JP2013216945A - 鋼板および衝撃吸収部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.08%以上0.30%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下、Si+Al:0.50%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、およびN:0.010%以下、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、面積%で、ベイナイト:50%超、マルテンサイト:3%以上30%以下および残留オーステナイト:3%以上15%以下を含有し、残部が平均粒径5μm未満のフェライトからなるミクロ組織を有し、かつ均一伸びと穴拡げ率との積が300%2以上で、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900 MPa以上である機械特性を有する鋼板。
【選択図】なし
Description
このような高強度鋼板として、静動差(静的強度と動的強度との差)が高い低合金TRIP鋼や、マルテンサイトを主体とする第2相を有する複相組織鋼といった高強度複相組織鋼板が知られている。
また、マルテンサイトを主体とする第2相を有する複相組織鋼板に関しては、下記のような発明が開示されている。
特許文献4には、平均粒径が3.5μm以下のフェライト相を75%以上含有し、残部が焼き戻しマルテンサイトからなる衝撃吸収特性に優れる冷延鋼板が開示されている。
Fave∝(σY・t2)/4
σY:有効流動応力
t:板厚
として与えられることが開示されているように、衝撃吸収エネルギーは鋼板の板厚に大きく依存する。したがって、単に鋼板を高強度化することだけでは、衝撃吸収部材について薄肉化と高衝撃吸収性能とを両立させることには限界がある。
面積%で、ベイナイト:50%超、マルテンサイト:3%以上30%以下および残留オーステナイト:3%以上15%以下を含有し、残部が平均粒径5μm未満のフェライトからなるミクロ組織を有し、かつ
均一伸びと穴拡げ率との積が300%2以上で、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900MPa以上である機械特性を有する、
ことを特徴とする鋼板。
1.2≦HM0/HB0≦1.6 (1)
0.9≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3 (2)
ここで、式中の記号は以下の値を表す。
HB0:前記ベイナイトの初期平均ナノ硬さ、
HM10:10%引張変形後の前記マルテンサイトの平均ナノ硬さ、
HB10:10%引張変形後の前記ベイナイトの平均ナノ硬さ。
1.化学組成
(1)C:0.08%以上0.30%以下
Cは、主相であるベイナイトおよび第2相に含有されるマルテンサイトおよび残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する。また、マルテンサイトの強度を高めることにより引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。しかしながら、C含有量が0.08%未満では、上記作用による効果を得ることが困難な場合がある。したがって、C含有量は0.08%以上とする。好ましくは0.12%超、さらに好ましくは0.14%超である。一方、C含有量が0.30%を超えると、マルテンサイトやオーステナイトが過剰に生成して、局部延性の著しい低下を招く場合がある。また、溶接性の劣化が著しくなる。したがって、C含有量は0.30%以下とする。好ましくは0.20%未満、さらに好ましくは0.19%未満である。
Mnは、主相であるベイナイトおよび第2相に含有されるマルテンサイトおよび残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりベイナイトの強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるベイナイトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。Mn含有量が1.5%未満では、上記作用による効果を得ることが困難な場合がある。したがって、Mn含有量は1.5%以上とする。好ましくは1.8%超、さらに好ましくは2.0%超、特に好ましくは2.2%超である。一方、Mn含有量が3.5%超では、ベイナイト変態を過度に遅延させてしまい、その結果、残留オーステナイトの安定化を図ることができずに、所定の残留オーステナイトを確保することが困難となる。したがって、Mn含有量は3.5%以下とする。好ましくは3.1%未満、さらに好ましくは2.8%未満、特に好ましくは2.5%未満である。
SiおよびAlは、ベイナイト中の炭化物の生成を抑制することにより残留オーステナイトの生成を促し、均一延性や局部延性を向上させる作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。さらに、固溶強化によりベイナイトの強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるベイナイトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。SiおよびAlの合計含有量(以下、「(Si+Al)量」ともいう。)が0.50%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、(Si+Al)量は0.50%以上とする。好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.3%以上である。一方、(Si+Al)量を3.0%以上としても、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。また、変態点の高温化を招いて生産性を阻害する。したがって、(Si+Al)量は3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.2%未満、特に好ましくは2.0%未満である。
Pは、一般に不純物として含有され、粒界に偏析して鋼を脆化させ、衝撃荷重負荷時における割れの発生を促進する作用を有する。P含有量が0.10%超では、上記作用による鋼の脆化が顕著となり、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制することが困難となる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.020%未満、さらに好ましくは0.015%未満である。
