JP2012031062A - 撥水性軽量気泡コンクリート - Google Patents

撥水性軽量気泡コンクリート Download PDF

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Abstract

【課題】軽量気泡コンクリートが有する軽量かつ断熱性に優れた性能を損なうことなく、軽量気泡コンクリート表面から内部に至るまで優れた撥水層を有する撥水性軽量気泡コンクリート、その製造方法および使用方法を提供すること
【解決手段】軽量気泡コンクリート表面から中心部の内部空隙に至るまで、アルキルアルコキシシランから形成される撥水層を有する軽量気泡コンクリート。前記アルコキシシランは、好ましくは炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種からなる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、撥水性を付与した軽量気泡コンクリート及びその製造方法と使用方法に関するものである。
多孔質無機系建材の一つである軽量気泡コンクリートは、軽量かつ断熱性に優れているため、ビルまたは住宅の外壁材、床材、間仕切り材、屋根材として広く用いられている。しかし、一方ではその耐水性が劣り水を吸水し易いという問題がある。すなわち、比重が0.45〜0.55の軽量気泡コンクリートは、体積のほぼ8割が空隙であり、この空隙に水が浸透し易く、水が入ると断熱性や強度が低下するだけでなく、炭酸化や凍害の促進を招き、亀裂などの問題を生じる。また、吸水と乾燥の過程で膨潤と収縮を繰り返し、亀裂の原因になる場合もある。
一般に、軽量気泡コンクリートの吸水を防止する方法は、軽量気泡コンクリート表面への塗装である。しかし、軽量気泡コンクリートの表面は、切断時に形成される凹凸や気泡による凹凸が大きく、非常に多くの塗料を塗布しないと耐透水性能が得られない。また、現場塗装では、ピンホールなどができ易く、完全に吸水を防止することは非常に困難である。更には、工場塗装で予め軽量気泡コンクリート表面に完全な塗装を行っていても、軽量気泡コンクリートは、現場で切断加工する場合が多く、切断面から雨などの水が入り問題となる。このように、塗装では軽量気泡コンクリートの吸水の問題を十分に解消することが困難である。
そこで、軽量気泡コンクリート自体の吸水速度を低減する方法として、特許文献1、2において、軽量気泡コンクリート製造工程の原料スラリーにポリジメチルシロキサンを添加する方法が提案されている。しかし、このような方法では、軽量気泡コンクリートが吸水し易いという問題をある程度解決することはできるが、本質的に吸水を防ぐことはできず、軽量気泡コンクリートの吸水問題を解決したとは言えない。
また、軽量気泡コンクリートの吸水を防止する方法として、特許文献3において、軽量気泡コンクリート表面にアルコキシシランなどの撥水剤蒸気を接触させて撥水性を付与する方法が提案されている。しかし、この方法では、軽量気泡コンクリートに撥水剤蒸気を単純に接触させるだけであり、撥水剤は軽量気泡コンクリート内部空隙へ拡散により浸透するのみであるので、本発明の比較例2に示すように、軽量気泡コンクリートの表面から3mm程度の深さまでは撥水性を有するものの、軽量気泡コンクリート内部までは十分な撥水性が得られない。
また、同様に特許文献4において、ケイ酸カルシウム成形体を密閉容器に入れ減圧状態にした後、アルキルアルコキシシランの蒸気を流入させる方法が提案されている。しかし、この方法では、軽量気泡コンクリートを密閉容器に入れて減圧状態にしているものの、十分なアルキルアルコキシシラン蒸気が得られず、本発明に比較例3として記載したように、軽量気泡コンクリートの内部まで十分な撥水性を有する撥水層が得られていない。
特開昭58−55359号公報 特開平3−54175号公報 特開昭59−116165号公報 特開平6−271371号公報
本発明は、軽量気泡コンクリートが有する軽量かつ断熱性に優れた性能を損なうことなく、軽量気泡コンクリート表面から内部に至るまで優れた撥水層を有する撥水性軽量気泡コンクリート、その製造方法および使用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、軽量気泡コンクリートを密閉容器に入れ加熱減圧(減圧後の圧力をP1とする。)した後に、アルキルアルコキシシラン蒸気を流入させて、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内のアルキルアルコキシシラン蒸気圧を上記圧力P1より1000Pa以上高くすると、該軽量気泡コンクリート内部の中心部空隙表面にまで撥水層を形成させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は
1. 軽量気泡コンクリート表面から中心部の内部空隙に至るまで、アルキルアルコキシシランから形成される撥水層を有する軽量気泡コンクリート、
2. アルキルアルコキシシランが、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種からなる上記1の軽量気泡コンクリート、
3. アルキルアルコキシシランが、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物である上記1の軽量気泡コンクリート、
4. アルキルアルコキシシランが、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物である上記1の軽量気泡コンクリート、
5. 撥水層の水の接触角が100度以上である上記1、2、3または4の軽量気泡コンクリート、
6. 撥水層の水の接触角が130度以上である上記1、2、3または4の軽量気泡コンクリート、
7. 軽量気泡コンクリートの厚みが10〜200mmである上記1、2、3、4、5または6の軽量気泡コンクリート、
8. 軽量気泡コンクリートの厚みが25〜200mmである上記7の軽量気泡コンクリート、
9. 密閉容器内に軽量気泡コンクリートを入れて100℃以上に加熱減圧した後、該密閉容器とは別の密閉容器にアルキルアルコキシシランを入れて減圧にし、100℃以上に加熱して発生させたアルキルアルコキシシランの蒸気を上記軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に流入し、該密閉容器内の流入後の圧力を上記流入前の減圧圧力より5000〜100000Pa高くして、アルキルアルコキシシランを軽量気泡コンクリート表面から中心部の内部空隙に至るまで付着させることからなる軽量気泡コンクリートの製造方法、
