以下、建設機械として油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は、旋回体を備えた建設機械全般(作業機械を含む)に適用が可能であり、本発明の適用は油圧ショベルに限定されるものではない。例えば、本発明は旋回体を備えたクレーン車等、その他の建設機械にも適用可能である。図1は本発明の電動式建設機械の一実施の形態を示す側面図、図2は本発明の電動式建設機械の第1の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図、図3は本発明の電動式建設機械の第1の実施の形態のシステム構成及び制御ブロック図である。
図1において、電動式油圧ショベルは走行体10と、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20及び旋回体20に装設したショベル機構30を備えている。
走行体10は、一対のクローラ11a,11b及びクローラフレーム12a,12b(図1では片側のみを示す)、各クローラ11a,11bを独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ13、14及びその減速機構等で構成されている。
旋回体20は、旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられた、原動機としての駆動モータ201と、旋回電動モータ25と、駆動モータ201及び旋回電動モータ25に接続される蓄電デバイスとしてのバッテリ202と、旋回電動モータ25の回転を減速する減速機構26等から構成され、旋回電動モータ25の駆動力が減速機構26を介して伝達され、その駆動力により走行体10に対して旋回体20(旋回フレーム21)を旋回駆動させる。
また、旋回体20にはショベル機構(フロント装置)30が搭載されている。ショベル機構30は、ブーム31と、ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32と、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33と、アーム33を駆動するためのアームシリンダ34と、アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35と、バケット35を駆動するためのバケットシリンダ36等で構成されている。
さらに、旋回体20の旋回フレーム21上には、上述した走行用油圧モータ13,14、旋回油圧モータ27、ブームシリンダ32、アークシリンダ34、バケットシリンダ36等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧システム40が搭載されている。油圧システム40は、油圧を発生する油圧源となる油圧ポンプ41(図2)及び各アクチュエータを駆動制御するためのコントロールバルブ42(図2)を含み、油圧ポンプ41は駆動モータ201によって駆動される。
次に、油圧ショベルの電動・油圧機器のシステム構成について概略説明する。図2に示すように、原動機としての駆動モータ201の駆動力は油圧ポンプ41に伝達されている。コントロールバルブ42は、旋回以外の操作レバー装置73(図3参照)からの操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36及び走行用油圧モータ13,14に供給される圧油の流量と方向を制御する。
電動システムは、上述した駆動モータ201、バッテリ202及び旋回電動モータ25と、パワーコントロールユニット55及びメインコンタクタ56等から構成されている。パワーコントロールユニット55はチョッパ51、インバータ52,53、平滑コンデンサ54等を有し、メインコンタクタ56はメインリレー57、突入電流防止回路58等を有している。本実施の形態においては、駆動モータ201を駆動するためにエネルギ容量の高いバッテリ202が必要となる。
バッテリ202からの直流電力はチョッパ51によって所定の母線電圧に昇圧され、旋回電動モータ25を駆動するためのインバータ52、駆動モータ201を駆動するためのインバータ53に入力される。平滑コンデンサ54は、母線電圧を安定化させるために設けられている。旋回電動モータ25は減速機構26を介して旋回体20を駆動する。駆動モータ201及び旋回電動モータ25の駆動状態(力行しているか回生しているか)によって、バッテリ202は充放電されることになる。
コントローラ80は、旋回操作指令信号や、圧力信号及び回転速度信号等(後述)を用いて、コントロールバルブ42、パワーコントロールユニット55に対する制御指令を生成し、原動機としての駆動モータ201の制御、旋回制御、電動システムの異常監視、エネルギマネジメント等の制御、絶縁劣化部位の特定のための検知シーケンスや処理シーケンス等を行う。
絶縁抵抗劣化検知装置90は、経路90A及び90Bを介して、電動システムのメイン回路に接続される。本実施の形態においては、メインコンタクタ56のメインリレー57開放時でも電動システムのメイン回路の絶縁抵抗劣化の検知が可能なように2経路を同時に検知できる構成としている。また、絶縁抵抗劣化検知装置90は交流あるいはパルス波形を生成する交流電源部90Cと、電動システムのメイン回路にこの交流あるいはパルス波形を印加して所定の部位の信号の振幅レベルや波形等を測定する測定部90Dと、印加信号と測定信号とを比較して対象回路の車体フレームに対する絶縁抵抗値を算出し、予め設定された設定値と比較して絶縁抵抗劣化の有無を判断する演算部90Eと、この絶縁抵抗劣化判断信号をコントローラ80に通知する出力部90Fとを備えている。
図2において、91〜95は、コントローラ80に設けられた絶縁抵抗劣化部位を特定するための検知シーケンスによって特定できる部位であって、91はバッテリ202〜メインコンタクタ56間母線を、92はメインコンタクタ56〜チョッパ51間母線を、93はインバータ52,53〜チョッパ51間母線を、94は駆動モータ201〜インバータ53間配線を、95は旋回電動モータ〜インバータ52間配線をそれぞれ示している。
絶縁抵抗劣化検知装置90はある部位で絶縁抵抗劣化を検知すると、コントローラ80に劣化有りの信号を通知する。コントローラ80は、この信号を受けて電動システムに対して、絶縁抵抗劣化に対処するための後述する所定のシーケンス処理を行う。
次に、本発明による旋回制御等を行うのに必要なデバイスや制御手段、制御信号等を図3を用いてさらに詳細に説明する。
油圧ショベルは、駆動モータ201を始動するためのキースイッチ70と、作業中止時にパイロット圧遮断弁76をONにして油圧システムの作動を不能とするゲートロックレバー装置71とを備えている。また、油圧ショベルは、上述したコントローラ80と、コントローラ80の入出力に係わる油圧・電気変換装置74a、電気・油圧変換装置75a,75bを備え、これらは旋回制御システムを構成する。油圧・電気変換装置74a,は例えば圧力センサであり、電気・油圧変換装置75a,75bは例えば電磁比例減圧弁である。
コントローラ80は、異常監視・異常処理制御ブロック81、エネルギマネジメント制御ブロック82、電動旋回制御ブロック83A等を備えている。
旋回操作レバー装置72の入力によって発生される油圧パイロット信号は油圧・電気変換装置74aによって電気信号に変換され、電動旋回制御ブロック83Aに入力される。パワーコントロールユニット55内の電動モータ駆動用のインバータ52から出力される旋回モータ速度信号は電動旋回制御ブロック83Aに入力される。電動旋回制御ブロック83Aは、旋回操作レバー装置72からの油圧パイロット信号と、旋回モータ速度信号に基づいて所定の演算を行って旋回電動モータ25の指令トルクを計算し、パワーコントロールユニット55にトルク指令EAを出力する。
