以下に、本発明の実施形態に係る回折格子の構成例を、図面を参照しながら下記の順で説明する。ただし、本発明は、下記の実施形態に限定されない。
1.第1の実施形態:1次元の回折格子スケールの構成例
2.第2の実施形態:1次元の回折格子スケールの別の構成例
3.第3の実施形態:2次元の回折格子スケールの構成例
4.第4の実施形態:2次元の回折格子スケールの別の構成例
5.他の回折格子スケールの構成例
<1.第1の実施形態>
[変位測定装置の構成及び動作]
本発明に係る第1の実施形態の回折格子スケール(回折格子)の構成を説明する前に、本実施形態の回折格子スケールを用いる変位測定装置の構成及びその動作を、図面を参照しながら簡単に説明する。
(1)構成
図1に、1次元の反射型回折格子スケールを用いた光学式の変位測定装置の概略斜視図を示す。変位測定装置100は、検出ヘッド101と、回折格子スケール10とを備える。なお、回折格子スケール10の構成については、後で詳述する。
検出ヘッド101は、光源102と、受光部103とを有する。さらに、検出ヘッド101は、図1には示さないが、光源102から射出された光を回折格子スケール10に入射し且つ回折格子スケール10から反射する回折光を受光部103に導く光学系(後述する図2中の光学系104)を有する。光源102、受光部103及び光学系は、回折格子スケール10の凹凸状の格子面(図1中のスケール格子10aの形成面)と対向する位置に配置される。
光源102は、例えば半導体レーザ等で構成される。また、受光部103は、例えば、干渉光学系、フォトディテクタで構成されており、フォトディテクタの検出信号に基づいて回折光の干渉状態に対応する信号を出力する。
図2に、図1に示す変位測定装置100の検出ヘッド101の内部構成及び変位測定時の動作の様子を示す。光学系104は、例えば、集光レンズ111、偏光ビームスプリッタ112、第1の1/4波長板113、第1の平面ミラー114、第2の1/4波長板115及び第2の平面ミラー116で構成される。
集光レンズ111は、光源102の光出射口と偏光ビームスプリッタ112との間に配置される。第1の1/4波長板113は、第1の平面ミラー114の光入射側に接して設けられ、第2の1/4波長板115は第2の平面ミラー116の光入射側に接して設けられる。
第1の平面ミラー114及び第2の平面ミラー116は、回折格子スケール10の移動方向(図2中の太実線矢印)において、偏光ビームスプリッタ112に対して対称的な位置に配置される。より詳細には、光源102から偏光ビームスプリッタ112を介して回折格子スケール10に照射されたP偏光の光Piの回折光が第1の平面ミラー114に入射され、且つ、第1の平面ミラー114からの反射光が回折格子スケール10を介して偏光ビームスプリッタ112に入射されるような位置に、第1の平面ミラー114を配置する。さらに、光源102から偏光ビームスプリッタ112を介して回折格子スケール10に照射されたS偏光の光Siの回折光が第2の平面ミラー116に入射され、且つ、第2の平面ミラー116からの反射光が回折格子スケール10を介して偏光ビームスプリッタ112に入射されるような位置に、第2の平面ミラー116を配置する。
(2)動作
図1及び2に示す変位測定装置100では、まず、光源102は、出射光を集光レンズ111に入射する。次いで、集光レンズ111は、入射された光を所定の径の光に集光し、その集光光を偏光ビームスプリッタ112に入射する。次いで、偏光ビームスプリッタ112は、入射光をP偏光の光PiとS偏光の光Siに分離して、各偏光光を回折格子スケール10に照射する。
偏光ビームスプリッタ112から回折格子スケール10に照射されたP偏光の光Piは、回折格子スケール10で回折され、その回折光は、第1の1/4波長板113を介して第1の平面ミラー114に入射される。そして、第1の平面ミラー114に入射された回折光は、第1の平面ミラー114で反射され、第1の1/4波長板113を介して回折格子スケール10に戻る。
なお、第1の平面ミラー114から回折格子スケール10に戻る光は、その光路上で、第1の1/4波長板113を2回通過しているので、S偏光の光Soに変換される。そして、回折格子スケール10に戻ったS偏光の光Soは、回折格子スケール10で反射され、その反射したS偏光の光Soは、偏光ビームスプリッタ112に入射される。
一方、偏光ビームスプリッタ112から回折格子スケール10に照射されたS偏光の光Siは、回折格子スケール10で回折され、その回折光は、第2の1/4波長板115を介して第2の平面ミラー116に入射される。そして、第2の平面ミラー116に入射された回折光は、第2の平面ミラー116で反射され、第2の1/4波長板115を介して回折格子スケール10に戻る。
なお、第2の平面ミラー116から回折格子スケール10に戻る光は、その光路上で、第2の1/4波長板115を2回通過しているので、P偏光の光Poに変換される。そして、回折格子スケール10に戻ったP偏光の光Poは、回折格子スケール10で反射され、その反射したP偏光の光Poは、偏光ビームスプリッタ112に入射される。
次いで、偏光ビームスプリッタ112は、回折格子スケール10から入射されるP偏光の光Po及びS偏光の光Soを受光部103に射出する。
そして、受光部103は、干渉光学系により入射された光を干渉させ、干渉状態の変化(回折格子スケール10の位相情報の変化)を変位情報として読み取る。
[回折格子スケールの構成]
次に、本実施形態の回折格子スケール10の構成を、図1〜3を参照しながら説明する。なお、図3は、回折格子スケール10の延在方向(移動方向)における回折格子スケール10の概略断面図である。
回折格子スケール10は、反射型の回折格子スケールであり、基材1と、複数の凸部2と、反射膜3と、カバー層4とを備える。そして、複数の凸部2、反射膜3及びカバー層4は、この順で、基材1上に形成される。
基材1は、板状部材であり、例えば、ガラス、シリコン、セラミック等の材料で形成される。なお、基材1の形成材料や、厚さ等の寸法は、例えば用途等に応じて適宜設定される。
複数の凸部2は、例えば、半導体素子、ディスプレイパネル等の製造時に用いられる感光レジストや感光乳剤により形成される。複数の凸部2は、基材1上に、回折格子スケール10の移動方向(延在方向)に沿って所定間隔で配置される。これにより、基材1上に、1次元のスケール格子10aが形成される。なお、複数の凸部2の配置間隔、個数等の構成は、例えば、必要とする分解能、用途等に応じて適宜設定される。
凸部2は、図1に示すように、回折格子スケール10の移動方向(延在方向)に直交する方向に直線状に延在して形成される。また、凸部2の上面2a(反射膜3側の面)は略平坦であり、側面2bは、略円弧状で且つ凹状の形状を有する。さらに、本実施形態では、側面2bに、スケール格子10aの凹凸サイズより十分小さなサイズを有する微細な凹凸が形成される。なお、凸部2の側面2bに形成された微細な凹凸は、後述する特殊加工処理により側面2bを意図的に粗くして形成される。
反射膜3は、例えば、Au膜、Al膜等の金属膜で形成される。そして、反射膜3は、凸部2の上面2a及び側面2b、並びに、隣り合う凸部2間に露出した基材1の表面部を覆うように形成される。
カバー層4は、接着層4aと、カバー材4bとで構成される。そして、接着層4a及びカバー材4bが、この順で、反射膜3上に形成される。すなわち、カバー材4bは接着層4aを介して反射膜3上に貼り付けられる。
接着層4aは、例えば、光透過性を有する接着性樹脂膜等で形成される。また、カバー材4bは、例えばガラス板等の透明性を有する板状部材で構成される。なお、カバー層4の構成は図3に示す例に限定されず、接着層4aを十分に厚くした場合には、カバー材4bを設けなくてもよい。
なお、本実施形態では、回折格子スケール10に照射する光の波長をλとし、カバー層4の屈折率をηとした場合、反射膜3上に画成された凹部の深さH(または凸部2の高さ)は、略λ/4/ηとなるように調整する。また、本実施形態では、凸部2の上面2aの幅Lと隣り合う凸部2間に画成された凹部の幅Sとの比(以下、単に、L/S比という)や、凸部2の側面2bの形状は、回折効率が最大となるように調整される。
[回折格子スケールの作製手法]
次に、本実施形態の回折格子スケール10の作製手法を、図4(a)〜(e)を参照しながら簡単に説明する。なお、図4(a)〜(e)は、凸部2の形成過程における各工程後の成膜状態を示す図であり、回折格子スケール10の延在方向における各工程後の成膜部材の概略断面図である。
