JP2013216945A - 鋼板および衝撃吸収部材 - Google Patents

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Yoshiori Kono
佳織 河野
Masahira Tasaka
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Yoshiaki Nakazawa
嘉明 中澤
Takuya Nishio
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昌幸 脇田
Jun Haga
純 芳賀
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Abstract

【課題】衝撃吸収エネルギーが高く、圧潰しても割れが発生しにくい鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.08%以上0.30%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下、Si+Al:0.50%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、およびN:0.010%以下、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、面積%で、ベイナイト:50%超、マルテンサイト:3%以上30%以下および残留オーステナイト:3%以上15%以下を含有し、残部が平均粒径5μm未満のフェライトからなるミクロ組織を有し、かつ均一伸びと穴拡げ率との積が300%2以上で、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900 MPa以上である機械特性を有する鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋼板および衝撃吸収部材に関し、具体的には、衝撃荷重負荷時における割れの発生が抑制され、さらに有効流動応力の高い衝撃吸収部材の素材として好適な鋼板および衝撃吸収部材に関する。
近年、地球環境保護の観点から、自動車からのCO排出量の低減の一環として、自動車車体の軽量化が求められており、自動車用鋼板の高強度化が指向されている。これは、鋼板の強度を向上させることにより、自動車用鋼板の薄肉化が可能となるためである。一方、自動車の衝突安全性向上に対する社会的要求もいっそう高くなっており、単に鋼板の高強度化のみだけでなく、走行中に衝突した場合の耐衝撃性に優れた鋼板の開発も望まれている。
ここで、自動車用部材の各部位は、衝突時に数10〜10/sの高いひずみ速度で変形を受けるため、動的強度特性に優れた高強度鋼板が要求される。
このような高強度鋼板として、静動差(静的強度と動的強度との差)が高い低合金TRIP鋼や、マルテンサイトを主体とする第2相を有する複相組織鋼といった高強度複相組織鋼板が知られている。
低合金TRIP鋼に関しては、例えば、特許文献1に、動的変形特性に優れた自動車衝突エネルギー吸収用加工誘起変態型高強度鋼板(TRIP鋼板)が開示されている。
また、マルテンサイトを主体とする第2相を有する複相組織鋼板に関しては、下記のような発明が開示されている。
特許文献2には、微細なフェライト粒からなり、結晶粒径が1.2μm以下のナノ結晶粒の平均粒径dsと、結晶粒径が1.2μmを超えるミクロ結晶粒の平均結晶粒径dLとがdL/ds≧3の関係を満足する、強度と延性バランスとが優れ、かつ、静動差が170MPa以上である高強度鋼板が開示されている。
特許文献3には、平均粒径が3μm以下のマルテンサイトと平均粒径が5μm以下のマルテンサイトの2相組織からなり、静動比が高い鋼板が開示されている。
特許文献4には、平均粒径が3.5μm以下のフェライト相を75%以上含有し、残部が焼き戻しマルテンサイトからなる衝撃吸収特性に優れる冷延鋼板が開示されている。
特許文献5には、予歪を加えてフェライトとマルテンサイトから構成される2相組織とし、5×10〜5×10/sの歪速度における静動差が60MPa以上を満足する冷延鋼板が開示されている。
さらに、特許文献6には、85%以上のベイナイトとマルテンサイトなどの硬質相のみからなる耐衝撃特性に優れた高強度熱延鋼板が開示されている。
特開平11−80879号公報 特開2006−161077号公報 特開2004−84074号公報 特開2004−277858号公報 特開2000−17385号公報 特開平11−269606号公報
従来の衝撃吸収部材の素材である鋼板には、以下のような課題がある。すなわち、衝撃吸収部材(以下、単に「部材」ともいう。)の衝撃吸収エネルギーを向上するには、衝撃吸収部材の素材である鋼板(以下、単に「鋼板」ともいう。)の高強度化が必須である。
しかしながら、「塑性と加工」第46巻、第534号641〜645頁に、衝撃吸収エネルギーを決定づける平均荷重(Fave)が、
ave∝(σY・t)/4
σY:有効流動応力
t:板厚
として与えられることが開示されているように、衝撃吸収エネルギーは鋼板の板厚に大きく依存する。したがって、単に鋼板を高強度化することだけでは、衝撃吸収部材について薄肉化と高衝撃吸収性能とを両立させることには限界がある。
ところで、例えば、国際公開第2005/010396号パンフレット、国際公開第2005/010397号パンフレット、さらには国際公開第2005/010398号パンフレットにも開示されるように、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーはその形状にも大きく依存する。
すなわち、塑性変形仕事量を増大させるように衝撃吸収部材の形状を最適化することによって、単に鋼板を高強度化することだけでは達成し得ないレベルまで、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることができる可能性がある。
しかしながら、塑性変形仕事量を増大させるように衝撃吸収部材の形状を最適化したとしても、鋼板がその塑性変形仕事量に耐え得る変形能を有していなければ、想定していた塑性変形が完了する前に、衝撃吸収部材に早期に割れが生じてしまい、結果的に塑性変形仕事量を増大させることができず、衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることができない。また、衝撃吸収部材に早期に割れが生じると、この衝撃吸収部材に隣接して配置された他の部材を損傷する等の予期せぬ事態を招きかねない。
従来は、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーが鋼板の動的強度に依存するとの技術思想に基づいて、鋼板の動的強度を高めることが指向されてきたが、単に鋼板の動的強度を高めることを指向するのでは、顕著な変形能の低下を招く場合がある。このため、塑性変形仕事量を増大させるように衝撃吸収部材の形状を最適化したとしても、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることができるとは限らなかった。
また、そもそも上記技術思想に基づいて製造された鋼板の使用を前提として衝撃吸収部材の形状が検討されてきたため、衝撃吸収部材の形状の最適化は、当初から既存の鋼板の変形能を前提として検討されており、塑性変形仕事量を増大させるように、鋼板の変形能を高め、かつ衝撃吸収部材の形状を最適化するという検討自体が、これまで十分になされていなかった。
上述したように、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを高めるには、塑性変形仕事量を増大させるように、鋼板を高強度化するのみならず、衝撃吸収部材の形状を最適化することも重要である。
