本発明のイソシアネート残渣の処理方法では、イソシアネート残渣にカーボネート(後述)を配合し、そのカーボネート(後述)が配合されたイソシアネート残渣を、高圧高温水に接触させて、アミン(後述)およびアルコール(後述)に加水分解する。
このようなイソシアネート残渣の処理方法において、イソシアネート残渣は、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、イソシアネート(後述)およびアルコール(後述)を分離することにより、得ることができる。
カルバメートは、分子内に少なくとも1つのウレタン結合(−NHCOO−)を有する有機化合物であって、特に制限されないが、例えば、カーボネート法、尿素法などによるカルバメート化反応により生成される。
好ましくは、尿素法、すなわち、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとのカルバメート化反応により、生成される。
アミンとしては、例えば、1級アミンが挙げられる。
1級アミンは、1級のアミノ基を1つ以上有するアミノ基含有有機化合物であって、例えば、下記一般式(1)で示される。
R1−(NH2)n (1)
(式中、R1は、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基、または、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基を、nは、1〜6の整数を示す。)
上記式(1)中、R1は、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基、および、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基から選択される。なお、R1は、その炭化水素基中に、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などの安定な結合を含んでいてもよく、また、安定な官能基(後述)で置換されていてもよい。
R1において、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基としては、例えば、1〜6価の、直鎖状または分岐状の総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
上記式(1)において、R1が総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基である1級アミンとしては、例えば、総炭素数1〜15の脂肪族アミンなどが挙げられる。
そのような脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、iso−プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミンなどの直鎖状または分岐状の脂肪族1級モノアミン、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン(1,4−テトラメチレンジアミン)、1,5−ジアミノペンタン(1,5−ペンタメチレンジアミン)、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−ヘキサメチレンジアミン)、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどの脂肪族1級ジアミン、例えば、1,2,3−トリアミノプロパン、トリアミノヘキサン、トリアミノノナン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタン、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、3−アミノメチル−1,6−ジアミノヘキサンなどの脂肪族1級トリアミンなどが挙げられる。
R1において、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基としては、例えば、1〜6価の、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基などが挙げられる。
なお、脂環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の脂環式炭化水素を含有していればよく、例えば、その脂環式炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、1級アミンにおけるアミノ基は、脂環式炭化水素に直接結合していてもよく、脂環式炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
上記式(1)において、R1が総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基である1級アミンとしては、例えば、総炭素数3〜15の脂環族アミンなどが挙げられる。
そのような脂環族アミンとしては、例えば、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、水添トルイジンなどの脂環族1級モノアミン、例えば、ジアミノシクロブタン、イソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロへキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、水添2,4−トリレンジアミン、水添2,6−トリレンジアミンなどの脂環族1級ジアミン、例えば、トリアミノシクロヘキサンなどの脂環族1級トリアミンなどが挙げられる。
R1において、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基としては、例えば、1〜6価の、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。
なお、芳香環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の芳香族炭化水素を含有していればよく、例えば、その芳香族炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、1級アミンにおけるアミノ基は、芳香族炭化水素に直接結合していてもよく、芳香族炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
上記式(1)において、R1が総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基である1級アミンとしては、例えば、総炭素数6〜15の芳香族アミン、総炭素数6〜15の芳香脂肪族アミンなどが挙げられる。
そのような芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、o−トルイジン(2−メチルアニリン)、m−トルイジン(3−メチルアニリン)、p−トルイジン(4−メチルアニリン)、2,3-キシリジン(2,3−ジメチルアニリン)、2,4−キシリジン(2,4−ジメチルアニリン)、2,5−キシリジン(2,5−ジメチルアニリン)、2,6−キシリジン(2,6−ジメチルアニリン)、3,4−キシリジン(3,4−ジメチルアニリン)、3,5−キシリジン(3,5−ジメチルアニリン)、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミンなどの芳香族1級モノアミン、例えば、2,4−トリレンジアミン(2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トリレンジアミン(2,6−ジアミノトルエン)、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2’−ジフェニルメタンジアミン、4,4’−ジフェニルエーテルジアミン、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジアミン、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジアミン、4,4’−ジフェニルプロパンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ナフチレン−1,4−ジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジアミンなどの芳香族1級ジアミンなどが挙げられる。
そのような芳香脂肪族アミンとしては、例えば、ベンジルアミンなどの芳香脂肪族1級モノアミン、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−テトラメチルキシリレンジアミン(1,3−ジ(2−アミノ−2−メチルエチル)ベンゼン)、1,4−テトラメチルキシリレンジアミン(1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルエチル)ベンゼン)などの芳香脂肪族1級ジアミンなどが挙げられる。
