JP2012002100A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】この発明は、燃料カットからの復帰時にEGRの応答遅れによるNOxスパイクを抑制し、排気エミッションを向上させることを目的とする。
【解決手段】エンジン10は、バルブオーバーラップ量を可変に設定するためのVVT30と、可変容量型の過給機36とを備える。ECU60は、エンジン10が燃料カット状態から復帰したときに、燃焼の再開により生じた排気ガスがEGR通路32を介して筒内に到達するのに必要な応答遅れ期間tの間のみ、過給機36のノズル開度を減少させ、かつ、バルブオーバーラップ量を増加させる。これにより、内部EGRの量を一時的に効率よく増加させることができ、燃料カットからの復帰時に生じる外部EGRの応答遅れを補償することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、ディーゼルエンジン等に好適に用いられ、EGR機構を備えた内燃機関の制御装置に関する。
従来技術として、例えば特許文献1(特開2002−235587号公報)に開示されているように、EGR(Exhaust Gas Recirculation)機構を備えたディーゼルエンジン等に適用される内燃機関の制御装置が知られている。従来技術では、エンジンが燃料カットから復帰するときに、燃料噴射圧を一時的に低下させる構成としている。これにより、従来技術では、燃料カットからの復帰時に、燃焼を一時的に不活性化し、EGR機構による排気ガスの還流が遅れた場合でも、騒音を抑制するようにしている。
特開2002−235587号公報 特開2003−83142号公報 特開2003−293863号公報 特開2008−208801号公報 特開2008−38874号公報 特開平6−123258号公報 特開2007−291974号公報
ところで、上述した従来技術では、燃料カット時に排気通路を流れる空気がEGR通路にも流入する。このため、エンジンが燃料カットから復帰しても、最初のうちはEGR通路内に滞留していた空気が吸気通路に還流されることになり、復帰後の燃焼により生じた排気ガスが筒内に流入するまでの間にタイムラグが生じる。このタイムラグの間には、燃料カットから復帰したにも拘らず、EGRが実質的に機能しないので、NOxの排出量がスパイク状に増加する現象(所謂NOxスパイク)が生じ易いという問題がある。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、燃料カットからの復帰時にEGRの応答遅れによるNOxスパイクを抑制し、排気エミッションを向上させることが可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
第1の発明は、内燃機関の排気通路から吸気通路に排気ガスを還流させるEGR機構と、
吸気バルブと排気バルブの開弁期間が重なるバルブオーバーラップ量を可変に設定することが可能な可変動弁機構と、
排気圧を受けるタービン、前記タービンより駆動されて吸入空気を過給するコンプレッサ及び前記タービンに付設された可変ノズルを有し、前記可変ノズルの開度が大きいほど前記タービンの開口面積が増加する可変容量型の過給機と、
内燃機関が燃料カット状態から復帰したときに、燃焼の再開により生じた排気ガスが前記EGR機構を介して筒内に到達するのに必要な期間である応答遅れ期間中にのみ、前記過給機の可変ノズルの開度を減少させ、かつ前記可変動弁機構により前記バルブオーバーラップ量を増加させる過渡時NOx抑制手段と、
を備えることを特徴とする。
第2の発明は、内燃機関の排気通路から吸気通路に排気ガスを還流させるEGR機構と、
吸気バルブの閉弁時期を遅らせることが可能な可変動弁機構と、
内燃機関が燃料カット状態から復帰したときに、燃焼の再開により生じた排気ガスが前記EGR機構を介して筒内に到達するのに必要な期間である応答遅れ期間中にのみ、前記可変動弁機構により前記吸気バルブの閉弁時期を遅らせる過渡時NOx抑制手段と、
を備えることを特徴とする。
第3の発明は、内燃機関の排気通路から吸気通路に排気ガスを還流させるEGR機構と、
吸気バルブと排気バルブの開弁期間が重なるバルブオーバーラップ量を可変に設定する機能と、前記吸気バルブの閉弁時期を遅らせる機能とを有する可変動弁機構と、
排気圧を受けるタービン、前記タービンより駆動されて吸入空気を過給するコンプレッサ及び前記タービンに付設された可変ノズルを有し、前記可変ノズルの開度が大きいほど前記タービンの開口面積が増加する可変容量型の過給機と、
