成分と同程度の屈折率を有する無機酸化物が好ましく、入手の容易性や価格等の面から、シリカ(二酸化ケイ素)微粒子が好適に用いられる。
また、屈折率の調整用としては、高屈折率化を目的とする場合には、例えばジルコニア、チタニア等の高屈折率材料からなる微粒子を用いればよく、一方低屈折率化を目的とする場合には、例えばナノポーラスシリカや中空シリカ等の微小空隙を有する低屈折率性の微粒子を用いればよい。
なお、本実施形態の赤外線透過黒色膜において黒色材料として用いられる銀錫合金微粒子及び銀微粒子から構成される微粒子は、従来の黒色膜において黒色材料として用いられるカーボンブラックやチタンブラックに比べて黒色度が高いことから、前述のように、膜中の含有量を1.0体積%以上25体積%以下の範囲まで低減させることができる。このため、黒色材料以外の物質を添加しても、膜の形成性や膜自体の特性を維持することができることから、このようなフィラー材を加えることが可能になる。
[赤外線透過黒色膜の製造方法]
本実施形態の赤外線透過黒色膜は、例えば次のようにして得ることができる。
まずはじめに、黒色材料を準備する。
黒色材料としては、前述の銀及び錫を主成分とする金属微粒子が好適であり、特に銀錫合金微粒子及び銀微粒子から構成される微粒子をより好適に用いることができる。そして、その製法についても、例えば、前記のような液相反応法を用いることが好ましい。
ここで黒色材料は、金属が主成分であり、また水系反応系の液相反応法で好適に製造されることからもわかるように、親水性表面を有する微粒子である。したがって、このような黒色材料を前記樹脂成分原料に均一に混合するためには、樹脂成分原料に直接分散できる形にしたり、樹脂成分原料と相溶性の高い溶剤に黒色材料を分散させる必要があり、そのためには高分子分散剤や表面処理剤による表面処理を行なうことが好ましい。なお、以下の説明では、高分子分散剤と表面処理剤とを併せて「高分子分散剤等」と表記する場合がある。また、樹脂成分原料については後述する。
上記表面処理において、黒色材料表面に結合する高分子分散剤等の量は、黒色材料に対して5〜30質量%の範囲であることが好ましい。さらに、黒色材料の組成や一次粒子径、黒色材料を分散混合させる後述の樹脂成分原料の組成により、より好適な範囲が存在する。その理由として、この黒色材料を用いて形成された黒色塗料から、塗膜を形成し、さらに赤外線透過黒色膜を形成する場合において、塗膜中や赤外線透過黒色膜中における黒色材料の分散性を確保するためには、黒色材料に対する高分子分散剤等の添加量を厳密に調整しておく必要があるためである。
すなわち、高分子分散剤等の量が少ない場合には、黒色材料粒子表面の一部に高分子分散剤等の被覆量が少ない部分ができてしまい、その部分における樹脂成分原料や溶剤への親和性が低下する一方で黒色材料粒子同士の親和性が残存するために、黒色材料を樹脂成分原料または溶剤分散後に、この高分子分散剤等の被覆量が少ない部分から黒色材料粒子同士が凝集してしまうおそれがある。
一方、高分子分散剤等の量が過多である場合、分散剤自体が分散性を低下させる因子となるおそれがある。さらに、樹脂成分原料を硬化させて赤外線透過黒色膜を形成する場合において、過剰の高分子分散剤等が樹脂成分原料の重合による硬化を阻害してしまい、十分な膜強度が得られなくなるおそれがある。また、フォトレジストなどを硬化樹脂に用いた場合、光による露光後の現像工程において、現像性が悪くなることも挙げられる。
このように、黒色材料に対する高分子分散剤等の添加量を厳密に調整するためには、親水性表面を有する黒色材料粒子を分散させた水系溶媒中に高分子分散剤等を加えて攪拌等を行うことで黒色材料粒子の表面に高分子分散剤等を被覆処理させた後、溶媒のみを除去する方法、例えばエバポレーターなどを用いて黒色材料粒子の乾燥を行うことが好ましい。このようにすれば、黒色材料粒子に対して設計量の高分子分散剤を用いることができる。
さらに、高分子分散剤等による表面処理時点においては分散剤の処理が不均一であっても、当該表面処理された黒色材料粒子を樹脂成分原料や樹脂成分原料と相溶性の高い溶剤に分散させた後において、黒色材料粒子に対する高分子分散剤等の吸脱着平衡により、各粒子に対する高分子分散剤等の被覆を均一にすることができるので、黒色材料の均一な分散性も確保されることになる。
一方、この表面処理において、従来一般的に行なわれている分散処理方法を用いることは好ましくない。
すなわち、従来の分散剤処理方法では、親水性表面を有する黒色材料粒子を分散させた水系溶媒中に高分子分散剤を加えて攪拌等を行うことで黒色材料粒子の表面に高分子分散剤等を被覆処理させた後、被覆処理により凝集沈降した黒色材料粒子を溶媒から濾過や遠心分離等により分離し、乾燥させることで、高分子分散剤による表面処理を行なっている。あるいは、水系あるいは極性溶媒中で上記のように高分子分散剤を被覆処理した粒子を、直接非水溶媒中に抽出・分散することにより、溶剤置換を行っている。しかしながら、これらの方法では、分離した水系溶液中に高分子分散剤等の一部が残留してしまうため、高分子分散剤等の被覆量は設計した量よりも少なくなってしまう。このため、前記のように黒色材料粒子同士が凝集する等の問題が生じる可能性がある。
さらに、溶液中に残留した高分子分散剤等の量を見積もることが難しいため、残留相応量の高分子分散剤等を余分に添加することが難しく、添加量が少なければ高分子分散剤等の量が不足した場合の問題は解決されず、一方添加量が過剰の場合には、高分子分散剤等の量が過多となり、樹脂成分原料の硬化阻害等の問題を起こす可能性がある。
また、得られた高分子分散剤等により表面処理された黒色材料における水分量は、処理粒子に対して2.0質量%以下であることが好ましい。これは、後述の、黒色塗料より塗膜を形成し、さらに樹脂成分原料を硬化させて赤外線透過黒色膜を形成する際において、黒色材料粒子同士の凝集や樹脂の白化等を防ぐためである。
すなわち、塗膜中に樹脂成分原料と相溶性の高い溶剤と水分が共に含まれていた場合、乾燥により樹脂成分原料と相溶性の高い溶剤が除去されて水分量が相対的に上昇していくと、ある一定値を超えたところで、塗膜中の溶解パラメーターが大きく変化し、粒子同士の凝集や、樹脂の白化といった現象を引き起こす虞がある。この問題を防ぐためには、黒色塗料の水分量を極力小さくしておく必要があり、水分の混入が最も起こりやすい高分子分散剤等による表面処理時点において、黒色材料の水分量をできるだけ小さくしておくことが好ましいためである。