10. 軽量気泡コンクリートの表面から中心部の内部空隙に至るまで、アルキルアルコキシシランから形成される撥水層を有する軽量気泡コンクリートを製造する方法であり、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルコキシシランの少なくとも1種を用いる上記9の軽量気泡コンクリートの製造方法、
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における撥水性軽量気泡コンクリートは、軽量気泡コンクリート表面及び内部空隙表面全体に、アルキルアルコキシシランから形成される撥水層を有する軽量気泡コンクリートである。
本発明において、軽量気泡コンクリートとは、周知の方法で製造されたもので良く、例えば、珪石やセメント、生石灰、石膏などのケイ酸質原料と石灰質原料を主成分にアルミニウムなどの気泡剤を混合してできた原料スラリーを、予め補強用鉄筋もしくは金網を配設した型枠に注入し、切断に適した硬度になるまで養生した後、型枠から外して半硬化状のモルタルブロックとし、これを緊張配設したピアノ線などの線材で切断したものをオートクレーブ養生することにより製造される。本発明において、軽量気泡コンクリートの内部空隙とは、軽量気泡コンクリートを発泡成形するときに導入される気泡だけでなく、部分的に気泡同士を繋ぐ連通孔や成形時に生じる毛細管空隙やゲル空隙なども含まれる。
本発明で用いられる、アルキルアルコキシシランは、一般式を R Si(OR4−nで表すことができる。ここで、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、Rはアルキル基であれば特に限定されないが、最も汎用的なメチル基、エチル基が好ましい。nは1〜3の整数を表す。nが2以上の場合、R同士は同じであっても異なっていても良い。nが1または2の場合、R同士は同じでも異なっていても良い。
本発明で用いられるアルキルアルコキシシランとしては、最も汎用的なアルキルトリアルコキシシラン(n=1)が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基を有する代表的なアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシランなど
が挙げられる。
また、炭素数9〜18のアルキル基を有する代表的なアルキルトリアルコキシシランとしては、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アルキルアルコキシシランのアルコキシル基は、加水分解してシラノール基となり、更に、軽量気泡コンクリート表面及び内部空隙表面で軽量気泡コンクリートを構成するケイ酸カルシウムなどが有するシラノール基と化学結合してシロキサン結合を形成する。軽量気泡コンクリートと化学結合したアルキルアルコキシシランは、軽量気泡コンクリート表面及び内部空隙表面で単分子〜数分子層から成る膜を形成することで優れた撥水性を発現すると推測される。
本発明において好ましく用いられるアルキルアルコキシシランは、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種、および炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物である。より好ましく用いられるのは、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種、および炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物であり、さらに好ましく用いられるのは、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物である。炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物であることが特に好ましい。
ここで、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物の代表的なものとしては、例えばメチルトリメトキシシランとプロピルトリメトキシシランの混合物、メチルトリメトキシシランとヘキシルトリメトキシランの混合物、メチルトリメトキシシランとオクチルトリメトキシランの混合物、メチルトリエトキシシランとプロピルトリエトキシシランの混合物、メチルトリエトキシシランとヘキシルトリエトキシランの混合物、メチルトリエトキシシランとオクチルトリエトキシランの混合物、エチルトリメトキシシランとプロピルトリメトキシシランの混合物、エチルトリメトキシシランとヘキシルトリメトキシランの混合物、エチルトリメトキシシランとオクチルトリメトキシランの混合物、エチルトリエトキシシランとプロピルトリエトキシシランの混合物、エチルトリエトキシシランとヘキシルトリエトキシランの混合物、エチルトリエトキシシランとオクチルトリエトキシランの混合物が挙げられる。
炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種の代表的なものは、例えばプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシランとヘキシルトリメトキシシランの混合物、プロピルトリメトキシシランとオクチルトリメトキシシランの混合物、プロピルトリエトキシシランとヘキシルトリエトキシシランの混合物、プロピルトリエトキシシランとオクチルトリエトキシシランの混合物が挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物の代表的なものは、例えばメチルトリメトキシシランとデシルトリメトキシシランの混合物、メチルトリメトキシシランとドデシルトリメトキシシランの混合物、メチルトリメトキシシランとオクタデシルトリメトキシシランの混合物、エチルトリメトキシシランとデシルトリメトキシシランの混合物、エチルトリメトキシシランとドデシルトリメトキシシランの混合物、エチルトリメトキシシランとオクタデシルトリメトキシシランの混合物、プロピルトリメトキシシランとデシルトリメトキシシランの混合物、プロピルトリメトキシシランとドデシルトリメトキシシランの混合物、プロピルトリメトキシシランとオクタデシルトリメトキシシランの混合物、メチルトリエトキシシランとデシルトリエトキシシランの混合物、メチルトリエトキシシランとドデシルトリエトキシシランの混合物、メチルトリエトキシシランとオクタデシルトリエトキシシランの混合物、エチルトリエトキシシランとデシルトリエトキシシランの混合物、エチルトリエトキシシランとドデシルトリエトキシシランの混合物、エチルトリエトキシシランとオクタデシルトリエトキシシランの混合物、プロピルトリエトキシシランとデシルトリエトキシシランの混合物、プロピ
