JP2012028005A - 磁気記録媒体用ガラス基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、平行度に優れ、同一ロットで研磨されたガラス基板間の板厚偏差が小さい磁気記録媒体用ガラス基板の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、中心部に円孔を有する円盤形状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、前記磁気記録媒体用ガラス基板は内周側面と外周側面と両主平面とを有し、磁気記録媒体用ガラス基板の記録再生領域の中間部において、0°、90°、180°、270°の計4箇所の位置で測定した板厚の最大板厚値と最小板厚値の差(同一ガラス基板面内の板厚偏差)である平行度aが、0.4μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板を提供する。
【選択図】図2

Description

本発明は、平行度に優れ、同一ロットで研磨されたガラス基板間の板厚偏差が小さい磁気記録媒体用ガラス基板に関する。
近年の磁気ディスクの高記録密度化にともない、磁気記録媒体用ガラス基板への要求特性は年々厳しくなっている。磁気ディスクの高記録密度化を達成するため、ガラス基板の主平面の面積を有効活用するべく、磁気ヘッドをガラス基板の端部まで通過させるようになってきている。また、大容量の情報を磁気ディスクへ速く記録再生するため、磁気ディスクの回転速度を高速化する検討も行われている。
磁気ヘッドをガラス基板の端部まで通過させる、磁気ディスクの回転速度を高速化させる場合、磁気記録媒体用ガラス基板の形状(例えば、板厚偏差、端部形状、平坦度など)に乱れがあると、磁気ヘッドの浮上姿勢が乱され、磁気ヘッドが磁気ディスクに接触する障害が発生するおそれがある。
磁気記録媒体用ガラス基板の形状、特に板厚を制御する技術として、磁気記録媒体用ガラス基板の同一ガラス基板面内における板厚分布を所定の形状に制御したガラス基板(特許文献1)、同一ロットで研磨加工された磁気記録媒体用ガラス基板間の板厚バラツキを低減するキャリア(特許文献2)、が提案されている。
しかし、特許文献1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板は、外部衝撃によるガラス基板の割れ防止を目的としており、同一ガラス基板面内における板厚分布(以下、平行度と称す。)を、ガラス基板の中央部から外側面に向かって板厚が薄くなるように主平面を傾斜させた形状とすることが記載されているものの、磁気ヘッドの浮上姿勢を安定化させ、磁気ヘッドによる磁気ディスクへの記録再生を信頼性高く行うことについては記載も示唆もない。また、磁気記録媒体用ガラス基板の平行度と研磨加工の関係についての記載もない。
特許文献2に記載のキャリアは、軟質研磨パッドを用いた研磨加工にのみ有効であり、キャリアのガラス基板保持部とギア部をそれぞれ異なる材質と厚みに設計することにより、ガラス基板が軟質パッドへ沈み込むことを抑制し、ガラス基板にかかる研磨加工の荷重が不均一とならないようにして、ガラス基板の研磨量を制御し、板厚バラツキを低減するものであるが、研磨加工された磁気記録媒体用ガラス基板の平行度を向上させるものではない。
また、磁気記録媒体用ガラス基板を研磨するときの研磨液の温度を、雰囲気温度以下または、20℃以下として、研磨砥粒の残留や洗浄ダメージなどのガラス基板の欠陥を低減させる研磨方法(特許文献3)が提案されている。しかし、特許文献3の研磨方法は、磁気記録媒体用ガラス基板の平行度や板厚バラツキと研磨加工の関係については記載がなく、磁気記録媒体用ガラス基板の平行度や板厚バラツキを向上させるものではない。
さらに、半導体ウエハを研磨する技術として、研磨加工の発熱による定盤形状の変形を抑制しながら研磨し、平坦度に優れる半導体ウエハを得ることができる定盤(特許文献4)が提案されている。しかし、特許文献4に記載の定盤は、定盤の内部に冷却水を流して定盤温度を調整するため、定盤の内部に水路を設けるといった非常に特殊な設計を必要とし、設備構成を複雑化し、保守管理に支障をきたすおそれがあり、大型の研磨装置の定盤に適用することは困難である。
特開2006−318583号公報 特開2009−214219号公報 特開2007−245265号公報 特開平2−274464号公報
本発明は、平行度に優れ、同一ロットで研磨されたガラス基板間の板厚偏差が小さい磁気記録媒体用ガラス基板の提供を目的とする。