このような高分子分散剤等による表面処理を行なった黒色材料の水分量を低減させる方法としても、前記の溶媒のみを除去する方法、例えばエバポレーターなどを用いて黒色材料粒子の乾燥を行う方法を好適に用いることができる。
一方、例えば表面処理を行なった黒色材料を150℃以上の乾燥機を用いて長時間加熱することで水分を除去する方法もあるが、この場合、低分子の分散剤が揮発したり分解してしまい、分散剤の処理量の変化や変質を招くことになるため、好ましくない。
次に、高分子分散剤等により表面処理を行なった黒色材料と、樹脂成分原料とを含む黒色塗料を作製する。ここで、樹脂成分原料とは、液状であり、硬化や溶剤留去等により前記樹脂成分を形成するものであって、樹脂成分のモノマー、オリゴマー、プレポリマーのほか、樹脂成分を溶剤に溶解したもの、さらには樹脂成分のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを溶剤に溶解したものも含まれる。
上記樹脂成分のモノマー、オリゴマー、プレポリマーが液状の場合には、この樹脂成分モノマー、オリゴマー、プレポリマーをそのまま樹脂成分原料とし、この中に黒色材料を混合分散させ、黒色塗料を作製してもよい。また、適当な溶剤中に樹脂成分または固体状の樹脂成分モノマー、オリゴマー、プレポリマーを溶解させて液状とした溶液や、液状の樹脂成分のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを溶媒中に希釈させた溶液を樹脂成分原料として、この中に黒色材料を混合分散させ、黒色塗料を作製してもよい。
また、この黒色塗料中は、前記のフィラー材や後述の添加剤を含んでもよい。
本実施形態では、上記高分子分散剤等により表面処理を行なった黒色材料を微粒子の状態で樹脂成分原料中に混合して分散させ黒色塗料を形成してもよく、またあらかじめ樹脂成分原料と相溶性の高い溶剤中に黒色材料を分散させた黒色材料分散液を作製し、この分散液と樹脂成分原料とを混合することで、黒色塗料を形成してもよい。なお、この黒色材料分散液中には、前記のフィラー材をあらかじめ分散させておいてもよく、また後述の添加剤を溶解させておいてもよい。
前記黒色塗料や黒色材料分散液中における黒色材料の平均分散粒子径は、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下である。黒色塗料や黒色材料分散液中の平均分散粒子径が100nm以下とすることにより、この塗料や分散液を用いて作製される赤外線透過黒色膜中の黒色材料の平均分散粒子径を100nm以下に抑えることができ、結果として赤外線領域でのレイリー散乱やミー散乱の発生に基づく赤外線の透過率減少を抑制することができる。
なお、上記平均分散粒子径は、調製した黒色塗料等にについて、動的光散乱法を適用した粒度分布測定装置(例えば、Microtrac 9340−UPA、日機装社製)を用いて粒度分布を測定し、個数分布の小粒径側から50個数%の値を平均分散粒子径として求めることができる。
樹脂成分原料としては、樹脂成分のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを好適に用いることができる。
アクリル系樹脂のモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレンクリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びグリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマー;並びに、これらを含有するポリエステル化合物、ウレタン化合物、ビスフェノール系(メタ)アクリレート化合物、及びフルオレン系(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。また、オリゴマーやプレポリマーとしては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ−トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びポリ−ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂などが挙げられる。
またこのほかのアクリル樹脂としては、例えばDIC(株)製「アクリディック」シリーズなどの、焼付け型アクリル樹脂を用いることもできる。
また、エポキシ樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーとしては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フルオレン系エポキシ樹脂、トリスヘノールメタン型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートとスチレンの共重合体エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートとスチレンとメチル(メタ)アクリレートの共重合体エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートとシクロヘキシルマレイミドの共重合体エポキシ樹脂等の架橋ネットワーク化前のプレポリマーなどを挙げることができる。
本実施形態では、樹脂成分原料が紫外線感光性を有することが、後述するように、塗布乾燥膜に対して露光、現像を行って複雑なデザインや意匠性を高めた形状とした黒色膜を形成することができる点で好ましい。また、紫外線感光性を有する樹脂成分原料を用いることにより、黒色パターン形成用のブラックレジストとしても使用することもできる。
ここで、紫外線感光性としてはネガ型(現像により感光部が残留する)とポジ型(現像により感光部が除去される)があるが、ネガ型であることが好ましい。その理由として、この赤外線透過黒色膜ないしは黒色膜材料は紫外線に対しても遮光性を有するため、露光部(紫外線照射部)においても膜の底部が十分に感光されない状態となりやすく、ポジ型の場合は残膜が発生しやすくなるため、この影響を防ぐためにはネガ型のほうが好ましいためである。
