発明の詳細な説明
本出願は、その明細書の内容全体を参照をもってここに編入することとする、1999年10月13日出願の米国暫定出願60/159,215号と、2000年8月30日出願の229,273号とに基づくものである。
発明の背景
パターン形成という働きにより、胚細胞は、分化の済んだ組織を秩序ある空間的配置に置いていく。高等生物の身体の複雑さは胚発生の段階で生じるが、細胞が元々持つ系譜と、細胞の外側で働くシグナル伝達とが相互作用した結果の所産である。ボディー・プランを最初に設定するときから、器官系のパターニングや、組織分化中の多様な細胞種の発生に至るまで、脊椎動物の発生において誘導的な相互作用は胚のパターニングにとって重要である(Davidson, E., (1990) Development 108: 365-389; Gurdon, J. B., (1992) Cell 68: 185-199; Jessell, T. M. et al., (1992) Cell 68: 257-270)。発生上で細胞間相互作用の及ぼす効果は多様である。典型的には、応答細胞が一経路の細胞分化から別の経路へ分岐していく現象は、誘導されない応答細胞とも、誘導された状態の応答細胞とも異なる誘導細胞によって引き起こされるものである(誘導)。細胞は隣接する細胞を自らに似るように分化するよう、誘導することもあるし(ホメオジェネティック誘導)、隣接細胞が自らに似る分化を遂げることを抑制することもある。初期発生段階での細胞間相互作用は順次に起きるものと考えられ、二つの細胞種間に最初の相互作用が起きると、多様性が増幅していくのである。さらに、誘導的相互作用は、胚だけでなく成体細胞でも起き、形態学的パターンを確立かつ維持したり、分化を誘導することがある(J. B. Gurdon (1992)Cell 68: 185-199)。
ヘッジホッグファミリーのシグナル伝達分子のメンバーは、数多くの重要な近距離及び長距離のパターニング・プロセスを無脊椎動物及び脊椎動物の発生で媒介している。ハエでは、単一のヘッジホッグ遺伝子が、体節の成虫原基パターニングを調節している。対照的に、脊椎動物では、一ファミリーのヘッジホッグ遺伝子が、左側−右側の非対称性、中枢神経系の極性、体節及び四肢、器官形成、軟骨形成及び精子形成の制御に関与している。
初めてヘッジホッグ遺伝子が同定されたのは、ショウジョウバエのドゥロソフィラ−メラノガスターの遺伝子スクリーニングにおいてであった(Nusslein-Volhard, C. and Wieschaus, E. (1980) Nature 287, 795-801)。このスクリーニングにより、胚及び幼虫の発生に影響を与える数多くの変異が同定された。1992年及び1993年には、ドゥロソフィラ・ヘッジホッグ(hh)遺伝子の分子上の性質が報告され (C. F., Lee et al. (1992) Cell 71,33-50)、それ以降、いくつかのヘッジホッグ相同体が多種の脊椎動物の種から単離されている。ドゥロソフィラ及び他の無脊椎動物ではヘッジホッグ遺伝子は一種類しか見つかっていないが、脊椎動物には多数のヘッジホッグ遺伝子が存在する。
脊椎動物のヘッジホッグ・ファミリーには、前記のただ一個のドゥロソフィラヘッジホッグ遺伝子のパラログなど、少なくとも四種類のメンバーがある。ヘッジホッグ遺伝子及びたんぱく質の例は、PCT公報 WO 95/18856及びWO 96/17924に解説されている。これらのメンバーのうちの三つを、ここではデザート・ヘッジホッグ(Dhh)、ソニック・ヘッジホッグ(Shh)、及びインディアン・ヘッジホッグ(Ihh)、と呼ぶが、これらは魚類、鳥類及び哺乳類を含め、あらゆる脊椎動物に存在することが明らかである。四番目のメンバーを、ここではツウィッギー−ウィンクル・ヘッジホッグ(Twhh)と呼ぶが、これは魚類に特異的なようである。デザート・ヘッジホッグ(Dhh)は、マウスの胚発生及び成体の齧歯類及びヒトの両方で、主に睾丸で発現する。インディアン・ヘッジホッグ(Ihh)は 胚発生段階での骨発生と、成体における骨形成に関与する。そして上述したShhは、形態発生及び神経誘導に主に関与している。脊椎動物の器官の発生及び維持で、ヘッジホッグ・ポリペプチドが重要な誘導上の役割を果たしていることを鑑みれば、ヘッジホッグ相互作用性たんぱく質の同定は、臨床及び研究の両方の分野で重要な意味を持つであろう。
様々なヘッジホッグたんぱくは、一個のシグナルペプチドと、高度に保存されたN末端領域と、分岐したC末端ドメインとから成る。分泌経路におけるシグナル配列の開裂 (Lee, J. J. et al. (1992) Cell 71: 33-50; Tabata, T. et al.(1992) Genes Dev. 2635-2645 ; Chang, D. E. et al. (1994) Development 120: 3339-3353)に加え、ヘッジホッグ前駆体たんぱくは、内部で自己たんぱく分解による開裂を行うが、この開裂はC末端部分の保存配列に依拠するものである (Lee et al. (1994) Science 266: 1528-1537; Porter et al. (1995) Nature 374: 363-366)。この自己開裂の結果、19kDのN末端ペプチドと、26乃至28kDのC末端ペプチドとが生ずる (上記のLee et al. (1992) ;上記のChang et al. (1994):上記の Lee et al. (1994); Bumcrot, D. A., et al. (1995) Mol.Cell. Biol. 15: 2294-2303 ; 上記のPorter et al. (1995) ; Ekker, S. C. et al. (1995) Curr. Biol.5: 944-955; Lai, C. J. et al. (1995) Development 121 : 2349-2360)。このN末端ペプチドは、それが合成されたもとの細胞の表面に密接に結合したままでいるが、他方、C末端ペプチドは、インビトロ及びインビボの両方に自由に拡散させることができる(Porter et al. (1995)Nature 374: 363; 上記のLee et al. (1994) ; 上記のBumcrot et al. (1995): Marti, E. et al.(1995) Development 121: 2537-2547; Roelink, H. et al. (1995) Cell 81: 445-455)。興味深いことに、一個のRNAにコードされた切断型のHHが、内部開裂が通常起きる位置を正確に末端に持っていれば、インビトロでも(Porter et al. (1995) supra)、そしてインビボでも (Porter, J. A. et al. (1996) Cell 86, 21-34)拡散させられることに見られるように、N末端ペプチドが細胞表面に残るかどうかは、自己開裂に依存している。生化学的実験では、自己たんぱく分解によるHH前駆体たんぱくの開裂は、内部のチオエステル中間体を通じて進行し、この中間体は後に求核的置換で開裂する。この求核剤は、NペプチドのC末端に共有結合する (上記のPorter et al. (1996))ことで、それを細胞表面に繋げることになる小型の親油性分子であると思われる。この生物学的意味は深淵である。繋げられていく結果、N末端ヘッジホッグペプチドが、ヘッジホッグ産生細胞の表面上に局部的に集中する。ドゥロソフィラ及び脊椎動物において、近距離及び長距離のヘッジホッグシグナル伝達にとって必要充分なのは、このN末端ペプチドなのである (上記のPorter et al. (1995): 上記のEkker et al. (1995) : 上記のLai et al. (1995) ; Roelink, H. et al. (1995) Cell 81: 445-455; 上記のPorter et al.(1996) : Fietz, M. J. et al. (1995) Curr. Biol. 5: 643-651; Fan, C.-M. et al. (1995)Cell 81: 457-465; Marti, E., et al. (1995) Nature 375: 322-325; Lopez-Martinez et al.(1995) Curr. Biol 5: 791-795 ; Ekker, S. C. et al. (1995) Development 121: 2337-2347;Forbes, A. J. et al. (1996) Development 122: 1125-1135)。
HHは、ドゥロソフィラの発生中に様々な部位で短距離及び長距離のパターニング・プロセスに関与していることが示されている。初期胚の体節極性の確定においては、直接媒介が行われると思われる短距離の作用を有し、成虫原基パターニングにおいては、二次的シグナルを誘導することで、長距離の作用を誘導する。
脊椎動物では、いくつかのヘッジホッグ遺伝子が、過去数年の間にクローンされている。これらの遺伝子のうちでは、Shhが、隣接組織のパターン形成をするシグナルの出所になっている様々な器官形成の中心で発現しているために、実験上の関心を集めてきた。最近の証拠では、Shhがこれらの相互作用に関与していることが示唆されている。
Shhの発現は、マウス(上記のChang et al. (1994) ;Echelard, Y. et al. (1993) Cell 75: 1417-1430)、ラット (Roelink, H. et al. (1994) Cell 76: 761-775) 及びニワトリ (Riddle, R. D. et al. (1993) Cell 75: 1401-1416)の節、並びにゼブラフィッシュのシールド(原語:shield) (Ekker et al. (1995) supra ; Krauss, S. et al. (1993) Cell 75: 1431-1444)である、推定上の正中線中胚葉における原腸形成の開始後すぐに開始する。ニワトリ胚では、節におけるShh発現パターンにより、左−右の非対称性が生まれるが、この非対称性は、心臓の左−右位置に関与していると思われる (Levin, M. et al.(1995) Cell 82: 803-814)。
中枢神経系では、脊索及び床板のShhは腹側の細胞の運命を誘導するようである。マウス(上記のEchelard et al. (1993) ; Goodrich, L. V. et al. (1996) Genes Dev. 10 : 301-312)、アフリカツメガエル(上記のRoelink, H. et al. (1994) ; Ruiz iAltaba, A. et al. (1995) Mol. Cell. Neurosci. 6: 106-121)、及びゼブラフィッシュ (上記のEkker et al.(1995) ; 上記のKrauss et al. (1993) ; Hammerschmidt, M., et al. (1996) Genes Dev.10: 647-658)で、Shhを異所的に発現させると、中脳及び後脳の大部分の領域が腹側に来る。中間神経外胚葉を脊髄の高さへ外植したときには、Shhたんぱくは、床板及び運動ニューロンの発生を誘導するが、このときの濃度閾値は互いに異なり、床板で高く、運動ニューロンで低い(上記のRoelink et al. (1995) ; 上記のMarti et al. (1995) ; Tanabe, Y. et al. (1995) Curr. Biol. 5 : 651-658)。さらに、抗体遮断の結果、脊索が産生するShhが、運動ニューロンの運命を脊索に媒介されながら誘導していくのに必要であることが示された (上記のMarti et al. (1995))。このように、Shhを産生する正中線細胞の表面上にShhが高濃度で存在することが、インビトロで観察されるような床板の接触媒介型誘導(Placzek, M. et al. (1993) Development 117: 205-218)や、インビボで起きる、脊索の真上に床板が来るような正中線配置を説明するものと、考えられる。脊索及び床板から放出されるShhの濃度が低いと、おそらくは、より遠くの腹側外側領域で運動ニューロンが誘導され、この際のプロセスは、接触とは独立のプロセスであることがインビトロで示されている(Yamada, T. et al. (1993) Cell 73: 673-686)。中脳及び後脳の高さで 採取した外植でも、Shhはやはり、それぞれドーパミン作動性 (Heynes, M. et al. (1995) Neuron 15: 35-44; Wang, M. Z. et al. (1995) Nature Med.1: 1184-1188) 及びコリン作動性 (Ericson, J. et al. (1995) Cell 81: 747-756) の前駆細胞である適切な腹側外側神経細胞種を誘導するが、このことは、Shhが、中枢神経系の全長に渡って腹側仕様の共通の誘導物質であることを示唆している。これらの観察から、特定の背−腹位置において、Shhに対する分化上の応答がどのように調節されているのか、という疑問が起きる。
正中線からのShhはさらに、脊椎動物胚の近軸領域、即ち体幹の体節(上記のFan et al. (1995)) 、及び、この体節の頭部頭側間葉 (上記のHammerschmidt et al. (1996))のパターン形成をする。ニワトリ及びマウスの近軸中胚葉外植では、Shhは、Pax1及びTwistなどの硬節特異的マーカの発現を促進し、代わりに皮膚筋節マーカPax3を消失させる。さらに、フィルタ・バリア実験では、Shhが、二次的なシグナル伝達機序を活性化させるのではなく、硬節の誘導を直接媒介することが示唆されている(Fan, C.-M. and Tessier-Lavigne,M. (1994) Cell 79,1175-1186)。
またShhは、筋節の遺伝子発現を誘導する(上記のHammerschmidt et al. (1996) ; Johnson, R. L. et al. (1994) Cell 79: 1165-1173; Miinsterberg, A. E. et al. (1995)Genes Dev. 9: 2911-2922; Weinberg, E. S. et al. (1996) Development 122: 271-280)が、最近の実験では、ドゥロソフィラ・ウィングレスの脊椎動物相同体であるWNTファミリーのメンバーも共に必要であることが示されている(上記のMunsterberg et al. (1995))。どういう訳か、ニワトリで筋節が誘導されるには、硬節マーカを誘導するよりも高いShh濃度が必要である(上記のMunsterberg et al. (1995))が、硬節は、脊索にずっと近い体細胞が起源である。同様の結果はゼブラフィッシュでも得られ、ヘッジホッグの濃度が高いと筋節遺伝子の発現が誘導され、硬節マーカ遺伝子の発現が抑制される(上記のHammerschmidt et al. (1996))。しかしながら、有羊膜類とは対照的に、これらの観察は魚の胚の構造と一致し、筋節は体節の主要かつ、より軸性の高い構成要素である。従って、脊椎動物の進化の過程で、Shhシグナル伝達の変化が起きたり、新たなシグナル伝達因子が獲得されていたら、体節構造に改変が起きていたかも知れない。
脊椎動物の肢芽では、後間葉細胞のうちの一集団である「極性決定帯」(原語:Zone of polarizing activity)(ZPA)が、指を前後方向で個々に決定する(レビューはHonig, L. S. (1981) Nature 291: 72-73)。Shhを異所発現させるか、Shhペプチドに浸したビーズを利用すると、前方にZPAを移植したときの効果を模倣でき、鏡像的な指の複製が発生する(上記のChang et al. (1994); 上記のLopez-Martinez et al. (1995) ;上記のRiddle et al. (1993)) (図2g)。このように、手指を個々の決定は主にShhの濃度に依存していると思われる。もちろん、他のシグナルが、APパターン決定に必要と思われる相当な距離(100乃至150μm)にわたって、この情報を中継している可能性もある。ドゥロソフィラの成虫原基におけるHH及びDPPの相互作用と同様に、脊椎動物の肢芽のShhは、dppの相同体であるBmp2の発現を活性化する (Francis, P. H. et al. (1994)Development 120: 209-218)。しかし、ドゥロソフィラでのDPPとは異なり、Bmp2は、ニワトリの肢芽に異所投与しても、Shhの極性決定作用を模倣できない(上記のFrancis et al. (1994))。前後方向でのパターニングに加え、Shhはまた、後先端外胚葉隆起で線維芽細胞成長因子FGF4の合成を誘導することにより、肢の近位遠位成長の調節に関与しているようである (Laufer, E. et al. (1994) Cell 79: 993-1003; Niswander, L. et al. (1994)Nature 371 : 609-612)。
ヘッジホッグたんぱくとBMPとの間の密接な関係は、脊椎動物でヘッジホッグが発現する多くの部位で保存されていると考えられるが、おそらくは全ての部位で保存されていることはないであろう。例えば、ニワトリの後腸で、Shhが、別の脊椎動物dpp相同体であるBmp4の発現を誘導することが示されている(Roberts, D. J. et al. (1995) Development 121: 3163-3174)。さらに、Shh及びBmp2、4もしくは6は、胃、泌尿性器系、肺、歯芽及び毛嚢の上皮細胞及び間葉細胞におけるそれらの発現において驚くべき相関関係を示す(Bitgood, M. J. and McMahon, A. P. (1995)Dev. Biol. 172: 126-138)。さらに、他に二つあるマウスヘッジホッグ遺伝子のうちの一方であるIhhは、腸及び成長中のでBmp発現細胞に隣接して発現する (Bitgood and McMahon (1995) supra)。
ドゥロソフィラ胚においてヘッジホッグが果たす主要な機能は、各体節単位の境界でwgの転写を維持することである (Hidalgo and Ingham, (1990)Development 110: 291-302)。ここから、Wgたんぱくはこの体節全体に拡散して、幼虫の小皮を分泌する外胚葉の細胞の性質を明示する (Lawrence et al., (1996) Development 122: 4095-4103)。hhと同様、三種類の他の体節極性遺伝子、即ち smoothened (smo)、fused (fu) 及びcubitus interruptus (ci) に突然変異が起きると、擬体節境界でのwg転写が消失する (Forbes et al., (1993) Development Suppl. 115124; Ingham, (1993) Nature 366: 560-562; Pr at et al., (1993) Genetics 135: 1047-1062; and van den Heuvel et al. (1996) Nature 382: 547-551) ;対照的に、四番目の遺伝子 である patched (ptc)に突然変異が起きると、wgの抑制解除が起きる(Ingham et al., (1991) Nature 353: 184-187; and Martinez Arias et al., (1988) Development 103 : 157-170)。ptc及びその他の遺伝子の間で二重変異体の組合せを作製することにより、smo、fu及び ci はすべてptcの下流に作用してwg転写を活性化させるということが立証された(上記のForbes et al., (1993) ; Hooper (1994) Nature 372: 461-464) 。他方、wgの転写は、ptcがないときにはhhから独立のものとなる (Ingham and Hidalgo (1993)Development 117: 283-291)。これらの発見は、hhがptcの活性に拮抗するよう働き、これがひいては smo、 fu及び ciの活性に拮抗するという、単一の経路を示唆している。この経路の万能性は、その後、ptc、smo、fu 及びci が今日まで研究されたプロセスの全てでHhの活性を媒介している (Ma et al., (1993) Cell 75: 927-938); Chen et al. (1996) Cell 87: 553-563; Forbes et al., (1996)Development 122: 3283-3294; Sanchez-Herrero et al. (1996) Mech. Dev. 55: 159-170;Strutt et al. (1997) Development 124: 3233-3240)ドゥロソフィラと、 ptc、smo 及び ci の相同体が同定されると共に、Hhファミリーたんぱくの一つ又は他のものが媒介するプロ背ウニ関与していることが示された脊椎動物の両方で、立証された(Concordet et al., (1996) Development 122: 2835-2846;上記のGoodrich et al.,; Marigo et al., (1996) Dev. Biol. 180: 273-283; Stone et al. (1996)Nature 384: 129-134; Hynes et al. (1997) Neuron 19: 15-26; 及び Quirk et al. (1997) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 62: 217-226)。
そもそもpatchedは、ドゥロソフィラで、胚の前後方向に相同的な連なりで並んだ個々の体節内で起きる細胞分化に影響を与える一群の発生遺伝子の一種である体節極性遺伝子として、同定された。Hooper, J. E. et al. (1989) Cell 59: 751; 及び Nakano, Y. et al. (1989) Nature 341: 508を参照されたい。patchedの脊椎動物相同体の発現パターンは、それが、神経管、骨格、四肢、脳顔面頭蓋構造、及び皮膚の発生に関与していることを、示唆している。
さらに、 smoothenedは、7回膜貫通受容体(7TM)ファミリーの一メンバーである膜貫通たんぱくをコードしているという発見により、ヘッジホッグのシグナル伝達に関与している別のたんぱく質が、発見された。 (Alcedo et al. (1996) Cell 86: 221-232; 上記のvan den
Heuvel et al. )。smoのヒト相同体は同定済みである。例えば、Stone et al. (1996) Nature 384: 129-134, 及び GenBank 受託番号 U84401を参照されたい。インビトロ結合検定では、脊椎動物のSmoとHhたんぱくとの間に、何ら物理的相互作用を検出できなかった (上記のStone et al.,) が、他方、同じ条件下でも、脊椎動物のPtcは比較的に高い親和性でソニック・ヘッジホッグ(Shh)たんぱくに結合する(Marigo et al. (1996)Nature 384: 176-179; 上記のStone et al.)。最近、活性化smoothened突然変異が、突発性基底細胞癌、Xie et al. (1998) Nature 391: 90-2、及び中枢神経系の原始神経外胚葉腫瘍、Reifenberger et al. (1998) Cancer Res 58: 1798-803に起きることが報告された。
当業におけるこれらの発見は、HhはPtcに結合することで作用して、Ptcに、Smoに対する抑制効果を発揮させることを示唆している。Ptc及びSmoは両方とも膜貫通たんぱくであるため、予測できるシナリオとしては、これらが物理的に結び付いて受容体複合体を形成している、ことが考えられるが、間接的な作用機序があることもあり得る。Ptcによる抑制からSmoが解除されるされるには、おそらくSmoのコンホメーション上の変化が関与しているであろう。しかし、Smoの活性にPtcが必須ではないことを念頭に置いておくことが重要である。なぜなら、Ptcたんぱくが全くなくとも、Smoは構成的に活性化するからである(上記のAlcedo et al. ;上記のQuirk et al.)。
このモデルによれば、ptcの少なくとも何らかの機能欠損的な突然変異が作用するには、Smoへの結合が断たれなくてはならないはずである。ヒトptc相同体の突然変異が、基底細胞癌(BCC)に広汎に見られるという発見 (Hahn et al. (1996) Cell 85: 841-851; Johnson et al. (1996) Science 272: 1668-1671) がなされたことで、Ptc/Smoだけでなく、機能欠損的な突然変異の多くの原因を解析しようという意気込みに弾みがついた。腫瘍から採取された数多くのヒトptcアレルが配列決定されたが、その変異の大半は、コドン領域の早すぎる終結を特徴としていた(Chidambaram et al. (1996) Cancer Res. 56: 4599-4601 ;Wicking et al., (1997) Am. J. Hum. Genet. 60: 21-26).