旋回電動モータ25と駆動モータ201とが加速時に消費するエネルギと減速時に回生するエネルギの差によって、バッテリ202の蓄電量が増減することになる。これを制御するのがエネルギマネジメント制御ブロック82であり、バッテリ202の電圧・電流の検出信号を入力し、旋回電動モータ25と駆動モータ201とを適宜制御することにより、バッテリ202の蓄電量を所定の範囲に保つ制御を行う。
パワーコントロールユニット55、旋回電動モータ25、バッテリ202、パワーコントロールユニット55等の電動システムに故障、異常、警告状態が発生した場合や、絶縁抵抗劣化検知装置90から劣化検出の信号を受信した場合は、異常監視・異常処理制御ブロック81及びエネルギマネジメント制御ブロック82が駆動モータ201の回転数を低減すると共に、母線電圧低下手段としてパワーコントロールユニット55のチョッパ51を制御して、旋回電動モータ25と駆動モータ201の動作可能最低電圧まで母線電圧を低下させる。その後、電動システムに対して、絶縁抵抗劣化に対処するシーケンス処理を行う。
次に、本発明の電動式建設機械の一実施の形態を構成する電動システムの電気回路を図4を用いて説明する。図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図4に示すように、電動システムは、大略バッテリ202と、メインコンタクタ56と、チョッパ51と、主平滑コンデンサ54と、電動モータ25と、電動モータ用インバータ52と、駆動モータ201と、駆動モータ用インバータ53とを備えている。
チョッパ51は、リアクトル51aと、スイッチング素子として例えばIGBTのようなパワートランジスタ(以下トランジスタという)51b,51cと、平滑コンデンサ51dとを備えている。
リアクトル51aは、一端がメインコンタクタ56を介してバッテリ202の正極に接続され、他端がトランジスタ51bのソース及びトランジスタ51cのドレインに接続されている。トランジスタ51bのドレインは、主平滑コンデンサ54の一端、駆動モータ用インバータ53、及び電動モータ用インバータ52の一端に接続されている。トランジスタ51cのソースは、メインコンタクタ56を介してバッテリ202の負極、主平滑コンデンサ54の他端、駆動モータ用インバータ53、及び電動モータ用インバータ52の他端に接続されている。また、リアクトル51aの一端には、平滑コンデンサ51dの一端が接続され、平滑コンデンサ51dの他端は、トランジスタ51cのソースに接続されている。
各トランジスタ51b,51cのゲートには、図示しないチョッパコントローラが接続されていて、スイッチング制御が行われる。コントローラ80からの指令を受けて2個のトランジスタ51b,51cを交互に開閉させることにより、バッテリ202の電圧を駆動モータ201用インバータ53及び電動モータ25用インバータ52が動作可能な母線電圧に昇圧すると共に、母線電圧を所定の一定値付近に制御する動作を行う。
主平滑コンデンサ54は、直流電圧を平滑する。駆動モータ201用インバータ53及び電動モータ25用インバータ52は、一方にチョッパ51及び主平滑コンデンサ54が接続され、他方には、駆動モータ201と電動モータ25とがそれぞれ接続されている。
駆動モータ201用インバータ53及び電動モータ25用インバータ52は、例えばIGBTのようなスイッチング素子としてのトランジスタ53A,52Aそれぞれ6個からなるブリッジ回路を用いて、図示しないインバータコントローラからの指令を受けて、電流のON/OFFを繰り返し、パルス幅を変動させることで疑似的に三相交流を作り出し、駆動モータ201及び電動モータ25を駆動する。なお、インバータコントローラはコントローラ80からの指令で制御される。
図4において、絶縁抵抗劣化検知装置90の経路90Aは、バッテリ202〜メインコンタクタ56間母線91に、経路90Bは、インバータ52,53〜チョッパ51間母線93にそれぞれ接続されている。
ここで、絶縁抵抗劣化部位を特定するための検知シーケンスについて説明する。上述したように、電動システムにおいては、駆動モータ201用インバータ53及び電動モータ25用インバータ52のスイッチング素子53A,52A、チョッパ51のトランジスタ51b,51c、及びメインコンタクタ56のメインリレー57をコントローラ80のエネルギマネジメント制御ブロック82からの信号によりそれぞれ開閉可能に構成している。これら構成部材の開閉を制御しながら絶縁抵抗劣化検知装置90の測定信号を異常監視・異常処理制御ブロック81で監視することで、絶縁抵抗劣化部位を特定することができる。
例えば、絶縁抵抗劣化部位がバッテリ202〜メインコンタクタ56間母線91の場合には、通常状態においては、経路90Aと経路90Bの両方で絶縁抵抗の劣化が検知される。ここで、メインコンタクタ56のメインリレー57を開動作すると、経路90Bの劣化検知が消去し、経路90Aが劣化検知のままとなり、絶縁抵抗劣化部位であるバッテリ202〜メインコンタクタ56間母線91を特定することができる。
また、絶縁抵抗劣化部位が駆動モータ201〜インバータ53間配線94の場合には、通常状態において経路90Aと経路90Bの両方で絶縁抵抗の劣化が検知され、メインコンタクタ56のメインリレー57を開動作すると、経路90Aの劣化検知が消去し、経路90Bが劣化検知のままとなる。次に、駆動モータ用インバータ53のスイッチング素子53Aを全部OFFさせて、経路90Bの劣化検知が消去することで、絶縁抵抗劣化部位である駆動モータ201〜インバータ53間配線94を特定することができる。
これら構成部材の開閉制御はコントローラ80のエネルギマネジメント制御ブロック82からの検知シーケンスで実行される。
次に、本発明の電動式建設機械の第1の実施の形態において、絶縁抵抗劣化検知装置90から絶縁抵抗劣化検出の信号を受信した際の処理シーケンスについて図5及び図6を用いて説明する。
図5は本発明の電動式建設機械の第1の実施の形態の絶縁抵抗劣化検知後の処理シーケンスを示すフローチャート図、図6は本発明の電動式建設機械の第1の実施の形態の絶縁抵抗劣化検知後の処理シーケンス(再起動)を示すフローチャート図である。
まず、図5のステップ(S101)では、電動システムの絶縁抵抗が正常か否か判断される。具体的には、コントローラ80のエネルギマネジメント制御ブロック82から電動建設機械の運転中に絶縁抵抗劣化検知装置90を作動させ、上述したように演算部90Eで印加信号と測定信号を比較して対象回路の車体フレームに対する絶縁抵抗値を算出し、この絶縁抵抗値と設定値と比較して、絶縁抵抗値が設定値以上であれば、絶縁抵抗が正常なのでYESと判断され、絶縁抵抗値が設定値以下であれば、絶縁抵抗劣化検知なのでNOと判断される。
ステップ(S101)でYESと判断された場合には、元に戻り絶縁抵抗の正常か否かの判断を継続して行う。
ステップ(S101)でNOと判断された場合には、ステップ(S102)に進み、絶縁抵抗が劣化したことをオペレータに報知警告し、機械の停止を要求するとともに、駆動モータ201の回転数を低減する。具体的には、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81から図示しないモニタやブザー等に報知信号と停止要求信号を出力し、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55へ駆動モータ201への減速指令が出力される。