本発明は、中心部に円孔を有する円盤形状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、前記磁気記録媒体用ガラス基板は内周側面と外周側面と両主平面とを有し、磁気記録媒体用ガラス基板の記録再生領域の中間部において、0°、90°、180°、270°の計4箇所の位置で測定した板厚の最大板厚値と最小板厚値の差(同一ガラス基板面内の板厚偏差)である平行度aが、0.4μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板を提供する。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法で製造した磁気記録媒体用ガラス基板の上に、磁性層などの薄膜を形成して製造した磁気ディスクは、HDD(ハードディスクドライブ)試験において、磁気ヘッドの浮上姿勢が乱されず、磁気ヘッドが磁気ディスクに接触して生じる障害をなくすことができる、または低減できる。
磁気記録媒体用ガラス基板の斜視図。 磁気記録媒体用ガラス基板の断面斜視図。 磁気記録媒体用ガラス基板の平行度をレーザ干渉計で測定した例。(a)レーザ干渉計で観察された干渉縞本数と、磁気記録媒体用ガラス基板の平行度との関係。(b)レーザ干渉計で観察された干渉縞の画像と、磁気記録媒体用ガラス基板の平行度との関係。 両面研磨装置の概略図。 ガラス基板の両主平面を同時に研磨したときの両面研磨装置の上定盤の研磨面と下定盤の研磨面の形状が、D1≦D2であるときの形状を模式的に表す断面図。 磁気記録媒体用ガラス基板を保持する保持穴の位置を示す、キャリアの概略図。 研磨液温度差ΔTs(=Ts1−Ts2)と同一ロットで研磨されたガラス基板間の板厚偏差の関係を表すグラフ。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下に記載される実施形態に限らない。
まず、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板10の斜視図を図1に、磁気記録媒体用ガラス基板10を切断したものの断面斜視図を図2に示す。図1と図2において各符号は、磁気記録媒体用ガラス基板の主平面101、内周側面102、外周側面103、内周面取り部104、外周面取り部105をそれぞれ示す。図2中、A1とA6は磁気記録媒体用ガラス基板の外径側領域の板厚、A2とA5は磁気記録媒体用ガラス基板の中間領域の板厚、A3とA4は磁気記録媒体用ガラス基板の内径側領域の板厚をそれぞれ示す。
磁気記録媒体用ガラス基板の両主平面の平行度は、磁気記録媒体用ガラス基板の各領域における板厚(例えば、A1〜A6)が均一であるほど優れており、各領域における板厚が不均一(板厚偏差が大きい)であるほど劣ることになる。
磁気記録媒体用ガラス基板の両主平面の平行度は、マイクロメータ、レーザ変位計、レーザ干渉計などの測定機を用いて測定する。
マイクロメータやレーザ変位計を用いた平行度aの測定は、磁気記録媒体用ガラス基板の面内において任意に決めた複数箇所で板厚を測定し、最大板厚値と最小板厚値の差を求めて行う。
レーザ干渉計は、光の波長を物差しとしているので高精度に平行度bを測定できる。また、磁気記録媒体用ガラス基板の両主平面の平行度bを、1回のデータ取得で測定できるため、測定効率に優れる。
図3に、磁気記録媒体用ガラス基板の両主平面の平行度bを、本発明の実施例で用いたレーザ干渉計(フジノン社製、製品名:平面測定用フィゾー干渉計、G102S)で測定した例を示す。レーザ干渉計を用いた磁気記録媒体用ガラス基板の両主平面の平行度bの測定は、両主平面から反射した反射光の位相差により形成される干渉縞を観察し、得られた干渉縞を解析することにより行う。レーザ干渉計で観察される明暗の干渉縞は等高線となっており、その間隔は光源の波長と入射角により決定される。
図3に、レーザ干渉計で観察された干渉縞の画像と干渉縞を解析して得た平行度bの値を示す。観察された干渉縞本数が少ないほど、磁気記録媒体用ガラス基板の両主平面の平行度は優れている、つまり、磁気記録媒体用ガラス基板の平行度bを測定した領域の板厚偏差が小さく、同一ガラス基板面内の板厚分布が優れることを意味する。