また、Smo-Ptcの結合は、smoに変異があっても断たれる可能性があるであろう。ptcの変異とは対照的に、それらは顕性的に作用する(なぜなら、それらは変異たんぱくの構成的活性につながるからであろう)。最近のヒトBCC研究で、基底ケラチノサイトの形質転換に関係がありそうなSmoの活性化変異が同定された (Xie et al. (1998) Nature 391: 90-92)。
何ら理論に拘束されるのを望むわけではないが、smo-ptc経路がシグナル伝達を媒介するという、浮上してきた機序は以下の通りである。Hhによる誘導がないとき、Smoの活性はPtcにより、おそらくはそれらの間の物理的結合を通じて阻害されている。完全長CiはFu、Cos-2及び
サプレッサ・オブ・フューズド(原語:suppressor-of-fused)[Su(fu)]と複合体を形成し、この複合体を通じて微小管と結合している。この結合によりCiはプロテアソームに案内されて、そこで開裂して転写抑制型Ci75を遊離させる。Ci155のリン酸化は、Cos-2-Fuとの結合を促進するか、又は、ユビキチン結合を促進することのいずれか(又は両方)により、その開裂を促進する。HhがPtcに結合すると、Smoに対する阻害作用が抑制される。その結果Smoが活性化し、Fu-Cos-2-Ci複合体が微小管から離れる。Ci155の開裂が遮断される。次に、これ、もしくは、関連する形のCiが核内に進入して、CREB結合たんぱく(CBP)と関連するptc、gli及び他の標的遺伝子の転写を活性化させる。
発明の概要
一態様の本発明は、smoothened依存的経路活性化を阻害する方法及び試薬を、利用可能にするものである。いくつかの実施例では、当該方法を、例えばヘッジホッグ機能亢進、ptc機能欠損、又はsmoothened機能亢進といった突然変異を原因とするなど、ヘッジホッグ経路の望ましくない活性化の表現型作用に拮抗させるのに利用できる。例えば、当該方法に、smoothened依存的経路活性化に拮抗するのに充分な量の、ステロイド系アルカロイド又は他の小分子など、smoothenedアンタゴニスト(以下に定義する)に、細胞を(インビトロ又はインビボで)接触させるステップを含めてもよい。
他の態様では、本発明は、ヘッジホッグたんぱくを用いた処置で得られるであろう効果を全部又はいくつか模倣するためなど、smoothened依存的経路活性化を活性化させる方法及び試薬を、利用可能にするものである。当該方法に、smoothened依存的経路を活性化するのに充分な量のsmoothenedアゴニスト(以下に定義する)に、細胞を(インビトロ又はインビボで)接触させるステップを含めてもよい。
当該方法及び化合物を、例えば、インビトロ及び/又は、幹細胞からの組織形成など、インビトロで細胞の増殖及び/又は分化を調節したり、あるいは、高増殖性細胞の成長を抑制するなどに利用してもよい。
当該化合物を、薬学的に許容可能な賦形剤を含んで成る医薬製剤として調合してもよい。本発明のsmoothenedアンタゴニスト、及び/又は、それらを含む製剤は、例えば癌及び/又は腫瘍(例えば髄芽腫、基底細胞癌、等々)などの望ましくない細胞増殖が関与する状態や、非悪性の高増殖性疾患、等々を処置するために患者に投与してもよい。さらに、smoothenedアゴニストを利用すると、正常な組織の成長及び分化を調節することができる。いくつかの実施例では、このような化合物又は製剤を、全身投与、及び/又は、局部など、局所投与する。
発明の詳細な説明
1.概観
本発明は、ステロイド系アルカロイド及びそれらの類似体により、patched(ptc)及び/又はsmoothenedが調節するシグナル伝達経路を、少なくとも部分的に抑制できる、という発見に関するものである。以下により詳細に説明するように、我々は、シクロパミン誘導体がヘッジホッグ経路のsmoothened依存的活性を阻害できることを観察した。何ら特定の理論に拘束されるのを望むわけではないが、我々のデータは、シクロパミンが、smoothenedのレベルで、直接的又は間接的に作用して、活性型及び不活性型のsmoothenedの定常状態比を、(ステロイド系アルカロイドの非存在時に比較して)不活性型にシフトさせることを示している。
従って、具体的には、構造上ステロイド系及び非ステロイド系のいずれに関わらず、他の小分子も、smoothened媒介型シグナル伝達の様々な局面に同様に干渉するであろうと、考えられる。例えば、このような化合物は、正常組織(例えばsmoを発現するか、又は、ヘッジホッグ応答性であるような組織など)の増殖を阻害したり、及び/又は、分化を誘導するのに有用であろう。さらに当該のsmoothenedアンタゴニストは、patched機能欠損表現型、smoothened機能亢進表現型又はヘッジホッグ機能亢進表現型を有することを特徴とする細胞又は組織において、増殖(又は他の生物学的結果)を阻害するのに有用であろう。
さらに、具体的には、シクロパミン及び他の小分子が、smooothened媒介型シグナル伝達を阻害できることを考慮すると、smoothened媒介型シグナル伝達の活性化剤、例えば、活性型及び不活性型のsmoothenedを活性型に直接的又は間接的にシフトするような化合物など、を同定できると、考えられる。このような化合物は、例えば、正常組織(例えば、smoを発現するか、又はヘッジホッグ応答性であるような組織など)の増殖を誘導したり、及び/又は、分化を抑制するなどのために、有用であろう。
好適な実施例では、当該の阻害剤及び活性化剤は、分子量が2500amu未満、より好ましくは1500amu未満、そしてさらにより好ましくは750amu未満の有機分子であり、smoothenedシグナル伝達経路の活性を少なくともいくらか阻害することができる。
このように、本発明の方法には、ヘッジホッグ経路のsmoothened依存的活性に拮抗する又は(該当する場合は)活性化させ、ひいては幅広い細胞、組織、及び臓器の修復及び又は機能的性能の調節を行う、小分子などの作用物質の利用が含まれる。例えば、当該方法には、神経組織の調節から、骨及び軟骨形成及び修復、精子形成の調節、平滑筋の調節、原腸から発生する肺、肝臓、膵臓及び他の臓器の調節、造血機能の調節、皮膚及び毛髪の成長の調節、等々に至るまで、治療的用途及び美容的用途がある。さらに、当該方法は、培養中の細胞(インビトロ)にも、又は、まるごとの動物中の細胞(インビボ)にも、利用できる。例えば、PCT公報 WO 95/18856 及びWO 96/17924を参照されたい (ここらの明細書を、参照をもってここに編入することを明示しておく)。
いくつかの好適な実施例では、当該のsmoothenedアンタゴニストを用いて、ヘッジホッグ機能に拮抗する作用物質を利用すれば、ptc機能欠損、ヘッジホッグ機能亢進、又はsmoothened機能亢進型の表現型を有する上皮細胞を処置することができる。例えば、当該方法を、基底細胞癌又は他のヘッジホッグ経路関連疾患の処置又は予防に利用してもよい。
別の好適な実施例では、当該のsmoothenedアンタゴニスト及び活性化剤は、適宜、膵臓細胞(例えば、膵臓前駆細胞から、成熟した内分泌又は外分泌細胞に至るまで)の増殖又は分化を変調したり、又は、例えばインビボ又はインビトロでなど、膵臓組織の成長又は発達を調節するのに、利用できる。
さらに別の好適な実施例では、当該方法を、悪性髄芽腫及び他の原発性の中枢神経系の悪性神経外胚葉腫瘍の処置計画の一部として利用することができる。
別の態様では、本発明は、ここに解説されたものなどのsmoothenedアンタゴニスト又は活性化剤を、有効成分として、例えば増殖、分化、又は、他の生物学的結果など、ptc、ヘッジホッグ又はsmoothenedなどの正常もしくは異常な機能など、smoothened依存的経路をインビボで調節するのに充分な量、調合して含まれた医薬製剤を提供するものである。
当該化合物を利用する当該の処置法は、ヒト及び動物の被験体の両方にとって有効であろう。本発明を利用できる動物の被験体は、ペット又は商業目的で飼育されたに関わらず、家庭内の動物及び家畜の両方に渡る。例はイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ及びヤギである。
II. 定義
便宜上、本明細書、実施例及び付属の請求項で用いた用語をいくつか、ここに収集する。
ある遺伝子の「異常な修飾又は突然変異」という文言は、例えば、ある遺伝子の欠失、置換又は追加や、遺伝子の相対的染色体再配列、及び/又は、遺伝子の異常なメチル化など、の遺伝子上の異常を言う。同様に、ある遺伝子の誤発現とは、同じような条件下での正常細胞の転写レベルに比較したときの当該遺伝子の異常な転写レベルや、当該遺伝子から転写されたmRNAの非野生型スプライシングを言う。
「基底細胞癌」は、例えば小結節性可溶性、表在性、色素性、限局性強皮症様、線維上皮腫及び母斑性症候群など、多様な臨床的及び組織学的形で存在する。基底細胞癌は、ヒトで見られる最もよくある皮膚新生物である。黒色腫以外の皮膚癌の新症例の大半はこの分類に属する。
「火傷」とは、皮膚の広い表面が、熱及び/又は化学物質のために、ある個体から取り除かれた又は失われた場合を言う。
用語「cAMP調節物質」とは、アデニル酸シクラーゼ、cAMPホスホジエステラーゼ、又は他の分子に作用してcAMPレベル又は活性を調節するような物質を含め、細胞中のcAMPのレベル又は活性を変化させる物質を言う。さらに、ここで言うcAMP調節物質とは、プロテインキナーゼAなど、cAMP活性の下流のエフェクタを言う。「cAMPアゴニスト」とは、cAMP調節物質のうちで、細胞中のcAMPレベル又は活性を増加させるものを言い、他方、「cAMPアンタゴニスト」とは、細胞中のcAMPレベル又は活性を減少させるものを言う。
用語「癌」とは、周囲組織に浸潤して転移を起こす傾向のある上皮細胞から成る悪性の新成長を言う。癌の例には、めったに転移しないが、局所的な侵襲及び破壊の可能性のある、皮膚の上皮腫瘍である「基底細胞癌」:癌性及び肉腫性組織から成る悪性腫瘍も含まれる「癌肉腫」:小上皮細胞の網又は紐で分離もしくは取り巻かれたヒアリン又は粘液性の間質の筒又は帯を特徴とする癌であり、乳腺及び唾液腺、及び気道の粘液腺に発生する「腺嚢癌腫」:表皮と同じ態様で分化する傾向のある、即ち、有棘細胞を形成して角化を起こす傾向のある癌細胞を言う「類表皮癌」:鼻の裏側の空間の表皮の裏打ちに起きる悪性腫瘍を言う「上咽頭癌」及び、多様な配置の尿細管細胞から成る腎実質の癌に関する「腎細胞癌」、がある。他の癌性上皮成長は、上皮を由来とし、パピローマウィルスが原因物質である良性の腫瘍を言う「乳頭腫」:及び、神経溝の閉塞時に外胚葉要素が含まれてしまうことで形成される大脳又は髄膜の腫瘍を言う「エピデルモイドーマ」である。
「真皮(原語:corium)」及び「真皮(原語:dermis)」とは、表皮の奥深くにある皮膚の層であり、血管結合組織の密な床から成り、神経及び感覚末端器官を含有する。毛根、脂腺及び汗腺は、真皮に深く埋め込まれた表皮構造である。
「歯牙組織」とは、例えば歯肉組織など、上皮組織に似た口内組織である。本発明の方法は歯周病の処置に有用である。
「皮膚潰瘍」とは、組織表面が失われた起きる皮膚の病変を言い、多くの場合炎症を伴う。本発明の方法で処置が可能の皮膚潰瘍には、圧迫潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、動脈潰瘍がある。圧迫潰瘍とは、長期間、皮膚の区域に圧力がかかった結果生ずる慢性潰瘍を言う。この種類の損傷はしばしば、褥瘡又は床ずれと呼ばれる。静脈うっ血性潰瘍は、欠陥のある静脈で血液又は他の流体が停滞して起きる。動脈潰瘍とは、血流が不足した動脈周囲の区域の皮膚の壊死を言う。
用語「ED50」とは、薬剤の最大の応答又は効果のうちの50%を生ずるその用量を意味する。
当該の処置法に関して言う、当該化合物の「有効量」とは、ある所望の投薬計画の一部として適用したときに、例えば細胞増殖の速度及び/又は細胞分解の状態及び/又は細胞の生存率など、を処置しようとする疾患又は美容上の目的にとって臨床上許容可能な標準に基づき変化させるような、一製剤中のアンタゴニストの量を言う。
用語「上皮」、「上皮の」及び「上皮組織」とは、腺及び腺を由来とする他の構造を含め、内部及び外部の身体表面の(皮膚性、粘液性及び漿液性の)細胞様の覆いを言い、例えば角膜、食道、表皮、及び毛嚢上皮細胞などである。他の上皮組織の例には:鼻孔の嗅覚領域の裏打ちになっている多列上皮であり、嗅覚の受容体を含有する嗅覚上皮:分泌細胞から成る上皮細胞を言う腺上皮:平らな皿状の細胞から成る上皮組織を言う扁平上皮、がある。上皮組織という用語は、さらに、例えば、多列扁平上皮から円柱上皮に移行する部分を成す組織など、収縮及び膨張のために大きな物理的変化に晒される中空の臓器の裏打ちになっていることが特徴として見られるものなど、移行上皮を言うこともある。
用語「上皮形成」とは、表皮剥脱した表面に上皮組織が成長することによる治癒を言う。
用語「表皮腺」とは、表皮に関連し、それらの通常の代謝上の必要性とは関連しない物質を分泌又は排出するよう特化された細胞の集合を言う。例えば、「脂腺」とは、油性の物質及び皮脂を分泌する真皮内の全分泌腺である。用語「汗腺」とは、真皮又は皮下組織内に位置し、体表面上の管路で開口した、汗を分泌する腺を言う。
用語「表皮」とは、胚の外胚葉を由来とし、厚さが0.07から1.4mmである、皮膚の最も外側の、血管のない層を言う。それは、手掌及び足底表面では、内部から外に向かって5つの層から成る。垂直方向に並んだ円柱細胞から成る基底層;短い突起又は棘を持つ扁平多面体細胞から成る有棘細胞又は棘状層;扁平顆粒細胞から成る顆粒層;核が個々に区別できないか、又は存在しない透明な細胞から成る透明層;及び、扁平角質化非有核細胞から成る角質層、である。一般的な体表面の表皮には、透明層は普通、存在しない。
「切除傷」には、皮膚上皮の断裂、擦過傷、切り傷、穿刺又は裂傷が含まれ、皮膚層、さらには皮下の脂肪及びそれよりも奥深くに達しているものでもよい。切除傷は外科術が原因のものでも、又は皮膚の不慮の貫通によるものでもよい。
ある細胞の「成長状態」とは、細胞の増殖速度及び/又は細胞の分化状態を言う。「変化した成長状態」とは、例えば、正常細胞に比較した増殖速度が増した又は減少した細胞など、異常な増殖速度を特徴とする成長状態である。
用語「毛髪」とは、糸状の構造、特にケラチンから構成され、真皮の乳頭陥没部から生ずる特化した表皮構造を言い、哺乳類のみに生じ、この群の動物の特徴である。さらに、「毛髪」は、このような毛髪の凝集物を言う場合もある。「毛嚢」とは、毛髪を取り囲んだ表皮の管状の陥入部分を言い、ここから毛髪が成長する。「毛嚢上皮細胞」とは、例えば幹細胞、外毛根鞘細胞、基質細胞、及び内毛根鞘細胞など、毛嚢内の真皮乳頭を取り巻く上皮細胞を言う。このような細胞は正常な非悪性の細胞であったり、又は形質転換した/不死化した細胞であったりする。
用語「smoothenedアンタゴニスト」とは、正常細胞では当該細胞がヘッジホッグに接触することで誘導又は抑制される、glil及びptc 遺伝子などの標的遺伝子の転写を抑制又は誘導する作用物質を言う。 好適なsmoothened アンタゴニストは、smoothened依存的経路を変化させることに加え、ptc機能欠損及び/又はsmoothened機能亢進を克服するのに利用できる。用語「smoothenedアンタゴニスト」とは、ここで用いる場合、さらに、fused、suppressor offused、cubitus interruptus、costal-2、等々、smoothened経路の下流のエフェクタを調節することにより、smoothened依存的経路の活性化を阻害するよう作用するであろう、あらゆる作用物質を言う。
用語「機能欠損」及び「機能亢進」とは、適宜、ptc 遺伝子、ヘッジホッグ遺伝子、又は smoothened遺伝子などの異常な修飾又は変異や、又は、このような遺伝子の発現レベルの減少又は増加であって、その結果、例えばヘッジホッグ経路の異常な活性化など、ヘッジホッグたんぱくに細胞を接触させることに類似する、又は、smo機能の欠損に類似するなどの、一表現型がつながるものを言う。この変異には、例えば Glil、 Gli2、及びGli3などのCiたんぱくの活性レベルを調節する上でのptc又はsmo遺伝子産物の能力の欠損を含めてもよい。
ここで用いる「不死化させた細胞」とは、化学的及び/又は組換えによる手段で改変して、培養中で無限に分裂を行って成長できるようにした細胞を言う。
「内部上皮組織」とは、皮膚の表皮層と同様の特徴を持つ身体内部の組織を言う。例には、腸管の裏打ち構造がある。本発明の方法は、例えば外科術による創傷など、いくつかの内部の創傷の治癒を促すのに有用である。
用語「角化上皮症」とは、角質層の過形成を特徴とする増殖性皮膚疾患を言う。角化上皮症の例には、毛包性角化症、手掌足底角化症、咽頭角化症、毛孔性角化症、及び日光性角化症がある。
用語「LD50」とは、テスト被験体のうちの50%にとって致命的である薬剤用量を意味する。
用語「爪」とは、手指又はつま先の遠心端の背面にある角質化した皮膚の板を言う。
当該方法による処置の対象となる「患者」又は「被験体」は、ヒト又はヒト以外の動物のいずれも意味する。
用語「プロドラッグ」は、生理条件下で本発明の治療上有効な作用物質に転化する化合物を包含するものと、意図されている。プロドラッグを製造する通常の方法には、生理条件下で加水分解して所望の分子が現れるような所定の成分が含まれよう。別の実施例では、プロドラッグはホスト動物の酵素活性により転化する。
ここで用いる「増殖する」及び「増殖」とは、細胞が有糸分裂を行うことを言う。
本出願全体を通じ、用語「増殖性皮膚疾患」とは、皮膚組織の望ましくない又は異常な増殖を特徴とする、皮膚のあらゆる疾患/異常を言う。これらの状態は、典型的には、表皮細胞の増殖又は不完全な細胞分化を特徴とし、例えばX染色体魚鱗染色体魚鱗癬、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、表皮剥離性角化症、及び脂漏性皮膚炎がこれらに含まれる。例えば、表皮異形成は表皮の誤った形の形成である。もう一つの例は、「表皮剥離」であり、自発的か、又は外傷部位に小水疱及び水疱が形成された、表皮が浮いた状態を言う。
ここで用いる用語「乾癬」とは、皮膚の調節機構を変化させる高増殖性皮膚疾患を言う。特に、表皮の増殖、皮膚の炎症反応、及び、リンホカイン及び炎症性因子などの調節分子の発現における、一時的及び二次的な変化を含む病変が形成される。乾癬の皮膚は、形態学的には、表皮細胞のターンオーバーの増加、表皮の肥厚、異常な角質化、基底細胞サイクルの増加につながる、真皮層への炎症性細胞の浸潤及び表皮層への多核白血球の浸潤を特徴とする。加えて、過角化細胞及び錯角化細胞が存在する。
用語「皮膚」とは、真皮及び表皮から成る、身体を覆う外側の保護層を言い、汗腺及び脂腺や、毛嚢構造を包含するものと、理解されている。本出願全体を通じ、形容詞「皮膚の」は、これらの用語が用いられた脈絡から見て適宜、一般に皮膚に属するものを言うために用いられている場合があり、そのように理解されたい。
用語「治療指数」とは、LD50/ED50で定義される薬剤の治療指数を言う。
ここで用いる「形質転換細胞」とは、無制限に成長する状態に自発的に変化した細胞を言い、即ち、これらは培養において無限回数、分裂して成長できる能力を獲得したことになる。形質転換細胞は、それらが成長においてコントロールを失っていることに関して、新形成、低分化及び/又は過形成などの用語から特徴付けられよう。
用語「アシルアミノ」は当業で公知であり、一般式:
(但し式中、R9は上に定義した通りであり、そしてR’11は一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル、又は、−(CH2)m−R8(但し式中、及びR8は一個のアリール、一個のシクロアルキル、一個のシクロアルケニル、一個の複素環又は一個の多環を表す;そしてmはゼロか、又は、1乃至8までの範囲の一整数である)で表すことのできる部分を言う。
ここで、用語「脂肪族の基」とは、直鎖、分岐鎖、又は環状の脂肪族炭化水素基を言い、例えばアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基など、飽和及び不飽和の脂肪族の基を含む。
「アルケニル」及び「アルキニル」という術語は、長さが同様であり、上に説明したアルキルに置換があってもよいが、それぞれ二重又は三重結合を含むような不飽和脂肪族の基を言う。
ここで用いられる「アルコキシル」又は「アルコキシ」という用語は、一個の酸素ラジカルを結合させて有する、上に定義した通りのアルキル基を言う。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、t−ブトキシ、等々がある。「エーテル」は一個の酸素によって共有結合した二つの炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにするようなアルキルの置換基は、例えば、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2)m−R8(但し式中、m及びR8は上に説明した通りである)で表すことができるものなど、アルコキシルであるか、又はアルコキシルに似ている。
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、枝分かれ鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含め、飽和脂肪族の基のラジカルを言う。好適な実施例では、直鎖又は枝分かれ鎖アルキルは、その主鎖に30個以下の炭素原子(例えば直鎖の場合はC1−C30、枝分かれ鎖の場合はC3−C30)、より好ましくは20個以下の炭素原子、を有しているとよい。同様に、好適なシクロアルキルは、その環構造内に3から10個の炭素原子、より好ましくはその環構造に5、6又は7個の炭素を有するものである。
さらに、本明細書及び請求の範囲を通じて用いられている「アルキル」(又は「低級アルキル」)という用語は、「置換されていないアルキル」及び「置換されたアルキル」の両者を包含するものとして意図されているが、この後者は、炭化水素の主鎖の一つ又はそれ以上の炭素に付いた水素を置換した置換基を有するアルキル部分を言う。このような置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、エステル、ホルミル、又はケトン)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は、芳香族又はヘテロ芳香族の部分を含めることができる。当業者であれば、炭化水素の鎖上で置換される部分は、適当な場合にそれ自体、置換されてもよいことは理解されよう。例えば、置換アルキルの置換基には、置換された及び置換されていない形のアミノ基、アジド基、イミノ基、アミド基、ホスホリル基(ホスホネート及びホスフィナートを含む)、スルホニル基(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含む)、及びシリル基や、エーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、及びエステルを含む)、−CF3、−CN、等々を含めてもよい。代表的な置換アルキルは下に説明してある。シクロアルキルは、さらに、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CF3、−CN、等々で置換することができる。
炭素数を他に特に明示していない場合、ここで用いられる「低級アルキル」は、上に定義した通りの、しかし1個から10個の炭素、より好ましくは1個から6個の炭素原子をその主鎖構造に有するようなアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」も同様な鎖の長さを有する。本出願全体を通じ、好適なアルキル基は低級アルキルである。好適な実施例では、ここでアルキルとして指定された置換基は低級アルキルである。
「アルキルチオ」という用語は、それに硫黄ラジカルを結合させて有した、上に定義した通りのアルキル基を言う。好適な実施例では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、及び−S−(CH2)m−R8(但し式中、、m及びR8は上に定義したとおりである)のうちの一つで表される。代表的なアルキルチオ基には、メチルチオ、エチルチオ、等々がある。
「アミン」及び「アミノ」という用語は、当業で認識されており、置換されていない及び置換されたアミンの両方を言い、例えば、一般式:
(但し式中、R9、R10及びR’10はそれぞれ個別に一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル、−(CH2)m−R8を表すか、又はR9及びR10は、これらが結合したN原子と一緒に捉えると、環構造内に4個から8個の原子を有するヘテロ環を完成するものであり、R8は一個のアリール、一個のシクロアルキル、一個のシクロアルケニル、一個のヘテロ環、又は一個の多環を表し、そしてmはゼロか、又は1から8までの間の一整数である)で表すことができる部分である。好適な実施例では、R9又はR10の一方のみが、一個のカルボニルであってもよく、例えばR9、R10及びこの窒素が一緒になって一個のイミドを形成していなくともよい。さらにより好適な実施例では、R9及びR10(及び選択に応じてR’10)はそれぞれ個別に一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル、又は−(CH2)m−R8を表す。このように、ここで用いられる「アルキルアミン」という用語は、置換された又は置換されていない一個のアルキルをそれに結合させて有する、上に定義した通りの一個のアミン基を意味し、即ちR9及びR10の少なくとも一方は一個のアルキル基である。
「アミド」という用語はアミノ置換カルボニルとして当業で認識されており、一般式:
(但し式中、R9、R10は上に定義した通りである)によって表すことのできる部分を含む。アミドの好適な実施例には不安定な可能性のあるイミドは含まれないであろう。
ここで用いる用語「アラルキル」とは、一個のアリール基(例えば芳香族又はヘテロ芳香族の基)で置換されたアルキル基を言う。
ここで用いられる「アリール」という用語には、5−、6−及び7−員環の単一環芳香族の基が含まれ、この基にはゼロから4個のヘテロ原子が含まれていてもよく、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン、等々である。環構造内にヘテロ原子を有するようなアリール基はさらに「アリールヘテロ環」又は「ヘテロ芳香族」と言及される場合もある。芳香族の環は、一つ又はそれ以上の環位で、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族の部分、−CF3、−CN、等々など、上述したような置換基で置換されていてもよい。「アリール」という用語には、さらに、二つ又はそれ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通である(これらの環が「縮合している」)ような二つ又はそれ以上の環を有すると共に、環のうちの少なくとも一つが芳香族であり、例えばその他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/又は、ヘテロシクリルであるような、多環式の系が含まれる。
ここで用いられる「炭素環」という用語は、環の各原子が炭素であるような芳香族又は非芳香族の環を言う。
「カルボニル」という用語は当業において認識されており、一般式:
(但し式中、Xは一個の結合であるか、又は一個の酸素又は一個の硫黄を表し、そしてR11は一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル、−(CH2)m−R8、又は薬学的に容認可能な塩を表し、R’11は一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル又は−(CH2)m−R8(但しこの式中、m及びR8は上に定義したとおりである)を表す)で表すことのできる部分を含むものである。Xが一個の酸素であり、そしてR11又はR’11が水素でない場合、この式は一個の「エステル」を表すことになる。Xが一個の酸素であり、R11が上に定義した通りである場合、この部分はここではカルボキシル基と言及されており、特にR11が一個の水素である場合、この式は「カルボン酸」を表すものである。Xが一個の酸素であり、そしてR’11が水素である場合、この式は「ギ酸塩」を表すことになる。一般的には、上の式の酸素原子が硫黄に置換された場合、この式は「チオールカルボニル」基を表すことになる。Xが一個の硫黄であり、R11又はR’11が水素でない場合、この式は「チオールエステル」を表すものである。Xが一個の硫黄であり、R11が水素であれば、この式は「チオールカルボン酸」を表すことになる。Xが一個の硫黄であり、R’11が水素であれば、この式は「チオールホルマート」を表すことになる。他方、Xが一個の結合であり、そしてR11が水素でない場合、上の式は一個の「ケトン」基を表すものである。Xが一個の結合であり、そしてR11が水素である場合、上の式は「アルデヒド」基を表す。
ここで用いられる「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素以外のあらゆる元素の原子を意味する。好適なヘテロ原子はホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄及びセレンである。
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロ環式の基」という用語は、環構造が1個から4個のヘテロ原子を含むような、3員環から10員環構造、より好ましくは3員環から7員環を言う。ヘテロ環はまた多環式であってもよい。ヘテロシクリル基には、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、チノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトン、等々が含まれる。ヘテロ環式の環は、一つ又はそれ以上の位置で、上述したような置換基、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、一個のヘテロシクリル、一個の芳香族又はヘテロ芳香族の部分、−CF3、−CN、又は等々、で置換されていてもよい。
ここで用いられる場合の「ニトロ」という用語は−NO2を意味し、「ハロゲン」は−F、−Cl、−Br又は−Iを指し、「スルフヒドリル」という用語は−SHを意味し、「ヒドロキシル」という用語は−OHを意味し、そして「スルホニル」という用語は−SO2−を意味する。
「ホスホンアミジト」は一般式:
(但し式中、R9及びR10は上に定義した通りであり、Q2はO、S又はNを表し、そしてR48は一個の低級アルキル又は一個のアリールを表し、Q2はO、S又はNを表す)で表すことができる。
「ホスホラジミト」は一般式:
(但し式中、R9及びR10は上に定義した通りであり、そしてQ2はO、S又はNを表す)で表すことができる。
「ホスホリル」は一般的には式:
(但し式中、Q1はS又はOを表し、そしてR46は水素、一個の低級アルキル又は一個のアリールを表す)で表すことができる。
例えばアルキルなどを置換するのに用いる場合、ホスホリルアルキルのホスホリル基は一般式:
(但し式中、Q1はS又はOを表し、そして各R46はそれぞれ個別に水素、一個の低級アルキル又は一個のアリールを表し、Q2はO、S又はNを表す)で表すことができる。Q1が一個のSである場合、そのホスホリル部分は「ホスホロチオエート」である。
「ポリシクリル」又は「多環式の基」という用語は、複数の環が「縮合環である」など、二つ又はそれ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であるような二つ又はそれ以上の環(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリル、など)を言う。隣り合っていない原子を通じて接合された環は「架橋」環と呼ばれる。多環の環のそれぞれは、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、一個のヘテロシクリル、一個の芳香族又はヘテロ芳香族の部分、−CF3、−CN、等々といった上述したような置換基で置換されてもよい。
ここで用いられる「保護基」という文言は、望ましくない化学的変換からそれを保護するような、一個の潜在的反応性官能基の一時的な修飾を意味する。このような保護基の例には、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、及び、それぞれアルデヒド及びケトンのアセタル及びケタルがある。この保護基化学の分野はレビューがなされている(Greene, T.W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991)。
「セレノアルキル」とは、置換されたセレノ基をそれに結合させて有したアルキル基を言う。アルキル上で置換してもよい「セレノエーテル」の例は、−Se−アルキル、−Se−アルケニル、−Se−アルキニル、及び、−Se−(CH2)m−R8(但し式中、m及びR8は上に定義されている)のうちの一つから選択される。
ここで用いる用語「置換された」には、有機化合物の全ての許容可能な置換基が含まれるものと考えられている。広い意味では、この許容可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分岐鎖及び非分岐鎖、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が含まれる。置換基の例には、例えば、上に解説したものがある。許容可能な置換基は、適当な有機化合物にとっては、一つ又はそれ以上でも、同じでも、又は異なっていてもよい。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基を有していても、及び/又は、当該ヘテロ原子の原子価を満たす、ここに解説した有機化合物の何らかの許容可能な置換基を有していてもよい。本発明は、有機化合物の許容可能な置換基による限定を、何らかの態様で受けるとは、意図されていない。
「置換」又は「で置換される」には、このような置換が当該の置換される原子及び置換基の可能な原子価に合致したものであり、この置換の結果、例えば、転位、環化、消失、等々によるなどの変換を自発的には行わないなどのような、安定な化合物が形成されるという、暗黙の前提が含まれると、理解されよう。
「スルファモイル」という用語は当業で認識されており、一般式:
(但し式中、R9及びR10は上に定義した通りである)で表すことのできる部分を含む。
「スルフェート」という用語は当業で認識されており、一般式:
(但し式中、R41は上に定義したとおりである)によって表すことができる部分を含む。
「スルホンアミド」という用語は当業で認識されており、一般式:
(但し式中、R9及びR’11は上に定義した通りである)で表すことのできる部分を含む。
「スルホネート」という用語は当業で認識されており、一般式:
(但し式中、R41は一個の電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである)で表すことができる部分を含む。
ここで用いられている「スルホキシド」又は「スルフィニル」という用語は、一般式:
(但し式中、R44は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、又はアリールのうちのいずれかから選択される)で表すことができる部分を言う。
アルケニル基及びアルキニル基には、同じような置換を行って、例えばアミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニル又はアルキニルなどを生成させることができる。
ここで用いられる場合、例えばアルキル、m、n、等々、各表記の定義は、何らかの構造に二回以上ある場合、同じ構造の他の場所でのその定義とは独立のものであると、意図されている。
用語トリフリル、トシル、メシル、及びノナフリルは当業で認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、メタンスルホニル、及びノナフルオロブタンスルホニル基を言う。用語トリフレート、トシレート、メシレート、及びノナフレートは当業で認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホネートエステル、p-トルエンスルホネートエステル、メタンスルホネートエステル、及びノナフルオロブタンスルホネートエステル官能基、並びに、前記基を含有する分子、を言う。
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、Msという略語は、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、及びメタンスルホニルを表す。当業の有機化学者が用いる省略のより包括的なリストは、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリの各巻の第一版に見られるが、このリストは典型的には、スタンダード・リスト・オブ・アブリビエーションズという標題の表で表されている。前記リストに含まれた略語、及び当業の有機化学者が用いるすべての略語を、言及によってここに編入することとする。
