定義
本明細書で用いる場合、または特に記載のない限り、もしくは文脈から示唆されない限り、本明細書において定義する用語は、特定した意味を有する。記載した実施形態および実施例の説明は、本発明を例示するものであって、なんら限定することを意図しない。例えば相互の要素または選択肢によって、特に反対の内容の表示または示唆がない場合、本明細書の説明において、または本明細書全体を通して、用語「a」および「an」は、1つ以上を意味し、用語「または(もしくは)」は、および/またはを意味する。
特に明白な記載のない限り、または文脈から特定されない限り、割合の量は重量%(w/w)で示したものである。したがって、少なくとも約2%の化合物1を含む固形投薬製剤は、少なくとも約2%w/wの化合物1を含む固形投薬製剤または懸濁剤である。0.1%の水分を含む固体化合物1は、0.1%w/wの水分が該固体と会合していることを意味する。
「約」および「およそ」は、特定の固体形態を説明するために示した数値または値の範囲、例えば、特定の温度もしくは温度範囲(例えば、融解、脱水和、脱溶媒和もしくはガラス転移を示すものなど);質量変化(例えば、温度もしくは湿度の関数としての質量変化など);溶媒もしくは含水量(例えば、質量もしくはパーセントで);またはピーク位置(例えば、IRもしくはラマン分光法もしくはXRPDによる分析のものなど)に関して用いる場合、該値または値の範囲が、当業者に妥当とみなされる程度に逸脱することがあり得るが、依然として該特定の固体状態形態を示すものであることを示す。具体的には、用語「約」および「およそ」は、本文脈において用いる場合、該数値または値の範囲は、記載の値または値の範囲から20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%または0.01%逸脱してもよいが、依然として該特定の組成または固体状態形態を示すものであることを示す。
「固体状態」は、本明細書で用いる場合、化合物(17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(すなわち、化合物1)など)または該化合物を含む組成物において、存在する該化合物の質量の少なくとも約2〜10%が固体で存在している物理的状態をいう。典型的には、化合物1の質量の大部分が固体状態形態である。より典型的には、化合物1の質量の少なくとも約80〜90%が固体形態である。固体状態形態としては、結晶性、不規則な結晶性、多結晶性、微晶質、ナノ結晶性、一部結晶性、非晶質および半固体形態またはその混合物が挙げられ、任意選択で、非固体または非結晶性の化合物1を包含する。さらに、化合物1の固体状態形態としては、多形、偽多形、水和物、溶媒和物、脱水水和物および脱溶媒溶媒和物ならびにその混合物が挙げられ、任意選択で、非固体または非結晶性の化合物1を包含する。したがって、化合物1の固体状態形態は、化合物1の単一の多形形態、化合物1の単一の偽多形形態、2種類以上、典型的には2種類もしくは3種類の化合物1の多形もしくは偽多形形態の混合物、またはこれらの固体状態形態の任意の1種類と、任意選択で化合物1の非固体または非結晶性との組合せ(ただし、化合物1の質量の少なくとも約2〜10%は固体形態であるものとする)を包含する。
本明細書で用いる用語「結晶性」および関連用語は、物質、成分または生成物を説明するために用いている場合、適当な方法、典型的にはX線回折によって測定したとき、該物質、成分または生成物が結晶性であることを意味する[例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton Pa.,p173(1990);The United States Pharmacopeia,第23版,pp.1843−1844(1995)参照]。
本明細書における用語「結晶性形態」および関連用語は、所与の物質の種々の結晶性の変形型、例えば、限定されないが、多形、溶媒和物、水和物、混合型溶媒和物、共結晶および他の分子複合体をいう。また、結晶性形態は、所与の物質の種々の結晶性の変形型の混合物、例えば、偽多形形態もしくは多形形態の組合せ、1種類以上の多形形態と1種類以上の偽多形との組合せ、またはかかる形態と当該物質の非晶質もしくは非固体状態形態との組合せなどであってもよい。典型的な組合せは、多形形態と偽多形形態の混合物、または多形もしくは偽多形形態と非晶質物質の混合物のような2種類以上の多形または偽多形形態のものである(with be)。
物質の結晶性形態は、当該技術分野で知られたいくつかの方法によって得られ得る。かかる方法としては、限定されないが、溶融再結晶、溶融冷却、溶媒再結晶、限定空間内(例えば、ナノ細孔または毛細管内など)での再結晶、表面または鋳型上(例えば、ポリマー上など)での再結晶、添加剤(例えば、共結晶の対分子など)の存在下での再結晶、脱溶媒和、脱水和、急速エバポレーション、急速冷却、低速冷却、気相拡散、昇華、磨砕および溶媒滴下磨砕(solvent−drop grinding)が挙げられる。
「多形」は、本明細書で用いる場合、物質(化合物1など)の規定の結晶性形態をいう。多形は、典型的には、多形の格子内での分子秩序のため物性において異なる。また、多形の物性は、例えば、水和物、溶媒和物または多形の格子内に組み込まれた他の分子の存在のため安定性または流動特性が異なることがあり得る。
熱力学の観点から、多形性には2つの型が存在する。例えば、多形がモノトロピーの関係を有する場合、温度に対するこの関係にある種々の多形の自由エネルギーのプロットは、すべての多形が溶融する前では交差しない、すなわち、ある多形から別の多型へのいずれの転移も不可逆的である。モノトロピーの関係を有する多形は、モノトロープと称されることがある。エナンチオトロピー関係を有する多形では、温度に対するこの関係にある種々の多形の自由エネルギーのプロットは、種々の融点の前で交点を示し、したがって、加熱したり冷却したりすると、2つの多形間で可逆的な変換が可能であり得る。エナンチオトロピー関係を有する多形は、エナンチオトロープと称されることがある。
多形は、物性または医薬特性、例えば、吸湿性、溶解度、固有溶解速度、固体状態反応速度(すなわち、薬物物質もしくは薬物製品としての医薬成分の化学的安定性)、結晶性の安定性(すなわち、熱力学的により安定な結晶性形態に転移する傾向)、表面自由エネルギー、界面張力、機械的強度(例えば、硬度、脆性、塑性変形、従順性、可鍛性など)、引張強度、圧密性(すなわち、打錠)および加工性(例えば、取り扱い、流動、ブレンドなど)の1つ以上に差を示すことがあり得る。また、薬物物質の多形形態の物性および機械的特性の差は、規模拡大および研究室での手順からパイロットプラントを経、次いで充分な製造への移行に影響を及ぼすことがあり得る。また、設備の変更、加熱速度および冷却速度の変動ならびに攪拌手順の変動は、晶出に影響を及ぼすことがあり得、したがって、得られる結晶性形態に影響し得る。
水和物、溶媒和物または混合型溶媒和物として存在する多形は、一般的に偽多形と称され、無水であるか溶媒和物でない親近構造の多形形態に鑑みると異なる固体状態形態を表す。また、溶媒和物の実体または化学量論が異なる偽多形も、相互に鑑みると異なる固体状態形態とみなされる。例えば、一水和物として存在する化合物1は、その親近構造の二水和物に鑑みると、異なる固体状態形態である。また、化合物1のメタノール−水溶媒和物(すなわち、混合型溶媒和物)は、親近構造の水和物または無水物に鑑みると、異なる固体状態形態とみなされる。溶媒和物および水和物は、一般的に、その親近構造の無水物または脱溶媒和物と比較すると、異なる溶解度または異なる固有溶解速度を示す。例えば、溶媒和物は、所与の温度において、その親近構造の脱溶媒和物と比較すると、該溶媒和物を含む溶媒中において低い固有溶解速度が示されることがあり得る。したがって、水和物は一部の場合において、その親近構造の無水物と比較すると、水溶液中において低い固有溶解速度が示されることがあり得る。さらに、種々の温度および/または種々の水蒸気圧(例えば、相対湿度)もしくは有機溶媒の蒸気圧における水和物および溶媒和物の安定性プロフィールは、一部の場合において、親近構造の無水物または脱溶媒和物ものとは異なる。かかる違いは、種々の保存条件下において、薬物物質または薬物製品のいずれかとしての医薬活性成分(例えば、化合物1)の製剤、加工処理または安定性に影響を及ぼすことがあり得る。
したがって、異なる結晶性形態または多形形態は、結晶格子内の分子の配列またはコンホメーションの結果として、異なる物性(例えば、融解温度、融解熱、溶解度および/または振動スペクトルなど)を有し得る(例えば、Byrn,S.R.,Pfeiffer,R.R.およびStowell,J.G.(1999)Solid−State Chemistry of Drugs,第2版,SSCI,Inc.:West Lafayette,Ind.参照)。多形および偽多形によって示される物性の違いは、バイオアベイラビリティにおいて重要な要素であり得る薬学的パラメータ、例えば、保存安定性、圧縮性および密度(製剤および製品の製造に重要)ならびに固有溶解速度などに影響を及ぼすことがあり得る。安定性の違いは、化学的反応性の変化(例えば、ある多形または偽多形で構成されている場合では、別の多形形態で構成されている場合よりも投薬形態がより急速に変色というような酸化の差)、または機械的変化(例えば、動力学的に好都合な多形が熱力学的により安定な多形に変換された場合の保存時の錠剤の崩壊)または両方(例えば、ある多形の錠剤が、高湿度において分解され易い)に起因し得る。溶解度/溶解の違いの結果、極端な場合では、一部の多形転移により効力の欠如がもたらされ得、あるいは、別の極端な場合では、毒性がもたらされ得る。また、結晶の物性は、加工処理において重要であり得、例えば、ある多形は、濾過および洗浄が困難であり得、不純物(すなわち、粒子形状および粒径分布が多形間で異なり得る)を含まない溶媒和物または水和物を形成し易いものであり得る。
典型的には、結晶性形態は、1つ以上の物性または分析による特性(溶解速度など)、赤外線およびラマン分光法、X線回折手法(単結晶および粉末回折手法など)、固体状態−NMR(SS−NMR)、熱量関連手法(融点、示差熱分析(DTA)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)など)および本明細書中の他の箇所に開示した他の方法によって互いに容易に識別される。偽多形を特性評価、または別の親近構造の多形、偽多形、脱溶媒和物または無水物と識別するためのさらなる方法としては、元素分析、カール・フィッシャー滴定、動的気相吸収分析、熱重量−赤外線分光分析(TG−IR)、残留溶媒ガスクロマトグラフィー、1H−NMRおよび本明細書中の他の箇所に開示した他の方法が挙げられる。
用語「親近構造の結晶性形態」は、本明細書で用いる場合、別の結晶性形態と類似性(例えば、ほぼ類似した結晶格子内の格子面間隔)を有する共通構造を有する物質の結晶形をいう[結晶格子のより詳細な説明は、Stout and Jensen,X−Ray Structure Determination:A Practical Guide,MacMillan Co.,New York(1968)の第2章および第3章に見られる]。したがって、親近構造の結晶性形態は、類似した分子充填モチーフを有するが、単位胞パラメータ(対称性翻訳)が異なる。共通構造の類似性のため、親近構造の結晶性形態は、典型的には、類似しているが必ずしも同一でない粉末X線回折パターンを有する。親近構造の結晶性形態は、中性分子または分子複合体である物質を主体とするものであり得る。親近構造の結晶性形態は、該物質の溶媒和物(水和物を含む)であってもよく、脱溶媒和された溶媒和物の結晶性形態であってもよい。多形の溶媒和物である親近構造の形態は、一部の場合において、非溶媒和多形に対して偽多形であると称される。溶媒和された結晶性形態は、典型的には、結晶格子内に1種類以上の溶媒(例えば、水)を含み、これは、該結晶性形態の調製で使用された晶出用溶媒(1種類または複数種)であってもよい。
「非晶質」は、本明細書で用いる場合、粉末X線回折(XRPD)で測定したとき、長周期規則性(long−range periodic)原子構造をもたない化合物(例えば、化合物1)の固体状態形態をいう。非晶質物質のXRPDパターンは、示差的なピークのない非晶性散乱(halo)として現れる。一部の化合物の非晶質物質は、当該技術分野で知られたいくつかの方法によって得られ得る。かかる方法としては、限定されないが、加熱、溶融冷却(melt cooling)、急速溶融冷却、溶媒エバポレーション、急速溶媒エバポレーション、脱溶媒和、昇華、磨砕、低温磨砕および凍結乾燥が挙げられる。
「製剤」または「薬学的に許容され得る製剤」は、本明細書で用いる場合、1種類以上の薬学的に許容され得る賦形剤に加えて、固体状態形態で存在する医薬活性成分(17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(すなわち、化合物1)など)を含む組成物をいうか、または医薬活性成分の固体状態形態から調製される組成物をいい、ここで、該組成物はヒトへの投与に適したものである。製剤は、医薬活性成分の1種類、2種類またはそれ以上の結晶性形態(例えば、化合物1の単一の多形または偽多形形態、化合物1の2種類の多形形態の混合物、化合物1の多形形態と化合物1の偽多形形態との混合物、または化合物1の多形または偽多形形態と非晶質化合物1との混合物)から構成されたもの、または調製されたものであり得る。典型的には、該製剤は、化合物1の単一の結晶性形態(例えば、I型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、VIII型)、非晶質化合物1、または好ましさは低いが、単一の多形または偽多形形態と非晶質化合物1との混合物から構成されたもの、もしくは調製されたものである。
「固体状態製剤」または「固形製剤」は、本明細書で用いる場合、化合物1の固体状態形態と1種類以上の薬学的に許容され得る賦形剤を含む製剤であって、当該固体状態製剤に必要とされる比率で賦形剤と混合した場合、該固体状態形態の質量の大部分が、周囲温度で少なくとも約6ヶ月、通常、周囲温度で少なくとも約12ヶ月または24ヶ月、固体状態形態のままである製剤をいう。固体状態製剤を含む投薬単位としては、錠剤、カプセル剤、キャプレット剤、ゲルカップ剤、アンプル、懸濁剤および処置の必要がある被検体への固体状態形態の医薬活性成分の非経口または経腸(経口)投与と典型的に関連する他の投薬単位が挙げられる。
「液状製剤」は、本明細書で用いる場合、化合物1の1種類以上の固体状態形態を1種類以上の賦形剤と混合または接触させた製剤であって、賦形剤の少なくとも1種類が、液状または非固体状態形態(すなわち、非固形賦形剤)であり、当該液状製剤に必要とされる比率で、化合物1の質量の大部分が非固形賦形剤中に溶解されているような製剤をいう。液状製剤を含む投薬単位としては、シロップ剤、ゲル剤、軟膏および処置の必要がある被検体への非固体状態形態の医薬活性成分の非経口または経腸投与と典型的に関連する他の投薬単位が挙げられる。
「実質的に含まない」は、本明細書で用いる場合、化合物(化合物1など)の約60重量%より多くが所与の固体状態形態で存在していることをいう。例えば、用語「非晶質物質を実質的に含まない結晶性化合物1」は、化合物1の約60%より多くが結晶性化合物1である化合物1の固体状態形態をいう。かかる組成物は、典型的には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%の結晶性化合物1を含み、残余は非晶質または非結晶性化合物1として存在する。本明細書に記載の製剤は、典型的には、約94〜99%の単一の結晶性または非晶質形態の化合物1を含み、約97%、約98%または約99%が好ましい。別の例において、用語「結晶性形態を実質的に含まない非晶質化合物1」は、化合物1の約60%より多くが非晶質である化合物1の固体状態形態をいう。かかる組成物は、典型的には、少なくとも約80%、通常少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%の非晶質化合物1を含み、残余は結晶性化合物1として存在する。また別の例において、用語「他の結晶性形態を実質的に含まないIII型」は、化合物1の約60%より多くがIII型としての結晶性形態で存在する固体状態組成物をいう。かかる組成物は、典型的には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約97%のIII型としての化合物1を含み、化合物1の残余は、他の結晶性または非晶質形態またはその組合せとして存在する。
「実質的に純粋」は、本明細書で用いる場合、化合物1の固体状態形態に含まれる全不純物が約3%未満もしくは約2重量%未満であること、あるいはより好ましくは、含まれる水分が約1重量%未満および/または不純物(分解もしくは合成の副生成物あるいは化合物1の固体状態形態の溶媒和物の一部でない(例えば、偽多形の一部でない)または別の残留有機溶媒など)が約0.5重量%未満であることをいう。
「実質的に同一」は、本明細書で用いる場合、典型的には試料の配置もしくは取扱または計測図もしくは物理的特性を取得するために使用された計測器の実体と関連する差違により、あるいは実験室環境内もしくは分析計測器内もしくは両者間に通常見られる他の差異または変動により、ピーク位置および振幅または強度が同等である値またはデータ図において、測定された物理的特性が同等であることをいう。
「本質的に含まない」は、本明細書で用いる場合、ある成分が、その検出に使用される典型的な条件下で検出可能な量で存在しない、あるいは該成分がみられることがあり得る組成物または製剤の所望の特性に有害な影響を及ぼし得る量で存在しないと確認されたことをいう。例えば、「液状物を本質的に含まない」は、固体形態の組成物または製剤が、投与の必要がある被検体に固形投薬形態で投与するために使用される製剤または組成物の薬学的許容性に有害な影響を及ぼし得る量の水または液状形態の溶媒を含まないことを意味する。懸濁液は固形製剤とみなされ、かかる製剤では、懸濁製剤を構成する液状賦形剤(1種類または複数種)は、この定義に含まれない。「非晶質化合物1を本質的に含まないIII型多形」は、非晶質化合物1がXRPD分析で検出されない化合物1の特定の結晶性形態をいう。典型的には、結晶性形態中の非晶質物質の検出限界は約10%である。
「水和物」は、本明細書で用いる場合、固体状態形態全体を構成する一部分として水分子を含むと同定された化合物の固体状態形態をいい、バルク化合物に非特異的に結合された水をいうものではない。結晶性形態の化合物1の水和物は、孤立部位(isolated site)水和物またはチャネル(channel)水和物であり得る。孤立部位水和物の結晶構造では、水分子が該化合物1の分子によって他の水分子との直接接触から分離されているが、チャネル水和物では、水分子が、格子の一方向に沿って互いに隣接して存在している。水和物は、化合物1の1分子あたり化学量論量または非化学量論量の水分子を含むものであり得る。拡張型チャネル水和物は、高湿度に曝露されると水分をチャネル内に取り込み、比較的低湿度に曝露されると水分を放出することができる。かかる水和物の結晶格子は、水和物の形成または脱水和が進行するにつれて、単位胞の寸法を変化させ、拡張または収縮することができる。典型的には、水分は、化学量論的水和物中に、化合物1に対して0.25、0.5、1.0、1.5または2.0の比率で存在する。水和物は、通常、その脱水和温度より低い条件下で、その対応無水物よりも安定である。孤立部位水和物は、通常、チャネル水和物よりも比較的高い温度で脱水和される。孤立部位水和物の脱水和プロセスは、一部の場合において結晶構造に対して破壊的である。これは、格子からの水分子の逸出が可能になるので、一部の場合において単位胞内での分子の再配列が必要とされるためである。
「溶媒和物」は、本明細書で用いる場合、当該化合物の分子に明確な比で結合され、固体状態形態全体を構成する一部分である溶媒分子を含むと同定された化合物の固体状態形態をいい、バルク化合物に非特異的に結合された溶媒をいうものではない。溶媒分子が水である場合、かかる溶媒和物は水和物と称される。典型的には、溶媒は、溶媒和物中に、化合物1に対して0.25、0.5、1.0、1.5または2.0の比率で存在する。
「過剰増殖状態」または「癌」は、本明細書で用いる場合、周辺の正常組織の細胞分裂との協同性を欠き、例えば、最初に細胞分裂の変化を誘発したものであり得る刺激の消失後も持続する異常に高速または持続状態の細胞分裂を特徴とする状態をいう。この制御不能で進行性の細胞増殖状態により、良性、潜在的に悪性(前悪性)または率直に悪性である腫瘍がもたらされ得る。過剰増殖状態としては、過形成、形成異常、腺腫、肉腫、芽細胞腫、癌腫、リンパ腫、白血病もしくは乳頭腫と特性評価されるもの、または本明細書に記載の他の病状が挙げられる。
「ホルモン関連の癌、前癌もしくは良性過形成」または「ホルモン感受性の癌、前癌もしくは良性過形成」は、本明細書で用いる場合、ホルモン操作に対し、治療的意味においてマイナスもしくはプラスに応答する過剰増殖状態、またはその発生、存続、浸潤性、難治性、症状の重症性もしくは化学療法に対する応答性が一部もしくは全部において、ホルモンレベルに起因もしくは関連している状態をいう。ホルモン関連またはホルモン感受性癌としては、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚部癌、子宮癌、子宮内膜癌、腺癌、悪性黒色腫または本明細書に記載の他の病状が挙げられる。さらなるホルモン関連癌または関連する癌の一例は、Miller,A.B.Cancer Res.38:3985−3990(1978)に記載されている。
前癌は、通常、癌の発生リスク増大と関連している組織学的変化を示し、一部の場合において、癌を特徴付ける分子特性および表現型特性の全部ではないが一部を有する病変と定義される。ホルモン関連またはホルモン感受性の前癌としては、前立腺上皮内腫瘍(PIN)、特別高悪性度(particularly high−grade)PIN(HGPIN)、異型小型腺房増殖(ASAP)、子宮頚部形成異常および非湿潤性乳管癌が挙げられる。
