JP2019085349A - 難溶性物質を含有する経口摂取用組成物、難溶性物質の消化管吸収性の向上方法及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法 - Google Patents

難溶性物質を含有する経口摂取用組成物、難溶性物質の消化管吸収性の向上方法及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、難溶性物質を含有する経口摂取用組成物、難溶性物質の消化管吸収性の向上方法及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定性向上方法を提供する。【解決手段】難溶性物質を含有する経口摂取用組成物であって、油脂、多価アルコール及び乳化剤を含有し、乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量が15%以上であり、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸を0.01部以上5部以下(質量比)含有する、経口摂取用組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、難溶性物質を含有する経口摂取用組成物及び難溶性物質の消化管吸収性の向上方法及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定性向上方法に関する。
人体に有用な成分として食品や医薬品の形態で投与される成分には、水への溶解性が低い難溶性物質が多く存在する。これらの物質は経口摂取時の消化管吸収性が著しく低く、投与量を増やしても十分な血漿中濃度が得られない、個体間での吸収性の変動が大きくなる等、製剤化に問題を伴うことが多い。
難溶性物質は、可溶化することにより消化管吸収性を向上させることができる。難溶性物質を可溶化する方法の一つとして、乳剤化がある。
乳剤化には、種々の界面活性剤が用いられる。非特許文献1には、Tween20やTween80等、親水性の高い界面活性剤を用いた場合に、吸収性の高い乳剤が得られる旨が記載されている。
しかしながら、Tween20等の合成界面活性剤は、生体親和性が乏しいため、投与後に重篤な副作用を生じる可能性があるなど、人体への投与を伴う用途には使用を避けることが好ましい。また、平均粒径がナノ(nm)スケールのエマルションを得るのが困難であり、さらに、処理中に配合原料の劣化が進む、工業生産上、時間的にも価格的にも高コストとなる等の問題がある。
公益財団法人 一般用医薬品セルフメディケーション振興財団 平成23年度調査研究報告書「難水溶性薬物の乳剤化による経口吸収性改善の可否を決定する因子の探索」
界面活性剤の一つに、リン脂質がある。リン脂質は生体適合性が高く、脂肪乳剤やリポソーム製剤等に用いられてきた。しかしながら、脂肪乳剤は油溶性物質を油相に溶解して乳化したものであり、難溶性物質を可溶化することはできない。また、リポソーム製剤は難溶性物質を可溶化できるものの、保存条件等に制限がある等、取り扱いしづらい面がある。また、本発明者の検討により、リン脂質を用いて平均乳化粒子径がナノスケールの乳剤を調製して経口摂取しても、該乳剤中の難溶性物質の消化管吸収性は思いの外改善しないことがわかった。
本発明の目的は、難溶性物質を含有する経口摂取用組成物及び難溶性物質の消化管吸収性の向上方法及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定性向上方法を提供するものである。
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた。
その結果、油脂、多価アルコール及びリゾリン脂質を含有し、
乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量及びリゾリン脂質に対する脂肪酸量を特定の範囲にとした組成物中に難溶性物質を含有させることにより、
経口摂取後、消化管内で消化液と接触することによりナノスケールの水中油型乳化物が生成し、難溶性物質の消化管吸収性の向上及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定性の向上を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)難溶性物質を含有する経口摂取用組成物であって、
油脂、多価アルコール及び乳化剤を含有し、
乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量が15%以上であり、
リゾリン脂質1部に対し脂肪酸を0.01部以上5部以下(質量比)含有する、
経口摂取用組成物、
(2)(1)の経口摂取用組成物において、
前記組成物と人工胃液とを質量比で1:100の割合で混合した際に得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積換算)が1.0μm以下である、
経口摂取用組成物、
(3)(1)又は(2)の経口摂取用有組成物において、
前記リゾリン脂質の構成脂肪酸の8割以上が飽和型である、
経口摂取用組成物、
(4)(1)乃至(3)のいずれかの経口摂取用組成物において、