ルトリエトキシシランとドデシルトリエトキシシランの混合物、プロピルトリエトキシシランとオクタデシルトリエトキシシランの混合物が挙げられる。また、これらの代表的な例として挙げたアルキルアルコキシシラン及び混合物から選ばれる2種以上の混合物も好ましい具体例である。
アルキルアルコキシシランとして、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種、または炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物を使用すると、軽量気泡コンクリートの表面はもちろん、内部空隙表面全体に水に対する接触角100度以上の撥水層を形成することが可能となる。さらに、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種、または炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物を使用すると、得られた撥水層は軽量気泡コンクリートの表面から中心部の内部空隙表面に至るまで全体に亘って、水の接触角が130度以上、更には150度以上の優れた撥水性を発現することが可能となる。
なお、アルキルアルコキシシランとして、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物を用いた場合も、アルキルアルコキシシランを選ぶことで水の接触角を130度以上にすることが可能である。また、プロピルトリエトキシシランは、優れた撥水性を発現し、かつあまり高温にし なくても高い蒸気圧を得られることなどから使用し易く、好ましいアルキルアルコキシランである。
炭素数が9以上のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランを単独で軽量気泡コンクリートの内部空隙まで浸透させるに充分な蒸気圧を得るには、200度以上の高温にすることが必要となる。そこで、蒸気圧が高い炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種の蒸気と、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種の蒸気とを混合した混合蒸気は、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシラン蒸気の分圧が小さいものの、軽量気泡コンクリートの内部空隙まで浸透させるに必要な蒸気圧を有する混合蒸気を得ることが可能となる。この得られた混合蒸気を用いて形成された撥水層は、軽量気泡コンクリートの表面から中心部の内部空隙表面に至るまで全体に亘って、混合割合にもよるが150度以上の優れた撥水性を有する。
ここで、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合割合は、気化前の溶液で炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランが10〜60重量%が好ましく、30〜50重量%がより好ましい。炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合割合は、気化前の溶液で炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランが60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましく、更には75〜95重量%が特に好ましい。
本発明においては、用いるアルキルアルコキシシランを選択することで軽量気泡コンクリートの表面及び内部空隙表面に水の接触角が100度以上、好ましくは130度以上、より好ましくは150度以上の優れた撥水性を有する撥水層を形成することができる。
また、本発明において使用される軽量気泡コンクリートは、周知の方法で製造されたもので良く、例えば、珪石やセメント、生石灰、水を主原料として石膏や解砕屑、気泡剤などを使用することができる。また、補強用鉄筋もしくは補強用金網が埋設されている。
本発明の優れた撥水性を有する軽量気泡コンクリートの製造方法を説明する。本発明において、アルキルアルコキシシランを軽量気泡コンクリート表面及び内部空隙表面に至るまで浸透させて、軽量気泡コンクリート表面及び内部空隙表面に撥水層を形成させる方法としては、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内を加熱減圧(圧力P1)とし、次にこの密閉容器と弁で開閉が可能な管で連結された別の密閉容器にアルキルアルコキシシランを入れ、この密閉容器内も減圧とした後に加熱してアルキルアルコキシシランの蒸気を該密閉容器内に発生させ、予めアルキルアルコキシシランの蒸気圧を圧力P1よりも高い圧力とする。この状態で前記弁を開くとアルキルアルコキシシラン蒸気は、軽量気泡コンクリートの入った密閉容器内に流入し、軽量気泡コンクリートの表面及び内部空隙に至るまで速やかに浸透させることができる。
ここで、軽量気泡コンクリート入れた密閉容器を加熱するとき、軽量気泡コンクリートを長時間高温にさらすと乾燥し亀裂が発生する可能性があるため、そのような場合は、乾燥を抑制するために加熱水蒸気により加熱し、所定温度になった後に減圧すると良い。ここで、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器の加熱温度は、流入されるアルキルアルコキシシランの蒸気が凝縮して液化しないことが肝要であり、流入されるアルキルアルコキシシランによって異なるが80〜300℃が好ましく、90〜220℃がより好ましく、更には100〜210℃が特に好ましい。また、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器の減圧の程度は、より減圧にすることが肝要であるが、通常は1000Pa以下とすることが好ましく、500Pa以下とすることがより好ましい。
