JP2012009341A - 無電極蛍光ランプの製造方法、無電極蛍光ランプ装置およびそれを用いた照明器具 - Google Patents

無電極蛍光ランプの製造方法、無電極蛍光ランプ装置およびそれを用いた照明器具 Download PDF

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Abstract

【課題】蛍光体膜に含まれる水分や不純物を低減し、ランプ効率を高め、ランプの光束劣化を抑制できる無電極蛍光ランプの製造方法、無電極蛍光ランプ装置、照明器具を提供する。
【解決手段】バルブ本体と、キャビティ形成部と、バルブを保護する保護膜と、紫外線を可視光に変換する蛍光体膜と、排気細管とを備えた無電極蛍光ランプの製造方法で、バルブ本体とキャビティ形成部を形成する第1工程(S1)と、バルブ本体とキャビティ形成部に保護膜と蛍光体膜を塗布する第2工程(S2)と、蛍光体膜を焼成する第3工程(S3)と、バルブ本体とキャビティ形成部を接合しバルブを形成する第4工程(S4)と、バルブ内を真空排気する第5工程(S5)と、酸素または酸素を含むガスをバルブに注入してプラズマを発生させ、真空排気を行う第6工程(S6)と、バルブ内に希ガスと水銀を封入する第7工程(S7)と、排気細管を封止する第8工程(S8)とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、無電極蛍光ランプの製造方法、無電極蛍光ランプ装置およびそれを用いた照明器具に関するものである。
従来から、無電極蛍光ランプとして、放電ガスである希ガス(例えば、アルゴンなど)および水銀が封入された透光性のバルブと、高周波電流が通電されることにより高周波電磁界を発生させる誘導コイルとを備えた無電極蛍光ランプが提案されている(特許文献1参照)。この無電極蛍光ランプは、例えば、図6に示すように、バルブ1の内壁面にバルブ1を保護する保護膜3が被着されるとともに、保護膜3におけるバルブ1の内壁面側とは反対側に、高周波電磁界の作用による放電ガスの放電により発生した紫外線を可視光に変換する蛍光体膜4が被着されている。また、この無電極蛍光ランプは、バルブ1における電球状の外郭(以下、バルブ本体と称する)1a以外の部位に、誘導コイル15を収納するキャビティ5が形成されている。なお、保護膜3および蛍光体膜4は、バルブ1の内壁面の略全面に形成されており、図6ではその一部のみを図示している。また、保護膜3は、シリカやアルミナなどで形成されている。
上述の無電極蛍光ランプのバルブ1は、電球状に形成され口金2側(図6において、下側)の端部が開口されたバルブ本体1aと、口金2側が開放された有底筒状に形成されバルブ本体1aに挿入されるキャビティ形成部1bとの口金2側の端部同士を接合することにより構成されており、キャビティ形成部1bに、一端部がキャビティ形成部1bの底部に連結されて内部空間がバルブ本体1aの内部空間に連通し、他端部が封止された排気細管7が設けられている。
この排気細管7内には、バルブ1内に水銀蒸気を供給する水銀アマルガムが収納された金属容器12が配置されており、金属容器12を排気細管7の上記一端部側と上記他端部側との両側から挟持する形で、上記一端部側に第1のガラスロッド11aが配置され、上記他端部側に第2のガラスロッド11bが配置されている。なお、排気細管7には、第1のガラスロッド11a、金属容器12および第2のガラスロッド11bを、上記他端部との間に保持する保持部8が設けられている。ここで、上述の誘導コイル15は、排気細管7に外装される筒状のフィライトコア17に巻回されている。また、誘導コイル15とフィライトコア17とを具備するカプラ16がキャビティ形成部1bに収納されている。
ここにおいて、上述の無電極蛍光ランプは、バルブ1内に電極を持たない構造のため、電極劣化による不点灯がなく、一般的に有電極蛍光ランプと比べて長寿命であると言われている。
