JP2011247306A - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト式変速機の伝動ベルトと後輪への後輪側動力伝達系との共振に起因したこもり音を低減しつつ、ベルト挟圧力をこもり音の低減のために上昇させる機会を抑えることができる車両用駆動装置の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン回転変動周波数FENGとベルト弦部振動周波数F1BELTとが周波数判定範囲WFRR内に入る場合には、そうでない場合と比較してベルト挟圧力を上昇させるベルト挟圧力上昇制御が実行される。従って、ベルト挟圧力上昇制御が実行されるとベルト弦部51の弦張力TNSBELTが変化するので、後輪側動力伝達系と伝動ベルト48との共振に起因したこもり音を低減することができる。また、振動源であるエンジン12からの振動が、上記共振をさせる周波数ではない場合にはベルト挟圧力上昇制御は実行されず、不必要なベルト挟圧力上昇が抑制され、そのベルト挟圧力の上昇機会を抑えることができる。
【選択図】図12

Description

本発明は、ベルト式変速機を備えた車両用駆動装置において、こもり音の低減を図る技術に関するものである。
1対の可変プーリと該1対の可変プーリに巻き掛けられた伝動ベルトとを含みエンジンと後輪との間の動力伝達経路の一部を構成するベルト式変速機を備えた車両用駆動装置が、例えば、特許文献1に開示されている。その特許文献1の車両用駆動装置は、エンジンから出力された駆動トルクを前輪および上記後輪のそれぞれに分配する動力分配装置を前記ベルト式変速機と前記後輪との間に備えた四輪駆動車両の車両用駆動装置である。その特許文献1の車両用駆動装置の制御装置によれば、車速に関連する車速関連値、具体的には前記ベルト式変速機の出力軸回転速度が所定範囲に属するか否かに基づいて、車両の走行状態が、前記伝動ベルトの弦部と前記後輪への動力伝達系との共振に起因したこもり音が発生するこもり音発生状態にあるか否かが判断される。そして、車両の走行状態が前記こもり音発生状態に該当すると判断された場合には、そのこもり音発生状態に該当しない場合に比較して、前記可変プーリが前記伝動ベルトを挟圧するベルト挟圧力が変更される。このベルト挟圧力の変更により前記伝動ベルトの張力が変わりその伝動ベルトの弦部の固有振動数が前記後輪への動力伝達系の固有振動数に対してずれるので、こもり音が低減される。
特開2009−191963号公報
上記のように、前記特許文献1の車両用駆動装置の制御装置は、車両の走行状態が前記こもり音発生状態に該当する場合には、前記ベルト挟圧力を変更するのでそのベルト挟圧力を上昇させることがある。しかし、前記こもり音を発生させる振動源は前記エンジンであるところ、前記特許文献1の制御装置は、前記ベルト式変速機の出力軸回転速度に基づいて、車両の走行状態が前記こもり音発生状態に該当するか否かを判断しており、そのエンジンからの振動が前記伝動ベルトの弦部と前記後輪への動力伝達系とを共振させる周波数を有するか否かを判断していなかった。また、前記ベルト挟圧力は、前記伝動ベルトの耐久性への影響および車両の燃費向上の観点等から、ベルト滑りが生じない範囲で出来るだけ低くされるのが好ましい。すなわち、前記特許文献1の制御装置は、こもり音低減に寄与しない場合にも前記ベルト挟圧力を上昇させる可能性があり、不必要に燃費を悪化させるなどの可能性を有していた。なお、このような課題は未公知のことである。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、前記ベルト式変速機の伝動ベルトと前記後輪への動力伝達系(後輪側動力伝達系)との共振に起因したこもり音を低減しつつ、前記ベルト挟圧力をそのこもり音の低減のために上昇させる機会を抑えることができる車両用駆動装置の制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a)1対の可変プーリとその1対の可変プーリに巻き掛けられた伝動ベルトとを含みエンジンと後輪との間の動力伝達経路の一部を構成するベルト式変速機を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、(b)前記エンジンの周期的な回転変動の周波数であるエンジン回転変動周波数と前記伝動ベルトの弦部のベルト弦部振動周波数とが予め定められた周波数判定範囲内に入る場合には、前記エンジン回転変動周波数と前記ベルト弦部振動周波数との少なくとも一方が前記周波数判定範囲内に入らない場合と比較して、前記可変プーリが前記伝動ベルトを挟圧するベルト挟圧力を上昇させるベルト挟圧力上昇制御を実行することにある。
このようにすれば、前記ベルト挟圧力上昇制御が実行されると前記伝動ベルトの弦部の張力が変化し、それによりその弦部が前記エンジンからの振動により共振させられる状態から外れるので、前記ベルト式変速機よりも前記後輪側の動力伝達系すなわち後輪側動力伝達系と、前記伝動ベルトとの共振に起因したこもり音を低減することが可能である。また、前記ベルト挟圧力上昇制御を実行するか否かは前記エンジン回転変動周波数に基づいて判断されるので、前記ベルト挟圧力上昇制御は、前記こもり音を発生させる振動源である前記エンジンからの振動が、上記後輪側動力伝達系と前記伝動ベルトとを共振させる周波数ではない場合には実行されず、不必要な前記ベルト挟圧力上昇制御の実行が抑制される。従って、車速などに基づいて前記ベルト挟圧力上昇制御を実行する場合と比較して、前記ベルト挟圧力を前記こもり音の低減のために上昇させる機会を抑えることが可能である。
ここで、好適には、前記エンジン回転変動周波数は、前記エンジンの点火による単位時間当たりの爆発回数である。このようにすれば、前記エンジンの回転はエンジン点火による爆発に連動して変動するので、容易且つ正確にそのエンジン回転変動周波数を算出することが可能である。
また、好適には、前記ベルト弦部振動周波数は、前記弦部の張力に基づいて算出される1次の固有振動数に1以上の第1の整数を乗じ且つ1以上の第2の整数で除して得た周波数である。このようにすれば、前記ベルト弦部振動周波数を前記弦部の1次の固有振動数に基づいて容易に算出し、前記ベルト挟圧力上昇制御を実行するか否かを適切に判断できる。
また、好適には、前記周波数判定範囲は、前記ベルト式変速機よりも前記後輪側の動力伝達系が所定の限度以上の大きさで共振する周波数の範囲である。このようにすれば、上記ベルト式変速機よりも後輪側の動力伝達系(後輪側動力伝達系)と、前記伝動ベルトとが共振することを抑制できる。
また、好適には、前記ベルト挟圧力上昇制御では、前記ベルト弦部振動周波数が前記周波数判定範囲から外れるように前記ベルト挟圧力を上昇させる。このようにすれば、前記伝動ベルトが、そのベルト挟圧力の上昇により上記後輪側動力伝達系と共振しないようにすることが可能である。
また、好適には、前記エンジンから出力された駆動トルクを前輪および前記後輪のそれぞれに分配する動力分配装置が前記ベルト式変速機と前記後輪との間に設けられている。このようにすれば、四輪駆動車両において、前記伝動ベルトと後輪側動力伝達系との共振に起因したこもり音を低減できる。
また、好適には、前記エンジンと前記ベルト式変速機と前記動力分配装置とは、車両の前方に搭載されている。
本発明が好適に適用される四輪駆動車両が有する車両用駆動装置の構成を説明するための骨子図である。 図1のエンジンやベルト式変速機などを制御するために四輪駆動車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。 図2に示す油圧制御回路のうちベルト式変速機のベルト挟圧力制御、変速比制御に関する部分を示す要部油圧回路図である。 図1のベルト式変速機の変速制御において入力側の目標回転速度を求める際に用いられる変速マップの一例を示す図である。 図1のベルト式変速機の挟圧力制御において変速比等に応じて必要油圧を求めるための必要油圧マップの一例を示す図である。 図1の電子制御カップリングの構成例を説明するための断面図である。 図6の電子制御カップリングに設けられたコイルに供給される制御電流と電子制御カップリングにより伝達される伝達トルクとの関係を示した図である。 図2の電子制御装置が備えている制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。 図1のベルト式変速機が有する伝動ベルトのベルト弦部を説明するためのベルト式変速機の模式図である。 図1のベルト式変速機が有する伝動ベルトの構成を説明するための、その伝動ベルトを部分的に拡大した斜視図である。 