JP2012017280A - トルエンジカルバメートの製造方法、トルエンジイソシアネートの製造方法、および、トルエンジカルバメート - Google Patents

トルエンジカルバメートの製造方法、トルエンジイソシアネートの製造方法、および、トルエンジカルバメート Download PDF

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Abstract

【課題】副生成物の生成を低減することができるトルエンジカルバメートの製造方法、その製造方法により得られるトルエンジカルバメート、および、そのトルエンジカルバメートを用いてトルエンジイソシアネートを製造するための、トルエンジイソシアネートの製造方法を提供すること。
【解決手段】トルエンジカルバメートの製造方法が、トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させて、トルエンジカルバメートを製造する、カルバメート製造工程と、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を、トルエンジカルバメート100モルに対して、10モル以下に低減する、ベンゾイレン尿素低減工程とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、トルエンジカルバメートの製造方法、トルエンジイソシアネートの製造方法、および、トルエンジカルバメートに関する。
従来より、アルキルカルバメートなどのカルバメート(ウレタン化合物)は、医薬、農薬などの原料として、また、各種ファインケミカルズの原料として、さらには、アルコール類の分析試剤などとして、広範な用途を有する工業原料として、有用な有機化合物である。
また、このようなアルキルカルバメートは、近年、ホスゲンを用いないイソシアネートの製造原料とすることが種々検討されている。
すなわち、イソシアネートは、イソシアネート基を含む有機化合物であって、ポリウレタンの原料として広く用いられており、工業的には、アミンとホスゲンとの反応により製造されている(ホスゲン法)。
しかし、ホスゲンは毒性および腐食性が強く、取り扱いが不便であるため、近年、ホスゲン法に代わる経済的なイソシアネートの製造方法として、アミンと、尿素またはカルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させて、カルバメートを製造し、その後、得られたカルバメートを、熱分解することによってイソシアネートを製造することが、提案されている。
このようなカルバメートの製造方法としては、例えば、ジアミノトルエンと、尿素と、n−ヘキサノールとをルイス酸触媒の存在下において反応させることにより、2,4−ビス−(n−ヘキソキシカルボニル−アミノ)−トルエンを得ることが提案されている(例えば、特許文献1、例11参照。)。
特開昭57−114561号公報
しかしながら、上記の方法で得られたカルバメート(2,4−ビス−(n−ヘキソキシカルボニル−アミノ)−トルエン)を熱分解し、イソシアネートを製造すると、その熱分解において、上記のカルバメートやイソシアネート、あるいは、それらの中間体などが、例えば、多量化、ビウレット化およびアロファネート化などの好ましくない重合反応を惹起する場合がある。とりわけ、上記の2,4−ビス−(n−ヘキソキシカルボニル−アミノ)−トルエンのように、カルバメートあるいはその中間体がアミノ基を有する場合などには、そのアミノ基とイソシアネートとが、好ましくない反応を惹起することが、知られている。
そして、このような反応が惹起されると、副生物として、固形分である残渣が大量に生成し、また、その残渣が、イソシアネートの製造装置などを閉塞させ、イソシアネートの製造効率を低下させるという不具合がある。
本発明の目的は、副生成物の生成を低減することができるトルエンジカルバメートの製造方法、その製造方法により得られるトルエンジカルバメート、および、そのトルエンジカルバメートを用いてトルエンジイソシアネートを製造するための、トルエンジイソシアネートの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法は、トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させて、トルエンジカルバメートを製造する、カルバメート製造工程と、下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を、トルエンジカルバメート100モルに対して、10モル以下に低減する、ベンゾイレン尿素低減工程とを備えていることを特徴としている。
Figure 2012017280
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、前記ベンゾイレン尿素低減工程は、下記式(2)で示されるビウレット系化合物を、トルエンジアミン100モルに対して、40モル以下に低減する、ビウレット系化合物低減工程を備えていることが好適である。
−CO−NH−CO−X (2)
(式中、X1およびX2は、互いに同一または相異なって、アミノ基、アルコキシ基またはN−(アミノトルイル)アミノ基を示す。)
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、前記ビウレット系化合物低減工程は、上記式(2)において、X1およびX2がアミノ基である第1ビウレット系化合物を低減する、第1ビウレット系化合物低減工程を備えていることが好適である。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、尿素を前記カルバメート製造工程に供給する尿素供給工程を、さらに備え、前記第1ビウレット系化合物低減工程では、前記尿素供給工程が、尿素を加熱により溶融して流動状態として、前記カルバメート製造工程に供給する流動供給工程を備えているときには、尿素の溶融後から供給終了までの時間を、2時間以内とするか、前記尿素供給工程において、尿素をスラリーとして、前記カルバメート製造工程に供給するか、または、尿素を固体状態で、前記カルバメート製造工程に供給することが好適である。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、前記ビウレット系化合物低減工程は、上記式(2)において、X1がアミノ基またはアルコキシ基であり、X2がアルコキシ基である第2ビウレット系化合物を低減する、第2ビウレット系化合物低減工程を備えていることが好適である。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、尿素とアルコールとを反応させて、N−無置換カルバミン酸エステルを製造するN−無置換カルバミン酸エステル製造工程を、さらに備え、前記第2ビウレット系化合物低減工程では、前記N−無置換カルバミン酸エステル製造工程において、尿素とアルコールとを、金属含有化合物の存在下、反応させることが好適である。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、前記ビウレット系化合物低減工程は、上記式(2)において、X1がN−(アミノトルイル)アミノ基であり、X2が、アミノ基、アルコキシ基またはN−(アミノトルイル)アミノ基のいずれかである第3ビウレット系化合物を低減する、第3ビウレット系化合物低減工程を備えていることが好適である。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、前記第3ビウレット系化合物低減工程は、前記カルバメート製造工程において、反応系から、当該反応により副生するアンモニアを低減するか、反応温度を、160℃以上にするか、または、アルコールを、トルエンジアミン1モルに対して2モル以上の割合で供給することが好適である。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、前記カルバメート製造工程は、反応槽と、前記反応槽から排出される低沸点成分を還流させるための還流ラインと、前記還流ラインに設けられ、還流成分と排出成分とを分離する分離器とを備える反応装置において、実施され、前記第3ビウレット系化合物低減工程が、前記カルバメート製造工程において、反応系から、当該反応により副生するアンモニアを低減する工程であるときに、前記反応槽を窒素パージするか、前記分離器として凝縮器を用いて、前記凝縮器の温度を、40℃以上に設定して、アンモニアの凝縮を抑制するか、または、前記分離器として蒸留器を用いて、前記還流成分に含有されるアンモニア量に対して、前記排出成分に含有されるアンモニア量が多くなるように、蒸留することが好適である。
また、本発明のトルエンジイソシアネートの製造方法は、上記のトルエンジカルバメートの製造方法によって、トルエンジカルバメートを製造する工程と、製造されたトルエンジカルバメートを、熱分解してトルエンジイソシアネートを製造する工程とを備えることを特徴としている。
また、本発明のトルエンジカルバメートは、トルエンジカルバメートであって、不純物として、トルエンジカルバメート100モルに対して0.01〜10モルの、下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を含有することを特徴としている。
Figure 2012017280
通常、トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させる場合には、原料成分がトルエンジカルバメートを生成する一方、同原料成分が、上記式(1)で示される2置換ベンゾイレン尿素を生成するため、これにより、トルエンジカルバメートの製造効率が低下するという不具合がある。
しかし、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法は、ベンゾイレン尿素低減工程を備えているため、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が、トルエンジカルバメート100モルに対して、10モル以下に低減される。
そのため、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法によれば、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができる。
また、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法によれば、アミノ基を有するカルバメート中間体が低減されるので、本発明のトルエンジイソシアネートの製造方法では、そのようなアミノ基を有するカルバメートの中間体とイソシアネートとの反応を低減して、副生物として得られる残渣(固形分)を低減することができる。
その結果、本発明のトルエンジイソシアネートの製造方法によれば、装置の閉塞などを抑制し、優れた収率でイソシアネートを製造することができる。
第1ビウレット系化合物低減工程および第2ビウレット系化合物低減工程が採用される場合における、カルバメート製造工程の一実施形態を示す模式図である。 第3ビウレット系化合物低減工程が採用される場合における、カルバメート製造工程の一実施形態を示す模式図である。