Sは、一般に不純物として含有され、硫化物系介在物を鋼中に形成して、成形性を劣化させる作用を有する。S含有量が0.010%超では上記作用による影響が顕在化する。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%未満、特に好ましくは0.001%以下である。
Nは、一般に不純物として鋼中に含有され、延性を劣化させる作用を有する。N含有量が0.010%超では、延性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.0060%以下、さらに好ましくは0.0050%以下である。
(7)Cr:0.5%以下およびMo:0.5%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Cr、MoおよびBは、焼き入れ性を高め、ベイナイトの生成を促進する作用を有する。また、マルテンサイトや残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する。さらにまた、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。したがって、Cr、MoおよびBからなる群から選択される1種または2種を含有させてもよい。しかしながら、Cr含有量が0.5%を超えたり、Mo含有量が0.5%を超えたり、B含有量が0.01%を超えたりすると、一様伸びや局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、Cr含有量は0.5%以下、Mo含有量は0.5%以下、B含有量は0.01%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るにはCr:0.1%以上、Mo:0.1%以上およびB:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Ti、NbおよびVには、鋼中に炭窒化物を形成するなどして焼鈍中のオーステナイトの粒成長を抑制し、割れ感受性を低下させる作用がある。また、ベイナイト中に析出して析出強化の作用により降伏強度を向上させる作用も有する。したがって、Ti、NbおよびVの1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量は0.04%以上、Nb含有量は0.030%以上、V含有量は0.5%以上としても、上記作用による効果は飽和してコスト的に不利になる。したがって、Ti含有量は0.04%未満、Nb含有量は0.030%未満、V含有量は0.5%未満とする。Ti含有量は0.020%未満とすることが好ましい。Nb含有量は0.020%未満とすることが好ましく、0.015%以下とすることがさらに好ましい。V含有量は0.30%以下とすることが好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.01%以上、Nb:0.005%以上およびV:0.010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。Nbを含有させる場合には、Nb含有量を0.010%以上とすることがさらに好ましい。
Ca、MgおよびREMは、介在物の形状を制御することにより、また、Biは、凝固組織を微細化することにより、いずれも局部延性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、CaおよびMgについては0.010%を超えて含有させると、また、REMについては0.050%を超えて含有させると、鋼中に粗大な酸化物を数多く生成してしまい、成形性が損なわれる。Biについては、0.050%を超えて含有させると粒界に偏析して溶接性を阻害する。したがって、各元素の含有量を上記のとおり規定する。Ca、MgおよびREMの含有量は、それぞれ0.0020%以下とすることが好ましく、Biの含有量は0.010%以下とすることが好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ca:0.0008%以上、Mg:0.0008%以上、REM:0.0008%以上およびBi:0.0010%の何れかの条件を満足させることが好ましい。
(1)複相組織
本発明に係る鋼板の鋼組織は、高い降伏強度と低ひずみ域の加工硬化係数とを得て有効流動応力を高めるために、ベイナイトを主相とし、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを第2相に含有する複相組織とする。第2相の残部はフェライトである。
ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、ベイナイト面積率は降伏強度に影響を及ぼす。すなわち、ベイナイトの面積率を高めることにより降伏強度が向上する。ベイナイトの面積率が50%未満では、降伏強度の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。そのため、ベイナイトの面積率を50%超以上とする。
ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、マルテンサイトは降伏強度と低ひずみ域における加工硬化率とを向上させ、5%流動応力を高める作用を有する。また、一様伸びを高める作用をも有する。マルテンサイト面積率が3%未満では、5%流動応力や一様伸びの不足により、良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、マルテンサイト面積率は3%以上とする。一方、マルテンサイト面積率が30%超では局部延性が低下し、不安定座屈による割れが発生しやすくなる。したがって、マルテンサイトの面積率は30%以下とする。マルテンサイトの面積率は好ましくは25%以下、さらに好ましくは15%以下である。
ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、残留オーステナイトは降伏強度と低ひずみ域における加工硬化率とを向上させ、5%流動応力を高める作用を有する。また、一様伸びを高める作用をも有する。残留オーステナイト面積率が3%未満では、5%流動応力や一様伸びの不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、残留オーステナイト面積率は3%以上とする。一方、残留オーステナイト面積率が15%超では局部延性が低下し、不安定座屈による割れが発生しやすくなる。したがって、残留オーステナイトの面積率は15%以下とする。