いくつかの本発明の化合物は、特定の幾何学的型又は立体異性体学的型で存在するかも知れない。本発明は、cis型異性体及びtrans型異性体、R-及びS-型エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)異性体、(L)異性体、これらのラセミ混合物、及びこれらの他の混合物を含め、このような化合物はすべて、本発明の範囲内にないと考える。付加的な非対称の炭素原子が、アルキル基などの置換基に存在していてもよい。このような異性体や、それらの混合物はすべて、本発明の包含するところとして、意図されている。
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーを所望の場合、非対称合成法か、又は、キラル補助剤による誘導で作製し、生じたジアステレオマーの混合物を分離し、補助的な基を開裂させて純粋な所望のエナンチオマーを生じさせてもよい。その代わりに、アミノなどの塩基性の官能基か、又は、カルボキシルなどの酸性の官能基を当該分子が含有する場合、適当な光学的に活性な酸又は塩基でジアステレオマーの塩を形成し、その後、この形成されたジアステレオマーを、当業で公知の分別結晶法又はクロマトグラフィによって分離し、純粋なエナンチオマーを回収してもよい。
上述の化合物の同等物として考えられるものの中には、当該化合物の効果に悪影響を与えないような簡単な変更を、置換基の一つ又はそれ以上に行った化合物であって、その他の意味でそれらに相当し、それらと同じ一般的性質(例えばヘッジホッグシグナル伝達を阻害する能力など)を有する化合物が含まれる。一般的には、本発明の化合物は、以下に解説する概略的反応スキームで示した方法か、又は、それらを改変した方法により、入手の容易な開始物質、試薬、及び従来の合成法を用いて、作製できよう。これらの反応では、ここでは言及されてはいないがそれら自体公知である変種を利用することも可能である。
本発明の目的のために、化学元素は、1986−87年、ハンドブック・オブ・ケミストリー・アンド・フィジックス、第67版、表紙中側の元素周期表に基づいて同定されている。さらに本発明の目的のために、用語「炭化水素」、少なくとも一つの水素及び少なくとも一つの炭素原子を有する全ての今日可能な化合物を包含するものと、意図されている。広い意味では、この許容可能な炭化水素には、非環式及び環式、分岐鎖及び非分岐鎖、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物が含まれ、これらは置換されていても、置換されていなくてもよい。
III. 発明の化合物の例
以下に詳述するように、当該法は、例えばここに解説する薬剤スクリーニング検定法など、容易に同定できる様々なステロイド系アルカロイドのいずれを利用して、実施してもよいと考えられる。ステロイド系アルカロイドは大変複雑な含窒素核を有する。本発明で用いる二つのクラスのステロイド系アルカロイドの例は、ソラナム型及びベラトラム型である。しかし、ある好適な実施例では、上記の本発明の方法及び組成物は、シクロパミンのステロイド系アルカロイド環系を有する化合物を利用する。
ベラトラムアルカロイドには、ベラトラム種の植物に見られるベラトラミン、シクロパミン、シクロポシン、ジェルビン(原語:jervine)、及びマルダミンを含め、50種を越える天然発生型がある。ジガデナス(原語:Zigadenus)種のデス・カマス(原語:death camas)も、ジガシン(原語:zygacine)を含め、いくつかのベラトラム型ステロイド系アルカロイドを生ずる。一般的には、ベラトラムアルカロイド(例えばジェルビン、シクロパミン及びシクロポシン)は、フラノピペリジンに対してスピロ型に結合した、修飾されたステロイド骨格からなる。典型的なベラトラム型アルカロイドは、
で表すことができよう。ソラナム型の一例はソラニジンである。このステロイド系アルカロイドは、じゃがいもに見られる二つの重要なグリコアルカロイド、即ちソラニン及びカコニンにとっての核(即ちアグリコン)である。様々なナス、エルサレム・チェリー(原語:Jerusalem cherry)を含む、ソラナム科の他の植物や、トマトも、ソラナム型グリコアルカロイドを含有する。グリコアルカロイドは、アルカロイドの配糖体である。典型的なソラナム型アルカロイドは、
で表すことができよう。これらの構造や、望ましくない副作用のいくつかは、当該構造に何らかの操作を加えることで軽減できるという事実に基づくと、幅広いステロイド系アルカロイドが、本方法で利用できそうなsmoothenedアンタゴニストと考えられる。例えば、本方法で有用な化合物には、下の一般式(I)で表されるステロイド系アルカロイド、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-、もしくはホモ-誘導体がある。
但し上記の式(I)中、原子価及び安定性から見て可能な限りにおいて、
R2、R3、R4、及び R5は、各々の結合相手である環に対する一つ以上の置換を表し、それぞれの位置で独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、=O、=S、アルコキシル、シリルオキシ、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、無水物、シリル、エーテル、チオエーテル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、 セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、糖(例えば、単糖、二糖、多糖、等々)、(例えば酸素でステロイドに結合した)カルバメート、炭酸塩、又は-(CH2) m-R8 を表し;
R6、R7、及びR'7は、存在しないか、又は独立に、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、=O、=S、アルコキシル、シリルオキシ、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、無水物、シリル、エーテル、チオエーテル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は-(CH2) m-R8を表すか、あるいは
R6 及びR7、又は、R7及び R'7は、一緒に捉えると、例えば置換もしくは未置換の一個の環又は多環式の環を形成しており、
ただし前提として、R6、R7、又は R'7 のうちの少なくとも一つは存在し、かつ、例えば当該環の構成原子の一つとして、一個のアミンを含み;
R8 は、一個のアリール、一個のシクロアルキル、一個のシクロアルケニル、一個の複素環、又は一個の多環を表し; そして
m は0以上8以下の整数である。
いくつかの実施例では、R2は、=O、糖 (例えば単糖、二糖、多糖、等々)、(例えばステロイドに酸素で結合した)カルバメート、(例えば酸素でステロイドに結合した)エステル、炭酸塩、又はアルコキシを表す。カルバメート、エステル、炭酸塩、及びアルコキシなどの置換基は、置換されても、又は置換されなくともよく、例えばアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々の官能基をさらに含んでいてもよい。
いくつかの実施例では、R6、R7、又はR'7 のアミンは三級アミンである。
特定の実施例では、R3は、それぞれの位置で、一個の-OH、アルキル、-O-アルキル、- C (O)-アルキル、又は-C (O)-R8である。
特定の実施例では、R4は、それぞれの位置で、存在しないか、又は、OH、=O、アルキル、-O-アルキル、-C (O)-アルキル、又は-C (O)-R8を表す。
特定の実施例では、R6、R7、及び R'7 のうちの二つを一緒に捉えると、例えばフラノピペリジン、例えばペルヒドロフロ [3,2b] ピリジン、ピラノピペリジン、キノリン、インドール、ピラノピロール、ナフチリジン、チオフラノピペリジン、又はチオピラノピペリジンなどの含窒素環を形成している。
いくつかの実施例では、前記の含窒素環は、例えば、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々で置換されたアルキルなど、窒素原子上に環外置換基を有することなどにより、三級アミンを含む。いくつかの実施例では、前記三級アミンの環外置換基は、疎水性置換基である。いくつかの実施例では、この疎水性の環外置換基には、例えばビオチン、ホウ素の両性イオン性錯体、ステロイド系多環など、アリール、ヘテロアリール、 カルボシクリル、 ヘテロシクリル、 又はポリシクリル基が含まれる。いくつかの実施例では、この疎水性の置換基は、主に、5乃至40個の水素以外の原子、より好ましくは5乃至20個の水素以外の原子を含む、アルキル、アミド、アシルアミノ、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、尿素、又は同様の官能基の組合せから成ってもよい。
特定の実施例では、R8は一個のアリール、一個のシクロアルキル、一個のシクロアルケニル、 一個の複素環、又は一個の多環を表し、そして好ましくは R8 は一個のピペリジン、ピロリジン、ピリジン、ピリミジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、等々である。
いくつかの好適な実施例では、上に概説した定義が当てはまり、当該化合物は、下の一般式Iaか、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
いくつかの実施例では、本ステロイド系アルカロイドは、下の一般式(II)、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表され;
但し式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR'7は上に定義したとおりであり、そしてX はO又はSを表すが、好ましくはOである。
いくつかの実施例では、R2 は、=O、糖 (例えば単糖、二糖、多糖、等々)、(例えば酸素でステロイドに結合した) カルバメート、(例えば酸素でステロイドに結合した)エステル、炭酸塩、又はアルコキシを表す。カルバメート、エステル、炭酸塩、及びアルコキシなどの置換基は、置換されても、又は置換されなくともよく、例えばアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々の官能基をさらに含んでもよい。
いくつかの実施例では、R6、R7、又は R'7のアミンは、例えば置換もしくは未置換のアルキルで置換されているなどの、三級アミンである。いくつかの実施例では、前記アミンは、例えばフラノピペリジン系など、R7及びR'7から形成された二環式の環系の一部であり、三番目の置換基は、例えばアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々で置換されたアルキルである。いくつかの実施例では前記三級アミンの環外置換基は、疎水性置換基である。いくつかの実施例では、前記疎水性の環外置換基には、例えば、ビオチン、ホウ素の両性イオン性の錯体、ステロイド系多環、等々、アリール、 ヘテロアリール、 カルボシクリル、ヘテロシクリル、 又はポリシクリル基が含まれる。いくつかの実施例では、前記疎水性置換基は、主に、5乃至40個の水素以外の原子、より好ましくは5乃至20個の水素以外の原子を含む、アルキル、アミド、アシルアミノ、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、尿素、又は同様の官能基の組合せから成ってもよい。
いくつかの好適な実施例では、上に概説した定義が当てはまり、当該化合物は、下の一般式IIaか、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
いくつかの実施例では、本ステロイド系アルカロイドは、下の一般式(III)か、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
但し式中、
R2、R3、R4、R5及びR8は上に定義したとおりであり;
A 及び Bは、単環式又は多環式の基を表し;
Tは、一個のアルキル、一個のアミノアルキル、一個のカルボキシル、一個のエステル、1乃至10個の結合長の一個のアミド、エーテルもしくはアミン結合を表し;
T'は存在しないか、又は、一個のアルキル、一個のアミノアルキル、一個のカルボキシル、一個のエステル、1乃至3個の結合長の一個のアミド、エーテルもしくはアミン結合を表し(但し、T 及び T'が共に存在する場合、T 及び T'は環A又はBと共に、5乃至8環原子が共有結合した閉環を形成する);
R9は、環A又はBに対する一つ以上の置換を表し、それぞれ独立に、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、=O、=S、アルコキシル、シリルオキシ、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、無水物、シリル、エーテル、チオエーテル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は-(CH2) m-R8を表し;そして
n 及びm は、独立に、ゼロ、1又は 2を表し;
但し前提として A、又は、一緒に捉えたときのT、T'及び Bは、少なくとも一個のアミンを含む。
いくつかの実施例では、R2 は、糖 (例えば単糖、二糖、多糖、等々)、(例えば酸素でステロイドに結合した)カルバメート、(例えば酸素でステロイドに結合した)エステル、炭酸塩、又はアルコキシを表す。カルバメート、エステル、炭酸塩、及びアルコキシなどの置換基は、置換されても、又は置換されなくてもよく、例えばアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々の官能基をさらに含んでもよい。
いくつかの実施例では、A、又は、T、T'、及びBのアミンは、例えば一個の置換もしくは未置換アルキルで置換されたり、例えばアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々で置換された、一個の三級アミンである。いくつかの実施例では、この三級アミンの環外置換基は、一個の疎水性置換基であり。いくつかの実施例では、この疎水性環外置換基には、例えばビオチン、一個のホウ素の両性イオン性錯体、一個のステロイド系多環、等々、一個のアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、又はポリシクリル基が含まれる。いくつかの実施例では、この疎水性置換基は、主に、5乃至40個の水素以外の原子、より好ましくは5乃至20個の水素以外の原子を含む、アルキル、アミド、アシルアミノ、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、尿素、又は同様の官能基の組合せから成ってもよい。
いくつかの好適な実施例では、上に概説した定義が当てはまり、当該化合物は、下の一般式IIIaか、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
例えば、本方法は、例えば下の一般式(IV)、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体:
で表されるであろう、ベラトラム型ステロイド系アルカロイド、ジェルビン、シクロパミン、シクロポシン、ムキアミン又はベラトラミンに基づき、smoothenedアンタゴニストを利用することができ、
ただし式中、
R2、R3、R4、R5、R6 及び R9は上に定義したとおりであり;
R22 は存在しないか、又は、一個のアルキル、一個のアルコキシル又は-OHを表す。
いくつかの実施例では、R2は、=O、糖 (例えば、単糖、二糖、多糖、等々)、(例えば酸素でステロイドに結合した)カルバメート 、(例えば酸素でステロイドに結合した)エステル、炭酸塩、又はアルコキシを表す。カルバメート、エステル、炭酸塩、及びアルコキシなどの置換基は、置換されても、又は置換されなくともよく、例えば、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々の官能基をさらに含んでもよい。
いくつかの実施例では、R9は、例えばアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々で置換されるなど、例えば置換もしくは未置換のアルキルなど、窒素上の一個の置換基を含む。いくつかの実施例では、前記三級アミンの環外置換基(例えばR9)は、一個の疎水性置換基である。いくつかの実施例では、この疎水性の環外置換基には、例えばビオチン、ホウ素の両性イオン性錯体、ステロイド環、等々、一個のアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、又はポリシクリル基が含まれる。いくつかの実施例では、この疎水性置換基は、主に、5乃至40個の水素以外の原子、より好ましくは5乃至20個の水素以外の原子を含む、アルキル、アミド、アシルアミノ、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、尿素、又は同様の官能基の組合せから成ってもよい。
いくつかの実施例では、上に概説した定義が当てはまり、当該化合物は、一般式IVaか、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
いくつかの実施例では、本ステロイド系アルカロイドは、下の一般式(V)か、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される(但し式中、R2、R3、R4、R6及びR9 は上に定義したとおりである)。
いくつかの実施例では、R2は、=O、糖 (例えば、単糖、二糖、多糖、等々)、(例えば酸素でステロイドに結合した)カルバメート 、(例えば酸素でステロイドに結合した)エステル、炭酸塩、又はアルコキシを表す。カルバメート、エステル、炭酸塩、及びアルコキシなどの置換基は、置換されても、又は置換されなくともよく、例えば、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々の官能基をさらに含んでもよい。
いくつかの実施例では、R9は、例えばアリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々で置換されるなど、例えば置換もしくは未置換のアルキルなど、窒素上の一個の置換基を含む。
いくつかの実施例では、前記三級アミンの環外置換基(例えばR9)は、一個の疎水性置換基である。いくつかの実施例では、この疎水性の環外置換基には、例えばビオチン、ホウ素の両性イオン性錯体、ステロイド環、等々、一個のアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、又はポリシクリル基が含まれる。いくつかの実施例では、この疎水性置換基は、主に、5乃至40個の水素以外の原子、より好ましくは5乃至20個の水素以外の原子を含む、アルキル、アミド、アシルアミノ、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、尿素、又は同様の官能基の組合せから成ってもよい。
いくつかの好適な実施例では、上に概説した定義が当てはまり、当該化合物は、一般式Vaか、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
別のクラスのsmoothenedアンタゴニストは、例えば下の一般式(VI)(但し式中、R2、R3、R4、R5及びR9は上に定義したとおりである)か、又はその不飽和型、及び/又はそのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表されるなど、ベルチシン(原語:verticine)及びジガシン(原語:zygasine)に似たベラトラム型ステロイド系アルカロイドに基づくものであろう。
いくつかの実施例では、R2は、=O、糖 (例えば、単糖、二糖、多糖、等々)、(例えば酸素でステロイドに結合した)カルバメート 、(例えば酸素でステロイドに結合した)エステル、炭酸塩、又はアルコキシを表す。カルバメート、エステル、炭酸塩、及びアルコキシなどの置換基は、置換されても、又は置換されなくともよく、例えば、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々の官能基をさらに含んでもよい。
いくつかの好適な実施例では、上に概説した定義が当てはまり、当該化合物は、下の一般式VIaか、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
いくつかの実施例では、本ステロイド系アルカロイドは、下の一般式(VII)か、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
但し式(VII)中、R2、R3、R4、R5及びR9は上に定義したとおりである。
いくつかの実施例では、R2は、=O、糖 (例えば、単糖、二糖、多糖、等々)、(例えば酸素でステロイドに結合した)カルバメート、(例えば酸素でステロイドに結合した)エステル、炭酸塩、又はアルコキシを表す。カルバメート、エステル、炭酸塩、及びアルコキシなどの置換基は、置換されても、又は置換されなくともよく、例えば、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アミド、アシルアミノ、カルボニル、エステル、カルバメート、尿素、ケトン、スルホンアミド、等々の官能基をさらに含んでもよい。
いくつかの好適な実施例では、上に概説した定義が当てはまり、当該化合物は、下の一般式VIIaか、又は、その不飽和型、及び/又は、そのセコ-、ノル-もしくはホモ-誘導体で表される。
いくつかの実施例では、当該アンタゴニスト及び活性化剤は、smoothenedに対するそれらの選択性に基づいて、選択できる。この選択性は、smoothened経路、対、他のステロイド媒介型経路(例えばテストステロン又はエストロゲンが媒介する活性など)のものや、例えばptc(例えばptc-1、ptc-2など)又はヘッジホッグ(例えばShh、Ihh、Dhh、等々)に対してアイソタイプ特異的であるなど、特定のヘッジホッグ/ptc/smoothened経路に対する選択性などであってもよい。例えば、当該方法は、アルドステロン、アンドロスタン、アンドロステン、アンドロステンジオン、アンドロステロン、コレカルシフェロール、コレスタン、コール酸、コルチコステロン、コルチゾール、アセテート、コルチゾン、酢酸コルチゾン、デオキシコルチコステロン、ジギトキシゲニン、エルゴカルシフェロール、エルゴステロール、エストラジオール-17-α、エストラジオール-17-β、エストリオール、エストラン、エストロン、ヒドロコルチゾン、ラノステロール、リトコール酸、メストラノール、β-メタゾン、プレドニゾン、プレグナン、プレグネノロン、プロゲステロン、スピロノラクトン、テストステロン、トリアムシノロン、及びこれらの誘導体などのステロイドの生物活性に大きく干渉しないステロイド系アルカロイドを、これらの活性が、ptc関連シグナル伝達に少なくとも無関係である限りにおいて、利用してもよい。
ある一つの実施例では、本方法で用いる当該のステロイド系アルカロイドは、例えばエストロゲン、テストステロン、受容体等々に結合しないなど、核内受容体スーパーファミリーのメンバーに対するそのkdが、1μMを越え、そしてより好ましくは1mMを越える。好ましくは、当該smoothenedアンタゴニストは、生理濃度(例えば1ng乃至1mg/kgの範囲内)では何らエストロゲン性活性を有さないとよい。
この態様では、特定のステロイド系アルカロイドクラスのメンバーに伴うであろう望ましくない副作用を軽減できる。例えば、ここに解説した薬剤スクリーニング検定法を利用し、当該ステロイド系アルカロイドにコンビナトリアル・ケミストリ及びメディシナル・ケミストリの技術を応用すると、性格の変化、短命、心臓血管疾患及び血管閉塞、臓器毒性、高血糖症及び糖尿病、クッシング様顔貌、「消耗」症候群、ステロイド性緑内障、高血圧、消化性潰瘍、及び、感染症への易罹患性上昇などの望ましくないマイナスの副作用を軽減する方法となる。いくつかの実施例では、例えば精子形成を選択的に阻害するのに本方法を用いる場合などには、ジェルビンに関する催奇形性活性を軽減しておくのが、有利であろう。
ある好適な実施例では、当該のアンタゴニストは、スピロソラン、トマチジン、ジェルビン、等々の以外のステロイド系アルカロイドである。
いくつかの実施例では、当該ステロイド系アルカロイドは、ある一つのpatched経路(ptc-1、ptc-2)に対する方が、別の経路に対するよりも例えば10倍、そしてより好ましくは少なくとも100倍乃至1000倍も、より選択的であるなど、ある一つのpatchedアイソフォームに対する方が次のものに対するよりも、より選択的であることを理由に、利用対象に選択される。同様に、当該ステロイド系アルカロイドは、ある一つの(多様なアイソフォームが存在する場合)野生型smoothenedたんぱくに対して、又は、例えば野生型smoothenedに比較したときの活性化smoothened変異体に対して、例えば10倍、そしてより好ましくは少なくとも100乃至1000倍も、より選択的であるなど、ある一つのsmoothenedアイソフォームに対する方が、次のものに対するよりも、より選択的であることを理由に、利用対象に選択される。いくつかの実施例では、当該方法を、ヘッジホッグ/smoothened経路の他の部分に作用する成長因子及び/又は栄養因子の投与と組み合わせて、行うことができる。例えば、当該方法に、例えばcAMPの細胞内レベルを上昇させる又は低下させるなど、cAMPレベルを変調する作用物質による処置を含めることができる。
実施例の一つでは、当該方法でsmoothenedアンタゴニストを利用し、このsmoothenedアンタゴニストの効果を高めるために、組み合わせて用いる作用物質に、cAMPレベルを上昇させる。
例えば、アデニル酸シクラーゼを活性化すると考えられる化合物には、フォルスコリン(FK)、コレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)、プロスタグランジン(例えばPGE-1及びPGE-2)、コルフォルシン及びβ-アドレナリン作動性受容体アゴニストがある。β-アドレナリン作動性受容体アゴニスト(ここでは「β-アドレナリン作動物質アゴニスト」と言及することもある)には、アルブテロール、バンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、デノパミン、ジオキセテドリン、ドペキセミン、エフェドリン、エピネフリン、エタフェドリン、エチルノルエピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イボパミン、イソエタリン、イソプロテレノール、メブテロール、メタプロテレノール、メトキシフェンアミン、ホルエピネフリン、オキシフェドリン、ピルブテロール、プレナルテロール、プロカテロール、プロプラノロール、プロトキロール、キテレノール、レプロテロール、リジテロール、リトドリン、サルメファモール、ソテレノール、サルメテロール、テルブタリン、トレトキノール、ツロブテロール、及びキサモテロールがある。
cAMPホスホジエステラーゼを阻害すると考えられる化合物には、アムリノン、ミルリノン、キサンチン、メチルキサンチン、アナグレリド、シロスタミド、メドリノン、インドリダン、ロリプラム、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、ケレリトリン、シロスタゾール、糖質コルチコイド、グリセオール酸、エタゾレート、カフェイン、インドメタシン、パプベリン、MDL12330A、SQ 22536、GDPssS、クロニジン、タイプIII及びタイプIVホスホジエステラーゼ阻害剤、ペントキシフィリン、テオフィリン、テオブロミン、ピロリジノン及びフェニルシクロアルカン及び(PCT公報 WO 92/19594及びWO 92/10190に解説された)シクロアルカン誘導体などのメチルキサンチン、リソフィリン、及びフェノキサミン、がある。
本方法で有用と考えられるcAMPの類似体には、ジブチリルcAMP(db-cAMP)、(8- (4)-クロロフェニルチオ)-cAMP (cpt-cAMP)、8- [ (4-ブロモ-2, 3ジオキソブチル)チオ]-cAMP、2- [(4-ブロモ-2, 3-ジオキソブチル) チオ]-cAMP、 8-ブロモ-cAMP、ジオクタノイル-cAMP、Sp-アデノシン 3' : 5'-環状ホスホロチオエート、8-ピペリジノ-cAMP、N6-フェニル-cAMP、 8-メチルアミノ-cAMP、8- (6-アミノヘキシル) アミノ-cAMP、2'-デオキシ-cAMP、N6, 2'-O-ジブトリル-cAMP、N6, 2'-O-ジスクシニル-cAMP、N6-モノブチリル-cAMP、2'-O-モノブチリル-cAMP、2'-O-モノブトリル-8-ブロモ-cAMP、N6-モノブトリル-2'-デオキシ-cAMP、及び2'-O-モノスクシニル-cAMPがある。
cAMPのレベル又は活性を低下させると考えられる化合物には、プロスタグランジルイノシトール環状リン酸(環状PIP)、エンドセリン(ET)-1及び-3、ノルエピネプリン、K252a、ジデオキシアデノシン、ジノルフィン、メラトニン、百日咳毒素、スタウロスポリン、Giアゴニスト、MDL 12330A、SQ 22536、GDPssS及びクロニジン、ベータ-遮断剤、及び、Gたんぱく共役受容体のリガンド、がある。更なる化合物が、米国特許第5,891,875号、第5,260,210号、及び第5,795,756号に解説されている。
本方法で有用な上に列挙した化合物を修飾して、その化合物の生物学的利用脳、活性、又は他の薬理学的に関連する性質を高めてもよい。例えば、フォルスコリンは式:
を有する。フォルスコリンの親水性を、所望の生物活性を著しく減衰させることなく高めると発見されたfフォルスコリンの修飾法には、C6及び/又はC7のヒドロキシルを(アセチル基を除いた後に)親水性アシル基でアシル化する方法がある。親水性アシル基でC6をアシル化する化合物の場合、選択に応じ、C7を脱アセチル化してもよい。適した親水性のアシル基には、構造−(CO)(CH2)nX(但し式中、X はOH 又はNR2であり ; Rは 水素、一個のC、-C4 アルキル基であるか、又は、二つのRを一緒に捉えると、(ヘテロ原子を含んでもよい)3乃至8個の原子、好ましくは5乃至7個の原子を含む一個の環(ヘテロ原子を含む場合、例えばピペラジン又はモルホリン環など)を形成し;nは、1乃至6、より好ましくは1乃至4、さらにより好ましくは1乃至2の整数である)を有する基がある。他の適した親水性アシル基には、一個の複素環側鎖を有するアミノ酸を含め、親水性アミノ酸又はその誘導体、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、等々、がある。当業で公知の他の可能な親水性アシル側鎖で修飾された、フォルスコリン又は上に列挙した他の化合物は、容易に合成でき、本方法での活性について検査できよう。
同様に、上に列挙した化合物のいずれかの変種又は誘導体も、cAMPレベルを低下させ、smoothened活性化剤の活性を強めるためなどに、c本方法のcAMPアンタゴニストとして有効であろう。当業者であれば、このような誘導体を容易に合成でき、適した活性について検査できるであろう。
IV. 方法及び組成物の応用例
本発明の一態様は、当該方法に基づき、そして状況から見て妥当な方法で、上に記載した化合物に細胞を接触させることにより、正常細胞、又は、ptcの機能が欠損した、ヘッジホッグの機能が亢進したもしくはsmoothenedの機能が亢進した細胞など、ある細胞の分化後状態、生存、及び/又は、増殖、を変調する方法に関するものである。
例えば、脊椎動物においてヘッジホッグ、ptc、及びsmoothenedが、分化後組織の秩序ある空間的配置に明らかに広く関与しているという発見を鑑みると、当該方法を、インビトロ及びインビボの両方で、幅広い多様な脊椎動物組織を発生及び/又は維持するプロセスの一部として利用できるかもしれないと、本発明は考察する。ある組織の増殖又は分化に関して誘導的であるか、抗誘導的であるかに関係なく、当該化合物は、上述の製剤のいずれか適したものであろう。
例えば、当該化合物を用いた本方法を、細胞の増殖又は分化をコントロールしたいような細胞培養技術に利用できる。当該化合物を、ptcの機能が欠損した、ヘッジホッグの機能が亢進した、又は、smoothenedの機能が亢進した細胞を狙った方法で、利用してもよい。インビトロ神経培養系は、神経発生の研究や、神経成長因子(NGF)、毛様体栄養因子(CNTF)、及び大脳由来神経栄養因子(BDNF)などの神経栄養因子の同定にとって、基本的かつ不可欠なツールであることが証明されている。本方法の利用法の一つは、新しい神経細胞及び膠細胞を発生させるのにこのような培養で利用するなど、神経幹細胞の培養における利用であろう。本方法のこのような実施例では、培養時の神経幹細胞の増殖速度を変化させたり、及び/又は、分化速度を変化させたり、又は、分化が最終に来た特定の神経細胞の培養物の一体性を維持するために、本発明の化合物に培養細胞を接触させてもよい。一実施例では、当該方法を、例えば感覚ニューロン、又は代替的には運動ニューロンを培養するのに利用できる。このような培養神経細胞は、便利な検定系として、また、治療的処置用の移植可能な細胞の供給源として、利用できる。
本発明に基づくと、多数の腫瘍形成性神経前駆細胞をインビトロで永続化でき、それらの増殖速度及び/又は分化速度を、本発明の化合物との接触により、左右できる。概略的には、神経前駆細胞を動物から単離するステップと、これらの細胞を、好ましくは成長因子の存在下で、インビトロ又はインビボで永続化するステップと、これらの細胞を当該化合物に接触させることにより、これらの細胞の特定の神経表現型、例えば神経細胞及び膠細胞など、への分化を調節するステップと、を含む方法を提供する。
前駆細胞は、それらの分化が必要になるまでこの前駆細胞を抑制状態に維持する収縮的な阻害的影響下に置かれていると考えられている。しかしながら、これらの細胞を増殖させられた最近の研究では、分化が最終に来て非分裂性となった神経細胞とは異なり、これらは何回でも生成させることができ、また、神経変性疾患を持つ異種ホスト及び自己由来ホストに移植するのに大変適していることが、分かっている。
「前駆細胞」とは、無制限に分裂でき、特定の条件下では、神経細胞及び膠細胞など、最終分化娘細胞を生ずることができる寡少能又は多能の幹細胞を意味する。これらの細胞は、異種又は自己由来のホストへの移植に利用できる。異種とは、前駆細胞が元々由来したもとの動物とは異なるホストを意味する。自己由来とは、当該細胞が元々由来したのと同一のホストを意味する。
細胞は、いかなる動物の胚、出生後、幼若体又は成体神経組織から採取してもよい。動物とは、神経組織を含有する多細胞動物を意味する。より具体的には、あらゆる魚類、は虫類、鳥類、両生類又は哺乳類等々を意味する。最も好ましいドナーは哺乳類、特にマウス及びヒトである。
異種のドナー動物の場合、動物を安楽死させ、対象となる脳及び特定の部位を無菌の手法を用いて摘出する。特に対象となる脳部位には、ホストの脳の変性部位の機能を復元させるのに役立つであろう前駆細胞が得られる部位がある。これらの領域には、大脳皮質、小脳、中脳、脳幹、脊髄及び脳室組織を含む中枢神経系(CNS)、及び、頚動脈小体及び副腎髄質を含む末梢神経系(PNS)がある。より具体的には、これらの部位には、基底核、好ましくは、尾状核及び果核から成る線条、又は、例えば淡蒼球、視床下核、アルツハイマー病患者で変性して見つかる基底核、又は、パーキンソン病患者で変性して見つかる黒質緻密部がある。
ヒトの異種神経前駆細胞は、随意の妊娠中絶から得られる胎児組織や、又は、出生後、幼児又は成人の臓器ドナーから得てもよい。自己由来神経組織は、生検で得ても、又は、神経組織を除去する神経外科術、具体的にはてんかん外科術、そしてより具体的には側頭葉摘出術及び海馬摘出術中の患者から得ることができる。
細胞は、ドナー組織から、その組織の結合細胞外基質から個々の組織を分離することで、得ることができる。分離は、トリプシン、コラゲナーゼ、等々の酵素により処置や、又は、鈍器などを用いた物理的な分離法を利用したり、又は、メスを用いて刻んだ組織から特定の細胞種を増生させるなどを含め、いかなる公知の手法を用いて行ってもよい。胎児の細胞を分離するには、組織培地で行うこともできるが、幼若体及び成体細胞の分離を行うのに適した培地は人工脊髄液(aCSF)である。正規のaCSFは、124 mM NaCI、5 mM KCI、1.3 mM MgCl2、2 mM CaC12、26 mM NaHC03、及び10 mM D-グルコースを含有する。低Ca2+ aCSF は、 MgCl2が3.2 mM の濃度であり、そして CaC12が 0. 1 mMの濃度であることを例外として同じ成分を含有する。