本発明のトルエンジカルバメートの製造方法は、カルバメート製造工程と、ベンゾイレン尿素製造工程とを備えている。
カルバメート製造工程は、トルエンジカルバメートを製造する工程であって、具体的には、この工程では、トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させて、トルエンジカルバメートを製造する。
トルエンジアミン(別名:トリレンジアミン、ジアミノトルエン)としては、特に制限されず、各種置換位のトルエンジアミンを用いることができるが、工業的には、好ましくは、2,4−トルエンジアミン(2,4−トリレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トルエンジアミン(2,6−トリレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン)などが用いられる。
これらトルエンジアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
尿素としては、特に制限されず、一般的に市販されているものを用いることができ、また、例えば、尿素を別途製造して用いることもできる。
本発明のトルエンジカルバメートの製造方法では、例えば、アンモニアと二酸化炭素とから尿素を製造する尿素製造工程を備えて、その尿素製造工程で製造された尿素をカルバメート製造工程の原料成分として供給する(図1参照)。
なお、図1では、尿素製造工程で製造された尿素は、常温固体であるため、カルバメート製造工程へ工業的に供給するために、尿素供給工程では、例えば、製造された尿素を、例えば、135℃以上、好ましくは、180℃以下で加熱し、尿素を溶融して、流動状態として、尿素製造工程(尿素製造槽)からカルバメート製造工程(反応槽)へ、それらに接続される配管を介して輸送(供給)するようにしている(流動供給工程)。
尿素製造工程において、尿素を製造するには、例えば、まず、下記式(3)に示すように、アンモニアと二酸化炭素(炭酸ガス)とを反応させ、カルバミン酸アンモニウム(アンモニウムカルバメート)を生成する。
2NH+CO→NHCOONH (3)
アンモニアと二酸化炭素との反応は、公知の方法でよく、その反応条件(配合処方、温度、圧力など)は、目的および用途に応じて適宜設定される。
次いで、この方法では、下記式(4)に示すように、得られたカルバミン酸アンモニウムを脱水反応させ、尿素と水とに分解する。
NHCOONH→NHCONH+HO (4)
なお、カルバミン酸アンモニウムの脱水反応は、公知の方法でよく、その反応条件(温度、圧力など)は、目的および用途に応じて適宜設定される。
N−無置換カルバミン酸エステルは、カルバモイル基における窒素原子が官能基により置換されていない(すなわち、窒素原子が、2つの水素原子と、1つの炭素原子とに結合する)カルバミン酸エステルであって、例えば、下記一般式(5)で示される。
RO−CO−NH (5)
(式中、Rは、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
上記式(5)中、Rは、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
上記式(5)中、Rにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、iso−オクチル、2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、例えば、シクロヘキシル、シクロドデシルなどの炭素数5〜10の脂環式飽和炭化水素基などが挙げられる。
Rにおいて、アルキル基として、好ましくは、炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、より好ましくは、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数2〜6の直鎖状の飽和炭化水素基が挙げられる。
上記式(5)において、Rがアルキル基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸n−プロピル、カルバミン酸iso−プロピル、カルバミン酸n−ブチル、カルバミン酸iso−ブチル、カルバミン酸sec−ブチル、カルバミン酸tert−ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸ヘプチル、カルバミン酸オクチル、カルバミン酸iso−オクチル、カルバミン酸2−エチルヘキシルなどの飽和炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステル、例えば、カルバミン酸シクロヘキシル、カルバミン酸シクロドデシルなどの脂環式飽和炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステルなどが挙げられる。
上記式(5)中、Rにおいて、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどの炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。また、その置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどの炭素数1〜4のアルコキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどの炭素数1〜4のアルキルチオ基など)およびアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)などが挙げられる。また、置換基がアリール基に複数置換する場合には、各置換基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
また、上記式(5)において、Rが置換基を有していてもよいアリール基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸トリル、カルバミン酸キシリル、カルバミン酸ビフェニル、カルバミン酸ナフチル、カルバミン酸アントリル、カルバミン酸フェナントリルなどの芳香族炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステルなどが挙げられる。
これらN−無置換カルバミン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
N−無置換カルバミン酸エステルとして、好ましくは、上記式(5)において、Rがアルキル基であるN−無置換カルバミン酸エステルが挙げられる。
このようなN−無置換カルバミン酸エステルは、例えば、原料成分である尿素とアルコール(後述する一般式(7)で示されるROH)とを、カルバメート製造工程の反応系(反応槽)中で、下記式(6)に示すように反応させることにより、製造することができる(N−無置換カルバミン酸エステル製造工程:図1破線参照)。
NHCONH+ROH→NHCOOR+NH (6)
あるいは、原料成分である尿素とアルコールとを、予め上記式(6)に示すように反応させて、N−無置換カルバミン酸エステルを製造し(N−無置換カルバミン酸エステル製造工程:図1実線参照)、製造されたN−無置換カルバミン酸エステルを、カルバメート製造工程へ供給することもできる。
アルコールは、例えば、1〜3級の1価のアルコールであって、例えば、下記一般式(7)で示される。
R−OH (7)
(式中、Rは、上記式(5)のRと同意義を示す。)
上記式(7)中、Rは、上記式(5)のRと同意義、すなわち、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
上記式(7)において、Rが上記したアルキル基であるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール(1−ブタノール)、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、iso−オクタノール、2−エチルヘキサノールなどの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素系アルコール、例えば、シクロヘキサノール、シクロドデカノールなどの脂環式飽和炭化水素系アルコールなどが挙げられる。
上記式(7)において、Rが上記した置換基を有していてもよいアリール基であるアルコールとしては、例えば、フェノール、ヒドロキシトルエン、ヒドロキシキシレン、ビフェニルアルコール、ナフタレノール、アントラセノール、フェナントレノールなどが挙げられる。
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
アルコールとして、好ましくは、上記式(7)において、Rがアルキル基であるアルコールが挙げられ、より好ましくは、Rが炭素数1〜8のアルキル基であるアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、Rが炭素数2〜6のアルキル基であるアルコールが挙げられる。
そして、この方法では、上記したトルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを配合し、好ましくは、液相で反応させる。
トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの配合割合は、特に制限はなく、比較的広範囲において適宜選択することができる。
通常は、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルの配合量、および、アルコールの配合量が、トルエンジアミンのアミノ基に対して等モル以上あればよく、そのため、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールそのものを、この反応における反応溶媒として用いることもできる。
なお、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールを反応溶媒として兼用する場合には、必要に応じて過剰量の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルやアルコールが用いられるが、過剰量が多いと、反応後の分離工程での消費エネルギーが増大するので、工業生産上、不適となる。
そのため、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルの配合量は、カルバメートの収率を向上させる観点から、トルエンジアミンのアミノ基1つに対して、1〜20倍モル、好ましくは、1〜10倍モル、さらに好ましくは、1〜5倍モル程度であり、アルコールの配合量は、トルエンジアミンのアミノ基1つに対して、1〜100倍モル、好ましくは、1〜20倍モル、さらに好ましくは、1〜10倍モル程度である。