次に、ステップ(S103)では、駆動モータ201と旋回電動モータ25との動作最低電圧までチョッパ51により母線電圧を低下させる。具体的には、母線電圧低下手段としてエネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55のチョッパ51に対して、降圧指令が出力され、トランジスタ51b,51cがスイッチング制御されることにより母線電圧を所定の一定値付近まで低下させる。なお、この状態の下にオペレータは例えば安全が確保できる場所まで、建設機械を移動させる。
次に、ステップ(S104)では、キースイッチ70の状態がOFFか否か判断され、NOと判断された場合には、元に戻りキースイッチ70の状態の判断を継続して行う。オペレータは、建設機械を安全な場所まで移動できて、機械を停止できると判断できれば、キースイッチ70をOFFにできる。
キースイッチ70をOFFにして、ステップ(S104)でYESと判断された場合には、ステップ(S105)に進み、駆動モータ201が停止される。
次に、ステップ(S106)では、母線電圧を完全に放電させるための放電シーケンスを行う。具体的には、チョッパ51によりできるだけ母線電圧を低下させた後、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55のインバータ52,53のスイッチング素子のON/OFFを制御することで、主平滑コンデンサ54に残留した電荷を駆動モータ201又は旋回電動モータ25のコイルに対して放電させる。なお、駆動モータ201及び旋回電動モータ25は停止しているので、各インバータ52,53から各モータ201,25に流れる放電電流によって、回転トルクが発生しないように放電ベクトル制御がなされる。
ステップ(S107)では、メインコンタクタ56のメインリレー57を開動作する。具体的には、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55を介してメインコンタクタ56を制御する。
ステップ(S108)では、絶縁抵抗劣化部位の判定を行う。具体的には、上述したように、コントローラ80のエネルギマネジメント制御ブロック82と異常監視・異常処理制御ブロック81において検知シーケンスが実行されることで、絶縁抵抗劣化部位を特定する。また、絶縁抵抗劣化検出された部位及び絶縁抵抗劣化検知によって停止したことが異常監視・異常処理制御ブロック81に記憶される。この後、建設機械は完全に停止する。
次に、絶縁抵抗劣化検知後の処理シーケンス(再起動)について図6を用いて説明する。この処理シーケンスは、前回、図5に示す絶縁抵抗劣化検知後の処理シーケンスで停止した後の建設機械の再起動に適用されるものである。
まず、図6のステップ(S201)では、キースイッチ70をOFFからON状態とする。
次に、ステップ(S202)では、前回建設機械運転時に絶縁抵抗劣化が検知されて、停止処理シーケンスで停止されたことがオペレータに報知される。具体的には、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81から図示しないモニタやブザー等に報知信号が出力される。
ステップ(S203)では、絶縁抵抗劣化の詳細測定の実施につき、再度実施するか否かの選択が要求される。具体的には、ステップ(S202)と同様にモニタ表示等でオペレータに問いかける。
ステップ(S203)でYESと判断された場合には、ステップ(S204)に進み、絶縁抵抗の劣化検知が行われる。具体的には、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81から絶縁抵抗劣化検知装置90を作動させる。
ステップ(S205)では、電動システムの絶縁抵抗が正常か否か判断される。具体的には、上述したように絶縁抵抗劣化検知装置90の演算部90Eで印加信号と測定信号を比較して対象回路の車体フレームに対する絶縁抵抗値を算出し、この絶縁抵抗値と設定値と比較して、絶縁抵抗値が設定値以上であれば、絶縁抵抗が正常なのでYESと判断され、絶縁抵抗値が設定値以下であれば、絶縁抵抗劣化検知なのでNOと判断される。
このステップ(S205)でNOと判断された場合には、ステップ(S206)に進み、キースイッチ70の状態がSTARTか否か判断され、NOと判断された場合には、元に戻りキースイッチ70の状態の判断を継続して行う。
また、先のステップ(S203)でNOと判断された場合にも、ステップ(S206)に進む。つまり、この場合、ステップ(S204)とステップ(S205)がバイパスされる。
キースイッチ70をSTARTにして、ステップ(S206)でYESと判断された場合には、絶縁抵抗劣化の詳細測定を実施しないか実施したが絶縁抵抗劣化検知した状態であるので、駆動モータ201の回転数を制限した絶縁抵抗劣化状態の運転モードで起動する。具体的には、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81から図示しないモニタやブザー等に報知信号を出力し、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55へ駆動モータ201の速度制限指令が出力される。
ステップ(S205)でYESと判断された場合には、ステップ(S207)に進み、キースイッチ70の状態がSTARTか否か判断され、NOと判断された場合には、元に戻りキースイッチ70の状態の判断を継続して行う。
キースイッチ70をSTARTにして、ステップ(S207)でYESと判断された場合には、絶縁抵抗劣化の詳細測定を行い異常なしと判断された状態であるので、標準の運転モードで起動する。具体的には、コントローラ80のエネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55へ駆動モータ201の増速度指令が制限されない。
上述した本発明の第1の実施の形態によれば、旋回体20の駆動に旋回電動モータ25を用いた電動式建設機械において、旋回電動モータ25,駆動モータ201、インバータ52,53、蓄電装置としてのバッテリ202等を備えた電動システムの絶縁抵抗劣化が検知された場合でも建設機械を安全な姿勢にすると共に安全な場所に移動させるだけの最低限の動力を確保した上で、オペレータに建設機械停止の警告を行うので、作業現場における建設機械及びオペレータの安全を確保することができる。
次に、本発明の電動式建設機械の第2の実施の形態を図7を用いて説明する。
図7は本発明の電動式建設機械の第2の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。なお、図7において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
図2に示した第1の実施の形態では、油圧ポンプ41の駆動軸には駆動モータ201のみが連結していたが、本実施の形態においては、油圧ポンプ41の駆動軸には、エンジン22とアシスト発電モータ23とが連結していて、いわゆるハイブリッド式建設機械を構成している。また、蓄電デバイスとしては、エネルギ容量の高いバッテリ202ではなく電気二重層キャパシタ24を用いた構成としている。
なお、上述した第1の実施の形態では、電力システムの絶縁抵抗劣化が検知された後に処理シーケンスにより駆動モータ201の回転数を低下させたが、本実施の形態においては、周知の方法によりエンジン22の回転数または出力を低下させている。例えば、アイドル回転数までエンジン回転数を低下させるように設定させている。
