本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
図1は、本発明における透過潜像模様形成体(1)(以下、「形成体」という。)の一例を示す図である。この形成体(1)は、図1に示すように、基材(2)上の少なくとも一部に本発明における透過潜像模様が形成されている潜像模様領域(3)を有している。なお、図1に示すように、潜像模様領域(3)以外の領域には、料額、文字又は他の模様等の必要な情報が公知の印刷方式(例えば、オフセット印刷又は凹版印刷等)により施されていても良い。
本発明における基材(2)は、上質紙、コート紙又はアート紙等の紙葉類並びにフィルム又はプラスチック等を用いることができる。ただし、本発明の特徴点である透過潜像模様を透過光下で視認する際のコントラストを得るために、不透明度が90%より大きい材質の基材を用いることが好ましい。この不透明度については、潜像模様領域(3)に形成される第2の要素を説明するところで詳細に説明する。
図2及び図3は、形成体(1)における潜像模様領域(3)を、所定の条件により観察したときの状態を示す図である。本発明における形成体(1)は、詳細については後述するが、基材(2)の一方の面に、基材(2)よりも透過率の高い第2の要素群(14)が形成されており、その第2の要素群(14)の上、又は、第2の要素群(14)が形成されている基材(2)の一方の面の反対側の面(以下、「他方の面」という。)に、有色インキにより第1の要素群(11)が形成されている。図2(a)は、基材(2)の一方の面に第1の要素群(11)と第2の要素群(14)が形成されている状態を反射光下で確認した図であり、図2(b)は、基材(2)の他方の面に第1の要素群(11)が形成されており、基材(2)の一方の面に第2の要素群(14)が形成されている状態を反射光下で確認した図である。図2(a)及び図2(b)のいずれの状態においても、形成体(1)の潜像模様領域(3)を反射光下で確認すると、図2(c)に示すように、一様な反射模様(4)を確認することができる。
また、図3(a)及び図3(b)に示すように、透過光下で潜像模様領域(3)を確認すると、図3(c)に示すように、透過潜像模様(5)を確認することができる。なお、透過潜像模様(5)は、模様部(6)(図2(d)では、「A」という文字)とその周りを構成している背景部(7)から成る。これらの各構成及び視認原理については後述する。また、図3(a)及び図3(b)では、透過潜像模様(5)を確認するために、所定の光を照射しているが、特に光源を用いる必要はなく、太陽光に対して形成体(1)をかざし、透かした状態で視認することでも良い。これらの透過潜像模様(5)を確認する状態を、本発明では、透過光下で確認するという。なお、観察方向は限定されず、形成体(1)が観察者と光源との間にある状態をいう。
以下、透過潜像模様(5)を形成している潜像模様領域(3)の構成について説明する。
まず、形成体(1)は、図1に示すように、基材(2)上の少なくとも一部に潜像模様領域(3)を有しているが、この潜像模様領域(3)は、基材(2)を挟んで、表裏同じ箇所に設けられており、この表裏の同じ箇所を総称して潜像模様領域(3)という。この潜像模様領域(3)には、本発明における形成体(1)の透過潜像模様(5)を構成する要素が形成されている。
図4(a)は、基材(2)の潜像模様領域(3)に形成されている第1の要素(8)の構成の一例を模式的に示す図である。第1の要素(8)は、潜像模様領域(3)内において、万線状に配置されている。なお、反射光下で観察しても、図4(a)のような万線状に配列されている要素を確認することは非常に困難であり、実際には、図2(c)に示す一様の反射模様(4)として確認される。なお、本発明において、「万線状」とは、複数の要素が規則的に所定のピッチで配列されている状態をいう。
また、図4(b)は、基材(2)の潜像模様領域(3)に形成されている第2の要素(9)の構成を示す図である。第2の要素(9)についても、潜像模様領域(3)内において万線状に配置されている。
以下、それぞれの要素について詳細に説明することとするが、まず、第1の要素(8)について説明する。
(第1の要素)
第1の要素(8)は、異なる二色のインキにより形成されている。なお、二色のインキについては、一方のインキが基材(2)の色と同じ色であっても良い。ただし、反射光下で視認することができる反射模様(4)において、形成されている透過潜像模様(5)を、より一層視認し難くするために混色した一様の模様とするには、基材(2)と異なる二色のインキを用いることが好ましい。この第1の要素(8)を基材(2)上に形成する方法としては、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷及びインクジェット印刷等の公知の印刷方式を用いることができる。以下、本実施の形態にいては、第1の要素(8)を形成する二色のインキは、基材(2)とは異なる色であることとして説明する。
また、万線状に配置されている複数の第1の要素(8)において、隣り合う二つの第1の要素(8)が対応して配置されている。この隣り合って対応して配置された二つの第1の要素(8)を、本発明では、第1の要素セット(10)と呼ぶこととする。さらに、第1の要素セット(10)が複数配置されて第1の要素群(11)が形成されている。ここで、第1の要素セット(10)を用いて更に詳しく説明する。
図4(a)に示した第1の要素群(11)において、隣り合う二つの第1の要素(8)により構成されている複数の第1の要素セット(10)のうち、一つの第1の要素セット(10)を拡大したのが図5である。まず、第1の要素(8)は、前述のとおり、基材(2)の色とは異なる二色のインキにより形成されている。したがって、第1の要素(8)は、第1の色(12)と第2の色(13)により形成されている。この第1の色(12)と第2の色(13)については、一方が本発明の透過潜像模様(5)の模様部(6)を、他方が背景部(7)を構成するものである。なお、第1の色(12)と第2の色(13)とは異なった色となっている。
