JP2012002655A - 摺動状態評価装置、エンジン制御ユニット、エンジンシステム及び摺動状態評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る摺動状態評価装置5は、ピストン22が往復自在に設置されるシリンダライナ21の内周面21cと、ピストン22の外周面22aに設けられるピストンリングR1〜R4との間の摺動状態を評価する摺動状態評価装置であって、ピストン22の往復方向でのピストンリングR1〜R4の両側の圧力差を算出する算出部53と、圧力差の変化に基づいて摺動状態を評価する評価部54とを備える、という構成を採用する。
【選択図】図1
Description
また、特許文献2には、ピストンリング間の圧力を検出する圧力検出装置(圧力検出ピックアップ)を用いて、ピストンリングの折損を検知する監視装置が開示されている。
また、特許文献2に開示された監視装置では、ピストンリングが折損することでピストンリング間の圧力が変化するため、この変化をシリンダライナに設けられた圧力検出装置を用いて検出することで、ピストンリングの折損を検知している。
また、特許文献2に開示された監視装置では、圧力検出装置がピストンリング間の圧力の変化を検出した時点では、既にピストンリングの折損は発生しており、ピストンリングとシリンダライナとの摺動状態の経時的な変化を検知できないという課題があった。
本発明に係る摺動状態評価装置は、ピストンが往復自在に設置されるシリンダライナの内周面と、ピストンの外周面に設けられるピストンリングとの間の摺動状態を評価する摺動状態評価装置であって、ピストンの往復方向でのピストンリングの両側の圧力差を算出する算出部と、圧力差の変化に基づいて摺動状態を評価する評価部とを備える、という構成を採用する。
ピストンリングとシリンダライナとの摺動箇所では、摺動状態の変化に先立ち、ピストンの往復方向でのピストンリングの両側の圧力差が変化する。そのため、本発明によれば、圧力差の変化に基づいて摺動状態を評価することで、摺動状態の変化を迅速に検知することが可能となる。
本発明によれば、圧力差の変化に基づいて摺動状態を評価することで、摺動状態の変化を迅速に検知できるという効果がある。
エンジンシステム1は、内燃機関であるレシプロエンジン2と、当該レシプロエンジン2を制御するエンジン制御ユニット3とを備えている。
ピストン22は、シリンダライナ21の内周面21cとの間に、隙間21dをあけて設置されている。また、ピストン22は、コネクティングロッド24を介してクランクシャフト23に連結されている。クランクシャフト23は、ピストン22が往復移動することで回転する部材であり、レシプロエンジン2の外部に回転駆動力を出力する不図示の出力軸と接続されている。
なお、本実施形態におけるレシプロエンジン2では、ピストン22の往復方向は鉛直上下方向に設定されている。以下の説明では、ピストン22の往復方向を上下方向と記載して説明する場合がある。
図2は、本実施形態におけるピストン22の外周面22aを拡大した断面図である。
ピストン22の外周面22aには、周方向に延在する複数の溝部22bが形成されている。複数の溝部22bには、リングR1〜R4がそれぞれ配置されている。
なお、隙間21dのうち、第1リングR1と第2リングR2との間に形成される空間を第1空間S1と規定し、第2リングR2と第3リングR3との間に形成される空間を第2空間S2と規定する。
ECU4は、燃焼室21aに供給される混合気の量や混合比率等を調整してレシプロエンジン2の出力等を制御し、潤滑油供給部26が送り出す潤滑油量を調整して給油ノズル25から内周面21c側に供給される潤滑油量を制御する制御装置である。
算出部53は、隙間21dにおける圧力計測結果を圧力センサ51から常時取得している。レシプロエンジン2の動作中はピストン22が往復移動していることから、圧力センサ51の計測結果のうち、リングR1〜R4が上下方向でどこに位置しているときの計測結果であるかを判別する必要がある。
算出部53は、クランク角度計測部52からクランクシャフト23の回転角度の計測結果を取得し、この回転角度を用いてリングR1〜R4の上下方向での位置を算出する。そして、算出部53は、算出したリングR1〜R4の位置に基づいて、圧力センサ51から取得している圧力計測結果から、リングR1〜R4の上下方向での両側の圧力を各々算出する。
算出部53は、高いサンプリング周波数(10kHz程度)を有しているため、ピストン22の往復移動中においても、リングR1〜R4のうち所定のリング間における空間の圧力計測結果を複数回(例えば7回)で取得することかできる。そして、算出部53は取得した圧力測定結果を平均して、リングR1〜R4の上下方向での両側の圧力を各々算出している。このような算出処理を行うことで、圧力センサ51や算出部53におけるノイズ等の影響を低減することができる。なお、算出部53のサンプリング周波数は10kHzに限定されず、ピストン22の往復移動速度、圧力センサ51の設置位置、又はリングR1〜R4の各間隔等に応じて適宜選択してよい。
