JP2011256412A - ステンレス鋼製ねじ - Google Patents

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Abstract

【課題】オーステナイト系ステンレス鋼製のねじを用いて、ねじの締付けや緩めの操作を繰り返す場合に、ねじ面が「かじり」や「焼付き」を起こさないものとし、特に真空または清浄雰囲気下に無潤滑で使用される専用ねじについて、焼付きなどを起こさずに発塵も起こさないオーステナイト系ステンレス鋼製ねじを提供する。
【解決手段】オーステナイト系などのステンレス鋼製ねじの表面に、浸炭層もしくは窒化層または浸炭窒化層からなる表面硬化層を設けると共に、前記表面のうち少なくともねじ面は、電解研磨または化学研磨により、表面硬化層の当初表面から10μm以浅まで研磨した研磨面で形成したステンレス鋼製ねじとする。ねじ面は硬質であり、しかも滑面となって、耐摩耗性および低摩擦係数の摺動特性を備えたものになり、ねじ面は耐摩耗性、耐剥離性を備え、さらに低発塵性を有すると共に焼付きなどを起こさないものになる。
【選択図】なし

Description

この発明は、ステンレス鋼の表面硬化層にねじ面を形成したステンレス鋼製ねじおよびその製造方法に関するものである。
一般に、350℃以上700℃未満という比較的低温のプラズマ浸炭処理を行なうことにより、チタンや鋼の表面に炭素原子を浸透拡散させて表面硬化層を形成する技術が知られており、これにより金属内部の非浸炭部分とは明瞭な境界を形成しないように傾斜的に形成された表面硬化層は、剥がれ難く耐久性のあることが知られている(特許文献1)。
また、機械構造用鋼に対し、高温での浸炭処理や窒化処理および焼入・焼戻処理によって表面硬化し、その後、表面粗さがRmax0.2〜0.3μmになるようにバレル研磨し、歯車の歯面について接触疲労強度を向上させることが知られている(特許文献2)。
また、オーステナイト系ステンレス製のねじの表面に、タッピングやドリリング性の向上のために窒化硬化層を形成し、ねじの頭部またはそれに連続する首下部分などの窒化硬化層を部分的に剥離除去し、ねじ面以外の部分についてオーステナイト系ステンレス素材を露出させて耐食性を向上させることが知られている(特許文献3)。
特開2001−152316号公報 特開平6−246548号公報 特開平5−59530号公報
しかし、上記した従来技術では、ステンレス鋼製のねじが、組み立てやメンテナンスなどの際に締結を繰り返すと、ねじの焼付き現象(以下、単に「焼付き」と称する。)を起こしやすいという問題がある。
「焼付き」の起こる状態を詳しく説明すると、例えば、ねじの締め付けと緩める操作は組み立てやメンテナンスなどの際に繰り返されるが、そのような場合に「おねじ」と「めねじ」のかみ合うねじ面には大きな摩擦力が繰り返し発生し、この摩擦力によってねじ面が部分的に融合と分離をくり返し(いわゆる「かじり」の状態となり)、最終的には広い面で融合すると、「おねじ」と「めねじ」は回転不能に固定されて締め付ける操作も緩める操作もできない状態になってしまう。
また、一般にねじ面は、ねじの締結と弛緩操作時に摩耗しやすく荒れやすく、特にステンレス鋼は、熱伝導率が鉄の約1/3と小さく、また熱膨張率は鉄の約1.5倍であるから、焼付き現象が極めて起こりやすい。
また、半導体製造装置用真空装置内部や、クリーンルーム内、食品や飲料の製造等関係装置、化粧品や医療品の製造等関係装置のように、真空または清浄雰囲気下で使用されるステンレス鋼製ねじには、コンタミネーションと呼ばれる微小な塵埃の発生を抑制する対策も求められ、そのために潤滑油を用いない無潤滑状態で使用する必要性もある。
