以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
まず、図1~図3を参照して、本実施形態に係るショベルの構成について説明をする。
図1は、本実施形態に係るショベルの一例を示す側面図である。
本実施形態に係るショベルは、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回可能に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、作業装置としてのブーム4、アーム5、及びバケット6と、オペレータが搭乗するキャビン10を備える。
下部走行体1は、例えば、左右1対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1A,1B(図2参照)で油圧駆動されることにより、ショベルを走行させる。
上部旋回体3は、後述する旋回用電動機21(図2参照)により電気駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
以下、図2、図3を参照して、油圧アクチュエータを駆動する油圧駆動系、旋回用電動機21を駆動する電気駆動系(旋回駆動系)、旋回駆動系等に電力を供給する蓄電系、操作系、及び旋回駆動系を制御する旋回制御系等について詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係るショベルの駆動系を中心とする構成の一例を示すブロック図である。
尚、図中、機械的動力ラインは二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御ラインは細い実線でそれぞれ示される。
まず、本実施形態に係るショベルの油圧駆動系は、エンジン11と、電動発電機12と、減速機13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17を含む。また、本実施形態に係る油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9を含む。
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、上部旋回体3の後部に搭載される。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであり、減速機13を介してメインポンプ14、パイロットポンプ15を駆動する。また、エンジン11は、減速機13を介して電動発電機12を駆動し、電動発電機12に発電させる。
電動発電機12は、油圧駆動系におけるアシスト動力源であり、上部旋回体3の後部に搭載される。電動発電機12は、インバータ18Aを介してキャパシタ19を含む蓄電系120と接続され、インバータ18Aを介してキャパシタ19や旋回用電動機21から供給される三相交流電力で力行運転し、減速機13を介してメインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。また、電動発電機12は、エンジン11で駆動されることにより発電運転を行い、発電電力をキャパシタ19や旋回用電動機21に供給することができる。電動発電機12の力行運転と発電運転との切替制御は、コントローラ30によりインバータ18Aが駆動制御されることにより実現される。
減速機13は、上部旋回体3の後部に搭載され、エンジン11及び電動発電機12が接続される2つの入力軸と、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が直列に同軸接続される1つの出力軸を有する。減速機13は、エンジン11及び電動発電機12の動力を所定の減速比でメインポンプ14及びパイロットポンプ15に伝達することができる。また、減速機13は、エンジン11の動力を所定の減速比で、電動発電機12とメインポンプ14及びパイロットポンプ15とに分配して伝達することができる。
メインポンプ14は、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11、或いは、エンジン11及び電動発電機12により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を制御することができる。
コントロールバルブ17は、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26の操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、油圧アクチュエータである走行油圧モータ1A(右用),1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に供給可能に構成される。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の油圧制御弁(方向切換弁)を含むバルブユニットである。
続いて、本実施形態に係る電気駆動系(旋回駆動系)は、旋回用電動機21と、旋回減速機24と、電流センサ21sと、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23を含む。
