本発明は、概して、癌の処置におけるトポイソメラーゼI(トポI)阻害剤の有効性を予測するための診断マーカーに関する。具体的には、本発明の一態様は、癌の処置におけるトポイソメラーゼI(トポI)阻害剤の有効性を判断するための方法に関する。具体的には、本発明は、トポIポリペプチドがキナーゼDNA−PKによりセリン10(S10)においてリン酸化され、BRAC1/BARD1ヘテロ2量体によりそのユビキチン化およびその後続の分解をもたらすという発見に基づく。トポIポリペプチド(本明細書において「リン酸−トポI」と呼ばれる)のリン酸化の存在、具体的には、生体試料におけるトポIポリペプチド(本明細書において「リン酸−S10トポI」と呼ばれる)のセリン10(S10)アミノ酸残基におけるリン酸化が、カンプトセシン(CPT)またはトポテカンおよびイリノテカン等のCTP類似体およびその誘導体等のトポI阻害剤に対して、耐性および/または非反応性を示すことを、本発明者は発見した。したがって、本発明の一態様は、リン酸−トポIの検出に関し、具体的には、CTPおよびその類似体等のトポI阻害剤による薬剤有効性の予後決定因子としての、対象における、または癌を患っている対象もしくは患っている可能性のある対象から採取した生体試料におけるリン酸−S10トポIの検出に関する。
したがって、本発明の一態様は、癌を患っている対象もしくは患っている可能性のある対象における、またはこのような対象から採取した生体試料におけるリン酸−トポIの存在、具体的には、リン酸−S10トポIの存在を検出および分析するための、方法、キット、機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体に関し、対象または生体試料が、リン酸−トポI、具体的には、トポIポリペプチドのセリン10(S10)残基におけるリン酸化(すなわち、リン酸−S10トポIの存在)を含むと判断される場合、対象または生体試料を入手した対象は、トポIポリペプチドにおける対応するS10残基がリン酸化されない癌を患っている患者に比べて、カンプトセシン(CPT)またはトポテカンおよびイリノテカ等のCTP類似体ならびにその誘導体等のトポI阻害剤に対して非反応であり得ると識別される。
本明細書に開示する本発明の全態様では、トポIポリペプチドのリン酸化状態を判断および測定するための任意の手段が、本発明における使用のために包含される。いくつかの実施形態では、トポIポリペプチドのリン酸化状態は、当業者に既知である任意の手段によって検出され、体内、体外、または生体外で検出可能である。
別の実施形態では、癌細胞が、リン酸化トポIポリペプチドの最小量、またはその実質的な欠如、またはその非存在、具体的には、トポIポリペプチドのセリン10(S10)残基上のリン酸化の非存在または実質的欠如(すなわち、リン酸−S10トポIの非存在)を含む場合、癌または癌細胞は、トポI阻害剤に対して反応し得るものとして識別され、この場合、癌細胞は、対象に存在することが可能であるか(例えば、体内検出方法を使用して検出される)、または代替実施形態では、癌細胞は、対象から採取した生体試料に存在可能である(例えば、体外または生体外検出方法を介して検出される)。
したがって、本発明の別の態様は、トポI阻害剤に対して反応する対象を識別するための方法を提供し、例えば、この場合、対象は、例えばCTPまたはトポテカンおよびイリノテカン等の類似体ならびに他の類似体またはその誘導体であるがこれらに限定されないトポI阻害剤により癌の処置を現在受けているか、または受けるように選択されている。
本発明の一態様は、トポI阻害剤に対して反応する対象を識別するための方法であって、対象におけるまたは対象から採取する癌細胞を含む生体対象におけるトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベルを測定するステップと、トポIポリペプチドのリン酸化のレベルを検出するステップ、具体的には、トポIポリペプチドのセリン10(S10)におけるリン酸化のレベルを検出するステップとを含む方法に関し、トポIポリペプチドが、例えば残基S10においてリン酸化される場合、リン酸化トポIポリペプチドが欠如する、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドが欠如する癌を患っている対象に比べて、トポイソメラーゼI阻害剤に対してより非反応であり得る癌を対象が患っていることが示される。
また、本発明の別の態様は、トポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応である癌の可能性を識別するための方法であって、少なくとも1つの癌細胞においてトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベルを測定するステップ(すなわち、トポIポリペプチドのリン酸化状態を判断するステップ)を含み、リン酸化の存在は、トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在が検出される癌に比べて、トポイソメラーゼ阻害剤に対して非反応であり得ると癌を識別する方法に関する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、対象に存在する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、生体試料に存在する。他の実施形態では、癌細胞は、癌幹細胞である。
本発明の別の態様は、対象における癌を処置するための方法であって、 (i)対象から入手した癌細胞を含む生体試料におけるトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベルを測定するステップと、(ii)トポイソメラーゼIポリペプチドのレベルを検出するステップであって、トポイソメラーゼIポリペプチドがリン酸化される場合、癌は、トポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応であると識別されるか、またはトポイソメラーゼIポリペプチドがリン酸化されない場合、癌は、トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得ると識別されるステップと、(iii)トポイソメラーゼI阻害剤以外の抗癌剤を対象に投与するステップであって、癌は、トポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応であると識別されるステップとを含む方法に関する。いくつかの実施形態では、トポI阻害剤に対して反応すると識別された対象は、その用語が本明細書に説明されるように、トポI阻害剤で処置可能であるが、一方、トポI阻害剤に対して無反応であると識別された対象は、トポI阻害剤ではない当業者に既知の任意の抗癌処置で処置可能であるか、または代替として、トポI阻害剤に対して無反応であると識別されたこのような対象には、トポI阻害剤に対する細胞の感受性を増加させる薬剤(すなわち、トポI阻害剤感受性薬剤)と組み合わせて(すなわち、併用して)トポI阻害剤を投与可能である。いくつかの実施形態では、例えば、トポI阻害剤は、トポIポリペプチドのS10残基を脱リン酸化する薬剤と同時投与可能であるか、または代替として、抗リン酸−S10トポI抗体またはDNA−PKの拮抗薬等のトポI上のS10残基のリン酸化を阻害する薬剤と同時投与可能である。
本発明の一態様および本明細書に説明する全ての他の態様では、機械を使用して、生体試料におけるトポIポリペプチドのリン酸化状態を判断することができ、例えば、対象からの生体試料に関するデータを入手するための機械は、 生体試料を保持する生体試料容器と、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在を検出するように、例えば、出力データ、いくつかの実施形態では、コンピュータ可読媒体フォーマットの出力データを生成する生体試料におけるリン酸−S10トポIを検出するように構成される判断モジュールと、判断モジュールからの出力データを格納するように構成されるストレージ機器と、判断モジュールからの出力データを、格納された参照データおよび対照データ等のストレージ機器上に格納されるデータと比較するように適合される比較モジュールと、クライアントコンピュータにおいてユーザのために読み出されたコンテンツのページを表示ためのディスプレイモジュールとを備え、(i)読み出されたコンテンツは、トポイソメラーゼIポリペプチドの存在であり、および/または、(ii)読み出されたコンテンツは、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在であって、例えば、読み出されたコンテンツは、リン酸−S10トポIの存在または非存在であり、および/または(iii)読み出されたコンテンツは、トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在、例えばリン酸−S10トポIの非存在であって、これは、対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得るという信号であり、および/または(iv)読み出されたコンテンツは、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在等のトポイソメラーゼIのリン酸化の存在であって、これは、対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応であり得るという信号である。
本発明の一態様は、対象がトポI阻害剤に対して反応するかを判断するために使用可能であるコンピュータシステムである。このようなある実施形態では、コンピュータシステムは、判断モジュールに接続され、生物標本に関する判断モジュールからの出力データを入手するように構成され、判断モジュールは、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在、例えば、対象内における、または対象から入手された生体試料におけるリン酸−S10トポIポリペプチドの存在を判断するように構成され、コンピュータシステムは、判断モジュールからの出力データならびに参照データを格納するように構成される(a)ストレージ機器を備え、ストレージ機器は、(b)比較モジュールに接続され、比較モジュールは、一実施形態では、ストレージ機器上に格納される出力データを、格納された参照データと比較するように適合され、代替実施形態では、出力データをそれ自体を比較するように適合され、比較モジュールは、報告データを生成し、クライアントコンピュータ上でユーザのために読み出されたコンテンツ(すなわち、比較モジュールからの報告データ)のページを表示するための(c)ディスプレイモジュールに接続され、読み出されたコンテンツは、(i)トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在であって、例えば、読み出されたコンテンツは、リン酸−S10トポIの存在または非存在であることと、(ii)トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在、例えばリン酸−S10トポIの非存在と、(iii)リン酸−S10トポIポリペプチドの存在等のトポイソメラーゼIのリン酸化の存在と、(iv)対象が、陰性リン酸化状態を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより非反応であり得ることを示す陽性試験結果(すなわち、陽性S10トポIリン酸化状態等の陽性リン酸化状態)と、(v)対象が、陽性リン酸化を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより反応し得ることを示す陰性試験結果(すなわち、陰性S10トポIリン酸化状態等の陰性リン酸化状態)であるのうちの任意の1つまたは組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、比較モジュールは、ストレージ機器上に格納された出力データを、それ自体または格納された参照データと比較し、陽性試験結果を示す陽性S10トポIリン酸化状態(すなわち、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在)を計算し、報告データを生成して、対象が、陰性リン酸化状態を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより非反応であり得ることを示し、比較モジュールからの報告データは、ディスプレイモジュールから読み出され、ディスプレイモジュール上に表示される。
本発明の一態様および本明細書に説明する全ての他の態様では、コンピュータ可読媒体を使用して、癌を患っている対象または癌の危険性のある対象からトポIポリペプチドのリン酸化状態を判断することができ、例えば、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ上で方法を実装するために判断モジュールおよび比較モジュールを含むソフトウェアモジュールを規定するために、コンピュータ可読命令がその上に記録され、上記方法は、 リン酸−S10トポIポリペプチドの存在または非存在等のトポIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在を測定した判断モジュールから参照データおよび出力データを格納するように構成されるストレージ機器と、報告データを生成する比較モジュールであって、ストレージ機器上に格納されたデータを比較するように、例えば、判断モジュールからの出力データを、それ自体または代替として参照データと比較するように適合される比較モジュールと、クライアントコンピュータ上において、ユーザのための、比較モジュールからの報告データである読み出されたコンテンツのページを表示するためのディスプレイモジュールとを備え、読み出されたコンテンツは、(i)トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在であって、例えば、読み出されたコンテンツは、リン酸−S10トポIの存在または非存在であることと、(ii)トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在、例えばリン酸−S10トポIの非存在と、(iii)リン酸−S10トポIポリペプチドの存在等のトポイソメラーゼIのリン酸化の存在と、(iv)対象が、陰性リン酸化状態を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより非反応であり得ることを示す陽性試験結果(すなわち、陽性S10トポIリン酸化状態等の陽性リン酸化状態)と、(v)対象が、陽性リン酸化を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより反応し得ることを示す陰性試験結果(すなわち、陰性S10トポIリン酸化状態等の陰性リン酸化状態)のうちの任意の1つまたは組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法において有用なトポI阻害剤は、カンプトセシン(CPT)、またはトポテカンおよびイリノテカン等のCTP類似体およびその誘導体、CTP化合物、CTP代謝物、CTP誘導体、ならびにその模倣剤を含むがこれらに限定されないトポイソメラーゼのタンパク質活性等の生物活性を阻害する任意の薬剤または物質である。
代替実施形態では、トポI阻害剤に対して反応すると識別される対象には、例えば、CTPまたはその類似体等であるがこれらに限定されないトポI阻害剤を投与可能である。
一実施形態では、癌は、SCLC、結腸もしくは卵巣癌、または難治性癌、例えば、乳癌もしくは子宮頸癌である。他の実施形態では、本明細書に開示する方法での処置に有用な癌は、トポI阻害剤により処置可能であるか、またはトポI阻害剤による処置が望ましい任意の癌であり、消化管癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌、非小細胞肺癌、神経系の癌、腎臓癌、網膜癌、皮膚癌、肝臓癌、膵臓癌、性器−膀胱癌、および膀胱癌を含むがこれらに限定されない上皮性起源のものを含む癌を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、癌は、非小細胞肺癌である。別の実施形態では、癌は、癌のトリプルネガティブサブタイプであり、これは、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体(ER)の発現を欠き、またHer−2増幅も欠く。
また、腫瘍細胞型は、消化管癌、胃癌、扁平上皮細胞癌(SCC)、頭頸部癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌(SCLC)、リンパ腫、肉腫、原発性および転移性黒色腫、胸腺腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、神経系の癌、脳癌、骨髄癌、骨癌、腎臓癌、子宮癌、子宮頸癌、結腸癌、網膜癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、食道癌、精巣癌、子宮頸癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、性器−膀胱癌、消化管癌、歯肉癌、舌癌、腎臓癌、鼻咽頭癌、胃癌、子宮内膜癌および腸腫瘍細胞癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、および膵臓癌等の腺癌から成る群からも選択可能である。
定義
便宜上、本出願全体(明細書、実施例、および添付の請求項)において用いる一定の用語をここでまとめる。他に定義されない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。
用語の「トポイソメラーゼI」は、明細書において「トポI」と交換可能使用され、配列番号2によりコード化されるポリペプチドと、機能の構造に悪影響を及ぼさないその同類置換、付加、欠失を含むその変異体および同族体とを指す。トポイソメラーゼIは、当技術分野においてTOPIまたはTOP1と呼ばれる。ヒトトポIは、GenBank Accession No: BC136297.1(配列番号 3)またはGI:223460079に対応する核酸によりコード化され、ヒトのトポIポリペプチドは、参照配列番号 NM_003286またはNP_003277.1に対応するタンパク質配列に対応する。DNAトポイソメラーゼは、転写中のDNAのトポロジー状態を制御および改変する酵素であり、DNAの単鎖の一時的な切断および再結合を触媒し、これにより、鎖が相互に通過することが可能になり、DNAのトポロジーが改変される。TOP1の遺伝子は、染色体20に局在し、染色体1および22上に存在する偽遺伝子を有する。トポIポリペプチドの生物活性は、DNAの単鎖の一時的な切断および結合を触媒するためのポリペプチド酵素活性を指し、この場合、1つの鎖が、相互に通過するため、DNAのトポロジーが改変される。
用語の「阻害剤」は、本明細書で使用する際、タンパク質生物活性の阻害をもたらす任意の薬剤または物質を指す。遺伝子の活性レベルに関連して使用する「減少」または「阻害」は、タンパク質もしくは核酸レベル、または細胞、細胞抽出物、もしくは細胞上清における生物活性における低下を指す。例えば、このような阻害は、その内因性リガンドに対するポリペプチド結合の減少に起因するか、またはポリペプチドに対する阻害剤の非競合的結合によって、標的リガンド等の触媒活性または親和性を低下させ得るか、または代替として、RNA安定性、転写、または翻訳、タンパク質分解の増加、またはRNA干渉を低下させ得る。好ましくは、減少は、対照条件下の発現または活性のレベルの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、またはさらに少なくとも約90%である。
遺伝子またはタンパク質の発現または活性における「増加」は、タンパク質もしくはポリペプチド、または細胞、細胞抽出物、もしくは細胞上清における核酸のレベルまたは活性の正の変化を意味する。例えば、このような増加は、増加したRNA安定性、転写、もしくは翻訳、または減少したタンパク質分解に起因し得る。好ましくは、この増加は、対照条件下の発現または活性のレベルの少なくとも5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、または少なくとも約500%以上である。
用語の「トポI阻害剤」は、本明細書で使用する際、遺伝子産物またはトポイソメラーゼIポリペプチドのポリヌクレオチドに直接または間接的に作用することによってその生物学的機能のいくつか、全部、または一部を媒介する任意の物質を指す。トポI阻害剤は、トポIポリペプチドを直接または間接的に不活性化することが可能である。
トポI阻害剤の模範的な例には、例えば、カンプトセシン(CTP)ならびにイリノテカンおよびトポテカンを含むがこれらに限定されないその類似体、ならびにその誘導体が含まれるがこれらに限定されず、これら用語は本明細書に説明される。
用語の「CTP」は、CTPまたはその誘導体もしくは類似体の「模倣剤」を含むことが可能であり、これは、CTPに構造的に類似し得ないが、CTPの活性または治療機構を模倣し得る化合物か、または体外および体内で構造的に類似するCTP化合物を含む。
本明細書で使用する際、用語の「有効」および「有効性」または「反応」は、トポI阻害剤等の薬剤の薬理学的有効性と生理学的安全性との両方を含む。「薬理学的有効性」は、対象において所望の生物学的効果をもたらす処置の能力を指す。「生理学的安全性」は、処置の投与から生じる毒性レベルまたは細胞、器官、および/もしくは生物レベルにおける他の有害な生理学的効果(しばしば副作用と呼ばれる)を指し、「有効性が低い」は、処置が、治療的に有意なより低レベルの薬理学的有効性および/または治療的により大きいレベルの有害な生理学的効果をもたらすことを意味する。
用語の「有効性の欠如」、「無反応性」、「難治性」、または「非反応性」は、本明細書において交換可能に使用され、対象において所望の生物学的効果をもたらす薬剤または処置の能力を指す。
用語の「リン酸化状態」は、本明細書で使用する際、タンパク質および/または試薬のリン酸化の絶対程度または相対程度を含む。用語のトポIのリン酸化状態は、トポIポリペプチドにおける全てのリン酸化部位上のリン酸化の程度であり、トポIポリペプチドにおけるセリン10(S10)アミノ酸残基上のリン酸化の程度(または、レベル)を含む。
タンパク質の活性に関連して使用する場合の用語の「活性」には、本明細書で使用する際、酵素活性、結合親和性、および/または翻訳語活性、具体的には、リン酸化が含まれる。
用語の「標的」は、本明細書で使用する際、厳しいハイブリダイゼーション条件下で1つ以上のプローブで結合され得るポリヌクレオチドを意味し得る。
用語の「物質」は、任意の構造分子または分子の組み合わせを指す。
用語の「薬物」、「薬剤」、または「化合物」は、本明細書で使用する際、病気または病状を処置または予防または管理するためにヒトに投与される化学物質もしくは生物学的製剤、または化学物質もしくは生物学的製剤の組み合わせを指す。化学物質または生物学的製剤は、好ましくは、必ずしも低分子量化合物とは限らず、より大きな化合物、例えば、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにその修飾および組み合わせを含むがこれらに限定されない核酸、アミノ酸、または炭水化物のオリゴマーであってもよい。
用語の「薬剤」は、投与される段階では細胞に通常不在または存在しない任意の物質を指す。薬剤は、化学物質、小分子、核酸配列、核酸類似体、タンパク質、ペプチド、アプタマー、抗体、またはそのフラグメントを含む群から選択され得る。核酸配列は、RNAまたはDNAであってもよく、単鎖または2本鎖であってもよく、関連のタンパク質をコード化する核酸、オリゴヌクレオチド、核酸類似体、例えばペプチド−核酸(PNA)、疑似相補性PNA(pc−PNA)、ロックされた核酸(LNA)等を含む群から選択可能である。このような核酸配列には、例えば、転写リプレッサーとして機能するタンパク質をコード化する核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、小阻害核酸配列、例えば、RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチド等を含むがこれらに限定されないものを含むがこれらに限定されない。タンパク質および/またはペプチドもしくはそのフラグメントは、例えば、変異タンパク質、治療用タンパク質、短縮タンパク質に限られない任意の関連のタンパク質であることが可能であり、タンパク質は、通常、細胞において不在であるか、またはより低いレベルで発現される。また、タンパク質は、変異タンパク質、遺伝子組み換えタンパク質、ペプチド、合成ペプチド、組み換えタンパク質、キメラタンパク質、抗体、中心体、3重体、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、修飾タンパク質、およびそのフラグメントから成る群からも選択可能である。薬剤は、薬剤が細胞に接触しその効果を誘起する媒質に適用され得る。代替として、薬剤は、核酸配列の細胞内への導入ならびに細胞内における核酸および/またはタンパク質環境刺激の産生をもたらすその転写の結果として、細胞内における細胞内であってもよい。いくつかの実施形態では、薬剤は、合成および天然に存在する非タンパク質性物質を含むがこれらに限定されない任意の化学物質、物質、または部分である。一定の実施形態では、薬剤は、化学的部分を有する小分子である。例えば、化学的部分には、マクロライド、レプトマイシン、および関連の天然産物、またはその類似体を含む、非置換または置換アルキル部分、芳香族部分、またはヘテロシクリル部分が含まれる。薬剤は、所望の活性および/または特性を有することが知られ得るか、または多様な化合物のライブラリから選択可能である。
用語の「拮抗薬」は、タンパク質、そのポリペプチド部分、またはポリヌクレオチドの発現または活性を阻害可能である任意の薬剤または物質を指す。したがって、拮抗薬は、転写、翻訳、転写後もしくは翻訳後プロセッシングを防止するか、あるいは直接作用または間接作用のいずれかにより、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドの活性を何らかの方法で阻害するように作用し得る。拮抗薬は、例えば、核酸、ペプチド、または任意の他の適切な化合物もしくは分子、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。加えて、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドの活性を間接的に弱める場合、拮抗薬が、細胞分子の活性に影響を及ぼし、次いで、細胞分子の活性が、調節因子、またはタンパク質、ポリペプチド、もしくはポリヌクレオチド自体としての役割を果たし得ることを理解されたい。同様に、拮抗薬は、分子の活性に影響を及ぼしてもよく、分子の活性は、それ自体、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドによる調節または調整を受ける。
用語の「阻害する」は、タンパク質またはトポイソメラーゼIのポリペプチドあるいはその変異体の発現または活性に関連して本明細書で使用する際、発現および/または活性の完全な阻害を必ずしも意味するわけではない。むしろ、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドの発現または活性は、所望の効果を産生するのに十分な程度、または時間、阻害される。
用語の「タンパク質結合部分」は、本明細書において「タンパク質結合分子」または「タンパク質結合物質」と交換可能に使用され、タンパク質の特異親和性を有する任意の物質を指す。また、用語の「タンパク質結合分子」には、抗体に基づく結合物質および抗体も含まれ、免疫グロブリン分子と、免疫グロブリンの分子、例えば、Psapタンパク質に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子の免疫学的に活性な決定因子とが含まれる。用語の「抗体に基づく結合部分」は、例えば、任意のイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgE等)の全抗体を含むように意図され、これもPsapタンパク質と特異的に反応するそのフラグメントを含む。抗体は、従来の技法を使用してフラグメント化が可能である。したがって、用語は、一定のタンパク質と選択的に反応可能である抗体分子の分解開裂または組み換え調製部分の断片を含む。このようなタンパク質分解および/または組み換えフラグメントの非限定的な例として、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、dAbs、ならびにペプチドリンカーにより結合されるVLおよびVHドメインを含有する単鎖抗体(scFv)が挙げられる。scFvは、2つ以上の結合部位を有する抗体を形成するように共有結合または非共有結合可能である。したがって、「抗体に基づく結合部分」には、多クローン抗体、単クローン抗体、または抗体の他の精製調製、および組み換え抗体換え抗体が含まれる。用語の「抗体に基づく結合部分」は、ヒト化抗体、2重特異性抗体、および抗体分子から得られる少なくとも1つの抗原結合決定因子を有するキメラ分子を含むように意図される。好適な実施形態では、抗体に基づく結合部分は、検出可能に標識される。いくつかの実施形態では、「タンパク質結合分子」は、測定されるタンパク質と相互作用する補助因子または結合タンパク質、例えば、トポIポリペプチドタンパク質に対する補助因子または結合タンパク質である。
用語の「標識抗体」は、本明細書で使用する際、検出可能な手段によって標識される抗体を含み、酵素的に、放射能的に、蛍光的に、および化学発光的に標識される抗体を含むが、これらに限定されない。また、抗体は、c−Myc、HA、VSV−G、HSV、FLAG、V5、またはHIS等の検出可能なタグにより標識可能である。組織試料に存在するPsapまたはTsp−1の検出および定量化は、検出可能に標識された抗体から発せられる信号の強度に関連する。
用語の「特異親和性」または「特異的に結合する」または「特異的結合」は、本明細書において交換可能に使用され、所望のポリペプチドを認識および結合するが、試料、例えば、本発明のポリペプチド、例えば、リン酸−S10トポIポリペプチドを天然で含む生体試料における他の分子を実質的に認識および結合しないタンパク質結合分子または抗体等の物質を指す。
用語の「抗体」は、抗原を結合可能である免疫グロブリンタンパク質であることを意味する。抗体は、本明細書で使用する際、抗体フラグメント、例えば、関連の抗原または抗原フラグメントを結合可能であるF(ab’)2、Fab’、Fabを含むことを意味する。
用語の「ヒト化抗体」は、完全抗体分子を説明するように本明細書において使用され、すなわち、2つの完全な軽鎖および2つの完全な重鎖、ならびに抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvのみから成る抗体から構成され、CDRは、非ヒト源由来であり、Ig分子の残りの部分またはそのフラグメントは、ヒト抗体由来であり、好ましくは、ヒト抗体をコード化する核酸配列から産生される。
用語の「ヒト抗体」および「ヒト化抗体」は、その抗体分子の全部分が、ヒト抗体をコード化する核酸配列由来である抗体を説明するように本明細書において使用される。このようなヒト抗体は、このような抗体がヒト対象における免疫反応をほとんどまたは全く引き出さないため、抗体療法における使用に最も望ましい。
用語の「キメラ抗体」は、用語の「ヒト化抗体」の定義において上述したように、抗体分子ならびに抗体フラグメントを説明するように本明細書において使用される。用語の「キメラ抗体」は、ヒト化抗体を包含する。キメラ抗体は、第1の哺乳類種由来の重鎖または軽鎖アミノ酸配列のうちの少なくとも1つの部分と、第2の異なる哺乳類種由来の重鎖または軽鎖アミノ酸配列のうちの別の部分とを有する。いくつかの実施形態では、可変領域は、非ヒト哺乳類種由来であり、定常領域は、ヒト種由来である。具体的には、キメラ抗体は、可変領域をコード化する非ヒト哺乳類からの9ヌクレオチド配列および抗体の定常領域をコード化するヒトからのヌクレオチド配列から産生されることが好ましい。