鋼板に関しては、塑性変形仕事量を増大させることができる衝撃吸収部材の形状の最適化を可能にするように、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制しつつ塑性変形仕事量を増大させるように有効流動応力を高めることが重要である。
本発明者らは、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを高めることを可能にするために、鋼板について、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制し、さらに有効流動応力を高める方法を鋭意検討し、以下に列記する新たな知見を得た。
(A)衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを高めるには、鋼板について5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力(以下、「5%流動応力」と記載する。)を向上させることが有効である。
(B)衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制するには、一様伸びと局部延性とを向上させることが有効である。
(C)鋼板の5%流動応力を高めるには、降伏強度と低ひずみ域における加工硬化係数とを向上させることが有効である。
(D)降伏強度と低ひずみ域における加工硬化係数とを向上させるには、鋼板の鋼組織を、ベイナイトを主相とし、ベイナイトより硬質であるマルテンサイトおよび残留オーステナイトを第2相に含有する複相組織することが必要である。
(E)第2相に含有されるマルテンサイトおよび残留オーステナイトは、低ひずみ域における加工硬化係数の向上と一様伸びの向上とに寄与する。したがって、マルテンサイト面積率および残留オーステナイトの下限を限定する必要がある。
(F)一方、マルテンサイト面積率や残留オーステナイト面積率が過大であると局部延性の低下をもたらす。したがって、マルテンサイト面積率および残留オーステナイト面積率の上限を限定する必要がある。
(G)残部組織であるフェライトが粗大であると、軟質なフェライトに歪が集中し易くなり、降伏強度が低下する。また、局部延性の低下をもたらす。したがって、フェライトの平均粒径の上限を規定する必要がある。
(H)上述したように、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを高めるには、鋼板について5%流動応力を向上させることが有効であり、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制するには、一様伸びと局部延性とを向上させることが有効であるが、これらの指標としては、近年の厳しいニーズに応えるために、均一伸びと穴拡げ率との積が300%以上、かつ、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900MPa以上とすることが必要である。
(I)主相であるベイナイトと第2相に含有されるマルテンサイトとの硬度比を適度に抑制すると、塑性変形による可動転位の発生が抑制され、より高い降伏強度を確保することが容易になる。したがって、主相であるベイナイトとマルテンサイトとの硬度比の上限を限定することが好ましい。
(J)一方、主相であるベイナイトと第2相に含有されるマルテンサイトとの硬度比を適度に大きくすると、マルテンサイトを含有させることによる低ひずみ域における加工硬化係数の向上と一様伸びの向上とを図ることが容易になる。したがって、主相であるベイナイトとマルテンサイトとの硬度比の下限を限定することが好ましい。
(K)ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、塑性変形によりベイナイトにのみ歪みが集中して加工硬化することを抑制すると、ベイナイト中のせん断帯や粒界に沿った割れの発生が抑制され、局部延性の向上を図ることが容易になる。一方、塑性変形により第2相の過度な硬化を抑制すると、主相と第2相との硬度差が大きくなることを回避でき、両者の界面から割れの発生が抑制され、局部延性の向上を図ることが容易になる。
したがって、ベイナイトを主相とする複相組織鋼板においてさらに高い局部延性を得るには、主相であるベイナイトと第2相との間でひずみを適度に分配させることが好ましい。すなわち、塑性変形の際に主相であるベイナイトと第2相とを同程度に加工硬化させることが好ましい。このための指標としては、10%引張変形後の加工硬化率の比率を用いることが好適であり、ベイナイトを主相とし第2相にマルテンサイトを含有する複相組織鋼板においては、10%引張変形後のベイナイトの加工硬化率と10%引張変形後のマルテンサイトの加工硬化率との比について上限および下限を限定することが好ましい。
本発明は上記の新たな知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.08%以上0.30%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下、Si+Al:0.50%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、およびN:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
面積%で、ベイナイト:50%超、マルテンサイト:3%以上30%以下および残留オーステナイト:3%以上15%以下を含有し、残部が平均粒径5μm未満のフェライトからなるミクロ組織を有し、かつ
均一伸びと穴拡げ率との積が300%以上で、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900MPa以上である機械特性を有する、
ことを特徴とする鋼板。
(2)下記式(1)および(2)を満足するミクロ組織を有する上記(1)に記載の鋼板。
1.2≦HM0/HB0≦1.6 (1)
0.9≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3 (2)
ここで、式中の記号は以下の値を表す。
M0:前記マルテンサイトの初期平均ナノ硬さ、
B0:前記ベイナイトの初期平均ナノ硬さ、
M10:10%引張変形後の前記マルテンサイトの平均ナノ硬さ、
B10:10%引張変形後の前記ベイナイトの平均ナノ硬さ。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する上記(1)または(2)に記載の鋼板。
(4)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.04%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.5%未満からなる群から選択される1種または2種以上を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板。
(5)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼板。
(6)軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部が上記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼板からなることを特徴とする衝撃吸収部材。