ここで、アルキルアルコキシシランの蒸気を軽量気泡コンクリート表面及び内部空隙に短時間に浸透させるためには、アルキルアルコキシシランの蒸気が冷却されて凝縮しない温度まで、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器や密閉容器を繋ぐ管だけでなく、軽量気泡コンクリート自体も十分に加熱することと、アルキルアルコキシシランを入れた密閉容器を加熱して、予めアルキルアルコキシシランの蒸気を十分に発生させ、アルキルアルコキシシランの蒸気圧が軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内の圧力P1より高い状態にすることが肝要である。好ましくはアルキルアルコキシシランの蒸気を発生させる前に密閉容器内をできるだけ減圧にして空気を取り除いた後にアルキルアルコキシシランを気化させて、密閉容器内を可能な限り、純粋なアルキルアルコキシシランの蒸気で満たすことである。
つまり、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内にアルキルアルコキシシランの蒸気を流入させる前に、アルキルアルコキシシランを入れた密閉容器内を減圧にせず空気が入ったままで、更にはアルキルアルコキシシランを十分に気化させない状態で前記弁を開けても軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に流入するのはほとんどが空気である。両密閉容器内の圧力が均一になった後にアルキルアルコキシシランが入った密閉容器内が減圧状態となることで気化したアルキルアルコキシシランは、軽量気泡コンクリートの入った密閉容器内に流入するものの軽量気泡コンクリートの内部空隙には拡散でしか浸透することができず、軽量気泡コンクリートの内部空隙にまで浸透させるには非常に長い処理時間を要する。
本発明において、軽量気泡コンクリート内部へのアルキルアルコキシシランの浸透は、拡散でなく圧力差が推進力となるため、非常に速やかに軽量気泡コンクリート表面及び中心部の内部空隙表面に浸透するだけでなく、軽量気泡コンクリートの表面から内部に至るまで優れた撥水層が形成される。
上記したように、軽量気泡コンクリート内部への浸透は、圧力差が推進力となるため減圧にした際の圧力P1とアルキルアルコキシシランの蒸気を流入した後の圧力P2との差(P2−P1)で決定される。したがって、必要とされる該圧力差は軽量気泡コンクリート厚みに比例することになるが、通常、1000〜100000Paであることが好ましく、5000〜90000Paであることがより好ましく、更には8000〜80000Paであることが特に好ましい。必要とされる圧力差(P2−P1)が軽量気泡コンクリート厚みに比例することから、予め軽量気泡コンクリートの試験片を用いて予備試験を行い、必要とされる圧力差(P2−P1)を求める方法も好ましい態様である。
また、これらの圧力差を適切に設けるためには、使用するアルキルアルコキシシランの種類やアルキルアルコキシシランを気化させる密閉容器の体積によっても異なるが、温度は80〜300℃であることが好ましく、90〜220℃であることがより好ましく、100〜210℃であることが更に好ましい。
本発明において2種以上のアルキルアルコキシシランの混合蒸気を得る方法は、それぞれのアルキルアルコキシシランを別々の密閉容器入れて所定温度まで加熱し気化した蒸気を混合するか、または単純に同一密閉容器内にそれぞれのアルキルアルコキシシランを別々に入れるか、もしくは予めそれぞれのアルキルアルコキシシランを所定の割合で混合してから加熱しても良い。
本発明で用いる軽量気泡コンクリートの厚みは10mm以上であり、25mm以上が好ましく、35mm以上がより好ましい。また、軽量気泡コンクリート厚みは200mm以下であり、150mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましい。軽量気泡コンクリート厚みが200mmより厚いものを内部まで撥水化させるためには、非常に大きな蒸気圧が必要となり、現実には困難となる。
本発明において、軽量気泡コンクリート内部に浸透させるために必要な処理時間は、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器とアルキルアルコキシシラン蒸気の流入量によって異なるが、通常は数十秒〜2時間程度で十分である。
本発明の製造方法においては、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器及び軽量気泡コンクリート自体が十分に加熱されているため、軽量気泡コンクリート表面及び内部空隙内に浸透したアルキルアルコキシシラン蒸気は、速やかに軽量気泡コンクリートと化学結合し、撥水性を発現させることが可能となる。
また、アルキルアルコキシシラン蒸気を浸透させる処理時間が短く、一部未反応のアルキルアルコキシシランが存在して十分に撥水性が発現していない場合には、未反応のアルキルアルコキシシランと軽量気泡コンクリートを反応さて撥水性を発現させるために室温で数日〜数週間放置しておくだけでも良いが、更には60℃〜180℃で0.5〜5時間程度加熱するのが好ましい。ここで、加熱方法は、特に限定されないが一般的な熱風加熱や遠赤外線加熱または水蒸気加熱などを使用することができる。
本発明において、軽量気泡コンクリート表面及び内部空隙表面に浸透させるアルキルアルコキシシランは、十分な撥水性を発現させるためには、軽量気泡コンクリートに対して0.1〜5重量%程度であることが好ましいが、高価なアルキルアルコキシシランを多く使用することは、コスト上昇に繋がるため、0.5〜3重量%程度であることがより好ましい。
本発明の方法で処理した軽量気泡コンクリートは、表面から内部に至るまで優れた撥水層を有しているため、耐透水性が著しく向上しており、従来通りの塗装をしても使用できるが、これまでのように軽量気泡コンクリート表面を塗装して吸水を防ぐ必要がないため、化粧用の塗装をするのみもしくは塗装なしの素板で使用することも可能である。また、該軽量気泡コンクリートは、耐凍害性能も著しく向上しており、これまで凍害を起こすため使用が制限されていた寒冷地での使用が可能となる。このように、本発明の軽量気泡コンクリートは、従来通りの使用はもちろんであるが、塗装や寒冷地の制限なしに外壁材、床材、間仕切り材または屋根材として使用することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