本発明の内容において、用語の「プローブ」は、構造において異なる標的分子を検出可能に区別可能である分子を指す。検出は、使用するプローブの種類および標的分子の種類に依存して、多種多様の異なる方式で達成可能であり、したがって、例えば、検出は、標的分子の活性レベルの区別に基づいてもよいが、好ましくは、特異的結合の検出に基づく。このような特異的結合の例として、抗体結合および核酸プローブハイブリダイゼーションが挙げられる。したがって、例えば、プローブには、酵素基質、抗体および抗体フラグメント、ならびに好ましくは核酸ハイブリダイゼーションプローブが含まれてもよい。
用語の「標識」は、アッセイ試料における標的ポリヌクレオチドの存在を示す検出可能な信号を生成可能である組成物を指す。適切な標識には、放射性同位元素、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、蛍光分子、化学発光部分、磁性粒子、生物発光部分等が含まれる。したがって、標識は、分光手段、光化学手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、または化学的手段によって検出可能である任意の組成物である。
本明細書で使用する際、リン酸化の参照レベルに関連して使用する場合の用語の「参照データ」は、トポIのリン酸化のレベル、具体的には、トポI阻害剤に対して無反応または反応すると識別されている少なくとも1つの参照生体試料または少なくとも対象もしくは対象群からの生体試料の群におけるトポIのセリン10上のリン酸化のレベルを指す。一例として、陽性参照レベルは、リン酸化の程度のレベル、具体的には、試料がトポI阻害剤に対して無反応であることを示すトポIのS10におけるリン酸化のレベルであり、一方、陰性参照レベルは、リン酸化の程度のレベル、具体的には、試料がトポI阻害剤に対して反応することを示すトポIのS10におけるリン酸化のレベルである。いくつかの実施形態では、陽性参照レベルは、100%に正規化され、この場合、全トポIポリペプチドの100%がリン酸化され、例えば、トポIの100%が、リン酸−S10−トポIとして存在し、いくつかの実施形態では、陰性参照レベルは、0%に正規化され、この場合、全トポIポリペプチドの0%がリン酸化され、例えば、トポIの0%が、リン酸−S10−トポIとして存在する。したがって、陰性参照レベルに比べて、生体試料におけるトポIのS10におけるリン酸化のレベルの少なくとも1%から100%の増加等のトポIのリン酸化のレベルにおける増加であって、1%から100%の全ての割合、すなわち、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%の全ての割合を含む増加は、生体試料がトポI阻害剤に対して非反応であり得る可能性の程度(すなわち、%)を示す。言い換えると、全ての利用可能なトポIタンパク質の50%が、リン酸−S10トポIであると検出される場合、トポI阻害剤の有効性は、全ての利用可能なトポIタンパク質の0%がリン酸−S10トポIとして存在する(すなわち、トポIがS10においてリン酸化されない)場合のトポI阻害剤の有効性に比べて、50%低下し得る。
用語の「支持体」は、ビーズ、粒子、試験紙、繊維、フィルタ、膜、およびスライドガラス等のシランまたはケイ酸塩支持体等の従来の支持体を指す。
用語の「癌」は、本明細書で使用する際、ヒトまたは動物の対象における細胞増幅疾患を指す。
用語の「腫瘍」または「腫瘍細胞」または「癌細胞」は、本明細書において交換可能に使用され、無制限増殖を行う細胞集団または組織型または細胞型を指す。
用語の「組織」は、無傷細胞、血液、血漿および血清等の血液製剤、骨、関節、筋肉、平滑筋、および器官を含むように意図される。
本明細書で使用する用語の「トリプル−ネガティブサブタイプ」は、癌、具体的には乳癌の任意のサブタイプを指し、これは、プロゲステロン受容体(PR)の発現を欠き、エストロゲン受容体(ER)を欠き、またHer−2増幅を欠く。
本明細書で使用する際、用語の「生体試料」は、また、細胞もしくは細胞集団または対象からの組織もしくは体液の量を指す。多くの場合、試料は、対象から採取されているが、用語の「生体試料」は、体内で分析される、すなわち、対象から採取されない細胞または組織も指すことが可能である。しばしば、「生体試料」は、対象からの細胞を含有するが、本用語は、タンパク質リン酸化レベルの測定に使用可能である血液、唾液、または尿の非細胞画分等の、非細胞生物学的材料も指すことが可能である。本明細書で使用する際、「生体試料」または「組織試料」は、例えば、血液、血漿、血清、腫瘍生検、尿、便、痰、髄液、胸膜液、乳頭吸引液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、および尿生殖路の外部切片、涙、唾液、母乳、細胞(血球を含むがこれに限定されない)、腫瘍、器官、およびまた体外細胞培養成分の試料を含むがこれらに限定されない個体から単離される組織または体液の試料を指す。いくつかの実施形態では、生体試料は、原発腫瘍、2次性腫瘍、または転移性腫瘍の切除、気管支鏡生検、またはコアニードル生検、あるいは胸膜液からの細胞ブロックからのものである。加えて、穿刺吸引生体試料も有用である。いくつかの実施形態では、生体試料は、原発腹水細胞である。試料は、新鮮であるか、凍結されるか、固定もしくは任意によりパラフィン包理されるか、凍結されるか、または例えば、生体試料におけるポリペプチドのリン酸化状態を保存するための方法を含む他の組織保存方法を受けることが可能である。また、生体試料は、タンパク質または細胞を含む生体組織または体液の試料も意味することが可能である。このような試料には、対象または動物から単離された組織が含まれるが、これに限定されない。また、生体試料には、生検試料および剖検試料等の組織切片、組織学的目的により取られた凍結切片、血液、血漿、血清、痰、便、涙、粘液、毛髪、ならびに皮膚が含まれ得る。また、生体試料には、患者組織由来の移植片ならびに初代細胞培養および/または形質転換細胞培養が含まれる。生体試料は、対象から細胞の試料を採取することによって提供され得るが、以前単離された細胞(例えば、別の時間、および/または別の目的で別のヒトにより単離された細胞)を使用することによって、または体内で本発明の方法を実行することによっても達成可能である。また、処置または転帰履歴を有するもの等の記録組織を使用してもよい。生体試料には、組織生検、擦取(例えば、口腔擦取)、全血、血漿、血清、尿、唾液、細胞培養、または脳脊髄液が含まれるが、これらに限定されない。また、生体試料には、組織生検、細胞培養が含まれる。試料は、対象から細胞の試料を採取することによって入手可能であるが、以前単離された細胞(例えば、別のヒトによって単離された細胞)を使用することによって、または体内で本発明の方法を実行することによっても達成可能である。
用語の「悪性腫瘍」および「癌」は、本明細書において交換可能に使用され、細胞の制御されない異常成長を特徴とする病気を指す。癌細胞は、局所的に、または血流およびリンパ系を通って身体の他の部分に広がることが可能である。用語の「悪性腫瘍」または「癌」は、本明細書において交換可能に使用され、その組織において制御が困難な、または制御されない正常細胞または異常細胞の増殖と、その全身における効果を特徴とする哺乳類における器官または組織の任意の病気を指す。定義の範囲内の癌疾患には、良性腫瘍、異形成、過形成、ならびに例えば、癌の発生に先行する白板症のような転移成長または任意の他の形質転換を示す新生物が含まれる。
用語の「患者」、「対象」、および「個体」は、本明細書において交換可能に使用され、動物、具体的には、予防処置を含む処置が提供されるヒトを指す。用語の「対象」は、本明細書で使用する際、ヒトおよび非ヒト動物を指す。用語の「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳類」は、本明細書において交換可能に使用され、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類(具体的には、より高度な霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯動物(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ等の哺乳類と、トリ、両生類、爬虫類等の非哺乳類とを含む。一実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対象は、実験動物または疾患モデルとしての動物代替物である。
用語の「有効量」は、その意味内において、所望の効果を提供するのに十分な量の薬理学的組成物を含む。必要とされる正確な量は、リン酸化のレベル(すなわち、トポIのS10のリン酸化等のトポIのリン酸化の存在または非存在)、処置する腫瘍の種類、腫瘍の重症度、腫瘍の薬物耐性レベル、処置する種、対象の年齢および全身状態、処置として使用する特定のトポI阻害剤、投与形態等の要因に応じて変動する。したがって、正確な「有効量」を特定することは不可能である。しかしながら、任意の所定の場合では、適切な「有効量」を、日常の実験のみを使用して当業者は判断することができる。本明細書で使用する際、有効量は、例えば、腫瘍のサイズを低下させるため、例えば、約10%サイズを低下させるため、腫瘍の成長速度を衰えさせるため、例えば、腫瘍が成長する速度を10%低下させるためを含むがこれらに限定されない病気の症状を軽減するための薬剤または処置の量である。例えば、本明細書に開示する方法を使用する有効量は、癌の症状、例えば、癌または悪性腫瘍の少なくとも1つの症状を少なくとも10%軽減するのに十分な量として考えられ得る。さらに、また、本明細書に使用する有効量は、病気の症状の発現を予防または遅延させる、または病気の症状の経過を変更する(例えば、病気の症状の進行を遅延させることを含むがこれに限定されない)、または病気の症状を改善するのに十分な量も含み得る。
本明細書で使用する際、用語の「処置する」は、癌に関連する病状、病気、または疾患の少なくとも1つの副作用または症状を軽減または緩和することを含む。本明細書で使用する際、用語の「処置する」は、症状および/または癌の生化学的マーカーの低下、例えば、少なくとも1つの癌の生化学的マーカーにおける少なくとも10%の低下を指すように使用される。例えば、これに限定することなく、癌の生化学的マーカーにおける低下、例えば、単に例証的な例として、CD44、テロメラーゼ、TGF−α、TGF−β、erbB−2、erbB−3、MUC1、MUC2、CK20、PSA、CA125、FOBTのバイオマーカーのうちの少なくとも1つにおける10%の低下、または,癌細胞の増殖速度における10%の低下は、本明細書に開示する方法による有効な処置と考えられ得る。代替の例として、癌の症状の軽減、例えば、癌の成長速度の10%の遅延、または腫瘍のサイズの増加停止、または腫瘍のサイズの10%の低下、または腫瘍の拡大(すなわち、腫瘍転移)の10%の低下も、本明細書に開示する方法による有効な治療と考えられ得る。
用語の「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用する際、デオキシリボヌクレオチド、天然ヌクレオチドのリボヌクレオチド塩基、または既知の類似体の単鎖または2本鎖ポリマー、あるいはその混合物を指す。本用語は、他に指定のない限り、特定の配列ならびにそれに相補的である配列を指す。
用語の「ポリペプチド」は、ペプチド結合によりまとめて結合されるアミノ酸から構成されるポリマーを意味する。用語の「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において交換可能に使用されるが、本発明において、ポリペプチドは、タンパク質の一部分または完全長タンパク質を構成し得る。
用語の「発現」は、本明細書で使用する際、ポリペプチドまたはタンパク質の発現およびポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を交換可能に指す。ポリヌクレオチドの発現は、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)転写レベルの産生を測定することによって判断され得る。タンパク質またはポリペプチドの発現は、例えば、ポリペプチドと結合する抗体を使用する免疫測定法によって判断され得る。
用語の「内因的に発現される」または「内因的発現」は、本明細書で使用する際、通常レベルにおける、その細胞型の通常の調節下における遺伝子産物の発現を指す。
本明細書の内容において、用語の「活性」は、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドに関する場合、タンパク質、ポリペプチド、もしくはポリヌクレオチドが及ぼす、その核酸配列もしくはフラグメントが及ぼす、またはタンパク質もしくはポリペプチド自体もしくはその任意のフラグメントが及ぼす影響の任意の細胞機能、作用、効果を意味する。
本明細書において使用する用語の「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、共有結合する少なくとも2つのヌクレオチドを意味することが可能である。当業者が理解するように、単鎖の記述は、相補鎖の配列も規定する。したがって、核酸は、示される単鎖の相補鎖も包含する。また、当業者が理解するように、核酸の多くの変異体は、所定の核酸と同一の目的で使用可能である。したがって、核酸は、実質的に同一の核酸およびその補体も包含する。また、当業者が理解するように、単鎖は、厳しいハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズ可能であるプローブにプローブを提供する。したがって、核酸は、厳しいハイブリダイゼーション下でハイブリダイズするプローブも包含する。
用語の「RNAi」は、本明細書で使用する際、RNA干渉(RNAi)である遺伝子発現を阻害するRNAベースの分子を指す。RNAiは、短い干渉RNA分子(siRNA)による特定のmRNAの破壊による、選択的翻訳後遺伝子サイレンシングの手段を指す。siRNAは、具体的には、2本鎖RNAの開裂により生成され、一方の鎖は、不活性化されるメッセージに同一である。本明細書で使用する際、用語の「RNAi」は、siRNAi、shRNAi、内因性マイクロRNA、および人工マイクロRNAを含むがこれらに限定されない任意の種類の干渉RNAを指す。例えば、用語の「RNAi」は、RNAの下流プロセッシング機構にかかわらず、siRNAとして以前に識別された配列を含む(すなわち、siRNAは、mRNAの開裂をもたらす体内プロセッシングの特定の方法を有すると考えられるが、このような配列は、本明細書に説明するフランキング配列の内容において、ベクターに組み込み可能である)。
本明細書で使用する際、「siRNA」は、2本鎖RNAを形成する核酸を指し、この2本鎖RNAは、siRNAが標的遺伝子と同一の細胞に存在するか、または発現される場合に、遺伝子または標的遺伝子の発現を低減または阻害する能力を有し、例えば、標的遺伝子は、例えばDNA−PKである。2本鎖RNAのsiRNAは、相補鎖により形成可能である。一実施形態では、siRNAは、2本鎖siRNAを形成可能である核酸を指す。siRNAの配列は、完全長標的遺伝子またはその部分配列に対応することが可能である。具体的には、siRNAは、長さが少なくとも約15〜50のヌクレオチドである(例えば、2本鎖siRNAの各相補配列は、長さが約15〜50のヌクレオチド、2本鎖siRNAは、長さが約15〜50の塩基対、好ましくは、約19〜30の塩基ヌクレオチド、好ましくは長さが約20〜25のヌクレオチド、例えば、長さが20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のヌクレオチドである)。
本明細書で使用する際、「shRNA」または「小ヘアピンRNA」(ステムループとも呼ばれる)は、siRNAの種類である。一実施形態では、これらのshRNAは、短い、例えば、約19から約25のヌクレオチド、アンチセンス鎖、それに後続して約5から約9のヌクレオチドのヌクレオチドループ、および類似のセンス鎖から構成される。代替として、センス鎖は、ヌクレオチドループ構造に先行することが可能であり、アンチセンス鎖が後続することが可能である。
用語の「抗癌剤」または「抗癌薬」は、本明細書に使用する際、対象における癌に負の影響を及ぼすこと、例えば、癌細胞を殺すこと、癌細胞におけるアポトーシスを誘起すること、癌細胞の成長速度を低下させること、転移細胞の数を減少させること、腫瘍のサイズを減少させること、腫瘍の成長を阻害させること、腫瘍もしくは癌細胞への血液供給を減少させること、癌細胞もしくは腫瘍に対する免疫反応を促進すること、癌の進行を予防もしくは阻害すること、または癌を患っている対象の寿命を増加させることが可能であり得る任意の薬剤、化合物、または物質を指す。抗癌療法は、任意の免疫療法または生物学的薬剤(生物学的療法)、化学療法薬剤、および放射線療法薬剤を包含する。化学療法と生物学的療法との組み合わせは、生物化学療法として本技術分野において既知である。
用語の「コンピュータ」は、構造化入力を受け入れること、規定のルールに従って構造化入力を処理すること、処理の結果を出力として生成することが可能である任意の装置を指すことが可能である。コンピュータの例として、 コンピュータ、汎用コンピュータ、スーパーコンピュータ、メインフレーム、スーパーミニコンピュータ、ミニコンピュータ、ワークステーション、マイクロコンピュータ、サーバ、インタラクティブテレビ、コンピュータとインタラクティブテレビとのハイブリッド組み合わせ、ならびにコンピュータおよび/またはソフトウェアをエミュレートするためのアプリケーション特有のハードウェアが挙げられる。コンピュータは、単一のプロセッサまたは複数のプロセッサを有することが可能であり、プロセッサは、並行しておよび/または並行せずに動作可能である。また、コンピュータは、コンピュータ間で情報を送受信するための、ネットワークを介して接続される2つ以上のコンピュータを指す。このようなコンピュータの例として、ネットワークにより連結されるコンピュータを介して情報を処理するための分散コンピュータシステムが挙げられる。
用語の「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータによりアクセス可能なデータを格納するために使用する任意のストレージ機器、ならびにコンピュータによるデータへのアクセスを提供するための任意の他の手段を指し得る。ストレージ機器型のコンピュータ可読媒体の例として、磁気ハードディスク;フロッピーディスク;CD−ROMおよびDVD等の光ディスク;磁気テープ;メモリチップが挙げられる。
用語の「ソフトウェア」は、コンピュータを動作する規定のルールを指すことが可能である。ソフトウェアの例として、 ソフトウェア、コードセグメント、命令、コンピュータプログラム、およびプログラム化論理が挙げられる。
用語の「コンピュータシステム」は、コンピュータを有するシステムを指してもよく、コンピュータは、コンピュータを動作するソフトウェアを具現化するコンピュータ可読媒体を含む。
用語の「プロテソミクス」は、遺伝子発現のゲノム解析とは異なる情報を提供する、相互に機能および相互作用する方式を含む、細胞内のタンパク質の発現、構造、および機能の研究を指し得る。
1つ以上の記述の要素を「含む」組成物または方法は、具体的に記述しない他の要素を含んでもよい。例えば、線維成分ペプチドを含む組成物は、単離ペプチドと、より大きいポリペプチド配列の成分としてのペプチドとの両方を包含する。さらなる例として、要素AおよびBを含む組成物は、A、B、およびCから成る組成物も包含する。用語の「含む」は、「主に含むが、必ずしも唯一含むわけではない」を意味する。さらに、単語の「含む(comprising)」の変形は(たとえば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、対応して変化する意味を有する。用語の「基本的に成る」は、「主に含むが、必ずしも少なくとも1つを唯一含むわけではない」を意味し、したがって、1つまたは複数の選択および任意の組み合わせを意味するように意図される。明細書の内容において、用語の「含む」は、「主に含むが、必ずしも唯一含むわけではない」を意味する。さらに、単語の「含む」の変形(たとえば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)は、対応して変化する意味を有する。
請求項および/または明細書において用語の「含む」と併用する単語「ある」の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」「少なくとも1つ」、および「1つまたは複数」にも一致する。
動作例の他に、他に指定されない限り、本明細書に使用する成分量または反応条件を表わす全ての数字は、全ての事例において、用語の「約」によって修正されるように理解されるべきである。割合に関連して使用する用語の「約」は、±1%を意味することが可能である。
本発明は、限定するものとして解釈するべきではない以下の例によってさらに例証される。本出願において引用される全ての参考文献の内容、ならびに図および表は、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明が、本明細書に説明する特定の方法論、プロトコル、および試薬等に限定されず、変動可能であることを理解されたい。本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明する目的だけのものであり、唯一請求項により規定される本発明の範囲を限定するように意図されない。
トポI阻害剤に対して反応する癌を識別するための方法
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、トポIポリペプチドのリン酸化状態(すなわち、トポIのリン酸化の存在)、例えば、生体試料におけるトポIポリペプチドのセリン10残基におけるリン酸化を判断するステップを包含し、例えば、生体試料には、癌を患っている対象または癌を発現する危険性のある対象からの癌細胞が含まれる。
本発明の一態様は、癌を患っている対象または癌を発現する危険性のある対象にトポI阻害剤が有効である可能性を判断するための方法に関する。一実施形態では、癌は、SCLC、結腸もしくは卵巣癌、または難治性癌、例えば、乳癌もしくは子宮頸癌である。一実施形態では、本方法は、リン酸化の存在、具体的には、生体対象におけるトポイソメラーゼポリペプチドのセリン10(S10)アミノ酸残基におけるリン酸化の存在を検出するステップを含み、いくつかの実施形態では、生体対象は、対象から入手される。一実施形態では、癌に罹患する対象または癌を発現する危険性のある対象にトポI阻害剤が有効である可能性を判断するための方法は、生体試料におけるトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化状態を判断するステップを含む。本明細書に説明する全態様の特定の実施形態では、癌に罹患する対象または癌を発現する危険性のある対象にトポI阻害剤が有効である可能性を判断するための方法は、対象から入手した生体試料におけるトポイソメラーゼIポリペプチドのセリン10(S10)アミノ酸残基におけるリン酸化の存在を判断するステップを含む。具体的には、トポイソメラーゼIポリペプチドのセリン10(S10)アミノ酸残基のリン酸化の存在は、トポI阻害剤が対象に有効であり得ないことを識別し、一方、リン酸基の非存在(すなわち、トポイソメラーゼIポリペプチドのセリン10(S10)アミノ酸残基におけるリン酸化の欠乏)は、トポI阻害剤が対象に有効であり得ることを示す。
本発明の別の態様は、トポI阻害剤に対して反応し得る癌を患っている対象を識別するための、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体の使用に関し、方法、キット、機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体は、癌を患っている対象からの生体試料においてトポイソメラーゼIポリペプチドのS10におけるリン酸化の検出を用い、生体試料におけるトポIのS10におけるリン酸化の非存在は、トポI阻害剤に対して反応し得る癌を患っている対象を識別する。いくつかの実施形態では、癌は、少なくとも1つの癌細胞を含む。
本明細書に説明する本発明の全態様では、トポI阻害剤は、対象から入手した生体対象がトポIポリペプチドのリン酸化形式(本明細書において「リン酸−トポI」と呼ばれる)を含む場合に、癌を患っている対象に有効であり得ない(すなわち、有効性を欠く)。本発明の特定の態様では、トポI阻害剤は、対象から入手した生体対象が、トポIポリペプチドのセリン10(S10)アミノ酸残基においてリン酸化(本明細書において「リン酸−S10トポI」と呼ばれる)を含む場合に、癌を患っている対象に有効であり得ない(すなわち、有効性を欠く)。生体試料におけるリン酸−トポIおよび/またはリン酸−S10トポIの存在は、生体試料を入手した対象が、トポI阻害剤に対して非反応または無反応であることを示す。言い換えると、例えば、リン酸化の欠如、具体的には、生体試料におけるトポIポリペプチドのS10におけるリン酸化の欠如が存在する場合、生体試料を入手した対象が、トポI阻害剤に対して反応し得ることが示される。
トポI阻害剤に対して非反応である癌を識別するための方法
別の実施形態では、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体を使用して、対象における癌が、CPTまたはその類似体等のトポI阻害剤に対して非反応であるかを判断することが可能であり、方法、キット、機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体は、癌を患っている対象からの生体試料を評価し、生体試料が、トポIのリン酸化、具体的には、トポIにおけるセリン10(S10)のリン酸化(すなわち、リン酸−S10−トポI)を有すると判断される場合、これは、CPTならびにその誘導体および類似体等のトポI阻害剤に対して非反応である癌を患っているまたは患っている可能性のある対象を識別する。
本態様および本明細書に説明する全態様のいくつかの実施形態では、リン酸−S10−トポIの存在は、本明細書に説明する機械、コンピュータシステム、またはコンピュータ可読媒体によって判断可能であり、トポIのリン酸化の存在、具体的には、リン酸−S10−トポIの存在は、判断モジュールによって判断され、その後、比較モジュールにおいて、格納されたデータ、例えば、格納された参照データとの参照試料の比較を含む比較分析を行い、ディスプレイモジュール方法により読み出されたデータを表示する。
用語の「生体試料」は、対象から単離された組織、細胞、および生体液、ならびに対象内に存在する組織、細胞、および体液を含むように意図される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、例えば、酵素免疫吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、免疫蛍光法等が含まれるがこれらに限定されない当業者に一般に知られる方法を使用して、トポIのリン酸化状態の検出を提供する。
いくつかの実施形態では、本方法は、トポIポリペプチドのリン酸化状態、具体的には、体内の癌細胞におけるリン酸−S10トポIを検出するための技法も包含する。非限定例として、本明細書に開示する方法は、リン酸−S10トポIに特異的である標識抗体またはタンパク質結合分子を対象に導入するステップを包含する。いくつかの実施形態では、抗体は、対象における存在および位置を標準的な撮像技法で検出可能であるマーカーで標識可能であり、例えば、このようなマーカーには、放射性、蛍光、および生物発光マーカー等が含まれるがこれらに限定されない。一実施形態では、生体試料は、対象からの癌細胞を含有する。
いくつかの実施形態では、生体試料のトポIのリン酸化のレベルは、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体を使用して、トポIのリン酸化の参照レベルに対して比較される。トポIのリン酸化の参照レベルは、本明細書において「参照データ」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、リン酸−トポIの参照レベルは、対照生体試料または参照生体試料から入手される。いくつかの実施形態では、参照生体試料は、同一の対象または異なる対象から採取された細胞を含み、例えば、生理学的に一致する組織の生体試料は、非癌細胞を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、参照生体試料は、以前の時点(すなわち、時点0または「t0」)における同一の対象から採取された細胞を含み、したがって、参照試料は、1つ以上の後の時点(すなわち、t1、t2、t3、t4等)における同一の対象から採取される生体試料におけるトポIのリン酸化状態と比較可能である参照データとして使用可能である。いくつかの実施形態では、参照生体試料は、生理学的に一致した組織を含むか、または非癌細胞を含むことが可能である。代替として、参照生体試料は、対照対象から入手可能である。いくつかの実施形態では、参照生体試料は、トポIのリン酸化状態を判断するために、トポIポリペプチドと相互作用可能であるタンパク質結合分子に接触させ、本明細書に開示するキット、方法、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、参照生体試料におけるトポIのリン酸化状態を、対象からの生体試料におけるトポIポリペプチドのリン酸化のレベルと比較できるようにする。いくつかの実施形態では、対象からの生体試料が、参照生体試料と比べて高いリン酸−S10−トポIのレベル等の、より高いリン酸−トポIのレベルを有する場合、例えば、対象の生体試料におけるリン酸−S10−トポI等のリン酸−トポIのレベルが、例えば、参照生体試料におけるリン酸−S10−トポI等のリン酸−トポIのレベルよりも少なくとも約0.5倍、または少なくとも約1.0倍、または1.2倍高いか、または少なくとも1.5倍高いまたは少なくとも2倍である場合、癌は、トポI阻害剤に対して非反応であり得ると識別される。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、癌の処置におけるトポI阻害剤の活性、すなわち、細胞生存性を低下させるCPT等のトポI阻害剤の有効性に関する診断試験を提供する。一実施形態では、本方法に開示する方法に有用である診断試験は、リン酸−S10トポIの存在等のトポIのリン酸化状態を検出し、リン酸−S10トポIの存在は、リン酸−S10トポIが欠乏するか、または最小量である場合に比べて、トポI阻害剤が、対象における癌の処置にあまり有効でなくなり得ることを示す。したがって、いくつかの実施形態では、対象からの癌細胞を含む生体試料におけるリン酸−S10トポIの高レベルの検出は、トポI阻害剤処置に対して無反応であり得る癌を識別するための診断として使用可能である。関連の実施形態では、リン酸−S10トポI等のトポIタンパク質のリン酸化状態を、S10アミノ酸残基においてリン酸化されない非リン酸化トポIまたはトポIポリペプチドに比較することは、未処置対照に比較して所定の処置トポI阻害剤の効果を判断するために、処置および未処置生検試料、細胞株、トランスジェニック動物、またはこれらのうちのいずれかからの抽出物間で判断可能である。
トポIポリペプチドのリン酸化を検出するための方法
本発明の全態様では、トポIポリペプチドのリン酸化状態(すなわち、リン酸化の程度)は、当業者により既知である任意の手段によって判断可能である。本発明の全態様では、リン酸化の程度は、当業者に既知である標準的な方法を使用して、タンパク質結合分子またはタンパク質結合物質を使用して判断可能である。例えば、抗体に基づく結合部分および抗体ならびにそのフラグメントを含むがこれらに限定されない任意のタンパク質結合分子を使用して、リン酸化トポI(すなわち、リン酸−トポI)の存在および/またはリン酸−S10トポIポリペプチドの存在等の、トポIポリペプチドのリン酸化状態を判断することが可能である。タンパク質結合分子の例として、免疫グロブリン分子と、免疫グロブリン分子、 例えば、トポIのリン酸化形式、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドに特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子の免疫学的に活性な決定因子とが挙げられるが、これらに限定されない。リン酸−トポIの存在、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在は、リン酸−S10トポIポリペプチドに特異的な標識タンパク質結合分子の結合からの信号を検出することによって検出可能である。