過形成は、一般的に、通常見られるものを超え、器官の肉眼的膨大または良性の腫瘍の形成もしくは増殖がもたらされ得る器官または組織内での細胞の増殖をいう。ホルモン関連またはホルモン感受性の過形成としては、子宮内膜過形成(子宮内膜症)、良性前立腺過形成および腺管過形成が挙げられる。
「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容され得る担体」または類似用語は、賦形剤と混合したとき固体状態形態である化合物1を医薬活性成分として含む組成物または製剤中のその他の成分と適合性であるという意味において許容され得る1種類以上の成分または材料を意味する。このような賦形剤は、通常、組成物製剤が投与される被検体に対して過度に有害でない。本明細書で用いる場合、「賦形剤」としては、液状物、例えば、注射用水、安息香酸ベンジル、綿実油、N,N−ジメチルアセトアミド、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、グリセロール、ピーナッツ油、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ビタミンE、ケシ油、プロピレングリコール、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油および植物油などが挙げられる。また、賦形剤として、水にやや溶けにくいまたは不溶性である医薬活性成分に対して典型的に使用される溶解助剤も挙げられる。溶解助剤としては、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体(β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよびCAPTISOLTM(スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン)など)ならびにPEGまたはPEG誘導体(CHREMOPHORTM(ポリエトキシル化ヒマシ油)など)が挙げられる。固形の賦形剤はいずれも、微粉末または造粒されたものであってもよい。賦形剤は、本明細書で用いる場合、任意選択で、1種類以上の賦形剤、例えば、クロロホルム、ジオキサン、植物油、DMSO、他の賦形剤またはこれらの任意の組合せが除外されることがあり得る。賦形剤としては、医薬製剤技術分野で典型的に使用されている1種類以上の成分、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、保存剤、流動促進剤、界面活性剤および滑沢剤の1種類、2種類またはそれ以上が挙げられる。例示的な賦形剤としては、ポビドン、クロスポビドン、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、アラビアゴム、ポリソルベート80、ブチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベン、BHA、EDTA、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、ヒマシ油、オリーブ油、植物油、緩衝剤(水酸化ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、一塩基性リン酸カリウム、二塩基性リン酸カリウム、三塩基性リン酸カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウムなど)、糖類(マンニトール、グルコース、フルクトース、スクロースまたはラクトースなど)(これらはいずれも圧縮可能であり得る、またはこれらはいずれも噴霧乾燥され得るものである)が挙げられる。
「被検体」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、哺乳動物または脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、イヌまたは齧歯類などである。被検体のサブセットとしては、種々の年齢の所与の種または種の群の被検体、例えば、幼若期のヒト(例えば、約1週齢〜約9歳)、青年期のヒト(例えば、約10〜19歳)、成人期のヒト(例えば、約20〜100歳)、および熟年期成人または高齢期のヒト(例えば、少なくとも約55歳、少なくとも約60歳、少なくとも約65歳もしくは約60〜100歳などの年齢範囲)が挙げられる。したがって、本明細書で用いる場合、疾患、病状または症状の予防または処置には、年齢によって群分けされた任意の被検体サブセットが包含または除外され得る。
用語「有効量」、「有効用量」などは、一般的に、所望の応答、例えば、投与対象の被検体における正常な生理学的状態の検出可能な回復(腫瘍負荷量の減少もしくは安定化など)、癌もしくは過剰増殖のバイオマーカー(これは、細胞表面バイオマーカーもしくは循環バイオマーカーであり得る)の検出可能な減少、癌もしくは過剰増殖バイオマーカーの増加速度の低下、または細胞パラメータもしくは臨床状態もしくは症状の検出可能なモジュレーションもしくは改善が誘発されるのに充分な化合物1の固体状態形態の量、または化合物1の固体状態形態で構成もしくはから調製された製剤中の化合物1の量を意味する。有効量は、化合物1の固体状態形態で構成またはから調製された製剤中の化合物1の1日で投与される単回用量または2つ以上の下位用量であってもよく、ある期間にわたって、例えば、2日間から約1、2、3、4または5年にわたって反復用量として投与されるものであってもよい。また、該有効量は、癌の処置のための細胞傷害剤の投与において典型的に行なわれるように、多数回の処置サイクルで投与されるものであってもよい。処置サイクルは、1日以上または数週間、典型的には1〜4週間、間隔をあけるのがよく、または過剰増殖状態の寛解が達成されている場合(この場合、該状態が再発したときに処置を再開する)では、より長い期間で間隔をあけるがよい。処置サイクルとしては、4週間または12週間の化合物1の毎日の投与が挙げられる。
病状または症状を「予防する」または「予防」は、本明細書で用いる場合、該病状または症状の開始が、一部の被検体において、少なくともある期間、少なくとも一部の処置被検体において、遅延されることを意味する。また、「予防する」または「予防」は、新たな病変の出現または転移の遅延によって測定されるような過剰増殖状態の検出可能な播種の遅延とみなすことができる。かかる効果は、被検体の有意な少数派(例えば、少なくとも約20%以上、典型的には少なくとも約40%)または被検体の大部分において現れるものであり得、処置によって疾患の寛解がもたらされ得、該寛解がある期間(例えば、約1〜3ヶ月、約4〜6ヶ月、約1年または約2〜5年)持続または存在し得る多くの臨床処置状況(例えば、癌の処置)において観察される。本明細書に記載の処置により、病状または症状を予防する、または予防と称される同様の効果がもたらされ得る。したがって、「予防する」または「予防」は、全被検体または全被検体の大部分において、ある事象の発生が絶対に起こらないようにすること、または事象が起こる可能性を除外することに限定されず、かかる結果が起こることがあり得る。
「〜を発症する被検体」は、本明細書で用いる場合、当該被検体が属する被検体集団から導かれた既に存在する健康状態、家族歴、行動、遺伝子マーカー(1種類もしくは複数種)または生化学的マーカー(1種類もしくは複数種)において予測されるリスクファクターに基づいて、特定される病状に当該被検体が苦しむ尤度をいう。したがって、過剰増殖状態を発症する対象となるヒトなどの被検体は、一般的に、ヒト被検体が過剰増殖状態の既知のリスクファクターの1つ以上を有する結果、過剰増殖状態を発症する尤度が統計学的に大きいと認められたヒト被検体をいう。前癌、例えば、子宮頚部形成異常または前立腺上皮内腫瘍と診断された個体は、子宮頚部癌または前立腺癌を発症する被検体とみなされる。
「表面活性剤」(界面活性剤)は、低濃度で、固体(不溶性またはやや溶けにくい)と液体の表面間で相互作用する物質を意味する。液体は、医薬活性成分の固体状態形態(化合物1の結晶性I型またはIII型など)、液状賦形剤、および懸濁性を改善する作用をする表面活性剤を含む懸濁製剤中に存在する該液状賦形剤であり得る。あるいはまた、表面活性剤を、化合物1の多形(例えば、結晶性I型もしくはIII型)、化合物1の非晶質形態またはその混合物、および表面活性剤を含む経口固形投薬形態中に存在させてもよく、該表面活性剤は、胃液中への医薬活性成分の溶解速度を改善する作用をする。表面活性剤は、同一分子内に極性(親水性)領域と非極性(疎水性)領域の両方を有する構造では両親媒性である。製剤技術分野で使用されている表面活性剤の例は、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology 第2版 TaylorおよびFrancis,2006,pp3583−3596のCorrigan,O.I.;Healy,A.M.“Surfactants in Pharmaceutical Products and Systems”に示されている。
「懸濁剤」は、本明細書で用いる場合、特に記載のない限り、または文脈から示唆されない限り、懸濁剤の投与前の時点において、化合物1の固体状態形態が、通常、微細化された(例えば、微粉化された)固体として液状担体(ビヒクル)中に懸濁されたものを意味する。懸濁剤は、使用の準備ができたもの、または使用直前に懸濁剤の投薬形態として再構成される乾燥粉末のいずれかであり得る。懸濁剤は、化合物1が所望の希釈剤またはビヒクル中に不溶性であるか、または溶解性が不充分な場合に使用される。懸濁剤には、典型的には、懸濁化剤または凝集剤、湿潤剤(既に存在させた懸濁化剤または凝集剤がまだこの目的を果たさない場合)、緩衝剤および保存料が含まれる。コロイド状懸濁剤では、化合物1の粒子は、典型的には約1μm未満の大きさである。粗懸濁剤では、該粒子は約1μmよりも大きい。粗懸濁剤中の個々の懸濁可能な化合物1の粒子の実用上の上限は、約50μm〜75μmであるが、懸濁剤の易注射針通過性によっては、一部の割合が粒子が200μmまでであるのが適当なこともあり得る。経口または非経口投与のための懸濁剤を開発するための設計考慮事項は、Akersら J.Parenteral Sci.Tech.1987 41:88−96;Encyclopedia of Pharmaceutical Technology 第2版 TaylorおよびFrancis,2006,pp3597−3610のNash,RA“Suspensions”(これは、引用により、本出願書類における特定性を伴って本明細書に組み込まれる)に示されている。
固体状態形態の特性評価および同定方法
モルホロジー−結晶モルホロジーは、結晶構造内の原子の規則的な内部配列により結晶面によって示される結晶内の対称性をいう。特定の結晶性形態の結晶モルホロジーは、典型的には、結晶性形態の結晶系、すなわち、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系、正方晶、六方晶系または等軸晶系によって示される。結晶モルホロジーは、例えば、通常の光または偏光を使用し、少なくとも約2倍、10倍または100倍の倍率での顕微鏡による評価による観察結果によって測定され得る。結晶学的に相違する軸を有する結晶は光と、入射光線の角度に対する結晶性の格子の方位に依存的である様式で相互作用し、異方性結晶と称される。したがって、光が非等価軸に進入すると、各々が互いに直角の向きの振動方向で偏光する2つの光線に屈折し、異なる速度で進む。この現象は複屈折と称され、すべての異方性結晶において示される(程度は大小である)。偏光が、偏向器の方向に平行な複屈折(bifringent)結晶の格子面内で振動していると、該分析装置内を通過する光による寄与はなく(光の振動の単一の方向が偏向器と平行であるため)、非常に暗くてほぼ不可視である(すなわち、減衰)結晶がもたらされる。したがって、複屈折結晶は、偏光下で回転させた場合、減衰を示す。結晶性形態の多くの有機化合物は複屈折性であるため、その結晶は、良好に形成されたもの(すなわち、広範に断片化されていない、あるいな形状が不揃いでない、または有意な数の結晶欠陥を含まないもの)であれば減衰を示す。したがって、交差偏光を用いた検査下で減衰を示さない化合物1の固体状態形態は、必ずしも該固体状態形態が結晶性でないことを意味するものではない。
また、結晶モルホロジーは、実験によって単結晶X線データから、または本明細書に開示した方法による粉末X線回折データからコンピュータ処理によって測定することもできる。
粉末X線回折−粉末X線回折(XRPD)は、典型的には、結晶性化合物を特性評価または同定するために使用される(例えば,U.S.Pharmacopoeia,第23巻,1995,method 941,p1843−1845,U.S.P.Pharmacopeia Convention,Inc.,Rockville,Md.;Stoutら,X−Ray Structure Determination;A Practical Guide,MacMillan Co.,New York,N.Y. 1968参照)。X線光線が結晶性形態と相互作用すると、典型的には、結晶性形態の格子の特徴に依存する位置における強度極大のシーケンスを特徴とする回折パターンが得られる。したがって、XRPD線の位置および相対強度は、多くの場合で所与の結晶性形態に特異的である「フィンガープリント」をもたらす特定の結晶性形態を示すが、連続的な結晶バッチで得られる再現回折パターンにおいて、弱いまたは非常に弱い回折ピークが常に出現するとは限らない。これは、他の結晶性形態が試料中に適用可能な量で存在する場合、例えば、多形または偽多形形態が一部水和、脱水、脱溶媒和または加熱された状態となって、有意な量の別の多形または偽多形形態が得られた場合、特にそうである。
さらに、特に小さいX線入射角度値(小2θ)におけるバンドの相対強度は、例えば、晶癖、粒径および他の測定条件の違いによって生じる優先方位効果のため、異なることがあり得る。したがって、回折ピークの相対強度によって、必ずしも対象の結晶形の結論的判断が得られるとは限らない。そうではなく、典型的には、化合物1の結晶性形態が本明細書に記載の形態の1つであることを判定するために、振幅とカップリングされピークの相対位置が着目される。広がったXRPDピーク(互いに近い位置に存在する2つ以上の個々のピークからなるものであり得る)は、非晶質成分、不規則な結晶性形態または主光線からの寄生散乱によってもたらされ得る。同じ固体状態形態の異なる試料での広がったピークは、一般的に、約0.3〜1度の2θ以内に存在する。同じ固体状態形態の異なる試料でのシャープで孤立したXRPDピークは、通常、標準の解像データでは約0.1度の2θ以内、または場合によっては、連続的XRPD分析において、同じ研究所内で再現可能な環境条件下、同じプロトコルに従って実施した場合、約0.2度の2θ以内に見られる。したがって、所与の位置のシャープで孤立したXRPDピークが、例えば約13.5または13.45に存在すると特定されている場合、これは、ピークが13.5±0.1または13.45±0.10に存在することを意味する。所与の位置の広がったXRPDピークがほぼ所与の角度2θ値に存在すると特定されている場合、これは、ピークが該角度2θ値±0.3に存在することを意味する。
XRPDパターンを得るために、同じ計測器およびプロトコルを使用する再現可能な研究所内条件下で、同じ程度の結晶化度を有する同じ固体状態形態の異なる試料での連続的XRPD分析で得られるXRPDピーク位置および強度の差は、主に、試料調製物または試料の純度の違いによるものである。
通常、単一のバンドでも化合物1の所与の多形または偽多形形態の判断が行われ得るため、本明細書に開示する精製多形または偽多形試料において観察されるすべてのバンドに依存することは必要ではない。むしろ、同定は、典型的には、バンドの位置および全体的なパターンに着目され、特に、種々の多形および偽多形形態に特有のバンドの選択に着目される。典型的には、化合物1の個々の多形または偽多形形態は、XRPDピークの2、3もしくは4つの最も強度の大きい、または2、3もしくは4つの最も再現性のあるピークに対する参照を特徴とし、任意選択で、1種類または2種類の他の物性または分析による特性(融点など)、示差熱分析(DTA)および/または示差走査熱量測定(DSC)において観察される1回以上の熱転移、赤外線もしくはラマン分光法において観察される1ヶ所以上の吸収ピーク、および/または水性もしくは他の溶媒系における固有溶解速度(DR)データに対する参照を特徴とする。XRPD、DTA、DSC、DRなどのデータを得るための標準化された方法は、例えば、U.S.Pharmacopoeia,第23巻,1995,United States Pharmacopeial Convention,Inc.,Rockville,MD,pp2292−2296および2359−2765(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
固体状態と思われる試料(例えば、既知の多形または偽多形形態を含む固体状態製剤)中の該既知の多形または偽多形形態を確認するための方法の一例は、該既知の多形または偽多形形態を含む試料(1つまたは複数)の1つ以上のXRPDパターンを得、次いで、これを該固体状態と思われる試料のXRPDパターンと比較すること(例えば、米国特許出願番号2004/0103130(引用により本明細書に組み込まれる、特に段落0067〜0078および段落0086〜0115(両端を含む))に記載のヒューリスティック・クラスタリング分析法を使用)を伴う。また、ヒューリスティック・クラスタリング分析は、結晶相の混合型(例えば、2種類以上の多形形態の混合物)または結晶性相と不規則相の混合型(例えば、多形形態と非晶質形態の混合物)のいずれかを含む試料の定量的分析にも使用され得る(例えば、米国特許出願番号2004/0103130(引用により本明細書に組み込まれる、特に段落0116〜0130(両端を含む))に記載)。
また、XRPDパターンから誘導される原子のペアワイズ分布関数(PDF)の比較を用いても、固体状態と思われる試料(例えば、該既知の多形または偽多形形態を含む固体状態製剤など)中の既知の多形または偽多形が同定され得る。定義によると、PDFは、XRPD測定パターンから得られた実験的に測定された縮小構造因子のサインフーリエ変換であり、例えば、Petersonら“Improved measures of quality for the atomic pairwise distribution function”J.Acta Cryst.Vol.36,pp.53−64(2003)に示された手順に従って得られる。PDFは、PDFピーク位置およびピーク強度で示される特定の原子間距離を有する原子の数で示される原子間距離を得ることにより固体状態形態を示す原子密度相関関数である。したがって、2つの結晶性形態が同じ分子充填を有する同じ分子のものである場合、そのPDFは本質的に同じである。例えば、既知の多形形態または偽多形形態と、これらの結晶性形態を含むと思われる固体状態製剤から得られる2つのPDFが本質的に同一であるかどうかを調べるためには、PDFを、例えば、米国特許出願番号2007/0243620(引用により本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって比較する。
本質的に純粋な多形または偽多形の高分解能XRPDパターン(1つまたは複数)が得られた場合、結晶性形態の単位胞パラメータ(単結晶X線分析のセクションに記載)が、例えば、米国特許出願番号2007/0270397(引用により本明細書に組み込まれる)の場合のようなインデックス表示法によって測定され得る。偽多形では、親近構造の結晶性形態(すなわち、参照結晶性形態)、例えば、親近構造の無水物(偽多形の脱水和および/または脱溶媒和によって得られ得る)が得られた場合、親近構造の結晶性形態の単位胞体積と、高分解能XRPDパターン(1つまたは複数)から求めた単位胞体積との比較により、偽多形の化学量論(すなわち、化合物1の1分子あたりの水または溶媒分子の数)の測定が可能となり得る。かかる適用では、参照親近構造の結晶性形態の単位胞パラメータは、単結晶X線分析から得られ得るか、またはこの参照形態の高分解能XRPDデータのインデックス表示により得られ得る。
XRPDパターンは、典型的には1つだけのXRPDパターンを有する試料に対して行われ、試料で粉末平均の良好な推定値が得られるかどうかを評価するための他の手段が限定的であるため、「顕著なピーク」と記載される場合があり得る。顕著なピークは、観察されたピークから、大きな強度を有する、好ましくは重複していない小角度ピークを特定することにより選択される。
単結晶X線分析−単一X線結晶学により、3次元の寸法の反復によって結晶性形態を示す単位胞として知られる最小体積の構成要素が確認される。単位胞の寸法は、a、bおよびcの3つの軸ならびにそれぞれの間の角度α、βおよびγによって示される。一連の格子面からのX線反射角は、インデックスと称される3つの整数h、kおよびlを使用し、方位および該格子面の格子面間隔によって規定される。インデックス h、k、lを有する所与の組の格子面は、単位胞のa軸とhセクションで、b軸とkセクションで、およびc軸とlセクションで、交わる。インデックス(indicia)のゼロ値は、格子面が対応する軸と平行であることを意味する。
結晶性形態が特性評価される単結晶X線パラメータとしては、典型的には、結晶系、空間群、単位胞寸法、Z値(単位胞あたりの分子数)および単位胞体積が挙げられる。典型的には、密度計算値およびインデックス h、k、lの範囲も特性評価に使用される。単結晶データから求められる原子座標、空間群および単位胞パラメータを用いて、XRPDパターンを模擬作成し、次いで、これを実験により得られたXRPDパターンと比較し、単位胞の構造解析の正確性を確認してもよい。