一つの第1の要素(8)は、前述のとおり、第1の色(12)と第2の色(13)の二色から構成されているが、この第1の要素(8)が二つ隣り合って配置された第1の要素セット(10)は、第1aの要素(8-1)と第1bの要素(8-2)において第1の色(12)と第2の色(13)が対応した配置となっている。ここで、「対応した配置」について説明する。図5のように、第1aの要素(8-1)は、両側が第2の色(13)、中央に第1の色(12)となっているが、第1bの要素(8-2)は、両側が第1の色(12)、中央に第2の色(13)となっており、さらに、第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)において、第1の色(12)と第2の色(13)の色の境界は同じ位置となっている。このように、隣り合う第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)において、第1の色(12)と第2の色(13)の配置が逆となり、かつ、同じ位置に色の境界を有している状態を「対応して配置」という。
したがって、第1の要素セット(10)は、第1の色(12)と第2の色(13)が対応して配置されている隣り合う第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)により構成されている。この第1の要素セット(10)が複数配置されて第1の要素群(11)を形成しているものである。
第1の要素セット(10)は、前述のとおり、第1の色(12)と第2の色(13)が対応して配置されており、さらに、各要素の第1のピッチ(P1)が100〜1000μmで、かつ、要素幅(W1)が50〜500μmで形成されていることから、対応して配置された第1の要素セット(10)は、肉眼では、二色が混色した状態で視認され、一つの第1の要素(8)内における色の境界を認識することができないこととなる。したがって、第1の要素セット(10)が複数配置された第1の要素群(11)は、反射光下において第1の色(12)と第2の色(13)が混色した状態での模様にしか見えないこととなる。
ここで、第1の要素(8)の形状について説明する。第1の要素(8)は、図6に示したように、色々な形状で形成することが可能である。例えば、図6(a)〜(c)は画線であり、特に、図6(a)は直線、図6(b)は破線、図6(c)は波線となっている。また、図6(d)は、複数の点の集合体である点群、図6(e)は、複数の画素の集合体である画素群、さらに、図6(f)は、複数の微小な文字の集合体である文字群である。
本発明において、第1の要素(8)は、万線状に配置されることとなるため、形状については、画線により形成することが好ましい。特に、図6(a)に示した直線により形成することが好ましい。仮に、図6(b)に示した破線により形成する場合には、一つの線において、線と線との間隔を広くしてしまうと、透過潜像模様(5)自体が不鮮明な模様となってしまうため、形成する透過潜像模様(5)の形状及び再現性を考慮し、適宜設定する必要がある。
また、前述のとおり、第1の要素(8)は、万線状に配置されることとなるため、図6(d)〜(f)に示した点、画素及び微小な文字で形成する場合、それぞれを一つの画線上に複数配列させ、肉眼では、画線として視認することができるような配置とすることが必要となる。
例えば、図7においては、第1の要素(8)を複数の点の集合体である点群により形成した例を示している。この点は、高さ又は直径となるh1が、図5で示した第1の要素(8)の幅(W1)と同じこととなり、50〜500μmの範囲となる。
また、各点同士の微小要素のピッチ(p1)については、肉眼において一つの画線として視認可能な程度の間隔となるように、50〜1000μmの範囲とする。
図6(f)で示した微小な文字については、文字に限定されるものではなく、記号、数字、図形又はマーク等でも良い。さらに、点、画素又は文字等の群により画線状の要素を形成する場合には、図6(g)に示すように、一つの要素内において色々な形状を配置しても良い。いずれにおいても、前述した高さ又は直径(h1)及び微小要素のピッチ(p1)の条件を満たしていれば、その形状は限定されない。本発明において、複数の点の集合体である点群、複数の画素の集合体である画素群、複数の微小な文字、記号、数字、図形又はマーク等の集合体について、総称して「微小要素群」という。したがって、図6(d)〜図6(g)までは、すべて微小要素群により第1の要素(8)が形成されているとなる。
一つの要素内おいて、複数の「微小要素群」で形成しても良いことを説明したが、図8(a)から(c)に示すように、一つの要素内において複数の形状を成した画線により形成しても良い。当然、一つの要素内で画線と「微小要素群」により形成しても良い。
さらには、図8(d)に示すように、第1の要素セット(10)において、第1aの要素(8-1)と第1bの要素(8-2)を異なる形状の要素で形成しても良く、図8(e)に示すように、第1の要素群(11)内において、それぞれの第1の要素(8)を異なる形状で形成しても良い。いずれにしても、第1の要素(8)については、一つの要素内及び第1の要素群における各々の要素において、図6で示した第1の要素(8)のどの形状で形成しても良い。
以降、本実施の形態では、第1の要素(8)を直線によって形成した例について説明する。
第1の要素群(11)は、透過潜像模様(5)を構成する重要な要素となっており、第1の色(12)又は第2の色(13)は、透過潜像模様(5)を形成するように配置されている。
透過潜像模様(5)を形成するための第1の色(12)と第2の色(13)の配置の関係を図9により説明する。図9は、第1の要素群(11)に形成されている透過潜像模様(5)を、解り易く説明するため、第1の要素セット(10)を構成している第1aの要素(8-1)と第1bの要素(8-2)ごとに分割して図9(a)と図9(b)に示したものである。