一般に、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程は、以下の工程を含む。(1)フロート法、フュージョン法またはプレス成形法で成形されたガラス素基板を、円盤形状に加工した後、内周側面と外周側面に面取り加工を行う。(2)ガラス基板の上下主平面に研削加工を行う。(3)ガラス基板の側面部と面取り部に端面研磨を行う。(4)ガラス基板の上下主平面に研磨を行う。研磨工程は、1次研磨のみでもよく、1次研磨と2次研磨を行ってもよく、2次研磨の後に3次研磨を行ってもよい。(5)ガラス基板の精密洗浄を行い、磁気記録媒体用ガラス基板を製造する。(6)磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層などの薄膜を形成し、磁気ディスクを製造する。
なお、上記磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程において、各工程間にガラス基板洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施してもよい。さらに、磁気記録媒体用ガラス基板に高い機械的強度が求められる場合、ガラス基板の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、または研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施してもよい。
本発明において、磁気記録媒体用ガラス基板は、アモルファスガラスでもよく、結晶化ガラスでもよく、ガラス基板の表層に強化層を有する強化ガラス(例えば、化学強化ガラス)でもよい。また、本発明のガラス基板のガラス素基板は、フロート法で造られたものでもよく、フュージョン法で造られたものでもよく、プレス成形法で造られたものでもよい。
本発明は、(4)ガラス基板の上下主平面に研磨を行う工程に関し、磁気記録媒体用ガラス基板の研磨加工に係るものである。
図4は、両面研磨装置20の概略図である。図4において、10は磁気記録媒体用ガラス基板、30は上定盤の研磨面、40は下定盤の研磨面、50はキャリア、201は上定盤、202は下定盤、203はサンギア、204はインターナルギア、tp1は上定盤の内周端側の表面温度測定領域、tp2は上定盤の外周端側の表面温度測定領域、をそれぞれ示す。
磁気記録媒体用ガラス基板10は、キャリア50のガラス基板保持部に保持された状態で、上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との間に狭持され、ガラス基板の両主平面に上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40を互いに押圧させた状態で、ガラス基板の両主平面に研磨液を供給するとともに、ガラス基板と研磨面を相対的に動かして、ガラス基板の両主平面を同時に研磨する。
両面研磨装置20は、サンギア203とインターナルギア204をそれぞれ所定の回転比率で回転駆動することにより、キャリア50を自転させながらサンギア203の周りを公転するように移動させる(遊星駆動させる)とともに、上定盤201と下定盤202をそれぞれの回転数で回転駆動し、ガラス基板の両主平面を同時に研磨する。
上定盤201と下定盤202のガラス基板と対向する面には、研磨パッドが装着されている。上定盤201と下定盤202に装着された研磨パッドは、上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40をそれぞれ所定の形状とするため、ドレス治具を用いてドレス処理が施される。ドレス処理は、ドレス治具と研磨パッドとの間にドレス水を供給するとともに、ドレス治具と研磨パッドを相対的に動かして、研磨パッドの表面(上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40となる面)を削ることにより行われる。
両面研磨装置20を用いてガラス基板の両主平面を同時に研磨するとき、研磨液は上定盤201に形成された研磨液供給孔からガラス基板の両主平面へ供給される。ガラス基板の研磨に使用された研磨液は、上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との間から、サンギア側またはインターナルギア側に排出され、下定盤202の下側に設けてあるドレインに回収される。
ガラス基板を研磨する前の研磨液の温度Ts1は、上定盤201に形成された研磨液供給孔からガラス基板の両主平面へ供給される前に、研磨液貯蔵タンクで温度調整される。ガラス基板を研磨する前の研磨液の温度Ts1は、研磨液貯蔵タンク内で温度計を用いて測定する。ガラス基板を研磨した後の研磨液の温度Ts2は、下定盤202の下側に設けてあるドレインに回収した研磨液を、温度計を用いて測定する。