一実施形態では、タンパク質結合分子または抗体に基づく結合部分は、抗体を酵素に結合することによって検出可能に標識される。次いで、酵素は、その基質に暴露されると、例えば、分光光度、蛍光分析、または視覚的手段によって検出可能である化学的部分を産生するように、基質と反応する。本発明の抗体を検出可能に標識するのに使用可能な酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-V-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−VI−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
また、検出は、多種多様の他の免疫測定法のいずれかを使用して達成され可能である。例えば、抗体を放射能的に標識することによって、放射性免疫アッセイの使用により抗体を検出することが可能である。放射性同位体は、ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段によって、またはオートラジオグラフィーによって検出可能である。本発明において特に有用である同位体は、3H、131I、35S、14C、32Pであり、好ましくは、リン酸基における原子の全ての同位体である。
また、蛍光化合物で抗体を標識することも可能である。蛍光的に標識された抗体を適切な波長の光へ暴露すると、その存在は、蛍光に起因して検出可能である。とりわけ、最も一般的に使用される蛍光標識化合物は、CYE色素、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリセリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタアルデヒド、およびフルオレスカミンである。
また、抗体またはタンパク質結合分子は、152Eu等の発蛍光金属またはランタニド系列の他のものを使用して、検出可能に標識することが可能である。これらの金属は、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)のような金属キレート基を使用して、抗体に付着可能である。また、抗体またはタンパク質結合分子は、それを化学発光化合物へ結合することによって、検出可能に標識可能である。次いで、化学発光−抗体の存在は、化学反応中に生じる発光の存在を検出することによって判断される。特に有用な化学発光標識化合物の例として、ルミノール、ルシフェリン、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルが挙げられる。
したがって、本発明の全態様では、トポIポリペプチドのリン酸化状態(すなわち、リン酸化の程度)は、タンパク質結合剤であって、本明細書において「タンパク質結合物質」または「親和性試薬」、具体的には、抗体とも呼ばれるタンパク質結合剤を使用して判断可能である。例えば、親和性試薬、具体的には、抗リン酸−S10トポI抗体等の抗体は、免疫測定法、具体的には、ELISA(酵素免疫吸着法)において使用可能である。実施形態では、リン酸−S10トポIのレベル等のリン酸トポIのレベルは、当技術分野で一般に知られる方法を使用して生体試料において測定可能であり、その方法には、例えば、イソ型タンパク質のイソ型に特異的な化学的または酵素的開裂、免疫ブロット法、免疫組織化学的分析、ELISA、および質量分析が含まれるが、これらに限定されない。
上述のように、リン酸−S10トポIのレベル等のリン酸トポIのレベルは、酵素免疫測定吸着法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫放射定量測定法(IRMA)、ウエスタンブロット法、免疫細胞化学、または免疫組織化学等の免疫測定法によって検出可能であり、その各々についてはより詳細に後述する。概して、極めて高速であり得るELISAまたはRIA等の免疫測定法がより好適である。また、抗体アレイまたはタンパク質チップを用いてもよく、例えば、米国特許出願第 20030013208A1号、同第20020155493A1号、同第20030017515号、および米国特許第 6,329,209号、同第6,365,418号を参照されたく、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
免疫測定法
最も一般的な酵素免疫測定法は、「酵素免疫測定吸着法(ELISA)」である。ELISAは、抗体の標識形式(例えば、酵素結合形式)を使用して、抗原の濃度を検出および測定するための技法である。当業者に周知である異なる形式のELISAが存在する。ELISAについて当技術分野において既知である標準的な技法については、”Methods in Immunodiagnosis”, 2nd Edition, Rose and Bigazzi, eds. John Wiley & Sons, 1980; Campbell et al., ”Methods and Immunology”, W. A. Benjamin, Inc., 1964;および Oellerich, M. 1984, J. Clin. Chem. Clin. Biochem., 22:895−904に説明されている。
「サンドイッチELISA」では、抗体(例えば、抗−酵素)は、固相(すなわち、マイクロタイタープレート)に結合され、抗原(例えば、酵素)を含有する生体試料に暴露される。次いで、固相を洗浄して、非結合抗原を除去する。次いで、標識抗体(例えば、酵素結合)は、抗体−抗原−抗体サンドイッチを形成する結合抗原(存在する場合)に結合される。抗体に結合可能である酵素の例として、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、ウレアーゼ、およびB−ガラクトシダーゼが挙げられる。酵素結合抗体は、基質と反応して、測定可能な着色反応生成物を生成する。
「競合ELISA」では、抗体は、抗原(すなわち、酵素)含有する試料によって培養される。次いで、抗原−抗体混合物を、抗原(すなわち、酵素)でコーティングされる固相(例えば、マイクロタイタープレート)に接触させる。試料に抗原が存在すればするほど、固相への結合に利用可能な遊離抗体が少なくなる。次いで、標識(例えば、酵素結合)2次抗体を固相に添加して、固相に結合される1次抗体の量を判断する。
「免疫組織化学アッセイ」では、アッセイされるタンパク質に特異的である抗体に組織を暴露することによって、特異的タンパク質について組織の切片を試験する。次いで、存在するタンパク質の存在および量を判断する多数の方法のうちのいずれかによって抗体を視覚化する。抗体の視覚化に使用する方法の例として、例えば、抗体に結合される酵素(例えば、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはベータ−ガラクトシダーゼ)、または化学的方法(例えば、DAB/基質クロマジェン)によるものが挙げられる。次いで、試料を顕微鏡で分析し、最も好ましくは、当業者に既知である多種多様のこのような染色方法および試薬のうちのいずれかを使用して、可視スペクトルにおいて検出される染色により染色された試料の光学顕微鏡検査によって分析する。
代替として、「放射免疫測定法」を用いることができる。放射免疫測定法は、抗原の標識形式(例えば、放射能的または蛍光的に標識された形式)を使用して、抗原の濃度を検出および測定するための技法である。抗原の放射性標識の例として、3H、14C、および125Iが挙げられる。生体試料における抗原酵素の濃度は、生体試料中の抗原を、抗体を抗原に結合するための標識(例えば、放射能的に)抗原と競合させることによって測定される。標識抗原と非標識抗原との間の競合結合を確実にするために、標識抗原は、抗体の結合部位を飽和するのに十分な濃度で存在する。試料中の抗原の濃度が高ければ高いほど、抗体に結合する標識抗原の濃度は低くなる。
放射免疫測定法では、抗体に結合された標識抗原の濃度を判断するために、抗原−抗体複合体を、遊離抗原から分離しなければならない。抗原−抗体複合体を遊離抗原から分離するための方法の1つとして、抗原−抗体複合体を抗イソタイプ抗血清で抗原−抗体複合体を沈殿させることが挙げられる。抗原−抗体複合体を遊離抗原から分離する別の方法として、抗原−抗体複合体をホルマリン死菌黄色ブドウ糖球菌で沈殿させることが挙げられる。抗原−抗体複合体を遊離抗原から分離するためのさらに別の方法として、「固相放射免疫測定法」を実行することが挙げられ、この場合、抗体は、セファロースビーズ、ポリスチレンウェル、ポリ塩化ビニルウェル、またはマイクロタイターウェルに結合(例えば、共有結合)される。抗体に結合された標識抗原の濃度を、抗原の既知の濃度を有する試料に基づく標準的な曲線と比較することによって、生体試料中の抗原の濃度を判断することができる。
「免疫放射定量測定法(IRMA)」は、抗体試薬が放射能的に標識される免疫測定法である。IRMAは、タンパク質、例えば、ウサギ血清アルブミン(RSA)への共役等の技法によって、多価抗原共役を産生することを必要とする。多価抗原共役は、分子当たり少なくとも2つの抗原残基を持たなくてはならず、抗原残基は、少なくとも2つの抗体による抗原への結合を可能にするように十分距離を置かなくてはならない。例えば、IRMAでは、多価抗原共役は、プラスチック球等の固体表面に付着可能である。放射能的に標識される非標識「試料」抗原および抗原に対する抗体は、多価抗原共役がコーティングされた球を含有する試験管に添加される。試料中の抗原は、抗原抗体結合部位について多価抗原共役と競合する。適切な培養時間後、非結合反応物を洗浄により除去し、固相上の放射能の量を判断する。結合放射性抗体の量は、試料中の抗原の濃度に反比例する。
トポIのリン酸化状態の検出、具体的には、生体試料におけるリン酸−S10トポIポリペプチドの存在の検出に使用可能である他の技法を、医師の好みに応じて、かつ本開示および生体試料(すなわち、血漿、尿、組織試料等)の種類に基づいて実行してもよい。このような技法の1つとして、ウエスタンブロット法(Towbin et at., Proc. Nat. Acad. Sci. 76:4350 (1979))が挙げられ、この技法では、適切に処置された試料が、ニトロセルロースフィルタ等の固体担体に輸送される前にSDS−PAGEゲル上で実行される。次いで、検出可能に標識された抗リン酸S10抗体またはタンパク質結合分子を使用して、トポIのリン酸化状態を評価することが可能であり、この場合、検出可能な標識からの信号の強度は、トポIのリン酸化の量に対応する。また、トポIのリン酸化の量のレベルおよび存在する全トポIポリペプチドの量を、例えば、濃度測定によって定量化することも可能である。
一実施形態では、トポIのリン酸化状態、具体的には、生体試料におけるトポIポリペプチド上のS10残基のリン酸化状態は、MALDI/TOF(飛行時間型)、SELDI/TOF、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)、高性能液体クロマトグラフィー−質量分析(HPLC−MS)、キャピラリー電気泳動−質量分析、核磁気共鳴分析、またはタンデム質量分析(例えば、MS/MS、MS/MS/MS、ESI−MS/MS等)等の質量分析によって判断可能である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第 20030199001号、同第20030134304号、同第20030077616号を参照されたい。
特定の実施形態では、これらの方法論は、リン酸−トポIの存在、具体的には、生体試料におけるリン酸−S10トポIの存在を判断するための自動システムを生成するための機械、コンピュータシステム、および媒体と、(i)生体試料におけるリン酸−S10トポIのレベル、(ii)生体試料におけるリン酸−S10トポIの存在、(iii)リン酸−S10トポI: 非リン酸S10トポIの%または比率、(iv)対象がトポI阻害剤による処置に無反応であり得る確率(%)、(v)対象がトポI阻害剤による処置に反応し得る確率(%)、(vi)対象がトポI阻害剤に反応し得るという陽性表示、または(vii)対象がトポI阻害剤に対して非反応であり得るという表示のうちの少なくとも1つを識別する印刷可能なレポートを作成するための分析と組み合わせ可能である。
質量分析方法は、当技術分野において周知であり、タンパク質等の生体分子を定量化および/または識別するために使用されている(例えば、Li et al. (2000) Tibtech 18:151−160; Rowley et al. (2000) Methods 20: 383−397; およびKuster and Mann (1998) Curr. Opin. Structural Biol. 8: 393−400を参照)。さらに、単離タンパク質の少なくとも部分的なデノボシークエンジングを可能にする質量分析技法が開発されている。Chait et al., Science 262:89−92 (1993); Keough et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96:7131−6 (1999); reviewed in Bergman, EXS 88:133−44 (2000)。
一定の実施形態では、気相イオン分光光度計が使用される。他の実施形態では、レーザー脱離/イオン化質量分析を使用して試料を分析する。現代のレーザー脱離/イオン化質量分析(「LDI−MS」)は、主に2つの変化、 つまり、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化(「MALDI」)質量分析および表面増強レーザー脱離/イオン化(「SELDI」)で実施可能である。MALDIでは、検体を、マトリクスを含有する溶液と混合し、液滴を、基質の表面に配置する。次いで、マトリクス溶液は、生体分子と共結晶化する。基質を、質量分析計に挿入する。レーザーエネルギーを基質表面に指向し、そこで、生体分子を有意にフラグメント化せずに、生体分子を脱離およびイオン化する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,118,937号(Hillenkampら)、および米国特許第5,045,694号(BeavisおよびChait)を参照されたい。
SELDIでは、基質表面は、脱離過程において活性して関与するように修飾される。一変形例では、表面は、関連のタンパク質を選択的に結合する吸着剤および/または捕捉試薬で誘導体化される。別の変形例では、表面は、レーザーを受ける際に脱離されないエネルギー吸収分子で誘導体化される。別の変形例では、表面は、関連のタンパク質を結合し、かつレーザーの印加時に破壊する光分解結合を含有する分子で誘導化される。これらの方法の各々では、誘導化剤は、概して、試料を適用する基質表面上の特定の位置に局在化される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,719,060および国際公開公報WO98/59361を参照されたい。2つの方法は、例えば、SELDI親和性表面を使用して検体を捕捉し、捕捉した検体にマトリクス含有液体を添加してエネルギー吸収材料を提供することによって組み合わせ可能である。
質量分析計に関する追加の情報については、例えば、Principles of Instrumental Analysis, 3rd edition., Skoog, Saunders College Publishing, Philadelphia, 1985; およびKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 4.sup.th ed. Vol. 15 (John Wiley & Sons, New York 1995), pp. 1071−1094を参照されたい。
リン酸−トポI、具体的には、リン酸−S10トポIの存在またはレベルの検出は、一般的には、信号強度の検出に依存する。次いで、これは、基質に結合されるポリペプチドの量および特徴を反映することが可能である。例えば、一定の実施形態では、第1の試料および第2の試料のスペクトルからのピーク値の信号強度を比較して(例えば、視覚的に、コンピュータ分析等によって)、特定の生体分子の相対量を判断することが可能である。Biomarker Wizardプログラム(Ciphergen Biosystems, Inc., Fremont, Calif.)等のソフトウェアプログラムを使用して、質量スペクトル分析を補助することが可能である。質量分析計およびその技法は、当業者に周知である。
本態様および本明細書に開示する全態様のいくつかの実施形態では、生体試料は、好ましくはヨウ素同位体による、放射性標識化、具体的には、逆放射性標識化を使用して監視可能である。好ましくは、逆放射性標識化は、125Iおよび131I同位体を使用して実行される。別の実施形態では、対象、例えば、ヒト対象は、好ましくは、125Iおよび131I同位体等であるがこれらに限定されないヨウ素同位体による、放射性標識化、具体的には、逆放射性標識化を受け得る。
本発明の全態様では、トポIポリペプチドのリン酸化状態(すなわち、リン酸化の程度)を、ゲル電気泳動技法、具体的には、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)、特に2次元PAGE(2D−PAGE)、好ましくは、2次元SDS−PAGE(2D−SDS−PAGE)に基づいて判断することができる。特定の例によると、アッセイは、具体的には、好ましくはpH4〜9を上回るpH範囲の固定化pH勾配を使用して、2D−PAGEに基づく。
本発明の全態様では、トポIポリペプチドのリン酸化状態(すなわち、リン酸化の程度)を、ゲル電気泳動技法を使用して判断することができ、具体的には、上述の技法は、他のタンパク質分離方法、特に、当業者に既知である方法であって、具体的には、クロマトグラフィーおよび/またはサイズ排除と組み合わせられ得る。本発明の全態様では、トポIポリペプチドのリン酸化状態(すなわち、リン酸化の程度)を、適切には、上述の方法のうちのいずれかと、抗体検出および/または質量分析等であるがこれらに限定されない当業者に周知である検出方法の組み合わせとの組み合わせを使用して判断することができる。
トポイソメラーゼ阻害剤に対する無反応性と反応性との違いは、トポIポリペプチドのリン酸化または非リン酸化にそれぞれ起因するため、タンパク質におけるリン酸塩または酸素原子の化学量論における微妙な差または極端な差を検出可能にする全ての方法は、本開示の範囲内にある。これに関し、本発明のいくつかの態様では、元素分析方法、イオン化状態または電気伝導度差の測定方法は、有用であり、本開示の範囲内に包含される。さらなる例によると、トポイソメラーゼIポリペプチド、ならびにタンパク質の、具体的には、化学的に修飾されたタンパク質の安定同位体含有量、またはその分解生成物の分解速度の差の測定を可能にする方法も、本開示の一部に包含される。
本発明の全態様のさらなる実施形態では、トポIポリペプチドのリン酸化状態(すなわち、リン酸化の程度)を、実施例において本明細書で開示する質量分析、具体的には、MALDI(マトリクス支援レーザー脱離/イオン化)および/またはSELDI(表面増強レーザー脱離/イオン化)を使用して判断することができる。代替実施形態では、共鳴技法、具体的には、プラズマ表面共鳴を使用することが可能である。
場合によっては、タンパク質を開裂する前に、例えば、上記に概説した方法のうちの1つの手段を使用して、生体試料におけるタンパク質の不均一集団からのトポイソメラーゼIタンパク質の分離を達成することが有利であり得る。このような開裂ステップは、当業者に既知である酵素、化学物質、または他の適切な試薬を適用することによって実行可能である。代替実施形態では、開裂ステップおよび開裂されたトポイソメラーゼIポリペプチドフラグメントの後続の分離を実行し、具体的には、その後、例えば、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、または媒体のうちのいずれかを使用して、リン酸化のその存在度および/または程度に関してトポIポリペプチドの測定を実行してもよい。本発明の本態様のいくつかの実施形態では、開裂されたトポイソメラーゼIポリペプチドフラグメントは、標識され、任意選択により、分離されることが可能であり、この場合、開裂されたトポイソメラーゼIポリペプチドフラグメントに対応するタンパク質スポットは、撮像技法によって、例えば、PROTEP TOPO(登録商標)撮像技法を使用して視覚化可能である。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法で有用なタンパク質結合剤または 抗体は、リン酸化トポIポリペプチド、具体的には、トポIポリペプチドのセリン10残基上のリン酸化に結合するか、またはそれに対して親和性を有する。
いくつかの実施形態では、抗体等のタンパク質結合部分を利用して、単独で(すなわち、個々に)、またはトポIポリペプチドが他のポリペプチドとの複合体に存在する際、例えば、トポIが、ユビキチン化経路、例えば、DNA−PK、BRAC1、および/またはBRAC1/BARD1複合体によってその分解を誘発する任意のポリペプチドもしくはポリペプチドの組み合わせと複合化される際に、トポIポリペプチドのリン酸化の存在を検出することができる。加えて、他の実施形態では、抗体等のタンパク質結合部分を利用して、翻訳後修飾される際、例えば、トポIポリペプチドがユビキチン化される際に、トポIポリペプチドのリン酸化の存在を検出することができる。いくつかの実施形態では、抗体等のタンパク質結合部分は、個々に、または複合体においてトポIタンパク質に結合することができ、いくつかの実施形態では、抗体等のタンパク質結合部分は、検出可能な標識で標識化可能である。
いくつかの実施形態では、抗体およびタンパク質結合分子は標識化される。用語の「標識」は、プローブまたは抗体に関連する場合、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合する(すなわち、物理的に結合する)ことによるプローブまたは抗体の直接標識と、直接標識された別の試薬との反応によるプローブまたは抗体の間接的標識とを包含するように意図される。間接的標識の例として、蛍光的に標識された2次抗体を使用する1次抗体の検出と、蛍光的に標識されたストレプトアビジンで検出可能になるようにビチオンによるDNAプローブの末端標識とが挙げられる。
本発明の全態様では、トポIポリペプチドのリン酸化状態は、当業者に既知である一般的な方法を使用して、抗リン酸−トポI−S10抗体等のリン酸−トポI抗体を使用する免疫学的技法を使用することによって判断でき、例えば、免疫組織化学、免疫細胞化学、FACS走査、免疫ブロット法、放射免疫測定法、ウエスタンブロット法、免疫沈降、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、リン酸−トポI抗体または抗リン酸−トポI−S10抗体等のリン酸化トポIに対する抗体を利用する誘導体技法等の抗体技法が挙げられる。
当業者に既知であるトポIタンパク質リン酸化を検出するための任意の方法は、トポIタンパク質のセリン10のリン酸化のレベル等のリン酸化のレベルを検出するための本明細書に開示する方法、キット、機械、ならびにコンピュータシステムおよび媒体において有用である。例えば、免疫組織化学(「IHC」)および免疫細胞学(「ICC」)技法を使用することが可能である。IHCは、免疫化学を組織切片に適用することであり、一方、ICCは、例えば、液体ベースの調製等の特定の細胞学的調製を行った後に免疫化学を細胞または組織インプリントに適用することである。免疫化学は、特異的抗体の使用に基づく技法の群であり、抗体は、一般的に、細胞の内部または細胞の表面上の標的分子に使用される。具体的には、抗体は、生物学的反応を行うマーカーを含有し、それによって、標的分子との衝突時に色が変化する。いくつかの事例では、信号増幅は、特定のプロトコルに統合されてもよく、マーカー染色を含む2次抗体は、1次特異的抗体の適用に後続する。
免疫組織化学アッセイは、当業者に周知である(例えば、Jalkanen, et al., J. Cell. Biol. 101:976−985 (1985); Jalkanen, et al., J. Cell. Biol. 105:3087−3096 (1987)参照)。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法に有用である抗体、多クローン抗体、単クローン抗体、およびキメラ抗体は、多種多様の供給業者から購入可能であるか、または例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, 2nd Ed; Cold. Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1988)に説明する周知の方法を使用して製造され得る。概して、本発明に有用な抗体の例として、抗セリン抗体が挙げられる。このような抗体は、例えば、Sigma−Aldrich, CalBiochem, Abcam, Santa−Cruz Biotechnology, novus Bio, U.S. biologicals, Millipore, LifeSpan, Abnova, CellSignalling等から購入可能である。
具体的には、免疫組織化学では、対象から入手し、かつアルコール、アセトン、およびパラホルムアルデヒド等の適切な固定剤により固定される組織を切片し、抗体で反応させる。免疫組織化学の従来の方法については、Harlow and Lane (Eds) (1988) In ”Antibodies A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York; Ausbel et al (Eds) (1987), in Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley and Sons (New York, NY)に説明される。このような検出アッセイに適切な生体試料には、細胞、組織生検、全血、血漿、血清、痰、脳脊髄液、乳房吸引液、胸膜液、尿等が含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、直接標識技法は、標識抗体を利用する場合に使用することが可能である。間接的標識技法では、試料は、標識された物質とさらに反応する。
いくつかの実施形態では、免疫細胞化学は、概して、組織または細胞が対象から入手され、かつ抗体が反応するアルコール、アセトン、およびパラホルムアルデヒド等の適切な固定剤によって固定される場合に利用されてもよい。ヒト試料の免疫細胞学的染色の方法は、当業者に既知であり、例えば、Brauer et al., 2001 (FASEB J, 15, 2689− 2701), Smith Swintosky et al., 1997に説明されている。
免疫学的方法は、本明細書に開示する方法において特に有用であり、これは、その方法が、少量の生物学的材料しか必要とせず、複数の異なる位置において容易に実行されるからである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法において有用なこのような免疫学的方法は、「ラボオンチップ(lab-on-a-chip)」機器を使用し、単一または複数の生体試料を実行するのに単一の機器しか伴わず、最小量の試薬および装置しか必要とせず、かつ容易に実行され、リン酸化状態、具体的には、トポIタンパク質のS10残基のリン酸化状態を検出する「ラボオンチップ」機器を作製することは、対象から入手した生体試料がトポI阻害剤に対して反応し得るかを識別するための迅速な原位置診断試験に理想的である。いくつかの実施形態では、免疫学的方法は、細胞レベルで行うことが可能であり、これにより、最小限の1つの細胞しか必要とされない。好ましくは、いくつかの細胞は、癌に罹患する対象または癌を発現する危険性のある対象から入手され、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用してアッセイされる。
トポIのS10におけるリン酸化(本明細書において「抗リン酸−トポIS10抗体」と呼ばれる)等のトポIのリン酸化のレベルを検出するための本明細書に開示する方法において有用な抗体は、当業者に一般に知られる多クローン抗体、単クローン抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、3重体、中心体、組み換え抗体、および任意の抗体、またはそのフラグメントであることが可能である。いくつかの実施形態では、無傷抗体またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab)2)を使用することが可能である。リン酸化トポI、具体的には、セリンS10残基上でリン酸化されるトポIタンパク質に反応する、または特異的に結合する抗体は、以下により詳細に説明するトポIの抗原フラグメントによる免疫化により、ウサギまたはマウス等の動物において容易に産生される。いくつかの実施形態では、リン酸−トポI抗体および/またはリン酸−トポIS10抗体の生成に有用なトポIの抗原フラグメントは、配列番号1のペプチドを含む。免疫化マウスは、ハイブリドーマの製造のためにB細胞の源を提供するために特に有用であり、ハイブリドーマは、次いで大量の単クローン性抗体を生成するように培養される。
本発明の一実施形態では、本明細書において識別する遺伝子産物に対する阻害剤は、抗体分子または抗体分子のエピトープ結合部分等であることが可能である。抗体は、広範な標的抗原およびハプテンに高結合親和力および独特の特異性を提供する。本発明の実施において有用な単クローン抗体は、全抗体およびそのフラグメントを含み、ハイブリドーマ合成、組み換えDNA技法、およびタンパク質合成等の従来の技法に従って生成される。
有用な単クローン抗体およびフラグメントは、任意の種(ヒトを含む)から得られることが可能であるか、または2つ以上の種からの配列を用いるキメラタンパク質として形成可能である。ヒト単クローン抗体または「ヒト化」マウス抗体も、本発明に従って使用可能である。例えば、マウス単クローン抗体は、マウスFv領域(すなわち、抗原結合部位を含有する)をコード化するヌクレオチド配列を遺伝子組み換えすることによって、またはヒト定常ドメイン領域およびFc領域をコード化するヌクレオチド配列によりその領域を相補的に判断することによって「ヒト化」可能である。ヒト化標的部分は、欧州特許出願第0,411,893A2号に開示するように、宿主レシピエントにおける抗体またはポリペプチドの免疫活性を減少させ、半減期の増加および有害な免疫反応の可能性の低下を可能にすることが認められている。マウス単クローン抗体は、好ましくは、ヒト化形式で用いられるべきである。抗原結合活性は、抗体の可変部分(Fv)の軽鎖および重鎖上に(各々につき3つ)位置する6つの相補性決定領域(CDR)のアミノ酸の配列および配座によって判断される。短ペプチドスペーサ配列を介して結合される軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(VH)から構成される25−kDa単鎖Fv(scFv)分子は、これまでに開発された最小抗体フラグメントである。技法は、scFvの遺伝子を含有する線状ファージの表面上にscFv分子を表示するように開発されている。広範な抗原特異性を有するscFv分子は、scFvファージライブラリの単一の大きなプールに存在することが可能である。本発明の方法において有用である高親和性単クローン抗体およびそのキメラ誘導体のいくつかの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる欧州特許出願第EP186,833号、PCT特許出願WO92/16553、および米国特許第6,090,923号に説明されている。
キメラ抗体は、異なる動物種由来の2つ以上の区画または部分により特徴付けられる免疫グロビン分子である。概して、キメラ抗体の可変領域は、マウス単クローン抗体等の非ヒト哺乳類抗体由来であり、免疫グロビン定常領域は、ヒト免疫グロビン分子由来である。好ましくは、領域および組み合わせの両方は、通常判断される低免疫原性を有する。