本発明に係る鋼板は、軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材における該衝撃吸収部の素材として好適である。特に自動車用の衝撃吸収部材の素材として好適であり、例えば、自動車用の衝撃吸収部材としては、閉じた断面を有する筒状の本体を有するクラッシュボックス(バンパーリインフォースを支持しながら、例えばサイドメンバーといったボディシェルに装着され、バンパーリインフォースから負荷される衝撃荷重によって軸圧壊して蛇腹状に塑性変形する)の素材として用いることが好ましい。また、自動車のサイドメンバー、フロントアッパーレール、サイドシル、クロスメンバーの素材としても有利に用いることができる。
本発明に係る鋼板から衝撃吸収部材を製造すると、衝撃荷重が負荷された時の割れの発生を抑制または解消できるとともに有効流動応力が高い衝撃吸収部材を得ることが可能となるために、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることができる。かかる衝撃吸収部材を自動車などの製品に適用することにより、その製品の衝突安全性を一層向上させることが可能になるので、本発明は産業上極めて有益である。
衝撃吸収部材の適用部位の例を示す説明図である。 衝撃吸収部の形状の一例を示す二面図である。 衝撃吸収部の形状の一例を示す二面図である。
以下、本発明に係る鋼板についてより具体的に説明する。なお、以下の説明において、鋼の化学組成に関する%はすべて質量%である。
1.化学組成
(1)C:0.08%以上0.30%以下
Cは、主相であるベイナイトおよび第2相に含有されるマルテンサイトおよび残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する。また、マルテンサイトの強度を高めることにより引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。しかしながら、C含有量が0.08%未満では、上記作用による効果を得ることが困難な場合がある。したがって、C含有量は0.08%以上とする。好ましくは0.12%超、さらに好ましくは0.14%超である。一方、C含有量が0.30%を超えると、マルテンサイトやオーステナイトが過剰に生成して、局部延性の著しい低下を招く場合がある。また、溶接性の劣化が著しくなる。したがって、C含有量は0.30%以下とする。好ましくは0.20%未満、さらに好ましくは0.19%未満である。
(2)Mn:1.5%以上3.5%以下
Mnは、主相であるベイナイトおよび第2相に含有されるマルテンサイトおよび残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりベイナイトの強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるベイナイトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。Mn含有量が1.5%未満では、上記作用による効果を得ることが困難な場合がある。したがって、Mn含有量は1.5%以上とする。好ましくは1.8%超、さらに好ましくは2.0%超、特に好ましくは2.2%超である。一方、Mn含有量が3.5%超では、ベイナイト変態を過度に遅延させてしまい、その結果、残留オーステナイトの安定化を図ることができずに、所定の残留オーステナイトを確保することが困難となる。したがって、Mn含有量は3.5%以下とする。好ましくは3.1%未満、さらに好ましくは2.8%未満、特に好ましくは2.5%未満である。
(3)Si+Al:0.50%以上3.0%以下
SiおよびAlは、ベイナイト中の炭化物の生成を抑制することにより残留オーステナイトの生成を促し、均一延性や局部延性を向上させる作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。さらに、固溶強化によりベイナイトの強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるベイナイトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。SiおよびAlの合計含有量(以下、「(Si+Al)量」ともいう。)が0.50%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、(Si+Al)量は0.50%以上とする。好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.3%以上である。一方、(Si+Al)量を3.0%以上としても、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。また、変態点の高温化を招いて生産性を阻害する。したがって、(Si+Al)量は3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.2%未満、特に好ましくは2.0%未満である。
なお、Siは優れた固溶強化能を有するため、Si含有量は0.50%以上とすることが好ましく、1.0%以上とすることがさらに好ましい。一方、Siは、化成処理性や溶接性を低下させる作用を有するので、Si含有量は1.9%未満とすることが好ましく、1.7%未満とすることがさらに好ましく、1.5%未満とすることが特に好ましい。
(4)P:0.10%以下
Pは、一般に不純物として含有され、粒界に偏析して鋼を脆化させ、衝撃荷重負荷時における割れの発生を促進する作用を有する。P含有量が0.10%超では、上記作用による鋼の脆化が顕著となり、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制することが困難となる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.020%未満、さらに好ましくは0.015%未満である。
(5)S:0.010%以下
Sは、一般に不純物として含有され、硫化物系介在物を鋼中に形成して、成形性を劣化させる作用を有する。S含有量が0.010%超では上記作用による影響が顕在化する。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%未満、特に好ましくは0.001%以下である。
(6)N:0.010%以下
Nは、一般に不純物として鋼中に含有され、延性を劣化させる作用を有する。N含有量が0.010%超では、延性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.0060%以下、さらに好ましくは0.0050%以下である。
以下に説明する元素は、必要に応じて鋼に含有させることができる任意元素である。
(7)Cr:0.5%以下およびMo:0.5%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Cr、MoおよびBは、焼き入れ性を高め、ベイナイトの生成を促進する作用を有する。また、マルテンサイトや残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する。さらにまた、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。したがって、Cr、MoおよびBからなる群から選択される1種または2種を含有させてもよい。しかしながら、Cr含有量が0.5%を超えたり、Mo含有量が0.5%を超えたり、B含有量が0.01%を超えたりすると、一様伸びや局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、Cr含有量は0.5%以下、Mo含有量は0.5%以下、B含有量は0.01%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るにはCr:0.1%以上、Mo:0.1%以上およびB:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