内燃機関が燃料カット状態から復帰したときに、燃焼の再開により生じた排気ガスが前記EGR機構を介して筒内に到達するのに必要な期間である応答遅れ期間中にのみ、前記過給機の可変ノズルの開度を減少させ、かつ前記可変動弁機構により前記バルブオーバーラップ量を増加させる第1の過渡時NOx抑制手段と、
内燃機関が燃料カット状態から復帰したときに、前記応答遅れ期間中にのみ、前記可変動弁機構により前記吸気バルブの閉弁時期を遅らせる第2の過渡時NOx抑制手段と、
内燃機関が燃料カット状態から復帰するときに、機関回転数、過給圧及び前記タービンの回転数のうちの何れかである判定パラメータが所定の低出力判定値以下である場合に、前記第1の過渡時NOx抑制手段を作動させ、前記判定パラメータが前記低出力判定値よりも大きい場合に、前記第2の過渡時NOx抑制手段を作動させる制御切換手段と、
を備えることを特徴とする。
第4の発明は、前記燃料カット状態からの復帰後に前記応答遅れ時間が経過したか否かを、機関回転数と排気ガスの発生量とに基いて判定する経過時間判定手段を備えてなる請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
第1の発明によれば、燃料カットから復帰した直後の過渡期には、バルブオーバーラップ量を増加させることにより、筒内に残留する排気ガスの量(内部EGR量)を一時的に増加させることができる。また、過給機のノズル開度を減少させることにより、排気圧を一時的に上昇させ、内部EGR量を効率よく増加させることができる。このため、外部EGRが遅れても、内部EGRを利用して筒内に排気ガスを十分に供給することができ、外部EGRの応答遅れを補償することができる。従って、燃料カットからの復帰時に生じるNOxスパイクを抑制し、排気エミッションを向上させることができる。また、過渡時NOx抑制手段は、燃料カット終了後の過渡期である応答遅れ期間中にのみ作動する。この期間は短時間であるため、同手段が作動しても、燃費性能や運転性を良好に保持することができる。
第2の発明によれば、吸気バルブの閉弁時期(IVC)を遅らせると、有効圧縮比が減少するので、筒内のガス温度が低下し、NOxが発生し難くなる。従って、過渡時NOx抑制手段は、燃料カットから復帰した直後の過渡期にのみ、筒内のガス温度を低下させ、NOxスパイクを抑制することができる。これにより、第1の発明とほぼ同様に、燃費性能や運転性に大きな影響を与えずに、排気エミッションを向上させることができる。
第3の発明によれば、燃料カットから復帰するときの過給機の作動状態に応じて、第1,第2のNOxスパイク抑制制御を適切に使い分けることができる。即ち、例えば燃料カットから復帰したときの過給機の作動状態が加速応答性の要求を満たせない場合には、燃費性能よりも加速応答性を優先した第1の過渡時NOx抑制手段を選択し、高い加速応答性を実現することができる。これにより、加速時のもたつき感を防止し、運転性を向上させることができる。また、燃料カットから復帰したときの過給機の作動状態が加速応答性の要求を満たす場合には、加速応答性よりも燃費性能を優先した第2の過渡時NOx抑制手段を選択し、燃費性能の低下を防止することができる。
第4の発明によれば、経過時間判定手段は、燃料カット状態からの復帰後に応答遅れ時間が経過したか否かを、機関回転数と排気ガスの発生量とに基いて判定することができる。これにより、過渡時NOx抑制手段を過不足のない適切なタイミングで停止することができ、同手段の効果を十分に発揮しつつ、エンジンの運転状態に与える影響を最小限に抑えることができる。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。 燃料カットからの復帰時にNOxスパイク抑制制御を実行した状態を示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態1において、ECUにより実行されるNOxスパイク抑制制御を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態2によるNOxスパイク抑制制御を実行した状態を示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態2において、ECUにより実行されるNOxスパイク抑制制御を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態3において、ECUにより実行される第1,第2のNOxスパイク抑制制御を示すフローチャートである。 従来技術において、燃料カットからの復帰時にNOxスパイクが発生する状態を示すタイミングチャートである。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