また、無電極蛍光ランプを点灯させる無電極蛍光ランプ装置は、例えば、図7に示すように、無電極蛍光ランプの誘導コイル15(図6参照)に高周波電流(例えば、周波数が13.56M[Hz]の電流)を供給する電源ユニット20と、電源ユニット20と誘導コイル15とを電気的に接続する管灯線19とで構成されている。なお、電源ユニット20は、商用電源からなる交流電源(図示せず)に接続するプラグ22に電線21を介して接続されている。上記交流電源から電源ユニット20に電力を供給し、電源ユニット20から誘導コイル15に上記高周波電流を流すことによって、バルブ1内に高周波電磁界が発生する。この高周波電磁界の作用による放電ガスの放電により発生した紫外線が蛍光体膜4(図6参照)によって可視光に変換され、バルブ1の外部へ放射される。
上述の図6に示した無電極蛍光ランプの製造方法としては、例えば、図8に示すように、バルブ本体1aとキャビティ形成部1bとをそれぞれ形成する第1工程(S1)と、バルブ本体1aとキャビティ形成部1bそれぞれに保護膜3を形成してから蛍光体膜4を塗布する第2工程(S2)と、蛍光体膜4を大気中にて高温で焼成する第3工程(S3)と、バルブ本体1aとキャビティ形成部1bとを接合することでバルブ1を形成する第4工程(S4)と、上記他端部が開放された状態の排気細管7を通してバルブ1内を高温で真空排気する第5工程(S5)と、バルブ1内に放電ガスである希ガス(例えば、アルゴンなど)および水銀(アマルガムを含む)を封入する第7工程(S7)と、排気細管7の上記他端部を封止する第8工程(S8)とを有する方法が知られている。しかしながら、上述の各工程は、それぞれ別々の製造装置で行われ、各製造装置の処理時間がそれぞれ異なるので、各工程間に待ち時間が発生する。そのため、待ち時間を調整するために、製造途中の仕掛け品を一時保管する必要があり、第4工程(S4)と第7工程(S7)との間において、バルブ1の内部と外部とを連通させる排気細管7から大気が流入しないように、バルブ1内に不活性ガス(例えば、窒素ガスなど)を注入して保管することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平7−272688号公報 特開2007−294265号公報
ところで、図8に示した無電極蛍光ランプの製造方法に、上記特許文献2に記載された技術を適用すれば、第4工程(S4)と第7工程(S7)との間において、バルブ1内に不活性ガスを注入してあるので、大気中に含まれる水分がバルブ1内に取り込まれることを防止し、バルブ1の内壁面に形成された蛍光体膜4に水分が吸着されることを抑制することができる。しかしながら、上述の製造方法では、第3工程(S3)にて蛍光体膜4を焼成し、第5工程(S5)にてバルブ1内を真空排気しているにもかかわらず、蛍光体膜4に含まれている有機物などの不純物を真空排気により除去し切れなかったりして、不純物がバルブ1内の蛍光体膜4に残留していることが懸念される。
この不純物が除去し切れない理由として2つ挙げられる。1つ目の理由は、第3工程(S3)において、蛍光体膜4に含まれている有機物が、焼成により蛍光体膜4からすべて排出されないことである。これは、蛍光体の粉末と、例えば酢酸ブチルからなる有機溶媒と、例えばニトロセルロースからなる増粘剤とを混合した混合液をバルブ1の内壁面に塗布して蛍光体膜4を形成した後に、大気中にて高温で蛍光体膜4を焼成すると、上記増粘剤が酸化して、上記有機溶媒が蒸発するが、第3工程(S3)の温度(焼成温度)や焼成時間によっては、有機物の成分である炭化水素が蛍光体膜4に残留してしまうからである。また、2つ目の理由は、バルブ1の製造工程(特に、第5工程(S5)までの製造工程)において、バルブ1内に埃や油成分が混入することで、炭化水素が蛍光体膜4に付着することが挙げられる。したがって、炭化水素がバルブ1内の蛍光体膜4に残留したまま無電極蛍光ランプを形成することになり、蛍光体膜4に残留している炭化水素は、無電極蛍光ランプの使用時に、バルブ1の内部空間に拡散されて不純ガス(メタンやエタンのような揮発性ガス)となる。この不純ガスは、バルブ1内に発生するプラズマや紫外線により水素とカーボンとに解離され、カーボン膜(主に、カーボンブロック)が、蛍光体膜4の表面に形成される。その結果、蛍光体膜4の表面に形成されたカーボン膜が、蛍光体膜4における紫外線から可視光への変換を妨げたり、可視光を吸収して可視光の放射を妨げたりすることで、無電極蛍光ランプの光束劣化が促進したり、無電極蛍光ランプのランプ効率が低下したりする。