上記紫外線感光性を有する樹脂成分原料としては、市販のレジスト材料を用いることができるほか、前記のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂に、光反応化剤を添加しても良い。前記市販のレジスト材料としては液晶用やMEMS用のものを用いることが好ましいが、この理由としては、これらのレジスト材料により形成された膜に対して熱硬化等の処理を行うことにより、永久膜としての形成が可能となるからである。
前記市販のレジスト化合物としては、例えば、昭和高分子社製「リポキシ」PRシリーズ、SPCシリーズや、日本化薬社製「ZCR1569H」などを用いることができる。また、液晶のブラックマトリックスやカラーフィルター形成用として市販されている顔料分散レジストのレジスト成分(顔料を除いたもの)が使用できれば、より好ましい。
また、黒色塗料にはこれらの樹脂成分原料を硬化させるための反応開始剤を添加しても良い。反応開始剤としては、熱や光によりラジカルを発生させて樹脂成分の重合を開始/促進させる物質であればよいが、光反応開始剤としては、例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社の、ダロキュアシリーズ(例えば1173等)や、イルガキュアシリーズ(例えば651、184、908、2959、OXE01、OXE02等)などが挙げられ、これらを単独でも、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
このように、樹脂成分原料に光硬化性を持たせることにより、樹脂成分原料をネガ型レジストとしても扱うことができる。
樹脂成分原料に用いられる溶剤や、黒色材料分散液に用いられる溶剤としては、使用する樹脂成分(原料)の溶解性及び黒色材料の分散性を保つことができるものであれば特に限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等を挙げることができる。
なお、樹脂成分原料と黒色材料分散液に用いられる溶剤とが十分な相溶性を有することは当然であるが、樹脂成分原料に溶剤が含まれる場合、当該溶剤と、黒色材料分散液における溶剤との間にも、十分な相溶性が必要である。相溶性が不足した場合、両者を混合して黒色塗料を作製した場合に、黒色材料の凝集や沈降、塗料の不均化を起こす可能性がある。
前記黒色塗料や黒色材料分散液を得るための混合分散は、黒色材料と樹脂成分原料や溶剤等を含む混合液を、超音波分散機、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、アイガーミルなどの公知の混合分散機を用いて、前記黒色材料の平均分散粒子径が得られるような分散条件を設定して、分散処理することにより行うことができる。
さらに黒色材料の混合時には、粘度や分散状態を調整するための溶剤の追加や、前記のフィラー材や硬化剤の添加のほか、膜の硬度を向上させるための低分子量の架橋剤の添加や、形成する赤外線透過黒色膜と塗布基材との密着性を向上させるためのシランカップリング剤などを、形成する赤外線透過黒色膜の特性を劣化させない範囲で添加してもかまわない。
このようにして得られた黒色塗料を基板上に塗布して塗布膜を形成する。
使用する基板としては、赤外線透過黒色膜の使用方法や使用形態に合わせて選択すればよく、特に限定はされないが、例えばガラスなどの無機基板のほか、アクリル基板、ポリカーボネート基板のように硬度の高い基板を使用すれば、赤外線透過黒色膜を有する構造体を得ることができる。また、PET(ポリエチレンテレフタレート)や、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサルフォン)、TAC(トリアセチルセルロース)などの高分子フィルムなどを使用すれば、可撓性を有する赤外線透過黒色膜を得ることもできる。
また、黒色塗料の塗布方法(塗布膜形成方法)も特に限定されるものではないが、スピンコート法、フローコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、バーコート法、インクジェット法などを挙げることができる。
得られた塗布膜を硬化あるいは溶剤を揮発除去させること等により、赤外線透過黒色膜を得ることができる。なお、上記硬化により黒色膜を得るに際し、黒色塗料中に溶剤を含む場合には、初めに塗布膜中の溶剤を除去して塗布乾燥膜(溶媒が除去されることにより固体の膜状になっているが、樹脂成分の重合硬化はほとんど起こっておらず、溶剤と接触させることにより再度溶剤中への溶解が可能な状態の膜)を形成後、塗布膜を硬化させる。
硬化方法としては、樹脂成分原料のモノマー、オリゴマー、プレポリマーが熱重合を開始する温度で加熱してもよく、また反応開始剤を添加した場合には、反応開始剤に対応した熱や光の印加を行えばよい。また、両方を併用してもかまわない。
次に、前記紫外線感光性を有する樹脂成分原料を含む黒色塗料を用いた塗布膜に対して、紫外線照射(露光)、現像を行って、複雑な形状を得るプロセスについて、簡単に説明する。
露光方式には特段の制限はないが、平面形状のものであれば、市販の紫外線露光装置とフォトマスクとを使用することで、容易に露光を行うことができる。また、光源として紫外線レーザーを用い、微細なレーザービームをスキャンすることで塗布乾燥膜に直接パターンを書き込む、いわゆる直接描画(直描)を行うこともできる。
現像方式にも特段の制限はなく、ディップ式やパドル式などの通常の方法を用いればよい。また、これら露光や現像の条件は、使用する樹脂成分原料や要求する形状に合わせて、適宜選択・調整すればよい。
上記プロセスにしたがって、樹脂成分原料に例えばレジスト材料を用い、塗布乾燥膜に対して露光、現像を行って複雑形状を得るものの好例としては、後述のブラックマトリックスを挙げることができる。
[赤外線透過黒色膜を有する膜付き基材]
前述のように、本実施形態の赤外線透過黒色膜は適当な基板上に形成されることから、赤外線透過黒色膜を基材上に形成することにより、赤外線透過黒色膜を有する膜付き基材を得ることができる。