本発明の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
次に、本発明の電動式建設機械の第3の実施の形態を図8及び図9を用いて説明する。図8は本発明の電動式建設機械の第3の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図、図9は本発明の電動式建設機械の第3の実施の形態のシステム構成及び制御ブロック図である。なお、図8及び図9において、図1乃至図7に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
図8において、旋回体20は、図示しない旋回フレームと、この旋回フレーム上に設けられた、原動機としてのエンジン22と、エンジン22により駆動されるアシスト発電モータ23と、旋回電動モータ25及び旋回油圧モータ27と、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25に接続される電気二重層キャパシタ(以下キャパシタという)24と、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転を減速する減速機構26等から構成され、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の駆動力が減速機構26を介して伝達され、その駆動力により旋回体20を旋回駆動させる。
図8に示すように、エンジン22の駆動力は油圧ポンプ41に伝達されている。コントロールバルブ42は、旋回用の操作レバー装置72(図9参照)からの旋回操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、旋回油圧モータ27に供給される圧油の流量と方向を制御する。またコントロールバルブ42は、旋回以外の操作レバー装置73(図9参照)からの操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36及び走行用油圧モータ13,14に供給される圧油の流量と方向を制御する。
電動システムは、上述したアシスト発電モータ23、キャパシタ24及び旋回電動モータ25と、パワーコントロールユニット55及びメインコンタクタ56等から構成されている。パワーコントロールユニット55はチョッパ51、インバータ52,53、平滑コンデンサ54等を有し、メインコンタクタ56はメインリレー57、突入電流防止回路58等を有している。
キャパシタ24からの直流電力はチョッパ51によって所定の母線電圧に昇圧され、旋回電動モータ25を駆動するためのインバータ52、アシスト発電モータ23を駆動するためのインバータ53に入力される。平滑コンデンサ54は、母線電圧を安定化させるために設けられている。旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転軸は結合されていて、減速機構26を介して旋回体20を駆動する。アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25の駆動状態(力行しているか回生しているか)によって、キャパシタ24は充放電されることになる。
コントローラ80は、旋回操作指令信号や、圧力信号及び回転速度信号等(後述)を用いて、コントロールバルブ42、パワーコントロールユニット55に対する制御指令を生成し、旋回油圧モータ27を用いる油圧単独旋回モード、旋回油圧モータ27と旋回電動モータ25とを用いる油圧電動複合旋回モードの切り替え、各モードの旋回制御、電動システムの異常監視、エネルギマネジメント等の制御、絶縁劣化部位の特定のための検知シーケンスや処理シーケンス等を行う。
次に、本発明による旋回制御等を行うのに必要なデバイスや制御手段、制御信号等を図9を用いてさらに詳細に説明する。
油圧ショベルは、エンジン22を始動するためのキースイッチ70と、作業中止時にパイロット圧遮断弁76をONにして油圧システムの作動を不能とするゲートロックレバー装置71とを備えている。また、油圧ショベルは、上述したコントローラ80と、コントローラ80の入出力に係わる油圧・電気変換装置74a,74bL,74bR、電気・油圧変換装置75a,75b,75c,75d及び油圧単独旋回モード固定スイッチ77を備え、これらは旋回制御システムを構成する。油圧・電気変換装置74a,74bL,74bRはそれぞれ例えば圧力センサであり、電気・油圧変換装置75a,75b,75c,75dは例えば電磁比例減圧弁である。
コントローラ80は、異常監視・異常処理制御ブロック81、エネルギマネジメント制御ブロック82、油圧電動複合旋回制御ブロック83、油圧単独旋回制御ブロック84、制御切替ブロック85等を備えている。
全体システムに異常がなく、旋回電動モータ25が駆動可能な状態では、コントローラ80は油圧電動複合旋回モードを選択する。このとき制御切替ブロック85は油圧電動複合旋回制御ブロック83を選択しており、油圧電動複合旋回制御ブロック83によって旋回アクチュエータ動作が制御される。旋回操作レバー装置72の入力によって発生される油圧パイロット信号は油圧・電気変換装置74aによって電気信号に変換され、油圧電動複合旋回制御ブロック83に入力される。旋回油圧モータ27の作動圧は油圧・電気変換装置74bL,74bRによって電気信号に変換され、油圧電動複合旋回制御ブロック83に入力される。パワーコントロールユニット55内の電動モータ25駆動用のインバータ52から出力される旋回モータ速度信号も油圧電動複合旋回制御ブロック83に入力される。油圧電動複合旋回制御ブロック83は、旋回操作レバー装置72からの油圧パイロット信号と、旋回油圧モータ27の作動圧信号及び旋回モータ速度信号に基づいて所定の演算を行って旋回電動モータ25の指令トルクを計算し、パワーコントロールユニット55にトルク指令EAを出力する。同時に、旋回電動モータ25が出力するトルク分、油圧ポンプ41の出力トルク及び旋回油圧モータ27の出力トルクを減少させる減トルク指令EB,ECを電気・油圧変換装置75a,75bに出力する。
一方、旋回操作レバー装置72の入力によって発生される油圧パイロット信号はコントロールバルブ42にも入力され、油圧ポンプ41の吐出油を旋回油圧モータ27に供給し、旋回油圧モータ27も同時に駆動する。
旋回電動モータ25が加速時に消費するエネルギと減速時に回生するエネルギの差によって、キャパシタ24の蓄電量が増減することになる。これを制御するのがエネルギマネジメント制御ブロック82であり、アシスト発電モータ23に発電またはアシスト指令EDを出すことにより、キャパシタ24の蓄電量を所定の範囲に保つ制御を行う。
パワーコントロールユニット55、旋回電動モータ25、キャパシタ24、パワーコントロールユニット55等の電動システムに故障、異常、警告状態が発生した場合や、絶縁抵抗劣化検知装置90から劣化検出の信号を受信した場合は、まず、異常監視・異常処理制御ブロック81及びエネルギマネジメント制御ブロック82が制御切替ブロック85を切り替えて油圧単独旋回制御ブロック84を選択し、油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回モードへの切替えを行い、次に、エンジン回転数を低減し、その後、電動システムに対して、絶縁抵抗劣化に対処するシーケンス処理を行う。基本的に旋回の油圧システムは、旋回電動モータ25と協調して動作するようマッチングされているので、油圧単独旋回制御ブロック84は、旋回駆動特性補正指令EEと旋回パイロット圧補正指令EFをそれぞれ電気・油圧変換装置75c,75dに出力し、旋回油圧モータ27の駆動トルクを増加させる補正と旋回油圧モータ27の制動トルクを増加させる補正を行うことにより、旋回電動モータ25のトルクが無くても旋回操作性が損なわれないような制御を行う。