ここで、不純物を低減させる方法としては、第3工程(S3)および第5工程(S5)において、温度を高くする方法や、第3工程(S3)および第5工程(S5)の処理時間を長くする方法が考えられる。しかし、第3工程(S3)および第5工程(S5)は、約450度以上の高温で行われるため、蛍光体膜4の性能劣化が懸念され、温度を高くする方法はあまり好ましくなく、できる限り450度の温度で、且つ、短時間で行うのがよい。
また、不純物を低減させる他の方法として、例えば有電極蛍光ランプのように、バルブ1内に不純ガスを吸着するゲッターを配置する方法が考えられるが、実際にこの方法によって実験を行ったところ、効果は得られなかった。この原因としては、有電極蛍光ランプの場合は、電極寿命を考慮して管壁負荷(入力電力/バルブ内の表面積)をあまり大きくすることができないのに対して、無電極蛍光ランプの場合は電極がないため、管壁負荷を大きくすることができることが挙げられる。なお、有電極蛍光ランプの管壁負荷は、通常、0.03〜0.05[W/cm]であるのに対して、無電極蛍光ランプの管壁負荷は、通常、0.1〜0.2[W/cm]である。そのため、無電極蛍光ランプは、有電極蛍光ランプと比較して、バルブ1内の表面積が入力電力に対して小さくなるものの、管壁温度が高くなり、単位面積あたりのプラズマや紫外線が多くなるため、多量の不純ガスが蛍光体膜4からバルブ1の内部空間に排出されると考えられる。つまり、無電極蛍光ランプは、これらの不純ガスを吸着するために、多量のゲッターが必要となる。さらに、ゲッターの経時的な劣化や、無電極蛍光ランプのバルブ1内に多量のゲッターを配置すること等を考慮すると、無電極蛍光ランプにゲッターを使用する方法は適当でないと考えられる。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、蛍光体膜に含まれる水分および不純物を低減し、ランプ効率を高めながらも、ランプの光束劣化を抑制することができる無電極蛍光ランプの製造方法、無電極蛍光ランプ装置およびそれを用いた照明器具を提供することにある。
本発明の無電極蛍光ランプの製造方法は、放電ガスである第1の希ガスおよび水銀が封入された透光性のバルブと、高周波電流が通電されることにより高周波電磁界を発生させる誘導コイルと、前記バルブの内壁面に被着され前記バルブを保護する保護膜と、前記保護膜における前記バルブの前記内壁面側とは反対側に被着され前記高周波電磁界の作用による前記第1の希ガスの放電により発生した紫外線を可視光に変換する蛍光体膜とを備え、前記バルブにおける電球状に形成され口金側の端部が開口されたバルブ本体と、前記バルブ本体以外の部位に、前記口金側が開放された有底筒状に形成され前記バルブ本体に挿入されるキャビティ形成部とが、前記口金側の前記端部同士を接合することにより前記バルブが構成されており、前記キャビティ形成部には、一端部が前記キャビティ形成部の底部に連結されて内部空間が前記バルブ本体の内部空間に連通し、他端部が封止された排気細管が設けられている無電極蛍光ランプの製造方法であって、前記バルブ本体と前記キャビティ形成部とをそれぞれ形成する第1工程と、前記バルブ本体と前記キャビティ形成部それぞれに前記保護膜を形成してから前記蛍光体膜を塗布する第2工程と、前記蛍光体膜を大気中にて焼成する第3工程と、前記バルブ本体と前記キャビティ形成部とを接合することで前記バルブを形成する第4工程と、前記他端部が開放された状態の前記排気細管を通して前記バルブ内を真空排気する第5工程と、酸素もしくは酸素を含有するガスを前記バルブ内に注入してから、前記酸素もしくは前記酸素を含有するガスに外部からエネルギーを与えることでプラズマを発生させ、真空排気を行うことで前記蛍光体膜に含まれる水分および不純物を低減させる第6工程と、前記バルブ内に前記第1の希ガスおよび前記水銀を封入する第7工程と、前記排気細管の前記他端部を封止する第8工程とを有することを特徴とする。
この無電極蛍光ランプの製造方法において、前記第6工程の前記酸素を含有するガスは、第2の希ガスもしくは窒素ガスであることを特徴とする。
この無電極蛍光ランプの製造方法において、前記第6工程の前記第2の希ガスは、前記第7工程で前記バルブ内に封入される前記第1の希ガスと同種類のものであることを特徴とする。