切り離した細胞は、グルタミン及び他のアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの細胞内代謝に必要な補助成分と、トランスフェリン等々の有用なたんぱくを含有する、MEM、DMEM、RPMI、F-12、等々を含め、細胞成長を支援できる公知の培地内に配置することができる。培地にはさらに、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、等々の、酵母、細菌及びカビによる汚染を防ぐ抗生物質を含めてもよい。場合によっては、培地に、ウシ、ウマ、ニワトリ、等々を由来とする血清を含めてもよい。細胞にとって特に好ましい培地は、DMEM及びF-12の混合物である。
培養条件は、生理条件に近いものでなくてはならない。培地のpHは生理的pHに近くなければならず、好ましくはpH6乃至8、より好ましくはpHの近く、さらに特に具体的には約pH7.4であるとよい。細胞を培養する温度は、生理温度に近くなければならず、好ましくは30℃乃至40℃、より好ましくは32℃乃至38℃、そして最も好ましくは35℃乃至37℃である。
細胞は懸濁液又は固定した基質内で成長させることができるが、前駆細胞の増殖は、好ましくは、懸濁液で行うのが、「ニューロスフィア(原語:neurosphere)」の形成により多数の細胞を生じさせるのに良い(例えば Reynolds et al. (1992) Science 255: 10701709;及びPCT公報W093/01275、W094/09119、W094/10292、及び W094/16718を参照されたい)。懸濁液細胞を増殖(又はスプリット)させる場合、フラスコを良く振盪して、ニューロスフィアをフラスコの底の角に落ち着かせる。次に、このスフィアを50mlの遠心分離試験管に移し、低速で遠心分離する。媒質を吸引し、成長因子を加えた少量の媒質内に細胞を再懸濁させ、 細胞を機械的に切り離し、別のアリクオートの媒質内に再懸濁させる。
細胞の培養基懸濁液には、前駆細胞の増殖を可能にする何らかの成長因子を補い、細胞を指示できる何らかの容器に接種するが、この容器は、上述したように、好ましくは培養フラスコ又はローラーボトルである。細胞は典型的には37℃のインキュベータ内では3乃至4日間で増殖するが、増殖は、細胞を切り離し、成長因子を含有する新鮮な培養基中に再懸濁させたなら、いつの時点でも再開させることができる。
基質がない場合には、細胞はフラスコの床から浮き上がって懸濁液中で増殖を続け、未分化細胞による中空のスフィアを形成する。インビトロでほぼ3乃至10日後、この増殖中のクラスタ(ニューロスフィア)を2乃至7日ごとに、そしてより具体的には2乃至4日ごとに、静かに遠心分離して、成長因子を含有する培養基に再懸濁させる。
インビトロで6乃至7日後、ニューロスフィアを鈍器で、より具体的にはニューロスフィアをピペットですりつぶして、物理的に切り離すことで、ニューロスフィア中の個々の細胞を分離する。切り離したニューロスフィアから得られた単個細胞を、成長因子を含有する培養基に懸濁させるが、これら細胞の培養中の分化は、当該化合物が存在する状態でこれら細胞をプレーティングする(又は再懸濁させる)ことで、コントロールできる。
当該化合物の他の用途の実例を挙げるには、中枢神経系治療の新しい方法として、脳内移植が浮上してきたことを注目されたい。例えば、損傷した脳組織を修復させる方法の一つに、胎児期又は新生児期の動物から取った細胞を成体の脳に移植する方法がある(Dunnett et al.(1987) J Exp Biol 123 : 265-289;及びFreund et al. (1985) J Neurosci 5 : 603-616)。様々な脳内領域の胎児期神経細胞を成体脳に成功裏に組み込むことができ、このような移植により、行動上の欠陥を軽減できる。例えば、基底核へのドーパミン作動性の突起に損傷があると誘導される運動障害は、胚のドーパミン作動性ニューロンの移植によって防ぐことができる。新皮質への損傷後に失われる複雑な認知機能も、胚性皮質細胞を移植することで部分的に復元させられる。当該方法を用いると、培養中の成長状態を調節することができ、又は、胎児組織、特に神経幹細胞を用いた場合には、幹細胞の分化速度を調節することができる。
本発明における幹細胞は公知である。例えば、数々の神経堤細胞が同定されているが、そのなかのいくつかは多能であり、非委任神経堤細胞であると思われるが、他には、知覚ニューロンなど、一種類の細胞しか生じないものもあり、委任前駆細胞であると思われる。本発明でこのような幹細胞を培養するのに用いる化合物の役割は、非委任前駆細胞の分化を調節したり、又は、委任前駆細胞の発生上の運命を、最終分化細胞になるような制限を調節したりすることである。例えば、本方法は、インビトロでは、神経膠細胞、シュワン細胞、クロム親和性細胞、コリン作動性交感神経性又は副交感神経性ニューロンや、ペプチド作動性及びセロトニン作動性ニューロンへの神経堤細胞の分化を調節するために、利用することができる。当該化合物は単独でも利用できるが、又は、ニューロン前駆細胞の特定の分化上の運命を特に高めるよう作用する他の神経栄養因子と併用することもできる。
当該化合物が存在する状態で培養した細胞を移植することに加え、本発明のさらに別の態様では、中枢神経系及び末梢神経系の両方で、ニューロン及び他の神経細胞の成長速度を調節するために当該化合物を治療的に応用することを、考察する。ptc、ヘッジホッグ、及びsmoothenedは、神経系の発達中、そしておそらくは成体状態においても、ニューロンの分化を調節できる。このことから、場合によっては、当該化合物により、正常細胞の維持、機能的性能、及び老化;化学的もしくは機械的に損傷した細胞における修復及び再生のプロセス;及び特定の病的状態にある変性の処置、に関して、成体ニューロンのコントロールを、簡単に行えるようになると、期待してよいことが分かる。このような理解に基づくと、本発明は、具体的には、(i)外傷性損傷、化学的損傷、血管の損傷及び欠陥(例えば脳卒中を原因とする虚血など)や、感染性/炎症性かつ腫瘍誘導性の損傷も含めた、急性、亜急性、又は慢性の神経系に対する損傷;(ii) アルツハイマー病を含め、神経系の老化;(iii)パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病性ニューロパシー、等々や脊髄小脳変性症を含め、神経系の慢性神経変性性疾患;及び(iv)多発性硬化症を含め、神経系の、又は、神経系が罹患する慢性免疫疾患、が原因の神経状態の(防止及び/又は重篤度の軽減)の処置プロトコルに、本方法を応用することを考察するものである。
該当する場合には、本方法はさらに、中枢及び末梢神経の損傷を修復するための神経プロテーゼを作製するのにも、利用できる。具体的には、潰れたもしくは切断された軸索に、プロテーゼ器具を利用して挿管する場合、当該化合物をこのプロテーゼ器具に加えて、樹状突起の成長及び再生速度を調節することができる。神経案内チャンネルの例は米国特許第5,092,871号及び第4,955,892号に説かれている。
別の実施例では、本方法を、中枢神経系に起きるものなどの新形成性又は過形成性形質転換の処置に利用できる。例えば、当該化合物を利用して、このような形質転換細胞を分裂終了細胞又はアポトーシス細胞にさせることができる。従って、本方法は、例えば悪性神経膠腫、髄膜腫、髄芽細胞腫、神経外胚葉腫瘍、及び上衣細胞腫などの、処置の一部として利用してもよい。
好適な実施例では、本方法を、悪性髄芽細胞腫及び他の原発性中枢神経系悪性神経外胚葉腫瘍の処置計画の一部として、利用できる。
いくつかの実施例では、当該方法を、髄芽細胞腫の処置プログラムの一部として用いる。原発性脳腫瘍である髄芽細胞腫は、小児の最もよくある脳腫瘍である。髄芽細胞腫は後頭蓋窩に生ずる原始的な神経外胚葉腫瘍である。これらは、全小児脳腫瘍の約25%を占める(Miller)。組織学的には、これらは通常正確なロゼット型に並んだ小円形細胞腫瘍であるが、星状細胞、上衣細胞又はニューロンが何らかの分化を起こした状態であることもある (Rorke; Kleihues)。 PNET'は松果体(松果体芽腫)及び大脳を含め、他の脳領域に生ずることもある。テント上領域に腫瘍が生じた患者は、一般的には、PF患者よりは予後は良くない。
髄芽細胞腫/PNETは、切除術後の中枢神経系のどこにでも再発することが知られており、骨にまで転移することもある。前処理評価には、従って、「転移の見逃し」がないように、脊髄検査が含まれる。この目的では、ガドリニウムで画像を向上したMRIが骨髄撮影法に広く取って代わった上、脳脊髄液細胞検査も、日常的な手法として術後に行われている。
他の実施例では、当該方法を、上衣細胞腫の処置プログラムの一部として用いる。上衣細胞腫は、小児における小児脳腫瘍のほぼ10%を示す。肉眼では、これらは、脳室の上皮裏打ちから生ずる腫瘍であり、顕微鏡で見ると、ロゼット、管、及び血管周囲にあるロゼットを形成している。上衣細胞腫があるとされた51人の子供のCHOPシリーズでは、4分の3が組織学的には良性だった。約3分の2が、第4脳室の領域から生じていた。3分の1がテント上領域にあった。出現年齢は、SEERデータやCHOPのデータによれば、出生から4歳までの間にピークを迎えていた。中央の年齢は約5歳であった。この疾患を持つ子供の多くは乳児であるため、これらにはしばしば、多峰性の治療が必要である。
本発明の更に別の態様は、ptc、ヘッジホッグ、及び smoothened が、上述したニューロン分化だけでなく、他の脊椎動物の器官形成経路に関与する形態発生シグナルに関与しており、他の外胚葉パターニングや中胚葉及び内胚葉の両方の分化プロセスにおける明白な役割を有しているという、当業での観察に関するものである。従って、一つ以上の当該化合物を含んで成る組成物は、ニューロン以外の組織の生成及び維持が関与する細胞培養及び治療法の両方にも利用できることは、本発明の考察するところである。
一実施例では、本発明は、ptc、ヘッジホッグ、及び smoothened が、原腸を由来とする消化管、肝臓、肺、及び他の臓器の形成に関与する幹細胞の発生のコントロールに明らかに関与しているという発見を利用するものである。Shh は、腸の形態発生にとって重要な内胚葉から外胚葉への誘導シグナルとして働く。従って、例えば、本方法の化合物を、正常な肝臓の複数の代謝機能を持たせることのできる人工加増の発生及び維持を調節するのに、利用できる。一実施例では、当該方法を用いて、消化管幹細胞の増殖及び分化を調節しながら肝細胞培養物を形成させることができ、この肝細胞培養物を、細胞外マトリックスを凝集させるのに利用したり、又は、生体適合性のポリマー内に被包して、移植可能かつ体外由来の人工肝臓を形成することができる。
別の実施例では、当該化合物の治療用組成物を、人工肝臓や、胚性肝臓構造の移植と併用することで、移植肝臓組織の腹腔内移植体の取り込み、血管形成、及びインビボでの分化及び維持を調節することができる。
さらに別の実施例では、当該方法を治療的に利用して、物理的、化学的又は病理学的な損傷後のこのような臓器を調節することができる。例えば、当該化合物を含んで成る治療用組成物を、部分肝切除術後の肝修復に利用できる。
胚の腸からの膵臓及び小腸の発生は、腸の内胚葉細胞と中胚葉細胞との間の細胞間シグナル伝達に依存する。具体的には、腸の中胚葉が平滑筋に分化していくには、隣接する内胚葉細胞からのシグナルに依存することが、示唆されている。胚後腸で内胚葉由来のシグナルを伝達している物質だとされている候補の一つが、ソニック・ヘッジホッグである。例えば、Apelqvist et al. (1997) Curr Biol 7: 801-4を参照されたい。このShh遺伝子は、胚の腸内胚葉全体で発現するが、例外的に膵臓芽内胚葉では、代わりに、初期膵臓発生に必須の調節物質であるホメオドメインたんぱくIpfl/Pdxl (インシュリンプロモータ因子 1/膵臓及び十二指腸ホメオボックス1)が高レベルで発現する。上記の Apelqvist 氏らは、胚の腸管でShhが差示的に発現することが、周囲の中胚葉が、小腸及び膵臓という特化した中胚葉由来体へ分化していく事象をコントロールしているのかどうかを調べた。これを調べるために、彼らは Ipfl/Pdxl遺伝子のプロモータを用いて、Shhを発生中の膵上皮で選択的に発現させた。Ipfl/Pdxl-Shhトランスジェニックマウスでは、膵臓中胚葉は、膵間葉及び脾臓へとなるのではなく、腸管の特徴である平滑筋及び間質細胞へと成長していった。また、Shhに暴露した膵臓外植片は、同様なプログラムの腸管分化を行った。これらの結果は、内胚葉由来のShhが差示的に発現することが、隣接する中胚葉の運命を、腸管の異なる領域でコントロールしていることの証拠である。
従って、本発明の関係では、インビボ及びインビトロの両方で膵組織の増殖及び/又は分化をコントロール又は調節するのに、当該化合物を利用できることが、考察されている。
本発明の阻害剤が治療上の利益をもたらすと考えられる病的な細胞増殖及び分化状態には、様々なものがあるが、一般的な戦略は、例えば、異常なインシュリン発現の補正、又は、分化の変調である。しかしながら、より一般的には、本発明は、膵細胞を当該阻害剤に接触させることにより、この細胞の分化後状態を誘導及び/又は維持したり、生存率を高める及び/又は増殖を左右したりする方法に、関するものである。例えば、膵組織の秩序ある空間的配置が形成されるのに、ptc、ヘッジホッグ、及びsmoothenedが明らかに関与していることを鑑みて、このような組織をインビトロ及びインビボの両方で生成及び/又は維持する技術の一部として、当該方法を利用できるであろうと、本発明では考える。例えば、ヘッジホッグの機能の変調を、β細胞の生成及び維持を含む細胞培養及び治療法の両方で利用したり、さらに、おそらくは、消化管、脾臓、肺、泌尿生殖器(例えば膀胱)、及び、原腸を由来とする他の器官からの組織の発生及び維持をコントロールするなど、膵組織以外の組織にも、利用できるであろう。
一実施例では、膵組織に罹患した過形成性及び新形成性疾患、とくに膵臓細胞の異常な増殖を特徴とするもの、の処置に、本方法を利用できる。例えば、膵臓癌は膵細胞の異常な増殖を特徴とし、膵臓のインシュリン分泌能力に変化が起きる。例えば、膵臓カルシノーマなど、いくつかの膵臓過形成症では、β細胞の機能不全が起きたり、又は、島細胞の量が減少するために、低インシュリン血症が起きることがある。疾患の進行中にptc、ヘッジホッグ、及びsmoothenedシグナル伝達が異常であることの指標が得られる限り、抗腫瘍治療後の組織の再生を高めるのに、当該調節物質を利用することができる。
さらに、多様な時点でヘッジホッグシグナル伝達特性を操作する技術は、インビボ及びインビトロの両方で、膵組織を成形/修復する戦略の一部として、有用であろう。実施例の一つでは、本発明は、膵組織の発生調節におけるptc、ヘッジホッグ、及びsmoothenedの明らかな関与を利用する。一般的には、本方法を、物理的、化学的又は病理学的損傷後の膵臓を調節するのに治療的に利用することができる。さらに別の実施例では、当該方法を細胞培養技術に応用することができ、特に、膵臓のプロテーゼ器具の初期作製を向上させるのに、利用してもよい。例えばヘッジホッグ活性を変更するなどにより、膵組織の増殖及び分化を操作する技術は、培養組織の性質をより入念にコントロールする手段になる。実施例の一つでは、例えば Aebischer らの米国特許第4,892,538号、Aebischerらの米国特許第5,106,627号、Lim の米国特許第4,391,909号、及びSeftonの米国特許第4,353,888号に説かれた被包器具に利用できるものなど、β島細胞を必要とするプロテーゼ器具の作製を増強するのに、当該方法を利用できる。膵島細胞の初期前駆細胞は多能であり、明らかに、それらが最初に現れた時点から、全ての島特異的遺伝子を同時に活性化する。発生が進むにつれ、インシュリンなどの島特異的ホルモンの発現は、成熟島細胞に特徴的な発現パターンに制限されていく。しかしながら、成熟島細胞の表現型は、成熟β細胞で胚の形質が再度出現することが観察できるように、培養では安定ではない。当該化合物を利用することで、これら細胞の分化経路又は増殖指数を調節することができる。
さらに、膵組織の分化状態の操作は、埋没、血管形成を促進したり、インビボでの分化及び維持を促進するために、人工膵臓の移植と合わせて利用することができる。例えば、組織分化を左右するのにヘッジホッグ機能を操作する方法は、移植片の生育力を維持する手段として、利用できる。
Bellusci et al. (1997) Development 124: 53 は、ソニック・ヘッジホッグが、インビボで肺間葉細胞の増殖を調節することを報告している。従って、本方法を用いて、肺気腫の処置でなど、肺組織の再生を調節することができる。
Fujita et al. (1997) Biochem Biophys Res Commun 238: 658 は、ソニック・ヘッジホッグが、ヒト肺扁平上皮癌及び腺癌細胞で発現していることを、報告した。さらに、ソニック・ヘッジホッグの発現は、ヒト肺扁平上皮癌組織でも検出されたが、同じ患者の正常な肺組織では検出されなかった。彼らはまた、ソニック・ヘッジホッグがBrdUの癌細胞への取り込みを刺激し、それらの細胞成長を刺激するが、抗Shh-Nがそれらの細胞成長を阻害したことを観察した。これらの結果は、このような形質転換肺組織の細胞成長に、ptc、ヘッジホッグ、及び/又は、smoothenedが関与していることを示唆しており、従って、当該方法を、肺癌及び腺癌m肺上皮の関与する他の増殖性疾患の処置の一部として利用できることを、示している。
他にも数多くの腫瘍でヘッジホッグ経路が関与しているという証拠があり、又は、発生中のこれらの組織にヘッジホッグもしくはその受容体が発現していることが検出されていることに基づけば、これらの腫瘍は当該化合物を用いた処置の影響を受けるであろう。このような腫瘍には、何ら限定するわけではないが、ゴーリン症候群(例えば基底細胞癌、髄芽細胞腫、髄膜腫など)に関連する腫瘍、pctノックアウトマウス で証左された腫瘍(例えば血管腫、横紋筋肉腫、等々)、gli-1増幅の結果生ずる腫瘍(例えばグリア芽細胞腫、肉腫、等々)、ptc相同体であるTRC8に関連する腫瘍(例えば腎癌、甲状腺癌、等々)、Ext-lの関連する腫瘍(例えば骨の癌、等々)、Shh誘導性腫瘍(例えば肺癌、軟骨肉腫、等々)、及び他の腫瘍(例えば乳癌、泌尿生殖器の癌(例えば腎臓、膀胱、尿管、前立腺、等々)、副腎癌、胃腸の癌(例えば胃、小腸、等々)、等々)がある。
本発明のさらに別の実施例では、一つ以上の当該化合物を含んで成る組成物を、骨格形成性幹細胞などの骨格組織のインビトロでの生成に利用したり、骨格欠損のインビボでの処置に利用することができる。特に本発明は、軟骨形成及び/又は骨形成の速度を調節するために当該化合物を利用することを考察している。「骨格組織の欠損」とは、例えば外科的介入、腫瘍の除去、潰瘍、移植、骨折、又は他の外傷的もしくは変性的条件のいずれの結果起きたかなど、欠損がどのように生じたかに関係なく、骨又は結合組織を復元することが好ましい何らかの箇所に起きた骨又は他の骨格結合組織の欠損を意味する。
例えば、本発明の方法は、結合組織の軟骨機能を復元するための養生法の一部として利用できる。このような方法は、例えば、関節炎を引き起こすような変性性摩耗の結果である軟骨俊樹の欠陥又は病変を修復したり、断裂した半月板組織の変位、半月板切除術、靱帯断裂による関節の緩み、関節の悪性物、骨折、又は遺伝性疾患など、組織への外傷により引き起こされることのある他の機械的障害を修復するのに、有用である。当該の修復法はさらに、形成外科又は再建手術や歯周の手術など、軟骨基質をリモデリングするのにも、有用である。また本方法は、例えば半月板、靱帯、又は軟骨の外科的修復後など、既に行った修復術の効果を高めるためにも、応用できよう。さらに、外傷後に充分早期に利用すれば、変性性疾患の発症又は再燃を防ぐこともできる。
本発明の一実施例では、当該方法は、結合組織中に埋没した軟骨細胞の分化及び/又は増殖の毒度を管理することにより、結合組織における軟骨修復応答を調節するために、治療上充分な量の当該化合物で、罹患結合組織を処置することを含む。例えば関節軟骨、関節間軟骨(半月板)、(真肋と胸甲を接続する)肋軟骨、靱帯、及び腱などの結合組織は、当該方法を用いた再建的及び/又は再生的治療法に特になじむ。ここで用いる場合の再生的治療法には、組織の損傷が明らかに現れる時点まで進行した変性状態の処置や、変性がその初期段階又は切迫した状態にある組織の予防的処置も含まれる。
ある実施例では、当該方法を、例えば膝、くるぶし、肘、尻、手首、手指又は爪先の指節背面、又はこめかみと下顎の関節など、2関節間の軟骨の処置における治療的介入の一部として利用できる。この処置は、関節の半月板、関節の関節軟骨、又はその両方に向けることができる。さらに実例を挙げると、当該方法を、例えば外傷性損傷(例えばスポーツでの怪我又は過度の疲労)の結果起きるものなど、膝の変性性障害を処置するのに利用できる。当該調節物質を、例えば関節鏡針などで、関節に注射して投与してもよい。場合によっては、注射用の作用物質は、作用物質が、処置を受ける組織とより長時間かつ一定に接触した状態にあるよう、ヒドロゲルもしくは他の遅延放出型伝播体の形であってもよい。
さらに本発明は、軟骨移植及びプロテーゼ器具治療法分野での本方法の利用を考察するものである。しかしながら、例えば関節、半月板軟骨、靱帯、及び腱の間や、同じ靱帯又は腱の二つの末端の間、そして組織の表面部分と深い部分の間など、異なる組織間で軟骨及び線維軟骨の性質が異なるために、問題が起きる。これらの組織の区域ごとの構成は、機械的特性が段階的に変化していることを反映していると考えられ、そのような状態で分化を遂げていない移植組織が、適宜応答する能力に欠けるとき、骨折が起きる。例えば、半月板軟骨を用いて前十字靱帯を修復した場合、この組織は異形成して純粋な線維状組織になる。本方法を用いると、軟骨形成の速度を調節することにより、特にこの問題に対処することができ、新しい環境に置いて移植細胞を適応的にコントロールする助けとなり、組織の初期の形成段階の過増殖性軟骨細胞を効果的に模倣させることができる。
同様に、当該方法は、プロテーゼ軟骨器具の作製と、それらの移植の両方を向上させるのに、利用できる。優れた処置を行う必要性から、コラーゲン−グリコサミノグリカンの鋳型 (Stone et al. (1990) Clin Orthop Relat Red 252: 129)、単離された軟骨細胞 (Grande et al. (1989) J Orthop Res 7: 208; 及びTakigawa et al. (1987) Bone Miner 2: 449)、及び天然又は合成のポリマーに付着させた軟骨細胞 (Walitani et al. (1989) J Bone Jt Surg 71B: 74; Vacanti et al. (1991) Plast Reconstr Surg 88: 753; von Schroeder et al. (1991) JBiomed Mater Res 25: 329; Freed et al. (1993) JBiomed Mater Res 27 : 11 ; 及び the Vacanti らの米国特許第5,041,138号)を基にした新しい軟骨の作製を狙いとして研究に、拍車がかけられている。例えば、軟骨細胞は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、アガロースゲル、又は、ポリマーの骨格が加水分解して無害なモノマーになる働きにより時間と共に分解する他のポリマーなど、ポリマーから形成された生分解性の生体適合性ある高度に多孔質の足場上に、培養で成長させることができる。このマトリックスは、エングラフトメント(原語:engraftment)が起きるまで、細胞に充分な栄養及びガス交換が行われるよう、デザインされている。細胞は、移植しようとする細胞にとって充分な細胞体積及び密度になるまで、インビトロで培養することができる。このマトリックスの長所の一つは、最終製品が患者自身の(例えば)耳又は鼻にそっくりになるよう、個人個人で所望の形状に鋳込み又は成形できることであり、あるいは、移植の時点で操作の可能な可撓性のマトリックスを関節として用いることもできる。
当該方法の実施例の一つでは、培養中の軟骨細胞の分化速度や、過増殖性の軟骨細胞の形成を管理するために、培養プロセスの特定の段階で、当該化合物に移植片を接触させる。
別の実施例では、移植されるマトリックスを能動的にリモデルし、それを目的の機能により適したものにするために、移植器具を当該化合物で処置する。組織移植片に関して上述したように、人工移植片には、マトリックスを移植する先の実際の機械的環境に相当する環境では得られない、という同じ欠点がある。当該方法により、マトリックス中の軟骨細胞を調節できることにより、置換先の組織と同様な性質をインプラントに獲得させることができる。
さらに別の実施例では、当該方法を用いて、プロテーゼ器具の付着を向上させる。実例を挙げると、当該方法は、歯周用プロテーゼの移植に利用することができ、この場合、周囲結合組織をこのように処置することで、プロテーゼ周囲の歯周靱帯の形成が刺激されることになる。
さらに別の実施例では、動物の、骨格組織が欠損した一部位で、骨の生成(骨形成)のための養生法の一部として、本方法を利用できる。インディアン・ヘッジホッグは、最終的には骨芽細胞に置換される過増殖性軟骨細胞に特に関連している。例えば、本発明の化合物の投与を、被験体の骨損失の速度を調節する方法の一部として、利用できる。例えば、当該化合物を含んで成る製剤を、骨化のための「モデル」の形成において、軟骨内骨化をコントロールするのに、利用することができる。
本発明のさらべ別の実施例では、当該化合物を用いて精子形成を調節することができる。ヘッジホッグたんぱく、特にDhhが、が、精巣の生殖細胞の分化及び/又は増殖及び維持に関与していることが示されている。Dhhの発現は、Sry(精巣決定遺伝子)の直後にセルトリ細胞前駆細胞で開始し、成体に至るまで精巣で続く。オスは、生存可能ではあるが、成熟精子が完全にないために、生殖不能である。様々な遺伝的背景にある発達中の精巣の検査では、Dhhが、精子形成の初期及び後期の両方の段階で調節を行うことが示唆されている。 Bitgood et al. (1996) Curr Biol 6: 298。ある好適な実施例では、当該化合物を避妊薬として用いることができる。同様に、当該方法の化合物は、正常な卵巣機能を変調するのに、有用であろう。
さらに当該方法には、上皮組織に罹患する障害の処置又は予防や美容用途でも、幅広い用途がある。一般的には、本方法は、処置を受ける上皮組織の成長状態を変化させるのに効果的な量の当該化合物を動物に投与するステップを含むことを、特徴とすることができる。投与形態及び投薬養生法は、処置しようとする上皮組織によって様々であろう。例えば、処置しようとする組織が、皮膚又は粘膜組織など、上皮組織である場合には、局所製剤が好適であろう。
「創傷の治癒を促進する」方法の結果、この処置がない状態で同様の創傷が治癒するよりもより早く、創傷が治癒することになる。「創傷治癒の促進」は、さらに、当該方法が、なかんずく、ケラチノサイトの増殖及び/又は成長を調節すること、又は、創傷治癒に伴う瘢痕、創傷のひきつれ、コラーゲン沈着がより少なくなり、表面区域がより浅くなること、を意味する場合もある。特定の場合では、「創傷治癒の促進」は、さらに、創傷治癒の特定の方法を、本発明の方法と一緒に用いた場合に、成功率が高くなる(例えば皮膚移植片の取り込み率が高くなるなど)ことを意味する場合もある。
再建外科技術のめざましい進歩にも関わらず、治癒した皮膚の正常な機能及び外観を取り戻すには、瘢痕化が重要な障壁になることがある。このことは、手又は顔をケロイド性又は過増殖性瘢痕などの病的な瘢痕が機能不全又は肉体的変形を起こす場合には、とくに言える。最も重篤なケースでは、このような瘢痕が心理−社会的苦痛や、経済的剥脱を受ける生活を招くことがある。創傷の修復には、恒常性、炎症、増殖、及びリモデリングの段階が含まれる。増殖段階には、線維芽細胞、及び内皮細胞及び外皮細胞の増殖が含まれる。当該方法を用いることで、創傷の閉塞を早めるため、及び/又は、瘢痕組織の形成を抑えるために、創傷箇所及び創傷の近傍の箇所で上皮細胞の増殖速度をコントロールすることができる。
さらに本発明は、例えば放射線及び/又は化学療法の結果生じるものなど、口腔及び口腔傍の潰瘍を処置する治療的養生法の一部としても、有効であろう。このような潰瘍は通常、化学療法又は放射線治療後、数日以内に発生する。これらの潰瘍は通常、小さな、痛みを伴う不定形の形状をした病変であり、弱い灰色の壊死性の膜で通常覆われ、炎症組織に取り巻かれている。多くの場合、処置しないと、炎症基にして、病変の周辺部周りの組織が増殖する。例えば、潰瘍の境界線にある上皮細胞は通常、増殖的活性を呈し、表面上皮の連続性が失われることになる。これらの病変は大きく、また上皮の一体性がないために、身体を潜在的な二次感染の危険性にさらす。日常的な食物及び水の摂取が大変に苦痛な行為となり、潰瘍が消化管全体に増殖した場合、多くの場合下痢が発生し、それに伴う因子もすべて合併する。本発明によれば、当該化合物の投与を含む、このような潰瘍の処置により、罹患した上皮細胞の異常な増殖及び分化を軽減することができ、続発する炎症性事象の重篤度を軽減するのにも役立つ。
さらに当該の方法及び組成物は、乾癬などの自己免疫疾患が原因の病変など、皮膚疾患が原因の創傷を処置するためにも、利用できる。アトピー性皮膚炎とは、例えば花粉、食物、鱗屑、昆虫毒及び植物毒素などのアレルゲンにより起きる免疫応答に関連したアレルギーが原因の皮膚の傷害を言う。
他の実施例では、当該化合物の抗増殖性製剤を用いて、レンズ上皮細胞の増殖を阻害し、嚢外白内障摘出術の術後合併症を防ぐことができる。白内障は難治性の眼の疾患であり、白内障処置に関しては様々な研究がなされてきた。しかし現在では、白内障の処置は外科術で行われている。白内障の外科術は長い間、応用されており、多様な手術方法が検討されてきた。嚢外レンズ摘出術は、白内障を除去するのに選択される方法となった。嚢外摘出術に比べた、この技術の主要な医学的長所は、無水晶体嚢胞状黄斑浮腫及び網膜剥離の発生率が低いことである。嚢外摘出術は、現在では多くの場合に選ばれるレンズであると思われる後眼房型眼内レンズの移植にも、必要である。
しかしながら、嚢外白内障摘出術の短所は、しばしば後発白内障と呼ばれる、手術後3年以内に最高で50%に起きる可能性のある可能性後眼房水晶体被嚢混濁の発生率が高いことである。後発白内障は、嚢外水晶体摘出術後に残った赤道上及び水晶体前嚢上皮細胞の増殖によって起きる。これらの細胞は増殖してソマーリング(原語:Sommerling)環を生じ、やはり後嚢に沈着して生じる線維芽細胞と一緒に、後嚢の混濁を引き起こして視力に干渉する。後発白内障を防止しておくことが、処置には好ましい。二次的な白内障の形成を抑えるために、当該方法は、残った水晶体上皮細胞の増殖を抑制する手段となる。例えば、当該化合物を含有する溶液を、水晶体摘出後の眼の前房に点滴注入することにより、このような細胞を誘導して休止期のままにすることができる。さらに、このような溶液を眼の前房に点滴注入する場合には、浸透圧的に平衡させて、最小の有効投薬量に抑え、嚢下上皮細胞の成長を、幾分の特異性を持たせつつ、阻害することができる。
さらに本発明は、上皮細胞の下方成長などの眼球上皮細胞の障害や、又は、眼上皮眼球表面の扁平細胞癌など、角膜の上皮細胞増殖を特徴とする角膜疾患の処置にも利用できる。
Levine et al. (1997) J Neurosci 17: 6277 は、ヘッジホッグたんぱくが脊椎動物の網膜において有糸分裂誘発及び光受容体の分化を調節でき、そしてIhhが、網膜前駆細胞の増殖及び光受容体の分化を促進する、色素上皮由来の候補因子であることを示している。同様に、Jensen et al. (1997)Development 124: 363 は、周産期のマウス網膜細胞の培養物を、ソニック・ヘッジホッグのアミノ末端断片で処置すると、ブロモデオキシウリジンを取り込む細胞の比率が、全細胞数、及び杆状体光受容体、アマクリン細胞、及びミュラー膠細胞で増加することを実証し、ソニック・ヘッジホッグが網膜前駆体細胞の増殖を促進することを示唆した。このように、当該方法は、網膜細胞の増殖性疾患の処置に利用でき、光受容体の分化を調節することができる。
本発明のさらに別の態様は、当該方法を用いて毛髪の成長をコントロールする方法に関するものである。毛髪は基本的には、頑丈で不溶性のたんぱく質であるケラチンから成る。その主強度はシスチンのジスルフィド結合によるものである。各個人の毛髪は筒状の毛幹と毛根から成り、皮膚のフラスコ様のくぼみである毛嚢内に納められている。毛嚢の底面には乳頭と呼ばれる指上の突起が納められており、この乳頭は結合組織から成るが、この結合組織から毛髪は成長し、この結合組織を通じて血管が細胞に栄養を提供する。毛幹は、皮膚表面から外に向かって延びた部分であり、毛根は、毛髪が埋まった部分であると説明されてきた。毛根の基部は、乳頭上にある毛球内で拡張している。毛髪が生じる細胞は毛嚢の毛球内で成長する。これら細胞が毛脳内で増殖するにつれ、毛髪は線維の形で押し出される。毛髪の「成長」とは、分裂細胞による毛髪線維の形成及び伸長を言う。
当業で公知のように、通常の毛髪サイクルは三つの段階、即ち、発育期、中間期及び休止期、に分けられる。活動期(発育期)にあるとき、皮膚乳頭の表皮幹細胞は急速に分裂する。娘細胞が上向きに移動し、分化して毛髪自体の同心円層を形成する。移行期である中間期は、毛嚢内の幹細胞の有糸分裂の休止が特徴である。この休止段階は休止期として公知であり、この時期、毛髪は逃避内に数週間留まってから、その下方で成長中の新しい毛髪が休止期の毛幹をその毛嚢から追い出す。このモデルから、分化して毛髪細胞になる分裂幹細胞のプールが大きいほど、毛髪の成長がより多く起きることが、明らかになった。従って、これらの幹細胞の増殖を強める、又は、抑えることにより、毛髪の成長をそれぞれ、増加させる、又は、減少させる方法を行うことができる。
いくつかの実施例では、当該の方法を、切る、剃る、又は抜くといった従来の除去法ではなく、ヒトの毛髪の成長を減少させる方法の一つとして、利用することができる。例えば、当該方法は、多毛症など、異常に急速又は密な毛髪の成長を特徴とする毛髪病の処置に利用できる。実施例の一つでは、当該方法を用いて、異常な毛深さを特徴とする障害である男性型多毛症を処理することができる。さらに当該方法は、抜毛までの期間を延長する方法も提供することができる。
さらに、当該化合物は、しばしば、上皮細胞にとって、細胞傷害性でなく細胞増殖抑制性であるため、このような作用物質を用いて、例えば放射線により誘導される死など、効果を出すためには細胞周期のS期に進行させることが必要な細胞傷害性作用物質から毛嚢細胞を守ることができる。当該方法による処置は保護を提供することができ、例えば細胞がS期に入らないようにするなどにより、毛嚢細胞を休止状態に置くことで、細胞が有糸分裂による破局又はプログラムされた細胞死を行えないようにする。例えば、通常では抜け毛を起こすような化学療法又は放射線療法を行っている患者に、当該化合物を利用できる。当該処置法は、このような治療中に細胞周期の進行を抑えることで、細胞死のプログラムの活性化の結果起きるであろう死から毛嚢細胞を守ることができる。治療が終了した後で、当該方法を解除すれば、毛嚢細胞の増殖抑制を同時に解除することができる。
さらに本発明は、例えば禿髪性毛嚢炎、網状瘢痕性紅斑性毛包炎又はケロイド性毛嚢炎など、毛嚢の処置にも利用することができる。例えば、当該化合物の美容用製剤は、頸部の下顎領域に頻繁に起き、ひげ剃りに関連する、特徴的病変は毛髪が埋没した紅斑性丘疹及び膿疱である慢性疾患である偽毛嚢炎の処置で局所的に塗布することができる。
本発明の別の態様では、当該方法を用いて、上皮由来組織の分化を誘導し、及び/又は、増殖を抑制することができる。このような形のこれらの分子は、上皮組織が関与する過形成性及び/又は新形成性の状態を処置するための、分化治療法の基盤を提供することができる。例えば、このような製剤は、皮膚の細胞の異常な増殖又は成長があるような皮膚疾患の処置に利用できる。
例えば、本発明の薬学的製剤は、角化上皮症などの過形成性上皮状態の処置や、基底細胞癌又は扁平細胞癌など、多様な皮膚癌の高い増殖速度を特徴とするものなど、新形成性上皮状態の処置を、意図したものである。さらに当該方法は、皮膚が罹患する自己免疫疾患、特に、乾癬又はアトピー性皮膚炎で起きるものなど、表皮の病的な増殖及び/又は角化を含む皮膚疾患の処置にも、利用できる。
乾癬、扁平細胞癌、角化棘細胞腫及び日光性角化症など、通常の皮膚疾患の多くは、局在化した異常な増殖及び成長が特徴である。例えば、皮膚上に鱗苞のある、赤い盛り上がった斑ができるのが特徴である乾癬では、ケラチノサイトが通常よりも遙かに急速に増殖し、不完全に分化していることが知られている。
一実施例では、本発明の製剤は、炎症性成分又は非炎症性成分を特徴とすると思われる、皮膚細胞の異常な増殖を起こす角化障害に関連した皮膚の不快の処置に適切である。実例を挙げると、例えば休止期又は分化を促進するような、当該化合物による治療用製剤を用いると、皮膚、粘膜又は爪にいずれに起きたものであるかに関係なく、様々な型の乾癬を処置することができる。乾癬は、上述するように、典型的には、ある「再生的」経路に基づいた特徴的な増殖の活性化及び分化を呈する表皮ケラチノサイトが特徴である。当該方法の抗増殖性の実施例を用いた処置を利用して、病的な表皮活性化を反転させることができ、この疾患の持続的な寛解の基盤とすることができる。
