例示的な実施形態の以下の説明は本来単なる例示であり、本発明、その応用、または用途を限定することを全く意図していない。
例示的な動作環境が図1および図2に示されており、これらの動作環境を使用して、エンジンシステムの冷却サブシステムを、このサブシステム内で検出された動的油圧に応じて診断する、ここに開示した方法を実施することができる。その方法は、任意の適切なシステムを使用して実施することができ、より具体的には、図1または図2のシステム10またはシステム210などのエンジンシステムとともに実施することができる。以下のシステムの説明は、単に例示的なエンジンシステムについて概要しているが、ここには示していない他のシステムおよび部品もここに開示した方法に対応することができる。
一般的に、また、図1を参照すると、システム10は、燃料および吸気ガスの混合物を燃焼させて、機械回転エネルギおよび排気ガスに変換できる内燃機関12と、吸気ガスをエンジン12に供給し、エンジン12から排気ガスを運び去るエンジン吸排気システム14とを含むことができる。システム10はまた、吸気ガスとともに燃焼させるために、任意の適切な液体および/またはガス燃料をエンジン12に供給する燃料サブシステム(図示せず)と、エンジン12および/または吸排気システム14を冷却する冷却サブシステム16と、エンジンシステム10の少なくとも一部の動作を制御する制御サブシステム18とを含むこともできる。
内燃機関12は、ガソリンエンジンのような火花点火エンジン、ディーゼルエンジンのような自己点火または圧縮点火エンジンなどの任意の適切なタイプのエンジンとすることができる。エンジン12は、シリンダおよびピストンのあるブロック20(個別には示していない)を含むことができ、このブロック20は、シリンダヘッド22とともに、燃料および吸気ガスの混合物を内部で燃焼させる燃焼室を画定することができる。エンジン12は、任意の数量のシリンダを含むことができ、任意の大きさとすることができ、任意の適切な回転数および負荷に従って動作することができる。
エンジン吸排気システム14は、吸気ガスを圧縮および冷却することができ、この吸気ガスをエンジン12に搬送できる吸気サブシステム24と、排気ガスからエネルギを抽出でき、その排気ガスをエンジン12から運び去ることができる排気サブシステム26とを含むことができる。エンジン吸排気システム14はまた、エンジンシステム10からの排出物を減らし、ポンプ損失を小さくするために、排気ガスを再循環させて未使用空気と混合する、排気サブシステム24と吸気サブシステム26とにまたがって接続された排気ガス再循環(EGR)サブシステム28を含むことができる。
エンジン吸排気システム14は、吸気サブシステム24と排気サブシステム26との間に配置されて、吸入空気を圧縮し、それによって、エンジン出力が増大するように燃焼を改善する、任意のタイプのターボチャージャ30をさらに含むことができる。本明細書では、吸気ガスという語句には、外気、圧縮空気、および/または再循環された排気ガスが含まれ得る。ターボ過給サブシステム30は、示したような単一段システムであってもよいし、または多段もしくは一連のターボ過給サブシステムであってもよい。ターボ過給システム30は、排気サブシステム26内のタービン32と、タービン32に機械的に連結されてこれによって駆動される、吸気サブシステム24内のコンプレッサ34とを含むことができる。別の実施形態では、コンプレッサ34は、任意の適切な態様で駆動される機械式または電気機械式コンプレッサとすることができ、タービン32で駆動する必要がない。言い換えると、スタンドアロン型コンプレッサを使用して吸入空気を圧縮し、それによって、エンジン出力が増大するように燃焼を改善することができる。
吸気サブシステム24は、適切な導管および連結器に加えて、流入空気を濾過する空気フィルタ38を有することができる吸気端部36と、吸入空気を圧縮する、吸気端部36の下流のターボチャージャコンプレッサ34とを含むことができる。吸気サブシステム24はまた、圧縮空気を冷却する、ターボチャージャコンプレッサ34の下流の給気冷却器40と、エンジン12に向かう冷却された空気の流れを絞る、給気冷却器40の下流の吸気絞り弁42とを含むことができる。吸気サブシステム24はまた、絞られた空気を受け取り、その空気をエンジン燃焼室に分配する、絞り弁42の下流でエンジン12の上流にある吸気マニホルド44を含むことができる。吸気サブシステム24はまた、任意の種類の他の任意の適切な装置を含むこともできる。
