JP2016125106A - 複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板及びその製造方法 - Google Patents

複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の軟磁性鋼板では達成できない高い磁束密度を有するとともに、打抜きや組み付けなどの製品製造の際にも鉄損の劣化を小さくできる軟磁性Fe系金属板を提供する。
【解決手段】板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、板面に対する{222}面集積度が55%以上99%以下であり、板面内の平均の飽和磁歪が−0.2×10−6以下である領域をA層とし、板面に対する{200}面集積度が25%以上で、{222}面集積度が40%以下である領域をB層とし、板厚方向に前記A層とB層が存在し、かつ板表面と、該板表面から該板表面の反対側の板表面に向かって最初に確認されるB層との間に、A層が存在する積層構成とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、厚み方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板に関し、特に、磁束密度および鉄損に優れるとともに、モ−タコア材として打ち抜く際の打ち抜き加工歪による磁気特性の劣化を抑制し、更に、モ−タコアとして組み付ける際に圧縮応力がコア材に付加された場合においても磁気特性の劣化の小さい軟磁性Fe系金属板に関するものである。
電動機、発電機、変圧器などのコア用部材として、珪素鋼板を代表とする軟磁性鋼板が用いられている。その磁気特性としては、交番磁界中での磁気的エネルギー損失(鉄損)が少ないこと、小型・軽量化の観点から磁束密度が高いことが必要とされている。
軟磁性鋼板を用いたコア用部材については、軟磁性鋼板からモ−タコアに加工する場合の打ち抜き歪によって磁気特性が劣化してしまう問題や、さらに、打ち抜いたコア材をモ−タに組み付ける際、コア材に面内方向に圧縮応力が作用して磁気特性が劣化してしまうという問題もある。
このような要求や問題に対して、特許文献1〜4に開示されている技術が知られている。
特許文献1、2では、α−γ変態を生じ得る組成のFe又はFe合金からなる母材金属板の少なくとも一方の表面に、Si、Alなどのフェライト生成元素を含有する金属層を形成し、次に、この母材金属板を前記Fe又はFe合金のα−γ変態点(A3点)まで加熱して、フェライト生成元素を母材金属板中に拡散させて、{200}面集積度が25%以上、{222}面集積度が40%以下のフェライト相の合金領域を形成し、さらに母材金属板をA3点以上の温度まで加熱して、合金領域をフェライト相に維持しながら、{200}面集積度を増加させ、{222}面集積度を低下させ、冷却後に、板表面に対するフェライト相の{200}面集積度が30%以上で{222}面集積度が30%以下である、高い磁束密度を有するFe系金属板を得る技術が開示されている。
特許文献3では、鋼板表面から少なくとも板厚の10%の距離までの範囲において、αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度を55%以上99%以下と高くすることにより、鋼板面に平行な方向から磁化困難方位である<111>方位を排除することができるため、磁気特性が向上するとともに、打ち抜き加工を行った際に歪が入りがたくなり、歪による磁気特性の劣化が少なくなる軟磁性鋼板が開示されている。
特許文献4では、Si:6.6%超10%以下、Al:1%以下、Mn:0.05〜2%、S:0.005%以下、N:0.005%以下を含有するか、または、Ni:30〜45%を含有する成分組成を有し、ステータ周方向に相当する方向(例えば圧延方向に直角な方向)のコア材の磁歪定数を−0.1×10−7以下とした鋼板を、コア周方向の圧縮応力が10MPa以上となるように用いることにより、圧縮応力による磁化ベクトルの鋼板板厚方向への配向を抑制し、渦電流損の増加を低減することにより、製品組み付けの際の焼き嵌め等による圧縮応力下でも鉄損劣化が小さいモータを実現できる技術が開示されている。
しかし、特許文献1〜4では、高い磁束密度を確保したうえで、軟磁性鋼板からコア用部材を製造する際の、打抜き加工やコアへの組み付けによる磁気特性の劣化の問題を同時に解決する手段は開示されていない。
また、特許文献4の技術は磁歪定数を負の値にするため、SiやNiなどを高濃度で含有させる必要があり、加工性が劣化するばかりでなく、理論的な飽和磁束密度が低下し、実用的な磁束密度の劣化は避けられないものである。
これに対し、単一構造の鋼板では達成できない複数の機能を一つの鋼板で達成するために、複層構造の鋼板として、各層に目的とする個々の機能を担わせるようにすることが、特許文献5、6などで知られている。
特許文献5では、内層の方向性電磁鋼板の両面を無方向性電磁鋼板で挟んで表層とした3層クラッド構造とし、表層である無方向性電磁鋼板については、Si:2〜7質量%およびAl:3質量%以下を、(Si+Al)≧4質量%を満足する範囲で含有する組成とし、一方内層である方向性電磁鋼板については、Si:5質量%以下およびAl:0.5質量%以下を含有する組成とすることにより、高磁束密度と高周波低鉄損を両立させた電磁鋼板が開示されている。
特許文献6では、炭素鋼と合金鋼の一方又は両方からなる複数の鋼板が積層され一体化している積層鋼板であって、前記積層鋼板の鋼板面と板厚中心の両方におけるαFe相またはγFe相の一方または両方の、鋼板面に対する{222}面集積度が60%以上99%以下で、{200}面集積度が0.01%以上15%以下とすることによって、積層鋼板の{222}面集積度を著しく高くして、積層鋼板の加工性を向上させるとともに、積層鋼板の各層の種類を選択することにより、高強度化、耐肌荒れ性の向上、耐食性の向上を合わせて実現できる技術が開示されている。
しかしこれらの文献でも、高磁束密度を確保するという課題とコア用部材製造の際の磁気特性の劣化を防止するという課題を同時に解決する軟磁性鋼板は示されていない。
特許第5136687号公報 特許第5533801号公報 特開2009−256758号公報 特開2011−089170号公報 特開2010−132938号公報 特開2009−256734号公報
以上のような従来技術に鑑み、本発明は、高い磁束密度を有するとともに、打抜きや組み付けなどの製品製造の際にも鉄損の劣化を小さくできる軟磁性Fe系金属板を提供することを目的とする。
特許文献1、2には、高い磁束密度を有する軟磁性Fe系金属板が開示され、特許文献3、4には、打抜き加工、組み付け工程を経てコアを製造する際の磁気特性の劣化が小さい軟磁性鋼板が開示されている。
そこで、本発明者らは、それらの軟磁性Fe系金属板が有する機能を単一構造の金属板で実現するのではなく、特許文献5、6に記載のように複層構造とすることで、一つのFe系金属板で同時に実現することを検討した。
本発明者らは、特許文献1、2に開示されている、α−γ変態を生じ得る組成(α−γ変態系)のFe系金属板の両面にフェライト生成元素を含む異種金属の第二層を付着させ、その金属板を熱処理することにより異種金属を金属板内部に拡散させ、{200}面集積度を高めた組織を形成して、高磁束密度のFe系金属板を得る技術をベースに、さらに、特許文献3、4に開示されている技術を組み合わせることについて検討した。
