以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
図1〜図4は、本発明の実施形態にかかるライン引き装置1を示すものである。このライン引き装置1は、運動場や競技場の地面E(図2及び図3に示す)に粉体を放出することによってラインを引くことができるものである。
ライン引き装置1で引くラインの種類としては、球技のコートを作るためのラインや、陸上競技用のライン、遊戯を行う際の動線を示すライン等があるが、これらに限られるものではない。
ライン引き装置1では、例えば、ラインを砂の上に引くこともできるし、芝の上に引くこともできる。
ラインを形成するための粉体としては、例えば炭酸カルシウム粉体等を用いることができるが、他の粉体を用いてもよい。また、白色の粉体以外にも、例えば、赤や青色の粉体を用いることもできる。
尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、ラインを引くときにライン引き装置1を作業者が押して移動させる際に前となる側を前といい、また、その反対側を後といい、また、ライン引き装置1を後から見たときに、左となる側を左といい、また、その反対側を右というものとする。
ライン引き装置1は、地面Eにラインを形成するための粉体を収容するとともにその収容した粉体を放出するための放出口41(図8等に示す)を有する本体部9と、本体部9に回転可能に支持された車軸11と、車軸11の両端に設けられた一対の車輪12,12と、本体部9の内部に設けられた羽根車(送出部材)13(図8等に示す)と、放出口41を開閉するためのシャッター部材(開閉部材)14と、車輪12及び羽根車13を断続するためのクラッチ機構15(図11に示す)とを備えている。
図5〜図7に示すように、本体部9は、上下方向に延びる筒状部材20と、筒状部材20の下側の開放部分を覆うように取り付けられ、上記羽根車13を収容する羽根車ケース10とを備えている。筒状部材20と羽根車ケース10とは、共に樹脂材を成形してなるものである。図8〜図10及び図13に示すように、羽根車ケース10は、上方に開放する凹状に形成されている。筒状部材20の下側の開放部分と、羽根車ケース10の上側の開放部分とが合わさった状態で結合するようになっている。この状態で、筒状部材20の内部空間と羽根車ケース10の内部空間とで、粉体を収容するための収容空間R(図8に示す)が構成される。
図1に示すように、筒状部材20の前壁部には、凹部20a及び凸部20bが左右方向に交互に複数形成されている。これら凹部20a及び凸部20bは上下方向に延びており、補強用のリブとして機能するようになっている。筒状部材20の前壁部には、下方へ延びるスタンド部22が設けられている。図4に示すように、スタンド部22は、ライン引き装置1を使用しないときに立てて置いておく際に地面Eに接してライン引き装置1が倒れないようにするためのものである。また、筒状部材20の後壁部にも、前壁部と同様な凹部20c及び凸部20dが形成されている。
筒状部材20には、ハンドル23が設けられている。ハンドル23は、筒状部材20の左右両側壁部から上方へ延びる左右一対の棒状部23a,23aと、棒状部23a,23aの上端部同士を連結するように略水平に延びるグリップ部23bと、棒状部23a,23aのグリップ部23bよりも下側の部位同士を連結するようにグリップ部23bと略水平に延びる連結部23cとを備えている。ハンドル23も樹脂材を成形してなるものである。
筒状部材20の上端部には、蓋24が設けられている。蓋24の後端部は、筒状部材20の上端部の後部に対し水平軸周りに回動可能に支持されており、図2に仮想線で示すように、上方へ回動することによって筒状部材20の上端部が開放される。
図11及び図12に示すように、筒状部材20の下部は、羽根車ケース10の上部の内側に入った状態で嵌合している。図13に示すように、羽根車ケース10の上部には、筒状部材20の下部を羽根車ケース10に締結するための締結部材(図示せず)が挿通する挿通孔30,30,…が形成されている。
