JP2012040726A - 造形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粒体を含む層を積層して該層の一部を除去することにより造形物を形成する過程において造形物が変形することを抑えた造形方法を提供する。
【解決手段】粒体を結着液で結着することにより造形物を造形する造形方法であって、粒体を含む複数の層を積み重ねつつ各層の一部に結着液を塗布し、粒体同士が結着した結着部分と未結着部分とに区画された積層体を形成する積層体形成工程(ステップS20)と、積層体に液体を流して未結着部分を取り除く除去工程(ステップS30)とを有し、積層体形成工程では、粒体と水系溶媒と該水系溶媒に溶解された両親媒性ポリマーとを含むスラリーによって各層を形成(ステップS21)し、未結着部分における結着部分側の端で液体に対する溶解性が他の部位よりも低くなるように両親媒性ポリマーを水系溶媒に溶解させた調整液を上記端となる部位に塗布する(ステップS23)。
【選択図】図1

Description

この発明は、造形方法に関する。
従来から、造形物を迅速に試作する方法(ラピッドプロトタイピング)として積層造形法が多用されている。積層造形法では、三次元CAD等による造形物のモデルを多数の二次元断面層に分割した後、各二次元断面層に対応する層状構造体を順次作成しつつ積層することによって造形物を形成する。
具体的には、例えば特許文献1に記載のように、まず、セラミックや金属等を含む粒体が層状に形成される。次いで、粒体からなる層の一部で粒体同士を結着させるための結着液が、例えばインクジェット式液滴吐出装置によって粒体からなる層に吐出される。そして粒体間の空隙に浸透した結着液がそれの硬化とともに粒体同士を結着することによって、上記二次元断面層に対応する層状構造体が形成される。
以後同様に、これら粒体からなる層の形成と結着液の吐出とが交互に繰り返されることによって、層状構造体を有する層が積層された積層体を形成する。この積層体の各層における層状構造体以外の部分は、積層される層を機械的に支持するサポート部として機能する。その後、積層体に水系液体を流すことにより上記サポート部が除去されることで造形物が造形される。
特許2729110号公報
一方、サポート部を除去する方法としては、積層体に液体を掛ける方法、積層体を液体に浸漬する方法等がある。しかしながら何れの方法においても、サポート部が一気に除去されてしまう場合には、サポート部の除去に伴う機械的な負荷が造形物の特定の部位に集中的に作用してしまうことで造形物が変形することがあった。
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、その目的は、粒体を含む層を積層して該層の一部を除去することにより造形物を形成する過程において造形物が変形することを抑えた造形方法を提供することにある。
本発明の造形方法は、疎水性の粒体を結着液で結着することにより造形物を造形する造形方法であって、前記粒体を含む複数の層を積み重ねつつ各層の一部に前記結着液を塗布し、前記粒体同士が前記結着液を介して結着した結着部分と該結着部分以外の未結着部分とに区画された前記層の積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体から前記未結着部分を液体を用いて取り除く除去工程とを有し、前記積層体形成工程では、前記粒体と水系溶媒と該水系溶媒に溶解された両親媒性ポリマーとを含むスラリーによって前記各層を形成するとともに、前記未結着部分における前記結着部分側の端で前記液体に対する溶解性が他の部位よりも低くなるように、両親媒性ポリマーを水系溶媒に溶解させた調整液を前記端となる部位に塗布する。
ここで、未結着部分は、結着部分を機械的に支持するサポート部として機能するとともに、積層体に液体が流されることによって該液体に溶解する。このサポート部は、スラリーからなる層の中でも両親媒性ポリマーの量が多い部位ほど液体に対する溶解性が低くなる。そのため、両親媒性ポリマーを含む調整液が浸透した部位は、該調整液が浸透しない部位に比べて両親媒性ポリマーを多く含み、上記液体に対する溶解性が相対的に低い低溶解性サポート部となる。
本発明の造形方法では、上記調整液が浸透した低溶解性サポート部と、上記調整液が浸透せず上記液体に対する溶解性が相対的に高い高溶解性サポート部とによって未結着部分が構成される。そして上記積層体においては、未結着部分における結着部分側の端に低溶解性サポート部が形成されていることから、結着部分は低溶解性サポート部によって機械的に支持されることになる。こうした構成であれば、除去工程においては、結着部分を支持している低溶解性サポート部は、高溶解性サポート部が液体に溶解したあとで溶解することになる。つまり、サポート部が段階的に除去されるとともに、低溶解サポート部が後段階で除去されることになる。これにより、サポート部が一気に除去される場合に比べて、サポート部の除去にともなう負荷が造形物の特定の部位に対して集中的に作用することを抑えることができる。それゆえ、未結着部分の除去にともなう造形物の変形を抑えることができる。
この造形方法の前記積層体形成工程では、前記層内において、前記結着部分が前記調整液で囲まれるように前記調整液を前記未結着部分に塗布する。
この造形方法によれば、結着部分を同じ層内の低溶解性サポート部で囲むことができる。こうした構成であれば、例えば微細構造のような機械的強度が低い部位を構成する結着部分を低溶解性サポート部で覆うことができる。その結果、未結着部分の除去にともなう造形物の変形をさらに抑えることができる。
この造形方法の前記積層体形成工程は、前記層間において、前記調整液が塗布された部分上に前記結着部分を形成する。