この無電極蛍光ランプの製造方法において、前記第6工程は、前記酸素もしくは前記酸素を含有するガスを前記バルブ内に注入してから、前記酸素もしくは前記酸素を含有するガスに外部からエネルギーを与えることでプラズマを発生させる過程と、前記蛍光体膜に含まれる水分および不純物を真空排気する過程とを同時に行うことを特徴とする。
本発明の無電極蛍光ランプ装置は、前記無電極蛍光ランプの製造方法により形成された無電極蛍光ランプを備えてなることを特徴とする。
本発明の照明器具は、前記無電極蛍光ランプ装置を備えてなることを特徴とする。
本発明の無電極蛍光ランプの製造方法においては、蛍光体膜に含まれる水分および不純物を低減し、ランプ効率を高めながらも、ランプの光束劣化を抑制することができるという効果がある。
本発明の無電極蛍光ランプ装置においては、前記無電極蛍光ランプを備えた無電極蛍光ランプ装置を提供することができるという効果がある。
本発明の照明器具においては、前記無電極蛍光ランプ装置を備えた照明器具を提供することができるという効果がある。
実施形態の無電極蛍光ランプの製造方法を示すフローチャートである。 同上の無電極蛍光ランプの製造方法における第5工程ないし第8工程を示す概略説明図である。 同上の無電極蛍光ランプおよび比較例の無電極蛍光ランプの特性図である。 同上の無電極蛍光ランプの製造方法における第6工程について、他の方法を用いた第6工程を示す概略説明図である。 同上の照明器具を示す概略説明図である。 従来例を示す無電極蛍光ランプの概略断面図である。 同上の無電極蛍光ランプを点灯させる無電極蛍光ランプ装置の概略説明図である。 同上の無電極蛍光ランプの製造方法を示すフローチャートである。
以下、本実施形態の無電極蛍光ランプの製造方法について、図1〜図2を参照しながら説明する。なお、無電極蛍光ランプの構造は、図6に示した従来例と同じであり、図6に示した従来例と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。また、バルブ1内には、第1の希ガス(例えば、アルゴンなど)および水銀(アマルガムを含む)が封入されている。
無電極蛍光ランプの製造方法は、図1に示すように、バルブ本体1aとキャビティ形成部1bとをそれぞれ形成する第1工程(S1)と、バルブ本体1aとキャビティ形成部1bそれぞれに保護膜3を形成してから蛍光体膜4を塗布する第2工程(S2)と、蛍光体膜4を大気中にて高温で焼成する第3工程(S3)と、バルブ本体1aとキャビティ形成部1bとを接合することでバルブ1を形成する第4工程(S4)と、上記他端部が開放された状態の排気細管7を通してバルブ1内を高温で真空排気する第5工程(S5)と、バルブ1内に排気細管7を通して酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガス(例えば、アルゴンなど)を注入してから、バルブ1内の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスに外部からエネルギーを与えることでプラズマを発生させ、真空排気を行うことで保護膜3や蛍光体膜4に含まれている水分および有機物などの不純物を低減させる第6工程(S6)と、バルブ1内に排気細管7を通して第1の希ガス(例えば、アルゴンなど)および水銀(アマルガムを含む)を封入する第7工程(S7)と、排気細管7の上記他端部を封止する第8工程(S8)とを有する。
以下に、上述の無電極蛍光ランプの製造方法について詳述する。
まず、第1工程(S1)では、バルブ本体1a、キャビティ形成部1bを透光性材料により形成するが、バルブ本体1aの形成工程とキャビティ形成部1bの形成工程との順序は、限定するものではない。
第2工程(S2)では、まず、例えば水とポリエチレンオキサイドとの溶液に二酸化珪素(シリカ)を混合した懸濁液(以下、スラリーと称する)を、バルブ本体1aの内壁面およびキャビティ形成部1bの外壁面に沿うように垂れ流して塗布する。次に、塗布した上記スラリーに空気を吹き付けて上記スラリーを乾燥させることにより保護膜3を形成する。それから、蛍光体(青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体の混合物)の粉末と、例えば酢酸ブチルからなる有機溶媒と、例えばニトロセルロースからなる増粘剤とを混合した混合液を、保護膜3に積層するように垂れ流して塗布する。そして、塗布した上記混合液に空気を吹き付けて上記混合液を乾燥させることで蛍光体膜4を形成する。