旋回用電動機21は、下部走行体1と上部旋回体3とを接続する旋回機構2に設けられ、コントローラ30(旋回制御部302)による制御の下、上部旋回体3を旋回駆動する力行運転を行ったり、回生電力を発生させて上部旋回体3を旋回制動する回生運転を行ったりする。旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して蓄電系120に接続され、インバータ18Bを介してキャパシタ19や電動発電機12から供給される三相交流電力により駆動される。また、旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して、回生電力をキャパシタ19や電動発電機12に供給する。これにより、回生電力で、キャパシタ19を充電したり、電動発電機12を駆動したりすることができる。旋回用電動機21の力行運転と回生運転との切替制御は、コントローラ30(旋回制御部302)によりインバータ18Bが駆動制御されることにより実現される。旋回用電動機21は、例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)モータ含んで構成される。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生制動時に旋回用電動機21による発電電力を増大させることができる。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aと接続され、旋回用電動機21の出力(トルク)を所定の減速比で減速させることにより、トルクを増大させて、上部旋回体3を旋回駆動する。即ち、力行運転の際、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して、上部旋回体3を旋回駆動する。また、旋回減速機24は、上部旋回体3の慣性回転力を増速させて旋回用電動機21に伝達し、回生電力を発生させる。即ち、回生運転の際、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して伝達される上部旋回体3の慣性回転力により回生発電を行い、上部旋回体3を旋回制動する。
電流センサ21sは、旋回用電動機21の駆動状態を検出する検出部の一例であり、旋回用電動機21の3相(U相、V相、W相)のそれぞれの電流を検出する。電流センサ21sは、例えば、旋回用電動機21とインバータ18Bの間の電力経路に設けられる。電流センサ21sは、旋回用電動機21の電流を検出可能であれば、磁気抵抗効果を用いる磁気センサであってもよいし、シャント抵抗等を用いる直接計測式のセンサであってもよい。電流センサ21sは、検出した旋回用電動機21の3相それぞれの電流に対応する検出信号(電流検出値Iud,Ivd,Iwd)をコントローラ30に送信する。
尚、電流センサ21sは、3相のうちの2相の電流を検出し、残りの1相の電流検出値は、コントローラ30が電流センサ21sにより検出された2相の電流検出値から算出してもよい。また、電流センサ21sは、インバータ18Bに内蔵され、インバータ18Bから出力される電流を検出する態様であってもよい。
レゾルバ22は、旋回用電動機21の駆動状態を検出する検出部の他の例であり、旋回用電動機21の回転位置(回転角)等を検出する既知の検出手段である。レゾルバ22は、検出した回転角に対応する検出信号(回転角検出値θd)をコントローラ30に送信する。
尚、旋回用電動機21の回転角等が検出可能であれば、レゾルバ22の代わりに、任意のセンサ(例えば、エンコーダ等)を用いてもよい。
メカニカルブレーキ23は、上部旋回体3を旋回制動する既知の機械的な制動手段である。メカニカルブレーキ23は、回転軸21Aと一体に回転し、回転軸21Aの軸方向に移動可能な(例えば、回転軸21Aにスプライン結合された)ディスクと、回転せず、回転軸21Aの軸方向に移動可能な(例えば、固定部であるケース内面にスプライン結合された)プレートとの面接触により制動トルクを発生させる。具体的には、メカニカルブレーキ23は、パイロットポンプ15からのパイロット圧の供給が遮断されると、ばね等の弾性体の付勢力でディスクとプレートとが面接触することにより、制動トルクを発生させる状態(作動状態)になる。一方、メカニカルブレーキ23は、パイロットポンプ15からのパイロット圧が供給された場合、パイロット圧で駆動する油圧ピストンの動力で弾性体の付勢力が打ち消され、ディスクとプレートとの面接触が解除されることにより、制動トルクを発生させない状態(非作動状態)になる。これにより、メカニカルブレーキ23は、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させ、上部旋回体3の停止状態を保持することができる。また、メカニカルブレーキ23は、旋回機構2(上部旋回体3)が旋回する状態で作動することにより、旋回機構2(上部旋回体3)を減速させ、停止させることができる。
続いて、本実施形態に係るショベルの蓄電系120は、キャパシタ19と、DCバス110と、昇降圧コンバータ100とを含み、例えば、上部旋回体3の右側前部に搭載される。
キャパシタ19は、電動発電機12、旋回用電動機21に電力を供給すると共に、電動発電機12、旋回用電動機21の発電電力を充電する蓄電装置の一例である。
DCバス110は、インバータ18A、18Bと昇降圧コンバータ100との間に配設され、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス110の電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える。昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス110の電圧検出値、キャパシタ19の電圧検出値、及びキャパシタ19の電流検出値に基づき、コントローラ30により実現される。
続いて、本実施形態に係るショベルの操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26と、圧力センサ29と、ゲートロックレバー32と、ゲートロック切替弁36と、ブレーキ切替弁38等を含む。
パイロットポンプ15は、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介してメカニカルブレーキ23及び操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11、或いはエンジン11及び電動発電機12により駆動される。