図1の四輪駆動車両において、後輪側動力伝達系にそれの外部から一定振幅の振動を周波数を変化させつつ加えた場合における後輪側動力伝達系の振動の応答性を示す図である。 図2の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち、エンジン回転変動周波数とベルト弦部振動周波数とに基づいてベルト挟圧力上昇制御を実行する制御作動を説明するためのフローチャートである。 図1の四輪駆動車両が停車状態から発進し車速がある程度上昇するまでを表したタイムチャートであって、前記ベルト挟圧力上昇制御の実行により、後輪側動力伝達系とベルト弦部との共振に起因したこもり音の発生が抑制される場合を説明するためのタイムチャートである。 図1の四輪駆動車両が停車状態から発進し車速がある程度上昇するまでを表したタイムチャートであって、前記こもり音がそもそも発生せず前記ベルト挟圧力上昇制御が実行される必要のない場合を説明するためのタイムチャートである。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される四輪駆動車両8が有する車両用駆動装置10の構成を説明するための骨子図である。図1に示すように、四輪駆動車両8(以下、単に車両8という)は、車両用駆動装置10の他に、左右1対の前輪車軸23と、第1駆動輪としての左右1対の前輪24Rおよび24Lと、オイルポンプ28と、左右1対の後輪車軸56と、第2駆動輪としての左右1対の後輪57Rおよび57Lとを備えている。そして、車両用駆動装置10は、駆動力源である内燃機関にて構成されているエンジン12と、流体伝動装置としてのトルクコンバータ14と、前後進切換装置16と、ベルト式変速機(CVT)18と、減速歯車装置20と、前輪用差動歯車装置22と、動力分配装置(トランスファ)52と、駆動力伝達軸であるプロペラシャフト53と、前後輪駆動トルク配分装置である電子制御カップリング54(以下、単にカップリング54という)と、後輪用差動歯車装置55とを備えている。なお、左右の前輪24Rと24Lとを区別する必要がない場合には前輪24と略して表示し、左右の後輪57Rと57Lとを区別する必要がない場合には後輪57と略して表示する。
この図1において、エンジン12により発生させられた駆動トルクは、トルクコンバータ14、前後進切換装置16、入力軸36、ベルト式変速機18、減速歯車装置20、前輪用差動歯車装置22、及び左右1対の前輪車軸23を介して左右1対の前輪24Rおよび24Lへ伝達される一方、動力分配装置52、プロペラシャフト53、カップリング54、後輪用差動歯車装置55、及び左右1対の後輪車軸56を介して左右1対の後輪57Rおよび57Lへ伝達される。すなわち、図1に示す動力分配装置52は、エンジン12から出力された駆動トルクを前輪24R,24Lおよび後輪57R,57Lのそれぞれに分配するトランスファであり、車両用駆動装置10は、駆動力源であるエンジン12により発生させられた駆動トルクを走行状態に応じて前後輪に配分する電子制御トルクスプリット式四輪駆動車両の駆動系の一例である。
エンジン12の吸気配管31には、図示しないスロットルアクチュエータを用いてエンジン12の吸入空気量を電気的に制御するための電子スロットル弁30が備えられている。電子制御装置60(図2参照)により、運転者の出力要求量を表すアクセル開度Accなどに応じて上記電子スロットル弁30の開閉制御および燃料噴射制御等が行われることによりエンジン12の出力が増減制御される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路86(図2参照)の切換弁などによって係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切り換えられることにより、係合または解放されるようになっており、完全係合させられることによってポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。上記ポンプ翼車14pには、ベルト式変速機18を変速制御したりベルト挟圧力を発生させたり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ28が設けられている。
前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、ベルト式変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置であり、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されることにより、前後進切換装置16は一体回転状態とされることにより前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力がベルト式変速機18側へ伝達される一方、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されることにより、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力がベルト式変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
上記前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、シフト操作部材として機能するシフトレバー77の操作に従って油圧制御回路86の図示しないマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、係合、解放されるようになっている。シフトレバー77は、順次位置させられている駐車用の「P」ポジション、後進走行用の「R」ポジション、動力伝達を遮断する「N」ポジション、前進走行用の「D」ポジションおよび強いエンジンブレーキ作用を得るため等の「L」ポジションへ択一的に操作されるようになっており、「P」ポジションおよび「N」ポジションでは、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1内の作動油は何れもマニュアルバルブからドレーンされて共に解放される。一方、「R」ポジションでは、前記マニュアルバルブの後進用出力ポートからの後進走行用出力圧が後進用ブレーキB1に供給されてそれが係合させられるとともに、前進用クラッチC1内の作動油は前記マニュアルバルブからドレーンされて解放される。また、「D」ポジションおよび「L」ポジションでは、前記マニュアルバルブの前進用出力ポートからの前進走行用出力圧が前進用クラッチC1に供給されてそれが係合させられるとともに、後進用ブレーキB1内の作動油は前記マニュアルバルブからドレーンされて解放される。
ベルト式変速機18は、エンジン12と動力分配装置52との間の動力伝達経路の一部を構成する無段変速機であり、前記入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の入力側可変プーリ42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の出力側可変プーリ46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた摩擦接触する動力伝達部材として機能する伝動ベルト48とを備えている。そして、ベルト式変速機18では、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。可変プーリ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42aおよび46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42bおよび46bと、それらの間のV溝幅が可変とする推力を付与する入力側油圧シリンダ42cおよび出力側油圧シリンダ46cとを備えて構成されており、入力側可変プーリ42の油圧シリンダの油圧が制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変化させられる。なお、上記入力軸回転速度Ninとは入力軸36或いは入力側可変プーリ42の回転速度であり、上記出力軸回転速度Noutとは出力軸44或いは出力側可変プーリ46の回転速度である。
図3は、油圧制御回路86のうちベルト式変速機18のベルト挟圧力制御、変速比制御に関する部分を示す要部油圧回路図であり、油圧制御回路86は、挟圧力コントロールバルブ110、変速比コントロールバルブUP116、変速比コントロールバルブDN118などを備えている。ここで、リニアソレノイド弁SLTは、通常は挟圧力コントロールバルブ110を介して前記ベルト式変速機18のベルト挟圧力を制御するために用いられるものである。