(8)Ti:0.04%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.5%未満からなる群から選択される1種または2種以上
Ti、NbおよびVには、鋼中に炭窒化物を形成するなどして焼鈍中のオーステナイトの粒成長を抑制し、割れ感受性を低下させる作用がある。また、ベイナイト中に析出して析出強化の作用により降伏強度を向上させる作用も有する。したがって、Ti、NbおよびVの1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量は0.04%以上、Nb含有量は0.030%以上、V含有量は0.5%以上としても、上記作用による効果は飽和してコスト的に不利になる。したがって、Ti含有量は0.04%未満、Nb含有量は0.030%未満、V含有量は0.5%未満とする。Ti含有量は0.020%未満とすることが好ましい。Nb含有量は0.020%未満とすることが好ましく、0.015%以下とすることがさらに好ましい。V含有量は0.30%以下とすることが好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.01%以上、Nb:0.005%以上およびV:0.010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。Nbを含有させる場合には、Nb含有量を0.010%以上とすることがさらに好ましい。
(9)Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Ca、MgおよびREMは、介在物の形状を制御することにより、また、Biは、凝固組織を微細化することにより、いずれも局部延性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、CaおよびMgについては0.010%を超えて含有させると、また、REMについては0.050%を超えて含有させると、鋼中に粗大な酸化物を数多く生成してしまい、成形性が損なわれる。Biについては、0.050%を超えて含有させると粒界に偏析して溶接性を阻害する。したがって、各元素の含有量を上記のとおり規定する。Ca、MgおよびREMの含有量は、それぞれ0.0020%以下とすることが好ましく、Biの含有量は0.010%以下とすることが好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ca:0.0008%以上、Mg:0.0008%以上、REM:0.0008%以上およびBi:0.0010%の何れかの条件を満足させることが好ましい。
2.ミクロ組織
(1)複相組織
本発明に係る鋼板の鋼組織は、高い降伏強度と低ひずみ域の加工硬化係数とを得て有効流動応力を高めるために、ベイナイトを主相とし、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを第2相に含有する複相組織とする。第2相の残部はフェライトである。
(2)ベイナイトの面積率:50%超
ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、ベイナイト面積率は降伏強度に影響を及ぼす。すなわち、ベイナイトの面積率を高めることにより降伏強度が向上する。ベイナイトの面積率が50%未満では、降伏強度の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。そのため、ベイナイトの面積率を50%超以上とする。
(3)マルテンサイト面積率:3%以上30%以下
ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、マルテンサイトは降伏強度と低ひずみ域における加工硬化率とを向上させ、5%流動応力を高める作用を有する。また、一様伸びを高める作用をも有する。マルテンサイト面積率が3%未満では、5%流動応力や一様伸びの不足により、良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、マルテンサイト面積率は3%以上とする。一方、マルテンサイト面積率が30%超では局部延性が低下し、不安定座屈による割れが発生しやすくなる。したがって、マルテンサイトの面積率は30%以下とする。マルテンサイトの面積率は好ましくは25%以下、さらに好ましくは15%以下である。
(4)残留オーステナイト面積率:3%以上15%以下
ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、残留オーステナイトは降伏強度と低ひずみ域における加工硬化率とを向上させ、5%流動応力を高める作用を有する。また、一様伸びを高める作用をも有する。残留オーステナイト面積率が3%未満では、5%流動応力や一様伸びの不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、残留オーステナイト面積率は3%以上とする。一方、残留オーステナイト面積率が15%超では局部延性が低下し、不安定座屈による割れが発生しやすくなる。したがって、残留オーステナイトの面積率は15%以下とする。
(5)残部組織であるフェライトの平均粒径:5μm未満
残部組織であるフェライトの平均粒径が5μm以上では、軟質なフェライトに歪が集中し易くなり、降伏強度が低下して、鋼板の5%流動応力を高めることが困難となる。また、局部延性が低下し、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制することが困難となる。したがって、フェライトの平均粒径は5μm以下とする。好ましくは4.0μm未満、さらに好ましくは3.0μm未満である。フェライトの平均粒径の下限は特に規定する必要はない。
フェライトの面積率は特に規定する必要はないが、下限は1%以上とすることが好ましく、5%以上とすることがさらに好ましい。一方、上限は20%以下とすることが好ましく、15%以上とすることがさらに好ましく、10%以下とすることが特に好ましい。
(6)ベイナイトとマルテンサイトとの硬度比:1.2≦HM0/HB0≦1.6
主相であるベイナイトの初期平均ナノ硬さ(HB0)に対する第2相に含有されるマルテンサイトの初期平均ナノ硬さ(HM0)の硬度比(HM0/HB0)を1.2以上とすることにより、マルテンサイトを含有させることによる低ひずみ域における加工硬化係数の向上と一様伸びの向上とを図ることが容易になり、割れの発生が効果的に抑制される。したがって、上記硬度比(HM0/HB0)は1.2以上とすることが好ましい。
一方、上記硬度比(HM0/HB0)を1.6以下とすることにより、ベイナイト主相と硬質第2相間の硬度比が適度に抑制され、塑性変形により可動転位の発生が抑制されるため、降伏強度の向上を図ることが容易になる。それにより、衝撃吸収エネルギーを向上させ、良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが容易になる。したがって、上記硬度比(HM0/HB0)は1.6以下とすることが好ましい。
(7)ベイナイトに対するマルテンサイトの加工硬化率比:0.9≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3