排気サブシステム26は、適切な導管および連結器に加えて、エンジン12の燃焼室から排気ガスを収集し、その排気ガスを排気サブシステム26の残りの部分に向けて下流に搬送する排気マニホルド46を含むことができる。排気サブシステム26はまた、排気マニホルド46と下流接続されたターボチャージャタービン32を含むことができる。排気システム26はまた、排気マニホルド46の下流にある任意の数量の適切な排出装置48を含むことができる。
EGRサブシステム28は、排気ガスの一部を排気サブシステム26から吸気サブシステム24に再循環させて、エンジン12内で燃焼させることができ、示したような単一流路のEGRサブシステムとしてもよいし、または複合もしくは二重流路のEGRサブシステムとしてもよい。示すように、EGRサブシステム28はまた、ターボチャージャタービン32の上流で排気システム26に接続され、一方、ターボチャージャコンプレッサ34の下流で吸気サブシステム24に接続された高圧(HP)EGR流路を含むことができる。EGRサブシステム28は、適切な導管および連結器に加えて、EGR冷却器50と、EGR冷却器50の上流または下流に配置されて、排気サブシステム26と吸気サブシステム24との間のEGR流れを配分することができるEGR弁52とを含むことができる。
冷却サブシステム16は、ホース、パイプ、チューブ、通路などが含まれ得る任意の適切な導管によって接続できる任意の数量の任意の適切な装置を含むことができる。ヒータコア54を使用して、例えば、シリンダヘッド22など、エンジン12を出た高温冷却剤から熱を吸収し、例えば、エンジン12を担持する自動車の車室(図示せず)に熱を放散することができる。また、ファン58を備えた、またはこれのないラジエータ56などの任意の適切な熱交換装置を使用して、冷却剤の熱を空気などの別の媒体と交換することができる。さらに、ポンプ60を使用して、シリンダヘッド22などのエンジン12の一部分から冷却剤を抽出し、その冷却剤をシリンダブロック20などのエンジン12の別の部分に送り返すことができる。ポンプ60は、例えば、示すようにエンジンクランクシャフトおよびベルトによって機械的に駆動してもよいし、または任意の適切な態様で駆動される電気式ポンプであってもよい。さらに、サーモスタット弁62を使用して、冷却サブシステム16を通る冷却剤の流れを調整することができる。さらに、EGR冷却器50を使用して、高温排気ガスから熱を吸収し、その熱を、例えば、シリンダヘッド22からなど、エンジン12から受け取られ、シリンダブロック20などのエンジン12の他の部分に送られるエンジン冷却剤に放散することができる。
冷却サブシステム16はまた、冷却サブシステム16の1つまたは複数の位置で油圧を検出する1つまたは複数の装置64を含む。例えば、検出装置64は、冷却剤と流体連通した1つまたは複数の油圧センサ、および/あるいは冷却剤と流体連通しているか、あるいは導管または他の部品もしくは装置上の任意の適切な位置に担持されたハイドロホンを含むことができる。検出装置64は、油圧に関する実際の物理パラメータを検出することができ、装置64または制御サブシステム18内などにある下流信号処理装置により、油圧の物理パラメータから圧力に関係する他のパラメータおよび値を導出するか、あるいは抽出することができる。
本明細書では、油圧という用語には、実際の流体圧力、および/または実際の流体圧力に対応する音圧が含まれる。単に、離散したまたは瞬間的な圧力出力信号を供給する静的油圧センサとは異なり、動的油圧センサは、特定の期間にわたって油圧波を測定し、対応する動的出力信号を供給する。さらに、本明細書では、動圧測定という用語には、一例として、ポンプキャビテーションを測定するのに、10Hzから、例示的な最高値10kHzまでを使用する動圧測定が含まれ得る。
任意の適切な油圧センサ、例えば、ハイドロホンなどの圧電センサを使用することができる。ハイドロホンは、音圧と空間的および時間的な音圧変動とを測定することができる。ハイドロホンは、音響−電気変換器を含むことができ、この音響−電気変換器は、ハイドロホンに作用する交番音圧を比例交流電圧に変換することができる。1つのタイプのハイドロホンには針タイプのハイドロホンがあり、この針タイプのハイドロホンは、針の先端に貼り付けられた圧電セラミックまたは圧電ホイルで構成された変換器要素を装備することができる。別のタイプのハイドロホンには、フレームに担持された圧電ホイルを含むことができる薄膜タイプのハイドロホンがある。
制御サブシステム18は、例えば、車両コントローラ、エンジンシステムコントローラ、冷却システムコントローラ、および/または検出装置64を含むことができる。制御サブシステム18は、下記に本明細書で開示される方法の少なくとも一部を実行する任意の適切なハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアを含むことができる。例えば、制御サブシステム18は、各種エンジンシステムアクチュエータおよびセンサ(図示せず)を含むことができる。エンジンシステムセンサは、図には個別に示されていないが、エンジンシステムパラメータを観測する任意の適切な装置を含むことができる。