図11及び図13に示すように、羽根車ケース10の左右両側壁部には、それぞれ、車軸11が挿通する車軸挿通孔31,31が形成されている。車軸挿通孔31は、羽根車ケース10の外方へ延びている。羽根車ケース10の左右両側壁部の車軸挿通孔31よりも上側には、シャッター部材14が取り付けられる取付部34が設けられている。
取付部34は、羽根車ケース10の側壁部から羽根車ケース10の外方へ突出する円筒状に形成されている。取付部34の中心部には左右方向に延びる貫通孔34aが形成されている。羽根車ケース10の側壁部における取付部34の周りには、円環リブ35が羽根車ケース10の外方へ突出するように形成されている。円環リブ35の外周面と車軸挿通孔31の周縁部とは連結リブ36により連結されている。連結リブ36も側壁部から羽根車ケース10の外方へ突出している。
羽根車ケース10の左右両側壁部には、それぞれ、環状リブ37が羽根車ケース10の外方へ突出するように設けられている。環状リブ37は、側壁部の周縁部に沿うように形成されている。
羽根車ケース10の左側壁部の上部には、左側へ延出する延出板部40が形成されている。延出板部40は、貫通孔34aを中心とした円弧状をなすように上方へ湾曲し、略前後方向に延びている。この延出板部40には、周方向(略前後方向)に延びるスリット40aが形成されている。スリット40aの周縁部には、スリット40aの内方へ突出する前側突起40bと後側突起40cとが前後方向に間隔をあけて形成されている。
羽根車ケース10の底壁部は、側面視で、貫通孔34aを中心とする略円弧状に延びている。図14にも示すように、羽根車ケース10の底壁部には、前後方向の中央部近傍に放出口41が形成されている。放出口41は、左右方向に長い略矩形状とされ、収容空間Rに連通している。放出口41の前後方向中央部近傍には、放出口41から粉体が出過ぎるのを防止するためのダム42が設けられている。ダム42は、棒材で構成されており、放出口41を左右方向に横切るように配設されている。
図15に示すように、シャッター部材14は、羽根車ケース10の底壁部の外面に沿って延びる下板部45と、下板部45の左右両縁部から上方へ延びる左板部46及び右板部47とを備えており、これら板部45〜47は樹脂材を用いて一体成形されている。図8に示すように、下板部45は、羽根車ケース10の底壁部の円弧形状と略相似な円弧形状とされており、羽根車ケース10の底壁部の外面に沿って周方向(略前後方向)に移動可能となっている。図15及び図16に示すように、下板部45の周方向中央部には、スリットや貫通孔が形成されておらず、この周方向中央部は、羽根車ケース10の放出口41を閉塞するための閉塞部45aとされている。図8に示すように、閉塞部45aが放出口41と重なると放出口41が全閉とされて閉塞状態となる。
下板部45の閉塞部45aよりも前側には、放出口41を開放する開放状態とするための前側スリット(第1開放部)45bが設けられている。前側スリット45bは、左右方向に延びている。この前側スリット45bの前後方向の寸法は、放出口41の前後方向の寸法よりも短く設定されている。
下板部45の閉塞部45aよりも後側には、放出口41を開放する開放状態とするための後側スリット(第2開放部)45cが設けられている。後側スリット45cは、左右方向に延びている。この後側スリット45cの前後方向の寸法は、放出口41の前後方向の寸法よりも短く、かつ、前側スリット45bの前後方向の寸法よりも短く設定されている(図18参照)。
従って、図10に示すようにシャッター部材14が後側へ回動して放出口41と前側スリット45bとが重なると、放出口41の開放領域のうち、前側スリット45bの大きさ(第1の大きさ)だけ開放されることになる。
一方、図9に示すようにシャッター部材14が前側へ回動して放出口41と後側スリット45cとが重なると、放出口41の開放領域のうち、前側スリット45bよりも小さな後側スリット45cの大きさ(第2の大きさ)だけ開放されることになる。
シャッター部材14の回動範囲は、放出口41と前側スリット45bとが重なる位置から放出口41と後側スリット45cとが重なる位置までである。