上記式(1)において、R1に置換していてもよい官能基としては、例えば、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、オキソ基、チオキソ基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシ−カルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの総炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基)、スルホ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、ハロゲノフェノキシ基(例えば、o−、m−またはp−クロロフェノキシ基、o−、m−またはp−ブロモフェノキシ基など)、低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)、低級アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基など)、低級アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基など)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニルなど)、低級アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基など)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基など)などが挙げられる。
これらの官能基は、上記式(1)において、R1に複数置換していてもよく、また、官能基がR1に複数置換する場合には、各官能基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
上記式(1)において、nは、例えば、1〜6の整数を示し、好ましくは、1または2を示し、より好ましくは、2を示す。
これらアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
アミンとして、好ましくは、上記式(1)において、R1が総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基である1級アミン、R1が総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基である1級アミンが挙げられ、より具体的には、総炭素数3〜15の脂環族アミン、総炭素数6〜15の芳香族アミン、総炭素数6〜15の芳香脂肪族アミンが挙げられる。
また、アミンとして、工業的に用いられるイソシアネート(後述)の製造原料となるものも好ましく、そのような1級アミンとして、例えば、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,4−トリレンジアミン(2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トリレンジアミン(2,6−ジアミノトルエン)、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2’−ジフェニルメタンジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−テトラメチルキシリレンジアミン、1,4−テトラメチルキシリレンジアミンなどが挙げられ、とりわけ好ましくは、イソホロンジアミン、2,4−トリレンジアミン(2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トリレンジアミン(2,6−ジアミノトルエン)、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2’−ジフェニルメタンジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−テトラメチルキシリレンジアミン、1,4−テトラメチルキシリレンジアミンが挙げられる。
さらに、詳しくは後述するが、このようなカルバメートの生成に用いられるアミンとして、好ましくは、イソシアネート残渣(後述)を分解して得られるアミン(後述)が挙げられる。
N−無置換カルバミン酸エステルは、カルバモイル基における窒素原子が官能基により置換されていない(すなわち、窒素原子が、2つの水素原子と、1つの炭素原子とに結合する)カルバミン酸エステルであって、例えば、下記一般式(2)で示される。
R2O−CO−NH2 (2)
(式中、R2は、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
上記式(2)中、R2において、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、iso−オクチル、2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、例えば、シクロヘキシル、シクロドデシルなどの炭素数5〜10の脂環式飽和炭化水素基などが挙げられる。
R2において、アルキル基として、好ましくは、炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、より好ましくは、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数2〜6の直鎖状の飽和炭化水素基が挙げられる。
上記式(2)において、R2がアルキル基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸n−プロピル、カルバミン酸iso−プロピル、カルバミン酸n−ブチル、カルバミン酸iso−ブチル、カルバミン酸sec−ブチル、カルバミン酸tert−ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸ヘプチル、カルバミン酸オクチル、カルバミン酸iso−オクチル、カルバミン酸2−エチルヘキシルなどの飽和炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステル、例えば、カルバミン酸シクロヘキシル、カルバミン酸シクロドデシルなどの脂環式飽和炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステルなどが挙げられる。
上記式(2)中、R2において、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどの炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。また、その置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどの炭素数1〜4のアルコキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどの炭素数1〜4のアルキルチオ基など)およびアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)などが挙げられる。また、置換基がアリール基に複数置換する場合には、各置換基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
上記式(2)において、R2が置換基を有していてもよいアリール基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸トリル、カルバミン酸キシリル、カルバミン酸ビフェニル、カルバミン酸ナフチル、カルバミン酸アントリル、カルバミン酸フェナントリルなどの芳香族炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステルなどが挙げられる。
これらN−無置換カルバミン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
N−無置換カルバミン酸エステルとして、好ましくは、上記式(2)において、R2がアルキル基であるN−無置換カルバミン酸エステルが挙げられる。
また、カルバメート化反応の原料成分として用いられるN−無置換カルバミン酸エステルとして、詳しくは後述するが、好ましくは、カルバメート化反応後に分離された低沸点成分(後述)(N−無置換カルバミン酸エステルおよびカーボネートを含む)から、さらに分離して得られるN−無置換カルバミン酸エステルが挙げられる。
アルコールは、例えば、1〜3級の1価のアルコールであって、例えば、下記一般式(3)で示される。
R2−OH (3)
(式中、R2は、上記式(2)のR2と同意義を示す。)
上記式(3)中、R2は、上記式(2)のR2と同意義、すなわち、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
上記式(3)において、R2が上記したアルキル基であるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール(1−ブタノール)、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、iso−オクタノール、2−エチルヘキサノールなどの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素系アルコール、例えば、シクロヘキサノール、シクロドデカノールなどの脂環式飽和炭化水素系アルコールなどが挙げられる。
また、上記式(3)において、R2が上記した置換基を有していてもよいアリール基であるアルコールとしては、例えば、フェノール、ヒドロキシトルエン、ヒドロキシキシレン、ビフェニルアルコール、ナフタレノール、アントラセノール、フェナントレノールなどが挙げられる。
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
アルコールとして、好ましくは、上記式(3)において、R2がアルキル基であるアルコールが挙げられ、より好ましくは、R2が炭素数1〜8のアルキル基であるアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、R2が炭素数2〜6のアルキル基であるアルコールが挙げられる。
また、カルバメート化反応の原料成分として用いられるアルコールとして、好ましくは、カーボネートを配合したイソシアネート残渣を加水分解して得られるアルコール(後述)が挙げられる。