前記組成物全量に対するリゾリン脂質含有量が1%以上である、
経口摂取用組成物、
(5)(1)乃至(4)のいずれかの経口摂取用組成物において、
前記油脂1部に対し前記リゾリン脂質を0.001部以上2部以下(質量比)含有する、
経口摂取用組成物、
(6)(1)乃至(5)のいずれかの経口摂取用組成物において、
前記リゾリン脂質に対するリゾホスファチジルコリン含有量が50%以上である、
経口摂取用組成物、
(7)(1)乃至(6)のいずれかの経口摂取用組成物において、
前記リゾリン脂質が卵黄由来である、
経口摂取用組成物、
(8)(1)乃至(7)のいずれかの経口摂取用組成物において、
前記多価アルコールとしてグリセリン又はポリエチレングリコールのいずれか1種以上を含有する、
経口摂取用組成物、
(9)難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法であって、
難溶性物質、油脂、多価アルコール及び乳化剤を含有し、
乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量が15%以上であり、
リゾリン脂質1部に対し脂肪酸を0.01部以上5部以下(質量比)含有する組成物を経口摂取する、
難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法、
(10)(9)の方法において、
前記組成物と人工胃液とを質量比で1:100の割合で混合した際に得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積換算)が1.0μm以下となる、
難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法、
(11)(9)又は(10)の方法において、
前記難溶性物質を油脂に分散させて前記組成物の調製に用いる、
難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法、
(12)難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法であって、
難溶性物質、油脂、多価アルコール及び乳化剤を含有し、
乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量が15%以上であり、
リゾリン脂質1部に対し脂肪酸を0.01部以上5部以下(質量比)含有する組成物を経口摂取し、
体内で水中油型乳化物を調製する、
難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法、
(13)(12)の方法において、
前記組成物と人工胃液とを質量比で1:100の割合で混合した際に得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積換算)が1.0μm以下となる、
難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法、
である。
本発明によれば、人体に対して安全性の高い原料のみからなり、かつ簡易な操作で難溶性物質の消化管吸収性の向上及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定性を向上させることができる。
以下本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
<経口摂取用組成物>
本発明の経口摂取用組成物は、難溶性物質、油脂、多価アルコール及び乳化剤を含有し、乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量及び、リゾリン脂質と脂肪酸の含有割合を特定の範囲としたものである。本発明の経口摂取用組成物を経口摂取することにより、組成物中に含まれる難溶性物質の消化管吸収性を向上することが可能となる。
本発明の経口摂取用組成物は経口摂取に適する形態をとれば特に制限されるものではなく、具体的には、組成物そのものでもよく、ハードカプセル、ゼラチンカプセル等のカプセルに充填して経口摂取してもよい。
本発明の経口摂取用組成物を経口摂取すると、消化管内で消化液と接触し、ナノスケールの水中油型乳化物を生成する。
消化液は一種の水溶液と見なすことができるが、清水あるいは水溶液と接触することにより油脂が微粒子化した乳化物を生成する性質は自己乳化性と呼ばれ、水相と油相がいずれも連続相である両連続エマルション等、分子が無限に会合した無限会合体が形成された系に特徴的に見られる。
本発明の経口摂取用組成物の構造の詳細は明らかではないが、消化液と接触することにより乳化物を生成していることから、無限会合体が組成物全体又は組成物中に局所的に形成された系、あるいはそれに類する状態を有する系であると推測される。
<難溶性物質>
難溶性物質とは、水に対する溶解度が低い物質を意味し、具体的には、第十六改正日本薬局方でいう溶解性が「やや溶けにくい」(溶質1g又は1mLを溶かすに要する溶媒量が30mL以上100mL未満)、「溶けにくい」(同溶媒量が100mL以上1000mL未満)、「極めて溶けにくい」(同溶媒量が1000mL以上10000mL未満)又は「ほとんど溶けない」(同溶媒量が10000mL以上)である物質を意味する。なお、本発明では、不溶性物質も難溶性物質に含める。