また、この反応において、反応溶媒は必ずしも必要ではないが、例えば、反応原料が固体の場合や反応生成物が析出する場合には、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ニトリル類、脂肪族ハロゲン化炭化水素類、アミド類、ニトロ化合物類や、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの反応溶媒を配合することにより、操作性を向上させることができる。
また、反応溶媒の配合量は、目的生成物のカルバメートが溶解する程度の量であれば特に制限されるものではないが、工業的には、反応液から反応溶媒を回収する必要があるため、その回収に消費されるエネルギーをできる限り低減し、かつ、配合量が多いと、反応基質濃度が低下して反応速度が遅くなるため、できるだけ少ない方が好ましい。より具体的には、トルエンジアミン1質量部に対して、通常、0〜500質量部、好ましくは、0〜100質量部の範囲で用いられる。
また、この反応においては、反応温度は、例えば、100〜350℃、好ましくは、150〜300℃の範囲において適宜選択される。反応温度がこれより低いと、反応速度が低下する場合があり、一方、これより高いと、副反応が増大して目的生成物であるカルバメートの収率が低下する場合がある。
また、反応圧力は、通常、大気圧であるが、反応液中の成分の沸点が反応温度よりも低い場合には加圧してもよく、さらには、必要により減圧してもよい。
また、反応時間は、例えば、0.1〜20時間、好ましくは、0.5〜10時間である。反応時間がこれより短いと、目的生成物であるカルバメートの収率が低下する場合がある。一方、これより長いと、工業生産上、不適となる。
また、この方法においては、触媒を用いることもできる。
触媒としては、特に制限されないが、例えば、リチウムメタノラート、リチウムエタノラート、リチウムプロパノラート、リチウムブタノラート、ナトリウムメタノラート、カリウム−tert−ブタノラート、マグネシウムメタノラート、カルシウムメタノラート、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸鉛、リン酸鉛、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム−イソブチラート、三塩化アルミニウム、塩化ビスマス(III)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、ビス−(トリフェニル−ホスフィンオキシド)−塩化銅(II)、モリブデン酸銅、酢酸銀、酢酸金、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセトニルアセタート、オクタン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、ヘキシル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛、酸化セリウム(IV)、酢酸ウラニル、チタンテトライソプロパノラート、チタンテトラブタノラート、四塩化チタン、チタンテトラフェノラート、ナフテン酸チタン、塩化バナジウム(III)、バナジウムアセチルアセトナート、塩化クロム(III)、酸化モリブデン(VI)、モリブデンアセチルアセトナート、酸化タングステン(VI)、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、リン酸鉄、シュウ酸鉄、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酢酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト、ナフテン酸コバルト、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。
さらに、触媒としては、例えば、Zn(OSOCF(別表記:Zn(OTf)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSOCH(p−トルエンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(BF、Zn(PF、Hf(OTf)(トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム)、Sn(OTf)、Al(OTf)、Cu(OTf)なども挙げられる。
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、触媒の配合量は、トルエンジアミン1モルに対して、例えば、0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00005〜0.05モルである。触媒の配合量がこれより多くても、それ以上の顕著な反応促進効果が見られない反面、配合量の増大によりコストが上昇する場合がある。一方、配合量がこれより少ないと、反応促進効果が得られない場合がある。
なお、触媒の添加方法は、一括添加、連続添加および複数回の断続分割添加のいずれの添加方法でも、特に制限されることはない。
そして、この反応は、上記した条件で、例えば、反応槽内に、トルエンジアミン、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、アルコール、および、必要により触媒、反応溶媒を仕込み、攪拌あるいは混合すればよい。
なお、この反応において、反応型式としては、回分式、連続式いずれの型式も採用することができる。
そして、このような反応は、例えば、下記式(8)に示すように進行し、これにより、主生成物として、例えば、下記一般式(9)で示されるトルエンジカルバメートが生成する。
Figure 2012017280
Figure 2012017280
(式中、Rは、上記式(5)のRと同意義を示す。)
トルエンジカルバメートとしては、原料成分であるトルエンジアミンに応じて、例えば、2,4−トルエンジカルバメート、2,6−トルエンジカルバメートまたはそれらの混合物などが挙げられる。
また、この反応においては、排出ガスとして、アルコール(過剰の原料アルコール)、アンモニアおよび二酸化炭素を含むガスが副生される。
また、この反応では、さらに、上記したように、尿素とアルコールとの反応により過剰のN−無置換カルバミン酸エステルや、カーボネート(例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキルアリールカーボネートなど)が、低沸点成分として副生する場合がある。
さらに、この反応では、副生成物として、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素(1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン)およびその誘導体が生成する。
このような2置換ベンゾイレン尿素は、具体的には、下記式(1)で示される。
Figure 2012017280
また、2置換ベンゾイレン尿素の誘導体としては、例えば、下記式(10)で示される、2置換ベンゾイレン尿素のアミノ基がカルバミン酸エステル体で置換されたカルバメート体などが挙げられる。
Figure 2012017280
(式中、Rは、上記式(5)のRと同意義を示す。)
なお、以下の各式においては、2置換ベンゾイレン尿素の誘導体を省略し、2置換ベンゾイレン尿素のみを示す。
つまり、トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させる場合には、上記のトルエンジカルバメートが得られるとともに、過剰(未反応)のアルコール、過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、カーボネートなどが、低沸点成分として得られ、さらに、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が得られる。
このような場合には、低沸点成分は、必要により、公知の方法により還流され、上記反応において有効利用することができるが、一方、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が生成すると、トルエンジカルバメートの製造効率が低下するという不具合がある。そのため、この方法では、上記2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を、トルエンジカルバメート100モルに対して、10モル以下、好ましくは、5モル以下に低減する(ベンゾイレン尿素低減工程)。
ベンゾイレン尿素低減工程において、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を低減する方法としては、例えば、生成した2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を、直接除去することもできるが、好ましくは、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成する反応における各種中間体(中間生成物)を除去(低減)する。これにより、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を低減することができる。
トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成する反応経路としては、後述するように種々検討されるが、その中間体(2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成する反応における中間生成物)としては、例えば、下記式(2)で示されるビウレット系化合物(ビウレットまたはその誘導体)などが挙げられる。
−CO−NH−CO−X (2)
(式中、X1およびX2は、互いに同一または相異なって、アミノ基、アルコキシ基またはN−(アミノトルイル)アミノ基を示す。)
そこで、この方法では、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を低減するため、上記式(2)で示されるビウレット系化合物を、トルエンジアミン100モルに対して、例えば、40モル以下、好ましくは、20モル以下に低減する(ビウレット系化合物低減工程)。
ビウレット系化合物低減工程において低減されるビウレット系化合物として、より具体的には、例えば、上記式(2)において、X1およびX2がアミノ基である第1ビウレット系化合物(下記式(11)参照)、例えば、上記式(2)において、X1がアミノ基またはアルコキシ基であり、X2がアルコキシ基である第2ビウレット系化合物(下記式(12A)および下記式(12B)参照)、例えば、上記式(2)において、X1が下記式(13)で示されるN−(アミノトルイル)アミノ基であり、X2が、アミノ基、アルコキシ基、または、下記式(13)で示されるN−(アミノトルイル)アミノ基のいずれかである第3ビウレット系化合物が挙げられる。
また、このような第3ビウレット系化合物として、より具体的には、例えば、X1がN−(アミノトルイル)アミノ基であり、X2がアミノ基である第3ビウレット系化合物(下記式(14)参照)、X1がN−(アミノトルイル)アミノ基であり、X2がアルコキシ基である第3ビウレット系化合物(下記式(15)参照)、X1およびX2がN−(アミノトルイル)アミノ基である第3ビウレット系化合物(下記式(16)参照)が挙げられる。