さらに、カルバメート化反応の原料成分として用いられるアルコールとして、好ましくは、カルバメート化反応においてN−無置換カルバミン酸エステルを原料成分として用いた場合に副生するアルコール(後述)、および、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から分離されるアルコール(後述)が挙げられる。
そして、この方法では、上記したアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを配合し、好ましくは、液相で反応させる。
アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの配合割合は、特に制限はなく、比較的広範囲において適宜選択することができる。
通常は、尿素およびN−無置換カルバミン酸エステルの配合量、および、アルコールの配合量が、アミンのアミノ基に対して等モル以上あればよく、そのため、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールそのものを、この反応における反応溶媒として用いることもできる。
なお、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールを反応溶媒として兼用する場合には、必要に応じて過剰量の尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルやアルコールが用いられるが、過剰量が多いと、反応後の分離工程での消費エネルギーが増大するので、工業生産上、不適となる。
そのため、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルの配合量は、カルバメートの収率を向上させる観点から、アミンのアミノ基1つに対して、0.5〜20倍モル、好ましくは、1〜10倍モル、さらに好ましくは、1〜5倍モル程度であり、アルコールの配合量は、アミンのアミノ基1つに対して、0.5〜100倍モル、好ましくは、1〜20倍モル、さらに好ましくは、1〜10倍モル程度である。
また、この反応において、反応溶媒は必ずしも必要ではないが、例えば、反応原料が固体の場合や反応生成物が析出する場合には、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ニトリル類、脂肪族ハロゲン化炭化水素類、アミド類、ニトロ化合物類や、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの反応溶媒を配合することにより、操作性を向上させることができる。
また、反応溶媒の配合量は、目的生成物のカルバメートが溶解する程度の量であれば特に制限されるものではないが、工業的には、反応液から反応溶媒を回収する必要があるため、その回収に消費されるエネルギーをできる限り低減し、かつ、配合量が多いと、反応基質濃度が低下して反応速度が遅くなるため、できるだけ少ない方が好ましい。より具体的には、アミン1質量部に対して、通常、0〜500質量部、好ましくは、0〜100質量部の範囲で用いられる。
また、この反応においては、反応温度は、例えば、100〜350℃、好ましくは、150〜300℃の範囲において適宜選択される。反応温度がこれより低いと、反応速度が低下する場合があり、一方、これより高いと、副反応が増大して目的生成物であるカルバメートの収率が低下する場合がある。
また、反応圧力は、通常、大気圧であるが、反応液中の成分の沸点が反応温度よりも低い場合には加圧してもよく、さらには、必要により減圧してもよい。
また、反応時間は、例えば、0.1〜20時間、好ましくは、0.5〜10時間である。反応時間がこれより短いと、目的生成物であるカルバメートの収率が低下する場合がある。一方、これより長いと、工業生産上、不適となる。
また、この方法においては、触媒を用いることもできる。
触媒としては、特に制限されないが、例えば、リチウムメタノラート、リチウムエタノラート、リチウムプロパノラート、リチウムブタノラート、ナトリウムメタノラート、カリウム−tert−ブタノラート、マグネシウムメタノラート、カルシウムメタノラート、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸鉛、リン酸鉛、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム−イソブチラート、三塩化アルミニウム、塩化ビスマス(III)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、ビス−(トリフェニル−ホスフィンオキシド)−塩化銅(II)、モリブデン酸銅、酢酸銀、酢酸金、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセトニルアセタート、オクタン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、ヘキシル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛、酸化セリウム(IV)、酢酸ウラニル、チタンテトライソプロパノラート、チタンテトラブタノラート、四塩化チタン、チタンテトラフェノラート、ナフテン酸チタン、塩化バナジウム(III)、バナジウムアセチルアセトナート、塩化クロム(III)、酸化モリブデン(VI)、モリブデンアセチルアセトナート、酸化タングステン(VI)、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、リン酸鉄、シュウ酸鉄、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酢酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト、ナフテン酸コバルト、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。
さらに、触媒としては、例えば、Zn(OSO2CF3)2(別表記:Zn(OTf)2、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO2C2F5)2、Zn(OSO2C3F7)2、Zn(OSO2C4F9)2、Zn(OSO2C6H4CH3)2(p−トルエンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO2C6H5)2、Zn(BF4)2、Zn(PF6)2、Hf(OTf)4(トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム)、Sn(OTf)2、Al(OTf)3、Cu(OTf)2なども挙げられる。
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、触媒の配合量は、アミン1モルに対して、例えば、0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00005〜0.05モルである。触媒の配合量がこれより多くても、それ以上の顕著な反応促進効果が見られない反面、配合量の増大によりコストが上昇する場合がある。一方、配合量がこれより少ないと、反応促進効果が得られない場合がある。
なお、触媒の添加方法は、一括添加、連続添加および複数回の断続分割添加のいずれの添加方法でも、反応活性に影響を与えることがなく、特に制限されることはない。
そして、この反応は、上記した条件で、例えば、反応容器内に、アミン、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、アルコール、および、必要により触媒、反応溶媒を仕込み、攪拌あるいは混合すればよい。主生成物として、例えば、下記一般式(4)で示されるカルバメートが生成する。
(R2OCONH)n−R1 (4)
(式中、R1は、上記式(1)のR1と同意義を、R2は、上記式(2)のR2と同意義を、nは、上記式(1)のnと同意義を示す。)
また、この反応においては、アンモニアが副生される。
また、この反応において、N−無置換カルバミン酸エステルを配合する場合には、例えば、下記一般式(5)で示されるアルコールが副生される。
R2−OH (5)
(式中、R2は、上記式(2)のR2と同意義を示す。)
また、この反応においては、例えば、下記一般式(6)で示されるN−無置換カルバミン酸エステルが副生される。
R2O−CO−NH2 (6)
(式中、R2は、上記式(2)のR2と同意義を示す。)
さらに、この反応においては、下記一般式(7)で示されるカーボネートが副生される。
R2O−CO−OR2 (7)
(式中、R2は、互いに同一または相異なって、上記式(2)のR2と同意義を示す。)
上記式(7)中、R2は、互いに同一または相異なって、上記式(2)のR2と同意義、すなわち、互いに同一または相異なって、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
なお、上記式(7)において、R2が、いずれもアルキル基である場合には、上記式(7)で示されるカーボネートは、後述するジアルキルカーボネートであり、また、R2が、いずれも置換基を有していてもよいアリール基である場合には、上記式(7)で示されるカーボネートは、後述するジアリールカーボネートであり、さらに、一方のR2がアルキル基であるとともに、他方のR2が置換基を有していてもよいアリール基である場合には、上記式(7)で示されるカーボネートは、後述するアルキルアリールカーボネートである。
また、この反応において、反応型式としては、回分式、連続式いずれの型式も採用することができる。
次いで、この方法では、得られた反応液から、公知の方法によりカルバメート(上記式(4))を分離するとともに、例えば、過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、過剰(未反応)のアルコール、副生するアルコール(上記式(5))、N−無置換カルバミン酸エステル(上記式(6))、カーボネート(上記式(7))などを、低沸点成分(軽沸分)として、分離する。