以下、図1乃至図3を参照しつつ、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。本実施の形態のシステムは、例えばディーゼルエンジンからなる内燃機関としてのエンジン10を備えている。エンジン10の各気筒には、ピストン12により燃焼室14が形成されており、ピストン12は、クランク軸16に連結されている。また、エンジン10は、各気筒に吸入空気を吸込む吸気通路18と、各気筒から排気ガスを排出する排気通路20とを備えている。吸気通路18には、アクセル開度等に基いて吸入空気量を調整する電子制御式のスロットルバルブ22が設けられている。
また、各気筒には、燃焼室14内(筒内)に燃料を噴射する燃料噴射弁24と、吸気通路18を筒内に対して開,閉する吸気バルブ26と、排気通路20を筒内に対して開,閉する排気バルブ28とが設けられている。また、エンジン10は、吸気バルブ26の位相(開閉時期)を可変に設定するVVT(Variable Valve Timing system)30を備えている。VVT30は、本実施の形態の可変動弁機構を構成するもので、吸気バルブ26と排気バルブ28の開弁期間が重なるバルブオーバーラップ量を可変に設定する機能と、吸気バルブ26の閉弁時期(IVC=Intake Valve Close timing)を遅らせる機能とを備えている。
また、VVT30は、例えば特開2000−87769号公報に開示されているような公知の構成を有している。簡単に説明すると、まず、吸気バルブ26の動弁系統は、吸気カムが設けられたカムシャフトと、このカムシャフトに設けられたタイミングプーリとを備えている。エンジンの運転中には、クランク軸16の回転がタイミングチェーンを介してタイミングプーリに伝達され、タイミングプーリによりカムシャフト(吸気カム)が回転駆動される。これにより、吸気カムの作用力がロッカーアームを介して吸気バルブ26に伝達され、吸気バルブ26が吸気カムのプロフィールに応じて所定のタイミングで開閉するようになっている。この動弁系統において、VVT30は、カムシャフトとタイミングプーリとを相対回転させるアクチュエータを備えており、両者の相対回転角に応じて吸気バルブ26の位相を変化させるように構成されている。
また、エンジン10は、排気通路20から吸気通路18に排気ガス(EGRガス)を還流させるEGR通路32と、EGR通路32による排気ガスの還流量を調整するEGR弁34とを備えており、これらは本実施の形態のEGR機構を構成している。EGR通路32は、後述するタービン38の上流側で排気通路20に接続されており、また、スロットルバルブ22の下流側で吸気通路18に接続されている。また、エンジン10は、排気圧を利用して吸入空気を過給する可変容量型の過給機36を備えている。
過給機36は、公知の構成を有するもので、排気通路20に設けられたタービン38と、吸気通路18に設けられたコンプレッサ40と、タービン38に付設された可変ノズル42と、可変ノズル42の開度を変化させるアクチュエータ44とを備えている。過給機36の作動時には、タービン38が排気圧を受けてコンプレッサ40を駆動し、コンプレッサ40が吸入空気を過給する。また、アクチュエータ44は、可変ノズル42の開度(ノズル開度)に応じてタービン38の開口面積を変化させる。具体的には、ノズル開度が大きいほど、タービン38の開口面積が増加するように構成されている。これにより、過給機36は、例えば低回転領域でノズル開度を減少させ、少量の排気ガスでも過給効率を向上させることができる。また、高回転領域では、ノズル開度を増加させ、排気圧を低下させることができる。なお、吸気通路18には、過給された吸入空気を冷却するインタークーラ46が設けられている。
さらに、本実施の形態のシステムは、クランク角センサ48、エアフローセンサ50、吸気圧センサ52、アクセル開度センサ54等を含むセンサ系統と、エンジン10及びこれを搭載した車両の運転状態を制御するECU(Electronic Control Unit)60とを備えている。まず、センサ系統について説明すると、クランク角センサ48は、クランク軸16の回転に同期した信号を出力するもので、ECU60は、この出力に基いてエンジン回転数(機関回転数)及びクランク角を検出する。また、エアフローセンサ50は吸入空気量を検出し、吸気圧センサ52は吸気圧(過給圧)を検出する。アクセル開度センサ54は、運転者のアクセル操作量(アクセル開度)を検出する。
