JP2011246397A - プロスタグランジンe1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の低減方法 - Google Patents

プロスタグランジンe1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の低減方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プロスタグランジンE1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の低減方法を提供する。
【解決手段】プロスタグランジンE1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸を低減する方法であって、
ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を含むリン脂質(ここで、該リン脂質中のPCとPGの比(PC:PG)は85:15〜99.7:0.3である。)を含有し、かつ脂肪乳剤をガラス製気密容器に充填した後に加熱滅菌して、pHが4.5〜6.5である脂肪乳剤を得る工程を含む、遊離脂肪酸の低減方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロスタグランジンE1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の低減方法に関する。
プロスタグランジンは、二重結合を3−5個有する必須脂肪酸から合成される生理活性物質であり、炎症・痛み・腫れの調整、血圧機能・心機能・胃腸機能の調整、消化酵素の分泌調整、腎機能調節、血液凝固、血小板凝集、アレルギー反応、神経伝達、各種ホルモンの産生等に関与している。
なかでも、プロスタグランジンE1は、慢性動脈閉塞症(バージャー病,閉塞性動脈硬化症)における四肢潰瘍ならびに安静時疼痛の改善、進行性全身性硬化症および全身性エリテマトーデスにおける皮膚潰瘍の改善、糖尿病における皮膚潰瘍の改善、振動病における末梢血行障害に伴う自覚症状の改善ならびに末梢循環・神経・運動機能障害の回復、動脈管依存性先天性心疾患における動脈管の開存、経上腸間膜動脈性門脈造影における造影能の改善における効用が明らかになっている。
プロスタグランジンE1(PGE1)製剤の一形態として、静脈注射用の脂肪乳剤が開発され(例えば、特公平1−57094号公報、特公平1−57096号公報、特開2001−10958号公報参照)、市販されているものもある。
しかしながら、現在市販されているPGE1脂肪乳剤は低温(例えば5℃以下)で遮光して保存しなければならず、また、低温で保存したとしても品質保証期間が短い(例えば5℃×1年間)。その理由としては、有効成分であるPGE1が化学的に不安定であることが挙げられる。例えば、PGE1脂肪乳剤は、保存時に凍結しないよう留意する必要があるため、5℃で保存する場合、厳密な温度管理が必要である。このように、現在市販されているPGE1脂肪乳剤は、厳密な温度管理下で保存する必要があり、保存中の品質管理が難しい。そこで、PGE1の安定性を高める検討が種々なされてきたが(例えば、特公平8−18989号公報、特開平4−338333号公報参照)、その効果は充分なものとは言い難かった。また、脂肪乳剤の安定性を高めるための検討についても行われているが(例えば、特表2005−500366号公報、WO2004/52354号公報参照)、PGE1脂肪乳剤についての記載は一切なされていない。
このように、PGE1脂肪乳剤は、PGE1の化学的不安定さから、保存安定性の向上が求められている(例えば、WO2008/29763号公報)。
特公平1−57094号公報 特公平1−57096号公報 特開2001−10958号公報 特公平8−18989号公報 特開平4−338333号公報 特表2005−500366号公報 WO2004/52354号公報 WO2008/29763号公報