ベイナイトを主相とする複相組織鋼板において、塑性変形によりベイナイトにひずみが集中して加工硬化することを抑制すると、ベイナイト中のせん断帯や粒界に沿った割れの発生が抑制され、局部延性を向上させることが容易になる。一方、塑性変形による第2相の過度な硬化を抑制すると、主相と第2相との硬度差が大きくなることが抑制され、両者の界面からの割れの発生が抑制され、局部延性を向上させることが容易になる。したがって、ベイナイトを主相とする複相組織鋼板においてより高い局部延性を得るには、主相であるベイナイトと第2相との間でひずみを適度に分配させることが好ましい。すなわち、塑性変形の際に、主相であるベイナイトと第2相とを同程度に加工硬化させることが好ましい。このための指標としては、10%引張変形後の加工硬化率の比率を用いることが好適であり、ベイナイトを主相とし第2相にマルテンサイトを含有する複相組織鋼板においては、10%引張変形後のベイナイトの加工硬化率に対する最も硬質な相であるマルテンサイトの10%引張変形後の加工硬化率の比について上限および下限を限定することが好ましい。
具体的には、ベイナイトの初期平均ナノ硬さ(HB0)および10%引張変形後のベイナイトの平均ナノ硬さ(HB10)から求めるベイナイトの加工硬化率(HB10/HB0)に対する、マルテンサイトの初期平均ナノ硬さ(HM0)および10%引張変形後のマルテンサイトの平均ナノ硬さ(HM10)から求めるマルテンサイトの加工硬化率(HM10/HM0)の比である加工硬化率比{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}について、上限および下限を限定することが好ましい。
上記加工硬化率比を0.9以上とすると、塑性変形によりベイナイトにひずみが集中して加工硬化することが抑制され、ベイナイト中のせん断帯や粒界に沿って割れが発生することが抑制され、局部延性が向上する。したがって、上記加工硬化率比は0.9以上とすることが好ましい。一方、上記加工硬化率比を1.3以下とすると、マルテンサイトが過度に硬化することが抑制され、局部延性が向上する。よって、上記加工硬化率比は1.3以下とすることが好ましい。
3.機械特性
本発明に係る鋼板の機械特性は、均一伸びと穴拡げ率との積が300%以上、かつ、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900MPa以上である。
上述したように、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを高めるには、鋼板について5%流動応力を向上させることが有効であり、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制するには、一様伸びと局部延性とを向上させることが有効であるが、これらの指標としては、近年の厳しいニーズに応えるために、均一伸びと穴拡げ率との積が300%以上、かつ、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900MPa以上とすることが必要である。したがって、上記機械特性を有するものとする。均一伸びと穴拡げ率との積は400%以上であることが好ましく、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力は930MPa以上であることが好ましい。
本発明に係る鋼板のその他の機械特性として、YSは600MPa以上、TSは900MPa以上であることが望ましい。
4.用途
上述した鋼板は、軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材における該衝撃吸収部に適用することが好ましい。
上記衝撃吸収部に上記鋼板を適用すると、衝撃荷重が負荷された時における衝撃吸収部材の割れの発生が抑制または解消されるとともに、有効流動応力が高いことから、上記衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることが可能となる。このことは、衝撃吸収部材の圧潰試験において適正な平均圧潰荷重と高い安定座屈率(割れの発生しない試験体の割合)を示すことで実証される。
図1は、自動車における衝撃吸収部材の適用部位の例を示す説明図である。軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材としては、例えば自動車部材においては、図1に網掛により示すような部材(フロントおよびリアのクラッシュボックス2,3、フロントおよびリアのサイドメンバー4,5、フロントアッパーレール6、サイドシル7等)やクロスメンバー8等の部材を例示することができる。さらには、バンパーリインフォースメント11やセンターピラー12にも適用可能である。
図2、3は、いずれも、衝撃吸収部の形状の例を示す二面図である。
上記衝撃吸収部の形状としては、閉断面の筒状体が好適であり、例えば図2に示すような四角形の閉断面や図3に示すような八角形の閉断面を有する筒状体を例示することができる。なお、図2および図3では軸方向の断面形状が一定である例を示しているが、これに限られるものではなく、連続的に変化する形状であってもよい。また、図2および図3では断面形状が四角形や八角形である例を示しているが、断面形状はこれに限られるものではなく、任意の多角形であってもよい。
一般に、このような自動車の衝撃吸収部材は、鋼板から、例えば曲げ加工と溶接により閉断面の筒状体を形成し、必要により、得られた筒状体にさらに二次元または三次元の曲げ加工等を施すことにより製作される。
5.めっき層
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を設けて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
6.製造方法
上述した鋼板は、下記工程(A)〜(C)を有する製造方法により製造することが好ましい:
(A)C:0.08%以上0.30%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下、Si+Al:0.50%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するスラブに、Ar点以上で圧延を完了する多パス熱間圧延を施し、圧延完了後0.4秒間以内に冷却を開始するとともに、平均冷却速度が600℃/秒以上、かつ、最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧延完了から720℃まで冷却するのに要する時間が4秒間以下となる冷却条件で620℃以上720℃以下の温度域まで冷却し、前記温度域に1秒間以上10秒間以下保持した後、10℃/秒以上100℃/秒以下の平均冷却速度で300℃以上610℃以下の温度域まで冷却して巻き取ることにより熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に、40%以上70%以下の圧下率の冷間圧延を施すことにより冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に、(Ac点−30℃)以上(Ac点+100℃)以下の温度域に10秒間以上300秒間以下保持し、次いで500℃以上650℃以下の温度域を15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、300℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上3000秒間以下保持する熱処理を施す焼鈍工程。
上述したミクロ組織は、上記製造条件を適用することにより容易に得ることができる。その理由は明らかではないが、定性的には以下のように考えられる。