制御サブシステム18は、アクチュエータおよびセンサに接続されて、センサ入力を受け取り、これを処理し、アクチュエータ出力信号を伝送する1つまたは複数のコントローラ19をさらに含むことができる。制御装置19は、1つまたは複数の適切なプロセッサ19a、メモリ19b、および制御装置19を1つまたは複数の他の装置に接続する、1つまたは複数のインターフェイス19cを含むことができる。プロセッサ19aは、システム10の機能の少なくとも一部を有効にする命令を実行することができる。本明細書では、命令という用語には、例えば、制御ロジック、コンピュータソフトウェアおよび/またはファームウェア、プログラム可能な命令、あるいは他の適切な命令が含まれ得る。プロセッサには、例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、用途を特化した集積回路、および/または他の任意の適切なタイプの処理装置が含まれ得る。また、メモリ19bは、システム10が受け取る、またはシステム10にロードされるデータ用および/またはプロセッサで実行可能な命令用の記憶装置を形成するように構成することができる。データおよび/または命令は、例えば、参照テーブル、式、アルゴリズム、マップ、モデル、および/または他の任意の適切なフォーマットとして保存することができる。メモリには、例えば、RAM、ROM、EPROM、および/または他の任意の適切なタイプの記憶装置が含まれ得る。最後に、インターフェイス19cは、例えば、アナログ/デジタルまたはデジタル/アナログ変換器、シグナルコンディショナ、増幅器、フィルタ、他の電気装置またはソフトウェアモジュール、および/あるいは他の任意の適切なインターフェイスを含むことができる。インターフェイスは、例えば、RS−232、パラレル、小型コンピュータシステムインターフェイス、ユニバーサルシリアルバス、CAN、MOST、LIN、FlexRay、および/または他の任意の適切なプロトコルに準拠することができる。インターフェイスは、回路、ソフトウェア、ファームウェア、またはコントローラ19が他の装置と通信するのを補助するまたは可能にする他の任意の装置を含むことができる。
図2は、エンジンシステム210の別の例示的な実施形態を示している。この実施形態は、多くの点で図1の実施形態と同様であり、実施形態の中の同じ数字は通常、作図した複数の図全体を通して同じかまたは相当する要素を示す。さらに、実施形態の説明は、参照によって互いに援用され、共通する内容については、ここでは通常繰り返さない。
エンジンシステム210は、内燃機関212、エンジン吸排気システム214、高温(HT)冷却サブシステム216a、低温(LT)冷却サブシステム216b、および制御サブシステム218を含むことができる。本明細書において、高温および低温とは相対的な用語であり、当業者に公知の冷却サブシステムに対して適切な任意の温度範囲が含まれ得る。
エンジン吸排気システム214は、吸気サブシステム224および排気サブシステム226を含むことができる。エンジン吸排気システム214はまた、排気サブシステム224と吸気サブシステム226とにまたがって接続された第1のまたは高圧(HP)の排気ガス再循環(EGR)サブシステム228を含むことができる。エンジン吸排気システム214は、吸気サブシステム224と排気サブシステム226との間に配置され、排気サブシステム226内のタービン232と、吸気サブシステム224内のコンプレッサ234とを有する、任意のタイプのターボチャージャ230をさらに含むことができる。エンジン吸排気システム214はさらに、排気サブシステム224のタービン232よりも下流の部分とコンプレッサ234の上流部分とにまたがって接続された第2のまたは低圧(LP)のEGRサブシステム229を含むことができる。
吸気サブシステム224は、吸気端部236、ターボチャージャコンプレッサ234、コンプレッサ234の下流の給気冷却器(CAC)240、吸気絞り弁242、および吸気マニホルド244を含むことができる。排気サブシステム226は、排気マニホルド246、ターボチャージャタービン232、および排出装置248を含むことができる。HP EGRサブシステム228は、第1のまたはHT EGR冷却器250a、第2のまたはLT EGR冷却器250b、およびEGR弁252を含むことができる。同様に、LP EGRサブシステム229は、第1のまたはHT EGR冷却器251a、第2のまたはLT EGR冷却器251b、およびEGR弁253を含むことができる。一実施形態では、LT冷却サブシステム216bは、間接的な給気冷却を使用することができ、例えば、CAC240には、冷却剤対ガスタイプのCACを含めることができる。