さらに様々な他の角化性病変も、当該方法を利用した処置の対象候補である。例えば日光性角化症は、日光に晒された照射された皮膚に起きる表面の炎症性前悪性腫瘍である。この病変は紅斑性から茶色であり、様々な剥がれもある。現在の治療法には、切除凍結手術がある。しかしこれらの処置法には、苦痛が伴い、しばしば美容上見過ごせない瘢痕ができる。従って、日光性角化症などの角化症の処置には、病変の表皮/類表皮細胞の過増殖を阻害するのに充分な量の、当該化合物組成物の好ましくは局所的な、投与を含めることができる。
にきびは、当該方法で処置できると思われるもう一つの皮膚の不調である。例えば尋常性座瘡は、十代及び若年層の成人にごく普通に起きる多因子性の疾患であり、顔及び体部上側に炎症性及び非炎症性の病変が現れることが特徴である。尋常性座瘡を起こす基本的な異常は、機能亢進性脂腺の管の過角質化である。過角質化により、皮膚及び毛嚢の微生物の正常な移動が遮断され、そのために、プロピオバクテリウム−アクネ及びスタフィロコッカス−エピデルミディス菌と、酵母であるピトロスポラム−オバールによるリパーゼの放出が刺激される。抗増殖性の当該化合物、特に局所用製剤を用いた処置は、病変形成につながるような過角質化などのこれら管の移行的な特徴を防止するのに有用であろう。さらに当該処置には、例えば抗生物質、レチノイド、及び抗アンドロゲン物質を含めてもよい。
さらに本発明は、様々な型の皮膚炎を処置する方法を提供するものである。皮膚炎は、そう痒性、紅斑性、鱗苞性、水疱性、湿潤性、亀裂性又は痂皮性のいずれかである、皮膚形成に異常がある病変を言う記述的用語である。これらの病変は、様々な原因から生ずる。もっともよくある皮膚炎の種類はアトピー性、接触性、及びおむつ性皮膚腺である。例えば、脂漏性皮膚炎は慢性の掻痒性皮膚炎であり、様々な部位、特に頭皮上の紅斑や、乾燥した、湿った又は脂ぎったはがれ、そして黄色の痂皮性斑を伴い、過剰な量の乾燥した鱗屑が落屑する。当該方法は、しばしば慢性の、通常は湿疹性の皮膚炎であるうっ血性皮膚炎の処置に用いることができる。光線性皮膚炎は、日光からの日光照射や、紫外線又はエックス線又はガンマ線などへの暴露が原因の皮膚炎である。本発明に基づけば、上皮細胞の望ましくない増殖が引き起こす皮膚炎のいくつかの症状の処置及び/又は防止に、当該方法を利用できる。これら様々な型の皮膚炎のこのような治療法には、さらに、局所及び全身のコルチコステロイド、抗掻痒剤、及び抗生物質を含めることができる。
当該の方法で処置できると思われる不調は、ダニ症など、ヒト以外の動物に特異的な障害である。
さらに別の実施例では、当該方法を、ヒトの癌、特に、基底細胞癌や、皮膚などの上皮組織の他の腫瘍の処置に利用することができる。例えば、当該化合物を、当該方法において、基底細胞母斑症候群(BCNS)及び、他のヒトの癌、腺癌、肉腫、等々の処置の一部として、利用することができる。
ある好適な実施例では、当該方法を、基底細胞癌を処置する(又は防止する)ための処置又は予防養生法の一部として用いる。ヘッジホッグシグナル伝達経路の調節異常が、ptc変異により起きる基底細胞癌の一般的な特徴であろう。インシツーハイブリダイゼーションで確認されたところ、家族性及び散発性BCCの腫瘍で、ヒトptc mRNAが、例外なく過剰発現していることが解説されている。ptcは負の自己調節を見せるため、ptcを不活性化させる変異の結果、変異Ptcが過剰発現するものと考えてよいであろう。これまでの研究では、ヘッジホッグたんぱくが過剰発現すると、腫瘍が発生する場合もあることが実証されている。マウスでソニック・ヘッジホッグ(Shh)が腫瘍発生においてある一つの役割を果たすことが、ある研究で示唆されている。この研究では、皮膚の発生から僅かに数日後に、複数のBCC様表皮増殖が皮膚表面全体に起きたことを含め、BCNSの数々の特徴が、Shhが皮膚で過剰発現しているトランスジェニックマウスで発生した。BCCから採ったShhヒト遺伝子における変異も解説されている。ヒトのShh又は他のHh遺伝子はヒトの優性腫瘍遺伝子として働いている可能性が示唆されている。散発性ptc変異も、その他の点では正常である個人から採ったBCCで観察されており、その変異の中にはUVシグナチャー変異もあった。散発性BCCの最近の研究の一つでは、CT又はCCTT変化である、五つのUVシグナチャー型変異が、ptc変異を含有していると判断された15個の腫瘍から見つかった。BCC及び神経外胚葉における散発性ptc変異の別の最近の解析では、BCCに見られた三つのptc変異のうちの一つにCT変化が一カ所あった。例えば、Goodrich et al. (1997) Science 277: 1109-13; Xie et al. (1997) Cancer Res 57: 2369-72; Oro et al. (1997) Science 276: 817-21; Xie et al. (1997) Genes Chromosomes Cancer 18: 305-9; Stone et al. (1996) Nature 384: 129-34; and Johnson et al. (1996) Science 272: 1668-71を参照されたい。
当該方法を用いて、ptc機能欠損、ヘッジホッグ機能亢進、又はsmoothened機能亢進の結果と考えられるBCC、又は、この疾患の他の作用を防ぐなど、BCNS患者を処置することができる。基底細胞母斑症候群は、若年で出現する多発性BCNSを特徴とする珍しい常染色体優性疾患である。BCNS患者はこれらの腫瘍発生の危険性が大変高い。20代では、多数が、主に皮膚の日光に暴露した部分に表れる。この疾患は、肋骨、頭部及び顔の変化、そしてときには多指症、合指症、及び2分脊椎を含め、数多くの発生上の異常を引き起こす。さらにこれらは、BCCに加え、数多くの種類の腫瘍を発症させる。即ち、卵巣及び心臓、線維腫、皮膚及び顎の嚢胞、及び中枢神経系の髄芽細胞腫及び髄膜腫、である。当該方法は、BCNS及び非BCNS患者においてこのような種類の腫瘍を防止又は処置するのに、利用できる。BCNS患者の研究では、ptc遺伝子にゲノム上及び散在性の両方の変異があることがわかっており、これらの変異が、この疾患の究極的な原因であることが示唆されている。
別の態様では、本発明は、骨髄巨核球由来細胞の形成をコントロールし、及び/又は、骨髄巨核球由来細胞機能的性能をコントロールするための薬学的製剤及び方法を提供するものである。例えば、ここに解説した組成物のうちのいくつかは、血小板に罹患する様々な過形成性又は新形成性状態の処置又は防止に応用してもよい。
別の態様では、本発明は、当該化合物を含んで成る医薬組成物を提供するものである。当該方法で用いる化合物は、便宜上、例えば水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、等々)、又はこれらの適した混合物など、生物学的に許容可能及び/又は無菌の媒質中で投与用に調合してもよい。選択した媒質中での、有効成分の最適な濃度は、医化学者に公知の手法に基づき、経験的に決定することができる。ここで用いる場合の「生物学的に許容可能な媒質」には、当該薬学的製剤の所望の投与経路にとって適切であろう、あらゆる溶媒、分散媒、等々が含まれる。薬学的に有効な物質のためにこのような媒質を用いる方法は当業で公知である。何らかの従来の媒質又は物質が、当該化合物の活性にとって適合性がない場合を除き、当該薬学的製剤中へのその利用は、考察するところである。他のたんぱく質を含め、適した伝播体及びそれらの調合法は、例えば、レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンセズ(レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンセズ、マック・パブリッシング・カンパニー、米国ペンシルバニア州イーストン、1985)に解説されている。これらの伝播体には、注射用の「デポー製剤」が含まれる。
さらに本発明の薬学的製剤には、例えば家畜又はイヌなどのペットの処置用など、獣医が利用するのに適した当該化合物の薬学的製剤など、獣医用の組成物を含めることができる。
導入方法としては、再充填可能又は生分解性の器具で行ってもよい。近年、たんぱく質様生物薬剤を含め、薬剤の送達を制御するために、多様な遅延放出型ポリマー器具が開発されており、インビボでテストされている。生分解性ポリマー及び生非分解性のポリマーの両方を含め、(ヒドロゲルを含む)多様な生体適合性ポリマーを用いて、当該化合物を所定の標的部位に持続放出するインプラントを形成することもできる。
本発明の製剤は経口、非経口、局所、直腸、病巣内、眼窩内、嚢内を通じて与えてもよく、腔内に直接点滴注入してもよく、又は吸入によって与えてもよい。それらはもちろん、各投与経路に適した形で与える。例えば、それらは、錠剤又はカプセル型で、注射、吸入、眼用ローション、軟膏、座薬、等々、注射、輸注又は吸入による投与、ローション又は軟膏による局所、及び座薬による直腸投与によって投与される。経口及び局所投与が好ましい。
文言「非経口投与」及び「非経口的に投与する」とは、ここで用いる場合、経腸及び局所投与以外の、通常注射などによる投与形態を意味し、限定するわけではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内及び胸骨内注射及び輸注を含む。
文言「全身投与」、「全身的に投与する」、「末梢投与」及び「末梢的に投与する」とは、ここで用いる場合、皮下投与など、患者の全身に進入して、代謝及び他の同様のプロセスにさらされるよう、中枢神経系に直接投与する以外の方法で化合物、薬剤又は他の物質を投与することを意味する。
これらの化合物は、ヒト及びその他の動物に対し、例えばスプレーによる経口、鼻孔、粉末、軟膏又はドロップによる直腸、膣内、非経口、槽内、及び局所を含め、また頬側及び舌下を含め、いかなる適した投与経路による治療に向けて投与してもよい。
選択された投与経路に関係なく、本発明の化合物は適した水和型で用いてもよく、及び/又は、本発明の医薬組成物を、以下に説明するように、又は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に容認可能な投薬型に調製してもよい。
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投薬量は、患者に毒性となることなく、特定の患者、組成、及び投与形態にとって所望の治療応答を得るのに効果的な有効成分量が得られるように変更してもよい。
選択される投薬量は、利用する本発明の特定の化合物、又はそのエステル、塩、又はアミドの活性、投与経路、投与時間、用いた特定の化合物の排出速度、処置の期間、用いた特定の化合物と組み合わせて用いるその他の薬剤、化合物及び/又は材料、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び以前の医療歴、及び医業で公知の同様の因子を含め、様々な因子に依存することであろう。
当業の通常の技術を有する内科医又は獣医であれば、必要な当該医薬組成物の有効量を容易に決定かつ処方できる。例えば、この内科医又は獣医であれば、医薬組成物中に用いる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するのに要するよりも低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまでこの用量を次第に増加させていってもよいかも知れない。
一般的には、本発明の化合物の適した用量は、治療効果を生むのに効果的な最も低い用量である、化合物量であろう。このような有効量は、一般的には上に記載した因子に左右されるであろう。一般的には、一人の患者への本発明の化合物の静脈、脳室内及び皮下的用量は、一日で体重1キログラム当たり約0.0001から約100mgの範囲であろう。
必要に応じ、有効な一日当たりの用量の有効化合物を、2、3、4、5、6又はそれ以上に小分けした用量にして、選択に応じて単位投薬型にして、一日かけて適当な間隔を置きながら分けて投与してもよい。
「処置」と言う用語には、予防、治療及び治癒も包含されるものと、意図されている。
この処置を受ける患者は、特にヒトなどの霊長類や、ウマ、ウシ、ブタ及びヒツジなどの他の哺乳類や、一般的な家禽及びペットを含め、必要とするあらゆる動物である。
従って、本発明の化合物を、薬学的に許容可能な及び/又は無菌の担体と混合して投与することができ、またさらに、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド及びグリコペプチドなどの他の抗菌物質と組み合わせて投与することもできる。このように併用治療には、最初に投与されたものの治療効果が、次のものが投与されたときに完全には消失しない態様で、有効化合物を順次、同時及び別々に投与することが含まれる。
V.医薬組成物
本発明の化合物を単独で投与することも可能であるが、当該化合物を薬学的製剤(組成物)として投与するのが好ましい。本発明に基づく当該化合物を、ヒト又は獣医学での利用に向けて投与が便利に行えるように調合してもよい。いくつかの実施例では、当該薬学的製剤に含まれる化合物はそれ自体で有効であっても、又は、生理学的環境で有効化合物に転化することができるなど、プロドラッグであってもよい。
このように、本発明の別の態様は、一つ以上の薬学的に許容可能な担体(添加剤)及び/又は希釈剤と一緒に調合された、一つ以上の上述の化合物を治療上有効量含んで成る、薬学的に許容可能な組成物を提供するものである。以下に詳述するように、本発明の医薬組成物を、以下(1)経口投与用、例えば飲薬(水性又は非水性の溶液又は懸濁液)、錠剤、巨丸剤、奮発、顆粒、舌用パスタ;(2)非経口投与用、例えば無菌の溶液又は懸濁液としての皮下、筋肉内又は静脈内注射;(3)例えば皮膚用のクリーム、軟膏又はスプレーなどとして、局所投与用;又は(4)例えばペッサリー、クリーム又はフォームなどとしての膣内又は直腸内、用に適合されたものを含め、固体又は液体型での投与用に、特に調合してもよい。しかしながら、いくつかの実施例では、当該化合物を、単に無菌の水に溶解又は懸濁させるだけでもよい。いくつかの実施例では、本薬学的製剤は、発熱源を持たず、即ち、患者の体温を上昇させない。
文言「治療上有効量」とは、ここで用いる場合、ある動物の少なくとも一部の細胞集団において、ptc機能欠損、ヘッジホッグ機能亢進、又はsmoothened機能亢進を克服するなどにより、医学的処置に適用できる妥当な利益/リスク比で、処置を受けた細胞でその経路の生物学的結果を遮断することで、何らかの所望の治療効果を生むのに有効な、本発明の化合物を含んで成る一化合物、物質、又は組成物 の量を意味する。
文言「薬学的に許容可能な」は、ここでは、健全な医学的判断の範囲内にあり、ヒト及び動物の組織と接触させて用いるのに適しており、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題又は合併症を起こすことなく、妥当な利益/リスク比に見合った、化合物、物質、組成物及び/又は投薬型を言うのに用いられている。
文言「薬学的に許容可能な担体」とは、ここで用いる場合、当該調節物質を身体の一臓器又は一部から、身体の別の臓器又は一部に運搬又は輸送することに関与する、例えば液体又は固体の充填剤、希釈剤、添加剤、溶媒又は被包剤など、薬学的に許容可能な物質、組成物又は伝播体を意味する。各担体は、その製剤のその他の成分と適合性があるという意味において「許容可能」でなければならず、患者にとって有害であってはならない。薬学的に許容可能な担体として役立てることのできる物質の例のなかには、(1)乳糖、ブドウ糖及びショ糖などの糖類;(2)コーンスターチ及びいもでんぷんなどのでんぷん;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテートなどのセルロース及びその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバター及び座薬用ろうなどの添加剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリル酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質なしの水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝生理食塩水;及びその他の、薬剤製剤で用いられる非毒性の適合性の物質、がある。
上述したように、本化合物のいくつかの実施例は、アミノ又はアルキルアミノなどの塩基性の官能基を含めてもよく、従って、薬学的に許容可能な酸と一緒にすると薬学的に許容可能な塩を形成することができる。用語「薬学的に許容可能な塩」とは、この点で、本発明の化合物の比較的に無毒性の、無機及び有機酸添加塩を言う。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離・精製の段階でインシツーで作製しても、又は、本発明の精製済み化合物をその遊離塩の形で、適した有機又は無機の酸に別々に反応させ、こうして形成された塩を単離することで作製してもよい。塩の例には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ラウリン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、スクシン酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプト酸塩、ラクトビオネート、及び、ラウリルスルホン酸塩、等々がある(例えば、Berge et al. (1977)"Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66: 1-19を参照されたい)。
当該化合物の薬学的に許容可能な塩には、例えば無毒性の有機又は無機酸からの、当該化合物の従来の無毒性の塩又は四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来の無毒性の塩には、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、等々といった無機の酸から誘導されるものや、酢酸、プロピオン酸、スクシン酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸、等々がある。
他の場合では、本発明の化合物は一つ以上の酸性官能基を含んでいてもよく、従って、薬学的に許容可能な塩基と一緒にすると薬学的に許容可能な塩を形成することができる。これらの場合の用語「薬学的に許容可能な塩」には、本発明の化合物の、比較的に無毒性の、無機及び有機塩基添加塩が含まれる。これらの塩も、同様に、本発明の化合物の最終的な単離・精製の段階でインシツーで作製しても、又は、本発明の精製済み化合物をその遊離酸の形で、適した塩基、例えば、薬学的に許容可能な金属陽イオンの水酸化物、炭酸化物又は重炭酸化物など、や、アンモニアや、又は、薬学的に許容可能な有機の一級、二級、又は三級アミンなど、に別々に反応させることで作製してもよい。アルカリ又はアルカリ土類塩の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩、等々がある。塩基添加塩の形成に有用な有機アミンの例には、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、等々がある(例えば上記のBergeらの文献を参照されたい)。
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウムなどの、湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤や、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、着香料及び香料、保存剤並びに抗酸化剤も、当該組成物中にあってよい。
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタバイスルファイト硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、等々の水溶性の抗酸化剤;アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール、等々の油溶性抗酸化剤;及び(3)例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、等々の金属キレート剤、がある。
本発明の製剤には、経口、鼻孔、(頬及び舌下を含む)局所、直腸、膣、及び/又は非経口投与に適したものが含まれる。前記製剤を便利なよう、単位用量型で提供してもよく、また製薬業で公知のいかなる方法を用いて調製してもよい。一個の用量型を作製するのに、担体物質と配合することのできる有効成分の量は、処置しようとするホスト、特定の投与形態に応じて様々であろう。一般的には、100パーセントのうち、この量は約1パーセントから約99パーセントの有効成分、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントの範囲であろう。
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、担体、及び選択に応じ、一つ又はそれ以上の付属成分と、会合させるステップを含む。一般的には、本発明の化合物を液体の担体、又は微細に分割された固体の担体、又はその両方と、均一かつ密接に会合させた後、必要に応じてその生成物を成形することによって、当該製剤を調製する。
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが所定量の本発明の化合物を有効成分として含有した、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、(通常はショ糖及びアカシアゴム又はトラガカントである着香された基剤を用いて)ロゼンジ、粉末、顆粒、又は、水性もしくは非水性の液体の溶液又は懸濁液として、又は、水中油又は油中水液体懸濁液として、又はエリキシル又はシロップとして、(ゼラチン及びグリセリン又はショ糖又はアカシアゴムなどの不活性の基剤を用いた)香錠として、及び/又は、口内洗浄剤の形であってもよい。さらに本発明の化合物を巨丸剤、舐剤又はパスタとして投与してもよい。
経口投与用の本発明の固形投薬型(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣剤、粉末、顆粒、等々)においては、有効成分を、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸2カルシウム、及び/又は以下のうちのいずれかなどの一つ又はそれ以上の薬学的に許容可能な担体と混合する。即ち、(1)充填剤又は増量剤、例えばでんぷん、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、及び/又は、珪酸など;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアカシアなどの結着剤;(3)グリセロールなどの湿潤剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、いも又はタピオカでんぷん、アルギン酸、特定の珪酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)第四級アンモニア化合物などの吸収促進剤;(7)例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイトクレイなどの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの潤滑剤;及び(10)及び着色剤、である。カプセル、錠剤及び丸剤の場合には、本医薬組成物にさらに緩衝剤を含めてもよい。同様の種類の固形の組成物を、ラクトース又は乳糖などの賦形剤や、高分子量ポリエチレングリコール等々を用いて軟質及び硬質の充填ゼラチンカプセルの充填剤として利用してもよい。
錠剤は、選択に応じて一つ又はそれ以上の付属成分と一緒に、圧縮又は鋳込みによって作製することができる。圧縮された錠剤は結着剤(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性の希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばでんぷんグリコレートナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて作製してもよい。鋳込み成形された錠剤は、不活性の液体希釈剤でしめらせた粉末状の化合物の混合物を適した機械に鋳込み成形することによって作製してもよい。
本発明の医薬組成物の錠剤、及びその他の固体の投薬形態、例えば糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒など、には、選択に応じて切れ込みを入れてもよく、又は腸溶コーティング及びその他の製薬業で公知のコーティング剤など、コーティング及びシェルと一緒に調製してもよい。これらはさらに、所望の放出曲線、その他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はマイクロスフィアを作製するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを様々な比率で用いて、その中の有効成分の放出を遅延させる又は調節するように調合してもよい。それらは、例えば細菌捕獲フィルタを通して濾過したり、又は、無菌水に溶解可能な無菌の固体組成物の形状をした滅菌剤や、何らかのその他の無菌の注射可能な媒質を使用直前に取り入れることによって、滅菌してもよい。さらに本組成物に、選択に応じて乳白剤を含有させてもよく、また、有効成分を胃腸管の特定の部分のみ、又は特定の部分で選択的に、そして選択に応じて遅延的態様で、放出させるような組成物としてもよい。利用の可能な包埋組成物の例には、ポリマー物質及びろうがある。有効成分はさらに、必要に応じて上述の賦形剤のうちの一つ又はそれ以上を備えたマイクロ封入型であってもよい。
本発明の化合物の経口投与のための液体投薬型には、薬学的に許容可能な乳濁液、マイクロ乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが含まれる。有効成分に加え、液体投薬型には、例えば、水又はその他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油脂類(特に綿実油、落花生、コーン、はい芽、オリーブ、ひまし及びごま油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物など、を含めてもよい。
経口用組成物は、不活性の希釈剤の他に、例えば湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、着香料、着色剤、香料及び保存剤などのアジュバントを含んでいてもよい。
懸濁剤は、有効化合物に加え、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステルや、微小結晶セルロース、重水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、及びこれらの混合物などの懸濁剤を含んでいてもよい。
コレステロールなどのステロールは、シクロデキストリンと錯体を形成することが知られている。従って、好適な実施例では、阻害物質がステロイド系アルカロイドである場合、例えばα-、β-及びγ-シクロデキストリン、ジメチル-βシクロデキストリン及び2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリンと一緒に調合してもよい。
直腸又は膣投与のための本発明の医薬組成物の製剤は、座薬として提供してもよく、またこの座薬は本発明の一つ又はそれ以上の化合物を一つ又はそれ以上の適した非刺激性賦形剤又は担体と混合することで調製してもよく、この賦形剤又は担体は、ココアバター、ポリエチレングリコール、座薬ろう又はサリチル酸塩を含んで成り、またこの賦形剤又は担体は室温では固形であるが、体温では液体であるため、直腸又は膣腔で融解して有効化合物を放出することとなる。
膣投与に適した本発明の製剤には、さらに、当業で適切であることが知られている担体などを含有するペッサリ、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤が含まれる。
本発明の化合物の局所又は経皮投与用の投薬型には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤が含まれる。有効化合物は無菌条件下で薬学的に許容可能な担体や、また必要な何らかの保存剤、緩衝剤、又は推進剤と混合してもよい。
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルには、本発明の有効化合物に加え、動物性及び植物性脂肪、油脂、ろう、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物などの賦形剤が含まれていてもよい。
粉末及びスプレーには、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム及びポリアミドの粉末、又はこれらの物質の混合物などの賦形剤が含まれていてもよい。スプレーにはさらに通常の推進剤、例えばクロロフルオロ炭化水素及び揮発性の未置換炭化水素、例えばブタン及びプロパンなど、が含まれていてもよい。
経皮パッチには、本発明の化合物の身体への送達を調節できるという更なる利点がある。このような投薬型は、本化合物を適した媒質中に溶解又は分散させることで作製が可能である。さらに吸収促進剤を用いると、本化合物の皮膚の透過を増加させることができる。このような透過の速度は、速度調節膜を提供するか、又は、本有効化合物をポリマーマトリックス又はゲル中に分散させることによって、調節することができる。
眼用製剤、眼用軟膏、粉末、溶液、等々もまた、本発明の範囲内にあるものとして考察されるところである。
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、一つ又はそれ以上の本発明の化合物を、一つ又はそれ以上の薬学的に許容可能な無菌の等張水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳濁液、又は無菌の粉末に組み合わせて含んで成り、またこの無菌の粉末は使用直前に無菌の注射可能な溶液又は分散液に再構築してもよく、この注射可能な溶液又は分散液には、緩衝剤、静菌剤、製剤を予定のレシピエントの血液に等張にする溶剤や、又は懸濁剤又は増粘剤が含まれていてもよい。
本発明の医薬組成物に利用可能な適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、等々)、及び適したこれらの混合物、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル、が含まれる。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング材料を利用したり、分散液の場合には必要な粒子の大きさを維持したり、そしてサーファクタントを利用するなどによって維持することができる。
これらの組成物はさらに、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含んでいてもよい。微生物の活動を抑えるには、様々な抗菌剤及び抗カビ剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸、等々を含めて確実にすることができる。さらに、糖類、塩化ナトリウム、等々などの等張剤を組成物に含めるのも好ましいであろう。加えて、注射可能な薬型の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を送らせる物質を含めるとよい。
場合によっては、薬剤の効果を長引かせるためには、皮下又は筋肉内注射から薬剤の吸収を遅らせることが好ましい。これは、水溶性の乏しい結晶質又は無晶質材料の液体懸濁液を利用して達成してもよい。こうして薬剤の吸収速度は溶解の速度に依存することとなり、ひいては結晶の大きさ及び結晶の形に依存することとなる。あるいは、非経口投与される薬剤型の吸収の遅延は、薬剤を油性伝播体に溶解又は懸濁させることにより達成される。
注射可能なデポー型は、当該化合物のマイクロ封入マトリックスを、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマ中に形成して作製する。薬剤のポリマーに対する割合に応じて、そして用いた特定のポリマーの性質に応じて、薬剤放出の速度を調節することができる。その他の生分解性ポリマーの例にはポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)がある。デポー型の注射可能な製剤は、さらに、薬剤を、身体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロ乳濁液中に捕獲することで作製する。
本発明の化合物を医薬として投与する場合、これらを単独で投与しても、又は、例えば、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて0.1乃至99.5%の(より好ましくは0.5乃至90%の)有効成分を含有する医薬組成物として投与しても、よい。
本発明の有効化合物を動物の飼料に加えるには、好ましくは、当該有効化合物を有効量含有する適したプレミックス飼料を作製し、このプレミックスを完全な糧食に加えることで行ってもよい。
あるいは、当該有効化合物を含有する中間濃厚飼料又は補助飼料を飼料に混ぜてもよい。このようなプレミックス飼料及び完全な糧食を作製し、投与する方法は、参考文献(例えば"Applied Animal Nutrition", W. H. Freedman and CO., San Francisco, U. S. A., 1969 or"Livestock Feeds and Feeding"O and B books, Corvallis, Ore., U. S. A., 1977など)に解説がある。
VI. 有効な調節物質の合成スキーム及び同定
当該化合物及びその誘導体は、公知の合成法を利用して容易に調製できる。当業で公知のように、これらのカップリング反応は穏和な条件下で行われ、幅広い「スペクテータ」官能基にも耐える。付加的な化合物をコンビナトリアル法で合成かつ試験して、当該方法に利用できそうな更なる化合物の同定を容易に行えるようにしてもよい。
a. コンビナトリアル・ライブラリ
本発明の化合物、特に、多様な代表的なクラスの置換基を有する変種のライブラリは、コンビナトリアル・ケミストリ及び他のパラレル合成スキームになじむ(例えばPCT WO 94/08051を参照されたい)。その結果、潜在的なヘッジホッグ調節物質リード化合物を同定したり、リード化合物の特異性、毒性、及び/又は、細胞傷害的な運動プロファイルを精製するために、例えば上に記載した化合物のふ入りのライブラリなど、関連化合物の大きなライブラリを高処理能検定で迅速にスクリーニングすることができる。例えば、ptc機能欠損、ヘッジホッグ機能亢進、又はsmoothened機能亢進のいずれかを有する細胞を用いて開発できるであろうptc、ヘッジホッグ、又はsmoothened生物活性検定法を用いて、当該化合物のライブラリをスクリーニングし、ptcに対するアゴニスト活性、又は、ヘッジホッグもしくはsmoothenedに対するアンタゴニスト活性を有するものを探すこともできる。あるいは反対に、ptc機能欠損、ヘッジホッグ機能亢進、又はsmoothened機能亢進のいずれかを有する細胞を用いた生物活性検定法を用いて当該化合物のライブラリをスクリーニングし、ptcに対するアンタゴニスト活性、又は、ヘッジホッグもしくはsmoothenedに対するアゴニスト活性を有するものを探すこともできる。
簡単に説明すると、本発明の目的のためのコンビナトリアル・ライブラリは、所望の性質に関してまとめてスクリーニングすることのできる、化学的に関連する化合物の混合物である。数多くの関連する化合物が一回の反応性で調製されれば、必要になるスクリーニング・プロセスの回数が大きく減少し、また簡単になる。適切な物理的特性についてスクリーニングするには、従来の方法で行うことができる。
ライブラリの多様性は様々なレベルで作り出すことができる。例えば、コンビナトリアル反応で用いる基質アリール基は、核のアリール部分では、例えば環構造などの点でふ入りになっているなど、多様であってよく、及び/又は、他の置換基の点で異なっていてもよい。
