しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、短冊状の積層ステージにセラミックグリーンシートを積層する場合、供給されたセラミックグリーンシートをサクションロールで剥離する動作とサクションロールから積層ステージへ積層する動作は同時に行うことができないため、各動作は間欠動作となる。セラミックグリーンシートの供給を間欠動作にするためには、供給リール自体を間欠動作させる、または連続回転する供給リールからサクションロールでの剥離部までの間にバッファ部を持たせることが必要となり、装置が高価となり、容積も大きくなり、電力などの消費エネルギーも大きくなる。また、間欠動作に伴う品質ばらつきの要因(セラミックグリーンシート搬送および剥離の際のキズ、ひずみ、ハンドリングミスによる積層位置ズレ、カット屑の飛散によるコンタミネーション)が発生する。そして、ここでもサクションロールの重量が重いため、加減速時の慣性が大きく高速化が難しい。そして、積層ズレが発生する。
さらには、所定数の積層が完了し、次の部品単位の積層を開始するまでに、積層ステージ上の完成品を回収する工程が必要であり、その回収の間、セラミックグリーンシートの供給は停止する必要があり、上記と同様の問題点が発生し、さらには生産性が低下する。
一方、上記特許文献2の従来技術では、セラミックグリーンシート形成、内部電極形成を含めた工程とする場合、セラミックグリーンシート形成、電極形成したものを短冊状の積層体へ積層する動作、および積層体の完成品を回収する動作において、積層工程へのセラミックグリーンシートの供給が間欠動作となる。それに伴い、セラミックグリーンシート形成、内部電極形成を1層毎に停止する場合、各形成工程において形成開始後、連続安定状態に達するまでの材料ロス、品質ばらつき(グリーンシート膜厚、電極膜厚、電極面積のばらつき)やシートスジが発生する。また、間欠動作をすることで電力などの消費エネルギーが大きくなる。さらに、ロールの重量が重いため、加減速時の慣性が大きく高速化が難しい。
そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、設備の簡素化、小型化及び低コスト化が可能であり、高品質の積層型電子部品を効率良く製造することができる積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法を提供することである。
本発明は、セラミックシートを所定の方向に連続搬送するシート搬送部材と、前記シート搬送部材で搬送される前記セラミックシートを前記シート搬送部材から剥離させ、複数層となるまで回転しながら巻き付ける中間積層部材と、前記中間積層部材に巻き付けられた複数層の前記セラミックシートを所定の長さに切断するシート切断部材と、前記シート切断部材で所定の長さに切断された複数層の前記セラミックシートの切断片が転写されるシート積層部材と、を有し、前記中間積層部材の回転にあわせて前記シート積層部材を移動させることにより、前記中間積層部材に巻き付けられた複数層の前記セラミックシートの切断片を前記シート積層部材に転写することを特徴とする積層型電子部品製造装置である。
本発明によれば、シート搬送部材で搬送されるセラミックシートがシート搬送部材から剥離され、複数層となるまで中間積層部材に巻き付けられる。中間積層部材に巻き付けられた複数層のセラミックシートがシート切断部材によって所定の長さに切断される。中間積層部材の回転にあわせて、シート積層部材が移動することにより、中間積層部材に巻き付けられた複数層のセラミックシートの切断片がシート積層部材に転写される。
これにより、セラミックシートを連続的に停止することなく供給しつつ、1つのシート積層部材上に積層することができる。その結果、バッファ機構、加減速を必要とする部分が不要となり、装置コストを低減でき、装置サイズを小さく、さらに電力などの消費電力を小さくすることができる。また、ほぼ等速で各工程が実行されるため、セラミックシートへのダメージ、ひずみ、ハンドリングミス、カット屑を低減でき、搬送位置決めバラツキ低減により積み重ね精度の向上が可能となる。さらに、装置面、品質面での課題が低減できることで、生産ライン速度の向上が容易となり、生産性が向上する。
特に、前記中間積層部材は、前記シート積層部材に対して、複数層の前記セラミックシートの切断片の転写を複数回繰り返すことにより前記セラミックシートの積層体を形成することが好ましい。
また、前記シート搬送部材は、回転することにより外周面上の前記セラミックシートを搬送する搬送ロールであり、前記中間積層部材は、回転することにより外周面に前記セラミックシートを巻き付ける積層ロールであり、前記搬送ロールの外周長と前記積層ロールの外周長が同じ長さであるか、あるいは前記搬送ロールの外周長又は前記積層ロールの外周長の一方が他方に対して整数倍であることが好ましい。
本発明によれば、シート搬送部材上に突起物などの欠陥因子があることにより生じるセラミックシートの欠陥部を複数層のセラミックシートの特定の領域に集中させることができる。具体的には、セラミックシートの積層構造体(積層体)に発生する欠陥部をセラミックシートの積層構造体の同一周軌道上(セラミックシートを送り方向から見たときの積層構造体の同じ列)に集めることができる。さらに、中間積層部材の外周長がシート搬送部材の外周長に対して整数倍だけ長い場合には、セラミックシートの積層構造体に発生する欠陥部を積層構造体の同一座標上(セラミックシートを送り方向から見たときの積層構造体の同じ行と列)に集めることができる。