すなわち、上記熱間圧延条件を適用することにより、フェライトと他の硬質相とが微細かつ均一に分散したミクロ組織が形成され、これに上記冷間圧延を施すことにより、さらなる組織の均一化が図られるとともに、後続する焼鈍工程における再結晶が促進されることにより、焼鈍後の組織の微細化と均一化とが図られる。これに、上記焼鈍条件を適用することにより、上記フェライトが当初から微細かつ均一に分散していることと、微細かつ均一に分散した上記他の硬質相がオーステナイト変態の優先核生成サイトとなってフェライトの粒成長を抑制することとが相俟って、フェライトの粒成長が飛躍的に抑制されるとともに、微細かつ均一に分散した上記他の硬質相がオーステナイト変態の優先核生成サイトとなることにより変態後のオーステナイトも当初から微細かつ均一に分散する。さらに、上記微細に分散したフェライトにより変態後のオーステナイトの粒成長が飛躍的に抑制され、これらの相乗作用により微細かつ均一な組織が得られることで、上記ミクロ組織が達成できるものと考えられる。
(A)熱間圧延工程
上記化学組成を有するスラブに、Ar点以上で圧延を完了する多パス熱間圧延を施し、圧延完了後0.4秒間以内に冷却を開始するとともに、平均冷却速度が600℃/秒以上、かつ、最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧延完了から720℃まで冷却するのに要する時間が4秒間以下となる冷却条件で620℃以上720℃以下の温度域まで冷却し、前記温度域に1秒間以上10秒間以下保持した後、10℃/秒以上100℃/秒以下の平均冷却速度で300℃以上610℃以下の温度域まで冷却して巻き取ることにより熱延鋼板とすることが好ましい。
後述する冷間圧延および焼鈍を施した後において上記ミクロ組織を得るには、上述したように、その母材となる熱延鋼板のミクロ組織を制御することが好ましい。
圧延は、多パスの圧延とすることが好ましい。1パス当たりの圧下量は15%以上60%以下とすることが好ましい。1パス当たりの圧下量を大きく取る方が、オーステナイトへより多くの歪みを導入させることができるので、その後の変態によって生成されるフェライトの結晶粒が微細化され、熱延鋼板の組織が微細化される。このため、特に最終圧延パスから2つ前の圧延パスから最終圧延パスまでの3パスについて、1パス当たりの圧下量を20%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは22%以上であり、特に好ましくは30%以上である。一方、圧延荷重および板形状の制御性確保の観点からは、1パス当たりの圧下率は50%未満とすることが好ましい。特に板形状の制御を容易にしたいときには、圧下率を45%以下とすることが好ましい。
圧延完了温度は、熱延鋼板のミクロ組織を微細かつ均一なものとするために、圧延完了後にオーステナイトからフェライトへと変態させることが好ましい。このため、圧延完了温度はAr点以上とすることが好ましい。圧延荷重の増大を回避する観点からは、780℃以上とすることが好ましい。なお、熱延鋼板の組織を微細化する観点からは、圧延完了温度は、Ar点以上または780℃以上の温度範囲であれば、低いほど好ましい。これは、圧延によってオーステナイトに導入される加工歪みが効率的に蓄積され、熱延鋼板のミクロ組織の微細化が促進されるためである。一方、熱延鋼板の組織を均一化する観点からは、圧延完了温度は、850℃以上とする方が好ましい。さらに好ましくは900℃以上である。これは、圧延完了温度を適度に高めることにより、フェライトとともに他の硬質相の均一分散化が図られるためであり、これにより、冷間圧延および焼鈍後の鋼板の成形性が一層向上する。なお、圧延によってオーステナイトに導入される加工歪みの解放を抑制し、熱延鋼板のミクロ組織の微細化を効率的に促進する観点からは、圧延完了温度は980℃以下とすることが好ましい。さらに好ましくは930℃以下である。
圧延完了後、オーステナイトに導入された加工歪みの解放を抑制し、これを駆動力としてオーステナイトからフェライトへと一気に変態させ、微細なフェライト結晶粒を有する組織を生成させるために、圧延完了後0.4秒間以内に冷却を開始するとともに、平均冷却速度が600℃/秒以上、かつ、最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧延完了から720℃まで冷却するのに要する時間が4秒間以下となる冷却条件で圧延および冷却を行うことが好ましい。最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧延完了から720℃まで冷却するのに要する時間は3.5秒間以下であることがより好ましい。また、平均冷却速度は900℃/秒以上であることがより好ましく、1000℃/秒超であることがさらに好ましい。
620℃以上720℃以下の温度域はフェライト変態が活発化する温度域である。上述した冷却条件を適用することにより、オーステナイトに導入された加工歪みの解放をした状態でこの温度域に保持すると、オーステナイト粒界のみならず粒内からもフェライトが析出して、フェライト変態の核生成が高密度で生じるため、微細なフェライト結晶粒が均一に分散した組織を生成させることができる。したがって、上記冷却後に、620℃以上720℃以下の温度域まで冷却し、上記温度域に1秒間以上以下保持することが好ましい。一方、上記温度域の保持時間が10秒間を超えると、フェライトの粒成長が促進される場合がある、したがって、上記温度域の保持時間は10秒間以下とすることが好ましい。
上記保持に続いて、10℃/秒以上100℃/秒以下の平均冷却速度で300℃以上610℃以下の温度域まで冷却して巻き取ることが好ましい。上述した圧延および冷却に続いて、このような冷却および巻き取りを行うことにより、熱延鋼板のミクロ組織を微細な初析フェライトとベイナイトまたはベイニティックフェライトからなるとともに、微細かつ均一に分散したものとすることができ、冷間圧延および焼鈍後において、上述したミクロ組織を達成することが容易になる。
上記平均冷却速度を10℃/秒以上とすることにより、偏析に沿って粗大なパーライトが析出してバンド状組織を形成して、冷間圧延後の焼鈍工程においてフェライトの粗大化が進行し易い領域が生じるのを効果的に抑制し、焼鈍後においてフェライトの微細化や組織の均一化をより確実に図ることができる。また、鉄炭化物の粗大化を抑制して、冷間圧延後の焼鈍過程において、フェライトの粒成長をより確実に抑制することでき、フェライトの微細化を図ること容易になる。したがって、上記平均冷却速度は10℃/秒以上とすることが好ましい。さらに好ましくは15℃/秒以上、特に好ましくは20℃/秒以上である。一方、上記平均冷却速度を100℃/秒以下とすることにより、鋼板の平坦度をより良好に保つことができる。したがって、上記平均冷却速度は100℃/秒以下とすることが好ましい。さらに好ましくは80℃/秒以下である。
巻取温度を300℃以上とすることにより、熱延鋼板の硬化を抑制し、冷間圧延を容易にすることができる。したがって、巻取温度は300℃以上とすることが好ましい。さらに好ましくは350℃以上である。一方、巻取温度を610℃以下とすることにより、偏析に沿って粗大なパーライトが析出してバンド状組織を形成して、冷間圧延後の焼鈍工程においてフェライトの粗大化が進行し易い領域が生じるのを効果的に抑制し、焼鈍後においてフェライトの微細化や組織の均一化をより確実に図ることができる。また、鉄炭化物の粗大化を抑制して、冷間圧延後の焼鈍過程において、フェライトの粒成長をより確実に抑制することでき、フェライトの微細化を図ること容易になる。したがって、巻取温度は610℃以下とすることが好ましい。さらに好ましくは500℃以下である。
熱間圧延に供するスラブは、上記化学組成を有する鋼を溶製した後、連続鋳造または鋳造および分塊圧延によってスラブとする。生産性の観点からは、連続鋳造を用いることが好ましい。また、連続鋳造を用いる場合には、介在物制御により耐割れ性を向上させるために、鋳型内で外部磁場あるいは機械撹拌による溶鋼流動を行うことが好ましい。このようにして得られたスラブは、直接圧延に供してもよく、保温あるいは再加熱を行ったのちに熱間圧延に供してもよい。
