JP2012001773A - 鋼材および衝撃吸収部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.1〜0.2%、Mn:1〜3%、Si+Al:0.5%以上2.5%未満、N:0.001〜0.015%を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、40〜80面積のフェライトを含有し、残部がベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイトの1種または2種以上からなる第2相からなるとともに、フェライトの平均粒径が0.5〜3μm、第2相の平均最近接粒子間間隔が1〜5μm、引張変形によって相当塑性ひずみε=0.5を負荷した際のフェライトの平均ナノ硬さが4.5GPa以上かつ第2相の平均ナノ硬さが11GPa以下である鋼組織を有する鋼材である。
【選択図】図1
Description
このような高強度鋼材として、静動差(静的強度と動的強度との差)が高い低合金TRIP鋼や、マルテンサイトを主体とする第2相を有する複相組織鋼といった高強度複相組織鋼材が知られている。
また、マルテンサイトを主体とする第2相を有する複相組織鋼板に関しては、下記のような発明が開示されている。
特許文献4には、平均粒径が3.5μm以下のフェライト相を75%以上含有し、残部が焼き戻しマルテンサイトからなる衝撃吸収特性に優れる冷延鋼板が開示されている。
Fave∝(σY・t2)/4
σY:有効流動応力
t:板厚
として与えられることが開示されているように、衝撃吸収エネルギーは鋼材の板厚に大きく依存する。したがって、単に鋼材を高強度化することだけでは、衝撃吸収部材について薄肉化と高衝撃吸収性能とを両立させることには限界がある。
鋼材に関しては、塑性変形仕事量を増大させることができる、衝撃吸収部材の形状の最適化を可能にするように、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制しつつ、塑性変形仕事量を増大させるように有効流動応力を高めることが重要である。
(B)衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制するには、均一延性(加工硬化係数)と局部延性とを向上させることが有効である。
(1)C:0.1%以上0.2%以下、Mn:1%以上3%以下、Si+Al:0.5%以上2.5%未満、N:0.001%以上0.015%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
40面積%以上80面積%以下のフェライトを含有し、残部がベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイトの1種または2種以上からなる第2相からなるとともに、前記フェライトの平均粒径が0.5μm以上3μm以下、前記第2相の平均最近接粒子間間隔が1μm以上5μm以下、引張変形によって相当塑性ひずみε=0.5を負荷した際の前記フェライトの平均ナノ硬さが4.5GPa以上かつ前記第2相の平均ナノ硬さが11GPa以下である鋼組織を有すること
を特徴とする鋼材。
(3)化学組成が、Ti:0.05%以下およびNb:0.05%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする上記(1)項または(2)項に記載の鋼材。
1.鋼組織
(1)複相組織
本発明に係る鋼材の鋼組織は、高い降伏強度と高い加工硬化係数(均一延性)とを得て有効流動応力を高めるために、フェライトを含有し、残部がベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイトの1種または2種以上からなる第2相からなる複相組織とする。
(2)フェライト面積率:40%以上80%以下
複相組織鋼材において、フェライトは局部延性を向上させる作用を有する。フェライト面積率が40%未満では、局部延性の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、フェライト面積率は40%以上とする。一方、フェライト面積率が80%超では、降伏強度、引張強度および加工硬化係数の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、フェライト面積率は80%以下とする。
複相組織鋼材において、フェライト平均粒径は降伏強度と均一延性(加工硬化係数)とに影響を及ぼす。すなわち、フェライト平均粒径を微細化することにより降伏強度および引張強度が向上する。フェライト平均粒径が3μm超では、降伏強度、引張強度および加工硬化係数の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、フェライト平均粒径は3μm以下とする。一方、フェライト平均粒径の過度の微細化は均一延性(加工硬化係数)の低下招く。フェライト平均粒径が0.5μm未満では、均一延性(加工硬化係数)の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、フェライト平均粒径は0.5μm以上とする。
複相組織鋼材において、第2相の平均最近接粒子間隔は均一延性(加工硬化係数)と局部延性とに影響を及ぼす。すなわち、第2相の平均最近接粒子間間隔が狭すぎると均一延性(加工硬化係数)の低下を招く。第2相の平均最近接粒子間間隔が1μm未満では、均一延性(加工硬化係数)の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、第2相の平均最近接粒子間間隔は1μm以上とする。一方、第2相の平均最近接粒子間間隔が広過ぎると局部延性の低下を招く。第2相の平均最近接粒子間間隔が5μm超では、局部延性の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、第2相の平均最近接粒子間間隔は5μm以下とする。
複相組織鋼材において、高歪負荷条件下におけるフェライトと第2相との硬度差は局部延性に影響を及ぼす。すなわち、座屈部のように局部的に歪が集中した領域でフェライトと第2相との硬度差が著しくなると、両者の界面で剥離が生じてしまい、局部延性が低下する。
(1)C:0.1%以上0.2%以下
Cは、ベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトの1種または2種以上を含む第2相の生成を促進する作用を有する。また、第2相の強度を高めることにより降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりフェライト相の強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるフェライトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。C含有量が0.1%未満では、上記作用による効果を得ることが困難な場合がある。したがって、C含有量は0.1%以上とする。一方、C含有量が0.2%を超えると、マルテンサイトやオーステナイトが過剰に生成して、局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、C含有量は0.2%以下とする。
Mnは、ベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトの1種または2種以上を含む第2相の生成を促進する作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりフェライト相の強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるフェライトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。Mn含有量が1%未満では、上記作用による効果を得ることが困難な場合がある。したがって、Mn含有量は1%以上とする。好ましくは1.5%以上である。一方、Mn含有量が3%超では、マルテンサイトやオーステナイトが過剰に生成して、局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、Mn含有量は3%以下とする。好ましくは2.5%以下である。