HT冷却サブシステム216aは、ファン258を備えた、またはこれのないラジエータ256a、第1のまたはHTの冷却剤ポンプ260a、サーモスタット弁262、第1のHT EGR冷却器250aおよび第2のHT EGR冷却器251a、ならびに第1のまたはHTの冷却剤弁263aを含むことができる。LT冷却サブシステム216bは、ファン258を備えた、またはこれのないラジエータ256b、第2のまたはLTの冷却剤ポンプ260b、第1のLT EGR冷却器250bおよび第2のLT EGR冷却器251b、ならびに第2のまたはLTの冷却剤弁263bを含むことができる。
HT冷却サブシステム216aおよびLT冷却サブシステム216bはまた、冷却サブシステム216a、216b内の1つまたは複数の位置で油圧を検出する1つまたは複数の装置264a〜264iを含む。この場合に複数の検出装置が使用され、これらの検出装置は様々な位置で油圧を検出して、位置間での冷却剤の差圧を求めるために評価され得る信号を出力することができる。検出装置264a〜264iは、制御サブシステム218の一部としてもよく、かつ/またはこれに接続されてもよい(相互接続部は図示していない)。
第1の例では、またHT冷却サブシステム216aに関連して、第1の検出装置264aを、HT冷却剤ポンプ260aの下流でかつエンジン212の上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、ポンプとサーモスタット弁との間にあり、冷却剤をHT EGR冷却器250a、251aに供給する支線を含む合流部のすぐ上流、すぐ下流、または合流部に装置264aを配置することができる。本明細書では、すぐ上流またはすぐ下流という用語には、ある種の装置または部品を観測および/または診断するのに十分なだけ、その装置または部品に近接することが含まれる。この例では、装置264aを使用して、ポンプ260aの動作、サーモスタット262の動作、および/またはHT EGR冷却器250a、251aへの冷却剤の流れを観測および診断することができる。
第2の例では、第2の検出装置264bを、エンジン212の下流でかつHTラジエータ256aの上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、HT冷却剤弁263aのすぐ上流、すぐ下流、またはHT冷却剤弁263aに装置264bを配置して、HT冷却剤弁263aの動作を観測および診断することができる。
第3の例では、第3の検出装置264cを、エンジン212の下流でかつHTポンプ260aの上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、HTラジエータ256aの両端間に並列接続されたバイパス支線内に装置264cを配置して、バイパス支線を通る冷却剤の流れを観測および診断することができる。
第4の例では、第4の検出装置264dを、エンジン212の下流でかつHTポンプ260aの上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、HTポンプ260aのすぐ上流に装置264dを配置して、ポンプ260aの動作を観測および診断することができる。
第5の例では、第5の検出装置264eを、HT EGR冷却器250aの下流でかつHTポンプ260aの上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、HPおよびLP HT冷却剤支線の合流部のすぐ上流、すぐ下流、または合流部に装置264eを配置して、HT EGR冷却器250a、251aの下流の冷却剤の流れを観測および診断することができる。
同様に、第6の例では、またLT冷却サブシステム216bに関連して、第6の検出装置264fを、LT EGR冷却器250bの下流でかつLTラジエータ256bの上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、HPおよびLP LT冷却剤支線の合流部のすぐ上流、すぐ下流、または合流部に装置264fを配置して、LT EGR冷却器250b、251bの下流の冷却剤の流れを観測および診断することができる。
第7の例では、第7の検出装置264gを、LTラジエータ256bの下流でLTポンプ260bの上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、LTポンプ260bのすぐ上流に装置264gを配置して、ポンプ260bの動作を観測および診断することができる。