そして、この方法では、得られたカルバメートを熱分解し、イソシアネートおよびアルコールを生成させる。
すなわち、この方法では、例えば、上記の方法によって得られたカルバメートを熱分解し、上記したアミンに対応する下記一般式(8)で示されるイソシアネート、および
R1−(NCO)n (8)
(式中、R1は、上記式(1)のR1と同意義を、nは、上記式(1)のnと同意義を示す。)
副生物である下記一般式(9)で示されるアルコールを生成させる。
R2−OH (9)
(式中、R2は、上記式(2)のR2と同意義を示す。)
この熱分解は、特に限定されず、例えば、液相法、気相法などの公知の分解法を用いることができる。
気相法では、熱分解により生成するイソシアネートおよびアルコールは、気体状の生成混合物から、分別凝縮によって分離することができる。また、液相法では、熱分解により生成するイソシアネートおよびアルコールは、例えば、蒸留や、担持物質としての溶剤および/または不活性ガスを用いて、分離することができる。
熱分解として、好ましくは、作業性の観点から、液相法が挙げられる。
このような方法において、カルバメートは、好ましくは、不活性溶媒の存在下において、熱分解される。
不活性溶媒は、少なくとも、カルバメートを溶解し、カルバメートおよびイソシアネートに対して不活性であり、かつ、熱分解時に反応しなければ(すなわち、安定であれば)、特に制限されないが、熱分解反応を効率よく実施するには、生成するイソシアネートよりも高沸点であることが好ましい。
このような不活性溶媒としては、例えば、芳香族系炭化水素類などが挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン(沸点:80℃)、トルエン(沸点:111℃)、o−キシレン(沸点:144℃)、m−キシレン(沸点:139℃)、p−キシレン(沸点:138℃)、エチルベンゼン(沸点:136℃)、イソプロピルベンゼン(沸点:152℃)、ブチルベンゼン(沸点:185℃)、シクロヘキシルベンゼン(沸点:237〜340℃)、テトラリン(沸点:208℃)、クロロベンゼン(沸点:132℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点:180℃)、1−メチルナフタレン(沸点:245℃)、2−メチルナフタレン(沸点:241℃)、1−クロロナフタレン(沸点:263℃)、2−クロロナフタレン(沸点:264〜266℃)、トリフェニルメタン(沸点:358〜359℃(754mmHg))、1−フェニルナフタレン(沸点:324〜325℃)、2−フェニルナフタレン(沸点:357〜358℃)、ビフェニル(沸点:255℃)などが挙げられる。
また、このような溶媒は、市販品としても入手可能であり、例えば、バーレルプロセス油B−01(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルプロセス油B−03(芳香族炭化水素類、沸点:280℃)、バーレルプロセス油B−04AB(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルプロセス油B−05(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルプロセス油B−27(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルプロセス油B−28AN(芳香族炭化水素類、沸点:430℃)、バーレルプロセス油B−30(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルサーム200(芳香族炭化水素類、沸点:382℃)、バーレルサーム300(芳香族炭化水素類、沸点:344℃)、バーレルサーム400(芳香族炭化水素類、沸点:390℃)、バーレルサーム1H(芳香族炭化水素類、沸点:215℃)、バーレルサーム2H(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルサーム350(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルサーム470(芳香族炭化水素類、沸点:310℃)、バーレルサームPA(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルサーム330(芳香族炭化水素類、沸点:257℃)、バーレルサーム430(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、(以上、松村石油社製)、NeoSK−OIL1400(芳香族炭化水素類、沸点:391℃)、NeoSK−OIL1300(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、NeoSK−OIL330(芳香族炭化水素類、沸点:331℃)、NeoSK−OIL170(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、NeoSK−OIL240(芳香族炭化水素類、沸点:244℃)、KSK−OIL260(芳香族炭化水素類、沸点:266℃)、KSK−OIL280(芳香族炭化水素類、沸点:303℃)、(以上、綜研テクニックス社製)などが挙げられる。
また、不活性溶媒としては、さらに、エステル類(例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなど)、熱媒体として常用される脂肪族系炭化水素類なども挙げられる。
このような不活性溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
不活性溶媒の配合量は、カルバメート1質量部に対して0.001〜100質量部、好ましくは、0.01〜80質量部、より好ましくは、0.1〜50質量部の範囲である。
また、熱分解においては、例えば、不活性溶媒をカルバメートに配合し、カルバメートを熱分解した後、その不活性溶媒を分離および回収し、再度、熱分解においてカルバメートに配合することができる。
また、液相法におけるカルバメートの熱分解反応は、可逆反応であるため、好ましくは、熱分解反応の逆反応(すなわち、上記式(8)で示されるイソシアネートと、上記式(9)で示されるアルコールとのウレタン化反応)を抑制するため、カルバメートを熱分解するとともに、反応混合物(分解液)から上記式(8)で示されるイソシアネート、および/または、上記式(9)で示されるアルコールを公知の方法により抜き出し、それらを分離する。
熱分解反応の反応条件として、好ましくは、カルバメートを良好に熱分解できるとともに、熱分解において生成したイソシアネート(上記式(8))およびアルコール(上記式(9))が蒸発し、これによりカルバメートとイソシアネートとが平衡状態とならず、さらには、イソシアネートの重合などの副反応が抑制される反応条件が挙げられる。
このような反応条件として、より具体的には、熱分解温度は、通常、350℃以下であり、好ましくは、80〜350℃、より好ましくは、100〜300℃である。80℃よりも低いと、実用的な反応速度が得られない場合があり、また、350℃を超えると、イソシアネートの重合など、好ましくない副反応を生じる場合がある。また、熱分解反応時の圧力は、上記の熱分解反応温度に対して、生成するアルコールが気化し得る圧力であることが好ましく、設備面および用役面から実用的には、0.133〜90kPaであることが好ましい。
さらに、この方法では、必要により、触媒を添加することもできる。
触媒は、それらの種類により異なるが、上記反応時、反応後の蒸留分離の前後、カルバメートの分離の前後の、いずれかに添加すればよい。
熱分解に用いられる触媒としては、イソシアネートと水酸基とのウレタン化反応に用いられる、Sn、Sb、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Pb、Mo、Mnなどから選ばれる1種以上の金属単体またはその酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、リン酸塩、有機金属化合物などの金属化合物が用いられる。これらのうち、この熱分解においては、Fe、Sn、Co、Sb、Mnが副生成物を生じにくくする効果を発現するため、好ましく用いられる。
Snの金属触媒としては、例えば、酸化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、リン酸スズ、二塩化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサンなどが挙げられる。
Fe、Co、Sb、Mnの金属触媒としては、例えば、それらの酢酸塩、安息香酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
なお、触媒の配合量は、金属単体またはその化合物として、反応液に対して0.0001〜5質量%の範囲、好ましくは、0.001〜1質量%の範囲である。
また、この熱分解反応は、カルバメート、触媒および不活性溶媒を一括で仕込む回分反応、また、触媒を含む不活性溶媒中に、減圧下でカルバメートを仕込んでいく連続反応のいずれでも実施することができる。
熱分解では、イソシアネートおよびアルコールが生成するとともに、副反応によって、例えば、アロファネート、アミン類、尿素、炭酸塩、カルバミン酸塩、二酸化炭素などが生成する場合があるため、必要により、得られたイソシアネートは、公知の方法により精製される。
また、熱分解で得られるアルコール(上記式(9))は、分離および回収された後、好ましくは、カルバメート化反応の原料成分として用いられる。
