JP2012020703A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】主溝の溝底の幅が狭くても耐石噛み性能を向上させることが可能な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ周方向の主溝3A,3Bとタイヤ幅方向の横溝4とで区分された陸部5のパターンを有する空気入りタイヤ1において、陸部5における主溝3Aと横溝4との交点部分の近傍で且つ当該主溝3A及び当該横溝4から隔離された位置に、その交点部分における当該陸部5の側壁5aに入力された押圧力により当該側壁5aを押し広げさせる溝部6を設けること。例えば、その溝部6は、交点部分を成す夫々の陸部5の内、その交点部分において少なくとも横溝4の開口部分と対向している陸部5に設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤ周方向の主溝とタイヤ幅方向の横溝とで構成されたブロック等の陸部のパターンを有する空気入りタイヤに関する。
この種の空気入りタイヤにおいては、その主溝と横溝との交点部分に入り込んだ石が抜けなくなることがあり、特に踏面の摩耗末期に発生する可能性が高い。そして、そのような石の噛み込みが生じた場合には、所謂ストーンドリリングによって主溝の溝底がカットされ、ベルトの錆による耐久性低下や更正率の低下を引き起こす虞がある。従来、かかる不都合を改善すべく、例えば下記の特許文献1及び2の様に、その交点部分の溝底に突起部(所謂ストーンイジェクタ)を設け、石の噛み込みが起こらないようにする技術が知られている。
特開2003−54220号公報 国際公開第2006/043373号
しかしながら、主溝の溝底の幅が狭い空気入りタイヤ、例えば主溝の溝深さが深く且つ溝幅が狭い重荷重用空気入りタイヤの場合には、その狭い主溝の溝底にストーンイジェクタの設置スペースを確保し難く、喩え設置できたとしても十分なストーンイジェクタの大きさや強度が確保できない可能性がある。これが為、このような主溝の溝底の幅が狭い空気入りタイヤにおいては、主溝と横溝との交点部分での石の噛み込みを回避できない虞がある。
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、主溝の溝底の幅が狭くても耐石噛み性能を向上させることが可能な空気入りタイヤを提供することを、その目的とする。
上記目的を達成する為、本発明は、タイヤ周方向の主溝とタイヤ幅方向の横溝とで区分された陸部のパターンを有する空気入りタイヤにおいて、前記陸部における前記主溝と前記横溝との交点部分の近傍で且つ当該主溝及び当該横溝から隔離された位置に、その交点部分における当該陸部の側壁に入力された押圧力により当該側壁を押し広げさせる溝部を設けたことを特徴としている。
ここで、前記溝部は、前記交点部分を成す夫々の前記陸部の内、その交点部分における前記横溝の開口部分と対向している陸部に少なくとも設けることが望ましい。
また、前記横溝の開口部分と対向している陸部に設ける前記溝部は、その開口部分の溝幅が前記押圧力の押圧方向に向けて投影された前記陸部上の投影幅領域内に少なくとも1部を配置することが望ましい。
また、前記溝部は、前記押圧力による所望の側壁の変形量を得ることが可能な前記投影幅領域の所定割合以上の範囲に配置することが望ましい。
また、前記溝部は、前記交点部分で前記押圧力による所望の側壁の変形量が得られる長手方向の長さに形成すると共に、その長手方向が前記押圧力の押圧方向に対する直交方向と同一方向になるよう又は当該直交方向に対して45度よりも小さい角度で傾斜するよう配置することが望ましい。
また、前記溝部は、前記交点部分で前記押圧力による所望の側壁の変形量が得られる溝幅となるように形成すると共に、該溝幅が前記押圧力の押圧方向と平行になるよう又は当該押圧方向に対して45度よりも小さい角度で傾斜するよう配置することが望ましい。
また、前記溝部は、前記陸部の所望の剛性が確保できる溝幅となるように形成することが望ましい。
また、前記溝部の溝幅は、溝底に向かうにつれて狭くなることが望ましい。
また、前記溝部は、前記陸部上における前記押圧力の押圧方向にて、その陸部の前記交点部分側の側壁における踏面側の端部から前記主溝の溝幅分の範囲内に設けることが望ましい。
また、前記陸部における前記押圧力の押圧方向の幅を「Wb」とすると、前記溝部は、前記陸部上における前記押圧力の押圧方向にて、その陸部の前記交点部分側の側壁における踏面側の端部から起算して前記幅Wbの5%以上で且つ0.5mm以上離した位置に設けることが望ましい。
また、前記陸部における前記交点部分側の側壁が前記主溝の溝底に向かうほど当該交点部分を成す他の前記陸部に近づく傾斜面を有する場合、前記溝部は、その側壁に設けることが望ましい。
また、前記溝部は、複数本設けることが望ましい。
また、前記陸部における前記主溝側の前記側壁の傾斜面の傾斜角をタイヤ周方向にて変化させることが望ましい。
また、前記陸部のパターンは、重荷重タイヤ用で且つスタッドレスタイヤ用のものであることが望ましい。
主溝と横溝との交点部分に石が入り込んできた際には、その石からの押圧力が交点部分を成す陸部の側壁に作用する。本発明に係る空気入りタイヤは、その際に陸部上の溝部によって側壁が押し広げられて交点部分を拡大させるので、交点部分の石が外に排出される。また、その際の側壁の一部は、溝部側に傾倒しながら押し広げられて、踏面側を向いた傾斜面となる。これが為、この空気入りタイヤにおいては、その傾斜面による交点部分の石の押し出し作用や、側壁の変形に伴う弾発力による交点部分の石の押し出し作用が生じるので、その排出効果が高まる。特に、その溝部は、陸部上に形成するので、主溝が溝底の溝幅の狭いものであっても設けることができる。従って、この溝部は、そのような幅狭の主溝を有する空気入りタイヤにおいても耐石噛み性能を向上させることができる。