この入力側可変プーリ42の油圧シリンダ42cの油圧は、変速比γが連続的に変化させられるように油圧制御回路86の変速比コントロールバルブUP116および変速比コントロールバルブDN118によって調圧制御される。変速比コントロールバルブUP116は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート116tおよび入出力ポート116iを開閉するスプール弁子116aと、そのスプール弁子116aを入出力ポート116tと入出力ポート116iとが連通する方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング116bと、そのスプリング116bを収容し、スプール弁子116aに入出力ポート116tと入出力ポート116iとが連通する方向の推力を付与するために電子制御装置60によってデューティ制御されるソレノイド弁DS2の出力油圧である制御油圧PS2を受け入れる油室116cと、スプール弁子116aに入出力ポート116iを閉弁する方向の推力を付与するために電子制御装置60によってデューティ制御されるソレノイド弁DS1の出力油圧である制御油圧PS1を受け入れる油室116dとを備え、また変速比コントロールバルブDN118は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート118tを開閉するスプール弁子118aと、そのスプール弁子118aを閉弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング118bと、そのスプリング118bを収容し、スプール弁子118aに閉弁方向の推力を付与するために電子制御装置60によってデューティ制御されるソレノイド弁DS1の出力油圧である制御油圧PS1を受け入れる油室118cと、スプール弁子118aに開弁方向の推力を付与するために電子制御装置60によってデューティ制御されるソレノイド弁DS2の出力油圧である制御油圧PS2を受け入れる油室118dとを備えている。
ソレノイド弁DS1は、入力側油圧シリンダ42cへ作動油を供給してその油圧を高め入力側可変プーリ42のV溝幅を小さくして変速比γを小さくする側すなわちアップシフト側へ制御するために制御油圧PS1を出力し、ソレノイド弁DS2は、入力側油圧シリンダ42cの作動油を排出してその油圧を低め入力側可変プーリ42のV溝幅を大きくして変速比γを大きくする側すなわちダウンシフト側へ制御するために制御油圧PS2を出力する。具体的には、制御油圧PS1が出力されると変速比コントロールバルブUP116に入力されたライン油圧PLが入力側油圧シリンダ42cへ供給されて変速制御圧PRATIOとなるように連続的に制御され、制御油圧PS2が出力されると入力側油圧シリンダ42cの作動油が入出力ポート116t、入出力ポート116iさらに入出力ポート118tを経て排出ポート118xから排出されて変速制御圧PRATIOとなるように連続的に制御される。例えば図4に示すように運転者の出力要求量を表すアクセル操作量(アクセル開度)Accおよび車速Vをパラメータとして予め定められた変速マップから入力側の目標回転速度Nin*を算出し、実際の入力軸回転速度Ninが目標回転速度Nin*と一致するように、それ等の偏差に応じてベルト式変速機18の変速制御、すなわち入力側可変プーリ42の油圧シリンダ42cに対する作動油の供給、排出によって変速制御圧PRATIOが制御され、変速比γが連続的に変化させられる。図4のマップは変速条件に相当するもので、車速Vが小さくアクセル操作量Accが大きい程大きな変速比γになる目標回転速度Nin*が設定されるようになっている。また、車速Vは出力軸回転速度Noutに対応するため、入力軸回転速度Ninの目標値である目標回転速度Nin*は目標変速比に対応し、ベルト式変速機18の最小変速比γminと最大変速比γmaxの範囲内で定められている。
一方、出力側可変プーリ46の油圧シリンダの油圧は、伝動ベルト48が滑りを生じないように油圧制御回路86の挟圧力コントロールバルブ110によって調圧制御される。挟圧力コントロールバルブ110は、軸方向へ移動可能に設けられることにより出力ポート110tを開閉するスプール弁子110aと、そのスプール弁子110aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、そのスプリング110bを収容し、スプール弁子110aに開弁方向の推力を付与するために電子制御装置60によってデューティ制御されるリニアソレノイド弁SLTの出力油圧である制御油圧PSLTを受け入れる油室110cと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するために出力した挟圧力制御圧PBELTを受け入れるフィードバック油室110dとを備えており、リニアソレノイド弁SLTからの制御油圧PSLTをパイロット圧としてライン油圧PLを連続的に調圧制御して挟圧力制御圧PBELTを出力するようになっており、例えば図5に示すように伝達トルクに対応するアクセル操作量Accおよび変速比γをパラメータとしてベルト滑りが生じないように必要油圧(ベルト挟圧力に相当)を求める予め定められたベルト挟圧力マップに従って、出力側可変プーリ46の油圧シリンダ46cの挟圧力制御圧PBELTが制御され、この挟圧力制御圧PBELTに応じてベルト挟圧力すなわち可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力が増減させられる。この挟圧力コントロールバルブ110の出力圧である出力側油圧シリンダ46c内の油圧PBELTは、油圧センサ110sにより検出されるようになっている。
図6は、前記カップリング54の構成例を説明するための断面図である。この図6に示すように、前記カップリング54は、入力軸としての前記プロペラシャフト53と同軸に且つそのプロペラシャフト53と共通の軸心Cまわりに一体回転させられるように構成された第1ハウジング91と、コイル(電磁ソレノイド)93を含んでその第1ハウジング91の内周側に固設された第2ハウジング92と、上記第1ハウジング91と同軸にその軸心Cまわりに相対回転可能に配設されたカップリング出力軸94と、そのカップリング出力軸94と同軸にその軸心Cまわりに相対回転可能に配設された制御カム95と、上記第1ハウジング91と制御カム95との相対回転を阻止したりスリップさせたりするために係合要素である複数のクラッチプレート97a、97bを交互に備えて構成された制御クラッチ96と、上記第2ハウジング92との間にその制御クラッチ96を構成するクラッチプレート97a、97bを挟圧するためにカップリング出力軸94と同軸にその軸心C方向に相対移動可能に配設された環状鉄片であるアーマチュア98と、上記第1ハウジング91とカップリング出力軸94との相対回転を阻止したりスリップさせたりするために係合要素である複数のクラッチプレート99a、99bを交互に備えて構成されたメインクラッチ100と、上記第1ハウジング91との間にそのメインクラッチ100を構成するクラッチプレート99a、99bを挟圧するためにカップリング出力軸94と同軸にその軸心Cまわりの相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能に配設されたメインカム101とを、備えて構成されている。上記カップリング出力軸94は、前記後輪用差動歯車装置55の入力軸(入力歯車)に連結されている。また、上記制御カム95及びメインカム101の相対向する側にはそれぞれのカム面に対応する複数の凹部がそれぞれ形成されており、その制御カム95とメインカム101との間にはそれぞれ対応する凹部の間に嵌め入れられるように複数のボール102が配設されている。
以上のように構成されたカップリング54において、上記コイル93が非励磁状態である場合には、上記制御クラッチ96及びメインクラッチ100の何れも非係合状態とされるため、入力軸としての前記プロペラシャフト53の駆動力(トルク)はカップリング出力軸94に伝達されないが、上記コイル93が励磁状態である場合には、そのコイル93の周囲に磁束が生じることにより、上記アーマチュア98が第2ハウジング92側へ引き付けられてその第2ハウジング92とアーマチュア98との間でクラッチプレート97a、97bが挟圧され、上記制御クラッチ96が上記コイル93への制御電流に応じて係合或いはスリップさせられる。そのようにして制御クラッチ96が係合或いはスリップさせられることで、上記制御カム95とメインカム101との間に相対的な回転速度差が生じると、上記ボール102が制御カム95における凹部の斜面に押されてメインカム101側へ押し付けられ、延いてはそのメインカム101が前記プロペラシャフト53側へ押し付けられる。それにより、前記第1ハウジング91とそのメインカム101との間でクラッチプレート99a、99bが挟圧されて上記メインクラッチ100が係合或いはスリップさせられ、前記プロペラシャフト53の駆動力が所定の割合でカップリング出力軸94に伝達される。