本実施の形態では、透過潜像模様(5)は、前述のとおり、「A」の文字となっている。そこで、「A」の文字を形成するように、複数の第1の要素(8)を用いて、第1の色(12)と第2の色(13)を配置する。図9(a)では、第1aの要素(8-1)を用いて透過潜像模様(5)を形成した例であり、「A」を形成する模様部(5)を第1の色(12)で形成し、背景部(6)を第2の色(13)によって形成している。
また、第1の要素セット(10)は、隣り合う第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)において、第1の色(12)と第2の色(13)が対応して配置されているため、第1の要素セット(10)のうち、第1bの要素(8-2)を用いて透過潜像模様(5)を形成した例が図9(b)であり、この場合の第1bの要素(8-2)における第1の色(12)と第2の色(13)の配置は、図9(a)に示した配置と逆に配置された状態となっている。したがって、「A」の文字は、模様部(5)が第2の色(13)で、背景部(6)が第1の色(12)によって形成されている。
このように、形成体(1)に形成されている透過潜像模様(5)は、第1の要素セット(10)によって、図9(c)及び図9(d)のようなネガポジの関係の模様を形成していることとなる。なお、図9(c)と図9(d)において、どちらがネガ状態で、どちらがポジ状態ということではなく、あくまでも、関係を理解し易く説明するために、ネガポジの関係という表現を用いているものであり、本質としては、一方を第1の色(12)が模様部(6)で第2の色(13)が背景部となり、他方を第1の色(12)が背景部(7)で第2の色(12)が模様部(6)としていることである。また、このネガポジの関係としている透過潜像模様(5)が、どのような状態で確認することができることとなるかは、後述する第2の要素(9)との配置関係によるものであるため、その原理等については後述する。
さらに、第1の要素セット(10)については、隣り合う第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)において、第1の色(12)と第2の色(13)が対応して配置されていると説明したが、一つ一つの第1の要素セット(10)においてだけ対応して配置されていれば良いものではない。図9を用いて説明したように、第1の要素群(11)には、ネガポジの関係となるように第1の色(12)と第2の色(13)が配置される必要がある。したがって、複数配置されている第1の要素セット(10)のすべてにおいて、ネガ状態の透過潜像模様(5)を形成するための配置と、ポジ状態の透過潜像模様(5)を形成するための配置が規則的に配置されなければならない。この規則的な配置について、以下に説明する。
図10は、図4に示した本実施の形態で例示している第1の要素群(11)に対して、複数の第1の要素セット(10-1〜10-6)の配置関係を説明するための図である。一つの第1の要素セット(10)は、前述のとおり、第1の要素セット(10)を構成している第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)において、第1の色(12)と第2の色(13)が対応して配置されている。さらに、第1の要素セット(10-1〜10-6)の一方の第1aの要素(8-1)が、例えば、透過潜像模様(5)のネガ状態を形成し、もう一方の第1bの要素(8-2)が、ポジ状態を形成することとなるため、図10(a)に示すように、ネガ状態の透過潜像模様(5)を形成するための第1aの要素(8-1)と、ポジ状態の透過潜像模様(5)を形成するための第1bの要素(8-2)の配置は、すべて交互に配列されることとなる。
図10(a)については、第1の要素群(11)を用いて形成されている透過潜像模様(5)に対して、ネガポジの状態を説明するために、各々の第1の要素セット(10-1〜10-6)において、どのような位置関係で第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)が配置されているかを解り易くした図である。したがって、各第1の要素セット(10-1〜10-6)に対して、図9(c)のように、第1の色(12)が模様部(6)を構成するための配置となっている第1aの要素(8-1)と、図9(d)のように、第2の色(13)が模様部(6)を構成するための配置となっている第1bの要素(8-2)とを、段差をつけて示している。
図10(a)に示したように、対応して配置されている第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)は、第1の色(12)により模様部(6)を形成する第1aの要素(8-1)と、第2の色(13)により模様部(6)を形成する第1bの要素(8-2)が、すべて交互に配置されていることがわかる。これは、図10(a)において説明上示した段差が、一つの要素おきに存在していることから、規則的に配列されていることがわかる。したがって、本発明では、第1の要素セット(10)では、第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)が対応して配置されていることと、更には複数の第1の要素セット(10)において、第1の色(12)により模様部(6)を形成する第1aの要素(8-1)と、第2の色(13)により模様部(6)を形成する第1bの要素(8-2)は、すべて交互に配置されることが好ましい。