操作装置26は、レバー26A,26Bと、ペダル26Cを含む。操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、各動作要素を駆動する各油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)や電動アクチュエータ(旋回用電動機21等)の操作を行うための操作入力手段である。操作装置26(レバー26A,26B、及びペダル26C)は、油圧ライン27を介して、コントロールバルブ17に接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット信号(パイロット圧)が入力される。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、各油圧アクチュエータを駆動することができる。また、操作装置26は、油圧ライン28を介して圧力センサ29に接続される。
尚、レバー26A,26Bは、それぞれ、キャビン10内の操縦席に着座したオペレータから見て、左側及び右側に配置され、中立状態(操作がなされない状態)を基準にして前後方向及び左右方向に傾倒可能に構成される。即ち、レバー26Aの前後方向の傾倒、レバー26Aの左右方向の傾倒、レバー26Bの前後方向の傾倒、及びレバー26Bの左右方向の傾倒のそれぞれに対して、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6の何れかを操作対象として任意に設定できる。以下、レバー26A,26Bの操作パターンは、JIS(ISO)パターンであること、即ち、上部旋回体3の操作は、レバー26Aを中立状態から左右方向に傾倒させることにより行われることを前提に説明を行う。
圧力センサ29は、上述の如く、油圧ライン28を介して操作装置26と接続され、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26における各動作要素の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。圧力センサ29は、コントローラ30に接続され、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じた圧力信号(圧力検出値)がコントローラ30に入力される。これにより、例えば、コントローラ30は、上部旋回体3の操作状態に応じて、旋回用電動機21を駆動制御することができる。
ゲートロックレバー32は、キャビン10内の操縦席への乗降部に設けられるゲートの開閉操作を行うための操作手段である。
ゲートロック切替弁36は、パイロットライン25の最上流に設けられ、ゲートロックレバー32の操作状態に応じて、パイロットライン25の連通状態と非連通状態を切り替える。例えば、ゲートロック切替弁36は、ゲートロックレバー32の操作状態に連動するゲートロックスイッチ(ゲートロックSW)34から出力されるゲートロック信号(ON/OFF)に応じて、電磁ソレノイドのON/OFF切替が行われる電磁切替弁である。ゲートロックSW34は、ゲートロックレバー32が下された状態(操縦席への乗降部が開放された状態)では、OFFされる。そして、ゲートロック切替弁36は、ゲートロックSW34からOFF状態を示すゲートロック信号(所定の閾値電圧以下の電圧信号)が入力されると、パイロットライン25を非連通状態にし、パイロットポンプ15からメカニカルブレーキ23及び操作装置26への作動油の供給を遮断する。一方、ゲートロックSW34は、ゲートロックレバー32が上げられた状態(操縦席への乗降部が閉鎖された状態)では、ONされる。そして、ゲートロック切替弁36は、ゲートロックSW34からON状態を示すゲートロック信号(所定の閾値電圧より高い電圧信号)が入力されると、パイロットライン25を連通状態にし、パイロットポンプ15からメカニカルブレーキ23及び操作装置26に向けて作動油(パイロット圧)が供給される。よって、ゲートロックレバー32が下げられた場合、パイロット圧のメカニカルブレーキ23への供給が遮断されるため、操縦席への乗降部が開放されると、自動的に、メカニカルブレーキ23が作動する。また、ゲートロックレバー32が上げられた状態は、オペレータが操縦席に着座し、操縦可能な状態にあると判断できる。そのため、ゲートロックレバー32が引き上げられた場合にのみパイロット圧が操作装置26に供給されることにより、操作装置26への意図しない操作入力による各油圧アクチュエータの作動を防止している。
尚、図中、ゲートロック切替弁36は、ゲートロックレバー32が上げられている(ゲートロックSW34がONされている)場合を表しており、パイロットポンプ15からメカニカルブレーキ23及び操作装置26に向けてパイロット圧が供給されている。
ブレーキ切替弁38は、ゲートロック切替弁36の下流でメカニカルブレーキ23と操作装置26とに分岐するパイロットライン25のうち、メカニカルブレーキ23に接続される分岐部分であるパイロットライン25aに設けられる。ブレーキ切替弁38は、コントローラ30から制御指令に応じて、パイロットライン25aの連通状態と非連通状態を切り替える。即ち、メカニカルブレーキ23は、コントローラ30(ブレーキ制御部301)により制御される。例えば、ブレーキ切替弁38は、コントローラ30からの制御指令に応じて、電磁ソレノイドのON/OFF切替が行われる電磁切替弁である。ブレーキ切替弁38は、メカニカルブレーキ23の作動状態を表す作動信号(例えば、所定の閾値電圧以下の電圧信号)がコントローラ30から入力されると、パイロットライン25aを非連通状態にし、パイロットポンプ15からメカニカルブレーキ23への作動油の供給を遮断する。一方、ブレーキ切替弁38は、メカニカルブレーキ23の非作動状態を表す非作動信号(例えば、所定の閾値電圧より高い電圧信号)が入力されると、パイロットライン25aを連通状態にし、パイロットポンプ15からメカニカルブレーキ23へ作動油(パイロット圧)が供給される。
尚、図中、ブレーキ切替弁38は、コントローラ30から非作動信号が入力されている場合を表しており、パイロットポンプ15からメカニカルブレーキ23にパイロット圧が供給されている。
続いて、本実施形態に係るショベルの旋回制御系は、コントローラ30を含む。