両面研磨装置20を用いてガラス基板を研磨すると、研磨中の発熱により定盤温度が変化する。定盤温度が変化すると、定盤は温度膨張により体積変化し、定盤形状が変形する。定盤形状の変形は、上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離Dを変化させるため、研磨加工の精度に大きな影響を及ぼす。
ガラス基板の両主平面を同時に研磨したとき、ガラス基板を研磨する前の研磨液の温度Ts1から、ガラス基板を研磨した後の研磨液の温度Ts2を差し引いた、研磨液温度差ΔTs(=Ts1−Ts2)は−3℃〜0℃である。研磨液温度差ΔTsが−3℃〜0℃であると、研磨中の発熱により上昇した研磨面を冷却できる。そのため、上定盤の研磨面30の温度と下定盤の研磨面40の温度を、研磨面内で均一とすることが容易となり、研磨中に定盤を熱変形させず、ガラス基板を精度よく研磨加工できる。研磨液温度差ΔTsは−3℃〜0℃が好ましく、−2.5℃〜0℃がさらに好ましく、−2.5℃〜−0.5℃が特に好ましい。
本発明において、ガラス基板の両主平面を同時に研磨したときの上定盤の内周端側で測定した表面温度tp1と外周端側で測定した表面温度tp2との差Δtp(tp1−tp2)の絶対値は3℃以下であることが好ましい。Δtpの絶対値が3℃を超えた場合、定盤形状が大きく熱変形し、研磨しているガラス基板に対し研磨加工の荷重を均一に負荷することが難しくなり、同一ガラス基板面内の研磨量や、同一ロット内で研磨されたガラス基板間の研磨量が不均一となり、平行度に優れる磁気記録媒体用ガラス基板を得ることが難しくなるおそれがある。Δtpの絶対値は2.5℃以下がより好ましく、2℃以下が特に好ましい。
Δtpの絶対値を3℃以下とする手段は、特に限定されるものではなく、研磨中に供給する研磨液の温度を制御する、定盤半径方向の研磨液の供給量のバランスを制御する、ガラス基板を研磨するときの上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40が外周端側または内周端側で強く擦れて発生する摩擦熱を抑制する、などが挙げられる。
ガラス基板の両主平面を同時に研磨したときの上定盤の内周端側で測定した表面温度tp1と外周端側で測定した表面温度tp2との差である上定盤表面温度差Δtpは0〜+3℃とすることが好ましい。上定盤表面温度差Δtpは、0〜+3℃が好ましく、0〜+2.5℃がさらに好ましく、0〜+2℃が特に好ましい。
上定盤表面温度差Δtpが0℃未満(例えば、−3℃)の場合、その主な原因は、上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40が外周端側で強く当たる外当たりの研磨面形状でガラス基板を研磨しているため、外周端側で研磨面が擦れて、外周端側の研磨加工の発熱が高くなったものである。外当たりの研磨面形状でガラス基板を研磨しており、上定盤表面温度差Δtpが0℃未満となっている場合、研磨されたガラス基板は、同一ガラス基板面内の研磨量や同一ロット内で研磨されたガラス基板間の研磨量が不均一となり、平行度に優れる磁気記録媒体用ガラス基板を得ることが難しくなるおそれがある。
なお、ガラス基板の両主平面を同時に研磨したときの上定盤201の表面温度tpの測定は、熱電対温度計、放射温度計を用いて測定する。研磨中の上定盤表面温度tpを連続的に測定できるため、温度計として熱電対温度計が好適に用いられる。
ガラス基板を研磨しているときの、上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40の形状を模式的に表す断面図の一例を図5に示す。図5において各符号は、Dは定盤面内の任意の位置における上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離、D1は内周端側における上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離、D2は外周端側における上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離、をそれぞれ表す。
上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離Dは、渦電流変位計を用いて計測する。上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離Dは、上定盤の研磨面30の測定位置と下定盤の研磨面40の測定位置が最も近くなる場所(上定盤の研磨面30の測定位置から下定盤の研磨面40に対して垂直に下した位置を下定盤の研磨面40の測定位置とする)で計測される。