本発明者らは、(i)PGE1脂肪乳剤の加熱滅菌後のpHが4.5未満である場合、PGE1脂肪乳剤から遊離脂肪酸が生じ、この遊離脂肪酸がPGE1を分解する傾向があること、および(ii)PGE1脂肪乳剤の加熱滅菌後のpHを4.5〜6.5にすることにより、PGE1脂肪乳剤中の遊離脂肪酸を低減できることを見出し、本発明を見出した。すなわち、本発明は、プロスタグランジンE1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の低減方法を提供する。
本発明の一態様に係る遊離脂肪酸の低減方法は、
プロスタグランジンE1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸を低減する方法であって、
ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を含むリン脂質(ここで、該リン脂質中のPCとPGの比(PC:PG)は85:15〜99.7:0.3である。)を含有し、かつ脂肪乳剤をガラス製気密容器に充填した後に加熱滅菌して、pHが4.5〜6.5である脂肪乳剤を得る工程を含む。
上記遊離脂肪酸の低減方法によれば、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を含むリン脂質(ここで、該リン脂質中のPCとPGの比(PC:PG)は85:15〜99.7:0.3である。)を含有し、かつ脂肪乳剤をガラス製気密容器に充填した後に加熱滅菌して、pHが4.5〜6.5である脂肪乳剤を得る工程を含むことにより、得られた脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の発生を低減して、保存中の有効成分(プロスタグランジンE1)の分解を抑制することができる。
また、上記脂肪乳剤は、市販のPGE1脂肪乳剤と比較して、保存期間の延長および/または保存温度範囲の拡大が可能である。例えば、後述する実施例の結果より、PGE1脂肪乳剤の品質保証期間(5℃×1年)を2年程度に延長したり、保存温度範囲を10℃程度に拡大したりできる可能性がある。これにより、保存中の品質管理がより容易である。
以下、本発明の一実施形態に係るプロスタグランジンE1を有効成分として含有する脂肪乳剤(以下、「PGE1脂肪乳剤」または単に「脂肪乳剤」ともいう。)中の遊離脂肪酸の低減方法について説明する。なお、本実施形態において、「%」は「質量%」を意味する。
1.脂肪乳剤
本発明における脂肪乳剤は、プロスタグランジンE1(有効成分)、リン脂質(乳化剤)、油基材、および水を含む乳化物(水中油型乳剤)である。すなわち、本実施形態に係るPGE1脂肪乳剤は、脂肪粒子が水中に分散された乳化物であり、該脂肪粒子においては、リン脂質を含む膜の内側にプロスタグランジンE1および油基材が主に包含されている。
本発明における脂肪乳剤の各成分の含有量は、プロスタグランジンE1が0.2〜100μg/mL、油基材が脂肪乳剤の全量に対して5〜50%であり、また、リン脂質が油基材に対し1〜50%である。また、本発明における脂肪乳剤は、必要に応じて、等張化剤、抗酸化剤、pH調整剤をさらに含有していてもよい。以下、本発明によって得られる遊離脂肪酸が低減されたPGE1脂肪乳剤を構成する各成分について説明する。
1.1.プロスタグランジンE1
プロスタグランジンは、プロスタン酸を基本骨格として有する化合物の総称であり、その環構造により、A、B、C、D、E、F、G、H、I等に分類されている。上述したように、プロスタグランジンは生理活性物質であり、例えば、平滑筋刺激、炎症、アレルギー、細胞の分泌・凝集・遊走、細胞増殖、神経伝達などにおいて細胞情報伝達物質として機能する。より具体的には、プロスタグランジンはその種類によって、子宮筋および摘出小腸等の平滑筋収縮作用、降圧作用、昇圧作用、抗脂肪分解作用、胃液分泌の阻止作用、中枢神経系への作用、血小板粘着性の減少作用、血小板凝集抑制作用、血栓作成阻止作用、表皮増殖作用、角質化刺激作用等の生理学的作用を有する。