そして、このような方法において、カルバメートの熱分解反応で得られた分解液から、イソシアネートおよびアルコールを除去し、必要に応じて、溶媒を分離すると、イソシアネート残渣が得られる。なお、分離した溶媒は、再び熱分解に使用することができる。
すなわち、例えば、カルバメートを、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により製造し、そのカルバメートを熱分解することによりイソシアネートを製造する場合には、例えば、得られるカルバメートやイソシアネート、あるいは、それらの中間体などが、例えば、多量化、ビウレット化およびアロファネート化などの好ましくない重合反応を惹起する場合がある。そのような場合には、例えば、尿素誘導体(ビウレット体)、カルバメート誘導体(アロファネート体)などの副生物が、イソシアネート残渣として得られる。なお、イソシアネート残渣には、例えば、未反応の尿素やカルバメートなどが、含まれる場合もある。
このようなイソシアネート残渣は、通常、廃棄処理されているが、地球環境などの観点から廃棄処理物を低減することが要求され、また、回収されたイソシアネート残渣を有効利用する方法が要求されている。
そのため、この方法では、得られたイソシアネート残渣を、高圧高温水に接触させて、アミンおよびアルコールに加水分解する。
このとき、イソシアネート残渣は高粘度のタール状であるため、工業的には、イソシアネート残渣に流動性を付与すべくスラリーとして調製し、スラリー輸送することが望まれる。そのため、本発明では、イソシアネート残渣に、カーボネートを配合する。
カーボネートとしては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキルアリールカーボネートなどが挙げられる。
ジアルキルカーボネートは、例えば、下記一般式(10)で示される。
R3OCOOR4 (10)
(式中、R3およびR4は、互いに同一または相異なって、アルキル基を示す。)
上記式(10)中、R3およびR4で示されるアルキル基としては、例えば、上記したアルキル基(上記式(2)におけるアルキル基)が挙げられる。
このようなジアルキルカーボネートとして、より具体的には、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ(n−)プロピルカーボネート、ジ(n−)ブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジシクロドデシルカーボネートなどの対称ジアルキルカーボネート、例えば、メチルエチルカーボネート、メチル(n−)プロピルカーボネート、エチル(n−)プロピルカーボネート、メチルシクロヘキシルカーボネート、シクロヘキシルシクロドデシルカーボネートなどの非対称ジアルキルカーボネートなどが挙げられる。
ジアリールカーボネートは、例えば、下記一般式(11)で示される。
R5OCOOR6 (11)
(式中、R5およびR6は、互いに同一または相異なって、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
上記式(11)中、R5およびR6で示される置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、上記した置換基を有していてもよいアリール基(上記式(2)における置換基を有していてもよいアリール基)が挙げられる。
このようなジアリールカーボネートとして、より具体的には、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネートなどの対称ジアリールカーボネート、例えば、フェニルトリルカーボネート、フェニルキシリルカーボネートなどの非対称ジアリールカーボネートなどが挙げられる。
アルキルアリールカーボネートは、例えば、下記一般式(12)で示される。
R7OCOOR8 (12)
(式中、R7はアルキル基を、R8は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
上記式(12)中、R7で示されるアルキル基としては、例えば、上記したアルキル基(上記式(2)におけるアルキル基)が挙げられる。
また、上記式(12)中、R8で示される置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、上記した置換基を有していてもよいアリール基(上記式(2)における置換基を有していてもよいアリール基)が挙げられる。
このようなアルキルアリールカーボネートとして、より具体的には、例えば、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、メチルトリルカーボネート、メチルキシリルカーボネートなどが挙げられる。
これらカーボネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
カーボネートとして、好ましくは、ジアルキルカーボネートが挙げられる。
本発明において、カーボネートは、公知の方法により製造することができ、また、市販品を用いることもできる。
さらには、例えば、上記したように、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させ、カルバメートを得る反応(カルバメート化反応)において、副生成物として得られるカーボネート(上記式(7))を用いることもできる。
好ましくは、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとのカルバメート化反応において副生成物として得られるカーボネートを用いる。
より具体的には、上記のカルバメート化反応により得られる反応液から分離された低沸点成分(軽沸分)から、さらに、アルコール(過剰(未反応)のアルコールおよび副生するアルコール(上記式(5)))と、N−無置換カルバミン酸エステルと、カーボネートとを、それぞれ蒸留などにより粗分離すれば、アルコール、N−無置換カルバミン酸エステルおよびカーボネートを、それぞれ粗分離および回収することができる。
そして、この方法では、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したアルコール(過剰(未反応)のアルコールおよび副生するアルコール)を、カルバメート化反応の原料成分として用いる。
これにより、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したアルコールを、工業的に有効利用することができる。
また、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したN−無置換カルバミン酸エステルを、カルバメート化反応の原料成分として用いる。
これにより、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したN−無置換カルバミン酸エステルを、工業的に有効利用することができる。
そして、この方法では、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したカーボネートを、イソシアネート残渣に配合する。
カルバメート化反応において副生成物として得られるカーボネートを用いることにより、カーボネートの有効利用を図ることができる。
そして、この方法では、公知の耐圧耐熱槽内に、カーボネート(および必要により溶媒)が配合されたイソシアネート残渣を供給するとともに、高圧高温水を供給し、イソシアネート残渣に高圧高温水を接触させて、アミンおよびアルコールに加水分解する。
高圧高温水は、高圧、すなわち、3〜30MPa、好ましくは、6〜25MPa、さらに好ましくは、6〜20MPaに昇圧され、かつ、高温、すなわち、190〜350℃、好ましくは、200〜300℃に加熱された水であって、公知の方法により加熱および加圧される。
なお、イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)の分解圧力(槽内圧力)は、3〜30MPa、好ましくは、6〜25MPa、さらに好ましくは、6〜20MPaである。また、イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)の分解温度(槽内温度)は、190〜350℃、好ましくは、200〜300℃である。
また、高圧高温水としては、加水比(高圧高温水/イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)の質量比)が、例えば、0.5〜30、好ましくは、1〜15に制御される。
これによって、イソシアネート残渣が高圧高温水によって加水分解され、分解生成物として、アミンが生成するとともに、イソシアネート残渣に配合されたカーボネートが高圧高温水によって加水分解され、分解生成物として、アルコールが生成する。また、この加水分解においては、二酸化炭素などが副生する。
このとき、分解されるイソシアネート残渣が、上記したように、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により生成されるカルバメートを熱分解して得られるイソシアネート残渣である場合には、対応するアミンとして、下記一般式(13)で示されるアミンが生成する。
R1−(NH2)n (13)
(式中、R1は、上記式(1)のR1と同意義を、nは、上記式(1)のnと同意義を示す。)
すなわち、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、イソシアネートおよびアルコールを分離したイソシアネート残渣を分解すると、カルバメートおよびイソシアネートの製造に用いられるアミン(上記式(1))と同種のアミン(上記式(13))が得られる。このようなイソシアネート残渣を分解して得られるアミンは、分離および回収された後、好ましくは、上記したカルバメートの生成において、原料アミン(上記式(1))として用いられる。