第3工程(S3)では、蛍光体膜4を大気中にて高温(例えば、450度)で焼成することにより、蛍光体膜4に含まれる上記増粘剤を酸化させ、上記有機溶媒を蒸発させて、蛍光体膜4からバルブ1の内部空間に水分および不純物を排出する。
第4工程(S4)では、バルブ本体1aとキャビティ形成部1bとを接合することでバルブ1を形成する。
第5工程(S5)では、図2に示すように、電気炉26内でバルブ1を高温で加熱し、真空排気を行う真空装置23によって、上記他端部が開放された状態の排気細管7を通してバルブ1内を真空排気する。
第6工程(S6)では、まず、図2に示すように、バルブ1内に排気細管7を通して酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスを注入する。次に、バルブ1の最大外径付近に巻回された誘導コイル24に高周波電力装置25から高周波電流(例えば、周波数が13.56M[Hz]の電流)を通電することによって、バルブ1内に高周波電磁界を発生させ、バルブ1内の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスを励起させることにより、バルブ1内にプラズマが発生する(図2中の一点鎖線)。このプラズマによって発生した酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスによるイオンが、保護膜3や蛍光体膜4に残留している水分および不純物の原子または分子に衝突する効果(スパッタ効果)を用いることによって、保護膜3や蛍光体膜4に残留している水分および不純物が、バルブ1の内部空間に排出される(以下、バルブ1内にプラズマを発生させ、保護膜3や蛍光体膜4に残留している水分および不純物が、バルブ1の内部空間に排出されることを、プラズマ洗浄と称する)。さらに、このプラズマによって発生した酸素による酸素原子や酸素ラジカルと保護膜3や蛍光体膜4に残留している有機物の成分である炭化水素との化学反応を用いることによって、炭化水素は、一酸化炭素、二酸化炭素および水素に解離される。以下に、上述の化学反応を表す化学反応式を示す。なお、Cは、炭化水素を表す。また、n、mは自然数を表す。
[固体]+nO[気体]→nCO[気体]+(1/2)mH[気体]
[固体]+(1/2)nO[気体]→nCO[気体]+(1/2)mH[気体]
したがって、保護膜3や蛍光体膜4に残留している炭化水素が、一酸化炭素、二酸化炭素および水素としてバルブ1の内部空間に排出される。それから、上述のプラズマが発生している状態で、真空装置23にて、排気細管7を通してバルブ1の外部に水分および不純物を真空排気する。なお、プラズマ洗浄用の酸素を含有する第2の希ガスは、アルゴンに限らず、例えばヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンなどであってもよい。また、第2の希ガスに限らず、窒素ガスであってもよい。したがって、プラズマ洗浄用の酸素を含有するガスに、第2の希ガスまたは窒素ガスを使用することで、バルブ1内にプラズマを発生させ易く、第2の希ガスおよび窒素ガスはバルブ1内に残留しないため、効率的にバルブ1内を排気することができる。
ここで、ヘリウムまたはネオンは、アルゴンに比べて熱伝導率が高いので、プラズマ洗浄用の酸素を含有する第2の希ガスとして使用する場合に、バルブ1の温度を短時間で上昇させることができるという利点がある。しかし、ヘリウムまたはネオンは、原子が小さいため、蛍光体膜4に侵入することがあり、蛍光体膜4に残留してしまう懸念がある。また、クリプトンまたはキセノンは、アルゴンに比べて電離電圧が低いので、プラズマ洗浄用の酸素を含有する第2の希ガスとして使用する場合に、低い入力電力でプラズマを発生させ維持することできるという利点がある。しかしながら、クリプトンまたはキセノンは、アルゴンと比較して、価格が高価である。さらに、上述のプラズマ洗浄は、酸素のみによるプラズマ洗浄も可能であり、酸素のみによるプラズマ洗浄は、酸化や解離を短時間で行うことができる。