本発明の経口摂取用組成物は、水に溶けにくく体内吸収性が低い物質の吸収性を効果的に向上させる。したがって、上記のうち「極めて溶けにくい」物質、「ほとんど溶けない」物質及び不溶性物質を用いる場合に好適である。
上記の難溶性物質としては、例えば、脂溶性ビタミン類(例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等)、カロテノイド類(例えば、リコピン、クロロフィル、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、フコキサンチン等)、ポリフェノール類(例えば、フラボノール類、フラバノン類、フラボン類、イソフラボン類、フェノールカルボン酸類、アントシアニジン類、スチルベン類、ヒドロキシケイヒ酸誘導体、エラグ酸等)、補酵素Q10、リポ酸、プロスタグランジン、ドセタキセル、パクリタキセル、カペシタビン、オキサリプラチン、ゲフチナット、ドキソルビシン、イリノテカン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、テモゾロミド、イマチニブ、ビノレルビン、レトロゾール、テニポシド、エトポシド、ポドフィロトキシン、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−ヒドロキシカンプトテシン、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビンポセチン、ノルカンタリジン、シリビン、プロポフォール、フロルフェニコール、ミチグリニド、アルテミシニン、ジヒドロアルテミシニン、シロリムス、イブプロフェン、ニトレンジピン、ニカルジピン、ニモジピン、グリクラジド、プロパルシド、フェロジピン、グリベンクラミド、アシクロビル、オレアノール酸、ブレビスカピン、フェルラ酸、パラセタモール、パルミトイルリゾキシン、ペンクロメジン、タモキシフェン、ナベルビン、バルプロ酸、タクロリムス、シクロスポリンA、アンフォテリシンB、ケトコナゾール、ドンペリドン、スルピリド、フェノフィブラート、ベザフィブラート、アジスロマイシン、イトラコナゾール、ミコナゾール、ブリモニジン、ラタノプロスト、シリビン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、リファキシミン、シサプリド、シクロスポリン、ジクロフェナック酸、フェロジピン、イブプロフェン、インドメタシン、アセメタシン、ニカルジピン、ニフェジピン、テルフェナジン、テオフィリン、ケトプロフェン、フロセミド、スピロノラクトン、ジピリダモール、ピロキシカム、メフェナム酸、トリクロロチアジド、ピンドロール等が挙げられる。
難溶性物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<難溶性物質の含有量>
本発明の経口摂取用組成物に含有される難溶性物質の含有量は特に制限されず、その目的・用途により、所望の量を含有させればよい。経口摂取用組成物の製造時に析出等が起こらない程度の量とするのが好ましい。
<油脂>
本発明において油脂とは、トリグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸誘導体及び脂肪酸エステルであって、経口摂取に適するものであればいずれのものを用いてもよい。
具体的には、例えば、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、ヤシ油、コーン油、綿実油、米油、シソ油、エゴマ油、オリーブ油、アーモンド油、ココナッツ油、亜麻仁油、ブドウ種子油、藻類や微生物培養で得られた油脂、卵黄油、魚油、鯨油、肝油等の動植物油又はこれらの精製油(サラダ油)、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂、及び、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ヘンイコサペンタエン酸(HPA)ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサテトラエン酸(ETA)、エイコサトリエン酸(ETE)、ステアリドン酸(STA)等の飽和及び不飽和脂肪酸のエチルエステル等の脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの油脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明においては、モノグリセリン脂肪酸エステルは、本発明の油脂には含めない。
<油脂の含有量>
本発明の経口摂取用組成物における油脂の含有量は特に制限されるものではないが、組成物を経口摂取した後に消化管内で生成する乳化物の平均粒子径を安定に維持する観点から、組成物全量に対して50%以上95%以下であるとよく、さらに60%以上90%以下であるとよい。
<多価アルコール>