また、前記セラミックシートに電極回路を形成する電極回路形成部を有し、前記シート搬送部材による前記セラミックシートの搬送が継続された状態で、前記電極回路形成部によって前記セラミックシートに前記電極回路が形成されることが好ましい。
本発明によれば、シート搬送部材によるセラミックシートの搬送が継続された状態で、電極回路形成部によってセラミックシートに電極回路が形成される。これにより、電極回路の連続印刷が可能になる。
また、前記電極回路の形成によって生じる前記セラミックシートの段差部に誘電体塗膜を形成する誘電体塗膜形成部を有し、前記シート搬送部材による前記セラミックシートの搬送が継続された状態で、前記誘電体塗膜形成部によって前記段差部に前記誘電体塗膜が形成されることが好ましい。
本発明によれば、シート搬送部材によるセラミックシートの搬送が継続された状態で、誘電体塗膜形成部によって段差部に誘電体塗膜が形成される。これにより、シート搬送部材によりセラミックシートの搬送が継続された状態で、誘電体塗膜の形成工程が行われるため、誘電体塗膜の連続印刷が可能になる。この結果、セラミックシートを積層した積層構造体、ひいては電子部品の品質のバラツキの低減、ライン速度の向上、材料ロスの低減が可能となる。さらに、全体の装置コストを低減でき、装置サイズを小さく、さらに消費エネルギーを小さくすることができる。
特に、前記電極回路形成部又は前記誘電体塗膜形成部は、無版印刷装置であることが好ましい。
本発明によれば、セラミックシートの切断片の各層毎に異なるパターンの電極回路及び誘電体塗膜を容易かつ高速に形成することができる。また、シート積層部材の位置制御に誤差が発生しても、電極回路間及び誘電体塗膜間のピッチを自在に調整して、位置ズレのない電極回路及び誘電体塗膜を形成することができる。この結果、複雑な設備が不要になるため、新規設備投資コストの低減を図ることができる。
さらに、前記シート搬送部材にセラミックスラリーを塗布して前記セラミックシートを形成する成膜形成部を有し、前記成膜形成部による前記セラミックシートの形成が継続された状態で、前記中間積層部材による前記セラミックシートの巻き付けと、前記シート切断部材による複数層の前記セラミックシートの切断と、前記シート積層部材に対する複数層の前記セラミックシートの前記切断片の転写と、が行われることが好ましい。
本発明によれば、成膜形成部によるセラミックシートの形成が継続された状態で、中間積層部材によるセラミックシートの巻き付けと、シート切断部材による複数層のセラミックシートの切断と、シート積層部材に対する複数層のセラミックシートの切断片の転写と、が行われる。これにより、セラミックシートの形成と、セラミックシートの切断と、複数層のセラミックシートの切断片の転写と、を連続させることが可能となる。このため、連続した一連の工程として、セラミックシートの積層構造体を製造することが可能になる。この結果、セラミックシートの積層構造体、ひいては電子部品の品質のバラツキの低減、ライン速度の向上、材料ロスの低減が可能となる。さらに、全体の装置コストを低減でき、装置サイズを小さく、さらに消費エネルギーを小さくすることができる。
本発明は、シート搬送部材によってセラミックシートを所定の方向に連続搬送するシート搬送工程と、前記シート搬送部材で搬送される前記セラミックシートを前記シート搬送部材から剥離させ、複数層となるまで中間積層部材を回転させながら前記セラミックシートを前記中間積層部材に巻き付ける中間積層工程と、前記中間積層部材に巻き付けられた複数層の前記セラミックシートをシート切断部材によって所定の長さに切断するシート切断工程と、前記シート切断部材で所定の長さに切断された複数層の前記セラミックシートの切断片がシート積層部材に転写されるシート転写工程と、を有し、前記シート転写工程では、前記中間積層部材の回転にあわせて前記シート積層部材を移動させることにより、前記中間積層部材に巻き付けられた複数層の前記セラミックシートの切断片を前記シート積層部材に転写することを特徴とする積層型電子部品の製造方法である。
前記シート転写工程では、前記中間積層部材が前記シート積層部材に対して複数層の前記セラミックシートの切断片の転写を複数回繰り返すことにより、前記セラミックシートの積層体が形成されることが好ましい。
前記シート搬送部材は、回転することにより外周面上の前記セラミックシートを搬送する搬送ロールであり、前記中間積層部材は、回転することにより外周面に前記セラミックシートを巻き付ける積層ロールであり、前記シート搬送工程と前記中間積層工程では、前記搬送ロールの外周長と前記積層ロールの外周長が同じ長さであるか、あるいは前記搬送ロールの外周長又は前記積層ロールの外周長の一方が他方に対して整数倍である、前記搬送ロール及び前記積層ロールが使用されることが好ましい。
前記セラミックシートに電極回路形成部によって電極回路を形成する電極回路形成工程を有し、前記電極回路形成工程では、前記シート搬送部材による前記セラミックシートの搬送が継続された状態で、前記電極回路形成部によって前記セラミックシートに前記電極回路が形成されることが好ましい。
前記電極回路の形成によって生じる前記セラミックシートの段差部に誘電体塗膜形成部によって誘電体塗膜を形成する誘電体塗膜形成工程を有し、前記誘電体塗膜形成工程では、前記シート搬送部材による前記セラミックシートの搬送が継続された状態で、前記誘電体塗膜形成部によって前記段差部に前記誘電体塗膜が形成されることが好ましい。
前記電極回路形成工程又は前記誘電体塗膜形成工程では、前記電極回路形成部又は前記誘電体塗膜形成部として、無版印刷装置を使用することが好ましい。