振動分光法−化合物1の結晶性形態(多形または偽多形形態など)を特性評価するために任意選択で使用され得る判断手法としては、振動分光法手法(IRおよびラマンなど)が挙げられ、これは、入射エネルギーに応答して振動する試料の分子内における特定の化学結合の存在による固体状態試料に対する入射エネルギーの効果を調べるものである。異なる多形または偽多形形態内の分子は、コンホメーション的要素または環境的要素の振動により異なる分子間力を受けるため、該振動の乱れが生じ、これが、一部の振動様式の周波数および強度の差によるスペクトルの違いをもたらす。多形形態と偽多形形態は、互いに異なるIRおよびラマン特性を有し得るため、IRおよびラマンスペクトルにより相補的な情報が得られ、いずれかにより、特定の多形の同定のためのフィンガープリントが得られ得る[Anderton,C.European Pharmaceutical Review,9:68−74(2004)参照]。
ラマンでは、複雑なマトリックス中の多形または偽多形の実体測定および/または定量を行なうことができ、非晶質形態と結晶性形態とが識別される、または化合物1の多重多形形態と偽多形形態とが差別化される[例えば、Pratiwia,D.ら“Quantitative analysis of polymorphic mixtures of ranitidine hydrochloride by Raman spectroscopy and principal components analysis”Eur.J.Pharm.Biopharm.54(3),337−341(2002)参照]。固形製剤(錠剤など)の多形または偽多形形態の確認では、化合物1のこのような純粋な結晶性形態と賦形剤との粉末試料を穏やかに圧密化し、ラマン顕微鏡法を用いてスキャンし、製剤成分のスペクトルのライブラリーを構築する。次いで、部分最小二乗(PLS)モデルおよび多変量分類を使用し、低API含有量(約0.5%w/w)を有する切断錠剤から得たラマンマッピングデータを解析する。多変量分類により、データで特定された化合物1の個々の顕微鏡でのピクセル上への多形の帰属を行なうことが可能になる。特定の各結晶性形態を含む個々の錠剤の組のデータを試験することにより、特定の形態認識が、約0.5%w/wで示され得る。結晶性形態の混合物を含む錠剤では、化合物1の多形または偽多形不純物を約10%認識可能である(約0.05%w/wの絶対検出限界を表す)。
上記の振動分光法方法を用いて固形製剤などの複雑なマトリックス内の化合物1の結晶性形態の多形または偽多形の実体測定または定量を行なうため、全反射減衰(ATF)の手法が、一部の場合において使用される(一例は、Salari,H.ら“Application of attenuated total reflectance FTIR spectroscopy to the analysis of mixtures of pharmaceutical polymorphs”International Journal of Pharmaceutics 163(1):157−166(1998)参照のこと]。
結晶性形態の同定または定量のための別の手法は、拡散反射率赤外線フーリエ変換分光分析(DRIFTS)である(一例については、Tantishaiyakul,V.ら“Use of DRIFTS and PLS for the Determination of Polymorphs of Piroxicam alone and in combination with pharmaceutical excipients:A Technical Note”AAPS PharmSciTech 9(1)95−99(2008)参照のこと]。大粒子は、エネルギーの散乱をもたらし、スペクトルベースラインのシフトおよびIRバンドの広がりをもたらすため、粒径が拡散反射率の測定に重要な可変量であることは、よく知られている。DRIFTSを行なうため、磨砕または篩に通すこと(準安定多形または偽多形形態から別の結晶性形態への変換の可能性が回避されるため、後者が好ましい)によって固体状態化合物1を含む試料を調製して、均一な粒子を得る。
また別の手法では、近赤外線(NIR)分光法もまた、固体状態形態の混合物中の化合物1の結晶性形態(多形または偽多形形態(例えば、水和物)など)の同定または定量的分析、あるいは化合物1の多形または偽多形形態を含む固形製剤(例えば、錠剤)中の多形または偽多形形態の同定に使用され得る。
本明細書に記載の種々の振動分光法方法によって調べたとき、化合物1の異なる結晶性形態のIRまたはラマンバンドに広範囲の重複が、一部の場合において見られることがあり得るため、定量には、個々の各成分に関する情報を抽出するためのデコンボルーション法が必要とされる。かかるデコンボルーション法としては、部分最小二乗回帰、主成分分析または他の方法論が挙げられる[一例については、Reich,G.“Near−infrared spectroscopy and imaging:Basic principles and pharmaceutical applications”Adv.Drug Deliv.Rev.57:1109−43(2005)を参照のこと]。
固体状態核磁気共鳴(SS−NMR)−化合物1の多形を特性評価するために任意選択で使用され得る判断手法としては、固体状態NMR手法が挙げられる[一例については、Tishmack,P.A.ら“Solid−State Nuclear Magnetic ResonanceSpectroscopy:Pharmaceutical Applications,”J.Pharm.Sci.92(3):441−474(2003)を参照のこと]。この手法は、非破壊的で非侵襲であるという利点をもたらす。SS−NMR分光法は、ほとんどの医薬用賦形剤のNMR共鳴がNMRスペクトルの狭い範囲内で起こるため、一部の場合において、薬物製剤(化合物1を含むものなど)の試験に適している。したがって、典型的には、賦形剤のNMR共鳴と化合物1のNMR共鳴を識別することが容易である。さらに、スペクトルから存在する干渉性賦形剤ピークを排除するため、スペクトル減法を使用することもできる。 化合物1の特定の多形または偽多形形態の特性評価におけるSS−NMRの有用性は、これらの結晶性形態の単位胞内の結晶学的に非等価な部位の数が異なることによるもの、および結合長さ、結合角、隣接分子との相互作用におけるわずかな変化、または偽多形の場合は水和または溶媒和レベルが異なることが、溶液のスペクトルに対してSS−NMRシグナルに影響を及ぼし得る局所化学的環境における変化に対する感受性によるものである。
非晶質物質では、SS−NMR分光法が不規則性の程度を調べるために使用され得る。これは、種々のプロセス手法(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、溶融クエンチ、低温ミル処理)では、試料中の全体的な不規則性の程度が異なり得るため、または多形形態に変化がもたらされ得るためである。化合物1のあまり安定ではない(すなわち、準安定)多形または偽多形形態では、該結晶性形態の相対不安定性は、固体状態試料中の化合物1の分子の移動性が全体的に大きいことによって引き起こされ得る。
一部の場合において、異なるロットから得られた化合物の同じ多形形態または偽多形形態は、異なる物理化学的特性(安定性および溶解速度など)を示すことがあり得、これは、試料の結晶化度の程度によって引き起こされ得る。結晶化度の程度の低下をもたらす固体状態試料内の欠陥部位または少ない結晶性ドメインの存在は、一部の場合において、粉末X線回折において観察されないことがあり得る。これは、SS−NMR分光法においては、このような部位またはドメインは、固体状態試料のスピン状態の緩和プロセスのための別の手段を提供するため、多くの場合、そうではない。
また、SS−NMRは、化合物1を含む固形製剤の解析に適用され得、したがって、賦形剤の存在下で化合物1の異なる固体状態形態の検出に有用であり得る。非晶質化合物1の検出では、SS−NMRの検出限界は、スペクトル内の非晶質および結晶性形態のピークの相対位置に応じて、一部の場合において約10〜20%である。なぜなら、非晶質ピークは、一般的に非常に広がっているためである。これは、XRPDとほぼ同じ検出限界である。
SS−NMR分光法は、ほとんどの医薬用賦形剤のNMR共鳴がNMRスペクトルの狭い範囲内で起こるため、薬物製剤の試験に適している。したがって、典型的には、化合物1の特定の多形または偽多形形態を含む製剤中の化合物1と賦形剤のNMR共鳴の識別が可能である。スペクトル内に干渉性の賦形剤ピークが存在する場合、スペクトル減法もまた、この干渉を排除または低減するために使用され得る。
製剤内の化合物1の特定の結晶性形態の同定には、一部の場合において、SSNMRがXRPDよりも優れている。これは、化合物1に帰属するNMRピークが製剤の賦形剤由来のピークによって隠されずに見られ得るためである。XRPDでは、多くの回折線が重複することがあり得、したがって、化合物1の少量の多形または偽多形形態の検出が限定されるため、そうでない場合があり得る。回折線の干渉がないと、XRPDでは、多形または偽多形の化合物1に対して、約10%の検出限界、一部の場合では約5%までの検出限界が得られ得るが、SSNMRでは約0.5%までの検出限界が得られ得る。また、NMR分光法は、本質的に定量的手法(すなわち、シグナル強度がその特定の共鳴周波数の核部位の数に相対的である)であるため、SS−NMR分光法により、化合物1の結晶性形態の寄与、または結晶性および非晶質化合物1のかかる形態の混合物中における寄与が測定され得る。
熱量関連分析手順−化合物1の多形を特性評価するために任意選択で使用され得る判断手法としては、示差熱分析(DTA)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)および融点測定が挙げられる。
DTAおよびDSCでは、結晶性形態が、その結晶構造が変化したとき、または融解したときに熱を吸収または放出する熱転移温度が測定される。TGAは、試料の加熱に伴う重量変化をモニタリングすることにより、熱安定性および試料の揮発成分の割合を測定するために使用される。偽多形のTGA分析中に発生放出される揮発成分に対して赤外線分光法を行なうと(TGA−IR)、多形の分子組成が識別され得る。したがって、この手法は、溶媒和物および/または水和物として存在する固体状態形態の特性評価に有用である。
DTAは、化合物1の固体状態形態の試験試料および不活性参照を同一条件下で加熱しながら、試料と参照間に温度差があれば記録することを伴う。この温度差を温度に対してプロットし、したがって、熱の吸収または放出がもたらされる試験試料の変化が、不活性試料に相対して測定され得る。
DSCでは、同一加熱条件(regime)に供したときに試料と不活性参照間にほぼゼロの温度差を確立するために必要とされるエネルギーが測定される。これに必要とされるエネルギーは、参照に対する試料におけるエンタルピーまたは熱容量変化の尺度である。
熱転移温度は、典型的には、10℃/分の温度スキャン速度を用いた連続解析において約2℃以内であり、使用される温度スキャン速度に応じて約1度以内である(低いスキャン速度(5℃/分または1℃/分など)ほど、高い精度がもたらされる)。化合物が所与の値でDTA転移を示すと記載している場合、これは、DTA転移が±2℃以内であることを意味する。多形または偽多形形態などの異なる結晶性形態は、少なくとも一部において、DTAサーモグラフの転移温度プロフィールの違いに基づいて同定され得る。
熱量関連分析は、通常、10℃/分の温度スキャン速度で行なわれる。温度転移の重複が疑われる場合は、低いスキャン速度(5℃/分または1℃/分など)が使用され得る。したがって、試料が完全に融解する前の異なる、より安定な多形への多形形態の変化による転移の疑いが、低いスキャン速度を用いて認識され得る。完全な融解前に、熱力学的により安定な多形への動力学的に形成された多形の熱量関連分析中の転移は、転移が起こる時間を許容しない高いスキャン速度を用いて回避され得る。
特性評価および同定方法のためのデータ取得
図、表および実施例に示したデータは、下記の方法および計測器を用いて得た。
粉末X線回折−XRPDパターンは、PANalytical X’Pert Pro回折計を用いて取得した。Optix社製の長焦点微小焦点線源(long,fine−focus source)を用いてCu Kα放射線の入射光線を生成させた。楕円形の段階的多層の鏡を使用し、線源のCu KαX線を、被検物を通して検出器上に集中させた。データを収集し、X’Pert Pro Data Collectorソフトウェア(v.2.2b)を用いて解析した。分析前、シリコン被検物(NIST SRM 640c)を分析して、Si 111ピーク位置を確認した。被検物を3μm厚のフィルム間にサンドイッチし、透過幾何学において分析し、回転させて方位統計値を最適化した。光線停止およびヘリウム雰囲気を使用し、空気散乱によって生じる磨砕戻りを最小限にした。軸方向の発散を最小限にするため、入射光線および回折光線には、ソーラスリットを使用した。回折パターンは、被検物から240mmに配置した走査位置感受性検出器(X’Celerator)を用いて収集した。
XRPDパターンは、湾曲位置感受性検出器を備えたInel XRG−3000回折計を使用し、120°の2θ範囲で収集した。Cu Kα放射線(40kV,30mA)の入射光線を使用し、0.03°2θの分解能でデータをリアルタイムで収集した。分析前、シリコン標準(NIST SRM 640c)を分析し、Si 111ピーク位置を確認した。分析用の試料は、薄壁ガラスキャピラリー内に充填することにより調製した。各キャピラリーをゴニオメータ頭部に載せ、データ取得の間、回転させた。モノクロメータースリットを160μmずつ5mmに設定し、試料を5分間分析した。
また、XRPDパターンを、Shimadzu WRD−6000粉末X線回折計でも、Cu Kα放射線を用いて取得した。分析用の固体状態試料は、アルミニウムホルダー内にシリコン挿入物を入れることにより調製した。計測器には、長焦点微小焦点X線チューブを取り付けた。チューブの電圧およびアンペア数は、それぞれ、40kVおよび40mAに設定した。発散および散乱スリットは1°に設定し、受光(receiving)スリットは0.15mmに設定した。分析前、シリコン標準(NIST SRM 640c)を分析してSi 111ピーク位置を確認した。回折放射線は、ヨウ化ナトリウムシンチレーション検出器によって検出した。3度/分(0.4秒/0.02度工程)で、2.5〜40度の2θのθ−2θ連続スキャンを使用した。
本明細書に示したX線回折パターンは、標識ピークおよびピークリストを示した表を伴う。報告したピークデータは、ほとんどの状況において、約30度の2θまでの範囲内である。上記のように、データは、計測器依存性であり、独立して調製された試料の異なる計測器での第3者による測定は、±0.1度の2θより大きい差異が生じることがあり得る。また、技術的理由により、異なる四捨五入アルゴリズムを使用し、データ収集に使用する計測器および/または固有ピーク分解能に応じて、各ピークを最も近い0.1度または0.01度の2θに四捨五入した。
図および表において報告したピークのx軸に沿った位置(角度2θ)は、PATTERNMATCHTM2.4.0ソフトウェアにより自動的に測定されたものであり、上記の基準に基づき、小数点以下、1桁または2桁の有意な桁まで四捨五入した。ピーク位置の差異は、United States Pharmacopeia,USP 31,NF 26,Vol.1,pg.374に示されたUSP discussion of variability in X−ray powder diffractionに概説された推奨に基づき、±0.1度の2θ以内で示す。d−空間リストでは、d−空間の計算に使用した波長を、Cu−Kα1波長とCu−Kα2波長の加重平均である1.541874Åとした[Phys.Rev.A56(6)4554−4568(1997)]。d−空間の推定に伴う変動を各d−空間において、USP推奨から計算し、それぞれのデータテーブルに示す。
示差走査熱量測定(DSC)−DSCは、TA Instruments Q2000示差走査熱量測定装置を用いて行なった。NIST追跡可能インジウム金属を使用し、温度較正を行なった。試料をアルミニウム製DSCパン内に入れ、重量を正確に記録した。このパンをレーザーピンホールを有する有孔蓋で覆い、この蓋を押し付けた。重量計測して蓋を押し付けたアルミニウム製パンをセルの参照側上に置いた。試料セルを25℃で平衡化し、窒素パージ下、10℃/分の速度で最終温度250℃まで加熱した。報告した温度は転移極大におけるものである。
示差熱分析(DTA)−DTAとTGAは、Seiko SSC 5200 TG/DTA計測器を用いて同時に行なった。NIST追跡可能インジウム金属を使用し、温度較正を行なった。試料をアルミニウム製パン内に入れ、緩く蓋をし、重量を正確に記録した。試料セルを25℃で平衡化し、次いで、窒素パージ下、10℃/分の速度で最終温度250℃まで加熱した。報告した温度は転移極大におけるものである。
熱重量分析(TGA)−TGAは、TA Instruments Q5000 IR熱重量分析装置を用いて行なった。ニッケルおよびALUMELTMを用いて温度較正を行なった。各試料をアルミニウム/または/白金製パン内に入れた。このパンを蓋で密封シールし、TG炉内に挿入する直前にパンチング機構を用いて開放した。炉を窒素下、10℃/分の速度で最終温度350℃まで加熱した。
FT−ラマン分光法−ラマンスペクトルは、ヒ化ガリウムインジウム(InGaAs)検出器を備えたNexus 670 FT−IR分光光度計(Thermo Nicolet)とインターフェース接続されたNexus 670 FT−ラマンアクセサリーモジュールにおいて取得した。波長の確認は、イオウおよびシクロヘキサンを用いて行なった。分析用の各試料は、試料をガラスチューブ内に入れ、このチューブを金コーティングチューブホルダー内に配置することにより調製した。ほぼ0.5WのNd:YVO4レーザーパワー(1064nm励起波長)を用いて試料に照射した。各スペクトルは、4cm−1のスペクトル分解能で収集された256個の画像を結合した(co−added)スキャンを表す。
カール・フィッシャー解析−水分測定のための電量分析によるカール・フィッシャー(KF)分析は、Mettler Toledo DL39 KF滴定装置を用いて行なった。分析前にブランク滴定を行なった。試料は、乾燥窒素雰囲気下で調製し、予備乾燥バイアル内のおよそ1mLの乾燥HYDRANAL−COULOMAT ADTMに溶解させた。全溶液をKF電量計内にセプタムを介して添加し、10秒間混合した。次いで、電気化学的酸化:2I−→I2+2e−によってヨウ素をもたらす発生電極により試料を滴定した。2連で得ることにより再現性を確認した。
製剤−医薬活性成分として化合物1を含む製剤は、1種類以上の固体状態形態、典型的には1種類または2種類の固体状態形態の化合物1を有意な割合で有する。例示的な製剤は、1種類の固体状態形態の化合物1を少なくとも約60%または、通常、少なくとも約90%含むものである。製剤は、通常、化合物1の1種類以上の所与の固体状態形態を含み、他の固体状態形態を実質的に含まず、1種類以上の、典型的には1、2、3または4種類の賦形剤または担体を含む。他の製剤は、1種類以上、典型的には1種類または2種類の固体状態形態の化合物1を含むものであり得る。他の製剤は、一般的に、化合物1の1種類以上の固体状態形態(化合物1の非晶質形態、化合物1の結晶性I型もしくは結晶性III型またはその混合物など)を含む固形物、析出物、ゲル状物、懸濁液およびコロイドである。ヒトでの使用のための好ましい経口投薬単位は、単位用量あたり約2mg、5mg、10mg、15mg、20mgまたは40mgの化合物1の固体状態形態を含む。
固体状態の化合物1は、純粋な化合物として被検体に投与することが可能であるが、通常は、液状物を本質的に含まない固形製剤として、または頻度は少ないが固形懸濁剤として提示される。製剤は、典型的には、経口、口腔内または舌下投与のための投薬単位、例えば、錠剤、カプセル剤またはロゼンジ剤を調製するために使用され、該投薬単位は、通常、化合物1の固体状態形態(非晶質化合物1、化合物1の結晶性I型または結晶性III型など)を含む製剤を約0.1〜500mg、典型的には約0.5〜100mg、または約1〜100mg(例えば、約0.1、約0.25、約0.5、約1、約5、約10、約20、約100mg)を含む。あるいはまた、ある実施形態は、非経口(例えば、皮下、真皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内またはエーロゾル)投与のための製品を含み、該製品は、化合物1の固体状態形態(非晶質化合物1、化合物1の結晶性I型または結晶性III型など)を、液状賦形剤(例えば、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールまたはエタノールの任意の1種類、2種類、3種類またはそれ以上)と接触させ、任意選択で、該溶液を滅菌し、任意選択で、該溶液を、バイアルまたはアンプル(典型的には褐色ガラス製)(単回使用であっても反復使用であってもよい)内に分配し、任意選択で、該製剤を低温(約0〜12℃、または約2〜10℃)で保存する方法によって作製される。かかる非経口投与のための製品は、典型的には、化合物1を約0.1〜100mg/mL、通常、約1〜100mg/mLまたは約10〜100mg/mLの濃度で含み、任意選択で、1種類以上の塩、バッファーまたは静菌剤または保存剤(例えば、NaCl、BHA、BHTもしくはEDTA)を含む。一部の場合において、表面活性剤が、懸濁剤に作用させるために使用されるか、または胃腸管への化合物1の固体状態形態の溶解を補助するために経口固形投薬形態中に組み込まれる。一般に、経口投与のための製剤が、ヒト治療適用用途に好ましい。
懸濁剤または液状賦形剤(1種類もしくは複数種)中の化合物1の固体形態に使用される表面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系およびアニオン系界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤の例としては、限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリソルベート40およびポリソルベート80が挙げられる。