Figure 2012017280
Figure 2012017280
Figure 2012017280
Figure 2012017280
Figure 2012017280
Figure 2012017280
Figure 2012017280
そのため、ビウレット系化合物低減工程は、例えば、上記第1ビウレット系化合物を低減する第1ビウレット系化合物低減工程、例えば、上記第2ビウレット系化合物を低減する第2ビウレット系化合物低減工程、例えば、上記第3ビウレット系化合物を低減する第3ビウレット系化合物低減工程などを備えている。
図1は、第1ビウレット系化合物低減工程および第2ビウレット系化合物低減工程が採用される場合における、カルバメート製造工程の一実施形態を示す模式図である。
以下、第1ビウレット系化合物低減工程および第2ビウレット系化合物低減工程について、図1を参照して説明する。
[第1ビウレット系化合物低減工程]
上記の原料成分から、上記式(11)で示される第1ビウレット系化合物を中間体として生成し、さらに、その第1ビウレット系化合物から2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成する反応経路として、より具体的には、例えば、下記式(17)で示す反応経路などが挙げられる。
Figure 2012017280
このような反応では、例えば、尿素が2量化して、第1ビウレット系化合物(ビウレット)が生成し、その第1ビウレット系化合物に対してトルエンジアミンが付加することにより、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が生成される。
このような反応を抑制するには、尿素の2量化を抑制し、第1ビウレット系化合物の生成を低減すればよい。
そのため、本発明のトルエンジカルバメートの製造方法が、図1に示すように、上記したように、尿素をカルバメート製造工程に供給する尿素供給工程を備えている場合には、第1ビウレット系化合物低減工程では、
(1)尿素供給工程が、尿素を加熱により溶融して流動状態として、カルバメート製造工程に供給する場合(つまり、流動供給工程を備えているとき)には、尿素の溶融後から供給終了までの時間(流動供給工程における所要時間)を、例えば、2時間以内、好ましくは、1時間以内とする。
このような第1ビウレット系化合物低減工程によれば、尿素を溶融状態とする加熱時間を低減して、カルバメート製造工程に供給することができる。そのため、尿素の2量化を抑制して、第1ビウレット系化合物を、低減することができる。
また、尿素供給工程において、尿素を加熱により溶融して流動状態とせずに(つまり、流動供給工程を備えることなく)、例えば、
(2)スラリーとして、カルバメート製造工程に供給することができ、さらには、例えば、
(3)尿素をそのまま固体状態で、カルバメート製造工程に供給することができる。
このような第1ビウレット系化合物低減工程(上記(2)および(3))によれば、尿素を溶融することなく、カルバメート製造工程に供給することができるため、加熱に起因する尿素の2量化を抑制でき、第1ビウレット系化合物を、低減することができる。
そして、これら第1ビウレット系化合物低減工程により、第1ビウレット系化合物を低減すれば、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体の生成を低減できるので、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができ、さらに、副生物として得られる残渣(固形分)を低減することができる。
なお、上記により低減された第1ビウレット系化合物の含有割合は、トルエンジアミン100モルに対して、例えば、40モル以下、好ましくは、30モル以下、より好ましくは、20モル以下、通常、0.01モル以上である。
第1ビウレット系化合物の含有割合が上記上限以下であれば、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体の生成を低減でき、その結果、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができる。
[第2ビウレット系化合物低減工程]
上記の原料成分から、上記式(12A)で示される第2ビウレット系化合物を中間体として生成し、さらにその第2ビウレット系化合物から2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成する反応経路としては、例えば、下記式(18A)で示す反応経路などが挙げられる。
Figure 2012017280
このような反応では、尿素とアルコールとが反応してN−無置換カルバミン酸エステルが生成される。そして、得られたN−無置換カルバミン酸エステルに対して尿素が付加することにより、第2ビウレット系化合物が生成し、その第2ビウレット系化合物にトルエンジアミンが付加することにより、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が生成される。
また、上記の原料成分から、上記式(12B)で示される第2ビウレット系化合物を中間体として生成し、さらにその第2ビウレット系化合物から2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成する反応経路としては、例えば、下記式(18B)で示す反応経路などが挙げられる。
Figure 2012017280
このような反応を抑制するには、N−無置換カルバミン酸エステルに対して尿素が付加することを抑制し、第2ビウレット系化合物の生成を低減すればよい。
そのため、この第2ビウレット系化合物低減工程では、上記のN−無置換カルバミン酸エステル製造工程において、尿素とアルコールとを、金属含有化合物の存在下、反応させる。
金属含有化合物としては、例えば、上記した触媒が挙げられ、好ましくは、Zn(OSOCF(別表記:Zn(OTf)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSOCH(p−トルエンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(BF、Zn(PF、Hf(OTf)(トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム)、Sn(OTf)、Al(OTf)、Cu(OTf)が挙げられる。
これら金属含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、金属含有化合物の配合割合は、尿素1モルに対して、例えば、0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00005〜0.05モルである。
このような金属含有化合物を用いれば、尿素とアルコールとの反応の選択性を高めることができる。そのため、尿素同士の反応やN−無置換カルバミン酸エステルに対する尿素の付加を抑制して、第2ビウレット系化合物の生成を低減することができる。
また、このようなN−無置換カルバミン酸エステル製造工程において、第2ビウレット系化合物の生成を低減するためには、尿素とアルコールとの反応温度を、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下、通常、140℃以上に設定する。
そして、第2ビウレット系化合物低減工程により、第2ビウレット系化合物を低減すれば、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体の生成を低減できるので、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができ、さらに、副生物として得られる残渣(固形分)を低減することができる。
なお、上記により低減された第2ビウレット系化合物の含有割合は、トルエンジアミン100モルに対して、例えば、40モル以下、好ましくは、30モル以下、より好ましくは、20モル以下、通常、0.01モル以上である。
第2ビウレット系化合物の含有割合が上記上限以下であれば、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体の生成を低減でき、その結果、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができる。
[第3ビウレット系化合物低減工程]
上記の原料成分から、上記式(14)または上記式(15)で示される第3ビウレット系化合物を中間体として生成し、さらにその第3ビウレット系化合物から2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成する反応経路としては、例えば、下記式(19)で示す反応経路などが挙げられる。
Figure 2012017280
つまり、この反応では、トルエンジアミンに、尿素またはN−無置換カルバミン酸エステルが付加した後、さらに、尿素またはN−無置換カルバミン酸エステルが付加し、第3ビウレット系化合物を生成した後、その第3ビウレット系化合物から尿素またはアルコールが脱離することにより、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が生成される。
また、上記の原料成分から、上記の第3ビウレット系化合物を中間体として生成し、さらにその第3ビウレット系化合物から2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を生成する反応経路としては、上記式(19)で示される反応経路に限定されず、さらに、例えば、上記式(17)で示す反応経路(上記式(14)で示す第3ビウレット系化合物を中間体として生成する。)、および、上記式(18A)および上記式(18B)で示す反応経路(上記式(15)で示す第3ビウレット系化合物を中間体として生成する。)も挙げられる。
さらに、反応経路を記述しないが、トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応では、例えば、トルエンジアミンに尿素が付加して得られる生成物が2量化することなどにより、上記式(16)で示されるビウレット系化合物が生成する。
そのため、第3ビウレット系化合物低減工程では、これら第3ビウレット系化合物を低減するために、例えば、
(1)カルバメート製造工程において、反応系から、当該反応により副生するアンモニアを低減する。
図2は、第3ビウレット系化合物低減工程が採用される場合における、カルバメート製造工程の一実施形態を示す模式図である。
図2に示すように、カルバメート製造工程が、反応槽と、その反応槽から排出される低沸点成分(上記した低沸点成分であって、具体的には、過剰(未反応)のアルコール、過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、カーボネートなど)を還流させるための還流ラインと、還流ラインに設けられ、還流成分と排出成分とを分離する分離器とを備える反応装置において実施される場合に、アンモニアを低減する方法としては、例えば、