まず、予め用意された所定の基材1上に、例えば塗布法等の手法より、凸部形成用レジスト20を所定の厚さで形成する。なお、この際、凸部形成用レジスト20の厚さは、回折格子スケール10に照射する光の波長をλとし、カバー層4の屈折率をηとした場合、略λ/4/ηとなるように調整する。また、この例では、凸部形成用レジスト20として、ウェットエッチングで処理可能なレジストを用いる。次いで、凸部形成用レジスト20上に、例えば塗布法等の手法より、マスク用のフォトレジスト21を所定の厚さで形成する(図4(a)の状態)。
次いで、マスク用のフォトレジスト21を所定パターンで露光及び現像する。これにより、フォトレジスト21のスケール格子10aの凹部に対応する位置に開口部21aが形成され、開口部21aには、凸部形成用レジスト20の表面の一部が露出する(図4(b)の状態)。
次いで、開口部21aに露出した凸部形成用レジスト20の表面をウェットエッチングでエッチングする。この際、凸部形成用レジスト20は、図4(c)に示すように、開口部21aに露出した表面から円弧状にエッチングされる。その結果、エッチングされた領域(凹部)の両側には、凸状の凸部形成用レジスト20が残された状態となる。
なお、エッチング処理を終了するタイミングは、必要とする回折格子スケール10のL/S比(回折効率)に応じて決定される。例えば、図5に示すように、図3に示す本実施形態の回折格子スケール10より小さなL/S比が必要な場合には、図4(c)の工程におけるエッチング処理の処理時間をより長くする。逆に、本実施形態に比べて、より大きなL/S比が必要な場合には、図4(c)の工程におけるエッチング処理の処理時間をより短くすればよい。
次いで、マスク用のフォトレジスト21を残した状態で、凸状の凸部形成用レジスト20の側面に対して例えばエッチング処理や熱処理等の特殊加工処理を施し、凸状の凸部形成用レジスト20の側面を粗くする。この結果、図4(d)に示すように、凸状の凸部形成用レジスト20の側面2bに微細な凹凸が形成され、凸部2が形成される。なお、この特殊加工処理の処理時間は、例えば必要とする回折効率の調整量等に応じて決定される。
また、この際、凸部2の上面2a上にはマスク用のフォトレジスト21が形成されているので、凸部2の上面2aに微細な凹凸を形成されず、平坦面となる。なお、凸部2の上面2a上に形成されたマスク用のフォトレジスト21を除去した状態で上述した特殊加工処理を行った場合、凸部2の上面2aも粗くなり、凸部2の高さHが変動する。この場合、凸部2の高さHを最適な値に調整することが難しくなり、所望の回折効率を得ることが困難になる。それゆえ、本実施形態では、凸部2の高さ調整の観点から、凸部2の上面2aがフォトレジスト21でマスクされた状態で上述した特殊加工処理を行う。
そして、上述した特殊加工処理後、マスク用のフォトレジスト21を除去する(図4(e)の状態)。これにより、基材1上に、複数の凸部2からなるスケール格子10aが形成される。
その後、図示しないが、基材1及び複数の凸部2上に、例えば蒸着法やスパッタ法等の手法により、反射膜3を所定厚さで形成する。次いで、反射膜3上に、樹脂性接着剤を塗布し、その接着剤上に、カバー材4bを載置する。そして、接着剤を固化してカバー層4を形成する。本実施形態では、上述のようにして回折格子スケール10を作製する。
上述のように、本実施形態の回折格子スケール10では、凸部2の側面2bを粗くして微細な凹凸を形成するので、スケール格子10aのL/S比による回折効率の調整に加えて、側面2bの凹凸による回折効率の調整が可能になる。それゆえ、本実施形態では、回折格子スケール10の回折効率の調整が容易になる。
また、本実施形態の回折格子スケール10では、凸部2の側面2bに微細な凹凸を形成するので、側面2bからの反射光の影響を制御することができる。すなわち、本実施形態では、側面2bからの反射光の影響による回折効率の低下を抑制することができ、より高い回折効率を有する回折格子スケールを得ることができる。
さらに、本実施形態の回折格子スケール10のように、凸部2の側面2bに微細な凹凸を形成することにより、凸部2上に形成される反射膜3及びカバー層4の凸部2に対する密着力を向上させることができる。
[第1の実施形態の各種変形例]
ここで、上述した第1の実施形態の回折格子スケール10の各種変形例を説明する。
(1)変形例1−1
上記第1の実施形態では、回折格子スケール10がカバー層4を備える構成例を説明したが、本発明はこれに限定されず、カバー層4を備えない構成にしてもよい。図6に、その一構成例(変形例1−1)を示す。なお、図6は、回折格子スケール30の延在方向における回折格子スケール30の概略断面図である。また、図6において、上記第1の実施形態(図3)の回折格子スケール10と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
この例の回折格子スケール30は、基材1と、基材1上に形成された複数の凸部32と、複数の凸部32上に形成された反射膜33とで構成され、反射膜33が露出した構成となる。また、この例においても、凸部32の上面32aは平坦とし、且つ、凸部32の側面32bには微細な凹凸を形成する。
なお、この例において、カバー層を設けないこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様である。ただし、この例の構成では、カバー層を設けないので、回折格子スケール30に照射する光の波長をλとした場合、反射膜33上に画成された凹部の深さH(または凸部32の高さ)は、略λ/4となるように調整する。
この例においても、回折格子スケール30の凸部32の側面32bに微細な凹凸を形成するので、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(2)変形例1−2
上記第1の実施形態及び変形例1−1では、スケール格子を構成する凸部を例えば感光レジスト等の材料で形成する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、凸部は任意の材料で形成することができる。例えば、凸部を金属膜(導電性材料)で形成してもよい。図7に、その一構成例(変形例1−3)を示す。なお、図7は、回折格子スケール35の延在方向における回折格子スケール35の概略断面図である。また、図7において、上記変形例1−1(図6)の回折格子スケール30と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
この例の回折格子スケール35は、基材1と、基材1上に形成された複数の凸部36と、複数の凸部36上に形成された反射膜33とで構成され、反射膜33が露出した構成となる。また、この例においても、凸部36の上面36aは平坦とし、且つ、凸部36の側面36bには微細な凹凸を形成する。
この例では、凸部36は、例えば、Cr、Al、ITO(Indium Tin Oxide)等の導電性材料で形成される。それ以外の構成は、変形例1−1と同様である。なお、図7にはカバー層を設けない構成例を示すが、上記第1の実施形態と同様に、反射膜33上にカバー層を設けてもよい。
また、複数の凸部36は、上述した第1の実施形態における凸部2の作製手法(図4(a)〜(e))と同様にして作製することができる。ただし、この例では、図4(a)の工程において、基材1上に、凸部形成用レジスト20の代わりに、例えば、Cr、Al、ITO等の金属膜を、例えば蒸着法やスパッタ法等の手法により形成する。
この例においても、回折格子スケール35の凸部36の側面36bには微細な凹凸を形成するので、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(3)変形例1−3
上記第1の実施形態及び上記各種変形例では、凸部と基材とが別体で形成される例を説明したが、本発明はこれに限定されず、凸部を基材の表面上に直接形成してもよい。図8に、その一構成例(変形例1−3)を示す。なお、図8は、回折格子スケール40の延在方向における回折格子スケール40の概略断面図である。また、図8において、上記変形例1−1(図6)の回折格子スケール30と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
この例の回折格子スケール40は、基材41と、基材41上に形成された反射膜33とを備える。そして、この例では、基材41の反射膜33側の表面に、直接、複数の凸部41aが所定パターン(例えば等間隔)で形成される。それ以外の構成は、変形例1−1と同様である。なお、図8には、カバー層を設けない構成例を示すが、上記第1の実施形態と同様に、反射膜33上にカバー層を設けてもよい。