油圧単独旋回モード固定スイッチ77は、電動システムの故障時や、特定のアタッチメント装着時など、何らかの理由で、油圧単独旋回モードに固定したい場合に使用するものであり、固定スイッチ77がON位置に操作されると、切替え制御ブロック85は油圧単独旋回制御ブロック84を選択するように固定される。
次に、旋回油圧システムの詳細について図10乃至図18を用いて説明する。図10は本発明の電動式建設機械の第3の実施の形態における旋回油圧システムの構成を示す油圧回路図である。図10において、図1乃至図9に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図9のコントロールバルブ42は対応するアクチュエータごとにスプールと呼ばれる弁部品を備え、操作レバー装置72,73からの指令(油圧パイロット信号)に応じて対応するスプールが変位することで開口面積が変化し、各油路を通過する圧油の流量が変化する。図10に示す旋回油圧システムは、旋回用スプールのみを含むものである。
旋回油圧システムは、旋回油圧モータ27の最大出力トルクが第1トルクとなる第1モードと、旋回油圧モータ27の最大出力トルクが第1トルクより大きな第2トルクとなる第2モードとに変更可能である。以下にその詳細を説明する。
図10において、旋回油圧システムは、前述した油圧ポンプ41及び旋回油圧モータ27と、旋回用スプール61と、旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bと、旋回補助弁としてのセンタバイパスカット弁63とを備えている。
油圧ポンプ41は可変容量ポンプであり、トルク制御部64aを備えたレギュレータ64を備え、レギュレータ64を動作させることで油圧ポンプ41の傾転角が変わって油圧ポンプ41の容量が変わり、油圧ポンプ41の吐出流量と出力トルクが変わる。図9の油圧電動複合旋回制御ブロック83から電気・油圧変換装置75aに減トルク指令EBが出力されると、電気・油圧変換装置75aは対応する制御圧力をレギュレータ64のトルク制御部64aに出力し、トルク制御部64aは、旋回電動モータ25が出力するトルク分だけ、油圧ポンプ41の最大出力トルクが減少するようポンプ容量(傾転角)を変更する。
油圧ポンプ41のトルク制御特性を図11に示す。横軸は油圧ポンプ41の吐出圧力、縦軸は油圧ポンプ41の容量を示している。
油圧電動複合旋回モードが選択され、電気・油圧変換装置75aに減トルク指令EBが出力されているときは、電気・油圧変換装置75aは制御圧力を発生しており、このときトルク制御部64aの設定は、実線PTSより最大出力トルクが減少した実線PTの特性にある(第1モード)。油圧単独旋回モードが選択され、電気・油圧変換装置75aに減トルク指令EBが出力されていないときは、トルク制御部64aは実線PTSの特性に変化し(第2モード)、油圧ポンプ41の最大出力トルクは、斜線で示す面積分、増加する。
図10に戻り、旋回用スプール61はA,B,Cの3位置を持ち、操作レバー装置72からの旋回操作指令(油圧パイロット信号)を受けて中立位置BからA位置又はC位置に連続的に切り替わる。
操作レバー装置72はパイロット油圧源29からの圧力をレバー操作量に応じて減圧する減圧弁を内蔵し、レバー操作量に応じた圧力(油圧パイロット信号)を旋回用スプール61の左右いずれかの圧力室に与える。
旋回用スプール61が中立位置Bにあるときは、油圧ポンプ41から吐出される圧油はブリードオフ絞りを通り、更にセンタバイパスカット弁63を通ってタンクへ戻る。旋回用スプール61が操作レバー装置72のレバー操作量に応じた圧力(油圧パイロット信号)を受けてA位置に切り替わると、油圧ポンプ41からの圧油はA位置のメータイン絞りを通って旋回油圧モータ27の右側に送られ、旋回油圧モータ27からの戻り油はA位置のメータアウト絞りを通ってタンクに戻り、旋回油圧モータ27は一方向に回転する。逆に、旋回用スプール61がレバー操作量に応じた圧力(油圧パイロット信号)を受けてC位置に切り替わると、油圧ポンプ41からの圧油はC位置のメータイン絞りを通って旋回油圧モータ27の左側に送られ、旋回油圧モータ27からの戻り油はC位置のメータアウト絞りを通ってタンクに戻り、旋回油圧モータ27はA位置の場合とは逆方向に回転する。
旋回用スプール61がB位置とA位置の中間に位置しているときは、油圧ポンプ41からの圧油はブリードオフ絞りとメータイン絞りに分配される。このとき、メータイン絞りの入側にはブリードオフ絞りの開口面積とセンタバイパスカット弁63の開口面積に応じた圧力が立ち、その圧力で旋回油圧モータ27に圧油が供給され、その圧力(ブリードオフ絞りの開口面積)に応じた作動トルクが与えられる。また、旋回油圧モータ27からの排出油はそのときのメータアウト絞りの開口面積に応じた抵抗を受けて背圧が立ち、メータアウト絞りの開口面積に応じた制動トルクが発生する。B位置とC位置の中間においても同様である。
操作レバー装置72の操作レバーを中立位置に戻し、旋回用スプール61を中立位置Bに戻したとき、旋回体20は慣性体であるため、旋回油圧モータ27はその慣性で回転を続けようとする。このとき、旋回油圧モータ27からの排出油の圧力(背圧)が旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁62a又は62bの設定圧力を超えようとするときは、オーバーロードリリーフ弁62a又は62bが作動して圧油の一部をタンクに逃がすることで背圧の上昇を制限し、オーバーロードリリーフ弁62a又は62bの設定圧力に応じた制動トルクを発生する。
図12は、本発明のハイブリッド式建設機械の一実施の形態における旋回用スプール61のメータイン開口面積特性及びブリードオフ開口面積特性を示す特性図であり、図13は同メータアウト開口面積特性を示す特性図である。
図12において、実線MIがメータイン開口面積特性であり、実線MBがブリードオフ開口面積特性であり、いずれも本実施の形態のものである。二点鎖線MBOは、電動モータを用いない、従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるブリードオフ開口面積特性である。本実施の形態のブリードオフ開口面積特性MBは、制御域開始点及び終点は従来のものと同一であるが、中間領域では従来のものに比べて開き勝手(大きな開口面積となるよう)に設計されている。
図13において、実線MOが本実施の形態のメータアウト開口面積特性であり、二点鎖線MOOが電動モータを用いない、従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるメータアウト開口面積特性である。本実施の形態のメータアウト開口面積特性MOは、制御域開始点及び終点は従来のものと同一であるが、中間領域では従来のものに比べて開き勝手(大きな開口面積となるよう)に設計されている。
図14は、油圧パイロット信号(操作パイロット圧)に対する旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性を示す図である。
油圧電動複合旋回モードが選択されているときは、旋回駆動特性補正指令EEは出力されていないため、センタバイパスカット弁63は図示の開位置にあり、旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性は、図12のブリードオフ開口面積特性MBのみによって決まる点線MBCの特性となる(第1モード)。