しかしながら、酸素は、アルゴンに比べて、プラズマを発生させたり維持したりするのに高い入力電力が必要となる。また、酸素は、助燃性を有するため、取り扱いに注意が必要となる。したがって、プラズマ洗浄用の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスは、その特長により適宜選択する必要がある。但し、プラズマ洗浄用の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスは、最終的にバルブ1内に封入される第1の希ガスと同じものがよく、バルブ1内に残留した場合であっても、無電極蛍光ランプのランプ特性に影響を与えることはない。
第7工程(S7)では、図2に示すように、バルブ1内に排気細管7を通して、第1の希ガスおよび水銀を封入してから、排気細管7内に第1のガラスロッド11a、金属容器12、第2のガラスロッド11bを順次挿入する。
第8工程(S8)では、図2に示すように、排気細管7の上記他端部を封止した後、バルブ1のキャビティ形成部1bにより形成されているキャビティ5に、フィライトコア17に巻回された誘導コイル15を具備したカプラ16を収納し、バルブ1に口金2を取り付けて、無電極蛍光ランプが形成される。
したがって、上述の無電極蛍光ランプの製造方法では、バルブ1内を高温で真空排気する第5工程と、バルブ1内に第1の希ガスおよび水銀を封入する第7工程との間に、プラズマ洗浄用の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスをバルブ1内に注入し、バルブ1内の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスに外部からエネルギーを与えてバルブ1内にプラズマを発生させて、保護膜3や蛍光体膜4に残留している水分および不純物をバルブ1の外部に真空排気することによって、バルブ1内に残留している水分および不純物を低減させることができる。その結果、無電極蛍光ランプの光束劣化を抑制することができ、ランプ効率を高めることができる。
ここにおいて、本実施形態では、上述の説明から分かるように、プラズマ洗浄用の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスに外部からエネルギーを与えることでプラズマを発生させる過程と、保護膜3や蛍光体膜4に残留している水分および不純物をバルブ1の外部に真空排気する過程とを同時に行うようにしている。これによって、第6工程(S6)では、プラズマ洗浄用の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスが励起されて発生したプラズマをバルブ1内で発生させたまま、真空排気を行うことにより、保護膜3や蛍光体膜4に残留している水分および不純物を効率的にバルブ1の外部に排出することができる。
上述の無電極蛍光ランプの製造方法における第6工程の一実施例として、酸素を10[%]混合した第2の希ガスであるアルゴンを所定の圧力(例えば、約40[Pa])でバルブ1内に注入し、バルブ1の最大外径(外径110[mm])付近に1回巻回された誘導コイル24に、出力電力が100[W]である高周波電力装置25から高周波電流(周波数が13.56M[Hz]の電流)を約10分間通電した。酸素を10[%]混合したアルゴンが励起されて発生したプラズマをバルブ1内で発生させたまま(ランプが点灯したまま)、真空装置23にて真空排気を行い、ランプが消灯した後(約1分後)に、再度、酸素を10[%]混合したアルゴンをバルブ1内に注入して、同様の作業を少なくとも3回行った無電極蛍光ランプを作製した。なお、アルゴンに混合された酸素の体積比は、一例を示すものであって、特に限定するものではない。この作業にて形成された定格が50[W]の無電極蛍光ランプと、従来例の製造方法(図8参照)で形成された定格が50[W]の無電極蛍光ランプとの2個ずつについて、ランプ点灯時間が0時間、100時間、200時間の時点におけるランプ効率をそれぞれ測定した結果を図3に示す。