ここで、この例の回折格子スケール40における複数の凸部41aの作製手法を、図9(a)〜(e)を参照しながら簡単に説明する。なお、図9(a)〜(e)は、凸部41aの形成過程における各工程後の成膜状態を示す図であり、回折格子スケール40の延在方向における各工程後の成膜部材の概略断面図である。
まず、基材41上に、例えば塗布法等の手法より、マスク用のフォトレジスト42を所定の厚さで形成する(図9(a)の状態)。次いで、マスク用のフォトレジスト42を所定パターンで露光及び現像する。これにより、フォトレジスト42のスケール格子の凹部に対応する位置に開口部42aが形成され、開口部42aには、基材41の表面の一部が露出する(図9(b)の状態)。
次いで、開口部42aに露出した基材41の表面をウェットエッチングでエッチングする。この際、基材41は、図9(c)に示すように、開口部42aに露出した表面から円弧状にエッチングされる。その結果、エッチングされた領域(凹部)の両側には、凸部41aが形成される。
次いで、フォトレジスト42を残した状態で、凸部41aの側面に対して例えばエッチング処理や熱処理等の特殊加工処理を施し、凸部41aの側面41bを粗くする。この結果、図9(d)に示すように、凸部41aの側面41bに微細な凹凸が形成される。なお、この際、凸部41aの上面上にはフォトレジスト42が形成されているので、凸部41aの上面は平坦面となる。
そして、上述した特殊加工処理後、フォトレジスト42を除去する(図9(e)の状態)。この例では、このようにして、基材41の表面に直接、複数の凸部41aを形成する。なお、この例の回折格子スケール40においても、図9(c)の工程におけるエッチング処理の処理時間は、第1の実施形態と同様に、必要とするL/S比(回折効率)に応じて決定される。また、図9(d)の工程における特殊加工処理の処理時間もまた、第1の実施形態と同様に、例えば必要とする回折効率の調整量等に応じて決定される。
この例の回折格子スケール40においても、凸部41aの側面に微細な凹凸を形成するので、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(4)変形例1−4
上記第1の実施形態及び上記各種変形例では、ウェットエッチングにより凸部を形成する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、任意のパターニング処理を適用することができる。例えば、ドライエッチングにより凸部を形成してもよい。その一例(変形例1−4)を図10(a)〜(e)に示す。
なお、図10(a)〜(e)は、ドライエッチングにより凸部を形成する際の各工程後の成膜状態を示す図であり、回折格子スケールの延在方向における各工程後の成膜部材の概略断面図である。また、図10(a)〜(e)において、上記第1の実施形態の回折格子スケール10(図3)と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
まず、基材1上に、例えば塗布法等の手法より、凸部形成用レジスト50を所定の厚さで形成する。なお、この例では、凸部形成用レジスト50として、ドライエッチングで処理可能なレジストを用いる。次いで、凸部形成用レジスト50上に、例えば塗布法等の手法より、マスク用のフォトレジスト51を所定の厚さで形成する(図10(a)の状態)。
次いで、マスク用のフォトレジスト51を所定パターンで露光及び現像する。これにより、フォトレジスト51のスケール格子の凹部に対応する位置に開口部51aが形成され、開口部51aには、凸部形成用レジスト50の表面の一部が露出する(図10(b)の状態)。
次いで、開口部51aに露出した凸部形成用レジスト50の表面をドライエッチングでエッチングする。ドライエッチングを用いた場合、通常、エッチングされる領域(凹部)は、図10(c)に示すように、略矩形状になる。その結果、エッチングされた矩形状の凹部の両側には、凸状の凸部形成用レジスト50が残された状態となる。
次いで、フォトレジスト51を残した状態で、凸状の凸部形成用レジスト50の側面に対して、第1の実施形態と同様に、例えばエッチング処理や熱処理等の特殊加工処理を施し、凸状の凸部形成用レジスト50の側面52bを粗くする。この結果、図10(d)に示すように、凸状の凸部形成用レジスト50の側面52bに微細な凹凸が形成され、凸部52が形成される。なお、この際、凸部52の上面52a上にはフォトレジスト51が形成されているので、凸部52の上面52aは平坦面となる。
そして、上述した特殊加工処理後、フォトレジスト51を除去する(図10(e)の状態)。これにより、基材1上に、複数の凸部52からなるスケール格子が形成される。その後、複数の凸部52上に、上記第1の実施形態と同様にして、反射膜やカバー層を形成する。この例では、このようにして回折格子スケールを作製する。
なお、この例では、図10(c)に示すように、凸部形成用レジスト50には、フォトレジスト51に形成された開口部51aと略同じ寸法の凹部が形成される。それゆえ、この例では、図10(b)の工程で形成する開口部51aの寸法は、必要とするL/S比(回折効率)に応じて決定される。また、図10(d)の工程における特殊加工処理の処理時間は、第1の実施形態と同様に、例えば必要とする回折効率の調整量等に応じて決定される。
この例の手法で作製された回折格子スケールにおいても、凸部52の側面52bには微細な凹凸が形成されるので、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
<2.第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、スケール格子10a(複数の凸部2)をエッチング処理により形成する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。複数の凸部が基材上に所定パターンで形成された格子部材、例えば、図4(e)や図5に示す状態の格子部材を原盤(型)とし、それを用いて転写により基材上にスケール格子を形成してもよい。第2の実施形態では、転写により基材上にスケール格子を形成した回折格子スケールの一構成例を説明する。
[回折格子スケールの構成]
図11に、本実施形態に係る回折格子スケールの概略構成を示す。なお、図11は、回折格子スケール60の延在方向(移動方向)における回折格子スケール60の概略断面図である。
回折格子スケール60は、基材61と、複数の凸部62と、反射膜63と、接着層64a及びカバー材64bからなるカバー層64とを備える。そして、複数の凸部62、反射膜63、接着層64a及びカバー材64bは、この順で、基材61上に形成される。なお、本実施形態では、凸部62以外の構成、すなわち、基材61、反射膜63及びカバー層64の構成は、上記第1の実施形態の回折格子スケール10(図3)における基材1、反射膜3及びカバー層4の構成とそれぞれ同様とする。それゆえ、ここでは凸部62の構成についてのみ説明する。
複数の凸部62は、基材61上に回折格子スケール60の延在方向(移動方向)に所定間隔で配置され、これにより、基材61上に1次元のスケール格子が形成される。なお、凸部62は、上記第1の実施形態の凸部2と同様に、回折格子スケール60の延在方向と直交する方向に直線状に延在して形成される。
また、本実施形態では、例えば、図4(e)や図5に示す状態の格子部材を原盤(型)として、転写によりスケール格子を形成するので、回折格子スケール60のスケール格子の凹凸パターンは、図4(e)や図5に示す状態の格子部材の表面に形成された凹凸パターンを反転したパターンとなる。
それゆえ、本実施形態では、凸部62の上面62aは略平坦面となり、側面62bは略円弧状で且つ凸状の形状を有する面となる。さらに、側面62bには、微細な凹凸が形成される。また、凸部62は、例えば、紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂材料により形成される。
すなわち、本実施形態では、凸部62の側面62bの形状及び凸部62の形成材料が異なる以外、凸部62の構成は、第1の実施形態の回折格子スケール10における凸部2の構成と同様にすることができる。
例えば、回折格子スケール60に照射する光の波長をλとし、カバー層64の屈折率をηとした場合、反射膜63上に画成された凹部の深さH(または凸部62の高さ)は、略λ/4/ηとなるように調整する。なお、凹部の深さH(または凸部62の高さ)は、原盤68の形成過程において、図4(a)の工程で基材上に形成する凸部形成用のレジストの塗布厚により調整する。また、回折格子スケール60のL/S比及び側面62bの形状(凹凸形状)は、第1の実施形態と同様に、回折効率が最大になるように調整される。