図11に示すように、シャッター部材14の左板部46は、羽根車ケース10の左側壁部の外面に沿うように形成されている。図15に示すように、左板部46の上部には、取付孔46aが形成されている。図11に示すように、取付孔46aには、羽根車ケース10の取付部34が挿入されるようになっている。シャッター部材14の右板部47の上部にも、取付孔47aが形成されており、羽根車ケース10の取付部34が挿入されるようになっている。取付孔46a、47aに取付部34,34が挿入された状態で、シャッター部材14は、取付部34,34に軸支された状態となり、取付部34,34周りに回動可能となる。
シャッター部材14と羽根車ケース10とは、左右のボルトB1,B2及びナットN1,N2によって一体化されている。すなわち、羽根車ケース10の左側の貫通孔34aにはボルトB1が挿入され、このボルトB1にナットN1が螺合している。一方、羽根車ケース10の右側の貫通孔34aにはボルトB2が挿入され、このボルトB2にナットN2が螺合している。
図15に示すように、シャッター部材14の左板部46の取付孔46aよりも下側には、車軸11が挿通する貫通孔46bが形成されている。図17に示すように、貫通孔46bは、取付孔46aを中心とする円弧状に延びており、車軸11が挿通した状態で、シャッター部材14の取付部34周りの回動を阻害しないように十分な大きさとされている。
図15に示すように、左板部46の貫通孔46bの下縁部には、左側へ突出する下側突出板部50が形成されている。図16に示すように、下側突出板部50は、貫通孔46bの長手方向中間部にのみ形成されており、貫通孔46bの長手方向に沿うように下方へ湾曲して延びている。図15に示すように、下側突出板部50は、長手方向中央部が左側へ最も大きく突出するように形成され、その中央部から長手方向両端へ向かって左板部46からの突出量が徐々に少なくなっており、平面視で略山型となっている。
左板部46の貫通孔46bの上縁部には、左側へ突出する上側突出板部51が形成されている。上側突出板部51は、下側突出板部50と同様に、貫通孔46bの長手方向中間部にのみ形成されており、貫通孔46bの長手方向に沿って延び、平面視で略山型となっている。また、左板部46の外面には、貫通孔46bを囲むように環状リブ52が形成されている。さらに、左板部46の外面の上部には、ネジが螺合する3つのネジ孔46cが貫通孔46aを囲むように形成されている。このネジ孔46cには、後述するレバー80を締結するためのネジ(図示せず)が螺合するようになっている。
右板部47にも、左板部46と同様に貫通孔47bと環状リブ53とが形成されている。
図3、図4及び図11に示すように、シャッター部材14の下板部45の下面には、ラインの幅を設定するためのライン幅設定部材48,48が左右方向に間隔をあけて取り付けられている。ライン幅設定部材48,48の間に粉体が導かれて地面Eに落下するようになっている。これにより、ライン幅が略一定に保たれる。ライン幅設定部材48,48の間隔は、例えば、5cm、7.6cm、12cmの3種類に調節することが可能となっており、用途に応じてラインの幅を設定することができる。
図19に示すように、車軸11は、金属製の中空パイプで構成されている。図11にも示すように、車軸11の周壁部には、長手方向中央部よりも左側に、左右方向に延びる左側スリット11a,11aが形成されている。左側スリット11a,11aは、車軸11の中心軸を挟んで互いに反対側に形成されており、共に同じ形状とされている。左側スリット11a,11aには、左側のピンP1が車軸11の径方向に挿通するようになっている。左側のピンP1は、左側スリット11a,11aに挿通した状態でスリット11a,11a内を左右方向(車軸11の中心軸方向)に移動可能となっている。
車軸11の周壁部には、長手方向中央部よりも右側に、左側と同様な右側スリット11b,11bが形成されている。右側スリット11b,11bには、右側のピン(車軸側係合部)P2が車軸11の径方向に挿通し、ピンP2はスリット11b,11b内を左右方向に移動可能となっている。