前記シート搬送部材に成膜形成部によってセラミックスラリーを塗布して前記セラミックシートを形成する成膜形成工程を有し、前記成膜形成工程において前記成膜形成部による前記セラミックシートの形成が継続された状態で、前記中間積層工程の前記中間積層部材による前記セラミックシートの巻き付けと、前記シート切断工程の前記シート切断部材による複数層の前記セラミックシートの切断と、前記シート転写工程の前記シート積層部材に対する複数層の前記セラミックシートの前記切断片の転写と、が行われることが好ましい。
本発明によれば、設備の小型化及び低コスト化が可能であり、高品質の積層型電子部品を効率良く製造することができる。
本発明の第1実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明の製造対象としている「積層型電子部品」には、積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタなどの積層型電子部品が含まれる。以下、積層型電子部品として、積層セラミックコンデンサを一例に挙げて説明する。
先ず、積層型電子部品製造装置について説明する。
なお、第1実施形態は、電極回路(内部電極)及び誘電体塗膜が既に形成された長尺セラミックシートが下記のシート搬送ロールに連続的(非間欠的)に搬送される態様のものである。
図1に示すように、積層型電子部品製造装置10は、主として、セラミックシートS(セラミックグリーンシート)及び基材フィルムを搬送するシート搬送ロール12(シート搬送部材)と、シート搬送ロール12で搬送されてきたセラミックシートSをシート搬送ロール12の外周面から剥離し、自身の外周面に複数層になるまで巻き付ける中間積層ロール14(中間積層部材)と、セラミックシートSを所定の長さに切断する切断機構16(シート切断部材)と、切断機構16により所定の長さに切断されかつ中間積層ロール14に巻き付けられた複数層のセラミックシートSの切断片STが一括して転写される平板状の積層ステージ18(シート積層部材)と、を有している。また、基材フィルムの表面には離形処理が施されている。
具体的に、シート搬送ロール12は、剛体ロール(円柱状あるいは円筒状)で構成されている。シート搬送ロール12は、図示しない回転駆動機構により回転駆動されるように構成されている。
切断機構16は、例えば、図示しない回転駆動機構により回転するカット用ローラに刃16Aを設け、中間積層ロール14に近接し、中間積層ロール14(あるいはシート搬送ロール12)と略同じ周速度で回転して、中間積層ロール14の外周面上のセラミックシートSを所定のカット位置で切断するものが用いられる。あるいは、切断機構16として、図示しない直線駆動機構により、刃が直線往復運動するように設けられてもよい。この場合には、刃が直線往復運動することにより、中間積層ロール14上で搬送しているセラミックシートSを所定のカット位置で切断する。
中間積層ロール14は、セラミックシートSをロール上に保持する機構(手段)を有している。セラミックシートSをロール上に保持する機構として、例えば、真空吸引機構、加圧・温度による密着、巻き付けにより生じる摩擦力の利用、静電気による密着(静電吸着)など、セラミックシートSを吸着できる手段や機構であれば、特に問われない。
また、中間積層ロール14は、図示しない回転駆動機構により、回転可能となるように設けられている。中間積層ロール14は、シート搬送ロール12の外周面上のセラミックシートSに圧接して回転することにより、シート搬送ロール12の基材フィルムの外周面からセラミックシートSを剥離させて自身の外周面に巻き付ける。
ここで、シート搬送ロール12の外周長は、中間積層ロール14の外周長と同じ長さであるか、あるいはシート搬送ロール12の外周長又は中間積層ロール14の外周長の一方が他方に対して整数倍であることが好ましい。
積層ステージ18は、例えば、剛体平板が用いられる。ただし、剛体平板に限られるものではなく、円筒状あるいは円柱状のロールを使用してもよい。ロールを使用する場合には、セラミックシートSの切断片STを外周面上に巻き付けて積層する。また、積層ステージ18は、図示しない直線駆動機構により、水平方向(図1中矢印X方向)及び垂直方向(図1中矢印Y方向)に沿って移動できるように構成されている。これにより、積層ステージ18は、水平方向及び垂直方向に直線往復運動することができる。積層ステージ18の水平方向に沿う長さ(長手方向の長さ)は、積層ローラ14の外周長と同じかそれ以上に設定されている。
中間積層ロール14は、吸着(吸引、静電吸着あるいは粘着)などの手段によりセラミックシートSを保持する。また、セラミックシートSの切断片STを積層ステージ18上で保持する手段として、中間積層ロール14のブロー正圧、または加圧・温度による密着方法を用いる。中間積層ロール14がセラミックシートSを保持する力は、基材フィルムがセラミックシートSを保持する力より大きく、さらに積層ステージ18がセラミックシートSを保持する力より小さく設定されているため、セラミックシートSは基材フィルムから剥離されて中間積層ロール14に保持され、その後、積層ステージ18へ転写される。
中間積層ロール14は、セラミックシートSを吸引して剥離する真空引きの吸引ロールでもよい。このとき、中間積層ロール14は、セラミックシートSを吸着するときと吸着しないときとを制御するように構成されることが好ましい。基材フィルムからセラミックシートSを受け取るときにセラミックシートSに接触する中間積層ロール14の所定部位を吸着させ、受け取ったセラミックシートSを積層ステージ18に転写するときにセラミックシートSに接触する中間積層ロール14の所定部位を吸着させないことにより、セラミックシートSの受け取りと転写を円滑に行うことができる。