上記基材としては、前述の黒色膜の形成において挙げた基板を同様に用いることができる。その形状としては、平板、フィルム状、シート状等が挙げられる。この基材をあらかじめ必要とする形状に成型しておくか、あるいは得られた赤外線透過黒色膜を有する膜付き基材を成型加工することにより、ワイヤレスリモートコントローラなどの信号カバー等の製品を得ることができる。また、基材上にマトリックスパターンで黒色膜を形成させれば、ブラックマトリックスを得ることができる。その他、基材の形状、黒色膜の形態によらず、基材上に本実施形態の赤外線透過黒色膜が形成されたものは、すべて本実施形態の膜付き基材に含まれる。
[画像表示装置]
本実施形態の赤外線透過黒色膜は、画像形成装置における表示素子等を構成する構成要素として好適に用いることができる。すなわち、本実施形態の画像表示装置は、装置内に本実施形態の黒色膜を有していればよく、その態様は装置内に本実施形態の膜付き基材を備えるものであってもよいし、それ以外であってもよい。前記画像形成装置としては、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置、液晶表示装置等が挙げられ、中でも液晶表示装置やEL表示装置に用いた場合に本実施形態の黒色膜の効果が顕著に発揮される。
例えば、前記のように紫外線感光性を有する樹脂形成成分を用いることにより、黒色塗料を液晶のブラックマトリックスやカラーフィルター形成用としての顔料分散レジスト(ブラックレジスト)として使用することが可能となる。そして、これにより形成された本実施形態の赤外線透過黒色膜を、液晶等の画像表示装置用ブラックマトリックスやカラーフィルターとして使用することができる。
すなわち、ブラックマトリックス用基板上に、前記黒色塗料を用いた塗布乾燥膜を形成した後、露光・現像によりブラックマトリックスパターンを形成させ、さらに熱硬化等によりブラックマトリックスパターンを硬化して永久膜化すれば、本実施形態の赤外線透過黒色膜を用いたブラックマトリックスを作製することができる。さらに、このブラックマトリックスパターンとカラーフィルター素子/パターンを組み合わせることにより、カラーフィルターを作製することができる。
ここで、前述のCOA方式やBOA方式のブラックマトリックスにおいては、アレイとブラックマトリックスパターンとを直接位置合わせする必要があるが、本実施形態の黒色膜は赤外線透過性を有しており、さらには原理的に塗布乾燥膜も赤外線透過性を有しているから、850〜950nmの波長範囲の赤外線を使用する位置合わせ信号を容易に読み取ることができる。従って、COA方式やBOA方式のブラックマトリックスをも、容易に作製することができる。
本実施形態の画像表示装置は、前記カラーフィルター以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ.視野角補償フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、防眩フィルムなど、様々な部材から一般に構成されが、本実施形態の黒色膜は、これらの部材等にも必要により適用可能である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
<各測定・評価方法>
以下に、実施例または比較例において採用した、材料及びシートの特性等の各測定または評価方法を示す。
(黒色材料中の銀成分の含有率)
黒色材料(銀錫合金微粒子もしくは該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子)中の銀成分の含有率は、黒色材料粉末の圧粉体を電子線マイクロアナライザー(EPMA、日本電子社製、JXA8800)にて分析し、定性ならびに定量分析によって粉末中の錫及び銀の含有比率(質量比)を測定することによって求めた。
(高分子分散剤により表面処理された黒色粉末における水分量と高分子分散剤量)
高分子分散剤により表面処理を行い乾燥させた黒色材料からなる黒色粉末の水分量ならびに高分子分散剤量は、黒色粉末をTG−DTA(リガク社製、TG−8210)を用いて測定した。DTAの結果から、室温から120℃までの重量減少が水分の蒸発に依るもの、140℃から500℃までの重量減少が高分子分散剤の熱分解に依るものとし、それぞれの温度範囲における重量減少量をもって、水分量及び高分子分散剤量とした。
(黒色膜の可視光領域における光学濃度)
赤外光透過黒色膜の可視光域における光学濃度(OD値:Optical Densty)は、黒色膜付きガラス基板について透過率濃度計(TECHKON社製:RT-120)を用いて測定し、ガラス基板単体(膜なし)の測定値を参照値とすることにより、赤外線透過黒色膜自体のOD値を得た。
(黒色膜の透過率及び各波長ごとの光学濃度比)
赤外線透過黒色膜の透過率は、赤外線透過黒色膜付ガラス基板について、分光光度計を用いて、370〜2500nmの分光透過率を測定し、ガラス基板単体(膜なし)を参照値として赤外透過黒色膜の各波長における光透過率を求めた。なお、上記分光光度計は、測定波長と測定光量により、日立製作所社製のU−4100(測定波長範囲:200〜2500nm、検出限界:0.001%)、大塚電子社製のMCPC−3700(測定波長範囲:300〜1000nm、検出限界:0.000001%)を併用した。
一方、各波長ごとの光学濃度比は、上記により得られた波長560nmにおける透過率(T560)、波長800nmにおける透過率(T800)、波長950nmにおける透過率(T950)、波長1064nmにおける透過率(T1064)、波長1500nmにおける透過率(T1500)、波長2000nmにおける透過率(T2000)、波長2500nmにおける透過率(T2500)の値と、各波長の透過率から、下記式(1)により光学濃度(OD値)を算出し、波長800nmから2500nm(NIR)の各波長におけるOD値と、波長560nmにおけるOD値との比(ODNIR/OD560)を求めた。
OD=−log(T/100) ・・・ (1)
(黒色材料の黒色膜中の平均分散粒子径)