その検討の過程で、{200}面集積度を高めた金属板の表面側に{222}面集積度を高めた金属板を積層すると、金属板全体の高磁束密度を確保したままで、打抜き加工による磁気特性の劣化を小さくできることを確認した。また、{222}面方位の結晶は、前記の特許文献4のようにSiやNiを高濃度に含有させなくても磁歪を負の値にできるばかりでなく、特許文献4のように金属板全体の磁歪を負の値にしなくても、金属板の表層を含めた表層近傍に配置した{222}面集積度を高めた金属板だけの磁歪を負の値にすることで、コア材の組み付けによる板面内圧縮応力下での磁気特性の劣化も十分小さくできることを知見した。
特に、表層領域のみの磁歪を負の値にして圧縮応力下での磁気特性の劣化を抑制する効果は、結晶配向の異なる金属板を単に積層しただけでは十分に発現せず、各金属板間を元素の拡散等による金属結合によって一体化することによる各層間の磁気相互作用により顕著に発現する。この効果は、磁歪が負の値である材料で発現する、板面内圧縮応力下で磁化の方向を面内に維持する効果が、金属結合によって一体化されている、磁歪が負の値でない材料にまで比較的広く広がるものであるという、従来の複層化技術では想定されていない現象を利用したものでもある。
また、このような金属板構成は、表層領域に配置される{222}面集積度を高めた金属板の組成を特許文献4より低合金化できるだけでなく、中心層領域にも低合金の{200}面集積度を高めた金属板を配置できることになるため、金属板全体の飽和磁束密度の向上、ひいては実用的な磁束密度特性の向上にも寄与する。
このような検討を経てなされた本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
板面に対するαFe相の{222}面集積度が55%以上99%以下であり、板面内の平均の飽和磁歪が−0.2×10−6以下である領域をA層とし、
板面に対するαFe相の{200}面集積度が25%以上で、αFe相の{222}面集積度が40%以下である領域をB層として、
板厚方向に前記A層とB層が存在し、
かつ板表面と、該板表面から該板表面の反対側の板表面に向かって最初に確認されるB層との間に、A層が存在する積層構成となっている
ことを特徴とする金属板。
(2)板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
前記A層でもB層でもない領域をC層とし、
板厚方向に前記A層とB層とC層が存在する
ことを特徴とする前記(1)に記載の金属板。
(3)板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
前記A層とB層の界面、さらにC層が存在する場合はA層またはB相とC層の界面が金属結合で一体化されている
ことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の金属板。
(4)板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
前記A層、B層、さらにC層が存在する場合はC層の間の界面から両層側に10μmの距離における領域内のFe濃度の差が1.0%以下である
ことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属板。
(5)板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
前記A層について、板表面に最も近いA層の厚さが全体の板厚に対して3〜30%である
ことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属板。
(6)板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
該金属板の厚さが0.03mm以上1.5mm以下である
ことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の金属板。
(7)板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板の製造において、
70質量%以上のFeを含有しα−γ変態を生じ得る組成を有する金属板Aの表面にSi、Al、Sn、TiおよびVの少なくとも一種以上のフェライト生成元素を付着させた金属板を金属板Aとし、
70質量%以上のFeを含有しα−γ変態を生じ得る組成を有する金属板Bの表面にAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、WおよびZnの少なくとも一種以上のフェライト生成元素を付着させた金属板を金属板Bとし、
少なくとも金属板Aと金属板Bを積層したものを、
前記α−γ変態点以上の温度で熱処理し、
フェライト生成元素を前記金属板Aまたは金属板Bの内部へ拡散させる
ことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の軟磁性Fe系金属板の製造方法。
ここで{200}面集積度、あるいは{222}面集積度は、MoKα線によるX線回折により、試料表面に対して平行なαFe相の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除して合計した値に対する、{200}あるいは{222}方位面の強度の比率を百分率で求めたものである。
本発明によれば、従来の軟磁性鋼板では達成できない高い磁束密度を有するとともに、打抜きや組み付けなどの製品製造の際にも磁気特性の劣化を小さくできる軟磁性Fe系金属板を提供することができる。
本発明は、板厚方向に、特許文献1、2に記載されているような{200}面が優先配向した層と、特許文献3に記載されているような{222}面が優先配向し、かつ磁歪が負になるような組成を有する層を、元素の相互拡散による金属結合によって一体化させることにより、高磁束密度で、打抜きや組み付けによる磁気特性の劣化が小さい軟磁性Fe系金属板としたものである。
以下、本発明の軟磁性Fe系金属板について、個々の条件の限定理由及び好ましい条件、製造方法について説明する。なお、以下の記載において、元素の含有量の%は質量%を意味するものとする。
本発明の軟磁性Fe系金属板は、{222}面が優先配向し、かつ磁歪が負になるような組成を有する層(以降、A層と呼ぶ)と、{200}面が優先配向した層(以降、B層と呼ぶ)が積層した構造である。また、A層、B層に加え、A層でもB層でもない層(以降、C層と呼ぶ)が積層した構造である。
以下では、まず各層の特徴について説明する。
A〜C層の特徴
(A層の結晶配向)
後述するように、A層は基本的に金属板の最表層または表面近傍の層を構成する層であり、打ち抜き加工の影響を強く受ける層になる。本発明では打ち抜き加工による磁気特性の劣化防止を図るために、A層については、αFe相の金属板面に対する{222}面集積度を高める。これにより、打ち抜き加工を行った際に歪が入り難くなり、歪による磁気特性劣化が少なくなる。また、{222}面集積度が高まると、磁化容易方向である[100]方位が使用磁界方向、すなわち板面内に存在する比率は低下するものの、磁化困難方位である[111]方位が使用磁界方向に存在する比率も低減するので、磁束密度の劣化は許容できる程度に抑えられる。一方、本発明は{222}面集積度を高めた領域の磁歪を負の値にするものあるが、SiやNiの含有量を抑制するためにもA層の結晶配向を発明範囲内に制御することが重要となる。