ここで、上層で塗布された結着液が下層にまで浸透するとなれば、上層における結着部分の形状精度及び機械的強度が低下することになる。この造形方法によれば、上層における結着部分は、下層で調整液が塗布された部分に重なるように形成される。こうした構成であれば、両親媒性ポリマーを多く含む部位には結着液が浸透しにくくなることから、上層で塗布される結着液が下層に浸透することを抑えることができる。これにより、上層で形成される結着部分の形状精度及び機械的強度の低下を抑えることができる。
この造形方法の前記積層体形成工程では、前記層間において、前記結着部分上の前記未結着部分に前記調整液を塗布する。
この造形方法によれば、微細構造部分はもちろんのこと、造形物そのものを低溶解性サポート部で覆うこともできる。これにより、未結着部分の除去にともなう造形物の変形を確実に抑えることができる。
この造形方法では、前記結着液が塗布されたあとに前記調整液を塗布する。
上述したように、スラリーからなる層の中でも両親媒性ポリマーの量が多い部位ほど結着液が浸透しにくくなる。そのため、結着液よりも調整液を先に塗布すると、結着部分となる部位にまで調整液が浸透してしまうことで、結着部分の形状精度が低下してしまう虞がある。この点、この造形方法によれば、結着部分となる部位に結着液を浸透させてから調整液が塗布されることになる。こうした構成であれば、調整液を塗布することによって結着部分の形状精度が低下することを抑えることができる。しかも、結着液が浸透した部位には調整液も浸透しにくくなることから、結着液が浸透した部位の端に沿う位置で調整液の浸透を抑えることもできる。これにより、低溶解性サポート部による結着部分の支持
をより確実なものとすることができる。
この造形方法において前記両親媒性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
この造形方法のように、疎水性の粒体及び水系溶媒と親和性を有する両親媒性ポリマーとしては、ポリビニルアルコールを採用することが可能である。ポリビニルアルコールは、主鎖として直鎖状の炭化水素を有するとともに、側鎖として親水性の官能基であるヒドロキシル基を有する。ポリビニルアルコールには、その単位構造当りにおよそ一つのヒドロキシル基が含まれることから、該ポリビニルアルコールは、疎水性の粒体との親和性を主鎖によって維持しつつ、水系溶媒との親和性が高いものとなる。それゆえに、両親媒性ポリマーとしてポリビニルアルコールを含むスラリーにおいては、これを構成する粒体がより均一に分散されることになる。
この造形方法では、前記溶液に含まれるポリビニルアルコールの重合度が、前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの重合度よりも大きい。
両親媒性ポリマーがポリビニルアルコールである場合には、単位構造の重合数である重合度が高いほど、これを含む構造体の水系液体に対する溶解性が低くなる。すなわち、調整液を塗布することによって低溶解性サポート部を形成する上では、この造形方法のように、調整液に含まれるポリビルアルコールの重合度を大きくすることによって実現可能である。
この造形方法では、前記溶液及び前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が86以上であり、かつ、前記溶液に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が、前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度よりも大きい。
両親媒性ポリマーがポリビニルアルコールである場合には、一般的に部分鹸化型と呼ばれる鹸化度がおよそ86以上の範囲では、鹸化度が大きくなるほど液体に対する溶解性が低くなる。このことから、調整液を塗布することによって低溶解性サポート部を形成する上では、この造形方法のように、調整液に含まれるポリビルアルコールの鹸化度をスラリーに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度よりも大きくすることによって実現可能である。
本発明の一実施の形態に係る造形方法の手順を示すフローチャート。 (a)(b)同造形方法の各工程を手順に沿って模式的に示す図。 (a)(b)(c)(d)同造形方法の各工程を手順に沿って模式的に示す図。 (a)(b)(c)(d)同造形方法の各工程を手順に沿って模式的に示す図。 造形物の斜視構造を示す斜視図。 (a)(b)変形例において形成される積層体を模式的に示す図。 変形例におけるPVA溶液の塗布態様で形成される積層体を模式的に示す図。
以下、本発明に係る造形方法の一実施の形態について、図1〜図5を参照して説明する。
まず、本実施の形態における造形方法の手順について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る造形方法の手順を示すフローチャートである。図1に示されるように、この造形方法では、まず、造形用スラリーを用いた犠牲層形成工程(ステップS10)が実施される。次に、造形用スラリーを用いたスラリー層形成工程(ステップS21)、紫外
線硬化樹脂滴下工程(ステップS22)、PVA溶液滴下工程(ステップS23)、紫外線照射工程(ステップS24)が繰り返し実施される積層体形成工程(ステップS20)が実施される。そして、第1除去工程(ステップS31)、第2除去工程(ステップS32)が続けて実施されるサポート材除去工程(ステップS30)が実施される。
次に、上述した造形方法に用いられる造形用スラリーの組成について説明する。本実施形態に用いられる造形用スラリーは、3つの材料である疎水性粒体、水系溶媒、及び両親媒性ポリマーが混練された懸濁物である。