[回折格子スケールの作製手法]
次に、本実施形態の回折格子スケール60の作製手法を、図12を参照しながら簡単に説明する。なお、図12は、凸部62を転写により形成する際の様子を示す図である。また、ここでは、図4(e)に示す状態の格子部材を、原盤68として用いる例を説明する。
まず、図4(a)〜(e)で説明した手法により、基材1上に、複数の凸部2が所定パターンで形成された原盤68を用意する。
次いで、基材61上に、例えば塗布法等の手法より、例えば紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂からなる樹脂膜を所定の厚さで形成する。そして、原盤68の凸部2側の表面を樹脂膜に押し付け、原盤68の表面に形成された凹凸パターンを基材1上の樹脂膜に転写する。
次いで、原盤68を樹脂膜に押し付けた状態で、樹脂膜を硬化させる。具体的には、例えば、樹脂膜を紫外線硬化樹脂で形成した場合には、基材61側から樹脂膜に紫外線を照射して硬化させる。また、例えば樹脂膜を熱硬化性樹脂で形成した場合には、樹脂膜を加熱して硬化させる。
そして、樹脂膜が硬化した後、原盤68を樹脂膜から剥離する。この結果、樹脂材料からなる複数の凸部62が基材61上に所定パターンで形成される。なお、この際、凸部62の断面形状は、図12に示すように、原盤68の隣り合う凸部2間に画成された凹部69の断面形状に対応した形状となる。
凸部62を形成した後、上記第1の実施形態と同様にして、反射膜63及びカバー層64を基材61及び凸部62上に形成する。本実施形態では、このようにして回折格子スケール60を作製する。
なお、本実施形態において、回折格子スケール60のL/S比は、原盤68上に形成された凹凸パターンのL/S比により決定される。それゆえ、本実施形態において、回折格子スケール60のL/S比を調整する場合には、原盤68上に形成される凹凸パターンのL/S比を調整する。
例えば、図13に示すように、図11に示す本実施形態の回折格子スケール60より小さなL/S比が必要な場合には、原盤68上に形成された凹凸パターンのL/S比をより大きくする。この場合、図4(a)〜(e)に示す原盤68の作製過程において、図4(c)の工程におけるエッチング処理の処理時間をより短くすればよい。これにより、原盤68上に形成される凸部2の上面幅Lが広くなるとともに凹部69の幅Sが狭くなり、原盤68上に形成された凹凸パターンのL/S比がより大きくなる。逆に、図11に示す本実施形態の回折格子スケール60より大きなL/S比が必要な場合には、図4(c)の工程におけるエッチング処理の処理時間をより長くすればよい。
上述のように、本実施形態の回折格子スケール60においても、第1の実施形態と同様に、凸部62の側面62bには微細な凹凸が形成される。それゆえ、本実施形態の回折格子スケール60では、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
[変形例2]
上記第2の実施形態では、回折格子スケール60がカバー層64を備える構成例を説明したが、本発明はこれに限定されず、カバー層64を備えない構成にしてもよい。図14に、その一構成例(変形例2)を示す。なお、図14は、回折格子スケール70の延在方向における回折格子スケール70の概略断面図である。また、図14において、上記第2の実施形態(図11)の回折格子スケール60と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
この例の回折格子スケール70は、図14に示すように、基材61と、基材61上に形成された複数の凸部62と、複数の凸部62上に形成された反射膜63とで構成され、反射膜63が露出した構成となる。また、この例においても、凸部62の上面62aは平坦とし、且つ、凸部62の側面62bには微細な凹凸を形成する。
なお、この例において、カバー層を設けないこと以外の構成は、上記第2の実施形態と同様である。ただし、この例の構成では、カバー層を設けないので、回折格子スケール70に照射する光の波長をλとした場合、反射膜63上に画成された凹部の深さH(または凸部62の高さ)は、略λ/4となるように調整する。
この例においても、回折格子スケール70の凸部62の側面62bには微細な凹凸を形成されるので、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
<3.第3の実施形態>
上記第1及び第2の実施形態では、1次元方向の変位測定に用いられる回折格子スケールについて説明したが、第3の実施形態では、2次元方向の変位測定に用いられる回折格子スケールについて説明する。
[回折格子スケールの構成]
図15に、本実施形態に係る2次元の回折格子スケールの概略斜視図を示す。なお、図15では、回折格子スケール80の凸部82の配置構成をより明確にするため、凸部82上に形成される反射膜及びカバー層の図示、並びに、凸部82の側面に形成される微細な凹凸の図示は省略する。
回折格子スケール80は、基材81と、複数の凸部82とを備える。さらに、図15には示さないが、回折格子スケール80は、第1の実施形態と同様に、反射膜と、カバー層とを備える。そして、複数の凸部82、反射膜及びカバー層は、この順で、基材81上に形成される。
なお、本実施形態では、凸部82以外の構成、すなわち、基材81、反射膜及びカバー層の構成は、上記第1の実施形態の回折格子スケール10(図3)における基材1、反射膜3及びカバー層4の構成とそれぞれ同様とする。それゆえ、ここでは凸部82の構成についてのみ説明する。また、回折格子スケール80の構成は、この例に限定されず、例えば、上記変形例1−1及び変形例2と同様に、カバー層を備えない構成にしてもよい。
本実施形態では、複数の凸部82を2次元状に等間隔で配置する。図15に示す例では、複数の凸部82は、基材81の長手方向AR1及びそれに直交する短手方向AR2の両方向に沿って2次元状に配置される。
凸部82は、略四角柱状の形状を有し、その上面82aは平坦面である。また、凸部82は、基材81の長手方向AR1に直交する一対の側面82bと、基材81の短手方向AR2に直交する一対の側面82cとを有し、各側面は、全て略円弧状で且つ凹状の形状を有する。そして、凸部82の全ての側面には、微細な凹凸(不図示)が形成される。なお、凸部82は、第1の実施形態と同様に、例えば、半導体素子、ディスプレイパネル等の製造時に用いられる感光レジストや感光乳剤により形成される。
また、本実施形態では、回折格子スケール80に照射する光の波長をλとし、カバー層の屈折率をηとした場合、凸部82の高さは、略λ/4/ηとなるように調整する。なお、カバー層を設けない場合には、凸部82の高さは、略λ/4となるように調整する。さらに、回折格子スケール80の長手方向AR1及び短手方向AR2の各L/S比、並びに、側面82b,82cの形状は、第1の実施形態と同様に、回折効率が最大になるように調整される。
[回折格子スケールの作製手法]
次に、本実施形態の回折格子スケールの作製手法を簡単に説明する。まず、図4(a)〜(e)で説明した凸部の形成手法により、基材81上に、その短手方向AR2に沿って延在した凸部を複数形成する。これにより、基材81の短手方向AR2に沿う方向に凸部の側面を形成し、その側面を粗くする。
次いで、基材81の短手方向AR2に沿って延在した複数の凸部が形成された部材に対して、その複数の凸部上にフォトレジスト(図4(a)中のフォトレジスト21)を塗布する。その後は、図4(b)〜(e)で説明した凸部の形成手法を用いて、基材81の長手方向AR1に沿う方向に凸部の側面を形成し、その側面を粗くする。この結果、基材81上には、2次元配列された複数の略四角柱状の凸部82が形成される。
上述のように、本実施形態では、図4(a)〜(e)で説明した凸部の形成手法を2回行うことにより、複数の略四角柱状の凸部82が基材81上に2次元配列された格子部材を作製する。そして、格子部材を作製した後は、上記第1の実施形態と同様にして、反射膜及びカバー層を、基材81及び凸部82上に形成する。本実施形態では、上述のようにして回折格子スケール80を作製する。また、2次元の露光を一度に行い、その後の工程(現像以降の工程)を上記工程と同様に行っても本実施形態の回折格子スケール80を作製することができる。