また、センサ系統には、上記センサ48〜54に加えて、車両やエンジンの制御に必要な各種のセンサ(例えばエンジン冷却水の温度を検出する水温センサ、排気空燃比を検出する空燃比センサ等)が含まれており、これらのセンサはECU60の入力側に接続されている。ECU60の出力側には、スロットルバルブ22、燃料噴射弁24、VVT30、EGR弁34、過給機36のアクチュエータ44等を含む各種のアクチュエータが接続されている。
そして、ECU60は、エンジンの運転情報をセンサ系統により検出し、その検出結果に基いて各アクチュエータを駆動することにより、運転制御を行う。具体的には、クランク角センサ48の出力に基いてエンジン回転数とクランク角とを検出し、エアフローセンサ50により検出した吸入空気量と、前記エンジン回転数とに基いて燃料噴射量を算出する。また、クランク角に基いて燃料噴射時期を決定し、燃料噴射弁24を駆動する。これにより、エンジン10を運転することができる。また、ECU60は、VVT30を駆動して吸気バルブ26の開閉時期を制御するバルブタイミング制御を実行し、EGR弁34を駆動してEGRガスの還流量を制御するEGR制御を実行する。さらに、アクチュエータ44を駆動することにより、過給圧及び排気圧を制御する過給制御を実行する。
また、ECU60は、エンジンの減速運転が行われた場合に、アクセル開度等に基いて減速状態を検出し、各気筒の燃料噴射を停止する燃料カット制御を実行する。そして、エンジンが減速運転から加速運転に移行した場合には、燃料噴射を再開し、燃料カット状態から復帰する。
[実施の形態1の特徴]
まず、図7を参照して、従来技術の問題点について説明する。図7は、従来技術において、燃料カットからの復帰時にNOxスパイクが発生する状態を示すタイミングチャートである。図7に示すように、まず、時点Aにおいて、エンジンが減速状態に移行すると、燃料カットが開始され、各気筒の燃料噴射が停止される。これにより、筒内及び排気通路内には、吸入空気のみが流入するようになるので、これらの部位では酸素濃度が上昇する。そして、この空気は、排気通路20からEGR通路32にも流入する。次に、時点Bにおいて、減速状態から加速状態に移行すると、エンジンが燃料カットから復帰し、各気筒で燃料噴射及び燃焼が再開される。これにより、排気通路には、復帰後の燃焼により生じた排気ガスが流れるので、排気通路内の酸素濃度は、燃料カットから復帰した時点で速やかに低下する。
これに対し、筒内には、混合気を形成する吸入空気(新気)の他に、燃料カット中にEGR通路内に滞留していた空気が還流される。このため、筒内の酸素濃度は、燃料カットから復帰しても即座に低下せず、ある程度の期間(以下、応答遅れ期間tと称す)にわたって緩やかに低下するようになる。この結果、燃料カットが終了してから前記応答遅れ期間tが経過するまでの期間中には、EGRによるNOxの抑制効果が十分に発揮されず、NOxスパイクが生じ易くなる。これに対し、NOxスパイクを回避するためには、例えば燃料噴射時期を変更する等の方法も考えられるが、この方法では、燃焼騒音や排気エミッションを悪化させる虞れがある。
このため、本実施の形態では、燃料カットから復帰した直後(燃料カットの終了直後)に、NOxスパイク抑制制御を実行する構成としている。図2は、NOxスパイク抑制制御を実行した状態を示すタイミングチャートである。なお、図2中の実線は、NOxスパイク抑制制御により得られる特性線を示し、点線は、従来技術の特性線を示している。図2に示すように、NOxスパイク抑制制御では、燃料カットが終了してから前記応答遅れ期間tが経過するまでの期間中にのみ、過給機36のノズル開度を通常の状態よりも減少(例えば、全閉まで減少)させ、かつ、バルブオーバーラップ量を通常の状態よりも増加させる。このとき、EGR弁34は全開状態に保持される。
ここで、通常の状態とは、NOxスパイク抑制制御を実行しない場合の状態、または同制御を終了した後の定常状態に相当している。また、応答遅れ期間tは、燃料カットから復帰した時点を起点として、燃焼の再開により生じた排気ガスがEGR通路32を介して筒内に到達するのに必要な期間として定義される。言い換えれば、応答遅れ期間tは、外部EGRが機能して筒内の酸素濃度が低下するまでに必要な期間であり、その具体的な求め方については後述する。そして、応答遅れ期間tが経過したときには、ノズル開度とバルブオーバーラップ量とを通常の状態に対応する値に復帰させ、NOxスパイク抑制制御を終了する。応答遅れ期間tが経過した以降は、排気ガスがEGR通路32を介して筒内に到達するので、外部EGRによりNOxを抑制することができる。