上記疎水性粒体は、造形用スラリーを用いて形成される造形物の主要な構成材料である。疎水性粒体には、疎水性の樹脂の粒体、例えばアクリル樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、アクリルシリコーン樹脂粉末、ポリエチレン樹脂粉末、及びポリエチレンアクリル酸共重合樹脂粉末を用いることができる。なお、本実施の形態における疎水性粒体とは、100gの水系溶媒に対して1g以上溶解しない粒体のことである。
上記水系溶媒に対しては、造形物を構成する疎水性粒体の溶解度が上述のように低い。そのため、溶媒への溶解や溶媒の吸収に起因する疎水性粒体の変性が起こり難い。それゆえに、疎水性粒体の飛散を抑制する媒質として好ましい。なお、水系溶媒とは水、及び無機塩の水溶液等の非有機系溶媒を含むものであって、このうち水が水系溶媒として用いられることが好ましい。また、上記水系溶媒は、水に水溶性の有機溶媒を添加したものであってもよい。
上記両親媒性ポリマーは、上記疎水性粒体とともに造形物を構成する材料である。このポリマーは両親媒性であることから、親水性の部分による水系溶媒との親和性によって水系溶媒に溶解するとともに、その疎水性の部分による疎水性粒体との親和性によって該疎水性粒体の溶媒中への分散作用を発現する。両親媒性ポリマーとしては、主鎖である炭化水素鎖と、側鎖である親水性の官能基とを有する材料を用いることができる。
上記3つの材料が混練されたスラリー中では、両親媒性ポリマーが有する疎水性の部分によって、疎水性粒体同士が互いに架橋された状態にもなる。そのため、造形物の形成に際して、スラリーに振動等が与えられたとしても、疎水性の粒体は、粒体間の架橋によって形成された構造中に保持されることから、粒体の飛散が抑制されるようになる。
また、疎水性粒体は、疎水性の部分において相互作用している両親媒性ポリマーが有する親水性の部分を介して、水系溶媒中に均一に分散される。そのため、こうしたスラリーを用いて形成された造形物においては、形成材料である疎水性粒体が均一に存在することになる。なお、こうした両親媒性ポリマーは、それ自体が造形物の形成材料であることから、造形物の形成時には、形成途中の、あるいは完成した造形物から両親媒性ポリマーを取り除くといった操作を必要としない。
以下に、両親媒性ポリマーの具体例を記載する。
両親媒性ポリマーの好ましい例として、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)が挙げられる。ポリビニルアルコールの構造を以下に示す。
Figure 2012040726
ポリビニルアルコールは、主鎖として直鎖状の炭化水素を有するとともに、側鎖として親水性の官能基であるヒドロキシル基を有する。ポリビニルアルコールには、その単位構造当りにおよそ一つのヒドロキシル基が含まれることから、該ポリビニルアルコールは、疎水性の粒体との親和性を主鎖によって維持しつつ、水系溶媒との親和性が高いものとなる。なお、ポリビニルアルコールの単量体であるビニルアルコール(HC=CHOH)はケト−エノール互変異性による平衡がケト体であるアセトアルデヒド(CHCHO)側に大きく偏っていて不安定であることから、ポリビニルアルコールは一般に以下の手順で生成される。
(a)まず、酢酸(CHCOOH)とエステル化した構造を有する酢酸ビニル(CHCOOCH=CH)を重合することによって、ポリ酢酸ビニルを生成する。
(b)ポリ酢酸ビニルのエステル結合を加水分解(鹸化)して、−C=OCHを−Hに置換する。
そのため、ポリビニルアルコールは、上記化学式(1)に示されるように、側鎖に官能基としてヒドロキシル基(−OH)の他に、一部−OC=OCH基を有している。また、ポリビニルアルコールと総称される物質には、上記加水分解の度合いの違いに起因して、ポリ酢酸ビニルの重合度に対する、ヒドロキシル基の数の比が異なるものが含まれる。こうした重合度に対するヒドロキシル基の数の比の百分率は鹸化度と呼ばれ、ポリビニルアルコールの特性を示す指標として用いられている。
また、ポリビニルアルコールの特性を示す指標としては、上記化学式(1)に示される単位構造の重合数である重合度も用いられている。
これら鹸化度と重合度には以下のような傾向がある。
(ア)鹸化度が大きい程、親水性が増大するため、水系溶媒に対する溶解度が大きくなる。
(イ)ただし、一般的に部分鹸化型と呼ばれる鹸化度86以上の範囲では、鹸化度が100%に近づく程結晶化しやすくなるため、水系溶媒に対する溶解度が小さくなる。
(ウ)鹸化度が小さい程、疎水性が増大するため、水系溶媒に対する溶解度が小さくなる。
(エ)重合度が大きい程、ポリビニルアルコールが含まれる構造体の機械的強度が増大する。
(オ)重合度が小さい程、水系溶媒、特に冷水に対する溶解度が大きくなる。
次に、上述した造形方法で用いられる調整液としてのPVA溶液について説明する。
PVA溶液は、水系溶媒に両親媒性ポリマーであるポリビニルアルコール(PVA)を
溶解させた溶液である。上述したように、スラリー中において疎水性粒体は、両親媒性ポリマーによって互いに繋がれた状態にある。そのため、こうしたPVA溶液を上記スラリーに部分的に含ませると、その部位におけるポリビニルアルコールの密度が高められ疎水性粒体同士の架橋構造がより強固なものとなる。すなわち、PVA溶液を含ませた部分は、水系液体に対する溶解性が低下することになる。そしてこのスラリーを水系液体で溶解させると、まずPVA溶液を含まない部位が溶解し、その後にPVA溶液を含む部位が溶解することになる。つまり、上記スラリーにPVA溶液を部分的に含ませることによって、該スラリーを段階的に除去することができる。