(a)反応槽を窒素パージする。
反応槽を窒素パージするには、反応槽に窒素導入ラインを接続して、低沸点成分が反応槽から還流ラインへパージされるように、窒素導入ラインから反応槽へ窒素ガスを導入する。
また、その他の方法としては、例えば、
(b)分離器として凝縮器を用いて、その凝縮器の温度を、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上に設定して、アンモニアの凝縮を抑制する。
これにより、還流成分中のアンモニア濃度が低減される。
さらに、その他の方法としては、例えば、
(c)分離器として蒸留器を用いて、還流成分に含有されるアンモニア量に対して、排出成分に含有されるアンモニア量が多くなるように、蒸留する。
これにより、還流成分中のアンモニア濃度が低減される。
これらアンモニアを低減する方法は、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
このようにしてアンモニアを低減すれば、原料成分が、トルエンジカルバメートの製造(上記式(8))に優先的に供され、上記の第3ビウレット系化合物を生成する反応(上記第1ビウレット系化合物および第2ビウレット系化合物を生成する反応を含む)に供されることを抑制できるため、第3ビウレット系化合物を低減することができる。
また、第3ビウレット系化合物低減工程としては、アンモニアを低減するほか、例えば、
(2)トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応において、その反応温度を、160℃以上、好ましくは、180℃、より好ましくは、190℃以上にすることもできる。
反応温度を上記下限以上にすれば、第3ビウレット系化合物の生成を抑制することができる。
さらに、第3ビウレット系化合物低減工程としては、例えば、
(3)トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応において、アルコールを、トルエンジアミン1モルに対して2モル以上、好ましくは、2.5モル以上の割合で供給することができる。
上記割合でアルコールを供給すれば、トルエンジアミンに、尿素またはN−無置換カルバミン酸エステルが付加した後、さらに、尿素またはN−無置換カルバミン酸エステルが付加することを抑制して、アルコールを付加させることができる。
そして、トルエンジアミンに、尿素またはN−無置換カルバミン酸エステルを付加させた後、アルコールを付加させれば、第3ビウレット系化合物の生成を抑制することができ、これにより、上記式(7)に示す経路による反応を促進して、トルエンジカルバメートの生成を促進することができる。
なお、上記により低減された第3ビウレット系化合物の含有割合(総量)は、トルエンジアミン100モルに対して、例えば、40モル以下、好ましくは、30モル以下、より好ましくは、20モル以下、通常、0.01モル以上である。
第3ビウレット系化合物の含有割合が上記上限以下であれば、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体の生成を低減でき、その結果、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができる。
そして、このようにして製造されるトルエンジカルバメートは、不純物として、トルエンジカルバメート100モルに対して0.01〜10モル、好ましくは、0.01〜5モルの、下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を含有している。
Figure 2012017280
上記式(1)において、アミノ基(HN−)は、好ましくは、5位または7位に置換され、メチル基(HC−)は、好ましくは、6位または8位に置換される。
つまり、上記の2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体として、より具体的には、例えば、7−アミノ−6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン、5−アミノ−6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン、5−アミノ−8−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオン、7−アミノ−8−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−2,4−ジオンなどが挙げられる。
以上述べたように、通常、トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させる場合には、原料成分がトルエンジカルバメートを生成する一方、同原料成分が、上記式(1)で示される2置換ベンゾイレン尿素を生成するため、これにより、トルエンジカルバメートの製造効率が低下するという不具合がある。
しかし、このようなトルエンジカルバメートの製造方法は、ベンゾイレン尿素低減工程を備えているため、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体が、トルエンジカルバメート100モルに対して、10モル以下に低減される。
そのため、このようなトルエンジカルバメートの製造方法によれば、トルエンジカルバメートを、優れた効率で製造することができる。
また、このようなトルエンジカルバメートは、工業的には、例えば、イソシアネートの製造などに用いられるが、上記したトルエンジカルバメートの製造方法によれば、アミノ基を有するカルバメート中間体が低減されるので、そのようなアミノ基を有するカルバメートの中間体とイソシアネートとの反応を低減して、副生物として得られる残渣(固形分)を低減することができる。
そして、本発明は、上記したトルエンジカルバメートの製造方法によって得られたトルエンジカルバメートを熱分解して、トルエンジイソシアネートを製造するトルエンジイソシアネートの製造方法を含んでいる。
本発明のトルエンジイソシアネートの製造方法では、上記のトルエンジカルバメートの製造方法によって、トルエンジカルバメートを製造し(トルエンジカルバメート製造工程)、その後、製造されたトルエンジカルバメートを熱分解して、トルエンジイソシアネートを製造する(トルエンジイソシアネート製造工程)。
より具体的には、このようなトルエンジイソシアネートの製造方法では、上記したトルエンジカルバメートの製造方法によって得られたトルエンジカルバメートを熱分解し、上記したトルエンジアミンに対応する下記式(20)で示されるトルエンジイソシアネート、および、
Figure 2012017280
副生物である下記一般式(21)で示されるアルコールを生成させる。
R−OH (21)
(式中、Rは、上記式(5)のRと同意義を示す。)
なお、トルエンジイソシアネートとしては、原料成分であるトルエンジカルバメート(およびその原料成分であるトルエンジアミン)に応じて、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートまたはそれらの混合物などが挙げられる。
この熱分解は、特に限定されず、例えば、液相法、気相法などの公知の分解法を用いることができる。
気相法では、熱分解により生成するトルエンジイソシアネートおよびアルコールは、気体状の生成混合物から、分別凝縮によって分離することができる。また、液相法では、熱分解により生成するトルエンジイソシアネートおよびアルコールは、例えば、蒸留や、担持物質としての溶剤および/または不活性ガスを用いて、分離することができる。
熱分解として、好ましくは、作業性の観点から、液相法が挙げられる。
このような方法において、トルエンジカルバメートは、好ましくは、不活性溶媒の存在下において、熱分解される。
不活性溶媒は、少なくとも、トルエンジカルバメートを溶解し、トルエンジカルバメートおよびトルエンジイソシアネートに対して不活性であり、かつ、熱分解時に反応しなければ(すなわち、安定であれば)、特に制限されないが、熱分解反応を効率よく実施するには、生成するトルエンジイソシアネートよりも高沸点であることが好ましい。
このような不活性溶媒としては、例えば、芳香族系炭化水素類などが挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン(沸点:80℃)、トルエン(沸点:111℃)、o−キシレン(沸点:144℃)、m−キシレン(沸点:139℃)、p−キシレン(沸点:138℃)、エチルベンゼン(沸点:136℃)、イソプロピルベンゼン(沸点:152℃)、ブチルベンゼン(沸点:185℃)、シクロヘキシルベンゼン(沸点:237〜340℃)、テトラリン(沸点:208℃)、クロロベンゼン(沸点:132℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点:180℃)、1−メチルナフタレン(沸点:245℃)、2−メチルナフタレン(沸点:241℃)、1−クロロナフタレン(沸点:263℃)、2−クロロナフタレン(沸点:264〜266℃)、トリフェニルメタン(沸点:358〜359℃(754mmHg))、1−フェニルナフタレン(沸点:324〜325℃)、2−フェニルナフタレン(沸点:357〜358℃)、ビフェニル(沸点:255℃)などが挙げられる。
また、このような溶媒は、市販品としても入手可能であり、例えば、バーレルプロセス油B−01(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルプロセス油B−03(芳香族炭化水素類、沸点:280℃)、バーレルプロセス油B−04AB(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルプロセス油B−05(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルプロセス油B−27(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルプロセス油B−28AN(芳香族炭化水素類、沸点:430℃)、バーレルプロセス油B−30(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルサーム200(芳香族炭化水素類、沸点:382℃)、バーレルサーム300(芳香族炭化水素類、沸点:344℃)、バーレルサーム400(芳香族炭化水素類、沸点:390℃)、バーレルサーム1H(芳香族炭化水素類、沸点:215℃)、バーレルサーム2H(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルサーム350(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルサーム470(芳香族炭化水素類、沸点:310℃)、バーレルサームPA(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルサーム330(芳香族炭化水素類、沸点:257℃)、バーレルサーム430(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、(以上、松村石油社製)、NeoSK−OIL1400(芳香族炭化水素類、沸点:391℃)、NeoSK−OIL1300(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、NeoSK−OIL330(芳香族炭化水素類、沸点:331℃)、NeoSK−OIL170(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、NeoSK−OIL240(芳香族炭化水素類、沸点:244℃)、KSK−OIL260(芳香族炭化水素類、沸点:266℃)、KSK−OIL280(芳香族炭化水素類、沸点:303℃)、(以上、綜研テクニックス社製)などが挙げられる。