前記カップリング54により伝達される伝達トルクは、例えば、図7に示すように、前記コイル93に供給される制御電流により比例的に定まる。すなわち、前記コイル93に供給される電流が比較的小さい場合には、前記アーマチュア98が第2ハウジング92側へ引き付けられる力が比較的弱く、前記制御クラッチ96の係合力が比較的小さいことから、前記制御カム95とメインカム101との間の相対回転速度差が小さくなり、延いては前記メインカム101がプロペラシャフト53側へ押し付けられる力が比較的弱くなって伝達トルクは比較的小さくなるが、前記コイル93に供給される電流が比較的大きい場合には、前記アーマチュア98が第2ハウジング92側へ引き付けられる力が比較的強く、前記制御クラッチ96の係合力が比較的大きいことから、前記制御カム95とメインカム101との間の回転速度差が大きくなり、延いては前記メインカム101がプロペラシャフト53側へ押し付けられる力が比較的強くなって伝達トルクは比較的大きくなる。そして、前記コイル93に供給される電流が所定値以上になると直結四輪駆動車両に近い状態で前後輪に駆動力が伝達される。以上の構成により、前記ベルト式変速機18から出力された全駆動力に対する前記後輪57Rおよび57Lに伝達される駆動力の比率が零乃至0.5の範囲内で無段階に制御される。
図2は、図1のエンジン12やベルト式変速機18などを制御するために車両8に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。図2の電子制御装置60には、エンジン回転速度センサ62、タービン回転速度センサ64、タービントルクセンサ65、アイドルスイッチ付きスロットルセンサ68、冷却水温センサ70、CVT油温センサ72、CVT出力軸回転速度センサ66、アクセル開度センサ74、フットブレーキスイッチ76、レバーポジションセンサ78、前後Gセンサ79、油圧センサ110sなどが接続され、エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Ne、タービン軸34の回転速度(タービン回転速度)Nt、タービン軸34の回転トルク(タービントルク)Tt、電子スロットル弁30の全閉状態(アイドル状態)およびその開度(スロットル弁開度)θTH、エンジン12の冷却水温TW、ベルト式変速機18等の油圧回路の油温(作動油温)TCVT、ベルト式変速機18の出力軸回転速度Nout、アクセルペダル等のアクセル操作部材の操作量であるアクセル開度Acc、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無、シフトレバー77のレバーポジション(操作位置)PSH、前後加速度G、出力側油圧シリンダ46c内の挟圧力制御圧PBELTなどを表す信号が供給されるようになっている。タービン回転速度Ntは、前進用クラッチC1が係合させられた前進走行時には入力軸回転速度Ninと一致する。また、車速Vはベルト式変速機18の出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)Noutに対応する。すなわち、車速Vの値は、前記出力軸回転速度Nout、および前輪用差動歯車装置22のギヤ比や駆動輪径などにより算出される。従って、この出力軸回転速度Noutは車速Vに関連する車速関連値である。また、アクセル開度Accは運転者の出力要求量を表している。また、上記レバーポジションセンサ78は、たとえばニュートラル位置検出スイッチ、ドライブ位置検出スイッチ、エンジンブレーキ位置検出スイッチ、リバース位置検出スイッチなどの複数のスイッチを備えている。
電子制御装置60は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成された車両8の制御装置であり、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御やベルト式変速機18の変速制御、ベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26の係合、解放制御、カップリング54の係合力制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。エンジン12の出力制御は電子スロットル弁30、燃料噴射装置82、点火装置84などによって行われ、ベルト式変速機18の変速制御、ベルト挟圧力制御、およびロックアップクラッチ26の係合、解放制御は、何れも油圧制御回路86によって行われる。油圧制御回路86は、電子制御装置60により励磁されて油路を開閉するソレノイド弁や油圧制御を行うリニアソレノイド弁、それらのソレノイド弁から出力される信号圧に従って油路を開閉したり油圧制御を行ったりする開閉弁、調圧弁などを備えて構成されている。また、カップリング54の係合力制御は、ソレノイド93に供給される電流を制御することにより行なわれる。
図8は、電子制御装置60が備えている制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。図8に示すように、電子制御装置60は、変速制御部としての変速制御手段120と、前後輪駆動力配分制御部としての前後輪駆動力配分制御手段122と、エンジン振動周波数算出部としてのエンジン振動周波数算出手段130と、ベルト弦部振動周波数算出部としてのベルト弦部振動周波数算出手段132と、振動周波数判定部としての振動周波数判定手段134と、ベルト挟圧力変更部としてのベルト挟圧力変更手段136とを備えている。図8における変速制御手段120は、ベルト式自動変速部18の変速比γを変更するものである。具体的には、変速制御手段120は、まず、現在の車両8の走行状態を車両8に備えられている各センサから読み込む。たとえば、CVT出力軸回転速度センサ66、アクセル開度センサ74、レバーポジションセンサ78などから読み込まれたレバーポジション(操作位置)PSH、アクセル開度Acc、車速Vなどに基づいて、前記図4に示す予め定められた変速マップから前記入力軸回転速度Ninの目標値である目標回転速度Nin*を設定する。さらに、変速制御手段120は、実際の入力軸回転速度Ninを前記目標回転速度Nin*と一致するようにベルト式自動変速部18の変速比γを決定し、入力側可変プーリ42の油圧シリンダ42cの油圧を油圧制御回路86によって制御することにより変速比γを連続的に変化させ、前記決定した変速比γを実現する。この変速制御手段120は車両走行中は常に前記制御を実行している。
また、変速制御手段120は、出力側可変プーリ46の油圧シリンダ46cの油圧を油圧制御回路86によって制御することにより、可変プーリ42,46が伝動ベルト48を挟圧するベルト挟圧力の大きさを制御する。例えば、変速制御手段120は、アクセル開度センサ74から読み込まれるアクセル開度Accや、変速制御手段120によって設定されるベルト式変速部18の変速比γに基づいて、前記図5に示す予め定められたベルト挟圧力マップからベルト挟圧力に必要な油圧である挟圧力制御圧PBELTの大きさすなわち挟圧力制御圧PBELTの目標値である目標挟圧力制御圧PBELT*を決定し、その決定した目標挟圧力制御圧PBELT*に実際の挟圧力制御圧PBELTを一致させるように制御する。上記目標挟圧力制御圧PBELT*は、例えば、入力側プーリ42から出力側プーリ46に動力を伝達することのできる最小の値、すなわち伝動ベルト48と入力側プーリ42とが、また伝動ベルト48と出力側プーリ46とが滑ることのない最小の値が用いられる。すなわち、変速制御手段120は挟圧力制御手段でもある。
前後輪駆動力配分制御手段122は、前記カップリング54の作動を制御することで、前記エンジン12により発生させられる駆動力(トルク)の前記前輪用差動歯車装置22及び後輪用差動歯車装置55への入力トルク配分を制御する。具体的には、前記入力トルク配分が決定されると、後輪に必要なトルクを与えるための制御電流の値が例えば図7の関係(マップ)などに基づいて算出され、前記カップリング54に備えられたコイル93への制御電流Icを上記算出された電流の値に制御することで、そのカップリング54におけるメインクラッチ100の係合力を制御し、それにより前記ベルト式変速機18から出力された全駆動力に対する前記後輪57Lおよび57Rに伝達される駆動力の比率を零乃至0.5の範囲内で無段階に制御する。ここで、後輪57Lおよび57Rに伝達される駆動力の比率が零でない場合、すなわち後輪57Lおよび57Rに駆動力が伝達される状態を四輪駆動状態とよぶ。