中でもPGE1は例えば、血管拡張、血圧降下、腎血流量増大、ナトリウム利尿、レニン分泌促進、エリスロポエチン分泌促進、血小板凝集阻害、気管支拡張、子宮収縮、腸管運動亢進、胃・腸の縦走筋収縮、胃・腸の輪状筋弛緩、胃酸分泌抑制、胃粘膜保護作用、免疫抑制作用、末梢交感神経終末からのノルエピネフリン遊離抑制等の作用を有する。したがって、本実施形態に係るPGE1を含有する脂肪乳剤は例えば、慢性動脈閉塞症における四肢潰瘍ならびに安静時疼痛の改善、進行性全身性硬化症および全身性エリテマトーデスにおける皮膚潰瘍の改善、糖尿病における皮膚潰瘍の改善、振動病における末梢血行障害に伴う自覚症状の改善ならびに末梢循環・神経・運動機能障害の回復、動脈管依存性先天性心疾患における動脈管の開存および経上腸間膜動脈性門脈造影における造影能の改善に用いることができる。
1.2.リン脂質
本発明における脂肪乳剤で使用されるリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を含む。また、リン脂質は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの薬学的に許容しうる塩であってもよい。
PCとしては、卵黄レシチン、大豆レシチン、あるいは公知の方法にて合成、半合成により得られたレシチン等が挙げられる。中でも卵黄レシチンが好ましく、リン脂質含量が高められた精製卵黄レシチン、さらには、PEを実質的に含有しない高度精製卵黄レシチンが好ましい。
尚、精製卵黄レシチンは医薬品添加物規格に、高度精製卵黄レシチンは医薬品添加物事典(日本医薬品添加剤協会編)に準ずる。精製卵黄レシチン中には、通常12〜18%程度のPEが含まれる。
本発明における脂肪乳剤は、PEを実質的に含有しないことが好ましい。PEを実質的に含有しない脂肪乳剤は、高度精製卵黄レシチン、または合成、半合成により得られたレシチンをリン脂質として使用することにより製造することができる。
リン脂質がPEを実質的に含有しないことは、例えば、以下の方法により確認することができる。すなわち、リン脂質を10%(w/v)となるよう、クロロホルム・メタノール混合溶液に溶解させた溶液を、シリカゲル薄層板の下端部に10μLチャージする。この薄層板を展開溶剤(クロロホルム:メタノール:水=65:25:4)を用いて展開し、乾燥させる。その後、ニンヒドリン試薬を噴霧し、120℃で約10分間加熱した時、同様にチャージしたPE標準液で検出されるスポットの部位に発色を認めない場合、リン脂質がPEを実質的に含有しないと判定する。
PGは、化学合成により製造されたものであってもよいし、植物または細菌から抽出されたものであってもよいし、あるいは、公知の方法(生化学実験講座3 脂質の化学、294−295頁、東京化学同人、1974年)にしたがって、大豆や卵黄由来のレシチンを原料としてグリセロールの存在下でホスホリパーゼDを作用させることにより調製されたものであってもよい。
PGの脂肪酸残基には、一般的に、直鎖状または分岐状の炭素数12−22個の飽和または不飽和脂肪酸残基が存在するが、本発明における脂肪乳剤においては、PGの脂肪酸残基中に、直鎖状の炭素数12−18個の飽和または不飽和脂肪酸残基が含まれることが好ましく、直鎖状の炭素数16−18個の飽和または不飽和脂肪酸残基が含まれることがより好ましい。
上記範囲の炭素数を有する脂肪酸残基を含むPGを使用することにより、特に、卵黄レシチン由来のPCを使用する場合、PCの脂肪酸の鎖長とPGの脂肪酸の鎖長とが同程度となり、より安定化された脂肪乳剤が得られると推察される。
化学合成のPGは例えば、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジグリセロール、およびパルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロールのうち少なくとも1種であることができる。また、天然由来のPGにおいては、由来物質特有の脂肪酸残基を有するPGを用いることができる。中でも、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、大豆レシチン由来のPGまたは卵黄レシチン由来のPGが好ましく、有効成分の安定性の向上および生体適合性の面から、卵黄レシチン由来のPGがさらに好ましい。