αFe相の板面に対する{222}面集積度が55%以上であれば、[111]方位の排除による磁気特性の改善効果を享受することができるとともに、打ち抜き加工時に歪が入るのを抑制し磁気特性の劣化を防止することができるとともに、低合金でも磁歪を負の値にして板面内圧縮応力下での磁気特性劣化を回避する効果を得ることが可能となる。
{222}面集積度は、高いほうが望ましいが、99%を越えても、前記磁気特性の劣化防止効果は飽和し、製造の困難性も伴う。
(B層の結晶配向)
後述するように、B層は基本的に金属板の中心層または中心近傍の層を構成する層であるので、B層の{200}面集積度を高めることにより、本発明金属板の磁束密度を効果的に高めることが可能となる。
B層は、板面に対する{200}面集積度が25%以上で、{222}面集積度が40%以下とする。好ましくは、{200}面集積度が30%以上で、{222}面集積度が30%以下である。
{200}面集積度は高いほうが望ましいが、99%を越えても前記磁束密度向上の効果は飽和し、製造の困難性も伴う。
(面集積度の測定)
上記の面集積度の測定は、MoKα線によるX線回折(反射法)で行うことができる。
具体的には、各試料について、金属板表面に対して平行αFe相の11の方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除して合計した値に対する、{222}強度または{200}強度の比率を百分率で求める。
つまり、{222}強度比率では、以下の式(1)で、{200}強度比率では、以下の式(2)で表される。
{222}面集積度=[{i(222)/I(222)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・(1)
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・(2)
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl): 測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl): ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ: αFe相の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
なお、上記の測定は、板厚方向にわたる結晶方位の変化を十分に把握できる程度に、板厚方向に細分化した領域で行う必要がある。具体的には、板厚方向の結晶組織を観察し、板厚方向位置での各領域の平均粒径に相当する厚さに分割した程度に細分化して測定する。これはつまり、例えば平均粒径が30μmの領域があれば、30μm間隔で面集積度を測定することを意味し、一つの結晶粒内は同じ結晶方位であることから、特定の位置での結晶方位はその領域での平均結晶粒径程度の距離の中では変動しないとの考えに基づくものである。板厚方向に狙いとする厚さ位置まで金属板を表面研磨し、研磨面にX線を照射する手順は、一般的な板厚方向での結晶方位の測定手順と異なるものではない。
結晶粒組織から見て、例えば板厚方向に3層または数層程度の変化しか有さないことが明確であれば、これら各層について代表的と判断できる位置で測定すればよい。
なお、結晶粒径は、板厚断面において研磨およびナイタール等による化学エッチングで結晶粒界を現出し、一定面積内で観察される結晶粒の個数を計測し、1個の結晶粒の平均面積を円相当とした際の直径である。
(A層の磁歪)
軟磁性Fe系金属板から打ち抜かれたコア材をコア部材に組み付ける際、金属板表面に平行な方向に圧縮応力が付与されコア部材の磁気特性を劣化させる原因となる。本発明ではA層を{222}面集積度を高めた状態でさらに板面内の平均の飽和磁歪を−0.2×10−6以下とすることによって、板面内圧縮応力による鉄損の劣化も抑制させる。
この効果は本発明に特徴的なものであり、ここで説明した磁歪のみならず、各層の積層構造および各層の結合状態(界面構造)に関連して発現する磁気相互作用に起因するものである。本発明の積層構造や界面構造に関する規定の後、メカニズムについて後述する。
本発明で規定する飽和磁歪は以下のように測定する。
まず、上述した板厚方向での結晶方位分布の変化に応じ、αFe相の{222}面集積度が55%以上99%以下である層を研磨等により切り出す。そして、切り出した金属板について、板面内で22.5°毎に360°にわたり飽和磁歪を測定する。この際、各方向とその方向に垂直方向へ800kA/mの磁場をそれぞれ印加し、磁場0を基準にした磁歪を歪みゲージなどで測定した後、狙い方向の磁歪と垂直方向の磁歪差に2/3を乗じた値が各方向での飽和磁歪であり、本発明で規定する飽和磁歪はこれらの平均値として求めることができる。
ちなみに板面に{222}面に配向している結晶においては、磁化が向き易い板面内での方位は[110]であるため、{222}面方位の結晶の磁歪は[110]方向の磁歪となる。
[110]方向の磁歪λ110は、式[λ110=(1/4)λ100+(3/4)λ111]から求められる。
Fe−X系の合金においては、[100]方向の磁歪は、6.5%Siでゼロになる以外はすべて正の値であり、[111]方向の磁歪は、元素XとしてSi、Al、V、Ti、Snが、Si=0〜4%、Al=0〜9%、V=0〜14%、Ti=0〜3%、Sn=0〜4%の範囲で負の値となることが知られている(例えば、「鉄鋼材料便覧」の図1・61参照)。
これらのことを考慮すると、α−γ変態成分系のFe系金属の飽和磁歪λ110は、Si、Al、V、Ti、Snの各含有量が、Si=0〜1.5%、Al=0〜3.5%、V=0〜6.5%、Ti=0〜3%、Sn=0〜4%。の範囲で負とすることができる。
(C層について)
本発明においてC層は、上記のA層でもB層でもない金属層として規定される。すなわち、板面に対する{222}面集積度が40%超、55%未満であるか、{222}面集積度が99%超であるか、{222}面集積度が55%以上99%以下であっても板面内の平均の飽和磁歪が−0.2×10−6超であるか、あるいは{222}面集積度が40%以下であっても{200}面集積度が25%未満である層である。
C層は、意図的に本発明金属板に含むように形成させることも可能であるが、意図的に形成させることでの実用的なメリットは小さく、本発明では、A層とB層の間の遷移領域、または最表面などの特殊な領域に、不可避的に存在するものとなる場合が多い。これは、例えば、A層とB層の界面は、板面に完全に並行かつ直線的に形成されることは少なく、板面との多少の角度を有していたり、凹凸を有することが多いため、本発明でA層、B層を板面に対して平行な領域で規定する場合、A層の特徴とB層の特徴を併せ持つような混合領域が存在してしまうことを想定したものである。