多価アルコールは、分子中に水酸基を2個以上有するアルコールである。本発明に用いられる多価アルコールは、食用に適するものであれば特に制限されず、例えば、グリセリン、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレングリコール(PEG)、キシリトール、マルチトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トレハロース、還元水あめ等を挙げることができる。これらの中でも、消化液と接触して乳化物を生成し、かつ、消化管内で生じる乳化物を安定に維持するという観点から、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、還元水あめを用いるとよく、グリセリン、ポリエチレングリコールを用いるとよりよく、さらにグリセリンを用いるのがよい。
グリセリンを用いる場合には、日本薬局方に収載されている規格(グリセリン含量98.0〜101.0%)を満たす濃グリセリンがよいが、食品添加物公定書で定められている規格(グリセリン含量95.0%以上)のものも問題なく用いることができる。
これらの多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
<多価アルコールの含有量>
本発明の経口摂取用組成物における多価アルコールの含有量は特に制限されるものではないが、消化液と接触してナノスケールの水中油型乳化物を生成するという観点から、組成物全量に対して5%以上60%以下であるとよく、10%以上55%以下であるとよりよく、さらに、15%以上50%以下であるとよい。
<乳化剤>
乳化剤は、食用に適するものであれば特に限定されず、例えば、リン脂質、リゾリン脂質、コレステロール、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ヘンイコサペンタエン酸(HPA)ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサテトラエン酸(ETA)、エイコサトリエン酸(ETE)、ステアリドン酸(STA)等の飽和及び不飽和脂肪酸、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の合成乳化剤が挙げられる。
本発明の経口摂取用組成物は消化管内で乳化物を生じ、消化管内に分泌される消化液のpHは消化器官によって異なるため、幅広いpHで安定に乳化状態を生成及び維持できる両性界面活性剤を用いるのがよく、なかでも生体適合性の高いリン脂質又は脂肪酸を含むとよい。
<リゾリン脂質>
本発明の乳化剤は、リゾリン脂質を含有する。リゾリン脂質は、消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生じる組成物の状態を維持し、さらに、経口摂取後、消化管内で消化液と接触して生じるナノスケールの水中油型乳化物を胃内で安定に生成及び維持するために必須である。
本発明に用いるリゾリン脂質は、モノアシルグリセロリン脂質のことである。一般的に、リゾリン脂質は、鶏、うずら、アヒル等の家禽卵の卵黄、大豆、菜種等の動植物から抽出したジアシルグリセロリン脂質であるリン脂質をホスホリパーゼA処理し得られる、リン脂質の1つの脂肪酸が切断されたリゾ体としたものである。
また、上記卵黄や菜種等の動植物原料を直接ホスホリパーゼAで酵素処理し、その後、常法により抽出し、得られたもの、あるいは合成法によって得られたもの、さらに必要に応じて得られたリゾリン脂質を水素添加処理したもの等も含まれる。
本発明に用いるリゾリン脂質は、リン酸エステルの構造により、例えば、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルセリン(LPS)等が挙げられる。本発明においてはこれらリゾリン脂質を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
なお、本発明の経口摂取用組成物に添加するリゾリン脂質としては、ホスフォリパーゼA処理卵黄等のようにタンパク質との複合体であるリポタンパク質として存在するリゾリン脂質は含まれない。
本発明の経口摂取用組成物は、消化管内で消化液に接触した際に、ナノスケールの水中油型乳化物を生成するが、消化液のpHは消化液が分泌される部位によって異なり、例えば、唾液はpH6〜7程度、胃液はpH1〜3程度、胆汁及び腸液はpH8前後である。消化管内で生じた乳化物は、難溶性物質の消化管吸収性を向上させる観点から、pHが大きく異なるいずれの消化液に接触したとしても乳化状態を安定に維持する必要がある。
一般に、pHが低くなると解乳化が起こりやすいため、消化液の中でも強酸性の胃液に接触する胃内での乳化状態の維持が一つの指標となるが、リゾリン脂質は強酸性下でも比較的安定に乳化状態を維持することができる。
<リゾリン脂質の構成脂肪酸の種類>
動植物原料から抽出したリン脂質の構成脂肪酸は、飽和型と不飽和型である。
本発明に用いるリゾリン脂質の構成脂肪酸も飽和型あるいは不飽和型のいずれでもよいが、消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生じる組成物の状態を維持し、さらに、経口摂取後、消化管内で消化液と接触して生じるナノスケールの水中油型乳化物を安定に生成及び維持するために、構成脂肪酸の8割以上が飽和型であるとよい。
構成脂肪酸の8割以上が飽和型であるリゾリン脂質としては、代表的には卵黄由来のリゾリン脂質があり、本発明においては、植物由来の、例えば大豆リゾリン脂質等を水素添加処理したものも用いることができるが、強酸性下でも比較的安定に乳化状態を維持しやすい卵黄由来のリゾリン脂質を用いるとよい。