上記制御によれば、燃料カットから復帰した直後の過渡期には、バルブオーバーラップ量を増加させることにより、筒内に残留する排気ガスの量(内部EGR量)を一時的に増加させることができる。また、過給機36のノズル開度を減少させることにより、排気圧を一時的に上昇させ、内部EGR量を効率よく増加させることができる。このため、外部EGRが遅れても、内部EGRを利用して筒内に排気ガスを十分に供給することができ、外部EGRの応答遅れを補償することができる。なお、制御動作の順序としては、まず、アクチュエータ44を先行して駆動し、その次にVVT30を駆動するのが好ましい。これにより、排気圧が上昇した状態で、バルブオーバーラップ量を増加させてEGRガスの強い流れを発生させることができ、外部EGRを効率よく生じさせることができる。
従って、本実施の形態によれば、図2に示すように、燃料カットからの復帰時に生じるNOxスパイクを抑制し、排気エミッションを向上させることができる。特に、内部EGRは、排気ガスの還流時間が殆ど不要であるために応答性が高いので、少なくとも燃料カットから復帰して2回目の燃料噴射では、NOxの抑制効果を発揮することができ、外部EGRと比較してNOxを迅速に抑制することができる。また、NOxスパイク抑制制御は、燃料カット終了後の過渡期である応答遅れ期間tの間のみ実行される。この期間は、例えば1秒程度の短時間であるため、NOxスパイク抑制制御を実行しても(特にノズル開度を減少させても)、燃費性能や運転性を良好に保持することができる。
また、応答遅れ期間tは、燃料カットの終了後に生じた排気ガスがEGR通路32を介して筒内に到達するのに必要な時間であるから、エンジン回転数が高いほど、また、排気ガスの発生量が多いほど短くなる。これらの関係は、理論的または実験的に求められるもので、マップデータや関数式等としてECU60に記憶されている。本実施の形態では、エンジン回転数と、排気ガスの量とに基いて応答遅れ期間tを算出し、燃料カットの終了時から計測した経過時間が応答遅れ期間tに達した時点で、NOxスパイク抑制制御を終了する。なお、排気ガスの発生量は、一般的に知られているように、吸入空気量、燃料噴射量、排気温度等に基いて理論的に算出することができる。また、応答遅れ期間tを算出するためのマップデータや関数式には、排気通路20から筒内に至る排気ガスの還流経路(EGR通路32、吸気ポート等)の容積が反映されている。
上記構成によれば、NOxスパイクの抑制効果が得られる必要最小限の応答遅れ期間tを容易に算出することができる。これにより、NOxスパイク抑制制御を過不足のない適切なタイミングで終了することができ、同制御の効果を十分に発揮しつつ、この制御がエンジンの運転状態に与える影響を最小限に抑えることができる。
[実施の形態1を実現するための具体的な処理]
次に、図3を参照して、上述した制御を実現するための具体的な処理について説明する。図3は、本発明の実施の形態1において、ECUにより実行されるNOxスパイク抑制制御を示すフローチャートである。この図に示すルーチンは、エンジンの運転中に繰返し実行されるものとする。図3に示すルーチンでは、まず、ステップ100において、アクセル開度等に基いて燃料カットから復帰するタイミングであるか否かを判定する。この判定が成立した場合には、燃料カットからの復帰後に経過した時間の計測を開始する。
そして、ステップ102では、過給機36のアクチュエータ44を駆動し、例えばノズル開度を全閉まで減少させる。次に、ステップ104では、VVT30を駆動して吸気バルブ26の開弁時期(IVO)を早くすることにより、バルブオーバーラップ量を増加させる。なお、ステップ102,104の処理では、前述した理由により、まず、アクチュエータ44を先行して駆動し、その次にVVT30を駆動する。
次に、ステップ106では、前述の方法により応答遅れ時間tを算出し、燃料カットから復帰した後に応答遅れ時間tが経過したか否かを判定し、この判定が成立するまで待機する。そして、ステップ106の判定が成立した場合には、燃料カットの終了後に生じた排気ガスが筒内に到達したと考えられるので、ステップ108において、ノズル開度及びバルブオーバーラップ量を通常の状態に復帰させる。
なお、上記実施の形態1では、図3中のステップ100〜108が請求項1における過渡時NOx抑制手段の具体例を示し、ステップ106が請求項4における経過時間判定手段の具体例を示している。
実施の形態2.
