JP2012001769A - 部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも1種以上のFe以外の金属元素を含有するFe系金属板であって、該金属板の一部が所定形状にパタ−ン化された領域を有し、かつ、前記領域における板面のα-Fe相の面集積度が特定の方位に集積化していることを特徴とするパタ−ン化された領域の結晶方位が制御されたFe系金属板。
【選択図】図1
Description
特許文献1には、Siが0.2〜6.5mass%含有される珪素鋼板母材に、Cを0.02〜1mass%含有させ、脱炭後にα−Fe単相となる温度で、Cが0.01mass%以下になるまで脱炭することによって、板面に{100}面が平行であり、かつ、<100>軸、あるいは、<110>軸が圧延方向に平行に集積している集合組織を形成させる技術が記載されている。
特許文献2には、Siが4%以下、Alが3%以下を含有する鋼板スラブを、熱間圧延後、92%以上の圧延率で最終圧延し、次いで、脱炭焼鈍した後、仕上焼鈍することにより圧延方向に対して45°方向の磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法が記載されている。
特許文献3には、Al含有量が6.5mass%以上10mass%以下で、鋼板面に平行に{222}面が高集積化した鋼板に関し、Al含有量が3.5mass%以上6.5mass%未満の母材鋼板にAlを第二層として付着させて、熱処理によって拡散させ、母材の転位組織とAlの相互作用で{222}面を高集積化する技術を記載した。
本発明は、このように、板面内の所定の形状にパターン化させた領域のみを所定の結晶方位に制御した従来には無かったFe系金属板を提供し、さらに、そのFe系金属板の新しい用途を提案することを課題とするものである。
そのような本発明の要旨は、以下のとおりである。
(3)前記結晶面の集積化に関し、Fe系金属板の板面に対する前記α−Fe相の面集積度について、{200}面集積度が30%以上99%以下および{222}面集積度が0.01%以上30%以下、あるいは、{200}面集積度が0.01%以上15%以下および{222}面集積度が60%以上99%以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。
(4)前記Fe以外の金属元素が、フェライト形成元素のうち1種以上の元素であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。
(5)前記Fe以外の金属元素が、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znのうち1種以上の元素であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。
(6)前記Fe系金属板の厚みが10μm超6mm以下であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。
本発明のFe系金属板は、板面内の所定の領域のみを所定の結晶方位に集積化させることが可能であるため、例えば、板面内で{100}面と他の{hkl}面が共存するFe系金属板を磁場の中に置いた場合、磁場は優先的に{100}面の領域を通るため、磁束の流れ方の制御が可能になる。また、板面内で{111}面と他の{hkl}面が共存するFe系金属板は、周囲の強度を維持した状態で加工したい部位のみの加工性を向上させることができる。
このように、金属板の板面内の一部が所定形状にパタ−ン化された領域を有し、かつ、このパタ−ン化された領域でのα-Fe相の結晶方位が特定の方位に集積化している金属板は、例えば、電磁気材料への適用、機械加工材料への適用、など、従来からは想定できなかった新しい各種用途への適用が考えられ、省エネルギー、生産性の向上、などの幅広い効果が期待できるものである。
本発明者らは、このFe以外の元素を表面から拡散させる際に、Fe系金属板の表面の所定領域のみから拡散させる実験を行って、Fe以外の元素が拡散した領域とそうでない領域を詳細に調べた。
その結果、Fe以外の金属元素を拡散させた領域では、{200}面集積度が高められたFe系金属板が得られた。Fe以外の元素を拡散させなかった部位では、特定の面指数を有する面の集積化は起こらなかった。また、Fe以外の元素を拡散させた領域とそうでない領域との境界は、例えば、板の断面組織を光学顕微鏡によって観察することによって、明瞭に判別することができた。
図1は、α−γ変態系の母材金属板の表面にαフォーマー元素を異種金属として付着させた場合であり、
(a)α−γ変態系の母材金属板として、例えば99.8%のような非常に高い圧下率で冷間圧延した純鉄板を準備し、その表面に、αフォーマー元素として例えばAlを用いた第二層を形成する(図1aの状態)。