<乳化剤中のリゾリン脂質の含有量>
消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生じる組成物の状態を維持し、かつ消化管内で消化液に接触した際に、ナノスケールの水中油型乳化物を生成し、難溶性物質の消化管吸収性及び水中油型乳化物の胃内での乳化安定性を向上させる観点から、乳化剤中のリゾリン脂質含有量は乳化剤全量の15%以上であり、20%以上であるとよく、25%以上であるとよい。
リゾリン脂質含有量が前記範囲を下回ると、消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生じる本発明の経口摂取用組成物の状態を生成することができない。
リゾリン脂質含有量の上限は特に限定されないが、工業生産性とコストの観点を加味すれば、95%以下がよく、80%以下であるとよりよい。
<脂肪酸>
本発明の経口摂取用組成物は、脂肪酸を含有する。動植物由来の脂肪酸の多くは炭素数が10以上24以下のものであり、本発明においても同様の炭素数を有するものを用いるとよい。
<リゾリン脂質に対する脂肪酸の含有量>
脂肪酸の含有量は、消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生じる本発明の経口摂取用組成物の状態を維持し、さらに、経口摂取後、消化管内で消化液と接触して生じるナノスケールの水中油型乳化物を胃内で安定に生成及び維持するために、リゾリン脂質1部に対して質量比で0.01部以上5部以下であり、0.05部以上3部以下であるよく、0.1部以上1部以下であるとよりよい。
リゾリン脂質1部に対し脂肪酸の質量比が前記範囲を外れた場合は、本発明の経口摂取用組成物の状態維持及び経口摂取後に消化管内で生じる乳化物の安定性に欠けることとなり、難溶性物質の消化管吸収性向上が達成できない。
<脂肪酸の種類>
動植物由来の脂肪酸は、飽和型と不飽和型である。
本発明に用いる脂肪酸も飽和型あるいは不飽和型のいずれでも良いが、消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生じる本発明の経口摂取用組成物の状態を維持し、さらに、経口摂取後、消化管内で消化液と接触して生じるナノスケールの水中油型乳化物を胃内で安定に生成及び維持する観点から、5割以上が飽和脂肪酸であるとよい。
<経口摂取用組成物中のリゾリン脂質含有量>
リゾリン脂質は、消化管内でナノスケールの乳化物を生じる本発明の経口摂取用組成物の状態を維持し、さらに、経口摂取後、消化管内で消化液と接触して生じるナノスケールの水中油型乳化物を胃内で安定に生成及び維持するために、本発明の経口摂取用組成物全量に対して1%以上含有するのがよく、1.5%以上含有するとよりよく、さらに2%以上含有するとよい。
リゾリン脂質含有量の上限は特に限定されないが、工業生産上のコストの観点から、10%以下であるとよく、8%以下がよりよく、さらに5%以下であるとよい。
<油脂に対するリゾリン脂質の含有量>
本発明の経口摂取用組成物は、消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生じる本発明の経口摂取用組成物の状態を維持し、さらに、経口摂取後、消化管内で消化液と接触して生じるナノスケールの水中油型乳化物を胃内で安定に生成及び維持するために、油脂1部に対してリゾリン脂質を0.001部以上0.5部以下含有するのがよく、0.01部以上0.2部以下含有するとよりよい。
<リゾリン脂質に対するリゾホスファチジルコリン含有量>
本発明の組成物に用いるリゾリン脂質は、リゾリン脂質に対するリゾホスファチジルコリン(LPC)の含有量が50%以上、さらには65%以上であると、消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生じる組成物の状態を維持し、かつ消化管内で消化液に接触した際に、ナノスケールの水中油型乳化物を生成し、難溶性物質の消化管吸収性及び水中油型乳化物の胃内での乳化安定性を向上させやすい。
<その他の原料>
本発明においては、本発明の必須原料である難溶性物質、油脂、多価アルコール及び乳化剤以外の原料を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し、配合することができる。
具体的には、例えば、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養強化剤、乳糖、結晶セルロース、コーンスターチ、バレイショ澱粉、アルファー化澱粉などの賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などの滑沢剤、デキストリン、ミツロウ等の基材、防腐剤、保存料等が挙げられる。
<経口摂取用組成物と人工胃液を接触させて得られる乳化物の平均粒子径>
本発明の経口摂取用組成物は、消化管内で消化液と接触して水中油型乳化物を生成するが、前述したように、強酸性の胃液に接触する胃内での乳化状態が、生成した水中油型乳化物の安定性及び前記組成物に含まれる難溶性物質の消化管吸収性に関する指標の一つとなる。