例えば、図10(b)に示したように、各第1の要素セット(10-1〜10-6)において、第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)は対応して配置されてはいるものの、第1aの要素(8-1)及び第1bの要素(8-2)が、すべて交互には配置されていない。これは、図10(b)において説明上示した段差が、図10(a)の段差とは異なり、ランダムに存在していることから、規則的に均一な配列となっていないことがわかる。このような位置関係で配置されてしまうと、後述する第2の要素(9)との関係で、適切な透過潜像模様(5)を形成することができなくなってしまう。
以上のとおり、本発明において、第1の要素セット(10)は、第1aの要素(8-1)と第1bの要素(8-2)が対応した配置となっているだけではなく、第1の要素群(11)としてみたときに、第1aの要素(8-1)と第1bの要素(8-2)が、すべて交互に配列されていることが好ましい。このような関係を、規則的な配置という。
次に、第2の要素(9)について説明する。
(第2の要素)
第2の要素(9)は、前述した第1の要素(8)に対して、二通りの形成方法がある。一つは、第1の要素(8)が形成されている側とは反対側の基材(2)面に形成するものと、もう一つは、第1の要素(8)が形成されている側と同じ面に形成するものである。本発明では、前述したとおり、この第2の要素(9)が形成されている基材(2)の面を一方の面、第2の要素(9)が形成されていない基材(2)の面を他方の面とするため、第1の要素(8)は、基材(2)の潜像模様領域(3)において、一方の面又は他方の面のどちらに形成することでも良いこととなる。なお、基材(2)の一方の面の潜像模様領域(3)と、他方の面の潜像模様領域(3)は同じ位置である。
第2の要素(9)は、基材(2)よりも透過率が高くなるように形成されている。ここで、透過率が高いとは、不透明度が低いということであり、基材(2)よりも透過率が高いということは、基材(2)の不透明度が90%より高いことから、第2の要素(9)は、不透明度が90%以下であることを意味している。なお、基材(2)の不透明度が90%よりも高い理由について、具体的な配置については後述するが、第1の要素セット(10)のうち、一方の第1の要素(8)を隠ぺいする役目を担うからである。
逆に、第2の要素(9)の透過率を基材(2)よりも高くする理由は、第1の要素セット(10)のうち、他方の第1の要素(8)を透過光下で視認可能とするためであり、そのために、基材(2)の不透明度が90%より高いことに対して、第2の要素(9)は、不透明度を90%以下とするものである。
この第2の要素(9)を不透明度90%以下とする方法は、基材(2)が紙葉類であれば、例えば、用紙製造段階において、すき入れにより施すことでも良いし、公知のレーザ加工又はエンボス加工により施しても良い。また、透明材料を紙に印刷することにより第2の要素(9)を形成することでも良い。このような透明材料としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリイソブチレン等の合成樹脂をインキ用溶剤と混合したものを用いることができる。基材(2)にフィルム又はプラスチックを用いる場合には、レーザ加工又はエンボス加工により第2の要素(9)を形成することができる。
不透明度が90%以下で形成される第2の要素(9)は、図11(a)に示すように、潜像模様領域(3)内に万線状に配置されており、第2の要素群(14)を構成している。なお、基材(2)における潜像模様領域(3)内において、第2の要素群(14)が形成されていない、所謂、基材(2)表面の部分を非要素部(15)と定義する。
基材(2)が不透明度の低いフィルム又はプラスチックの場合には、非要素部(15)を不透明度の高い印刷インキ等で形成し、第2の要素(9)を非要素部(15)より不透明度の低いインキ又はインキ濃度で形成することができる。
この第2の要素(9)の要素幅(W2)については、50〜500μmの範囲で形成し、第2の要素(9)の第2のピッチ(P2)については、100〜1000μmの範囲で形成することが好ましい。この第2のピッチ(P2)は、第1の要素(8)における第1のピッチ(P1)の略2倍、所謂、第1の要素セット(10)のピッチと略等しくなることが好ましく、第2の要素(9)の要素幅(W2)は、第1のピッチ(P1)よりも狭くなる。その理由については、透過光下において視認する透過潜像模様(5)の視認原理のところで詳細に説明する。
図11(a)のX−X’における断面を示したのが、図11(b)であり、第2の要素(9)をすき入れ、レーザ加工又はエンボス加工により形成したものであり、基材(2)の表面に対して、第2の要素(9)が凹部となっており、その他の部分が非要素部(15)となっている。したがって、凹部となっている第2の要素(9)が基材(2)よりも透過率が高くなっているものである。
第2の要素(9)の形状については、第1の要素(8)の形状と同様に、図6〜図8で示した種々の形状で形成することが可能であるが、重要なのは、第1の要素(8)が透過光下において視認可能となるように、透過率を基材(2)よりも高くすることであり、基材(2)よりも透過率を高くし、かつ、透過光下において第1の要素(8)を視認することができる形状であれば、特に限定されない。
(第1の要素と第2の要素の位置関係及び視認原理)
次に、第1の要素(8)と第2の要素(9)の位置関係及び視認原理について説明する。
第1の要素(8)は、基材(2)の一方の面に形成された第2の要素(9)の上か、又は第2の要素(9)が形成された一方の面と反対側の他方の面に形成される。前述したように、基材(2)両面の潜像模様領域(3)は、基材(2)を挟んで同じ位置となっているため、第1の要素(8)と第2の要素(9)を異なる面に形成する場合、第1の要素群(11)と第2の要素群(14)は、基材(2)を挟んで同じ位置に形成されていることとなる。