熱間圧延に供するスラブの温度は、オーステナイトの粗大化を防止するために1280℃未満とすることが好ましい。1250℃以下とすることがさらに好ましく、1200℃以下とすることが特に好ましい。熱間圧延に供するスラブの温度の下限は、特に限定する必要はなく、後述するAr点温度以上で圧延を完了することが可能であればよい。
熱間圧延は、粗熱間圧延と仕上熱間圧延とからなり、上記スラブは粗熱間圧延により粗バーとされ、得られた粗バーは仕上熱間圧延により熱延鋼板とされるのが通常である。この場合、粗熱間圧延により得られた粗バーについて仕上熱間圧延に供する前に1000℃以上に再加熱することが好ましい。1050℃以上に再加熱することがさらに好ましい。
粗バーの加熱は、例えば、仕上熱間圧延のスタンド群の手前に加熱装置を設置し、誘導加熱や通電加熱、またはガスや赤外線ヒーターを熱源とした加熱を施せばよい。このような粗バーの加熱を行うと、これに続いて高圧水によりデスケーリングを施すことにより二次スケールを効果的に除去することが可能となり、スケールに起因する冷却変動や表面疵の発生を抑制が可能である。好ましくは上記スラブの再加熱温度を1050℃以上とすることである。
(B)冷間圧延工程
上記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に、40%以上70%以下の圧下率の冷間圧延を施すことにより冷延鋼板とすることが好ましい。
熱間圧延された鋼板は、酸洗等により脱スケールされた後に、冷間圧延を施す。冷間圧延によって、後の焼鈍工程における再結晶を促進するとともに、焼鈍後のミクロ組織を微細かつ均一化するため、その圧下率は40%以上とすることが好ましい。一方、圧延荷重の増大を抑制して圧延を容易にするため、圧下率は70%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは60%未満である。冷間圧延後の鋼板には、必要に応じて脱脂処理を施し、焼鈍に供する。
(C)焼鈍工程
上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に、(Ac点−30℃)以上(Ac点+100℃)以下の温度域に10秒間以上300秒間以下保持し、次いで500℃以上650℃以下の温度域を15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、300℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上3000秒間以下保持する熱処理を施して焼鈍を行うことが好ましい。
上記冷延鋼板にこの熱処理を施すことにより目的とするミクロ組織を得ることが容易になる。
先ず、(Ac点−30℃)以上(Ac点+100℃)以下の温度域に10秒間以上300秒間以下保持するのであるが、この際の保持温度を(Ac点−30℃)以上とすることにより、十分な再結晶とオーステナイト化が図られ、焼鈍後において目的とするミクロ組織を得ることが容易になる。したがって、上記保持温度は(Ac点−30℃)以上とすることが好ましい。さらに好ましくは(Ac点−20℃)超であり、特に好ましくは(Ac点−10℃)超であり、最も好ましくは(Ac点+20℃)超である。
この際の保持時間を10秒間以上とすることにより、均一な組織制御が可能となり、目的とするミクロ組織を得ることが容易になる。したがって、上記保持時間は10秒間以上とすることが好ましい。60秒間以上とすることがさらに好ましい。
一方、上記保持温度を(Ac点+100℃)以下とし、上記保持時間を300秒間以下とすることにより、オーステナイトの粒成長をより確実に抑制することが可能となり、焼鈍後において目的とする組織を得ることが容易になる。したがって、上記保持温度は(Ac点+100℃)以下とし、上記保持時間は300秒間以下とすることが好ましい。上記保持温度は(Ac点+50℃)以下であることがさらに好ましく、(Ac点+20℃)以下であることが特に好ましい。また、950℃以下とすることがさらに好ましい。上記保持時間は200秒未満であることがさらに好ましい。
次いで500℃以上650℃以下の温度域を15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、300℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上3000秒間以下保持することにより、目的とするミクロ組織を造り込むことが容易になる。上記平均冷却速度を15℃/秒以上とすることにより、フェライトが過剰に生成するのを抑制し、焼鈍後において目的とする組織を得ることが容易になる。したがって、上記平均冷却速度は15℃/秒以上とすることが好ましい。さらに好ましくは30℃/秒以上、特に好ましくは40℃/秒以上である。組織制御の観点からは、上記平均冷却速度の上限は特に規定する必要はない。しかし、上記平均冷却速度が極度に高いと、冷却ムラが生じて板形状が損なわれる場合がある。したがって、上記平均冷却速度は150℃/秒以下とすることが好ましい。さらに好ましくは130℃/秒未満である。
300℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上保持することにより所定の残留オーステナイトを生成させることが容易になる。上記温度域は330℃以上450℃以下の温度域とすることがさらに好ましく、350℃以上430℃以下の温度域とすることが特に好ましい。また、上記温度域における保持時間は200秒以上とすることがさらに好ましい。上記温度域における保持時間の上限は生産性の観点から3000秒以下とすることが好ましい。
(Ac点−30℃)以上(Ac点+100℃)以下の温度域までの加熱は、組織制御の安定性の観点から、500℃以上の温度域を20℃/秒未満の加熱速度で行うことが好ましい。
また、フェライトの体積率を高めることにより延性を向上させることを指向する場合には、(Ac点−30℃)以上(Ac点+100℃)以下の温度域に10秒間以上300秒間以下保持したのちに、10℃/秒未満の冷却速度で50℃以上冷却することが好ましい。上記冷却速度は、5.0℃/秒未満とすることが好ましく、3.0℃/秒未満とすることがさらに好ましく、2.0℃/秒未満とすることが特に好ましい。フェライト体積率をさらに高めるには、80℃以上冷却することが好ましく、100℃以上冷却することがさらに好ましい。一方、目的とする組織を得るには、フェライト体積率をある程度抑制することが好ましいので、冷却量は200℃以下とすることが好ましい。さらに好ましくは160℃以下である。
300℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上3000秒間以下保持した後の常温までの冷却は、高衝撃吸収特性と耐割れ性のバランスを向上するために、170℃以上300℃以下の温度域を2℃/秒以上30℃/秒未満の冷却速度で冷却することが好ましい。好ましくは5℃/秒以上20℃/秒以下である。
めっき鋼板を製造する場合には、上述した方法で製造された冷延鋼板に、常法に従って電気めっきや溶融めっきを行えばよく、めっき方法やめっき被膜の化学組成、めっき後の合金化処理の有無には限定されない。溶融めっきの場合は、上記熱処理による焼鈍工程において300℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上3000秒間以下保持した後に続けて、鋼板の製造ライン内で溶融めっきを施してもよい。めっき種の例については上述した通りである。
このようにして得られた冷延鋼板およびめっき鋼板には、常法にしたがって調質圧延を行ってもよい。調質圧延の伸び率は、良好な延性を確保する観点から、1.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.5%以下である。