その際、A3点以下の昇温過程において、鉄板は再結晶するが、圧下率が非常に高い場合には、再結晶後の組織は{100}に配向した組織となる(以下、この状態を{100}配向の芽を形成させるという場合もある。)。また、昇温につれてAlは鉄板内部に拡散して鉄と合金化されるが、合金化した領域でも{100}に配向した組織が形成される(図1bの状態)。
FeとAlが合金化した領域ではγ変態しないα-Fe単一相の組織となるため、{100}結晶粒はそのまま保存され、粒成長して、{200}面集積度が増加する。また、板厚方向で合金化されていない領域があれば、その領域では結晶粒はγ変態する(図1cの状態)。
保持時間を長くすると、{100}結晶粒は粒の食い合いによって優先的に粒成長する。この結果、{200}面集積度はさらに増加する。また、Alの拡散に伴い、FeとAlが合金化した領域ではγ相からα相に変態していく。その際、変態する領域に板厚方向で隣接する領域ではすでに{100}に配向したα-Fe粒となっており、γ相からα相に変態する際に、板厚方向で隣接するα-Fe粒の結晶方位を引き継ぐかたちで変態する。これらにより、保持時間が長くなるとともに{200}面集積度が増加する。
(d1)冷却開始時に、異種金属を付着した領域から見て板厚方向において、合金化していない領域がある場合
A3点以上の温度域ではこの合金化していない領域はγ相であり、このままA3点以下へ冷却するとγ−α変態が生じ、通常では結晶方位はランダム化する。ところが、Alと合金化し、A3点以上の温変域でα-Fe粒となっている領域と板厚方向で隣接する領域では、γからαへの変態の際に、すでに{100}に配向したα-Fe粒となっている領域の結晶方位を引き継ぐかたちで変態し、その結果{200}面集積度が増加する。(図1dの状態)
この現象によって、合金化していない領域でも高い{200}面集積度が得られるようになる。
前の(c)の段階で、板厚方向全体にわたり合金化されるまでA3点以上で保持された場合には、板厚全体にわたりすでに高い{200}面集積度の組織が形成されているので、冷却開始時の状態を保持したまま冷却される。
異種金属を付着させて{200}面を高集積化させた領域と異種金属を付着させずランダム化した領域の境界は明瞭に区別できる。
製品金属板の形態
本発明では、α−γ変態系の組成のFe系金属よりなる金属板を母材金属板として用いる。α−γ変態系の組成のFe系金属としては、純鉄や低炭素鋼などのよく知られる鋼が該当する。図1を用いて説明したように、高度の歪みが蓄積された純鉄板などの母材金属板の少なくとも片面に、めっきなどの手段で、Fe以外の異種金属からなる第二層を所定形状にパターン化した領域に付着させておき、これを加熱処理する。異種金属としては、Feと合金化するとA3点以上の温度でもα-Fe単一相となるような金属元素(例えば、Al)を選択する。
圧下率が30%未満であると、熱処理工程後に得られる鋼板の{222}面集積度は低く、本発明の範囲には到達できないことがある。また、95%を超えても、それ以上の{222}面集積度の増加はないからである。
これにより、異種金属が板全体に合金化され、α−Fe相の{222}面集積度が60%以上99%以下で、かつ、{200}面集積度が0.01%以上15%以下の集合組織を有する金属板が得られる。
本発明の製品金属板は、前述のように、母材金属板に異種金属が合金化している。そのため、製品金属板における成分組成は、母材金属板の種類、母材金属と合金化させる異種金属の種類、及び合金化されている領域の割合によって異なるため、母材金属板、異種金属について説明する。
母材金属板には、A3点を有しα−γ変態系の成分を有するFe系金属を用いる。母材金属板に用いるFe系金属が、α−γ変態系の成分であれば、異種金属を板内に拡散合金化することによって、α-Fe単相系成分の領域を形成することができる。本発明は、原理的に、α−γ変態系の成分を有するFe系金属に適用可能であり、その全ての場合を、検証してその適用の可否を提示するのは不可能であるので、一般的な適用範囲について説明する。
α−γ変態系成分のFe系金属よりなる母材金属板の板面内において所定形状にパターン化した領域に、異種金属としてαフォーマー元素を付着させた場合、その元素が拡散して合金化した部位はα-Fe単相系の成分になり、その部位を板内の{200}面集積度を高める場合には{100}配向の芽として、あるいは、{222}面集積度を高める場合には{111}配向の芽として保存できる。また、特にAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Znのαフォーマー元素が少なくとも1種であると、より高集積化が効率的に進行するようになる。しかし、異種金属としては、αフォーマー元素に限られるものではなく、Niなどの元素でも、αフォーマー元素を用いた場合ほど{200}面、あるいは、{222}面の高集積化はできないが、{200}面を高集積化させる場合には最終的な{200}面集積度を30%以上にすることができ、あるいは、{222}面を高集積化させる場合には最終的な{222}面集積度を30%以上にすることができる。