次に、第1実施形態に係る積層型電子部品製造装置10を用いたセラミックシートSの積層構造体の製造方法について説明する。
図1に示すように、既に電極回路及び誘電体塗膜が形成された長尺状のセラミックシートSがシート搬送ロール12によって連続的かつ一定の速度で搬送される。なお、シート搬送ロール12は、図示しない回転駆動機構により回転駆動されている。
そして、シート搬送ロール12により搬送されているセラミックシートSが、図示しない回転駆動機構により回転される中間積層ロール14によってシート搬送ロール12上の基材フィルムの外周面上から剥離され、中間積層ロール14の外周面に巻き付けられる。詳細には、中間積層ロール14が複数回回転して、中間積層ロール14の外周面に複数層のセラミックシートSが巻き付けられる。一例として、本実施形態では、中間積層ロール14が4回転して、中間積層ロール14の外周面に4層のセラミックシートSが巻き付けられる。ここで、中間積層ロール14の回転速度は、シート搬送ロール12の回転速度と略同じ周速度となるように設定されている。このため、シート搬送ロール12によるセラミックシートSの搬送を停止したり、搬送速度(供給速度)を加減速させることなく、シート搬送ロール12上のセラミックシートSが中間積層ロール14に剥離・転写されていく。この結果、セラミックシートSのシート搬送ロール12による搬送から中間積層ロール14による積層までは、連続運転により実行される。
次に、中間積層ロール14の外周面に、所定の積層数となるセラミックシートSの巻き付けが終了すると、切断機構16により複数層のセラミックシートSが積層方向(中間積層ロール14の径方向)に向かって一括して切断される。また、切断機構16によるセラミックシートSの切断は、所定の間隔をあけて実行される。すなわち、切断機構16は、図示しない回転駆動機構により回転し、刃16AがセラミックシートSを所定の部位で切断する。これにより、複数層のセラミックシートSの切断片STが生成される。なお、本実施形態では、4層のセラミックシートSが切断機構16により一括して切断される。セラミックシートSの1〜3層目を中間積層ロール14へ転写しているとき、切断機構16の刃16Aは所定位置で待機している。セラミックシートSの4層目の切断予定部位が近付いてきたときに、切断機構16が中間積層ロール14と同じ周速で回転し4層のセラミックシートSを一括切断する。そして、次の周の中間積層ロール14上の同じ切断予定部位で、4層のセラミックシートSの終端と新たに巻きつけられたセラミックシートSの始端の境界を切断機構16にて切断する。
ここで、切断機構16による切断動作中においても、シート搬送ロール12によるセラミックシートSの搬送工程と、中間積層ロール14によるセラミックシートSの積層工程と、が実行される。このため、セラミックシートSは、切断機構16による切断工程の影響を受けることなく、連続供給される。このようにして、シート搬送ロール12によりセラミックシートSは連続的に供給され、中間積層ロール14によりセラミックシートSが連続的に積層され、かつ切断機構16により複数層のセラミックシートSが一括して切断される。
次に、所定のタイミングで、積層ステージ18が垂直方向に移動して中間積層ロール14に近接する。このとき、中間積層ロール14の外周面に積層された複数層のセラミックシートSの切断片STに、積層ステージ18の上面(図1の右側端部18R)が所定の圧力で接触する。その圧接した状態で、積層ステージ18が水平方向(図1の右側方向)に移動し、かつ水平移動(図1の右側方向)する積層ステージ18に中間積層ロール14が接触しながら回転することにより、中間積層ロール14の外周面に積層された複数層のセラミックシートSの切断片STがその切断部位を起点として積層ステージ18の上面(図1の右側端部18Rから左側端部18L)に一括して転写される。すなわち、セラミックシートSの切断片STが積層ステージ18に転写される際には、積層ステージ18の右側端部18R側が転写開始位置となり、左側端部18L側が転写終了位置となる。このように、複数層のセラミックシートSの切断片STが積層ステージ18の上面に形成され、セラミックシートSの積層構造体S’(図2参照)が生成される。なお、本実施形態では、積層ステージ18の上面に、4層のセラミックシートSの切断片STが生成される。
さらに、セラミックシートSの切断片STを積層するには、上記工程を繰り返して、積層ステージ18の上面に転写されたセラミックシートSの切断片STの上面に、新たに複数層のセラミックシートSの切断片STを転写させることにより、積層数を増加させることができる。本実施形態では、中間積層ロール14から積層ステージ18に1回転写させることにより、積層ステージ18上に4層のセラミックシートSの切断片STが形成されるため、2回転写させると、8層のセラミックシートSの切断片STが形成され、3回転写させると、12層のセラミックシートSの切断片STが形成される。このように、中間積層ロール14から積層ステージ18への転写回数を変更させることにより、得られる切断片STの積層数を容易に調整することができる。