黒色材料の黒色膜中の平均分散粒子径は、得られた赤外線透過黒色膜をFIBを用いて断面方向に薄片状に切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製、JEM−2100F)にて膜断面の黒色材料の粒子形状を観察するとともに、TEM写真中から無作為に50粒子を選択して、その粒子径(最大径)を測定し、その平均値を平均分散粒子径とした。
なお、本実施形態の粒子はほぼ球状であるため、各粒子の最大径を該粒子の粒子径としても問題はない。
<実施例1>
(黒色膜の形成)
60℃に保温した純水200mlに、錫(Sn)コロイド分散液(平均一次粒子径:20nm、固形分:20質量%、住友大阪セメント社製)を15.0gと、銀(Ag)コロイド(平均粒子径:7nm、固形分:20質量%、住友大阪セメント社製)60.0gと、0.75質量%ポリビニルピロリドン(PVP、東京化成工業社製、商品名:K15)水溶液100gを加え、コロイド溶液とした。
次いで、このコロイド溶液を攪拌しながら、これに0.05mol/lの硝酸水溶液75gをゆっくり滴下し、さらに、10.0質量%のクエン酸水溶液450.0gを加え混合液とした。
次いでこの混合液を、マグネチックスターラーを用いて60℃にて10時間攪拌して反応させ、その後、遠心分離により、洗浄及び濃縮を行い、黒色粒子濃度15.0質量%のコロイド液Aを得た。その後、このコロイド液A100.0gに対して、7.5gの櫛形ウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、商品名:Disper Byk161、不揮発分:30質量%)を添加した後、エバポレーターにより溶剤除去及び乾燥させ、黒色粉末Aを得た。得られた黒色粉末Aの水分量と高分子分散剤量を前述の方法により測定した結果、水分量は1.5質量%、高分子分散剤量は13.05質量%であった。
この黒色粉末A中の生成相を粉末X線回折法により同定したところ、錫の存在は確認されず、銀錫合金相(Ag3Sn及び/又はAg4Sn構造)、銀相(Ag構造)の存在が確認された。なお、銀錫合金相においてはAg3SnとAg4SnとのX線回折パターンが近似しているため、2成分のうちいずれが生成しているか、あるいは両成分がともに生成しているのかの同定はできていない。また銀相とは、銀結晶構造を有する相を示すものであって、銀成分100%には限定されず、錫が固溶している可能性がある。
さらに、黒色粉末Aの圧粉体を電子線マイクロアナライザー(EPMA)にて分析し、錫及び銀の含有比率(銀/(銀+錫):質量比)を求めたところ、銀/(銀+錫)=91.3%であった。
得られた黒色粉末A:17.25gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート82.75gを添加し、超音波を20分間照射することにより、黒色分散液Aを得た。この黒色分散液A:50gに、樹脂成分原料としてアクリル樹脂溶液(KAYARAD ZCR−1569H、日本化薬社製、不揮発分:70質量%)8.78g及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1.54gを加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを0.61g加えた後、超音波分散機にて、5分間処理を行い、1時間放置して黒色塗料Aとした。
この黒色塗料A中の黒色材料の平均分散粒子径を測定したところ、22nmであった。
上記黒色塗料Aをスピンコート法により、厚み0.7mmの無アルカリガラス基板上に塗布し、黒色の塗布膜とした。ここでは、スピンコートの回転数を調整することにより、塗膜の厚みを制御し、加熱硬化後の赤外線透過黒色膜の厚さが1.0μmになるようにした。
次いで、上記塗布膜を形成したガラス基板を、加熱装置を用い、大気中で230℃にて1時間加熱し、赤外線透過黒色膜A−1付きガラス基板を得た。
(黒色膜の評価)
−光学特性の評価−
上記により得られた赤外線透過黒色膜A−1付きガラス基板を用いて、前述の方法により、可視光域における光学濃度(OD値:Optical Densty)、並びに、波長560nm、800nm、950nm、1064nm、1500nm、2000nm及び2500nmにおける各透過率(T(%))を測定した。またこれらの透過率から光学濃度(OD)を求めた。結果をまとめて第1表、第2表に示す。
また、波長800nmから2500nmの各波長における光学濃度(ODNIR)と、波長560nmにおける光学濃度(OD560)との比(ODNIR/OD560)の値を第3表に示す。
−黒色材料の黒色膜中の平均分散粒子径−
上記赤外線透過黒色膜A−1について、前述の方法にしたがって透過型電子顕微鏡(TEM)により膜中の黒色材料の粒子形状を観察した。膜断面のTEM観察写真を図1に示す。また、このTEM写真から、分散粒子の粒子径を測定し平均分散粒子径を求めた。結果を第3表に併せて示す。なお、前述の方法により測定した膜中の黒色材料の体積分率は、10体積%であった。
<実施例2>
実施例1で得られた黒色塗料Aを用い、加熱硬化後の膜厚が0.5μmになるようにスピンコートの回転数を調整した以外は、実施例1と同様の方法にて、赤外線透過黒色膜A−2付きガラス基板を得た。
得られた赤外線透過黒色膜A−2付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
<実施例3>
実施例1で得られた黒色塗料Aを用い、加熱硬化後の膜厚が0.13μmになるようにスピンコートの回転数を調整した以外は、実施例1と同様の方法にて、赤外線透過黒色膜A−3付きガラス基板を得た。
得られた赤外線透過黒色膜A−3付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
<実施例4>
実施例1で得られた黒色分散液A50gに、さらに樹脂成分原料としてアクリル樹脂溶液(KAYARAD ZCR−1569H、日本化薬社製、不揮発分:70質量%)42.09g及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7.37gを加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを0.61g加え、超音波分散機にて、5分間処理を行い、1時間放置して黒色塗料Bとした。次いで、該黒色塗料Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、赤外線透過黒色膜B−1付きガラス基板を得た。