一実施形態において、ラウリル硫酸ナトリウムが表面活性剤として、本明細書に開示した病状の処置における経口投与のための錠剤またはカプセル剤などの単位投薬形態に使用され、ここで、製剤は、他の化合物1の固体状態形態を本質的に含まない化合物1の結晶性I型または結晶性III型と、表面活性剤を含み、任意選択で、1種類以上のさらなる賦形剤、典型的には1、2または3種類のさらなる賦形剤を含むものである。
化合物1の固体状態形態(例えば、結晶性I型または結晶性III型)を含む製剤の調製に使用される他の賦形剤の例は、例示であって限定されないが、Nema,S.らPDA J.Pharm.Sci.Tech.1997,51:166−171;Strickley,R.G.Pharm.Res.2004,21:201−230;Powell,M.F.らPDA J.Pharm.Sci.Tech 1998,52:238−311;Akers,M.J.in“Drug Delivery:Parenteral Route”Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,lnforma Healthcare,USA,2007,pp1266−1278に示されたものである。
微粉化−化合物1の少なくとも1種類の結晶性形態と1種類以上の薬学的に許容され得る賦形剤を含む固形投薬形態の製剤中の化合物1の結晶性形態の溶解速度を改善するため、または化合物1の結晶性形態と液状賦形剤(1種類もしくは複数種)を含む経口もしくは非経口投与のための懸濁剤の懸濁性に作用させるため、該結晶性形態を、約0.01〜200μm、または約0.1〜100μmまたは約3〜50μmの体積加重平均粒径(Dv,50)または平均直径にミル処理してもよい。したがって、ミル処理された結晶性化合物1の体積加重平均粒径(Dv,50)または平均直径は、比較的小さくてもよく(例えば、約0.03〜2.0μmまたは約0.1〜1.0μm)、いくぶん大きくてもよい(例えば、約3〜100μm、約5〜75μmまたは約10〜30μm)。ミル処理された結晶性化合物1は、被検体への経口または非経口投与が意図される固形製剤および懸濁製剤の調製に適している。体積加重平均粒径または平均直径としては、約0.01〜約500ミクロンの範囲で0.05ミクロンきざみまたは0.1ミクロンきざみ、例えば、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約50、約60、約75、約85、約100、約120ミクロンなどの体積加重平均粒径または平均直径が挙げられる。好ましくは、体積加重平均粒径(Dv,50)または平均直径は約5、約10、約15または約20ミクロンである。該粒径(Dv,90)は、典型的には約5ミクロン、約10、約15、約20、約25または約30ミクロンである。好ましい粒(partricle)径は、≦10ミクロンの(Dv,90)または≦6.8ミクロンの約ミクロン(Dv,90)を有する。
本明細書で用いる場合、体積加重平均粒径または平均直径に対する言及は、当該物質、例えば、結晶性化合物1、賦形剤(1種類もしくは複数種)、または両者を含む組成物が、磨砕、ミル処理、篩い分け、あるいは特定の粒径を含むように処理されたものであることを意味する。一部の粒子は大きかったり小さかったりし得る(すなわち、粒径の分布が存在する)が、化合物1(例えば、結晶性I型または結晶性III型)の組成物または結晶性形態は、特定の粒径を有する、または特定の粒径の許容範囲内である当該物質を有意な割合でを含むことを理解されたい。微粉化方法としては、ボールミル、ピンミル、ジェットミル(例えば、流体エネルギージェットミル)によるミル処理、および磨砕、篩い分けならびに溶液からの化合物(1種類または複数種)の沈澱が挙げられ、例えば、米国特許第4919341号、同第5202129号、同第5271944号、同第5424077号および同第5455049号(これは、引用により具体的に本明細書に組み込まれる)を参照されたい。粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、光学顕微鏡法、X線回折法および光散乱法またはコールターカウンター分析(例えば、“Characterization of Bulk Solids”D.McGlinchey編,Blackwell Publishing,2005参照)によって測定される。
したがって、結晶性化合物1は、このような体積加重平均粒径または平均直径の粒径の1種類または2種類またはそれ以上を含む粉末を含むもの、または本質的に該粉末からなるものであり得、該粉末を固形賦形剤(1種類または複数種)(混合されたものであり得る)と接触させ、任意選択で圧縮または所望の形状に成形してもよい。あるいはまた、上記のようにして(a described above)粉末に形成された結晶性化合物1を、液状賦形剤(1種類または複数種)と接触させて液状製剤または液状組成物を調製し、これを固形製剤または懸濁剤に組み込む。したがって、好適な微粉化製剤としては、結晶性化合物1の水性または油性の懸濁剤が挙げられる。
過剰増殖状態−結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る過剰増殖状態としては、癌、前癌および他の過剰増殖状態が挙げられ、癌腫、肉腫、腺腫、形成異常、芽細胞腫、乳頭腫、母斑、前悪性腫瘍、良性腫瘍または悪性腫瘍、例えば、充実性腫瘍および播種性腫瘍(前立腺、肺、乳房、卵巣、皮膚、胃、腸、膵臓、頸部、喉頭、食道、咽喉、舌、唇、口腔、口腔粘膜、唾液腺、精巣、肝臓、耳下腺、胆道、結腸、直腸、頚部、子宮、膣、骨盤、子宮内膜、腎臓、膀胱、中枢神経系、グリア細胞、星状細胞、扁平上皮細胞、血液、骨髄、筋肉または甲状腺の細胞もしくは組織と関連しているもの、または該細胞もしくは組織から生じるものなど)が包含される。
良性腫瘍のカテゴリーの1つは、罹患組織に対して機能的効果を有することから命名された機能的腫瘍を包含するものである。例えば、内分泌組織の機能的腫瘍(腺腫と称される)は、ある種のホルモンを過剰生成する。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水塩の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る良性腫瘍の別のカテゴリーとしては、乳頭腫(これは、指のような葉状で外方増殖的に増殖する(外方に突出する)良性上皮性腫瘍をいう)、および母斑が挙げられる。乳頭腫としては、喉頭乳頭腫、脈絡叢乳頭腫、皮膚乳頭腫、扁平上皮細胞乳頭腫および移行上皮性乳頭腫(膀胱乳頭腫としても知られる)が挙げられる。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る他の良性腫瘍は、嚢胞腺腫(あるいは「嚢腫」)であり、これは、分泌物が保持され、嚢胞内に蓄積されている腺組織由来の嚢胞性腺腫の一種であり、粘液性嚢胞腺腫(卵巣上皮細胞から発生)、乳頭状嚢胞腺腫(乳頭状と嚢胞性の両方であるパターンをもたらす任意の腫瘍)、漿液性嚢胞腺腫および莢膜腫(これは、良性卵巣新生物であり、典型的にはエストロゲン生成性である)が挙げられる。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る皮膚の非悪性過剰増殖状態としては、脂漏性角化症、中毒性湿疹、アレルギー性湿疹、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、および乾癬が挙げられる。
良性前立腺肥大症(BPH)、動静脈奇形、異所性骨化、乳房の過形成、局所性上皮肥厚、脂腺過形成および先天性副腎過形成は、結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の多形形態、または非晶質化合物1)で処置され得る過形成である過剰増殖状態の一例である。好ましい処置はBPHに対するものである。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水塩の結晶性形態、または非晶質化合物1)を含むBPHに対する処置の選択肢としては、α1−アドレナリン作動性受容体拮抗薬(ドキサゾシン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシンなど)ならびに5α−還元酵素阻害薬(フィナステリドおよびデュタステライドなど)が挙げられる。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水塩の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る前悪性状態または腫瘍としては、結腸ポリープ、光線性角化症、扁平上皮化生、白斑症、紅板症、バレット食道、子宮内膜過形成、頚部形成異常、真性一次性赤血球増加症および上皮内癌(CIS)が挙げられる。好ましく処置されるのは、子宮内膜過形成および頚部形成異常である。
前立腺間質性腫瘍(PIN)は、結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物)で処置され得る。PINは、高悪性度、中悪性度および低悪性度に分類され得る。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る形成異常(または異形成)は、組織内の細胞の成熟における異常をいい、骨髄異形成症候群または血液形成細胞の形成異常が挙げられる。
悪性腫瘍(癌)は、近隣組織に浸潤して崩壊させ、他の身体部分に拡延(転移)するという性質を有する。癌は、腫瘍と似ている細胞の型、したがって、腫瘍の起源であると推測される組織によって分類される。結晶性化合物1(例えば、III型などの無水塩の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る癌の一般的なカテゴリーの1つは、一般的な形態の乳房、前立腺、肺および結腸の癌ならびに基底細胞癌、悪性黒色腫、扁平上皮細胞癌腫(これは、扁平上皮の悪性腫瘍であり、唇、口、食道、膀胱、前立腺、肺、膣および頚部などの部位にも発生する)が含まれる癌腫を包含するものである。好ましい処置は、前立腺および乳癌に対するものである。また、肺および頚部の癌腫に対する処置も好ましい。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る腺癌は、癌腫のカテゴリーの1つであり、腺起源のものである(上記参照)。腺癌を分類されるために、細胞は、分泌特性を有するものであれば、必ずしも腺の一部である必要はない。腺癌は、一部の場合において、内臓の内側を覆い、腺様(分泌)特性を有する細胞に生じることがあり、したがって、数多くの組織(例えば、乳房、結腸、肺、前立腺、膵臓、胃、頚部および膣のもの)に生じ得る。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る癌腫としては、腎細胞癌腫、子宮内膜癌および肝細胞癌(HCC)(ヘパトームとも称される)が挙げられる。好ましい処置は、HCCおよび子宮内膜癌に対するものである。
同様に結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る悪性腫瘍の別のカテゴリーは、神経内分泌腫瘍(インスリノーマおよびグルカゴノーマが挙げられる)を包含するものである。
結晶性化合物1(例えば、III型などの無水物の結晶性形態、または非晶質化合物1)で処置され得る悪性腫瘍の別のカテゴリーは肉腫であり、リンパ腫、白血病、生殖細胞腫瘍および芽細胞腫(膠芽細胞腫および髄芽細胞腫、肝芽細胞腫、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨芽細胞腫および網膜芽細胞腫など)が挙げられる。好ましい処置は、骨芽細胞腫および骨芽細胞腫に対するものである。好ましい白血病およびリンパ腫の処置は、急性 リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)およびホジキン病に対するものである。
本明細書に開示する化合物1の固体状態形態(例えば、III型などの無水結晶性形態)は、上記のような癌、前癌または他の過剰増殖状態の症状の1つ以上の処置、予防、進行の遅滞、または改善に有用である。
癌または過剰増殖状態の処置において、化合物1の固体状態形態を含む組成物または製剤により、癌または過剰増殖状態の予防、確立、維持または進行と関連する1種類以上の生体分子の発現またはレベルまたは活性は、検出可能にモジュレート(例えば、低減または増大)され得る。かかる生体分子としては、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、her2/neu、Bcl−XL、bcl−2、p53、IL−1α、IL−1β、IL−6、またはTNFα、GATA−3、COX−2、NFκB、IkB、IkBキナーゼ(例えば、IkBキナーゼ−α、IkBキナーゼ−βもしくはIkBキナーゼ−γ)、NFAT、カルシニューリン、カルモジュリン、rasタンパク質(H−rasもしくはK−rasなど)、サイクリンD、サイクリンE、キサンチンオキシダーゼもしくはそのアイソフォーム、ホモログあるいは変異型(これは、生物学的活性(1つもしくは複数)が低減もしくは増大したもののいずれかであって、検出可能に低減し得るものであり得る)の1種類以上が挙げられる。検出可能に増大し得る生体分子またはその活性(1つもしくは複数)としては、IL−2、IFNγ、IL−12、T−bet、O6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ、カルシニューリン、カルモジュリン、スーパーオキシドジスムターゼ(例えば、Mn、ZnもしくはCu)、腫瘍抑制因子タンパク質(網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)もしくはCDKN2A(p16)、BRCA1、BRCA2、MeCP2、MBD2、PTEN、NBR1、NBR2または任意の上記分子のアイソフォーム、ホモログもしくは変異型(これは、生物学的活性(1つもしくは複数)が減弱しているか、向上しているかのいずれかである)が挙げられる。これらの生体分子の1種類以上が、本明細書に記載の任意の癌または病状においてモジュレートされ得る。
一実施形態において、循環前立腺特異的抗原(PSA)の減少、またはPSA増加速度(例えば、血清PSAレベル上昇の倍加時間の縮小)の低減は、前立腺癌である過剰増殖状態を有する被検体における改善と整合する検出可能な変化である。
投与プロトコルまたは方法−本明細書に開示した任意の病状または症状の処置において、化合物1の結晶性形態を含む組成物または製剤は、該病状または症状に苦しんでいるか、または易罹患性である被検体に連続的に(毎日)投与してもよく、断続的に投与してもよい。化合物1の固体状態形態(例えば、結晶性I型または結晶性III型)を含む組成物または製剤での過剰増殖状態(前立腺癌、乳癌もしくは良性前立腺肥大症など、または本明細書に開示した他の病状)の処置において、断続的投与により、通常、不連続的な投与に伴う望ましくない側面の一部が回避または改善されることがあり得る。かかる望ましくない側面としては、患者または被検体が毎日投与するレジメンの厳守を怠ること、疾患が処置に対する耐性を獲得する傾向、または随伴する望ましくない副作用もしくは毒性のため、同時に投与される他の治療用薬剤の投薬量の低減が必要とされること、が挙げられる。また、タキフィラキシーが起こり、有害な応答を回避または最小限にするために投与スケジュールを調整する場合も、断続的投与が使用される。
本明細書に記載の任意の連続(毎日)もしくは断続的投与プロトコルにおいて、または本明細書に記載の任意の疾患、病状もしくは症状の処置において、化合物1の固体状態形態(例えば、結晶性I型または結晶性III型)を含む適切な組成物または製剤は、1種類以上の適当な経路、例えば、経口、口腔内、舌下、筋肉内(i.m.)、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、皮内、別の非経口経路、あるいは、エーロゾル(この場合、医薬活性成分は化合物1の固体状態形態(例えば、結晶性I型または結晶性III型)である)によって投与することができる。かかる方法における日用量としては、約0.0025mg/kg/日〜約5.0mg/Kg/日が挙げられ得る。典型的には、かかる投与方法における日用量は、約0.01mg/kg/日〜約3mg/kg/日、または約0.1〜約1mg/kg/日(例えば、約0.3mg/kg/日〜0.5mg/kg/日)の固体状態形態の化合物1(例えば、結晶性I型または結晶性III型)を含むものである。また、より高い投薬量(例えば、約60mg/Kg/日まで)が一部の獣医学的適用において使用されることがあり得る。一部の実施形態において、化合物1の結晶性形態を含む本明細書に記載の懸濁製剤は、筋肉内(i.m.)または皮下(s.c.)投与される。好ましい単位用量は、典型的には毎日(q.d)、1日2回(b.i.d)、1日3回(t.i.d)または1日4回(q.i.d.)で投与される0.5〜100mgまたはそれ以上の化合物1の1種類以上の、典型的には1種類または2種類の固体状態形態を含むものであり、1日2回(b.i.d.)で投与される5、15、10または25mgの化合物1の単一の固体状態形態が特に好ましい。好ましい単位投薬形態としては、経口投与に適したもの(錠剤およびカプセル剤など)が挙げられる。
ホルモン感受性またはホルモン関連癌の処置などの一部の実施形態において、化合物1の固体状態形態を含む組成物または製剤は、毎日(q.d.)または1日2回(b.i.d)で14〜180日間、典型的には30〜90日間、または処置対象の過剰増殖状態のバイオマーカーによって当該疾患の消退、進行の欠如(すなわち、安定化)もしくは寛解が示されるまで投与される。バイオマーカーによって疾患の復活または再発が示された場合は投与を再開する。かかる実施形態の一例において、癌は前立腺癌であり、バイオマーカーは循環前立腺特異的抗原である。かかる実施形態の別の一例では、癌が転移性の前立腺癌であり、バイオマーカーが骨への疾患の拡延(骨スキャンによって推定)である。別の実施形態では、癌が乳癌であり、バイオマーカーが腫瘍負荷量である。
本明細書に記載の経路によって、および他の標準的な治療用薬剤または処置との併用療法の使用によって投与される固体状態形態の化合物1の投薬量は、本明細書に開示した任意の疾患または病状に対して、本質的に上記のようにして適用され得る。したがって、固体状態形態の化合物1は、慢性の病状において予防的または治療的に投与され得るか、あるいは急性事象(処置対象の状態と関連する一時的な疼痛増強など)の時点またはその比較的直後に投与され得る。
固体状態形態の化合物1の投薬量、投与経路および他の標準的な治療用薬剤または処置との併用療法の使用は、本明細書に開示した癌または過剰増殖状態または他の病状に対して、本質的に上記のようにして適用され得る。したがって(This)、一部の実施形態において、化合物1の固体状態形態の使用は、任意選択で、癌または前癌(1つまたは複数)のための1種類以上のさらなる治療剤、例えば、本明細書に記載もしくは引用した参考文献に記載の抗アンドロゲンもしくは抗エストロゲン、抗新生物剤(アルキル化剤、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、代謝拮抗物質もしくは細胞傷害剤など)、または鎮痛薬(プロポキシフェンナプシレート、アセトアミノフェンもしくはコデインなど)を使用する1種以上の外科処置および処置と組み合わされる。例示的な抗癌剤および補助剤としては、メトトレキサート、チオグアニン、メルカプトプリン、アドリアマイシン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シスプラチン、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アロプリノール、エリスロポエチン、G−CSF、ビカルタミド、アナストロゾール、リン酸フルダラビンおよびドキソルビシンが挙げられる。かかる治療剤は、本質的に標準的なプロトコルに従って使用され得、化合物1の固体状態形態を用いる処置の前、本質的に同時に、および/または後に使用され得る。一部の実施形態において、かかるさらなる治療剤は、化合物1の固体状態形態の使用と同時に、あるいは化合物1の固体状態形態での少なくとも1回の処置ラウンドの終了の前または後、約1日〜約16週間以内に投与される。他の例示的な治療用薬剤およびその使用が詳細に報告されており、例えば、Physicians Desk Reference 第54版,2000,第303〜3250頁,ISBN 1−56363−330−2,Medical Economics Co.,Inc.,Montvale,NJを参照のこと。このような例示的な薬剤の1種類以上を、化合物1の固体状態形態と組み合せて、本明細書に記載の任意の適切な癌、前癌もしくは関連する病状、または任意のその症状の改善、確立もしくは進行の遅滞、予防または処置のために使用してもよい。