第8の例では、第8の検出装置264hを、LTポンプ260bの下流でCAC240の上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、LTポンプ260bのすぐ下流に装置264hを配置して、ポンプ260bの動作を観測および診断することができる。
第9の例では、第9の検出装置264iを、CAC240およびLP HT EGR冷却器251bの両方の下流でかつLTラジエータ256bの上流の任意の適切な位置に配置することができる。この例のより具体的な事例では、LT冷却剤弁263bのすぐ上流、すぐ下流、またはLT冷却剤弁263bに装置264iを配置して、LT冷却剤弁263bの動作を観測および診断することができる。
本発明の一実施形態には、エンジンシステムの冷却サブシステムを、その冷却サブシステム内で検出された動的油圧に応じて診断する例示的な方法があり得る。その方法は、例えば、上記の例示的なエンジンシステム10、210の一方または両方の動作環境内で使用可能な1つまたは複数のコンピュータプログラムとして、少なくとも部分的に実行することができる。当業者には、本発明のいくつかの実施形態による方法が、他の動作環境内の他のエンジンシステムを使用して実行することもできると分かるであろう。ここで図3を参照すると、例示的な方法300が、フローチャートの形態で示されている。方法300についての説明を進めるに当たり、図1または図2のエンジンシステム10、210を参照する。
ステップ310で示すように、方法300は任意の適切な態様で開始することができる。例えば、方法300は、図1のエンジンシステム10にあるエンジン12の始動で開始することができる。
ステップ320で、1つまたは複数のエンジンシステムパラメータを観測することができ、そのパラメータを、冷却サブシステムを診断する際に処理され得る入力として使用することができる。例えば、エンジン回転数が、1つまたは複数のシャフト位置センサまたは回転数センサで検出されてもよいし、または冷却剤温度が、1つまたは複数の温度センサまたはサーモスタットセンサで検出されてもよい。
他のセンサおよび関連パラメータを使用することができ、例えば、エンジン燃焼室と連通する圧力センサは、エンジンシリンダ圧力を測定することができ、吸気および排気マニホルド圧力センサは、燃焼室に出入りするガス流の圧力を測定することができ、吸入空気質量流量センサは、吸気サブシステム内の流入空気流を測定することができ、かつ/または吸気マニホルド質量流量センサは、エンジンへの吸気ガスの流れを測定することができる。さらに他のセンサおよび関連パラメータとして、エンジンに向かう吸気ガス流の温度を測定する温度センサ、ターボチャージャに適切に連結されて、ターボチャージャの回転数を測定する回転数センサ、スロットル位置センサ、可変タービンジオメトリ(VTG)位置センサ、排気管温度センサ、排出装置の上流および下流に配置された温度または圧力センサ、ならびに/あるいは排気および/または給気サブシステム内に配置された酸素(O2)センサ、任意の弁の位置を測定する位置センサが含まれ得る。
ここで開示したシステムおよび方法は、本明細書で説明したセンサに加えて、他の任意の適切なセンサおよびそれらに関連するパラメータを含むことができる。例えば、センサには、加速度センサ、車速センサ、駆動系回転数センサ、フィルタセンサ、他の流れセンサ、振動センサ、ノックセンサ、吸排気圧力センサなどが含まれ得る。言い換えると、任意のセンサを使用して、電気的、機械的、および化学的パラメータを含めた任意の適切な物理パラメータを検出することができる。本明細書では、センサという用語には、任意のエンジンシステムパラメータおよび/またはそのようなパラメータの様々な組み合わせを検出するのに使用される、任意の適切なハードウェアおよび/またはソフトウェアが含まれ得る。
ステップ330で、エンジンシステムの冷却サブシステムの油圧を検出することができる。例えば、冷却サブシステム16の任意の適切な位置に配置された検出装置64、264a〜264iを含めた任意の適切な検出装置を使用して、動的油圧を検出することができる。検出装置64、264a〜264iは、冷却サブシステム16、216a、216bの部品または装置内の冷却剤圧力を検出することができる。圧力測定結果は、前処理して、または前処理せずに検出装置64、264a〜264iから制御サブシステム18、218に送ることができる。