得られた赤外線透過黒色膜B−1付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
<実施例5>
(黒色膜の形成)
60℃に保温した純水200mlに、錫(Sn)コロイド分散液(平均一次粒子径:20nm、固形分:20質量%、住友大阪セメント社製)を15.0gと、銀(Ag)コロイド(平均粒子径:7nm、固形分:20質量%、住友大阪セメント社製)60.0gと、0.75質量%ポリビニルピロリドン(PVP:東京化成工業社製、商品名:K15)水溶液100gを加え、コロイド溶液とした。
次いで、このコロイド溶液を攪拌しながら、これに0.05mol/lの硝酸水溶液75gをゆっくり滴下し、さらに、10.0質量%のクエン酸水溶液450.0gを加え混合液とした。
次いでこの混合液を、マグネチックスターラーを用いて60℃にて48時間攪拌して反応させ、その後、遠心分離により、洗浄及び濃縮を行い、黒色粒子濃度15.0質量%のコロイド液Cを得た。その後、このコロイド液C100.0gに対して、7.5gの櫛形ウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、商品名「Disper Byk161」、不揮発分:30質量%)を添加した後、エバポレーターにより溶剤除去及び乾燥させ、黒色粉末Cを得た。得られた黒色粉末Cの水分量と高分子分散剤量を前述の方法により測定した結果、水分量は1.5質量%、高分子分散剤量は13.03質量%であった。
この黒色粉末C中の生成相を粉末X線回折法により同定したところ、錫の存在は確認されず、銀錫合金(Ag3Sn及び/又はAg4Sn)相、銀(Ag)相の存在が確認された。なお、銀相には、実施例1と同様、錫が固溶している可能性がある。
さらに、黒色粉末Cの圧粉体を電子線マイクロアナライザー(EPMA)にて分析し、錫及び銀の含有比率(銀/(銀+錫):質量比)を求めたところ、銀/(銀+錫)=88.2%であった。
続いて、実施例1の黒色塗料Aの調製において、黒色粉末Aの代わりに黒色粉末Cを用いた以外は、黒色塗料Aの調製と同様にして黒色塗料Cを得た。また、該黒色塗料Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、赤外線透過黒色膜C−1付きガラス基板を得た。
得られた赤外線透過黒色膜C−1付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
<実施例6>
実施例5で得られた黒色塗料Cを用い、加熱硬化後の膜厚が0.5μmになるようにスピンコートの回転数を調整した以外は、実施例5と同様の方法にて、赤外線透過黒色膜C−2付きガラス基板を得た。
得られた赤外線透過黒色膜C−2付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
<実施例7>
実施例5で得られた黒色塗料Cを用い、加熱硬化後の膜厚が0.13μmになるようにスピンコートの回転数を調整した以外は、実施例5と同様の方法にて、赤外線透過黒色膜C−3付きガラス基板を得た。
得られた赤外線透過黒色膜C−3付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
<実施例8>
実施例1で得られた黒色分散液A50gに、さらに樹脂成分原料としてアクリル樹脂溶液(KAYARAD ZCR−1569H、日本化薬社製、不揮発分:70質量%)2.05g及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.36gを加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを0.61g加え、超音波分散機にて、5分間処理を行い、1時間放置して黒色塗料Dとした。次いで、該黒色塗料Dを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、赤外線透過黒色膜D−1付きガラス基板を得た。
得られた赤外線透過黒色膜D−1付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
<実施例9>
実施例1における黒色粉末Aの調製において、櫛型ウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、商品名Disper Byk161、不揮発分:30質量%)を12.5gとした以外は黒色粉末Aと同様にして黒色粉末Eを調製した。
得られた黒色粉末E:18.75gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート81.25gを添加し、超音波を20分間照射することにより、黒色分散液Eを得た。この黒色分散液E50gに、さらに樹脂成分原料としてアクリル樹脂溶液(KAYARAD ZCR−1569H、日本化薬社製、不揮発分:70質量%)7.37g及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1.29gを加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを0.61g加え、超音波分散機にて、5分間処理を行い、1時間放置して黒色塗料Eとした。次いで、該黒色塗料Eを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、赤外線透過黒色膜E−1付きガラス基板を得た。
得られた赤外線透過黒色膜E−1付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
<比較例1>
カーボンブラック(シースト3(HAF)、東海カーボン(株)製)15gに、櫛形ウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、商品名:Disper Byk161、不揮発分:30質量%)を2.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを84.25g添加し、超音波を20分照射することにより、黒色分散液Fを得た。