因みに、めっきやコーティングを施したねじでは、めっき層などの被膜が剥がれやすいので、ねじ面からの微小な塵埃の発生を抑制する対策としては十分ではない。
また、特許文献2に記載されているように、自動車のトランスミッション用の歯車は、その摩擦面の接触疲労強度を向上させるために、機械的にバレル研磨することが有効であるが、その技術を用いてねじ面を均一にバレル研磨することは至難であり、バレル研磨では、ねじ山の寸法精度が損なわれやすく実用性がなかった。
さらにまた、特許文献3に記載された発明では、窒化硬化層の表面の摩擦係数が大きく、摩擦熱が発生しやすいので、ねじの締付けの際に焼付きが起こる可能性が高い。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、オーステナイト系ステンレス鋼製のねじを用いて耐食性の必要な環境下でねじの締付けや緩めの操作を繰り返す場合に、ねじ面が「かじり」や「焼付き」を起こさないものとし、特に真空または清浄雰囲気下に無潤滑で使用される専用ねじであっても、焼付きなどを起こさずに発塵のないオーステナイト系ステンレス鋼製ねじとすることであり、またこのような課題を解決できるオーステナイト系ステンレス鋼製ねじを効率よく製造できるようにすることである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、オーステナイト系などのステンレス鋼製ねじの表面に、浸炭層もしくは窒化層または浸炭窒化層からなる表面硬化層を設けると共に、前記表面のうち少なくともねじ面が前記表面硬化層を電解研磨または化学研磨した研磨面で形成したものからなるステンレス鋼製ねじとしたのである。
上記したように構成されるこの発明に係るステンレス鋼製ねじは、浸炭層もしくは窒化層または浸炭窒化層からなる表面硬化層が鋼材内部の非浸炭または非窒化部分とは明瞭な境界を有しない傾斜状に存在する材料であって、そのような表面硬化層からなるねじ面を電解研磨または化学研磨した研磨面でねじ面が形成されているので、そのようなねじ面は硬質であり、しかも滑面となって、耐摩耗性および低摩擦係数の摺動特性を備えたものになり、すなわちねじ面は耐摩耗性、耐剥離性を備え、さらに低発塵性のものになる。
すなわち、このようなねじを用いて締付けや緩めの操作を繰り返して行うと、ねじ面が「かじり」や「焼付き」を起こさず、特に真空または清浄雰囲気下に無潤滑で使用される専用ねじでは、または例えば200℃という高温環境においても焼付きなどを起こさずに発塵もない優れたステンレス鋼製ねじとなる。
また、ねじ面の表面硬化層が、より好ましい硬さで滑面となるような研磨面であるためには、浸炭層もしくは窒化層または浸炭窒化層からなる表面硬化層の当初表面から深さ10μm以浅まで研磨された研磨面であることが好ましい。
このような表面硬化層は、ステンレス鋼内に炭素または窒素が充分に富化されかつ拡散された層であり、かつ低摩擦係数な層であるから、その研磨面は耐摩耗性に優れた摩擦係数の低い摺動特性を備えた面になる。
また、上記ステンレス鋼製ねじが、真空または清浄雰囲気下に無潤滑で使用される専用ねじとすることは、焼付きなどを起こさずに発塵も起こさない特性を充分に生かせる用途として好ましく、またステンレス鋼製ねじとしては、オーステナイト系ステンレス鋼製ねじを採用することができる。
上記したように有利な作用効果を奏するステンレス鋼製ねじを効率よく製造するためには、ステンレス鋼製ねじに対し、350℃以上700℃未満の雰囲気内におけるプラズマ浸炭処理もしくはプラズマ窒化処理またはプラズマ浸炭窒化処理によって30μmを越える表面硬化層を形成し、この表面硬化層を電解研磨または化学研磨によって当初表面から深さ10μm以浅まで研磨してねじ面を形成することからなるステンレス鋼製ねじの製造方法を採用することが好ましい。