図5は、D1<D2である研磨面の形状を模式的に表した断面図であり、内周端側で上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40が強く当る、内当りの研磨面形状である。両面研磨装置20を用いてガラス基板を研磨加工し、平行度に優れる磁気記録媒体用ガラス基板を得るには、定盤面内の研磨面間距離Dの偏差を小さくすることが好ましい。
磁気記録媒体用ガラス基板の生産性を向上するため、同一両面研磨装置を用いて同時に研磨する(同一ロット)ガラス基板の枚数を増やす検討が行われている。同一ロットのガラス基板枚数を増やす手段として、両面研磨装置20を大型化する、キャリア50に保持されるガラス基板の枚数を増やす、などが挙げられる。
なお、本発明において、同一ロットとは同一両面研磨装置を用いて同時に研磨加工したガラス基板のことをいう。例えば、外径65mmの磁気記録媒体用ガラス基板を研磨する場合、22B型両面研磨装置の1ロットのガラス基板枚数は150枚〜222枚、16B型両面研磨装置の1ロットのガラス基板枚数は90枚〜115枚、9B型両面研磨装置の1ロットのガラス基板枚数は20枚〜30枚が一般的である。なお、両面研磨装置の型式は、使用するキャリアのサイズで分類され、22B型両面研磨装置では22インチのキャリア、16B型両面研磨装置では16インチのキャリア、9B型両面研磨装置では9インチのキャリアをそれぞれ用いる。
図6に、磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程で使用されるキャリア50の概略図を示す。図中、50はキャリア、501はガラス基板保持穴、501Aは内径側保持穴、501Bは中間部保持穴、501Cは外径側保持穴をそれぞれ示す。磁気記録媒体用ガラス基板は、キャリア50のガラス基板保持穴501に保持された状態で、ガラス基板の両主平面を同時に研磨される。
キャリア50のガラス基板保持穴501は、キャリア50の中央を中心とした同心円状に形成される。両面研磨装置20を用いてガラス基板を研磨するとき、ガラス基板を保持したキャリア50は自転しながらサンギア203の周りを公転する(遊星駆動)。そのため、研磨されるガラス基板の周速は、キャリア50の保持されている位置で異なり、キャリア50の中央に近い位置(内径側保持穴501A)に保持されたガラス基板の周速は遅く、キャリア50の中央から離れた位置(外径側保持穴501C)に保持されたガラス基板の周速は速くなる。キャリア内におけるガラス基板の周速の差は、両面研磨装置20が大型化し、キャリアのサイズが大きくなると、より大きくなる。
また、大型の両面研磨装置20でガラス基板を研磨したとき、ガラス基板の周速は、研磨面の内周端側より外周端側を通過するときに速くなる。
ガラス基板の研磨速度は、ガラス基板の周速が速いと高く(研磨量が多く)なり、ガラス基板の周速が遅いと低く(研磨量が少なく)なる。大型の両面研磨装置20を用いてガラス基板を研磨する場合、キャリア50内での研磨量のバラツキを抑制し、内径側保持穴501Aと外径側保持穴501Cに保持されたガラス基板間の板厚や平行度を均一とする必要がある。
上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40が外周端側で強く当たる、外当たりの研磨面形状でガラス基板を研磨した場合、ガラス基板に対する研磨加工の荷重は、研磨面の外周端側で高くなる。
外当たりの研磨面形状でガラス基板を研磨すると、ガラス基板が研磨面の外周端側を通過するときにガラス基板の周速が速く、研磨圧力が高くなるため、キャリア50内の外径側保持穴501Cに保持されたガラス基板の研磨量は、内径側保持穴501Aに保持されたガラス基板の研磨量に比べて多くなる。そのため、外当たりの研磨面形状でガラス基板を研磨すると、同一ガラス基板面内の研磨量や、同一ロット内で研磨されたガラス基板間の研磨量が不均一となり、平行度に優れる磁気記録媒体用ガラス基板を得ることが難しくなるおそれがある。
大型の両面研磨装置20でガラス基板を研磨するとき、上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40は、平行または内当たりの研磨面形状(図5に示した形状)であることが好ましく、定盤面内の研磨面間距離Dの偏差は小さいことが好ましい。