油圧単独旋回モードが選択されたときは、前述したように電気・油圧変換装置75cに旋回駆動特性補正指令EEが出力され、電気・油圧変換装置75cは対応する制御圧力をセンタバイパスカット弁63の受圧部に出力し、センタバイパスカット弁63は図示右側の絞り位置に切り換えられる。このセンタバイパスカット弁63の切り換えにより、旋回用スプール61の油圧パイロット信号に対する旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性は点線MBCの特性よりも合成開口面積が小さい実線MBSの特性に変更される(第2モード)。この実線MBSの合成開口面積特性は従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるブリードオフ開口面積特性と同等である。
図15は、油圧電動複合旋回モードでの旋回駆動時における油圧パイロット信号(パイロット圧)、メータイン圧力(M/I圧)、旋回電動モータ25のアシストトルク、上部旋回体20の回転速度(旋回速度)の時系列波形を示す特性図である。パイロット圧0、旋回停止状態から時間T=T1〜T4でパイロット圧最大までランプ状に油圧パイロット信号を増加させた場合の例である。
油圧電動複合旋回モードが選択されているときは、図14の点線MBCで示したように旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性は図12のブリードオフ開口面積特性MBのみによって決まる特性となるため、従来に比べてブリードオフ絞りの開口面積が大きい分、本実施の形態の方がメータイン圧力(M/I)は低くなる。メータイン圧力は旋回油圧モータ27の作動トルク(加速トルク)に相当するので、メータイン圧力が低くなった分だけ加速トルクを旋回電動モータ25により付与する必要がある。図14では力行側のアシストトルクを正としている。本実施の形態では、旋回電動モータ25のアシストトルクと旋回用スプール61によって発生するメータイン圧力に由来する加速トルクの合計値が、従来型の油圧ショベルで発生する加速トルクと概等しくなるように制御する。これにより旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベルと同等の加速フィーリングを有することが可能となる。
一方、油圧単独旋回モードが選択されたときは、旋回用スプール61のメータイン絞りとセンタバイパスカット弁63との合成開口面積特性は、図14の点線MBCよりも合成開口面積が小さいから実線MBSの特性に変更されるため、旋回用スプール61によって発生するメータイン圧力は、図15に示す従来の油圧ショベルで得られる実線のメータイン圧力まで上昇し、旋回用スプール61によって発生するメータイン圧力に由来する加速トルクが、従来型の油圧ショベルで発生する加速トルクと概等しくなるように制御される。これにより旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベルと同等の加速フィーリングを有することが可能となる。
また、旋回油圧モータ27単独で旋回可能であるということは、旋回油圧モータ27の最大出力トルクの方が、旋回電動モータ25の最大出力トルクよりも大きいということである。このことは、油圧電動複合旋回モードにおいて、万一、旋回電動モータ25が意図しない動きをしたとしても油圧回路が正常ならば、それほど危険な動きにならないことを意味し、本発明は安全性においても有利である。
図16は、油圧パイロット信号(操作パイロット圧)に対する旋回用スプール61のメータアウト開口面積特性を示す特性図である。
油圧電動複合旋回モードが選択されているときは、旋回パイロット圧補正指令EFは出力されていないため、旋回用スプール61のメータアウト開口面積特性は図6Bのメータアウト開口面積特性MOと同様の変化を示す点線MOCの特性となる(第1モード)。
油圧単独旋回モードが選択されたときは、前述したように図9の電気・油圧変換装置75d(図10の電気・油圧変換装置75dL,75dR)旋回パイロット圧補正指令EFが出力され、電気・油圧変換装置75dは操作レバー装置72で生成された油圧パイロット信号(操作パイロット圧)を減圧補正する。この油圧パイロット信号の補正により、旋回用スプール61の油圧パイロット信号に対するメータアウト開口面積特性は、図16の点線MOCの特性に対し中間領域における開口面積が減少した実線MOSの特性に変更される(第2モード)。この実線MOSの開口面積特性は従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるメータアウト開口面積特性と同等である。
図17は、油圧電動複合旋回モードでの旋回制動停止時における油圧パイロット信号(パイロット圧)、メータアウト圧力(M/O圧)、旋回電動モータ25のアシストトルク、旋回体20の回転速度(旋回速度)の時系列波形を示す特性図である。パイロット圧最大、最高旋回速度から時間T=T5〜T9でパイロット圧0までランプ状に油圧パイロット信号を低減させた場合の例である。
油圧単独旋回モードが選択されているときは、図16の点線MOCで示したように旋回用スプール61の油圧パイロット信号に対するメータアウト開口面積特性は図13のメータアウト開口面積特性MOと同様の変化する特性となるため、図13に示したように従来に比べてメータアウト絞りの開口面積が大きい分、本実施の形態の方がメータアウト圧力(M/O圧)は低くなる。メータアウト圧力はブレーキトルク(制動トルク)に相当するので、メータアウト圧力が低くなった分だけブレーキトルクを電動モータ25により付与する必要がある。図17では回生側のアシストトルクを負としている。本実施の形態では、旋回電動モータ25のアシストトルクと旋回用スプール61によって発生するメータアウト圧力に由来するブレーキトルクの合計値が従来型の油圧ショベルで発生するブレーキトルクと概等しくなるように制御する。これにより旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベル同等の減速フィーリングを有することが可能となる。
一方、油圧単独旋回モードが選択されたときは、旋回用スプール61の油圧パイロット信号に対するメータアウト開口面積特性は、図16の点線MOCの特性に対し中間領域における開口面積が減少した実線MOSの特性に変更されるため、旋回用スプール61によって発生するメータアウト圧力は、図17に示す従来の油圧ショベルで得られる実線のメータアウト圧力まで上昇し、旋回用スプール61によって発生するメータアウト圧力に由来するブレーキトルクが、従来型の油圧ショベルで発生するブレーキトルクと概等しくなるように制御され、旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベル同等の減速フィーリングを有することが可能となる。
図18は、旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ圧特性を示す図である。