本発明における脂肪乳剤においては、リン脂質中のPCとPGの比(PC:PG)が85:15〜99.7:0.3である。PC:PGが上記範囲にあることにより、PGE1脂肪乳剤中の遊離脂肪酸を低減させることができる。PGが上記範囲を超えると、保存中のPGE1の安定性に悪影響を及ぼすため、好ましくない。また、PC:PGは97:3〜99.5:0.5であるのが好ましい。
また、有効成分の化学的安定性を向上させる点において、本発明における脂肪乳剤においては、リン脂質中のPCの含有量およびPGの含有量の合計は95%以上であるのが好ましく、98%以上であることがより好ましい。
リン脂質としては、上述のPCおよびPG以外のリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルポリグリセロール、ホスファチジルエチレングリコール、およびホスファチジルポリエチレングリコール並びにこれらのリゾ体、リゾPC、リゾPGの内の少なくとも1種)を5%未満含んでいてもよい。また、天然由来のリン脂質には、リン脂質以外に、トリグリセロール、コレステロール等の成分を5%未満含んでいてもよい。
1.3.油基材
本発明における脂肪乳剤で使用される油基材としては、例えば、大豆油、ゴマ油、ナタネ油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマシ油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、グレープシード油、小麦胚芽油などの植物油や、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が挙げられる。植物油は精製植物油であることが好ましい。
1.4.遊離脂肪酸の含有量
本発明における脂肪乳剤は、遊離脂肪酸またはその塩(例えば遊離オレイン酸)が実質的に含有されていないことが好ましい。本発明において、「脂肪乳剤が遊離脂肪酸またはその塩を実質的に含有しない」とは、配合目的で添加されることがないことをいい、より具体的には、脂肪乳剤における遊離脂肪酸またはその塩の含有量が1meq/L以下であることをいう。
本発明において、「遊離脂肪酸」とは、飽和または不飽和脂肪酸をいい、遊離脂肪酸としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数6−22個(好ましくは12−20個)の飽和または不飽和脂肪酸であり、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、パルミチン酸、リノレン酸、ミリスチン酸が挙げられる。「遊離脂肪酸の塩」とは、遊離脂肪酸の薬学的に許容しうる塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩)の形態の脂肪酸をいう。「遊離脂肪酸またはその塩」には、油基材である植物油やリン脂質を構成する脂肪酸エステルの形態のものを含まない。また、ここで、含有される遊離脂肪酸は、油基材である植物油やリン脂質を構成する遊離脂肪酸を含まないものとする。
1.5.その他の成分
本発明における脂肪乳剤では必要に応じて、等張化剤(例えば、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸およびその塩、安息香酸、クエン酸およびその塩、ジブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、α−トコフェロール、D−ソルビトール)、pH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム、塩酸、各種リン酸塩)を含有していてもよい。
2.遊離脂肪酸の低減方法
本発明に係る遊離脂肪酸の低減方法は、プロスタグランジンE1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸を低減する方法であって、
ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を含むリン脂質(ここで、該リン脂質中のPCとPGの比(PC:PG)は85:15〜99.7:0.3である。)を含有し、かつ脂肪乳剤をガラス製気密容器に充填した後に加熱滅菌して、pHが4.5〜6.5である脂肪乳剤を得る工程を含む。