コントローラ30(制御装置の一例)は、ショベルにおける駆動制御を行う主たる制御装置である。コントローラ30は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/O等を含む演算処理装置(マイクロコンピュータ)で構成され、ROMに格納される各種駆動制御用のプログラムをCPU上で実行することにより各種駆動制御が実現される。以下、図3を参照して、旋回制御系について説明を続ける。
図3は、本実施形態に係るショベルの上部旋回体3の制御系(旋回制御系)の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、コントローラ30は、旋回制御系に関連する機能部として、ブレーキ制御部301、旋回制御部302、監視部303を含む。
ブレーキ制御部301は、操作装置26(レバー26A)による上部旋回体3の操作状態に応じて、メカニカルブレーキ23の制御を行う。ブレーキ制御部301は、圧力センサ29の検出値に基づき、上部旋回体3の操作が行われていると判断した場合、或いは、上部旋回体3が旋回停止していると判断した場合(具体的には、後述する速度検出値ωdが旋回停止を判定するための所定閾値以下である場合)、ブレーキ切替弁38に非作動信号を送信する。これにより、パイロットライン25aが連通状態になり、メカニカルブレーキ23が非作動状態(OFF状態)になる。一方、ブレーキ制御部301は、圧力センサ29の検出値に基づき、上部旋回体3の操作が行われていないと判断した場合であって、上部旋回体3が旋回停止していると判断した場合、ブレーキ切替弁38に作動信号を送信する。これにより、パイロットライン25aが非連通状態になり、メカニカルブレーキ23が作動状態(ON状態)になる。
旋回制御部302は、電流センサ21sの検出値(電流検出値Iud,Ivd,Iwd)、レゾルバ22の検出値(回転角検出値θd)、及び上部旋回体3の旋回操作に対応する圧力センサ29の検出値に基づき、旋回用電動機21を駆動制御する。本実施形態では、旋回制御部302は、後述の如く、静止座標系における旋回用電動機21の3相の交流電流を制御する代わりに、旋回用電動機21の回転子と同期して回転する回転座標系(dq座標系)における直流電流、即ち、d軸成分である磁束生成電流、及びq軸成分であるトルク生成電流を制御するベクトル制御を行う。旋回制御部302は、速度指令生成部3021、速度算出部3022、速度フィードバック制御部(速度FB制御部)3023、トルク・電流変換部3024、3相・2相変換部3025、トルクフィードバック制御部(トルクFB制御部)3026、2相・3相変換部3027を含む。
速度指令生成部3021は、操作装置26(レバー26A)における上部旋回体3の操作状態に基づき、上部旋回体3を駆動制御するための指令値である速度指令値ωcを生成する。具体的には、速度指令生成部3021は、コントローラ30の所定のインターフェースを介して受信した圧力センサ29の検出値、具体的には、レバー26Aの操作方向及び操作量に対応する圧力センサ29の検出値に基づき、速度指令値ωcを生成する。速度指令生成部3021は、生成した速度指令値ωcを速度FB制御部3023に出力する。
速度算出部3022は、コントローラ30の所定のインターフェースを介して受信したレゾルバ22の検出値(回転角検出値θd)に対して微分処理を実行することにより、旋回用電動機21の回転速度に対応する速度検出値ωdを算出する。速度算出部3022は、算出した速度検出値ωdを速度FB制御部3023及びトルク・電流変換部3024に出力する。
速度FB制御部3023は、速度指令値ωcに対応する旋回速度を実現するため、速度検出値ωdに基づき、旋回用電動機21の速度フィードバック制御を行う。具体的には、速度FB制御部3023は、既知のフィードバック制御手法、例えば、PI制御(Proportional-Integral Controller)等を用いて、速度指令値ωcと速度検出値ωdとの差分に基づき、速度指令値ωcを実現するためのトルク操作量Trを生成する。速度FB制御部3023は、生成したトルク操作量Trをトルク・電流変換部3024に出力する。
トルク・電流変換部3024は、速度検出値ωdに基づき、トルク操作量Trを、対応する電流操作量に変換する。具体的には、トルク・電流変換部3024は、トルク操作量Trを、旋回用電動機21の回転子と同期して回転する回転座標系(dq座標系)におけるd軸及びq軸の各電流成分に対応する電流操作量Idr,Iqrに変換する。トルク・電流変換部3024は、生成した電流操作量Idr,IqrをトルクFB制御部3026に出力する。
3相・2相変換部3025は、電流センサ21sの電流検出値Iud,Ivd,Iwdに対して、クラーク変換(Clarke Transformation)及び逆パーク変換(Inverse Park Transformation)を適用する。これにより、3相・2相変換部3025は、電流センサ21sの電流検出値Iud,Ivd,Iwdを、dq座標系における電流検出値のd軸成分及びq軸成分のそれぞれに対応する電流検出値Idd,Iqdに変換することができる。3相・2相変換部3025は、生成した電流検出値Idd,IqdをトルクFB制御部3026及び監視部303に出力する。
トルクFB制御部3026は、トルク指令値に相当する電流操作量Idr,Iqrを実現するため、電流検出値Idd,Iqdに基づき、旋回用電動機21のトルクフィードバック制御を行う。具体的には、トルクFB制御部3026は、速度FB制御部3023と同様、既知のフィードバック制御手法、例えば、PI制御などを用いて、電流操作量Idrと電流検出値Iddとの差分、及び電流操作量Iqrと電流検出値Iqdとの差分に基づき、電流操作量Idr、Iqrに対応する旋回用電動機21のトルクを実現するためのdq座標系における電圧操作量Vdr,Vqrを生成する。トルクFB制御部3026は、生成した電圧操作量Vdr,Vqrを2相・3相変換部3027及び監視部303に出力する。