ステンレス鋼製ねじの素材となるステンレスに対して、所定範囲を超える高温で浸炭する場合には、ステンレス鋼中のクロムと炭素が反応してクロム炭化物が析出してしまい、これにより周辺のクロム含量が減少するため耐食性が低下する不都合があるが、この発明では低い所定温度域でのプラズマ浸炭を採用することにより、ステンレス鋼内に炭素イオンを固溶して拡散させることができ、クロム炭化物を析出させることなく、したがってステンレスの耐食性は損なわれないものである。
この発明は、オーステナイト系などのステンレス鋼製ねじの表面に、浸炭層もしくは窒化層または浸炭窒化層からなる表面硬化層を設けると共に、前記表面のうち少なくともねじ面が前記表面硬化層を電解研磨または化学研磨した研磨面で形成したものからなるステンレス鋼製ねじとしたので、ねじの締付けや緩めの操作を繰り返す場合に、ねじ面が「かじり」や「焼付き」を起こさないものとなり、特に真空または清浄雰囲気下に無潤滑で使用される専用ねじについて、焼付きなどを起こさずに発塵も起こさないステンレス鋼製ねじとなる利点がある。
また、この発明の製造方法は、所定の窒化処理または所定温度でのプラズマ浸炭処理によって表面硬化層を形成し、この表面硬化層を電解研磨または化学研磨によって当初表面から10μm以浅まで研磨してねじ面を形成することにより、上記したように有利な効果を奏するステンレス鋼製ねじを効率よく製造できるという利点がある。
ステンレス鋼の硬度(HV)と表面からの深さ(μm)の関係を示す図表 実施例のねじの軸力と各種トルクの関係を示す図表 比較例のねじの軸力と各種トルクの関係を示す図表
この発明のステンレス鋼製ねじは、ステンレス鋼製ねじの表面に、浸炭層もしくは窒化層または浸炭窒化層からなる表面硬化層を設けると共に、前記表面のうち少なくともねじ面が前記表面硬化層を電解研磨または化学研磨した研磨面で形成したものである。
この発明に用いるねじの母材のステンレス鋼は、12%以上のクロムを含有する鋼として化学組成などは周知のものであり、代表的な対象材としてはオーステナイト系ステンレス鋼のJIS SUS304(304L)、SUS305、SUS303、SUS309、SUS310、SUS316(316L)およびCu含有のXM−7などが挙げられる。
これらを母材としてプラズマ浸炭もしくはプラズマ窒化またはプラズマ浸炭窒化するときには、前処理として溶体化処理した後、表面を慎重に研削し、被処理面にオーステナイト組織が現れるようにすることが好ましい。
オーステナイト系ステンレス鋼は、優れた耐食性をもつ鉄鋼材料として化学プラントをはじめとして、食品産業や多くの機械工業で使用されているものであるが、硬さが低いという特徴があり、このような鉄鋼材料に対する表面処理方法として浸炭または窒化により、柔らかい母材に対して密着性のよい硬質膜を形成できる。
このようなステンレス鋼に対して表面硬化層を形成するには、炭化水素ガスからなる浸炭用ガスもしくは窒素ガスからなる窒化用ガスまたは炭化水素ガスと共に窒素ガスを含む浸炭窒化ガスの雰囲気内で、オーステナイト相などのステンレス鋼を母材とするねじに、陰極電圧を放電状態で印加してプラズマ浸炭層もしくはプラズマ窒化層またはプラズマ浸炭窒化層からなる表面硬化層を形成する。
表面硬化層は、一層であってもよいが、プラズマ浸炭層またはプラズマ浸炭窒化層からなる浸炭硬化層を形成した後、さらに窒素ガスを含む雰囲気内で前記ワーク表面にプラズマ窒化層を重ねて形成することもできる。
このようにオーステナイト相のステンレス鋼母材に、先ず比較的低温でプラズマ浸炭層またはプラズマ浸炭窒化層からなる浸炭硬化層を形成しておき、その後に浸炭硬化層の上から比較的低温でプラズマ窒化層を形成してもよい。このようにすると、先に形成されていた浸炭硬化層内の炭素は母材の深部へ追いやられ、それより表面側にプラズマ窒化層が形成される。また、このように浸炭硬化層の上から比較的低温でプラズマ窒化層を形成すると、浸炭硬化層の厚さが当初よりも厚くなる。