一実施形態において、処置対象の癌は前立腺癌であり、これは、アンドロゲン除去感受性であってもアンドロゲン除去非感受性であってもよい。この癌がアンドロゲン除去感受性である場合、化合物1の固体状態形態は、適切な製剤にて単独で、アンドロゲン受容体拮抗薬(CASODEXTM(ビカルタミドとしても知られる)など)と組み合せて、任意選択で、黄体化ホルモン放出ホルモンまたはリュープロレリン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬)と組み合せてのいずれかで、前立腺癌を有する被検体(精巣摘出を受けていても、受けていなくてもよい)に投与される。併用療法剤は、単一の投薬形態内に合わせて(例えば、化合物1とビカルタミドとの共製剤)、または別個の投薬形態(例えば、別個の経口投薬形態のビカルタミドもしくは懸濁製剤で非経口投与されるホルモン作動薬と経口投薬形態に製剤化された化合物1)のいずれかで、互いに同時期(0〜15分間離して)もしくは15分〜24時間以内、30分〜24時間離して、あるいは1〜24時間離して、または異なる投薬スケジュール(すなわち、異なる日に投与)を用いた投与のいずれかで、各治療成分との最適な付加的もしくは相乗的相互作用が可能なように、または治療成分の1種類以上の投薬量の低減による有害事象が最小限となるように共投与され得る。前立腺癌を有する被検体がアンドロゲン除去非感受性である場合(アンドロゲン非依存性、精巣摘出非依存性またはホルモン不応答性の前立腺癌が挙げられる)、適切な製剤での化合物1の固体状態形態が、細胞傷害剤(抗微小管剤など、例えば限定されないが、ドセタキセルまたはパクリタキセルなどのタキサン化合物)と組み合せて投与される。併用療法剤は、単一の投薬形態内に合わせて(すなわち、適宜共製剤化して)、または上記のような別個の投薬形態のいずれかで共投与され得る。この場合も、投与の量およびスケジュールは、最適な治療が提供されるように変更され得る。細胞傷害剤を使用する併用療法は、典型的には、被検体が転移性疾患について症候性となった後に開始される。
別の実施形態において、単独、乳癌の処置に一般的な1種類以上の他の治療用薬剤との組み合せのいずれかの適切な製剤での化合物1の固体状態形態の投与による処置対象の癌は乳癌である。一実施形態において、化合物1の固形投薬形態(from)は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬(リュープロリドなど)と組み合せて使用される。別の実施形態では、化合物1の固形投薬形態は、腫瘍のHer2/neu状態に応じてHERCEPTINTMと組み合せて使用され得る。別の実施形態では、化合物1の固形投薬形態は、アロマターゼ酵素と共有結合を形成する不可逆的アロマターゼ阻害薬(エキセメスタンなど)、または可逆的競合によってアロマターゼ酵素を阻害する阻害薬(アナストロゾールもしくはレトロゾールなど)と組み合せて使用される。別の実施形態では、化合物1の固形投薬形態は、腫瘍のエストロゲン受容体の状態に応じて、選択的エストロゲン受容体調節剤(タモキシフェンまたはラロキシフェンなど)と組み合わせて使用される。併用療法剤は、単一の投薬形態内に合わせて(すなわち、適宜共製剤化して)、または上記のような別個の投薬形態のいずれかで共投与され得る。この場合も、投与の量およびスケジュールは、最適な治療が提供されるように変更され得る。固体状態形態の化合物1は、典型的には、乳癌を有する被検体に単独でまたはホルモン操作と同時に投与される。ホルモン操作は、典型的には、TAMOXIFENTMおよびアロマターゼ阻害薬(ARIMIDEXTM(アナストロゾール)など)を用いて行なわれ、再発を予防するための最初の一次治療(これは、手術、化学療法、放射線またはその組合せであり得る)後に実施される。この状況における(is this setting)化合物1が、タモキシフェンの代わりに使用され得るか、またはTAMOXIFENTMに加えて投与され得る。化学療法剤と同時に使用される場合(これは、一部の場合において、末期段階の疾患において行なわれる)、化合物1は、次の化学療法の過程までの期間を延ばすためにタキサン化合物(ドセタキセルまたはパクリタキセルなど)と組み合せて投与されるか、または薬剤の副作用が軽減されるように投与対象の化学療法剤の量を減らすため、あるいは薬剤に対する耐性の出現を抑制もしくは遅滞するために使用される。
番号付けした実施形態。本発明のいくつかの態様および関連する主題としては、以下の番号付けした実施形態が挙げられる。
1. 17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの固体状態形態。
2. 17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの非晶質形態を実質的に含まない17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの1種類以上の結晶性形態である実施形態1の固体状態形態。
3. 17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの多形または偽多形であり、非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを本質的に含まない実施形態1の固体状態形態。
4. 17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性形態であり、17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの非晶質形態および他の結晶性形態を本質的に含まない実施形態1の固体状態形態。
5. (a)10.6、14.7、16.0±0.1の2θ値、ならびに任意選択で、12.3、14.3、15.9、16.4、17.5、20.3、24.0および27.2±0.1の1つ以上の2θ値を有する粉末X線パターン、ならびに(b)任意選択で、10℃/分の加熱速度で得られた約81℃が中心である広がった吸熱および約164℃に顕著な吸熱(約162℃で開始)を示す示差熱分析サーモグラム(DTA)を有することを特徴とするか、あるいは(a)と(b)を特徴とする実施形態4の固体状態形態。
6. さらに、10℃/分の加熱速度で得られた約40℃から約105℃で12wt%の重量減損を示す熱重量分析(TGA)サーモグラムを特徴とする実施形態5の固体状態形態。
7. さらに、約100℃に発熱を示すDTAサーモグラムを特徴とする実施形態5の固体状態形態。
8. (a)11.3、13.5、16.2および16.5±0.1の2θ値、ならびに任意選択で、9.3、9.9、16.0.17.4および19.0±0.10の1つ以上の2θ値を有する粉末X線パターン、ならびに(b)任意選択で、約164℃に顕著な吸熱(約162℃で開始)を示すDTAサーモグラム、および10℃/分の加熱速度で得られた約40℃から約105℃で無視できるwt%の重量減損を示すTGAサーモグラムを有することを特徴とするか、あるいは(a)と(b)を特徴とする実施形態4の固体状態形態。
9. さらに、図5と実質的に同一のラマンスペクトルを特徴とする実施形態8の固体状態形態。
10. 図7の粉末X線回折パターンおよび図8のDSC−TGAサーモグラムと実質的に同一の粉末X線回折パターンおよび示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを特徴とする実施形態4の固体状態形態。
11. さらに、図9と実質的に同一のラマンスペクトルを特徴とする実施形態10の固体状態形態。
12. 図1または図2の粉末X線回折パターンおよび図3のDSC−TGAサーモグラムと実質的に同一の粉末X線回折パターンおよびDSC−TGAサーモグラムを特徴とする実施形態4の固体状態形態。
13. (a)9.8、13.0、14.7および17.0±0.1の2θ値、ならびに任意選択で、8.3、11.3、13.9、15.0、15.4、16.1、16.5、17.8、18.7、20.0、20.8、22.1および25.1±0.1の1つ以上の2θ値を有する粉末X線パターン、ならびに(b)任意選択で、約88℃が中心である広がった吸熱および約164℃に顕著な吸熱(約162℃で開始)を示すDTAサーモグラムを有することを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
14. さらに、10℃/分の加熱速度で得られた約60℃から約105℃で約5〜6wt%の重量減損または約40℃から約160℃で約7wt%の重量減損を示すTGAサーモグラムを特徴とするか、あるいは(a)と(b)を特徴とする実施形態13の固体状態形態。
15. さらに、約106℃に発熱を示すDTAサーモグラムを特徴とする実施形態13の固体状態形態。
16. 図12の粉末X線回折パターンおよび図13のDTA−TGAサーモグラムと実質的に同一の粉末X線回折パターンおよびDTA−TGAサーモグラムを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
17. (a)5.8、9.5、11.5、15.2および18.9±0.1の2θ値、ならびに任意選択で、13.5、16.0、16.5、17.3、19.3、20.9、24.5および29.3±0.10の1つ以上の2θ値を有する粉末X線パターン、ならびに(b)任意選択で、10℃/分の加熱速度で得られた約164℃に顕著な吸熱(約162℃で開始)を示すDTAサーモグラム、および約40℃から約160℃で無視できる重量減損を示すTGAサーモグラムを有することを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
18. 図15のX線回折パターンと実質的に同一の粉末X線回折パターンを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
19. (a)9.8、13.3、15.0および18.7±0.1の2θ値、ならびに任意選択で、6.7、7.2、7.5、14.3、14.6、16.0、17.0、17.7、18.3、20.9および21.8±0.1の1つ以上の2θ値を有する粉末X線パターン、ならびに(b)任意選択で、約164℃に顕著な吸熱(約162℃で開始)を示すDTAサーモグラム、および10℃/分の加熱速度で得られた約40℃から約85℃で約5wt%の重量減損または約40℃〜約180℃で約12%の重量減損を示すTGAサーモグラムを有することを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
20. 図16のX線回折パターンと実質的に同一の粉末X線回折パターンおよび図17のDTA−TGAサーモグラムと実質的に同一のDTA−TGAサーモグラムを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
21. (a)9.8、13.5、14.2、15.8、19.5±0.1の2θ値、ならびに任意選択で、5.9、8.3、11.4、11.9、17.8、21.4および26.9±0.10の1つ以上の2θ値を有する粉末X線パターン、ならびに(b)任意選択で、約164℃に顕著な吸熱(約162℃で開始)を示すDTAサーモグラム、および約40℃から約160℃で無視できる(negligle)wt%の重量減損を示すTGAサーモグラムを有することを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
22. 図18のX線回折パターンと実質的に同一の粉末X線回折パターンを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
23.(a)11.1、16.0、11.6、17.7および18.7±0.1の2θ値、ならびに任意選択で、9.4、10.1、19.1、23.7、24.3および28.4±0.10の1つ以上の2θ値を有する粉末X線パターン、ならびに(b)任意選択で、約164℃に顕著な吸熱(約162℃で開始)を示すDTAサーモグラム、および約40℃から約160℃で無視できるwt%の重量減損を示すTGAサーモグラムを有することを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
24. 図19のX線回折パターンと実質的に同一の粉末X線回折パターンを特徴とする実施形態3の固体状態形態。
25. さらに、図20と実質的に同一のラマンスペクトルを特徴とする実施形態10の固体状態形態。
26. 結晶性形態の17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールである実施形態1の固体状態形態。
27. 結晶性形態の17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを本質的に含まない非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールである実施形態1の固体状態形態。
28. 17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの固体状態形態と少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤を含む固形製剤。
29. 固体状態形態が17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの1種類以上の結晶性形態である実施形態28の製剤。
30. 結晶性形態の1つが17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの多形または偽多形形態であり、17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの非晶質形態を実質的に含まない実施形態29の製剤。
31. 結晶性形態の1つが17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの多形または偽多形形態であり、非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを本質的に含まない実施形態29の製剤。
32. 固体状態形態が17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性形態であり、17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの非晶質形態および他の結晶性形態を本質的に含まない実施形態28の製剤。
33. 結晶性形態が、任意選択で結晶性のIII型、V型、VII型およびVIII型からなる群より選択される無水物である実施形態32の製剤。
34. 結晶性形態が、任意選択で結晶性I型およびIV型からなる群より選択される溶媒和物である実施形態32の製剤。
35. 結晶性形態がI型である実施形態32の製剤。
36. 結晶性形態がIII型である実施形態32の製剤。
37. 結晶性形態がIV型である実施形態32の製剤。
38. 結晶性形態がV型である実施形態32の製剤。
39. 結晶性形態がVII型である実施形態32の製剤。
40. 結晶性形態がVIII型である実施形態32の製剤。
41. 固体状態形態が非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールである実施形態28の製剤。
42. 非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない実施形態41の製剤。
43. 製剤が経口投与のためのカプセル剤または錠剤であって、薬学的に許容され得る賦形剤が、30分後に周囲温度の水中に製剤の90%溶解がもたらされるのに充分な量の表面活性剤である実施形態28〜42のいずれか1つの製剤。
44. 表面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである実施形態43の製剤。
45. 薬学的に許容され得る賦形剤がラウリル硫酸ナトリウム、微晶質セルロースおよびステアリン酸マグネシウムで構成された実施形態28〜42のいずれか1つの製剤。
46. 薬学的に許容され得る賦形剤が、17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールの固体状態形態に対して表13または表14に示された相対量のラウリル硫酸ナトリウム、微晶質セルロースおよびステアリン酸マグネシウムから本質的になる実施形態28〜42のいずれか1つの製剤。
47. 処置の必要がある被検体に、有効量の17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールを、固体状態形態にてまたは17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールの固体状態形態と少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤を含む固形製剤にて投与することを含む、過剰増殖状態の処置方法。
48. 固体状態形態が、非晶質形態の17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールを実質的に含まない17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールの結晶性形態である実施形態29の方法。
49. 固体状態形態が、17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールの非晶質形態および他の結晶性形態を本質的に含まない、または実質的に含まない17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールの多形または偽多形形態である実施形態48の方法。
50. 多形または偽多形形態が結晶性III型である実施形態31の方法。
51. 過剰増殖状態がホルモン感受性またはホルモン関連癌である実施形態29の方法。
52. 過剰増殖状態が前立腺癌、乳癌、良性前立腺過形成または前立腺間質性腫瘍である実施形態29の方法。
53. 17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールの固体状態形態を、1、2、3または4種類の薬学的に許容され得る賦形剤とブレンドする工程を含み、少なくとも1種類の賦形剤が表面活性剤である実施形態12〜24のいずれか1つの固形製剤の調製方法。
54. 固体状態形態が結晶性III型である請求項53の方法。
55. 固体状態形態が非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールである請求項53の方法。
56. 少なくとも1種類の賦形剤がラウリル硫酸ナトリウムである実施形態53の方法。
57. 17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールおよび薬学的に許容され得る賦形剤を含み、該賦形剤の少なくとも1種類が液状賦形剤である液状製剤の調製方法であって、17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールの固体状態形態を該液状賦形剤と、任意選択で別の賦形剤の存在下で、接触させるかまたは混合する工程を含む、液状製剤の調製方法。
58. 固体状態形態が結晶性III型である実施形態55の方法。
59. 固体状態形態が非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールである請求項57の方法。
60. 処置の必要がある被検体に有効量の17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−トリオールを、請求項57、58または59の方法に従って調製される液状製剤にて投与することを含む過剰増殖状態の処置方法。
61. 過剰増殖状態がホルモン関連癌またはホルモン感受性癌である請求項60の方法。
62. 過剰増殖状態が前立腺癌、乳癌、良性前立腺過形成または前立腺間質性腫瘍である請求項61の方法。
63. 化合物1のメタノール性溶液を充分な水と混合して析出物を形成させる工程を含む方法によって調製される生成物。
64. 化合物1の偽多形を減圧下で加熱し、該偽多形の脱溶媒和をもたらす工程を含む方法によって調製される生成物。
65. 偽多形(peudopolymorph)がI型である実施形態64の生成物。
66. 化合物1の高温EtOAc溶液を充分なヘプタンと混合し、周囲温度まで冷却して晶出をもたらす工程を含む方法によって調製される生成物。
67. (1)化合物1のTHF溶液から溶媒を周囲温度および雰囲気圧で除去してゲル状物を得る工程、(2)該ゲル状物から残留溶媒を減圧下、周囲温度で除去する工程を含む方法によって調製される生成物。
68. 2:3のアセトニトリル:水中に化合物1を含む溶液の高速エバポレーション工程、または化合物1のアセトニトリル溶液を充分な水(watter)と混合してクラッシュ(crash)沈澱をもたらす工程を含む方法によって調製される生成物。
69. (1)化合物1のアセトニトリル溶液を水と混合してアセトニトリル:水が2:3の溶液を得る工程、および(2)該アセトニトリル−水の溶液から溶媒を周囲温度および雰囲気圧で除去する工程を含む方法によって調製される生成物。
70. (3)化合物1のアセトン溶液から溶媒を周囲温度および雰囲気圧で除去する工程を含む方法によって調製される生成物。
71. (1)III型化合物1を2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)と混合してスラリーを形成させる工程、(2)該TFEスラリーを約30℃で約6日間まで攪拌する工程を含む方法によって調製される生成物。
72. (1)化合物1のジオキサン溶液から溶媒を周囲温度および雰囲気圧で除去し、ゲル状物を得る工程、(2)該ゲル状物から残留溶媒を減圧下、1日間まで周囲温度で除去する工程を含む方法によって調製される生成物。
73. (1)化合物1のエタノールスラリーを充分な酢酸イソプロピルと混合し、超音波処理下で溶解をもたらす工程;(2)該エタノール−酢酸イソプロピル溶液から充分な溶媒を除去し、約47℃まで加熱すると完全な再溶解が起こるような固形物を形成させる工程;(3)再溶解させた溶液を約5℃まで冷却する工程を含む方法によって調製される生成物。
74. 化合物1のジクロロメタン溶液から溶媒を周囲温度および雰囲気圧で除去する工程を含む方法によって調製される生成物。
結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールに関する本発明のさらなる態様としては、以下の番号付けした実施形態が挙げられる。
1A. 結晶性形態17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール.
