JP2012011427A - 連続鋳造機内の二次冷却方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Nb、Ti、V、あるいはさらに、Cu、Niなどを含む溶鋼を連続鋳造する際に、冷却ばらつきに起因する連続鋳造機内の矯正部における鋳片割れを防止するための連続鋳造機内の二次冷却方法を提供する。
【解決手段】Nb、V、Tiの内、少なくとも1種の元素が含まれる溶鋼の連続鋳造時の二次冷却方法において、鋳型直下から矯正部まで連続的に冷却し、その領域で鋳片表面温度が900℃以下となる鋳片表面部の平均冷却速度を2℃/s以下とし、かつ連続鋳造機の矯正部において鋳片表面から10mm以内の温度が700℃以下とすることを特徴とする連続鋳造機内の二次冷却方法である。
【選択図】図2

Description

本発明は、Nb、Ti、V、Cu、Niなどを含有する鋳片の連続鋳造機内の矯正部における鋳片割れを防止するための連続鋳造機内の二次冷却方法に関わるものである。
連続鋳造機により溶鋼を鋳造する場合、連続鋳造機のうち、湾曲型連続鋳造機や垂直曲型連続鋳造機においては、鉛直に設置した鋳型に対して鋳造し、鋳片の引き抜き方向を垂直から水平に変更するために鋳片は連続鋳造機の湾曲部を通過する。そして湾曲部を通過した湾曲状態の鋳片は、水平方向に引き抜くために、連続鋳造機の矯正部において水平状態の鋳片に矯正される。
ところで鋼材の高強度化及び高機能化の要求により、鋼材の強度確保や溶接熱影響部の組織微細化のための析出物制御が行なわれている。その代表的な元素は、Nb、Ti、Vであり、これらの元素は炭窒化物を形成して、鋼材の特性を向上させる。一方、これらの元素を含有する溶鋼を連続鋳造する場合には、連続鋳造機の矯正部において鋳片表面割れが生じやすいことが知られている。また、上述の元素に加えてNi、Cuが添加されている場合、割れ感受性はさらに高まる。これは、連続鋳造機の矯正部において鋳片に歪が加わるが、この時の鋳片温度が脆化温度域に入るために、鋳片表面に割れが発生するものと考えられる。このような溶鋼を連続鋳造する場合、矯正部での鋳片表面割れを回避するために鋳型直下から湾曲部にかけての冷却を緩冷却にして。矯正部での鋳片温度を脆化温度域よりも上方に回避することが指向されている。しかしながら、鋳型直下から湾曲部にかけて緩冷却を行う場合、鋳造初期や操業トラブルにより鋳造速度低下領域の鋳片温度が低下してしまい、割れが発生してしまう。さらに、凝固シェル厚の強度不足に起因すると考えられる周期的なメニスカス部の変動が生じることも課題となる。このような周期的なメニスカス部の変動が生じる場合は、鋳造速度を低下させなければならず、生産性の大幅な低下を招いてしまう。
一方、上述のような課題を解決する目的で、鋳型直下から湾曲部にかけて強冷却を行い矯正部で復熱させることにより鋳片表層組織を割れにくい組織に変化させることが提案されている。特許文献1では、鋳片表層組織を600℃以上A3点以下に強冷却、復熱させフィルム状αが生成しにくい組織とすることで割れ防止を可能としている。また、同様に強冷却することにより、鋳片表層の粗大なγ相を完全に変態させ、復熱時に微細なγ粒とすることにより割れ防止を図ることもできる。鋳片表面割れは、粗大なγ粒の粒界で生じるため、γ粒の微細化が割れ防止に効果的であるためである。上記のいずれの方法でも、矯正部の前段階で冷却−復熱プロセスがあり、冷却の制御と復熱の制御の両者が必要となる。冷却−復熱プロセスが鋳片幅方向に均一に行なえれば割れ防止効果は大きいものの、冷却のばらつきがある場合は完全に割れを防止することはできない。特に、γ/αの逆変態を行う場合は、Mnなどの合金成分を比較的多量に含む鋼では、γ相が完全に変態する温度が低く上述の冷却のばらつきの影響を強く受ける。既存の連続鋳造機では、鋳型直下から湾曲部にかけて一旦強冷却を行い、その後復熱させて鋳片表層組織を逆変態させることを念頭に置いた設計となっていないため、強冷却を行う場合には冷却ばらつきが大きい。
特開平9−225607号公報
上述のように、Nb、Ti、V、Cu、Niなどを含む溶鋼を連続鋳造機の矯正部における鋳片表面割れを防止するために、鋳型直下から湾曲部での緩冷却では完全な割れ防止が困難であることと周期的なメニスカス変動による鋳造速度低下の課題があり、また鋳型直下から湾曲部にかけて強冷却を行うと冷却ばらつきによる鋳片表面割れの完全な防止が困難であるという課題がある。