残部組織であるフェライトの平均粒径が5μm以上では、軟質なフェライトに歪が集中し易くなり、降伏強度が低下して、鋼板の5%流動応力を高めることが困難となる。また、局部延性が低下し、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制することが困難となる。したがって、フェライトの平均粒径は5μm以下とする。好ましくは4.0μm未満、さらに好ましくは3.0μm未満である。フェライトの平均粒径の下限は特に規定する必要はない。
主相であるベイナイトの初期平均ナノ硬さ(HB0)に対する第2相に含有されるマルテンサイトの初期平均ナノ硬さ(HM0)の硬度比(HM0/HB0)を1.2以上とすることにより、マルテンサイトを含有させることによる低ひずみ域における加工硬化係数の向上と一様伸びの向上とを図ることが容易になり、割れの発生が効果的に抑制される。したがって、上記硬度比(HM0/HB0)は1.2以上とすることが好ましい。
ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、塑性変形によりベイナイトにひずみが集中して加工硬化することを抑制すると、ベイナイト中のせん断帯や粒界に沿った割れの発生が抑制され、局部延性を向上させることが容易になる。一方、塑性変形による第2相の過度な硬化を抑制すると、主相と第2相との硬度差が大きくなることが抑制され、両者の界面からの割れの発生が抑制され、局部延性を向上させることが容易になる。したがって、ベイナイトを主相とする複相組織鋼板においてより高い局部延性を得るには、主相であるベイナイトと第2相との間でひずみを適度に分配させることが好ましい。すなわち、塑性変形の際に、主相であるベイナイトと第2相とを同程度に加工硬化させることが好ましい。このための指標としては、10%引張変形後の加工硬化率の比率を用いることが好適であり、ベイナイトを主相とし第2相にマルテンサイトを含有する複相組織鋼板においては、10%引張変形後のベイナイトの加工硬化率に対する最も硬質な相であるマルテンサイトの10%引張変形後の加工硬化率の比について上限および下限を限定することが好ましい。
本発明に係る鋼板の機械特性は、均一伸びと穴拡げ率との積が300%2以上、かつ、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900MPa以上である。
上述した鋼板は、軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材における該衝撃吸収部に適用することが好ましい。
上記衝撃吸収部の形状としては、閉断面の筒状体が好適であり、例えば図2に示すような四角形の閉断面や図3に示すような八角形の閉断面を有する筒状体を例示することができる。なお、図2および図3では軸方向の断面形状が一定である例を示しているが、これに限られるものではなく、連続的に変化する形状であってもよい。また、図2および図3では断面形状が四角形や八角形である例を示しているが、断面形状はこれに限られるものではなく、任意の多角形であってもよい。
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を設けて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
上述した鋼板は、下記工程(A)〜(C)を有する製造方法により製造することが好ましい:
(A)C:0.08%以上0.30%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下、Si+Al:0.50%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するスラブに、Ar3点以上で圧延を完了する多パス熱間圧延を施し、圧延完了後0.4秒間以内に冷却を開始するとともに、平均冷却速度が600℃/秒以上、かつ、最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧延完了から720℃まで冷却するのに要する時間が4秒間以下となる冷却条件で620℃以上720℃以下の温度域まで冷却し、前記温度域に1秒間以上10秒間以下保持した後、10℃/秒以上100℃/秒以下の平均冷却速度で300℃以上610℃以下の温度域まで冷却して巻き取ることにより熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に、40%以上70%以下の圧下率の冷間圧延を施すことにより冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に、(Ac3点−30℃)以上(Ac3点+100℃)以下の温度域に10秒間以上300秒間以下保持し、次いで500℃以上650℃以下の温度域を15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、300℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上3000秒間以下保持する熱処理を施す焼鈍工程。
すなわち、上記熱間圧延条件を適用することにより、フェライトと他の硬質相とが微細かつ均一に分散したミクロ組織が形成され、これに上記冷間圧延を施すことにより、さらなる組織の均一化が図られるとともに、後続する焼鈍工程における再結晶が促進されることにより、焼鈍後の組織の微細化と均一化とが図られる。これに、上記焼鈍条件を適用することにより、上記フェライトが当初から微細かつ均一に分散していることと、微細かつ均一に分散した上記他の硬質相がオーステナイト変態の優先核生成サイトとなってフェライトの粒成長を抑制することとが相俟って、フェライトの粒成長が飛躍的に抑制されるとともに、微細かつ均一に分散した上記他の硬質相がオーステナイト変態の優先核生成サイトとなることにより変態後のオーステナイトも当初から微細かつ均一に分散する。さらに、上記微細に分散したフェライトにより変態後のオーステナイトの粒成長が飛躍的に抑制され、これらの相乗作用により微細かつ均一な組織が得られることで、上記ミクロ組織が達成できるものと考えられる。