次に、図4及び図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態では、前記実施の形態1と同様のシステム構成(図1)において、燃料カットからの復帰時に有効圧縮比を一時的に減少させることを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態2の特徴]
図4は、本発明の実施の形態2によるNOxスパイク抑制制御を実行した状態を示すタイミングチャートである。この図に示すように、本実施の形態では、前記応答遅れ時間tの期間中にのみ、IVCを通常の状態よりも遅らせ、吸気バルブ26を遅閉じする構成としている。ここで、応答遅れ時間t及び通常の状態は、実施の形態1と同様に定義されるものである。一般に、IVCを遅らせると、有効圧縮比が減少するので、筒内のガス温度が低下し、NOxが発生し難くなる。従って、本実施の形態によれば、燃料カットから復帰した直後の過渡期にのみ、筒内のガス温度を低下させ、NOxスパイクを抑制することができ、実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができる。
一方、IVCを過剰に遅らせた場合には、失火が発生し易くなる。このため、本実施の形態では、失火が発生しない範囲(以下、この範囲を遅角許容範囲と称す)内でIVCを遅らせる構成としている。具体的に述べると、NOxスパイク抑制制御により設定されたIVCが所定の遅角許容範囲から外れている場合には、このIVCを遅角許容範囲内で最も遅らせた値に補正する。これにより、NOxスパイクを抑制しつつ、失火を回避して燃焼性を確保することができる。なお、遅角許容範囲は、実機での計測等により容易に求めることができる。また、本発明では、IVCが遅角許容範囲から外れている場合に、NOxスパイク抑制制御を終了する構成としてもよい。
[実施の形態2を実現するための具体的な処理]
次に、図5を参照して、上述した制御を実現するための具体的な処理について説明する。図5は、本発明の実施の形態2において、ECUにより実行されるNOxスパイク抑制制御を示すフローチャートである。この図に示すルーチンは、エンジンの運転中に繰返し実行されるものとする。図5に示すルーチンでは、まず、ステップ200において、燃料カットから復帰するタイミングであるか否かを判定し、この判定が成立した場合には、復帰後の経過時間を計測する。
そして、ステップ202では、VVT30によりIVCを遅らせる設定を実行し、ステップ204では、設定したIVCが遅角許容範囲内であるか否かを判定する。この判定が成立した場合には、ステップ206において、実施の形態1(図3)と同様に、応答遅れ時間tが経過したか否かを判定する。そして、ステップ206の判定が成立した場合には、ステップ208において、IVCを通常の状態に復帰させ、NOxスパイク抑制制御を終了する。また、ステップ204の判定が不成立の場合には、ステップ210において、IVCを遅角許容範囲内の値に補正してから、ステップ206以降の処理を実行する。
なお、上記実施の形態1では、図5中のステップ200〜210が請求項2における過渡時NOx抑制手段の具体例を示し、ステップ206が請求項4における経過時間判定手段の具体例を示している。
実施の形態3.