本発明の目的は、Nb、Ti、V、あるいはさらにCu、Niなどを含む溶鋼を連続鋳造する際に、連続鋳造機内の矯正部における鋳片割れを防止するための連続鋳造機内の二次冷却方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために連続鋳造機内の二次冷却方法を検討し、連続鋳造機の矯正部における鋳片表面割れ防止のための二次冷却方法を開発した。
(1)手段1は、Nb、V、Tiの内、少なくとも1種の元素が含まれる溶鋼の連続鋳造時の二次冷却方法において、鋳型直下から矯正部まで連続的に冷却し、その領域で鋳片表面温度が900℃以下となる鋳片表面部の平均冷却速度を2℃/s以下とし、かつ連続鋳造機の矯正部において鋳片表面から10mm以内の温度が700℃以下とすることを特徴とする連続鋳造機内の二次冷却方法である。
(2)手段2は、手段1に加えさらに、溶鋼に、Cu、Niの内、少なくとも1種の元素が含まれることを特徴とする手段1記載の連続鋳造機内の二次冷却方法である。
本発明の連続鋳造機内の二次冷却方法を使用すれば、連続鋳造機内の矯正部において発生する鋳片表面割れを既存の連続鋳造機を改造することなく完全に防止することができる。
絞り値と温度の関係を示す図である。 鋳片表面温度(実測値)と割れ深さの関係を示す図である。 矯正部目標温度1000℃の時の強冷却終了時の鋳片表面温度分布(実測値)を示す図である。 矯正部目標温度毎の鋳片幅方向の鋳片表面温度分布(実測値)を示す図である。 平均冷却速度と鋳片幅方向の割れ発生率の関係を示す図である。
本発明者らは、鋳片の脆化温度範囲を検討し、連続鋳造機の矯正部における鋳片表面割れを防止する連続鋳造機内の二次冷却方法を考案した。
以下に図表を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
連続鋳造機の矯正部で鋳片表面割れが発生しやすい鋼種は、Nb、V、Tiなどの炭窒化物を析出しやすい元素を含有しているものである。また、Ni、Cuが添加されていると、さらに割れ感受性が高まることがわかっている。これらの元素を含有する鋼の脆化温度領域を高温引張試験を行い検討した。
表1に示す成分の試験片を用いて高温引張を行い、試験前後での断面積の収縮率を絞り値と定義し脆化温度領域を求めた。なお、絞り値が60%以上の場合延性が良好とした。試験片は、φ6mmの平行部を10mm持つ形状であり、評点距離を10mmとし、連続鋳造機の矯正部での歪速度を模擬した歪速度0.001(1/s)で引張試験を行った。試験時の熱サイクルは、昇温速度20℃/sで1400℃まで昇温し3分間保持した後、冷却速度1℃/sで引張温度まで冷却した。引張温度で10分間保持した後、上記の歪速度で引張試験を行った。試験結果を図1に示す。
Figure 2012011427
図1に示すように、絞り値が60%以下の脆化温度領域は、700〜950℃付近である。700〜950℃付近の脆化は、γ粒界への析出物の析出あるいはγ粒界へのフィルム状の初析αの析出が原因とされており、これらを防止することで脆化を回避できる。緩冷却による鋳片表面割れ防止は、脆化温度を高温側、つまり950℃以上を確保して割れを防止するものであり、操業変動などにより不可避的に950℃を下回った場合に割れが発生する。
一方、図1に示すように700℃以下の温度領域では、絞り値が60%以上に回復している。本発明において、検討した低合金鋼では、Ae1温度が700℃前後で大きく変化しない。Ae1温度は、平衡上、フェライト及びセメンタイトが安定になる温度であるため、700℃以下では変形による歪エネルギーによってフェライト変態が促進されると考えられる。したがって、700℃以下ではγ粒界上に析出したフィルム状αの厚みが粗大化するとともに、γ粒内でもフェライトが生成するために、フィルム状αへの歪の集中が抑制され脆化しにくくなると考えられる。以上の検討結果から連続鋳造時の矯正部において700℃以下の温度に保持できれば鋳片表面割れは発生しない可能性が高い。