ここで、セラミックシートSの切断片STの中間積層ロール14から積層ステージ18への転写速度(積層ステージ18の移動速度)として、シート搬送ロール12によるセラミックシートSの搬送工程と、中間積層ロール14によりセラミックシートSの剥離工程と、切断機構16によるセラミックシートSの切断工程と、がノンストップで継続されるような速度に設定されている。これにより、シート搬送ロール12によるセラミックシートSの搬送工程と、中間積層ロール14によりセラミックシートSの剥離工程と、切断機構16によるセラミックシートSの切断工程と、積層ステージ18への転写工程と、を一連の工程として連続して実行させることができる。すなわち、上記各工程の一部の工程を停止させたり、一部の工程の実行速度を加減速させることなく、一定の速度において、シート搬送ロール12によるセラミックシートSの搬送工程から、中間積層ロール14によりセラミックシートSの剥離工程、切断機構16によるセラミックシートSの切断工程、及び積層ステージ18への転写工程までを同時進行させながら連続して実行させることができる。この結果、セラミックシートSの積層構造体S’の製造を高速化させることができる。
そして、積層ステージ18上に所定の積層数の切断片STが形成されることにより、積層ステージ18上に転写されたセラミックシートSの切断片STが回収される。再度、積層ステージ18が所定のタイミングにて水平方向及び垂直方向に移動し、積層ステージ18の上面に、新たなセラミックシートSの切断片STが転写されていく。ここで、積層ステージ18上に転写されたセラミックシートSの切断片STが回収される工程が実行されている場合でも、シート搬送ロール12によるセラミックシートSの搬送工程、中間積層ロール14によりセラミックシートSの剥離工程、切断機構16によるセラミックシートSの切断工程、及び積層ステージ18への転写工程が継続して実行されている。このため、積層ステージ18上に転写されたセラミックシートSの切断片STが回収される工程が含まれている場合でも、セラミックシートSの積層構造体S’の連続形成が可能になる。
なお、積層ステージ18から回収されたセラミックシートSの切断片STは、ダイサーカットによりチップ状に切断される。その後、焼成、電極回路(外部電極回路)が形成されるなどして通常の製造プロセスを経て、積層セラミックコンデンサが製造される。
以上のように、第1実施形態によれば、図8に示すように、長尺のセラミックシートSを連続的に停止することなく供給しつつ、セラミックシートSの切断片STを中間積層ロール14でシート搬送ロール12から剥離させて、中間積層ロール14の外周面に複数層のセラミックシートSを巻き付けることができる。その後、切断機構16により複数層のセラミックシートSが1箇所で切断される。さらに、中間積層ロール14に巻き付けられた複数層のセラミックシートSの切断片STが積層ステージ18上に一括して転写され始め、完全に転写される直前に、複数層のセラミックシートSが他の1箇所で切断される。このようにして、積層ステージ18上に複数層のセラミックシートSの切断片STが完全に転写されて、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。このため、セラミックシートSの搬送工程と、セラミックシートSの積層工程と、セラミックシートSの切断工程と、セラミックシートSの切断片STの剥離・転写工程の各工程がノンストップで進行して、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。この結果、バッファ機構、加減速を必要とする部分が不要となり、装置コストを低減でき、装置サイズを小さく、さらに電力などの消費電力を小さくすることができる。また、略等速で各工程が実行されるため、セラミックシートSへのダメージ、ひずみ、ハンドリングミス、カット屑を低減でき、中間積層ロール14によるセラミックシートSの切断片STの搬送位置決めのバラツキが低減されることにより、セラミックシートSの切断片STの積み重ね精度の向上が可能となる。さらに、装置面、品質面での課題が低減できることで、生産ライン速度の向上が容易となる。
また、図2に示すように、シート搬送ロール12と中間積層ロール14の外周長を同一もしくは一方が他方の整数比とすることで、更に欠陥部28の集中度を高めることができる。詳細には、中間積層ロール14上のセラミックシートSの積層構造体S’に発生する欠陥部28を中間積層ロール14の同一周軌道上(セラミックシートSを送り方向から見たときの積層構造体の同じ列)に集めることができる(特に、各層上一箇所にある欠陥部28が各層にわたって同じ列に存在する)。さらに、中間積層ロール14の外周長がシート搬送ロール12の外周長に対して整数倍だけ長い場合には、中間積層ロール14上のセラミックシートSの積層構造体S’に発生する欠陥部28を中間積層ロール14の同一座標上(セラミックシートSを送り方向から見たときの積層構造体の同じ行と列)各層の同じ列に集めることができる(特に、各層上複数個所にある欠陥部28が各層にわたって同じ列に存在する)。これにより、セラミックシートSの積層構造体S’から欠陥部28(不良となるもの)を容易に取り除くことができ、セラミックシートSの積層構造体S’から得られる正常な電子部品の個数を高めることができる。
なお、シート搬送ロール12が、キャリアフィルム(PETフィルム)付きのセラミックシートS(電極回路24が予め形成されたもの)を搬送する工程を採用することにより、セラミックスラリーの塗布から電極回路24を形成するまでの工程が削除できる。この結果、設備の小型化及び低コスト化を実現することができる。
なお、キャリアフィルムは、シート搬送ロール12又はコーティング搬送ロール20にそのまま搬送されていく。このように、搬送・積層対象をキャリアフィルム付のセラミックシートSまで広げることができるため、新規な設備投資コストを大きく低減させることができる。