また、不活性溶媒としては、さらに、エステル類(例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなど)、熱媒体として常用される脂肪族系炭化水素類なども挙げられる。
このような不活性溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
不活性溶媒の配合量は、トルエンジカルバメート1質量部に対して0.001〜100質量部、好ましくは、0.01〜80質量部、より好ましくは、0.1〜50質量部の範囲である。
また、熱分解においては、例えば、不活性溶媒をトルエンジカルバメートに配合し、トルエンジカルバメートを熱分解した後、その不活性溶媒を分離および回収し、再度、熱分解においてトルエンジカルバメートに配合することができる。
また、液相法におけるトルエンジカルバメートの熱分解反応は、可逆反応であるため、好ましくは、熱分解反応の逆反応(すなわち、上記式(20)で示されるトルエンジイソシアネートと、上記式(21)で示されるアルコールとのウレタン化反応)を抑制するため、トルエンジカルバメートを熱分解するとともに、反応混合物(分解液)から上記式(20)で示されるトルエンジイソシアネート、および/または、上記式(21)で示されるアルコールを公知の方法により抜き出し、それらを分離する。
熱分解反応の反応条件として、好ましくは、トルエンジカルバメートを良好に熱分解できるとともに、熱分解において生成したトルエンジイソシアネート(上記式(20))およびアルコール(上記式(21))が蒸発し、これによりトルエンジカルバメートとトルエンジイソシアネートとが平衡状態とならず、さらには、トルエンジイソシアネートの重合などの副反応が抑制される反応条件が挙げられる。
このような反応条件として、より具体的には、熱分解温度は、通常、350℃以下であり、好ましくは、80〜350℃、より好ましくは、100〜300℃である。80℃よりも低いと、実用的な反応速度が得られない場合があり、また、350℃を超えると、トルエンジイソシアネートの重合など、好ましくない副反応を生じる場合がある。また、熱分解反応時の圧力は、上記の熱分解反応温度に対して、生成するアルコールが気化し得る圧力であることが好ましく、設備面および用役面から実用的には、0.133〜90kPaであることが好ましい。
さらに、この方法では、必要により、触媒を添加することもできる。
触媒は、それらの種類により異なるが、上記反応時、反応後の蒸留分離の前後、トルエンジカルバメートの分離の前後の、いずれかに添加すればよい。
熱分解に用いられる触媒としては、トルエンジイソシアネートと水酸基とのウレタン化反応に用いられる、Sn、Sb、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Pb、Mo、Mnなどから選ばれる1種以上の金属単体またはその酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、リン酸塩、有機金属化合物などの金属化合物が用いられる。これらのうち、この熱分解においては、Fe、Sn、Co、Sb、Mnが副生成物を生じにくくする効果を発現するため、好ましく用いられる。
Snの金属触媒としては、例えば、酸化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、リン酸スズ、二塩化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサンなどが挙げられる。
Fe、Co、Sb、Mnの金属触媒としては、例えば、それらの酢酸塩、安息香酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
なお、触媒の配合量は、金属単体またはその化合物として、反応液に対して0.0001〜5質量%の範囲、好ましくは、0.001〜1質量%の範囲である。
また、この熱分解反応は、トルエンジカルバメート、触媒および不活性溶媒を一括で仕込む回分反応、また、触媒を含む不活性溶媒中に、減圧下でトルエンジカルバメートを仕込んでいく連続反応のいずれでも実施することができる。
熱分解では、トルエンジイソシアネートおよびアルコールが生成するとともに、副反応によって、例えば、アロファネート、アミン類、尿素、炭酸塩、カルバミン酸塩、二酸化炭素などが生成する場合があるため、必要により、得られたトルエンジイソシアネートは、公知の方法により精製される。
また、熱分解で得られるアルコール(上記式(21))は、分離および回収された後、好ましくは、トルエンジカルバメート化反応の原料成分として用いられる。
そして、このようなトルエンジイソシアネートの製造方法によれば、上記したトルエンジカルバメートの製造方法が採用されるため、2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体の生成が低減されることにより、装置の閉塞などを抑制し、優れた収率でイソシアネートを製造することができる。
なお、以上、トルエンジカルバメートの製造方法、および、トルエンジイソシアネートの製造方法について説明したが、このようなトルエンジカルバメートの製造方法、および、トルエンジイソシアネートの製造方法では、必要により、適宜の位置において、脱水工程などの前処理工程、中間工程、蒸留工程、濾過工程、精製工程および回収工程などの後処理工程などを備えることができる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、それら実施例および比較例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、各成分の定量は、下記のHPLC測定条件に従った。
1)装置および測定条件
装置:ShimadzuHPLC(SCL−10A、DGU−12A、LC−10AD、RID−10A、SPD−10A)
カラム:WAKOSIL5C18(4.6mmID×250mm、5.0μm)
移動相:アセトニトリル/70wtppmリン酸水溶液 = 85/15 v/v
流速:0.8 ml/min
カラム温度:40℃
注入量:10μL
検出器: UV/vis(検出波長254nm)、RI
2)分析内容
サンプルをアセトニトリルで約100倍に希釈し、上記条件に設定したHPLCに供して分析した。定量は、2,4−トルエンジブチルカルバメート(2,4−TDCBu)、2,6−トルエンジブチルカルバメート(2,6−TDCBu)、2,4−トルエンジオクチルカルバメート(2,4−TDCOc)、カルバミン酸オクチル(COE)の基準溶液から、式(22)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体、および、式(23)示される2置換ベンゾイレン尿素については、2,4−TDCBuを基準とし、式(24)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体については、2,4−TDCOcを基準とし、式(25)で示される第2ビウレット系化合物(biuretOE)、および、式(26)で示される第2ビウレット系化合物(biuretDOE)については、COEを基準とし、換算係数1として定量値とした。
Figure 2012017280
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実施例1(2,4−TDA/ビウレット含有尿素/オクタノール)
還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量200mLのガラス製フラスコに、2,4−ジアミノトルエン(以下、2,4−TDAとする。)12.0g(0.10mol)、1−オクタノール73.0g(0.56mol)を仕込み、さらに触媒としてp−トルエンスルホン酸亜鉛0.202g(0.50mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分150mL流通、500rpmで攪拌しながら、210℃まで昇温させた。210℃に到達した後、尿素を140℃で40分間溶融させた液体尿素17.8g(0.29mol)を装入し、反応温度210℃で4時間反応させ、反応液88.1gを得た。
なお、装入した液体尿素の一部を採取し、液体クロマトグラフ(RI検出器)にて定量したところ、ビウレットが2.5mol%存在していることが確認された。これは液体尿素が140℃で40分熱履歴を受けたため、一部反応してビウレット(第1ビウレット系化合物)が生成したことによる。つまり尿素17.0g、ビウレット0.75gを反応器に挿入したことが確認された。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−トルエンジオクチルカルバメート(2,4−ビス(オクチルオキシカルボニルアミノ)トルエン、以下、TDCOcとする。)が、2,4−TDAに対して95.3mol%の収率で生成していることが確認された。また、上記式(24)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して2.9mol%、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して4.6mol%の収率で生成していることが確認された。これは2,4−TDCOc100molに対し、7.9molの2置換ベンゾイレン尿素に相当する。
実施例2(2,4−TDA/尿素/オクタノール)
還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量200mLのガラス製フラスコに、2,4−TDA12.0g(0.10mol)および1−オクタノール73.0g(0.56mol)仕込み、さらに触媒としてp−トルエンスルホン酸亜鉛0.191g(0.47mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分150mL流通、500rpmで攪拌しながら、210℃まで昇温させた。210℃に到達した後、尿素17.7g(0.29mol)を粉体状態で仕込み、反応温度210℃で4時間反応させ、反応液88.3gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−TDCOcが、2,4−TDAに対して96.4mol%の収率で生成していることが確認された。また、上記式(24)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して2.3mol%、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して3.7mol%の収率で生成していることが確認された。これは2,4TDCOc100molに対し、6.2molの2置換ベンゾイレン尿素に相当する。