scFv分子の制限の1つとして、標的抗原とのその一価相互作用が挙げられる。scFvのその標的抗原への結合を改善する最も容易な方法の1つとして、多量体を形成することによって、その機能的親和性を増加させることが挙げられる。ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディを形成するための同一scFv分子の会合は、多数の同一F分子を含むことが可能である。ゆえに、これらの試薬は、多価であるが、単一特異的である。2つの異なるscFv分子の会合であって、各々が異なる親Ig由来のVHおよびVLドメインを含む会合は、完全な機能的な2重特異性ダイアボディを形成する。2重特異性scFvの独特な適用として、2つの(隣接)表面エピトープを介して同一の標的分子上で同時に2つの部位を結合することが挙げられる。これらの試薬は、単一のscFvまたはFabフラグメントよりも有意な親和力の利点を得る。例えば、ミニ抗体、2量体ミニ抗体、ミニボディ、(scFv)2、ダイアボディ、およびトリアボディを含む多数の多価scFvベースの構造は、操作されている。これらの分子は、広範な原子価(2から4つの結合部位)、サイズ(50から120kDa)、可撓性、および容易な産生に及ぶ。単鎖Fv抗体フラグメント(scFv)は、VHおよびVLドメインが少なくとも12残基のポリペプチドリンカーによって結合される場合、大部分が単量体である。単量体scFvは、全ての条件下において12および25アミノ酸長のリンカーと熱力学的に安定している。非共有ダイアボディおよびトリアボディ分子は、操作し易く、単一scFv分子の可変重鎖および可変軽鎖を連結するペプチドリンカーを短縮することによって産生される。scFv2量体は、高度な可撓性を提供する両親媒性ヘリックスによって結合され、ミニ抗体構造は、2重ヘリックスを介して連結される2つのミニ抗体(4つのscFv分子)を含有する2量体2重特異性(DiBi)ミニ抗体を形成するように修飾可能である。遺伝子融合またはジスルフィド結合scFv2量体は、中等度の可撓性を提供し、C末端Gly4Cys配列を付加する直接的クローニング技法によって生成される。scFv−CH3ミニボディは、直接(LDミニボディ)または極めて可撓性のヒンジ領域(Flexミニボディ)を介してIgG CH3領域に連結される2つのscFv分子から構成される。約80kDaの分子量により、これらの2価構造体は、有意に抗原に結合することが可能である。Flexミニボディは、マウスにおいて印象的な腫瘍局在化を呈する。2重特異性および3重特異性多量体は、異なるscFv分子の会合によって形成され得る。Fabまたは単鎖Fv抗体フラグメント(scFv)が、2量体、3量体、またはより大きな凝集体に複合体化されると、機能的親和性の増加が達成され得る。一価scFvおよびFabフラグメントを上回る多価scFvの最も重要な利点は、標的抗原への機能的結合親和性(親和力)の獲得である。高親和力には、scFv多量体が、別々の標的抗原に同時に結合可能であることが必要とされる。scFv単量体と比較してのscFvダイアボディに対する機能的親和性の獲得は有意であり、主としてオフ率の減少において見られ、これは、2つ以上の標的抗原への複数の結合、および1つのFvが解離した場合の再結合から生じている。このようなscFv分子を多量体に会合させる場合、これらを、単一標的抗原に対する高親和力、または異なる標的抗原に対する複数の特異性のいずれかを有して設計することができる。抗原への複数の結合は、Fvモジュールにおける正確な整合および配向に依存する。多価scFv標的における完全な親和力のためには、抗原結合部位は同じ方向を向いていなければならない。複数の結合が立体的に可能でない場合は、機能的親和性の明らかな獲得は、拡散速度および抗原濃度に依存する再結合の増加の効果に起因し得る。これらの特性を改善する部分と共役された抗体も本発明について想定される。例えば、これらの体内での半減期を増加させるPEGとの抗体共役を本発明のために使用することができる。免疫ライブラリは、未感作または免疫化動物または患者のBリンパ球由来の可変抗体フラグメントをコード化する遺伝子をPCR増幅に供することによって調製される。免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子群に特異的なオリゴヌクレオチドの組み合わせを使用する。免疫グロブリン生殖系列遺伝子を使用して、半合成抗体レパートリーを調製することが可能であり、可変フラグメントの相補性決定領域は縮退プライマーを使用するPCRによって増幅される。これらの単一ポットライブラリは、多数の抗原に対する抗体フラグメントを、単一のライブラリから単離できるという利点を有する。ファージディスプレイ技法を使用して、抗体フラグメントの親和性を増加させることが可能であり、新たなライブラリは、ランダムな、コドンに基づく、または部位異的な変異生成によって、個々のドメインの鎖を未感作レパートリー由来のフラグメントのものとシャッフルすることによって、または細菌ミューテーター株の使用によって、既存の抗体フラグメントから調製される。
代替として、SCID−huマウス、例えば、Genpharmによって開発されたモデルを使用して、抗体またはそのフラグメントを産生することが可能である。一実施形態では、多価相互作用の効果を利用することによって作製された、ペプタボディと称する新たな型の高親和力結合分子が想定される。半剛性ヒンジ領域を介して、短ペプチドリガンドが軟骨オリゴマーマトリクスタンパク質のコイルドコイルアセンブリドメインと融合し、5量体多価結合分子が得られた。いくつかの実施形態では、タンパク質結合薬剤は、例えば、抗リガンド抗体(Ab)および特異的標的物に対するAbの化学結合により産生される2重特異性抗体を使用することによって、組織特異的または腫瘍特異的標的物を標的とすることが可能である。化学的共役の制限を回避するために、抗体の分子共役を、細胞表面分子のリガンドおよび/またはキメラ阻害剤を指向させる組み換え2重特異性単鎖Abの産生のために使用することが可能である。代替として、いくつかの実施形態では、2つ以上のタンパク質結合分子を投与することが可能であり、例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質結合分子は、別の異なる抗体に共役される抗体であることが可能である。各抗体は、異なる標的部位抗原エピトープと反応する(同一または異なる標的部位抗原と会合)。薬剤が付着した異なる抗体は、所望の標的部位で付加的に蓄積する。抗体ベースまたは非抗体ベースの標的化部分を用いて、標的部位にリガンドまたは阻害剤を送達することが可能である。好ましくは、この目的のために、未調節の抗原または病気に関連する抗原についての天然結合薬剤を使用する。
抗リン酸−トポIS10抗体
本発明の全態様では、方法、キット、機械、ならびにコンピュータシステムおよび媒体は、トポIのリン酸化状態を検出するために、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在を検出するために、抗リン酸−S10−トポI抗体を使用することが可能である。適切な抗リン酸−S10−トポI抗体には、多クローン抗体、単クローン抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、およびFabフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。
抗リン酸−トポIS10抗体は、セリン10残基を含むトポIポリペプチドの抗原フラグメントから調製可能である。具体的には、抗原ポリペプチドは、少なくとも約5、および好ましくは少なくとも約10以上のアミノ酸を含有する。一実施形態では、抗リン酸−S10トポI抗体の生成に有用な抗原ポリペプチドは、
であり、この場合、セリンはリン酸化される(pS)。別の実施形態では、抗リン酸−S10トポI抗体の生成に有用な抗原ポリペプチドは、
であり、この場合、セリンは、リン酸化される(pS)。実施例で使用される抗リン酸−S10トポI抗体は、配列番号4のリン酸化ペプチドを使用して生成された。
適切な抗体を生成するための方法は、当業者によって容易に理解される。例えば、適切な単クローン抗体、具体的には、Fab部分を含有する抗体は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれるAntibodies − A Laboratory Manual Harlow and Lane, Eds. Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.(1988)に説明するハイブリドーマ技術を使用して調製され得る。
同様に、本明細書に開示する関連のポリペプチドに対する多クローン抗体の産生に使用され得る本技術分野において既知である種々の手順が存在する。多クローン抗体の産生では、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等を含むがこれらに限定されない種々の宿主動物は、ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは類似体を含む注射によって免疫化され得る。さらに、ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは類似体は、免疫現性キャリア、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に共役され得る。また、種々のアジュバントを使用して、フロインド(完全および不完全)、水酸化アルミニウム等の鉱物ゲル、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、BCG(カルメットゲラン菌)およびコリネバクテリウムパルバム等の潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれるがこれらに限定されない免疫応答を増加させてもよい。
また、セリン10残基上でリン酸化されるトポIポリペプチドに対して特異親和性を有して結合する候補抗リン酸−S10−トポI抗体のスクリーニングは、当技術分野において既知の多種多様の技法によっても達成可能である。例えば、抗体の免疫特異的結合のためのこのようなアッセイには、放射免疫測定法、ELISA(酵素免疫測定吸着法)、サンドイッチ免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル内沈降反応、免疫拡散アッセイ、原位置免疫測定法、ウエスタンブロット法、沈降反応、凝集反応、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、免疫電気泳動アッセイ等が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New York参照)。候補抗リン酸−S10−トポI抗体の抗体結合は、1次抗体上の検出可能な標識によって検出可能である。代替として、抗リン酸−S10−トポI1次抗体は、適切に標識された2次抗体または試薬とのその結合により検出可能である。多数の方法が、免疫測定法において結合を検出するための多数の方法が当行者に既知であり、これらは、本発明の範囲内にある。
生体試料
したがって、本態様および本明細書に説明する全ての他の態様の一実施形態では、本明細書に定義する生体試料は、ヒト生体試料、好ましくは、顕微鏡解剖されたヒト試料を含むことが可能であり、組織画分、具体的には腫瘍組織画分由来である。いくつかの実施形態では、組織腫瘍画分は、SCLC、結腸もしくは卵巣癌、または乳癌もしくは子宮頸癌組織画分を含むがこれらに限定されない難治性癌からのものである。いくつかの実施形態では、ヒト試料は、好ましくは、生検および/または外科的摘出から採取され、いくつかの実施形態では、ヒト試料は、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、トポIポリペプチドのリン酸化状態の検出を受ける前に、例えば、凍結生体試料として保管可能である。
いくつかの実施形態では、対象から組織(すなわち、生体試料)を採取した時と、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体によりそれを分析した時からのトポIポリペプチドのリン酸化状態の変化(すなわち、脱リン酸化またはリン酸化の増加)が存在しないように、リン酸−S10トポIポリペプチドのリン酸化状態を「固定」するために、生体試料を対象から得た後に処置する。いくつかの実施形態では、対象からの生体試料または組織の採取後にリン酸化状態が安定しないために、脱リン酸化が増加し得るか、またはリン酸化が増加して本明細書に開示する検出および分析に不正確さ(すなわち、偽陽性または偽陰性)がもたらされる場合、リン酸化状態が急速に改変(すなわち、脱リン酸化またはリン酸化)することから、これは重要である。したがって、いくつかの実施形態では、組織生検等の生体試料は、任意選択により、生体試料が本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体による分析を受ける前にトポIポリペプチドのリン酸化状態を「固定する」ように処置される。組織生検等の生体試料を固定するための方法は、当業者に周知であり、ホルムアルデヒド、ホルマリン、FAA固定剤、ならびに当業者に一般に知られている他の固定剤および方法を含む。
トポイソメラーゼI阻害剤
本明細書に説明する本発明の全態様のいくつかの実施形態において、トポI阻害剤は、体外、体内、または生体外のトポIポリペプチドの生物活性を実質的に減少させる、任意の薬剤である。例示的トポI阻害剤は、例えば、カンプトセシン(CTP)、これらに限定されないがイリノテカンおよびトポテカンを含むその類似体、ならびにその誘導体であるが、これらに限定されない。
本発明の一態様において、トポイソメラーゼI阻害剤は、一般に当業者に知られる任意のトポイソメラーゼIであり得る。例えば、カンプトセシン(CPT)は、最も広く研究されている哺乳類トポイソメラーゼI阻害剤である。R.C.Gallo et al.,J.Natl.Cancer Inst.,46,789(1971)、およびB.C.Giovanella et al.,Cancer Res.,51 3052(1991)を参照されたい。カンプトセシンに対して観察される広範囲の強力な抗腫瘍作用は、哺乳類トポソメラーゼIを効果的に害することができる、他の薬剤を識別するためのさらなる取り組みを促進している。例えば、カンプトセシン類似体は、米国特許第5,364,858号、第5,106,742号、第5,468,754号、第5,604,233号、第5,674,873号に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
カンプトセシンは、最初、Wall et al(M.E.Wall,M.C.Wani,C.E.Cook,K.H.Palmer,A.T.McPhail,and G.A.Sim,J.Am.Chem.Soc.,94,388(1966)によって、カンレンボク(Camptotheca acuminata)の木および樹皮から単離された5環性アルカロイドである。カンプトセシンは、高度に生物活性であり、核酸の生合成に対して強力な阻害活性を示す。さらに、カンプトセシンは、マウスにおける白血病L−1210またはラットにおけるWalker256腫瘍等の、実験的に移植した癌腫に対して強力な抗腫瘍活性を呈する。カンプトセシンおよびカンプトセシン類似体を合成するためのいくつかの方法が知られている。これらの合成方法には、(i)自然発生するカンプトセシンを合成的に修飾して、多数の類似体を産生する方法、および(ii)完全に合成的な方法が含まれる。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,604,463号、第4,545,880号、および第4,473,692号、ならびに欧州特許出願第0074256号は、前者の形式の合成方法の例である。本戦略の追加例は、日本特許第84/46,284号、第84/51,287号、および第82/116,015に認められる。これらの方法は、単離することが困難である、自然発生するカンプトセシンを必要とし、そのためこれらの方法は、大量のカンプトセシンまたは類似体の産生に適していない。
カンプトセシンおよびカンプトセシン類似体に対する完全に合成的な経路の多種多様の実施例は、以下の参照文献:
および米国特許第4,031,098号に認めることができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Wani et al,J.Med.Chem.,23,554(1980)は、デゾキシカンプトセシンを産出するための、三環式化合物と適切に置換したアルトアミノアルデヒドとの反応を伴う、カンプトセシンおよびカンプトセシン類似体の合成を開示する。次に、デゾキシカンプトセシンを酸素で処理し、カンプトセシン類似体を得る。
カンプトセシンおよびカンプトセシン類似体は、核内酵素トポイソメラーゼIを標的および阻害する薬剤である。カンプトセシンは、これらに限定されないが、20(S)−カンプトセシン、20(S)−カンプトセシンの類似体、20(S)−カンプトセシンの誘導体、20(S)−カンプトセシンのプレドラッグ、またはその医薬的活性代謝物を含み、本明細書においてCPTと総称される。
本明細書に開示する本発明の態様のうちのいずれか1つに従って、CPTは、20(S)−カンプトセシン、または20(S)−カンプトセシンの任意の類似体もしくは誘導体であり得る。20(S)−カンプトセシン類似体の実施例は、9−ニトロ−20(S)−カンプトセシンおよび9−アミノ−20(S)−カンプトセシンを含むが、これらに限定されない。20(S)−カンプトセシン誘導体の実施例は、9−メチル−カンプトセシン、9−クロロ−カンプトセシン、9−フルオロ−カンプトセシン、7−エチルカンプトセシン、10−メチル−カンプトセシン、10−クロロ−カンプトセシン、10−ブロモ−カンプトセシン、10−フルオロ−カンプトセシン、9−メトキシ−カンプトセシン、11−フルオロ−カンプトセシン、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトセシン、10,11−メチレンジオキシカンプトセシン、10,11−エチレンジオキシカンプトセシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシカンプトセシン、カンプトセシン20−0−プロピオン酸塩、カンプトセシン20−0−酪酸塩、カンプトセシン20−O−吉草酸塩、カンプトセシン20−O−ヘプタン酸塩、カンプトセシン20−O−ノナン酸塩、カンプトセシン20−O−クロトン酸塩、カンプトセシン20−0−2′、3′−エポキシ−酪酸塩、ニトロカンプトセシン20−0−酢酸、ニトロカンプトセシン20−0−プロピオン酸塩、およびニトロカンプトセシン20−0−酪酸塩を含むが、これらに限定されない。
「カンプトセシン」は、本発明で参照されるように、植物アルカロイド20(S)−カンプトセシン、20(S)−カンプトセシンの不水溶性または水溶性類似体および誘導体、カンプトセシンのプロドラッグ、および20(S)−カンプトセシンの代謝物を含む。カンプトセシン誘導体の実施例は、9−ニトロ−20(S)−カンプトセシン、9−アミノ−20(S)−カンプトセシン、9−メチル−カンプトセシン、9−クロロ−カンプトセシン、9−フルオロ−カンプトセシン、7−エチルカンプトセシン、10−メチル−カンプトセシン、10−クロロ−カンプトセシン、10−ブロモ−カンプトセシン、10−フルオロ−カンプトセシン、9−メトキシ−カンプトセシン、11−フルオロ−カンプトセシン、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトセシン、10,11−メチレンジオキシカンプトセシン、および10,11−エチレンジオキシカンプトセシン、および7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシカンプトセシンを含むが、これらに限定されない。
カンプトセシンのプロドラッグは、米国特許第5,731,316号に記載するようなエステル化カンプトセシン誘導体、例えば、カンプトセシン20−0−プロピオン酸塩、カンプトセシン20−0−酪酸塩、カンプトセシン20−O−吉草酸塩、カンプトセシン20−O−ヘプタン酸塩、カンプトセシン20−O−ノナン酸塩、カンプトセシン20−O−クロトン酸塩、カンプトセシン20−0−2′,3′−エポキシ−酪酸塩酸塩、ニトロカンプトセシン20−O−酢酸塩、ニトロカンプトセシン20−0−プロピオン酸塩、およびニトロカンプトセシン20−0−酪酸塩を含むが、これらに限定されない。
天然の未置換カンプトセシンは、天然抽出物の精製によって入手することができるか、またはStehlin Foundation for Cancer Research(Houston,Texas)から入手され得る。置換カンプトセシンは、文献で既知の方法を使用して入手することができ、または市販品供給業者から入手され得る。例えば、9−ニトロ−カンプトセシンは、SuperGen,Inc.(San Ramon,California)より入手することができ、9−アミノ−カンプトセシンは、Idec Pharmaceuticals(San Diego,California)より入手され得る。カンプトセシンおよびその種々の類似体、ならびに誘導体は、Sigma Chemicals等の標準的な精製化学製品供給業者からも入手することができる。
本明細書に記載するすべての態様において有用なカンプトセシンおよびカンプトセシン誘導体は、最適送達のために修飾することができる。例えば、最適送達方法の場合、カンプトセシンおよびカンプトセシン誘導体を任意の分子に共役することができ、例えば、IT101は、CYCLOSERT(登録商標)の共役、および強力な抗癌化合物カンプトセシンであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,270,808号に開示されている。TOCOSOLカンプトセシンは、SN−38の共役であるカンプトセシン化合物である。SN−38は、イリノテカンの活性成分、カンプトセシン類似体である。前臨床データは、TOCOSOLカンプトセシンが、イリノテカンより有効かつ耐性が高い可能性があり、より投与が容易で利便性が高くなることを示唆する。TOCOSOLカンプトセシンは、米国特許第7,223,770号に開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
第二世代カンプトセシン誘導体は、水溶性を高め、静脈内薬物投与を促進するように最適化されている。異なる企業および機関での種々のプログラムから生じるハイライトは、臨床診療で良好に使用される2つの化合物、イリノテカン2およびトポテカン3、および臨床開発の進行期にあるSN−38 4、エキサテカン5、リポソームラルトテカン6(OSI−211)およびCKD−602 7である。これらの化合物の化学構造は、 米国特許出願第US20080280935号の図1Aおよび1Bに示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
SN−38は、C10位にヒドロキシル基およびC7位にエチル基を含む、カンプトセシン誘導体である。イリノテカンは、C10位に側鎖およびC7位にエチル基を含む、カンプトセシン誘導体である(SN−38の誘導体とも見なされ得る)。イリノテカンは、Yakult本社で発見され、肺癌、子宮頸癌、および卵巣癌用として、1994年に日本で初めて承認された(CAMPTOTESIN(登録商標))。今日、米国ではPharmacia(CAMPTOSAR(登録商標))および欧州ではAventis(CAMPTO(登録商標))から発売されている。イリノテカンは、カルボキシルエステラーゼ、具体的にはhCE−2によって体内で開裂され、活性代謝物SN−38を放出するプロドラッグである。
イリノテカンの合成は、化学文献および特許に記載されている。イリノテカンの合成に対する一般的なアプローチは、SN−38を形成した後、側鎖をSN−38のC10位に付加し、それによってイリノテカンを形成することである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,604,463号は、本アプローチを説明する特許の一実施例であり、側鎖の活性形態を個別に形成した後、SN−38と反応させるか、またはC10ヒドロキシル基を活性化した後、個別の反応において側鎖を付加する。イリノテカンを合成するための別の方法は、米国特許出願第US20080280935号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
トポトテカントポイソメラーゼI阻害剤は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,660,861号に記載のとおり産生することができる。他のトポイソメラーゼI阻害剤を使用することができ、例えば、Hoechst33342(1)、2′−(4−エトキシフェニル)−5−(4−メチル−1−ピペラジニル)−2,5′−ビ−1H−ベンズイミダゾールは、トポイソメラーゼIの阻害剤であり、米国特許第5,807,874号に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
カンプトセシンの反合成類似体であるトポテカンは、体外で急性および慢性HIV−1感染の双方を阻害することが示された。J.L.Zhang,et al.″Topoisomerase inhibits human immunodeficiency virus type 1 infection through a topisomerase−independent mechanism in a cell line with altered topoisomerase I″Antimicrob. Agents Chemother.41:977−981(1997)。トポテカンの抗ウイルス効果は、トポイソメラーゼ変異したCPT−K5細胞株だけでなく、臨床分離株に急性感染した末梢血単核細胞(PBMC)、および最近HIVに感染し、腫瘍壊死因子α(TNF−α)によって活性化したOM10.1細胞においても認められた。本カンプトセシンは、細胞トポイソメラーゼI以外のウイルス複製における因子を標的とし、細胞毒性以外の手段によって、最近感染した細胞におけるサイトカイン仲介活性を阻害すると再度仮定した。
他のトポI阻害剤は、例えば、抗体(多クローン性または単クローン性)、中和抗体、抗体フラグメント、タンパク質、ペプチド模倣薬、アプタマー、オリゴヌクレオチド、ホルモン、低分子、核酸、核酸類似体、炭水化物、または本明細書で識別される遺伝子産生物の核酸および/もしくはタンパク質を不活性にするよう機能するその変異型、ならびに未識別のものを含むが、これらに限定されない。核酸は、例えば、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、偽相補PNA(pcPNA)、ロックされた核酸(LNA)、RNAi、ミクロRNAi、siRNA、shRNA等を含むが、これらに限定されない。トポI阻害剤は、化学薬品、低分子、化学物質、核酸配列、核酸類似体、またはタンパク質あるいはポリペプチド、もしくはその類似体またはフラグメントでもあり得る。いくつかの実施形態において、核酸トポI阻害剤は、DNAまたはRNAであり、核酸類似体は、例えばPNA、pcPNAおよびLNAであり得る。核酸トポI阻害剤は、単鎖または二重鎖であり得、関心のタンパク質をコード化する核酸、オリゴヌクレオチド、PNA等から成る群より選択することができる。そのような核酸配列は、例えば、これらに限定されないが、転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコード化する核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、低分子阻害核酸配列を含み、例えば、RNAi、shRNAi、siRNA、ミクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチド等を含むが、これらに限定されない。
代替として、トポI阻害剤は、タンパク質および/もしくはペプチドトポI阻害剤、またはそのフラグメントであり得る。例えば、トポI阻害剤は、例えば、変異タンパク質、治療用タンパク質、および組み換えタンパク質であり得るが、これらに限定されない。タンパク質およびペプチド阻害剤は、例えば、変異タンパク質、遺伝子組み換えタンパク質、ペプチド、合成ペプチド、組み換えタンパク質、キメラタンパク質、抗体、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、単鎖抗体およびFabフラグメント、キメラ抗体、修飾タンパク質、およびそのフラグメントも含み得る。
いくつかの実施形態において、トポI阻害剤は、核酸、核酸類似体、ペプチド、ファージ、ファージミド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、リボソーム、アプタマー、抗体、低分子または高分子有機もしくは無機分子、あるいはその組み合わせである。
トポI阻害剤に対して応答性であると識別される対象を治療する方法
トポI阻害剤の例示的実施例は、例えば、カンプトセシン(CTP)、およびイリノテカンとトポテカンとを含むがこれらに限定されないその類似体、ならびに本明細書の「トポI阻害剤」というセクションに開示するその誘導体であるが、これらに限定されない。
本発明の別の態様は、トポイソメラーゼI阻害剤の有効性の増加に関する。例えば、本明細書に記載するそのような一態様およびすべての他の態様において、生体試料が、トポIポリペプチドの陽性リン酸化状態を有すると判断された場合(すなわち、生体試料が、トポイソメラーゼIタンパク質のリン酸化を含む場合)、具体的に、生体試料が、本明細書に開示するような方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、トポIポリペプチドのS10残基のリン酸化を有すると判断された場合、該生体試料を入手した対象に、トポIのリン酸化を減少させる薬剤を投与することができ、例えば、トポIポリペプチドのS10を脱リン酸化する薬剤を、トポI阻害剤の投与と同時に、該対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、トポIを脱リン酸化する薬剤、例えば、トポIのS10を脱リン酸化する薬剤は、当該用語が本明細書に定義されるように、トポI阻害剤の投与前、同時、または後に投与することができる。
したがって、本発明の別の態様は、トポイソメラーゼI阻害剤に対する腫瘍細胞の感度を高める(すなわち、無反応性を減少させる)薬剤を対象に投与することに関し、トポイソメラーゼI阻害剤に対する腫瘍細胞の感度を高める薬剤(すなわち、トポI阻害剤感度薬剤)は、例えば、トポIの脱リン酸化、好ましくは、トポIのS10の脱リン酸化をもたらす薬剤である。そのような方法は、本明細書に開示するような方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して無反応性である可能性が高いと識別された場合に特に有用である。上述のとおり、トポIの脱リン酸化、好ましくはトポIのS10の脱リン酸化をもたらす薬剤の投与後、同時、または前に投与することができるトポI阻害剤は、カンプトセシン(CPT)、またはトポテカンおよびイリノテカン等のCTP類似体、およびその誘導体であり、CPT化合物、CPT代謝物、CPTに類似する骨格を有するその誘導体または類似体を含むが、これらに限定されない。
当業者であれば、本発明が参照するトポI阻害剤が、上述される特定の薬剤に限定さないが、トポI阻害剤として機能する任意の化合物または物質、すなわち、トポIポリペプチドの生物活性を減少させる任意の薬剤を含むことを理解するであろう。
DNA−PKの拮抗薬または阻害剤