車軸11は、羽根車ケース10の車軸挿通孔31,31及びシャッター部材14の貫通孔46b,47bに挿通した状態で、シャッター部材14の左右両側へ突出している。
車軸11の左側スリット11aは、シャッター部材14の左板部46よりも左側に位置している。一方、右側スリット11bは、羽根車ケース10の内部に位置している。
車軸11の左端部及び右端部には、それぞれ、カラー55,55が嵌められている。車輪12は、カラー55を介して車軸11に固定されている。
車軸11と羽根車ケース10の車軸挿通孔31,31との間には、ブッシュ56,56が設けられている。
車軸11の内部には、図20〜図22に示すロッド60が配設されている。ロッド60は、車軸11の中心軸方向に延びる細長い矩形板状に形成されている。図11に示すように、ロッド60の左端部近傍には、左側のピンP1が挿通する左側ピン挿通孔60aが該ロッド60の幅方向に貫通するように形成されている。また、ロッド60の右端部近傍には、右側のピンP2が挿通する右側ピン挿通孔60bが該ロッド60の幅方向に貫通するように形成されている。図20等に示すように、ロッド60には、長手方向に延びるリブ60c,60cが形成されている。
左側ピン挿通孔60aと右側ピン挿通孔60bとの間隔は、車軸11の左側スリット11aと右側スリット11bとの間隔に対応している。従って、ロッド60の左側ピン挿通孔60aと車軸11の左側スリット11aとを一致させると、ロッド60の右側ピン挿通孔60bと車軸11の右側スリット11bとが一致することになる。
左側のピンP1は、車軸11の左側スリット11a及びロッド60の左側ピン挿通孔60aに挿通した状態で抜けないようにロッド60に固定されている。ピンP1の両端部は、車軸11の外周面から突出している。
ピンP1によりディスク69が車軸11に固定されている。ディスク69は、車軸11が挿通可能な環状とされている。ディスク69には、ピンP1の両端部が挿入され、これにより、ディスク69とロッド60とが一体となる。
また、ピンP2は、車軸11の右側スリット11b及びロッド60の右側ピン挿通孔60bに挿通した状態で抜けないようにロッド60に固定されている。ピンP2の両端部は、ピンP1と同様に、車軸11の外周面から突出している。ロッド60は、ピンP1、P2と共に車軸11に対して中心軸方向に移動する。
車軸11の外周面には、第1ワッシャ63及び第2ワッシャ64が嵌められている。第1ワッシャ63及び第2ワッシャ64は、車軸11の外周面を中心軸方向に摺動する。第1ワッシャ63は、右側のピンP2に対し左側から当接するように配置されている。第2ワッシャ64は、第1ワッシャ63の左側に配置されている。
第1ワッシャ63と第2ワッシャ64との間には、コイルスプリング65が設けられている。コイルスプリング65の中心軸と車軸11の中心軸とは略一致しており、従って、コイルスプリング65は、車軸11の中心軸方向に縮むようになっている。コイルスプリング65は、ロッド60を右側へ付勢するためのものである。
羽根車13は、2つのベース部材70に取り付けられている。図23に示すように、各ベース部材70は、円筒を中心軸に沿う平面で2分割した形状を有している。2つのベース部材70,70が車軸11を囲む円筒をなすように組み合わされて車軸11に取り付けられている。ベース部材70の中心軸方向(左右方向)の両端壁部には、車軸11の外形状に対応した凹部71,71が形成されている。また、ベース部材70の周壁部内面には、内方へ突出して周方向に延びる2枚の突板72,72が中心軸方向に間隔をあけて設けられている。また、ベース部材70の左側の端壁部には、もう一方のベース部材70に螺合するネジ(図示せず)の挿通孔74が形成されている。
ベース部材70の右側の端壁部の内面には、複数の突起(送出部材側係合部)73,73,…が周方向に間隔をあけて形成されている。周方向に隣り合う突起73,73の間隔は、ピンP2の外径よりも若干広めに設定されており、図23に仮想線で示すように、突起73,73の間にピンP2が嵌入可能となっている。