当該化合物などの小分子のコンビナトリアル・ライブラリを作製するには、様々な技術が当業で利用できる。例えば、Bondelle et al. (1995) Trends Anal. Chem. 14: 83; the Affymax の米国特許第5,359,115号及び第5,362,899号: the Ellman の米国特許第5,288,514号: the Still らのPCT公報 WO 94/08051; the ArQule の米国特許第5,736,412号及び第5,712,171号; Chen et al. (1994) JACS 116: 2661: Kerr et al. (1993) JACS 115: 252; PCT公報 W092/10092, W093/09668 及びW091/07087 ;及び Lerner らのPCT公報 W093/20242)を参照されたい。従って、約100乃至1,000,000 又はそれ以上のオーダーの当該化合物のダイバーソマーから成る多様なライブラリを合成でき、特定の活性又は性質についてスクリーニングすることができる。
ある実施例では、候補化合物のダイバーソマーから成るライブラリを、例えば、選択に応じて候補調節物質の一カ所か、又は、合成中間体の一置換基に位置する加水分解可能又は光分解可能な基でポリマー・ビーズに繋げられているなど、 Still らの PCT公報WO 94/08051に解説された技術に適合させたスキームを利用して、合成することができる。Stillらの技術では、ライブラリは一組のビーズ上に合成されるが、各ビーズは、そのビーズ上の特定のダイバーソマーの識別となる一組のタグを含有する。次に、このビーズ・ライブラリを、例えばsmoothenedアンタゴニストを探したいptc機能欠損、ヘッジホッグ機能亢進、又はsmoothened機能亢進細胞などで、「めっき」する。ダイバーソマーは、例えば加水分解などにより、このビーズから切り離すことができる。
上記の方法の数ある変更例や、関連する経路に基づき、ヘッジホッグ機能の調節物質としてテストしてもよい幅広い多様な化合物ライブラリを合成してもよい。
b. スクリーニング検定
ヘッジホッグ調節物質などの化合物が、ptc、smoothened、又はヘッジホッグ機能を調節する能力を調べるのに利用の可能な検定法は様々なものがあり、その多くは、高処理能のフォーマットに変えることができる。化合物及び天然抽出物のライブラリをテストする数多くの薬剤スクリーニングプログラムでは、ある一定の期間で調査できる化合物数を最大にするには、高処理能の検定法が好ましい。このように、合成及び天然の生成物のライブラリから、ヘッジホッグ調節物質である他の化合物を探すために、サンプルを採っておくこともできる。
無細胞検定法に加え、細胞をベースにした検定法でテスト化合物をテストしてもよい。一実施例では、ptc機能欠損、ヘッジホッグ機能亢進、又はsmoothened機能亢進表現型を有する細胞を目的のテスト物質に接触させ、テスト物質の存在下での細胞の増殖の阻害などについて、検定で採点を行ってもよい。
patched、キュービタス−インターラプタス(原語cubitus interruptus (ci))ファミリーの転写因子、セリン/スレオニンキナーゼ・フューズド、及び、costal-2、smoothened及びサプレッサ・オブ・フューズド(原語:suppresor of fused)の遺伝子産物を含め、数多くの遺伝子産物が、patchedが媒介するシグナル伝達への関与が示唆されてきた。
ヘッジホッグたんぱくにより細胞が誘導されると、下流のエフェクター分子の活性化及び阻害に関与するカスケードの流れが設定され、その結果、最終的には、いくつかの場合で、ある遺伝子の転写又は翻訳に検出可能な変化がおきる。ヘッジホッグが媒介するシグナル伝達の転写ターゲットはおそらくpatched遺伝子 (Hidalgo and Ingham, 1990 Development 110,291-301; Marigo et al., 1996)、 及び、ドゥロソフィラ-キュービタス-インターラプタス遺伝子の脊椎動物相同体、GLI 遺伝子 (Hui et al.(1994) Dev Biol 162: 402-413)である。patched遺伝子の発現は、Shhに対して応答性である肢芽及び神経板の細胞でも誘導されることが示されている(Marigo et al.(1996) PNAS 93: 9346-51 ; Marigo et al. (1996) Development 122: 1225-1233)。Gli 遺伝子は、亜鉛フィンガーDNA結合ドメインを有する推定上の転写因子をコードしている (Orenic et al. (1990) Genes & Dev 4: 1053-1067; Kinzler et al. (1990) Mol Cell Biol 10: 634-642)。肢芽のヘッジホッグに応答して Gli遺伝子の 転写が上方調節されることが報告されているが、Gli3 遺伝子の転写はヘッジホッグの誘導に応答して下方調節される (Marigo et al. (1996) Development 122: 1225-1233)。例えばpatched又はGli遺伝子など、このような標的遺伝子から、これらの遺伝子の、ヘッジホッグシグナル伝達に応答した上方又は下方調節を担う転写調節配列を選び出し、このようなプロモータを、機能可能なようレポータ遺伝子に連結することにより、特定のテスト化合物の、ヘッジホッグ媒介型シグナル伝達経路を変更する上での能力に感受性のある、転写をベースにした検定法を得ることができる。従って、このレポータ遺伝子の発現は、ヘッジホッグの調節物質として働く化合物を開発するための、貴重なスクリーニング・ツールとなる。
本発明による、レポータ遺伝子に基づいた検定法では、転写の変調など、上述した事象のカスケードの最後の段階を測定する。従って、この検定法の一実施例を実施する場合には、ptc機能欠損、ヘッジホッグ機能亢進、smoothened機能亢進に依存するか、又は、Shh自体による刺激に依存する検出シグナルを生成するために、試薬細胞にレポータ遺伝子コンストラクトを挿入する。このレポータ遺伝子からの転写量は、適していると当業で公知の如何なる方法で測定してもよい。例えば、このレポータ遺伝子からのmRNA発現を、RNAse保護又はRNAベースのPCRを用いて検出してもよく、あるいは、このレポータ遺伝子のたんぱく質産物を、特徴的な着色又は固有の生物活性に基づいて同定してもよい。こうして、このレポータ遺伝子からの発現量を、テスト化合物がない状態の同じ細胞からの発現量に比較するか、又は、標的受容体たんぱくのない略同一の細胞での転写量にと比較してもよい。転写量に統計学的又は有意な減少があれば、テスト化合物が何らかの態様で正常なptcシグナルを作動させた(又は機能亢進ヘッジホッグもしくはsmoothenedシグナルに拮抗した)ことになり、例えば、そのテスト化合物はsmoothenedアンタゴニストである可能性があることになる。
実施例
ここまで一般的に説明してきた本発明は、以下の実施例によりさらに容易に理解されるであろうが、これは本発明のある態様または実施態様を具体化することのみを目的としており、本発明を限定するものではない。
例1 ステロイド化合物
ヘッジホッグシグナル伝達経路は正常な胚の発達に必要であり、また、発癌現象にも関与している(L. V. Goodrich and M. P. Scott, Neuron 21, 1243 (1998)) 。例えば、ソニックヘッジホッグシグナル伝達(Shh)が欠損すると、単眼奇形や、顔面、前脳、及びその他の臓器または構造などの発達異常が生じる(C. Chiang et al., Nature 383,407 (1996))が、その伝達経路を不適切に活性化すると、基底細胞癌、髄芽細胞腫、及びその他の腫瘍性障害の発症に関与する(H. Hahn et al., Cell 85, 841 (1996); R. L. Johnson et al., Science 272,1668 (1996); M. Gailani et al., Nat Genet 14,78 (1996); T. Pietsch et al., Cancer Res 57,2085 (1997); J. Reifenberger et al., Cancer Res. 58,1798 (1998); C. Raffel et al., Cancer Res 57, 842 (1997); J. Xie et al., Nature 391,90 (1998))。したがって、この経路を薬理学的に操作できれば、シグナル伝達機序の解明を促進し、体性及び先天性異常を予防または治療するための実用的な手段を提供することができる。植物性ステロイド系アルカロイドであるシクロパミンは、脊椎動物胚に単眼異常及び重症HPEなどの発現を引き起こすことが以前から知られており(R. F. Keeler and W. Binns, Teratology 1,5 (1968))、さらに最近では、Shhシグナルに対する細胞応答を阻害することにより作用することが明らかになった(M. K. Cooper, J. A. Porter, K. E. Young, P. A. Beachy, Science 280,1603 (1998); J. P. Incardona, W. Gaffield, R. P. Kapur, H. Roelink, Development 125,3553 (1998))。シクロパミンを治療に用いる可能性を評価するために、本願発明者らはシクロパミンの作用による機序を研究した。
Hhシグナルへの細胞応答は、二種類の複数回膜貫通タンパクSmo及びPtc1 により制御され、それらはそれぞれ7回及び12回膜貫通型であると推測されている。SmoはWnt受容体のFrizzledファミリーに関連しており、さらに遠隔にはGタンパク質連結型受容体のセクレチンファミリーが関連している(M. R. Barnes, D. M. Duckworth, L. J. Beeley, Trends Pharmacol Sci 19,399 (1998))。遺伝学的及び生化学的なエビデンスから、PtcがSmoの活性を抑制し、HhがPtcに結合することによりこの抑制が解除され、転写エフェクターのCi/GL1ファミリーを介して下流ターゲットを活性化させることが示唆されている(P. Aza-Blanc, F.-A. Remirez Weber, M.-P. Laget, C. Schwartz, T. B. Kornberg, Cell 89, 1043 (1997); N. Methot and K. Basler, Cell 96, 819 (1999); C. H. Chen et al., Cell 98, 305 (1999); B. Wang, J. Fallon, P. Beachy, Cell 100, 423 (2000))。培養細胞を用いたシクロパミン感受性のアッセイを確立するために(すでに確立されているショウジョウバエcl-8細胞のヘッジホッグシグナル伝達アッセイ(Chen et al., 1999)はシクロパミン耐性である(本明細書には表示せず))、本願発明者らは、水晶体最小プロモーターに融合させた8箇所の合成Gli結合部位を含むプロモーターにより駆動されるルシフェラーゼレポーターを用いて、数種類の脊椎動物細胞株をスクリーニングし、完全に修飾されたShhNp(図2A)への転写応答を示す細胞株を選別した(H. Sasaki, C. C. Hui, M. Nakafuku, H. Kondoh, Development 124,1313 (1997))。さらなる研究のために、ShhNpに応答する線維芽細胞株数種のうち、20から150倍のルシフェラーゼ活性の誘導に応答するNIH-3T3マウス胚性線維芽細胞(図2B)を選択した。重要なことに、細胞をシクロパミンで処理すると、ShhNpによる誘導は完全に消滅した(図2C)。
ショウジョウバエcl-8細胞におけるHhシグナル伝達アッセイと同様に、ShhNpによる誘導に対する応答にはレポーター中に機能性Gli結合部位が必要で(表示せず)、その応答はSmoの過剰発現により増大し、Ptcまたは活性PKAの過剰発現により抑制された(表1)。フォルスコリンにより外因性PKAを薬理学的に活性化しても、レポーター発現の誘導を防止した(表1)。この方法を用いて、本願発明者らは、腫瘍突然変異W539L(SmoA1)が構成的にSmoを活性化するとするXieらの結果を確認し、腫瘍組織から別に突然変異したS537N(SmoA2)もSmoを活性化することを明らかにした。どちらかの活性化突然変異体の発現が、ShhNp処理した細胞に認められるレベルに匹敵するレベルのレポーターの発現を誘導した。さらにこのシグナル伝達アッセイの妥当性を検討するために、本願発明者らは既知の経路成分をコードする作製物を細胞に形質移入するか、または既知の経路阻害因子で細胞を処理して、これらの処理を単独または組み合わせた処理がレポーター活性に与える影響を分析した(表1)。ショウジョウバエ及びマウスの遺伝子分析から得られた主な知見を確認し、その結果、NIH-3T3細胞がShhシグナル伝達経路の分析用の忠実で生理学的に有意義なモデルを提供することが示唆された。
次いで、本願発明者らは安定に組み込まれたレポーターを有するクローンNIH-3T3細胞株数種を作製した。応答が最良であった細胞株では、ShhNpによるルシフェラーゼ活性の誘導が20−60倍であることが認められた。ShhNpに対する完全な応答を示すには細胞が飽和濃度に達している必要があり、培養物の密度に減少が見られると応答も低下するということを、この細胞株を用いて明らかにした。飽和密度の必要性は、一時的にルシフェラーゼレポーターを形質移入したNIH-3T3細胞におけるShh応答にも当てはまり(表示せず)、活性化Smoの発現によってレポーター活性化にも当てはまったが(図2D)、Gli1過剰発現による誘導には当てはまらなかった(表示せず)。
この植物性催奇形因子のステロイドの特性、及びコレステロール合成及び/または輸送を阻害する能力(P. A. Beachy et al., Cold Spring Harb Symp Quant Biol 62,191 (1997); Y. Lange, J. Ye, M. Rigney, T. L. Steck, JLipid Res 40, 2264 (1999)) は、見かけ上のステロール感受性ドメインを有するPtc1活性に影響を与える可能性があることを示唆した(S. K. Loftus et al., Science 277,232 (1997))。マウス胚性線維芽細胞におけるShh応答及びシクロパミン阻害の特性を確立してから、Ptc1-/-マウス胚由来の線維芽細胞をシクロパミンの感受性について検定した。Ptc1機能が欠損しているマウスは、Ptc1遺伝子自体を含むShhシグナル伝達のターゲットを広範囲に活性化させる(L. V. Goodrich, L. Milenkovic, K. M. Higgins, M. P. Scott, Science 277,1109 (1997) )。b-ガラクトシダーゼはこれらの細胞中のPtc1プロモーターの制御下で発現するため、b-ガラクトシダーゼ発現をShh経路活性の程度を検定するために用いることができる(図3)。驚くことに、シクロパミンをPtc1-/-細胞に加えるとb-ガラクトシダーゼ発現を著しく抑制し、同様にGli-Lucレポーターの活性を抑制することから、シクロパミンがPtc1機能の欠損下においてShh経路活性を抑制することができることが示唆された。反対に、シクロパミンはGli2過剰発現により誘導された経路活性化を防止することができなかった(表1)。これらの結果から、シクロパミン作用のターゲットはPtc1ではなく(Pct2はPtc1-/-細胞中においてシクロパミンのターゲットである可能性が低い。なぜならPtc2タンパクの発現が経路活性化を抑制し、この経路はPtc1-/-線維芽細胞中で最大に活性化されるからである)、Ptc1とGliタンパクの間のどこかで機能する別の経路成分である可能性が高い。
シクロパミン作用部位をさらに調べるために、本願発明者らはNIH-3T3細胞にSmo cDNAを形質移入し(マウスSmo cDNAプローブは、ラット及びヒトSmo配列を用いた変性オリゴヌクレオチドプライマーを用いたRT-PCRにより作製した。このプローブは引き続き、マウスSmo配列を完全にコードする配列を有するcDNAクローンを単離するために用いられた)、Shhを欠損するSmoの過剰発現がレポーター発現を約10倍誘導したことを明らかにした。この経路の活性化がShhの欠損下で発生し、5mMのシクロパミンで抑制することが可能である(図3B)ことから、シクロパミンの作用機序はShh結合を直接妨害する(すなわちShhの中性アンタゴニストとして)わけではないと推測する。興味深いことに、この濃度のシクロパミンは、腫瘍由来の活性化Smo突然変異体により誘導されたレポーター発現にはあまり作用を示さず(図21B)、このことからシクロパミンは直接的または間接的にSmoに作用し、活性化突然変異がSmoタンパクを耐性化している可能性が示唆された。SmoA1のシクロパミン耐性は、SmoA1発現の低下に関連した経路活性が最大下レベルの場合にも観測された(図3B)。さらに、活性化SmoによるShhシグナル伝達がシクロパミンの影響を受けているのかどうかを調査した。活性化SmoタンパクはPtc1による抑制に耐性であることがすでに報告されているが(M. Murone, A. Rosenthal, F. J. de Sauvage, CurrentBiol. 9,76 (1999))、本願発明者らは、Ptc1作製物(表示せず)またはPtc1-CTD(C末端消去(C-terminally delted))作製物(Ptc1-CTDはPtc1よりも大量に発現することがすでに示されている。N. Fuse et al., Proc Natl Acad Sci US A 96,10992 (1999))を9対1の割合で形質移入するとSmoA1またはSmoA2の活性化作用を完全に阻害することができる(図3C)ことから、この耐性が部分的であることを明らかにした。このように形質移入された細胞にShhNp処理を行うとGli応答レポーターを誘導することができ、このような環境下での誘導は、通常Shhシグナル伝達が消滅する5mMシクロパミンに耐性である(図3C)。このような結果から、十分に大量のPtc1の存在下で活性化されたSmo分子は、シクロパミン耐性ではあっても基本的には正常のShhシグナル伝達に対する応答に寄与できることが示唆される。本願発明者らは、形質移入細胞中に産生される野生型Smoタンパクと活性化Smoタンパクの量が、活性化Smoに関連するレポーター活性のレベルが劇的に上昇しているにもかかわらず同様であることを明らかにしており、単にSmoタンパク変異体が大量であるために大量のPtc1が必要であるわけではない(図3D)。
シクロパミンの量が増加すると活性化Smoの阻害がいくらか生じるが(正常なShhシグナル伝達を完全に阻害するのに十分な濃度である3mMのシクロパミンでは、活性化Smoへの阻害作用はわずかしか見られないが(表示せず)、図4Bでは5mMシクロパミンによる阻害作用を示している)、10から40mMの範囲内でシクロパミンの毒性が生じるために(データは表示せず)、完全な阻害は達成されなかった。しかし、化学合成したシクロパミン誘導体、3-ケト, N-アミノエチルアミノカプロイルジヒドロシンナモイルシクロパミン(KAADシクロパミン、化合物33)は、ShhNp誘導経路活性の抑制において同等以下の毒性を維持しながら10から20倍大きな効力を示した(図4A)。この化合物は、ShhNpシグナル伝達抑制に必要な濃度の約10倍の濃度においてSmoA1誘導レポーター活性を抑制し(図4A)、p2PTC-/- 細胞中のシクロパミンよりも高い効力も示した(図4B)。従って、効力のより高いこのシクロパミン誘導体は、大量のPtc1と同等に効率的に活性化Smoを抑制する。
活性化Smoによって付与されたシクロパミン耐性は、簡単には、シクロパミンがSmo活性に作用し、突然変異を活性化してSmoタンパクを耐性化していると説明することができる。また、活性化されたSmoタンパクが下流成分を大量に産生し、濃度が上昇したこの下流成分を抑制するために大量のシクロパミンが必要となると解釈することもできる。しかし、この代替モデルは、経路の活性化が中程度または低い場合に活性化Smoタンパクのシクロパミン耐性の維持が認められることを説明することができない(図3B)(この環境における仮想シクロパミンターゲットの量は未変性Smoを介したShhNpシグナル伝達により産生されるものと同じ中程度量存在すると考えられるため、活性化Smoがシクロパミンターゲットである下流成分を大量産生するというモデルは、経路活性化が中程度の場合にシクロパミン耐性の維持が認められるということと矛盾する(図3B) 。本願発明者らは、最大に刺激された細胞中の大量のSmoはシクロパミン耐性を付与しないことを明らかにし(表示せず)、Smoによる下流成分の大量産生または活性化がシクロパミン耐性を付与することができるという見解と再度矛盾した)。活性化Smoは未変性Smoよりも大量に発現しないことから(図3D)、突然変異の活性化は経路を活性化するより高度な内在能力を付与する可能性があると考えられる。これは、他の7回膜貫通型受容体と同様に(R. A. Bond et al., Nature 374, 272 (1995); H. R. Bourne, Curr Opin Cell Biol 9, 134 (1997))、Smoが活性型と不活性型のバランスがとれている状態で存在しているかもしれないことを示唆している。シクロパミン及びPtc活性はこのバランスを不活性状態に移行させ、腫瘍に関連する突然変異は活性化状態に移行させるとも考えられ、これにより活性化Smoタンパクを抑制するために高レベルのPtc及びシクロパミン活性が必要であることを説明することができる。
シクロパミンは見かけ上、Shh経路にSmo活性レベルで作用するが(上述参照)、この作用は直接である必要はなく、細胞内輸送に関与する分子、Smoの転写後修飾に作用する分子、またはSmo活性に作用するその他の分子への影響を介してこの作用を操作することもできる。シクロパミンのこのような間接的な作用は、活性化Smoと不活性化Smoの間の構造遷移とは必ずしも矛盾していないと考えられ、それは、構造状態は様々な機序により細胞下局在または共有結合修飾の状態と関連することがあるためである。機序にかかわらず、このような阻害因子は不適切なShh経路活性によって生じる疾患の治療に有用であると考えられる。ヒトPtc1遺伝子のヘテロ接合的機能欠損突然変異に関連する常染色体優性疾患である基底細胞母斑症候群(またはゴーリン症候群とも呼ばれる)患者は、各種腫瘍、特に顕著に基底細胞癌(BCC)、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、及び線維肉腫の発症率が高い。散発性BBCの~40%、及び初期神経外胚葉腫瘍の~25%に、Ptc1における機能欠損突然変異、またはそれに加えてSmoにおける活性化突然変異が認められる。シクロパミン及びその誘導体にはこれら両タイプの突然変異によって経路活性化を遮断する能力があることから、Smo活性に作用するこれら植物由来化合物などは治療薬として価値がある可能性があることが示唆される。
例2 ステロイド誘導体
新規誘導体の合成
シクロパミン及びジェルビン(それぞれの構造は図5の1及び2)は、ソニックヘッジホッグシグナル伝達経路を特異的に阻害することで知られる、密接に関連した関連植物由来のステロイド系アルカロイドである(Cooper et al., Science 280, p. 1603-1607,1998)。本願発明者らはこれら2種類の化合物をその第二アミン、C-3酸素、及び/またはC5-C6オレフィンを様々に修飾して、新規誘導体23種を化学合成した。これら化合物の中には容易に標識をした状態に合成することができるため、結合の研究に有用なものもある。また、光活性架橋とそれに続く放射標識またはビオチン部分の標識タンパクへの結合に有用な官能基を有する化合物もある。これらの化合物の一種は蛍光標識されており、細胞におけるシクロパミン作用のターゲットを直接観察するために有用であると考えられる。各種誘導体の効力を表IIに示す。
SAR研究による効力向上の実現
親NIH-3T3線維芽細胞に由来し、安定に組み込まれたShh感受性ルシフェラーゼレポーターを有するクローン細胞株を用いて、ソニックヘッジホッグ誘導を50%阻害するために必要な各化合物の濃度(IC50)を測定した。SAR研究により、3,b-ヒドロキシルが付加すると活性が劇的に低下するが、3,b-ヒドロキシルを酸化してケト基にすると効力が上昇することを明らかにした。また、かさ高い基を第二級アミンに付加すると効力は低下するが、長い脂肪族リンカーはこのようなかさ高い基を付加させやすくするだけでなく効力も上昇させることを明らかにした。これまで同定した化合物の中で最も活性な化合物の効力(図5の構造34、IC50=30nM)は、シクロパミンの効力(図5の構造1、IC50=300nM)の10倍を示した。さらに高い効力を得るために、第二級アミンへの様々な付加物を系統的に試験して、3-ケト官能性とともにこれらの付加物を組み合わせることを、すぐに行うべきである。本願発明者らはすでにさらに効力の高い誘導体を合成しており、それらは親化合物と比較して、毒性をはるかに低く抑えながらShhシグナル伝達を阻害する望ましい特性を示している。
化合物の広範囲な用途
本願発明者らは、これらの化合物が、Patched1(Ptc1)タンパクの機能の欠損またはSmoタンパクの構成的な活性化機能のために経路活性が上昇した細胞中の経路活性を遮断することができるということを明らかにした。これらの化合物がこの両タイプの欠陥を有する細胞中の経路活性を遮断することができることから、その化合物が特定の散発的な腫瘍の治療、またはそのような腫瘍の形成頻度が高い遺伝的素因を有する患者の予防的治療に広く有用である可能性が示唆される。そのような腫瘍には、基底細胞癌、髄芽細胞腫、線維肉腫、及び横紋筋肉腫がそれらに限定されずに含まれる。これらの化合物の用途には、さらに膵臓組織の誘導、過剰な毛髪成長の除去、及びその他の皮膚障害の治療がそれらに限定されずに含まれる。
Hhシグナルへの応答は、2種類の膜貫通型タンパク質Patched(Ptc)及びSmoothened(Smo)により制御されている。Ptcは12回膜貫通型タンパクで、直接Hhに結合する。Smoは7回膜貫通型タンパクで、Wnt受容体のFrizzledファミリーに関連し、さらに遠隔にはGタンパク質連結型受容体のメンバーに関連している。遺伝学的なエビデンスから、PtcがSmoの活性を抑制し、Hhがこの抑制を解除して転写エフェクタのCi/GLIファミリーなどの下流ターゲットを活性化させることが示唆されている。
Ptc1タンパクは経路活性の抑制に関与し、このタンパク質がない細胞は構成的に高レベルの経路活性を示す。Ptcl機能の欠損は、散発的基底細胞癌、髄芽細胞腫、線維肉腫、横紋筋肉腫及びその他の腫瘍の高い発症率の原因として関連がある。さらに、Ptc1遺伝子座の家族性ヘテロ接合性がこれらの腫瘍の形成が高頻度であるという素因と関連している。本願発明者らはシクロパミン、ジェルビン、及び関連化合物が、Ptc機能が欠損している細胞中の経路活性を完全に抑制することができるということを明らかにした。
Smoタンパクは経路活性に必要であり、Smo遺伝子座の特定の突然変異により、Shhの刺激が欠如していても構成的な経路活性が生じる。本願発明者らは、このような活性化Smoタンパクを発現する細胞はこれらの化合物にある程度耐性であるが、それでもShhタンパクで刺激された正常細胞の抑制に必要な量の10倍から100倍の量で抑制することができることを明らかにした。したがって、Smo座において散発的に活性化する突然変異に関連する腫瘍も、これらの化合物を用いた治療に感受性であると考えられる。
構造活性相関(SAR)データの総括 シクロパミン(1)及びジェルビン(2)は、ヘテロ原子の位置、つまり第二級アミン及び第二級アルコール位において最も効率的に修飾することができる。従って、本願発明者らが行ったアルカロイド誘導体の初期の研究は、このようなヘテロ原子修飾の化学合成及びこれら新規化合物の生物学的評価に集中した。標準合成法及び細胞を用いたShhシグナル伝達アッセイを用いて、カルバメート結合を介した化学基とステロイドアルコールの結合が効率的にShh阻害活性を減少させること、つまり、細胞を用いたアッセイにおいてC3-OH修飾化合物8及び12がシクロパミンの約100倍のIC50を示すことを明らかにした。またこれらカルバミン含有化合物の効力は、より不安定に修飾されたC3-OH基を有するシクロポシン(3)の1/10で、観測されたシクロポシンの阻害活性は、実際はグリコシド結合の部分的な加水分解によるものであることが示唆される。
反対に、第二級アミンの塩基性を維持するようなこの部分の修飾はシクロパミンターゲットによって受容されている。本研究のN-アルキル誘導体はすべてジアミン中間体17を介して化学合成されたもので、多数のシクロパミン類似体の効率的な調製を可能にする。化合物29、30、39、40及び43に見られた中程度サイズの構造要素でさえも、これらのアルカロイドのShhシグナル伝達を遮断する能力を有意に低下させることはなく、ほとんどの付加物は阻害活性を強化するようにさえ見える(29、30、39、及び43)。このような知見は、小さいシクロパミンN-アルキル誘導体が生動物における潜在的な催奇性を減少させたというKeelerらの報告とはいささか異なる。このような差違の理由は不明であるが、動物研究における代謝及び/または薬理学的影響を反映している可能性もある。しかし、本願発明者らによる細胞を用いたアッセイでは、シクロパミンターゲットによって受容されたN-アルキル構造の種類には限界がある。立体的にかさ高い化合物は濃度15mMまではShhシグナル伝達を遮断することができない(誘導体57、58、及び63)。それは細胞膜の不浸透性、またはシクロパミン相互作用部位からの立体排除のいずれかが原因である。比較的小さく、シクロパミン骨格構造近くで分枝した要素でさえ、生物学的活性を著しく消滅させる(化合物50)。
このような化合物はシクロパミンターゲットにより受容されるN-修飾の多様性を示している。しかし、ヒドロキシル基をケトンに酸化させると、シクロパミン誘導体の阻害活性が一様に約2倍に上昇する(化合物18と19、20と21、22と26、33と34、40と41、及び50と51を比較)ことには注目しなければならない。C5-C6オレフィンをC4-C5位に挿入してエノンを形成しても、化合物の効力に見かけ上影響はなく(化合物26及び41参照)、Keelerらが報告したC5-C6位が不飽和状態であることの重要性は、主にC5炭素のsp2-混成軌道形成によるものであることを示唆する。総括すると、このSARデータにより、強力なShhシグナル伝達阻害因子(例えば化合物34は現在知られているShh阻害因子の中で最強である)、放射標識プローブ(30及び39)、光親和性試薬(39及び41)、及び蛍光体(43)の合成が容易になった。
最も重要なことに、本研究に記載された化合物は、シクロパミン誘導体が容易に合成、評価できるものであるということを例示している。用途の広い中間体17はさらなるシクロパミンベース分子の開発を促進し、望ましい薬理学的特性を有する誘導体の発見を促すものである。このようなシクロパミン類似体はコンビナトリアル合成アプローチにより迅速に調製することも可能である。つまり、17のシクロパミン骨格をC3-OHを介して固体支持体に固定し、反復型分割プール法により構造的に多様な官能基を第一級アミンに結合させることができる。原則的に、この戦略により、ハイスループットスクリーニングに適した方式で数百万種類のシクロパミン誘導体を同時に合成することが可能になるであろう。
化合物の調製
一般合成方法 すべての反応は窒素加圧下により行われた。空気及び湿気に影響される化合物は、ゴム製隔膜を通してシリンジまたはカニューレにより導入した。すべての試薬及び溶液は分析級でありそのまま使用したが、以下に述べるものを例外とした。DMF及びDMSOは4オングストローム分子ふるい上に保存し、水は脱イオン化して蒸留した。フラッシュクロマトグラフィ精製は、指定した溶媒系をメルク社製シリカゲル60(230-400メッシュ)上で用いて行った。低分解能及び高分解能質量スペクトルは、ハーバード大学化学・化学生物学科の質量スペクトル分光施設において測定した。プロトン磁気共鳴スペクトル(H1 NMR)はバリアン社製500MHzスペクトル分光器で記録した。
粗シクロパミン(1)の分離 ベラトラム・カリフォルニカム(Veratrum californicum)(6.06g)のベンゼン抽出物を米国農業省から入手し、フラッシュクロマトグラフィで精製した(SiO2、ジクロロメタン/エタノールを50:1から6.25:1に段階勾配をつけて、薄茶色固体状の粗シクロパミンを得た(460 mg、約1.12 mmol)。H1 NMR:スペクトルによりある程度の不純物が入ったシクロパミンの分離を確認。
粗ジェルビン(2)の分離 ベラトラム・ビリデス(Veratrum virides)(1.1g)ベンゼン抽出物を米国農業省から入手し、フラッシュクロマトグラフィで精製し(SiO2、ジクロロメタン/エタノールを50:1から6.25:1に段階勾配させた)、黄色がかった固体(215 mg、約505mmolを得た。母液を濃縮、再結晶化させて、別の粗ジェルビンバッチを得た(101 mg、約237 mmol)。H1 NMR:スペクトルよりある程度の不純物が入ったジェルビンの分離を確認。
シクロポシン(3) 米国農業省から白色固体状シクロポシンを入手した。