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態では、前記実施の形態1と同様のシステム構成(図1)において、過給機の作動状態に応じて2種類のNOxスパイク抑制制御を使い分けることを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態3の特徴]
上述した実施の形態1,2では、それぞれ異なるNOxスパイク抑制制御(以下、第1,第2のNOxスパイク抑制制御と称す)について説明した。本実施の形態では、燃料カットから復帰するときの過給機36の作動状態に応じて、第1,第2のNOxスパイク抑制制御を使い分ける構成としている。この切換制御を説明するにあたり、まず、各制御の長所と短所について説明する。
(第1のNOxスパイク抑制制御)
この制御では、実施の形態1で述べたように、バルブオーバーラップ量を増加させるので、制御中に筒内のガス量がそれほど減少せず、タービン38の回転数(ターボ回転数)を維持し易い。このため、第1のNOxスパイク抑制制御によれば、燃料カットからの復帰直後に高い加速応答性を実現することができる。その一方で、第1のNOxスパイク抑制制御では、過給機36のノズル開度を減少させるので、排気圧が上昇し、燃費性能が悪化し易い。
(第2のNOxスパイク抑制制御)
この制御では、実施の形態2で述べたように、IVCを遅らせるので、排気圧は上昇せず、燃費性能が悪化することはない。しかし、IVCが遅れることにより、制御中に筒内のガス量が比較的大きく減少するので、ターボ回転数が低下し易くなる。従って、燃料カットからの復帰時にターボ回転数が低い場合には、第2のNOxスパイク抑制制御を実行すると、加速応答性が低下する虞れがある。
(切換制御)
上記特性を考慮して、本実施の形態では、燃料カットから復帰するときに、ターボ回転数が反映される後述の判定パラメータを取得し、この判定パラメータが所定の低出力判定値以下である場合には、第1のNOxスパイク抑制制御を実行する。即ち、復帰時のターボ回転数が加速応答性の要求を満たせないほど低い場合には、燃費性能よりも加速応答性を優先した第1のNOxスパイク抑制制御を選択し、高い加速応答性を実現することができる。これにより、加速時のもたつき感を防止し、運転性を向上させることができる。
一方、判定パラメータが前記低出力判定値よりも大きい場合には、第2のNOxスパイク抑制制御を実行する。即ち、復帰時のターボ回転数が加速応答性の要求を満たす程度に高い場合には、加速応答性よりも燃費性能を優先した第2のNOxスパイク抑制制御を選択し、燃費性能の低下を防止することができる。従って、本実施の形態によれば、燃料カットから復帰するときの過給機36の作動状態に応じて、第1,第2のNOxスパイク抑制制御を適切に使い分けることができる。
上記判定パラメータとしては、エンジン回転数、過給圧及びターボ回転数のうちの何れかを用いるのが好ましい。また、判定パラメータとして、ターボ回転数を用いる場合には、回転センサ等によりターボ回転数を直接検出してもよいが、エンジンの運転状態に基いてターボ回転数を推定する構成としてもよい。具体的には、例えば燃料カット(減速運転)を開始する前のエンジン回転数、燃料噴射量、過給圧等に基いて、燃料カットから復帰した時点のターボ回転数を推定し、この推定値を判定パラメータとして用いてもよい。一方、低出力判定値は、例えば第2のNOxスパイク抑制制御では加速応答性の要求レベルを満たすことできない最大のターボ回転数(または、このターボ回転数に対応するエンジン回転数、過給圧)に基いて設定されるものである。
[実施の形態3を実現するための具体的な処理]
次に、図6を参照して、上述した制御を実現するための具体的な処理について説明する。図6は、本発明の実施の形態3において、ECUにより実行される第1,第2のNOxスパイク抑制制御を示すフローチャートである。この図に示すルーチンは、エンジンの運転中に繰返し実行されるものとする。図6に示すルーチンでは、まず、ステップ300において、燃料カットから復帰するタイミングであるか否かを判定し、この判定が成立した場合には、復帰後の経過時間を計測する。
次に、ステップ302では、判定パラメータが低出力判定値以下であるか否かを判定し、この判定が成立した場合には、ステップ304において、第1のNOxスパイク抑制制御(図3中に示すステップ102〜108の処理)を実行する。また、ステップ302の判定が不成立の場合には、ステップ306において、第2のNOxスパイク抑制制御(図5中に示すステップ202〜210の処理)を実行する。
なお、前記実施の形態3では、図6中に示すステップ304が請求項3における第1の過渡時NOx抑制手段の具体例を示し、ステップ306が第2の過渡時NOx抑制手段の具体例を示している。また、ステップ302は、制御切換手段の具体例を示している。