図11に示すように、一方のベース部材70の挿通孔74に挿通したネジ(図示せず)を他方のベース部材70に螺合させることによって両ベース部材70,70が結合されている。この状態で、両ベース部材70,70は、車軸11に対し中心軸周りに回転可能となっている。尚、ベース部材70,70の内部には、粉体が殆ど入らないようになっている。
上記右側のピンP2と、第1ワッシャ63と、第2ワッシャ64と、コイルスプリング65とは、ベース部材70,70の内部に収容されている。具体的には、右側のピンP2は、突起73と対向するように配置され、また、第2ワッシャ64は、右側の突板72に対し右側から接するように配置されている。また、ベース部材70,70は羽根車ケース10に対し左右方向には殆ど移動せず、また、車軸11には車輪12,12が取り付けられていてこの車軸11も左右方向には殆ど移動しない。従って、コイルスプリング65のバネ力は、ロッド60を右方向へ付勢する力となる。
ピンP2は、ロッド60と一体に移動するので、コイルスプリング65の付勢力により、ベース部材70の突起73,73の間に嵌入することになる。これにより、ピンP2と突起73,73とが係合し、車軸11と羽根車13とがベース部材70,70を介して結合され、車輪12,12の回転力が羽根車13に伝達する伝達状態となる。
一方、図12に示すように、ロッド60をコイルスプリング65の付勢力に抗して左側へ移動させると、ピンP2がベース部材70の突起73,73の間から抜け出て、車軸11と羽根車13との結合状態が解除されて相対的に回転可能になる。すなわち、車輪12,12の回転力が羽根車13に伝達されない非伝達状態となる。
本実施形態では、ロッド60を左側へ移動させるのは、シャッター部材14により行われるようになっている。具体的には、シャッター部材14の左板部46は、羽根車ケース10とディスク69との間に位置している。ディスク69は、左板部46の貫通孔46bの周縁部に対向するように位置している。シャッター部材14の左板部46の貫通孔46bの下縁部及び上縁部には、図15に示すように左側へ突出する下側突出板部50及び上側突出板部51がそれぞれ形成されているので、シャッター部材14の回動動作によって、下側突出板部50及び上側突出板部51がディスク69に接してディスク69を左側へ押す。これにより、図12に示すようにロッド60を左側へ移動させることが可能になる。
下側突出板部50及び上側突出板部51は、貫通孔46bの長手方向中間部にのみ形成されている。よって、シャッター部材14を前側へ回動させた状態及び後側へ回動させた状態では、ディスク69が下側突出板部50及び上側突出板部51から離れることになり、図11に示すようにロッド60は右へ移動して伝達状態となる。
本発明のクラッチ機構15は、下側突出板部50、上側突出板部51、ロッド60、第1ワッシャ63、第2ワッシャ64、コイルスプリング65、ピンP1,P2、ディスク69及びベース部材70で構成されている。
また、図5に示すように、シャッター部材14には、該シャッター部材14を操作するためのレバー80が設けられている。レバー80は、シャッター部材14に固定される固定板部81と、固定板部81から突出する操作部82とを備えている。固定板部81は、側面視で、一部が切り欠かれた円板形状とされており、シャッター部材14の左板部46の外面にネジを用いて締結固定されている。
図11に示すように、レバー80の操作部82は、羽根車ケース10のスリット40aに挿入されて上方へ突出しており、作業者は操作部82を持ってスリット40aの延びる方向に移動させ、これにより、シャッター部材14を操作することが可能となっている。
操作部82は、図13に示すスリット40aの前側突起40bよりも前に位置した状態では、該前側突起40bに引っ掛かって後へ不意に回動してしまうのが防止される。また、操作部82は、後側突起40cよりも後に位置した状態では、該後側突起40cに引っ掛かって前へ不意に回動してしまうのが防止される。さらに、操作部82は、前側突起40bと後側突起40cとの間に位置している状態では、該前側突起40b及び後側突起40cに引っ掛かって前へも後へも不意に回動してしまうのが防止される。