ジヒドロケイ皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(4) 塩化ジヒドロシンナモイル(638 mL, 4.21mmol)をN-ヒドロキシスクシンイミド(500 mg, 4.21 mmol)及びトリエチルアミン(704 mL, 5.05mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液に0℃において滴下して加えた。その反応物を室温まで温めて1時間撹拌した。次にこの反応混合物をジエチルエーテル(50mL)に加え、1N HCl(1 x 20 mL)及び飽和NaHCO3水溶液(1 x 20 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて減圧下で濃縮し、白色固体(1.03g, 4.17mmol, 99%)を得た。HRMS:(EI+) C13H13NO4(M + H)についての計算値: 247.0845; 実測値: 247.0841。1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチルシクロパミン(5) トリフルオロ酢酸無水物(77.3 mL, 547 mmol)を粗シクロパミン(75.0 mg, 182 mmol)及びトリエチルアミン(102 mL, 729 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加え、その混合物を室温で10分間撹拌した。その反応混合物に窒素ガスを通気して蒸発乾燥させ、MeOH(2 mL)中に再懸濁させた。メタノール溶液を45分間還流させてから、減圧下で蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から2:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のアミド(47.3 mg, 93.2mmol, 51%)を得た。LRMS: (ES+) C29H40NO3F3 (M + H)についての計算値: 508; 実測値 : 508。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチル, 3O-スクシンイミジルカルボニルシクロパミン(6) 炭酸ジスクシンイミジル(107mg, 417mmol)を5(42.3 mg, 83.3 mmol)及びトリエチルアミン(116 mL, 833mmol)のアセトニトリル(1.0 mL)溶液に加え、その混合物を室温で5時間撹拌した。その反応混合物をジエチルエーテル(10 mL)に溶解し、5%クエン酸(1 x 2 mL)及び飽和NaHCO3水溶液(1 x 2 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から2:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状の炭酸塩(35.6 mg, 54.9mmol, 66%)を得た。LRMS: (ES+) C34H43N2O7F3 (M + H)についての計算値: 649; 実測値 : 649。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチル, 3O-ジヒドロシンナモイルエチレンジアミンカルバモイルシクロパミン(7) エチレンジアミン(22.0 mL, 342 mmol)を6(11.1 mg, 17.1 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加え、その混合物を室温で15分間撹拌した。その反応混合物に窒素ガスを通気して蒸発乾燥させて、過剰のエチレンジアミンを減圧下で除去した。得られた残留物をジクロロメタン(0.5 mL)に再溶解させて4(10.6 mg, 4.28 mmol)及びトリエチルアミン(5.97 mL, 42.8 mmol)で処理した。室温で30分間撹拌後、溶液をガラスウール栓に通して濾過した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを4:1から1:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のカルバメート(6.7 mg, 9.23 mmol, 54%)を得た。LRMS: (ES+) C41H54N3O5F3 (M + H)についての計算値: 726; 実測値 : 726。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3O-ジヒドロシンナモイルエチレンジアミンカルバモイルシクロパミン(8) 化合物7(3.0 mg, 4.13 mmol)をアンモニアのメタノール(0.5 mL, 1.00mmol)2M溶液に溶解した。この反応物を室温で2時間撹拌し、次いで窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.1から20:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のアミン(2.1 mg, 3.33 mmol, 81%)を得た。LRMS: (ES+) C39H55N3O4(M + H)についての計算値: 630; 実測値 : 630。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチルジェルビン(9) トリフルオロ酢酸無水物(84.4 mL, 299 mmol)を粗ジェルビン(50.9 mg, 120 mmol)及びトリエチルアミン(100 mL, 359 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加え、その混合物を室温で15分間撹拌した。その反応混合物を窒素ガスを通気して蒸発乾燥させ、MeOH(0.5 mL)中に再懸濁させた。このメタノール溶液を室温で10分間撹拌し、次いで減圧下で蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを16:1から2:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のアミド(37.8 mg, 72.5 mmol, 60%)を得た。LRMS: (ES+) C29H38NO4F3 (M + H)についての計算値: 522; 実測値 : 522。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチル, 3O-スクシンイミジルカルボニルジェルビン(10) 炭酸ジスクシンイミジル(92.9 mg, 363 mmol)を9(37.8 mg, 72.5 mmol)及びトリエチルアミン(101 mL, 725 mmol)のアセトニトリル(1.0 mL)溶液に加え、その混合物を室温で6時間撹拌した。その反応混合物をジエチルエーテル(10 mL)に溶解して、5%クエン酸(1 x 2 mL)及び飽和NaHCO3水溶液(1 x 2 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から2:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状の炭酸塩(38.4 mg, 57.9 mmol, 80%)を得た。HRMS: (ES+) C34H41N2O8F3 (M + H)についての計算値: 685.2712; 実測値 : 685.2711。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチル, 3O-ジヒドロシンナモイルエチレンジアミンカルバモイルジェルビン(11) エチレンジアミン(20.2 mL, 302 mmol)を10(10.0 mg, 15.1 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加え、その混合物を室温で15分間撹拌した。その反応混合物を窒素ガスを通気して蒸発乾燥させ、過剰のエチレンジアミンを減圧下で除去した。得られた残留物をジクロロメタン(0.5 mL)に再溶解して、0℃において4(7.47 mg, 30.2 mmol)及びトリメチルアミン(4.21 mL, 30.2 mmol)で処理した。0℃で30分間撹拌した後、その溶液をガラスウール栓で濾過した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを4:1から1:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のカルバメート(8.0 mg, 10.8 mmol, 72%)を得た。LRMS: (ES+) C41H52N3O6F3 (M + H)についての計算値: 740; 実測値 : 740。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3O-ジヒドロシンナモイルエチレンジアミンカルバモイルジェルビン(12) アンモニア水(29%(w/w)水溶液200 mL、3.04 mmol)を11(1.0 mg, 1.35 mmol)のメタノール(200mL)溶液に加えた。その反応物を室温で30分間撹拌し、次いで窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.1から20:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のアミン(0.8 mg, 1.24 mmol, 92%)を得た。LRMS: (ES+) C39H53N3O5 (M + H)についての計算値: 644; 実測値 : 644。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチルグリシン(13) メチルトリフルオロ酢酸(804 mL, 7.99mmol)及びトリエチルアミン(928 mL, 6.66 mmol)をグリシン(500 mg, 6.66mmol)のメタノール(2.5 mL)懸濁液に加えた。その混合物を18時間激しく撹拌し、1N HClをpHが2になるまで滴下した。その反応物を酢酸エチル(30mL)に加え、1N HCl(2 x 10 mL)で洗浄してMgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、白色固体状のアミド(991 mg, 5.79 mmol, 87%)を得た。LRMS: (ES+) C4H4NO3F3 (M + NH4)についての計算値: 189; 実測値 : 189。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチルグリシンN-ヒドロスクシンイミドエステル(14) 炭酸ジスクシンイミジル(300 mg, 1.17mmol)を13(200 mg, 1.17mmol)及びピリジン(94.6 mL, 1.17 mmol)のアセトニトリル(1.0 mL)溶液に加えた。その反応混合物を室温で3時間撹拌したところ、その溶液は透明になり気体が発生した。この溶液を酢酸エチル(10 mL)に加え、1N HCl(2 x 5 mL)及び飽和NaHCO3水溶液(2 x 5 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて減圧下で濃縮し、白色固体(232 mg, 865 mmol, 74%)を得た。LRMS: (ES+) C8H7N2O5F3 (M + NH4)についての計算値: 286; 実測値 : 286。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-トリフルオロアセチルグリシル)シクロパミン(15) トリエチルアミン(135 mL, 972 mmol)及び14(261 mg, 972 mmol)をシクロパミンのジクロロメタン(2.0 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で1時間撹拌し、次いで直接フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から2:1に段階勾配させた)にかけて精製し、白色固体状のアミド(166 mg, 294 mmol, 60%)を得た。LRMS: (ES+) C31H43N2O4F3 (M + H)についての計算値: 565; 実測値 : 565。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-グリシルシクロパミン(16) アンモニア水(29%(w/w)水溶液3mL, 45.6 mmol)を15(162 mg, 296 mmol)のメタノール溶液(4mL)に加えた。この反応物を室温で5時間撹拌し、次いで減圧下で蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム、次いでクロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.1から20:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のアミン(110 mg, 235 mmol, 79%)を得た。LRMS: (ES+) C29H44N2O3 (M + H)についての計算値: 469; 実測値 : 469。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-アミノエチルシクロパミン(17) 水素化アルミニウムリチウム(1M THF溶液939 mL、939 mmol)を16(110 mg, 235 mmol)のTHF(6mL)懸濁液に加えた。この反応物を3時間還流し、次いで水(5 mL)及びKOH水溶液(10%溶液10mL)で失活させた。この混合物をクロロホルム(2 x 20 mL)で抽出後、有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過して減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.1から20:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のジアミンを得た(94.4 mg, 208 mmol, 88%)。LRMS: (ES+) C29H46N2O2 (M + H)についての計算値: 455; 実測値 : 455。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-ジヒドロシンナモイルアミノエチル)シクロパミン(18) トリエチルアミン(5.03 mL, 36.1 mmol)及び4(4.46 mg, 18.0 mmol)を17(8.2 mg, 18.0mmol)のジクロロメタン(500 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で3時間撹拌し、次いで窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを4:1から1:1に段階勾配させた)にかけて精製し、白色固体状のアミド(5.7 mg, 9.71 mmol, 54%)を得た。LRMS: (ES+) C38H54N2O3 (M + H)についての計算値: 587; 実測値 : 587。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3-ケト, N-(N'-ジヒドロシンナモイルアミノエチル)シクロパミン(19) ジメチルスルホキシド(6.89 mL, 97.1 mmol)を塩化オキサリル(4.24 mL, 48.6 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液に-78℃で加えた。この混合物を-78℃で10分間撹拌後、18(5.7 mg, 9.71 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液を加え、その反応物を-78℃でさらに30分間撹拌した。トリエチルアミン(20.3 mL, 146mmol)をこの溶液に加え、-78℃で10分間撹拌して酸化を完了させ、次いで室温まで温めた。この反応物を水(1 mL)及びクロロホルム(5 mL)を加えて失活させ、有機層を単離して食塩水(1 x 2 mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から4:1に段階勾配させた)にかけて精製し、白色固体状のケトン(2.0 mg, 3.42 mmol, 35%)を得た。反応開始化合物も回収した(1.6 mg, 2.73 mmol, 28%)。LRMS: (ES+) C38H52N2O3 (M + H)についての計算値: 585; 実測値 : 585。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(4-ベンゾイルベンゾイル)アミノエチル)ベンゾフェノン(20) 4-ベンゾイル安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(8.01 mg, 23.5 mmol)及びトリエチルアミン(6.55 mL, 47.0 mmol)を17(10.7 mg, 23.5 mmol)のジクロロメタン(500 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で2時間撹拌してから、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを100:1から50:1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のベンゾフェノン(10.8 mg, 16.3 mmol, 69%)を得た。LRMS: (ES+) C43H54N2O4 (M + H)についての計算値: 663; 実測値 : 663。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3-ケト, N-(N'-(ベンゾイルベンゾイル)アミノエチル)シクロパミン(21) ジメチルスルホキシド(11.6 mL, 163 mmol)を塩化オキサリル(7.11 mL, 81.5 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液に-78℃において加えた。その混合物を-78℃で10分間撹拌後、20(10.8 mg, 16.3 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液を加え、この反応混合物を-78℃でさらに30分間撹拌した。トリエチルアミン(34.1 mL, 245 mmol)をこの溶液に加えて、-78℃で10分間撹拌して反応を完了させ、次いで室温まで温めた。この反応物に水(1 mL)及びクロロホルム(5 mL)を加えて失活させた。次いで、得られた有機層を食塩水(1 x 2 mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させて、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から2:1に段階勾配させた)にかけて精製し、白色固体状のケトン(6.3 mg, 9.53 mmol, 58%)を得た。LRMS: (ES+) C43H52N2O4 (M + H)についての計算値: 661; 実測値 : 661。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-アジドヨードフェニルプロピオニルアミノエチル)シクロパミン(22) アジドヨードフェニルプロピオニルN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(1.9 mg, 4.18 mmol)及びトリエチルアミン(2.34 mL, 16.7 mmol)を17(1.9 mg, 4.18 mmol)のジクロロメタン(500 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で3時間撹拌し、次いで窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを4:1から1:1に段階勾配させた)にかけて精製し、白色固体状のベンゾフェノン(1.6 mg, 2.12 mmol, 51%)を得た。LRMS: (ES+) C38H52N5O3I (M + H)についての計算値: 754; 実測値 : 754。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-トリフルオロアセチルアミノエチル)シクロパミン(23) トリフルオロ酢酸無水物(20.6 mL, 146 mmol)及びトリエチルアミン(24.5 mL, 176 mmol)を17(13.3 mg, 29.3 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加えた。その混合物を30分間室温で撹拌し、次いで窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。得られた残留物をメタノール(1mL)に再溶解させて、その溶液を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去後、フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを4:1から2:1に段階勾配させた)にかけて精製し、白色固体状のアミド(9.2 mg, 16.7 mmol, 57%)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3-ケト, N-(N'-トリフルオロアセチルアミノエチル)シクロパミン(24) ジメチルスルホキシド(11.9 mL, 167 mmol)を塩化オキサリル(7.28 mL, 83.5 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液に-78℃において加えた。その混合物を-78℃で10分間撹拌後、23(9.2 mg, 16.7 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液を加え、その反応物を-78℃でさらに30分間撹拌した。その溶液にトリエチルアミン(35.0 mL, 251 mmol)を加えて-78℃で10分間撹拌して酸化を完了させてから、室温まで温めた。その反応物に飽和NaHCO3水溶液(2 mL)及びクロロホルム(5 mL)を加えて失活させ、有機層を単離してNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から4:1に段階勾配させた)にかけて精製し、白色固体状のケトン(6.0 mg, 10.9 mmol, 65%)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3-エノン, N-アミノエチルシクロパミン(25) アンモニア水(29%(w/w)水溶液250 mL、3.80 mmol)を24(3.0 mg, 5.47 mmol)のメタノール(250 mL)溶液に加えた。その反応物を室温で24時間撹拌し、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.1から20:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のアミンを得た(3.0 mg, 6.63 mmol, quant.)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3-エノン, N-(N'-アジドヨードフェニルプロピオニルアミノエチル)シクロパミン(26) アジドヨードフェニルプロピオニルN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(1.4 mg, 3.31 mmol)及びトリエチルアミン(1.8 mL, 13.2 mmol)を25(1.5mg, 3.31 mmol)のジクロロメタン溶液(250 mL)に加えた。その反応物を室温で3時間撹拌し、次いでジメチルアミノプロピルアミンで失活させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から2:1に段階勾配させた)にかけて精製し、白色固体状のアリールアジド(0.5 mg, 0.665 mmol, 20%)を得た。LRMS: (ES+) C38H50N5O3I (M + H)についての計算値: 752; 実測値 : 752。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチル12-アミノドデカン酸(27) メチルトリフルオロ酢酸(200mL, 1.99mmol)及びトリエチルアミン(184mL, 1.32 mmol)を12-アミノドデカン酸(300 mg, 1.32 mmol)のメタノール(2 mL)溶液に加えた。その混合物を18時間激しく撹拌し、1N HClをpHが2になるまで滴下して加えた。その反応物を酢酸エチル(20 mL)に加え、1N HCl(2 x 5 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて、減圧下で濃縮し、白色固体状のアミド(398 mg, 1.28 mmol, 97%)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチル12-アミノドデカン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(28) 炭酸ジスクシンイミジル(247 mg, 964 mmol)を27(200mg, 642mmol)及びピリジン(104mL, 1.28 mmol) のアセトニトリル溶液(2.0 mL)に加えた。その反応混合物を室温で4.5時間撹拌したところ、その溶液は透明になり気体を発生した。その溶液を酢酸アセチル(10mL)に加え、1N HCl (2 x 1 mL)及び飽和NaHCO3(2 x 1 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮して白色固体(257 mg, 629 mmol, 98%)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-トリフルオロアセチルアミノドデカノイル)アミノエチル)シクロパミン(29) トリエチルアミン(4.78 mL, 34.3 mmol)及び28(8.4 mg, 20.6mmol)を17(7.8 mg, 17.2mmol)のジクロロメタン(250mL)溶液に加えた。その反応物を室温で12時間撹拌し、次いで窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを100:1から25:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のアミドを得た(8.0 mg, 10.7 mmol, 62%)。LRMS: (ES+) C43H68N3O4 (M + H)についての計算値: 748; 実測値 : 748。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-プロピオニルアミノエチル)シクロパミン(30) プロピオニルN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(1.08 mg, 6.33 mmol)及びトリエチルアミン(1.48 mL, 10.6 mmol)を17(2.4 mg, 5.28 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液に加えた。その反応物を室温で12時間撹拌し、次いでジメチルアミノプロピルアミンで失活させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを100:1から25:1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のアミドを得た(1.8 mg, 3.52 mmol, 67%)。LRMS: (ES+) C32H50N2O3 (M + H)についての計算値: 511; 実測値 : 511。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3H標識した30の調製 プロピオニルN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(1 mCi, 比放射能=100 Ci/mmol, 10nmol)の酢酸エチル(1.0 mL)溶液を17(1.1 mg, 2.5 mmol)のクロロホルム(100mL)溶液と混合した。その反応混合物を撹拌せずに20時間室温でインキュベートした。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを100:1から25:1に段階勾配させた)で精製し、トリチウム標識したシクロパミン誘導体を得た。望ましい生成物を含有する画分をプールし、窒素ガスを通気して濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(200 mL)に再懸濁し、-20℃で保存した。bシンチレーションカウンターで分析したところ、反応収率は約81%であり、また、薄層クロマトグラフィ(Rf=0.80; ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン 10:2:0.1)で分析したところ、冷却した30の既知の特性と一致した。
N-ジヒドロシンナモイルアミノカプロン酸(31) アミノカプロン酸(100 mg, 747mmol)及び4(185 mg, 747mmol)をDMF/水(1 mL; 1:1)に溶解した。その反応物を室温で1時間撹拌し、次いで1N HClでpHが2になるまで酸化させた。その混合物を酢酸エチル(10 mL)に加え、1N HCl(2 x 5 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて、減圧下で濃縮して白色ロウ状固体(175 mg, 665 mmol, 89%)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-ジヒドロシンナモイルアミノカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(32) 炭酸ジスクシンイミジル(155 mg, 604 mmol)を31(159 mg, 604 mmol)及びピリミジン(97.7 mL, 1.21 mmol)のアセトニトリル(1 mL)溶液に加えた。その反応混合物を室温で2.5時間撹拌したところ、その溶液は透明になり気体を発生した。その溶液を酢酸エチル(5 mL)に加え、1N HCl(2 x 1 mL)及び飽和NaHCO3水溶液(2 x 1 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて、減圧下で濃縮して無色油状物(156 mg, 433 mmol, 72%)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-ジヒドロシンナモイルアミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(33) トリエチルアミン(4.43 mL, 31.8 mmol)及び32(5.75 mg, 15.9 mmol)を17(7.25 mg, 15.9 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液に加えた。その反応物を室温で1時間撹拌し、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを100:1から25:1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のアミド(5.8 mg, 8.29 mmol, 52%)を得た。LRMS: (ES+) C44H65N3O4 (M + H)についての計算値: 700; 実測値 : 700。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3-ケト, N-(N'-(N"-ジヒドロシンナモイルアミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(34) ジメチルスルホキシド(12.7 mL, 177 mmol)を-78℃において塩化オキサリル(7.73 mL, 88.6 mmol)のジクロロメタン(250 mL)に加えた。その混合物を-78℃で10分間撹拌し、33(6.2 mg, 8.86 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液を加え、その反応物を-78℃でさらに30分間撹拌した。その溶液にトリエチルアミン(37.1 mL, 266 mmol)を加えて-78℃で10分間撹拌して酸化を完了させてから、室温まで温めた。その反応を飽和NaHCO3水溶液(2 mL)で失活させ、クロロホルム(2 x 2 mL)で抽出した。次いで、得られた有機層を単離して、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを100:1から25:1に段階勾配させた)で精製し、黄色がかった油状のケトンを得た(5.4 mg, 7.74 mmol, 87%)。LRMS: (ES+) C44H63N3O4 (M + H)についての計算値: 698; 実測値 : 698。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチルアミノカプロン酸(35) トリフルオロ酢酸メチル(513 mL, 5.10 mmol)及びトリエチルアミン(474 mL, 3.40 mmol)をアミノカプロン酸(455 mg, 3.40 mmol)のメタノール(2 mL)懸濁液に加えた。その混合物を8時間激しく撹拌し、1N HClをpHが2になるまで滴下して加えた。その反応物を酢酸エチル(10mL)に加え、1N HCl(2 x 2 mL)で洗浄して、MgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮して白色固体状のアミド(745 mg, 3.49 mmol, quant.)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチルアミノカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(36) 炭酸ジスクシンイミジル(541 mg, 2.11 mmol)を35(300 mg, 1.41 mmol)及びピリジン(227 mL, 2.81 mmol)のアセトニトリル(2.0 mL)溶液に加えた。その反応混合物を室温で13時間撹拌したところ、その溶液は透明になり気体を発生した。その溶液を酢酸エチル(10 mL)に加えて、1N HCl(2 x 1 mL)及び飽和NaHCO3水溶液(2 x 1 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて、減圧下で濃縮して白色固体(471 mg, 1.45 mmol, quant.)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-トリフルオロアセチルアミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(37) トリエチルアミン(12.3 mL, 88.0 mmol)及び36(17.1 mg, 52.8 mmol)を17(20.0 mg, 44.0 mmol)のジクロロメタン(200 mL)溶液に加えた。その反応混合物を室温で13時間撹拌し、ジメチルアミノプロピルアミン(11.2 mL, 88.0 mmol)で失活させて、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを50:1から25:1に段階勾配させた)で精製し、無色油状ののアミドを得た(26.9 mg, 40.5 mmol, 92%)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-アミノカプロイルアミノエチル)シクロパミン(38) アンモニア水(29%(w/w)水溶液200mL、3.40 mmol)を37(26.9 mg, 40.5 mmol)のメタノール(400 mL)溶液に加えた。その反応物を室温で20時間撹拌してから、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.1から20:4:0.1に段階勾配させた)で精製し、白色ロウ様固体状のアミンを得た(19.3 mg, 34.0 mmol, 84%)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-アジドヨードフェニルプロピオニルアミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(39) アジドヨードフェニルプロピオニルN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(1.4 mg, 3.38 mmol)及びトリエチルアミン(0.94mL, 6.76 mmol)を38(1.92 mg, 3.38 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液に加えた。その反応物を室温で2.5時間撹拌し、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン/アセトン/トリエチルアミンを4:1:0.025から1:2:0.015に段階勾配させた)で精製し、無色油状のアジドを得た(2.2 mg, 2.54 mmol, 75%)。LRMS: (ES+) C44H63N6O4I (M + H)についての計算値: 867; 実測値 : 867。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
125I標識した39の調製 125I標識したアジドヨードフェニルプロピオニルN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(0.250 mCi、比放射能=2200 Ci/mmol, 0.114 nmol)の酢酸エチル(2.1 mL)溶液を、窒素ガスを通気して体積が約10 mLになるまで濃縮した。その濃縮溶液を酢酸エチル(100 mL)で希釈して38(1.0 mg, 1.76 mmol)のクロロホルム(100 mL)溶液と混合した。この反応混合物を撹拌せずに室温で43時間インキュベートしてから、窒素ガスを通気して約10mLに濃縮した。その残留物をクロロホルム(200 mL)に懸濁させて、フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを100:1から12.5:1に段階勾配させた)で精製し、放射標識されたアジドを得た。望ましい生成物を含有する画分をプールし、窒素ガスを通気して濃縮して、メタノール(1 mL)に再懸濁し、少量を定量のために取り除いた。ガンマ線カウンターによる分析の結果、反応収率は基本的には定量的であることが判明した。その溶液を窒素ガスを通気して再濃縮し、メタノール(250 mL)に再懸濁して-20℃で保存した。薄層クロマトグラフィ(Rf = 0.62; ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン10:2:0.1)の分析では、冷却した39の既知の特性と一致した。