上述の検討結果をもとに、実際の連続鋳造時の鋳片表面温度の計測と鋳片表面割れの関係について検討した。連続鋳造時の鋳片表面温度は、矯正前の湾曲部のセグメント間から熱電対を鋳片表面に流し込み計測した。鋳片幅方向の位置は、鋳片幅センター部、1/4幅部、エッジから100mm位置の3箇所とした。割れを調査した部位は、熱電対で測定した位置を中心に100mm幅で鋳造方向に1m長さの領域である。鋳片表面割れは、鋳造後の鋳片の表面に付着しているスケールを除去した後、浸透探傷法を用いて割れの有無を確認した。なお、割れの深さを計測するために、1mmピッチで研削し割れが無くなる深さを確認した。
対象とした鋼種は、表1のAと同じ成分系の鋼種である。鋳造条件は、鋳造幅1900mm、鋳造速度1.3m/minとし、冷却条件を変えて矯正部における鋳片表面温度を変えた。目標とする矯正部における表面温度は、1次元の伝熱計算により、1000℃、900℃、800℃、750℃、700℃、600℃とした。なお、目標とする矯正部における表面温度が1000〜800℃の場合には、表面温度を600℃まで強冷却を行い矯正部前で復熱させている。目標の矯正部における表面温度が750℃以下の場合は、矯正部まで連続的に冷却を行なっている。ここで、冷却速度は1〜2℃/sである。
図2に鋳片幅位置毎の矯正部における最高表面温度と割れ深さの関係を示す。図中の縦線は、割れが発生している深さ位置を示しており、600〜700℃の温度範囲では最表面には割れはなく、内部で割れが発生している。図2に示すように、表面温度が920℃以上の場合には割れは全く発生していない。表面温度が900℃以下になると、割れが発生し割れ深さが深くなることがわかる。さらに700℃を下回ると最表面での割れはなく、内部に割れが発生している。
さらに温度が低下して、600℃を下回ると、表層10mm以内の割れは確認されなかった。表面温度が600〜700℃の場合の割れの発生起点(表層側)の位置は、伝熱計算ではほぼ700℃であると推定される。また、表面温度が600℃以下の場合は、表層10mm位置でも700℃以下であると推定される。したがって、矯正部において鋳片表層10mm以内の温度が700℃以下となれば鋳片表層10mm以内に割れが発生しないことが確認できた。なお、鋳片表層10mm以内に割れがない場合には、圧延後の製品において欠陥がないことを確認している。
次に、既存の冷却設備において鋳片全幅での冷却ばらつきの影響について検討した。上述した試験について、鋳片表面の矯正部における目標温度と割れの発生状況について整理した。鋳片幅方向の表面温度を放射温度計を用いて測定し、ばらつきを評価した。
矯正部における目標温度が1000〜800℃の場合には、強冷却終了時点の鋳片表面温度及び矯正部前の鋳片表面の復熱温度を測定した。矯正部における目標温度が750℃以下の場合には、矯正部前での鋳片表面温度を測定した。対象とした鋼種は、表1のAと同じ成分系の鋼種である。なお、放射温度計における鋳片表面温度測定と前述の熱電対における鋳片表面温度測定と比較し、±20℃の誤差で一致することを確認している。図3に矯正部における目標温度が1000℃の場合の強冷却終了時点での鋳片幅方向の表面温度分布を、図4に矯正部前の鋳片幅方向の表面温度分布を示す。
図3に示すように、復熱させて矯正部における目標温度を1000℃とするために強冷却終了時点の鋳片表面温度が600℃を目標として強冷却した場合、エッジ部が大きく過冷却されるとともに鋳片センター部においても最大85℃程度の温度差が生じていることがわかる。図4に示すように、矯正部前での目標温度が600℃の場合の鋳片幅方向の表面温度分布が、最大でも45℃の温度差であり、図3で示した温度差よりも小さくなっている。強冷却条件の場合には、短時間で600℃まで表面温度を下げるために冷却速度が大きくなりばらつきが大きくなったためと考えられる。
また、鋳片表面温度に関して脆化温度域から完全に外れているのは、矯正部における目標温度が600℃の場合のみである。矯正部における目標温度が1000℃の場合には、鋳片のエッジ部が過冷却となり脆化温度域に入ってしまう。実際に鋳片全幅で鋳片表層から10mm以内の深さに割れがなかったのは、矯正部における目標温度が600℃の場合のみであった。
最後に、冷却ばらつきに及ぼす冷却速度の影響について検討した。表1の鋼種Aと同じ成分系の鋼種を用いて、強冷却の開始位置及び冷却速度を変化させて矯正部における鋳片表面温度の目標値は600℃になるように設定し、冷却速度の影響を検討した。鋳造条件は、鋳造幅1900mm、鋳造速度1.3m/minとした。鋳片割れの指標として、鋳片表層10mm以内のγ粒界割れが発生した鋳片幅方向の領域を鋳片全幅で割った値(鋳片幅方向の割れ発生率)とした。