表1に示す化学組成を有するスラブ(厚さ:30mm、幅:160〜250mm、長さ:70〜90mm)を用いて実験を行った。いずれも180kgの溶鋼を真空溶製して鋳造した後、炉内温度1250℃で加熱し、950℃以上の温度で熱間鍛造を行いスラブとしたものである。
上記スラブを1200℃で1時間以内の再加熱を施した後、熱間圧延試験機を用いて、4パスの粗熱間圧延を施し、さらに3パスの仕上熱間圧延を施して板厚:3mmの熱延鋼板とした。熱間圧延条件を表2に示す。
さらに、板厚:1.6mm(圧下率:47%)まで冷間圧延を施した後、連続焼鈍シミュレータを用いて、表3に示す熱処理を施した。これらの条件を表3に示す。
Figure 2013216945
Figure 2013216945
Figure 2013216945
このようにして得られた冷延鋼板について、以下の調査を行った。
JIS5号引張試験片を採取して引張試験を行うことにより、降伏強度(YS:0.2%耐力)、引張強度(TS)、一様伸び(u−El)を求めた。
また、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996に準じた穴拡げ試験を行って、穴拡げ率を求めた。
鋼板の圧延方向に平行な断面を鏡面研磨した後、電解研磨にて歪を除去し、板厚の1/4深さ位置についてEBSD解析を行い、粒界面方位差マップおよびイメージクオリィマップからマルテンサイトの面積率を求めた。マルテンサイトは内部の転位密度が比較的高く、EBSDのイメージクオリティが他よりも明らかに低い値を示すため、分離・判定は容易である。
機械研磨および100μmの化学研磨により板厚の1/4深さ位置を露出させ、X線回折装置でγ(111)、(200)、(220)面の回折強度を測定することで、残留オーステナイト面積率を求めた。
鋼板の圧延方向に平行な断面を鏡面研磨した後にナイタール腐食を行い、走査電子顕微鏡によって観察することで、1000倍および2000倍の2次電子像から切片法によりフェライト平均粒径を求めた。
組織全体から上記の手法で測定したマルテンサイト、残留オーステナイト、フェライトを差し引くことで、ベイナイトの面積率を算出した。
ベイナイトおよびマルテンサイトのナノ硬さはナノインデンテーション法によって求めた。板厚の1/4深さ位置をエメリー紙で研磨後、コロイダルシリカにてメカノケミカル研磨を行い、さらに電解研磨により加工層を除去して試験に供した。ナノインデンテーションはバーコビッチ型圧子を用い、押し込み荷重500μNで行った。この時の圧痕サイズは、直径0.1μm以下である。ベイナイトおよびマルテンサイトのそれぞれについてランダムに20点測定し、それぞれの平均ナノ硬さを求めた。10%引張変形後についても上記方法によりベイナイトおよびマルテンサイトの平均ナノ硬さを求めた。
さらに、上記鋼板を用いて曲げ加工と溶接により角筒部材を作製し、軸方向の衝突速度を64km/hとする軸圧潰試験を実施し、衝突吸収性能を評価した。角筒部材の軸方向に垂直な断面の形状は正八角形として、角筒部材の軸方向長さは200mmとし、その軸方向は圧延方向と垂直であった。
上記角筒部材について、上記正八角形の1辺の長さ(角部の曲線部を除く直線部の長さ)(Wp)と鋼板の板厚(t)とを用いた断面形状因子(Wp/t)が20と16の場合について、平均圧潰荷重および安定座屈率を調査した。
ここで、安定座屈率は、軸圧潰試験により割れが生じなかった試験体数の全試験体数に対する割合である。
一般に、断面形状因子(Wp/t)が小さくなるほど衝撃吸収エネルギーが高くなる。しかしながら、断面形状因子(Wp/t)が小さくなるほど単位圧潰量当りの塑性変形仕事量が大きくなる。このため、圧潰途中で割れが生じる可能性が高まり、結果的に塑性変形仕事量を増大させることはできず、衝撃吸収エネルギーを高めることができない場合がある。
本圧潰試験条件下では、Wp/t=20の場合で平均圧潰荷重は0.30kN/mm以上であることが好ましく、安定座屈率は80%以上であることが好ましい。また、Wp/t=16の場合で平均圧潰荷重0.35kN/mm以上であることが好ましく、安定座屈率は30%以上であることが好ましい。
表4にミクロ組織およびナノ硬さに関するデータを、表5に機械特性に関するデータを示す。
Figure 2013216945
Figure 2013216945
本発明に係る鋼板を用いた角筒部材は、断面形状因子Wp/t=20における軸圧潰による平均荷重が0.34kN/mm以上と高い。さらに、断面形状因子Wp/t=20における安定座屈率が80%以上、断面形状因子Wp/t=16における安定座屈率が30%以上であって、軸圧潰による割れが起こりにくい。
1:自動車車体、2:フロントクラッシュボックス、3:リアクラッシュボックス、4:フロントサイドメンバー(フロントフレーム)、5:リアサイドメンバー(リアフレーム)、6:フロントアッパーレール、7:サイドシル(ロッカー)、8:クロスメンバー、9,10:衝撃吸収部、11:バンパーリインフォースメント、12:センターピラー(Bポスト)

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.08%以上0.30%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下、Si+Al:0.50%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、およびN:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
    面積%で、ベイナイト:50%超、マルテンサイト:3%以上30%以下および残留オーステナイト:3%以上15%以下を含有し、残部が平均粒径5μm未満のフェライトからなるミクロ組織を有し、かつ
    均一伸びと穴拡げ率との積が300%以上で、5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力が900MPa以上である機械特性を有する、
    ことを特徴とする鋼板。
  2. 下記式(1)および(2)を満足するミクロ組織を有する請求項1に記載の鋼板。
    1.2≦HM0/HB0≦1.6 (1)
    0.9≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3 (2)
    ここで、式中の記号は以下の値を表す。
    M0:前記マルテンサイトの初期平均ナノ硬さ、
    B0:前記ベイナイトの初期平均ナノ硬さ、
    M10:10%引張変形後の前記マルテンサイトの平均ナノ硬さ、
    B10:10%引張変形後の前記ベイナイトの平均ナノ硬さ。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2に記載の鋼板。
  4. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.04%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.5%未満からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鋼板。
  5. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鋼板。
  6. 軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部が請求項1〜請求項5のいずれかに記載の鋼板からなることを特徴とする衝撃吸収部材。
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