因みに、浸炭層の窒化による移動は、オーステナイト中での侵入型原子の位置に、トラップサイトと拡散サイトの2種があり、クロムより親和力の強い窒素が先にトラップサイトを占めていた炭素からトラップサイトを横取りするというメカニズムで説明できる。この2種のサイトの存在が、化合物を作らない拡散であるにもかかわらず濃度分布が非誤差関数的である理由でもある。トラップサイトを追い出された炭素は、拡散サイトを伝ってより侵入型原子濃度の低い深部へと拡散していく。
プラズマ浸炭またはプラズマ窒化は、以下の操作で行なうことができる。
まず、処理室にステンレス鋼からなる母材を装入して排気した後、水素、アルゴンなどの希釈用ガスと共に、例えばメタン等の炭化水素ガスの濃度を1〜20%程度に注入し、残りをアルゴン(Ar)等の希釈ガスとして処理室に導入し、かつ3A/cm2程度の直流高電圧を印加して12時間程度保持する。
このとき、導入された炭化水素ガスまたは窒素や不活性ガスの混合ガスもプラズマ化し、陰極付近で急激に電位が低下する。このため、プラズマ中の炭素または窒素は、イオン化した状態で陰極降下によって加速され、母材表面に衝突して打ち込まれて、浸炭硬化層および窒化層を形成する。
上記した炭化水素ガスは、Cn2n+2で示されるメタン同属体であって前記浸炭温度において気体であるものを種類に限定なく使用することができる。特に、常温で気体のメタン、エタン、プロパン、ブタンは、使用に際して気化設備が不要であるので、好ましいものであるといえる。
この発明におけるプラズマ浸炭もしくはプラズマ浸炭窒化またはプラズマ窒化処理は、母材が所定温度に加熱された条件で行なう。すなわち、これらの処理は、350℃以上700℃未満で行ない、好ましくは400〜500℃の低温で行ない、プラズマ窒化処理については、好ましくは450℃以下、より好ましくは350〜450℃で行なう。なぜなら、上記所定範囲未満でプラズマ浸炭もしくはプラズマ浸炭窒化などを行なうと、拡散速度が低いため充分な厚さの硬化層を形成できないからであり、上記所定範囲を超えて高温で処理すると、耐食性が悪い層が形成されて好ましくないからである。
次に、少なくともねじ面が前記表面硬化層を電解研磨または化学研磨した研磨面で形成されるように、以下の処理を行う。
化学研磨は、脱脂処理した後、研磨浴への浸漬処理およびその後の水洗処理によって行なう。
研磨浴は、ステンレス鋼に対する充分な溶解能を有する成分と、酸化剤のような不動態化能を有する成分を適当に配合したものからなり、例えば縮合リン酸90〜100体積%、硫酸0〜10体積%からなる研磨浴を例示できる。
このような研磨浴に対して、150〜200℃の温度条件で数秒〜数分の浸漬時間を設定すればよいが、表面硬化層の当初表面から10μm以浅まで研磨するために好ましい条件としては、50〜80℃の温度条件で3〜15分の浸漬時間であることが好ましい。
また、電解研磨は、硫酸系研磨浴を用い、ガラスラスニング電解槽中に陽極にステンレス鋼製ねじを接続して、大面積の陰極を対向させて直流電圧を印加し、電流密度および温度並びに時間を調整して行なう。
電解研磨用の研磨浴の例としては、リン酸40〜45体積%、硫酸35〜40体積%、クロム酸5〜7体積%、水(残部)からなるものが挙げられる。
このような研磨浴を用いた電解研磨では、電流密度40〜70A/dm、温度60〜90℃、時間2〜15分の条件で行なうことができるが、表面硬化層の当初表面から10μm以浅まで研磨するために好ましい条件としては、電流密度40〜70A/dm、温度70〜90℃、時間3〜10分の条件であることが好ましい。