以上で、算出部53による圧力差の算出処理が終了する。
なお、評価部54と上述した算出部53とが、同一の演算装置によって構成されていてもよい。また、上述したECU4、算出部53及び評価部54が、同一の演算装置によって構成されていてもよい。
上述したように、第2リングR2は弾性を有する金属材料によって成形されており、径方向外側に拡開しようとすることから、内周面21cに密接している。また、第2リングR2の内周面21cへの密接力Fは、第1空間S1と第2空間S2との間の圧力差(すなわち第2リングR2の上下の圧力差)によって変化する。ここで、第1空間S1の圧力を符号P1で表し、第2空間S2の圧力を符号P2で表している。
しかしながら、第2リングR2の上下の圧力差が急激に拡大すると、上記なじみが適切に行われず、第2リングR2が内周面21cに直接に接触して摩耗することや、微細な焼き付きが生じる。このような摩耗・焼き付きが生じることで、内周面21c側に供給された潤滑油に含まれる鉄粉濃度が増加する。さらに、悪化した摺動状態が所定の時間で続くことにより、摩耗が生じている部分が拡大し、第2リングR2の全体に亘る焼き付きが生じる虞がある。
また、換言すれば、評価部54は、所定の時刻に算出部53から取得した圧力差と、所定の時刻から10分後に算出部53から取得した圧力差との間の変化量を算出し、当該変化量が所定の閾値以上であれば、第2リングR2と内周面21cとの摺動状態が悪化(変化)したと評価する。圧力差の変化量の閾値は、上述した圧力差の変化率0.5MPa/hrに基づき、0.084MPa(≒0.5MPa/hr×0.167hr(≒10min))に設定している。
図3は、本実施形態における評価部54による摺動状態の評価処理を説明するためのグラフである。
図3に示すように、具体例として3種類の圧力差の変化結果を用いて説明する。時間の経過とともに変化する圧力差を示すグラフとして、第1圧力差変化G1、第2圧力差変化G2及び第3圧力差変化G3を用いる。これらの圧力差変化は、時間Taにおいて圧力差Pdaを示している。時間Taから10分経過した時間を、時間Tbとする。時間Taにおける圧力差Pdaが、0.5MPa/hrの変化率で拡大したときの、時間Tbにおける圧力差をPdbとする。圧力差PdaとPdbとの差は、圧力差の変化量に対する閾値Pdt(=0.084MPa)となっている。
最初に、評価部54は、時間Taにおける圧力差Pdaを算出部53から取得して保持する。
次に、評価部54は、時間Taから10分後の時間Tbにおける圧力差を算出部53から取得して保持する。圧力差が第1圧力差変化G1に従って変化すると、時間Tbにおける圧力差はPd1となる。
次に、10分の時間幅での圧力差の変化量と、閾値Pdtとを比較する。評価部54は、圧力差PdaとPd1との間の差、すなわち圧力差の変化量を算出し、この変化量と閾値Pdtとを比較する。圧力差が第1圧力差変化G1に従って変化した場合には、圧力差Pd1はPdbよりも小さくなっている。したがって、評価部54は、第2リングR2と内周面21cとの間の摺動状態が悪化(変化)したと評価しない。
最初に、評価部54は、時間Taにおける圧力差Pdaを算出部53から取得して保持する。
次に、評価部54は、時間Taから10分後の時間Tbにおける圧力差を算出部53から取得して保持する。圧力差が第2圧力差変化G2に従って変化すると、時間Tbにおける圧力差はPd2となる。
次に、10分の時間幅での圧力差の変化量と、閾値Pdtとを比較する。評価部54は、圧力差PdaとPd2との間の差、すなわち圧力差の変化量を算出し、この変化量と閾値Pdtとを比較する。圧力差が第2圧力差変化G2に従って変化した場合には、圧力差Pd2はPdbよりも大きくなっている。したがって、評価部54は、第2リングR2と内周面21cとの間の摺動状態が悪化(変化)したと評価する。さらに、評価部54は、この評価結果をECU4に対して出力する。ECU4は評価結果に従い、レシプロエンジン2の運転調整を行う。
最初に、評価部54は、時間Taにおける圧力差Pdaを算出部53から取得して保持する。
次に、評価部54は、時間Taから10分後の時間Tbにおける圧力差を算出部53から取得して保持する。圧力差が第3圧力差変化G3に従って変化すると、時間Tbにおける圧力差はPd3となる。
次に、10分の時間幅での圧力差の変化量と、閾値Pdtとを比較する。評価部54は、圧力差PdaとPd3との間の差、すなわち圧力差の変化量を算出し、この変化量と閾値Pdtとを比較する。圧力差が第3圧力差変化G3に従って変化した場合には、圧力差Pd3はPdbよりも小さくなっている。したがって、評価部54は、第2リングR2と内周面21cとの間の摺動状態が悪化(変化)したと評価しない。