本発明のFe系金属板を電磁気材料へ適用する場合、製品金属板の板面に対するα−Fe相の{200}面集積度は、30%以上、99%以下とする必要がある。この集積度が30%未満であると十分に高い磁束密度が得られなくなる。99%を超えても磁束密度は飽和し、製造も容易ではなくなる。望ましくは50%以上、95%以下である。
また、{222}面集積度は、0.01%以上、30%以下とする必要がある。0.01%未満であると磁束密度は飽和し、製造も容易ではなくなる。30%を超えると十分に高い磁束密度は得られなくなる。望ましくは0.01%以上15%以下である。
詳細に述べると、各試料について、試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{200}あるいは{222}強度の比率を百分率で求める。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・ (I)
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl): 測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl): ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ: α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
{222}面集積度も同様にして求めることができる。
製品金属板の厚みは、10μm超、6mm以下が好ましい。電磁気材料へ適用する場合、厚みが10μm超であれば、積層させて磁心として使用する際に十分な占積率となり、高い磁束密度が得られるようになる。また、厚みが6mm以下であれば、{200}面集積度が高くなり、高い磁束密度が得られる。機械加工材料へ適用する場合、厚みが10μm超であれば、十分な強度が得られるようになる。また、厚みが6mm以下であれば、{222}面集積度が高くなり、高い機械加工性が得られる。
母材金属板上においてパターン化された所定の領域に皮膜として付着させた第二層は、加熱処理後、一部が残留して製品金属板を被覆した状態であってもよいし、第二層の異種金属を全て板内部に拡散させ、第二層が消滅した状態であってもよい。
例えば、電磁気材料へ適用する場合、表面の電気抵抗を高めて鉄損を向上させる目的で残留させる場合には、その厚みが0.01〜500μmの範囲になるようにするのが望ましい。0.01μm以上であると、破れなどの欠陥が生じにくく安定した鉄損特性が得られる。500μm以下であると、剥離などの欠陥が生じにくく安定した鉄損特性が得られる。また、機械加工部材へ適用する場合、表面からの割れを改善する目的で残留させる場合には、その厚みが0.01〜500μmの範囲になるようにするのが望ましい。0.01μm以上であると、破れなどの欠陥が生じにくく安定した加工性が得られる。500μm以下であると、剥離などの欠陥が生じにくく安定した加工性が得られる。
なお、残留させた場合でも、必要に応じて第二層を削除することもできる。
母材金属板
母材金属板として用いられるFe系金属の種類についてはすでに説明したので、ここでは製造上の要件を説明する。先ずは、{200}面が高集積化した金属板の製法上の要件を説明する。
これは、高い圧延率で冷間圧延して高度に歪みを蓄積した母材金属板を用いた場合、その昇温過程において{200}面集積度が著しく増加することを、本発明者らが見出したことに基づいている。
そのような歪みを与える方法としては、母材金属板を製造する際の冷間圧延を高い圧下率で実施する方法がある。圧下率としては高い方が望ましいが、特に、圧下率を97%超99.99%以下とするのがよい。
せん断歪みは、圧延時に上下の圧延ロールをそれぞれ異なる速度で回転させる方法で与えることができる。その際、上下の圧延ロールの回転速度の差が大きくなるほどせん断歪みは大きくなる。せん断歪みの値は、ロール直径とロール速度の差とから計算で求められる。
本発明では、パターン化された所定形状の領域に異種金属が付着した母材金属板を加熱処理して、異種金属を内部に拡散させて、母材成分と合金化させる。その加熱の昇温過程において、すでに説明したように、板内の{222}面集積度を高めるための芽となる{111}に配向した結晶粒を形成し、その後、その芽となるα-Fe結晶粒の結晶方位を引き継ぐ形で板内に変態を進行させる。
そのような金属板は、上記に示した歪導入手段によって歪を蓄積させたFe系金属板を再結晶焼鈍することによって得ることができる。
母材金属板状の所定形状にパターン化された領域に第二層が形成されるが、この第二層を構成するFe以外の金属元素である異種金属の種類についてはすでに説明したので、ここでは製造上の要件を説明する。
・{200}面を高集積化させる場合