本発明において水の接触角、耐凍害性、耐透水性は次のように測定した。
1.水の接触角
長さ160mm、幅40mm、厚さ40mmのサンプルを長さ80mmの位置で切断し、幅40mm、厚さ40mmの切断面上を幅方向及び厚さ方向に10mm間隔で各4点の合計16箇所を温度20℃、湿度65%の条件下で協和界面科学株式会社製の接触角計(CA−DT型)により測定した。
2.耐凍害性
株式会社マルイ社製の凍結融解試験機(MIT−1682−A3−特)により、JIS A−1435に準拠した気中凍結水中融解法で測定した。ここで凍結融解1サイクルに要する温度及び時間条件は、気中凍結時−20℃で2時間、水中融解時+10℃で2時間である。また、サンプル寸法は長さ160mm、幅40mm、厚さ40mmとした。尚、各サンプルの耐凍害性は、次式で示される体積保持率が95%以下になったサイクル数と定めた。
体積保持率=V1/V0×100
ここで、V0:試験前のサンプル体積
V1:所定サイクル終了後のサンプル体積
3.耐透水性
JIS K−5400に準拠して測定した方法で、24時間に所定面積(口径75mm)中をサンプルに浸透した水の透水量とした。ここで、サンプル寸法は長さ100mm、幅100mm、厚さ50mmとした。
<軽量気泡コンクリートの製造>
サンプルとして使用した軽量気泡コンクリートは、次の方法で作製した。珪石53重量部、生石灰7.5重量部、セメント37重量部、乾燥石膏2.5重量部、これら固形分100重量部に対して水68重量部、アルミ粉末0.06重量部を混合したモルタルスラリーを型枠に注入した後、予備養生してできた半硬化状の軽量気泡モルタルブロックをピアノ線で切断したものをオートクレーブ養生した。
≪実施例1≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートから長さ160mm、幅40mm、厚さ40mmの試料を切り出し、これを容積10000cmの密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を160℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで弁で開閉が可能な管で連結された容積10000cmの別の密閉容器内にプロピルトリエトキシシランを70g入れ、300Paに減圧した後に160℃に加熱してプロピルトリエトキシシランを気化させて33000Paの蒸気圧を得た。そこで上記弁を開放し、プロピルトリエトキシランの蒸気を軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に約1分間注入し、該密閉容器内の圧力を16500Paとした後、そのままの状態で1時間放置した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで優れたな撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が128〜131度の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は2.5cmであり、耐凍害性は122サイクルであった。
≪実施例2≫
プロピルトリエトキシランをイソブチルトリメトキシシランに換えた以外は実施例1と同様な方法で撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで優れたな撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が135〜138度の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は2.3cmであり、耐凍害性は140サイクルであった。
≪実施例3≫
プロピルトリエトキシランをヘキシルトリメトキシシランに換え、軽量気泡コンクリートを入れる密閉容器内、付属する配管およびヘキシルトリメトキシシランを入れた密閉容器内を175℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様な方法で撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。一般的に水の接触角が150度を超えるとサンプル表面に水滴を滴下させることが難しく測定が困難となる。そこで、本発明において水の接触角が150度以上とした場合は、測定限界を超えているものとする。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は1.2cmであり、耐凍害性は205サイクルであった。
≪実施例4≫
プロピルトリエトキシランをオクチルトリメトキシシランに換え、軽量気泡コンクリートを入れる密閉容器内、付属する配管およびオクチルトリメトキシシランを入れた密閉容器内を200℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様な方法で撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は0.9cmであり、耐凍害性は220サイクルであった。
≪実施例5≫
プロピルトリエトキシランをメチルトリエトキシシランに換え、軽量気泡コンクリートを入れる密閉容器内、付属する配管およびメチルトリエトキシシランを入れた密閉容器内を130℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様な方法で撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が88〜91度の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は12.0cmであり、耐凍害性は38サイクルであった。
≪実施例6≫