図1は、本発明に係る空気入りタイヤにおけるトレッド部の踏面の一部を表した展開図である。 図2は、本発明に係る空気入りタイヤにおけるトレッド部の踏面の一部を表した展開図であって、実施の形態1,2及び4の具体例を示す図である。 図3は、図2のA−A線で切った断面図である。 図4は、図2のA−A線で切った断面図であって、石が入り込んだときの側壁の動きを示す図である。 図5は、本発明に係る空気入りタイヤにおけるトレッド部の踏面の一部を表した展開図であって、実施の形態3の具体例を示す図である。 図6は、図2のA−A線で切った断面図であって、実施の形態4の溝部を示す図である。 図7は、図2のA−A線で切った断面図であって、実施の形態4の溝部による石が入り込んだときの側壁の動きを示す図である。 図8は、本発明に係る空気入りタイヤにおけるトレッド部の踏面の一部を表した展開図であって、実施の形態5の具体例を示す図である。 図9は、図8のB−B線で切った断面図である。 図10は、本発明に係る空気入りタイヤにおけるトレッド部の踏面の一部を表した展開図であって、実施の形態5の他の例を示す図である。 図11は、図10のC−C線で切った断面図である。 図12は、タイヤの性能試験結果を示す図である。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延設した主溝とタイヤ幅方向に延設した横溝とで区分された陸部のパターンをトレッド部に有し、その陸部における主溝と横溝との交点部分の近傍で且つ当該主溝及び当該横溝から隔離された位置に、その交点部分における当該陸部の側壁に入力された押動力により当該側壁を傾倒させる溝幅を有する溝部を設けたものである。ここで云うタイヤ幅方向の横溝とは、タイヤ回転軸の軸線方向と平行なものだけでなく、その軸線方向に対して45度よりも小さな傾斜角で傾斜させたものも含む。
[実施の形態1]
本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態1を図1から図4に基づいて説明する。
図1に本実施の形態の空気入りタイヤ1におけるトレッド部2の踏面(路面と接する面であって所謂トレッド面)2aの一部を表した展開図を示す。
そのトレッド部2は、タイヤ周方向に延設した複数本の主溝3A,3Bと、タイヤ幅方向に延設した複数本の横溝4と、を有する。主溝3Aは、主溝3Bに対してタイヤセンタCL寄りに形成されたものである。これら主溝3A,3Bは、この例示において各々2本ずつ用意している。トレッド部2には、その主溝3A,3Bと横溝4とで区分した複数のブロックやリブ等の陸部5が形成されている。
車両走行時には、主溝3A,3Bの中に走行路上の石が入り込むことがある。その石は、タイヤ回転に伴い殆どが主溝3A,3Bから抜け出るが、一部が主溝3A,3Bと横溝4との交点部分(横溝4の主溝3A,3Bへの開口部分)に挟まって抜けられなくなることもある。ここで、陸部5における主溝3A,3B側の側壁5aが踏面2a側を向いた傾斜面(つまり、主溝3A,3Bの溝底へと向かうにつれて、対向する他の陸部5側に近づく傾斜面)の場合には、その傾斜面が石からの押圧力に抗する踏面2a側へ向けた弾発力をその石に加えることができるので、一定の溝幅からなる主溝よりも石が排出され易い。特に、石は、その傾斜面の傾斜角が大きいほど排出され易くなる。しかしながら、主溝3A,3Bの溝幅が狭く且つ溝深さが深い場合には、その傾斜角の拡大に限界があり、石の排出に適した傾斜角の傾斜面を得難い。
そこで、このトレッド部2には、主溝3A,3Bと横溝4との交点部分における陸部5に、石の噛み込みの発生を抑える石噛み抑制溝としての溝部6を設ける。その溝部6は、車両走行時に主溝3A,3Bの中を交点部分まで転がってきた石又は交点部分に入り込んだ石を排出させるものである。ここで、特に、タイヤセンタCL寄りの主溝3Aと横溝4との交点部分においては、タイヤショルダ寄りの主溝3Bよりも、そのような石の噛み込みが発生し易い。これが為、その溝部6は、少なくともタイヤセンタCL寄りの主溝3Aと横溝4との交点部分における陸部5に設けることが好ましい。また、この溝部6は、例えばタイヤ周方向に並んだ陸部5の各列の内の少なくとも1列に設けることで石の噛み込みを抑えることができるが、全ての交点部分に設けることが最も好ましい。本実施の形態においては、そのタイヤセンタCL寄りの2本の主溝3Aにおける全ての交点部分を成す夫々の陸部5に溝部6を設けることにする。以下に、この溝部6について詳述する。
この実施の形態では、具体的に主溝3A,3Bの溝幅が狭く且つ溝深さが深い深溝の空気入りタイヤ1、例えば重荷重タイヤ用で且つスタッドレスタイヤ用の陸部5のパターンを有する空気入りタイヤ1を例に挙げて説明する(図2)。この種の深溝の空気入りタイヤ1とは、主溝3A,3Bが下記の式1の如き関係を有するものである。その式1において、「Wm」は主溝3A,3Bの溝幅を示し、「GDm」は新品時における主溝3A,3Bの溝深さを示している(図3)。この空気入りタイヤ1のトレッド部2においては、その図3に示すように、主溝3A,3Bの溝幅Wmが新品時における踏面2a側から溝底まで略一定の幅になっている。この図3は、図2のA−A線断面図である。尚、この図3では主溝3A側を示しているが、タイヤショルダ寄りの主溝3Bについても主溝3Aと同等の形状になっている。尚、横溝4についても、溝幅を略一定にしている。
0.2≦Wm/GDm≦0.6 … (1)
このような溝幅Wmが一定の主溝3A,3Bにおいては、前述したように、横溝4との交点部分に石が噛み込まれ易い。ここで、その交点部分に石が噛み込まれているときには、その交点部分を成す3つの陸部5の側壁5aへと石から押圧力が加わっている。従来の夫々の陸部の側壁は、石からの押圧力が加わると、交点部分を拡げる方向へと押し広げられるが、その石を外に排出できるほど変形はしない。従って、本実施の形態の溝部6は、その石からの押圧力を吸収できる程度まで側壁5aを変形させるものとし、その変形に伴い石が外に排出されるまで側壁5aを押し広げて交点部分を拡大させることが可能な形状及び位置に形成する。