母材金属板を加熱拡散処理し、A3点に到達するまでに、異種金属が合金化された領域におけるα−Fe相の{200}面集積度を25%以上、50%以下とし、かつ、{222}面集積度を1%以上、40%以下とするのが好ましい。{200}面集積度が下限値を下回ったり、{222}面集積度が上限値を超えたりすると十分な磁束密度を持った鋼板を製造できない。また、{200}面集積度が上限値を超えたり、{222}面集積度が下限値を下回ると、製造した鋼板の磁束密度が飽和する傾向を示し、製造にも手間がかかるので好ましくない。
昇温後の保持温度は、A3点以上1300℃以下とするのが好ましい。1300℃を超える温度で加熱しても効果が飽和する。また、加熱保持時間は、保持温度に到達後、直ちに冷却を開始してもよいし、360,000s(100h)以下の時間で保持して冷却を開始してもよい。この条件を満たすと、{200}面配向の芽の高集積化がより進行し、より確実に冷却後にα−Fe相の{200}面集積度を30%以上とすることができる。
保持後の冷却の際、冷却速度は0.1℃/s以上500℃/s以下が好ましい。この温度範囲で冷却すると、{200}面配向の芽の成長がより進行する。
母材金属板を加熱拡散処理し、A3点に到達するまでに、異種金属が合金化された領域におけるα−Fe相の{222}面集積度を55%以上、70%以下とし、かつ、{200}面集積度を1%以上、30%以下とするのが好ましい。{222}面集積度が下限値を下回ったり、{200}面集積度が上限値を超えたりすると十分な機械加工性を持った鋼板を製造できない。また、{222}面集積度が上限値を超えたり、{200}面集積度が下限値を下回ると製造した鋼板の機械加工性が飽和する傾向を示し、製造にも手間がかかるので好ましくない。
昇温後の保持温度は、A3点以上1300℃以下とするのが好ましい。1300℃を超える温度で加熱しても効果が飽和する。また、加熱保持時間は、保持温度に到達後、直ちに冷却を開始してもよいし、360,000s(100h)以下の時間で保持して冷却を開始してもよい。この条件を満たすと、{222}面配向の芽の高集積化がより進行し、より確実に冷却後にα−Fe相の{222}面集積度を60%以上とすることができる。
保持後の冷却の際、冷却速度は0.1℃/s以上500℃/s以下が好ましい。この温度範囲で冷却すると、{222}面配向の芽の成長がより進行する。
(実施例1)
母材金属板には、0.002%C、0.011%Si、0.13%Mn、0.01%P、0.007%S、残部Feを主組成としたIF鋼を用いた。その組成のインゴットを溶製後、熱間圧延し、冷間圧延することによって、厚み500μmの冷延板を得た。その後、歪取り焼鈍を800℃で30min行った。この焼鈍板を150μmの厚みまで70%冷間圧延し、{222}面の高集積化領域がパタ−ニング化できるかどうか、の確認実験を行うための母材金属板とした。
母材金属板には、真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱間圧延し、さらに冷間圧延することによって所定の厚みに加工した純鉄板を用いた。インゴットの組成は0.0001%C、0.0001%Si、0.0002%Al、および不可避的不純物を含む純鉄である。インゴットを75mmの厚みまで熱間圧延し、この厚みで歪取り焼鈍を800℃で30min行った。この焼鈍板を150μmの厚みまで99.8%冷間圧延し、{200}面の高集積化領域がパタ−ニング化できるかどうか、の確認実験を行うための母材金属板とした。
以上から、本発明に従えば、Fe系金属板の所定の領域を{200}集合組織に集積化させることが可能になる。
図6に示した方向に周波数50Hz、最大印加磁場5000A/mの交流磁場を印加し、集合組織化した領域とそうでない領域の磁束密度を測定した。磁場の印加はSST(Single Sheet Tester)のヨークを用いて行った。図6に示した部位に被覆銅線を通す1mmの穴を開け検出コイルを10ターン巻いた。検出コイルに誘起される電圧Vは、検出コイルの巻き数をN、その断面積をSとした場合、V=−N(dφ/dt)=−NS(dB/dt)である。NおよびSを同一にした場合、電圧Vは磁束密度Bに比例するため、電圧の比較から磁束密度の比較が可能となる。ランダム方位での電圧を1として、{200}集合組織での電圧を相対比較した。
実施例2と同じ50mm角の母材金属板2枚に、同様に、それぞれ図7に点々を付した領域で示したパタ−ンに、Alを片面3.5μmずつ両面に蒸着した。熱処理には赤外線ゴールドイメージ炉を用い、プログラム制御により10℃/minで1000℃まで昇温し、2h保定した後、炉冷した。熱処理雰囲気は10-3Paレベルの真空である。1枚は結晶方位、および、組織観察用、もう1枚は磁気測定用に用いた。
以上から、本発明に従えば、Fe系金属板の所定の領域を{200}集合組織に集積化させることが可能になる。
このように、本発明のFe系金属板を用いることによって、板内の磁束の流れ方を制御することができるようになる。