なお、黒色分散液Fの一部を取り、エバポレーターにより溶剤除去及び乾燥させて黒色粉末Fとした後、当該黒色粉末Fの水分量と高分子分散剤量を前述の方法により測定した結果、水分量は0.1質量%以下であった。一方、高分子分散剤量は、測定温度範囲でカーボンブラック自体の質量減少も生じるため、測定できなかった。
次に、この黒色分散液F50gに、樹脂成分原料としてアクリル樹脂溶液(KAYARAD ZCR−1569H、日本化薬社製、不揮発分:70質量%)8.86g及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1.55gを加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを0.61g加えた後、超音波分散機にて、5分間処理を行い、1時間放置して黒色塗料Fとした。
この黒色塗料F中のカーボンブラックの平均分散粒子径を測定したところ、145nmであった。
実施例1の黒色膜の形成において、黒色塗料Aの代わりに黒色塗料Fを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、黒色膜F−1付きガラス基板を得た。
得られた黒色膜F−1付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。
なお、得られた黒色膜F−1について、実施例1と同様の方法によりTEMにより観察した。膜断面のTEM観察写真を図2に示す。この観察写真から、分散しているカーボンブラックの平均分散粒子径についても、実施例1と同様の方法で測定を試みたが、カーボンブラック粒子が大きな凝集体として、膜中にネットワークを形成しているような観察像であったために個々の粒子形状や寸法の確認ができず、分散粒子径の算出ができなかった。
<比較例2>
比較例1で得られた黒色塗料Fを用い、加熱硬化後の膜厚が0.5μmになるようにスピンコートの回転数を調整した以外は、比較例1と同様の方法にて、黒色膜F−2付きガラス基板を得た。
得られた黒色膜F−2付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。なお、カーボンブラックの平均分散粒子径は、比較例1と同様の理由により算出できなかった。
<比較例3>
比較例1で得られた黒色塗料Fを用い、加熱硬化後の膜厚が0.13μmになるようにスピンコートの回転数を調整した以外は、比較例1と同様の方法にて、黒色膜F−3付きガラス基板を得た。
得られた黒色膜F−3付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。なお、カーボンブラックの平均分散粒子径は、比較例1と同様の理由により算出できなかった。
<比較例4>
比較例1で作製した黒色分散液F:16gに、さらに樹脂成分原料としてアクリル樹脂溶液(KAYARAD ZCR−1569H、日本化薬社製、不揮発分:70質量%)16.33g及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2.86gを加え、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを3.68g加え、超音波分散機にて、5分間処理を行い、1時間放置して黒色塗料Gとした。次いで、該黒色塗料Gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、黒色膜G−1付きガラス基板を得た。
得られた黒色膜G−1付きガラス基板を用いて、実施例1と同様にして、黒色膜の光学特性及び膜中の黒色材料の平均分散粒子径等を評価した。結果を、第1表〜第3表に示す。なお、カーボンブラックの平均分散粒子径は、比較例1と同様の理由により算出できなかった。
<比較例5>
実施例1における黒色粉末Aの調製において、櫛型ウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、商品名Disper Byk161、不揮発分:30質量%)の添加量を1.5gとした以外は黒色粉末Aと同様の方法にて、黒色粉末Hを得た。この黒色粉末Hを用い、実施例1と同様にして黒色分散液の作製を試みたが、十分な分散状態を得ることができず、分散液を作製することができなかった。結果を、第1表に示す(比較例5〜8については膜形成不可、膜性状不良のため、光学濃度等の評価を行っていない)。
<比較例6>
実施例1における黒色粉末Aの調製において、櫛型ウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、商品名Disper Byk161、不揮発分:30質量%)の添加量を25gとした以外は黒色粉末Aと同様の方法にて、黒色粉末Iを得た。この黒色粉末Iを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、黒色膜I−1付きガラス基板を作製したが、膜表面に凝集物が多数存在し、ピンホールが多く発生したため、膜物性の測定には適さないことを確認した。結果を、第1表に示す。
<比較例7>
実施例1における黒色粉末Aの調製において、櫛型ウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、商品名Disper Byk161、不揮発分30質量%)の代わりにポリカルボン酸系高分子分散剤(花王(株)社製、商品名:ポイズ521、不揮発分:30質量%)7.5gを用いた以外は、黒色粉末Aと同様にして黒色粉末Jを得た。この黒色粉末Jを用い、実施例1と同様にして黒色分散液の作製を試みたが、十分な分散状態を得ることができず、分散液を作製することができなかった。結果を、第1表に示す。
<比較例8>
