JP2013001700A - プロポフォール含有水中油型エマルション組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】脂肪負荷による影響を軽減し、かつ保管時における安定性に優れたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供する。
【解決手段】プロポフォールと、合計の含有質量が組成物の全容量に対して1.2w/v%以上11.0w/v%以下となる油性成分及びリン脂質と、水と、エデト酸塩と、を含むプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロポフォール含有水中油型エマルション組成物に関する。
プロポフォール(化学名2,6−ジイソプロピルフェノール)は、水にほとんど溶けない油溶性薬物であるため、脂肪乳剤の形態として、静注用全身麻酔剤及び近年は静注用鎮静剤として使用されている。この脂肪乳剤は速やかな麻酔導入、速やかな覚醒、覚醒後の吐き気、嘔吐等の不快感が少ない等の特徴を有し、外科手術に広く使用されており、集中治療室等において鎮静目的にも使用されている。中でも、微生物増殖を抑えるためにエデテートを含むプロポフォール製剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、プロポフォール脂肪乳剤には油脂及びレシチンが含有されているため、製剤を投与することに起因する脂肪負荷が、投与対象に高脂血症などの影響が生じる可能性がある。脂肪負荷による影響を低減するための方法としては、油脂及び/又はレシチンを減少させることが考えられる(例えば、特許文献2参照)。
また、プロポフォールによる効果を有効に活用するために、安定性に優れたプロポフォール含有製剤も求められている。例えば、特許文献3には、プロポフォールとシステインとを含む医薬組成物が開示されており、この医薬組成物は広範な環境条件にわたって化学的及び物理的に安定であると記載されている。また、特許文献4には、ブロックコポリマーと、ポリエチレングリコールと、プロポフォールとを含む水性処方が開示されており、この水性処方は、安定であり、長期間保存できると記載されている。
特表平11−500737号公報 特表2002−541086号公報 特表2006−504771号公報 特表2007−519732号公報
ところで、脂肪負荷の観点から油脂及び/又はレシチンを低減すると、プロポフォールの分解が生じやすくなり、経時試験においてプロポフォールの分解生成物の一種であるプロポフォールダイマー体(3,3’−5,5’−テトライソプロピルジフェノール)の増加量が大きくなる現象が見出された。このため、脂肪負荷の低減を行う場合には、プロポフォールの保管時における安定性を確保しなければならないことがわかった。
従って本発明は、脂肪負荷による影響を軽減し、かつ保管時における安定性に優れたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
[1] プロポフォールと、合計の含有質量が組成物の全容量に対して1.2w/v%以上11.0w/v%以下となる油性成分及びリン脂質と、水と、エデト酸塩と、を含むプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
[2] 前記油性成分及び前記リン脂質の含有量の組み合わせが、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす組み合わせである[1]記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物:
(1)含有質量が組成物の全容量に対して1.0w/v%以上10.0w/v%以下の油性成分、及び含有質量が組成物の全容量に対して0.2w/v%以上1.0w/v%以下のリン脂質、
(2)含有質量が組成物の全容量に対して1.0w/v%以上9.0w/v%以下の油性成分、及び含有質量が組成物の全容量に対して0.2w/v%以上1.2w/v%以下のリン脂質。
[3] 含有質量が組成物の全容量に対して1.0w/v%以上9.0w/v%以下の油性成分と、含有質量が組成物の全容量に対して0.2w/v%以上1.0w/v%以下のリン脂質とを含む[1]又は[2]記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
[4] 前記油性成分が、該油性成分の全質量に対する質量が30w/w%以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する[1]〜[3]のいずれか記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
[5] 前記油性成分が、長鎖脂肪酸トリグリセリドを更に含む[4]記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
[6] 前記エデト酸塩の含有質量が、組成物全体の容量に対して0.001w/v%以上0.1w/v%以下である[1]〜[5]のいずれか記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
[7] 前記エデト酸塩の含有質量が、前記長鎖脂肪酸トリグリセリド及びリン脂質の組み合わせの全質量に対して0.05w/w%以上0.40w/w%以下である[5]又は[6]に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