第2の要素(9)の第2のピッチ(P2)は、第1の要素(8)における第1のピッチ(P1)の略2倍であることから、第2の要素(9)は、第1の要素セット(10)の一方の第1の要素(8)(例えば、第1aの要素(8-1))と略等しいピッチとなっている。そこで、第2の要素(9)と第1の要素セット(10)の一方の第1aの要素(8-1)を同じ位置に配置する。その状態を示したのが図12(a)である。図12(a)は、第1の要素群(11)と第2の要素群(14)の位置関係を示した図であり、説明上、それぞれの配置を、基材(2)に対して水平方向にずらして図示している。
図12(a)に示すように、第2の要素(9)と第1の要素セット(10)の一方の第1aの要素(8-1)を同じ位置となるように配置すると、第1の要素セット(10)のもう一方の第1bの要素(8-2)は、第2の要素(9)同士の間となる非要素部(15)に位置することとなる。図12(a)では、第1aの要素(8-1)が第2の要素(9)と同じ位置になっているが、逆に、第1bの要素(8-2)を第2の要素(9)と同じ位置としても良い。この場合には、第1aの要素(8-1)が非要素部(15)に位置することとなる。これらの関係が、前述したネガポジの関係を意味している。
図12(b)及び図12(c)は、第1の要素群(11)と第2の要素群(14)の基材(2)に対する位置関係を示す図である。前述したとり、第1の要素群(11)は、基材(2)の一方の面に形成された第2の要素群(14)に対して、二通りの形成方法があり、図12(b)は、第2の要素群(14)の上に第1の要素群(11)が形成された状態を示しており、図12(c)は、第2の要素群(14)が形成されている基材(2)の一方の面に対して、他方の面に第1の要素群(11)が形成されている状態を示している。
図12(b)及び図12(c)のどちらの形態でも、本発明における透過潜像模様(5)を形成することは可能である。なお、以下の説明では、図12(c)に示したように、第1の要素群(11)と第2の要素群(14)が基材(2)を挟んで両面に形成されていることとして説明する。
図12(a)に示した状態において、第2の要素(9)が形成されている一方の面側から透過光下で視認した状態を模式的に示したのが図13(a)であり、図13(a)におけるX−X’断面図が図13(b)である。基材(2)が不透明度90%より高く、第2の要素(9)が基材(2)よりも透過率が高い、所謂、不透明度90%以下により形成されていることから、第2の要素(9)と同じ位置に配置されている第1の要素セット(10)の一方の第1aの要素(8-1)は、第1の要素(8)が形成されている面とは反対側から視認すると、基材(2)よりも透過率の高い第2の要素(9)を介して確認することができ、不透明度が90%よりも高い基材(2)に位置する第1の要素セット(10)のもう一方の第1bの要素(8-2)は、非要素部(15)、所謂、基材(2)に隠ぺいされて視認し難くなる。
したがって、図13(a)に示す配置の潜像模様領域(3)を一方の面側から透過光下で観察すると、第2の要素群(14)を介して、図13(c)に示すように、第1の要素セット(10)の一方の第1aの要素(8-1)によって形成された模様部(6)が第1の色(12)で、背景部(7)が第2の色(13)の透過潜像模様(5)を確認することとができる。
ここで、前述した第2の要素(9)の要素幅(W2)が第1の要素(8)の第1のピッチ(P1)よりも狭くとる必要があることについて説明する。透過潜像模様(5)を形成するためには、第1の要素セット(10)のうち、第1aの要素(8-1)又は第1bの要素(8-2)のどちらか一方のみが第2の要素(9)と同じ位置に配置されることとなるため、仮に、第2の要素(9)の要素幅(W2)が第1の要素(8)の第1のピッチ(P1)よりも大きくなってしまうと、図14に示すように、一つの第2の要素(9)に第1の要素セット(10)である二つの第1の要素(8-1及び8-2)が位置することとなってしまい、所望する透過潜像模様(5)を鮮明に形成することができなくなってしまうからである。
また、第2の要素(9)の第2のピッチ(P2)は、第1の要素(8)の第1のピッチ(P2)の略2倍、所謂、第1の要素セット(10)のピッチと略等しいことが好ましいと説明したところであるが、仮に、各ピッチが等しくない場合でも、複数配列されている第2の要素(9)に対して、第1aの要素(8-1)又は第1bの要素(8-2)のどちらか一方が同じ位置となることから、若干透過潜像模様(5)の視認性は劣ることとなるが、グラデーションの係った色彩の透過潜像模様(5)を視認することができる。
図13に示した第2の要素(9)と第1aの要素(8-1)を同じ位置とした配置とは逆の配置として、第1bの要素(8-2)と第2の要素(9)とを同じ位置とした配置を図15に示す。図15(a)は、第2の要素(9)が形成されている側から透過光下で視認した際の図であり、図15(b)は、図15(a)のX−X’断面図である。
図15(a)に示すように、第2の要素(9)を介して第1bの要素(8-2)が視認されることから、模様部(6)が第2の色(13)で背景部(7)が第1の色(12)の透過潜像模様(5)を確認することができる。所謂、図13で示した透過潜像模様(5)とネガポジの関係を成す透過潜像模様(5)となる。
第1の要素(8)の二色のインキを対応させて配置した第1の要素セット(10)とする目的として、一つは前述したように、第1の要素群(11)が形成されている側から反射光下で視認した際に、二色が混色した一様の反射模様(4)として視認され、透過潜像模様(5)を確認することができない状態とすることが挙げられるが、もう一つの目的として、第1の要素(8)と第2の要素(9)を同じ位置に配置することは、それぞれの要素幅(W1及びW2)が微細であることから、非常に緻密な精度を要することとなってしまう。そこで、第1の要素セット(10)とすることで、印刷又は加工精度にアバレが生じたとしても、第1の要素セット(10)のどちらかの第1の要素(8-1又は8-2)が第2の要素(9)と同じ位置となる。したがって、製造する際には、それほどの精度を求めなくとも、本発明における透過潜像模様(5)を形成することが可能となる。