なお、このPVA溶液に溶解させるポリビニルアルコールには、上記造形用スラリーに用いたものと同じ物性を有するものを用いることができる。しかし、上記PVA溶液を含むスラリーの水系液体に対する溶解性を低下させる上では、上記(イ)に基づき、スラリーに用いられたポリビニルアルコールよりも鹸化度が高いものが好ましい。同様に、上記(エ)(オ)に基づき、スラリーに用いられたポリビニルアルコールよりも重合度が大きいものが好ましい。こうしたポリビニルアルコールを含むPVA溶液を用いることにより、該PVA溶液を含むスラリーの水系液体に対する溶解性を効率よく低下させることができる。
次に、上記組成のスラリーを用いた造形方法について、図1〜図5を参照してさらに詳細に説明する。図2,3,4は、上記各工程にて実施される処理を模式的に示している。
図1に示したように、この造形方法では、まず、犠牲層形成工程(ステップS10:図2(a))にて、例えばガラス基板やプラスチックシート等の基板1(基体)上に、例えば厚さが200μmになるように、上記スラリーを塗布することによって、スラリーからなる層の最下層としての犠牲層2を形成する。なお、スラリーの塗布には、公知の方法であるスキージ法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、及びスピンコート法等、基板1上に略均一な厚さを有したスラリーの層を形成可能な方法を用いることができる。
次いで、積層体形成工程(ステップS20)が実施される。この積層体形成工程(ステップS20)は、図1に示したように、スラリー層造形工程(ステップS21)、紫外線硬化樹脂滴下工程(ステップS22)、PVA溶液滴下工程(ステップS23)、紫外線照射工程(ステップS24)が順に繰り返し実施されて犠牲層2に積層体60(図4(c)参照)を形成する工程である。なお、本実施形態では、図5に示す造形物70を造形する場合について説明する。この造形物70は、後述する5つの造形部12,22,32,42,52を順に積層したものであり、造形部32においては、下の層の造形部22及び上の層の造形部42に対して積層方向と直交する方向に張り出した張り出し部32aを有している。
まず、スラリー層形成工程(ステップS21:図2(b))にて、厚さが100μmになるように、上記スラリーを塗布して第1層目のスラリー層11を形成する。なお、スラリー層11の形成に際しても、犠牲層2の形成時と同様、上記公知の方法を用いることができる。
そして、紫外線硬化樹脂滴下工程(ステップS22:図3(a))にて、上記スラリー層11において造形物70(図5参照)の一部を形成するための造形部12に、液滴吐出装置3から結着液としての紫外線硬化樹脂を含んだUVインクIをインクジェット法により吐出する。ここで、スラリー層11内には、上記ポリビニルアルコールによる疎水性粒体の架橋構造が形成されていることによって、疎水性粒体同士は互いに所定の空間を有して配置されているとともに、空間中には水が充填されている。そのため、スラリー層11の上方から、該スラリー層11の表面に向かって吐出されたUVインクIは、上述の空間を通ってスラリー層11の裏面に到達するようになる。つまり、造形部12の全体にUV
インクIが浸透するため、該造形部12の強度が向上される。
このようにUVインクIの滴下された造形部12は、紫外線L(図3(c)参照)の照射により硬化して造形物70の一部を構成する結着部分となる。他方、スラリー層11における造形部12以外の領域である未結着部分は、該スラリー層11に形成された造形部12や、スラリー層11の次の層である第2層目のスラリー層21等に形成される造形部22等を機械的に支持するサポート部として機能するようになる。これにより、図5に示すような張り出し部32aを有する造形物70を形成する場合であっても、張り出し部32aを支持するサポート部を別途形成する必要がない。また、張り出し部32aの直下にスラリー層が存在する状態で造形物70の形成が行われることから、造形物70の形成途中において張り出し部32aが欠けることを抑制できる。
上記UVインクIには、カチオンを活性種とする重合反応によって硬化するカチオン重合型の紫外線硬化樹脂を含むものと、ラジカルを活性種とする重合反応によって硬化するラジカル重合型の紫外線硬化樹脂を含むものとがある。本実施の形態においては、これらのいずれに属するUVインクIも用いることができる。ただし、当該UVインクIは、スラリー層11の造形部12に滴下された後、造形部12に含まれる疎水性粒体と共々、硬化させるものである。そのため、UVインクI、特に紫外線硬化樹脂と疎水性粒体とには、相溶性を有する材料を選択することが好ましい。つまり、UVインクIと疎水性粒体には同系の材料を用いること、例えばアクリル系のUVインクIと、アクリル樹脂粉末とを用いることが好ましい。あるいは、UVインクIと、該UVインクIと同系の材料が表面に導入された疎水性粒体とを用いること、例えばアクリル系UVインクIとアクリルシリコーン樹脂粉末とを用いることが好ましい。つまり、ここでいう同系とは、疎水性粒体を構成する繰り返し単位構造の主骨格と、UVインクIに含まれる樹脂の単位構造の主骨格とが同一であることを意味している。また同系とは、該単位構造における側鎖官能基や該単位構造における主骨格の一部が異なるものの、疎水性液状体と上記樹脂との相互作用が疎水性粒体間の相互作用と略同じになる程度に、該単位構造の主骨格同士が一部重複することを意味している。それゆえに、疎水性粒体及び上記樹脂がそれぞれ共重合体である場合には、これらに含まれる原子の組成比が一致していないものも同系であるとする。