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、凸部82の高さは、図4(a)の工程で基材上に形成する凸部形成用レジストの厚さにより調整する。また、回折格子スケール80のL/S比は、図4(c)の工程におけるエッチングの処理時間により調整する。さらに、凸部82の側面の形状(凹凸形状)は、図4(d)の工程における特殊加工の処理時間により調整する。
なお、上述した本実施形態の回折格子スケール80では、基材81の長手方向AR1に沿う方向の変位を測定する際には、基材81の長手方向AR1に直交する側面82bがその変位測定に寄与する。また、基材81の短手方向AR2に沿う方向の変位を測定する際には、基材81の短手方向AR2に直交する側面82cがその変位測定に寄与する。
上述した本実施形態の回折格子スケール80では、第1の実施形態と同様に、凸部82の各側面に微細な凹凸が形成される。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
[第3の実施形態の各種変形例]
ここで、上述した第3の実施形態の回折格子スケール80の各種変形例を説明する。
(1)変形例3−1
上記第3の実施形態では、スケール格子を構成する凸部82を例えば感光レジスト等で形成する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、任意の材料で形成することができる。例えば、凸部82を、上記変形例1−2と同様に、Cr、Al、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる金属膜で形成してもよい。また、例えば、凸部82を、上記変形例1−3と同様に、基材81の表面を直接エッチングして形成してもよい。
(2)変形例3−2
上記第3の実施形態では、ウェットエッチングにより凸部82を形成する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、任意のパターニング処理を適用することができる。例えば、上記変形例1−4と同様に、ドライエッチングにより凸部82を形成してもよい。
(3)変形例3−3
上記第3の実施形態では、基材81上のスケール格子(複数の凸部82)をエッチング処理により形成する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記第2の実施形態と同様に、複数の凸部が基材上に2次元配列された格子部材を原盤(型)とし、それを用いて転写することにより、基材上にスケール格子を形成してもよい。図16に、その一構成例(変形例3−3)を示す。
なお、図16は、この例の回折格子スケール85の概略斜視図である。また、図16では、回折格子スケール85の凸部87(凹部88)の配置構成をより明確にするため、凸部87上に形成される各種積層膜の図示、並びに、凸部87の側面に形成される微細な凹凸の図示は省略する。
この例では、例えば、図15に示す状態の格子部材を原盤(型)として、転写により回折格子スケール85の格子パターン(凹凸パターン)を形成する。それゆえ、この例の回折格子スケールでは、凸部87内に形成された側面により画成された複数の凹部88が、基材86の長手方向AR1及びそれに直交する短手方向AR2の両方向に沿って2次元状に配置された構成となる。なお、このような構成の回折格子スケール85は、上記第2の実施形態の回折格子スケール60と同様にして作製することができる。
また、凹部88の深さ(凸部87の厚さ)は、回折格子スケール85に照射する光の波長をλとし、カバー層の屈折率をηとした場合、凹部88の深さは、略λ/4/ηとなるように調整する。なお、カバー層を設けない場合には、凹部88の深さは、略λ/4となるように調整する。
なお、この例の回折格子スケール85では、基材86の長手方向AR1に沿う方向の変位を測定する際には、基材86の長手方向AR1に直交する側面87bがその変位測定に寄与する。また、基材86の短手方向AR2に沿う方向の変位を測定する際には、基材86の短手方向AR2に直交する側面87cがその変位測定に寄与する。
上述したこの例の回折格子スケール85では、第1の実施形態と同様に、凹部88を画成する4つの側面には微細な凹凸が形成される。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
<4.第4の実施形態>
第4の実施形態では、上述した第3の実施形態とは異なる構成の2次元の回折格子スケールについて説明する。
[回折格子スケールの構成]
図17に、本実施形態に係る2次元の回折格子スケールの概略斜視図を示す。なお、図17では、回折格子スケール90の第1凸部92及び第2凸部94の配置構成をより明確にするため、これらの凸部上に形成される各種積層膜の図示、並びに、各凸部の側面に形成される微細な凹凸の図示は省略する。
回折格子スケール90は、基材91及び該基材91上に形成された複数の第1凸部92からなる下部格子部材90aと、中間層93及び該中間層93上に形成された複数の第2凸部94からなる上部格子部材90bとを備える。
なお、図17には示さないが、回折格子スケール90は、接着層を備え、該接着層を介して下部格子部材90aと上部格子部材90bとが接着される。なお、中間層93を接着層と兼用してもよい。さらに、図17には示さないが、第1凸部92上には第1反射膜が形成され、第2凸部94上には第2反射膜及びカバー層がこの順で形成される。
図18(a)及び(b)に、それぞれ下部格子部材90a及び上部格子部材90bの概略構成を示す。なお、図18(a)は、第1凸部92の延在方向に直交する方向における下部格子部材90aの概略断面図であり、図18(b)は、第2凸部94の延在方向に直交する方向における上部格子部材90bの概略断面図である。
下部格子部材90aは、図18(a)に示すように、基材91と、該基材91上に形成された複数の第1凸部92と、該複数の第1凸部92上に形成された第1反射膜95とを備える。
基材91は、第1の実施形態と同様に、例えば、ガラス、シリコン、セラミック等の材料で形成される。
第1凸部92は、図17に示すように、回折格子スケール90の短手方向AR2に沿って直線状に延在して形成される。また、第1凸部92の上面92aは、図18(a)に示すように、略平坦であり、側面92bは、略円弧状で且つ凹状の形状を有する面である。さらに、側面92bには、微細な凹凸が形成される。
なお、第1凸部92は、第1の実施形態と同様に、例えば、半導体素子、ディスプレイパネル等の製造時に用いられる感光レジストや感光乳剤により形成されるが、本発明はこれに限定されず、任意の材料で形成することができる。例えば、第1凸部92を、上記変形例1−2と同様に、Cr、Al、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる金属膜で形成してもよい。また、例えば、第1凸部92を、上記変形例1−3と同様に、基材91の表面を直接エッチングすることにより形成してもよい。
第1反射膜95は、例えば、Au、Al等からなる金属膜で形成される。そして、第1反射膜95は、第1凸部92の上面92a及び側面92b、並びに、隣り合う第1凸部92間に露出した基材91の表面部を覆うように形成される。
なお、本実施形態では、照射光の波長をλとし、第1反射膜95上に積層される各種層(上部格子部材90bを含む)の全体の屈折率をη′とした場合、下部格子部材90aの第1反射膜95の凹部の深さ(または第1凸部92の高さ)は、略λ/4/η′となるように調整される。
一方、上部格子部材90bは、図18(b)に示すように、中間層93と、該中間層93上に形成された複数の第2凸部94と、該第2凸部94上に形成された第2反射膜96とを備える。なお、図18(b)には示さないが、上部格子部材90bは、第2反射膜96上にカバー層が形成される。ただし、本発明はこれに限定されず、上部格子部材90bをカバー層を設けない構成にしてもよい。
中間層93は、入射光の一部を透過して下部格子部材90aに導く必要があるので、例えばガラス等の光透過性を有する材料により形成される。
第2凸部94は、図17に示すように、回折格子スケール90の長手方向AR1に沿って直線状に延在して形成される。すなわち、本実施形態の回折格子スケール90では、下部格子部材90aの第1凸部92の延在方向と、上部格子部材90bの第2凸部94の延在方向とが互いに直交するように、各凸部を形成する。
また、第2凸部94の上面94aは略平坦面であり、側面94bは、略円弧状で且つ凹状の形状を有する面である。さらに、側面94bには、微細な凹凸が形成される。