この溝部6は、1つの交点部分を成す3つの陸部5の内の少なくとも1つに設ければよい。その交点部分における横溝4の主溝3Aへの開口部分に対して当該主溝3Aを挟んで対向している陸部5が設定対象の場合、溝部6は、タイヤ幅方向が溝幅となり、タイヤ周方向が長手方向となる。一方、他の2つの陸部5が設定対象の場合、溝部6は、石から加わる押圧力の押圧方向が溝幅となり、その押圧力の押圧方向に対する直交方向が長手方向となる。尚、石による押圧方向は、石の形状等に応じて変わるが、便宜上、例えば平均をとった1つの方向とする。溝部6は、横溝4の開口部分と対向している陸部5に設ける方が、他の2つの陸部5に設けるよりも生産性等が良い。従って、溝部6は、横溝4の開口部分と対向している陸部5には少なくとも設けることが好ましい。ここでは、その横溝4の開口部分と対向している陸部5にのみ設けるものとして例示する。
この溝部6は、交点部分における陸部5の側壁5aに押圧力が入力された際に、その側壁5aを押し広げて交点部分を拡大させ、これにより交点部分の石を外に排出させる為のものである。これが為、この溝部6は、図2及び図3に示すように、陸部5における主溝3Aと横溝4との交点部分の近傍で且つ当該主溝3A及び当該横溝4から隔離された位置に設ける。このような溝部6は、交点部分から離れすぎた位置に形成された場合、形状が小さすぎた場合、石の排出を促す程度にまで側壁5aを押し広げることができない。これが為、この溝部6は、その陸部5上の位置、形状を適正なものにする必要がある。
先ず、陸部5上における石による押圧方向(この例示ではタイヤ幅方向)の位置については、交点部分側の側壁5aにおける新品時の踏面2a側の端部を起点にして決めることにする。ここでは、溝幅が一定の主溝3Aと横溝4を例示しているので、交点部分側の側壁5aの壁面を起点にしてもよい。
押圧方向の位置は、側壁5aの壁面から図2に示す所定距離Aの範囲内とする。その側壁5aは、溝部6が同一形状の場合、その壁面に溝部6が近いほど押圧力により変形し易いが、その壁面から溝部6が離れるほど変形し難くなる。これが為、その所定距離Aは、押圧力が加わった際に交点部分の石を排出させる程度まで側壁5aを押し広げることのできる距離とする。この所定距離Aは、溝部6の形状(溝幅、長さ、溝深さ等)、溝部6の押圧方向に対する直交方向(この例示ではタイヤ周方向)の位置、陸部5の剛性や弾性等によって変わるので、これらも考慮に入れた上で決めることが好ましい。また、従来であれば交点部分に噛み込まれたであろう石の大きさは、交点部分の広さや主溝3Aの溝幅Wmによって大凡決まる。従って、所定距離Aは、その点も踏まえた上で、例えば主溝3Aの溝幅Wmに設定する。このように側壁5aの壁面から所定距離Aの範囲内に溝部6を形成することによって、その側壁5aに押圧力が加わった際には、その側壁5aの一部が溝部6側に傾倒して押し広げられるようになり、交点部分を拡大させることができる。
一方、その側壁5aの壁面に対して溝部6が近すぎた場合には、溝部6の生産性や陸部5の耐久性を低下させてしまう可能性がある。これが為、溝部6は、その壁面から図2に示す所定距離B以上離した位置に形成する。その所定距離Bは、例えば、溝部6を生産し易く、且つ、その溝部6の存在による陸部5の耐久性の低下を抑えることが可能な距離である。この所定距離Bは、溝部6の形状(溝幅、長さ、溝深さ等)、溝部6の押圧方向に対する直交方向(この例示ではタイヤ周方向)の位置、陸部5の剛性や弾性等によって変わるので、これらも考慮に入れた上で決めることが好ましい。例えば、ここでは、陸部5における押圧力の押圧方向(この例示ではタイヤ幅方向)の幅Wb(mm)の5%と0.5mmとを比較し、数値の大きい方を所定距離Bに設定する。つまり、溝部6は、その端部から起算して陸部5の幅Wbの5%以上で且つ0.5mm以上離した位置に設ける。これにより、溝部6の生産性が良くなり、また、陸部5の耐久性の低下を抑えることができる。
続いて、陸部5上における石による押圧方向に対する直交方向(この例示ではタイヤ周方向)の位置については、その陸部5に対して主溝3Aを挟んで向かい合っている図2に示す横溝4の開口部分の溝幅を基準にして決めることにする。溝部6は、その開口部分の溝幅を押圧力の押圧方向(この例示ではタイヤ幅方向)に向けて陸部5に投影し、その投影された開口部分の溝幅の投影幅領域Wp内に少なくとも一部を存在させるよう形成する。この例示の投影幅領域Wpは、横溝4の開口部分における溝幅そのものとなる。これにより、石が交点部分に転がってきたとき又は交点部分に入り込んだときに、その石による押圧力で側壁5aを押し広げることができる。ここで、その溝部6は、少なくともその押圧方向の延長線上に存在させることが好ましい。これにより石からの押圧力が側壁5aの中でも溝部6に近いところに作用するので、その側壁5aの変形が容易になるからである。
次に、溝部6は、押圧力が作用した際に交点部分の石の排出に適した所望の側壁5aの変形量が得られる形状に設定する。押圧力が作用した際に側壁5aを押し広げる為には、適切な溝幅Wsの設定が必要になる。その溝幅Wsが狭すぎると、石の排出に適した側壁5aの変形量を得られない可能性があるからである。これが為、その溝幅Wsは、交点部分の石の排出に適した所望の側壁5aの変形量が得られる大きさとする。ここで、この溝幅Wsについては、溝部6の他の形状(長さ、溝深さ等)、溝部6の位置、陸部5の剛性や弾性等によって変わるので、これらも考慮に入れた上で決めることが好ましい。また、この溝幅Wsは、従来であれば交点部分に噛み込まれたであろう石の大きさも参考にして決めればよい。ここでは、溝幅Wsを主溝3Aの溝幅Wmの10%以上にする。これは、主溝3Aの溝幅Wmの10%よりも溝幅Wsが狭いと、石が排出されるまで側壁5aを押し広げ難いからである。