続いて、PVA溶液滴下工程(ステップS23:図3(b))にて、スラリー層11内において上記造形部12を囲むように、液滴吐出装置3からPVA溶液Fをスラリー層11にインクジェット法により吐出する。この液滴吐出装置3によるPVA溶液Fの吐出は、スラリー層11におけるPVA溶液Fの吐出に関する情報を規定した吐出データに基づいて行われる。この吐出データは、例えば造形物70の断面データに基づいて予め生成されるデータであって、PVA溶液Fの吐出位置やその位置における吐出回数などが規定されているデータである。スラリー層11の上方からスラリー層11の表面に吐出されたPVA溶液は、UVインクIと同様、疎水性粒体によって形成されている空間を通じてスラリー層11に浸透し、やがて裏面や造形部12に連なる位置に到達する。そしてPVA溶液Fが浸透した部位は、PVA溶液Fが浸透しなかった部位に比べて、ポリビニルアルコールの密度が高められることで粒体同士の架橋構造がより強固なものとなり水系液体に対する溶解性が低くなる。すなわち、スラリー層11のうち造形部12以外の部位は、PVA溶液Fが浸透した低溶解性サポート部13と、PVA溶液Fが浸透しなかった高溶解性サポート部14とによって構成される。つまり、サポート部を除去する際には、造形物70を支持している低溶解性サポート部13が、高溶解性サポート部14が除去されたあとで除去されることになる。このようにサポート部が段階的に除去されることによって、サポート部が一気に除去される場合に比べて、サポート部の除去にともなう機械的負荷が造形物70の特定の部位に対して集中的に作用することを抑えることができる。それゆえ、サポート部の除去にともなう造形物70の変形を抑えることができる。
なお、紫外線硬化樹脂滴下工程(ステップS22)の前にPVA溶液滴下工程(ステップS23)を実施することも可能である。しかしながら、スラリー層11の中でもPVA溶液Fが浸透した部位には、UVインクIが浸透しにくくなるため、造形部12となる部位にまでPVA溶液Fが浸透するとなれば造形部12の一部にしかUVインクIが浸透せず、造形部12の形状精度が低下してしまう虞がある。この点、本実施形態のように、UVインクIを造形部12に浸透させてからPVA溶液Fをスラリー層11に吐出することによって、造形部12、ひいては造形物70の形状精度が低下することを抑えることができる。一方、UVインクIが浸透した造形部12には、PVA溶液Fも浸透しにくくなるため、造形部12の端に沿う位置でPVA溶液Fの浸透が抑えられることになる。これにより、造形部12を低溶解性サポート部13で確実に支持することができる。そして造形部12を囲むようにPVA溶液Fを吐出することで、スラリー層11における造形部12の周囲を低溶解性サポート部13で覆うことが可能となる。
また、PVA溶液Fは、水系溶媒にPVAを溶解させたものである。そのため、PVA溶液Fが吐出された部位では、該PVA溶液Fが含む水系溶媒にスラリー層11の一部が溶解することになるが、これが過度に溶解してしまうとなればスラリー層11の表面に凹凸が形成される虞がある。上記サポート部13,14は、溶解させる水系液体の温度が高くなるほど該液体に溶解しやすくなるため、上述したPVA溶液Fの吐出によるスラリー層11の過度な溶解を抑制するうえでは、吐出されるPVA溶液Fではスラリー層11が該PVA溶液Fの水系溶媒に溶解しにくくなるように造形用スラリー及びPVA溶液Fを生成することが好ましい。
その後、紫外線照射工程(ステップS24:図3(c))にて、上記スラリー層11全体に紫外線Lが照射されることによって、造形部12が硬化される。なお、紫外線Lは、スラリー層11の全体に照射されなくともよく、少なくともスラリー層11のうちの造形部12に照射されればよい。また、紫外線Lの照射は、例えば上記液滴吐出装置3に搭載された紫外線照射装置によって、造形部12へのUVインクIの滴下と交互に行うことも可能であり、また該液滴吐出装置3とは別に設けられた紫外線照射装置によって、スラリー層毎に行うことが可能である。
上述したスラリー層形成工程(ステップS21)から上記紫外線照射工程(ステップS24)までの4工程が、造形物70を構成する造形部12,22,32,42,52の全てが形成されるまで繰り返し実施される。このように、層形成工程から紫外線照射工程までの4工程を順に繰り返すことにより、複数の層から構成される積層体60(図4(c)参照)を形成することができるため、当該造形方法によって形成される造形物70の形状に係る自由度が高くなる。
ここで、造形物70は、3層目の造形部32に張り出し部32aを有している。そのため、第2層目のスラリー層21に関わるPVA溶液滴下工程(ステップS23)においては、図3(d)に示されるように、造形部22の周辺に加えて、張り出し部32aに重なる部位の全域にわたってPVA溶液Fが吐出される。つまり、張り出し部32aは、PVA溶液Fが塗布された低溶解性サポート部23に重なるかたちで形成される。
こうした構成であれば、PVA溶液Fが浸透した部位にはUVインクIが浸透しにくいことから、図4(a)に示されるように、張り出し部32aを形成するためにスラリー層31の全域にわたってUVインクIが吐出されたとしても、該UVインクIがスラリー層21に浸透してくることを抑えることができる。これにより、UVインクIのスラリー層21への浸透によって張り出し部32aの形状精度が低下することを抑えることができる。またUVインクIがスラリー層21にまで浸透してしまうと、スラリー層31におけるUVインクIの密度が低下してしまうことで張り出し部32aの機械的強度が低下する。
しかしながら、上述した構成であれば、スラリー層21へのUVインクIの浸透が抑えられることから、張り出し部32aの機械的強度の低下を抑えることもできる。
また、4層目のスラリー層41に関わるPVA溶液滴下工程(ステップS23)においても、図4(b)に示されるように、スラリー層31の張り出し部32aに重なる部位にPVA溶液Fが吐出される。こうした構成であれば、張り出し部32aは、スラリー層21における低溶解性サポート部23とスラリー層41における低溶解性サポート部43とに挟まれることになる。すなわち、積層方向において、張り出し部32aを低溶解性サポート部で覆うことが可能になる。