圧力差が第3圧力差変化G3に従って変化した場合には、10分の時間が経過するまでに圧力差は一時的に圧力差Pdbを超えている。圧力差の一時的な閾値Pdtの超過は、計測誤差等が考えられる。そのため、10分という時間幅での圧力差の変化量と、閾値Pdtを比較することで、評価部54は計測誤差等を除外した安定した評価処理を行うことができる。
以上で、評価部54による摺動状態の評価処理が終了する。
まず、ECU4がレシプロエンジン2を作動させる。
次に、算出部53が圧力センサ51及びクランク角度計測部52の計測結果に基づいて、第2リングR2の上下の圧力を各々算出する。
次に、算出部53が、各々算出された第2リングR2の上下の圧力を用いて、第2リングR2の上下の圧力差を算出する(算出工程)。この算出結果は評価部54に出力される。
次に、評価部54が、算出部53から取得した圧力差の変化に基づいて、第2リングR2と内周面21cとの間の摺動状態を評価する(評価工程)。この評価結果はECU4に出力される。
最後に、ECU4が評価部54の評価結果に基づいて、レシプロエンジン2の運転調整を行う。具体的には、レシプロエンジン2の出力調整や内周面21c側に供給される潤滑油量の調整等が行われる。
以上で、エンジンシステム1の動作が終了する。
図4は、本実施形態におけるリングR1〜R4の上下の圧力差の変化と潤滑油中の鉄粉濃度との関係を示す第1のグラフである。また、図5は、本実施形態におけるリングR1〜R4の上下の圧力差の変化と潤滑油中の鉄粉濃度との関係を示す第2のグラフである。また、図6は、本実施形態におけるリングR1〜R4の上下の圧力差の変化と潤滑油中の鉄粉濃度との関係を示す第3のグラフである。
なお、圧力差が拡大した時間及び圧力差の変化量を以下に示す。
図5: 16分間で0.9MPa変化 (変化率3.375MPa/hr)
図6: 13分間で1.0MPa変化 (変化率4.62MPa/hr)
本実施形態によれば、リングR1〜R4の上下の圧力差の変化に基づいて、リングR1〜R4とシリンダライナ21の内周面21cとの間の摺動状態を評価することで、当該摺動状態の変化を迅速に検知できるという効果がある。
Claims (6)
- ピストンが往復自在に設置されるシリンダライナの内周面と、前記ピストンの外周面に設けられるピストンリングとの間の摺動状態を評価する摺動状態評価装置であって、
前記ピストンの往復方向での前記ピストンリングの両側の圧力差を算出する算出部と、
前記圧力差の変化に基づいて前記摺動状態を評価する評価部とを備えることを特徴とする摺動状態評価装置。 - 請求項1に記載の摺動状態評価装置において、
前記評価部は、所定の時間幅での前記圧力差の変化量が所定の閾値以上であるときに、前記摺動状態が変化したと評価することを特徴とする摺動状態評価装置。 - 請求項1又は2に記載の摺動状態評価装置において、
前記ピストンの外周面と前記シリンダライナの内周面との間に形成される空間の圧力を計測する圧力計測部と、
前記往復方向での前記ピストンリングの位置を計測する位置計測部とを備え、
前記算出部は、前記圧力計測部及び前記位置計測部の計測結果に基づいて前記圧力差を算出することを特徴とする摺動状態評価装置。 - レシプロエンジンを制御する制御装置を備えるエンジン制御ユニットであって、
請求項1から3のいずれか一項に記載の摺動状態評価装置を備え、
前記制御装置は、前記摺動状態評価装置の評価結果に基づいて前記レシプロエンジンを制御することを特徴とするエンジン制御ユニット。 - レシプロエンジンと、当該レシプロエンジンを制御する制御ユニットとを備えるエンジンシステムであって、
前記制御ユニットとして、請求項4に記載のエンジン制御ユニットを備えることを特徴とするエンジンシステム。 - ピストンが往復自在に設置されるシリンダライナの内周面と、前記ピストンの外周面に設けられるピストンリングとの間の摺動状態を評価する摺動状態評価方法であって、
前記ピストンの往復方向での前記ピストンリングの両側の圧力差を算出する算出工程と、
前記圧力差の変化に基づいて前記摺動状態を評価する評価工程とを有することを特徴とする摺動状態評価方法。
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JPS5968525A (ja) * | 1982-10-09 | 1984-04-18 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | ピストンリング折損監視装置 |
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JPH07198544A (ja) * | 1993-11-09 | 1995-08-01 | New Sulzer Diesel Ag | ディーゼル・エンジンの運転時における異常確認方法 |
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