[8] 前記油性成分の含有質量に対する前記リン脂質の含有質量の比が、0.04以上0.2以下である[1]〜[7]のいずれか記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
[9] 前記リン脂質がレシチンである[1]〜[8]のいずれか記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
[10] 前記エデト酸塩がエデト酸二ナトリウムである[1]〜[9]のいずれか記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
本発明によれば、脂肪負荷による影響を軽減し、かつ保管時における安定性に優れたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供することができる。
本発明のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物は、プロポフォールと、合計の含有質量が組成物の全容量に対して1.2w/v%以上11.0w/v%以下となる油性成分及びリン脂質と、水と、エデト酸塩と、を含むプロポフォール含有水中油型エマルション組成物である。
本発明によれば、プロポフォールとエデト酸塩とを含有するので、脂肪負荷の軽減のために、油性成分とリン脂質とを合計含有質量で組成物の全容量に対して1.2w/v%以上11.0w/v%以下とした場合でも、保管時におけるプロポフォールの分解を抑制することができる。
具体的には、油性成分とリン脂質との合計の含有質量を組成物の全容量の1.2w/v%以上11.0w/v%以下とした場合に、エデト酸塩をプロポフォールと併用するので、プロポフォールの分解産物であるプロポフォールダイマー体の生成量が低減する。これは、油性成分及び/又はリン脂質によるプロポフォールの酸化分解抑制作用が、油性成分及び/又はリン脂質の量を低減することによって低下することを、エデト酸塩が補うものと推測されるが、この推測に限定されない。この結果、脂肪負荷による影響を軽減し、かつ保管時における安定性に優れたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供することができる。
本発明においてプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を、単に「エマルション組成物」又は「組成物」ということがある。
また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明において、例えば本発明のエマルション組成物を構成する各成分の配合量(濃度)について用いられる「w/v%」は、全組成物の容積(容量)100mLに対する各成分の質量(g)の100分率(下記式1a)を意味する。組成物の全容量に対する質量で表現する場合も、特に断らない限り、同様に、全組成物の容積(容量)100mLに対する各成分質量(g)を意味する。例えば、組成物100mL中に1.0gの質量で配合される成分の配合量は「1.0w/v%」と表記される。
また、本発明において、例えば本発明のエマルション組成物を構成する各成分の配合量(濃度)について用いられる「w/w%」は、当該成分の質量(g)の、基準となる物質の質量(g)の100分率(下記式1b)を意味する。
式1a:[各成分質量(g)/全組成物の容積(容量)100mL]×100(%)
式1b:[当該成分の質量(g)/基準となる物質の質量(g)]×100(%)
以下、本発明について説明する。
プロポフォール(propofol)は、2,6−ジイソプロピルフェノール (2,6-diisopropylphenol)の一般名であり、例えば特開2002−179562号公報にも記載されているとおり、医薬品分野で全身麻酔薬又は鎮静薬などとして利用できることの知られている化合物である。該化合物の水に対する溶解性は、その有効投与量で使用する場合、同様の有効投与量の他の薬剤と比較してかなり低い。本発明のエマルション組成物において、該プロポフォールは、一般には、全エマルション組成物の容量に対して0.1w/v%〜5w/v%の量で存在し、より好ましくは、0.5w/v%〜3w/v%で用いられる。
また、本発明において、前記油性成分の質量に対するプロポフォールの質量は、1w/w%〜50w/w%が好ましく、5w/w%〜30w/w%がより好ましい。
本発明のエマルション組成物は、油性成分及びリン脂質の組み合わせを含有する。
本発明において「油性成分」とは、医薬として許容可能であり、水中油型エマルション組成物において油相を構成し得る成分を広く意味する。本発明のおけるこのような油性成分としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド;植物油(即ち天然のトリグリセリド)、化学合成トリグリセリド、若しくは動物油などの長鎖脂肪酸トリグリセリド;鉱油;合成油;精油;エステル油など、又はこれらの混合物が挙げられる。ただし、本発明における油性成分には、プロポフォール、及びリン脂質は含まれない。
本発明における油性成分としては、血管痛の緩和及びプロポフォールの溶解度の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むことが好ましい。
本発明において、中鎖脂肪酸トリグリセリドとは、当該中鎖脂肪酸トリグリセリドに含有されるトリグリセリドを構成する脂肪酸鎖の平均炭素数が12以下の油脂を意味する。
中鎖脂肪酸トリグリセリドにおける脂肪酸の平均炭素数とは、中鎖脂肪酸トリグリセリドに含まれるトリグリセリドを構成する脂肪酸鎖(本明細書中では「構成脂肪酸」ということがある)の炭素数(例えば、カプリル酸であれば8、カプリン酸であれば10)を構成脂肪酸の組成比によって加重平均したものである。