SiおよびAlは、ベイナイト中の炭化物の生成を抑制することにより均一延性や局部延性を向上させる作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりフェライト相の強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるフェライトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。SiおよびAlの合計含有量(以下、「(Si+Al)量」ともいう。)が0.5%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、(Si+Al)量は0.5%以上とする。一方、(Si+Al)量を2.5%以上としても、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、(Si+Al)量は2.5%未満とする。
Nは、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりフェライト相の強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるフェライトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。また、TiやNbを含有させる場合には、鋼中に窒化物を形成してオーステナイトの粒成長を抑制し、フェライト平均粒径を微細化することにより、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。Nの含有量が0.001%未満では、上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、N含有量は0.001%以上とする。一方、N含有量が0.015%超では、鋼中に粗大な窒化物を形成して、均一延性および局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、N含有量は0.015%以下とする。
CrおよびMoは、ベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトの1種または2種以上を含む第2相の生成を促進する作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりフェライト相の強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるフェライトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。したがって、CrおよびMoの1種または2種を含有させてもよい。
TiおよびNbは、鋼中に窒化物を形成するなどしてオーステナイトの粒成長を抑制し、フェライト平均粒径を微細化することにより、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。したがって、TiおよびNbの1種または2種を含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が0.05%を超えたり、Nb含有量が0.05%を超えたりすると、フェライト変態が著しく抑制されてしまい、目的とするフェライト面積率を確保することできずに、局部延性の著しい低下を招く場合がある。また、Tiについては、鋼中に形成する窒化物が粗大となってしまい、均一延性および局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、TiおよびNbの含有量は0.05%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るにはTiおよびNbのいずれかの含有量を0.002%以上とすることが好ましい。
上述した鋼材は、軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材における該衝撃吸収部に適用することが好ましい。
また、上記衝撃吸収部の形状としては、閉断面の筒状体が好適であり、例えば図2に示すような四角形の閉断面や図3に示すような八角形の閉断面を有する筒状体を例示することができる。なお、図2および図3では軸方向の断面形状が一定である例を示しているが、これに限られるものではなく、連続的に変化する形状であってもよい。また、図2および図3では断面形状が四角形や八角形である例を示しているが、これに限られるものではなく、任意の多角形であってもよい。
上述した鋼材の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を設けて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
上述した鋼材は、以下の製造方法により製造することが好ましい。
(1)熱間圧延条件
上記化学組成を有するスラブに、800℃以上950℃以下の温度域における総圧下率を50%以上とする熱間圧延を施し、熱間圧延完了後0.4秒間以内に600℃/秒以上の平均冷却速度で700℃まで冷却し、600℃以上700℃以下の温度域で0.4秒間以上保持し、20℃/秒以上100℃/秒未満の平均冷却速度で500℃以下の温度域まで冷却して巻取ることが好ましい。
上記の熱延鋼板に冷間圧延および連続焼鈍を施して冷延鋼板とする場合には、冷間圧延における圧下率を50%以上90%以下とし、750℃以上900℃以下の温度域に10秒間以上150秒間以下保持し、次いで、8℃/秒以上の平均冷却速度で500℃以下の温度域まで冷却する連続焼鈍を施すことが好ましい。10℃/秒以上の平均冷却速度で450℃以下の温度域まで冷却する連続焼鈍を施すことがさらに好ましい。
すなわち、JIS5号引張試験片を採取して引張試験を行うことにより、降伏応力(YS)、引張強度(TS)、全伸び(El)、加工硬化係数(n値)、均一伸び(U−El)を求めた。なお、n値はε=5〜10%の範囲から求めた。
また、フェライトおよび第2相のナノ硬さは、ナノインデンテーション法によって求めた。引張変形により相当塑性ひずみε=0.5を付与後、板厚1/4t部をエメリー紙で研磨後、コロイダルシリカにてメカノケミカル研磨を行い、さらに電解研磨により加工層を除去して試験に供した。ナノインデンテーションはバーコビッチ型圧子を用い、押し込み荷重500μNで行った。この時の圧痕サイズは、直径0.1μm以下である。フェライトおよび第2相のそれぞれについてランダムに20点測定し、それぞれの平均ナノ硬さを求めた。
また、割れ発生率は、軸圧潰試験により割れが生じた割合であり、全試験体数に対する割れが発生した試験体数の割合である。
Epa>0.155×exp(−0.0266×(Wp/t)) (2)
また、一般に、断面形状因子(Wp/t)が小さくなるほど衝突吸収エネルギー指数(Epa)が大きくなるが、断面形状因子(Wp/t)が小さくなるほど単位圧潰量当りの塑性変形仕事量が大きくなる。このため、圧潰途中で割れが生じる可能性が高まり、結果的に塑性変形仕事量を増大させることはできず、衝撃吸収エネルギーを高めることができない場合がある。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.1%以上0.2%以下、Mn:1%以上3%以下、Si+Al:0.5%以上2.5%未満、N:0.001%以上0.015%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
40面積%以上80面積%以下のフェライトを含有し、残部がベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイトの1種または2種以上からなる第2相からなるとともに、前記フェライトの平均粒径が0.5μm以上3μm以下、前記第2相の平均最近接粒子間間隔が1μm以上5μm以下、引張変形によって相当塑性ひずみε=0.5を負荷した際の前記フェライトの平均ナノ硬さが4.5GPa以上かつ前記第2相の平均ナノ硬さが11GPa以下である鋼組織を有すること
を特徴とする鋼材。 - 前記化学組成が、質量%で、Cr:0.5%以下およびMo:0.2%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼材。
- 前記化学組成が、質量%で、Ti:0.05%以下およびNb:0.05%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼材。
- 軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部が請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された鋼材からなることを特徴とする衝撃吸収部材。
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