アミンの分離方法としては、公知の方法でよく、好ましくは、蒸留が挙げられる。
また、このとき、イソシアネート残渣に配合されるカーボネートが、上記したように、カルバメート化反応において副生成物として得られるカーボネート(上記式(7))である場合には、対応するアルコールとして、下記一般式(14)で示されるアルコールが生成する。
R2−OH (14)
(式中、R2は、上記式(2)のR2と同意義を示す。)
すなわち、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したカーボネートをイソシアネート残渣に配合することにより、上記式(3)で示されるアルコールと同様のアルコールが、生成する。
なお、低沸点成分(軽沸分)の粗分離では、カーボネートに、N−無置換カルバミン酸エステルが含有される場合がある。このような場合でも、高圧高温水に接触させることにより、カーボネートおよびN−無置換カルバミン酸エステルを、一度にアルコールに分解することができる。
そして、この方法では、カーボネートを分解して得られるアルコール(上記式(14)を、好ましくは、上記したカルバメート化反応の原料成分として用いる。
低沸点成分から粗分離したカーボネートを分解することにより得られるアルコールを、カルバメート化反応の原料成分として用いることにより、カルバメート化反応において副生するカーボネートを、工業的に有効利用することができる。
このように、本発明のイソシアネート残渣の処理方法によれば、カルバメートの分解液から得られるイソシアネート残渣に、カーボネートを配合して、それらを加水分解するので、アミンおよびアルコールを一度に得ることができる。
そのため、本発明のイソシアネート残渣の処理方法によれば、イソシアネート残渣およびカーボネートを、工業的に有効利用することができる。
図1は、本発明のイソシアネート残渣の処理方法が採用されるプラントの一実施形態を示す概略構成図である。
以下において、上記したイソシアネート残渣の処理方法が工業的に実施されるプラントの一実施形態について、図1を参照して説明する。
図1において、このプラント1は、尿素法でイソシアネートを製造するとともにイソシアネート残渣を得て、そのイソシアネート残渣に対して、上記したイソシアネート残渣の処理方法を採用するイソシアネートの製造装置であって、反応装置2と、軽沸留去装置3と、熱分解装置4と、蒸留装置7と、加水分解装置5と、精製装置6とを備えている。
反応装置2は、プラント1において、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により、カルバメートを生成するために設備されている。
この反応装置2は、反応槽8と、反応槽8に接続されるアミン供給管9、尿素供給管10、カルバミン酸エステル供給管12およびアルコール供給管11とを備えている。
反応槽8は、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとをカルバメート化反応させて、カルバメートを製造するためのカルバメート化反応槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
このような反応槽8には、図示しないが、必要により、例えば、反応槽8に触媒を供給する触媒供給管、反応槽8内を不活性ガス(例えば、窒素ガスなど)で置換するための不活性ガス供給管、反応槽8内を攪拌するための攪拌装置、副生するアンモニアを系外に留去するアンモニア排出管などが備えられている。
アミン供給管9は、反応槽8にアミンを供給するためのアミン供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽8に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、アミンが導入されるアミン導入ラインに接続されている。
このようなアミン供給管9には、その流れ方向途中において、アミン還流管25(後述)の下流側端部が接続されている。
尿素供給管10は、反応槽8に尿素を供給するための尿素供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽8に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、尿素が導入される尿素導入ラインに接続されている。
カルバミン酸エステル供給管12は、反応槽8にN−無置換カルバミン酸エステルを供給するためのN−無置換カルバミン酸エステル供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽8に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、N−無置換カルバミン酸エステルが導入されるN−無置換カルバミン酸エステル導入ラインに接続されている。
このようなカルバミン酸エステル供給管12には、その流れ方向途中においてカルバミン酸エステル還流管30(後述)の下流側端部が接続されている。
アルコール供給管11は、反応槽8にアルコールを供給するためのアルコール供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽8に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、アルコールが導入されるアルコール導入ラインに接続されている。
このようなアルコール供給管11には、その流れ方向途中において、アルコール第1還流管31(後述)の下流側端部、アルコール第2還流管32(後述)の下流側端部、および、アルコール第3還流管34の下流側端部が接続されている。
軽沸留去装置3は、プラント1において、反応槽8で得られる反応液から、過剰(未反応)のアルコール、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルや、副生成物であるアルコール、N−無置換カルバミン酸エステル、カーボネートなどの低沸点成分(軽沸分)を、分離するために、設備されている。
この軽沸留去装置3は、軽沸留去槽13と、軽沸留去槽13に接続される第1反応液輸送管14とを備えている。
軽沸留去槽13は、反応装置2において得られた反応液から、上記の低沸点成分を留去するための留去槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
第1反応液輸送管14は、反応装置2において製造された反応液を、軽沸留去槽13に輸送するための第1反応液輸送ラインであって、その下流側端部が、軽沸留去槽13に接続されている。また、その上流側端部が、反応装置2における反応槽8に接続されている。
熱分解装置4は、プラント1において、反応液をイソシアネートおよびアルコールに熱分解するために設備されている。
この熱分解装置4は、熱分解槽15と、熱分解槽15に接続される第2反応液輸送管16およびイソシアネート排出管17を備えている。
熱分解槽15は、反応装置2において得られた反応液を加熱して、イソシアネートおよびアルコールに熱分解する分解槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
このような熱分解槽15には、図示しないが、必要により、例えば、熱分解槽15に溶媒を供給する溶媒供給管などが備えられている。
第2反応液輸送管16は、軽沸留去装置3において軽沸分が留去された反応液を、熱分解槽15に輸送するための第2反応液輸送ラインであって、その下流側端部が、熱分解槽15に接続されている。また、その上流側端部が、軽沸留去装置3における軽沸留去槽13に接続されている。
イソシアネート排出管17は、反応液の熱分解により得られたイソシアネートを、プラント1から排出するためのイソシアネート排出ラインであり、その上流側端部が熱分解槽15に接続されている。また、その下流側端部が、図示しないが、イソシアネートが精製などされるイソシアネート精製ラインに接続されている。
蒸留装置7は、プラント1において、軽沸留去槽13において得られた低沸点成分(軽沸分)から、アルコールと、N−無置換カルバミン酸エステルと、カーボネートとを分離するために、設備されている。
この蒸留装置7は、蒸留塔28と、蒸留塔28に接続される軽沸分輸送管27とを備えている。
蒸留塔28は、軽沸留去装置3において得られた低沸点成分から、N−無置換カルバミン酸エステルを粗分離するとともに、カーボネートを粗分離し、さらに、アルコールを粗分離するための分離塔であって、公知の蒸留塔からなる。
軽沸分輸送管27は、軽沸留去装置3において得られた軽沸分を、蒸留装置7に輸送するための軽沸分輸送ラインであって、その上流側端部が、蒸留塔28に接続されている。また、その下流側端部が、軽沸留去装置3における軽沸留去槽13に接続されている。
加水分解装置5は、プラント1において、熱分解装置4で得られたイソシアネート残渣に、蒸留装置7で得られたカーボネートを配合し、そのカーボネートが配合されたイソシアネート残渣を、高圧高温水によりアミンおよびアルコールに加水分解するために設備されている。
この加水分解装置5は、加水分解槽18と、加水分解槽18に接続されるイソシアネート残渣輸送管19および水供給管20と、イソシアネート残渣輸送管19に接続されるカーボネート輸送管29とを備えている。
加水分解槽18は、カーボネートが配合されたイソシアネート残渣と高圧高温水とを接触させて、イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)をアミンおよびアルコールに加水分解し、加水分解液を得るための加水分解槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
このような加水分解槽18には、イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)の加水分解により副生する二酸化炭素、および、加水分解に用いられる水などをプラント1から排出する排水管33が備えられている。