本発明に使用する中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、構成脂肪酸に特に制限はなく、例えば炭素数が6以上12以下の脂肪酸を挙げることができる。前記中鎖脂肪酸トリグリセリドにおけるこれらの構成脂肪酸は飽和又は不飽和であってもよい。好ましくは、前記中鎖脂肪酸トリグリセリドは、主として炭素数6以上12以下の飽和脂肪酸のトリグリセリドで構成されたものである。また、前記中鎖脂肪酸トリグリセリドは、天然植物油由来のものであってもよく、合成脂肪酸のトリグリセリドであってもよい。これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。また、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、構成脂肪酸鎖の平均炭素数が上述した範囲内であれば、1種単独で用いられてもよく、構成脂肪酸鎖の平均炭素数が異なる2種以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドの混合物であってもよい。2種以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドを混合する場合には、中鎖脂肪酸トリグリセリドの混合物の全体として、構成脂肪酸の平均炭素数が上述した範囲内になればよい。
本発明に使用可能な中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、「医薬品添加物規格2003(薬事日報社)」の「中鎖脂肪酸トリグリセリド」の規格に適合するものを挙げることができる。中鎖脂肪酸トリグリセリドの市販品としては、商品名:「ココナード」(COCONARD TM、花王社)、「ODO TM」(日清オイリオ社)、「ミグリオール」(Myglyol TM、SASOL社)又は「パナセート」(Panasate TM、日油社)などを例示できる。
本発明における中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有質量は、血管痛の緩和及び、組成物中に充分な量のプロポフォールを溶解させる観点から、油性成分の全質量に対して30w/w%以上100w/w%以下であることが好ましく、60w/w%以上100w/w%以下がより好ましく、70w/w%以上100w/w%以下が更に好ましい。
本発明における油性成分としては、注射剤への使用実績及びプロポフォールの分解抑制の観点から、長鎖脂肪酸トリグリセリドを含むことが好ましい。本明細書において長鎖脂肪酸トリグリセリドとは、当該長鎖脂肪酸トリグリセリドに含有されるトリグリセリドを構成する脂肪酸鎖の平均炭素数が、12より大きい油脂を意味する。脂肪酸鎖を構成する脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。長鎖脂肪酸トリグリセリドの例としては、天然のトリグリセリドに相当する植物油と、化学合成トリグリセリドとを挙げることができる。
植物油の具体例としては、例えばダイズ油、綿実油、菜種油、胡麻油、サフラワー油、コーン油、落花生油、オリーブ油、ヤシ油、シソ油、及びヒマシ油などを挙げることができる。中でも、注射剤への使用実績の観点からダイズ油が好ましい。
ダイズ油(大豆油)とは、マメ科ダイズ属の植物の種子から得た植物油であり、公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子から得ることができる。例えば日本薬局方に記載の「ダイズ油」の規格に適合するものを使用できる。ダイズ油の市販品としては、「日本薬局方 ダイズ油」(カネダ社)、「大豆油YM」(日清オイリオ社)、SR-SOYBEAN-LQ-(JP) (クローダジャパン社)などを例示できる。
化学合成トリグリセリドの例としては、例えば2−リノレオイル−1,3−ジオクタノイルグリセロールを例示できる。
前記長鎖脂肪酸トリグリセリドの含有質量は、プロポフォールの分解抑制の観点から、油性成分の全質量に対して10w/w%以上70w/w%未満であることが好ましい。特に、前記中鎖脂肪酸トリグリセリド及び長鎖脂肪酸トリグリセリドの二成分で油性成分を構成することが好ましく、この場合には油性成分の全質量の40w/w%未満%、特に20w/w%よりも多く30w/w%未満であることが特に好ましい。
なお、本発明においてこれらの油性成分は、1種を単独で利用することもでき、2種以上を併用することもできる。なお、2種以上を併用する場合は、併用される各成分は、植物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、動物油、鉱油などの同一群から選択される必要はなく、異なる群から選択することが可能である。
本発明のエマルション組成物は、プロポフォールを含む水中油型エマルション組成物を構成するためにリン脂質を含む。
リン脂質の例としては、天然のリン脂質であるレシチンを挙げることができる。レシチンの例としては、卵黄レシチン、卵黄ホスファチジルコリン、大豆レシチン、大豆ホスファチジルコリン、それらを水素添加した水添卵黄レシチン、水添卵黄ホスファチジルコリン、水添大豆レシチン、水添大豆ホスファチジルコリンなどを挙げることができる。
また、前記リン脂質は、天然成分に限定されず、化学合成したリン脂質でもよい。該化学合成したリン脂質の例には、ホスファチジルコリン(ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンなど)、ホスファチジルグリセロール(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロールなど)、ホスファチジルエタノールアミン(ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンなど)などが含まれる。