ここで、酸素を10[%]混合したアルゴンによりプラズマ洗浄を行う場合、酸素を10[%]混合したアルゴンを、例えば、約67[Pa]のガス圧でバルブ1内に注入するとアーク放電が起こらず、プラズマの発光領域(図2中の一点鎖線)が大きくならない場合がある。そこで、酸素を10[%]混合したアルゴンを約67[Pa]のガス圧でプラズマ洗浄する場合には、まず、バルブ1内にプラズマを発生させるときに、酸素を10[%]混合したアルゴンを、例えば、約40[Pa]のガス圧でバルブ1内に注入しておき、プラズマが発生した状態でガス圧を上昇させる方法も可能である。
従来例の製造方法で形成された比較例の無電極蛍光ランプのランプ特性(図3では、ハおよびニを示す)は、ランプ点灯時間が0時間の場合、ランプ効率が約87[lm/W]であるが、ランプ点灯時間が100時間の場合、ランプ効率が約81[lm/W]となり、ランプ効率が約6[lm/W]も低下した。一方、本実施形態の無電極蛍光ランプの製造方法で形成された実施例の無電極蛍光ランプのランプ特性(図3では、イおよびロを示す)は、ランプ点灯時間が0時間の場合、ランプ効率は約87[lm/W]であるが、ランプ点灯時間が100時間の場合、ランプ効率が約84.3[lm/W]となり、ランプ効率が約2.7[lm/W]だけ低下した。したがって、実施例の無電極蛍光ランプは、比較例の無電極蛍光ランプと比較して、ランプの光束劣化を抑制することができた。また、ランプ点灯時間が100時間の場合における実施例の無電極蛍光ランプは、比較例の無電極蛍光ランプと比較して、ランプ効率が約3.3[lm/W]向上したことになる。つまり、実施例の無電極蛍光ランプは、本実施形態の無電極蛍光ランプの製造方法の第6工程(S6)において、保護膜3や蛍光体膜4に残留している水分および不純物を取り除くことにより、バルブ1内の水分および不純物を低減させることができたと考えられる。なお、定格が50[W]の無電極蛍光ランプに100[W]の高周波電力を印加したが、無電極蛍光ランプが無電極であり、高負荷による電極劣化がないため、実施することができる。また、通常、蛍光ランプは有電極や無電極にかかわらず、最初の点灯時から100時間経過した時点までに蛍光ランプの光束劣化が大きいと言われている。そのため、蛍光ランプの明るさが急激に変化しないように、ランプ点灯時間が100時間点灯した時点でのランプ効率をランプ点灯時間が0時間のランプ効率として、カタログなどにエネルギー消費効率(ランプの光束値)で記載されている。なお、最初の点灯時から100時間経過した時点のランプ効率は、ランプ点灯時間が0時間のランプ効率(最初の点灯時におけるランプ効率)よりも5[%]ほど劣化すると一般的に言われている(但し、蛍光ランプによって異なる)。
また、本実施形態の無電極蛍光ランプの製造方法の第6工程において、プラズマ洗浄を行う方法は、誘導コイル24に高周波電力装置25から高周波電流を通電させることで、バルブ1内に高周波電磁界を発生させ、バルブ1内の酸素もしくは酸素を含有する第2の希ガスが励起して、バルブ1内にプラズマを発生させているが、例えば、図4に示すように、テスラーコイルなどの高電圧発生装置28を用いて、バルブ1の最大外径付近に外装された金属リング27に、高電圧発生装置28から電線29を介して高電圧を均等に印加する方法であってもよい。
したがって、本実施形態の無電極蛍光ランプの製造方法の第6工程(S6)において、保護膜3や蛍光体膜4に残留している水分および不純物を低減することにより、ランプ効率を高めながらも、ランプの光束劣化を抑制することができる無電極蛍光ランプを形成することができる。また、本実施形態の無電極蛍光ランプの製造方法により形成された無電極蛍光ランプを備えた無電極蛍光ランプ装置を提供することができる。なお、この無電極蛍光ランプ装置の構造は、図7に示した従来例の無電極蛍光ランプ装置と同じなので、説明を省略する。
以下、上述の無電極蛍光ランプ装置を備えた照明器具の一例について、図5に基づいて説明する。なお、上述の無電極蛍光ランプ装置は、図7に示した従来例と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。