また、実施の形態では、可変動弁機構として吸気バルブ26の位相を可変に設定するVVT30を例に挙げて説明した。しかし、本発明の可変動弁機構は、吸気側のVVTに限定されるものではない。即ち、実施の形態1,3では、例えば排気バルブの位相を可変に設定するVVTや、吸気バルブ及び/又は排気バルブの作用角を可変に設定する可変動弁機構等を用いて、バルブオーバーラップ量を変化させる構成としてもよい。また、実施の形態2,3では、吸気バルブの作用角を可変に設定する可変動弁機構等を用いて、IVCを遅らせる構成としてもよい。なお、バルブの作用角を可変に設定する可変動弁機構としては、例えば特開2007−132326号公報に開示されたものが知られている。
さらに、本発明は、必ずしも過給機付きのディーゼルエンジンに限定されるものではない。即ち、実施の形態2で説明したNOxスパイク抑制制御は、過給機をもたない内燃機関にも適用し得るものである。
10 エンジン(内燃機関)
12 ピストン
14 燃焼室
16 クランク軸
18 吸気通路
20 排気通路
22 スロットルバルブ
24 燃料噴射弁
26 吸気バルブ
28 排気バルブ
30 VVT(可変動弁機構)
32 EGR通路(EGR機構)
34 EGR弁(EGR機構)
36 過給機
38 タービン
40 コンプレッサ
42 可変ノズル
44 アクチュエータ
46 インタークーラ
48 クランク角センサ
50 エアフローセンサ
52 吸気圧センサ
54 アクセル開度センサ
60 ECU

Claims (4)

  1. 内燃機関の排気通路から吸気通路に排気ガスを還流させるEGR機構と、
    吸気バルブと排気バルブの開弁期間が重なるバルブオーバーラップ量を可変に設定することが可能な可変動弁機構と、
    排気圧を受けるタービン、前記タービンより駆動されて吸入空気を過給するコンプレッサ及び前記タービンに付設された可変ノズルを有し、前記可変ノズルの開度が大きいほど前記タービンの開口面積が増加する可変容量型の過給機と、
    内燃機関が燃料カット状態から復帰したときに、燃焼の再開により生じた排気ガスが前記EGR機構を介して筒内に到達するのに必要な期間である応答遅れ期間中にのみ、前記過給機の可変ノズルの開度を減少させ、かつ前記可変動弁機構により前記バルブオーバーラップ量を増加させる過渡時NOx抑制手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 内燃機関の排気通路から吸気通路に排気ガスを還流させるEGR機構と、
    吸気バルブの閉弁時期を遅らせることが可能な可変動弁機構と、
    内燃機関が燃料カット状態から復帰したときに、燃焼の再開により生じた排気ガスが前記EGR機構を介して筒内に到達するのに必要な期間である応答遅れ期間中にのみ、前記可変動弁機構により前記吸気バルブの閉弁時期を遅らせる過渡時NOx抑制手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  3. 内燃機関の排気通路から吸気通路に排気ガスを還流させるEGR機構と、
    吸気バルブと排気バルブの開弁期間が重なるバルブオーバーラップ量を可変に設定する機能と、前記吸気バルブの閉弁時期を遅らせる機能とを有する可変動弁機構と、
    排気圧を受けるタービン、前記タービンより駆動されて吸入空気を過給するコンプレッサ及び前記タービンに付設された可変ノズルを有し、前記可変ノズルの開度が大きいほど前記タービンの開口面積が増加する可変容量型の過給機と、
    内燃機関が燃料カット状態から復帰したときに、燃焼の再開により生じた排気ガスが前記EGR機構を介して筒内に到達するのに必要な期間である応答遅れ期間中にのみ、前記過給機の可変ノズルの開度を減少させ、かつ前記可変動弁機構により前記バルブオーバーラップ量を増加させる第1の過渡時NOx抑制手段と、
    内燃機関が燃料カット状態から復帰したときに、前記応答遅れ期間中にのみ、前記可変動弁機構により前記吸気バルブの閉弁時期を遅らせる第2の過渡時NOx抑制手段と、
    内燃機関が燃料カット状態から復帰するときに、機関回転数、過給圧及び前記タービンの回転数のうちの何れかである判定パラメータが所定の低出力判定値以下である場合に、前記第1の過渡時NOx抑制手段を作動させ、前記判定パラメータが前記低出力判定値よりも大きい場合に、前記第2の過渡時NOx抑制手段を作動させる制御切換手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  4. 前記燃料カット状態からの復帰後に前記応答遅れ時間が経過したか否かを、機関回転数と排気ガスの発生量とに基いて判定する経過時間判定手段を備えてなる請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
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