そして、図4(c)に示されるように、第5層目の造形部52を形成するために、再び上記スラリー層形成工程(ステップS21)から上記紫外線照射工程(ステップS24)までが実施されることによって、犠牲層2の上に積層体60が形成される。
こうして犠牲層2の上に積層体60が形成されると、次にサポート部除去工程(ステップS30)が実施される。本実施形態のサポート部除去工程(ステップS30)は、水系液体として水を用い、主に高溶解性サポート部14,54を溶解させるための第1除去工程(ステップS31)と、低溶解性サポート部13,23,43,53を溶解させるための第2除去工程(ステップS32)とで構成される。
第1除去工程(ステップS31)は、低溶解性サポート部13,23,43,53が溶解しにくい温度の水である第1の液体に積層体60を浸漬すること、第1の液体を積層体60に対して所定の圧力で吹き付けること等によって行われる。これにより、図4(d)に示されるように、犠牲層2が溶解して基板1が離脱するとともに、高溶解性サポート部14,54が溶解し、低溶解性サポート部13,23,43,53で構成された低溶解性サポート部63が造形物70に付着した状態の積層体61が形成される。
続く第2除去工程(ステップS32)は、第1の液体よりも温度が高く低溶解性サポート部63が溶解しやすい水である第2の液体に積層体61を浸漬すること、第2の液体を積層体61に対して所定の圧力で吹き付けること等によって行われる。これにより、図5に示されるように、低溶解性サポート部63が溶解して造形物70が出現する。
ここで、第1の液体を用いて低溶解性サポート部63を溶解させることも可能である。しかしながら、低溶解性サポート部63の溶解に多大な時間を要してしまい、造形物70の生産性が大幅に低下する。これに対して、本実施形態の第2除去工程では、第1の液体よりも温度が高い水である第2の液体を用いて低溶解性サポート部63を溶解させている。こうした構成であれば、サポート部を段階的に除去しつつ、低溶解性サポート部63の溶解時間を短縮することができる。
このようにサポート部を高溶解性サポート部14,54と低溶解性サポート部63とで構成することによって、互いに条件の異なる第1除去工程(ステップS31)と第2除去工程(ステップS32)とでサポート部除去工程(ステップS30)を構成することも可能になる。
例えば、第1除去工程(ステップS31)においては、低溶解性サポート部63によって造形物70が支持され続けることになることから、高溶解性サポート部14,54の除去にともなう造形物70への機械的負荷が低溶解性サポート部63に分散されることになる。このことから、例えば積層体61に吹き付ける水系液体の圧力を上げる等、造形物70に対する機械的負荷が大きい条件のもとで第1除去工程を実施したとしても、造形物70の変形を抑えることができる。
また例えば、第2除去工程(ステップS32)においては、第1の液体よりも低溶解性サポート部63が溶解しにくい条件の水系液体を用い、第1の液体よりもさらに時間をかけて低溶解性サポート部63を除去することも可能である。こうした構成であれば、サポート部の除去にともなう造形物70の変形、特に微細構造の部分における変形を確実に抑えることができる。
なお、造形用スラリーの構成材料であるポリビニルアルコールの重合度を300以上1000以下とするとともに、鹸化度を85以上90以下とすれば、高溶解性サポート部14,54の水系液体に対する溶解度の低下を抑制することができる。そのため、上述した重合度と鹸化度とを有したポリビニルアルコールからなる構成の造形用スラリーでは、サポート部除去工程(ステップS30)に際して、上記積層体60から高溶解性サポート部14,54のみを容易に取り除くことができるという点で好ましい。
また、サポート部除去工程に用いられた水には各サポート部を構成していた疎水性粒体が含まれている。上述のように、サポート部を構成する疎水性粒体は水に溶解し難いため、上記水を濾過する等によって疎水性粒体を抽出することができる。つまり、上記サポート部除去工程に続いて、疎水性粒体の抽出工程を行うようにしてもよい。こうして抽出された疎水性粒体は、スラリーの構成材料として再利用することができる。
・造形用スラリー
(A)疎水性粒体 シャリーヌR−170S(粒径30μm)(日信化学工業(株)製)(シャリーヌ:登録商標)
(B)水系溶媒 水
(C)両親媒性ポリマー ポバールJP−03(日本酢ビ・ポバール(株)製、重合度300、鹸化度86.0〜90.0(88))
・組成比 (A):(B):(C)=7:3.1:0.22(単位g)
・各スラリー層の厚さ 100μm
・UVインク アクリル系のUVインク
・PVA溶液
(D)水系溶媒 水
(E)両親媒性ポリマー ポバールJT−05(日本酢ビ・ポバール(株)製、重合度500、鹸化度93.5〜95.5(94.5))
・組成比 (D):(E)=3.1:0.22(単位g)
以上説明したように、本実施の形態に係る造形方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)積層体形成工程(ステップS20)は、スラリー層にPVA溶液Fを吐出して、吐出されたPVA溶液Fが造形部に連なるように浸透させるPVA溶液滴下工程(ステップS23)を含む構成とした。こうした構成によってサポート部は、水系液体に対する溶解性が相対的に高い高溶解性サポート部14,54と相対的に低い低溶解性サポート部13,23,43,53とによって構成される。こうした構成によれば、サポート部が段階的に除去されることから、サポート部が一気に除去される場合に比べて、サポート部の除去にともなう機械的負荷が造形物70の特定の部位に対して集中的に作用することを抑えることができる。それゆえ、サポート部除去工程(ステップS30)における造形物70の変形を抑えることができる。