トポイソメラーゼI阻害剤の有効性を増加させることに関する、本発明の本態様のいくつかの実施形態では、トポイソメラーゼI阻害剤に対する腫瘍細胞の感受性を増加させる(すなわち、無反応性を減少させ、本明細書ではトポI阻害剤感受性薬剤と称される)薬剤は、抗phospho−S10トポI抗体である。代替実施形態では、トポI阻害剤感受性薬剤は、キナーゼDNA−PKの阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼDNA−PKの阻害剤は、本明細書の実施例で開示するような、NU7026、2−モルホリン−4−イル)−ベンゾ[h]クロメン−4−one、またはその誘導体もしくは類似体である。DNA−PKのそのような阻害剤の実施例は、米国特許第7,402,607号、米国特許第7,226,918、および米国出願第US2007/238729号、第US2004/192687号、第US2008,0242664号、第US2008/0038277号、第US2007/0167441号、および第US2009/0035394号に開示されるものを含み、参照によりそれら全体がすべて本明細書に組み込まれる。DNA−PKのそのような阻害剤の他の実施例は、例えば、抗体(多クローン性または単クローン性)、中和抗体、抗体フラグメント、ペプチド、プロテイン、ペプチド模倣体、アプタマー、オリゴヌクレオチド、ホルモン、低分子、核酸、核酸類似体、炭水化物、または本明細書で識別される遺伝子産生物の核酸および/もしくはタンパク質を不活性にするよう機能するその変異型、ならびに未識別のものを含むが、これらに限定されない。核酸は、例えば、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、偽相補PNA(pcPNA)、ロックされた核酸(LNA)、RNAi、ミクロRNAi、siRNA、shRNA等を含むが、これらに限定されない。該阻害剤は、化学薬品、低分子、化学物質、核酸配列、核酸類似体、またはタンパク質もしくはポリペプチド、あるいはその類似体またはフラグメントから成る群より選択することができる。いくつかの実施形態では、核酸はDNAまたはRNAであり、核酸類似体は、例えば、PNA、pcPNA、およびLNAであり得る。核酸は、単鎖または二重鎖であってもよく、関心のタンパク質をコード化する核酸、オリゴヌクレオチド、PNA等から成る群より選択することができる。そのような核酸配列は、例えば、これらに限定されないが、転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコード化する核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、低分子阻害核酸配列、例えば、これらに限定されないが、RNAi、shRNAi、siRNA、ミクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチド等を含む。タンパク質および/またはペプチド阻害剤、もしくはそのフラグメントは、例えば、これらに限定されないが、変異タンパク質、治療用タンパク質、および組み換えタンパク質を含む。タンパク質およびペプチド阻害剤は、例えば、変異タンパク質、遺伝子組み換えタンパク質、ペプチド、合成ペプチド、組み換えタンパク質、キメラタンパク質、抗体、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、変性タンパク質、およびそのフラグメントも含み得る。
したがって、本態様および本明細書に記載するすべての他の態様のいくつかの実施形態では、トポI阻害剤を、当該トポI阻害剤に対する細胞の感受性を増加させる薬剤と組み合わせて投与し、一実施形態では、薬剤は、トポIポリペプチドの脱リン酸化を増加させる、例えば、トポIポリペプチドのセリン10におけるリン酸化を減少させる薬剤であり、代替実施形態では、該薬剤は、DNA−PKの生物活性を阻害する、したがって、DNA−PKによりトポIのリン酸化を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、DNA−PKの阻害は、DNA−PKをコード化する核酸転写の阻害、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の阻害を介して起こり得る。代替実施形態では、DNA−PKの阻害は、DNA−PKの遺伝子産物、例えば、DNA−PKのポリペプチドまたはタンパク質の発現の阻害および/または活性の阻害である。本明細書で使用する際、「遺伝子産物」という用語は、遺伝子から転写されるRNA、または遺伝子によってコード化されるか、もしくはRNAから翻訳されるポリペプチドを意味する。
いくつかの実施形態では、DNA−PKの阻害は薬剤による。任意の薬剤、例えば、核酸、核酸類似体、ペプチド、ファージ、ファージイミド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、リボソーム、アプタマー、抗体、低分子もしくは高分子有機あるいは無機分子、またはそれらの任意の組み合わせを使用することができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の方法において有用な薬剤は、DNA−PKの阻害剤として機能する薬剤、例えば、DNA−PKをコード化するmRNAの例示的阻害剤を含む。
本明細書に開示する方法において有用な薬剤は、遺伝子発現を阻害することもできる(すなわち、遺伝子の発現を抑制および/または抑止する)。そのような薬剤は、当該技術分野において「遺伝子サイレンサー」と称され、一般に当業者に知られている。実施例は、これらに限定されないRNA、DNA、または核酸類似体の核酸配列を含み、単鎖または二重鎖であり得、関心のタンパク質をコード化する核酸、オリゴヌクレオチド、核酸、核酸類似体、例えば、これらに限定されないが、ペプチド核酸(PNA)、偽相補PNA(pc−PNA)、ロックされた核酸(LNA)、およびそれらに誘導体等から成る群より選択され得る。核酸薬剤は、例えば、転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコード化する核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、低分子阻害核酸配列、例えば、RNAi、shRNAi、siRNA、ミクロRNAi(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド等も含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用するように、DNA−PKの阻害剤として本方法において有用な薬剤は、任意の種類の物質、例えば、化学薬品、核酸配列、核酸類似体、タンパク質、ペプチド、またはそのフラグメントであり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、薬剤は、任意の化学物質または部分であり、合成および自然発生する非タンパク質性物質を含むが、これに限定されない。ある実施形態では、該薬剤は、化学物質を有する低分子である。例えば、いくつかの実施形態では、該化学物質は、本明細書に開示するピリミジオンベースの化合物である。
代替実施形態では、本明細書に開示する方法において有用な薬剤は、タンパク質および/もしくはペプチド、またはそのフラグメントであり、DNA−PKの遺伝子発現またはDNA−PKタンパク質の機能を阻害する。そのような薬剤は、例えば、タンパク質変異型、変異タンパク質、治療用タンパク質、短縮タンパク質、およびタンパク質フラグメントを含むが、これらに限定されない。タンパク質薬剤は、変異タンパク質、遺伝子組み換えタンパク質、ペプチド、合成ペプチド、組み換えタンパク質、キメラタンパク質、抗体、中心体、微小体、三量体、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、修飾タンパク質、およびそのフラグメントから成る群より選択することもできる。
代替として、DNA−PKの阻害剤として本明細書に開示する方法において有用な薬剤は、化学薬品、低分子、高分子、もしくは物質または部分であり得、合成および自然発生する非タンパク質性物質を含むが、これに限定されない。ある実施形態では、該薬剤は、本明細書に開示する化学物質を有する低分子部分である。
特定の実施形態では、拮抗薬は、DNA−PKをコード化するポリヌクレオチド、またはそのフラグメントの発現の核酸ベースの阻害剤である。適切な分子は、低分子干渉RNA(siRNA)種、アンチセンスオリゴヌクレオチド等のアンチセンス組成物、および触媒アンチセンス核酸組成物を含む。適切な分子は、化学合成、組み換えDNA手順、またはアンチセンスRNAiの場合は、プロモータに結合した場合に体外または体内の転写によって、当業者に知られる方法で製造することができる。
RNA干渉(RNAi)として知られる、遺伝子発現を阻害するための適切な一技法(例えば、Chuang et al. (2000)PNAS USA 97: 4985)を、本発明の目的で、当該技術分野において知られる方法に従って使用して、DNA−PKの発現を阻害し得る(例えば、Fire et al. (1998)Nature 391: 806−811;Hammond,et al. (2001)Nature Rev,Genet.2:110−1119;Hammond et al. (2000)Nature 404:293−296;Bernstein et al. (2001)Nature 409: 363−366;Elbashir et al(2001)Nature 411: 494−498;WO99/49029およびWO01/70949、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。RNAiは、低分子干渉RNA分子(siRNA)による特定mRNAの破壊による選択的転写後遺伝子抑制の手段を意味する。siRNAは、通常、二重鎖RNAの開裂によって生成され、1つの鎖が不活性化されるメッセージと同一である。二重鎖RNA分子は、1つの鎖が、DNA−PKのmRNA転写の所定領域と同一であり、直接導入される場合に合成され得る。代替として、dsRNAに変換され得る、対応二重鎖DNA(dsDNA)を採用することができる。RNAiにおいて使用するため、および転写後遺伝子抑制を達成するために適切なsiRNAを合成するための方法は、当業者に知られている。当業者であれば、DNA−PKの発現を阻害することができる適切なsiRNA組成物の範囲は、過度の実験なしに、当業者に知られる通常手順を使用して、問題となっている遺伝子の配列に関する知識に基づいて識別および生成され得ることも理解するであろう。
単離した阻害核酸組成物は、DNA−PKをコード化するポリヌクレオチドの少なくとも一部分に特異的な核酸配列から成り、該核酸組成物は、腫瘍細胞におけるDNA−PKの発現を実質的に阻害する。代替として、阻害核酸組成物は、DNA−PKの発現を規制する1つ以上の遺伝子をコード化するポリヌクレオチドの少なくとも一部分に特異的な核酸配列から成り得る。DNA−PKの発現を規制する遺伝子は、例えば、DNA−PKの転写因子、補助活性化因子、活性化因子、エンハンサー、および補因子を含むが、これらに限定されない。
当業者であれば、標的配列とsiRNA配列との間のヌクレオチド配列が、必ずしも100%一致する必要がないことを理解するであろう。その間の不一致の許容範囲は、主として配列内の不一致の位置に依存する。
本発明の特定の実施形態では、適切な阻害核酸分子は、ベクターにおける腫瘍細胞に投与され得る。ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、または挿入のために適合される任意の他の適切な媒体、および真核細胞への導入のための外来配列であり得る。ベクターは、阻害核酸分子のDNA配列のRNAへの転写を指向させることができる、発現ベクターであり得る。ウイルス発現ベクターは、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、エプスタインバーウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、および上記のうちのいずれかのアデノ関連ベースのベクターまたはハイブリッドウイルスから成る群より選択され得る。位置実施形態では、該ベクターはエピソームである。適切なエピソームベクターの使用は、腫瘍細胞における阻害核酸分子を高コピー数超過染色体DNAで維持する手段を提供し、それによって、染色体の統合の潜在的影響を排除する。
DNA−PKの発現を実質的に阻害するさらなる手段は、リボザイム等の触媒アンチセンス核酸組成物を導入することによって達成され得、RNA転写を開裂することができ、それによって野生型タンパク質の産生を回避する。リボザイムは、リボザイム触媒部位の側面に位置する標的に相補的な配列の2つの領域によって、特定の配列を標的とし、アニールされる。結合後、リボザイムは、部位特異的様式で標的を開裂する。DNA−PKのイソ型の配列を特異的に認識および開裂するリボザイムの設計および試験は、当業者によく知られる技術によって達成され得る(例えば、Lleber and Strauss,(1995)Mol Cell Biol 15:540.551の開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
DNA−PKの代替拮抗薬は、抗体を含み得る。適切な抗体は、多クローン性抗体、単クローン性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、およびFabフラグメントを含むが、これらに限定されない。
抗体は、関心のポリペプチドのフラグメントの個別の領域から調製され得る。抗原ポリペプチドは、少なくとも約5、および好ましくは、少なくとも約10のアミノ酸を含む。
適切な抗体を生成するための方法は、当業者には容易に理解されるであろう。例えば、通常、Fab部分を含む適切な単クローン性抗体は、Antibodies−A Laboratory Manual Harlow and Lane,Eds. Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1988)に記載されるハイブリドーマ技術を使用して調製され得、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
同様に、本明細書に開示するような関心のポリペプチドに対する多クローン性抗体の産生のために使用され得る、種々の手順が当該技術において知られている。多クローン性抗体の産生の場合、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等を含むが、これらに限定されない種々の宿主動物を、ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは類似体を注射することによって免疫することができる。さらに、該ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは類似体は、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等の免疫原性担体に共役することができる。また、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウム等のゲル状鉱物、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメットゲラン菌)およびコリネバクテリウムパルバム等の潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、これらに限定されない種々のアジュバントを使用して、免疫反応を増加させてもよい。
所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野において知られる多様な技法によって達成することもできる。抗体の免疫特定結合のアッセイは、放射免疫測定法、ELISA(酵素免疫測定吸着法)、サンドイッチ免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル内沈降反応、免疫拡散アッセイ、原位置免疫測定法、ウェスタンブロット法、沈降反応、凝集反応、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、および免疫電気泳動アッセイ等を含むが、これらに限定されない(例えば、Ausubel et al.,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参照)。抗体結合は、一次抗体上の検出可能な標識によって検出され得る。代替えとして、一次抗体は、適切に標識される二次抗体または試薬との結合によって検出され得る。免疫測定法において結合を検出するための多くの方法が当業者によって知られており、本発明の範囲内である。
例えば、低分子または他の非核酸もしくは非タンパク質性阻害剤を含む、DNA−PKの発現を阻害するための代替形態も、本発明の範囲内に含まれる。そのような阻害剤は、通常技術を使用するスクリーニングにより、当業者によって識別され得る。
機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体を使用するトポIのリン酸化状態を決定する自動方法
本発明の全態様では、トポIのリン酸化状態、具体的に、リン酸−S10−トポIポリペプチドの存在を判断するための方法は、自動機械またはシステムを使用して実行することができる。そのような機械およびシステムは、報告を生成し、例えば、トポIのリン酸化状態、例えば、生体試料におけるリン酸−S10−トポIポリペプチドの存在または非存在を表示する可視画面または印刷可能な報告、および生体試料が、それぞれトポI阻害剤に対して非反応性である可能性が高いか、または反応性である可能性が高いかに関する報告を表示する。
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、(i)トポIのリン酸化状態、具体的にリン酸−S10−トポIポリペプチドの存在を判断するステップと、(ii)対象がトポI阻害剤に応答性である可能性を有するか否かを表示または報告するステップと、を実行するための機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体、したがって、トポI阻害剤が、対象における癌の治療に有効である可能性が高いか否かの予後指標も提供する。
本発明の本態様の実施形態は、機能モジュールによって説明され、コンピュータ可読媒体上に記録される、コンピュータ実行可能な指示によって定義され、実行時に方法ステップをコンピュータに実行させる。該モジュールは、明確さの目的で、機能別に分離されている。しかしながら、該モジュールは、個別のコードのブロックに対応する必要はなく、説明される機能は、種々の媒体に格納される種々のコード部分の実行によって、種々の時間に実行され得ることを理解すべきである。さらに、該モジュールは、他の機能を実行し得ること、したがって、該モジュールは、任意の特定の機能または一連の機能を有するものに限定されないことが理解されるはずである。
データ処理システム:
本発明の一態様および本明細書に説明する全ての他の態様では、機械を使用して、生体試料におけるトポIポリペプチドのリン酸化状態を判断することができ、例えば、対象からの生体試料に関するデータを入手するための機械は、生体試料を保持する生体試料容器と、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在を検出するように、例えば、出力データ、いくつかの実施形態では、コンピュータ可読媒体フォーマットの出力データを生成する生体試料におけるリン酸−S10トポIを検出するように構成される判断モジュールと、判断モジュールからの出力データを格納するように構成されるストレージ機器と、判断モジュールからの出力データを、格納された参照データおよび対照データ等のストレージ機器上に格納されるデータと比較するように適合される比較モジュールと、クライアントコンピュータにおいてユーザのために読み出されたコンテンツのページを表示するためのディスプレイモジュールとを備え、(i)読み出されたコンテンツは、トポイソメラーゼIポリペプチドの存在であり、および/または(ii)読み出されたコンテンツは、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在であって、例えば、読み出されたコンテンツは、リン酸−S10トポIの存在または非存在であり、および/または(iii)読み出されたコンテンツは、トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在、例えばリン酸−S10トポIの非存在であって、これは、対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得るという信号であり、および/または(iv)読み出されたコンテンツは、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在等のトポイソメラーゼIのリン酸化の存在であって、これは、対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応であり得るという信号である。
コンピュータシステム:
本発明の一態様は、対象がトポI阻害剤に対して反応するかを判断するために使用可能であるコンピュータシステムである。このようなある実施形態では、コンピュータシステムは、判断モジュールに接続され、生物標本に関する判断モジュールからの出力データを入手するように構成され、判断モジュールは、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在、例えば、対象内における、または対象から入手された生体試料におけるリン酸−S10トポIポリペプチドの存在を判断するように構成され、コンピュータシステムは、判断モジュールからの出力データならびに参照データを格納するように構成される(a)ストレージ機器を備え、ストレージ機器は、(b)比較モジュールに接続され、比較モジュールは、一実施形態では、ストレージ機器上に格納される出力データを、格納された参照データと比較するように適合され、代替実施形態では、出力データをそれ自体を比較するように適合され、比較モジュールは、報告データを生成し、クライアントコンピュータ上でユーザのために読み出されたコンテンツ(すなわち、比較モジュールからの報告データ)のページを表示するための(c)ディスプレイモジュールに接続され、読み出されたコンテンツは、(i)トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在であって、例えば、読み出されたコンテンツは、リン酸−S10トポIの存在または非存在であることと、(ii)トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在、例えばリン酸−S10トポIの非存在と、(iii)リン酸−S10トポIポリペプチドの存在等のトポイソメラーゼIのリン酸化の存在と、(iv)対象が、陰性リン酸化状態を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより非反応であり得ることを示す陽性試験結果(すなわち、陽性S10トポIリン酸化状態等の陽性リン酸化状態)と、(v)対象が、陽性リン酸化を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより反応し得ることを示す陰性試験結果(すなわち、陰性S10トポIリン酸化状態等の陰性リン酸化状態)であるのうちの任意の1つまたは組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、比較モジュールは、ストレージ機器上に格納された出力データを、それ自体または格納された参照データと比較し、陽性試験結果を示す陽性S10トポIリン酸化状態(すなわち、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在)を計算し、報告データを生成して、対象が、陰性リン酸化状態を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより非反応であり得ることを示し、比較モジュールからの報告データは、ディスプレイモジュールから読み出され、ディスプレイモジュール上に表示される。
本発明の一態様および本明細書に説明する全ての他の態様では、コンピュータ可読媒体を使用して、癌を患っている対象または癌の危険性のある対象からトポIポリペプチドのリン酸化状態を判断することができ、例えば、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ上で方法を実装するために判断モジュールおよび比較モジュールを含むソフトウェアモジュールを規定するために、コンピュータ可読命令がその上に記録され、上記方法は、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在または非存在等のトポIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在を測定した判断モジュールから参照データおよび出力データを格納するように構成されるストレージ機器と、報告データを生成する比較モジュールであって、ストレージ機器上に格納されたデータを比較するように、例えば、判断モジュールからの出力データを、それ自体または代替として参照データと比較するように適合される比較モジュールと、クライアントコンピュータ上において、ユーザのための、比較モジュールからの報告データである読み出されたコンテンツのページを表示するためのディスプレイモジュールとを備え、読み出されたコンテンツは、(i)トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在であって、例えば、読み出されたコンテンツは、リン酸−S10トポIの存在または非存在であることと、(ii)トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在、例えばリン酸−S10トポIの非存在と、(iii)リン酸−S10トポIポリペプチドの存在等のトポイソメラーゼIのリン酸化の存在と、(iv)対象が、陰性リン酸化状態を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより非反応であり得ることを示す陽性試験結果(すなわち、陽性S10トポIリン酸化状態等の陽性リン酸化状態)と、(v)対象が、陽性リン酸化を有する癌を患っている対象よりも、トポI阻害剤に対してより反応し得ることを示す陰性試験結果(すなわち、陰性S10トポIリン酸化状態等の陰性リン酸化状態)のうちの任意の1つまたは組み合わせを含む。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、本発明の実施形態の機能モジュールは、判断モジュール、ストレージ機器、比較モジュールおよびディスプレイモジュールを含む。該モジュールは、1つまたは複数のコンピュータネットワークを使用することによって、1つまたは複数のコンピュータを実行することができる。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、したがって、本発明は、トポIのリン酸化状態に基づいて、具体的に、トポI阻害剤が対象において有効性を欠き得る(すなわち、該対象は、トポI阻害剤に対して非反応性である可能性が高い)ことを示すリン酸−S10トポIポリペプチドの存在、発現プロファイル、または配列情報に基づいて、対象がトポI阻害剤に対して応答性であり得るか否かを判断する方法を実行するための自動機械、コンピュータシステム、およびコンピュータ可読媒体を提供する。
図15に示すコンピュータシステム150、およびコンピュータ可読媒体は、トポIのタンパク質リン酸化プロファイルに基づいて、具体的に、総トポIタンパク質レベルに比較したリン酸−S10トポIタンパク質の%に基づいて、対象がトポI阻害剤に対して応答性であり得るか否かを判断する方法を実行するための単なる本発明の例示的実施形態であり、本発明の範囲を制限するものではない。コンピュータシステムおよびコンピュータ可読媒体の変型例も可能であり、本発明の範囲内に含まれるものとする。
機械のモジュール、またはコンピュータ可読媒体において使用される機械のモジュールは、多数の構成を想定し得る。例えば、機能は、単一の機械上で提供され得るか、または複数の機械に分配され得る。
ここで図面を参照して、図12は、本発明の実施形態に従って、対象がトポI阻害剤に対して応答性であるか否かを判断するための機械10のブロック図を表す。生体試料20を対象から入手し、生体試料容器30に入れる。容器30を判断モジュール40に配置し、該判断モジュールは、トポIのリン酸化状態を測定および判断するための手段、例えば、これに限定されないが、質量分析50の使用、またはこれに限定されないが、抗リン酸−S10トポI抗体等のタンパク質結合分子を使用する等の免疫検出手段等の別の手段である。いくつかの実施形態では、トポIのリン酸化状態、例えば、リン酸−S10トポIの存在またはレベルを判断する手段は、例えば、抗トポI抗体および抗リン酸−S10トポI抗体に限定されないタンパク質結合分子を含む、抗体アレイによる。いくつかの実施形態では、判断モジュール40は、トポIポリペプチドの総レベル(すなわち、リン酸化および非リン酸化トポIタンパク質レベルの合計)も判断する。出力データ60は、ストレージモジュール70に格納され、参照データを含むこともできる。比較モジュール80は、トポIのS10のリン酸化のレベルを格納した参照データと比較するための比較ソフトウェアプログラムまたはアルゴリズム等のコンピュータ可読媒体90を含み、いくつかの実施形態では、該比較モジュール80は、生体試料中のリン酸−S10トポIタンパク質の%をトポIタンパク質の総量から計算する。比較モジュール80は、該比較モジュール80から読み取られたコンテンツ100を表示するための手段である、ディスプレイモジュール110によって表示される、読み取られたコンテンツ100として読み取られる、報告データ105を生成する。いくつかの実施形態では、ディスプレイモジュール110は、コンピュータ画面120、またはプリンタ130から印刷される報告140であり得る。ディスプレイモジュール110は、ディスプレイ120、プリンタ130、スピーカ、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、プリンタ、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、表面電界ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)等も含み得る。一実施形態では、表示されたデータは、対象がトポI阻害剤に対して応答性でないことの陽性表示である。いくつかの実施形態では、表示された情報は、有効であるトポI阻害剤の推定有効性%のスコアである。単に例証的な例として、総トポIポリペプチドの約60%が、S10残基上でリン酸化されず、総トポIポリペプチドの約40%が、リン酸−S10トポIとして存在することをモジュールが計算する場合、および60%スコアが、トポIポリペプチド上のセリン10が非リン酸化である癌を患っている対象に比べ、癌を患っている対象におけるトポI阻害剤が約60%応答性であり得ることを示す(すなわち、リン酸−S10−トポIの非存在が検出されるそのような対象が、トポI阻害剤が100%応答性であり得ることを示す)場合、60%スコアが表示される。
図13は、対象が、本発明の実施形態において、トポI阻害剤に応答性であるか否かを判断するための自動コンピュータシステム150のフロー図を示す。例示的に、スタンドアロンコンピュータ(図示せず)、またはクライアントとして機能する1つ以上のネットワークコンピュータ160を使用して、医師、医療専門家、および/またはアシスタントによりアクセスされるように、システム150を適合してもよい。そのようなクライアント160は、順に、1つ以上の従来のパーソナルコンピュータおよびワークステーションを含み得、「ファット」クライアントまたは「シン」クライアントのいずれかとして作動する。それにもかかわらず、他のクライアント102、例えば、ワイヤレスアクセスプロトコル(すなわち、WAP)を使用する、ウェブ対応の携帯機器(例えば、Palm,Inc.,Santa Clara,Calif.U.S.A.製造のPalm V(登録商標)オーガナイザ、Windows CE機器、および「スマート」フォン)、およびインターネット家電は、本発明の精神および範囲内に含まれることを理解されたい。
上記種類のクライアント160は、ネットワーク170を経由してシステム150にアクセスし得る。ネットワーク170は、多数のコンピュータ、および通信設備により接続される関連機器を含み得る。ネットワークは、ケーブル等の永久接続、または電話もしくは他の通信リンクを介するもの等の仮接続を伴い得る。ネットワークの例は、 Internet等のインターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、およびインターネットとイントラネット等のネットワークの組み合わせを含む。「ネットワーク」という用語の使用によって、前述は、本発明を任意の特定の有線または無線ネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク(すなわち、LAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(すなわち、MAN)、または広域ネットワーク(すなわち、WAN)に限定するものではないことを理解されたい。ネットワーク170は、インターネット(「ワールドワイドウェブ」としても知られる)を含み得るが、同様に、イントラネット、エクストラネット、および仮想プライベートネットワーク(すなわち、VPN)等を含み得る。
本発明の実施形態に従って、システム150は、ユーザインターフェース180、データベース210、判断モジュール40、ストレージモジュール30、比較モジュール80、およびディスプレイモジュール110を備える機械10、治療シーケンサ190、および診断トラッカー220を含み得る。集合的に、ユーザインターフェース180、機械10、治療シーケンサ190、および診断トラッカー120は、トポI阻害剤予後アプリケーション155を含み得る。