また、このような加水分解槽18には、図示しないが、必要により、例えば、加水分解槽18内を攪拌するための攪拌装置などが備えられている。
イソシアネート残渣輸送管19は、熱分解装置4において生成したイソシアネート残渣を、加水分解槽18に輸送するためのイソシアネート残渣輸送ラインであって、その下流側端部が、加水分解槽18に接続されている。また、その上流側端部が、熱分解装置4における熱分解槽15に接続されている。
このようなイソシアネート残渣輸送管19には、その流れ方向途中において、カーボネート輸送管29の下流側端部が接続されている。
また、イソシアネート残渣輸送管19の途中には、必要により、カーボネート輸送管29が接続される下流側において、イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)を加水分解槽18に向けて圧力輸送するための残渣圧送ポンプ(図示せず)が介在され、さらに、必要により、残渣圧送ポンプ(図示せず)の下流側に、イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)を加熱するための残渣加熱器(図示せず)が介在される。
水供給管20は、高圧高温水を加水分解槽18に供給するための水供給ラインであり、耐熱耐圧配管からなり、その下流側端部が、加水分解槽18に接続されている。また、その上流側端部が、図示しない水(プロセス回収水やイオン交換水など)が給水される給水ラインに接続されている。
また、水供給管20の途中には、高圧高温水を加水分解槽18に向けて圧力輸送するための水圧送ポンプ23が介在されている。さらに、水供給管20の途中には、水圧送ポンプ23の下流側に、水を加熱するための水加熱器22が介在されている。
カーボネート輸送管29は、蒸留装置7において回収されたカーボネートを、加水分解装置5に輸送するためのカーボネート輸送ラインであって、その上流側端部が、蒸留塔28に接続されている。また、その下流側端部が、加水分解装置5におけるイソシアネート残渣輸送管19の流れ方向途中に接続されている。
また、カーボネート輸送管29の途中には、必要により、カーボネートをイソシアネート残渣輸送管19に向けて圧力輸送するためのカーボネート圧送ポンプ(図示せず)が介在され、さらに、必要により、カーボネート圧送ポンプ(図示せず)の下流側に、カーボネートを加熱するためのカーボネート加熱器(図示せず)が介在される。
精製装置6は、プラント1において、加水分解槽18で得られたアミンおよびアルコール、さらに、アミン、アルコールなどに分解されることなく残存する成分(2次残渣)を含む加水分解液から、アミンとアルコールとを分離および精製するために、設備されている。
この精製装置6は、精製槽24と、精製槽24に接続される加水分解液輸送管21および2次残渣排出管26を備えている。
精製槽24は、加水分解装置5において得られた加水分解液から、アミンとアルコールとを分離および精製するための精製槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
加水分解液輸送管21は、加水分解装置5において製造された反応液を、精製槽24に輸送するための加水分解液輸送ラインであって、その下流側端部が、精製槽24に接続されている。また、その上流側端部が、加水分解装置5における加水分解槽18に接続されている。
2次残渣排出管26は、イソシアネート残渣(カーボネート)を高圧高温水と接触させたときに、アミン、アルコールなどに分解されることなく残存する成分(2次残渣)を排出するための2次残渣排出ラインであって、その上流側端部が精製槽24に接続されている。また、その下流側端部が、図示しないが、2次残渣が貯留される2次残渣貯留槽に接続されている。
また、このようなプラント1は、さらに、アミン還流管25、アルコール第1還流管31、アルコール第2還流管32、アルコール第3還流管34およびカルバミン酸エステル還流管30を備えている。
アミン還流管25は、精製装置6において、加水分解液から分離および精製されたアミンを、反応装置2におけるアミン供給管9に還流するためのアミン還流ラインであって、その上流側端部が精製槽24に接続されるとともに、その下流側端部がアミン供給管9の流れ方向途中に接続されている。
アルコール第1還流管31は、熱分解装置4において、イソシアネートを熱分解して得られたアルコールを、反応装置2におけるアルコール供給管11に還流するためのアルコール第1還流ラインであって、その上流側端部が熱分解槽15に接続されるとともに、その下流側端部がアルコール供給管11の流れ方向途中に接続されている。
アルコール第2還流管32は、精製装置6において、加水分解液から分離および精製されたアルコールを、反応装置2におけるアルコール供給管11に還流するためのアルコール第2還流ラインであって、その上流側端部が精製槽24に接続されるとともに、その下流側端部がアルコール供給管11の流れ方向途中に接続されている。
アルコール第3還流管34は、蒸留装置7において、低沸点成分(軽沸分)を蒸留して得られたアルコールを、反応装置2におけるアルコール供給管11に還流するためのアルコール第3還流ラインであって、その上流側端部が蒸留塔28に接続されるとともに、その下流側端部がアルコール供給管11の流れ方向途中に接続されている。
カルバミン酸エステル還流管30は、蒸留装置7において、低沸点成分(軽沸分)を蒸留して得られたN−無置換カルバミン酸エステルを、反応装置2におけるカルバミン酸エステル供給管12に還流するためのカルバミン酸エステル還流ラインであって、その上流側端部が蒸留塔28に接続されるとともに、その下流側端部がカルバミン酸エステル供給管12の流れ方向途中に接続されている。
次に、このプラント1によって、カルバメートおよびイソシアネートを製造するとともに、イソシアネート残渣を得て、一方、カルバメートの製造において得られた低沸点成分からカーボネートを得て、そのカーボネートをイソシアネート残渣に配合し、得られたイソシアネート残渣(カーボネートを含む。)を加水分解し、得られるアミンおよびアルコールを、再度、カルバメート化反応の原料成分として用いる方法について、説明する。
この方法では、まず、反応装置2において、カルバメートを製造する。
このカルバメートの製造においては、反応装置2が連続運転され、カルバメートの原料であるアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとが、アミン供給管9と、尿素供給管10および/またはカルバミン酸エステル供給管12と、アルコール供給管11とから、それぞれ上記割合で圧力輸送され、反応槽8に対して、連続的に供給される。また、必要により、これら原料成分とともに、触媒が、触媒供給管(図示せず)から供給される。
そして、この方法では、反応槽8において、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとがカルバメート化反応し、これにより、カルバメートと、副生するアルコール、N−無置換カルバミン酸エステルおよびカーボネートとを含む反応液が得られる。
また、このようにして得られた反応液は、第1反応液輸送管14に供給され、軽沸留去装置3に圧力輸送される。
次いで、この方法では、軽沸留去装置3(軽沸留去槽13)において、反応液から、例えば、過剰(未反応)のアルコール、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、副生するアルコール、N−無置換カルバミン酸エステルおよびカーボネートなどを含む低沸点成分(軽沸分)が分離される。
軽沸留去槽13において分離された軽沸分は、軽沸分輸送管27に導入され、蒸留装置7に供給される。
そして、この方法では、蒸留装置7に供給された低沸点成分(軽沸分)は、蒸留塔28において蒸留され、これにより、N−無置換カルバミン酸エステル、カーボネートおよびアルコール(過剰(未反応)のアルコールおよび副生するアルコールを含む。)が粗分離される。
粗分離されたN−無置換カルバミン酸エステルは、カルバミン酸エステル還流管30に導入され、カルバミン酸エステル供給管12に還流される。これにより、N−無置換カルバミン酸エステルは、反応槽8に供給される。
また、粗分離されたアルコールは、アルコール第3還流管34に導入され、アルコール供給管11に還流される。これにより、アルコールは、反応槽8に供給される。
そして、粗分離されたカーボネート(N−無置換カルバミン酸エステルを含む場合がある。)は、カーボネート輸送管29に供給され、イソシアネート残渣輸送管19の流れ方向途中に圧力輸送される。
一方、軽沸留去装置3において、反応液から軽沸分を分離した後の残留物として得られた反応液は、第2反応液輸送管16に供給され、熱分解装置4に圧力輸送される。
次いで、この方法では、熱分解装置4において、反応液を熱分解する。
この反応液の熱分解においては、熱分解装置4が連続運転され、第2反応液輸送管16を介して供給される反応液が、熱分解槽15において、上記条件で加熱および熱分解される。
これにより、分解液として、イソシアネートおよびアルコールが得られ、また、イソシアネートおよびアルコールとともに、イソシアネート残渣が得られる。
熱分解槽15において得られたイソシアネートは、イソシアネート排出管17を介して排出され、図示しないイソシアネート精製ラインに輸送される。
一方、熱分解槽15において得られたアルコールは、分解液から分離された後、アルコール第1還流管31に導入され、アルコール供給管11に還流される。これにより、アルコールは、反応槽8に供給される。
そして、熱分解槽15において得られたイソシアネート残渣は、イソシアネート残渣輸送管19に供給され、加水分解装置5に圧力輸送される。
このとき、イソシアネート残渣輸送管19において、イソシアネート残渣に、カーボネート輸送管29を介して蒸留塔28から輸送されるカーボネートが、配合される。