これらのリン脂質は1種を単独で又は2種以上を混合して利用することができる。
本発明におけるリン脂質としては、生体適合性の観点から、卵黄レシチン、卵黄ホスファチジルコリン、大豆レシチン及び大豆ホスファチジルコリンがより好ましく、特に卵黄レシチンが好ましい。
本発明にかかるエマルション組成物では、前記油性成分及び前記リン脂質を、合計の含有質量で組成物の全容量に対して1.2w/v%以上11.0w/v%以下となる量で含む。前記油性成分及び前記リン脂質のこの合計量は、一般に、プロポフォール含有水中油型エマルション組成物として使用される前記合計量よりも少ない量である。このような合計量とすることにより、例えば、脂肪負荷による影響、例えば高脂血症の発生を低減させることができる。前記油性成分とリン脂質との合計量が11.0w/v%を超えると、本発明におけるエデト酸塩による効果が得られず、また高脂血症の発生など脂肪負荷による影響が予期される場合がある。前記油性成分とリン脂質との合計量が1.2w/v%未満では十分量のプロポフォールを含有できない。
前記油性成分及びリン脂質の組み合わせの合計含有質量が、より好ましくは、組成物の全容量に対して4.0w/v%以上11.0w/v%以下であり、更に好ましくは6.0w/v%以上10.0w/v%以下である。4.0w/v%以上であれば、エマルション組成物中に十分量のプロポフォールを含有でき、11.0w/v%以下であれば脂肪負荷を十分に低減できる。
油性成分のエマルション組成物における含有質量としては、リン脂質の含有質量との合計量が組成物の全容量に対して11.0w/v%を超えない範囲で、エマルション組成物の全容量に対して、1.0〜10.0w/v%であることが好ましく、1.0〜9.0w/v%であることがより好ましく、2.0〜8.5w/v%であることが更により好ましく、3.0〜7.0w/v%であることが特に好ましい。1.0w/v%以上であれば、エマルション組成物中に十分な濃度の薬剤を含有することができ、10.0w/v%以下であれば、エマルション組成物の安定性を損なうことがなく、それぞれ好ましい。
リン脂質の含有質量は、リン脂質の含有質量との合計量が組成物の全容量に対して11.0w/v%を超えない範囲で、エマルション組成物の全容量に対して、0.4〜1.2w/v%であることが好ましく、0.5〜1.0w/v%であることがより好ましく、0.6〜0.9w/v%が特に好ましい。0.4w/v%以上であれば、エマルション組成物の安定性が充分であり、1.2w/v%以下であれば、脂肪負荷の発生などの点による過剰投与に該当せず、このような過剰投与による影響をほとんど考慮する必要がない。
油性成分の含有質量に対するリン脂質の含有質量の比は、0.04以上0.2以下であることが好ましく、0.05以上0.14以下であることがより好ましく、0.06以上0.13以下であることが最も好ましい。油性成分に対するリン脂質の質量比が0.04以上であれば、エマルション組成物の安定性が充分であり、0.2以下であれば、エマルジョン組成物を長期保存した場合に不溶物が生成しにくい傾向がある。
本発明におけるプロポフォール含有水中油型エマルション組成物における油性成分及びリン脂質の含有質量の組み合わせは、脂肪負荷の低減及び組成物の安定性の観点から、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方の組み合わせを満たすものであることが好ましい。
(1)含有質量が組成物の全容量に対し1.0w/v%以上10.0w/v%以下の油性成分、及び含有質量が組成物の全容量に対し0.2w/v%以上1.0w/v%以下のリン脂質。
(2)含有質量が組成物の全容量に対し1.0w/v%以上9.0w/v%以下の油性成分、及び含有質量が組成物の全容量に対し0.2w/v%以上1.2w/v%以下のリン脂質。
上記(1)の組み合わせの場合では、油性成分の前記含有質量を、組成物の全容量の10.0w/v%まで許容するので、リン脂質の前記含有質量を1.0w/v%超としなくても組成物の安定性を損うことがなく、好ましい。前記(1)の組み合わせにおいて油性成分としては、1.0w/v%以上8.0w/v%以下であることが更に好ましい。また前記(1)の組み合わせにおいてリン脂質としては、0.4w/v%以上0.8w/v%以下であることがより好ましくは、0.4w/v%以上0.65w/v%以下であることが更に好ましい。
また、上記(2)の組み合わせの場合には、リン脂質の前記含有質量を、組成物の全容量の1.2w/v%まで許容するので、油性成分の前記含有質量を9.0w/v%超としなくても組成物の安定性を損うことがなく、好ましい。前記(2)の組み合わせにおいて油性成分としては、1.0w/v%以上8.0w/v%以下であることが更に好ましい。また前記(2)の組み合わせにおいてリン脂質としては、0.4w/v%以上0.8w/v%以下であることがより好ましくは、0.4w/v%以上0.65w/v%以下であることが更に好ましい。