プロピルトリエトキシランをエチルトリエトキシシランに換え、軽量気泡コンクリートを入れる密閉容器内、付属する配管およびエチルトリエトキシシランを入れた密閉容器内を145℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様な方法で撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が90〜92度の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は10.0cmであり、耐凍害性は41サイクルであった。
≪実施例7≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートを実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を165℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで実施例1同様の弁で開閉が可能な管で連結された別の密閉容器内にメチルトリメトキシシラン25g、プロピルトリエトキシシラン25g、ヘキシルトリエトキシシラン25gを入れ、300Paに減圧した後に165℃に加熱して該混合アルコキシシランを気化させて33000Paの蒸気圧を得た。そこで上記弁を開放し、該混合アルコキシシランの蒸気を軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に約1分間注入し、該密閉容器内の圧力を16500Paとした後、そのままの状態で1時間放置した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が139〜141度の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は1.8cmであり、耐凍害性は180サイクルであった。
≪実施例8≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートを実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を170℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで実施例1同様の弁で開閉が可能な管で連結された別の密閉容器内にプロピルトリエトキシシラン54g、ヘキシルトリメトキシシラン18gを入れ、300Paに減圧した後に170℃に加熱して該混合アルコキシシランを気化させて33000Paの蒸気圧を得た。そこで前記弁を開放し、該混合アルコキシシランの蒸気を軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に約1分間注入し、該密閉容器内の圧力を16500Paとした後、そのままの状態で1時間放置した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が140〜143度の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は1.8cmであり、耐凍害性は180サイクルであった。
≪実施例9≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートを実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を180℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで実施例1同様の弁で開閉が可能な管で連結された別の密閉容器内にメチルトリエトキシシラン56gとデシルトリメトキシシランを14g入れ、300Paに減圧した後に180℃に加熱して該混合アルコキシシランを気化させて33000Paの蒸気圧を得た。そこで前記弁を開放し、該混合アルコキシシランの蒸気を軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に約1分間注入し、該密閉容器内の圧力を16500Paとした後、そのままの状態で1時間放置した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は0.7cmであり、耐凍害性は220サイクルであった。
≪実施例10≫
デシルトリメトキシシランをドデシルトリエトキシシランに換え、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内および付属する配管ならびにメチルトリエトキシシラン56gとドデシルトリエトキシシラン14gを入れた密閉容器内を加熱する温度を190℃にした以外は、実施例9と同様にして撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は0.7cmであり、耐凍害性は220サイクルであった。
≪実施例11≫
メチルトリエトキシシランをメチルトリメトキシシランに、デシルトリメトキシシランをオクタデシルトリエトキシシランに換え、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内および付属する配管ならびにメチルトリメトキシシラン56gとオクタデシルトリエトキシシラン14gを入れた密閉容器内を加熱する温度を190℃にした以外は実施例9と同様にして撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は0.6cmであり、耐凍害性は230サイクルであった。
≪実施例12≫
メチルトリエトキシシランをエチルトリメトキシシランに、デシルトリメトキシシランをオクタデシルトリエトキシシランに換えた以外は実施例9と同様にして撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は0.6cmであり、耐凍害性は250サイクルであった。
≪実施例13≫
メチルトリエトキシシランをプロピルトリエトキシシランに、デシルトリメトキシシランをオクタデシルトリメトキシシランに換え、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内および付属する配管ならびにプロピルトリエトキシシラン56gとオクタデシルトリメトキシシラン14gを入れた密閉容器内を加熱する温度を190℃にした以外は実施例9と同様にして撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は0.5cmであり、耐凍害性は265サイクルであった。
≪実施例14≫