図5に冷却速度と鋳片幅方向の割れ発生率の関係を示す。冷却速度は、前述と同様に熱電対を用いて実際に計測した温度の900℃から矯正部までの間の平均冷却速度とした。ここで、900℃以下の平均冷却速度とした理由は、高温側と低温側では大きく冷却速度が異なり、冷却のばらつきが900℃以下の温度領域で急激に拡大していくためである。
図5に示したように平均冷却速度が2℃/s以下では、鋳片表面割れの発生はなく、平均冷却速度が2℃/sを超えると、鋳片表面割れが散発してくることがわかる。これは、平均冷却速度が速いほど短時間での冷却となり、冷却ばらつきが大きくなってしまうためであると考えられる。従って、冷却速度としては、900℃以下の平均冷却速度を2℃/s以下とすることで安定して割れ防止効果が得られることがわかった。
なお、連続鋳造機内の二次冷却において鋳片の割れが問題となるTi、Nb、VおよびCu、Niの溶鋼中の含有量は、割れ発生のメカニズム、脆化温度範囲などにおいて若干の相違があるため一概には言えないが、例えば、含有量がTiでは、0.005%〜0.015%というような微量の範囲で、Nbは、0.015%以上で、また、Vは、0.03%以上で脆化傾向が顕著となり、割れが発生しやすくなる。また、Cu含有量は割れに対して極めて敏感であり、0.3%以上で割れが発生しやすくなる。このため通常、Niなどを同時に含有させて脆化を抑制している。また、Niでは0.3%を超えると脆化しやすくなる(但し、いずれも質量%)。従ってこれらの含有量を割れが問題となる上記元素の溶鋼中の含有量の目安とすることができる。
なお、割れが問題となる上記元素の含有量は、他の成分(例えばNなど)の影響を受けることもあるので、厳密には、予め実験或は操業実績に基づいて割れが問題となる上記元素の含有量を確認することが好ましい。
そして、当該鋳造する溶鋼中の上記元素の含有量が上述の含有量以上となる溶鋼に対して少なくとも本発明の二次冷却方法を適用するようにすればよい。
以下、実施例および比較例を示しながら、本発明に係る連続鋳造機内の二次冷却方法について、詳細に説明する。
表2に示す成分を含有する溶鋼を用いて、表3に示した二次冷却条件で連続鋳造し、矯正部における鋳片表層部の温度と鋳片表面割れについて調査した。連続鋳造の方法を以下に記載する。まず、転炉で脱炭した溶鋼を取鍋に受けて、RH(真空脱ガス装置)を用いて脱炭処理を行った。脱炭後、Alを添加して脱酸し、所定時間の攪拌を加えた後に、表2の成分を含有するように成分調整のための合金類を添加した。成分調整が終了した溶鋼は、取鍋から中間容器であるタンディッシュに耐火物製ノズルを介して供給し、タンディッシュ下部の耐火物製ノズルを介して鋳型に溶鋼を注入した。鋳造条件は、鋳造幅1900mm、鋳造厚280mm、鋳造速度1.3m/minである。
矯正部における鋳片表層温度は、以下のように推定した。連続鋳造時に熱電対を鋳片表面に流し込み、実際の表面温度変化を計測し、1次元の伝熱計算により合わせこみを行った。1次元の伝熱計算結果から、鋳片表面での900℃以下の平均冷却速度及び矯正部における表層下10mm位置での温度を求めた。鋳片表面割れに関しては、鋳片全幅で1mmピッチで表層下10mm位置まで研削し、各々の研削深さで浸透探傷法を用いて割れの有無を確認した。鋳片全幅で表層下10mm以内に割れがない場合を良好とした。調査結果を表4に示す。なお、冷却条件は、鋳型直下から矯正部の間で一旦冷却した後に復熱させるパターンと矯正部まで連続的に冷却するパターンの2種類に大別される。実施例1、2はNbを、実施例3、4はTiを、実施例5、6はVを含有する鋼種である。また、実施例7、8はNb及びVを含有する鋼種である。実施例9、10はNb、Tiに加えてNiを含有する鋼種であり、実施例11、12はさらにCuも含有する鋼種である。
試験No.1は、冷却−復熱パターンであり、矯正部での鋳片表面温度を1000℃まで復熱させるものである。しかしながら、平均水量密度が200NI/min/tonと少なかったために、鋳片幅方向の冷却むらによりγ相がα相に完全に変態できなかった領域が存在し、復熱後のγ粒も微細化しなかったため粗大γ粒となり、鋳片表面割れが発生した。