なお、第2凸部94は、第1の実施形態と同様に、例えば、半導体素子、ディスプレイパネル等の製造時に用いられる感光レジストや感光乳剤により形成されるが、本発明はこれに限定されず、任意の材料で形成することができる。例えば、第2凸部94を、上記変形例1−2と同様に、Cr、Al、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる金属膜で形成してもよい。また、例えば、第2凸部94を、上記変形例1−3と同様に、中間層93の表面を直接エッチングすることにより形成してもよい。
第2反射膜96は、例えば、Au、Al等からなる金属膜で構成される。ただし、本実施形態では、入射光の一部を上部格子部材90bで透過して下部格子部材90aに導く必要があるので、第2反射膜96は第2凸部94の上面94a上にのみ形成し、凹部には形成しない。
上述のように、本実施形態では、上部格子部材90bの凹部では光を反射させない。それゆえ、本実施形態では、第2凸部94の高さを、略λ/4/η(λ:照射光の波長、η:カバー層の屈折率)となるように調整する必要はなく、任意に設定することができる。
また、第2反射膜96上に形成するカバー層(不図示)は、上記第1の実施形態の回折格子スケール10(図3)におけるカバー層4と同じ構成とする。
[回折格子スケールの作製手法]
上述のように格子部材を2層積層して構成した回折格子スケール90は、例えば、次のようにして作製することができる。
まず、図4(a)〜(e)で説明した凸部の形成手法により、基材91上に、その短手方向AR2に沿って延在した第1凸部92を複数形成する。次いで、第1凸部92及び基材91上に、所定膜厚の第1反射膜95を、例えば蒸着法やスパッタ法等の手法により形成する。
次いで、第1反射膜95上に、接着層(不図示)等を介して、中間層93を形成する。次いで、図4(a)〜(e)で説明した凸部の形成手法により、中間層93上に、その長手方向AR1に沿って延在した第2凸部94を複数形成する。
そして、第2凸部94を形成した後、第2反射膜96及びカバー層を、上記第1の実施形態と同様にして形成する。本実施形態では、このようにして回折格子スケール90を作製することができる。
上述した本実施形態の回折格子スケール90では、所定波長の光が照射されると、その照射光の一部が上部格子部材90bのスケール格子面(凹凸面)で反射(回折)される。一方、照射光の残りの部分は上部格子部材90bを透過して下部格子部材90aに導かれる。そして、下部格子部材90aに導かれた照射光は、下部格子部材90aのスケール格子面で反射(回折)される。
本実施形態では、下部格子部材90aの第1凸部92から得られる回折光の干渉状態の変化に基づいて、基材91の長手方向AR1に沿う方向の変位を測定する。また、上部格子部材90bの第2凸部94から得られる回折光の干渉状態の変化に基づいて、基材91の短手方向AR2に沿う方向の変位を測定する。本実施形態では、このようにして、2次元方向の変位を測定する。
上述した本実施形態の回折格子スケール90では、下部格子部材90aの第1凸部92及び上部格子部材90bの第2凸部94の各側面に微細な凹凸を形成する。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態では、回折格子スケール90に照射する光の波長が1つの場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。出射光の波長(第1及び第2の波長)が互いに異なる2つの光源を用意し、第1の波長の光の干渉状態を下部格子部材90aで測定し、第2の波長の光の干渉状態を上部格子部材90bで測定するようにしてもよい。ただし、この場合には、中間層93を、主に第1の波長の光のみを透過させる材料で形成する。
<5.他の回折格子スケールの構成例>
上記各種実施形態では、回折格子スケールのL/S比の調整及び凸部に形成した微細な凹凸により、回折効率を調整する例を説明した。以下では、上記各種実施形態以外の手法で回折効率が調整可能な回折格子スケールの構成例を説明する。
(1)構成例1
構成例1では、凸部の側面に微細な凹凸を設けずに、回折格子スケールのL/S比及び凸部の側面の曲率半径を調整して回折効率を調整する構成例を説明する。
図19(a)及び(b)に、構成例1の回折格子スケールの概略構成を示す。なお、図19(a)は、L/S比が約1になるように調整した場合の回折格子スケール200の概略断面図であり、図19(b)は、L/S比が1未満になるように調整した場合の回折格子スケール200の概略断面図である。また、図19(a)及び(b)では、説明を簡略化するため、回折格子スケール200の凸部202上に形成される各種積層膜の図示は省略する。なお、図19(a)に示す回折格子スケール200と、図19(b)に示す回折格子スケール200とはL/S比が異なること以外は同じ構成である。
この例の回折格子スケール200は、基材201と、該基材201上に形成された複数の凸部202とを備える。この例では、凸部202以外の構成、例えば、基材201及び凸部202上に形成される各種積層膜(不図示)は、上記各種実施形態で説明した回折格子スケールと同様に構成することができる。
なお、回折格子スケール200が、上記第1の実施形態(図1)のように1次元の回折格子スケールである場合には、凸部202は、回折格子スケール200の移動方向(延在方向)に直交する方向に延在して形成される。また、この場合、複数の凸部202は、回折格子スケール200の移動方向に沿って等間隔に配置される。
一方、回折格子スケール200が、上記第3の実施形態(図15)のように2次元の回折格子スケールである場合には、凸部202の形状は略四角柱となる。また、この場合、複数の凸部202は、基材201上に2次元状に配置される。
また、この例の回折格子スケール200では、図19(a)及び(b)に示すように、凸部202の上面202aは略平坦とし、側面202bの形状は略円弧状で且つ凹状の形状とする。ただし、凸部202の側面202bには、微細な凹凸を形成しない。
また、この例において、凸部202上に屈折率ηのカバー層を形成し、波長λの光を回折格子スケール200に照射する場合、凸部202の高さHは、略λ/4/ηとなるように調整する。一方、カバー層を設けない場合には、凸部202の高さHは、略λ/4となるように調整する。
この例の回折格子スケール200の凸部202は、第1の実施形態で説明したウェットエッチングにより形成することができる。具体的には、例えば図4(a)〜(c)の工程により凸部形成用レジスト20をエッチングした後、フォトレジスト21を除去すれば、この例の回折格子スケール200の凸部202を形成することができる。
そして、この例の回折格子スケール200では、例えば図4(c)の工程におけるウェットエッチングの処理時間を調整することにより、回折格子スケール200のL/S比、すなわち回折効率を調整する。
図19(a)に示す例では、回折格子スケール200のL/S比が約1になるように調整した場合の構成例であり、この場合、凸部202の側面の曲率半径R1は、凸部202の高さHと略等しくなる(R1=H)。
一方、図19(b)に示す例では、回折格子スケール200のL/S比が1より小さくなるよう調整した場合の構成例であり、これは、例えば、図4(c)の工程におけるウェットエッチングの処理時間をより長くすることにより実現することができる。また、この場合、凸部202の側面の曲率半径R2は、凸部202の高さHより大きくなる(R2>H)。
なお、この例の回折格子スケール200のように、ウェットエッチングの処理時間を調整して回折格子スケール200のL/S比(回折効率)を調整した場合、凸部202の側面202bの曲率半径、すなわち、形状は、ウェットエッチングの処理時間に応じて変化する。そして、凸部202の側面202bの形状が異なれば、回折効率も変化する。
それゆえ、この例の回折格子スケール200では、ウェットエッチングの処理時間(L/S比)だけでなく、その処理時間の変化に伴い発生する凸部202の側面202bの曲率半径(形状)の変化も考慮して、回折効率が最大となるように、ウェットエッチングの処理時間を設定する。
(2)構成例2
構成例2では、凸部の側面に微細な凹凸を設けずに、回折格子スケールのL/S比及び凸部の側面の曲率半径を調整して回折効率を調整する別の構成例を説明する。
図20に、この例の回折格子スケールの概略構成を示す。なお、図20において、上記構成例1(図19(a)及び(b))の回折格子スケール200と同様の構成には、同じ符号を付して示す。また、図20では、説明を簡略化するため、回折格子スケール203の凸部202上に形成される各種積層膜の図示は省略する。