本発明の経口摂取用組成物と、後述する試験例1に記載の人工胃液とを接触させて得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積)は、1.0μm以下であり、850nm以下であるとよく、さらに700nm以下であるのがよい。
得られる水中油型乳化物の平均粒子径が前記範囲より大きいと、消化管で吸収されにくくなり、難溶性物質の消化管吸収性向上を達成し難い。まだ、消化管内で生成した水中油型乳化物の解乳化も起こりやすくなる。
得られる水中油型乳化物の平均粒子径の下限値は特に限定されないが、100nm以上であってもよく、さらに300nm以上であってもよい。
<難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法>
本発明はまた、難溶性物質を本発明の組成物に可溶化させて経口摂取することにより、難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法であり、具体的には、難溶性物質を含有する本発明の組成物と消化管から分泌される消化液とが接触し、消化管内でナノスケールの微細な水中油型乳化物を体内で生成する。難溶性物質は前記水中油型乳化物に内包され、消化管まで運ばれることにより吸収性が向上する。
<難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法>
本発明はさらに、難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定性を向上させる方法であり、具体的には、難溶性物質を含有する本発明の組成物を経口摂取し、ナノスケールの微細な水中油型乳化物を体内で生成することにより、水中油型乳化物を安定化する。
前記の方法においては、消化管内でナノスケールの水中油型乳化物を生成することが重要である。
水中油型乳化物は、乳化処理時の条件に最適な乳化状態をとる。つまり、乳化処理時に存在する塩やpH等の条件では安定だが、これらの因子が変化すると、安定な乳化状態を維持することが難しくなり、乳化粒子の合一や解乳化が起こりやすくなる。
高圧ホモジナイザー等を利用し、難溶性物質をあらかじめナノスケールの水中油型乳化物として経口摂取した場合、該水中油型乳化物はpHに大きな差がある消化管内を通過しなければならないが、水中油型乳化物調製時のpHとは大きく異なる消化液と接触した際に、乳化粒子の合一や一部解乳化が起こると推測される。したがって、水中油型乳化物調製時の粒子径を維持することが困難となり、難溶性物質の消化管吸収性及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定性を十分に向上できない。
一方、本発明の方法は、消化管内で水中油型乳化物を生成するため、体内環境に最適な乳化状態が安定的に持続し、難溶性物質の消化管吸収性及び難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定性を向上できる。
<経口摂取用組成物の製造方法>
本発明の経口摂取用組成物は、原料を常法により混合することで製造できる。具体的には、例えば、卵黄リゾリン脂質と多価アルコールを均一に撹拌混合し、そこに難溶性物質を溶解または分散させた油脂を注加しながら撹拌混合する。
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
[実施例1]
難溶性物質としてクルクミンを用い、各成分が表1の割合となるよう、クルクミンを含有する本発明の経口摂取用組成物を製した。
すなわち、ガラス製のビーカーに、卵黄リゾリン脂質(リゾホスファチジルコリン含有量85%)、混合脂肪酸(オレイン酸50%、パルミチン酸30%、炭素数14から18の脂肪酸の混合物)、及びクルクミンを溶解したグリセリンを添加し、アンカーを付けたプロペラ撹拌機で5分間撹拌混合して均一な状態とした。その後、撹拌を続けたまま25分間かけて大豆油を徐々に添加し、本発明の経口摂取用組成物を得た。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は67%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が0.5部、組成物全量に対するリゾリン脂質含有量は2.5%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.03部である。
Figure 2019085349
[実施例2]
難溶性物質としてクルクミンを用い、表2の配合に準じて、実施例1と同様の原料及び方法で、クルクミンを含有する本発明の経口摂取用組成物を製した。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は67%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が0.5部、組成物全量に対するリゾリン脂質含有量は1%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.01部である。
Figure 2019085349
[比較例1]
難溶性物質としてクルクミンを用い、表3の配合に準じてクルクミン含有水中油型乳化物を製した。