(2)PVA溶液滴下工程(ステップS23)において、PVA溶液Fを各スラリー層の造形部を囲むように吐出した。こうした構成であれば、造形部を低溶解性サポート部で囲むことが可能である。そのため、微細構造のような機械的強度が低い部位を構成する造形部を、積層方向と直交する方向において、低溶解性サポート部で覆うことが可能になる
。その結果、サポート部除去工程(ステップS30)における造形物70の変形をさらに抑えることができる。
(3)スラリー層21におけるPVA溶液滴下工程(ステップS23)では、次の層であるスラリー層31の造形部32が有する張り出し部32aと重なる部位にもPVA溶液Fを吐出した。こうした構成であれば、スラリー層31に吐出されたUVインクIがスラリー層21に浸透してくることを抑えることができる。これにより、張り出し部32aに関する形状精度及び機械的強度の低下を抑えることができる。
(4)スラリー層41におけるPVA溶液滴下工程(ステップS23)では、前の層であるスラリー層31の造形部32が有する張り出し部32aと重なる部位にもPVA溶液Fを吐出した。これにより、積層方向において、張り出し部32aを低溶解性サポート部23,43で覆うことができる。その結果、サポート部除去工程(ステップS30)において、張り出し部32aの変形を確実に抑えることができる。
(5)紫外線硬化樹脂滴下工程(ステップS22)のあとでPVA溶液滴下工程(ステップS23)を実施した。こうした構成であれば、UVインクIが造形部に浸透してからPVA溶液Fが吐出される。これにより造形部の形状精度、ひいては造形物70の形状精度が低下することを抑えることができる。
(6)しかも、造形部の端に沿う位置でPVA溶液Fの浸透が抑えられることから、低溶解性サポート部による造形部の支持がより確実なものとなる。
(7)水系液体に対する溶解性が相対的に高い高溶解性サポート部14,54と相対的に低い低溶解性サポート部13,23,43,53とでサポート部を構成した。こうした構成によれば、高溶解性サポート部14,54を除去するための第1除去工程(ステップS31)と低溶解性サポート部13,23,43,53を除去するための第2除去工程(ステップS32)とを異なる条件の下で実施することができる。このようにサポート部の除去方法に関わる自由度が高められることから、サポート部の除去にともなう造形物の変形を抑えつつ、造形物の形状や生産性など、造形物に関わる要求に対して柔軟に対応することも可能となる。
(8)水系溶媒である水と、疎水性粒体である樹脂の粒体と、両親媒性ポリマーであるポリビニルアルコールとからスラリーを構成するようにした。これにより、造形物70を形成する樹脂粒体が、水及びポリビニルアルコールとともに混合されることによって、懸濁液であるスラリー中に存在する。また、当該スラリーにおいては、ポリビニルアルコールにおける炭化水素鎖が樹脂粒体と親和性を有するため、粒体同士がポリビニルアルコールを介して繋がれた状態にある。つまり、樹脂粒体同士は、互いに独立した状態にあるのではなく、ポリビニルアルコールの介在によって互いに架橋された状態にある。そのため、造形物70の形成に際して、スラリーに振動等が与えられたとしても、樹脂粒体は、粒体間の架橋によって形成された構造中に保持されることから、粒体の飛散が抑制されるようになる。
(9)インクジェット法を用いてPVA溶液Fを塗布した。インクジェット法は、吐出する位置や吐出量に関して液滴の単位で変更することが可能である。そのため、PVA溶液Fの塗布に関し、塗布する位置や塗布量に関して液滴の単位で変更することが可能である。それゆえ、低溶解性サポート部の形成位置及び機械的強度に関する自由度を向上させることができる。
なお、上記実施の形態は、以下のように適宜変更して実施することも可能である。
・両親媒性ポリマーはポリビニルアルコールに限らず、疎水性粒体の間に介在してこれ
らを繋ぐとともに、該疎水性粒体を水系溶媒中に均一に分散可能な両親媒性ポリマーであればよい。
・両親媒性ポリマーは、主鎖として炭化水素鎖を有するとともに、側鎖として親水性の官能基を有するものに限らず、疎水性の部位と親水性の部位を有するものであって、疎水性の部位によって疎水性粒体間に介在するとともに、親水性の部位によって水系溶媒中に分散可能なものであればよい。
・紫外線硬化樹脂滴下工程(ステップS22)と紫外線照射工程(ステップS24)との間にPVA溶液滴下工程(ステップS23)を設けた。これに限らず、上述したように紫外線硬化樹脂滴下工程の前にPVA溶液滴下工程を設けてもよいし、紫外線照射工程の後にPVA溶液滴下工程を設けてもよい。
・スラリー層21,41においては、スラリー層31の造形部32における張り出し部32aと重なる部位にもPVA溶液Fを塗布した。これに限らず、スラリー層21,41においては、造形部22,42を囲むようにだけPVA溶液Fを塗布するようにしてもよい。
・上記実施形態では、造形物70の外形の一部が露出するかたちに積層体60を形成した。これを変更して図6に示すように積層体を形成してもよい。図6は、変形例において形成される積層体を模式的に示す図であって、(a)は積層体80の正面図及び背面図、(b)は積層体80の側面図を示している。すなわち、図6に示されるように、造形物70が低溶解性サポート部83によって完全に覆われるように積層体80を形成してもよい。こうした構成によれば、サポート部除去工程(ステップS30)において、造形部、ひいては造形物の変形を確実に抑えることが可能である。なお、こうした態様は、微細構造を有する造形物に対して非常に有効である。