2A. 偽多形、多形またはその混合物である実施形態1Aの結晶性形態。
3A. 偽多形が溶媒和物である実施形態2Aの結晶性形態。
4A. 偽多形が水和物である実施形態2Aの結晶性形態。
5A. 溶媒和物が水とアルコールの混合型溶媒和物である実施形態3Aの結晶性形態。
6A. 本質的に17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール、水およびアルコールからなる偽多形であって、アルコールがメタノールである請求項2Aの結晶性形態。
7A. 偽多形が、水とメタノールを約2:1〜1:1の水:メタノール比で含む混合型溶媒和物である4Aの結晶性形態。
8A. 結晶性形態が、C21H32O2・1CH3OH・1H2Oの分子式を特徴とする偽多形である実施形態4Aの結晶性形態。
9A. 偽多形が、他の結晶性形態の17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを本質的に含まず、温度傾斜(ramp)10℃/分を用いて約25℃から60℃を経て約105℃まで加熱したとき約12wt%を示す熱重量分析サーモグラムを有する実施形態4Aの結晶性形態。
10A. 結晶性形態が、17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの偽多形の一部または完全な脱溶媒和工程を含む方法によって調製される生成物である実施形態1Aの結晶性形態。
11A. 偽多形が、水和物または水とメタノールの混合型溶媒和物である実施形態10Aの結晶性形態。
12A. 偽多形が結晶性I型、IV型またはVI型である実施形態10Aの結晶性形態。
13A. 結晶性形態が無水物である実施形態1Aの結晶性形態。
14A. 無水物が、結晶性I型、IV型またはVI型の完全な脱溶媒和工程を含む方法により調製される生成物である実施形態13Aの結晶性形態。
15A. 無水物が結晶性III型である実施形態13Aの結晶性形態。
16A. 結晶性形態が、表1または表2の1つ以上の、典型的には2、3または4つの顕著なXRPDピークを特徴とし、任意選択で、本明細書に開示した熱分析法により得られるサーモグラム事象を有する実施形態1Aの結晶性形態。
17A. 結晶性形態が、表5の1つ以上の、典型的には2、3または4つの顕著なXRPDピークを特徴とし、任意選択で、本明細書に開示した熱分析法により得られるサーモグラム事象を有する実施形態1Aの結晶性形態。
18A. 結晶性形態が、表8の1つ以上の、典型的には2、3または4つの顕著なXRPDピークを特徴とし、任意選択で、本明細書に開示した熱分析法により得られるサーモグラム事象を有する実施形態1Aの結晶性形態。
19A. 結晶性形態が、表9の1つ以上の、典型的には2、3または4つの顕著なXRPDピークを特徴とし、任意選択で、本明細書に開示した熱分析法により得られるサーモグラム事象を有する実施形態1Aの結晶性形態。
20A. 結晶性形態が、表10の1つ以上の、典型的には2、3または4つの顕著なXRPDピークを特徴とし、任意選択で、本明細書に開示した熱分析法により得られるサーモグラム事象を有する実施形態1Aの結晶性形態。
21A. 結晶性形態が、表11の1つ以上の、典型的には2、3または4つの顕著なXRPDピークを特徴とし、任意選択で、本明細書に開示した熱分析法により得られるサーモグラム事象を有する実施形態1Aの結晶性形態。
22A. 結晶性形態が、表12の1つ以上の、典型的には2、3または4つの顕著なXRPDピークを特徴とし、任意選択で、本明細書に開示した熱分析法により得られるサーモグラム事象を有する実施形態1Aの結晶性形態。
23A. 結晶性形態が、図2のXRPDパターンから計算されるペアワイズ分布(disrtibution)関数を特徴とする実施形態1Aの結晶性形態。
24A.結晶性形態が、図7のXRPDパターンから計算されるペアワイズ分布関数を特徴とする実施形態1Aの結晶性形態。
25A. 結晶性形態が、図5に特定されるラマンの1ヶ所以上の吸収、典型的には1ヶ所または2ヶ所の吸収を特徴とする実施形態1Aの結晶性形態。
26A. 結晶性形態が、図9に特定されるラマンの1ヶ所以上の吸収、典型的には1ヶ所または2ヶ所の吸収を特徴とする実施形態1Aの結晶性形態。
結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールに関する本発明のさらなる態様としては、以下の番号付けした実施形態が挙げられる。
1B. 結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
2B. 任意選択でXRPD、DSC、TGA、融点、ラマン分光法、カール・フィッシャーおよび/または元素分析などの本明細書に記載の分析方法で特性評価される非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない実施形態1Bの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性形態としては、無水物、水和物および溶媒和物(水−溶媒の混合型溶媒和物が挙げられる)が挙げられる。このような実施形態において、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールは、典型的に、好ましくは、含まれる非晶質物質が約10%w/w未満または約7%w/w未満である。
3B. I型結晶としての実施形態1Bまたは2Bの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのこの形態は、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール:水:メタノールが1:1:1比の混合型溶媒和物の物質であり、典型的には、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない。
4B. 任意選択でXRPD、DSC、TGA、融点、ラマン分光法、カール・フィッシャーおよび/または元素分析などの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、含まれる17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの他の結晶性形態が約10%w/w未満または約7%w/w未満である実施形態3Bの結晶性I型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
5B. (1)空間群P212121(No.19);Z =4 または(2)a=7.4893(4)Å、b=11.0586(8)Å、c=25.5095(15)Å、α=90.00°、β=90.00°、γ=90.00°、V=2112.7(2)Å3の単位胞パラメータを特徴とする実施形態3Aの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
6B. (1)約10.59、12.33、14.29、14.72、16.04、16.41、17.49、20.27、24.04および27.21度の2θに顕著なピークを有するXRPDパターン、任意選択で、(2)約160℃±3°で開始する吸熱を示すDTAまたはDSCサーモグラムおよび少なくとも約10%のwt%減損またはカール・フィッシャー滴定による約5%の含水量を示すTGAサーモグラムを有することを特徴とする実施形態3Aの17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性形態。
7B. (1)約9.30、9.85、11.33、13.45、15.96、16.16、16.48および17.42度の2θにピークを有するXRPDパターン、任意選択で、(2)約160℃±3°で開始する吸熱を示すDTAまたはDSCサーモグラム、および無視できるwt%減損、2%以下の重量、または温度傾斜10℃/分を用いて約40℃から約105℃もしくは約40℃から約160℃で0.3%の重量減損を示すTGAサーモグラムを有することを特徴とする実施形態3Aの17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性形態(form or)。
8B. 結晶性が、癌または前癌、任意選択で良性前立腺肥大、前立腺癌または乳癌を有するヒトなどのヒトへの5mg、10mg、15mg、20mgまたは50mgの単位経口用量の1日1回または1日2回の投与に適当であるのに充分な結晶性物質のバイオアベイラビリティを特徴とするIII型である実施形態1Bまたは2Bの結晶性形態。
9B. 65℃および75%相対湿度で少なくとも6ヶ月での保存に対して充分な安定性であって、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの分解生成物への分解において約5%w/w未満の変化、または別の固体状態形態への約5%w/w未満の変換を特徴とする充分な安定性を特徴とするIII型である実施形態1B、2Bまたは8Bの結晶性形態。
10B. III型結晶としての実施形態1Bまたは2Bの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのこの形態は、無水物であり、カール・フィッシャー滴定、ガスクロマトグラフィー分析、プロトン−NMR分光法および/または元素分析などの本明細書に記載の分析方法による測定時、溶媒を含まず、好ましい実施形態では、任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法または固体状態NMR分光法などの本明細書に記載の分析方法による測定時、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない。
11B. 任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法または固体状態NMR分光法などの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、含まれる17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの他の結晶性形態が約10%w/w未満または約7%w/w未満である実施形態10Bの結晶性III型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
12B.(1)約9.30、9.85、11.33、13.45、15.96、16.16、16.48および17.42度に顕著なピークを有するXRPDパターンまたは(2)図9に示されたものと実質的に同一のラマントレース、または(1)と(2)の組合せを有する実施形態10Bまたは11Bの結晶性III型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法または固体状態NMR分光法などの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、含まれる17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの他の結晶性形態が約10%w/w未満または約7%w/w未満である実施形態10Bの結晶性III型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
12B. (1)約10.59、12.33、14.29、14.72、16.04、16.41、17.49、20.27、24.04および27.21度の2θに顕著なピークを有するXRPDパターン、または(2)図5に示されたものと実質的に同一のラマントレース、または(1)と(2)の組合せを特徴とする実施形態3Bの結晶性I型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
13B. IV型結晶としての実施形態1Bまたは2Bの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのこの形態は水和物であり、水分を1:1の比で含む。好ましい実施形態では、任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法による測定時、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない。
14B. 任意選択でXRPD、DSC、TGA、ラマン分光法および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、含まれる17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの他の結晶性形態が約10%w/w未満または約7%w/w未満である実施形態13Bの結晶性IV型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
15B. (1)約8.31、9.84、11.28、13.02、13.86、14.73、15.00、16.14、16.53、17.01、17.76および18.72度の2θに顕著なピークを有するXRPDパターン、(2)約105℃±3°に発熱開始を示すDTAもしくはDSCサーモグラム、(3)融点まで加熱したとき、一水和物の完全な水分減損に相当する重量減損を示すTGAサーモグラム、または(4)(1)と(2)、(1)と(3)または(2)と(3)などの前述のものの組合せを特徴とする実施形態13Bまたは14Bの結晶性のIV型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
16B. V型結晶としての実施形態1Bまたは2Bの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのこの形態は無水物である。好ましい実施形態では、任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法による測定時、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない。
17B. 任意選択でXRPD、DSC、TGA、融点、ラマン分光法および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、含まれる17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの他の結晶性形態が約10%w/w未満または約7%w/w未満である実施形態13Bの結晶性V型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
17B.(1)約5.82、9.48、11.49、13.50、15.21、17.28および18.93度の2θに顕著なピークを有するXRPDパターン、(2)融点まで加熱したとき、無視できる重量減損、2%以下の重量減損もしくは0.3%以下の重量減損を示すTGAサーモグラム、(3)約164℃に吸熱を示すDTAもしくはDSCサーモグラム、または(4)(1)と(2)もしくは(1)と(3)の組合せを特徴とする実施形態16Bまたは17Bの結晶性V型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
18B. VI型結晶としての実施形態1Bまたは2Bの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのこの形態は、1:1の比のジオキサン溶媒和物である。好ましい実施形態では、任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法による測定時、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない。
19B. 任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、含まれる17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの他の結晶性形態が約10%w/w未満または約7%w/w未満である実施形態18Bの結晶性のVI型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
20B.(1)約7.17、9.78、13.26、14.25、14.61、15.00および18.69度の2θに顕著なピークを有するXRPDパターン、(2)融点まで加熱したとき、一溶媒和物からのジオキサンの完全な減損に相当する重量減損を示すTGAサーモグラム、(3)CDCl3にて得られ、約δ=3.6ppmにピークを有するプロトンNMRスペクトル、(4)約164℃に吸熱を示すDSCもしくはDTAサーモグラム、または(5)(1)と(2)、(1)と(3)、(1)と(4)もしくは(2)、(3)および(4)などの前述のものの組合せを特徴とする実施形態16Bまたは17Bの結晶性のVI型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
21B. VII型結晶としての実施形態1Bまたは2Bの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのこの形態は無水物である。好ましい実施形態では、任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法、および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法による測定時、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない。
22B. 任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、含まれる17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの他の結晶性形態が約10%w/w未満または約7%w/w未満である実施形態19Aの結晶性のVII型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
23B. (1)約5.91、9.78、13.47、14.16、15.78、17.85、19.50および21.45度の2θに顕著なピークを有するXRPDパターン、または(2)融点まで加熱したとき、無視できる重量減損、2%以下の重量減損もしくは0.3%以下の重量減損を示すTGAサーモグラム、(3)約164℃に吸熱を示すDTAもしくはDSCサーモグラム、または(1)と(2)、(1)と(3)または(1)(2)および(3)などの前述のものの組合せを特徴とする実施形態20Bまたは21Bの結晶性のVII型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
24B. VIII型結晶としての実施形態1Bまたは2Bの結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのこの形態は無水物である。好ましい実施形態では、任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法、および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法による測定時、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない。
24B. 任意選択でXRPD、DSC、TGA、融点、ラマン分光法、カール・フィッシャーおよび/または元素分析などの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、含まれる17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの他の結晶性形態が約10%w/w未満または約7%w/w未満である実施形態24Bの結晶性のVIII型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
25B. (1)約11.13、15.96、16.62、17.76および18.75度の2θに顕著なピークを有するXRPDパターン、(2)融点まで加熱したとき、無視できる重量減損、2%以下の重量減損もしくは0.3%以下の重量減損を示すTGAサーモグラム、(3)約164℃に吸熱を示すDTAもしくはDSCサーモグラム、または(1)と(2)、(1)と(3)または(1)(2)および(3)などの前述のものの組合せを特徴とする実施形態23Bまたは24Bの結晶性のVIII型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
26B. 癌または前癌の処置または予防のための医薬の調製のための結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの使用、または1種類以上の賦形剤と結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを含む組成物の使用、任意選択で、癌または前癌は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、肺癌、膵臓癌または良性前立腺肥大である。このような実施形態において、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性のI、III、IV、V、VIIおよびVIII型の使用が好ましく、III型が最も好ましい。このような使用では、適用可能な量の2つの結晶形を存在させてもよいが、好ましくは1種類のみの結晶性形態を存在させ、例えば、単一の結晶形は、存在するエチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの少なくとも約90%w/wまたは少なくとも約93%w/wを構成する。
27B. 結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが、任意選択でXRPD、DSC/DTA、TGA、ラマン分光法および/または固体状態NMRなどの本明細書に記載の分析方法で特性評価したとき、非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない実施形態26Bの使用。
非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールに関連する本発明のさらなる態様としては、以下の番号付けした実施形態が挙げられる。
1C. 非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
2C. XRPD分析で測定したとき、結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まず、任意選択で、結晶性I型および/またはIII型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない実施形態1Cの非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
3C. 含まれる結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが約8%w/w未満である実施形態1Cまたは2Cの非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
4C. 含まれる結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが約5%w/w未満である実施形態1C、2Cまたは3Cの非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
5C. 1種類以上の賦形剤と非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを含む医薬製剤、ここで、任意選択で、該非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールは、実施形態1C、2C、3Cまたは4Cに記載のものである。
6C. 10容量%の水を、約0.25mg/mLの化合物1のメタノール濾過溶液に攪拌しながら添加する工程を含む方法によって作製される生成物である非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール。
7C. 非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが(1)XRPD分析で測定したとき、結晶性17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まない、または(2)含まれる結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが約8%w/w未満である、または(3)含まれる結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが約5%w/w未満であり、任意選択で、結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールがI型および/またはIII型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールである実施形態6Cの生成物。