油性成分及びリン脂質の前記含有質量の組み合わせは、組成物の安定性及び脂肪負荷の低減の観点から、より好ましくは、(3)組成物の全容量に対し、1.0w/v%以上9.0w/v%以下の油性成分と、組成物の全容量に対し0.2w/v%以上1.0w/v%以下のリン脂質との組み合わせであり、更により好ましくは、次のいずれかの組み合わせである:(4)組成物の全容量に対し、1.0w/v%以上9.0w/v%以下の油性成分と0.4w/v%以上0.8w/v%以下のリン脂質、(5)組成物の全容量に対し、1.0w/v%以上9.0w/v%以下の油性成分と0.4w/v%以上0.65w/v%以下のリン脂質、(6)組成物の全容量に対し、1.0w/v%以上8.0w/v%以下の油性成分と0.4w/v%以上0.8w/v%以下のリン脂質、(7)組成物の全容量に対し、1.0w/v%以上8.0w/v%以下の油性成分と0.4w/v%以上0.65w/v%以下のリン脂質。
本発明のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物は、上記の油性成分及びリン脂質の組み合わせに、エデト酸塩を更に含む。本エマルション組成物は、エデト酸塩を含有することにより、脂肪負荷の低減とプロポフォールの分解抑制の双方を兼ね備えることができる。
前記エデト酸塩は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)とその誘導体を意味する。前記エデト酸塩の例としては、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム及びエデト酸カルシウム二ナトリウムを挙げることができ、プロポフォール分解抑制の観点から、エデト酸二ナトリウムが好ましい。なお、エデト酸塩は、水和物として使用してもよい。
前記エデト酸塩は、プロポフォールの分解抑制の観点から、水和水を除いた無水物換算による含有質量として、組成物の全容量に対して0.001w/v%以上0.1w/v%以下であることが好ましく、0.003w/v%以上0.01w/v%以下の含有量であることが更に好ましい。0.001w/v%以上であれば、エデト酸塩によるプロポフォールの分解抑制効果を充分に得ることができ、0.1w/v%以下であれば、過剰投与の影響をほとんど考慮する必要がないために、それぞれ好ましい。エデト酸塩としてエデト酸二ナトリウム二水和物を用いた場合にも、同様の含有量とすればよい。なお、本発明においてエデト酸塩の含有量に言及する場合には、特に断らないものについては、いずれも無水物として換算した場合の含有量を意味する。
特に、前記油性成分として前記長鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する場合、前記プロポフォール含有水中油型エマルション組成物は、プロポフォールの分解抑制の観点から、前記長鎖脂肪酸トリグリセリド及び前記リン脂質の組み合わせの全含有質量に対して、前記エデト酸塩の含有質量を、0.05w/w以上0.40w/w%以下とすることが好ましく、0.09w/w%以上0.30w/w%以下とすることが好ましい。
本発明では、所望により、上述した各成分とは別に、乳化安定性を改善するための安定化剤を更に添加してもよい。このような安定化剤としては、脂肪酸及びその塩を挙げることができ、これらを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で好ましく用いられる脂肪酸としては、脂肪酸の炭素数が12〜18の脂肪酸を例示することができ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸等が挙げられるまた、脂肪酸塩の例としては、ナトリウム、カリウム等の金属との塩や、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−リジン等の塩基性アミノ酸との塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンとの塩等が挙げられる。脂肪酸塩の種類は、用いられる脂肪酸の種類等により適宜選択されるが、溶解性及び分散液の安定性の観点から、ナトリウムなどの金属との塩が好ましい。
これらの安定化剤の中でも、注射剤への使用実績の観点から、オレイン酸、又はオレイン酸ナトリウムであることが好ましく、オレイン酸ナトリウムであることが更に好ましい。
安定化剤のエマルション組成物における含有質量には特に制限はないが、エマルション組成物の安定性の観点から、エマルション組成物の容量に対して0.01w/v%以上0.05w/v%未満であることが好ましく、0.015w/v%以上0.04w/v%以下であることがより好ましく、0.02w/v%以上0.03w/v%以下であることが特に好ましい。0.01w/v%以上であれば、エマルション組成物の安定性が充分であり、0.05w/v%未満であれば、過剰投与の影響をほとんど考慮する必要がない。
本発明のエマルション組成物には、更に、特に必要ではないが、所望により、この種のエマルション組成物中に添加配合できることの知られている各種の添加剤の適当量を更に添加配合することもできる。該添加剤としては、例えば酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤、等張化剤などを挙げることができる。
酸化防止剤の具体例としては、メタ重亜硫酸ナトリウム(抗菌剤としても作用する)、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウムなどを例示することができる。抗菌剤の例としては、例えばカプリル酸ナトリウム、安息香酸メチル、メタ重亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤の例としては、塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、水酸化ナトリウムなどを使用できる。