ところで、ベルト式変速機18では、伝動ベルト48は入力側可変プーリ42および出力側可変プーリ46に巻き掛けられているので、図9の模式図に示すように、その可変プーリ42,46の何れにも接触していない弦部(ベルト弦部)51a,51bを有する。そのベルト弦部51a,51b(51aと51bとを特に区別しない場合は単にベルト弦部51という)は横振動(弦振動)を生じ得るので、ベルト弦部51には、そのベルト弦部51に加わる張力である弦張力TNSBELT(単位は例えば「N」)に基づいて下記式(1)により算出される固有振動数FPBELT(単位は例えば「Hz」)が存在し、例えばそのベルト弦部51の固有振動数FPBELTに一致する或いはその固有振動数FPBELTに近い周波数の振動が加えられると前記弦振動が発生する。本実施例の伝動ベルト48は、図10の斜視図に示すように、多層構造である二本の円環状のスチールリング49によって挟持された多数の金属製のエレメント50によって構成されており、これらのエレメント50の圧縮作用(押し出し)により動力の伝達を行なうものであり、前記弦振動はベルト弦部51aと51bとの何れでも発生するが、特にそのベルト弦部51a,51bのうちの疎側(スラックサイド)において発生し易い。下記式(1)は一般的な弦の固有振動数を求める式であり、nBELTは1以上の整数であって前記弦振動の次数であり、LBELTはベルト弦部51の長さであるベルト弦長さ(単位は例えば「m」)であり、σはベルト弦部51の単位長さ当たりの質量すなわち線密度(単位は例えば「kg/m」)である。この固有振動数FPBELTは、通常は、ベルト弦部51a及び51bのそれぞれで異なる値であり、下記式(1)から判るように、車両8の走行状態によって変化する。また、弦張力TNSBELTは、ベルト式変速機18の変速機入力トルクTin及び変速比γに応じて変化するものであるが、伝動ベルト48が巻き掛かる可変プーリ42,46の溝形状が図1のようにV型であるので、前記ベルト挟圧力が大きくなるほど大きくなる。
FPBELT=nBELT/(2×LBELT)×(TNSBELT/σ)1/2 ・・・(1)
また、本実施例における四輪駆動可能な駆動系においては、後輪57を駆動する動力伝達系、具体的には、ベルト式変速機18よりも後輪57側の動力伝達系、すなわち、動力分配装置52、プロペラシャフト53、カップリング54、後輪用差動歯車装置55、及び左右1対の後輪車軸56を介して左右1対の後輪57Rおよび57Lへ至る動力分配装置52と後輪57との間の後輪側動力伝達系が固有振動数FPRRを有する。この後輪側動力伝達系の固有振動数FPRRは、その後輪側動力伝達系を構成する部品によって決定されるねじり振動における固有振動数である。例えば、その後輪側動力伝達系の固有振動数FPRRに対して前記ベルト弦部51の固有振動数FPBELTが近くなり、両者FPRR,FPBELTに近い周波数の振動がエンジン12等から加えられると、前記後輪側動力伝達系とベルト弦部51とが共振して、その共振に起因したこもり音が発生することがある。そこで、電子制御装置60は、そのこもり音を抑制するための制御機能を備えており、その制御機能の要部について次に説明する。なお、前輪用差動歯車装置22は、例えば図8にその概略を示す様に、ベルト式変速機18などと一体に成形されることから、ベルト式変速機18の弦振動が前輪用差動歯車装置22に伝達された場合であってもこもり音が発生しにくい構造とされている。
エンジン振動周波数算出手段130は、エンジン12の周期的な回転変動の周波数であるエンジン回転変動周波数FENGを算出する。エンジン12の上記回転変動はエンジン点火によるトルク振動に起因して発生するので、エンジン回転変動周波数FENGは、具体的には、エンジン12の点火による単位時間当たりの爆発回数であり、別の表現を用いれば、エンジン12の周期的なトルク振動の周波数であるエンジントルク振動周波数とも言える。例えば、本実施例のエンジン12は4サイクルレシプロエンジンであるので、エンジン振動周波数算出手段130は、下記式(2)から、エンジン回転速度Neに基づいてエンジン回転変動周波数FENGを算出する。下記式(2)において、NMCLはエンジン12の気筒数であり、エンジン回転速度Neの単位は「rpm」であり、エンジン回転変動周波数FENGの単位は「Hz」である。上記エンジン回転速度Neは、例えばエンジン回転速度センサ62から取得される。
ENG=Ne×NMCL/120 ・・・(2)
ベルト弦部振動周波数算出手段132は、ベルト弦部51a及び51bのそれぞれのベルト弦部振動周波数F1BELTを算出する。そのベルト弦部振動周波数F1BELTとは、その周波数F1BELTが後述の周波数判定範囲WFRR内に入れば、そのベルト弦部振動周波数F1BELTを有するベルト弦部51と前記後輪側動力伝達系とが共振し得る状態にあると判断される算出値である。具体的に、ベルト弦部振動周波数算出手段132は、上記ベルト弦部振動周波数F1BELTを算出するために、前記式(1)から、線密度σ、ベルト弦長さLBELT、及び弦張力TNSBELTに基づいて、ベルト弦部51a及び51bのそれぞれの固有振動数FPBELT(以下、ベルト弦部固有振動数FPBELTという)を算出する。このとき、ベルト弦部振動周波数算出手段132は、「nBELT=1」とした1次のベルト弦部固有振動数FPBELTだけを算出し、その算出した1次のベルト弦部固有振動数FPBELTをベルト弦部振動周波数F1BELTとしてもよいが、本実施例では、ベルト弦部51a及び51bの各々で複数のベルト弦部振動周波数F1BELTを算出する。すなわち、ベルト弦部振動周波数算出手段132は、1次のベルト弦部固有振動数FPBELTだけでなく「nBELT≧2」である高次のベルト弦部固有振動数FPBELTもそれぞれ算出し、1以上の次数nBELTであるそれぞれのベルト弦部固有振動数FPBELTを1以上の所定整数mBELTで除して得た周波数をそれぞれベルト弦部振動周波数F1BELTとして算出する。そのベルト弦部振動周波数F1BELTを算出式で表せば、1次のベルト弦部固有振動数FPBELTをFP1BELTとして下記式(3)のようになる。従って、上記次数nBELTは本発明の第1の整数に対応し、上記所定整数mBELTは本発明の第2の整数に対応する。本実施例では演算負荷軽減のため、ベルト弦部振動周波数算出手段132は、次数nBELTが1〜3であり所定整数mBELTが1〜3であるそれぞれの組合せにおいて、ベルト弦部振動周波数F1BELTを算出する。
F1BELT=FP1BELT×nBELT/mBELT ・・・(3)
(但し、nBELT=1,2,3,・・・、mBELT=1,2,3,・・・)
ベルト弦部振動周波数算出手段132は、前記式(1)からベルト弦部固有振動数FPBELTを算出するに際して、線密度σ、ベルト弦長さLBELT、及び弦張力TNSBELTを取得する必要がある。そこで、線密度σは、スチールリング49及びエレメント50のそれぞれの質量及び数量などに基づいて予め算出され、ベルト弦部振動周波数算出手段132に記憶されている。その線密度σは、伝動ベルト48にはエレメント50の疎密が生じるのでベルト弦部51a,51bの疎側と密側とで厳密には異なる値となるが、その差は僅かであるので、本実施例ではベルト弦部51a,51bの疎側または密側に拘わらず共通の一定値として記憶されている。
また、前記ベルト弦長さLBELTは、ベルト弦部振動周波数算出手段132によってベルト式変速機18の変速比γに基づいて算出される。図9から判るように、ベルト弦長さLBELTは、変速比γが1であるときに可変プーリ42,46相互の軸間距離と等しくなって最長となり、変速比γが1よりも大きくなるほど或いは1よりも小さくなるほどベルト弦長さLBELTは短くなる。また、ベルト弦長さLBELTは、ベルト弦部51a,51bの何れでも同一である。例えば、ベルト弦長さLBELTの算出に用いられる変速比γは、変速制御手段120によって決定されるベルト式変速機18の変速比γである。