図5に示すように、レバー80の基端部には、切り欠き部83,83が形成されている。切り欠き部83の形成により、レバー80が左右方向に弾性変形可能となる。スリット40a内を移動させる際に、レバー80を左右に弾性変形させることにより、前側突起40b及び後側突起40cを容易に乗り越えることが可能である。
次に、上記のように構成されたライン引き装置1の使用要領について説明する。粉体を収容空間Rに収容する場合には、蓋24を上方へ回動させて開状態とする。
まず、ラインを引く場合について説明する。作業者は、図7に示すようにレバー80を前側へ押してシャッター部材14を後側へ回動させる。すると、図10に示すように、シャッター部材14の前側スリット45bが羽根車ケース10の放出口41と一致し、放出口41が開放状態となる。シャッター部材14を後側へ回動させた状態では、シャッター部材14の下側突出板部50及び上側突出板部51がディスク69から離れるので、図11に示すように、ロッド60がコイルスプリング65の付勢力によって右側へ移動し、クラッチ機構15が伝達状態となる。
そして、作業者がハンドル23を持ってライン引き装置1を動かすと、車輪12,12が地面E上を回転して車軸11が回転する。車軸11の回転力は、ピンP2、ベース部材70,70を介して羽根車13に伝達される。これにより羽根車13が回転して収容空間R内の粉体が放出口41へ送られ、放出口41から放出される。放出された粉体は、ライン幅設定部材48,48の間から地面Eに落下し、ラインを形成する。このとき形成されるラインは、前側スリット45bが大きいスリットであるため、濃いラインとなる。
尚、ラインを引く際には、ライン引き装置1を前方へ移動させても、後方へ移動させても引くことが可能である。
薄いラインを引きたい場合には、図6に示すように、レバー80を後側へ押してシャッター部材14を前側へ回動させる。すると、図9に示すように、シャッター部材14の後側スリット45cが羽根車ケース10の放出口41と一致し、放出口41が開放状態となる。後側スリット45cは前側スリット45bよりも小さいので、放出口41の開放領域が狭くなる。また、シャッター部材14を前側へ回動させた状態では、シャッター部材14の下側突出板部50及び上側突出板部51がディスク69から離れるので、ロッド60がコイルスプリング65の付勢力によって右側へ移動し、クラッチ機構15が伝達状態となる。
そして、作業者がハンドル23を持ってライン引き装置1を動かすと、車軸11の回転力が羽根車13に伝達されて羽根車13が回転し、収容空間R内の粉体が放出口41から放出される。このとき形成されるラインは、上記した場合に比べて薄いラインとなり、粉体の使用量が抑制される。
一方、ライン引き装置1を、ラインを引かずに運ぶ場合について説明する。作業者は、図5に示すように、レバー80を操作して操作範囲の中央部に位置付ける。すると、図8に示すように、シャッター部材14は、回動範囲の中央で停止する。シャッター部材14の閉塞部45aが羽根車ケース10の放出口41と一致し、放出口41が閉塞状態となる。よって、粉体が放出口41から放出されない。
このとき、図12に示すように、シャッター部材14の下側突出板部50及び上側突出板部51がディスク69を左側へ押す。これにより、ロッド60がコイルスプリング65の付勢力に抗して左側へ移動し、クラッチ機構15が非伝達状態となる。
そして、作業者がハンドル23を持ってライン引き装置1を動かすと、車輪11の回転によって車軸11が回転する。このとき、ピンP2も回転することになるが、このピンP2は、ベース部材70の突起73,73から離れているので、車軸11の回転力が羽根車13に伝達されず、羽根車13が回転しない。従って、粉体が放出口41へ向けて送られることはないので、粉体が放出口41の近傍で押し固められにくくなる。よって、ライン引き装置1を運ぶときに車輪12の回転に要する力が増大することはなくなり、ライン引き装置1が運び易くなる。