本発明の研磨方法を用いた研磨工程を有する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法により、同一ロットで研磨加工されたガラス基板間の板厚偏差が1.0μm以下の磁気記録媒体用ガラス基板を、生産性高く製造できる。磁気記録媒体用ガラス基板の板厚は、マイクロメータ、レーザ変位計などの測定機を用いて測定する。
本発明の研磨方法を用いた研磨工程を有する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法により、磁気記録媒体用ガラス基板の記録再生領域の中間部において、0°、90°、180°、270°の計4箇所の位置で、マイクロメータまたはレーザ変位計を用いて測定した板厚の最大板厚値と最小板厚値の差(同一ガラス基板面内の板厚偏差)から求めた平行度aが0.4μm以下の磁気記録媒体用ガラス基板を生産性高く製造できる。
さらに、本発明の研磨方法を用いた研磨工程を有する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法により、同一ロットで研磨加工された磁気記録媒体用ガラス基板間の前記平行度aの偏差が0.4μm以下の磁気記録媒体用ガラス基板を生産性高く製造できる。
本発明の研磨工程を有する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法により、レーザ干渉計を用いて測定した、前記磁気記録媒体用ガラス基板の少なくとも記録再生領域における両主平面の平行度bが0.3μm以下の磁気記録媒体用ガラス基板を生産性高く製造できる。磁気記録媒体用ガラス基板の平行度bは0.3μm以下が好ましく、0.25μm以下が特に好ましい。
さらに、本発明の研磨工程を有する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法により、同一ロットで研磨加工された磁気記録媒体用ガラス基板間の前記平行度bの偏差が0.2μm以下の磁気記録媒体用ガラス基板を生産性高く製造できる。
本発明の研磨工程を有する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法により製造された磁気記録媒用ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板の形状特性(平行度、同一ロット内の板厚偏差)に優れる。そのため、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層などの薄膜を形成して製造された磁気ディスクのHDD(ハードディスクドライブ)試験において、磁気ヘッドの浮上姿勢を乱すことなく、磁気ヘッドが磁気ディスクに接触するおそれがない。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
[磁気記録媒体用ガラス基板の調整]
外径65mm、内径20mm、板厚0.635mmの磁気記録媒体用ガラス基板用に、フロート法で成形されたSiOを主成分とするガラス基板をドーナツ状円形ガラス基板(中央部に円孔を有する円盤形状ガラス基板)に加工した。
このドーナツ状円形ガラス基板の内周側面と外周側面を、面取り幅0.15mm、面取り角度45°の磁気記録媒体用ガラス基板が得られるように面取り加工し、その後アルミナ砥粒を用いて、ガラス基板上下主平面を研削し、砥粒を洗浄除去した。
次に、ガラス基板の外周側面と外周面取り部を、研磨ブラシと酸化セリウム砥粒を用いて研磨し、外周側面と外周面取り部のキズを除去し、鏡面となるように外周端面を研磨加工した。外周端面研磨後のガラス基板は、アルカリ性洗剤を用いたスクラブ洗浄と、アルカリ性洗剤溶液に浸漬した状態での超音波洗浄により、砥粒を洗浄除去される。
外周端面研磨後のガラス基板の内周側面と内周面取り部を研磨ブラシと酸化セリウム砥粒を用いて研磨し、内周側面と内周面取り部のキズを除去し、鏡面となるように内周端面を研磨加工した。内周端面研磨を行ったガラス基板は、アルカリ性洗剤を用いたスクラブ洗浄、アルカリ性洗剤溶液に浸漬した状態での超音波洗浄により、砥粒を洗浄除去した。
[磁気記録媒体用ガラス基板の1次〜3次研磨]
端面加工後のガラス基板は、研磨具として硬質ウレタン製の研磨パッドと酸化セリウム砥粒を含有する研磨液(平均粒子直径、以下、平均粒径と略す、約1.3μmの酸化セリウムを主成分した研磨液組成物)を用いて、両面研磨装置により上下主平面を1次研磨した。
1次研磨後のガラス基板は、研磨具として軟質ウレタン製の研磨パッドと、上記の酸化セリウム砥粒よりも平均粒径が小さい酸化セリウム砥粒を含有する研磨液(平均粒径約0.5μmの酸化セリウムを主成分とする研磨液組成物)を用いて、22B型両面研磨装置(スピードファム社製、製品名:DSM22B−6PV−4MH)より上下主平面を2次研磨した。