また、第1の要素(8)と第2の要素(9)の配列方向を異ならせても良い。ここで、第1の要素(8)及び第2の要素(9)の配列方向について図16を用いて説明する。
図16(a)は、第1の要素(8)における配列方向となる第1の方向(T1)を示す図である。第1の方向(T1)は、第1の要素(8)の1点(D1)から隣り合う第1の要素(8)に対して垂直となる方向のことであり、その1点(D1)を通る垂線に対して隣り合う第1の要素(8)も垂直となる関係を有している。そのような第1の要素(8)の1点(D1)を通る垂線に対して、垂線と交差するすべての第1の要素(8)は、交差点において垂直となる関係を有している。この第1の要素(8)上の1点(D1)は、第1の要素(8)のどの箇所としても隣り合う第1の要素(8)との関係は、同じ関係となる。このような関係の配列が、本発明における万線状に配列されているものである。したがって、図16(a)に示すような第1の要素群(11)は、第1の要素(8)に対してどの位置に1点(D1)をとっても、第1の方向(T1)は同じ方向となる。
また、図16(b)は、第2の要素(9)における配列方向となる第2の方向(T2)を示す図であるが、第1の方向(T1)と同様、第2の要素(9)上の1点(D2)から隣り合う第2の要素(9)に対して垂直となる方向が第2の方向(T2)のことであり、その1点(D2)を通る第2の方向(T2)に対して第2の要素(9)は、万線状に配列されている。したがって、図16(b)に示すような第2の要素群(14)は、第2の要素(9)に対してどの位置に1点(D2)をとっても、第2の方向(T2)は同じ方向となる。
なお、第1の要素(8)上における1点(D1)と、第2の要素(9)上における1点(D2)は、「対応した位置」とする。今まで説明してきた第1の要素群(11)及び第2の要素群(14)については、この第1の方向(T1)と第2の方向(T2)が同じであるため、この第1の要素(8)上における1点(D1)と第2の要素(9)上の1点(D2)は、同じところに位置するものである。
図16(c)は、第1の要素群(11)と第2の要素群(14)を重ねて配置した状態を示しているが、図のように、第1の要素(8)上における1点(D1)と第2の要素(9)上の1点(D2)は、同じところに位置している。このように、第1の方向(T1)と第2の方向(T2)は、第1の要素(8)上の1点(D1)と、第2の要素(9)上の1点(D2)が「対応した位置」において、必ず垂直となる関係を有するように万線状に配列される方向である。
ここで、第1の方向(T1)と第2の方向(T2)を異ならせる例について図17を用いて説明する。図17(a)は、第2の要素(9)に対して第1の要素(8)の配列方向を若干異ならせて配置した図であり、その一部を点線にて円囲みしたところの拡大図が図17(b)である。図17(b)の拡大図に示すように、第1の方向(T1)と第2の方向(T2)は異なる角度(α)を有して配置されている。
図17のように、第1の方向(T1)と第2の方向(T2)が異なる場合における第1の要素(8)上の1点(D1)と、第2の要素(9)上の1点(D2)が「対応した位置」とは、仮に第1の方向(T1)と第2の方向(T2)を等しくした場合に、図16(c)のように同じ位置となる関係を有する状態をいう。
第1の方向(T1)と第2の方向(T2)の異なる角度(α)については、0から±5°以下の範囲とする。±5°以上の角度とすると、第2の要素(9)を介して視認することができる第1の要素(8)により形成された透過潜像模様(5)が、所望する模様とならなくなってしまうからである。
このように、第1の要素(8)の配列方向である第1の方向(T1)と、第2の要素(9)の配列方向である第2の方向(T2)を若干異ならせると、透過潜像模様(5)がグラデーションが掛かったように視認される。
(変形例)
これまで説明した第1の要素(8)及び第2の要素(9)については、すべて直線状で、かつ、平行に配列された万線状の形態であったが、本発明は、これに限定されるものではなく、図18に示したような配列とすることも可能である。図18(a)は、第1の要素(8)が中央から外側に向かって多角形を形成するように配列されている。このような第1の要素(8)の配列についても、複数の要素が規則的に所定のピッチで配列されている状態であるため、本発明でいう「万線状」に配置されていることとなる。
ここで、第1の要素(8)について再度説明するが、前述したように、第1の要素(8)は、必ず第1の色(12)及び第2の色(13)によって構成されている。これまで説明してきたような第1の要素(8)の形状(例えば、図4(a))は、直線であったため、一つずつの第1の要素(8)を確定することは容易であったが、図18に示すような形状では、どこまでが一つの第1の要素(8)であるかの誤解を招くこともある。図18のような形状の場合、一つの多角形(図18では八角形)の形状を成した画線が一つの第1の要素(8)であり、多角形における一つ一つの辺を構成している画線を一つの第1の要素(8)とするものではない。
したがって、図18(a)においても、八角形の第1の要素(8)が万線状に配列されており、さらに、第1の要素セット(10)の関係を成して配列されている。図18(a)においても、模様部(6)は「A」を形成しており、その周囲に背景部(7)を形成するように配置されている。なお、第1の要素セット(10)において、一方の第1aの要素(8-1)では、第2の色(13)が模様部を形成し、他方の第1bの要素(8-2)では、第1の色(12)が背景部を形成している。
図18(b)は、図18(a)に対して形成される第2の要素(9)が万線状に配列された第2の要素群(14)を示している。第2の要素(9)も、第1の要素セット(10)における一方の第1aの要素(8-1)を透過光下において視認させ、他方の第1bの要素(8-2)を隠ぺいするため、第1の要素(8)と同じ多角形を形成するように配列されている。