なお、第1実施形態では、シート搬送ロール12が本発明の「シート搬送部材」に対応し、また、積層ステージ18が本発明の「シート積層部材」に対応する。また、中間積層ロール14が本発明の「中間積層部材」に対応し、切断機構16が本発明の「シート切断部材」に対応する。
次に、本発明の第1実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法の変形例について、図面を参照して説明する。なお、第1実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図3に示すように、本変形例は、切断機構16が積層ステージ18の長手方向両端部に取り付けられている態様である。すなわち、図3に示すように、切断機構16の刃16Aが、セラミックシートSの切断片STの転写開始位置となる積層ステージ18の右側端部18Rと、転写終了位置となる積層ステージ18の左側端部18Lと、に取り付けられている。この刃16Aは、中間積層ロール14側(鉛直上向き)に向けて飛び出ている。そして、セラミックシートSの切断片STの中間積層ロール14から積層ステージ18に対する転写が開始されるとき(図4(B)参照)、及びセラミックシートSの切断片STの中間積層ロール14から積層ステージ18に対する転写が終了するとき(図4(D)参照)に、2つの刃16Aが中間積層ロール14上のセラミックシートSの所定位置を積層方向に沿って切断する。これにより、積層ステージ18の上面に、セラミックシートSの切断片STが転写される。
本変形例によれば、中間積層ロール14にセラミックシートSが巻き付けられた後(図4(A)参照)、セラミックシートSの切断片STの中間積層ロール14から積層ステージ18に対する転写が開始するときに切断機構16の刃16AでセラミックシートSが切断される(図4(B)参照)。そして、切断片STの先端部から積層ステージ18の上面に接触していき(図4(C)参照)、積層ステージ18の移動とともに、切断片STの積層ステージ18に対する接触領域が大きくなる。さらに、セラミックシートSの切断片STの中間積層ロール14から積層ステージ18に対する転写が終了するときに切断機構16の刃16AでセラミックシートSが切断される(図4(D)参照)。このようにして、積層ステージ18の水平移動及び垂直移動を適正に制御することにより、切断機構16による正確な切断工程が実現されるため、切断機構16によるセラミックシートSの切断タイミングと、切断後の積層ステージ18に対するセラミックシートSの切断片STの転写タイミングと、を合わせることができる。すなわち、切断機構16による切断工程と、切断片STの積層ステージ18への転写工程と、を一連の工程として容易に連続させることができる。この結果、セラミックシートSの積層構造体S’の品質、ひいては電子部品の品質の向上を図ることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、第1実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
第2実施形態は、コーティング搬送ロール上にセラミックスラリーを塗布してセラミックシートを形成し、さらに、コーティング搬送ロール上のセラミックシートに電極回路(内部電極)と誘電体塗膜を形成した後、セラミックシートを中間積層ロールに巻き付け、その後、セラミックシートを切断機構により切断して、その切断片を積層ステージ上で転写する態様である。
図5に示すように、コーティング搬送ロール20の周囲には、コーティング搬送ロール20の表面にセラミックシートSの材料になるセラミックスラリーを塗布するための成膜手段22と、成膜手段22にセラミックスラリーを供給するための給液手段26と、成膜手段22を基準としてコーティング搬送ロール回転方向下流側に位置しコーティング搬送ロール20の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置30と、コーティング搬送ロール20上のセラミックシートSに対して電極回路24を形成するための電極回路形成手段32(電極回路形成部)と、電極回路24の形成によりセラミックシートSの表面に発生する段差部34(図6及び図7参照)に誘電体塗膜36を形成するための誘電体塗膜形成手段38(誘電体塗膜形成部)と、電極回路24及び誘電体塗膜36を乾燥させるための乾燥硬化装置40と、が配置されている。
なお、第1実施形態と同様にして、第2実施形態においても、中間積層ロール14、切断機構16及び積層ステージ18が設けられている。
コーティング搬送ロール20は、表面に離型処理が施された金属などの剛体ロール(円柱状あるいは円筒状)で構成されている。コーティング搬送ロール20は、図示しない回転駆動機構により回転駆動されるように構成されている。コーティング搬送ロール20が回転駆動することにより、外周面に形成されたセラミックシートSが搬送される。なお、離型処理とは、例えば、フッ素系めっき処理などが該当する。
成膜手段22としては、例えば、ダイコータ、ドクターブレード、ロールコータなどが適宜採用される。なお、コーティング搬送ロール20の外周面に形成されるセラミックシートSの膜厚をより薄くするためには、ダイコータに上流減圧機構を設けることが好ましい。成膜手段22からコーティング搬送ロール20に対して連続的にセラミックスラリーを塗布して、セラミックシートSが形成される。このように、同一のコーティング搬送ロール20に対して、セラミックスラリーが連続的に供給される。なお、セラミックスラリーは、例えば、有機溶媒にセラミックス粉末と樹脂成分を溶解分散させたものが採用される。UV硬化樹脂にセラミックス粉末を分散させたものを用いてもよい。なお、溶媒は、水系でもよい。