ユーザインターフェース180を使用して、システム115と相互作用してもよく、データおよびデータ比較を図式的に見るステップを含む。ユーザインターフェース180は、ユーザが、例えば、どの対象を分析するか、どの対象または時点のデータを収集するか、どのデータ表示を使用するか等を特定することを許可し得る。
データベース210は、患者から収集されるデータを含み得る。データベース210は、集約された、または統計的に処理されたデータを含み得る。該データは、健康な患者および/または罹患した患者から収集され得る。データは、疾患の種類、例えば、癌の種類、ならびに臨床試験情報、トポI阻害剤応答性、伝記的および人口統計学的対象情報に従って分類され得る。データベース210は、特定のトポI阻害剤の有効性を対象の遺伝的背景および他の関連対象情報と相互に関連付けるデータも含み得る。
機械10は、データベースからの患者データおよび/またはデータを分析し得る。機械10は、患者試料をデータベース210の統計的に処理されたデータと比較して、対象癌およびトポI阻害剤に対する応答性の診断および予後を支援し得る。例えば、機械10は、乳癌患者のタンパク質トポIリン酸化プロファイルを、他の乳癌患者のトポIリン酸化プロファイルの統計的に処理されたデータと比較して、どの種類の乳癌がトポI阻害剤に応答性であるかを判断し得、癌の治療に使用可能なトポI阻害剤を含む、1つ以上の抗癌治療を示唆し得る。
治療シーケンサ190は、治療過程を提案し、順序付ける。そのような治療提案は、トポI阻害剤を用いる単剤治療であり得、対象は、トポI阻害剤、または薬剤の組み合わせ、例えば、トポI阻害剤とトポI阻害剤感受性薬剤との組み合わせに対して応答性であることが識別され、対象は、トポI阻害剤に対して非反応性であると識別される。代替実施形態では、トポI阻害剤でない抗癌薬剤を用いる治療が提案され、該対象はトポI阻害剤に対して非反応性であると識別される。代替として、提案される治療は、トポI阻害剤の反復投与であり得、該対象は、すべてではないが、セリン10上でリン酸化されるいくらかのトポIポリペプチドを有する。
診断トラッカー200は、治療過程における患者の経過を追跡し得る。
図14は、図13に例証される予後アプリケーション155を実行するように構成され得る、コンピュータシステム151の例示的ブロック図を示す。コンピュータ160は、バス220、比較モジュール80、メモリ240、読み取り専用メモリ(ROM)230、ストレージ機器30、ディスプレイデータ110、判断モジュール40、および通信インターフェース250を含み得る、1つ以上の構成要素を含み得る。バス220は、コンピュータ160、比較モジュール80、メモリ240、読み取り専用メモリ(ROM)230、ストレージ機器30、ディスプレイデータ110、判断モジュール40、および通信インターフェース250の構成要素間の通信を許可する、1つ以上の相互接続を含み得る。
比較モジュール80は、命令を解釈して実行し得る任意の種類のプロセッサ、マイクロプロセッサ、または処理論理であり得る(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))。比較モジュール80は、単一の機器(例えば、シングルコア)および/または一群の機器(例えば、マルチコア)を含み得る。比較モジュール80は、1つ以上の実施形態を実装するよう構成されるコンピュータ実行可能命令を実行するよう構成される論理を含み得る。命令は、メモリ240またはROM230内に常駐し得、コンピュータ可読媒体260と関連する命令を含み得る。
メモリ240は、1つ以上の実施形態を実装するよう構成される命令を格納するよう構成され得る、コンピュータ可読媒体260であり得る。メモリ240は、比較モジュール240にアクセス可能なプライマリーストレージであってもよく、ダイナミックRAM(DRAM)機器、フラッシュメモリ機器、スタティックRAM(SRAM)機器等のRAM機器を含み得る、ランダムアクセスメモリ(RAM)を含み得る。[0076]ROM230は、比較モジュール80に関する情報およびコンピュータ実行可能命令、またはコンピュータ可読媒体260を格納し得る、不揮発性ストレージを含み得る。コンピュータ実行命令260は、比較モジュール80によって実行される命令を含み得る。
ストレージ機器30は、比較モジュール80に関する情報および命令を格納するよう構成され得る。ストレージ機器30の例は、磁気ディスク、光学ディスク、フラッシュメモリ等を含み得る。情報およびコンピュータ実行命令および情報は、ストレージ機器30に含まれる媒体上に格納され得る。媒体の例は、磁気ディスク、光学ディスク、フラッシュメモリ等を含み得る。ストレージ機器30は、単一のストレージ機器または複数のストレージ機器を含み得る。さらに、ストレージ機器30は、コンピュータ160に直接取り付けてもよく、および/もしくはコンピュータ160に関して遠隔であり得、ネットワーク170および/もしくは別の種類の接続、例えば、専用リンクまたはチャンネルを介してそこに接続され得る。
判断モジュール40は、例えば、ユーザからコンピュータ160への情報の入力を許可し得る、任意の機序または機序の組み合わせを含み得る。判断モジュール40は、例えば、ユーザからコンピュータ160に関する情報を受信するよう構成される論理を含み得る。データを判断モジュール40に入力する方法の例は、キーボード、マウス、タッチセンサー式ディスプレイ機器、マイク、ペンベースのポイント機器、および/またはバイオメトリック入力機器等を含み得る。
ディスプレイモジュール110は、コンピュータ160から情報を出力し得る、任意の機序または機序の組み合わせを含み得る。ディスプレイモジュール110は、コンピュータ160から情報を出力するよう構成される論理を含み得る。ディスプレイモジュール110の実施形態は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、プリンタ、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、表面電界ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)等を含み得る。
通信インターフェース250は、コンピュータ160をネットワーク170と連動させるよう構成される論理を含み、コンピュータ160が、ネットワーク170に接続される他の物質と情報を交換できるようにし得る。通信インターフェース250は、任意のトランシーバ状の機序を含み得、コンピュータ160が、他の機器および/またはシステム、例えば、クライアント、サーバ、ライセンス管理者、ベンダー等と通信できるようにする。通信は、データネットワーク等の通信媒体上で起こり得る。通信インターフェース250は、通信媒体に接続される1つ以上のインターフェースを含み得る。該通信媒体は、有線または無線であり得る。通信インターフェース250は、内蔵型ネットワークアダプタ、ネットワークインターフェースカード(NIC)、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(PCMCIA)ネットワークカード、カードバスネットワークアダプタ、無線ネットワークアダプタ、ユニバーサルシリアルバス(USB)ネットワークアダプタ、モデムまたはコンピュータ160を任意の種類のネットワークと連動させるのに適した任意の他の機器として実装され得る。
実施形態は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアのいくつかの組み合わせを使用して実装され得ることに留意されたい。プロセッサにおける実行のためのコンピュータ実行命令を含むコンピュータ可読媒体は、種々の実施形態を格納するよう構成され得ることにさらに留意されたい。コンピュータ可読媒体は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、取り外し可能なディスク、取り外し不可能なディスク等を含み得る。さらに、無線信号、ワイヤ上を通過する電気信号、光学ファイバ上を通過する光学信号等の種々の電磁信号をコード化して、本発明の実施形態であるコンピュータ実行命令および/またはコンピュータデータを、例えば、通信ネットワーク上で実行してもよいことに留意されたい。
実施形態は、ソフトウェア構成要素として、多数の異なる方法で具体化され得る。例えば、スタンドアロンソフトウェアパッケージであり得るか、より大きいソフトウェア製品、例えば、医療診断製品等に「ツール」として組み込まれるソフトウェアパッケージであってもよい。ネットワーク、例えば、ウェブサイトから、スタンドアロン製品または既存のソフトウェアアプリケーションにおけるインストールのためのアドインパッケージとしてダウンロードされてもよい。クライアントサーバソフトウェアアプリケーション、またはウェブ対応ソフトウェアアプリケーションとしても使用可能であり得る。
図15は、対象がトポI阻害剤に対して応答性であるか否かを分析するための命令のフローチャートを示す。ブロック260では、生体試料を生体試料容器に配置する。生体試料の例は、生検組織、培養液内で成長した試料、レーザー顕微解剖した細胞、FAC分類細胞、細針吸引、コア生検、非細胞体液等であり得る。ブロック270では、例えば、RPMA、ELISA、懸濁ビーズアレイ(例えば、Lumuinex)、表面プラズモン共鳴、エバネセント波、カンチレバーベースのナノセンサ、免疫蛍光法、免疫組織化学、MRI等を含む、本明細書に開示するような熟練者の任意の分析技法を使用して、リン酸化状態を判断モジュール40によって判断する。判別モジュール40からの出力データ100は、ストレージ機器30上に格納される。ブロック280では、出力データ100は、ストレージモジュール40上に格納あれ、ブロック290では、比較モジュールが、出力データ100をストレージ機器40上に格納された参照データと比較する。ブロック300では、比較モジュールにより実行される分析は、参照データと比較して、生体試料中のリン酸−トポIが存在するか否かを判断し、分析がリン酸−トポIの存在を判断する場合、分析はブロック310に進み、リン酸−S10トポIが存在するか否かを判断するが、分析がリン酸−トポIの非存在を判断する場合、ディスプレイモジュール110は、リン酸−S10トポIが存在する、癌を患っている対象に比べ、対象がトポI阻害剤に対してより応答性があることを表示する(330)。ブロック320では、分析がリン酸−S10トポIの非存在を判断する場合、ディスプレイモジュール110は、リン酸−S10トポIが存在する、癌を患っている対象に比べ、対象がトポI阻害剤に対してより応答性があることを表示する(330)。分析が、リン酸−S10トポIの存在を判断する場合、分析はブロック320に進み、総トポIポリペプチド量のリン酸−S10トポIの%を計算し、リン酸−S10トポIの%が所定の閾値レベルより上である場合、ディスプレイモジュール110は、リン酸−S10トポIが存在しない、癌を患っている対象に比べ、対象がトポI阻害剤に対してより応答性である可能性が低い(すなわち、対象は応答性であり得る)ことを表示する(340)。リン酸−S10トポIの%が所定の閾値レベルを下回る場合、ディスプレイモジュール110は、ブロック350に示される、リン酸−S10トポIが存在しない、癌を患っている対象に比べ、対象がトポI阻害剤に対して応答性であり得ることを表示する。ブロック360では、結果データまたはディスプレイデータは、任意により患者または医師に伝送される。ブロック370は、プログラムのエンドポイントである。例示的に、コンピュータは、SGI Octane R1000、およびIBM互換性PC(ウィンドウズおよびLinuxプラットフォームの双方)、ならびに他の類似するコンピュータシステム等のコンピュータワークステーションの形態を取り得る。
したがって、いくつかの実施形態では、システムまたは比較モジュールは、対象がある所定の閾値レベルを上回るか否かを判断し、対象がトポI阻害剤に対して応答性でないと識別され得ることを表示する出力データ100を生成する。いくつかの実施形態では、所定の閾値レベルは、レベル3であり、(総トポIポリペプチドからの)リン酸−S10トポIポリペプチドの%は、約25%以上であり、閾値レベルが3を下回る(すなわち、25%未満)の対象に比べ、対象はトポI阻害剤に対して非反応性であり得る。従って、いくつかの実施形態では、対象がトポI阻害剤に対して非反応性であるか否かを識別するための所定の閾値レベルは、25%以上であり、総トポIポリペプチドに対する25%以上(すなわち、少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%以上)のリン酸−S10トポI阻害剤の%を有する対象は、トポI阻害剤に対して非反応性であると識別されるが、総トポIポリペプチドに対する25%未満(すなわち、約20%、または約10%、または約5%、または約2%以下)のリン酸−S10トポI阻害剤の%を有する対象は、トポI阻害剤に対して応答性、または部分的に応答性であると識別される。
いくつかの実施形態では、比較モジュールにより実行される分析(ブロック300)は、総トポIポリペプチドのリン酸−S10トポIポリペプチドの%を判断し、判断モジュール40からの出力データ100は、生体試料中の総トポIポリペプチドのリン酸−S10トポIポリペプチドの%を特定の区分、例えば、本明細書に開示するようなグレード1、2、3および4に分類する。例えば、出力データ100は、4レベルで分類され得る、グレード(すなわち、非リン酸−S10トポIポリペプチドに比較したリン酸−S10トポIポリペプチドのレベル)であり得る。例えば、これに限定されないが、レベル1は、約0%〜10%レベルのリン酸−S10トポIポリペプチドであり、トポI阻害剤に対して対象が完全に応答性であり得ることを示し、レベル2は、約10〜25%レベルのリン酸−S10トポIポリペプチドであり、トポI阻害剤に対して対象が部分的に応答性であり得ることを示し、レベル3は、25〜50%レベルのリン酸−S10トポIポリペプチドであり、トポI阻害剤に対して対象が非応答性であり得ることを示し、レベル4は、50%を上回る任意のレベル、例えば、少なくとも50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約100%リン酸−S10トポIポリペプチドであり、トポI阻害剤に対して対象が完全に非応答性であり得ることを示す。いくつかの実施形態では、出力データ100は、グレード1〜4であり、該グレードは、生体試料中の非リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルに比較した、リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルを表す。いくつかの実施形態では、出力データは、1〜4グレード:グレード1(0〜10%)、2(10〜25%)、3(25〜50%)、または4(>50%)の等級であり、レベル1は、対象がトポI阻害剤に対して応答性であり得ることを示し、レベル2は、レベル1に比較して、対象がトポI阻害剤に対して部分的に応答性(すなわち、約50%以下の応答性)であり得ることを示し、レベル3は、レベル1として分類される対象に比較して、対象がトポI阻害剤に対して非応答性であり得る(すなわち、対象は約10%以下のトポI阻害剤の有効性を有し得る)ことを示し、レベル4は、レベル1として分類される対象に比較して、対象がトポI阻害剤に対して完全に応答性であり得る(すなわち、対象は約5%、または約2%以下のトポI阻害剤の有効性を有し得る)ことを示す。
本明細書に論じるように、機械およびコンピュータシステム、ならびにコンピュータ可読媒体は、以下に詳述するような種々のモジュールを含む。当業者に理解され得るように、モジュールのそれぞれは、種々のサブルーチン、手順、定義ステートメント、およびマクロを含む。モジュールのそれぞれは、通常、個別にコンパイルされ、単一の実行可能プログラムにリンクされる。したがって、モジュールのそれぞれに関する以下の説明は、システムの機能性を説明する便宜上使用される。したがって、モジュールのそれぞれが経る過程は、他のモジュールのうちの1つに恣意的に再分配されるか、単一モジュールに組み合わせるか、または例えば、共有可能なダイナミックリンクライブラリにおいて使用可能になり得る。
判断モジュール
判断モジュールは、コンピュータ可読形式でシーケンス情報を提供するためのコンピュータ実行命令を有する。
例として、タンパク質へのタンパク質結合分子の結合を判断するための判断モード、例えば、これに限定されないが、セリン10(S10)においてリン酸化される、トポIポリペプチドに対する抗リン酸−S10抗体の結合は、例えば、これに限定されないが、自動免疫組織化学機器、例えば、ロボット制御の自動免疫組織化学機器を含み、自動システムにおいて、組織または生体試料標本を区分し、スライドを調製し、免疫組織化学手順を実行し、免疫染色の強度、例えば、生体試料または組織中の抗リン酸−S10トポI抗体染色の強度を検出し、出力データを生成する。そのような自動免疫組織化学機器の例は、商業的に入手可能であり、例えば、Autostainer360、480、720およびLabVision CorporationのLabvision PTモジュールマシンは、米国特許第7,435,383号、第6,998,270号、第6,746,851号、第6,735,531号、第6,349,264号、および第5,839,091号に開示され、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。他の商業的に入手可能な自動免疫組織化学機器も、本発明において使用するために包含され、例えば、これに限定されないが、GTI visionのBOND(商標)自動免疫組織化学&原位置ハイブリダイゼーションシステム、自動スライドローダーである。免疫組織化学の自動分析は、例えば、IHC ScorerおよびPath EX等の商業的に入手可能なシステムによって実行することができ、これもGTI visionから入手可能な応用スペクトル画像(Applied spectral Images(ASI))CytoLabビュー、または応用スペクトル撮像(Applied Spectral Imaging(ASI))と組み合わせることができ、例えば、画像保管通信システム(Picture Archive Communication System(PACS))を組み込む、ラボラトリー情報システム(Laboratory Information System(LIS))等のデータ共有システムにすべて組み込むことができ、これも応用スペクトル撮像(ASI)から入手可能である(world wide web: spectral−imaging.comを参照)。他の判断モジュールは、Ventana Discovery SAのNexES(登録商標)自動免疫組織化学(IHC)スライド染色システム、またはBenchMark(商標)LT自動IHC機器等の自動免疫組織化学システムであり得、同じくVentana Discoveryから入手可能なVIAS(商標)画像分析システムと組み合わせることができる。BioGenex Super Sensitive MultiLink(商標)Detection Systemsの手動または自動プロトコルのいずれかは、好ましくはBioGenex自動染色システムを使用して、検出モジュールとして使用することもできる。そのようなシステムは、臨床診断研究室向けのBioGenex自動染色システム、i6000(登録商標)(およびその先行システムOptiMax(登録商標)Plus)、および創薬研究室向けのGenoMx6000(登録商標)と組み合わせることができる。両システム、BioGenexシステムは、免疫組織化学(IHC)および原位置ハイブリダイゼーション(ISH)等の細胞および組織試験のための「オールインワン、オールアットワンス(一体化、同時)」機能を実行する。
本明細書で使用する「配列情報」は、任意のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を意味し、全長ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列、部分ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列、または変異配列を含むが、これらに限定されない。さらに、配列情報に「関連する」情報は、配列の存在または非存在の検出(例えば、変異または欠失の検出)、試料中の配列の濃度(例えば、アミノ酸配列発現レベル、またはヌクレオチド(RNAまたはDNA)発現レベル)の判断等を含む。
例として、トポIポリペプチドのリン酸化状態を判断するための判断モジュール、例えば、トポIポリペプチド量の総レベルおよび/またはリン酸−S10トポIポリペプチドのレベルの検出は、自動タンパク質発現分析のための周知のシステムを含み得、MALDI−TOFを含む質量分析システム、またはマトリクス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型システム;SELDI−TOF−MS ProteinChipアレイプロファイリングシステム、例えば、Ciphergen Protein System II(商標)ソフトウェアを備える機械;遺伝子発現データを分析するためのシステム(例えば、米国第2003/0194711号を参照);アレイベース発現分析のためのシステム、例えば、Affymetrix(Santa Clara,CA95051)AutoLoaderから入手可能なHTアレイシステムおよびカートリッジアレイシステム、Complete GeneChip(登録商標)Instrument System、Fluidics Station 450、ハイブリダイゼーションオーブン645、QCツールボックスソフトウェアキット、スキャナ3000 7G、スキャナ3000 7Gプラス標的ゲノム型決定システム、スキャナ3000 7G全ゲノム連合系、GeneTitan(商標)Instrument、GeneChip(登録商標)アレイステーション、HTアレイ、自動ELISAシステム(例えば、DSX(登録商標)またはDS2(登録商標)フォームDynax、Chantilly、VAまたはENEASYSTEM III(登録商標)、Triturus(登録商標)、The Mago(登録商標)Plus);濃度計(例えば、X−Rite−508−Spectro Densitometer(登録商標)、The HYRYS(商標)2濃度計);自動蛍光insituハイブリダイゼーションシステム(例えば、米国特許第6,136,540号を参照);2D撮像ソフトウェアに連結される2Dゲル撮像システム;マイクロプレートリーダー;蛍光活性化セルソーター(FACS)(例えば、Flow Cytometer FACSVantage SE,Becton Dickinson);ラジオアイソトープアナライザ(例えば、シンチレーションカウンタ)を含むが、これらに限定されない。
タンパク質リン酸化プロファイルを識別するためのアルゴリズム、例えば、リン酸−S10トポIポリペプチドの総量または代替として、生体試料中で入手可能な総トポIポリペプチドのリン酸−S10トポIポリペプチドの%は、平均分散アルゴリズム、例えば、JMP Softwareから入手可能なJMPゲノミクスアルゴリズム等の最適化アルゴリズムの使用を含み得る。
本明細書で使用する「発現レベル情報」は、任意のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸発現レベル情報を意味し、全長ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列、部分ヌクレオチド、および/またはアミノ酸配列、または変異配列を含むが、これらに限定されない。さらに、発現レベル情報に「関連する」情報は、配列の存在または非存在(例えば、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の存在または非存在)の検出、試料中の配列の濃度(例えば、アミノ酸配列レベル、またはヌクレオチド(RNAまたはDNA)発現レベル)の判断等を含む。
ストレージモジュール
いくつかの実施形態では、判断モジュールにおいて判断されるトポIリン酸化情報は、ストレージ機器によって読み取ることができる。本明細書で使用する「ストレージ機器」は、任意の適切な演算または処理機器、またはデータまたは情報を格納するために構成または適合される他の機器を含むことを意図する。本発明とともに使用するのに適した電子機器の実施例は、スタンドアロン演算機器、通信ネットワークを含み、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット、およびエクストラネットと、ローカルおよび分散処理システムを含む。ストレージ機器は、 フロッピーディスク、ハードディスクストレージ媒体、および磁気テープ等の磁気ストレージ媒体、コンパクトディスク等の光学ストレージ媒体、RAM、ROM、EPROM、EEPROM等の電子ストレージ媒体、一般的なハードディスクおよび磁気/光学ストレージ媒体等のカテゴリのハイブリッドも含むが、これらに限定されない。該媒体は、そこに記録された配列情報または発現レベル情報を有するために適合または構成される。データは、通常、電子的に伝送および読み取ることができるデジタル形式で、例えば、インターネット、ディスケット上、または電子または非電子通信の任意の他のモードによって提供される。
コンピュータストレージ媒体は、揮発性および不揮発性の取り外し可能および取り外し不可能な媒体を含み、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータ等の情報を格納するための任意の方法または技法で実装される。コンピュータストレージ媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、または他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、または他の光学ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、または他の磁気ストレージ機器、他の種類の揮発性および不揮発性メモリ、所望の情報を格納するために使用でき、コンピュータによってアクセス可能な任意の他の媒体、およびそれらの任意の適切な組み合わせを含むが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体は、データ信号または搬送波を包含せず、好ましくは、該コンピュータ可読媒体は物理的形状である。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、コンピュータ可読媒体は、コンピュータによってアクセス可能な任意の入手可能な媒体であり得る。例として、限定ではなく、コンピュータ可読媒体は、コンピュータストレージ媒体および通信媒体を含み得る。
本明細書で使用する「格納される」は、ストレージ機器上の情報をコード化するための過程を意味する。当業者であれば、周知の媒体に関する情報を記録するための、現在知られている方法のうちのいずれかを容易に採用して、配列情報または発現レベル情報を含む製品を生成することができる。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、多様なソフトウェアプログラムおよびフォーマットを使用して、リン酸化情報または発現レベル情報をストレージ機器に格納することができる。任意の数のデータプロセッサ構造化フォーマット(例えば、テキストファイルまたはデータベース)を採用して、配列情報または発現レベル情報をそこに記録した媒体を入手または作成することができる。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、比較モジュールによって読み取られるストレージ機器に格納される参照データは、試験される生体試料と同種の対照生体試料から入手される配列情報データである。代替として、該参照データは、例えば、有機体の全体ゲノム配列の一部、または配列のタンパク質ファミリー、または発現レベルプロファイル(RNA、タンパク質またはペプチド)等のデータベースである。一実施形態では、参照データは、特定の疾患または障害の表示である、配列情報または発現レベルプロファイルである。
一実施形態では、参照データは、配列番号2のトポIポリペプチドの参照リン酸化状態である。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、参照データは、データベースから電子的またはデジタル的に記録および注釈され、GenBank(NCBI)タンパク質およびゲノム、EST、SNPS、Traces、Celara、Ventor Reads、Watson reads、HGTS等のDNAデータベース;ENZYME、PROSITE、SWISS−2DPAGE、Swiss−ProtおよびTrEMBLデータベース等のスイスバイオインフォマティックス研究所データベース;MelanieソフトウェアパッケージまたはExPASy WWWサーバ等、SWISS−MODEL、Swiss−Shopおよび他のネットワークベースの演算ツール;Comprehensive Microbial Resource データベース(ゲノム研究所)を含むが、これらに限定されない。得られた情報を関係データベースに格納することができ、それを使用して、ゲノム内およびゲノム間の参照データまたは遺伝子またはタンパク質間の相同性を判断し得る。
比較モジュール
リン酸化情報または発現レベル情報をコンピュータ可読形式で提供することにより、比較モジュールにおいて、リン酸化情報または発現レベル情報を可読形式で使用し、特定のリン酸化または発現プロファイルをストレージ機器内の参照データと比較することができる。例えば、サーチプログラムを使用して、特定の対象に一致する関連参照データ、リン酸化状態、または発現レベル情報(参照データ、例えば、t4以上の時点に対して比較する場合に、それより早い時点、すなわちt1、t2、t3における、同一対象の対照参照生体試料から入手したデータ等)を識別することができ、または判断されたリン酸化および/またはトポIポリペプチド発現レベルの直接比較は、参照データリン酸−S10トポIレベル、または総トポIタンパク質発現レベル(例えば、対照試料から入手したデータ)と比較することができる。コンピュータ可読形式で行われる比較は、多様な手段によって処理され得る、コンピュータ可読コンテンツを提供する。コンテンツは、比較モジュール、読み出されたデータから読み出すことができる。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、「比較モジュール」は、多様な使用可能なソフトウェアプログラムおよびフォーマットを比較に使用して、判断モジュールにおいて判断される配列情報を参照データと比較することができる。一実施形態では、比較モジュールは、パターン認識技術を使用して、1つ以上のエントリからの配列情報を1つ以上の参照データパターンと比較する。比較モジュールは、既存の商業的に入手可能であるか、または自由に入手可能なパターンを比較するためのソフトウェアを使用して構成され得、実行される特定のデータ比較のために最適化され得る。比較モジュールは、例えば、配列の存在または非存在の検出(例えば、変異の検出または欠失(タンパク質またはDNA)、個別のアリールに関する情報、または配列の省略または反復);試料中の配列濃度の判断(例えば、アミノ酸配列/タンパク質発現レベル、またはヌクレオチド(RNAまたはDNA)発現レベル)、または発現プロファイルの判断を含み得る、配列情報に関連するコンピュータ可読情報を提供する。
一実施形態では、比較モジュールは、判断モジュールの出力データからのトポIポリペプチドのタンパク質リン酸化に関する情報、具体的に、リン酸−S10トポIポリペプチドを参照データと比較することを許可する。
一実施形態では、比較モジュールは、質量分析スペクトルとの比較を行い、例えば、ペプチドフラグメント配列情報の比較は、「Qcealign」(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、WO2007/022248を参照)、および「Qpeaks」(Spectrum Square Associates,Ithaca,NY)、またはCiphergen Peaks 2.1TMソフトウェアと称されるスクリプトを有するMATLBにおいて処理されるスペクトルを使用して実行することができる。処理されるスペクトルは、次に、整列アルゴリズムを使用して整列させることができ、ベースライン訂正データを取ることにより、最小エントロピーアルゴリズムを使用して、試料データを対照データに整列させる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、WO2007/022248を参照)。読み出されたデータは、比率を計算することによってさらに処理することができる。例えば、読み出されたデータを単純なアルゴリズムにより処理して、存在する総タンパク質におけるリン酸化タンパク質%を計算することができる。一実施形態では、リン酸−S10トポIの%は、以下のように計算される: リン酸S10トポIポリぺプチドの量(モル値)/総トポIポリペプチドの量(モル値)x100。したがって、比較モジュールは、タンパク質発現プロファイルの識別およびタンパク質リン酸化プロファイルの識別を可能にする。