2次研磨工程において、両面研磨装置の上定盤と下定盤に装着した研磨パッドは、ガラス基板を研磨する前に、ダイヤモンド砥粒を表面に有するドレス治具を用いてドレス処理し、所定の研磨面に形成される。
2次研磨のメイン研磨加工圧力は9.5kPa、定盤回転数は9rpm、研磨時間20分間に設定し、ガラス基板を研磨した。キャリアは6枚使用し、216枚のガラス基板を同時に研磨した。研磨後のガラス基板は、酸化セリウムを洗浄除去した後、板厚と平行度a、平行度bを測定した。
研磨されたガラス基板の板厚と平行度aは、レーザ変位計(キーエンス社製、レーザーヘッドはLK−G15/アンプLK−G3000V)を用いて測定した。本実施例において、板厚は、磁気記録媒体用ガラス基板の中心部から20mmの領域で(記録再生領域の中間部)、0°、90°、180°、270°の計4箇所の位置で測定した。同一ガラス基板面内の4箇所の位置で測定した板厚の平均値をガラス基板の板厚とし、同一ガラス基板面内の4箇所の位置で測定した板厚の最大板厚値と最小板厚値の差(同一ガラス基板面内の板厚偏差)を平行度aとした。
板厚と平行度aは、1ロットにつき、各キャリア(6枚)からそれぞれ3枚のガラス基板を抜き取り、計18枚のガラス基板を用いて測定した。測定用ガラス基板は、各キャリアの内径側保持穴501A、中間部保持穴501B、外径側保持穴501Cからそれぞれ1枚づつ抜き取られ、同一キャリア内と同一ロット内における板厚と平行度aの偏差を調べた。
研磨されたガラス基板の平行度bは、レーザ干渉計(フジノン社製、製品名:G102S)を用いて測定した。平行度bは、図3に示したように、ガラス基板両主平面からの反射光の位相差により形成される干渉縞を観察し、縞解析装置(フジノン社製、製品名:A1)によって算出した(自動計算)。平行度bの測定領域は、外径65mm、内径20mmの磁気記録媒体用ガラス基板の記録再生領域を含むように設定した。本実施例において、測定領域は、円盤中心部から10.0mm〜32.5mm領域に設定した。
平行度bは、1ロットにつき、9枚のガラス基板を抜き取り測定した。平行度bを測定するガラス基板は、キャリア1〜3の内径側保持穴501A、中間部保持穴501B、外径側保持穴501Cからそれぞれ1枚づつ抜き取り、同一キャリア内と同一ロット内における平行度bの偏差を調べた。
本実施例において、ガラス基板を研磨する前の研磨液の温度Ts1は、研磨液循環用の研磨液貯蔵タンクの中の研磨液を熱電対型温度計(タイプK)で測定した。ガラス基板を研磨した後の研磨液の温度Ts2は、下定盤202の下側に設けてあるドレインに回収した研磨液を熱電対型温度計(タイプK)で測定した。
本実施例において、ガラス基板の両主平面を同時に研磨したときの、上定盤の内周端側の表面温度tp1と、外周端側の表面温度tp2は、ガラス基板の研磨加工が終了した時点において、熱電対型温度計(タイプK)を用いて測定した。
ガラス基板の両主平面を同時に研磨したときの、ガラス基板を研磨する前の研磨液の温度Ts1と、ガラス基板を研磨した後の研磨液の温度Ts2と、上定盤の内周端側の表面温度tp1と外周端側の表面温度tp2を表1に、各々の研磨液温度Tsと上定盤表面温度tpで研磨したガラス基板の板厚と、平行度aと、平行度bを表2にそれぞれ示す。表1と表2において、例1〜例6は実施例、例7〜例10は比較例である。
ガラス基板を研磨する前の研磨液の温度Ts1から、ガラス基板を研磨した後の研磨液の温度Ts2を差し引いた、研磨液温度差ΔTsが−3℃〜0℃である例1〜例6において、同一ロットで研磨されたガラス基板間の板厚偏差は1.0μm以下であった。図7に、研磨液温度差ΔTsと同一ロットで研磨されたガラス基板間の板厚偏差の関係を表すグラフを示す。
また、例1〜例6において、平行度aは0.4μm以下であり、同一ロットで研磨されたガラス基板間の平行度aの偏差(最大平行度値と最小平行度値との差)は0.4μm以下であった。さらに、平行度bは0.3μm以下であり、同一ロットで研磨加工されたガラス基板間の平行度bの偏差(最大平行度値と最小平行度値との差)は0.2μm以下であった。
本発明の研磨方法を適用した研磨工程により、形状特性(平行度、同一ロット内の板厚偏差)に優れる磁気記録媒体用ガラス基板を得られることを確認した。
2次研磨後のガラス基板は、3次研磨を行う。3次研磨の研磨具として軟質ウレタン製の研磨パッドと、コロイダルシリカを含有する研磨液(一次粒子の平均粒径が20〜30nmのコロイダルシリカを主成分とする研磨液組成物)を用いて、両面研磨装置により上下主平面を研磨加工した。