等張化剤の例としてはグリセリン;ブドウ糖、果糖、マルトースなどの糖類;ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール類;塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどの塩類などを挙げることができる。
これらの内、油溶性の物質は、エマルション組成物を構成する油性成分などに予め混合して利用することができる。水溶性の物質は、注射用水に混合するか、又は得られる乳化液の水相中に添加配合することができる。これらの添加配合量は、当業者にとり自明であり、従来知られているそれらの添加配合量と特に異ならない。
本発明のエマルション組成物は、当業界で公知の方法(乳化分散方法)によって調製することができる。
例えば、水相と油粗を混合して粗乳化後、得られる粗乳化液を適当な高圧乳化機などを利用して乳化(精乳化)する方法によることができる。粗乳化は、より詳しくは、例えば特殊機化工業社製T.K.ホモミキサーなどのホモミキサーを用いて、通常5000回転/分以上で5分間以上を要して実施できる。また、超音波ホモジナイザーを用いることもできる。精乳化は、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどを用いて実施できる。高圧ホモジナイザーを用いる場合、一般には約200kg/cm以上の圧力条件下に、1〜50回程度、好ましくは1〜20回程度通過させることにより実施することができる。これらの混合乳化操作は、常温下に実施してもよく、若干の冷却操作又は加温操作を採用して実施してもよい。
本エマルション組成物は、必要に応じてpHを調整した後、常法に従って、濾過、滅菌して製品とすることができる。濾過方法としては、例えばメンブランフィルターを用いた公知の方法を適用すればよく、また滅菌方法としては、例えば高圧蒸気滅菌(例えば、121℃、12分)、熱水浸漬滅菌及びシャワー滅菌などの公知の方法を適用すればよい。
本エマルション組成物のpHは、通常、pH5.0〜9.0、好ましくはpH6.0〜8.0とすることができる。
本発明のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物は、脂肪負荷を低減すると共にプロポフォールの分解も抑制されたエマルション組成物である。
プロポフォールの分解抑制効果については、例えば、プロポフォールダイマー体の検出によって評価することができる。プロポフォールダイマー体の検出は、公知の方法を採用することができ、例えばHPLC測定によって検出することができる。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
[参考例1〜6]
(プロポフォール含有エマルション組成物の作製)
表1に記載の各成分を表中の含有量となるように用いて、以下の手順でプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を作製した。
各中鎖脂肪酸トリグリセリド(ココナードRK及びココナードML:花王社、又はミグリオール810:SASOL社))とダイズ油(日本薬局方ダイズ油)を混合し、プロポフォールを添加し、40℃で攪拌して溶解して、油相を作製した。グリセリン(日本薬局方グリセリン)を水に溶解し、水相を作製した。油相に精製卵黄レシチンを添加して混合した後、水相を添加し、超音波ホモジナイザー(US−600T、日本精機製作所社)で4分間超音波を照射し、粗乳化した。これを高圧乳化機(スターバースト ミニラボ機、スギノマシン社)を用いて245MPaの条件で1回通過させた。これを、オートクレーブ(オートクレーブSP200、ヤマト科学社)を用いて高圧蒸気滅菌し、参考例1〜6のエマルション組成物を作製した。
[エマルション組成物の評価]
上記の参考例1〜6について、水相プロポフォール濃度を測定した。水相プロポフォール濃度が低いほど、血管痛が緩和されることが確認されている(Propofol Archives No.6, http://www.maruishi-pharm.co.jp/med/masuika/propo1/index.php)。なお、水相プロポフォール濃度の測定には、各エマルション組成物について、オレイン酸ナトリウムを含有しないものに代えて行った。結果をそれぞれ表1に示す。
(測定方法)
エマルション組成物中の油相中及び水相中のプロポフォール濃度は、プロポフォールの油相と水相における分配係数によって決まると考えられる。そのため、プロポフォールを溶解させた油相と水相とを接触させて長時間静置した後、水相濃度を測定することにより、油相の組成と水相中プロポフォール濃度の関係を調べることができる。
測定は以下のように行った。油相と水相を接触させた状態で、振とう試験機(SHAKER SRR-2、アズワン社)を用いて毎分100往復で1時間振とうした後、23℃で16時間静置した。その後、水相を採取し、高速液体クロマトグラフィー[カラム:TSK−gel ODS−100Z(東ソー社)、溶離液A:0.1質量%酢酸水溶液、溶離液B:0.1質量%酢酸含有メタノール、流量:溶離液A0.25mL/分、溶離液B0.75mL/分、カラム温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:270nm、注入量:10μL]にてプロポフォール濃度の測定を行った。結果を表1に示した。
表1に記載のとおり、中鎖脂肪酸トリグリセリドの油性成分中の含有量を高めると、水相プロポフォール量が低減し、油性成分に対するプロポフォールの溶解度が向上すると共に、血管痛を緩和できることがわかる。
[実施例]
以下の実施例において使用した原料は以下のとおりである。
プロポフォール: 「PROPOFOL」(SOCHINAZ SA社)
ダイズ油: 「日本薬局方 ダイズ油」(カネダ社)