油圧電動複合旋回モードが選択され、図9の電気・油圧変換装置75b(図10の電・油圧変換装置75bL,75bR)に減トルク指令ECが出力されているときは、電気・油圧変換装置75bは制御圧力を生成し、その制御圧力が可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bの設定圧力減少側に作用し、可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ特性はリリーフ圧がPmax1である実線SRの特性となる(第1モード)。油圧単独旋回モードが選択され、電気・油圧変換装置75b(図10の電気・油圧変換装置75bL,75bR)に減トルク指令ECが出力されていないときは、電気・油圧変換装置75bは制御圧力を生成しないため、可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ特性は、リリーフ圧がPmax1からPmax2に上昇した実線SRSの特性となり(第2モード)、制動トルクは、リリーフ圧が高くなった分、増加する。
これにより油圧電動複合旋回モードが選択されたときは、可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ圧はPmax2より低いPmax1に設定されるため、、操作レバー装置72の操作レバーを中立位置に戻したときに、旋回油圧モータ27からの排出油の圧力(背圧)は可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bの低めの設定圧力であるPmax1まで上昇し、旋回電動モータ25のアシストトルクと可変オーバーロードリリーフ弁62a又は62bによって発生する背圧に由来するブレーキトルクの合計値が従来型の油圧ショベルで発生するブレーキトルクと概等しくなるように制御され、旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベル同等の減速フィーリングを有することが可能となる。
また、油圧単独旋回モードが選択されたときは、可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bのリリーフ圧はPmax1より高いPmax2に設定されるため、操作レバー装置72の操作レバーを中立位置に戻した場合に、旋回油圧モータ27からの排出油の圧力(背圧)は可変オーバーロードリリーフ弁62a,62bの高めの設定圧力であるPmax2まで上昇し、可変オーバーロードリリーフ弁62a又は62bによって発生する背圧に由来するブレーキトルクが、従来型の油圧ショベルで発生するブレーキトルクと概等しくなるように制御され、旋回体20の旋回速度は従来型の油圧ショベル同等の減速フィーリングを有することが可能となる。
次に、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81による油圧電動複合旋回モードと油圧単独旋回制御モードとを切り替えるシーケンスについて図19を用いて説明する。
図19にコントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81による油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回制御モードへの切り替えシーケンスを示す。
異常監視・異常処理制御ブロック81は、パワーコントロールユニット55、電動モータ25、キャパシタ24、パワーコントロールユニット55等の電動システムに故障、異常、警告状態が発生した場合や、絶縁抵抗劣化検知装置90から劣化検出の信号を受信した場合に、そのことを知らせる信号(以下エラー信号という)が通知されたかどうかを判定し(ステップS300)、エラー信号が通知されると、それが緊急対応を要するエラー信号であるかどうかを更に判定する(ステップS310)。モード切り替え時には、油圧システムのバルブの切り替え動作等により軽いショックが生じる可能性があるので、エラー信号の内容が深刻ではなく、直ちに切替える緊急性がない場合は、モード切換可能なタイミングかどうかを判定し(ステップS320)、旋回体20の動作及び旋回用の操作レバー装置72の入力が行われてないタイミング、あるいは、旋回体20以外の装置である走行、フロントの動作及びそれらの操作レバー装置73の入力も含めて、操作がまったく行われていないアイドリング時等に切替えを行う(ステップS330)。インバータの過電流異常等、システムを損傷させる恐れや重大な故障や災害に繋がる恐れがある異常については、操作中であっても、直ちに電動システムを停止させ、油圧単独旋回モードに切替える(ステップS310→S330)。
次に、本発明の電動式建設機械の第3の実施の形態において、絶縁抵抗劣化検知装置90から絶縁抵抗劣化検出の信号を受信した際の処理シーケンスについて図20及び図21を用いて説明する。
図20は本発明の電動式建設機械の第3の実施の形態の絶縁抵抗劣化検知後の処理シーケンスを示すフローチャート図、図21は本発明の電動式建設機械の第3の実施の形態の絶縁抵抗劣化検知後の処理シーケンス(再起動)を示すフローチャート図である。
まず、図20のステップ(S401)では、電動システムの絶縁抵抗が正常か否か判断される。具体的には、コントローラ80のエネルギマネジメント制御ブロック82から電動建設機械の運転中に絶縁抵抗劣化検知装置90を作動させ、上述したように演算部90Eで印加信号と測定信号を比較して対象回路の車体フレームに対する絶縁抵抗値を算出し、この絶縁抵抗値と設定値と比較して、絶縁抵抗値が設定値以上であれば、絶縁抵抗が正常なのでYESと判断され、絶縁抵抗値が設定値以下であれば、絶縁抵抗劣化検知なのでNOと判断される。
ステップ(S401)でYESと判断された場合には、元に戻り絶縁抵抗の正常か否かの判断を継続して行う。
ステップ(S401)でNOと判断された場合には、ステップ(S402)に進み、まず、上述した異常監視・異常処理制御ブロック81による油圧電動複合旋回モードから油圧単独旋回制御モードへの切り替えシーケンスが実行されて、油圧単独旋回モードに移行される。この切り替えシーケンスと同時に、絶縁抵抗が劣化したことをオペレータに報知警告し、機械の停止を要求するとともに、エンジン22の回転数あるいは出力を低減する。具体的には、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81から図示しないモニタやブザー等に報知信号と停止要求信号を出力し、例えば、図示しないエンジン制御部からエンジン22への減速指令が出力される。エンジン22の回転数あるいは出力は、通常の作業は困難だが低速での動作や走行が可能な程度にまで下げられる。この状態において、アシスト発電モータ23はエンジン22によって回されているが、旋回体20等の作業機械は油圧アクチュエータだけで動作しているので、機械の動作に電動モータ等の電動システムは不要となる。
ステップ(S403)では、絶縁抵抗劣化部位の判定を行う。具体的には、上述したように、コントローラ80のエネルギマネジメント制御ブロック82と異常監視・異常処理制御ブロック81において検知シーケンスが実行される。
ステップ(S404)では、絶縁抵抗劣化部位がキャパシタ24〜メインコンタクタ56間母線91の周辺か否かが判断される。絶縁抵抗劣化部位がメインコンタクタ56〜チョッパ51間母線92,インバータ52,53〜チョッパ51間母線93,アシスト発電モータ23〜インバータ53間配線94,旋回電動モータ〜インバータ52間配線95のいずれかの場合には、NOと判断されステップ(S405)へ進み、メインコンタクタ56のメインリレー57を開動作する。具体的には、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55を介してメインコンタクタ56を制御する。