2相・3相変換部3027は、電圧操作量Vdr,Vqrに対して、順パーク変換(forward Park Transformation)を適用し、静止座標系における2相交流の電圧操作量を生成すると共に、2相交流の電圧操作量から3相交流の電圧操作量Vur,Vvr,Vwrを生成する。2相・3相変換部3027は、生成した電圧操作量Vur,Vvr,Vwr、即ち、PWM駆動信号をインバータ18Bに出力する。これにより、旋回制御部302は、上部旋回体3の操作状態に応じて、インバータ18Bを駆動し、旋回用電動機21の駆動制御を行うことができる。
監視部303は、上部旋回体3の動作に関連する異常の発生を監視する。上部旋回体3の動作に関連する異常とは、レバー26Aへの操作入力に基づき、実際の上部旋回体3の動作を実現するまでの過程に関連する1又は複数の構成要素の異常を意味する。例えば、上部旋回体3の動作に関連する異常には、レバー26Aの操作状態を検出する圧力センサ29の異常が含まれうる。また、上部旋回体3の動作に関連する異常には、インバータ18Bの異常(過電流、過熱等)、旋回用電動機21の異常(過電流、過熱)等、上部旋回体3に旋回動作を行わせるハードウェアの異常が含まれうる。また、上部旋回体3の動作に関連する異常には、電流センサ21s、レゾルバ22等の上部旋回体3の旋回状態を検出する各種検出部の異常が含まれうる。また、上部旋回体3の動作に関連する異常には、旋回制御部302の機能を実現するソフトウェア処理の異常が含まれうる。特に、上部旋回体3の旋回状態を検出する各種検出部の異常やソフトウェアの異常が発生すると、旋回用電動機21が適切に制御されず、上部旋回体3が想定外の旋回動作をしてしまう可能性がある。具体的には、電流センサ21sにオフセット異常等が発生すると、電流検出値Iud,Iwd,Ivdが実際と乖離した値になってしまうため、誤った電流検出値Iud,Iwd,Ivdに基づく旋回制御部302による上部旋回体3の駆動制御により上部旋回体3が想定外の旋回動作をする可能性がある。また、例えば、レゾルバ22に磁極位置のずれ等の異常が発生すると、回転角検出値θdや速度検出値ωdが実際と乖離した値になってしまうため、誤った回転角検出値θd、速度検出値ωdに基づく旋回制御部302による旋回用電動機21の駆動制御により、上部旋回体3が想定外の旋回動作をする可能性がある。また、旋回制御部302のソフトウェア処理のバグ等の異常が発生すると、電流検出値Iud,Iwd,Ivd及び回転角検出値θdに基づく旋回用電動機21の駆動制御が適切に行われなくなるため、上部旋回体3が想定外の旋回動作をする可能性がある。これに対して、監視部303は、上部旋回体3の動作に関連する異常があると判定した場合、上部旋回体3の旋回動作を制限する。これにより、上部旋回体3の動作に関連する異常に起因する、上部旋回体3の想定外の旋回動作を抑制することができる。以下、図4~図7を参照して、上部旋回体3の動作に関連する異常に対する監視部303による異常処理について説明をする。
まず、図4は、監視部303による異常処理の第1例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、例えば、ショベルの立ち上げシーケンス(電動発電機12、旋回用電動機21、インバータ18A,18B、昇降圧コンバータ100、キャパシタ19等を含む電気部品の起動処理)の完了後、ショベルが運転停止されるまでの間で、所定時間毎に繰り返し実行されてよい。また、本フローチャートによる処理は、例えば、ショベルの起動時(即ち、ショベルの立ち上げシーケンスの後)に行われてもよい。
尚、ステップS104、S106の処理の実行中に、メカニカルブレーキ23の作動が解除された場合、本フローチャートによる処理は終了する。また、ショベルの起動時における異常処理は、立ち上げシーケンスの一処理として実行されてもよい。
ステップS102にて、監視部303は、メカニカルブレーキ23が作動状態であるか否かを判定する。例えば、監視部303は、圧力センサ29の検出値に基づき、上部旋回体3の旋回操作が行われていないと判断する場合であって、速度検出値ωdが旋回停止を判定するための所定閾値以下である場合、メカニカルブレーキ23が作動状態であると判定し、それ以外の場合、メカニカルブレーキ23が作動状態でないと判定する。また、監視部303は、ブレーキ制御部301からブレーキ切替弁38に出力される作動信号及び非作動信号の出力状態をモニタリングすることにより、メカニカルブレーキ23が作動状態であるか否かを判定してもよい。また、監視部303は、ゲートロックSW34から出力されるゲートロック信号の出力状態(ON/OFF)をモニタリングすることにより、メカニカルブレーキ23の作動状態であるか否かを判定してもよい。監視部303は、メカニカルブレーキ23が作動状態である場合、ステップS104に進み、メカニカルブレーキ23が作動状態でない場合、今回の処理を終了する。
ステップS104にて、監視部303は、圧力センサ29からの検出値とは無関係に、速度指令値ωcを"0"に設定し、旋回用電動機21をサーボON(通電)するように要求する要求信号を旋回制御部302(速度指令生成部3021)に出力する。これにより、旋回制御部302は、速度指令値ωcを"0"に設定し、旋回用電動機21の所謂0速制御を実行する。即ち、旋回制御部302は、監視部303からの要求に応じて、旋回用電動機21を停止状態にする駆動制御を行う。
尚、ステップS104にて、旋回制御部302は、旋回用電動機21を停止状態にする駆動制御として、0速制御の代わりに、0トルク制御を実行してもよい。この場合、監視部303は、圧力センサ29からの検出値とは無関係に、トルク操作量Trを"0"に設定し、旋回用電動機21をサーボON(通電)するように要求する要求信号を旋回制御部302に出力する。
ステップS106にて、監視部303は、要求信号の出力から所定時間Tが経過したか否か、即ち、旋回制御部302による旋回用電動機21の0速制御の開始からの経過時間(旋回用電動機21の通電時間)が所定時間Tになったか否かを判定する。旋回制御部302は、所定時間Tが経過していない場合、ステップS106の処理を繰り返し、所定時間Tが経過した場合、ステップS108に進む。