ステップ340で、検出した動的油圧から少なくとも1つのパラメータを抽出することができる。本明細書では、動的油圧関連パラメータには、例えば、加速度、周期、振幅、周波数、波長、強度、速度、方向、および/または他の任意の同様なパラメータが含まれ得る。任意の適切な装置により、任意の適切な態様でパラメータを抽出することができる。例えば、検出装置64、264a〜264iは、単に、油圧信号を制御サブシステム18、218に供給するスタンドアロン型センサを含むことができる。あるいは、検出装置64、264a〜264iは、前処理された信号を制御サブシステム18、218に供給する内蔵型の前処理用電子回路を備えたセンサ、および/またはここで開示した方法の一部を実行でき、適切な警告信号を他の車両システムに出力できる内蔵型の処理用電子回路を備えたセンサを含むことができる。
センサ測定値を調整するか、または処理し、そのように調整した、または前処理した出力をさらに処理するために供給するいくつかの公知の技術のいずれかを使用することができる。例えば、圧力信号をフィルタにかける、増幅する、調整するなどが可能である。任意の適切な前処理用ソフトウェアおよび/または装置を使用して、信号の容量を削減し、信号の内容を抽出することができ、処理には、高速フーリエ変換(FFT)、ウエーブレット解析、主成分分析などが含まれ得る。動圧測定値は、デジタル値またはアナログ値とすることができ、動圧測定値には、特定の期間にわたって特定の周波数でサンプリングされた離散圧力測定値を含めることができる。例えば、動圧測定結果を1秒間にわたって1kHzの率でサンプリングして、1,000個の離散した圧力測定値を得ることができる。
ステップ350で、冷却サブシステムの少なくとも1つの状態を分析して、冷却サブシステムについて診断を下すことができる。任意の適切な分析技術により、診断を行うことができる。例えば、制御サブシステム18、218は、検出した圧力信号から抽出されたパラメータ値を受け取り、そのパラメータ値を考慮した命令を実行し、制御信号、警告信号などの適切な出力信号を送ることにより、状態を診断することができる。適切なエンジンシステム試験または較正から実験モデルを作成することができ、この実験モデルは、診断を下すために、例えば、参照テーブル、マップ、式、アルゴリズム、および/または他のエンジンシステムのパラメータ値を含む、または含まない、抽出されたパラメータを用いて処理できる同様なものなどの、変量を使用して何かを表す任意の構成を含むことができる。当然、モデルは用途を特化することができ、特に任意の所与のエンジンシステムの正確な設計および性能仕様に合わせて特化することができる。
別の例では、人工知能またはニューラルネットワークを使用して、前処理したデータの結果を評価することができる。ニューラルネットワークを使用して、ネットワークが前もって学習したシステム状態を検出することができる。ニューラルネットワークは、検出した動的油圧信号から1つまたは複数の圧力関連パラメータを導出するように学習することができる。より具体的には、ネットワークは、所与の入力に対して所与の出力を生成するように学習することができ、経験に基づいた、特定の入力に対する適応的重みづけを含むことができる。ネットワークは、ダイナモメータなどによる、機器を備えた車両のエンジンの実験的エンジンシステム較正に基づいて学習することができる。ニューラルネットワークが学習した後、ニューラルネットワークを制御サブシステム18、218に実装して、検出装置64、264a〜264iおよび他の入力装置から受け取った入力を処理し、例えば、システム装置を制御するための、または警告もしくはアラームを出すためのいくつかの所望の出力信号を生成することができる。
ステップ351〜359は、独立して、または互いに任意に組み合わせて使用できる、ステップ350のいくつかの具体的な例を提示する。
ステップ351で、冷却サブシステム内にある装置の障害に関連する1つまたは複数のパラメータを評価して、冷却サブシステム内の実際の障害を診断または予測することができる。例えば、検出装置64、264a〜264iを、障害を起こしやすい可能性のある、冷却サブシステム16、216a、216b内の任意の装置に配置するか、またはその装置に十分に近接して配置して、装置障害によって発生した特定の信号またはパラメータを確実に検出することができる。例えば、ポンプ60、260、サーモスタット弁62、262、または他の任意の装置の近くに検出装置64、264a〜264iを配置することができる。一例として、圧力信号の周波数領域を評価して、ポンプ60、260に何らかの障害が発生したかどうかを判断することができる。このステップは、例えば、冷却剤温度が大幅に上昇する前の、また、従来からの温度センサが、大幅に上昇した温度測定値によって問題を知らせる前の装置障害の早期検出を可能にする。