N-(N'-(N"-ビオチノイルアミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(40) ビオチノイルN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(6.72 mg, 14.8 mmol)及びトリエチルアミン(3.43 mL, 24.6 mmol)を38 (5.6 mg, 12.3 mmol)のDMF(250 mL)溶液に加えた。その反応物を室温で14時間撹拌してから、クロロホルム(2 mL)に加えた。その有機混合物を飽和NaHCO3(3 x 1 mL)水溶液で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.05から20:5:0.05に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のケトンを得た(9.4 mg, 12.5 mmol, quant.)。LRMS: (ES+) C45H71N5O5S (M + H)についての計算値: 794; 実測値 : 794。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3-エノン, N-(N'-(N"-ビオチノイルアミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(41) ジメチルスルホキシド(3.66 mL, 51.6 mmol)を-78℃において塩化オキサリル(2.25 mL, 25.8 mmol) のジクロロメタン(250 mL)溶液に加えた。その混合物を-78℃で10分間撹拌後、40 (4.1 mg, 5.16 mmol)のジクロロメタン(200 mL)溶液を加え、その反応物を-78℃でさらに30分間撹拌した。トリエチルアミン(10.8 mL, 77.4 mmol) をその溶液に加え、-78℃で10分間撹拌して酸化を完了させ、室温まで温めた。その反応物に飽和NaHCO3水溶液(2 mL)を加えて失活させ、クロロホルム(2 x 2 mL)で抽出した。次いで、得られた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。この残留物をMeOH(0.5 mL)に再溶解し、アンモニア水(29%(w/w)水溶液250 mL、3.80 mmol)で20時間室温で処理した。その反応混合物をクロロホルム(2 mL)に加え、飽和NaHCO3(2 x 2 mL)水溶液で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させて減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.1から20:5:0.1に段階勾配させた)で精製し、黄色固体状のエノンを得た(1.4 mg, 1.77 mmol, 34%)。LRMS: (ES+) C45H69N5O5S (M + H)についての計算値: 792; 実測値 : 792。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-プロピオニルアミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(42) プロピオニルN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(1.00 mg, 5.87 mmol)及びトリエチルアミン(1.37 mL, 9.80 mmol)を38(2.78 mg, 4.90 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液に加えた。その反応物を室温で12時間撹拌してから、ジメチルアミノプロピルアミンで失活させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを100:1から10:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のアミンを得た(2.5 mg, 4.01 mmol, 82%)。LRMS: (ES+) C38H61N3O4 (M + H)についての計算値: 624; 実測値 : 624。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-BODIPY FL アミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(43) BODIPY FL N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(2.0 mg, 5.28 mmol)及びトリエチルアミン(0.98 mL 7.04 mmol) を38(2.0 mg, 3.52 mmol)のジクロロメタン(500 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で20時間撹拌してから、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノールを50:1から12.5:1に段階勾配させた)で精製し、無色油状の蛍光体を得た(2.6 mg, 3.09 mmol, 88%)。LRMS: (ES+) C49H70N5O4BF2 (M + H)についての計算値: 842; 実測値 : 842。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチル4-ベンゾイルフェニルアラニン(45) メチルトリフルオロ酢酸(89.6 mL, 891 mmol)及びトリエチルアミン(104 mL, 743 mmol)を4-ベンゾイルフェニルアラニン(200 mg, 743 mmol)のメタノール (0.5 mL)溶液に加えた。この反応物を24時間激しく撹拌してから、pHが2になるまで1N HClで酸化させた。その混合物を酢酸エチル(10 mL)に加え、1N HCl(2 x 10 mL)で洗浄して、MgSO4上で乾燥させて減圧下で濃縮し、白色固体を得た(49.7 mg, 136 mmol, 18%)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-トリフルオロアセチル4-ベンゾイルフェニルアラニンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(46) 炭酸ジスクシンイミジル(33.0 mg, 129 mmol)を45(47.1 mg, 129 mmol)及びピリジン(20.9 mL, 258 mmol)のアセトニトリル(0.5 mL)溶液に加えた。この反応混合物を室温で3時間撹拌したところ、その溶液は透明になり気体を発生した。この溶液を酢酸エチル(5mL)に加え、1N HCl (2 x 1 mL)及び飽和NaHCO3水溶液(2 x 1 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて減圧下で濃縮し、白色固体を得た(48.8 mg, 106 mmol, 82%)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
レブリン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(47) 炭酸ジスクシンイミジル(692 mg, 2.70 mmol)及びピリジン (437 mL, 2.70 mmoles)をレブリン酸 (320 mg, 2.70 mmol)のアセトニトリル(2.0 mL)溶液に加えた。この反応混合物を室温で4.5時間撹拌したところ、その溶液は透明になり気体を発生した。この溶液を酢酸エチル(10 mL)に加え、1N HCl(2 x 5 mL)及び飽和NaHCO3水溶液(2 x 5 mL)で洗浄して、MgSO4上で乾燥させて減圧下で濃縮し、白色固体を得た(333 mg, 1.56 mmoles, 58%)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-トリフルオロアセチル4-ベンゾイルフェニルアラニン)アミノエチル)シクロパミン(48) トリエチルアミン(12.6 mL, 90.6 mmol)及び46 (20.9 mg, 45.3 mmol) を17(20.6 mg, 45.3 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で1時間撹拌し、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを8:1から1:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のベンゾフェノン(22.7 mg, 28.3 mmol, 62%)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(4-ベンゾイルフェニルアラニン)アミノエチル)シクロパミン(49) アンモニア水(29% (w/w)水溶液0.5mL、7.6 mmol)を48(20.4 mg, 25.4 mmol)のメタノール(1 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で19時間撹拌してから、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを40:1:0.1から40:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のアミンを得た(17.9 mg, 25.4 mmol, quant.)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-レブリノイル(4-ベンゾイルフェニルアラニノイル)アミノエチル)シクロパミン(50) トリエチルアミン(5.30 mL, 38.0 mmol) 及び47(8.10 mg, 38.0 mmol) を49(13.4 mg, 19.0 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で4時間撹拌してから、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを40:1:0から40:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のジケトンを得た(11.3 mg, 14.1 mmol, quant.)。LRMS: (ES+) C50H65N3O6 (M + H)についての計算値: 804; 実測値 : 804。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
3-ケトN-(N'-(N"-レブリノイル(4-ベンゾイルフェニルアラニノイル))アミノエチル)シクロパミン(51) ジメチルスルホキシド(12.9 mL, 182 mmol) を塩化オキサリル(7.96 mL, 91.2 mmol) のジクロロメタン (250 mL)溶液に-78℃において加えた。この混合物を-78℃で10分間撹拌後、50(5.65 mg, 7.03 mmol) のジクロロメタン(250 mL)溶液を加えて、その反応物を-78℃でさらに30分間撹拌した。トリエチルアミン(38.1 mL, 273 , mmol) をこの溶液に加えて-78℃で10分間撹拌して酸化を完了させてから、室温に温めた。この反応物に飽和NaHCO3(2 mL)水溶液を加えて失活させ、クロロホルム(2 x 5 mL)で抽出した。次いで得られた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを4:1から1:1に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のケトン(1.4 mg, 1.75 mmol, 25%)を得た。LRMS: (ES+) C50H63N3O6 (M + H)についての計算値: 802; 実測値 : 802。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N,N-(4-ベンゾイルベンゾイル)(tert-ブトキシカルボニル)リジン(52) 4-ベンゾイル安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(50.0 mg, 147 mmol)をtert-ブトキシカルボニルリジン(43.4 mg, 176 mmol) のDMF(0.5 mL)溶液に加えた。1N NaOH(176 mL, 176 mmol)及び水(74 mL)をこの反応物に加えて、その混合物を室温で4時間撹拌した。1N NaOH(352 mL, 352 mmol)を再び加え、その溶液を一晩撹拌した。次いでこの反応混合物を水(2 mL)と混合して、ジエチルエーテル(2 x 2 mL)で洗浄した。その水層を1N HClでpHが2になるまで酸化させ、その溶液を酢酸エチルで抽出した(2 x 2 mL)。得られた有機層をMgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/酢酸を20:1:0.2から20:2:0.2に段階勾配させた)で精製し、無色油状のベンゾフェノンを得た(40.0 mg, 88.0 mmol, 60%)。LRMS: (ES+) C25H30N2O6 (M + H)についての計算値: 455; 実測値 : 455。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N,N'-(ベンゾイルベンゾイル)(トリフルオロアセチル)リジン(53) ベンゾフェノン52(3.55 mg, 78.1 mmol) をトリフルオロ酢酸(0.5 mL, 6.49 mmol)に溶解し、その溶液を室温で1時間撹拌した。次いでトリフルオロ酢酸を窒素ガスを通気して除去し、残留物をメタノール(0.5 mL)に再懸濁させた。トリエチルアミン(134.8 mL, 968 mmol)及びトリフルオロ酢酸メチル(24.3 mL, 242 mmol) をそのメタノール溶液に加え、反応物を室温で26時間撹拌した。この反応物を減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/酢酸を20:1:0.1から20:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、無色油状のトリフルオロアセトアミドを得た(31.3 mg, 69.5 mmol, 89%)。LRMS: (ES+) C22H21N2O5F3 (M + H)についての計算値: 451; 実測値 : 451。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N,N'-(ベンゾイルベンゾイル)(トリフルオロアセチル)リジンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(54) 炭酸ジスクシンイミジル(16.0 mg, 62.6 mmol)を53(28.2 mg, 62.6 mmol)及びピリジン(10.1 mL, 125 mmol)のアセトニトリル (1.0 mL)溶液に加えた。この反応混合物を室温で3時間撹拌したところ、その溶液は透明になり気体を発生した。その溶液に酢酸エチル(10 mL)を加え、1N HCl(1 x 2 mL)及びNaHCO3水溶液(1 x 2 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて減圧下で濃縮し、無色油状物を得た(32.8 mg, 59.9 mmol, 96%)。LRMS: (ES+) C26H24N3O7F3 (M + H)についての計算値: 548; 実測値 : 548。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N",N"'-(4-ベンゾイルベンゾイル)(トリフルオロアセチル)リジン)アミノエチル)シクロパミン(55) トリエチルアミン(8.36 mL, 60.0 mmol) を54(16.4mg, 30.0 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加えた。この溶液は明黄色になり、アミノ酸のa-炭素がラセミ化したことを示した。次いで、17(13.6 mg, 30.0 mmol)のジクロロメタン(250 mL)溶液をその黄色溶液に加えた。この反応混合物を室温で1時間撹拌したところ、無色となった。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを2:1から2:1に段階勾配させた)にかけて精製し、無色油状のシクロパミン誘導体を得た(15.8 mg, 17.8 mmol, 59%, ジアステレオマー混合物)を得た。LRMS: C51H65N4O6F3 (M + H)についての計算値: 887; 実測値 : 887。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(4-ベンゾイルベンゾイル)リジン)アミノエチル)シクロパミン(56) 化合物55(13.0 mg, 14.7 mmol)をアンモニアのメタノール(1.0 mL, 2.00 mmoles)2M溶液に溶解した。その反応物を室温で23時間撹拌してから、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.1から20:2:0.1に段階勾配させた)で精製し、白色ロウ様固体状のアミンを得た(11.0mg, 13.9 mmol, ジアステレオマー混合物, 95%)。LRMS: (ES+) C49H66N4O5 (M + H)についての計算値: 791; 実測値 : 791。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N",N"'-(4-ベンゾイルベンゾイル)(N""-ジゴキシゲニン3-O-メチルカルボニルアミノカプロイル)リジン)アミノエチル)シクロパミン(57) ジゴキシゲニン3-O-メチルカルボニルアミノカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(5.0 mg, 7.59 mmol)及びトリエチルアミン(1.59 mL, 11.4 mmol)を56(4.5 mg, 5.69 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加えた。この溶液を室温で2時間撹拌後、エチレンジアミン(10 mL, 150 mmol)を加えて、その反応物を室温でさらに15分間撹拌した。飽和NaHCO3水溶液(2 mL)をこの混合物に加えて、クロロホルム(5 mL、次いで2 mL)で抽出した。有機層を混合してNa2SO4上で乾燥させてから、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ジクロロメタン/メタノールを20:1から5:1に段階勾配させた)で精製し、白色ロウ様固体状のジゴキシゲニン誘導体を得た(3.5 mg, 2.62 mmol, 46%)。LRMS: (ES+) C80H111N5O12 (M + H)についての計算値: 1337; 実測値 : 1337。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N",N"'-(4-ベンゾイルベンゾイル)(N""-ビオチノイルアミノカプロイル)リジン)アミノエチル)シクロパミン(58) N-ビオチノイルアミノカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(2.6 mg, 5.69 mmol)及びトリエチルアミン(1.59 mL, 11.4 mmol)を56(4.5 mg, 5.69 mmol)のDMF(250 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で2時間撹拌後、エチレンジアミン(10 mL, 150 mmol) をこの溶液に加え、室温でさらに15分間撹拌した。 飽和NaHCO3水溶液(2 mL)をこの混合物に加えてから、クロロホルム(1 x 2 mL)で抽出した。有機層を混合してNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ジクロロメタン/メタノールを20:1から5:1に段階勾配させた)で精製し、白色ロウ様固体状のジゴキシゲニン誘導体を得た(3.4mg, 3.01 mmol, 53%)。LRMS: (ES+) C65H91N7O8S (M + H)についての計算値: 1130; 実測値 : 1130。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-トリフルオロアセチル(4-ベンゾイルフェニルアラニン))アミノカプロン酸(59) アミノカプロン酸(10.8 mg, 80.5 mmol)の水 (100 mL)溶液及び46(24.4 mg, 53.7 mmol)のDMF(100 mL) 溶液を混合し、室温で45分間撹拌した。次いで、この反応物を1N HClでpHが2になるまで酸化させ、酢酸エチル(1 mL)に加えて、1N HCl(2 x 0.5 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させ、無色油状物を得た(25.9 mg, 54.1 mmol, quant.)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-トリフルオロアセチル(4-ベンゾイルフェニルアラニン))アミノカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(60) 炭酸ジスクシンイミジル(18.7 mg, 73.0 mmol) を59 (23.3 mg, 48.7 mmol) 及びピリジン(7.88 mL, 97.4 mmol)のアセトニトリル (200 mL)溶液に加えた。この反応混合物を室温で12時間撹拌したところ、その溶液は透明になり気体を発生した。この溶液を酢酸エチル(1mL)に加え、1N HCl(1 x 0.5 mL)及びNaHCO3水溶液(1 x 0.5 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させて窒素ガスを通気して蒸発乾燥させ、無色油状物を得た(26.4 mg, 45.9 mmol, 94%.)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-(N"'-トリフルオロアセチル(4-ベンゾイルフェニルアラニノイル)アミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(61) 化合物60(23.8 mg, 41.4 mmol)及びトリエチルアミン(11.5 mL, 82.8 mmol) を17(15.7 mg, 34.5 mmol)のジクロロメタン(0.5 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で1時間撹拌し、フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ヘキサン:アセトンを2:1から1:2に段階勾配させた)にかけて精製し、無色油状のベンゾフェノン誘導体(5.3 mg, 5.79 mmol, 17%)を得た。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-(4-ベンゾイルフェニルアラニノイル)アミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(62) アンモニア水(29%(w/w)水溶液250 mL、3.80 mmol)を61(5.3 mg, 5.79 mmol)のメタノール(200 mL)溶液に加えた。この反応物を室温で18時間撹拌してから、窒素ガスを通気して蒸発乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.5から20:2:0.5に段階勾配させた)で精製し、無色油状のアミンを得た(4.0 mg, 4.88 mmol, 84%)。LRMS: 測定せず。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
N-(N'-(N"-(N"'-(N""-ビオチノイルアミノカプロイル)(4-ベンゾイルフェニルアラニノイル))アミノカプロイル)アミノエチル)シクロパミン(63) N-ビオチノイルアミノカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(2.7 mg, 5.86 mmol)及びトリエチルアミン(1.4 mL, 9.76 mmol) を62(4.0 mg, 4.88 mmol)のDMF(250 mL)溶液に加えた。その反応物を室温で15分間撹拌後、クロロホルム(2 mL)に加え、NaHCO3水溶液で洗浄して、Na2SO4上で乾燥させて減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、クロロホルム/メタノール/トリエチルアミンを20:1:0.05から20:4:0.05に段階勾配させた)で精製し、白色固体状のビオチン誘導体を得た(4.5 mg, 3.88 mmol, 80%)。LRMS: (ES+) C67H95N7O8S (M + H)についての計算値: 1158; 実測値 : 1158。 1H NMR: スペクトルは予測された構造に一致する。
例3 インビボ試験
方法 メスヌードマウスに、Ptc-/-胚性線維芽細胞由来のP2A6線維肉腫細胞500万個を皮下注射した。注射してから3週間後、各マウスに離散性皮下腫瘍が形成された。各腫瘍の測定を行い、同日に治療を開始した。マウスにはトマチジン、シクロパミンまたはKAADシクロパミン33の腹腔内注射による治療(1治療につきマウス1匹)を1日一回、4日間行った。これらのマウスを殺し、腫瘍を測定して切除し、組織学的分析を行った。腫瘍容積を長さ x 幅の積で計算した。試料をパラホルムアルデヒドで固定してパラフィン包埋し、切片を切り出してヘマトキシリン−エオジン染色し、増殖マーカーKi-67に対するポリクローナル抗体について免疫組織化学的検査を行った(ノバカストラ社製NCL-Ki67p、検査は製造者の指示に従って行った)。
結果 グラフに示した通り、トマチジンによる対照治療では治療期間中に17%の腫瘍増殖をみたが、シクロパミンによる治療では腫瘍サイズが0.14%減少し、KAADシクロパミン33では腫瘍サイズが19%減少した。
このような結果を確認するために、Ki-67の増殖率を、この治療条件を知らされていない病理学者が測定した。紫色の棒グラフは、この3種類の治療法における増殖率を表している。トマチジン、シクロパミン、KAADシクロパミン33の増殖率はそれぞれ、30% 、16%、及び12%であった。
多くの腫瘍について分化が予後と相関しているため、腫瘍の分化状態を検査した。図7の顕微鏡写真に示されているように、すべての腫瘍が分化の変化を帯状に示した。あまり分化していない腫瘍と比較して、よく分化した線維肉腫は、核が小さくあまり密集しておらず、比較的豊富なピンク色のコラーゲンにより隔てられている。図示されるように、KAADシクロパミン及びシクロパミン(表示せず)で処理された腫瘍は、トマチジンで処理された対照よりも大きな分化度を示した。
等価物
当業者であれば、ごく通常の実験を用いるのみで、ここに説明した本発明の特定の実施態様の等価物を数多く認識し、又は確認できることであろう。このような等価物は上述の特許請求の範囲の包含するところである。
本出願に引用された出版物及び特許の内容すべてを、ここに引用をもって本願明細書の記載に代える。
合成化合物のAY 9944及びトリパラノール、植物性ステロイド系アルカロイドのジェルビン、シクロパミン及びトマチジン、並びにコレステロールの構造を示す。
NIH-3T3細胞におけるShhシグナル伝達の高感度アッセイ法に関連する。(A) コレステロール及びパルミテート修飾したマウスソニックヘッジホッグシグナル伝達ドメインShhNp の精製。界面活性剤に不溶のタンパク脂質複合体を、完全長Shhを発現する293個の細胞から単離し(M. K. Cooper, J. A. Porter, K. E. Young, P. A. Beachy, Science 280, 1603 (1998))、ShhNpが見かけ上均一になるように免疫親和性クロマトグラフィで精製した。コレステロール及びパルミテート修飾を欠損する組換えShhNは神経板組織片培養検査では完全に活性であるが、この形態のShhNはNIH-3T3細胞において活性に乏しかった。したがって、本願発明者らはコレステロール修飾ShhNの界面活性剤不溶性と親和性クロマトグラフィを用いて、完全長マウスShh作製物を発現するように操作されたヒト293細胞株が産生したShhNタンパク(ShhNp)を精製した。界面活性剤不溶性の複合体(DIG)の単離は、Brown and Rose (1992)により記載された方法に以下の修正を加えて行った。150mmシャーレから採取した細胞を溶解させて、2 mLの溶解溶液(10 mM NaHPO4, pH 6.5,150 mM NaCl, 0.5 mM PMSF, 1% Triton X-100, 2 mg/ml ペプステイン A, 10 mg/ml ロイペプチン, 5 mg/ml アプロチニン, 2 mg/ml E64)中に4℃において収集した。スクロース濃度を8段階(上述の溶液を35.625-5%、1段につき4.375%変化させる。界面活性剤なし) に変化させて40%スクロースライセート上にのせ、2から12時間遠心分離した。低密度で綿状の物質を収集し(元の位置が18.125%の段から)、10 mM NaHPO4, pH 6.5, 150 mM NaClで5倍に希釈して、20,000 x gで15分間遠心分離して収集した(すべて4℃において)。複合体を室温で1% n-オクチル-a-D- グルコピラノシド、 50 mM HEPES、 pH 7.5、150 mM NaClで可溶化し、一段階のShhNp免疫親和性精製を、基本的にはPepinsky et al. (1998)に記載の通り行ったが、ただし抗Shh-Nモノクローナル抗体5E1をアフィ-ゲル(Affi-Gel) 10(バイオラド社)に6.6mg/mLゲルの割合で結合させた。質量分光法で測定した精製種の質量は、共有結合パルミトイル及びコレステリル付加物を有するShhNポリペプチドの質量(マウスShhNポリペプチド、19,574.05 Da、エステル化コレステロール368.65、パルミトイル質量(エステルまたはアミド結合における)238.42、合計20,181.1)に相当した。挿入図はライセート、界面活性剤不溶性糖脂質複合体(DIG、ライセート試料等価物8種)および精製ShhNp(0.75mg)の試料を、SDS-PAGE(14%)で分離してクーマシーブルーで染色したものである。質量標準物質は記載のように泳動した。(B) NIH-3T3細胞はShhNpに応答する。Gli-lucレポーター及びTKプロモーター駆動レニラルシフェラーゼ対照を同時に形質移入したNIH-3T3細胞を、2日間、指定された濃度のShhNpで処理した。NIH-3T3細胞の集密的な培養物を1:6希釈で24穴または96穴プレートでプレーティングした。翌日、その細胞に、レニラルシフェラーゼ(pRL-TKまたは pRL-SV40、クロンテック社)、またはb-ガラクトシダーゼ形質移入対照(10% w/w DNA)とGli-Liuレポーター(40%)と前述の作製物(50%)を、フュージーン6(Fugene 6)形質移入試薬(ロシュ社)(1ウェルにつきDNA 250ng(24穴プレート)または100 ng(96穴プレート)、試薬対DNAの比は3:1(v/w))を用いて形質移入した。 細胞が飽和密度に達した後(1−2日)、細胞を低血清培地(0.5% ウシ胎仔性血清)に移し、前述の試薬で1から2日間処理した。細胞ライセートのホタル及びレニラルシフェラーゼ及び b-ガラクトシダーゼ活性は、それぞれデュアルルシフェラーゼ(プロメガ社)及びガラクト-ライト(トロピックス社)キットを用いて、発光量測定により検定した。ルシフェラーゼ活性は対照に対して正規化しており、代表的な実験結果を示す。本検定及び後に行うすべての検定では、TKレニラルシフェラーゼ活性を正規化用の対照として用いることに留意されたい。(C) Shh経路活性はNIH-3T3細胞中のシクロパミンに感受性である。前述のように形質移入したNIH-3T3細胞 (3通り)を、ShhNp(4nM)及び/またはシクロパミンで2日間、 前述のように処理した。正規化したルシフェラーゼ活性は、対照と比較した誘導倍率で表示されている。 エラーバーは1標準偏差を示す。(D) 細胞が低密度の場合、Smoの下流のShh経路活性は阻害される。Shh-LIGHT(白丸)またはSmoA1-LIGHT(黒菱形)細胞を連続で2倍に希釈して96穴プレートにプレーティングする。Gli-lucレポーター及びTK-レニラベクターが安定に組み込まれたNIH-3T3細胞クローンShh-LIGHT及びShh-LIGHT2は、G418耐性をコードするベクター(pSV-Neo)を同時に形質移入してからG418を選択して細胞クローニングをすることにより株化した。次いで、ハイグロマイシン選択が可能なベクター(pcDNA3.1+ハイグロ、インビトロゲン社)を発現させて、活性化Smoを発現しているShh-LIGHTのクローン亜株(SmoA1-LIGHT)を株化した。細胞株中のSmoA1の発現は、免疫ブロッティング法により確認した。Shh-LIGHT細胞を4nM ShhNpで処理し、24時間後にGli-ルシフェラーゼレポーター活性を測定した。レポーターの誘導倍率(同等な濃度のShh-LIGHT対照培養物と比較した場合の最大値の%)及び細胞密度(レニラルシフェラーゼ活性の最大値の%)を実験終了時に測定した。エラーバーは1標準偏差(4重ウェル)を示す。
Smo活性を阻害することによるシクロパミンの作用を示す。(A) Ptc1-/-細胞はシクロパミンに感受性である。Ptc1-/-胚から発生した線維芽細胞を、前述のようにシクロパミンまたはフォルスコリンで処理した。3日後、細胞を溶解して、タンパク質濃度に対するb-ガラクトシダーゼ活性を測定した。b-ガラクトシダーゼはPtc1遺伝子座から発現するため、その発現はShh経路の活性を反映する。代表的な実験結果を示す。(B) Smoの活性化突然変異体はシクロパミンに耐性である。NIH-3T3細胞の培養物に、Gli-ルシフェラーゼレポーター、TK-レニラルシフェラーゼ対照ベクター及びSmoまたはSmoA1発現ベクターを形質移入した(3通り)。Smo DNAは50% w/wで、SmoA1は50%、5%、及び0.5% w/wで用いた。次に、その培養物を5mMシクロパミンで2日間処理した。エラーバーは1標準偏差を示す。左端の4本のバーは比較のために示してあり、図2Cに同じである。(C) Ptc1が大量発現すると、ShhNpに対するSmoA1のシクロパミン耐性応答を回復する。NIH-3T3細胞にGli-lucレポーター、TK-レニラ、Ptc1CTD及びSmoA1発現ベクター(PtcのSmo DNAに対する比は9)を形質移入した。次に、その培養物をShhNp(2 nM)、シクロパミン(5mM)及び/またはフォルスコリン(100mM)で2日間、前述したように処理した。SmoA1の経路活性は高レベルのPtc1活性により劇的に低下し(Bと比較)、2 nM ShhNpは5 mMシクロパミンの存在下においても経路活性を回復させる。代表的な実験結果を示す。(D)腫瘍由来突然変異Smoタンパクの活性は、野生型Smoよりも本質的に大きい。NIH-3T3細胞に、Gli-lucレポーター、b-ガラクトシダーゼ形質移入対照、及び前述のSmo-レニラルシフェラーゼ融合タンパクをコードする対照ベクターまたは発現ベクターを同時に形質移入した。表示した代表的な実験結果では、Shh経路活性及びSmoタンパク量は、b-ガラクトシダーゼに対するホタル及びレニラルシフェラーゼ活性としてそれぞれ測定した。エピトープでタギングしたSmo及び活性化Smoタンパクも、これらの細胞中で同様の発現レベルを示した。
効力が上昇したシクロパミン誘導体について示す。(A) 3-ケト, N-アミノエチルアミノカプロイルジヒドロシンナモイルシクロパミン(KAADシクロパミン)をシクロパミンから合成した。KAADシクロパミンの構造はNMR及び質量分光法による分析により確認した。KAADシクロパミンは腫瘍由来Smoによる経路活性を遮断することができる。Shh-LIGHT2(菱形)及びSmoA1-LIGHT(丸)細胞を、4 nM ShhNp(Shh-LIGHT)及び濃度を増加させたKAADシクロパミン(両線)で2日間処理した。相対レポーター活性は最大値に対して正規化した。KAADシクロパミンの阻害効力が図3A-Cにおけるシクロパミンと比較して上昇していることに留意されたい。(B) KAADシクロパミンはPtc1-/-細胞中の経路活性を阻害することができる。p2Ptc-/-細胞(この細胞はPtc-/-マウス胚性線維芽細胞に由来するクローン株である)を、濃度を増加させたシクロパミン(白丸)またはKAADシクロパミン(黒丸)で2日間処理した。高濃度のシクロパミン誘導体によりSmoA1レニラにより誘導された経路活性の抑制は、Smo作製物の発現レベルの低下(表示せず)に関与しなかった。細胞を二重の96穴プレートに蒔き、飽和濃度まで増殖させて、シクロパミン及びKAADシクロパミンとともに2日間インキュベートした。b-ガラクトシダーゼ活性をガラクト-ライト(Galact-Light)キット(外因性b-ガラクトシダーゼ活性の不活化なし、トロピックス社)を用いて測定した。b-ガラクトシダーゼ活性は、セルタイター(Cell Titer)96AQアッセイ(プロメガ社)を用いて、処理済み二重プレートで測定した細胞質量に対して正規化した。正規化b-ガラクトシダーゼ活性の最大値(KAADシクロパミンでは1103、シクロパミンでは916)を1として、最小活性(それぞれ191及び144)を0とした。有意な毒性(顕微鏡で認められる細胞死、またはセルタイターの読み値の減少)は、使用した化合物の最大投与量においても認められなかった。 b-ガラクトシダーゼ活性は最大値に対して正規化した。A及びBのエラーバーは1標準偏差を示す。
本発明に記載のヘッジホッグ経路の阻害因子を示す。
対象の化合物を用いた処理に対する線維芽肉腫の応答を示す。
トマチジン処理後の腫瘍組織と対象の化合物で処理した組織を比較する。