また、例えば、後述するように、A層やB層の結晶配向をフェライト生成元素の拡散およびそれに関連する変態挙動に起因する結晶粒成長により形成する場合、{222}面方位粒または{200}面方位粒の成長終点には、不可避的に{222}面方位粒または{200}面方位粒以外の結晶粒が残存してしまうことを想定したものでもある。
このような事情から、本発明においては、A層にもB層にも分類されない金属層が存在することを許容するものである。
金属板の構成
(積層構造)
上記のA層、B層およびC層は本発明金属板において、板厚方向に積層した状態で存在するが、その配置として必要なのは、板表面と、該板表面から該板表面の反対側の板表面に向かって最初に確認されるB層との間に、A層が存在する積層構成となっていることである。本発明金属板は金属板の表と裏の両方の表面についてこの条件を満足する必要がある。
具体的な例として、最も単純な構成は、「A-B-A」である。
本発明はこれに限らず、例えば、「A-C-B-C-A」、「C-A-B-A-C」なども可能であるし、板厚中心に対して対象である必要はなく、例えば「A-C-B-A」、「C-A-C-B-A-B-A」のような構成も可能である。
また、本発明金属板を構成するA層、B層、C層は、結晶面の配向と磁歪により規定されるが、これらの各層について、各層が2層以上存在する場合、それらは同じ配向と磁歪である必要はない。例えば、A層の規定を満足するが異なる配向や磁歪を有する層としてA1層とA2層、B層の規定を満足するが異なる配向を有する層としてB1層とB2層がある場合、「A1-B-A2」のような構成や「A1-B1-C-B2-C-A2」のような構成でも構わない。
もちろん、上記で単純に「A-B-A」とした場合に、各A層やB層内で板厚方向に結晶面の配向や磁歪の変動があっても構わない。つまり、「A1-A2-B1-B2-A1-A2]のような構成は簡単に「A-B-A」とも表記できる。一般には、例えば「A-B-A」の構成においても、A層の中では配向や磁歪は板厚方向に多少の変動が伴うことが通常とも言える。
(厚さ)
本発明の軟磁性Fe系金属板全体の厚さは0.03mm以上1.5mm以下が好ましい。板の厚さが0.03mm以下であると、軟磁性Fe系金属板から製造したコア用部材を磁気コアに積層する場合に手間がかかり生産性が悪くなる。また、厚さが1.5mmを超えると渦電流が大きくなって鉄損が増加してしまう。より好ましくは、0.05mm以上1mm以下である。
板表面から該板表面の反対側の板表面に向かって最初に確認されるA層の厚さは、金属板全体の板厚に対して3〜30%が好ましい。この値が3%以上ないと、コア材製造の際の加工や板面内圧縮応力下での鉄損の低下を抑制する効果が十分に得られない。また、この値が30%を超えると、B層が薄くなり金属板全体として高い磁束密度を得にくくなる。また、C層については、測定上不可避的に存在するものでもあり、また後述するが、各層間の磁気相互作用の発現に関して特性上のメリットが小さくなるため、本発明金属板全体でのC層の合計厚さは、A層およびB層それぞれの合計厚さよりも少ないもので、存在する場合の厚さは薄いほど好ましい。
(各層の一体化と界面)
本発明金属板はA層、B層およびC層が積層した構造を有することは前記のとおりであるが、これらの一体化の方法は特に問わない。単純には各層の間に接着剤のような特別な機能を有する物質を介在させて一体化することも可能である。しかし、この場合は、本発明の独創的な特徴である、各層間、特にA層とB層の間の磁気相互作用による効果が非常に小さくなってしまう。すなわち、A層とB層の間に接着剤のような非金属または非磁性物質が介在すると、各層間の磁気相互作用が小さくなるため、板面内圧縮応力下での磁気特性劣化を回避する効果が小さくなる。
このため、本発明においてはA層、B層およびC層は直接金属結合して一体となっていることが好ましく、特に強磁性を示すFe原子が連続的につながっている状況が好ましい。具体的には、各層の界面から隣接する各層内に10μmの距離においてFe濃度の差が1.0%以下であれば本発明で特徴的な磁気相互作用を十分に活用することが可能となる。
この磁気相互作用による板面内圧縮応力下での磁気特性劣化回避の効果は、A層とB層の間の磁気相互作用によるものが主であり、A層とB層を連続して積層させることが好ましい。またA層とB層の間にC層が介在する場合は、C層の厚さは薄い方が好ましい。
各層の界面におけるFe濃度分布は、界面を含む断面で界面を跨ぐ板厚方向にEPMAライン分析によって測定することができる。
上記の磁気相互作用と効果は、前述したように、A層の磁歪、各層の積層構造および各層の結合状態(界面構造)に関連して発現するものである。このメカニズムは以下のように考えられる。
一般に板面内に圧縮応力が作用すると磁気特性が劣化するのは、以下のような現象による。
一般的な磁歪定数が正の値である磁性材料では、磁化ベクトルは引張応力に対しては同じ向きになる方が、圧縮応力に対しては垂直の方向を向く方が系のエネルギーが低下する。このため板面内に圧縮応力が作用すると磁化ベクトルは板面内方向からずれて板厚方向の成分を増大させる。本発明の金属板は板面内に磁場を印加して使用されるものであるため、磁化ベクトルが板面内から外れることは磁束密度向上にとって好ましいことではない。また交番磁場を印加する場合、磁化ベクトルの板厚方向成分が増加すると、磁化ベクトルの垂直面に発生する渦電流については、板面内で流れる電流が増加することとなる。電流が板面内で流れる場合と、板断面内で流れる場合を比較すると、広い面積を有する板面内で流れる方が比抵抗が小さくなるため渦電流損失が増加してしまう。
これとは逆に、磁歪定数が負の値である場合には、板面内方向に圧縮応力が作用しても、磁化ベクトルは板面内から外れず、むしろ板面内から外れていた磁化ベクトルがあればそれが板面内を向くようになり、磁束密度向上にも好ましく、渦電流は比抵抗が大きい板断面内で流れるため渦電流損失も抑制される。
また本発明金属板のように、磁気特性が異なるA層とB層が一体化されていると、層間で磁気双極子相互作用を主体とした磁気相互作用が働く。一般的には、保磁力が低い方位の挙動は、保磁力が高い方位の挙動に従うようになる。すなわち、保磁力が低い{200}面方位に配向したB層は、保磁力が高い{222}面方位に配向したA層の挙動に従うようになる。
上記の2つの基礎現象を元にすると、本発明においてB層は磁歪定数が正の値であるにも関わらず、磁歪定数が負の値であるA層と同様に、板面内圧縮応力下でも磁化ベクトルが面内方向を維持するようにできる。この結果、本来単独であれば板面内圧縮応力の影響を受けやすく磁気特性劣化の原因ともなるB層は、板面内圧縮応力の影響を受けにくくなり、金属板全体として板面内圧縮応力による磁気特性劣化が回避される。
(組成)
本発明の軟磁性Fe系金属板の組成は特に限定されるものではない。組成に関して必要なのは、「Fe系金属」であることである。これは、本発明金属板がモータコア材として使用され、各種の磁気特性を必要とするためのものであるからである。
本発明では、「Fe系金属」を金属板全体の平均組成で、70%以上のFeを含有するものとする。Fe系金属の一般的な例としては、C:1ppm〜0.02%、残部Fe及び不可避不純物よりなる純鉄、C:0.02〜0.2%を含有する炭素鋼を基本とし、適宜、添加元素を含有させた鋼、C:0.1%以下、Si:0.1〜2.5%を基本成分とするケイ素鋼や、Mn:0.02〜3%、P:0.3%以下、S:0.05%以下、Al:4%以下、N:0.1%以下を含む公知の各種鋼などが例示できる。