2.1.脂肪乳剤の調製
本発明に係る遊離脂肪酸の低減方法においては、まず、PGE1脂肪乳剤を調製する。PGE1脂肪乳剤は、プロスタグランジンE1(有効成分)、上記リン脂質(乳化剤)、油基材、および水を乳化させて得ることができる。
PCとPGの配合方法としては、PCとPGを油基材または水に混合および均質化しておき、そこへ水または油基材を加えて乳剤を調製すればよく、油基材中で均質化することが好ましい。
例えば、所定量の油基材(例えば大豆油)に、リン脂質(PCおよびPG)、プロスタグランジンE1、およびその他の添加剤(例えばグリセリン)などを常用のホモジナイザーにて混合および均質化し、次いで、これに必要量の水を加えた後、前記ホモジナイザーで再び均質化を行って水中油型乳剤に変換することにより、本発明における脂肪乳剤を製造することができる。
PCとPGは別々に配合しても、同時に配合してもよい。また、PCの一部を酵素反応によってPGとし、これを使用してもよく、PCまたはPGの精製工程中に、PGまたはPCを含有する粗精製物やこれらの精製品等を添加し、PC:PGが上述した比率になるように混合したものから精製して得られたリン脂質を使用してもよい。卵黄由来のPCとPGを使用する場合、卵黄中のPCを酵素反応によりPGとし、PCとPGとが上述した比率になるように卵黄液を混合してからリン脂質の精製を行い、これを使用してもよい。
製造上の都合によっては、本発明における脂肪乳剤に安定化剤、等張化剤、pH調整剤などの添加剤を加えてもよい。また、得られた脂肪乳剤にろ過処理、加熱処理(高温加熱処理など)をさらに施してもよい。
2.2.脂肪乳剤の加熱滅菌
本発明に係る遊離脂肪酸の低減方法は、上記脂肪乳剤の製造方法において、脂肪乳剤をガラス製気密容器に充填した後に加熱滅菌して、pHが4.5〜6.5である脂肪乳剤を得る工程を含む。
本発明に係る遊離脂肪酸の低減方法においては、まず、上記脂肪乳剤を容器に充填し、所定温度にて高温加熱処理を所定時間行った後の脂肪乳剤のpH(加熱滅菌後のpH)が4.5〜6.5となるように、加熱滅菌前の脂肪乳剤のpH(加熱滅菌前のpH)を調整する。より具体的には、内表面にアルカリ成分溶出防止処理が施されていないアンプルを用いる場合は、加熱滅菌前のpHを4.0〜6.0に調整すればよく、内表面にアルカリ成分溶出防止処理が施されたアンプルを用いる場合は、加熱滅菌前のpHを4.5〜6.5に調整すればよい。なお、加熱滅菌前における脂肪乳剤のpHの調整は例えば、酸性水溶液(例えば塩酸、リン酸)またはアルカリ性水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を用いて行うことができる。
次いで、該脂肪乳剤を密閉された容器に入れて、所定温度にて高温加熱処理を所定時間行うことにより、pH4.5〜6.5(加熱滅菌後のpH)の脂肪乳剤を得ることができる。これにより、脂肪乳剤中の遊離脂肪酸を低減することができる。ここで、上記高温加熱処理は高圧蒸気加熱滅菌処理またはスプレー式加熱滅菌処理であるのが好ましい。
上記高圧蒸気加熱滅菌処理またはスプレー式加熱滅菌処理の温度および時間はそれぞれ、110〜140℃および0.5〜30分間であることが好ましい。例えば、上記高圧蒸気加熱処理を127℃で1分間相当行うことができる。127℃、1分間相当とは、F値に換算すると約9〜10となり、微生物の死滅を目的とした加熱条件の一例である。
加熱滅菌後の脂肪乳剤のpHが4.5未満であると、保存時に脂肪乳剤から遊離脂肪酸が発生しやすくなり、得られた脂肪乳剤の保存時に有効成分(PGE1)が分解されやすくなることがある。保存時において脂肪乳剤から発生する遊離脂肪酸をより抑制するという観点から、加熱滅菌後の脂肪乳剤のpHは5.0〜6.5であるのが好ましい。
脂肪乳剤を充填する容器は、内表面にアルカリ成分溶出防止処理が施されたガラス製気密容器であることが好ましい。本発明において、「アルカリ成分溶出防止処理」とは、アルカリ成分の溶出を防止することができる処理であればよく、例えばアルカリ成分を内表面から除去する処理もまた、アルカリ成分溶出防止処理に含まれるものとする。