また、ライン引き装置1を上記のようにして運んだ後、ラインを引く場合には、運ぶときに粉体が押し固められないので、レバー80を操作して放出口41を開放状態にし、車輪12を回転させることで、粉体が放出口41からすぐに放出される。
以上説明したように、この実施形態1にかかるライン引き装置1によれば、車輪12の回転力を羽根車13に伝達させないようにすることができるので、ライン引き装置1を運ぶ際に車輪12を回転させても、粉体が放出口41から放出されなくなってラインが形成されない。よって、利便性を向上させることができる。
また、シャッター部材14で放出口41を閉塞しておくことで、粉体を収容空間Rに収容する際に粉体が放出口41からこぼれてしまうのを防ぐことができるという利点がある。しかし、仮に、このシャッター部材14を閉塞状態にしたまま車輪12を回転させてその回転力を羽根車13に伝達させてしまうと、収容空間R内の粉体が羽根車13によって放出口41に送られ続け、この放出口41が閉塞されていることから、粉体が放出口41近傍で凝集し、これによって羽根車13の回転が阻害されて車輪12の回転が重くなったり、場合によっては車輪12がロックしてしまう虞れがある。
このような問題に対し、本実施形態では、クラッチ機構15を設け、粉体の放出口41を閉塞した状態にあるときに、車輪12の回転力を羽根車13に伝達させないようにしているので、ライン引き装置1を運ぶ際に車輪12を回転させても、収容空間R内の粉体が放出口41近傍で凝集することはない。これにより、車輪12の回転をスムーズにしてライン引き装置1を運び易くすることができる。
また、レバー80により、シャッター部材14及びクラッチ機構15の両方を操作することができるので、ライン引き装置1の操作性を向上させることができる。
また、シャッター部材14に、大きさの異なる前側スリット45bと後側スリット45cとを設けたので、1台のライン引き装置1を用いて、濃いラインと薄いラインとの両方を引くことができ、利便性がより一層向上する。
また、シャッター部材14を回動可能に本体部9に支持し、シャッター部材14の回動方向の中間部に閉塞部45aを設け、閉塞部45aよりも前側及び後側(回動方向一側及び他側)にスリット45b,45cをそれぞれ設けたので、閉塞状態を基準としてシャッター部材14を前後のどちらに回動させても放出口41を開放してラインを引き始めることができるので、作業者が操作を理解し易く、作業性を良好にできる。
(実施形態2)
図24及び図25は、本発明の実施形態2にかかるライン引き装置1を示すものである。この実施形態2にかかるライン引き装置1は、クラッチ機構15の構造が実施形態1のものと異なっているだけであり、他の部分は実施形態1と同じように構成されているので、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
羽根車ケース10には、左右方向に延びるパイプ材91が軸受92,92を介して回転可能に支持されている。パイプ材91の外周面に羽根車13が固定されている。パイプ材91の左右両側は羽根車ケース10の外部へ突出している。
パイプ材91の内部には、車軸11が挿通されている。車軸11の左右両側は、パイプ材91の内周面に対し軸受93,93を介して回転可能に支持されている。
車軸11の右側には、羽根車ケース10から突出した部分に、第1歯車94が固定されている。この第1歯車94は、車軸11と一体に回転する。また、パイプ材91の右側には、羽根車ケース10から突出した部分に、第2歯車95が固定されている。この第2歯車95は、パイプ材91と一体に回転する。
羽根車ケース10の右側壁部には、第3歯車96aと第4歯車96bとを一体化してなる可動歯車96が設けられている。第3歯車96aは、第1歯車94と噛み合うように構成され、第4歯車96bは第2歯車95と噛み合うように構成されている。第3歯車96aと第4歯車96bとは、互いに同軸上に位置付けられている。
可動歯車96は、車軸11の径方向に接離する方向に移動可能に、かつ、第3歯車96a及び第4歯車96bの中心軸周りに回転可能に、ブラケット(図示せず)を介して羽根車ケース10に支持されている。