本発明のFe系金属板は、材質の異なるA層、B層、さらに状況によりC層からなるが、これら各層の組成も特に限定されない。ただし本発明で要求される磁気特性を発揮するためA層とB層については、Fe系金属であることを必要条件とする。C層についても、磁気特性への直接的な影響や、A層とB層の間に介在する場合は磁気相互作用に寄与することから、Fe系金属であることが好ましい。
また各層は組成として異なる必要性はない。しかし、各層は材質に差異を有するものであるので、組成としても差を有するものになることが一般的で、それでも構わない。
本発明では金属板全体の平均組成を考慮することはあまり意味がない。というのは、本発明は特にA層とB層の結晶方位と磁歪を制御することが重要であり、このために各層の組成が考慮されるが、金属板全体の組成はさらに各層の厚さを含めた積層構造にも依存するため、金属板の特性とは関連が小さいものになるためである。
さらに、各層を個別に見ても、各層内の組成が均一であることは本発明効果の発現には必要な条件ではなく、例えば板厚方向での成分変動が許容される。
このこともあるので以下に、各層毎の平均組成に関して好ましいものを説明しておく。
A層の化学組成は例えば、必要な特性に制御するために、一般的に電磁鋼板で使用され、さらに磁歪を制御するためSi、Al、V、Ti、Snのいずれか1種以上を含む組成となる。特に磁歪を負の値とするためには、Si=0〜1.5%、Al=0〜3.5%、V=0〜6.5%、Ti=0〜3%、Sn=0〜4%の範囲で含有させることが好ましい。
B層の化学組成は例えば、一般的に{200}面方位を多く含むように制御された電磁鋼板で使用されるAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Znのいずれか1種以上を含む組成となる。
C層についても、A層、B層と同様に、一般的に電磁鋼板で使用される元素を含む組成とすればよい。
各層とも、さらに公知の特定の目的をもって上記以外の元素を含有していても、本発明効果が消失するものではない。
また、本発明金属板の各層は製造法によっては、各層内で組成が均一でない場合も想定される。つまり、金属板を板厚方向に細かく見れば、Fe以外の元素の濃度が相当程度に高く、Fe濃度が70%未満になるような領域も想定される。このような状況は、上記のように強磁性体であるFe原子の磁気特性を活用した本発明金属板にとっては好ましいものとは言えない。特に、A層とB層の磁気相互作用が起きるA層とB層との遷移領域にFe濃度が70%未満であるような領域が存在すると、相互作用を阻害してしまう。
(その他)
本発明金属板は、一般的な電磁鋼板で知られているようなコーティングを施される場合もある。このようなコーティングは本発明効果を消失させるものではない。
軟磁性Fe系金属板の製造方法
本発明の複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板は、たとえば次のような工程を経て得られる。
以下では、A層に関する素材の準備、B層に関する素材の準備、該素材の一体化、一体とした材料の熱処理の順で説明する。
(A層を形成する素材)
A層を形成する素材としては、例えば、70質量%以上のFeを含有し、α−γ変態を生じ得る組成のFe系金属板(以降、金属板Aと呼ぶ)を30%以上95%以下の圧下率で冷間圧延し、その表面にSi、Al、Sn、TiおよびVの少なくとも一種以上のフェライト生成元素を含有する金属または合金を付着させた金属板(以降、金属板Aと呼ぶ)を用いることができる。
この金属板Aを後述のように加工および熱処理することで、最終的に本発明金属板の中にA層に相当する領域を形成することができる。
ここで素材としての金属板Aの組成をα−γ変態を生じ得るものとするのは、後述の熱処理において、α−γ変態を活用してA層の{222}面集積度を高めるためである。なお、本製造法で説明する方法では、金属板Aの表面から内部に向かってフェライト生成元素が合金化し局所的に見ると少なからざる組成変化が起き、その少なくとも一部はα−γ変態を生じ得ない組成(α単相組成)に変化する。α−γ変態を生じ得る組成である必要があるのは、あくまでも素材とする金属板Aであり、最終的には金属板Aに相当する領域全体がα単相組成に変化するような状況も考えられる。詳細は後述する。
注意すべきは、上記で用いる金属板Aは、最終的にその表面に付着させたフェライト生成元素が拡散により侵入し、Fe濃度が減少する方向で組成が変化するので、最終製品でのA層が本発明で定義している磁歪定数も考慮したFe系金属相当の組成となるようなFe含有量に設定しておく必要がある。これを、表面に付着させる金属の種類や厚さ、拡散による合金化の程度などにより適切に制御することは、通常のメタラジー知識を有する当業者にとっては容易なことである。
(B層を形成する素材)
B層を形成する素材としては例えば、70質量%以上のFeを含有しα−γ変態を生じ得る組成を有するFe系金属板(以降、金属板Bと呼ぶ)を97%超99.99%以下の圧下率で冷間圧延し、その表面にAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、WおよびZnの少なくとも一種以上のフェライト生成元素を含有する金属または合金を付着させた金属板(以降、金属板Bと呼ぶ)を用いることができる。
この金属板Bを後述のように加工および熱処理することで、最終的に本発明金属板の中にB層に相当する領域を形成することができる。
ここで素材としての金属板Bの組成をα−γ変態を生じ得るものとするのは、後述の熱処理において、α−γ変態を活用してB層の{200}面集積度を高めるためであり、熱処理での組成変化がおき、最終的に金属板Bに相当する領域の組成の少なくとも一部がα−γ変態を生じ得ないものに変化する可能性ついては金属板Aと同様である。詳細は後述する。
上記で用いるFe系金属板BのFe濃度については、金属板Aについてと同様の注意が必要である。
Fe系金属板AとFe系金属板Bの厚さは、最終的な本発明Fe系金属板の厚さが0.03mm以上1.5mmとなるようにそれぞれ定めればよいが、いずれも、製造上や取り扱いの点から0.01mm以上の厚さとすることが望ましい。
フェライト生成元素の各金属板への付着は、溶融めっき法、電気めっき法、ドライプロセス法、圧延クラッド法等によって実施でき、いずれの方法で付着を行ってもよい。
各金属板に付着させるフェライト生成元素の付着厚さは、0.05μm以上であることが望ましい。厚さが0.05μm未満では、後述の熱処理工程において十分な{222}面または{200}面集積度を有するA層またはB層を得ることができない。
また、ここで説明している方法においては、本発明金属板は最終的に板厚方向に少なからざる濃度変動を有するものになる場合があるが、最終的な本発明金属板は全板厚にわたって強磁性体元素であるFeの濃度が70%以上となっていることが好ましいため、金属板AまたはBで表面に形成されたフェライト生成元素の層の最大厚さは、後述する熱処理条件も考慮し、熱処理後にFe系金属板AまたはFe系金属板Bと十分に合金化するように設定することが好ましい。