給液手段26としては、例えば、シリンダ型ディスペンサが採用される。なお、給液手段26は、シリンダ型ディスペンサに限られるものではなく、ギヤポンプ、ダイヤフラムポンプなど適宜採用してもよい。
電極回路形成手段32としては、例えば、インクジェット印刷装置が採用される。電極回路形成手段32は、無版印刷手段が好ましいが、乾燥後の電極回路24を転写してもよいし、凹版印刷、凹版オフセット印刷など手段は問わない。また、電極回路形成手段32で使用される電極材インクは、例えば、有機溶媒にNi粉末(ニッケル粉末)と樹脂を溶解分散させたものが使用される。UV硬化性の樹脂にNi粉末を分散させたものでもよい。特に、セラミック塗膜に対して、膨潤性の低い溶媒を用いることが好ましい。なお、溶媒は、水系でもよい。
誘電体塗膜形成手段38としては、例えば、インクジェット印刷装置が採用される。誘電体塗膜形成手段38は、無版印刷手段が好ましいが、乾燥後の誘電体塗膜を転写してもよいし、凹版印刷、凹版オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、ロータリースクリーン印刷など手段は問わない。また、誘電体塗膜形成手段38で使用される誘電体材料は、セラミックスインク、例えば、有機溶媒にセラミックス粉末と樹脂を溶解分解させたものである。UV硬化樹脂にセラミックス粉末を分散させたものを用いてもよい。特に、セラミック塗膜に対して、膨潤性の低い溶媒を用いることが好ましい。なお、溶媒は、水系でもよい。
乾燥硬化装置30、40としては、例えば、熱風により乾燥する方法やコーティング搬送ロール20の外周面を加熱する方法が採用される。UV硬化性の樹脂を用いている場合、UV照射して硬化させてもよい。乾燥硬化装置30、40はコーティング搬送ロール20上に塗布されたセラミックスラリーを乾燥または硬化させてセラミックシートSを形成するためのものである。
次に、第2実施形態の積層型電子部品製造装置を用いたセラミックシートSの積層構造体の製造方法について説明する。なお、第1実施形態の積層型電子部品製造装置の作用効果と重複する作用効果については、適宜、説明を省略する。
図5に示すように、離型処理を施したコーティング搬送ロール20を所定の速度で回転させ、この外周面にセラミックスラリーを成膜手段22により塗布する。なお、セラミックスラリーの供給は、給液手段26であるシリンダ型ディスペンサを用いて行われる。そして、コーティング搬送ロール20上でセラミックスラリーを、乾燥硬化装置30を用いて乾燥し固化させる。ここで、乾燥硬化装置30によるセラミックスラリーの乾燥には、所定の温度の熱風を用いる。コーティング搬送ロール20の外周面が適温となるように別途、温度調整する。なお、これらの温度は、セラミックシートSの材料により適宜調整する。このようにして、成膜手段22及び給液手段26によって、セラミックスラリーがコーティング搬送ロール20に対して連続的に供給され、コーティング搬送ロール20上でセラミックシートSが形成され続ける。
次に、図6及び図7に示すように、形成されたセラミックシートSに対して電極回路形成手段32から電極材インクが塗布され、所定の図形パターンの電極回路(内部電極回路)24が印刷される。また、セラミックシートSに形成された電極回路24によって発生した段差部34(凹部)に対して、誘電体塗膜形成手段38からセラミック材料(誘電体材料)が塗布され、所定の図形パターンの誘電体塗膜36が印刷される。
ここで、電極回路形成手段32による電極回路24の形成速度及び誘電体塗膜形成手段38による誘電体塗膜36の形成速度は、コーティング搬送ロール20によるセラミックシートSの形成速度や、中間積層ロール14の回転速度(周速度)と、略同じ速度となるように調節されている。このため、セラミックシートSが連続形成される状態を維持しながら、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成作業を実行し、中間積層ロール14による剥離動作を継続させることができる。すなわち、セラミックシートSの形成工程から、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成工程、中間積層ロール14による積層工程、セラミックシートSの切断工程、切断片STの転写工程までをノンストップで実行することができる。この結果、コーティング搬送ロール20によるセラミックシートSの搬送速度を遅くしたり、あるいはセラミックシートSの搬送を一旦停止させる必要がないため、セラミックシートSの積層構造体S’の製造を高速化させることができる。
そして、セラミックシートSに形成された誘電体塗膜36と電極回路24は、乾燥硬化装置40から温風が吹き付けられて乾燥する。なお、誘電体塗膜36と電極回路24の形成順序は、特に問われない。このようにして、セラミックシートSの形成に続いて、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が実行される。このため、セラミックシートSの形成と電極回路24及び誘電体塗膜36の形成とが連続して実行される。さらに、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成(乾燥硬化装置40による乾燥も含む)の際にも、セラミックシートSの形成が継続されるため、外周面に形成されたセラミックシートSのコーティング搬送ロール20による搬送が継続された状態で、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が行われる。