Fe系母材金属板に、フェライト形成元素である種々の皮膜元素、Si、Sn、Ti、Ga、Ge,Mo、V、Cr、AsをFe以外の異種金属として付着させた場合の効果を調べた。
Fe系母材金属板には表3に示した6種類の成分系A〜Fを用いた。それぞれ真空溶解によって230mm厚のインゴットに溶製した後に、50mm厚まで1000℃で熱間圧延した。これらの熱延板から機械加工によって各種厚みの板材を切り出した後に、ショットブラスト処理と各種圧下率の冷間圧延をそれぞれ単独で、あるいは必要に応じて併用して実施した。得られた母材金属板の厚みは100μm〜700μmの範囲であった。
それぞれの条件で1枚は結晶方位、および、組織観察用、もう1枚は磁気測定用に用いた。
熱処理後における皮膜元素が付着した領域と付着していない領域のα-Fe相の{200}、および、{222}の面集積度を前述のX線回折によって測定した結果を表4に示した。これらの結果から本発明に従えば、Fe系金属板の所定の領域を{200}集合組織に集積化させることが可能になることがわかる。
結果を表5に示した。これらの結果からわかるように、同じ板においても{200}集積化領域ではランダム領域に比較して高い磁束密度が得られた。これは、{200}集積化領域においては、磁化容易軸である[100]方位がより多く含まれるため、この領域の透磁率が高くなっているためである。このように、本発明のFe系金属板を用いることによって、板内の磁束の流れ方を制御することができるようになる。
Fe系母材金属板に、異種金属であるAl、Sb、W、Zn、Al−Si合金、Sn−Zn合金を皮膜として付着させた場合の効果を調べた。Fe系母材金属板には表6に示した6種類の成分系G〜Lを用いた。それぞれ真空溶解によって230mm厚のインゴットに溶製した後に、50mm厚まで1000℃で熱間圧延した。これらの熱延板から機械加工によって各種厚みの板材を切り出した後に、引き続き冷間圧延を行い、それぞれ異なるせん断歪みを有する、厚みが10μm〜6000μmの母材金属板を製造した。一部の試料については、さらに実施例4と同様にショットブラスト処理を行った。せん断歪みは、圧延時に上下圧延ロールを異なる速度で回転させる方法で与えた。その際、回転速度の差を変えてせん断歪みを0.1〜0.8の間で変化させた。せん断歪みの値は、ロール直径とロール速度の差とから机上の計算で求めた値を用いた。
それぞれの条件で、1枚は結晶方位および組織の観察用、もう1枚は磁気測定用に用いた。
Fe系母材金属板には表3に示した成分系Aを用いた。真空溶解によって230mm厚のインゴットに溶製した後に、50mm厚まで1000℃で熱間圧延した。これらの熱延板から機械加工によって各種厚みの板材を切り出した後に、冷間圧延を行った。圧下率は80%である。得られた母材金属板の厚みは150μmであった。
Claims (6)
- 少なくとも1種以上のFe以外の金属元素を含有するFe系金属板であって、
該金属板の板面の一部が所定形状にパタ−ン化された領域を有し、前記領域部分におけるα−Fe相の結晶面が特定の方位に集積化していることを特徴とする部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。 - 少なくとも1種以上のFe以外の金属元素を含有するFe系金属板であって、
該金属板の板面の一部が所定形状にパタ−ン化された領域を有し、前記領域部分は合金化されたFe以外の金属元素を含有し、かつ、前記領域部分におけるα−Fe相の結晶面が特定の方位に集積化していることを特徴とする請求項1に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。 - 前記結晶面の集積化に関し、Fe系金属板の板面に対する前記α-Fe相の面集積度について、{200}面集積度が30%以上99%以下および{222}面集積度が0.01%以上30%以下、あるいは、{200}面集積度が0.01%以上15%以下および{222}面集積度が60%以上99%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。
- 前記Fe以外の金属元素が、フェライト形成元素のうち1種以上の元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。
- 前記Fe以外の金属元素が、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znのうち1種以上の元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。
- 前記Fe系金属板の厚みが10μm超6mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の部分的に結晶方位が制御されたFe系金属板。
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