なお、金属板Aと金属板Bは、同じ組成のFe系金属板を用いることができるし、異なる組成のFe系金属板を用いることもできる。
また、フェライト生成元素も金属板Aと金属板Bで同じ元素を使用できるし、異なる元素の組み合わせも使用できる。
金属板Aと金属板Bで同じ組成のFe系金属板を用い、フェライト生成元素も金属板Aと金属板Bで同じ元素を使用することにより、金属板全体の平均組成は一般的な単層の金属板とほぼ同じで、結晶配向性や磁歪定数が異なる複数の層で形成されたFe系金属板とすることもできる。
(金属板Aと金属板Bの積層)
金属板Aと金属板Bを、積層体の最表面から該表面の反対側の表面に向かって最初に確認される金属板が金属板Aであるように積層する。このようにすることで、後述の熱処理後、最終的な本発明金属板において、板表面と、該板表面から該板表面の反対側の板表面に向かって最初に確認されるB層との間に、A層が存在する積層構成とすることができる。
最終的には後述する熱処理により各金属板を相互拡散による金属結合によって一体化するが、各金属板を単に重ねて熱処理しただけでは、各金属板の向かい合った表面の間の空隙が熱処理後も残存したり、向かい合った表面が酸化してこれが残存し一体化が阻害されやすい。このため、積層前に各鋼板表面をクリーニングして異物を取り除くことは望ましく、例えば、酸洗したり、逆スパッタして新生面を出しておくことが望ましい。また、熱処理前に低温で圧着させたり、放電により接合してもよい。熱処理時の各金属板の積層空隙の酸化や窒化を防ぐには、空隙を真空にして予め酸素や窒素を表面付近から除去した上で積層体周囲をシールして外部雰囲気からの酸素や窒素の侵入を防ぐことや、熱処理雰囲気を不活性ガスとすることも有効である。さらに熱処理時には積層方向に荷重をかけることも効果的である。
(積層体の熱処理)
上記のように準備された積層体に熱処理を施し、金属板AおよびB表面のフェライト生成元素を各金属板内および相互に拡散させて、各金属板を一体化すると同時に、各金属板の再結晶と変態を利用して、{222}面集積度の高いA層と、{200}面集積度の高いB層をそれぞれ形成する。また、A層では飽和磁歪の値が負になるように、フェライト生成元素を拡散させ合金化する。
以上のようにするためには、上記積層体を、金属板Aと金属板Bの両方がA3点以上になるまで加熱する必要がある。A3点以上からの冷却の過程でのγ相からα相への変態に伴い、もともと金属板Aであった領域では、{222}面方位であるα相粒が優先的に成長し、もともと金属板Bであった領域では、{200}面方位であるα相粒が優先的に成長するため、A層では{222}面集積度を、B層では{200}面集積度を増加させることができる。
このメカニズムについては特許文献1および2に詳しく述べられており、ここでは本発明における熱処理条件例の範囲とともに簡単に説明しておく。
以下では、A層について説明し、フェライト生成元素がAlで、{222}面集積度が増加する状況について説明する。
積層体を加熱すると、冷延加工が施されていた金属板Aの領域は再結晶を開始する。金属板Aでは、冷延率が好ましく制御されているため{111}に配向した方位が比較的多数生成する。また、昇温につれて金属板Aに付着していたAlが金属板A内部に拡散し、合金化してAl濃度が高まった領域はα単相成分となる。
積層体をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持する。
すでにα単相成分となっている領域では再結晶で生じた{111}方位粒はそのまま保存され、その領域の中で{111}方位粒が優先成長して、{222}面集積度が増加する。この時、α単相組成でない領域(元の金属板Aの中心側領域)はα相からγ相に変態する。
この温度域で保持すると、Alの拡散に伴いα単相組成領域は元の金属板Aの中心側に広がっていく。このため元の金属板Aの中心側領域でγ相に変態していた領域は元の金属板Aの表面側領域から再びα相に変態していく。その際、すでにα単相組成となって{111}方位粒が優先成長しているα相領域の結晶粒がγ相側に成長する。このためγ相はα単相領域の結晶方位を引き継ぐかたちで変態することとなり、保持時間の増加にともない、元の金属板Aであった領域の{222}面集積度はさらに増加していく。
このような{111}方位粒の発達は、元の金属板Aの表面に付着させていたAl層内に金属板A側からFe原子が拡散していくことでも起きる。結果として、元の金属板A領域全体において{222}面集積度が高まることとなる。
元の金属板A領域全体にわたりα単相組成として合金化されるまでA3点以上で保持された場合には、元の金属板A領域の全体にわたりすでに{222}面集積度の高い組織が形成されているので、冷却後もそれが維持される。
また、元の金属板A領域全体にわたりα単相組成となるまで合金化されていない場合は、元の金属板Aの中心領域にはγ相が残存しており、冷却中にこれがα相へ変態する。この際も上記と同様に、γ相領域はα相粒の結晶方位を引き継いで変態する。この結果、合金化の程度とは無関係に、元の金属板A領域全体にわたり{222}面集積度の高い層、すなわちA層が形成できる。
元の金属板Bに関する領域についても同様の挙動により、元の金属板B領域全体にわたり{200}面集積度の高い層、すなわちB層が形成できる。
熱処理条件については、上記の拡散現象および変態挙動そのものは基本的には一般的な現象であり、これを制御することは、通常のメタラジーの知識を有する当業者であれば、詳細に調整することは容易である。
本発明で特に注意すべきは、拡散が過度になると、例えばA層とB層の間で拡散が進むと適切な結晶方位や磁歪定数を有する領域の境界が失われていくことである。このような領域は上述したC層に相当するものにもなる。これも通常のメタラジーの知識を有する当業者であれば、調整することは容易であるが、過度な熱処理は避けるべきである。
また例えば金属板Aの厚さとそれに付着させるフェライト生成元素の付着量によっては、熱処理により拡散が進むと熱処理の途中で、元の金属板Aの領域の全てがα−γの二相領域となってしまう。このような状況になると、上記のようなα単相領域からγ相領域への結晶方位の引き継ぎが不十分になるため好ましくない。このような構成である場合は、α単相領域が残存している間に冷却し、全体をα相に変態させることが好ましい。
また、A層については、金属板A、付着させるフェライト生成元素の種類と付着量、さらに熱処理条件を考慮しての合金化の程度により、磁歪定数が本発明の範囲になるように制御される。この条件は上記各要因により非常に多くの事例が考えられるため、あえてここでは説明せず、後述の実施例で示すにとどめておく。拡散現象を用いて、適切な組成に合金化させることは、通常のメタラジーの知識を有する当業者であれば容易なことである。
以上のように構成される本発明のFe系金属板について、実施例によりさらに詳しく説明する。
(金属板A、Bの作製)
金属板A用として表1のAとBに示す成分系のFe系金属を用意し、金属板B用として表1のC〜Fに示す成分系のFe系金属を用意した。各成分系のA3点を表1に示した。
まず、真空溶解によってそれぞれの組成を有するインゴットを溶製した後に、熱延と冷延によって所定の厚みに加工した。