グリセリン: 「日本薬局方濃グリセリン」(坂本薬品工業社)
中鎖脂肪酸トリグリセリド: 「ミグリオール812 中性油」(ミツバ貿易社)
精製卵黄レシチン: 「卵黄レシチンPL100−M」(キユーピー社)
エデト酸二ナトリウム二水和物: 「エデト酸ナトリウム水和物「製造専用」」(和光純薬工業社)
水酸化ナトリウム: 「水酸化ナトリウム「製造専用」」(和光純薬工業社)
[実施例1〜5、比較例1〜5]
(プロポフォール含有エマルション組成物の作製)
表2に記載の各成分を表中の含有量となるように用いて、以下の手順でプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を作製した。なお、表2中、エデト酸二ナトリウム二水和物の含有量はエデト酸二ナトリウム二水和物(分子量:372.24)の含有量を表す(無水物の含有量としては、0.0050g。エデト酸二ナトリウム無水和物の分子量:336.24)。
プロポフォールと油脂(中鎖脂肪酸トリグリセリド及び/又はダイズ油)を混合し、室温にて混和した。グリセリン及びエデト酸二ナトリウム二水和物を水に溶解し、水相を作製した。油相に精製卵黄レシチンを添加して混合した後、水相を添加し、グローブボックス中に設置したホモジナイザー(エクセルオートホモジナイザーED−3、日本精機製作所社)を用い、窒素雰囲気下にて粗乳化を行った。得られた粗乳化液を高圧乳化機(スターバースト ミニラボ機、スギノマシン社)を用いて210MPaの条件で2回通過させ、乳化した。この液に、高圧蒸気滅菌後のpHが約8となるように水酸化ナトリウムを適量加えた。グローブボックス中、窒素雰囲気下にてこの液をバイアル瓶に密閉した後、オートクレーブ(オートクレーブSP200、ヤマト科学社)を用いて高圧蒸気滅菌し、エマルション組成物を作製した。
作製した各エマルション組成物を60℃2週間で加熱経時した。経時後のダイマー体(3,3’−5,5’−テトライソプロピルジフェノール:下記参照)の質量のプロポフォールに対する割合をHPLCにて測定し、ダイマー体発生率とした。結果を表2に示す。
[ダイマー体含有量のHPLC測定条件]
カラム: Shim−pack XR−ODSII 3.0×75mm(島津製作所社)
溶離液A: 酢酸0.1v/v%水溶液
溶離液B: 酢酸0.1v/v%メタノール溶液
タイムプログラム(溶離液Bの体積分率、時間):(40%、0.1分)→(100%、30.0分)→(100%、35分)→(40%、35.1分)→40分で停止。
溶離液流量: 1.0mL/分
カラム温度: 40℃
検出: UV(波長 270nm)
注入量: 5μL
ダイマー体の標品として「Propofol関連化合物A(3,3’−5,5’−tetraisopropyldiphenol)」(和光純薬工業社)を、プロポフォールの標品として上記のものを用い、得られたクロマトグラムからそれぞれの濃度を算出し、プロポフォールに対するダイマー体の質量比を算出した。
実施例1〜5のエマルション組成物のプロポフォール分解抑制の評価は、プロポフォールダイマー発生の抑制率として評価した。
プロポフォールダイマー発生の抑制率は、エデト酸塩を含有する実施例のエマルションの加熱経時後のダイマー体量から、エデト酸塩を含有しない以外は同一の処方となる対応する比較例のエマルションの加熱経時後のダイマー体量を引いた値の、プロポフォールに対する質量に対する割合とした。この割合は、エデト酸塩を添加したことによるダイマー体発生抑制効果と考えられる。結果を表2に示した。
[比較例6a〜8b]
油性成分10w/v%及びレシチン1.2w/v%を含有し、表3に記載の各成分を表中の含有量となるように含む比較例6a〜8bのプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を、実施例1と同様にして作製した。
得られた比較例6a〜8bのプロポフォール含有水中油型エマルション組成物について、実施例1と同様にして、ダイマー発生率及び抑制率を算出した。結果を表3に示す。
表2に示されるように、エデト酸二ナトリウム二水和物を含有する実施例1〜5のエマルション組成物は、エデト酸二ナトリウム二水和物を含有しない比較例1〜5のエマルション組成物と比較して、ダイマー発生率が低く、エデト酸二ナトリウム二水和物を添加することにより、ダイマー体の発生を抑制することができることがわかった。
なお、油脂と精製卵黄レシチンの合計の含有質量が10.9w/v%である実施例1とは異なり、この合計量が11.2w/v%である比較例6a〜比較例9bのエマルション組成物では、エデト酸二ナトリウム二水和物を添加することによるダイマー体発生抑制効果はほとんど認められず、エデト酸二ナトリウム二水和物によるダイマー体発生抑制効果は、油脂及びレシチンの合計の含有質量を11w/v%以下とした場合に有効であることがわかる。
また、表2及び表3に示されるように、組成物の全容量に対して油脂が10w/v%、精製卵黄レシチンが1.2w/v%である比較例6b、7b、8bに比べ、精製卵黄レシチンの含有量が少ない比較例1及び2、油脂及び精製卵黄レシチンが少ない比較例3、比較例4及び比較例5では、ダイマー発生率が高く、油性成分又はリン脂質の量を低減させることにより、プロポフォールが分解する傾向があることがわかった。
これに対して、エデト酸二ナトリウム二水和物を含有する実施例1〜5のエマルション組成物では、精製卵黄レシチンが少ない実施例1及び2、精製卵黄レシチン及び油脂が少ない実施例3〜5のいずれにおいても、比較例6〜8に比べ抑制率が大きかった。