この第1の要素群(11)と第2の要素群(14)を図18(c)のように配置し、潜像模様領域(3)を透過光下で視認すると、図18(d)に示したような透過潜像模様(5)を確認することができる。
本発明における第1の要素群(11)及び第2の要素群(14)は、各々を構成している各要素が、図16に示したように、すべて直線で、かつ、平行に配列されていても良いことはいうまでもないが、図18を用いて説明したように、八角形のような多角形で形成しても良く、更には円又は楕円の形状としても良い。ただし、第1の要素群(11)の形状と第2の要素群(14)の形状は同一形状とする。
なお、図18で示したような第1の要素(8)及び第2の要素(9)の配列の場合における第1の方向(T1)及び第2の方向(T2)について、図19を用いて説明する。前述したように、第1の方向(T1)及び第2の方向(T2)については、一つの要素上の1点(D1)に対して垂直となる方向を示すものであるため、図18(a)のような多角形状に配列されている場合、仮に、基材(2)の長辺方向に対して水平に配置されている第1の要素(8)を基準とし、図19(a)に示した第1の要素(8)の1点(D1)を通る垂直の方向が第1の方向(T1)となる。したがって、第1の要素(8)の1点(D1)を通る垂線に対して、その垂線と交点を有するすべての第1の要素(8)は、交差点において垂直の関係を有している。
また、基材(2)の長辺方向に対して45°の角度で配置されている第1の要素(8)を基準とした場合、その第1の要素(8)上の1点(D’1)を通る垂直の方向が第1の方向(T’1)となる。したがって、第1の要素(8)の1点(D’1)を通る垂線に対して、その垂線と交点を有するすべての第1の要素(8)は、交差点において垂直の関係を有している。
図19(a)に示したそれぞれの第1の方向(T1又はT’1)に対して、第2の要素(9)の異なる角度は、図19(b)に示した第2の方向(T2又はT’2)となる。この第2の方向(T2又はT’2)についても、方向を決定するために基準とする第2の要素(9)上の1点(D2又はD’2)を通る垂直の方向が第2の方向(T2又はT’2)となる。いずれの第2の方向(T2及びT’2)についても、第1の方向(T1及びT’1)に対する角度とは、図19(c)に示したような第1の方向(T1)に対して第2の方向(T2)となり、また、図19(d)に示したような第1の方向(T’1)に対して第2の方向(T’2)となり、異なる角度は、いずれも(α)ということになる。
以上のとおり、第1の要素(8)及び第2の要素(9)は、万線状に規則的に配置されているため、どこの要素の1点を基準としても、対応した位置にある第1の要素(8)と第2の要素(9)の1点(D1及びD2)に対しては、第1の要素(8)と第2の要素(9)との配置角度の関係は、同じ角度を有することとなる。
このような多角形状に配置された第1の要素群(11)と第2の要素群(14)との異なる角度(α)についても、前述したように、0から±5°以下の範囲とすることが好ましい。
第1の要素(8)と第2の要素(9)の印刷又は加工等の順番については、第2の要素(9)をすき入れで形成する場合、先に用紙製造段階において第2の要素(9)をすき入れにより形成し、その後、印刷により第1の要素(8)を形成することとなる。また、第2の要素をレーザ加工又はエンボス加工により形成する場合には、先に第2の要素(9)を形成しても、第1の要素(8)を印刷した後に第2の要素(9)を形成しても、どちらでも良い。
以下、本発明における形成体(1)について、実施例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的な範疇であれば、適宜、変更が可能なことはいうまでもない。
実施例1では、基材(2)を紙、第1の要素群(11)をオフセット印刷方式により印刷し、さらに、第2の要素群(14)をすき入れにより形成した形成体(1)を作製した。実施例1の形成体(1)について、実施の形態で説明した図面を用いて説明する。
実施例1の形成体(1)(具体的には商品券)は、図1に示すように、基材(2)の一部の潜像模様領域(3)に、図4(b)に示した、すき入れにより形成した第2の要素群(14)と、この第2の要素群(14)とは反対側の基材(2)面に、オフセット印刷方式により、二色のインキを用いて印刷した第1の要素群(11)が形成されており、その他の領域には、商品名、1000円の料額文字及び彩紋模様がオフセット印刷方式により形成されている。
図1に示す基材(2)は、坪量が85g/m2、紙厚が87μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)、不透明度が92%(JIS−P8149)の褐色の紙材を用いた。
基材(2)の一部の潜像模様領域(3)には、図4(b)に示す第2の要素(9)が万線状に配列されている。この第2の要素(9)は、要素幅(W2)を250μmの直線で構成した。そして、第2のピッチ(P2)を500μmとし、第2の要素(9)を第2の方向(T2)に規則的に複数配列して第2の要素群(14)を形成した。なお、第2の要素群(14)の形成方法は、基材(2)の一方の面側から円網抄紙機により透かし模様として形成した。この方法により形成された第2の要素(9)の不透明度は、52%(JIS−P8149)であった。また、第2の要素(9)の部位の紙厚は、40μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)であった。
基材(2)の他方の面の潜像模様領域(3)には、図4(a)で示す第1の要素群(11)を形成した。この第1の要素群(11)は、第1aの要素(8−1)と第1bの要素(8−2)で構成した第1の要素セット(10)を複数配列して形成した。