一実施形態では、比較モジュールは、タンパク質リン酸化プロファイルを比較する。一実施形態では、比較モジュールは、遺伝子発現プロファイルを比較する。例えば、遺伝子発現プロファイルの検出は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアバージョン5.0(MAS 5.0)を使用して判断し、プローブセットからの信号の強度に基づいて、比較的豊富な1つ以上の遺伝子を分析することができ、MAS5.0データファイルをデータベースに伝送して、Microsoft ExcelおよびGeneSpring6.0ソフトウェア(Silicon genetics)を用いて分析することができる。MAS5.0ソフトウェアの検出アルゴリズムを使用して、所定の試料においていくつの転写が検出されるかに関する包括的概論を入手することができ、2つ以上のマイクロアレイデータセットの比較分析を可能にする。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、比較モジュールは、トポIのリン酸化状態、またはタンパク質リン酸化プロファイル、例えば、リン酸−S10トポIタンパク質リン酸化プロファイルを比較する。任意の使用可能な比較ソフトウェアを使用することができ、Ciphergen Express(CE)およびBiomarker Patterns Software(BPS)パッケージ、Ciphergen Biosystems,Inc.,CA,USAを含むが、これらに限定されない。比較分析は、タンパク質チップシステムソフトウェア(例えば、Bio−Rad Laboratories用のProteinchip)を用いて行うことができる。
一実施形態では、期待値最大化(EM)、減算、およびPHASE等の演算アルゴリズムを、はプロタイプの統計的推定に使用する(例えば、Clark,A.G. Inference of haplotypes from PCR−amplified samples of diploid populations. Mol Biol Evol7,111−22.(1990);Stephens,M.,Smith,N.J.& Donnelly,P.A new statistical method for haplotype reconstruction from population data. Am J Hum Genet68,978−89.(2001);Templeton,A.R.,Sing,C.F.,Kessling,A.& Humphries,S.A cladistic analysis of phenotype associations with haplotypes inferred from restriction endonuclease mapping.II. The analysis of natural populations. Genetics 120,1145−54.(1988)を参照)。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、比較モジュール、または本発明の任意の他のモジュールは、関係データベース管理システム、World Wide Webアプリケーション、およびWorld Wide Webサーバを実行する、操作システム(例えば、UNIX)を含み得る。World Wide Webアプリケーションは、データベース言語ステートメント[例えば、標準クエリ言語(Standard Query Language(SQL))ステートメント]の生成に必要な実行コードを含む。一般に、実行ファイルは、埋め込みSQLステートメントを含む。さらに、World Wide Webアプリケーションは、サーバ、ならびにサービスユーザ要求にアクセスする必要がある種々の外部および内部データベースを含む種々のソフトウェアエンティティに対するポインタおよびアドレスを含有する、コンフィギュレーションファイルを含み得る。コンフィギュレーションファイルは、適切なハードウェアに対するサーバリソースの要求も指向し、必要に応じて、サーバを2つ以上の個別のコンピュータに分配する必要がある。一実施形態では、World Wide Webサーバは、TCP/IPプロトコルを支持する。このようなローカルネットワークは、「イントラネット」と称される場合がある。そのようなイントラネットの利点は、それらがWorld Wide Web(例えば、GenBankまたはSwiss Pro World Wide Webサイト)上に存在する公的ドメインデータベースとの容易な通信を可能にすることである。したがって、本発明の特定の好適な実施形態では、ユーザは、ウェブブラウザおよびウェブサーバによって提供されるHTMLインターフェースを使用して、インターネットデータベース上に存在するデータに(例えば、ハイパーテキストリンク)に直接アクセスすることができる。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、1つ以上のコンピュータ可読媒体に埋め込まれるコンピュータ可読データは、例えば、1つ以上のプログラムの一部として、コンピュータによる実行の結果として、本明細書に記載する機能(例えば、コンピュータシステム150、またはコンピュータ可読媒体260に関連して)、および/または種々の実施形態、変型例、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上を実行するようコンピュータに指示する命令を定義し得る。そのような命令は、複数のプログラミング言語のうちのいずれか、例えば、Java、J、Visual Basic、C、C#、またはC++、Fortran、Pascal、Eiffel、Basic、COBOL等、またはそれらの多様な組み合わせのうちのいずれかで書き込まれ得る。そのような命令が埋め込まれるコンピュータ可読媒体は、本明細書に記載するコンピュータシステム150[マシン10]またはコンピュータ可読媒体260のいずれかの構成要素のうちの1つ以上に存在し得、そのような構成要素のうちの1つ以上に分配され得、その間を移行し得る。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、コンピュータ可読媒体は、輸送可能であり得、そこに格納される命令を任意のコンピュータリソース上にロードして、本明細書に論じる本発明の態様を実装できるようにする。さらに、上述のコンピュータ可読媒体上に格納される命令は、ホストコンピュータ上で実行するアプリケーションプログラムの一部として具体化される命令に限定されないことを理解されたい。むしろ、該命令は、本発明の態様を実装するためのプロセッサをプログラムするために採用され得る、任意の種類のコンピュータコード(例えば、ソフトウェアまたはマイクロコード)として具体化され得る。コンピュータ実行命令は、適切なコンピュータ言語またはいくつかの言語の組み合わせで書き込まれ得る。基本的なコンピュータ生命工学方法は、例えばSetubal and Meidanis et al.,Introduction to Computational Biology Methods(PWS Publishing Company,Boston,1997);Salzberg,Searles,Kasif(Ed.),Computational Methods in Molecular Biology,(Elsevier,Amsterdam,1998);Rashidi and Buehler,Bioinformatics Basics: Application in Biological Science and Medicine(CRC Press,London,2000)and Ouelette and Bzevanis Bioinformatics: A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins(Wiley & Sons,Inc.,2nd ed.,2001)において説明されている。
システム内で情報を処理するための多数のコンピュータ実装ステップを意味する、コンピュータシステム150に命令を提供することができる。命令は、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアにおいて実装することができ、電子金融システムのモジュールによって行われる任意の種類のプログラム化ステップを含み得る。コンピュータシステム150は、ローカルネットワークに接続することができる。ローカルエリアネットワークの例は、金融システムを含むコンピュータおよびコンピュータ機器が接続される、インターネットへのアクセスを含む、企業コンピュータネットワークであり得る。一実施形態では、LANは、通信制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)産業基準に準拠する。通信制御プロトコル(TCP)は、コンピュータシステムの中で、信頼できる接続型のトランスポート層リンクを提供するために使用されるトランスポート層である。ネットワーク層は、トランスポート層にサービスを提供する。双方向ハンドシェーキングスキームを使用して、TCPは、コンピュータシステム間の論理接続を確立、維持、および終了するための機序を提供する。TCPトランスポート層は、IPをそのネットワーク層プロトコルとして使用する。さらに、TCPは、各メッセージとともに送信先および発信元ポート番号を含むことによって、単一機器上で実行する複数のプログラムを区別するためのプロトコルポートを提供する。TCPは、バイトストリームの伝送、データフロー定義、データ認識、欠失または破損データの再送、および単一ネットワークを通る複数接続の多重送信等の機能を実行する。最後に、TCPは、データグラム構造への情報の包含に関与する。
代替実施形態では、LANは、国際標準化機構(ISO)のオープンシステム相互接続、IBMのSNA、Novellのネットウェア、およびBanyan VINESを含むが、これらに限定されない他のネットワーク基準に準拠し得る。コンピュータシステムは、マイクロプロセッサを含み得る。マイクロプロセッサは、任意の従来の汎用シングルチップまたはマルチチップマイクロプロセッサ、例えば、Pentiumwプロセッサ、PentiumX Proプロセッサ、8051プロセッサ、MISSプロセッサ、Power PCプロセッサ、またはALPHAZプロセッサであってもよい。さらに、マイクロプロセッサは、デジタル信号プロセッサまたはグラフィックプロセッサ等の任意の従来の特殊目的マイクロプロセッサであり得る。マイクロプロセッサは、通常、従来のアドレスライン、従来のデータライン、および1つ以上の従来の制御ラインを有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するコンピュータシステム150 は、任意の種類の電子的に接続されたコンピュータ群、例えば、以下のネットワーク: インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、または広域ネットワーク(WAN)を含むことができる。さらに、ネットワークへの接続性は、例えば、遠隔モデム、イーサネット(IEEE802.3)、トークンリング(IEEE 802.5)、光ファイバー分散データリンクインターフェース(FDDI)、または非同期転送モード(ATM)であり得る。コンピュータ機器は、デスクトップ、サーバ、ポータブル、携帯、セットトップ、または任意の他の所望の種類の構成であり得る。本明細書で使用するように、インターネットは、パブリックインターネット、プライベートインターネット、セキュアインターネット、プライベートネットワーク、パブリックネットワーク、付加価値ネットワーク、イントラネット等のネットワーク変型を含む。
コンピュータシステムおよび比較モジュールは、多様な操作システムを使用することができる。例えば、コンピュータシステム150は、種々の操作システム、例えば、 UNIX、ディスクオペレーティングシステム(DOS)、OS/2、Windows3.X、Windows95、Windows98、およびWindows NTと併せて使用することができる。本明細書に記載するコンピュータシステム150は、任意のプログラミング言語でプログラム化することができ、例えば、該システムは、C、C++、BASIC、Pascal、Java、およびFORTRAN等の任意のプログラミング言語で書き込まれてもよく、よく知られるオペレーティングシステム下で実行され得る。C、C++、BASIC、Pascal、Java、およびFORTRANは、多くの商業コンパイラーを使用して実行コードを作成することができる、業界基準のプログラミング言語である。
本発明の一実施形態では、コンピュータシステムは、パターン比較ソフトウェアを含み得、それを使用して、タンパク質リン酸化プロファイルのパターンが、対象がトポI阻害剤に対して応答性であることを示すか否か、または癌の処置におけるトポI阻害剤の有効性の可能性を判断することができる。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、比較モジュールは、所定の基準またはユーザにより定義される基準によって、コンピュータ可読形式で処理され得る、コンピュータ可読データを提供し、ディスプレイモジュールを使用して、ユーザの要求に応じて、格納および出力され得る、読み出されたデータを提供する。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、読み出されたデータは、1つ以上のタンパク質の発現プロファイル、および/またはタンパク質リン酸化プロファイルであり得る。一実施形態では、読み出されたデータは、リン酸−S10−トポIタンパク質の存在であり、別の実施形態では、読み出されたデータは、リン酸−S10−トポIのレベルであり、例えば、トポIポリペプチドの総量に比較して、リン酸−S10−トポIとして存在するトポIタンパク質のレベル(すなわち、%)である。一実施形態では、読み出されたデータは、リン酸−S10−トポIタンパク質の存在または非存在に関して陽性または陰性である。別の実施形態では、読み出されたデータは、生体試料がトポI阻害剤に対して非反応性であることの陽性指標であり、別の実施形態では、読み出されたデータは、生体試料がトポI阻害剤に大して応答性であり得ることの指標である。
ディスプレイモジュール
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、比較モジュールからの報告データである、読み出されたデータのページが、コンピュータモニター120に表示される。本発明の一実施形態では、読み出されたデータのページは、印刷可能媒体130および140により表示される。ディスプレイモジュール120は、コンピュータ可読情報をユーザに表示するために適合される任意のコンピュータであり得、非限定例は、例えば、汎用コンピュータ、例えば、Intel PENTIUM型プロセッサ、Motorola PowerPC、Sun UltraSPARC、Hewlett−Packard PA−RISCプロセッサ、Advanced Micro Devices(AMD)から入手可能な多様なプロセッサ、または任意の他の種類のプロセッサに基づくもの等が挙げられる。他のディスプレイモジュールは、スピーカ、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、プリンタ、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、表面電界ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)等を含む。
本発明の本態様およびすべての他の態様のいくつかの実施形態では、ため、World Wide Webブラウザを使用して、ユーザに読み出されたデータの表示を提供する。本発明の他のモジュールを適合して、ウェブブラウザインターフェースを有することができることを理解されたい。ウェブブラウザを通して、ユーザは、比較モジュールからデータを読み出すための要求を構成してもよい。したがって、ユーザは、通常、グラフィックユーザインターフェースで従来採用される、ボタン、プルダウンメニュー、スクロールバー等のユーザインターフェース要素をポイントしてクリックする。ユーザのウェブブラウザでそのように策定される要求は、それらをフォーマットするウェブアプリケーションに伝送され、配列情報、読み出されたデータに関連する適切な情報を抽出するために採用され得るクエリを生成し、例えば、変異または削除(DNAまたはタンパク質)の存在または非存在に関する表示のディスプレイ;アミノ酸配列(タンパク質)の発現レベルの表示;ヌクレオチド(RNAまたはDNA)発現レベルの表示;または発現、SNP、または変異プロファイル、またはハプロタイプの表示が挙げられる。一実施形態では、参照試料データの配列情報も表示される。
ディスプレイモジュール110は、読み出されたデータが、対象がトポI阻害剤に対して反応性または無反応性であるかを示すか否かも表示し、例えば、リン酸−S10トポIポリペプチドを有しない参照対照対象に比較して、対象が高いリン酸−S10トポI阻害剤を有するか否かは、該対象が、対照対象に比較して、トポI阻害剤に対して非反応性であり得ることを表示する。一実施形態では、読み出されたデータは、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在または非存在が表示されることに関して陽性または陰性であり、陽性表示は、対象がトポI阻害剤に対してより非反応性であり得ることを表示し、陰性表示は、対象がトポI阻害剤に対してより反応性であり得ることを表示する。
トポI阻害剤処置に対する応答性の判断に適した対象の選択
本発明の実施形態は、対象から得た生体試料中のリン酸−S10トポIの存在に関する発明者の所見で予測される、トポI阻害剤処置が無効となる可能性を判断するための方法を提供する。本明細書に開示する方法、キット、マシン、コンピュータシステム、および媒体を使用するトポIポリペプチドのリン酸化状態、例えば、リン酸−S10トポのレベルの試験に適した対象は、癌のリスクがある対象、ならびに進行癌のリスクがある対象を含む。
一実施形態では、癌組織は、トリプル陰性サブタイプの乳癌である。本発明の実施形態は、トポIポリペプチドのS10を脱リン酸化し、および/またはトポIのS10におけるリン酸化を阻害する薬剤、例えば、DNA−PKの拮抗剤を同時投与することによって、トポI阻害剤処置に対する腫瘍細胞、具体的に、CPTまたはその類似体の感受性を変更する(すなわち、感受性を増加させる)ための方法も提供する。
したがって、本発明の方法は、トポI阻害剤処置に対する多種多様の腫瘍細胞型の分析および処置に関連する。例えば、腫瘍細胞型は、消化管癌、胃癌、扁平上皮細胞癌(SCC)、頭頸部癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌(SCLC)、リンパ腫、肉腫、原発性および転移性黒色腫、胸腺腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、神経系の癌、脳癌、骨髄癌、骨癌、腎臓癌、子宮癌、子宮頸癌、結腸癌、網膜癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、食道癌、精巣癌、子宮頸癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、性器−膀胱癌、消化管癌、歯肉癌、舌癌、腎臓癌、鼻咽頭癌、胃癌、子宮内膜癌および腸腫瘍細胞癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、および膵臓癌等の腺癌から成る群から選択可能である。
一部の実施形態では、トポIタンパク質のリン酸化状態、具体的にはリン酸−S10トポIポリペプチドのレベルを、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して試験するのに適した対象は、乳癌患者、具体的には、ER/PR陰性およびHER2発現によって特徴付けられるトリプル陰性サブタイプの乳癌患者を含む。代替実施形態では、本明細書に開示する方法を使用する試験に適した対象は、扁平上皮癌(SCC)または前立腺癌の患者である。
いくつかの実施形態では、トポIタンパク質のリン酸化状態、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルを、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して試験するのに適した対象は、CPT、または類似体、模倣体またはその誘導体等のトポI阻害剤ベースの処置が現在投与されている、または投与寸前の任意の対照を含む。代替実施形態では、本明細書に開示される方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、トポIタンパク質のリン酸化状態、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルを判断するための本明細書に開示する診断試験に適した対象は、CPT、または類似体、模倣体またはその誘導体等のトポI阻害剤を過去に投与され、そのような処置が有効でなかったこと、または対象の癌が寛解している、または寛解したことが分かっている、任意の対象を含む。本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、そのような対象を試験することは、トポI阻害剤処置の前投与の失敗が、トポIたんぱく質のリン酸化状態、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドの存在に起因したか否かを判断するために有用であり、したがって、そのようなトポI阻害剤処置に対して反応性であり得ない対象を識別する。したがって、医師は、そのような対象に、今後の癌処置または予防癌処置において、トポI阻害剤を含まない代替処置レジームを投与するよう指示することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、トポIタンパク質のリン酸化状態、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルを試験するのに適した対象は、固相腫瘍/悪性腫瘍、局所進行腫瘍、ヒト軟組織肉腫、リンパ節転移を含む転移癌、多発性骨髄腫を含む血液細胞悪性腫瘍、急性および慢性白血病、およびリンパ腫、口頭癌、咽頭癌、および甲状腺癌を含む頭頸部癌、小細胞癌および非小細胞癌を含む肺癌、小細胞癌および乳管癌を含む乳癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸癌、および結腸直腸新生物に関連するポリープを含む消化管癌、膵臓癌、肝臓癌、膀胱癌および前立腺癌を含む泌尿器癌、卵巣癌、子宮(子宮内膜を含む)癌、および卵胞内の固相腫瘍を含む女性生殖管の悪性腫瘍、ヒト細胞癌を含む腎臓癌、内在脳腫瘍を含む脳癌、神経芽細胞腫、星状細胞脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系における転移性腫瘍細胞侵入、骨腫を含む骨癌、悪性黒色腫を含む皮膚癌、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮癌、基底細胞癌、血管周囲細胞腫、およびカポジ肉腫等の癌を有する、成人および小児癌患者を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、トポIタンパク質のリン酸化状態、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルを試験するのに適した対象は、これらに限定されないが、膀胱癌、乳癌、グリア芽腫および髄芽腫を含む脳癌、子宮頸癌、絨毛腫、結腸直腸癌を含む大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、急性リンパ球性および骨髄性白血病を含む血液学的腫瘍、多発性骨髄腫、AIDS関連白血病および成人T細胞白血病リンパ腫、ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内新生物、肝臓癌、小細胞反癌および非小細胞肺癌を含む肺癌、ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫、神経芽細胞腫、扁平上皮癌を含む口頭癌、骨肉腫、上皮細胞、間質細胞、生殖細胞、および間葉細胞から生じるものを含む卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、滑膜肉腫、および骨肉腫を含む肉腫、黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞癌、および扁平細胞癌を含む皮膚癌、セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、絨毛腫)、間質性腫瘍、および胚細胞腫瘍等の胚腫瘍を含む精巣癌、甲状腺癌および髄様癌を含む甲状腺癌、移行性癌、および腺癌およびウィルム腫瘍を含む腎臓癌等の癌を患っている患者を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、トポIタンパク質のリン酸化状態、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルを試験するのに適した対象は、癌の高いリスクが識別される、または有する対象、例えば、進行癌の高いリスクに関連する遺伝子変異または多型を担持することが識別される対象を含む。そのような変異および遺伝的感受性遺伝子および遺伝子座は、一般に当業者に知られ、例えば、変異が癌の増加に関連する、より一般に知られる遺伝子のいくつかは、BRAC1、BRAC2、EGFR、EIF4A2、ERBB2、RB1、CDKN2A、P53、INK4a、APC、MLH1、MSH2、MSH6、WTI、NF1、NF2、およびVHLを含むが、これらに限定されない(http://www.cancer.org/docroot/ETO/content/ETO_1_4x_oncogenes_and_tumor_suppressor_genes.aspを参照)。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して、トポIタンパク質のリン酸化状態、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルを判断するのに適した対象は、当業者に一般に知られる多数の癌検診、例えば、多数の生化学的および遺伝的マーカー、または他のバイオマーカーによって判断される癌を有すると識別されている。バイオマーカーは、細胞性、生化学的、分子または遺伝子変化として定義され、それによって、正常、異常、または単なる生物学的過程が認識または監視され得る。バイオマーカーは、ヒト組織、細胞、または液体等の生体媒質中で測定可能である。バイオマーカーを使用して、個人が症状を示す前に病理過程を識別するか、または癌に反応性である個人を識別することができる。
癌細胞および体液中のバイオマーカーのいくつかのクラスは、主に、特異的観察を試験する研究室だけでなく、限られた臨床設定において研究されている。いくつかのバイオマーカー、例えば、CD44、テロメラーゼ、形質転換成長因子−α(TGF−α)3、形質転換成長因子−β(TGF−β)、上皮成長因子受容体erbB−2(erbB−2)、上皮成長因子受容体erbB−3(erbB−3)、ムチン1(MUC1)、ムチン2(MUC2)およびサイトケラチン20(CK20)は、限られた有用性を示したにすぎない。他のバイオマーカーは、臨床診療で使用され、例えば、前立腺特異抗原(PSA)および癌抗体、または腫瘍マーカー125(CA125)を含む。いくつかのタンパク質マーカーは、癌バイオマーカー、例えば、これに限定されないが、癌検査における原因別死亡率を減少させることが示されるタンパク質バイオマーカーである、便潜血検査(FOBT)として使用することができる。
いくつかの実施形態では、対象から入手した生体試料は、生検組織試料に由来し、いくつかの実施形態では、試料は腫瘍または癌組織試料に由来する。トポIタンパク質のリン酸化状態、具体的には、リン酸−S10トポIポリペプチドのレベルの試験は、本明細書に開示する方法、キット、機械、コンピュータシステム、および媒体を使用して判断することができ、制限なく、熟練者によって、例えば、自動免疫組織化学法、または質量分析等の機械により操作される周知の任意の自動方法を含む。
方法、キット、機械、コンピュータシステム、コンピュータ可読媒体のアプリケーション
研究の文脈において、本発明の実施形態は、臨床前および臨床試験における薬物スクリーニングおよび薬物の有効性を報告するための方法を提供し得る。本発明の方法を使用して、どの対象が、トポI阻害剤に対して反応性であり得るかを識別し、対象単独の集団または他の抗癌薬物および他の治療薬剤との組み合わせにおけるトポI阻害剤の有効性を評価し、品質を改善し、臨床試験の費用を低減して、特定クラスのトポイソメラーゼI阻害剤に対する陽性反応者のサブセットを発見(すなわち患者集団を階層化)し、治療成功率を高め、および/または試料サイズ、試験期間、および臨床試験の費用を減少させることができる。
健康管理の文脈において、本発明の実施形態は、医師が最適な個別の患者治療を調整できるようにするサービスを医師に提供し得る。例えば、対象から得た生体試料は、病理学者および/または臨床癌専門医により研究施設に送付することができ、例えば、そのような研究室は、Theranostics Health,LLCにより運営されている。研究室は、生体試料中のトポIのリン酸化状態を分析し、医師または医療提供者に報告を提供し得る。研究室は、処置する病理学者または臨床癌専門医に、生体試料を得た対象が、トポI阻害剤に対して反応性であるか、または非反応性であるかを示す報告を提供し、反応性であると識別される対象に使用できるトポI阻害剤、またはトポI阻害剤でない代替抗癌薬剤のリスト、またはトポI阻害剤に対して非反応性であると識別される対象にトポI阻害剤と組み合わせて使用されるトポI阻害剤感受性薬剤のリストを随意に提供し得る。これは、医師が、必要に応じてフォローアップアッセイを行い、個別の対象の腫瘍または他の疾患に対する治療を調整し、正しい時期に正しい患者に正しい治療を処方し、より高い治療成功率を提供し、患者を不要な毒性および副作用から救い、不要または危険な効果のない薬物に関して患者および保険業者にかかる費用を低減し、患者の生活の質を改善し、最終的に癌を管理疾患とすることを可能にし得る。医師は、報告された情報を使用して、現在のシステム下で化学療法を処方するために使用される「トライアルアンドエラー」または「フリーサイズ」方法の代わりに、最適に個別化された患者治療を調整することができる。本発明の方法は、オーダーメード医療のシステムを確立し得る。
本発明のいくつかの実施形態は、以下の番号が付された段落のうちのいずれかにおいて、定義され得る。
1. 対象からの生体試料に関するデータを入手するための機械であって、
a.前記生体試料を保持するための生体試料容器と、
b.前記生体試料におけるトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在を検出するように構成される判断モジュールと、
c.前記判断モジュールから出力されたデータを格納するように構成されるストレージ機器と、
d.前記ストレージ機器上に格納される前記データを対照データと比較するように適合される比較モジュールと、
e.クライアントコンピュータ上にユーザのために読み出されたコンテンツのページを表示するためのディスプレイモジュールであって、
(i)前記読み出されたコンテンツが、トポイソメラーゼIポリペプチドの存在であり、および/または
(ii)前記読み出されたコンテンツが、前記トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在であり、および/または
(iii)前記読み出されたコンテンツが、トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在であり、前記対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得るという信号であり、および/または