次に、電極回路24及び誘電体塗膜36が形成されたセラミックシートSは、中間積層ロール14によってコーティング搬送ロール20から剥離され、中間積層ロール14の外周面に巻き付けられる。これにより、中間積層ロール14の外周面には、複数層のセラミックシートSが積層される。その後、セラミックシートSは、切断機構16により所定の部位で切断される。なお、切断機構16によるセラミックシートSの切断方法は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。切断機構16による切断後、セラミックシートSの切断片STが中間積層ロール14から剥離されて、積層ステージ18上に転写される。これにより、積層ステージ18上にセラミックシートSの積層構造体S’が形成される。
第2実施形態によれば、セラミックシートSの形成、電極回路24・誘電体塗膜36の印刷を一貫して行う場合に、セラミックシートSの形成と共に、電極回路24及び誘電体塗膜36の連続印刷が可能となるため、品質のバラツキの低減、ライン速度の向上、材料ロスの低減が可能となる。
特に、コーティング搬送ロール20上で成膜手段22によるセラミックシートSの形成が継続された状態で、電極回路形成手段32による電極回路24の形成と、誘電体塗膜形成手段38による誘電体塗膜36の形成と、が行われる。これにより、セラミックシートSの連続形成、電極回路24及び誘電体塗膜36の連続形成が可能となる。このため、セラミックシートSの形成工程、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成工程、中間積層ロール14によるセラミックシートSの積層工程、切断機構16によるセラミックシートSの切断工程、セラミックシートSの切断片STの転写工程の各工程がノンストップで進行して、セラミックシートSの積層構造体S’が形成される。これにより、全て工程が連続した一連の工程となって、セラミックシートSの積層構造体S’を製造することが可能になる。この結果、セラミックシートSの積層構造体S’、ひいては電子部品の品質のバラツキの低減、ライン速度の向上、材料ロスの低減が可能となる。さらに、全体の装置コストを低減でき、装置サイズを小さく、さらに消費エネルギーを小さくすることができる。
また、図6及び図7に示すように、セラミックシートSに電極回路24を形成すると、電極回路24間に凹部が生じ、セラミックシートS上に段差部34(凹部)が発生するが、この段差部34に、誘電体塗膜36を印刷することにより、段差部34を低減することができる。このように、電極回路間の段差部34(凹部)を誘電体塗膜36で埋めることにより、セラミックシートSの積層数が増加した場合に発生し易くなる、積みズレや接着不良を防止することができ、また、段差部34が存在することに起因する構造欠陥を抑制することができる。この結果、製造される電子部品の品質不良を防止することができる。
特に、電気回路24及び誘電体塗膜36がコーティング搬送ロール20上で略同じタイミングで形成されることにより、電気回路24及び誘電体塗膜36の位置精度を高めることができる。これにより、CCDカメラなどの検知手段を別途設置しなくても、高精度のセラミックシートSの積層構造体S’を製造することができる。
また、セラミックシートSが剛体であるコーティング搬送ロール20上に形成され、シート成形からシート積層工程までをコーティング搬送ロール20や転写ロール14でシート面を支持されながら搬送するので、薄くて低強度のセラミックシートSを使用しても、セラミックシートSの破れや傷つきの発生を抑制することができる。この結果、薄くて低強度のセラミックシートSのハンドリング性を高めることができる。また、積層ステージ14が剛体である金属で構成されているため、セラミックシートSの切断片STの積層工程において、薄くて低強度のセラミックシートSを使用しても、位置ずれ(積層ズレ)することがない。
また、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成にインクジェットなどの無版印刷工法を用いることにより、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成を高速化することができる。また、セラミックシートSの各層毎において異なる電極パターンを備えた電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が可能になる。特に、セラミックシートSの積層の進行に伴いセラミックシートSの歪みや積層ステージ14の高さが変化しても、電極回路24及び誘電体塗膜36のパターンや形成位置を自在に変更することができるため、電極回路24間及び誘電体塗膜36間のピッチ(間隔)を適宜調整して、位置ズレのない電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が可能になる。
なお、第2実施形態では、コーティング搬送ロール20が本発明の「シート搬送部材」に対応し、また、積層ステージ18が本発明の「シート積層部材」に対応する。また、中間積層ロール14が本発明の「中間積層部材」に対応し、切断機構16が本発明の「シート切断部材」に対応する。さらに、電極回路形成手段32が本発明の「電極回路形成部」に対応し、また、誘電体塗膜形成手段38が本発明の「誘電体塗膜形成部」に対応する。
なお、第2実施形態の変形例についても、図3に示す第1実施形態の変形例と同様に、切断機構16の刃16Aを積層ステージ18の右側端部と左側端部に配置させてもよい。