一方、その溝幅Wsが広すぎると、陸部5の剛性が低下して、車両走行時の転がり抵抗の増加や操縦安定性の低下を引き起こしてしまう虞がある。また、陸部5においては、溝部6の周囲の踏面2aが偏摩耗する可能性もある。これが為、その溝幅Wsには、上限を設ける。その上限とは、転がり抵抗の増加、走行安定性の低下や偏摩耗を生じさせない所望の陸部5の剛性が確保できる幅であり、溝部6の他の形状(長さ、溝深さ等)、溝部6の位置、陸部5の剛性や弾性等によって変わるので、これらも考慮に入れた上で決めることが好ましい。例えば、ここでは、陸部5における押圧力の押圧方向(この例示ではタイヤ幅方向)の幅Wbの20%以下に溝幅Wsを設定する。
このように、溝部6は、陸部5の剛性を確保しつつ交点部分での石の排出が可能な所望の側壁5aの変形量となる溝幅Wsに設定すればよく、例えばその溝幅Wsが0.1*Wm≦Ws≦0.2*Wbとなる細溝に形成する。これにより、陸部5の剛性が保たれるので、転がり抵抗の増加や操縦安定性の低下、偏摩耗を抑えつつ交点部分の石の排出が可能になる。
続いて、溝部6は、その溝深さが浅すぎると、新品時から側壁5aが変形し難く、交点部分の石を排出できない可能性がある。更に、溝深さの浅い溝部6は、摩耗末期に側壁5aが変形できなくなり、また、溝深さ如何で溝部6が無くなるので、交点部分の石を排出できない。ここでは、摩耗末期における石の排出性能を確保するべく、溝部6の溝深さを主溝3Aの溝深さと略同等にする。これにより、新品時から摩耗末期に至るまで耐石噛み性能を確保できる。
ここで、摩耗末期とは、摩耗限界時やそれに近い程度にまで摩耗が進んだときのことを云う。また、その摩耗限界時とは、グリップ性能等のタイヤ基本性能が寿命に達する程度にまで摩耗が進行したときのことであり、例えば所謂スリップサインが踏面2aに露出するまで摩耗が進行したときのことを云う。
また、この溝部6は、石の排出に適した側壁5aの変形量が得られるように長手方向の長さLについての適正化を図ることが好ましい。その長さLは、短すぎると側壁5aが押し広げられ難くなるので、その点を考慮して決めればよい。
ここで、この溝部6は、長手方向が押圧力の押圧方向に対する直交方向(この例示ではタイヤ周方向)と同一方向になるよう配置しているが、その長手方向がその直交方向に対して45度よりも小さい角度で傾斜するよう配置してもよい。換言するならば、この溝部6は、溝幅Wsが押圧力の押圧方向と平行になるよう配置しているが、その溝幅Wsがその押圧方向に対して45度よりも小さい角度で傾斜するよう配置してもよい。つまり、溝部6の長手方向と押圧力の押圧方向とが同じ向きになっていると、石が交点部分に入り込んだ程度の大きさの押圧力では、側壁5aが押し広げることができず、また、押し広げることができたとしても無理な力が陸部5に働くので、陸部5の耐久性を低下させてしまう可能性がある。これに対して、その長手方向をその直交方向に対して45度よりも小さい角度で傾斜させておくことで、好ましくはその長手方向と直交方向とを一致させることで、側壁5aは、陸部5に無理な力を作用させることなく、その一部が最大で溝幅Wsの分だけ傾倒して押し広げられるようになる。
この実施の形態の空気入りタイヤ1においては、主溝3Aと横溝4との交点部分を成す陸部5における上記の位置に上記の形状からなる溝部6を設けることによって、石Sが主溝3Aの中を交点部分まで転動してきた際又は交点部分に入り込んだ際に、図4に示すよう側壁5aが石Sに押されて溝部6側に変形するので、交点部分が拡大して石Sを外に排出することができる。更に、その際の側壁5aの一部は、溝部6側に傾倒しながら押し広げられて、踏面2a側を向いた傾斜面となる。これが為、この空気入りタイヤ1においては、その傾斜面による交点部分の石の押し出し作用や、側壁5aの変形に伴う弾発力による交点部分の石の押し出し作用が生じるので、その排出効果が高まる。また、この空気入りタイヤ1においては、溝部6の溝幅Wsを上記の如く適正化しているので、転がり抵抗の増加や操縦安定性の低下、そして踏面2aの偏摩耗を生じさせることなく耐石噛み性能を向上させることができる。
ここで、例に挙げた主溝3A,3Bにおける溝幅が狭く且つ溝深さが深い深溝の空気入りタイヤ1においては、その主溝3A,3Bの溝底が狭いので、従来の様なストーンイジェクタを配設できない。しかしながら、この実施の形態の溝部6は、そのような空気入りタイヤ1にも配設できるので、従来と比較して良好な耐石噛み性能を得ることができる。
ところで、上述した所定距離B、つまり側壁5aの壁面と溝部6における交点部分側の壁面との間の肉厚は、溝部6の溝幅Wsと同等の長さに設定することが好ましい。溝部6の溝幅Wsにも依るが、その肉厚が溝部6の溝幅Wsに対して薄すぎると、側壁5aが押し広げられるときの伸びが大きくなり、かかる部位の耐久性を低下させる虞があるからである。
更に、上記の例示以外の陸部5に溝部6を設ける場合、次の点に留意することが好ましい。
先ず、陸部5上における押圧方向の位置を決める際に、陸部5における押圧力の押圧方向の幅Wbの5%と0.5mmとを比較して、数値の大きい方を所定距離Bに設定したが、その幅Wbについては、タイヤ幅方向のものを用いることが望ましい。何故ならば、押圧の方向によっては、その幅Wbがタイヤ幅方向よりも極端に短くなることもあるからである。尚、押圧方向の幅Wbを用いたとしても、0.5mmとの比較が行われるので、陸部5の剛性を保つことは可能である。
また、溝部6の溝幅Wsを設定する際には、押圧方向の位置を決めるときと同様に、陸部5における押圧力の押圧方向の幅Wbよりも、陸部5におけるタイヤ幅方向の幅Wbを用いる方が望ましい。
[実施の形態2]
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態2について説明する。
前述した溝部6を投影幅領域Wp内でどの程度存在させるのかについては、溝部6の形状(溝幅、長さ、溝深さ等)、溝部6の押圧方向(この例示ではタイヤ幅方向)の位置、陸部5の剛性や弾性等によって変わるので、これらも考慮に入れた上で決めることが好ましい。これが為、溝部6は、これらも考慮して、投影幅領域Wpの所定割合以上の範囲に存在させる。その所定割合は、押圧力による石の排出を可能にする所望の側壁5aの変形量が得られる値に設定すればよく、例えば60%とする。