(iv)前記読み出されたコンテンツが、トポイソメラーゼIのリン酸化の存在であり、前記対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応であり得る信号である、前記ディスプレイモジュールと、
を備える前記機械。
2. 前記判断モジュールが、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベルを測定する、段落1に記載の機械。
3. 前記判断モジュールが、前記トポイソメラーゼIポリペプチドのセリン10(S10)のリン酸化のレベルを測定する、段落1に記載の機械。
4. リン酸化のレベルが、タンパク質結合部分を使用して測定される、段落2または3に記載の機械。
5. 前記判断モジュールが、前記生体試料を少なくとも1つのタンパク質結合部分と接触させる、段落4に記載の機械。
6. 前記タンパク質結合部分が、抗体;組み換え抗体、キメラ抗体、3重体、中心体、タンパク質結合剤、小分子、組み換えタンパク質、ペプチド、アプタマー、アビマー、およびこれらの誘導体またはフラグメントから成る群から選択される、段落5に記載の機械。
7. 前記判断モジュールが、免疫ブロット分析、免疫組織化学的分析;ELISA、イソ型に特異的な化学的もしくは酵素的開裂、タンパク質配列、または質量分析から成る群から選択される方法を使用して、トポイソメラーゼIのリン酸化の存在を検出する、段落6に記載の機械。
8. 前記生体試料が、癌または少なくとも1つの癌細胞を含む、段落1に記載の機械。
9. 前記癌細胞が、癌幹細胞である、段落8に記載の機械。
10. 前記生体試料が、組織試料、腫瘍試料、生検試料、生体外培養試料、生体外培養腫瘍試料、外科的に解離した組織試料、血液試料、血漿試料、癌試料、リンパ液試料、原発腹水料から成る群から選択される、段落1に記載の機械。
11. 前記癌が、小細胞肺癌(SCLC)、結腸癌、卵巣癌、乳癌、および子宮頸癌から成る群から選択される、段落8に記載の機械。
12. 前記癌が、難治性癌である、段落8に記載の機械。
13. 前記癌が、消化管癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、扁平上皮細胞癌(SCC)、頭部の扁平上皮細胞癌(SCC)、頸部、肺、および食道の扁平上皮細胞癌、頭頸部癌、肺癌、非小細胞肺癌、神経系の癌、脳癌、骨髄癌、骨癌、腎臓癌、網膜癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、食道癌、精巣癌、子宮頸癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、性器−膀胱癌、消化管癌、歯肉癌、舌癌、腎臓癌、鼻咽頭癌、胃癌、子宮内膜癌、ならびに腸腫瘍細胞癌の群から選択される、段落8に記載の機械。
14. 前記乳癌が、トリプルネガティブサブタイプ乳癌;またはエストロゲン受容体(ER)、前記プロゲステロン受容体(PR)の発現を欠く、およびHer−2発現を欠く癌である、段落11に記載の機械。
15. トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトセシン(CPT)またはその類似体もしくは模倣剤である、段落1に記載の機械。
16. CPTの類似体が、トポテカンおよびイリノテカンから成る群から成る、段落1に記載の機械。
17. 前記対象が、癌を患っているか、または癌を患っている可能性のあると認められる対象である、段落1に記載の機械。
18. 前記対象が、ヒト対象である、段落1に記載の機械。
19. 生物標本に関するデータを入手するためのコンピュータシステムであって、
(a)リン酸化情報を受信するように構成される判断モジュールであって、前記リン酸化情報が、
(i)トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベル、または
(ii)トポイソメラーゼIのセリン10(S10)上のリン酸化が存在するか否か、
を含む、前記判断モジュールと、
(b)前記判断モジュールからの出力されたデータを格納するように構成されるストレージ機器と、
(c)前記ストレージ機器上に格納された前記データを参照データと比較し、かつ読み出されたコンテンツを提供するように適合される比較モジュールと、
(d)前記ユーザのために前記読み出されたコンテンツのページを表示するためのディスプレイモジュールであって、
(v)前記読み出されたコンテンツが、トポイソメラーゼIポリペプチドの存在であり、および/または
(vi)前記読み出されたコンテンツが、前記トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在または非存在であり、および/または
(vii)前記読み出されたコンテンツが、トポイソメラーゼIのリン酸化の非存在であり、前記対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得るという信号であり、および/または
(viii)前記読み出されたコンテンツが、トポイソメラーゼIのリン酸化の存在であり、前記対象がトポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応であり得る信号である、前記ディスプレイモジュールと、
を備える、前記コンピュータシステム。
20. 前記判断モジュールが、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベルを測定する、段落19に記載のコンピュータシステム。
21. 前記判断モジュールが、前記トポイソメラーゼIポリペプチドのセリン10(S10)のリン酸化のレベルを測定する、段落19に記載のコンピュータシステム。
22. リン酸化のレベルが、タンパク質結合部分を使用して測定される、段落20または21に記載のコンピュータシステム。
23. 前記判断モジュールが、前記生体試料を少なくとも1つのタンパク質結合部分と接触させる、段落22に記載のコンピュータシステム。
24. 前記タンパク質結合部分が、抗体;組み換え抗体、キメラ抗体、3重体、中心体、タンパク質結合剤、小分子、組み換えタンパク質、ペプチド、アプタマー、アビマー、およびこれらの誘導体またはフラグメントから成る群から選択される、段落23に記載のコンピュータシステム。
25. 前記判断モジュールが、免疫ブロット分析、免疫組織化学的分析;ELISA、イソ型に特異的な化学的もしくは酵素的開裂、タンパク質配列、または質量分析から成る群から選択される方法を使用して、トポイソメラーゼIのリン酸化の存在を検出する、段落24に記載のコンピュータシステム。
26. 前記生体試料が、癌または少なくとも1つの癌細胞を含む、段落19に記載のコンピュータシステム。
27. トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトセシン(CPT)またはその類似体もしくは模倣剤である、段落19に記載のコンピュータシステム。
28. CPTの類似体が、トポテカンおよびイリノテカンから成る群から成る、段落27に記載のコンピュータシステム。
29. 前記対象が、癌を患っているか、または癌を患っている可能性のあると認められる対象である、段落19に記載のコンピュータシステム。
30. 前記対象が、ヒト対象である、段落19に記載のコンピュータシステム。
31. コンピュータ上で方法を実装するために判断モジュールおよび比較モジュールを含むソフトウェアモジュールを規定するために、コンピュータ可読命令がその上に記録されるコンピュータ可読媒体であって、前記方法が、
(a)トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化情報に関するデータを格納するステップであって、前記リン酸化情報が、
(i)トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベル、または
(ii)前記判断モジュールからの出力されたトポイソメラーゼIのセリン10(S10)上のリン酸化が存在するか否か、
を含む、前記ステップと、
(b)前記ストレージ機器上に格納される前記データを参照データと、前記比較モジュールで比較し、読み出されたコンテンツを提供するステップと、
(c)前記ユーザのために前記読み出されたコンテンツを表示するステップであって、トポイソメラーゼIポリペプチドの前記リン酸化レベルは、プロファイルであり、前記プロファイルは、トポイソメラーゼI阻害剤に対する癌の反応性を示し、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の検出の非存在は、トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得る癌を示し、10%を上回るリン酸化の存在は、前記癌がトポイソメラーゼI阻害剤に対して無反応であり得ることを示すステップと、
を含む方法である、前記コンピュータ可読媒体。
32. 前記判断モジュールが、トポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベルを測定する、段落31に記載のコンピュータ可読媒体。
33. 前記判断モジュールが、前記トポイソメラーゼIポリペプチドのセリン10(S10)のリン酸化のレベルを測定する、段落31に記載のコンピュータ可読媒体。
34. 前記リン酸化のレベルが、タンパク質結合部分を使用して測定される、段落32および33に記載のコンピュータ可読媒体。
35. 前記判断モジュールが、前記生体試料を少なくとも1つのタンパク質結合部分と接触させる、段落34に記載のコンピュータ可読媒体。
36. 前記タンパク質結合部分が、抗体;組み換え抗体、キメラ抗体、3重体、中心体、タンパク質結合剤、小分子、組み換えタンパク質、ペプチド、アプタマー、アビマー、およびこれらの誘導体またはフラグメントから成る群から選択される、段落35に記載のコンピュータ可読媒体。
37. 前記判断モジュールが、免疫ブロット分析、免疫組織化学的分析;ELISA、イソ型に特異的な化学的もしくは酵素的開裂、タンパク質配列、または質量分析から成る群から選択される方法を使用して、トポイソメラーゼIのリン酸化の存在を検出する、段落31に記載のコンピュータ可読媒体。
38. 前記生体試料が、癌または少なくとも1つの癌細胞を含む、段落31に記載のコンピュータ可読媒体。
39. トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトセシン(CPT)またはその類似体もしくは模倣剤である、段落31に記載のコンピュータシステム。
40. CPTの類似体が、トポテカンおよびイリノテカンから成る群から成る、段落39に記載のコンピュータ可読媒体。
41. 前記対象が、癌を患っているか、または癌を患っている可能性のあると認められる対象である、段落31に記載のコンピュータ可読媒体。
42. 前記対象が、ヒト対象である、段落31に記載のコンピュータ可読媒体。
43. トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応する癌の可能性を識別するための段落1に記載の機械の使用であって、前記機械がトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の非存在をそのディスプレイモジュールから表示する場合に、癌がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得る、前記使用。
44. トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応する癌の可能性を識別するための段落1に記載の機械の使用であって、前記機械がトポイソメラーゼIポリペプチド上のセリン10(S10)のリン酸化の非存在をそのディスプレイモジュールから表示する場合に、癌がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得る、前記使用。
45. トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応する癌の可能性を識別するための段落19に記載のコンピュータシステムの使用であって、前記機械がトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の非存在をそのディスプレイモジュールから表示する場合に、癌がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得る、前記使用。
46. トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応する癌の可能性を識別するための段落19に記載のコンピュータシステムの使用であって、前記機械がトポイソメラーゼIポリペプチド上のセリン10(S10)のリン酸化の非存在をそのディスプレイモジュールから表示する場合に、癌がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得る、前記使用。
47.トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応する癌の可能性を識別するための段落31に記載のコンピュータ可読媒体の使用であって、前記機械がトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の非存在をそのディスプレイモジュールから表示する場合に、癌がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得る、前記使用。
48. トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応する癌の可能性を識別するための段落31に記載のコンピュータ可読媒体の使用であって、前記機械がトポイソメラーゼIポリペプチド上のセリン10(S10)のリン酸化の非存在をそのディスプレイモジュールから表示する場合に、癌がトポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得る、前記使用。
49. トポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応である癌の可能性を識別する方法であって、少なくとも1つの癌細胞におけるトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベルを測定するステップを含み、リン酸化の存在がトポイソメラーゼIのリン酸化の非存在が検出される癌に比べて、トポイソメラーゼ阻害剤に対してより非反応であり得る前記癌を識別する、前記方法。
50. 対象における癌を処置するための方法であって、
(i)前記対象から入手した癌細胞を含む生体試料におけるトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化のレベルを測定するステップと、
(ii)トポイソメラーゼIポリペプチドのレベルを検出するステップであって、前記トポイソメラーゼIポリペプチドがリン酸化される場合、前記癌は、トポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応であるものとして識別されるか、または前記トポイソメラーゼIポリペプチドがリン酸化されない場合、前記癌は、トポイソメラーゼI阻害剤に対して反応し得るものとして識別されるステップと、
(iii)トポイソメラーゼI阻害剤以外の抗癌剤を対象に投与するステップであって、前記癌は、トポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応であると識別されるステップと、
を含む、前記方法。
51. 前記トポイソメラーゼIポリペプチドの前記リン酸化が、トポイソメラーゼIポリペプチドのセリン10(S10)のリン酸化である、段落49または50に記載の方法。
52. 前記トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトセシン(CPT)またはその類似体もしくは模倣剤である、段落49または50に記載の方法。
53. CPTの類似体が、トポテカンおよびイリノテカンから成る群から成る、段落52に記載の方法。
54. 前記対象が、ヒトである、段落49または50に記載の方法。
55. リン酸化トポイソメラーゼIに対して特異親和性を有するタンパク質結合部分であって、前記リン酸化トポイソメラーゼIが、前記セリン10(S10)アミノ酸残基においてリン酸基を含む、タンパク質結合部分。
56. 前記タンパク質結合部分が、抗体またはそのフラグメントである、段落55に記載のタンパク質結合部分。
57. 前記タンパク質結合部分が、抗体;組み換え抗体、キメラ抗体、3重体、中心体、タンパク質結合剤、小分子、組み換えタンパク質、ペプチド、アプタマー、アビマー、およびこれらの誘導体またはフラグメントから成る群から選択される、段落55に記載のタンパク質結合部分。
58. 段落49または50に記載の方法に従って、トポイソメラーゼI阻害剤に対して非反応である癌の可能性を識別するための、段落55に記載のタンパク質結合部分の使用。
59. 段落55に記載の前記タンパク質結合部分を含む、キット。
本明細書に提示する実施例は、生体試料中のトポイソメラーゼIポリペプチドのリン酸化の存在、具体的には、トポIポリペプチドのセリン10(S10)残基におけるリン酸化の存在を識別し、例えば、カンプトセシン(CPT)、またはトポテカンおよびイリノテカン等のCTP類似体、およびそれらの誘導体等であるが、それらに限定されないトポI阻害剤の反応性または有効性を判断するための方法、キット、機械、およびコンピュータシステム、および媒体に関する。本出願全体において、種々の発行物が参照される。すべての発行物の開示および全体としてそれらの発行物内で引用される参照文献は、本発明が関連する最新技術をより完全に説明するために、ここで参照により本出願に組み込まれる。以下の実施例は、請求項の範囲を本発明に限定するものではないが、むしろある実施形態の例示であるものとする。熟練者が考え付く例示的方法の任意の変型例は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
方法
組織培養:
DNA−PK(ScH8)および野生型MEF(ScSv3、DNA−PK−/−)の安定発現のために再構成されるヒト子宮頸癌(HeLa)細胞、MCF−7乳癌細胞、BT−474乳癌細胞、およびマウス胚線維芽細胞(MEF)は、10%ウシ胎仔血清、2mM L−グルタミン100単位/mLのストレプトマイシン、および100単位/mLのペニシリンを含有するDulbecco修飾のEagle培地内で成長および維持した。
細胞同調および薬物処置
MEF細胞は、血清飢餓によって相同調(phase-synchronize)した。0.1%ウシ胎仔血清を含有するDulbecco修飾のEagle培地において30時間培養した後、10%ウシ胎仔血清を含有する培地において16時間培養した。トポI阻害剤処置は、25μM濃度のイリノテカン(Sigma)を使用して実行した。BRCA1およびBARD1発現のための細胞株の一時トランスフェクションは、Geneporter2トランスフェクションキット(GenLantis)を使用して行った。
BRCA1サイレンシング:ウイルス生成
BRCA1 shRNAおよび対照プラスミドは、Open Biosystems(Huntsville,AL)から購入した。すべてのpLKO.1プラスミドは、RNAiコンソーシアム(Boston,MA)によって開発された。パッケージングおよびエンベローププラスミドは、Addgene(Cambridge,MA)から入手した。ウイルスを生成するために、pLKO.1プラスミド、パッケージングプラスミドpsPAX2、およびエンベローププラスミドpCMV−VSVgは、同時に293FT細胞(Invitrogen)に形質転換した。トランスフェクションの18時間後に、細胞をDMEM+30%FBSに再供給した。その後、媒体を含有するウイルスを2アリコートで24時間後および48時間後に除去し、−80℃で冷凍した。
ウイルス変換
ウイルス変換は、適量のウイルス含有媒体および8μg/mL臭化ヘキサジメトリンを追加し、非付着細胞を含有する培地を成長させることによって完了した。変換および付着の完了から24時間後に、ウイルス含有媒体を除去し、2.5μg/mLピューロマイシンを含有する新鮮な媒体と置換した。形質導入した細胞は、少なくとも使用の2日前に選択した。形質導入の有効性は、通常、大部分の細胞型において95%を超えた。以下のTRC指定プラスミドを試験した: TRCN0000039833、TRCN0000039834、TRCN0000039835、TRCN0000039836、およびTRCN0000039837。TRCN0000039834が最大のノックダウンをもたらしたと判断された。
免疫沈降および免疫ブロット分析:
細胞溶解物を免疫沈降のために調製し、可溶性タンパクを抗BRCA1または抗トポI(Topogen,Inc.)で培養した。免疫沈降は、抗BRCA1または抗トポIを用いる免疫ブロットの対象となる。抗原−抗体複合体は、強化された化学発光によって可視化した(ECL検出システム、GE,Piscataway,NJ)。
トポI関連タンパク質の単離:GSTプルダウン:
GSTビーズ調製 精製したGST(対照)およびGST−トポIを、溶出緩衝液によって、グルタチオンセファロースビーズから溶出した(10mM還元グルタチオン、150mM NaCl、50mM Tris、pH8.0)。溶出したタンパク質を、PBS中で12時間、4℃で透析した。透析試料のタンパク質濃度は、修飾したBradford試薬(Bio−Rad)によって判断した。溶出および透析したGSTおよびGST−トポIタンパク質は、グルタチオンセファロースビーズで培養した。100μlのGSビーズの場合、150μgのタンパク質を4℃で2時間、PBS中で培養した。合計1mlビーズを1回のプルダウン実験用に培養した。当実験では、1.5gmのGSTおよびGST−トポIを1mlのGSビーズに再付着させた。再付着させたPBS平衡GSTおよびGST−トポIビーズを2つの空カラムに注ぎ、該カラムをPBSで洗浄して、プルダウン実験に使用した。
核単離
4X108細胞を採取した。細胞パレットを、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を用いて、緩衝液A(10mM Hepes、pH7.8、10mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT)中で再懸濁した。細胞を10分間氷上で培養し、5分間1500gで遠心分離した。細胞を緩衝液A中で再懸濁し、A型携帯ホモジナイザーで均質にした(10〜12ストローク)。ホモジネートを1500gで5分間遠心分離し、各パレットをタンパク質抽出のために収集した。
核抽出
緩衝液B(50mM Hepes、pH7.8、420mM KCl、0.1mM EDTA、5mM MgCl2、1mM DTTおよび2%グリセロール、ならびにプロテアーゼ阻害剤カクテル)中で核を再懸濁した。再懸濁した核を30分間4℃で回転し、24,000gで30分間遠心分離した後に核抽出物を収集した。緩衝液C(30mM Tris pH7.4、5mM MgCl2、1mM EDTAおよび1mM DTT)中で20時間、核抽出物を透析し、緩衝液を2回取り替えた。
プルダウン実験
等量の透析した核抽出物を、緩衝液Cで平衡化した後、GSTおよびGST−トポIカラムに通した。該ステップを3回反復し、抽出物中のタンパク質がGSTおよびGST−トポIと結合するのに十分な時間を提供した。カラムを10容量の緩衝液Cで洗浄した。洗浄の完了後、1mlの緩衝液D(緩衝液C+150mM NaCl)を添加して、結合タンパク質を溶出した。溶出したタンパク質を、それぞれ200μlの5つの分画で収集した。1mlの緩衝液E(緩衝液C+500mM NaCl)で、タンパク質をさらに溶出および分画した。結合タンパク質を含有する分画は、SDS−PAGEおよび銀染色によって分析した。
MALDI−TOF−MSによる分機のための試料調製:
クマシー/銀染色ゲルから得たタンパク質を切除し、ゲルトリプシン消化のために処理した。つまり、ゲルを小さいが均一な切片に切断した。アセトニトリルによりゲル切片を脱水した後、100mM重炭酸アンモニウムで再水和した。ペプチドを酸化から保護するために、100mM ジチオスレイトールを重炭酸アンモニウムに添加し、56℃で1時間培養した。アミノ末端保護の保護は、100mM重炭酸アンモニウム中の10mMヨードアセトアミドでゲルを遮断することによって達成した。ゲル切片を重炭酸アンモニウムで洗浄し、アセトニトリルを使用して脱水した。遮断および洗浄をそれぞれ2回反復した。アセトニトリルでの脱水の完了後に、ゲル切片を50mM重炭酸アンモニウム中の12.5ng/μLに懸濁した。ゲル内消化を37℃で10〜12時間行った。50%アセトニトリルおよび5%ギ酸中のゲル切片からペプチドを抽出した。抽出物を減圧下で濃縮し、最後にC−18含有Zip−Tip(Millipore,MA)によって脱塩した。試料をαシアノールマトリクス中に懸濁し、Voyager DE−PRO(Perceptive Biosystem Inc,Framingham,MA)を使用して、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)によって分析した。データベース分析を使用して、質量指紋法によりタンパク質を識別した。PSDを使用するシークエンシングによって、選択したペプチドをさらに分析した。
トポI結合タンパク質の識別:
トポIに特異的に関連するタンパク質は、質量分析により識別した。質量分析によるこれらのタンパク質の分析は、9を超えるタンパク質の識別に導いた。これらのタンパク質の中で、Ku70/Ku80ヘテロ二量体、およびBRCA1のBRCTドメインいが顕著であった。タンパク質の識別は、代表的なペプチドカバレージのパーセンテージおよびペプチドの配列に基づいた。
体外リン酸化:
精製したGST−トポI(55)は、[γ−32P]ATPまたは冷ATPを含有するキナーゼ緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.4、10mM MgCl2および10mM MnCl2)中のDNA−PKで、30分間30℃で培養した。反応産物は、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーによって分析した。
DNA−PK仲介トポIリン酸化部位の識別:
体外リン酸化部位を識別するために、ATPの存在下で、DNA−PKキナーゼ緩衝液中の精製Ku−DNA−PKで、GST−トポIを培養した。キナーゼ反応を30℃で30分間行った。反応産物をSDS−PAGEおよびクマシー染色によって分析した。染色によって識別されるGST−トポIタンパク質バンドを小さい切片に切断し、トリプシン消化のために処理した。トリプシン消化したトポIペプチドは、MSによって分析した。リン酸ペプチドをIMACカラムで強化した後、LC−MS−MS(Q−Star,ABI)によって分析した。
体外ユビキチン化:
700ngのトポI上の反応は、10mM HEPES(pH7.9)、0.5mM EDTA、5mM MgCl2、2mM NaF、2mM ATP、60mM KCl、1μMユビキチン、200nM E1−His、5μM UbcH5c−His(E2)、ならびに200〜400ngのBRCA1−Flag/BARD1(E3)中で実行した。BRCA1−Flag/BARD1の非存在下で、陰性対照も確立した。SDS−PAGEによって反応産物を溶解し、オートラジオグラフィーにより観察した。
実施例1
ヒトトポイソメラーゼI(トポI)は、種々のDNAトランザクションに関与する必須およびユビキタス酵素であり、カンプトセシン(CPT)およびSCLC、大腸および卵巣癌の処置のためのクリニック、および乳癌および子宮頸癌を含むいくつかの難治性癌において使用されるCPT類似体、例えば、トポテカンおよびイリノテカン等の一群の抗腫瘍性薬物の標的である。しかしながら、大部分の癌薬物のように、患者の30%のみがトポI阻害剤に反応する。トポIタンパク質のレベルは、大部分の固形腫瘍において高いため、トポI阻害剤の有効性を判断するための予測マーカーとしてトポIレベルを使用することができない。本発明は、ここで、トポIのDNA−PK依存リン酸化が、トポIのユビキチン化を開始し、またBRCA1がE3リガーゼであることを実証した。本発明は、トポIのセリン10アミノ酸残基におけるリン酸化の存在が、CPTに対する反応におけるトポIのユビキチン化および分解の割合を判断することを発見した。したがって、本発明は、トポIポリペプチドのセリン10(S10)残基におけるリン酸化の存在が、トポIの分解をもたらし、したがって、トポI阻害剤は無効であり得ることを発見した。したがって、本発明者は、トポI阻害剤が有効であり得るか否かを識別するための予後マーカーを識別し、セリン10(S10)アミノ酸残基におけるリン酸化の非存在は、トポI阻害剤が生体試料中で有効であり得る(すなわち、トポI阻害剤は、細胞をもたらし得る)ことを識別するが、セリン10(S10)におけるリン酸化の存在は、トポI阻害剤が生体試料中で有効であり得ない(すなわち、トポI阻害剤は、細胞死をもたらし得ない)ことを識別する。
トポIとDNA−PK−Ku複合体およびBRCA1との関連
トポIに特異的に関連するタンパク質は、質量分析により識別した。質量分析によるこれらのタンパク質の分析は、9を超えるタンパク質の識別に導いた。これらのタンパク質の中で、Ku70/Ku80ヘテロ二量体およびBRCA1のBRCTドメインが顕著であった。ヌクレオリンをトポI結合タンパク質の1つとして単離することは、以前の所見(Bharti et al 1995)を確認したため、当該技術を立証した。本発明者は、トポIがKu70/80(図1A〜1E)と関連し、プルダウン実験および免疫沈降分析によって示されるように、Ku−DNA−PK複合体と関連することを発見した(図2A−2C)。
実施例2
トポIは、DNA−PKにより、部位S10においてリン酸化される。SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーによる、DNA−PKを用いたトポIリン酸化の反応産物の分析は、DNA−PKがトポIを体外でリン酸化することを示した。GSTは、DNA−PKの基質ではなかった。トポIの非存在下において、有意に高いレベルのDNA−PKの自動リン酸化も観察された。質量分析によるリン酸化トポIのさらなる分析は、トポIのS10が、DNA−PKによってリン酸化されることを明らかにした。図3は、トポIがS10上でリン酸化されることを示す。
BRCA1は、リン酸化が必要とされるトポIのE3ユビキチンリガーゼとして作用する。図4に示される体外実験は、DNA−PKによるトポIのリン酸化がユビキチン化を上方規制することを示す。本発明者は、BRCA1、周知のE3ユビキチンリガーゼが、トポIのE3ユビキチンリガーゼとして作用し得ることを調査した。体外トポIユビキチン反応の産物の免疫ブロット分析は、BRCA1によるトポIのユビキチン化を示した。本発明者は、BARD1/BRCA1を過剰発現する細胞におけるGFP−トポIの高い下方規制率により判断されるように、ユビキチン化が、BARD1/BRCA1ヘテロ二量体のE3リガーゼ活性の結果であることを確認した。
実施例3
CPTに反応するトポIの下方規制は、DNA−PKおよびBRCA1により仲介される。CPTに対する反応は、ユビキチン化と関係し、トポIの下方規制をもたらすことが示されている(Desai et al.,J Biol Chem.;272(39):24159−64.1997)。本発明者は、CPTに反応するDNA−PK不足および充足細胞のトポIレベルの分析によって、DNA−PK+/+細胞における有意に高いトポI下方規制率を示した。CPTで処置したScH8細胞は、6時間でトポIの完全分解を示したが、50%を超えるトポIは、ScSV3細胞内で原型を保ち、アクチンレベルは、これらの細胞において同様のままであることを示した。これらの細胞から得た核抽出物のDNA緩和アッセイを使用して、本発明者は、これら2つの細胞株におけるトポI活性の特記すべき差異がないことを示した(データ図示せず)。本発明者は、これらの細胞におけるトポImRNAレベルに対する相対合計トポIタンパク質のレベルが類似することも示した。本発明者は、BRCA1により鎮静化したHela細胞におけるトポIの下方規制率の減少を示した。CPT処置に反応するトポIとBRCA1との間の相互作用をさらに観察するために、本発明者は、GFP−トポIおよびBRCA1を用いて同時免疫染色を行い、GFP−トポIおよびBRCA1が、CPTによる処置に反応して、DNA修復巣にコロニーを作ることを判断した。
参考文献
本明細書および実施例において引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
配列表