3次研磨を行ったガラス基板は、アルカリ性洗剤によるスクラブ洗浄、アルカリ性洗剤溶液に浸漬した状態での超音波洗浄、純水に浸漬した状態での超音波洗浄、を順次行い、イソプロピルアルコール蒸気にて乾燥された。
洗浄乾燥した後、磁気記録媒体用ガラス基板の平行度と板厚を測定した。平行度と板厚の測定は、2次研磨後のガラス基板と同じ方法で実施した。
例1〜例6の2次研磨後ガラス基板に、3次研磨を施し、洗浄乾燥して得た磁気記録媒体用ガラス基板は、同一ロットで研磨加工されたガラス基板間の板厚偏差は1.0μm以下であった。また、平行度aは0.4μm以下であり、同一ロットで研磨加工されたガラス基板間の平行度aの偏差(最大平行度値と最小平行度値との差)は0.4μm以下であった。さらに、平行度bは0.3μm以下であり、同一ロットで研磨加工されたガラス基板間の平行度bの偏差(最大平行度値と最小平行度値との差)は0.2μm以下であった。
本発明の研磨方法を用いた研磨工程を有する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法により、形状特性(平行度、同一ロット内の板厚偏差)に優れる磁気記録媒体用ガラス基板が得られることを確認した。
Figure 2012028005
Figure 2012028005
10:磁気記録媒体用ガラス基板、101:磁気記録媒体用ガラス基板の主平面、102:内周側面、103:外周側面、104:内周面取り部、105:外周面取り部、
A1とA6:磁気記録媒体用ガラス基板の外径側領域の板厚、A2とA5:磁気記録媒体用ガラス基板の中間領域の板厚、A3とA4:磁気記録媒体用ガラス基板の内径側領域の板厚、
20:両面研磨装置、30:上定盤の研磨面、40:下定盤の研磨面、50:キャリア、201:上定盤、202:下定盤、203:サンギア、204:インターナルギア、
tp1:上定盤の内周端側の表面温度測定領域、tp2:上定盤の外周端側の表面温度測定領域、
D:定盤面内の任意の位置における上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離、D1:内周端側における上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離、D2:外周端側における上定盤の研磨面30と下定盤の研磨面40との距離、
501:ガラス基板保持穴、501A:内径側保持穴、501B:中間部保持穴、501C:外径側保持穴。

Claims (5)

  1. 中心部に円孔を有する円盤形状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、前記磁気記録媒体用ガラス基板は内周側面と外周側面と両主平面とを有し、磁気記録媒体用ガラス基板の記録再生領域の中間部において、0°、90°、180°、270°の計4箇所の位置で測定した板厚の最大板厚値と最小板厚値の差(同一ガラス基板面内の板厚偏差)である平行度aが、0.4μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。
  2. 同一ロットで研磨加工された磁気記録媒体用ガラス基板間の前記平行度aの偏差が0.4μm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  3. 中心部に円孔を有する円盤形状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、前記磁気記録媒体用ガラス基板は内周側面と外周側面と両主平面とを有し、レーザ干渉計を用いて測定した、磁気記録媒体用ガラス基板の少なくとも記録再生領域における前記両主平面の平行度bが、0.3μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。
  4. 同一ロットで研磨加工された磁気記録媒体用ガラス基板間の前記平行度bの偏差が、0.2μm以下である請求項3に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  5. 同一ロットで研磨加工されたガラス基板間の板厚偏差が、1.0μm以下である請求項2または4に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
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