ステップS108にて、監視部303は、旋回用電動機21をサーボOFFするように要求する要求信号を旋回制御部302に送信する。これにより、旋回制御部302は、旋回用電動機21への通電を停止させる。
ステップS110にて、監視部303は、上部旋回体3に関する異常があるか否かを判定する。具体的には、監視部303は、ステップS104、S106のサーボON期間中において、レバー26Aへの操作入力に基づき、実際の上部旋回体3の動作を実現するまでの過程に関連する少なくとも1つの構成要素の各種状態をモニタリングすることで異常の有無を判定してよい。例えば、監視部303は、ステップS104、S106のサーボON期間中において、インバータ18Bや旋回用電動機21から異常状態(過電流、過熱等)を示す信号を出力された場合、上部旋回体3の動作に関連する異常があると判定してよい。監視部303は、上部旋回体3に関する異常があると判定した場合、ステップS112に進み、上部旋回体3に関する異常がないと判定した場合、今回の処理を終了する。
ステップS112にて、監視部303は、上部旋回体3の動作を制限する制限制御を行う。以下、制限には、禁止が含まれる。例えば、監視部303は、ブレーキ制御部301に対して、操作装置26(レバー26A)における上部旋回体3の操作状態に関わらず、メカニカルブレーキ23の作動継続を要求する要求信号を出力し、メカニカルブレーキ23の作動状態を継続させてよい。また、例えば、監視部303は、旋回制御部302に対して制限要求を出力し、旋回制御部302による旋回用電動機21の駆動制御を制限してよい。この場合、監視部303は、操作装置26(レバー26A)における上部旋回体3の操作状態に依らず、旋回制御部302による旋回用電動機21の駆動制御を禁止してよい。また、監視部303は、操作装置26(レバー26A)における上部旋回体3の操作状態、即ち、圧力センサ29から旋回制御部302に入力される検出値を無効にすることにより、旋回制御部302による駆動制御を禁止してもよい。また、監視部303は、操作装置26(レバー26A)における上部旋回体3の操作状態に依らず、速度指令生成部3021により生成される速度指令値ωcに上限を設定することにより、旋回制御部302による駆動制御を制限してもよい。これにより、上部旋回体3の停止状態が維持される、或いは、上部旋回体3の動作が制限されるため、上部旋回体3の想定外の旋回動作を抑制することができる。また、監視部303は、併せて、音声やモニタ表示等によりキャビン10内のオペレータに対する警告を行う。これにより、オペレータに対して、上部旋回体3の動作に関連する異常の発生を認識させることができるため、サービスマンを呼んで、修理をしてもらう等の適切な行動を促すことができる。
尚、監視部303は、上部旋回体3の動作に関連する異常がある場合(ステップS110のY)、併せて、油圧駆動される油圧作業要素(下部走行体1、ブーム4、アーム5、バケット6等)の動作を制限してもよい。これにより、上部旋回体3の動作のみが制限されることによるオペレータの違和感を緩和することができる。この場合、操作装置26とコントロールバルブ17の間の油圧ライン27に電磁式の減圧弁(不図示)を設ける。これにより、監視部303は、当該減圧弁を制御し、コントロールバルブ17に作用するパイロット圧を減圧して、操作装置26(レバー26A)における上部旋回体3の操作状態に依らず、油圧作業要素の動作を制限することができる。
このように、本例では、コントローラ30は、例えば、ショベルの起動時に、メカニカルブレーキ23が作動している状態で、旋回用電動機21に所定時間Tだけ通電(サーボON)し、上部旋回体3の操作が行われない限り、その後もメカニカルブレーキ23が作動している状態を維持させる。従って、メカニカルブレーキ23が作動している状態であるため、上部旋回体3を動作させることなく、旋回用電動機21に所定時間Tだけ通電させることができる。よって、上部旋回体3を動作させることなく、上部旋回体3の動作に関連する異常の有無を判定することができる。また、所定時間Tの通電期間の終了後もメカニカルブレーキ23が作動している状態を維持するため、上部旋回体3の動作に関連する異常がある場合であっても、上部旋回体3の想定外の旋回動作を抑制することができる。そのため、ショベルの安全性を更に高めることができる。
また、本例では、コントローラ30は、ショベルの起動時に、メカニカルブレーキ23が作動している状態で、旋回用電動機21に所定時間Tだけ通電(サーボON)し、上部旋回体3の動作に関連する異常がある場合に、上部旋回体3の動作を制限する。例えば、コントローラ30(監視部303)は、旋回制御部302による旋回用電動機21の駆動制御を制限することにより、上部旋回体3の動作を制限する。また、例えば、コントローラ30は、レバー26Aにより上部旋回体3の操作が行われても、メカニカルブレーキ23を作動継続させることにより、上部旋回体3の停止状態を維持する(上部旋回体3の動作を禁止する)。また、例えば、コントローラ30は、レバー26Aにより上部旋回体3の動作が行われても、旋回制御部302による旋回用電動機21の駆動制御を禁止することにより、上部旋回体3の動作を制限する。これにより、上部旋回体3の動作に関連する異常がある場合であっても、上部旋回体3の動作が制限されるため、上部旋回体3の想定外の旋回動作を抑制することができる。そのため、ショベルの安全性を更に高めることができる。
続いて、図5は、監視部303による異常処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、第1例(図4)と同様、例えば、ショベルの立ち上げシーケンスの完了後、ショベルが運転停止されるまでの間で、所定時間毎に繰り返し実行されてよい。また、本フローチャートによる処理は、第1例(図4)と同様、例えば、ショベルの起動時(即ち、ショベルの立ち上げシーケンスの後)に行われてもよい。また、ショベルの起動時における異常処理は、第1例(図4)と同様、立ち上げシーケンスの一処理として実行されてもよい。