また、前記弦張力TNSBELTは、ベルト弦部振動周波数算出手段132によって、タービントルクTtに比例するベルト式変速機18の変速機入力トルクTinとベルト式変速機18の変速比γと前記ベルト挟圧力に対応する前記挟圧力制御圧PBELTとに基づいて算出される。弦張力TNSBELTは、ベルト弦部51a,51bの疎側と密側とで異なる値となるのでそれぞれの側について算出される。例えば、上記変速機入力トルクTin、変速比γ、及び挟圧力制御圧PBELTのそれぞれと弦張力TNSBELTとの関係が弦張力マップとして、実験やシミュレーションなどにより予め求められベルト弦部振動周波数算出手段132に記憶されており、ベルト弦部振動周波数算出手段132は、上記弦張力マップから、変速機入力トルクTinと変速比γと挟圧力制御圧PBELTとに基づいて弦張力TNSBELTを算出する。例えば、弦張力TNSBELTの算出に用いられる変速比γは、変速制御手段120によって決定されるベルト式変速機18の変速比γであり、変速機入力トルクTinはタービントルクセンサ65により測定されるタービントルクTtに基づいて算出され、挟圧力制御圧PBELTは油圧センサ110sにより測定される。但し、後述するベルト挟圧力上昇制御の実行中にはそのベルト挟圧力上昇制御が実行されないとした場合の挟圧力制御圧PBELTが弦張力TNSBELTの算出に用いられるのが好ましいので、本実施例では、ベルト弦部振動周波数算出手段132は、そのベルト挟圧力上昇制御の実行中に弦張力TNSBELTを算出する際には、油圧センサ110sにより測定される挟圧力制御圧PBELTに替えて、前記図5のベルト挟圧力マップから決定される目標挟圧力制御圧PBELT*を用いる。
振動周波数判定手段134は、エンジン振動周波数算出手段130により算出されたエンジン回転変動周波数FENGが予め定められた周波数判定範囲WFRR内に入るか否かを判定する。更に、振動周波数判定手段134は、ベルト弦部振動周波数算出手段132により算出されたベルト弦部振動周波数F1BELTが上記周波数判定範囲WFRR内に入るか否かを判定する。このとき、前記式(3)に示すようにベルト弦部振動周波数F1BELTは次数(第1の整数)nBELTと所定整数(第2の整数)mBELTとをそれぞれ切り替えて複数算出されるので、振動周波数判定手段134は、その複数のベルト弦部振動周波数F1BELTのうち何れかが上記周波数判定範囲WFRR内に入るのであれば、ベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRR内に入ると判定する。ここで、上記周波数判定範囲WFRRとは、ベルト式変速機18よりも後輪57側の動力伝達系すなわち前記後輪側動力伝達系が所定の限度LMTRR以上の大きさで共振する周波数の範囲であり、上記後輪側動力伝達系の共振周波数領域と称してもよく、例えば図11によって説明される。その図11は、前記後輪側動力伝達系にそれの外部から一定振幅の振動(詳細には、ねじり振動)を周波数を変化させつつ加えた場合における後輪側動力伝達系の振動の応答性を示す図である。図11は例えば実験またはシミュレーションなどによって得ることができ、図11の横軸は例えばエンジン12等の上記外部から加えられる振動の周波数であり、縦軸は上記後輪側動力伝達系の応答性すなわち上記外部からの振動に対する後輪側動力伝達系の共振のし易さであって、その縦軸の応答性は、その共振のし易さを表せばどのような物理値で示されても差し支えないが、例えば上記外部からの振動の振幅AMP1に対する後輪側動力伝達系の振幅AMP2の比率(=AMP2/AMP1)で表される。
上記図11に示すように、上記外部からの振動の周波数を高めていくと、縦軸の応答性は後輪側動力伝達系が固有振動数FPRRで最大となり、上記外部からの振動の周波数をその固有振動数FPRRを超えて更に高めていくと、上記縦軸の応答性は低下していく。そこで、上記固有振動数FPRRを含み前記所定の限度LMTRRに相当する応答性以上となる横軸の周波数の範囲が、前記後輪側動力伝達系の周波数応答性が高くなる高周波数応答性範囲であるので、前記周波数判定範囲WFRRとして設定されている。すなわち、その所定の限度LMTRR相当の応答性以上となる最低周波数としての周波数下限値NIN4WDL以上であって且つ所定の限度LMTRR相当の応答性以上となる最高周波数としての周波数上限値NIN4WDH以下である周波数(横軸)の範囲が、上記周波数判定範囲WFRRである。なお、上記所定の限度LMTRRは、例えば乗員に違和感を覚えさせる程度のこもり音を発生させる可能性がある上記振動の応答性の大きさとして予め実験的に求められている。
図8に戻り、ベルト挟圧力変更手段136は、振動周波数判定手段134によって、エンジン回転変動周波数FENGが前記周波数判定範囲WFRR内に入り且つベルト弦部振動周波数F1BELTが前記周波数判定範囲WFRR内に入ると判定された場合には、そう判定されない場合すなわちエンジン回転変動周波数FENGとベルト弦部振動周波数F1BELTとの少なくとも一方が周波数判定範囲WFRR内に入らない場合と比較して、前記ベルト挟圧力を上昇させるベルト挟圧力上昇制御を実行する。具体的に、そのベルト挟圧力上昇制御では、出力側可変プーリ46の油圧シリンダ46cに供給される挟圧力制御圧PBELTの大きさを制御することにより、ベルト弦部振動周波数F1BELTが前記周波数判定範囲WFRRから外れるように前記ベルト挟圧力を上昇させる。例えば、ベルト挟圧力変更手段136は、前記式(1)、式(3)および前記弦張力マップから、ベルト弦部振動周波数F1BELTが前記周波数上限値NIN4WDHを超える挟圧力制御圧PBELTを予め算出しておき、油圧センサ110sにより測定される実際の挟圧力制御圧PBELTがその算出しておいた挟圧力制御圧PBELTになるように制御することにより、ベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRRから外れるように前記ベルト挟圧力を上昇させる。そのベルト挟圧力を上昇させるほど弦張力TNSBELTが大きくなるので、ベルト挟圧力変更手段136をベルト張力変更手段と称してもよい。なお、カップリング54の作動において後輪57に伝達される駆動力の比率が零である二輪駆動状態すなわちエンジン12と後輪57との間の動力伝達経路が遮断された駆動状態ではベルト弦部51と前記後輪側動力伝達系とが共振することがないので、ベルト挟圧力変更手段136は、車両8が上記二輪駆動状態であるときには、振動周波数判定手段134の判定に拘わらず前記ベルト挟圧力上昇制御を実行しない。
図12は、電子制御装置60の制御作動の要部、すなわち、エンジン回転変動周波数FENGとベルト弦部振動周波数F1BELTとに基づいて前記ベルト挟圧力上昇制御を実行する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。なお、前記ベルト挟圧力上昇制御は車両8が前記二輪駆動状態であるときには実行される必要がないので、図12のフローチャートは、車両8が、エンジン12と後輪57との間の動力伝達経路が遮断されていない駆動状態すなわち前記四輪駆動状態であるときにのみ実行される。
先ず、エンジン振動周波数算出手段130に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、エンジン回転変動周波数FENGが、前記式(2)から、エンジン回転速度Neに基づいて算出される。SA1の次はSA2に移る。
振動周波数判定手段134に対応するSA2においては、前記SA1にて算出されたエンジン回転変動周波数FENGが予め定められた周波数判定範囲WFRR内に入るか否かが判定される。具体的には、そのエンジン回転変動周波数FENGがその周波数判定範囲WFRRの下限値である周波数下限値NIN4WDL以上であり、且つそのエンジン回転変動周波数FENGがその周波数判定範囲WFRRの上限値である周波数上限値NIN4WDH以下であるか否かが判定される。このSA2の判定が肯定された場合、すなわち、エンジン回転変動周波数FENGが周波数判定範囲WFRR内に入る場合には、SA3に移る。一方、このSA2の判定が否定された場合には、本フローチャートは終了する。
ベルト弦部振動周波数算出手段132に対応するSA3においては、1次のベルト弦部固有振動数FP1BELTが、前記式(1)から、「nBELT=1」として線密度σ、ベルト弦長さLBELT、及び弦張力TNSBELTに基づいて算出される。そして、ベルト弦部振動周波数F1BELTが、前記式(3)から、その算出された1次のベルト弦部固有振動数FP1BELTに基づき、次数(第1の整数)nBELTと所定整数(第2の整数)mBELTとをそれぞれ切り替えて複数算出される。例えば、ベルト弦部振動周波数F1BELTは、次数nBELTが1〜3であり所定整数mBELTが1〜3であるそれぞれの組合せにおいて算出される。更に、その複数のベルト弦部振動周波数F1BELTは、ベルト弦部51a及び51bのそれぞれについて算出される。なお、前記弦張力TNSBELTは、例えば前記弦張力マップから、変速機入力トルクTinと変速比γと挟圧力制御圧PBELTとに基づいて算出されるものである。また、前記ベルト挟圧力上昇制御の実行中には、油圧センサ110sにより測定される挟圧力制御圧PBELTに替えて、前記図5のベルト挟圧力マップから決定される目標挟圧力制御圧PBELT*が弦張力TNSBELTの算出に用いられる。SA3の次はSA4に移る。