図20に示す回折格子スケール203は、図19(a)に示す回折格子スケール200より、L/S比をさらに小さくした場合の回折格子スケールである。ただし、凸部202の側面202bの曲率半径は、図19(a)に示す回折格子スケール200の曲率半径R1と同じとする。また、この例では、L/S比を小さくしたこと以外は、図19(a)に示す回折格子スケール200と同様の構成とする。
この例の回折格子スケール203の凸部202は、上述した構成例1と同様に、例えば図4(a)〜(c)の工程により凸部形成用レジスト20をエッチングした後、フォトレジスト21を除去することにより形成することができる。ただし、この例では、図4(c)の工程におけるウェットエッチングの処理時間を、図19(a)に示す回折格子スケール200の作製時の条件と同じにする。その代わりに、この例では、図4(b)の工程でフォトレジスト21に形成する開口部21aの開口面積を大きくする。
開口部21aの開口面積が大きくなると、エッチング液が触れる領域が広くなり、凸部形成用レジスト20のエッチング領域が広がる。この結果、図20に示すように、凸部202間に画成される凹部の幅Sが広くなり、L/S比が小さくなる。
一方、この例では、図4(c)の工程におけるウェットエッチングの処理時間を、図19(a)に示す回折格子スケール200の作製時のそれと同じにするので、凸部202の側面202bの曲率半径は、図19(a)に示す回折格子スケール200のそれと同じ、すなわちR1(=H)となる。
上述のように、この例の回折格子スケール203では、図4(b)の工程でフォトレジスト21に形成する開口部21aの開口面積の大きさだけを調整することにより回折効率を調整することができる。それゆえ、この例では、構成例1に比べて回折格子スケール203の回折効率を調整がより容易になる。
(3)構成例3
構成例3では、構成例1または2で説明した基材201と、その上に形成された複数の凸部202とからなる格子部材を原盤(型)とし、それを用いて転写により作製された回折格子スケールの構成例を説明する。
図21(a)及び(b)に、構成例3の回折格子スケールの概略構成を示す。なお、図21(a)及び(b)は、回折格子スケール205の概略断面図である。また、図21(a)及び(b)では、説明を簡略化するため、回折格子スケール205の凸部207上に形成される各種積層膜の図示は省略する。
図21(a)に示す回折格子スケール205は、図20(構成例2)に示す基材201及び複数の凸部202からなる格子部材を原盤として用いて、転写により作製した回折格子スケールである。一方、図21(b)に示す回折格子スケール205は、図19(a)(構成例1)に示す基材201及び複数の凸部202からなる格子部材を原盤として用いて、転写により作製した回折格子スケールである。
図21(a)に示す回折格子スケール205の作製に用いる原盤(図20)のL/S比は、図21(b)に示す回折格子スケール205の作製に用いる原盤(図19(a))のそれより小さい。それゆえ、転写により作製された図21(a)に示す回折格子スケール205のL/S比は、図21(b)に示す回折格子スケール205のそれより大きくなる。
上述のように、この例では、転写工程時に用いる原盤のL/S比を調整することにより、回折格子スケール205のL/S比を調整することができる。それゆえ、この例では、原盤のL/S比を、上述した構成例1または2と同様にして調整することにより、回折効率の調整を行うことができる。
(4)構成例4
構成例4では、ドライエッチングの処理時間の調整のみにより、回折格子スケールのL/S比を調整して回折効率を調整する構成例を説明する。
図22(a)及び(b)に、構成例4の回折格子スケールの概略構成を示す。なお、図22(a)は、凸部上にカバー層を設けない場合の回折格子スケール210の概略断面図であり、図22(b)は、凸部上にカバー層を設けた場合の回折格子スケール216の概略断面図である。
図22(a)に示す回折格子スケール210は、基材211と、基材211上に形成された複数の凸部212と、基材211及び凸部212上に形成された反射膜213とを備える。なお、凸部212の構成以外の構成、例えば、基材211及び凸部212上に形成される反射膜213の構成は、上記各種実施形態で説明した回折格子スケールと同様にすることができる。
一方、図22(b)に示す回折格子スケール216は、基材211と、複数の凸部212と、反射膜213と、接着層214a及びカバー材214bからなるカバー層214とを備える。そして、複数の凸部212、反射膜213、接着層214a及びカバー材214bは、この順で、基材211上に形成される。すなわち、図22(b)に示す回折格子スケール216は、図22(a)に示す回折格子スケール210において、さらに、反射膜213上にカバー層214を設けた構成である。
なお、この例の回折格子スケール210または216が、上記第1の実施形態(図1)のように1次元の回折格子スケールである場合には、凸部212は、回折格子スケール210または216の移動方向に直交する方向に延在して形成される。また、この場合、複数の凸部212は、回折格子スケール210または216の移動方向に沿って等間隔に配置される。
一方、回折格子スケール210または216が、上記第3の実施形態(図15)のように2次元の回折格子スケールである場合に、凸部212の形状は略四角柱となる。また、この場合、複数の凸部212は、基材211上に2次元状に配置される。
また、この例の回折格子スケール210または216では、凸部212をドライエッチングにより形成するので、凸部212の断面形状は略矩形となる。なお、凸部212の上面及び側面はともに略平坦とし、側面には、微細な凹凸を形成しない。
上述のような構成の凸部212は、上記変形例1−4で説明した図10(a)〜(c)の工程によりドライエッチングで凸部形成用レジスト50をエッチングした後、フォトレジスト51を除去することにより形成することができる。
なお、凸部212をドライエッチングで形成する場合、図10(c)に示すように、凸部形成用レジスト50には、フォトレジスト51に形成された開口部51aと略同じ寸法の凹部が形成される。それゆえ、この例の回折格子スケール210または216においてL/S比を調整する場合には、例えば図10(b)の工程で形成するフォトレジスト51の開口部51aの寸法を調整する。
すなわち、この例の回折格子スケール210または216では、図10(b)の工程でフォトレジスト51に形成する開口部51aの開口寸法を調整することにより回折効率を調整することができる。
(5)構成例5
構成例5では、基材上に形成されるスケール格子(凹凸パターン)が正弦波状である回折格子スケールの構成例を説明する。
図23(a)及び(b)に、構成例5の回折格子スケールの概略断面構成を示す。なお、図23(a)及び(b)では、説明を簡略化するため、回折格子スケールの凸部上に形成される各種積層膜の図示は省略する。
図23(a)に示す回折格子スケール220は、基材221と、該基材221上に形成されたスケール格子層222(凸部)とを備える。この例では、スケール格子層222以外の構成、例えば、基材221及びスケール格子層222上に形成される各種積層膜(不図示)は、上記各種実施形態で説明した回折格子スケールと同様にすることができる。
なお、回折格子スケール220が、上記第1の実施形態(図1)のように1次元の回折格子スケールである場合には、スケール格子層222の表面222aの凸部は、回折格子スケール220の移動方向に直交する方向に延在して形成される。一方、回折格子スケール220が、上記第3の実施形態(図15)のように2次元の回折格子スケールである場合に、スケール格子層222内の凸部の形状は略四角錘となる。
図23(a)に示す回折格子スケール220では、スケール格子層222の基材221とは反対側の表面222aに正弦波状の凹凸パターンを形成する。ただし、この例では、スケール格子層222の表面222aの凹部には基材221を露出させないように、すなわち、凹部が底切れしないように、スケール格子層222を形成する。また、図23(a)に示す回折格子スケール230では、スケール格子層222の表面222aには微細な凹凸を形成しない。
また、この例において、スケール格子層222上に屈折率ηのカバー層を形成し、波長λの光を回折格子スケール220に照射する場合、スケール格子層222の表面222aの凹部の深さは、略λ/4/ηとなるように調整する。一方、カバー層を設けない場合には、スケール格子層222の表面222aの凹部の深さは、略λ/4となるように調整する。