光を反射する椀状の反射板10aおよび透光性材料で形成された前面パネル10bで構成された筐体10と、この筐体10内に配置され上述の無電極蛍光ランプの製造方法により形成された無電極蛍光ランプとを備え、この無電極蛍光ランプの誘導コイル15に高周波電流(例えば、周波数が13.56M[Hz]の電流)を供給する電源ユニット20と、電源ユニット20と誘導コイル15とを電気的に接続する管灯線19とで構成されている。なお、電源ユニット20は、商用電源からなる交流電源(図示せず)に接続するプラグ22に電線21を介して接続されている。上記交流電源から電源ユニット20に電力を供給し、電源ユニット20から誘導コイル15に上記高周波電流を流すことによって、バルブ1の内部空間に高周波電磁界が発生する。この高周波電磁界の作用による第1の希ガス(例えば、アルゴンなど)の放電により発生した紫外線が蛍光体膜4によって可視光に変換され、可視光がバルブ1の外部へ放射される。したがって、上述の無電極蛍光ランプ装置を備えた照明器具を提供することができる。
以上説明した本実施形態の無電極蛍光ランプの製造方法では、保護膜および蛍光体膜に含まれる水分および不純物を低減し、ランプ効率を高めながらも、ランプの光束劣化を抑制することができる。
1 バルブ
1a バルブ本体
1b キャビティ形成部
2 口金
3 保護膜
4 蛍光体膜
5 キャビティ
7 排気細管

Claims (6)

  1. 放電ガスである第1の希ガスおよび水銀が封入された透光性のバルブと、高周波電流が通電されることにより高周波電磁界を発生させる誘導コイルと、前記バルブの内壁面に被着され前記バルブを保護する保護膜と、前記保護膜における前記バルブの前記内壁面側とは反対側に被着され前記高周波電磁界の作用による前記第1の希ガスの放電により発生した紫外線を可視光に変換する蛍光体膜とを備え、前記バルブにおける電球状に形成され口金側の端部が開口されたバルブ本体と、前記バルブ本体以外の部位に、前記口金側が開放された有底筒状に形成され前記バルブ本体に挿入されるキャビティ形成部とが、前記口金側の前記端部同士を接合することにより前記バルブが構成されており、前記キャビティ形成部には、一端部が前記キャビティ形成部の底部に連結されて内部空間が前記バルブ本体の内部空間に連通し、他端部が封止された排気細管が設けられている無電極蛍光ランプの製造方法であって、前記バルブ本体と前記キャビティ形成部とをそれぞれ形成する第1工程と、前記バルブ本体と前記キャビティ形成部それぞれに前記保護膜を形成してから前記蛍光体膜を塗布する第2工程と、前記蛍光体膜を大気中にて焼成する第3工程と、前記バルブ本体と前記キャビティ形成部とを接合することで前記バルブを形成する第4工程と、前記他端部が開放された状態の前記排気細管を通して前記バルブ内を真空排気する第5工程と、酸素もしくは酸素を含有するガスを前記バルブ内に注入してから、前記酸素もしくは前記酸素を含有するガスに外部からエネルギーを与えることでプラズマを発生させ、真空排気を行うことで前記蛍光体膜に含まれる水分および不純物を低減させる第6工程と、前記バルブ内に前記第1の希ガスおよび前記水銀を封入する第7工程と、前記排気細管の前記他端部を封止する第8工程とを有することを特徴とする無電極蛍光ランプの製造方法。
  2. 前記第6工程の前記酸素を含有するガスは、第2の希ガスもしくは窒素ガスであることを特徴とする請求項1記載の無電極蛍光ランプの製造方法。
  3. 前記第6工程の前記第2の希ガスは、前記第7工程で前記バルブ内に封入される前記第1の希ガスと同種類のものであることを特徴とする請求項2記載の無電極蛍光ランプの製造方法。
  4. 前記第6工程は、前記酸素もしくは前記酸素を含有するガスを前記バルブ内に注入してから、前記酸素もしくは前記酸素を含有するガスに外部からエネルギーを与えることでプラズマを発生させる過程と、前記蛍光体膜に含まれる水分および不純物を真空排気する過程とを同時に行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の無電極蛍光ランプの製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の無電極蛍光ランプの製造方法により形成された無電極蛍光ランプを備えてなることを特徴とする無電極蛍光ランプ装置。
  6. 請求項5記載の無電極蛍光ランプ装置を備えてなることを特徴とする照明器具。
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