ここで、投影幅領域Wpにおける溝部6の占める割合(溝部6のカバー率)が60%よりも少ない場合でも、押圧力で側壁5aを押し広げることができ、交点部分の拡大による石の排出を図ることができる。しかしながら、投影幅領域Wpにおける溝部6の占める割合が60%以上の場合には、それより少ないときよりも側壁5aの変形量を増やすことができるので、交点部分の更なる拡大を図れ、より効果的に交点部分の石を排出させることができる。
また、その溝部6のカバー率と相俟って、溝部6は、その長手方向の長さLが少なくとも投影幅領域Wpの所定割合以上になるよう形成し、石の排出に適した側壁5aの変形量が得られるようにすることが望ましい。その長さLについては、溝部6の他の形状(溝幅、溝深さ等)、溝部6の位置、陸部5の剛性や弾性等によって変わるので、これらも考慮に入れた上で決めることが好ましい。例えば、溝部6の長手方向の長さLは、投影幅領域Wpの60%以上にする。この例示の空気入りタイヤ1では、溝部6の長手方向の長さLが投影幅領域Wpの60%よりも短いと、石の排出に適した側壁5aの変形量が得難いからである。
一方、その長手方向の長さLが長すぎると、主溝3Aにおける交点部分の前後でも側壁5aが変形し易くなり、そこに石が噛み込まれる可能性がある。これが為、そのような交点部分以外での石の噛み込みを防ぐべく、溝部6の長手方向の長さLに上限を設ける。ここでは、その長手方向の長さLが投影幅領域Wpの所定割合以下になるよう形成する。その所定割合は、主溝3Aにおける交点部分以外での石の噛み込みを生じさせぬよう、そこでの押圧力による側壁5aの変形を起こさせない値に設定すればよく、例えば150%とする。
このように、溝部6は、交点部分で押圧力による石の排出を可能にする所望の側壁5aの変形量が得られる長手方向の長さLに設定すればよく、例えば投影幅領域Wpを用いて、0.6*Wp≦L≦1.5*Wpとなるように形成する。これにより、この溝部6は、交点部分以外の石の噛み込みを防ぎつつ、その交点部分の石を排出させることができる。ここで、この例示以外の陸部5に溝部6を設ける場合、その溝部6の長手方向の長さLは、その例示と同じ投影幅領域Wpを基準にして決めればよく、例えば0.6*Wp≦L≦1.5*Wpとなるようにする。
[実施の形態3]
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態3について図5を用いて説明する。
前述した実施の形態1及び2の空気入りタイヤ1では溝部6が1本のみであるが、この実施の形態3においては、複数本の溝部を設けることにする。夫々の溝部における陸部5上の押圧方向の位置、溝幅及び溝深さについては、実施の形態1及び2の溝部6と同じ設定にする。また、夫々の溝部は、その長手方向が押圧方向に対する直交方向と同一の方向となるように配置してもよく、その長手方向がその直交方向に対して45度よりも小さい角度を有するように配置してもよい。その配置の際には、全ての溝部の長手方向を同一方向にしてもよく、各溝部の内の少なくとも1つの長手方向を他のものの長手方向に対して別方向にしてもよい。更に、夫々の溝部は、陸部5上における押圧方向の位置について、交点部分側の側壁5aから観て全てを同じ位置に配置してもよく、その内の少なくとも1つを別の位置に配置してもよい。一方、陸部5上における押圧方向に対する直交方向の位置と長さについては、その溝部6とは多少異なる設定となるので、下記の例示を用いて説明する。
図5の符号16は、本実施の形態の溝部を示す。その溝部16は、第1から第3の溝部16a,16b,16cを備える。
陸部5上における押圧方向に対する直交方向の位置についての説明を行う。この例示の溝部16においては、第1から第3の溝部16a,16b,16cの内の何れか1つを石による押圧方向の延長線上に配置し、その内の少なくとも1つを投影幅領域Wp内に存在させるようにする。これにより、石が交点部分に転がってきたとき又は交点部分に入り込んだときに、その石による押圧力で側壁5aを押し広げることができる。この溝部16についても投影幅領域Wpの所定割合(例えば60%)以上の範囲に存在させるが、その際には、溝部16の全部又は一部、つまり第1から第3の溝部16a,16b,16cの全部又はその内の何れかによって所定割合が確保されるようにする。
次に、長さについて説明する。この溝部16は、第1から第3の溝部16a,16b,16cの夫々の長さLa,Lb,Lcを合わせた合計値が少なくとも投影幅領域Wpの所定割合(例えば60%)以上になるように設定して、石の排出に適した側壁5aの変形量を得ると共に、その合計値が投影幅領域Wpの所定割合(例えば150%)以下になるように設定して、主溝3Aにおける交点部分以外での石の噛み込みを防ぐ。
このように、主溝3Aと横溝4との交点部分を成す陸部5に上記の第1から第3の溝部16a,16b,16cからなる溝部16を設けることによっても、石が主溝3Aの中を交点部分まで転動してきた際又は交点部分に入り込んだ際には、側壁5aが石に押されて溝部16側に変形するので、交点部分が拡大して石を外に排出することができる。また、その溝部16は、実施の形態1及び2の溝部6を複数に分割したものと云えるので、その溝部6よりも第1から第3の溝部16a,16b,16cが小さく、陸部5の剛性を高め易い。従って、この実施の形態の空気入りタイヤ1は、実施の形態1及び2のものよりも転がり抵抗や操縦安定性を向上させることが可能である。更に、この溝部16は、第1から第3の溝部16a,16b,16cの踏面2a側の開口を小さくできるので、これらへの石の噛み込みについても抑制でき、その効果が溝部6よりも高い。
ここで、その溝部16は、図5の例示のように実施の形態1及び2の溝部6と混在させてもよい。
[実施の形態4]
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態4について図6及び図7を用いて説明する。