8C. 癌、前癌または過形成の処置または予防のための医薬の調製のための非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの使用、または1種類以上の賦形剤と非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを含む組成物の使用、ここで、任意選択で、癌または過形成は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌または良性前立腺肥大である。このような使用では、非晶質物質は、好ましくは、存在する17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの少なくとも約90%w/wまたは少なくとも約95%w/wを構成するものである。
9C.非晶質17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが、XRPD分析で測定したとき、結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを実質的に含まないか、または非晶質17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールは、含まれる結晶性17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが約8%w/w未満もしくは約5%w/w未満である実施形態8Cの使用。
実施例
実施例1. 17−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの合成:
工程A.3α−トリメチルシリルオキシ−アンドロスタ−5−エン−17−オン(TMS−3α−DHEA)の合成:3α−DHEAを、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)およびサッカリン(触媒として)とアセトニトリル中で合わせる。反応混合物を、窒素雰囲気下で攪拌しながら数時間還流加熱する。遊離するアンモニアを、わずかに真空下でパージする。次いで、容量を蒸留によって減少させた後、混合物を冷却し、析出した生成物を濾過によって回収する。TMS−3α−DHEA生成物の濾過ケークを冷アセトニトリルで洗浄し、加温窒素で乾燥させ、標題化合物を得る。
工程B. n−ブチルリチウムを、Me3Si−C≡CHを含むTHFに窒素雰囲気下、およそ0℃でゆっくりと添加し、リチウムアセチリドMe3Si−C≡C−Liを得る。温度を約20℃まで上げ、TMS−3α−DHEAをTHF溶液として添加し、約3時間攪拌する。約40℃まで昇温させた後、メタノールをゆっくりと添加することにより反応をクエンチする。遊離したアセチレンを、わずかに真空下でパージする。次いで、濃KOHを、ガスの発生が鎮まるまでゆっくりと添加し、およそ45℃での真空蒸留によって、容量をおよそ50%減少させる。温度をおよそ40℃に維持しながら、過剰の6N HClをゆっくりと添加する。反応混合物を水で希釈し、およそ5℃まで冷却した後、生成物を濾過によって回収し、濾過ケークを、冷却した50/50のメタノール水で洗浄する。生成物を加温窒素で乾燥させ、17β−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3α,17α−ジオールを得る。
工程C. 250L容反応器内の9.0Kgの標題化合物に、71.2Kgのメタノールを添加した。この攪拌混合物を、固形物が溶解するまで還流加熱した。55〜60℃まで冷却後、反応器の内容物を25ミクロンフィルターに通して濾過し、次いで、55〜60℃まで加熱した2.4KgのMeOHで反応器をすすぎ、上記のようにして濾過し、濾液を合わせた。250L容反応器内で攪拌したこの合わせた濾液に、温度を35〜60℃に維持しながら、30〜60分かけて81.0Kgの脱イオン水を添加し、スラリーを得た。次いで、このスラリーを0〜5℃まで少なくとも2時間かけて冷却し、温度を少なくとも1時間維持し、この時点で固形物を濾過によって回収した。10Kgの脱イオン水(2回反復)で濾過ケークをスラリー状にすることにより洗浄した。濾過ケークを、乾燥減量0.5%以下まで約28.5水銀柱インチ、約45℃で真空乾燥させた。8.4Kgの標題物質が結晶性形態で得られた。
この合成手順で得られた化合物1の結晶性形態は、図1の低分解能XRPDパターンで示される。図1の粉末X線回折(XRPD)パターンのピークリストを表1に示す。
合成生成物の熱量関連分析により、温度傾斜10℃/分を用いて約35℃から約105℃までで無視できる重量減損を示す熱重量分析(TGA)サーモグラム、および約164℃に顕著な吸熱を示すか、あるいは特徴がない(featureless)示差熱分析(DTA)サーモグラムが得られる。したがって、熱量関連分析により、生成物内の顕著なまたは単独の多形形態は無水物である可能性が高いことが示される。したがって、XRPD、DTAおよびTGAデータは、合成生成物中の主要なまたは単独の結晶性形態である後述する実施例で論考する結晶性III型と整合する。
実施例2.結晶性III型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(III型化合物1)の調製および分析:直前の実施例の合成生成物である化合物1(65.8g)を一定重量になるまで80℃で真空乾燥させ(典型的には一晩加熱することが必要)、57.9gとした。この乾燥物質を230mLのHPLC等級EtOAc(80℃)に溶解させ、旋回させることによって攪拌した。この溶液を粗いガラスフリット製漏斗にて高温で濾過して残留固形物を除去し、次いで、2L容フラスコに移し、80℃での加熱を再開した。HPLC等級ヘプタン(1.158L)を、旋回させながら約100mLずつのアリコートにわけて添加した。添加終了後、混合物を周囲温度まで冷却させ、一晩放置した。結晶性物質を濾過によって回収し、20分間風乾させ、一晩真空乾燥させて、48.8gのIII型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを得た。また、III型を、化合物1(44.0mg)をテトラヒドロフラン(600μL)に溶解させることにより調製した。この溶液を0.2μmのナイロンフィルターに通してきれいなバイアル内に濾過した。溶媒を周囲条件下でゆっくりとエバポレートしてゲル状物を得、これを周囲温度で4日間真空乾燥させ、結晶性III型の化合物1を得た。
また、III型は、非晶質物質に関する後述する実施例に記載のように化合物1の溶融クエンチ性(melt−quench)試料の気相加圧(vapor stressing)によって作製され得る。
直前の手順によって調製したIII型の高分解能XRPDを図2に示す。このXRPDパターンのピークリストを表2に示す。顕著なピークは、9.30、9.85、11.33、13.45、15.96、16.16、16.48および17.42±0.10度の2θに存在する。
結晶性III型、ならびに他のすべての17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性形態(I型、IV型、V型、VI型、VII型およびVIII型など)は、最適には、少なくとも一部において、XRPDパターンにおける1つ以上、典型的には2、3、4、5または6つの顕著な、代表的な、または特性ピークに対する参照、ピーク位置(角度2θ)に対する参照、任意選択でピーク強度に対する参照を特徴とする。
III型の示差走査熱量測定(DSC)およびTGAサーモグラムを図3に示す。TGAは、約35℃から約105℃までで無視できる重量減損を示し、これは、固体状態混合物中の多形形態は無水物である可能性が高いことを示す。DSCは、約164℃に顕著な吸熱を示すか、あるいは特徴がなく、無水物質であることをさらに示す。
図4は、III型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのプロトンFT−NMR(CDCl3)であり、溶媒によるさらなる共鳴が示されておらず、したがって、III型が溶媒和物でないことがさらに確認される。
図5は、III型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのラマン分光法スペクトルである。このラマンスペクトルのピーク位置を表2Bに示す。
無水、半水和物、および一水和物の形態としての化合物1の割合の理論計算値を、元素分析測定値と比較して表3に示す。直前のロットに記載の手順により得られた固体状態の割合の測定値は、無水化合物1の炭素割合および水素割合の理論値の0.4%であるアメリカ化学会の推奨値の範囲内である。したがって、元素分析により、直前の手順により得られた結晶性III型は、DSC/TGAサーモグラムによって示され、さらに、カール・フィッシャー分析による0.20%の低残留水分測定値によって確認されたように、化合物1の無水固体状態形態であることが確認される。
結晶性III型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールは無水物であるため、メタノールまたはジオキサンなどのいずれの有機溶媒をも含まず、したがって、化合物1の生物学的活性に影響を及ぼし得る、または該化合物の固有の毒性を増大させ得るさらなる有機物質を含まないという利点を有する。したがって、抗腫瘍活性または毒性を特性評価するために比較的高レベルの17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが使用され得る(例えば、マウスまたはラットにおいて約60mg/kgまたは約100mg/kg)動物試験では、かかる高レベルは、溶媒和物中の有意な量の溶媒(メタノールまたはジオキサンなど)に寄与することがあり得る。かかる有機分子は、かかる溶媒が、例えば、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの代謝または性質に有害な影響を及ぼす肝臓酵素を誘導あるいはモジュレートする場合、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール自体にインビボで影響を及ぼすことがあり得る。しかしながら、無水物は、対応する水和物との関連において低い熱力学的安定性を有するものであり得る(これは、高い相対湿度での吸湿性によって示される)。また、吸湿性物質は、吸水による重量増加または薬物製品もしくは薬物製品の単位投薬形態の不安定性(例えば、錠剤崩壊)により薬物物質の効力が低下するため問題となり得る。
実施例3.XRPDパターンインデックス表示によるIII型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの単位胞パラメータの測定:本明細書中の他の箇所に記載したインデックス表示法による高分解能XRPDパターンのインデックス表示は、表4に示すインデックス表示解を示す。
III型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶形は、さらに、III型の試料の顕微鏡検査で得られた図6の写真によって示されるものであり得る。
実施例4.結晶性I型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(I型化合物1)の調製および分析:
I型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールは、油浴(bat)を用いて、化合物1(32mg)をメタノール(200μL)(65℃)に溶解させることにより調製した。この溶液を0.2μmのナイロンフィルターに通してきれいなバイアル内に加温濾過し、次いで、これを再度油浴中に入れた。この溶液に水(200μL)を添加すると、一部固形物の沈澱が生じた。収率を増大させるため、試料を5℃まで冷却した。得られた固形物を真空濾過によって回収した。I型はIII型から、後述する実施例に示す手順によっても調製され得る。
III型から調製されたI型の高分解能XRPDを図7に示す。I型のXRPDパターンの観察されたピークのリストを表5に示す。顕著なピークは、10.59、12.33、14.29、14.72、16.04、16.41、17.49、20.27、24.04および27.21±0.10度の2θに存在する。
温度傾斜10℃/分を用いたI型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのDSCとTGAのサーモグラムを図8に示す。TGAサーモグラムは、約60℃から約105℃の間で約12%の重量減損を示し、これは、DSCサーモグラムにおいて、I型の脱溶媒和物または部分脱溶媒和物であり得るものを形成する88℃における吸熱を伴う。さらにこのDSCは115℃に吸熱を示し、これはTGA重量減損を伴わず、さらなる潜在的脱溶媒和事象の関与を伴う、または伴わない脱溶媒和形態の格子再配列(1つまたは複数)を示し得る。さらに、このDSCは約164℃に顕著な吸熱を示す。
I型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのプロトンFT−NMR(CDCl3)スペクトルは、無水物のIII型のプロトンNMRスペクトルと比較すると、メタノール溶媒によるものであるさらなる共鳴(δ3.49ppm)を示す。したがって、NMR分光法により、I型が少なくともメタノール溶媒和物であることが示され、これは、I型のDSC/TGAデータによって裏付けられる。図9は、I型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのラマン分光法スペクトルである。このラマンスペクトルのピーク位置を表5Bに示す。
本明細書中の他の箇所に記載したインデックス表示法による高分解能XRPDパターンのインデックス表示、およびIII型のインデックス表示解との比較により、I型は、さらなる水分の存在を伴うメタノール溶媒和物であることが示され、これもなお、I型について得られたDSC/TGAデータと整合する。したがって、I型は、化合物1の混合型メタノール:水溶媒和物である。カール・フィッシャー(KF)分析は、約5%前後の水分を示す。後述する実施例に記載のI型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールに関する単結晶X線結晶学により、I型が、1:1:1の化合物1:メタノール:水の溶媒和物化学量論を有するメタノール−水溶媒和物であることが確認される。
結晶性I型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールは、水分の存在において比較的熱力学的に安定な偽多形であるという利点を有する。典型的には、薬物物質もしくは薬物製品の調製中、または薬物製品の保存時に起こり得る結晶性形態の変化による問題を回避し、充分な貯蔵寿命を確保するため、最も安定な多形形態が商業的開発のために選択される。しかしながら、熱力学的により安定でない多形形態が、予測される固有溶解速度が大きく、これが経口バイオアベイラビリティにプラスの影響を及ぼすことがあり得るため望ましいことがあり得る。また、最も安定な多形形態が溶媒和物である(すなわち、偽多形である)場合、該溶媒和物が水以外のものである場合は、毒物学的考慮事項が存在する。溶媒和物が水のものである(すなわち、偽多形が水和物である)場合、経口バイオアベイラビリティにマイナスの影響を及ぼし得る他の考慮事項(対応する無水物と比べて、水溶液中での水和物の固有溶解速度の予測される低下など)が影響する。
実施例5. 結晶性III型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのI型への変換:III型化合物1(77.1mg)をガラスバイアルに添加した後、MeOH(0.8mL)および攪拌バーを添加した。試料を65℃の油浴中に入れ、固形物を完全に溶解させた。さらなるIII型を、過剰の固形物が残存するように添加し、混合物を約20分間攪拌した。さらなるMeOH(0.2mL)を添加し、0.2μmのナイロンフィルターを用いて混合物をきれいなバイアル内に高温濾過し、次いで、濾液を65℃の油浴中に入れた。水(1mL)を添加し、混合物を20℃まで2時間かけて冷却した。XRPD分析により、直前の実施例に記載のように、III型がI型に変換されたことが確認される。また、I型を、1:1のメタノール水または3:1のメタノール:水のIII型のスラリーから作製した(該スラリーを、IV型、V型、VI型、VII型およびVIII型のXRPDパターンを有する試料とともに結晶種をまき、約65℃で5日間(da)または約5℃で7日間(da)攪拌する)。I型を除く種々の他の結晶性形態の存在下でのこのIII型からI型への相互変換により、IIII〜VIII型と比べてI型が、メタノール−水中で最も安定な多形形態であることが示される。
実施例6.結晶性I型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(I型化合物1)の単一のX線結晶学:
単結晶の調製:単結晶のX線結晶学に適したI型の単結晶を、化合物1のMeOH−水(1:1)溶液を冷蔵温度まで低速冷却することによって調製した。
データ収集:おおよそ0.25×0.08×0.06mmの寸法を有するC22H38O4(C21H32O2・1CH3OH・1H2O)の無色針状物を、ランダムな方位でガラス繊維上に載せた。Rigaku Rapid IITM回折計(グラファイト結晶、入射光線単色光分光器を備える)において、Cu Kα放射線(λ=1.54184Å)を用いて予備検査およびデータ収集を行なった。補正をLINUXTMPCにおいて、SHELX97TMを用いて行なった(Sheldrick,G.M.Acta Cryst,2008,A64,112)。データ収集のためのセル定数および方向変換行列を、5°<θ<72°の範囲の2719個の反射角の設定角を使用し、最小自乗補正によって得た。CRYSTALCLEARTM(CrystalClear:“An Integrated Program for the Collection and Processing of Area Detector Data”,Rigaku Corporation,(著作権)1997−2002)により補正されたモザイク性は0.35°であり、これは、良好な結晶品質を示す。空間群は、プログラムXPREPTM(Bruker,XPREP in SHELXTL v.6.12.,Bruker AXS Inc.,Madison,WI,USA,2002によって測定した。下記の条件:h00 h=2n;0k0 k=2n;00l l=2nの系統的存在(systematic presence)から、またその後の最小自乗補正から、空間群はP212121(No.19)であると測定された。データは、298±1Kの温度で最大の2θ値143.69°まで収集した。
データ整理:CRYSTALCLEARTMを用いてフレームを統合した。合計9981個の反射角を収集し、そのうち3879個は固有であった。ローレンツおよび偏光の補正をデータに適用した。Mo Kα放射線の線吸収係数は0.577mm−1である。CRYSTALCLEARTMを用いた実験による吸収補正を適用した。透過係数は、0.856〜0.966の範囲であった。等価反射角の強度を平均した。この平均の一致因子は強度に対して9.1%であった。
構造の解析および補正:構造を、SIR2004を用いた直接法によって解析した(Burla,M.C.らJ.Appl.Cryst.2005,38,381)。
単位重量の観測値の標準偏差(適合度)は0.735であった。最終差フーリエにおける最も大きなピークは、0.16e/Å3の高さを有した。最小の負のピークは−0.17e/Å3の高さを有した。
計算によるXRPDパターンを、Cu放射線について、POWDERCELLTM2.3を用いて作成し(Kraus,W.;Nolze,G.“PowderCell for Windows(登録商標) Version 2.3”Federal Institute for Materials Research and Testing,Berlin Germany,EU,1999)、実験により取得されたXRPDと比較して、この解析を確認した。図10は、単結晶データから作成されたI型化合物1の計算によるXRPDパターンと、I型の実験によるパターンとの比較を示す。実験によるパターンにおけるピークはすべて、計算によるXRPDパターンにおいて示され、これは、バルク物質がおそらく単相であることを示す。一般に、計算による粉末回折パターンと実験によるものとの強度の差は、典型的には、優先方位によるものである。優先方位は、結晶(通常、板状または針状)がある程度の秩序を伴って整列する傾向である。この試料の優先方位により、実験による粉末回折パターンにおいて、ピーク強度が有意に変化することがあり得るが、ピーク位置は変化しない。
単結晶データおよびデータ収集パラメータを表6に示し、原子座標を表7に示す。斜方晶系のセルパラメータおよび体積計算値は:a=7.4893(4)Å、b=11.0586(8)Å、c=25.5095(15)Å、α=90.00°、β=90.00°、γ=90.00°、V=2112.7(2)Å3である。I型化合物1の結晶構造における非対称単位の式量は、366.55amu−(式単位)−1であって、Z=4であり、密度計算値は1.152gcm−3となる。空間群は、P212121であると測定された。R値0.049(4.9%)によって示されるように、得られた構造の品質は高い。通常、最も信頼性高く測定された構造に対して、0.02〜0.06の範囲のR値が引用される(Glusker,J,P.ら“Crystal Structure Analysis:A Primer”,第2版;Oxford University press:New York,1985;p.87)。
I型単位胞のORTEP図を図11によって示す。ORTEP図は、PLATONソフトウェアパッケージ(Spek,A.L.“PLATON.Molecular Graphics Program”Utrecht University,Utrecht,The Netherlands,2008;Spek,A.L,J.Appl.Cryst.2003,36,7)内のORTEP III
TMプログラム(Johnson,C.K.ORTEP III,Report ORNL−6895,Oak Ridge National Laboratory,TN,U.S.A.1996;Farrugia,L.J.“OPTEP−3 for Windows(登録商標) V1.05”,J.Appl.Cryst.1997,30,565)を用いて作成した。原子は、50%確率の異方性熱振動楕円体によって示される。CAMERON
TMモデル設計ソフトウェアを用いて充填図を作成した(Watkin,D.J.;Prout,C.K.;Pearce,L.J.CAMERON,Chemical Crystallography Laboratory,University of Oxford,Oxford,1996)。
単結晶構造の非対称単位内に観察された分子は、化合物1の分子構造と整合するが、図11は、反対の立体化学的配置を示す。この配置は、該結晶が1対のラセミ体であるために絶対配置の帰属ができなかったため、自由裁量で選択した。図11に示された非対称単位は、水分子1つとメタノール分子1つを有する1分子の化合物1を含む。
実施例7.結晶性IV型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(IV型化合物1)の調製および分析:IV型のXRPDパターンを有する固形物を、化合物1の2:3のアセトニトリル:水の溶液の高速エバポレーションにより、または水の添加による化合物1のアセトニトリル溶液のクラッシュ沈澱により調製した。あるいはまた、IV型を、アセトニトリル(6mL)に溶解させた化合物1(34mg)から調製した。この溶液を0.2μmのナイロンフィルターに通してきれいなバイアル内に濾過し、この時点で水(9mL)を添加した。得られた溶液を周囲条件下でエバポレートし、固形物を真空濾過によって単離した。また、化合物1(31mg)をアセトン(500μL)に溶解させ、溶液を0.2μmのナイロンフィルターに通してきれいなバイアル内に濾過し、次いで、水(250μL)を添加することによってもIV型を調製した。このようにして形成した溶液を周囲条件下でエバポレートする。固形物を真空濾過によって単離した。
良好に形成された結晶では、倍率10倍で針状結晶モルホロジーが見られ、複屈折および減衰が、この結晶の異方性により偏光下で観察された。
直前の手順によって調製されたIV型の低分解能XRPDを図12に示す。IV型のXRPDパターンの観察されたピークのリストを表8に示す。顕著なピークは、8.31、9.84、11.28、13.02、13.86、14.73、15.00、16.14、16.53、17.01、17.76および18.72±0.10度の2θに存在する。
温度傾斜10℃/分を用いたIV型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのDTAとTGAのサーモグラムを図13に示す。IV型のTGAサーモグラムは、約60℃から約105℃までで約5〜6%の重量減損、または約40℃〜約160℃の間で約7%の重量減損を示すととともに、DTAサーモグラムにおいて約88℃が中心である広がった吸熱、続いて約106℃における吸熱を有する。このような転移は、脱水和後、熱力学的により安定な多形形態への転移を受ける(than undergo)一水和物偽多形と整合する。次いで、顕著な吸熱が約164℃に観察される。
結晶性のIV型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールは一水和物であるため、メタノールまたはジオキサンなどの有機溶媒を含まず、したがって、化合物1の生物学的活性に影響を及ぼし得る、または該化合物の固有の毒性を増大させ得る有機物質を含まないという利点を有する。結晶格子中の水分の存在により、結晶格子内に水分が既に存在し、したがって、対応する無水物または低度水和物ほど吸湿性でないはずであるため、長期保存時の水分吸収に関して、この結晶形の安定性に寄与することが予測される。また、図14のモルホロジーを有する固形物の予測される物性に基づき、結晶性IV型は、他の結晶モルホロジーと比べて体積対表面比が高いため、好都合な固有溶解速度を有すると予測される。しかしながら、機械的操作(例えば、ブレンド)のための流動特性は、結晶形状の定向性(directional)非対称性のため、他の結晶モルホロジーと比べてあまり好都合ではない可能性がある。