これにより、高粘度のタール状であるイソシアネート残渣が、カーボネートによりスラリー状とされ、流動性が確保されるため、得られるスラリー状のイソシアネート残渣が、効率よく、加水分解装置5に圧力輸送される。
次いで、この方法では、加水分解装置5において、カーボネートが配合されたイソシアネート残渣を加水分解する。
このイソシアネート残渣の加水分解においては、加水分解装置5が連続運転され、熱分解装置4(熱分解槽15)からイソシアネート残渣輸送管19を介して供給されるイソシアネート残渣(カーボネートを含む。)が、加水分解槽18において、上記条件で分解される。
すなわち、この方法では、イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)が、イソシアネート残渣輸送管19を介して、例えば、3〜30MPaの供給圧力に昇圧され、かつ、例えば、190〜350℃の供給温度に加熱された状態で、加水分解槽18に供給される。
一方、給水ラインから水供給管20に流入される水は、水圧送ポンプ23によって、水供給管20内を、加水分解槽18に向けて圧力輸送され、また、水加熱器22によって加熱される。これによって、水は、3〜30MPaに昇圧され、かつ、190〜350℃に加熱された高圧高温水となって加水分解槽18に流入する。
加水分解槽18は、例えば、槽内温度(分解温度)190〜350℃、槽内圧力(分解圧力)3〜30MPaに制御されており、また、残渣圧送ポンプ(図示せず)および水圧送ポンプ23の制御により、(高圧高温水/イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)の質量比)が、例えば、0.5〜30に制御されている。
これによって、加水分解槽18では、イソシアネート残渣(カーボネートを含む。)が、高圧高温水によって連続的に加水分解され、分解生成物として、対応するアミンおよびアルコールが生成し、それらアミンおよびアルコール、さらに、アミン、アルコールなどに分解されることなく残存する成分(2次残渣)を含む加水分解液が得られる。
また、副生する二酸化炭素および加水分解において用いられた水が、排水管33を介してプラント1から排出される。
アミンおよびアルコール、さらに、2次残渣を含む加水分解液は、加水分解液輸送管21に供給され、精製装置6に圧力輸送される。
次いで、この方法では、精製装置6(精製槽24)において、加水分解液から、アミンとアルコールとを分離する。
分離されたアミンは、アミン還流管25に導入され、アミン供給管9に還流される。これにより、アミンは、反応槽8に供給される。
また、分離されたアルコールは、アルコール第2還流管32に導入され、アルコール供給管11に還流される。これにより、アルコールは、反応槽8に供給される。
なお、精製槽24において得られた2次残渣は、2次残渣排出管26を介して2次残渣貯留槽(図示せず)に輸送され、その2次残渣貯留槽(図示せず)で一時的に貯留された後、例えば、焼却処理される。
そして、このようなプラント1によれば、連続的にイソシアネートを製造するとともに、イソシアネート残渣、および、カルバメート化反応の副生成物として得られるカーボネートを一度に分解し、得られるアミンおよびアルコールを還流させ、効率よく利用することができる。
さらには、このようなプラント1によれば、カルバメート化反応の副生成物として得られるアルコールおよびN−無置換カルバミン酸エステルを分離し、そのアルコールおよびN−無置換カルバミン酸エステルを還流させ、効率よく利用することができる。
以上、カーボネートの処理方法について説明したが、このようなプラント1は、必要により、適宜の位置において、脱水工程などの前処理工程を実施するための前処理装置、中間工程、蒸留工程、濾過工程、精製工程および回収工程などの後処理工程を実施するための後処理装置などを備えることができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
実施例において用いられる転化率の定義を、以下に示す。
<転化率>
転化率(%)=(消費したカーボネートのmol数)÷(反応器に供給したカーボネートのmol数−反応中に圧力調整弁から排出されたカーボネートのmol数)×100
<TDAの回収率>
2,4−ジアミノトルエンと2,6−ジアミノトルエンとの混合物(質量比:80/20)(以下TDA)の回収率(mol%)は、反応器へ導入した濾残アセトン不溶解分がすべてビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(以下TDC)であるとし、さらにこれがすべてTDAとして回収されるとしたときの理論回収量(mol)に対する、実際に得られたTDA(mol)の割合である。
調製例1
(カルバメート化反応)
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器および攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、TDA(80.6g:0.661mol)、尿素(113g:1.88mol)および1−ブタノール(255g:3.44mol)を仕込み、さらに、触媒としてのp−トルエンスルホン酸亜鉛(0.64g:1.57mmol)と、1−ブタノール(23.4g:316mmol)との混合物を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度215℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節し、4時間反応させ、反応液410gを得た。
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(以下2,4−TDC)が38.9質量%、2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(以下2,6−TDC)が9.48質量%、1−ブタノールが33.2質量%、カルバミン酸ブチルが13.2質量%、ジブチルカーボネートが2.83質量%であることが確認された。
(軽沸分の減圧留去)
攪拌装置および冷却管を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記カルバメート化反応により得られた反応液387.77gを仕込み、200rpmで攪拌させながら、真空ポンプで容器内を2kPaまで減圧した。冷却管に25℃の循環水を流した状態で、容器内を100℃まで昇温してカルバメート化反応液を濃縮し、軽沸分125.44gを留去した。
留去された軽沸分について、高速液体クロマトグラフ(HPLC)およびガスクロマトグラフ(GC)により分析した結果、主成分はブタノールであることが確認された。続いて、循環水温度を70℃に設定し、容器内を180℃まで昇温してカルバメート化反応液を濃縮し、褐色の濃縮液195.89gと、軽沸分63.19gとを得た。
この軽沸分について、HPLCおよびGCにより分析した結果、その主成分がカルバミン酸ブチルおよびジブチルカーボネートであることが、確認された。
(カルバメートの熱分解、および、イソシアネート残渣の分離回収)
攪拌装置、および、上部に還流管の付いた精留塔を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記軽沸分の減圧留去で得た濃縮液を196gと、溶媒としてバーレルプロセス油B−05(松村石油社製)196gとをそれぞれ仕込み、還流管の循環水温度を90℃として、230rpmで攪拌させながら、真空ポンプにて系内を100hPaに減圧した。
次いで、反応器内部温度計の温調設定を250℃に設定し、昇温させることにより、塔頂温度を上昇させた。このとき、還流管内にトリレンジイソシアネート(以下TDI)が凝縮しはじめたことを確認した後、還流比5(=還流10秒/留出2秒)に設定して還流液を留出させた。
昇温より240分後に留出がなくなったことを確認した後、加熱を停止させ、反応液を5A濾紙にて濾過し、濾液と濾残とに分離した。
その後、濾残を、反応容器の壁に付着した固形物とともに、アセトンで洗浄、乾燥させることにより回収し、褐色の濾残アセトン不溶解分6.33gを得た。
(カルバミン酸ブチルとジブチルカーボネートとの分離)
上記軽沸分の減圧留去で得たカルバミン酸ブチルとジブチルカーボネートとの混合物(カルバミン酸ブチル:90.9質量%、ジブチルカーボネート:9.1質量%)63.19gを、理論段数20段相当の充填物を有する蒸留器に供給し、圧力20mmHgの条件下で蒸留することにより、カルバミン酸ブチルを約10質量%含有するジブチルカーボネート6.36gを得た。
実施例1
熱電対および圧力調整弁を備えた内容量36mLのSUS製オートクレーブに、調製例1で得られた濾残アセトン不溶解分1.00gと、調製例1で得たジブチルカーボネート2.12gとを仕込み、さらに系内をイオン交換水で満たした。反応器を電気炉に入れ、反応温度280℃、内圧20MPaを保つように圧力調整弁で調節しながら20分反応させた。なお、このときの加水比(イオン交換水/(ジブチルカーボネート+濾残アセトン不溶分))は、11に設定した。
反応器を室温まで放冷した後、反応液の一部を採取して、HPLCにて定量したところ、TDAの回収率は73.5mol%、ジブチルカーボネートの転化率は100%、ブタノールの回収率は75.5mol%であることが確認された。
実施例2
熱電対および圧力調整弁を備えた内容量36mLのSUS製オートクレーブに、調製例1で得られた濾残アセトン不溶解分1.00g、および、ジブチルカーボネート(三井化学ファイン製 DIALCARB M−2)2.12gを仕込み、実施例1と同様の方法にて分解反応させた。
反応器を室温まで放冷した後、反応液の一部を採取して、HPLCにて定量したところ、TDAの回収率は76.1mol%、ジブチルカーボネートの転化率は100%、ブタノールの回収率は79.0mol%であることが確認された。