実施例3(2,4−TDA/カルバミン酸ブチル/ブタノール)
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−TDA80.7g(0.661mol)、カルバミン酸ブチル221g(1.89mol)および1−ブタノール140g(1.89mol)の混合物を仕込み、さらに触媒としてp−トルエンスルホン酸亜鉛0.649g(1.59mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度200℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら10時間反応させ、410gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−トルエンジブチルカルバメート(2,4−ビス(ブチルオキシカルボニルアミノ)トルエン、以下、TDCBuとする。)が、2,4−TDAに対して96.7mol%の収率で生成していることが確認された。また、上記式(22)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して0.59mol%、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して0.99mol%の収率で生成していることが確認された。これは2,4TDCBu100molに対し、1.6molの2置換ベンゾイレン尿素に相当する。
実施例4(2,4−TDA/2,6−ジアミノトルエン/尿素/ブタノール)
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−TDA/2,6−ジアミノトルエン(以下、2,6−TDAとする。)異性体混合比80/20(以下、TDA−80とする。)80.6g(0.660mol)、尿素113g(1.89mol)および1−ブタノール279g(3.79mol)の混合物を常温で仕込み、さらに触媒としてp−トルエンスルホン酸亜鉛0.644g(1.58mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度200℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら6時間反応させ、410gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−TDCBuが、2,4−TDAに対して94.0mol%、2,6−TDCBuが、2,6−TDAに対して88.8mol%の収率で生成していることが確認された。また、上記式(22)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体がTDA−80に対して2.6mol%、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素がTDA−80に対して5.0mol%の収率で生成していることが確認された。これは2,4−TDCBuと2,6−TDCBuとの合計100molに対し、8.2molの2置換ベンゾイレン尿素に相当する。
実施例5(2,4−TDA/尿素/ブタノール)
1)2,4−トルエンジブチルカルバメートの製造
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−TDA80.6g(0.660mol)、尿素113g(1.89mol)および1−ブタノール279g(3.79mol)の混合物を常温で仕込み、さらに触媒としてp−トルエンスルホン酸亜鉛0.643g(1.58mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度200℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら4時間反応させ、410gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−TDCBuが、2,4−TDAに対して91.9mol%の収率で生成していることが確認された。また、上記式(22)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して1.4mol%、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して4.7mol%の収率で生成していることが確認された。これは2,4−TDCBu100molに対し、6.6molの2置換ベンゾイレン尿素に相当する。
2)トルエンジイソシアネートの製造
2−1)上記で得られた反応液から未反応物および副生成物を取り除く工程を実施した。
攪拌装置と冷却管を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記反応液を仕込み、230rpmで攪拌させながら真空ポンプで容器内を2kPaまで減圧した。冷却管に25℃の循環水を流した状態で、容器内を100℃まで昇温させ、主成分がブタノールである低沸分を留去させた。またH NMRの測定により、低沸分には芳香環を有する化合物が存在しないことが確認された。
その後、更に循環水温度を80℃に設定し、容器内を180℃まで昇温させ、中沸点の化合物を留去させ、褐色のカルバメート濃縮液210gを得た。一方、留去物についてはH NMRの測定により、主成分がカルバミン酸ブチルで、芳香環を有する化合物が存在しないことが確認された。
カルバメート濃縮液の一部を採取して、液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDCBuが90質量%存在することが確認された。
2−2)濃縮液の熱分解によるイソシアネートの製造
温度計、攪拌装置、上部に還流管の付いた精留塔を備えた内容量1000mLのガラス製のセパラブルフラスコに、上記で得た濃縮液200g(2,4−TDCBuとして0.56mol)、溶媒としてバーレルプロセス油B−05(松村石油株式会社製)200gを仕込み、300rpmで攪拌させながら、真空ポンプで容器内を10kPaまで減圧した。
環流管に90℃の循環水を流した状態で、加熱を開始すると220℃付近で塔頂温度が上昇し、還流管内に2,4−トリレンジイソシアナート(以下、2,4−TDIとする。)が凝縮しはじめたため還流比15(=還流30秒/留出2秒)に設定し、2,4−TDIを留出させた。留出開始から6時間後に塔頂温度が上昇してきたため、加熱と減圧を停止し、留出液111gを得た。
留出液の一部を採取し液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDIが81質量%(0.52mol)で、2,4−TDI以外の化合物のほとんどが溶媒のバーレルプロセス油B−05であり、上記式(22)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体、および、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素は検出されなかった。この結果、熱分解において、回収された2,4−TDIの2,4−TDCBuに対する収率は93mol%(2,4−TDAから通算すると86mol%)であった。
一方、反応液については120℃まで冷却後、5A濾紙にて熱時ろ過を行い濾液と濾残にわけ、濾残をアセトンで洗浄、乾燥を行い4gの黄褐色の濾残を回収した。反応液の濃縮液に対するタール生成率は2質量%であった。
比較例1
1)カルバミン酸オクチルの合成
還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1000mLのガラス製フラスコに、1−オクタノール522.4g(4.01mol)および尿素60.07g(1.00mol)仕込み、窒素ガスを毎分30mL流通、500rpmで攪拌しながら、165℃で反応させた。90分後に尿素52.1g(0.87mol)、120分後に尿素49.34g(0.82mol)を仕込み、反応温度165℃で反応させた。
6時間後反応液を終了させ、エバポレーションにて未反応のオクタノールを留去後、減圧単蒸留にて、常温固体のサンプルを400g回収した。
固体の一部を採取して、液体クロマトグラフ(RI検出器)にて定量したところ、カルバミン酸オクチルが81mol%、上記式(25)で示される第2ビウレット系化合物(biuretOE)が13mol%、上記式(26)で示される第2ビウレット系化合物(biuretDOE)が6mol%存在することが確認された。
2)2,4−TDA/ビウレット化合物含有カルバミン酸オクチル/オクタノールの反応
還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量200mLのガラス製フラスコに、2,4−TDA9.52g(0.08mol)および1−オクタノール50.63g(0.39mol)仕込み、窒素ガスを毎分150mL流通、500rpmで攪拌しながら、200℃まで昇温させた。200℃に到達した後、上記で得られた19mol%ビウレット化合物含有を含有するカルバミン酸オクチル67.27g(0.39mol)を装入した。このとき装入された第2ビウレット系化合物は、2,4−TDA100molに対し95molに相当する。反応温度200℃で4時間反応させ、反応液119.2gを得た。
反応液の一部を採取して、液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDCOcが、2,4−TDAに対して77.6mol%、上記式(24)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して2.4mol%、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して17.8mol%の収率で生成していることが確認された。これは2,4−TDCOc100molに対し、26molの2置換ベンゾイレン尿素に相当する。以上のようにビウレット系化合物が高い割合で存在する場合、非常に高い割合で2置換ベンゾイレン尿素が生成することが確認された。
比較例2