また、実施例4及び実施例5に示されるように、油性成分量(6.5w/v%)及び精製卵黄レシチン量(0.78w/v%)を共に同一とした場合には、油脂中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの割合が大きい方が、抑制率がより大きかった。これにより、参考例の結果と併せて、本発明の実施例では、プロポフォールの分解が抑制され、且つ、血管痛も緩和されたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供できることがわかる。
[実施例6、比較例10及び11]
表4に示されるように、実施例5と同一の組成となる実施例6を調製した。また表4に示されるように、エデト酸二ナトリウム二水和物の代わりに0.0700gのアスコルビン酸ナトリウム(「L(+)アスコルビン酸ナトリウム」和光純薬社)を用いた以外は実施例6と同様にして、比較例10のエマルション組成物を調製した。また、エデト酸二ナトリウム二水和物及びアスコルビン酸ナトリウムのいずれも使用しない以外は実施例6と同様にして比較例11のエマルション組成物を調製した。
実施例6、比較例10及び11の各プロポフォール含有水中油型エマルション組成物について、加熱経時の条件を50℃にて1ヶ月間に変更した以外は実施例1と同様にして、ダイマー発生率及び抑制率を算出した。なお、抑制率は、比較例11の値に対する率とした。結果を表4に示す。
表4に示されるように、エデト酸二ナトリウム二水和物と同様に抗酸化作用を有するアスコルビン酸ナトリウムを含有する比較例10のエマルション組成物では、エデト酸二ナトリウム二水和物を含有する実施例6のエマルション組成物とは異なり、ダイマー体の発生抑制効果が認められなかった。
このように、実施例1〜5に示されるように、このような組成物の全容量に対して油脂及びリン脂質の合計の含有質量が1.2w/v%以上11.0w/v%以下のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物では、エデト酸塩の添加により、経時でのプロポフォールのダイマー体生成を抑制できる。
従って本発明によれば、脂肪負荷による影響を軽減し、かつ保管時における安定性に優れたプロポフォール含有水中油型エマルション組成物を提供できる。

Claims (10)

  1. プロポフォールと、
    合計の含有質量が組成物の全容量に対して1.2w/v%以上11.0w/v%以下となる油性成分及びリン脂質と、
    水と、
    エデト酸塩と、
    を含むプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
  2. 前記油性成分及び前記リン脂質の含有量の組み合わせが、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす組み合わせである請求項1のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
    (1)含有質量が組成物の全容量に対して1.0w/v%以上10.0w/v%以下の油性成分、及び含有質量が組成物の全容量に対して0.2w/v%以上1.0w/v%以下のリン脂質、
    (2)含有質量が組成物の全容量に対して1.0w/v%以上9.0w/v%以下の油性成分、及び含有質量が組成物の全容量に対して0.2w/v%以上1.2w/v%以下のリン脂質。
  3. 含有質量が組成物の全容量に対して1.0w/v%以上9.0w/v%以下の油性成分と、含有質量が組成物の全容量に対して0.2w/v%以上1.0w/v%以下のリン脂質とを含む請求項1又は請求項2記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
  4. 前記油性成分が、該油性成分の全質量に対する質量が30w/w%以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する請求項1〜請求項3のいずれか一項記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
  5. 前記油性成分が、長鎖脂肪酸トリグリセリドを更に含む請求項4記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
  6. 前記エデト酸塩の含有質量が、組成物全体の容量に対して0.001w/v%以上0.1w/v%以下である請求項1〜請求項5のいずれか一項記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
  7. 前記エデト酸塩の含有質量が、前記長鎖脂肪酸トリグリセリド及びリン脂質の組み合わせの全質量に対して0.05w/w%以上0.40w/w%以下である請求項5又は請求項6記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
  8. 油性成分の含有質量に対するリン脂質の含有質量の比が、0.04以上0.2以下である請求項1〜請求項7のいずれか一項記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
  9. 前記リン脂質が、レシチンである請求項1〜請求項8のいずれか一項記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
  10. 前記エデト酸塩が、エデト酸二ナトリウムである請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のプロポフォール含有水中油型エマルション組成物。
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