尚、図示しないが、実施形態2においても、羽根車ケース10の放出口41を開閉するためのシャッター部材が設けられている。
図24に示すように、可動歯車96を、第3歯車96aと第4歯車96bとから離した状態にすると、車軸11とパイプ材91とが相対的に回転可能になり、車輪12の回転力がパイプ材91を介して羽根車13に伝達されない非伝達状態となる。
一方、図25に示すように、可動歯車96を、第3歯車96aと第4歯車96bとに噛み合う状態にすると、車軸11の回転力が、第3歯車96a、可動歯車96、第4歯車96b、パイプ材91を介して羽根車13に伝達される伝達状態となる。
すなわち、実施形態2では、クラッチ機構15は、第3歯車96a、第4歯車96b、可動歯車96により構成されている。
したがって、この実施形態2にかかるライン引き装置1によれば、粉体の放出口41を閉塞した状態にあるときに、車輪12の回転力を羽根車13に伝達させないようにすることができるので、実施形態1と同様に、ライン引き装置1を運ぶ際に車輪12を回転させても、粉体が放出口41から放出されなくなってラインが形成されない。よって、利便性を向上させることができる。
(実施形態3)
図26及び図27は、本発明の実施形態3にかかるライン引き装置1を示すものである。この実施形態3にかかるライン引き装置1は、クラッチ機構15の構造が実施形態1のものと異なっているだけであり、他の部分は実施形態1と同じように構成されているので、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
羽根車ケース10には、車軸11が軸受100,100を介して回転可能に支持されている。また、羽根車ケース10の車軸11よりも下側には、左右方向に延びる棒材101が軸受102,102を介して回転可能に支持されている。棒材101には羽根車13が固定されている。棒材101の右端部は羽根車ケース10の右側壁部から突出している。棒材101の右端部には、従動歯車103が固定されている。従動歯車103は棒材101と一体に回転する。
車軸11の右側には、羽根車ケース10から突出した部分に、従動歯車103と噛み合う駆動歯車104が設けられている。この駆動歯車104は、例えば、車軸11の中心軸方向に延びるスプライン形状の結合構造を用いて車軸11と結合されている。従って、駆動歯車104は、車軸11と一体に回転し、かつ、車軸11の中心軸方向に移動可能となっている。
図26に示すように、駆動歯車104を車軸11の中心軸方向に移動させて従動歯車103から離した状態にすると、車輪12の回転力が棒材101を介して羽根車13に伝達されない非伝達状態となる。
一方、図27に示すように、駆動歯車104を移動させて従動歯車103に噛み合わせると、車軸11の回転力が、駆動歯車104、従動歯車103及び棒材101を介して羽根車13に伝達される伝達状態となる。
すなわち、実施形態3では、クラッチ機構15は、従動歯車103及び駆動歯車104により構成されている。
したがって、この実施形態3にかかるライン引き装置1によれば、粉体の放出口41を閉塞した状態にあるときに、車輪12の回転力を羽根車13に伝達させないようにすることができるので、実施形態1と同様に、ライン引き装置1を運ぶ際に車輪12を回転させても、粉体が放出口41から放出されなくなってラインが形成されない。よって、利便性を向上させることができる。。
また、上記実施形態1〜3では、ライン引き装置1が2つの車輪12を備えている場合について説明したが、これに限らず、4つの車輪を備える4輪タイプのライン引き装置1に本発明を適用することもできる。
また、上記実施形態1〜3では、放出口41を閉塞するためのシャッター部材14を設けているが、これに限らず、シャッター部材14を省略してもよい。シャッター部材14は省略した場合においても、ライン引き装置1を運ぶ際にはクラッチ機構15を操作して羽根車13を回転させないようにすることができるので、粉体が放出口41へ送られなくなり、ラインが形成されない。