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−TDA80.6g(0.660mol)、尿素113g(1.89mol)および1−ブタノール279g(3.79mol)の混合物を常温で仕込み、さらに触媒としてp−トルエンスルホン酸亜鉛0.643g(1.58mmol)を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、まず、反応温度100℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら6時間反応させ、更に、130℃で3時間反応させた後、反応を完結させるため200℃に昇温して更に6時間反応させ、反応液410gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−TDCBuが、2,4−TDAに対して86.9mol%の収率で生成していることが確認された。また、上記式(22)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して2.5mol%、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して7.3mol%の収率で生成していることが確認された。これは2,4−TDCBu100molに対し、11.3molの2置換ベンゾイレン尿素に相当する。
比較例3
1)2,4−トルエンジブチルカルバメートの製造
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−TDA80.6g(0.660mol)、尿素113g(1.89mol 和光純薬工業株式会社製 純度>99.0%)および1−ブタノール279g(3.79mol)の混合物を仕込み、さらに触媒としてp−トルエンスルホン酸亜鉛0.644g(1.58mmol)を仕込み、窒素ガスを流通せず、500rpmで攪拌させながら、反応温度200℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら4時間反応させ、410gの反応液を得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−TDCBuが、2,4−TDAに対して65.0mol%の収率で生成していることが確認された。また、上記式(22)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体が2,4−TDAに対して9.3mol%、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素が2,4−TDAに対して18.3mol%の収率で生成していることが確認された。これは2,4−TDCBu100molに対し、42.5molの2置換ベンゾイレン尿素に相当する。窒素ガスを流通しなかったためアンモニアが系外に出て行かず、系中でビウレット体が多数生成したためと考察される。
2)トルエンジイソシアネートの製造
2−1)上記で得られた反応液から未反応物および副生成物を取り除く工程を実施した。
攪拌装置と冷却管を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記反応液を仕込み、230rpmで攪拌させながら真空ポンプで容器内を2kPaまで減圧した。冷却管に25℃の循環水を流した状態で、容器内を100℃まで昇温させ、主成分がブタノールである低沸分を留去させた。またH NMRの測定により、低沸分には芳香環を有する化合物が存在しないことを確認した。その後、更に循環水温度を80℃に設定し、容器内を180℃まで昇温させ、中沸点の化合物を留去させ、褐色のカルバメート濃縮液206gを得た。一方、留去物についてはH NMRの測定により、主成分がカルバミン酸ブチルで、芳香環を有する化合物が存在しないことを確認した。カルバメート濃縮液の一部を採取して、液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDCBuが60質量%存在することを確認した。
2−2)濃縮液の熱分解によるイソシアネートの製造
温度計、攪拌装置、上部に還流管の付いた精留塔を備えた内容量1000mLのガラス製のセパラブルフラスコに、軽沸分の減圧留去で得た反応液の濃縮液200g(2,4−TDCとして0.37mol)、溶媒としてバーレルプロセス油B−05(松村石油株式会社製)200g仕込み、300rpmで攪拌させながら、真空ポンプで容器内を10kPaまで減圧した。環流管に90℃の循環水を流した状態で、加熱を開始すると220℃付近で塔頂温度が上昇し、還流管内に2,4−トリレンジイソシアナート(以下2,4−TDI)が凝縮しはじめたため還流比15(=還流30秒/留出2秒)に設定し、2,4−TDIを留出させた。留出開始から2時間後に塔頂温度が上昇してきたため、加熱と減圧を停止し、留出液60gを得た。留出液の一部を採取し液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDIが70質量%(0.24mol)で、2,4−TDI以外の化合物のほとんどが溶媒のバーレルプロセス油B−05であり、上記式(22)で示される2置換ベンゾイレン尿素誘導体、および、上記式(23)で示される2置換ベンゾイレン尿素は検出されなかった。この結果、熱分解において、回収された2,4−TDIの2,4−TDCBuに対する収率は65mol%(2,4−TDAから通算すると42mol%)と非常に低い値であった。
一方、反応液については120℃まで冷却後、5A濾紙にて熱時ろ過を行い濾液と濾残にわけ、濾残をアセトンで洗浄、乾燥を行い64gの黄褐色の濾残を回収した。反応液の濃縮液に対するタール生成率は32質量%と、タールが出来やすい環境であることが確認された。
以上のように2置換ベンゾイレン尿素を多く含むカルバメート化合物を熱分解した場合、イソシアネートの収率が低下するだけではなく、タール生成率も著しく高くなることが確認された。

Claims (11)

  1. トルエンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させて、トルエンジカルバメートを製造する、カルバメート製造工程と、
    下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を、トルエンジカルバメート100モルに対して、10モル以下に低減する、ベンゾイレン尿素低減工程と
    を備えていることを特徴とする、トルエンジカルバメートの製造方法。
    Figure 2012017280
  2. 前記ベンゾイレン尿素低減工程は、下記式(2)で示されるビウレット系化合物を、トルエンジアミン100モルに対して、40モル以下に低減する、ビウレット系化合物低減工程を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
    −CO−NH−CO−X (2)
    (式中、X1およびX2は、互いに同一または相異なって、アミノ基、アルコキシ基またはN−(アミノトルイル)アミノ基を示す。)
  3. 前記ビウレット系化合物低減工程は、上記式(2)において、X1およびX2がアミノ基である第1ビウレット系化合物を低減する、第1ビウレット系化合物低減工程を備えていることを特徴とする、請求項2に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
  4. 尿素を前記カルバメート製造工程に供給する尿素供給工程を、さらに備え、
    前記第1ビウレット系化合物低減工程では、
    前記尿素供給工程が、尿素を加熱により溶融して流動状態として、前記カルバメート製造工程に供給する流動供給工程を備えているときには、尿素の溶融後から供給終了までの時間を、2時間以内とするか、
    前記尿素供給工程において、尿素をスラリーとして、前記カルバメート製造工程に供給するか、または、尿素を固体状態で、前記カルバメート製造工程に供給する
    ことを特徴とする、請求項3に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
  5. 前記ビウレット系化合物低減工程は、上記式(2)において、X1がアミノ基またはアルコキシ基であり、X2がアルコキシ基である第2ビウレット系化合物を低減する、第2ビウレット系化合物低減工程を備えていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
  6. 尿素とアルコールとを反応させて、N−無置換カルバミン酸エステルを製造するN−無置換カルバミン酸エステル製造工程を、さらに備え、
    前記第2ビウレット系化合物低減工程では、
    前記N−無置換カルバミン酸エステル製造工程において、尿素とアルコールとを、金属含有化合物の存在下、反応させることを特徴とする、請求項5に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
  7. 前記ビウレット系化合物低減工程は、上記式(2)において、X1がN−(アミノトルイル)アミノ基であり、X2が、アミノ基、アルコキシ基またはN−(アミノトルイル)アミノ基のいずれかである第3ビウレット系化合物を低減する、第3ビウレット系化合物低減工程を備えていることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
  8. 前記第3ビウレット系化合物低減工程は、
    前記カルバメート製造工程において、反応系から、当該反応により副生するアンモニアを低減するか、
    反応温度を、160℃以上にするか、または、
    アルコールを、トルエンジアミン1モルに対して2モル以上の割合で供給する
    ことを特徴とする、請求項7に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
  9. 前記カルバメート製造工程は、反応槽と、前記反応槽から排出される低沸点成分を還流させるための還流ラインと、前記還流ラインに設けられ、還流成分と排出成分とを分離する分離器とを備える反応装置において、実施され、
    前記第3ビウレット系化合物低減工程が、前記カルバメート製造工程において、反応系から、当該反応により副生するアンモニアを低減する工程であるときに、
    前記反応槽を窒素パージするか、
    前記分離器として凝縮器を用いて、前記凝縮器の温度を、40℃以上に設定して、アンモニアの凝縮を抑制するか、または、
    前記分離器として蒸留器を用いて、前記還流成分に含有されるアンモニア量に対して、前記排出成分に含有されるアンモニア量が多くなるように、蒸留する
    ことを特徴とする、請求項8に記載のトルエンジカルバメートの製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のトルエンジカルバメートの製造方法によって、トルエンジカルバメートを製造する工程と、
    製造されたトルエンジカルバメートを、熱分解してトルエンジイソシアネートを製造する工程と
    を備えることを特徴とする、トルエンジイソシアネートの製造方法。
  11. トルエンジカルバメートであって、
    不純物として、トルエンジカルバメート100モルに対して0.01〜10モルの、下記式(1)で示される、メチル基およびアミノ基で置換されている2置換ベンゾイレン尿素およびその誘導体を含有することを特徴とする、トルエンジカルバメート。
    Figure 2012017280
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