このようにして前述した表面硬化層を電解研磨または化学研磨すると、機械研磨のように大きな凹凸はそのままに残るが、微小凹凸は除去されるという特徴が現れ、ねじ山やねじ溝は、研磨によって大きく削り取られることなく、ねじの表面には不動態化皮膜が形成され、かつ適当な厚さで残る表面硬化層は鋼材内部の非浸炭または非窒化部分とは明瞭な境界を有しない傾斜的な密度で拡散し、ねじ面は摺動による微小粒子を発生させ難いものになる。このようにしてこの発明に係るステンレス鋼製ねじは、耐摩耗性および低摩擦係数の摺動特性を備えたものになり、さらに低発塵性のものになる。
[実施例1]
オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316)を所要の長さに切断した直径約9mmの丸棒を、周知のプレスを用いて、六角穴付きボルト頭を有するねじ素材を成形した。このねじ素材を周知の平ダイス転造装置に供給し、ねじ転造加工を行ってねじ(六角穴付きボルト)を作製した。その後、浸炭処理温度と同等の500℃にまで加熱し、水素ガスを混合した窒素ガスを用いてクリーニング処理を行なった。
そして、浸炭用ガスとしてのメタンガス(流量0.5L/min)と希釈ガスとしての水素ガス(流量3.0L/min)の混合ガスからなる雰囲気ガスを前記処理室に導入し、この雰囲気ガス温度、即ち浸炭処理温度が500℃、同ガス圧力が約200Pa、処理時間が12時間の条件で、プラズマ浸炭処理を行った。
浸炭処理終了後、迅速に雰囲気ガスを排気し、処理室に窒素ガスを導入してねじ素材を常温まで強制冷却した。
このねじについて、浸炭層の深さを調べるため、表面からの深さ(μm)と硬さ(Hv)との関係を調べ、この結果を図1に示した。
図1の結果からも明らかなように、プラズマ浸炭処理による表面硬化により、表面から30μm程度の深さまで、炭素の浸透拡散による表面硬化層の形成が認められ、炭素は鋼材内部の非浸炭部分とは明瞭な境界を有しない傾斜的な密度で拡散しているものと認められた。
次に、化学研磨を以下の条件で行なった。
縮合リン酸90体積%、硫酸10体積%からなる研磨浴を用いて180℃の温度条件で2分の浸漬時間による化学研磨を行ない、当初表面から深さ20μmまで研磨されたねじ面を有するステンレス鋼製ねじを作製した。
[実施例2]
実施例1において、プラズマ浸炭に代えて、プラズマ窒化を以下の条件で行なったこと以外は、全く同様にしてステンレス鋼製ねじを作製した。
すなわち、プラズマ窒化は、窒素ガス(流量1.0L/min)と希釈ガスとしての水素ガス(流量3.0L/min)の混合ガスからなる雰囲気ガスを処理室に導入し、この雰囲気ガス温度、即ち窒化処理温度が450℃、同ガス圧力が約200Pa、処理時間が12時間の条件で、プラズマ窒化処理を行なった。
上記処理終了後、迅速に雰囲気ガスを排気し、処理室に窒素ガスを導入してねじ素材を常温まで強制冷却した。
[実施例3]
実施例1において、化学研磨に代えて、以下の条件で電解研磨を行なったこと以外は、全く同様にしてステンレス鋼製ねじを作製した。
電解研磨用の研磨浴としては、リン酸40体積%、硫酸35体積%、クロム酸5体積%、水20体積%を用い、電流密度60A/dm、温度75℃、時間10分の条件で行なった。
表面硬化層の当初表面から10μmまで研磨するためには、電流密度50A/dm、温度80℃、時間5分の条件を採用した。
[比較例1]
オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316)を所要の長さに切断した直径約9mmの丸棒を、周知のプレスを用いて、六角穴付きボルト頭を有するねじ素材を成形した。このねじ素材を周知の平ダイス転造装置に供給し、ねじ転造加工を行ってねじ(六角穴付きボルト)を作製した。
[比較例2]