振動周波数判定手段134に対応するSA4においては、前記SA3にて算出されたベルト弦部振動周波数F1BELTが前記周波数判定範囲WFRR内に入るか否かが判定される。前記SA3では、ベルト弦部振動周波数F1BELTはベルト弦部51a及び51bのそれぞれで複数算出されるので、ベルト弦部51a及び51bの少なくとも一方について複数のベルト弦部振動周波数F1BELTのうち何れかが上記周波数判定範囲WFRR内に入るのであれば、ベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRR内に入ると判定される。ベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRR内に入る場合とは、具体的には前記SA2と同様に、そのベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数下限値NIN4WDL以上であり且つそのベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数上限値NIN4WDH以下である場合である。このSA4の判定が肯定された場合、すなわち、ベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRR内に入る場合には、SA5に移る。一方、このSA4の判定が否定された場合には、本フローチャートは終了する。
ベルト挟圧力変更手段136に対応するSA5においては、前記ベルト挟圧力上昇制御が実行される。具体的に、そのベルト挟圧力上昇制御では、ベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRRから外れるように前記ベルト挟圧力が上昇させられる。このとき、前記SA4にて周波数判定範囲WFRR内に入ると判定されたベルト弦部振動周波数F1BELTだけでなく、前記SA3にて算出される全てのベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRRから外れるように制御されるのが好ましい。
図13および図14は、停止していた車両8が発進し車速Vがある程度上昇するまでを表したタイムチャートであって、図13は、前記ベルト挟圧力上昇制御の実行により、前記後輪側動力伝達系とベルト弦部51との共振に起因したこもり音の発生が抑制される場合を説明するためのタイムチャートである一方で、図14は、上記こもり音がそもそも発生せず上記ベルト挟圧力上昇制御が実行される必要のない場合を説明するためのタイムチャートである。図13および図14において、前記ベルト挟圧力上昇制御が実行されないときのベルト弦部振動周波数F1BELTの時間変化を示す破線L01と、上記ベルト挟圧力上昇制御が実行されたときのベルト弦部振動周波数F1BELTの時間変化を示す破線L02とは両図で同一であり、エンジン回転変動周波数FENGの時間変化を示す実線L031と実線L032とが両図で異なる。
図13に示すタイムチャートでは、車両発進時(時間t=0)から徐々に低下しているベルト弦部振動周波数F1BELTは、前記ベルト挟圧力上昇制御が実行されなければ破線L01のように推移し、tA1時点からtA2時点までの間で周波数判定範囲WFRR内に入る。従って、そのtA1〜tA2時点すなわち図13のこもり音発生領域において、車両8はベルト弦部51と前記後輪側動力伝達系とが共振し得る状態となっている(破線L01)。更に、実線L031に示すように車両発進時から次第に上昇しているエンジン回転変動周波数FENGも、tA1〜tA2時点において周波数判定範囲WFRR内に入っているので、ベルト弦部振動周波数F1BELTが破線L01のように推移していたとすれば、上記ベルト弦部51と前記後輪側動力伝達系とが共振し得る状態に対してエンジン12から上記周波数判定範囲WFRR内の周波数の振動が加えられ、ベルト弦部51と前記後輪側動力伝達系との共振に起因するこもり音が発生することになる。しかし、本実施例では、図12のSA5にて前記ベルト挟圧力上昇制御が実行され、それによりベルト弦部振動周波数F1BELTが破線L02に示すように推移させられ、tA1〜tA2時点において周波数判定範囲WFRRから高周波数側に外れるので、上記ベルト弦部51と前記後輪側動力伝達系とが共振し得る状態が形成されず、上記こもり音の発生が抑制される。
一方、図14に示すタイムチャートでは、破線L01で示すベルト弦部振動周波数F1BELTは、徐々に低下する過程で一時的に周波数判定範囲WFRR内に入り、そのときには、図13に示すタイムチャートと同様に、ベルト弦部51と前記後輪側動力伝達系とが共振し得る状態が形成される。しかし、図13とは異なり図14では、実線L032に示すように車両発進時から次第に上昇しているエンジン回転変動周波数FENGは、周波数判定範囲WFRR内に入らないので、振動源であるエンジン12から上記周波数判定範囲WFRR内の周波数の振動が伝動ベルト48及び前記後輪側動力伝達系に加えられることはなく、ベルト弦部51と前記後輪側動力伝達系とは互いに共振し得る状態ではあるが共振はしない。すなわち、図14の例では、図12のSA5にて前記ベルト挟圧力上昇制御が実行される必要はなく、本実施例では、上記ベルト挟圧力上昇制御は図12のSA2の判定が否定されるので実行されない。しかし、エンジン回転速度Neを加味せず出力軸回転速度Noutに基づきベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRR内であると判断した場合に前記ベルト挟圧力を上昇させる従来制御では、エンジン回転変動周波数FENGに関係なく上記ベルト挟圧力を上昇させてベルト弦部振動周波数F1BELTが破線L02に示すように推移させられるので、前記こもり音抑制の観点からは不必要に上記ベルト挟圧力を上昇させることになる。従って、図12に示す本実施例の制御作動は、上記従来制御と比較して、上記こもり音抑制の観点から不必要に上記ベルト挟圧力を上昇させることがなく、ベルト挟圧力の上昇に起因した燃費悪化や伝動ベルト48の耐久性低下を抑制できるという利点がある。なお、本実施例で例えば、燃費とは単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両8全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下または燃費の悪化とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、車両8全体としての燃料消費率が大きくなることである。
本実施例によれば、ベルト挟圧力変更手段136は、エンジン回転変動周波数FENGとベルト弦部振動周波数F1BELTとが予め定められた前記周波数判定範囲WFRR内に入る場合には、エンジン回転変動周波数FENGとベルト弦部振動周波数F1BELTとの少なくとも一方が周波数判定範囲WFRR内に入らない場合と比較して前記ベルト挟圧力を上昇させる前記ベルト挟圧力上昇制御を実行する。従って、そのベルト挟圧力上昇制御が実行されるとベルト弦部51の弦張力TNSBELTが変化し、それによりそのベルト弦部51がエンジン12からの振動により共振させられる状態から外れるので、ベルト式変速機18よりも後輪57側の動力伝達系すなわち前記後輪側動力伝達系と、伝動ベルト48との共振に起因したこもり音を低減することが可能である。また、前記ベルト挟圧力上昇制御を実行するか否かはエンジン回転変動周波数FENGに基づいて判断されるので、そのベルト挟圧力上昇制御は、前記こもり音を発生させる振動源であるエンジン12からの振動が、上記後輪側動力伝達系と伝動ベルト48とを共振させる周波数ではない場合には実行されず、不必要な上記ベルト挟圧力上昇制御の実行が抑制される。従って、車速Vや出力軸回転速度Noutなどに基づいて上記ベルト挟圧力上昇制御を実行する場合と比較して、前記ベルト挟圧力を前記こもり音の低減のために上昇させる機会を抑えることが可能である。そのため、本実施例には、ベルト挟圧力の上昇に起因した燃費悪化や伝動ベルト48の耐久性低下を抑制できるという利点がある。
また、本実施例によれば、エンジン回転変動周波数FENGは、エンジン12の点火による単位時間当たりの爆発回数である。従って、エンジン12の回転はエンジン点火による爆発に連動して変動するので、容易且つ正確にそのエンジン回転変動周波数FENGを算出することが可能である。