前述した各実施の形態1から3においては溝幅が一定の溝部6と溝部16(第1から第3の溝部16a,16b,16c)について例示したが、その溝部6,16を下記の溝部26に置き換えてもよい。
この実施の形態の溝部26は、図6及び図7に示すように、溝底に向かうにつれて溝幅Wsを狭めていったものである。その溝幅Wsは、最大の幅となる新品時の踏面2a側の溝幅から最小の幅となる溝底側の溝幅に至るまで、実施の形態1及び2の溝部6における溝幅の設定を適用することが好ましい。これにより、この空気入りタイヤ1は、陸部5の剛性を確保しつつ交点部分で所望の側壁5aの変形量を得ることができるので、転がり抵抗の増加や操縦安定性の低下を抑えながらも交点部分での押圧力による石の排出が可能になる。
また、この溝部26は、新品時の踏面2a側の溝幅を許容し得る最大の幅に設定したとしても、溝底に向かうにつれて溝幅が徐々に狭まっていく。これが為、この溝部26は、その許容し得る最大の幅が溝底まで続く実施の形態1から3の溝部6,16よりも陸部5の剛性を高めることができる。そして、その溝部6,16で溝部26のときと同じ陸部5の剛性を得る為には、その許容し得る最大の幅よりも溝幅を狭くする必要がある。一方、溝幅が広いと云うことは、狭い溝幅に対して、側壁5aの変形量を大きくできることから、交点部分をより拡大することができ且つ側壁5aの変形に伴う弾発力も大きくなるので、交点部分の石の排出が容易になる。従って、この溝部26は、実施の形態1から3の溝部6,16と比べて、同等の陸部5の剛性で同等の転がり抵抗や操縦安定性を求めるのならば、交点部分の石が排出され易くなり、同等の石の排出性能を求めるのならば、高剛性の陸部5による転がり抵抗や操縦安定性の向上が可能になる。
ここで、この溝部26においては、主溝3A側の側壁ではなく逆側の側壁を傾斜させている。その側壁5aの押圧力による変形し易さと変形に耐え得る強度を考えれば、側壁5aの壁面と溝部26における主溝3A側の側壁の壁面との間の肉厚が一定になるこのような形が最も望ましいが、溝部26は、主溝3A側の側壁を傾斜させてもよく、双方の側壁を傾斜させてもよい。
また、溝部16のような複数本の溝部からなるものにおいては、複数本の溝部の全てを溝部26の如き形状にしてもよく、その内の少なくとも1本を溝部26の如き形状にすると共に残りを溝幅一定の形状にしてもよい。
[実施の形態5]
次に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態5について図8から図11を用いて説明する。
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、陸部15の高剛性化による転がり抵抗の低下や操縦安定性の向上を図るべく、その陸部15の主溝13A側の側壁15aに傾斜角を付けたものである。その側壁15aの傾斜面は、溝底に向かうにつれて、主溝13Aを挟んで対向している他の陸部15側に近づくものとする。この1つの傾斜面は、1つの同じ傾斜角で構成されたものであってもよく、傾斜角をタイヤ周方向で変化させたものであってもよい。この例示では、後者の変化のある傾斜面からなる側壁15aにしているので、主溝13Aの側壁がタイヤ周方向で変化している。これが為、ここでは、同一の傾斜角からなるものよりも陸部15の剛性を高めることができるので、更なる転がり抵抗の低下や操縦安定性の向上が可能になる。
このような空気入りタイヤ1においても、主溝13Aと横溝4との交点部分を成す少なくとも1つの陸部15には、前述した各溝部6,16,26の内の少なくとも1種類を形成する。この場合の溝部6,16,26についても、その形状や陸部15における位置は、前述した例示と同様の設定にする。これにより、空気入りタイヤ1は、夫々の溝部6,16,26によるものと同様の効果を得ることができる。尚、図8及び図9には、実施の形態1及び2の溝部6を設けたものを例示している。
ここで、前述したように、交点部分側の側壁15aが傾斜面を有する場合には、交点部分の石が排出され易くなっており、特に新品時にその効果が高い。この空気入りタイヤ1においては、更に溝部6(溝部16,26)が設けられているので、新品時から或る程度摩耗が進むまでは高い石の排出性能を得ることができる。しかしながら、側壁15aが傾斜面になっているので、その側壁15aにおける傾斜面と溝部6との間の肉厚は、図9に示すように、溝底に近づくに従って厚くなっていく。従って、摩耗が進行したとき、特に摩耗末期においては、その厚い肉厚と浅くなった溝部6とによって、その傾斜面と溝部6との間の剛性が高くなり、側壁15aを溝部側へと変形させ難くなるので、石の排出性能が低下してしまう可能性がある。
そこで、この種の陸部15に溝部を形成する場合には、例えば溝部6(溝部16,26)における主溝13A側の壁面を傾斜させた溝部へと置き換えることが好ましい。その溝部は、その主溝13A側の壁面の傾斜角を少しでも側壁15aの傾斜面の傾斜角に近づけたものであり、好ましくは同等の傾斜角にすればよい。これにより、或る程度摩耗が進行してから摩耗末期に至るまでの側壁15aの傾斜面と溝部との間の剛性を下げることができるので、側壁15aの溝部側への変形を促すことが可能になり、石の排出性能を向上させることができる。
また、この種の陸部15に形成する溝部は、次の様なものであってもよい。交点部分側の側壁15aが傾斜面を有する場合には、新品時から或る程度摩耗が進むまでであれば、陸部15に溝部が無くても石の排出効果を得られる。従って、溝部は、或る程度摩耗が進行してから摩耗末期に至るまでの間に石の排出効果を発揮できるものであればよい。このことから、この種の陸部15においては、例えば図10及び図11に示すように、その側壁15aに溝部36を設けてもよい。その際には、溝部36を形成するスペースが側壁15aに必要になる。これが為、側壁15a上の溝部36は、その側壁15aの傾斜角が例えば10度以上で溝部36の形成スペースが確保できる場合に設けることにする。この場合の空気入りタイヤ1においては、その溝部36として各溝部6,16,26の内の少なくとも1種類を適用すればよい。