実施例1において、化学研磨を行なわなかったこと以外は、全く同様にして六角穴付きボルトを作製した。
以上のようにして得られた実施例および比較例のステンレス鋼製ねじの特性を調べるため、以下の締付け試験を行なった。
[締付け試験]
SDC社製:ねじ性能試験機(東工大 丸山一男光学博士考案の「弾・塑性域締結ねじ性能試験機」の改良型)を用いて、ステンレス鋼製ねじの回転による10回の繰り返し締付けを行ない、その際の締付けトルク、ねじ部トルク、座面トルクの各トルク(Nm)と軸力(kN)との関係を調べ、図2に実施例1の結果を示し、図3に比較例1の結果を示した。
図3の結果からも明らかなように、ボルト回転による10回の繰り返しを試行したが、表面硬化層を有しない比較例1では、初回の締付けは正常であったが、締付け回数を重ねるうちにトルクと軸力との関係が不安定になり、ねじ部に大きな変化が生じていることが確認され、8回目の締付けによって焼付きが発生し、ねじが破壊された。
一方、図2の結果からも明らかなように、表面硬化層を研磨面で形成したねじ面を有する実施例1は、ボルト回転による10回の繰り返しにおいて、各トルク(Nm)と軸力(kN)との関係は安定しており、焼付きやかじりの現象は全く認められなかった。
また、別途作製した実施例1〜3と比較例1、2に対し、使用に耐える機械的性質を有しているかどうかを確かめるため、JIS B1054の「ステンレス鋼製耐食ねじ部品の機械的性質」の引張り試験に供したところ、実施例1〜3は比較例1と同様に、引張り強さは高く、伸びまたは破断位置も同じであり、表面硬化層の形成および研磨加工による強度の低下は全くないことが確認できた。
また、実施例1〜3と比較例1、2に対し、SUS304の板に同寸法のめねじを形成し、締付けトルク10N・mで締め付けた。これ電気炉に収容して200℃の雰囲気で8時間保持し、その後、常温に冷却した後、ねじを緩めるという工程を30回繰り返した。
その結果、実施例1〜3は、焼付き現象は全く生じないことが確認でき、また試験後のねじは限界ゲージによるねじの精度試験にも合格することが確認できた。
このように実施例のステンレス鋼製ねじは、めっきや塗装などによる表面硬化層を形成したものとは異なり、表面硬化層の剥離の心配がないため、半導体・医薬品などの製造装置及びクリーンルーム内など厳しい室内環境においても使用できるものであり、ねじ部品の焼付きによる機器の損傷・故障防止効果も有しており、同種のねじの長寿命化を図ることができることが明らかであった。

Claims (5)

  1. ステンレス鋼製ねじの表面に、浸炭層もしくは窒化層または浸炭窒化層からなる表面硬化層を設けると共に、前記表面のうち少なくともねじ面が前記表面硬化層を電解研磨または化学研磨した研磨面で形成されたものからなるステンレス鋼製ねじ。
  2. 上記研磨面が、表面硬化層の当初表面から10μm以浅まで研磨した研磨面である請求項1に記載のステンレス鋼製ねじ。
  3. 上記ステンレス鋼製ねじが、真空または清浄雰囲気下に無潤滑で使用される専用ねじである請求項1または2に記載のステンレス鋼製ねじ。
  4. ステンレス鋼製ねじが、オーステナイト系ステンレス鋼製ねじである請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼製ねじ。
  5. ステンレス鋼製ねじに対し、350℃以上700℃未満の雰囲気内におけるプラズマ浸炭処理もしくはプラズマ窒化処理またはプラズマ浸炭窒化処理によって表面硬化層を形成し、この表面硬化層を電解研磨または化学研磨によって当初表面から10μm以浅まで研磨してねじ面を形成することからなるステンレス鋼製ねじの製造方法。
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