第1aの要素(8−1)と第1bの要素(8−2)は、要素幅(W1)が等しく、200μmの直線で構成した。そして、第1のピッチ(P1)を250μmとし、第1aの要素(8−1)及び第1bの要素(8−2)を第1の方向(T1)に規則的に複数配列して第1の要素群(11)を形成した。したがって、第1の要素セット(10)のピッチは、500μmとなり、第2のピッチ(P2)と等しくなっている。また、第1の方向(T1)と第2の方向(T2)は等しい方向である。
第1aの要素(8−1)は、模様部(6)を第1の色(12)として、紫色のオフセットインキ(T&K TOKA製 BO特練PANTONE紫)を用い、背景部(7)を第2の色(13)として、緑色のオフセットインキ(T&K TOKA製 BO特練PANTONE緑)を用い、オフセット印刷機(下垣鉄工所製 EP−60)により印刷した。
また、第1bの要素(8−2)は、第1aの要素(8−1)と対応した配置とするため、同じ第1の色(12)及び第2の色(13)のインキを用いて、模様部(6)を第2の色(13)で、背景部(7)を第1の色(12)で構成した。
以上の構成による第1の要素群(11)を、第2の要素群(14)と基材(2)を挟んで同じ位置の潜像模様領域(3)に印刷する際に、図12に示すような第2の要素(9)と同じ位置に第1aの要素(8−1)が配置されるようにした。このような配置とすることで、第2のピッチ(P2)と第1の要素セット(10)のピッチが等しいことから、第1bの要素(8−2)は非要素部(15)と同じ位置となる。
このようにして作製した実施例1の形成体(1)である商品券を、第1の要素群(11)が形成されている一方の面側から反射光下において観察すると、図2(c)に示すような、第1の色(12)の紫色と第2の色(13)の緑色が混色した灰色の反射模様(4)として確認でき、透過光下において観察すると、第2の要素(9)を介して、第1aの要素(8−1)により形成された紫色の「A」という模様部(6)と緑色の背景部(7)から成る図3(c)に示すような透過潜像模様(5)を確認することができた。
実施例2は、実施例1に対して異なる点のみを説明する。実施例2では、第2の要素(9)をレーザ加工により形成し、第1の要素(8)の配列方向である第1の方向(T1)と、第2の要素(9)の配列方向である第2の方向(T2)を異なる角度を有するように配置して構成されている形成体(1)である。
まず、基材(2)の一方の面の潜像模様領域(3)に、レーザ加工器(レーザマーカ MD−V キーエンス製)を用いて、第2の要素(9)を直線で第2の方向(T2)に複数配列して第2の要素群(14)を形成した。なお、第2の要素(9)の要素幅(W2)及び第2のピッチ(P2)は実施例1と同じである。
次に、基材(2)の他方の面の潜像模様領域(3)に、実施例1と同じ第1の要素群(11)をオフセット印刷方式により印刷した。なお、第1の色(12)は、藍色のオフセットインキ(T&K TOKA製 ベストキュア 藍)を用い、第2の色(13)は、紅色のオフセットインキ(T&K TOKA製 ベストキュア 紅)を用いて、オフセット印刷機(下垣鉄工所製 EP−60)により印刷した。
また、第1aの要素(8−1)及び第1bの要素(8−2)については、図7に示すような点による微小要素群により形成し、点の直径(h1)、所謂、要素幅(W1)は、200μmとし、各点同士のピッチ(p1)は250μmの一定のピッチとして形成した。
第2の要素群(14)の配列方向である第2の方向(T2)は、基材(2)の長辺方向と垂直となる方向とし、第1の要素群(11)の配列方向である第1の方向(T1)は、その第2の方向(T2)に対して2°傾けた方向とした。なお、この第1の方向(T1)は、図17(b)に示す方向であり、異なる角度(α)が2°の状態である。このように第1の要素群(11)と第2の要素群(14)の角度を異ならせて配置した模式図が図17(a)である。
このようにして作製した実施例2の形成体(1)である商品券を、第1の要素群(11)が形成されている一方の面側から反射光下において観察すると、図20(a)に示すような、第1の色(12)の藍色と第2の色(13)の紅色が混色した紫色の反射模様(4)として確認することができ、透過光下において観察すると、第2の要素(9)を介して、第1aの要素(8−1)及び第1bの要素(8−2)により形成された「A」という模様部(6)と背景部(7)から成る透過潜像模様(5)が、図20(b)に示すような、第1の色(12)の藍色と第2の色(13)の紅色のグラデーションとして確認することができた。
実施例3は、実施例1に対して異なる点のみを説明する。実施例3では、第1の要素群(11)及び第2の要素群(14)の形状を、図21に示す楕円形状とした。また、第2の要素(9)は、印刷インキ(帝国インキ製 ユニマークインキ)を使用してオフセット印刷方式により基材(2)に印刷して形成体(1)を作製した。
第2の要素(9)の不透明度は、50%(JIS−P8149)であった。
なお、図21においては、第1aの要素(8−1)及び第1bの要素(8−2)がそれぞれ四つずつ、第2の要素(9)がそれぞれ四つずつ、万線状に配列されているが、これは模式的に示唆しているだけであり、実際には、もっと多数の各要素が配列されているものである。
図21(a)に示す第1の要素群(11)と、図21(b)に示す第2の要素群(14)を、第1aの要素(8−1)と第2の要素(9)が同じ位置となるように配置した状態が図21(c)である。
このようにして作製した実施例3の形成体(1)である商品券を、第1の要素群(11)が形成されている一方の面側から反射光下において観察すると、図22(a)に示すような、第1の色(12)の紫色と第2の色(13)の緑色が混色した灰色の一様な反射模様(4)として確認することができ、透過光下において観察すると、第2の要素(9)を介して、第1aの要素(8−1)により形成された紫色の「Y」という模様部(6)と緑色の背景部(7)から成る、図22(b)に示すような透過潜像模様(5)を確認することができた。