本例(図5)に係る異常処理は、ステップS102とステップS104の間に、ステップS103が追加され、ステップS110におけるNの場合に、ステップS111の処理が追加される点で、第1例(図4)に係る異常処理と異なる。以下、第1例(図4)と異なる部分を中心に説明する。
ステップS102にて、メカニカルブレーキ23が作動状態であると判定された場合、ステップS103にて、監視部303は、ブレーキ制御部301に対して、レバー26Aの操作状態に依らず、メカニカルブレーキ23の作動状態を維持する要求(作動ロック要求)を出力する。これにより、ブレーキ制御部301は、レバー26Aの操作状態に依らず、ブレーキ切替弁38に作動信号を送信し、メカニカルブレーキ23の作動状態を維持する。
ステップS110にて、監視部303は、第1例(図4)の場合と同様、上部旋回体3に関する異常があるか否かを判定する。監視部303は、上部旋回体3に関する異常がないと判定した場合、ステップS111に進み、上部旋回体3に関する異常があると判定した場合、ステップS112に進む。
ステップS111にて、監視部303は、ブレーキ制御部301に対して、メカニカルブレーキ23の作動ロックを解除する要求(作動ロック解除要求)を出力する。これにより、ブレーキ制御部301は、通常のメカニカルブレーキ23の作動条件に応じて、ブレーキ切替弁38に作動信号或いは非作動信号を送信し、メカニカルブレーキ23の作動制御を行う状態に復帰する。
一方、ステップS112にて、監視部303は、第1例(図4)の場合と同様、監視部303は、上部旋回体3の動作を制限する制限制御を行う。
このように、本例では、コントローラ30は、例えば、ショベルの起動時に、メカニカルブレーキ23が作動している状態で、旋回用電動機21に所定時間Tだけ通電(サーボON)し、上部旋回体3の操作状態に依らず、メカニカルブレーキ23を作動状態に維持することにより、その後もメカニカルブレーキ23が作動している状態を維持させる。これにより、所定時間Tの通電期間の終了後も積極的にメカニカルブレーキ23が作動している状態を維持するため、上部旋回体3の動作に関連する異常がある場合に、上部旋回体3の操作が行われても、上部旋回体3の想定外の旋回動作を抑制することができる。そのため、ショベルの安全性を更に高めることができる。
続いて、図6は、監視部303による異常処理の第3例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、第1例(図4)、第2例(図5)と同様、例えば、ショベルの立ち上げシーケンスの完了後、ショベルが運転停止されるまでの間で、所定時間毎に繰り返し実行されてよい。また、本フローチャートによる処理は、第1例(図4)、第2例(図5)と同様、例えば、ショベルの起動時(即ち、ショベルの立ち上げシーケンスの後)に行われてもよい。
本例(図6)に係る異常処理は、ステップS102の処理の前にステップS101が追加され、ステップS112の処理の後に、ステップS114の処理が追加される点で、第2例(図4)に係る異常処理と異なる。以下、第2例(図5)と異なる部分を中心に説明を行う。
尚、異常フラグFは、例えば、コントローラ30に内蔵されるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性の記憶装置に格納され、その初期値は、"0"に設定される。また、異常フラグFは、例えば、ショベルに設けられる所定の接続端子を通じて、コントローラ30に接続可能なダイアグツールからのコマンドに応じて、初期化(F="0")が可能な態様であってよい。
ステップS101にて、監視部303は、異常フラグFが"1"であるか否かを判定する。監視部303は、異常フラグFが"1"でない場合、ステップS102に進んで、第2例(図5)の場合と同様、ステップS102~S112の処理を実行し、異常フラグFが"1"である場合、ステップS112に進む。
ステップS112にて、監視部303は、第1例(図4)、第2例(図5)の場合と同様、上部旋回体3の動作を制限する制限制御を行う。
ステップS114にて、監視部303は、不揮発性の記憶装置に格納される異常フラグFを"1"に設定(既に、"1"である場合は、維持)し、今回の処理を終了する。
このように、本例では、監視部303は、上部旋回体3の動作に関連する異常がある場合、異常フラグFを異常であることを示す"1"に更新する。即ち、監視部303は、上部旋回体3の動作に関連する異常がある場合、当該異常を示すフラグ(F=1)を不揮発性の記憶装置に記憶させる。これにより、ステップS101の処理のように、異常を示すフラグが不揮発性の記憶装置に記憶されている場合(即ち、異常フラグFが1である場合)、直ぐに、上部旋回体3の動作に関連する異常があると判定することができる。そのため、1度でも上部旋回体3の動作に関連する異常があると判定されると、例えば、異常箇所の修理が完了して異常フラグFが初期化されない限り、ショベルが再起動されても、常に、上部旋回体3の動作が制限される。よって、ショベルの安全性を更に高めることができる。
尚、本例に係る異常処理は、第2例(図5)の異常処理にステップS101、S114が追加される態様であったが、第1例(図4)の異常処理にステップS101、S114が追加されてもよい。この場合も同様の作用・効果を奏する。
続いて、図7は、監視部303による異常処理の第4例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、第1例(図4)~第3例(図6)と同様、例えば、ショベルの立ち上げシーケンスの完了後、ショベルが運転停止されるまでの間で、所定時間毎に繰り返し実行されてよい。また、本フローチャートによる処理は、第1例(図4)~第3例(図6)と同様、例えば、ショベルの起動時(即ち、ショベルの立ち上げシーケンスの後)に行われてもよい。また、ショベルの起動時における異常処理は、第1例(図4)~第3例(図6)と同様、立ち上げシーケンスの一処理として実行されてもよい。