上記化学組成を有するスラブに、Ar3点以上で圧延を完了する多パス熱間圧延を施し、圧延完了後0.4秒間以内に冷却を開始するとともに、平均冷却速度が600℃/秒以上、かつ、最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧延完了から720℃まで冷却するのに要する時間が4秒間以下となる冷却条件で620℃以上720℃以下の温度域まで冷却し、前記温度域に1秒間以上10秒間以下保持した後、10℃/秒以上100℃/秒以下の平均冷却速度で300℃以上610℃以下の温度域まで冷却して巻き取ることにより熱延鋼板とすることが好ましい。
圧延は、多パスの圧延とすることが好ましい。1パス当たりの圧下量は15%以上60%以下とすることが好ましい。1パス当たりの圧下量を大きく取る方が、オーステナイトへより多くの歪みを導入させることができるので、その後の変態によって生成されるフェライトの結晶粒が微細化され、熱延鋼板の組織が微細化される。このため、特に最終圧延パスから2つ前の圧延パスから最終圧延パスまでの3パスについて、1パス当たりの圧下量を20%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは22%以上であり、特に好ましくは30%以上である。一方、圧延荷重および板形状の制御性確保の観点からは、1パス当たりの圧下率は50%未満とすることが好ましい。特に板形状の制御を容易にしたいときには、圧下率を45%以下とすることが好ましい。
上記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に、40%以上70%以下の圧下率の冷間圧延を施すことにより冷延鋼板とすることが好ましい。
上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に、(Ac3点−30℃)以上(Ac3点+100℃)以下の温度域に10秒間以上300秒間以下保持し、次いで500℃以上650℃以下の温度域を15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、300℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上3000秒間以下保持する熱処理を施して焼鈍を行うことが好ましい。
先ず、(Ac3点−30℃)以上(Ac3点+100℃)以下の温度域に10秒間以上300秒間以下保持するのであるが、この際の保持温度を(Ac3点−30℃)以上とすることにより、十分な再結晶とオーステナイト化が図られ、焼鈍後において目的とするミクロ組織を得ることが容易になる。したがって、上記保持温度は(Ac3点−30℃)以上とすることが好ましい。さらに好ましくは(Ac3点−20℃)超であり、特に好ましくは(Ac3点−10℃)超であり、最も好ましくは(Ac3点+20℃)超である。
JIS5号引張試験片を採取して引張試験を行うことにより、降伏強度(YS:0.2%耐力)、引張強度(TS)、一様伸び(u−El)を求めた。
鋼板の圧延方向に平行な断面を鏡面研磨した後、電解研磨にて歪を除去し、板厚の1/4深さ位置についてEBSD解析を行い、粒界面方位差マップおよびイメージクオリィマップからマルテンサイトの面積率を求めた。マルテンサイトは内部の転位密度が比較的高く、EBSDのイメージクオリティが他よりも明らかに低い値を示すため、分離・判定は容易である。
ベイナイトおよびマルテンサイトのナノ硬さはナノインデンテーション法によって求めた。板厚の1/4深さ位置をエメリー紙で研磨後、コロイダルシリカにてメカノケミカル研磨を行い、さらに電解研磨により加工層を除去して試験に供した。ナノインデンテーションはバーコビッチ型圧子を用い、押し込み荷重500μNで行った。この時の圧痕サイズは、直径0.1μm以下である。ベイナイトおよびマルテンサイトのそれぞれについてランダムに20点測定し、それぞれの平均ナノ硬さを求めた。10%引張変形後についても上記方法によりベイナイトおよびマルテンサイトの平均ナノ硬さを求めた。
一般に、断面形状因子(Wp/t)が小さくなるほど衝撃吸収エネルギーが高くなる。しかしながら、断面形状因子(Wp/t)が小さくなるほど単位圧潰量当りの塑性変形仕事量が大きくなる。このため、圧潰途中で割れが生じる可能性が高まり、結果的に塑性変形仕事量を増大させることはできず、衝撃吸収エネルギーを高めることができない場合がある。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.08%以上0.30%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下、Si+Al:0.50%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、およびN:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
面積%で、ベイナイト:50%超、マルテンサイト:3%以上30%以下および残留オーステナイト:3%以上15%以下を含有し、残部が平均粒径5μm未満のフェライトからなるミクロ組織を有し、かつ
均一伸びと穴拡げ率との積が300%2以上で、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900MPa以上である機械特性を有する、
ことを特徴とする鋼板。 - 下記式(1)および(2)を満足するミクロ組織を有する請求項1に記載の鋼板。
1.2≦HM0/HB0≦1.6 (1)
0.9≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3 (2)
ここで、式中の記号は以下の値を表す。
HM0:前記マルテンサイトの初期平均ナノ硬さ、
HB0:前記ベイナイトの初期平均ナノ硬さ、
HM10:10%引張変形後の前記マルテンサイトの平均ナノ硬さ、
HB10:10%引張変形後の前記ベイナイトの平均ナノ硬さ。 - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2に記載の鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.04%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.5%未満からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鋼板。
- 軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部が請求項1〜請求項5のいずれかに記載の鋼板からなることを特徴とする衝撃吸収部材。
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