実施例8. 結晶性のV型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(V型化合物1)の調製:V型のXRPDパターンを有する固形物を、III型化合物1(41mg)を2,2,2−トリフルオロエタノール(1600μL)に添加することにより得た。さらなるIII型化合物1を添加してスラリーを形成させ、これを30℃で6日間攪拌した。固形物を真空濾過によって単離し、風乾させ、XRPDによって分析した。このようにして形成した固形物について、倍率10倍での明確な結晶モルホロジーは見られず、偏光下での複屈折および減衰は観察されず、これは、この固体状態形態の高度に不規則な結晶性状態を示す。
直前の手順によって調製されたV型の低分解能XRPDを図15に示す。V型のXRPDパターンの観察されたピークのリストを表9に示す。顕著なピークは、5.82、9.48、11.49、13.50、15.21、17.28および18.93±0.10度の2θに存在する。
温度傾斜10℃/分を用いたV型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのTGAサーモグラムは、約40℃から約160℃までで無視できる重量減損を示し、一方でDTAサーモグラムは、約164℃に顕著な吸熱を示すか、あるいは特徴がない。したがって、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性V型は無水物である(すなわち、結晶構造中に溶媒をもたない)。長時間放置すると、V型の試料は、XRPD再分析によって示されるように、III型への多形転移を受けたことがわかった。
有機溶媒を含む溶媒和物と比較すると、この物質は、ジオキサンまたはメタノールなどの有機溶媒を含まないという利点を有すると予測される。物質の抗腫瘍活性もしくは他の生物学的活性または毒性を特性評価するために比較的高レベルの17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが使用され得る動物試験では、かかる高レベルは、溶媒和物中の有意な量の溶媒(メタノールまたはジオキサンなど)に寄与することがあり得る。かかる有機分子は、かかる溶媒が、例えば、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールまたは性質に有害な影響を及ぼす肝臓酵素を誘導あるいはモジュレートする場合、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール自体にインビボで影響を及ぼすことがあり得る。しかしながら、無水物は、対応する水和物との関連において低い熱力学的安定性を有するものであり得る(これは、高い相対湿度での吸湿性によって示される)。また、吸湿性物質は、吸水による重量増加または薬物製品もしくは薬物製品の単位投薬形態の不安定性(例えば、錠剤崩壊)により薬物物質の効力が低下するため問題となり得る。かかる不都合点を相殺するのはV型の不規則な結晶性状態であり、この不規則な結晶性状態は、高度に規則的な結晶性状態を有する結晶性形態と比べて、克服すべき結晶性の格子力が小さいことにより、予測される固有溶解速度が大きくなるため、好都合であることが示されることがあり得る。
実施例9.結晶性VI型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(VI型化合物1)の調製および分析:VI型は、超音波処理しながら化合物1(66mg)をジオキサン(2800μL)に溶解させることにより調製した。この溶液を0.2μmのナイロンフィルターに通してきれいなバイアル内に濾過し、周囲条件下でエバポレートしてゲル状物を得、次いで、これを周囲温度で1日真空乾燥させた。
不揃いな結晶断片が観察されたが、倍率10倍において明確な結晶モルホロジーは認識され得なかった;しかしながら、偏光下での複屈折および減衰が観察され、これは、有意な数の結晶の欠陥の存在のため、大量で高度に不規則に見えることがあり得る異方性結晶性形状を示す。
直前の手順によって調製されたVI型の低分解能XRPDを図16に示す。VI型のXRPDパターンの観察されたピークのリストを表10に示す。顕著なピークは、7.17、9.78、13.26、14.25、14.61、15.000および18.69±0.10度の2θに存在する。
図17に示されたVI型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール熱量関連分析は、約40℃から約85℃までで約5%の重量減損、および約40℃〜約180℃までで約12%の重量減損を示すTGAサーモグラムと、約70℃が中心である広がった吸熱の直後、充分に規定されない広がった発熱を示すDTAサーモグラム(目盛修正後)を示す。この熱量関連データは、結晶格子の再配列を伴って脱溶媒され、熱力学的により安定な脱溶媒和物または部分脱溶媒和物が形成された溶媒和物と整合する。DTAは、さらに、その後の164℃における顕著な吸熱を示す。
VI型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの1H−NMR(CDCl3)スペクトルは、無水物のIII型のプロトンNMRスペクトルと比較すると、ジオキサン溶媒によるさらなる共鳴(δ3.64ppm)を示す。NMR分析のためのVI型の溶解前に、VI型試料をCCl4で洗浄し、非特異的に吸収された表面上の溶媒を除去した。したがって、プロトンNMR分光法により、VI型がジオキサン溶媒和物であり(これはDTA/TGAデータによって裏付けられる)、δ3.64ppmにおける共鳴の積分およびTGAにおける重量減損に基づくとモノジオキサン溶媒和物である可能性が高いことが示される。周囲温度および雰囲気圧で長時間放置後、VI型試料を、DTA/TGAおよびプロトンNMRによって再分析した。このときの熱量関連再分析では、TGA重量減損は示されず、DTAにおいて脱溶媒和事象も示されない。さらに、このときのプロトンNMRでは、δ3.64ppmにおける共鳴の有意な縮小が示される。したがって、VI型の脱溶媒和は、保存時の注意が不充分な場合に起こり得、熱力学的により安定な形態(III型など)への多形転移を伴うことがあり得る。
ジオキサン溶媒和物としてのVI型は、化合物1の含有量が未知である試料において、プロトン−NMRまたは13C−NMR分光法により化合物1の量を定量するための内部標準として有用であることが予測される。プロトンNMR分光分析における内部標準としてのVI型の有用性は、定量対象の試料に添加されたVI型に関し、化合物1に対して厳密に1:1の比であるジオキサン溶媒に起因する磁気的に等価な8個のプロトンによるプロトンNMRスペクトル内の比較的強い強度の一重項の存在によるものである。13C NMR分光分析における内部標準としてのVI型の有用性は、定量対象の試料に添加されたVI型に関し、化合物1に対して厳密に1:1の比であるジオキサン溶媒に起因する磁気的に等価な4個の炭素によるプロトンデカップリング13C−NMRスペクトル内の比較的強い強度の一重項の存在によるものである。
実施例10.結晶性VII型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(VII型化合物1)の調製および分析:VII型化合物1は、47℃で化合物1をエタノール(1.2mL)に溶解させることにより調製した。この溶液を半分の容量まで窒素下でエバポレートすると、固形の塊状物の形成が引き起こされ、次いで、酢酸イソプロピル(1mL)を添加し、固形物を超音波処理によって再溶解させた。この溶液を半分の容量までエバポレートすると固形物が形成された。この混合物を47℃まで加熱すると完全な溶解がもたらされ、周囲温度まで冷却すると、少量の固形物の形成が引き起こされた。このようにして形成された混合物を数時間冷蔵し、得られた固形物を真空濾過によって単離した。
結晶モルホロジーの描写は可能でない倍率10倍において、不揃いな凝集結晶が観察された。偏光下での検査では、複屈折および減衰を有するドメインが示され、これは、有意な数の結晶の欠陥の存在のため、大量で高度に不規則に見えることがあり得る異方性結晶性形状を示す。
直前の手順により調製されたVII型の低分解能XRPDを図18に示す。VII型のXRPDパターンの観察されたピークのリストを表11に示す。顕著なピークは、5.91、9.78、13.47、14.16、15.78、17.85、19.50および21.45±0.10度の2θに存在する。
温度傾斜10℃/分を用いたVII型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのTGAサーモグラムは、約40℃から約160℃までで約2%から無視できるまでの間の重量減損を示し、一方、DTAサーモグラムは、約164℃に顕著な吸熱を示すか、あるいは特徴がない。したがって、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性VII型は、無水物である可能性が高い(すなわち、結晶構造中に溶媒をもたない)。長時間放置すると、VII型の試料は、XRPD再分析によって示されるように、III型への多形転移を受けたことがわかった。
有機溶媒を含む溶媒和物と比較すると、この物質は、ジオキサンまたはメタノールなどの有機溶媒を含まないという利点を有すると予測される。物質の抗腫瘍活性もしくは他の生物学的活性または毒性を特性評価するために比較的高レベルの17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが使用され得る動物試験では、かかる高レベルは、溶媒和物中の有意な量の溶媒(メタノールまたはジオキサンなど)に寄与することがあり得る。かかる有機分子は、かかる溶媒が、例えば、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールまたは性質に有害な影響を及ぼす肝臓酵素を誘導あるいはモジュレートする場合、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール自体にインビボで影響を及ぼすことがあり得る。しかしながら、無水物は、対応する水和物との関連において低い熱力学的安定性を有するものであり得る(これは、特に高い相対湿度での吸湿性によって示される)。また、吸湿性物質は、吸水による重量増加または薬物製品もしくは薬物製品の単位投薬形態の不安定性(例えば、錠剤崩壊)により薬物物質の効力が低下するため問題となり得る。
実施例11.結晶性VIII型17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(VIII型化合物1)の調製および分析:VIII型は、化合物1のジクロロメタン溶液の低速エバポレーションにより調製した。倍率10倍における目視検査では、不揃いな形状の結晶断片が示される。直前の手順によって調製されたVIII型の低分解能XRPDを図19に示す。VIII型のXRPDパターンの観察されたピークのリストを表12に示す。顕著なピークは、11.13、15.96、16.62、17.76および18.75±0.10度の2θに存在する。
温度傾斜10℃/分を用いたVIII型17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールのTGAサーモグラムは、約40℃から約160℃までで無視できる重量減損を示し、一方、DTAサーモグラムは、約164℃に顕著な吸熱を示すか、あるいは特徴がない。したがって、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールの結晶性VIII型は、無水物である可能性が高い(すなわち、結晶構造中に溶媒をもたない)。
有機溶媒を含む溶媒和物と比較すると、この物質は、ジオキサンまたはメタノールなどの有機溶媒を含まないという利点を有すると予測される。物質の抗腫瘍活性もしくは他の生物学的活性または毒性を特性評価するために比較的高レベルの17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールが使用され得る動物試験では、かかる高レベルは、溶媒和物中の有意な量の溶媒(メタノールまたはジオキサンなど)に寄与することがあり得る。かかる有機分子は、かかる溶媒が、例えば、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオールまたは性質に有害な影響を及ぼす肝臓酵素を誘導あるいはモジュレートする場合、17α−エチニル−アンドロスタン−3α,17β−ジオール自体にインビボで影響を及ぼすことがあり得る。しかしながら、無水物は、対応する水和物との関連において低い熱力学的安定性を有するものであり得る(これは、特に高い相対湿度での吸湿性によって示される)。また、吸湿性物質は、吸水による重量増加または薬物製品もしくは薬物製品の単位投薬形態の不安定性(例えば、錠剤崩壊)により薬物物質の効力が低下するため問題となり得る。その不規則な結晶性状態のため、VII型は、より規則的な結晶性形態と比べて高い固有溶解速度を有すると予測され得る。
実施例12.非晶質17−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール(非晶質化合物1)の調製および分析:80℃の水浴中で加熱することにより、化合物1(52.0mg)を200μLのメタノールに溶解させた。この溶液を室温に至らせ、その時点で、旋回させながら20μLの水を添加した。このようにして形成された固形物を濾過し、冷メタノールで洗浄し、真空乾燥させ、24.3mgの標題物質を得た。
図20に示したXRPDパターンは示差的なピークのない非晶性散乱であり、これは非晶質物質を示す。図21に示したDTA/TGAサーモグラムは、DTAトレースにおいて約81℃に吸熱事象を示すとともに、TGAサーモグラムにおいて、温度傾斜10C/分を用いた約35℃から約60℃まででの約7%の重量減少を示す。これらの熱量関連事象は脱溶媒和を示す。続いて、DTAトレースにおいて約120℃に発熱事象が観察され、これは、非晶質から熱力学的に安定な多形への転移が起こったことを示す。この多形(III型であると推測される)は、次いで、約163℃に顕著な吸熱を示す。
また、種々の程度の結晶化度を有する非晶質化合物1を、溶融クエンチ性III型から(form)、下記の手順に従って得た。III型を、バイアル内でスパチュラを用いて軽く砕き、次いで、このバイアルを、175℃に設定した油浴中に入れた。バイアル中に窒素流を流し、バイアルを油浴中に、試料が融解するまで維持した。次いで、バイアルを取り出し、ドライアイスとアセトンを含む浴中に速やかに入れた。試料を冷凍庫内(乾燥剤の使用下)に入れ、XRPDによって結晶化度を分析した。
非晶質物質が種々の結晶性形態に変換される傾向を、直前の手順によってIII型から調製した溶融クエンチ性の化合物1の気相加圧によって試験した。高湿度での試験では、非晶質化合物1が変換されてIII型に戻ることが示され、これは、さらに、III型がメタノール−水に曝露されなければ、III型が最も熱力学的に安定な多形形態であることを示す。
実施例13. 固体状態形態の17α−エチニル−5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールを含む製剤の調製:下記の表は、固体状態形態の化合物1を含むカプセル剤製剤の調製に使用される成分の一覧である。
以下は、固体状態形態の化合物1の懸濁製剤の調製に使用される成分リストである。
上記の製剤および以下の実施例において、化合物1の固体状態形態(例えば、非晶質または結晶性III型)は、好ましくは、賦形剤とブレンドする前に、体積加重平均粒径(Dv,50)約3〜約100ミクロンに微粉化する。一実施形態において、III型の多形を微粉化し、(Dv,90)=10μmの粒径(全粒子の90%(体積加重)を含む粒径)を得る。適切な粒径の選択は、固体状態化合物1の溶解速度の改善による所与の製剤中の化合物1の固体状態形態のバイオアベイラビリティの改善と、粒径低減に伴う製剤の製造コストの増大との二律背反である。例えば、体積加重平均粒径または平均直径が約3ミクロン未満である粒径では、典型的には、流動床の微粉化が必要とされる(例えば、Julia Z.H,ら“Fluid bed granulation of a poorly water soluble,low density,micronized drug:comparison with high shear granulation”Int.J.Pharm.237(1−2):1−14(2002)参照、これは、大粒径になるジェットミル処理よりも費用がかかり、規模拡大がより困難なプロセスである)。
5mg未満(例えば、1mg)の投薬量強度では、製剤中への化合物1の均一な分布を得るため、一部の場合において、残りの賦形剤とブレンドする前に、微粉化化合物1と表面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)との予備ブレンドが行なわれる。
実施例14. 前立腺癌:結晶性III型から調製された製剤を用いた腫瘍モデルにおけるアンドロステンジオン(AED)刺激性CaPの処置
精巣摘出したSCIDマウス(6週齢)に、5mgのAEDの60日間徐放性ペレット剤(Innovative Labs,Sarasota FL)を埋入した。3日後、すべてのマウスの右側腹部に、100μLの7.5×106個のLNCaP腫瘍細胞含有Matrigelと1:1で混合したフェノールレッド無含有RPMIを皮下注射した。腫瘍体積を毎週測定し、a2×b/2(aは腫瘍の幅であり、bは腫瘍の長さである(単位:ミリメートル))で計算した(mm3で報告)。
腫瘍発生率用量の効果を試験するため、合計48匹の精巣摘出した雄SCIDマウスに、LNCaP腫瘍細胞を上記のようにして埋入し、マウスを無作為に、各群12匹の動物の4つの群に分け、ビヒクル対照(30%シクロデキストリン−スルホブチルエーテル含有水)群、ならびに処置群(4mg/マウス/日、1mg/マウス/日、および0.4mg/マウス/日)とした。処置群には、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3α,17β−ジオール(化合物1)の固体状態形態をビヒクルに溶解させて、30%シクロデキストリン−スルホブチルエーテル含有水1mLあたり20mgの化合物1とすることにより調製した液状製剤を使用した。このようにして調製した液状製剤を、腫瘍接種の24時間後に200μLの腹腔内(ip)注射剤として投与した。すべての動物に連続28日間、毎日投与し、腫瘍体積を毎週測定した。
この試験の結果(図22)により、腫瘍発生率の有意な低減(ビヒクルと比較)が2つの高用量群で示され(1mg、p=0.006、n=11;4mg、p<0.001、n=12)、腫瘍体積の減少は、3つのすべての用量群で明白であった(図9)。3つの処置群で、測定可能な腫瘍体積になるまでの時間に統計学的に有意な遅延がみられた(p<0.01)。腫瘍が発生した動物での平均腫瘍体積にも影響がみられ、157mm3に対して0mm3、4mm3、34mm3であった(ビヒクル、次いで用量降順)。
確立されたLNCaP腫瘍に対する化合物1の効果を試験するため、36匹の精巣摘出したSCIDマウスに、上記のようにしてAEDペレット剤を与え、LNCaP腫瘍を接種し、モニタリングした。腫瘍が15〜25mm3に達したら、マウスを腫瘍体積ごとにペアにし、ペア内の各マウスを、ビヒクル群または4mg/マウス/日の化合物1群に割り付けた。動物に、1日1回3週間投薬した。
この実験の結果を図23に示す。ビヒクル処置動物では、試験過程において腫瘍体積の進行性の増大が示された。対照的に、化合物1での処置では、腫瘍の増殖が有意に阻止された(p<0.001)。第1週までに対照群と処置群間で腫瘍体積に有意差が観察され、この試験の全過程にわたって維持された(p<0.001)。処置群では有意に高い割合のマウスで腫瘍体積が20%以上減少した(p<0.0294)。ビヒクル群では、腫瘍低減はみられなかった。また、化合物1群の2匹のマウスが有した腫瘍は、第15日目までに測定可能とならなかった。
統計学的解析:腫瘍体積が最初に測定可能になるまでの時間を、カプラン・マイヤー積極限推定によって解析し、直接ログランク検定を差の有意性の検定に適用した。腫瘍体積の減少は、ベースライン体積からの少なくとも20%の体積減少が試験終了時まで持続していることと定義する。処置(active)群と対照群間の差を検出するため、フィッシャーの直接確率検定および差に対して直接確率95%CIを適用した。体積が測定可能でない腫瘍は、手近な方法論による測定値が試験終了時まで0である腫瘍である。また、腫瘍の増殖速度を混合型モデルによって解析した。
実施例15. 過剰増殖している細胞におけるアポトーシスの誘導:下記の試験により、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3α,17β−ジオールの多形(化合物1の結晶性III型)を用いて調製した製剤の、前立腺腫瘍細胞株に対する効果を調べた。
LNCaP細胞(5×105)を、6ウェルプレート内のフェノールレッド無含有RPMI(5%ホルモン枯渇活性炭処理済血清(CSS)を有する)中に播種して一晩接着させ、次いで、50nMの化合物1含有または無含有ウシ胎仔血清(FBS)またはCSS中で4日間培養した。インキュベーション期間終了時、浮遊細胞および接着細胞を細胞周期の分析のために回収した。LNCaP細胞を、Tris緩衝生理食塩水溶液(pH7.0)中10mg/mLの4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)と0.1%NP−40の溶液中に再懸濁させ、Influxサイトメータ(Cytopiea,Seattle,WA)を用いて分析した。解析は、MultiCycleソフトウェア(Phoenix Flow Systems,San Diego,CA)を用いて行なった。Annexin V−FITC Apoptosis Detection Kit(Calbiochem,La Jolla,CA)を製造業者の使用説明書に従って使用し、アポトーシスを検出した。
図24は、化合物1とのLNCaP細胞のインキュベーション後のG1期の細胞の数の増加を示す。このG1期の細胞の蓄積は、化合物1への曝露後のアポトーシスLNCaP細胞の割合の増大を伴っていた。このデータは、LNCaPの増殖を阻止するだけでなく、LNCaP細胞に対して細胞傷害剤として作用することを示す。
実施例16. 乳癌:MNU刺激型腫瘍モデル
下記の試験では、17α−エチニル−アンドロスタ−5−エン−3α,17β−ジオールの多形(化合物1の結晶性(Crytalline)III型)を用いて調製した製剤の、発癌物質N−メチル−ニトロソ尿素(NMU)の投与によって誘導した乳房腫瘍の増殖速度および発生率に対する効果を調べた。また、化合物1の活性を、乳癌処置のために現在使用されている薬物であるTAMOXIFENTM((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブタ−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチル−エタンアミン)、ARIMIDEXTM(アナストロゾール)およびTAXOTERETM(ドセタキセル)と比較した。
7週齢の雌Lewisラット(150匹の動物、104匹が試験に必要)にイソフルランで麻酔し、NMUを投与した。NMUは、50mg/Kgの用量でip.投与した。発生した乳腺腫瘍を、副尺付きカリパスを用いて測定し、腫瘍の2つの軸を単位cmで測定した。処置は、ラットが有する腫瘍体積が0.5cm×0.5cmになったとき(約12〜20週齢)、化合物1の液状製剤(結晶性I型をビヒクルに溶解させることにより調製)を用いて開始した。処置を連続28日間継続した後、28日間観察した。乳腺腫瘍は、地元機関のガイドラインに従い、サイズが2cm×2cmに達したときに取り出した。
実験群は、陰性対照群(処置なし)、ビヒクル対照群(30%シクロデキストリン−スルホブチルエーテル含有水)、2つの処置群(8mg/ラットおよび4mg/ラット)、エストロゲン遮断薬(TAMOXIFENTM)、アロマターゼ阻害薬(ARIMIDEX)、細胞傷害剤(TAXOTERETM)を使用する3つの標準療法群、または化合物1(8mg/kg)とTAXOTERETMを与える併用処置群とした。
図25は、新たな腫瘍を有する動物の割合を、投与初日からの経過時間に対してプロットしたものを示す。このプロットは、ビヒクルと比べると、新たな腫瘍までの期間が長いことを示す(p<0.001)。新たな腫瘍までのメジアン期間は、ビヒクルでの10日間と比較すると、化合物1では少なくとも56日間であり、これは、第2の腫瘍の発生まで少なくとも5倍の遅延が化合物1によるものであることを示す。また、このプロットは、4mgの化合物1はTAXOTERETMよりも優れており(p=0.042)、8mgの化合物1+TAXOTERETMはTAXOTERETM単独よりも良好である(p=0.0385)ことを示す。
図26は、試験過程における実験群での腫瘍負荷量(体積基準)を示す。ビヒクル処置群では腫瘍は非抑制的に増殖している。化合物1での処置では、一貫して、ビヒクル処置群よりも腫瘍負荷量が少ないことが示されている(第7日目:p<0.001)。化合物1とTAXOTERETM併用処置では、TAXOTERETM単独よりも腫瘍負荷量プロフィールが小さいことが示されている(第7日目:p<0.05)。