・各スラリー層において造形部の周囲を囲むように低溶解性サポート部を形成した。これを変更して、図7に示すように低溶解性サポート部を形成してもよい。図7は、変形例におけるPVA溶液の塗布態様で形成された積層体を模式的に示す図である。低溶解性サポート部は、未結着部分における結着部分側の端に形成されていればよく、例えば、図7に示される積層体84のように、互いに対向する張り出し部85,86を有する造形物87に対して、該張り出し部85,86に挟まれる柱のように低溶解性サポート部88が形成されるようにPVA溶液Fを塗布してもよい。
・積層体形成工程(ステップS20)においてPVA溶液滴下工程(ステップS23)は、例えば造形物の形状等に合わせて、適宜導入される工程であってもよい。つまり、積層体形成工程(ステップS20)において、例えば、微細構造や張り出し部等、機械的強度が小さい部位に関わる積層過程において導入される構成であってもよい。
・疎水性粒体は樹脂からなる粒体に限らず、他の疎水性粒体、例えば表面に疎水性を有したシリコーン酸化物等の粒体であってもよい。
・疎水性粒体には、その表面に親水基を有するものを用いてもよい。
・造形用スラリーならびにPVA溶液Fの水系溶媒は水に限らず、無機塩の水溶液等、他の非有機系の水系溶媒であってもよい。
・造形用スラリーならびにPVA溶液Fの水系溶媒は、水に水溶性の有機溶媒を添加したものであってもよい。
・造形用スラリーならびにPVA溶液Fの水系溶媒は非有機系の溶媒に限らず、造形物
70の形状制御が可能であれば、エタノール、n−プロパノール等のアルコール類、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、ピロリドン系溶媒等の有機溶媒を主成分とする溶媒を用いるようにしてもよい。なおこの場合、造形物70を構成する疎水性流体としては、上記シリコーン酸化物等の有機溶媒に対する溶解性が低いものを用いることが好ましい。
・上記実施形態では、高溶解性サポート部と低溶解性サポート部とによって未結着領域を構成した。つまり、未結着領域が二段階で除去される構成とした。これに限らず、未結着領域を段階的に除去するうえでは、例えば、調整液に溶解させた両親媒性ポリマーが異なる2以上の調整液を用いることにより、未結着領域が三段階以上で除去される構成であってもよい。
・UVインクI及びPVA溶液Fは、液滴吐出装置3を用いたインクジェット法によってスラリー層11,21,31,41,51に塗布した。これに限らず、例えばUVインクIあるいはPVA溶液Fの塗布位置が規定されたマスクを用いる方法等、他の方法を用いて、スラリー層11,21,31,41,51にUVインクI及びPVA溶液Fを塗布してもよい。
F…PVA溶液、I…UVインク、L…紫外線、1…基板、2…犠牲層、3…液滴吐出装置、11,21,31,41,51…スラリー層、12,22,32,42,52…造形部、13,23,43,53,63…低溶解性サポート部、14,54…高溶解性サポート部、32a…張り出し部、60,61…積層体、70…造形物、80…積層体、83…低溶解性サポート部、84…積層体、85,86…張り出し部、87…造形物、88…低溶解性サポート部。

Claims (8)

  1. 疎水性の粒体を結着液で結着することにより造形物を造形する造形方法であって、
    前記粒体を含む複数の層を積み重ねつつ各層の一部に前記結着液を塗布し、前記粒体同士が前記結着液を介して結着した結着部分と該結着部分以外の未結着部分とに区画された前記層の積層体を形成する積層体形成工程と、
    前記積層体から前記未結着部分を液体を用いて取り除く除去工程とを有し、
    前記積層体形成工程では、
    前記粒体と水系溶媒と該水系溶媒に溶解された両親媒性ポリマーとを含むスラリーによって前記各層を形成するとともに、
    前記未結着部分における前記結着部分側の端で前記液体に対する溶解性が他の部位よりも低くなるように、両親媒性ポリマーを水系溶媒に溶解させた調整液を前記端となる部位に塗布する
    ことを特徴とする造形方法。
  2. 前記積層体形成工程では、
    前記層内において、前記結着部分が前記調整液で囲まれるように前記調整液を前記未結着部分に塗布する
    請求項1に記載の造形方法。
  3. 前記積層体形成工程は、
    前記層間において、前記調整液が塗布された部分上に前記結着部分を形成する
    請求項1または2に記載の造形方法。
  4. 前記積層体形成工程では、
    前記層間において、前記結着部分上の前記未結着部分に前記調整液を塗布する
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の造形方法。
  5. 前記結着液が塗布されたあとに前記調整液を塗布する
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の造形方法。
  6. 前記両親媒性ポリマーは、ポリビニルアルコールである
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の造形方法。
  7. 前記調整液に含まれるポリビニルアルコールの重合度が、前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの重合度よりも大きい
    請求項6に記載の造形方法。
  8. 前記調整液及び前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が86以上であり、かつ、前記調整液に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が、前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度よりも大きい
    請求項6または7に記載の造形方法。
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