金属板Aの作製は、以下のように行った。熱延では1200℃に加熱した厚み250mmのインゴットを厚み3mmまで薄肉化した。この熱延板の表面からスケールを除去した後に、冷延で厚み0.02mm〜2.0mmまで薄肉化した。さらに、窒素ガス中で800℃×600秒の熱処理を施して再結晶させて歪を取り除いた。引き続き、最終冷延で厚み0.005mm〜0.2mmまで薄肉化した。
金属板Bの作製は、以下のように行った。熱延では1200℃に加熱した厚み250mmのインゴットを厚み60mm〜3mmまで薄肉化した。3mmまで薄肉化した熱延板については、表面からスケールを除去した後に、最小厚で0.4mmまで冷延し、それぞれの厚みの冷延材を窒素ガス中で800℃×600秒の熱処理を施して再結晶させて歪を取り除いた。60mm〜3mmの熱延板の表面スケールも除去した。続いて、最終冷延によって、板厚60mm〜0.4mmから板厚1.2mm〜0.008mmまで薄肉化した。
表2−1、表4−1、表6−1、表8−1に、作製した金属板A及び金属板Bの最終冷延の冷延前板厚、冷延後板厚、および、圧延率を合わせて記載した。
それぞれの金属板の両面に、フェライト形生成元素を付着して皮膜を形成した。
金属板Aには、Si、Al、V、Ti、Sn層のいずれかを形成し、金属板Bには、Zn、Sn、Al、Si、Ti、Mo、V、Cr、W層のいずれかを形成した。Snは電気めっき法または溶融めっき法、Zn、Alは溶融めっき法によって形成した。ただし、Alの付着厚みが1μm以下の場合にはスパッタリング法を用いた。その他はイオンプレーティング(以下IP法と呼ぶ)とスパッタリング法で行なった。
フェライト形生成元素の種類と付着厚み及びフェライト形生成元素(皮膜元素と記載)の量も前記のそれぞれの表に記載した。なお、皮膜元素の量は、金属板Aの含有量と付着量を合計して、全体に対する質量%(mass%と記載)で求めた。
フェライト生成元素を付着させた各金属板AおよびBを、表2−1、表4−1、表6−1、表8−1に示すように組み合わせて積層し、接合して積層体とし、その積層体を熱処理して製品板となる軟磁性Fe系金属板を製造した。接合方法、厚さおよび、熱処理条件を表2−2、表4−2、表6−2、表8−2に示した。
金属板AおよびBをロール圧着法で接合する場合には、ロール圧着させる前に各金属板の表面に脱脂処理を施し、新生面が出るようにした。
積層体の熱処理にはゴールドイメージ炉を用い、プログラム制御により昇温速度を10℃/分とし、加熱温度およびその温度での保持時間を表2−2、表4−2、表6−2、表8−2に記載の条件で制御した。昇温、保持の間は10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で行なった。積層体の冷却時には、Arガスを導入して流量の調整によって100℃/分の冷却速度で冷却した。
得られた製品板から種々の試験片を作製して、以下の測定を行い、結果を表3、表5、表7、表9に記載した。
製品板の板厚と各層の厚さの測定は、製品板の断面の組織観察から求めた。その際に各相の接合状態を組織写真から判定した。各層間に隙間等が見られない場合には「一体化」されていると判定した。
板厚方向の{222}面集積度および{200}面集積度は、板厚方向の結晶組織を観察し、平均結晶粒径に相当する厚さに板厚方向で分割したそれぞれの領域で前述したX線回折法にて測定した。板厚方向でのX線の各測定面を出す方法には、製品板表面からエメリー紙による機械研磨と化学研磨を繰り返す方法を用いた。
さらに{222}面集積度が55%以上、99%以下のA層については、そのA層以外の領域を前述の機械研磨、あるいは、化学研磨で取り除き、A層のみを取り出し、板面内の平均の飽和磁歪を測定した。具体的には、取り出したA層について、板面内で22.5°毎に360°にわたり飽和磁歪を測定する。この際、各方向とその方向に垂直方向へ800kA/mの磁場をそれぞれ印加し、磁場0を基準にした磁歪を歪みゲージなどで測定した後、狙い方向の磁歪とそれと垂直方向の磁歪の差に2/3を乗じた値が各方向での飽和磁歪であり、各方向の平均値として求めた。板厚が薄い場合には、歪の測定が難しくなるが、その場合には、同じ方向で切り出し試料を複数枚重ねて測定した。
このようにして、各試験片について、板厚方向でのA層(表では他側のA層をA’層と記載した)、B層およびC層(A、B層以外)についての積層構成を決定した。
界面の鉄濃度を調べた。測定はEPMAにより行った。測定位置は、界面位置から両側へそれぞれ1μmピッチで界面から10μmの距離まで合計21点測定し、21点の中での最大値と最小値の差分を「界面のFe濃度差」とし、製品板の複数個所での測定結果の最大値を「界面のFe濃度差の最大値」とした。一つの界面で5カ所測定し、界面が複数存在する場合には、それぞれの界面で5カ所ずつ測定した。ただし、層の厚みが10μm未満の場合には、層の厚み分のみの測定を行い、21点未満の測定点の中での最大値と最小値の差分とした。
磁気特性の評価はSST(Single Sheet Tester)を用いて行った。磁束密度については、5000A/mの磁化力に対する磁束密度B50を求めた。この時、測定周波数は50Hzとした。さらに、鉄損は磁束密度が1.0Tとなる励磁磁場で800Hzの周波数でW10/800を測定した。板面内に圧縮応力が作用した際の磁気特性劣化の有無は、SST測定の際に測定方向と平行に試料に30MPa圧縮応力を付加して調べた。
打ち抜き加工による磁気特性劣化の有無は、以下のように調べた。製品板からリング状に打ち抜いてコア用部材を製造し、コア用部材を積層して全体厚みを約5mm前後として磁気コアとした。この磁気コアに一次コイル、二次コイルを巻き回し、磁束密度0.05T、周波数20kHzの条件で鉄損を測定した。このあと、このリング状に積層した磁気コアについて、アルゴン雰囲気中で600℃、30分の歪取り焼鈍を行い、焼鈍後に上記と同様に鉄損を測定した。
表2と表3には、No.1〜No.24の実施例と比較例を示した。
No.1、No.2およびNo.11の比較例では、A層の{222}面集積度が55%未満であるため、板面内での[110]方向を向いている結晶の割合が低下しているため、飽和磁歪を−0.2×10-6以下にできていない。そのために、圧縮応力負荷による鉄損増加率が、圧縮応力負荷前鉄損に対する圧縮応力負荷後の鉄損の比(以降、「負荷後/負荷前」と簡略化して記載する。)で見た場合、1.3倍超と大きくなっている。
更に、No.1、No.2およびNo.11の比較例では、A層の{222}面集積度が55%未満であるため、打ち抜きリング試料の打ち抜きに歪による鉄損劣化が大きくなっている。これに対して、{222}面集積度が55%以上である実施例では、打ち抜き歪による鉄損劣化はほとんど生じていない。
No.3、No.4、および、No.6の比較例では、A層の飽和磁歪が−0.2×10-6超であるため、圧縮応力負荷による鉄損劣化が大きく、負荷後/負荷前の比で見た場合、1.3倍以上の鉄損増加が生じている。
No.7〜No.10の実施例の比較では、A、A’層の飽和磁歪が負の値の方へ低下するにつれて、負荷後/負荷前の比の値は小さくなり、鉄損劣化がより抑制されていることがわかる。
No.13〜No.18の実施例では、No.13からNo.18へ向かうにつれて、A、A’層の{222}面集積度がより大きくなっているが、このような場合には、打ち抜き加工による鉄損劣化が全く生じない確立が高くなっていることがわかる。