また、本実施例によれば、ベルト弦部振動周波数F1BELTは、前記式(1)及び前記式(3)に示すように、ベルト弦部51の弦張力TNSBELTに基づいて算出される1次のベルト弦部固有振動数FP1BELTに1以上の次数(第1の整数)nBELTを乗じ且つ1以上の所定整数(第2の整数)mBELTで除して得た周波数である。従って、ベルト弦部振動周波数F1BELTを1次のベルト弦部固有振動数FP1BELTに基づいて容易に算出し、前記ベルト挟圧力上昇制御を実行するか否かを適切に判断できる。
また、本実施例によれば、前記周波数判定範囲WFRRは、図11に示すように、前記後輪側動力伝達系が所定の限度LMTRR以上の大きさで共振する周波数の範囲である。従って、その後輪側動力伝達系と伝動ベルト48とが共振することを抑制できる。
また、本実施例によれば、ベルト挟圧力変更手段136は、前記ベルト挟圧力上昇制御では、ベルト弦部振動周波数F1BELTが前記周波数判定範囲WFRRから外れるように前記ベルト挟圧力を上昇させるので、伝動ベルト48と前記後輪側動力伝達系とが共振し得る状態が形成されないようにして、その結果、伝動ベルト48が、そのベルト挟圧力の上昇により上記後輪側動力伝達系と共振しないようにすることが可能である。
また、本実施例によれば、エンジン12から出力された駆動トルクを前輪24および後輪57のそれぞれに分配する動力分配装置52がベルト式変速機18と後輪57との間に設けられているので、本実施例のような四輪駆動車両8において本発明を適用し、伝動ベルト48と前記後輪側動力伝達系との共振に起因したこもり音を低減できる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例においては、図12のフローチャートのSA2にて、前記式(2)から算出されたエンジン回転変動周波数FENGが周波数判定範囲WFRR内に入るか否かが判定されるが、その式(2)から算出されたエンジン回転変動周波数FENGに2以上の整数を乗じた2次以上のエンジン回転変動周波数FENGもSA1にて算出されて、SA2で、その1次、2次、3次というように次数を変えた複数のエンジン回転変動周波数FENGが周波数判定範囲WFRR内に入るか否かが判定されても差し支えない。そのようにSA2にて複数のエンジン回転変動周波数FENGが周波数判定範囲WFRR内に入るか否かが判定される場合には、その複数のエンジン回転変動周波数FENGの何れかが周波数判定範囲WFRR内に入ればSA2の判定は肯定される。
また、前述の実施例においては、伝動ベルト48は、図10に示すようなエレメント50の圧縮作用により動力の伝達を行なうものであるが、伝動ベルト48の引っ張りにより動力の伝達を行う構造であっても差し支えない。
また、前述の実施例において、車両8が備える前記後輪側動力伝達系は図1の骨子図に示すとおりであるが、その後輪側動力伝達系に含まれる構成要素やその構成要素の並び順は、図1に示すものに限定されるわけではない。例えば、上記後輪側動力伝達系の一部にカップリング54が設けられているが、カップリング54の無い車両8も考え得る。
また、前述の実施例において、車両8は走行用駆動力源としてエンジン12を備えているが、更に走行用駆動力源として電動モータなどの他の駆動力源を備えていても差し支えない。
また、前述の実施例において、車両8は、前輪用差動歯車装置22と動力分配装置52とカップリング54とを備えた四輪駆動車両であるが、それら前輪用差動歯車装置22と動力分配装置52とカップリング54とが設けられておらず、エンジン12から出力された駆動トルクがベルト式変速機18とプロペラシャフト53とを順次介して後輪57に伝達される二輪駆動車両すなわちFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両であっても差し支えない。
また、前述の実施例において、エンジン12は4サイクルレシプロエンジンであるが、2サイクルエンジンであってもよいし、ロータリエンジンであってもよい。そのようにエンジン12の駆動形式が変われば、前記式(2)はその駆動形式に合わせたものとなる。
また、前述の実施例の図12において、エンジン回転変動周波数FENGとベルト弦部振動周波数F1BELTとが予め定められた前記周波数判定範囲WFRR内に入るか否かの判定について、SA1からSA4において行われているが、SA1の後にSA2が実行され、且つSA3の後にSA4が実行されれば、それらSA1からSA4の順序は図12に示す通りでなくともよい。
また、前述の実施例において、ベルト弦部振動周波数F1BELTは、前記式(3)に示すように次数(第1の整数)nBELTと所定整数(第2の整数)mBELTとをそれぞれ切り替えて、1次のベルト弦部固有振動数FP1BELTに基づき複数算出されるが、上記次数nBELTと所定整数mBELTとを固定して1つだけ算出されても差し支えない。例えば、ベルト弦部振動周波数F1BELTは、1次のベルト弦部固有振動数FP1BELTと同一とされても差し支えない。
また、前述の実施例において、ベルト弦部固有振動数FPBELTは、前記式(1)から算出されるが、例えばその式(1)を用いずに、変速機入力トルクTin、変速比γ、及び挟圧力制御圧PBELT等をパラメータとしてそれらのパラメータの各々とベルト弦部固有振動数FPBELTとの関係を表すマップを予め求めておき、ベルト弦部固有振動数FPBELTがそのマップから直接に算出されても差し支えない。
また、前述の実施例において、前記ベルト挟圧力上昇制御では、ベルト弦部振動周波数F1BELTが周波数判定範囲WFRRから外れるように前記ベルト挟圧力が上昇させられるが、これに限られず、例えば車両8にこもり音の大きさを検知するマイクおよび音圧センサ等を設け、実際にこもり音の発生が所定のレベルまで低減されたか否かに基づいて、上記ベルト挟圧力の上昇幅すなわち挟圧力制御圧PBELTの上昇幅が決定されても差し支えない。
また、前述の実施例においては、ベルト式変速機18はその変速比γを連続的に無段階に切換可能な構成、すなわち無段変速機であるとされたが、このような態様に限られない。例えば、ベルト式変速機18の変速比γを予め定められた多数の変速比にそれぞれ選択的に設定しうる有段式の変速機であってもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
8:四輪駆動車両
12:エンジン
18:ベルト式変速機
24R,24L:前輪
42:入力側可変プーリ(可変プーリ)
46:出力側可変プーリ(可変プーリ)
48:伝動ベルト
57R,57L:後輪
52:動力分配装置
60:電子制御装置(制御装置)

Claims (6)

1対の可変プーリと該1対の可変プーリに巻き掛けられた伝動ベルトとを含みエンジンと後輪との間の動力伝達経路の一部を構成するベルト式変速機を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、
前記エンジンの周期的な回転変動の周波数であるエンジン回転変動周波数と前記伝動ベルトの弦部のベルト弦部振動周波数とが予め定められた周波数判定範囲内に入る場合には、前記エンジン回転変動周波数と前記ベルト弦部振動周波数との少なくとも一方が前記周波数判定範囲内に入らない場合と比較して、前記可変プーリが前記伝動ベルトを挟圧するベルト挟圧力を上昇させるベルト挟圧力上昇制御を実行する
ことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
前記エンジン回転変動周波数は、前記エンジンの点火による単位時間当たりの爆発回数である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記ベルト弦部振動周波数は、前記弦部の張力に基づいて算出される1次の固有振動数に1以上の第1の整数を乗じ且つ1以上の第2の整数で除して得た周波数である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記周波数判定範囲は、前記ベルト式変速機よりも前記後輪側の動力伝達系が所定の限度以上の大きさで共振する周波数の範囲である
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記ベルト挟圧力上昇制御では、前記ベルト弦部振動周波数が前記周波数判定範囲から外れるように前記ベルト挟圧力を上昇させる
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記エンジンから出力された駆動トルクを前輪および前記後輪のそれぞれに分配する動力分配装置が前記ベルト式変速機と前記後輪との間に設けられている
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
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