一方、図23(b)に示す回折格子スケール225は、図23(a)に示す回折格子スケール220と同様に、基材221と、該基材221上に形成されたスケール格子層226(凸部)とを備える。ただし、図23(b)に示す回折格子スケール225では、スケール格子層226の正弦波状の表面226aに微細な凹凸を形成する。図23(b)に示す例では、スケール格子層226以外の構成は、図23(a)に示す回折格子スケール220の構成と同様である。
スケール格子層226の表面226aの微細な凹凸は、図23(a)に示す回折格子スケール220のスケール格子層222の表面222aに対して、上記図4(d)で説明した例えばエッチング処理や熱処理等の特殊加工処理を施すことにより形成される。
図23(b)に示す回折格子スケール225では、スケール格子層226の表面226aに形成される微細な凹凸のサイズ(粗さ度合い)を調整することにより、回折効率を調整する。
(6)構成例6
構成例6では、基材上に複数の凸部を設けなくても、回折効率の調整が可能になる回折格子スケールの例を説明する。
図24(a)及び(b)に、構成例6の回折格子スケールの概略構成を示す。なお、図24(a)は、回折格子スケール230のL/S比が約1になるように調整した場合の回折格子スケール230の概略断面図であり、図24(b)は、L/S比が1未満になるように調整した場合の回折格子スケール230の概略断面図である。なお、図24(a)に示す回折格子スケール230と、図24(b)に示す回折格子スケール230とは、L/S比が異なること以外は同じ構成である。
この例の回折格子スケール230は、基材231と、スケール格子層232と、反射膜233と、接着層234a及びカバー材234bからなるカバー層234とを備える。そして、スケール格子層232、反射膜233、接着層234a及びカバー材234bは、この順で、基材231上に形成される。なお、この例の回折格子スケール230では、カバー層234を備えない構成にしてもよい。
この例の回折格子スケール230では、スケール格子層232以外の構成は、上記各種実施形態で説明した回折格子スケールと同様の構成にすることができる。それゆえ、ここでは、スケール格子層232の構成のみを説明する。
この例では、スケール格子層232の反射膜233側の表面を略平坦とする。そして、スケール格子層232の反射膜233側の表面において、平坦面232aと、微細な凹凸が形成された凹凸面232bとを交互に形成する。
このような構成の回折格子スケール230では、平坦面232aの反射率は凹凸面232bの反射率より高くなる。それゆえ、この例の回折格子スケール230では、平坦面232aからの戻り光により発生する回折光の干渉状態と、微細な凹凸が形成された凹凸面232bからの戻り光により発生する回折光の干渉状態とが異なり、回折格子スケール230の変位を測定することができる。
なお、回折格子スケール230が、上記第1の実施形態(図1)のように1次元の回折格子スケールである場合には、平坦面232a(凹凸面232b)は、回折格子スケール230の移動方向に直交する方向に延在して形成される。また、この場合、複数の平坦面232a(凹凸面232b)は、回折格子スケール230の移動方向に沿って等間隔に形成される。
一方、回折格子スケール230が、上記第3の実施形態(図15)のように2次元の回折格子スケールである場合に、平坦面232aの形状は略矩形となる。また、この場合、複数の平坦面232aは、スケール格子層232の表面に2次元状に配置される。
上述のような構成のスケール格子層232は、例えば次のようにして形成することができる。まず、基材231上に、スケール格子層232の形成膜(例えばレジスト等)を所定膜厚で形成する。次いで、スケール格子層232の形成膜上に、フォトレジストを形成する。
次いで、フォトレジストに対して感光及び現像を行い、凹凸面232bの形成領域に対応するフォトレジストの領域に開口部を形成し、該開口部にスケール格子層232の形成膜の一部を露出させる。次いで、露出したスケール格子層232の形成膜に対して、例えばエッチング処理や熱処理等の特殊加工処理を施し、露出したスケール格子層232の形成膜の表面を粗くする。これにより、スケール格子層232に凹凸面232bが形成される。そして、フォトレジストを除去すると、図24(a)及び(b)に示すように、平坦面232aと、微細な凹凸が形成された凹凸面232bとが所定間隔で交互に形成されたスケール格子層232が形成される。
この例の回折格子スケール230では、平坦面232aの幅Lと、凹凸面232bの幅Sとの比(L/S比)を調整することにより、回折効率を調整する。そして、L/S比の微調整は、上述したスケール格子層232の形成過程の中で、フォトレジストに形成する開口部のサイズを微調整することにより実現することができる。
例えば、図24(a)に示す例のように、L/S比を約1にする場合には、フォトレジストに形成する開口部のサイズと、隣り合う開口部間に残されるフォトレジストのサイズを略同じにすればよい。一方、図24(b)に示す例のように、L/S比を1未満にする場合には、フォトレジストに形成する開口部のサイズを、隣り合う開口部間に残されるフォトレジストのサイズより大きくすればよい。
上述のように、この例の回折格子スケール230では、平坦面232aの幅Lと、凹凸面232bの幅Sとの比(L/S比)を調整するだけで回折効率を調整するので、複数の凸部を形成するタイプの回折格子スケールに比べて、回折効率の調整がより容易になる。
(7)構成例7
上記構成例1〜6では、凸部またはスケール格子層をレジストで形成する例を説明したが、凸部またはスケール格子層は任意の材料で形成することができる。例えば、上記変形例1−2のように、凸部またはスケール格子層を金属膜で形成してもよいし、上記変形例1−3のように、基材の表面に直接、凹凸パターンを形成し、凸部またはスケール格子層と、基材とを一体的に形成してもよい。
また、上記構成例1〜6では、凸部またはスケール格子層を含むスケール格子が1層である例を説明したが、上記構成例1〜6の凸部またはスケール格子層を含むスケール格子を2層用意し、それらのスケール格子を、上記第4の実施形態(図17)と同様にして積層して2次元の回折格子スケールを構成してもよい。
(8)構成例8
構成例8では、基材上に複数の凸部を設けなくても、回折効率の調整が可能になる回折格子スケールの別の構成例を説明する。
図25(a)及び(b)に、構成例8の回折格子スケールの概略構成を示す。なお、図25(a)は、回折格子スケール240のL/S比が1より大きくになるように調整した場合の回折格子スケール240の概略断面図であり、図25(b)は、L/S比が1未満になるように調整した場合の回折格子スケール240の概略断面図である。なお、図25(a)に示す回折格子スケール240と、図25(b)に示す回折格子スケール240とはL/S比が異なること以外は同じ構成である。
この例の回折格子スケール240は、基材241と、スケール格子層242と、接着層243a及びカバー材243bからなるカバー層243とを備える。そして、スケール格子層242、接着層243a及びカバー材243bは、この順で、基材241上に形成される。なお、この例の回折格子スケール240では、カバー層243を備えない構成にしてもよい。
この例の回折格子スケール240では、スケール格子層242以外の構成は、上記各種実施形態で説明した回折格子スケールと同様の構成にすることができる。それゆえ、ここでは、スケール格子層242の構成のみを説明する。
この例では、スケール格子層242を、高反射膜242aと、高反射膜242aより低い反射率を有する低反射膜242bとで構成する。そして、高反射膜242a及び低反射膜242bを所定間隔で交互に配置する。
高反射膜242a及び低反射膜242bの形成材料の組み合わせは、両者間に反射率に差が生じる組み合わせであれば任意に設定することができる。例えば、高反射膜242aをAu膜やAl膜で形成し、低反射膜242bをCrO膜で形成することができる。なお、この例では、高反射膜242a及び低反射膜242bで回折格子スケール240に入射された光を反射させるので、反射膜は設けない。
このような構成の回折格子スケール240では、高反射膜242aからの戻り光により発生する回折光の干渉状態と、低反射膜242bからの戻り光により発生する回折光の干渉状態とが異なる。それゆえ、この例の回折格子スケール240では、この干渉状態の違いを検出することにより、回折格子スケール240の変位を測定することができる。
そして、この例の回折格子スケール240では、高反射膜242aの幅Lと、低反射膜242bの幅Sとの比(L/S比)を調整することにより、回折効率を調整する。それゆえ、この例では、構成例6と同様に、複数の凸部を形成するタイプの回折格子スケールに比べて、回折効率の調整がより容易になる。