この溝部36の形状は、基本的に各溝部6,16,26の形状と同様の設定にする。但し、溝深さについては、その溝底が主溝13Aの溝底と同じ高さになるように設定すればよい。また、この溝部36においては、陸部15上における押圧方向に対する直交方向の位置についても各溝部6,16,26と同様の設定にする。
一方、この溝部36においては、陸部15上における押圧方向の位置について次の様にして決めればよい。先に示したように、新品時から或る程度摩耗が進むまでは、陸部15に溝部36が存在していなくても石の排出効果を得られる。このことから、陸部15の側壁15a上における押圧方向の位置は、例えば、溝部36が無くても交点部分の石の排出ができる新品時からの踏面2aの摩耗量Qwを求め、その摩耗時における踏面2a側の端部が溝部36における交点部分側の壁面の一部となるように設定する。これにより、この空気入りタイヤ1においては、新品時から或る程度摩耗が進むまでは溝部36に依らず交点部分の石を排出させることができる。そして、この空気入りタイヤ1においては、そこから更に摩耗が進行したときに、溝部36によって側壁15aを押し広げ、交点部分を拡大させることで石が排出される。
[実施例]
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの性能試験結果を図12に基づき示す。
この性能試験は、タイヤサイズ275/80R22.5の空気入りタイヤを正規リムに組み付け、正規内圧の95%を充填し、正規荷重の97%を加え、2−D・4の車両総重量25tの試験車両のフロント操舵軸に装着して実施した。ここで云う正規リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値又はETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値又はETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
ここでは、本発明に係る実施例1及び2の空気入りタイヤと共に、性能試験結果の比較対象となる従来例1及び2の空気入りタイヤや比較例1及び2の空気入りタイヤについても示している。実施例1の空気入りタイヤとは、前述した実施の形態1の空気入りタイヤ1のことである。実施例2の空気入りタイヤとは、前述した実施の形態2の空気入りタイヤ1のことである。従来例の空気入りタイヤとは、言うなれば実施例1及び2の空気入りタイヤに溝部6を設けていないものである。従来例2の空気入りタイヤとは、陸部に切欠きを有するもののことである。その切欠きとは、実施の形態1及び2の溝部6を主溝3Aに連通させたが如き形状のものを云う。比較例1及び2の空気入りタイヤとは、実施の形態2の溝部6の設定条件を少し変更した溝部を有するもののことである。
ここでは、耐石噛み性能の評価試験と操縦安定性の評価試験とを行った。
耐石噛み性能の評価方法は、空気入りタイヤが装着された試験車両で砂利路(オフロードコース)や舗装路(アスファルト路)を所定速度で30,000km走行し、走行後、主溝3Aと横溝4との交点部分に噛んでいる石の個数を測定する。その評価結果は、従来例1の空気入りタイヤにおける石噛み個数を指数値100で表し、その石の個数の差に基づいて他の空気入りタイヤについても指数化する。その指数値は、数値が大きいほど耐石噛み性能が優れていることを示している。
また、空気入りタイヤの交点部分における石のベルト到達率に基づく耐石噛み性能の評価も行った。そのベルト到達率とは、ストーンドリリングにより主溝の溝底がカットされた際の石のベルトへの到達率であり、交点部分に噛み込まれた石の個数でベルトに到達した石の個数を割ったものの百分率である。その評価方法は、空気入りタイヤが装着された試験車両で砂利路(オフロードコース)や舗装路(アスファルト路)を所定速度で走行し、新品時から踏面が80%摩耗したときに交点部分に噛み込まれている石の個数とベルトに到達した石の個数とを測定する。その評価結果は、その交点部分に噛み込まれた石の個数とベルトに到達した石の個数とに基づいたベルト到達率を示す。このベルト到達率は、数値が小さいほど石のベルトへの到達が少なく、耐石噛み性能が優れていることを示す。
操縦安定性の評価方法は、空気入りタイヤが装着された試験車両で乾燥路を所定速度で走行した際のフィーリング評価を行った。その評価結果は、従来例1の空気入りタイヤにおけるフィーリングを指数値100で表し、これを基準としたフィーリングの違いに基づいて他の空気入りタイヤについても指数化する。その指数値は、数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを示している。
試験対象となる各種の空気入りタイヤにおいては、夫々が共通の陸部5のパターン、主溝3A,3B、横溝4を備えている。実施例1の空気入りタイヤは、溝部6の溝幅Wsと陸部5上の押圧力の押圧方向(タイヤ幅方向)の位置とを上記の範囲内に収めたものであるが、溝部6の長さLと投影幅領域Wpにおける溝部6の占める割合(溝部6のカバー率)の設定条件を上記の範囲から外している。これに対して、実施例2の空気入りタイヤは、これらの全ての設定条件を上記の範囲内に収めている。比較例1の空気入りタイヤは、これらの各設定条件の内、溝幅Wsを上記の範囲よりも狭くしたものである。一方、比較例2の空気入りタイヤは、各設定条件の内、溝幅Wsを上記の範囲よりも広くしたものである。
図12の試験結果に依れば、主溝3Aと横溝4との交点部分の近傍の陸部5に溝部6を設けた実施例1及び2の空気入りタイヤは、従来例1及び2の空気入りタイヤに対して、操縦安定性の低下を抑えながらも、耐石噛み性能が向上していることが判る。また、実施例1と実施例2の空気入りタイヤを比較すると、実施例2の空気入りタイヤは、溝部6の長さLと溝部6のカバー率を適正化することで、実施例1の空気入りタイヤよりも石噛み個数が少なく且つ石がベルトに到達しておらず、耐石噛み性能に優れていることが判る。尚、従来例2の空気入りタイヤは、陸部に切欠きを設けたことにより、従来例1に対して石噛み個数を減らすことはできるが、ベルト到達率が高くなると共に操縦安定性が低下してしまう。