ステップ352で、冷却サブシステム内にあるポンプの回転数に関連する1つまたは複数のパラメータを評価して、実際のポンプ回転数を診断または推定することができる。例えば、検出装置64、264a〜264iは、ポンプ60、260に配置されるか、またはこれに十分近接して配置されて、ポンプ60、260によって生成された油圧信号を確実に検出する1つまたは複数の油圧センサを含むことができる。特定の例では、システム10、210の試験および較正などの間に、圧力信号の周波数領域をポンプ回転数と関連付けることができる。このステップは、例えば、冷却剤温度が大幅に上昇する前の、また、従来からの温度センサが、大幅に上昇した温度測定値によって問題を知らせる前のポンプ回転数の変化の早期検出を可能にする。
ステップ353で、体積流量に関連する1つまたは複数のパラメータを観測して、冷却サブシステムの1つまたは複数の部分を通る実際の体積流量を診断または見積もることができる。例えば、検出装置64、264a〜264iは、冷却サブシステム16、216a、216bの1つまたは複数の位置に配置された油圧センサを含むことができ、例えば、乱流「騒音」を検出するために、干渉部でまたはその近くで冷却剤体積流量を測定することが望ましい。特定の例では、特定の流量パラメータに対応する特定の騒音をモデルで処理するか、またはニューラルネットワークに学習させることができ、その後、騒音を観測して体積流量を見積もることができる。冷却サブシステム16、216a、216bを通る体積流量は、再現性のある騒音特性を示す傾向にあるので、体積流量を高い信頼性で推定することができる。
ステップ354で、冷却サブシステム内の体積流量分流に関連する1つまたは複数のパラメータを評価して、体積流量の分流が意図したとおりに実際に行われたかどうかを診断または評価することができる。例えば、冷却剤体積流量分流の有無、または特性を評価することが望ましい、冷却サブシステム16、216a、216bの1つまたは複数の体積流量分流位置に近接して、2つ以上の油圧センサを配置することができる。例えば、図2の検出装置264a,264e、264fをそれらのそれぞれの支流分岐部に近接させて使用することができる。このステップは、ステップ353で説明したのと同様であり得る。冷却サブシステム16、216a、216b内の通常の体積流量分流は、再現性のある騒音特性を示す傾向があるので、体積流量分流を高い信頼性で評価することができる。
ステップ355で、冷却剤温度に関連する、例えば、冷却剤の波の速度などの1つまたは複数のパラメータを評価して、冷却サブシステム内の実際の冷却剤温度を診断する、または推定することができる。例えば、検出装置64、264a〜264iは、冷却剤温度を推定するのが望ましい、冷却サブシステム16、216a、216bの任意の位置に、1つまたは複数のハイドロホンおよび/または油圧センサを含むことができる。特定の例では、装置64、264a〜264iを側枝管またはヘルムホルツ共鳴器内に配置することができ、そのような管または共鳴器の固有振動数は、音響の速度変化とともに変わり、音響の速度変化は、サブシステム内の温度変化に合わせて較正され得る。したがって、検出装置64、264a〜264iは、冷却サブシステム内の従来からの冷却剤温度センサを補う、またはこれにとって代わることができる。
ステップ356で、冷却サブシステムの漏れに関連する1つまたは複数のパラメータを観測して、冷却サブシステム内の実際の漏れを診断または予測することができる。例えば、検出装置64、264a〜264iは、漏れやすい可能性のある、冷却サブシステム16、216a、216b内の位置に配置されるか、またはその位置に十分近接して配置されて、実際の漏れによって発生した音響信号を確実に検出する油圧センサを含むことができる。特定の例では、音響波を電圧信号に変換するために、サブシステムの導管または導波管上の部品に圧電センサを取り付けることができ、電圧信号を増幅し、フィルタにかけ、処理して、加圧された冷却サブシステム内のオリフィス、クラック、および/または腐蝕部を通じてなど、流体漏洩部分から出るエネルギ含量を求めることができる。このステップは、例えば、冷却剤温度が大幅に上昇する前の、また、従来からの温度センサが、大幅に上昇した温度測定値によって問題を知らせる前の漏れの早期検出を可能にする。