アルカリ成分溶出防止処理は例えば、硫黄元素を含有するガスや溶液(例えば亜硫酸ガスまたは硫酸アンモニウム溶液)でガラス製気密容器の内表面からアルカリ成分等を除去する処理(サルファー処理)や、ガラス製気密容器の内表面に酸化珪素膜を形成する処理(シリカコート処理)が挙げられる(例えば、特開2003−128439号公報、特開平2−175630号公報参照)。このように、脂肪乳剤を充填する容器が、内表面にアルカリ成分溶出防止処理が施されたガラス製気密容器であることにより、脂肪乳剤の加熱滅菌時にガラス製気密容器の内表面からアルカリ成分が溶出するのを防止することができ、加熱滅菌後の脂肪乳剤のpHを調整しやすくなる。
3.特性
本発明に係る脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の低減方法によれば、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を含むリン脂質(ここで、該リン脂質中のPCとPGの比(PC:PG)は85:15〜99.7:0.3である。)を含有し、かつ脂肪乳剤をガラス製気密容器に充填した後に加熱滅菌して、pHが4.5〜6.5である脂肪乳剤を得る工程を含むことにより、遊離脂肪酸の発生を低減し、より長期間にわたって該有効成分の安定性が高められている。
4.投与形態
本発明における脂肪乳剤は、非経口の投与経路にてヒトまたはヒト以外の哺乳類に投与されるのが好ましく、静脈内注射(点滴静脈内注射を含む)により投与されることがより好ましい。例えば、0.2〜100μg/mLのプロスタグランジンE1を含む本発明における脂肪乳剤をそのまま、または輸液に混和して、静脈内注射により投与することができる。
5.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
5.1.評価方法
本実施例において、脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の含有量は以下の方法によって測定され、脂肪乳剤中のPEの検出は以下の方法によって判定された。
5.1.1.遊離脂肪酸の含有量
脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の含有量は、第十五改正日本薬局方
第一追補(44ページ)に記載された以下の方法により測定された。
具体的には、脂肪乳剤3mLに対し、2−プロパノール/ヘプタン/0.5mol/L硫酸試液混液(40:10:1)15mLを加えて振り混ぜる。10分間放置した後、ヘプタン9mL及び水9mLをそれぞれ加え、振り混ぜた後、15分間放置し、上層液9mLを取る。この液にナイルブルー試液を3mL加える。このサンプルを窒素気流下で0.02mol/L水酸化ナトリウム液で滴定する(Vt)。同様にオレイン酸標準試液3mLに対し、2−プロパノール/ヘプタン/0.5mol/L硫酸試液混液(40:10:1)15mLを加えて振り混ぜる。10分間放置した後、ヘプタン6mL及び水12mLをそれぞれ加え、振り混ぜた後、15分間放置し、上層液9mLを取る。この液にナイルブルー試液を3mL加える。このサンプルを窒素気流下で0.02mol/L水酸化ナトリウム液で滴定する(Vs)。別にオレイン酸標準試液の補正係数fを求める。遊離脂肪酸の含有量(オレイン酸換算値)は以下の式(1)によって算出する。
遊離脂肪酸の含有量(meq/L)=(Vt/Vs)×f×15・・・・・(1)
5.1.2.脂肪乳剤中のPEの検出
脂肪乳剤1mLに対し、エタノール1mL、ジエチルエーテル0.5mL、石油エーテル0.5mLを加えて攪拌する。これを遠心分離した上層を採取し、窒素により溶媒を留去する。得られた油相成分を20%(w/v)となるように溶解したクロロホルム・メタノール混合溶液20μLを、シリカゲル薄層板の下端部にチャージする。この薄層板を展開溶剤(クロロホルム:メタノール:水=65:25:4)を用いて展開し、乾燥させる。その後、ニンヒドリン試薬を噴霧し、約120℃で10分間加熱した時、同様にチャージしたPE標準液で検出されるスポットの部位に、発色を認めない場合、脂肪乳剤がPEを実質的に含有しないと判定する。