ここで、溝幅Wsを狭くした比較例1の空気入りタイヤは、従来例1の空気入りタイヤと同等の耐石噛み性能及び操縦安定性になっている。従って、溝部6は、その溝幅Wsを狭くし過ぎない方がよいことが判る。また、溝幅Wsを広くした比較例2の空気入りタイヤは、実施例1の空気入りタイヤと同等の石噛み個数の減少効果が得られると共に、その実施例1の空気入りタイヤよりもベルト到達率を下げることができる。しかしながら、この比較例2の空気入りタイヤは、操縦安定性が従来よりも低下している。これが為、溝部6は、その溝幅Wsを広くし過ぎることで、陸部5の剛性低下による操縦安定性の低下を引き起こしてしまうことが判る。
ところで、1本の空気入りタイヤにおいては、1種類の溝部(溝部6,16,26,36の内の何れか1つ)のみで構成してもよく、各溝部6,16,26,36の内の少なくとも2種類以上を組み合わせて構成してもよい。
以上のように、本発明に係る空気入りタイヤは、主溝と横溝の交点部分における耐石噛み性能の向上に有用である。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2a 踏面
3A,3B,13A 主溝
4 横溝
5,15 陸部
5a,15a 側壁
6,16,26,36 溝部
16a 第1溝部
16b 第2溝部
16c 第3溝部
CL タイヤセンタ

Claims (14)

  1. タイヤ周方向の主溝とタイヤ幅方向の横溝とで区分された陸部のパターンを有する空気入りタイヤにおいて、
    前記陸部における前記主溝と前記横溝との交点部分の近傍で且つ当該主溝及び当該横溝から隔離された位置に、該交点部分における当該陸部の側壁に入力された押圧力により当該側壁を押し広げさせる溝部を設けたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記溝部は、前記交点部分を成す夫々の前記陸部の内、該交点部分における前記横溝の開口部分と対向している陸部に少なくとも設けることを特徴とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記横溝の開口部分と対向している陸部に設ける前記溝部は、該開口部分の溝幅が前記押圧力の押圧方向に向けて投影された前記陸部上の投影幅領域内に少なくとも1部を配置することを特徴とした請求項2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記溝部は、前記押圧力による所望の側壁の変形量を得ることが可能な前記投影幅領域の所定割合以上の範囲に配置することを特徴とした請求項3記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記溝部は、前記交点部分で前記押圧力による所望の側壁の変形量が得られる長手方向の長さに形成すると共に、該長手方向が前記押圧力の押圧方向に対する直交方向と同一方向になるよう又は当該直交方向に対して45度よりも小さい角度で傾斜するよう配置することを特徴とした請求項1から4の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記溝部は、前記交点部分で前記押圧力による所望の側壁の変形量が得られる溝幅となるように形成すると共に、該溝幅が前記押圧力の押圧方向と同一方向になるよう又は当該押圧方向に対して45度よりも小さい角度で傾斜するよう配置することを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記溝部は、前記陸部の所望の剛性が確保できる溝幅となるように形成することを特徴とした請求項1から6の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記溝部の溝幅は、溝底に向かうにつれて狭くなることを特徴とした請求項1から7の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記溝部は、前記陸部上における前記押圧力の押圧方向にて、該陸部の前記交点部分側の側壁における踏面側の端部から前記主溝の溝幅分の範囲内に設けることを特徴とした請求項1から8の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記陸部における前記押圧力の押圧方向の幅を「Wb」とすると、前記溝部は、前記陸部上における前記押圧力の押圧方向にて、該陸部の前記交点部分側の側壁における踏面側の端部から起算して前記幅Wbの5%以上で且つ0.5mm以上離した位置に設けることを特徴とした請求項1から9の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記陸部における前記交点部分側の側壁が前記主溝の溝底に向かうほど当該交点部分を成す他の前記陸部に近づく傾斜面を有する場合、前記溝部は、該側壁に設けることを特徴とした請求項1から10の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  12. 前記溝部を複数本設けたことを特徴とする請求項1から11の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  13. 前記陸部における前記主溝側の前記側壁の傾斜面の傾斜角をタイヤ周方向にて変化させることを特徴とした請求項1から12の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  14. 前記陸部のパターンは、重荷重タイヤ用で且つスタッドレスタイヤ用のものであることを特徴とした請求項1から13の内の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
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