実施例1における黒色粉末Aの調製において、高分子分散剤処理後のエバポレーターによる乾燥を途中で中断し、水分量を5.2質量%とした以外は、黒色粉末Aと同様にして黒色粉末Kを調製した。この黒色粉末Kを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、黒色膜K−1付きガラス基板を作製したが、スピンコート後の溶剤蒸発過程において、塗膜に凝集が発生し塗膜面が白く濁った状態になることを確認した。結果を、第1表に示す。
第1表〜第3表に示すように、実施例1から9の赤外線透過黒色膜は、可視光線領域の遮光性が高いにもかかわらず、近赤外線領域では優れた透過性を示していることが確認された。また、膜中の黒色材料の含有量や、膜厚自体を変化させても、黒色材料の分散粒子径や各波長における透過特性に差異は見られず、高い可視光遮光性と優れた赤外線透過性を維持していることが確認され、このことから、膜中の黒色材料含有量や、膜厚自体を制御することにより、黒色フィルターとしての濃度を調節が可能であることが確認された。
一方、比較例1から4については、可視光領域と赤外線領域における透過率に大きな変化はなく、赤外線領域における透過性は有していなかった。
また、比較例5では、高分子分散剤の添加量が少なすぎるために、黒色粉末が十分に分散せず、分散液の調製ができなかった。また、比較例6では、高分子分散剤の添加量が多すぎて分散状態が安定しないために、黒色膜の形成時に黒色粉末の凝集が発生し、良好な黒色膜が得られなかった。また、比較例7では、黒色粉末と高分子分散剤との親和性が悪く、黒色粉末が高分子分散剤で十分に被覆されないために、黒色粉末自体の分散性が悪く、分散液の調製ができなかった。さらに、比較例8では、黒色粉末中の水分量が多すぎるために、黒色膜の形成時(溶剤の揮発時)に白濁が発生した。これは、含有する樹脂に対して相溶性の良い溶剤が少なくなり、逆に相溶性の悪い水の含有量が相対的に増えることで、樹脂中に水の一部が析出し、膜の外観が白く見えてしまうためと推測される。
<カラーフィルター特性>
(ブラックマトリックスの作製)
各遮光性感光性樹脂組成物塗布液として、実施例1〜9で調製した各黒色塗料を用い、ブラックマトリックスパターンとして通常のメッシュ状パターン(線幅20μm)からなるパターンマスクを用いたことを除いては、特開2009−75446号公報の段落番号0301に記載のブラックマトリックス作製方法を用いて、10cm角のTFT素子基板上に、実施例1〜9の黒色膜をメッシュ状パターンに形成させたブラックマトリックスを得た。
このとき、塗布膜が赤外線透過性を有しているため、パターン形成において、基板上のTFT素子に対する細線パターンの位置合わせを容易に行うことができた。
(カラーフィルターの作製、評価)
上記で得られた実施例1〜9の黒色膜を有するブラックマトリクス(遮光画像)に対して、特開2006−251237号公報の段落番号0158から0170に記載の転写型の感光性樹脂フィルムを用いたカラーフィルター作製方法にて、赤色、緑色、青色の所定サイズ、形状の着色パターンを形成し、TFT素子基板上にカラーフィルターを作製した。
次いで,TFT素子基板上のカラーフィルターに対向する位置に、透明共通電極を設けた対向電極基板を配置し、カラーフィルターと対向電極基板間に液晶材料を封入して、液晶セルを形成した。得られた液晶セルの両面に偏光板を張り付け、さらに、TFT素子基板の裏面側に、バックライトとしての白色LEDを配置した。
このようにして作製された、COA方式の液晶表示装置の表示特性評価を行った。その結果、前記各ブラックマトリックスを用いたカラーフィルターを備えた液晶表示装置が、良好な表示特性を示すことが確認された。特に、TFT素子とブラックマトリックスとの位置合わせが良好であったことから、R、G、B各色間の混色防止が良好に行なわれていた。
本発明の赤外線透過黒色膜は、可視光線に対しては優れた遮光性を有し、かつ赤外線に対しては一定値以上の透過性を有することから、赤外線ワイヤレスリモコンの発光部や受光部の保護カバーを始めとする各種の黒色保護カバーに、好適に用いることができる。さらに、COA方式やBOA方式のブラックマトリックス等への応用も可能であることから、各種の画像表示装置に対しても好適に使用できる。

Claims (7)

  1. 黒色材料及び樹脂成分を含んでなり、
    前記黒色材料の膜中における平均分散粒子径が1nm以上100nm以下であり、
    波長560nmにおける厚さ1μmあたりの透過率(T560)が40%未満であり、かつ波長560nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD560)と波長950nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD950)との比(OD950/OD560)が、0.35以下である赤外線透過黒色膜。
  2. 前記波長560nmにおける透過率に基づく光学濃度(OD560)と、波長800nm以上2500nm以下の近赤外線(NIR)波長領域における各波長での透過率に基づく光学濃度(ODNIR)との比(ODNIR/OD560)が、0.40以下である請求項1に記載の赤外線透過黒色膜。
  3. 前記黒色材料の体積分率が、1.0体積%以上25体積%以下である請求項1または2に記載の赤外線透過黒色膜。
  4. 前記黒色材料が、銀及び錫を主成分とする金属微粒子である請求項1乃至3のいずれかに記載の赤外線透過黒色膜。
  5. 前記金属微粒子が、銀錫合金微粒子、もしくは該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子からなり、当該銀錫合金微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下、もしくは当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下である請求項4に記載の赤外線透過黒色膜。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線透過黒色膜を有する膜付き基材。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線透過黒色膜を有する画像表示装置。
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