本例(図7)に係る異常処理は、ステップS110の処理、即ち、上部旋回体3に関する異常があるか否かを判定する処理の具体例として、上部旋回体3の旋回状態を検出する各種検出部の異常やソフトウェアの異常の有無を判定する処理が含まれる点で第1例(図4)と異なる。以下、第1例(図4)と異なる部分を中心に説明を行う。
本例に係るステップS110の処理は、ステップS1101~S1104の処理を含む。
ステップS1101にて、監視部303は、監視部303は、サーボON期間中(ステップS104~S106)における電流検出値Idd、Iqdの少なくとも一方が、旋回用電動機21の停止状態に対応する条件を満足しない状態にあるか否かを判定する。具体的には、監視部303は、電流検出値Iddが所定閾値Iddthより大きいこと、及び電流検出値Iqdが所定閾値Iqdthより大きいことの少なくとも一方を満足するか否かを判定する。監視部303は、当該判定条件を満足しない場合、ステップS1102に進み、当該判定条件を満足する場合、ステップS1104に進む。
尚、所定閾値Iddth,Iqdthは、例えば、電流センサ21s、レゾルバ22の検出誤差等を考慮して、旋回用電動機21に電流が流れていないと判定可能な最小値として設定されてよい。
ステップS1102にて、監視部303は、サーボON期間中(ステップS104~S106)における電圧操作量Vdr、Vqrの少なくとも一方が、旋回用電動機21の停止状態に対応する条件を満足しない状態にあるか否かを判定する。具体的には、監視部303は、電圧操作量Vdrが所定閾値Vdrthより大きいこと、及び電圧操作量Vqrが所定閾値Vqrthより大きいことの少なくとも一方を満足するか否かを判定する。監視部303は、当該判定条件を満足しない場合、ステップS1103に進み、当該判定条件を満足する場合、ステップS1104に進む。
尚、所定閾値Vdrth,Vqrthは、例えば、電流センサ21s、レゾルバ22の検出誤差等を考慮して、旋回用電動機21の印加電圧が0であると判定可能な最小値として設定されてよい。
ステップS1103にて、監視部303は、上部旋回体3の動作に関連する異常、具体的には、上部旋回体3の旋回状態を検出する各種検出部の異常やソフトウェアの異常がない、即ち、上部旋回体3の動作が正常であると判定する。旋回制御部302による0速制御が行われる状況において、電流検出値Idd,Iqd、及び電圧操作量Vdr,Vqrが旋回用電動機21の停止状態に対応する条件を満足しているからである。
一方、ステップS1104にて、監視部303は、上部旋回体3の動作に関連する異常、具体的には、上部旋回体3の旋回状態を検出する各種検出部の異常やソフトウェアの異常があると判定する。旋回制御部302による0速制御が行われる状況において、電流検出値Idd,Iqd、及び電圧操作量Vdr,Vqrの少なくとも1つが、旋回用電動機21の停止状態に対応する条件を満足していないからである。
尚、本例では、上部旋回体3の動作に関連する異常の有無の判定と、上部旋回体3の動作の制限の双方が行われるが、何れか一方が行われる態様であってもよい。即ち、図7の処理において、ステップS1104とステップS112の何れか一方の処理は、省略されてもよい。また、本例では、電流検出値Idd,Iqdや電圧操作量Vdr,Vqrが、上部旋回体3の停止状態に対応する条件を満足するか否かに基づき、上部旋回体3の動作に関連する異常の有無を判定するが、他の検出値(速度検出値ωd)や他の操作量(トルク操作量Tr、電流操作量Idr,Iqr等)が、上部旋回体3の停止状態に対応する条件を満足するか否かに基づき、上部旋回体3の動作に関連する異常の有無を判定してもよい。また、本例では、ベクトル制御を前提として、直流で表現される電流検出値Idd,Iqd及び電圧操作量Vdr,Vqrが、上部旋回体3の停止状態に対応する条件を満足するか否かに基づき、上部旋回体3の動作に関連する異常の有無を判定するが、ベクトル制御の採用の有無に関わらず、三相交流の検出値や操作量を用いてもよい。この場合、監視部303は、例えば、電流検出値Iud,Ivd,Iwdの少なくとも1つ、又は電圧操作量Vur,Vvr,Vwrの少なくとも1つが、時間経過に応じて変化していると判断できる場合(例えば、時間経過に対して所定閾値を超えて変化している場合)、上部旋回体3の動作に関連する異常があると判定してよい。
このように、本例では、コントローラ30は、メカニカルブレーキ23が作動している状態で、旋回用電動機21を停止状態にする駆動制御(例えば、0速制御)を行う。そして、コントローラ30は、当該駆動制御(0速制御)の実行中において、電流センサ21s、レゾルバ22の検出値、又は旋回用電動機21を駆動制御するために検出値に基づき生成される操作量が、旋回用電動機21の停止状態に対応する条件を満足しない場合、上部旋回体3の動作に関連する異常があると判定する、又は、旋回用電動機21の駆動制御を制限する。これにより、メカニカルブレーキ23が作動しているため、上部旋回体3を動作させることなく、上部旋回体3の動作に関連する異常があるか否かを判定したり、当該異常に対応して上部旋回体3の動作を制限したりすることができる。
また、本実施形態では、ベクトル制御を前提として、直流で表現される電流検出値Idd,Iqd及び電圧操作量Vdr,Vqrを用いて、上部旋回体3の動作に関連する異常の有無を判定する。これにより、上部旋回体3の停止状態に対応する条件として、直流で表現される電流検出値Idd,Iqd及び電圧操作量Vdr,Vqrのそれぞれと、所定閾値Vdrth,Vqrth及び所定閾値Iddth,Iqdthとの大小を対比するだけでよい。そのため、上部旋回体3の動作に関連する異常、具体的には、上部旋回体3の旋回状態を検出する各種検出部の異常やソフトウェアの異常の有無を比較的容易に判定することができる。
尚、本例に係る異常処理は、第1例(図4)の異常処理におけるステップS110をステップS1101~1104の処理に置換したが、第2例(図5)或いは第3例(図6)の異常処理におけるステップS110を、ステップS1101~1104の処理に置換してもよい。この場合も同様の作用・効果を奏する。
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。