オクタデシルトリメトキシシランをオクタデシルトリエトキシシランに換え、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内および付属する配管ならびにプロピルトリエトキシシラン56gとオクタデシルトリエトキシシラン14gを入れた密閉容器内を加熱する温度を200℃にした以外は実施例13と同様にして撥水性を有する軽量気泡コンクリートを製造した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は0.5cmであり、耐凍害性は263サイクルであった。
≪実施例15≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートを実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を180℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで実施例1同様の弁で開閉が可能な管で連結された別の密閉容器内にメチルトリエトキシシラン28g、エチルトリエトキシシラン14g、プロピルトリエトキシシラン14gとオクタデシルトリトリエトキシシランを14g入れ、300Paに減圧した後に180℃に加熱して該混合アルコキシシランを気化させて33000Paの蒸気圧を得た。そこで前記弁を開放し、該混合アルコキシシランの蒸気を軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に約1分間注入し、該密閉容器内の圧力を16500Paとした後、そのままの状態で1時間放置した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで極めて優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が150度以上の撥水性を有することが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は0.6cmであり、耐凍害性は250サイクルであった。
≪実施例16≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートを長さ100mm、幅100mm、厚さ100mmに切り出し、実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を180℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで実施例1同様の弁で開閉が可能な管で連結された別の密閉容器内にプロピルトリエトキシシラン100gを入れ、300Paに減圧した後に180℃に加熱してプロピルトリアルコキシシランを気化させて66000Paの蒸気圧を得た。そこで前記弁を開放し、該混合アルコキシシランの蒸気を軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に約2分間注入し、該密閉容器内の圧力を33000Paとした後、そのままの状態で1時間放置した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が128〜131度以上の撥水性を有することが確認された。
≪実施例17≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートを長さ200mm、幅200mm、厚さ200mmに切り出し、実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を200℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで実施例1同様の弁で開閉が可能な管で連結された容積30000cmの別の密閉容器内にプロピルトリエトキシシラン300gを入れ、300Paに減圧した後に200℃に加熱してプロピルトリアルコキシシランを気化させて80000Paの蒸気圧を得た。そこで前記弁を開放し、該混合アルコキシシランの蒸気を軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に約3分間注入し、該密閉容器内の圧力を66000Paとした後、そのままの状態で1時間放置した。
本実施例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から中心部に至るまで優れた撥水性が発現しており、軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角は測定したすべての場所において水の接触角が128〜131度以上の撥水性を有することが確認された。
≪比較例1≫
上記製造方法で得られた軽量気泡コンクリートを長さ160mm、幅40mm、厚さ40mmに切り出し、そのままの状態で前記の方法で各性能を評価したところ、水の接触角はサンプルに滴下した水滴が瞬時に吸水されるため測定が不可能であり、耐透水性は80cm以上、耐凍害性は10サイクルであった。
≪比較例2≫
上記製造方法で得られた軽量気泡コンクリートを長さ160mm、幅40mm、厚さ40mmに切り出し、プロピルトリエトキシシラン70gを実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を150℃で1時間加熱した。
本比較例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から内部に3mm程度しか撥水性を発現しておらず、不十分な撥水性軽量気泡コンクリートであることが確認された。この得られた軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角を、上記記載の方法で測定したところ、表面から内部へ3mmまでは、水の接触角が100〜130度と撥水性を有しているものの、それ以外は滴下した水滴が瞬時に吸水し全く撥水性を有していないことが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は60cmであり、耐凍害性は15サイクルであった。
本比較例のように単純にアルコキシシランの蒸気を接触させるだけでは、軽量気泡コンクリートの表面近傍で撥水性が発現するものの、内部空隙へアルコキシシランが浸透せず、耐透水性や耐凍害性もほとんど向上しないことが確認された。