ステップ357で、冷却サブシステム内の冷却剤の局所沸騰に関連する1つまたは複数のパラメータを観測して、冷却サブシステム内の実際の沸騰を診断または予測することができる。例えば、検出装置64、264a〜264iは、局所沸騰しやすい可能性のある、冷却サブシステム16、216a、216b内の位置に配置されるか、またはその位置に十分近接して配置されて、実際の沸騰によって発生した圧力信号を確実に検出する1つまたは複数の油圧センサを含むことができる。特定の例では、冷却剤気泡の増大および崩壊により、特定の音響的痕跡が現れ、この音響的痕跡を装置64、264a〜264iによって検出し、制御サブシステム18、218により特定することができる。このステップは、例えば、冷却剤温度が大幅に上昇する前の、また、従来からの温度センサが、大幅に上昇した温度測定値によって問題を知らせる前の局所沸騰の早期検出を可能にする。
ステップ358で、冷却サブシステムの可変制御弁に関連する1つまたは複数のパラメータを観測して、その弁の位置、開いたまたは閉じたパーセントなどを診断する、または見積もることができる。例えば、検出装置64、264a〜264iは、図2の弁263a、263bなどの弁に近接して配置された1つまたは複数の油圧センサを含むことができる。このステップはステップ353と同様であり、一例にすぎないが、体積流量を分析して、弁が開いたかどうかを評価することができる。
ステップ359で、冷却サブシステム内のキャビテーションに関連する1つまたは複数のパラメータを観測して、冷却サブシステム内の実際のキャビテーションを診断または予測することができる。例えば、検出装置64、264a〜264iは、キャビテーションを起こしやすい可能性のある、冷却サブシステム16、216a、216b内の位置に配置されるか、またはその位置に十分近接して配置されて、実際のキャビテーションによって発生した圧力信号を確実に検出する1つまたは複数の油圧センサを含むことができる。このステップは、例えば、損傷が発生し、冷却剤温度が大幅に上昇する前の、また、従来からの温度センサが、大幅に上昇した温度測定値によって問題を知らせる前のキャビテーションの早期検出を可能にする。
ステップ360で、方法300を任意の適切な態様で終了することができる。例えば、方法300は、図1または図2のエンジンシステム10、210のエンジン12、212の停止で終了することができる。
冷却サブシステム、またはエンジンシステムの他の任意のサブシステムもしくは部分の任意の適切な制御に対する入力として、方法300を使用することができる。一例では、方法300を使用して、可変ポンプ回転数の閉ループ制御用の入力パラメータを生成することができる。別の例では、その方法を使用して、制御可能なまたは能動的なサーモスタットを通る冷却剤の流れを制御することができる。もちろん、可変ポンプ回転数またはサーモスタットを通る流れの制御は、エンジン回転数、負荷、車速、吸気マニホルド温度、および/または他の任意のパラメータなどの他のパラメータを必要とすることもある。
図1または図2のシステム10、210またはサブシステム16、216a、216bなどの製造品の一部として、ならびに/あるいは制御サブシステム18、218により保存および/または実行できるコンピュータプログラムの一部として、方法300またはその任意の部分を実施することができる。コンピュータプログラムは、能動的および非能動的両方の様々な形態で存在することができる。例えば、コンピュータプログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、実行可能コード、または他のフォーマットのプログラム命令で構成されるソフトウェアプログラム、ファームウェアプログラム、またはハードウェア記述言語(HDL)ファイルとして存在することができる。記憶装置およびシグナル(signal)を含めたコンピュータで使用可能な媒体上に、上記のいずれかを圧縮または非圧縮の形態で具現化することができる。例示的なコンピュータで使用可能な記憶装置には、通常のコンピュータシステムRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリーメモリ)、EPROM(消去可能、プログラム可能ROM)、EEPROM(電気消去可能、プログラム可能ROM)、および磁気または光ディスクあるいは磁気または光テープが含まれる。
1つまたは複数のコンピュータプログラム、および参照テーブル、式、アルゴリズム、マップ、モデルなどとしてメモリ内に保存された様々なエンジンシステムデータまたは命令によって、ここに開示した方法の少なくとも一部を使用可能にすることができる。いずれにせよ、制御サブシステム18、218は、センサから入力信号を受け取り、センサ入力信号を考慮して命令またはアルゴリズムを実行し、適切な出力信号を様々なアクチュエータに送ることにより、エンジンシステムパラメータを制御することができる。
本発明の実施形態についての上記の説明は、本質的に単なる例示であり、したがって、その変形形態を本発明の趣旨および範囲から逸脱するとみなすべきではない。