5.2.実施例1
油基材として大豆油50g、リン脂質として卵黄レシチンPC−98N(キユーピー(株)製,ホスファチジルコリンの純度98.8%、前述のリン脂質中のPE検出方法にてPEが検出されなかったもの)8.82gおよび卵黄由来PG(卵黄リン脂質を精製し得られたPCをグリセロールの存在下でホスホリパーゼD処理して調製されたもの)0.18gをホモミキサーにて分散し、均質化した。これにプロスタグランジンE1 3.5mgを添加した後、日本薬局方濃グリセリン11.05gを溶解させた注射用水を添加して混合し、全量を500gとして粗乳化液を得た。次に、上記粗乳化液をマントン−ガウリン型ホモジナイザー(APV社製)にて600kgf/cmの加圧下で15回通液して、精乳化液(平均粒子径193nm、213nm)を得た。この脂肪乳剤のpHを測定した。
次に、得られた脂肪乳剤を孔径0.45μmのメンブレンフィルターにてろ過し、水酸化ナトリウム水溶液にてpH8.0に調整してアンプル(大和特殊硝子社製、内表面にサルファー処理が施されたガラス製アンプル)に2mL分注した後、高温加熱処理として110℃で5分間スプレー式加熱滅菌処理を行い本発明の脂肪乳剤を得た。
次いで、該アンプルを開封して、この脂肪乳剤のpHを測定した。また、実施例1の脂肪乳剤中から、PEは検出されなかった。
また、加熱滅菌後のアンプルを40℃にて14日間保存した後、該アンプルを開封して、40℃×14日間保存後の脂肪乳剤中の遊離脂肪酸の含有量を測定した。
各結果を表1(試験番号4)に示す。
5.3.試験例
また、脂肪乳剤の充填量、使用するアンプルの種類、PCとPGの比(PC:PG)、または加熱滅菌前の脂肪乳剤のpHを本実施例1の脂肪乳剤の調製条件から変えて、試験番号1〜3、5および6の脂肪乳剤を調製した(表1において、実施例1の脂肪乳剤は試験番号4として示されている。)。なお、加熱滅菌前における脂肪乳剤のpHの調整は、希塩酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。また、試験番号1−6の脂肪乳剤中から、PEは検出されなかった。
Figure 2011246397
また、試験番号1−6において、PCの使用量は、リン脂質(卵黄レシチン)の使用量にPCの純度(0.988=98.8%)を乗じて算出したものである。なお、表1において、「PC:PG」は、各脂肪乳剤に配合されるリン脂質中のPCとPGとの比を示し、「FFA」は、遊離脂肪酸(free fatty acid)を意味し、「S処理」とは、内表面にサルファー処理が施されたアンプル(実施例1で使用)を使用した例を示し、「未処理」とは、内表面にアルカリ成分溶出防止処理が施されていないアンプル(大和特殊硝子社製)を使用した例を示す。
表1によれば、試験番号2−5の脂肪乳剤は、PC:PGが85:15〜99.7:0.3であって、加熱滅菌後の脂肪乳剤のpHを4.5〜6.5に調整することにより、遊離脂肪酸の発生を抑えることができる。
これに対して、試験番号1の脂肪乳剤は、加熱滅菌後の脂肪乳剤のpHが4.5未満であるため、遊離脂肪酸の増加量が多いことが理解できる。また、試験番号6の脂肪乳剤はPGを含まないため、加熱滅菌後に脂肪製剤が分離し、脂肪乳剤のpHおよび遊離脂肪酸の含有量が測定できなかった。
本発明に係る実施の形態の説明は以上である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (1)

  1. プロスタグランジンE1を有効成分として含有する脂肪乳剤中の遊離脂肪酸を低減する方法であって、
    ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を含むリン脂質(ここで、該リン脂質中のPCとPGの比(PC:PG)は85:15〜99.7:0.3である。)を含有し、かつ脂肪乳剤をガラス製気密容器に充填した後に加熱滅菌して、pHが4.5〜6.5である脂肪乳剤を得る工程を含む、遊離脂肪酸の低減方法。
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