≪比較例3≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートを長さ160mm、幅40mm、厚さ40mmに切り出し、実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を60℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで実施例1同様の弁で開閉が可能な管で連結された別の密閉容器内にメチルトリエトキシシランを70g入れ、60℃に加熱してから前記弁を開放しその状態で3時間放置した。その後、サンプルを取り出し、120℃の熱風乾燥機で1時間処理した。
本比較例により得られた軽量気泡コンクリートは、ほとんど撥水性は発現しておらず、軽量気泡コンクリート表面は極めて僅かに撥水性が付与されているもののそれ以外は全く撥水性は付与されていなかった。上記記載の方法で測定した水の接触角は、軽量気泡コンクリート表面が20〜40度であったが、内部は滴下した水滴が瞬時に吸水し全く撥水性を有していないことが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は75cmであり、耐凍害性は10サイクルであった。
本比較例のように予めアルコキシシランを気化させて十分な蒸気圧を得ていない場合、弁を開いても軽量気泡コンクリート入れた密閉容器内には空気しか入らず、その状態で3時間処理してもほとんど撥水性が付与されることはなく、耐透水性や耐凍害性もほとんど向上しないことが確認された。
≪比較例4≫
上記製造方法で得た軽量気泡コンクリートを長さ160mm、幅40mm、厚さ40mmに切り出し、実施例1同様の密閉容器内に入れ、該密閉容器内及び付属する配管を30℃に加熱した後、300Paに減圧した。次いで実施例1同様の弁で開閉が可能な管で連結された別の密閉容器内にプロピルトリエトキシシランを70g入れ、300Paに減圧した後に160℃に加熱してプロピルトリエトキシシランを気化させて33000Paの蒸気圧を得た。そこで前記弁を開放し、プロピルトリエトキシランの蒸気を軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に約1分間注入し、そのままの状態で1時間放置した。
本比較例により得られた軽量気泡コンクリートは、表面から内部に3mm程度しか撥水性を発現しておらず、不十分な撥水性軽量気泡コンクリートであることが確認された。この得られた軽量気泡コンクリート切断面の水の接触角を、上記記載の方法測定したところ、表面から内部へ3mmまでは、水の接触角が128〜130度と撥水性を有しているものの、それ以外は滴下した水滴が瞬時に吸水し全く撥水性を有していないことが確認された。また、該軽量気泡コンクリートの耐透水性は45cmであり、耐凍害性は15サイクルであった。
本比較例のように予めアルコキシシランを気化させて十分な蒸気圧を得ていている場合でも、軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器や配管及び軽量気泡コンクリート自体を十分に加熱していないと、注入されたアルコキシシランは軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内で凝縮して液化するため、軽量気泡コンクリートの内部空隙には浸透せず、内部に撥水性が付与されることはなく、耐透水性や耐凍害性もほとんど向上しないことが確認された。
Figure 2012031062
本発明の軽量気泡コンクリートは、表面から内部空隙表面に至るまで優れた撥水性を有しており、耐透水性や耐凍害性に特に優れた軽量気泡コンクリートである。また、本発明の製造方法によれば、軽量気泡コンクリートの表面から内部に至るまでアルキルアルコキシシランからなる撥水層を短時間で形成することができることから産業上、大いに有用である。

Claims (10)

  1. 軽量気泡コンクリート表面から中心部の内部空隙に至るまで、アルキルアルコキシシランから形成される撥水層を有する軽量気泡コンクリート。
  2. アルキルアルコキシシランが、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種からなる請求項1記載の軽量気泡コンクリート。
  3. アルキルアルコキシシランが、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物である請求項1記載の軽量気泡コンクリート。
  4. アルキルアルコキシシランが、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種と、炭素数9〜18のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランの少なくとも1種との混合物である請求項1記載の軽量気泡コンクリート。
  5. 撥水層の水の接触角が100度以上である請求項1〜4のいずれかに記載の軽量気泡コンクリート。
  6. 撥水層の水の接触角が130度以上である請求項1〜4のいずれかに記載の軽量気泡コンクリート。
  7. 軽量気泡コンクリートの厚みが10〜200mmである請求項1〜6のいずれかに記載の軽量気泡コンクリート。
  8. 軽量気泡コンクリートの厚みが25〜200mmである請求項7記載の軽量気泡コンクリート。
  9. 密閉容器内に軽量気泡コンクリートを入れて100℃以上に加熱減圧した後、該密閉容器とは別の密閉容器にアルキルアルコキシシランを入れて減圧にし、100℃以上に加熱して発生させたアルキルアルコキシシランの蒸気を上記軽量気泡コンクリートを入れた密閉容器内に流入し、該密閉容器内の流入後の圧力を上記流入前の減圧圧力より5000〜100000Pa高くして、アルキルアルコキシシランを軽量気泡コンクリート表面から中心部の内部空隙に至るまで付着させることからなる軽量気泡コンクリートの製造方法。
  10. 軽量気泡コンクリートの表面から中心部の内部空隙に至るまで、アルキルアルコキシシランから形成される撥水層を有する軽量気泡コンクリートを製造する方法であり、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルコキシシランの少なくとも1種を用いる請求項9記載の軽量気泡コンクリートの製造方法。
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