試験No.2では、矯正部まで連続冷却しているパターンである。矯正部での目標表面温度は600℃とし、900℃以下の平均冷却速度が1.5℃/sで矯正部における鋳片表層下10mm位置での温度が690℃である。鋳片表面割れは全く発生していなかった。
試験No.3は、実施例2と同様に矯正部まで連続冷却しているパターンであり、矯正部での目標表面温度は600℃とし、900℃以下の平均冷却速度が1.5℃/sで矯正部における鋳片表層下10mm位置での温度が690℃である。鋳片表面割れはまったく発生していなかった。
試験No.4では、矯正部まで連続冷却しているパターンであるが、矯正部での表面目標温度を達成するために冷却を強化するタイミングが遅く、900℃以下の平均冷却速度が2.3℃/sで矯正部における鋳片表層下10mm位置での温度が680℃である。平均冷却速度が速く、鋳片幅方向の冷却ばらつきが大きくなり、鋳片表面割れが発生した。
試験No.5は、矯正部まで連続冷却しているパターンであるが、矯正部での目標表面温度が700℃と高く、表面下10mm位置の温度も810℃と高くなり、鋳片表面割れが多発した。
試験No.6では、矯正部まで連続冷却しているパターンで矯正部での目標表面温度は550℃としている。900℃以下の平均冷却速度が1.7℃/sで矯正部における鋳片表層下10mm位置での温度が640℃である。鋳片表面割れは全く発生していなかった。
試験No.7では、試験No.1と同様の冷却−復熱パターンであるが、強冷却時の平均水量密度が250NI/min/tonと大きかったため、鋳片幅方向の冷却むらによる粗大γ粒の領域はなくなったが、鋳片エッジ部の過冷却により、エッジ部で鋳片表面割れが発生した。
試験No.8は、実施例2と同様に矯正部まで連続冷却しているパターンであり、矯正部での目標表面温度は600℃とし、900℃以下の平均冷却速度が1.5℃/sで矯正部における鋳片表層下10mm位置での温度が690℃である。鋳片表面割れはまったく発生していなかった。
試験No.9は、実施例1と同様の冷却−復熱パターンであるが、矯正部での鋳片表面温度を900℃まで復熱させるものである。しかしながら、平均水量密度が200NI/min/tonと少なかったため、鋳片幅方向の冷却むらによりγ相がα相に完全に変態できなかった領域が存在し、復熱後のγ粒も微細化しなかったために粗大γ粒となり、この場合も鋳片表面割れが発生した。
試験No.10では、実施例2と同様の矯正部まで連続冷却しているパターンである。900℃以下の平均冷却速度が1.5℃/sで矯正部における鋳片表層下10mm位置での温度が690℃である。実施例2と同様に鋳片表面割れは全く発生していなかった。
試験No.11は、実施例1と同様の冷却−復熱パターンであり、矯正部での鋳片表面温度を1000℃まで復熱させるものである。強制冷却時の平均水量密度が250NI/min/tonと大きかったため、鋳片幅方向の冷却むらによる粗大γ粒の領域はなくなったが、鋳片エッジ部の過冷却により、エッジ部で表面割れが発生した。
試験No.12は、実施例2と同様に矯正部まで連続冷却しているパターンであり、矯正部での目標表面温度は600℃とし、900℃以下の平均冷却速度が1.5℃/sで矯正部における鋳片表層下10mm位置での温度が690℃である。鋳片表面割れはまったく発生していなかった。
以上のように、本発明に係る連続鋳造機内の二次冷却方法を実施することにより、既存の二次冷却設備においてもばらつきなく矯正部における鋳片表面割れを防止することが可能である。
Figure 2012011427
Figure 2012011427
Figure 2012011427

Claims (2)

  1. Nb、V、Tiの内、少なくとも1種の元素が含まれる溶鋼の連続鋳造時の二次冷却方法において、鋳型直下から矯正部まで連続的に冷却し、その領域で鋳片表面温度が900℃以下となる鋳片表面部の平均冷却速度を2℃/s以下とし、かつ連続鋳造機の矯正部において鋳片表面から10mm以内の温度が700℃以下とすることを特徴とする連続鋳造機内の二次冷却方法。
  2. 前記溶鋼にさらに、Cu、Niの内、少なくとも1種の元素が含まれることを特徴とする請求項1記載の連続鋳造機内の二次冷却方法。
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