No.1、No.5、およびNo、12の比較例では、B層の{200}面集積度が25%未満であるために、磁束密度B50が1.6T以下と低い値となっている。これに対して、{200}面集積度が25%以上、{222}面集積度が40%以下の実施例では、高いB50が得られている。
表4と表5には、No.31〜No.57の実施例を示した。
各実施例において、C層は、付着させるフェライト生成元素がTi、W、および、Moの場合に界面に形成された。これらのC層の厚みはいずれも3μm以下であった。これら以外の元素の場合には、C層は確認できなかった。
No.31〜No.57の実施例において、A層が板面に対するαFe相の{222}面集積度が55%以上99%以下であり、かつ、板面内の平均の飽和磁歪が−0.2×10−6以下を満たすため、打ち抜きによる鉄損劣化と圧縮応力負荷による鉄損劣化が同時に抑制されている。
さらに、B層が板面に対するαFe相の{200}面集積度が25%以上で、αFe相の{222}面集積度が40%以下を満たすため、高いB50が得られている。
表6と表7には、No.61〜No.66の実施例を示した。表6−1、2のように準備した金属板を積層圧着後、表6−2のように条件を変えて熱処理して、界面のFe濃度差を変えた結果を表7に示したものである。
No.61−1からNo.61−5へと界面のFe濃度差が大きくなるにつれて、圧縮応力を負荷した場合の鉄損増加率は大きくなり、Feの濃度差が1.0%を超えると、鉄損増加率は1.1倍以上と1割以上の鉄損が増加している。これは、Fe濃度差が大きくなるにつれて、界面での磁気的相互作用を十分に活用できなることを意味している。No.62−1〜No.62−4、No.63−1〜No.63−4、No.64−1〜No.64−4、No.65−1〜No.65−4、および、No.66−1〜No.66−4のそれぞれの比較においても同様である。
表8と表9には、No.71〜No.84の実施例を示した。
No.71は、全体板厚が0.024mmと0.03mmより薄く、かつ、A層の厚さが全体板厚の33.3%と30%より大きくなっている。この場合には、全体板厚が薄く過ぎるため、取り扱い中に曲がりやすくなり、その影響で圧縮応力負荷による鉄損増加率が大きくなっている、また、A層の割合が増えB層の割合が低下するため、磁束密度B50も低下している。No.71からNo.78へと全体板厚が増加するにつれて鉄損が増加し、全体板厚が1.6mmのNo.78では鉄損が50W/kgを越えている。これは、全体板厚が増加するにつれて渦電流損失が増加するためである。また、全体板厚が増加するにつれて、B50が低下しているが、これは{200}面集積度が低下しているためである。
No.79からNo.84へと全体板厚に対するA層板厚の割合が低下するにつれて、B50が増加する傾向にあるのがわかる。これはB50の向上により効果が大きい{200}面集積度の高いB層の板厚割合が相対的に増加しているためである。No.79では、A層の厚さの割合が33.3%と30%を越えているため、相対的にB層の割合が低下し、高いB50が低くなっている。No.84では全体板厚にたいするA層の割合が1.7%と3%より小さくなっている。この場合には、A層が薄くなり過ぎるため、圧縮応力負荷による鉄損増加の抑制効果が低下している。更に、A層が薄くなり過ぎるため、打ち抜きによる鉄損劣化の抑制効果が低下している。
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Claims (7)

  1. 板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
    板面に対するαFe相の{222}面集積度が55%以上99%以下であり、板面内の平均の飽和磁歪が−0.2×10−6以下である領域をA層とし、
    板面に対するαFe相の{200}面集積度が25%以上で、αFe相の{222}面集積度が40%以下である領域をB層として、
    板厚方向に前記A層とB層が存在し、
    かつ板表面と、該板表面から該板表面の反対側の板表面に向かって最初に確認されるB層との間に、A層が存在する積層構成となっている
    ことを特徴とする金属板。
  2. 板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
    前記A層でもB層でもない領域をC層とし、
    板厚方向に前記A層とB層とC層が存在する
    ことを特徴とする請求項1に記載の金属板。
  3. 板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
    前記A層とB層の界面、さらにC層が存在する場合はA層またはB相とC層の界面が金属結合で一体化されている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の金属板。
  4. 板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
    前記A層、B層、さらにC層が存在する場合はC層の間の界面から両層側に10μmの距離における領域内のFe濃度の差が1.0%以下である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属板。
  5. 板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
    前記A層について、板表面に最も近いA層の厚さが全体の板厚に対して3〜30%である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属板。
  6. 板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板において、
    該金属板の厚さが0.03mm以上1.5mm以下である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属板。
  7. 板厚方向に複数の結晶配向層を有する軟磁性Fe系金属板の製造において、
    70質量%以上のFeを含有しα−γ変態を生じ得る組成を有する金属板Aの表面にSi、Al、Sn、TiおよびVの少なくとも一種以上のフェライト生成元素を付着させた金属板を金属板Aとし、
    70質量%以上のFeを含有しα−γ変態を生じ得る組成を有する金属板Bの表面にAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、WおよびZnの少なくとも一種以上のフェライト生成元素を付着させた金属板を金属板Bとし、
    少なくとも金属板Aと金属板Bを積層したものを、
    前記α−γ変態点以上の温度で熱処理し、
    フェライト生成元素を前記金属板Aまたは金属板Bの内部へ拡散させる
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の軟磁性Fe系金属板の製造方法。
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