次に、ステップ(S406)では、母線電圧低下手段として母線電圧を放電させるための放電シーケンスを行う。具体的には、メインリレー57開動作によりキャパシタ24と絶縁した後、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55のインバータ52,53を力行制御することで、主平滑コンデンサ54に残留した電荷をアシスト発電モータ23又は旋回電動モータ25のコイルに対して放電させる。
ステップ(S404)でYESと判断された場合には、ステップ(S407)へ進み、母線電圧低下手段としてキャパシタ24を放電させるための放電シーケンスを行う。具体的には、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55のインバータ52,53を力行制御することで、キャパシタ24を放電させる。
ステップ(S408)ではメインコンタクタ56のメインリレー57を開動作する。具体的には、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55を介してメインコンタクタ56を制御する。
次に、ステップ(S409)では、母線電圧低下手段として母線電圧を放電させるための放電シーケンスを行う。具体的には、メインリレー57開動作によりキャパシタ24と絶縁した後、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55のインバータ52,53を力行制御することで、主平滑コンデンサ54に残留した電荷をアシスト発電モータ23又は旋回電動モータ25のコイルに対して放電させる。
先のステップ(S406)とステップ(S409)において、母線電圧を放電させている間に、オペレータは例えば安全が確保できる場所まで、建設機械を移動させる。先のステップ(S406)とステップ(S409)のいずれかが実行された後には、ステップ(S410)に進む。
ステップ(S410)では、キースイッチ70の状態がOFFか否か判断され、NOと判断された場合には、元に戻りキースイッチ70の状態の判断を継続して行う。オペレータは、建設機械を安全な場所まで移動できて、機械を停止できると判断できれば、キースイッチ70をOFFにできる。
キースイッチ70をOFFにして、ステップ(S410)でYESと判断された場合には、ステップ(S411)に進み、エンジン22が停止される。
次に、ステップ(S412)では、母線電圧を完全に放電させるための放電シーケンスを行う。アシスト発電モータ23と旋回電動モータ25が永久磁石同期モータの場合、エンジン22や旋回油圧モータ27により強制的に回転させられると自己誘起電圧分のDC電圧が母線に重畳するため、エンジン22及び旋回電動モータ25が停止した後、再度放電シーケンスの実施が必要となる。具体的には、エネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55のインバータ52,53のスイッチング素子のON/OFFを制御することで、主平滑コンデンサ54に残留した電荷をアシスト発電モータ23又は旋回電動モータ25のコイルに対して放電させる。なお、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25は停止しているので、各インバータ52,53から各モータ23,25に流れる放電電流によって、回転トルクが発生しないように放電ベクトル制御がなされる。また、絶縁抵抗劣化検出された部位及び絶縁抵抗劣化検知によって停止したことが異常監視・異常処理制御ブロック81に記憶される。この後、建設機械は完全に停止する。
次に、絶縁抵抗劣化検知後の処理シーケンス(再起動)について図21を用いて説明する。この処理シーケンスは、前回、図20に示す絶縁抵抗劣化検知後の処理シーケンスで停止した後の建設機械の再起動に適用されるものである。
まず、図21のステップ(S501)では、キースイッチ70をOFFからON状態とする。
次に、ステップ(S502)では、前回建設機械運転時に絶縁抵抗劣化が検知されて、停止処理シーケンスで停止されたことがオペレータに報知される。具体的には、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81から図示しないモニタやブザー等に報知信号が出力される。
ステップ(S503)では、絶縁抵抗劣化の詳細測定の実施につき、再度実施するか否かの選択が要求される。具体的には、ステップ(S502)と同様にモニタ表示等でオペレータに問いかける。
ステップ(S503)でYESと判断された場合には、ステップ(S504)に進み、絶縁抵抗の劣化検知が行われる。具体的には、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81から絶縁抵抗劣化検知装置90を作動させる。
ステップ(S505)では、電動システムの絶縁抵抗が正常か否か判断される。具体的には、上述したように絶縁抵抗劣化検知装置90の演算部90Eで印加信号と測定信号を比較して対象回路の車体フレームに対する絶縁抵抗値を算出し、この絶縁抵抗値と設定値と比較して、絶縁抵抗値が設定値以上であれば、絶縁抵抗が正常なのでYESと判断され、絶縁抵抗値が設定値以下であれば、絶縁抵抗劣化検知なのでNOと判断される。
このステップ(S505)でNOと判断された場合には、ステップ(S506)に進み、キースイッチ70の状態がSTARTか否か判断され、NOと判断された場合には、元に戻りキースイッチ70の状態の判断を継続して行う。
また、先のステップ(S503)でNOと判断された場合にも、ステップ(S506)に進む。つまり、この場合、ステップ(S504)とステップ(S505)がバイパスされる。
キースイッチ70をSTARTにして、ステップ(S506)でYESと判断された場合には、絶縁抵抗劣化の詳細測定を実施しないか実施したが絶縁抵抗劣化検知した状態であるので、エンジン22の回転数あるいは出力を制限した絶縁抵抗劣化状態の運転モードで起動する。具体的には、コントローラ80の異常監視・異常処理制御ブロック81から図示しないモニタやブザー等に報知信号を出力し、油圧単独旋回制御モードに固定され、例えば、図示しないエンジン制御部からエンジン22への速度制限指令が出力される。
ステップ(S505)でYESと判断された場合には、ステップ(S207)に進み、キースイッチ70の状態がSTARTか否か判断され、NOと判断された場合には、元に戻りキースイッチ70の状態の判断を継続して行う。
キースイッチ70をSTARTにして、ステップ(S507)でYESと判断された場合には、絶縁抵抗劣化の詳細測定を行い異常なしと判断された状態であるので、標準の運転モードで起動する。具体的には、コントローラ80のエネルギマネジメント制御ブロック82からパワーコントロールユニット55への出力増信号は制限されず、油圧単独旋回制御モードから油圧電動複合旋回モードへの移行も制限されない。また、例えば、図示しないエンジン制御部からエンジン22への増速指令についても制限されない。
上述した本発明の第1の実施の形態によれば、旋回体20の駆動に旋回電動モータ25を用いた電動式建設機械において、旋回電動モータ25,アシスト発電モータ23、インバータ52,53、キャパシタ24等の蓄電装置を備えた電動システムの絶縁抵抗劣化が検知された場合でも建設機械を安全な姿勢にすると共に安全な場所に移動させるだけの最低限の動力を確保した上で、オペレータに建設機械停止の警告を行うので、作業現場における建設機械及びオペレータの安全を確保することができる。
以上において、本発明を油圧ショベルに適用した場合の実施の形態を説明したが、油圧ショベル以外の旋回体を有する建設機械全般に本発明は適用可能である。