すなわち、大豆油、クルクミンを溶解させたポリエチレングリコール(PEG400)、卵黄リゾリン脂質(リゾホスファチジルコリン含有量85%)、混合脂肪酸(オレイン酸50%、パルミチン酸30%、炭素数14から18の脂肪酸の混合物)及びリン酸緩衝液をボルテックスミキサーで撹拌後、先端径2.1mmのプローブ型超音波ホモジナイザー(Cycle 1.0, amplitude 40)により、超音波1分間照射を5回(インターバル30秒)くり返して強撹拌し、水中油型乳化物とした。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は55%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が0.8部、水中油型乳化物全量に対するリゾリン脂質含有量は1.5%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.09部である。
Figure 2019085349
[試験例1]平均乳化粒子径(体積換算)の測定
実施例1、2は、消化液と接触した際に生じる水中油型乳化物の平均乳化粒子径(体積換算)を測定した。
すなわち、実施例1、2の組成物を0.1g、人工胃液9.9gを混合して水中油型乳化物を得、以下の方法で平均乳化粒子径(体積換算)を測定した。
比較例1は水中油型乳化物そのものの平均乳化粒子径を測定した。
<人工胃液の調製方法>
日本薬局方溶出試験第1液、 pH1.2の配合を参考に、塩化ナトリウム2.0gを塩酸7.0mL及び水に溶かして1000mLとし、人工胃液とした。得られた人工胃液は無色澄明で、そのpHは約1.2である。
<測定装置>
Zeta Sizer nano−S(Melvern製)
<測定条件及び方法>
実施例1及び2で得られた本発明の経口摂取用組成物を調製した人工胃液で100倍(質量)に希釈し、得られた水中油型乳化物1mLを測定セルに入れ、測定に供した。平均粒子径(体積)は、同じサンプルを3回測定し、その平均値とした。
粒子径測定の結果、実施例1の組成物を人工胃液で100倍希釈して得られる水中油型乳化物の平均粒子径は678nm、実施例2の組成物を人工胃液で100倍希釈して得られる水中油型乳化物の平均粒子径は1364nm、比較例1の水中油型乳化物の平均乳化粒子径は357nmであった。
[試験例2]難溶性物質の消化管吸収性
クルクミンの消化管吸収性を以下の方法により測定した。
<経口投与>
クルクミン原末、実施例1、2の組成物及び比較例1の水中油型乳化物を、15時間絶食させたWistar系雄性ラット(7〜9週齢)に胃ゾンデ管を用いて胃内投与した。投与量は、クルクミン原末は体重1kgあたり100mg、実施例1及び比較例1は体重1kgあたり25mgとした。
<血液サンプルの調製>
麻酔後、解剖台に固定したラットの頚部を一部切開し、頸静脈を露出させた。その後、投与から経時的に血液を600μgずつ採取した。
<血中薬物濃度のHPLC測定用サンプル調整>
ラットから採取した血液を直ちに微量のヘパリンナトリウムと混和し、750×g、4℃で10分間遠心分離して、上澄みを200μL分取しこれを血漿とした。クルクミンは安定であるため、得られた血漿に1%ギ酸を20μL添加して−20℃で保存した。
ここに0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0、6000U/mLのβグルコシダーゼ含有)200μLを添加し、37℃で2時間インキュベートした。その後、10mg/mLのエモジンメタノール溶液(内部標準)10μL及びメタノール10μLを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間激しく混合した後、酢酸エチル1.25mLを添加し、ボルテックスミキサーで10分間激しく混合した。混合後の溶液は4℃、18800×gで10分間遠心分離を行い、上清1mLを採取して40℃で30分間溶媒を蒸発させた。得られた残留物には、80%アセトニトリル溶液100μLを添加し、ボルテックスミキサーで60秒間激しく混合し、HPLCサンプルとした。
<HPLC測定条件>
カラム:Inertsil ODS-4(シリカゲル粒子径3μm、内径3mm、長さ150mm、GLサイエンス社製)
移動相:アセトニトリル‐テトラヒドロフラン−0.1%ギ酸(=35:20:45(v/v/v))混合溶液
波長:425nm
流速:0.3mL/min
カラム温度:40℃
注入量:20μL
クルクミン原末を投与した場合のクルクミン最大血中濃度Cmaxは0.1±0.1であるのに対し、実施例1の組成物を投与した場合のクルクミン最大血中濃度Cmaxは、0.8±0.4μg/mLとなり、クルクミンの消化管吸収性が大幅に向上していることがわかる。これに対し、比較例1の水中油型乳化物を投与した場合にはクルクミン血中濃度の上昇がほとんど見られず、実施例1よりも粒径が小さいにもかかわらずクルクミンの消化管吸収性は向上しなかった。
したがって、本発明の経口摂取用組成物を経口投与し、消化管内で水中油型乳化物を生成することにより、組成物に含有される難溶性物質の消化管吸収性が向上することがわかる。
また、実施例2の組成物を投与した場合のクルクミン最大血中濃度(Cmax)は、0.2±0.1となり、クルクミン原末に比べて消化管吸収性は向上したものの、実施例1の組成物を投与した場合と比較すると、クルクミン消化管吸収性効果が低かった。
したがって、消化管内で生じる水中油型乳化物の平均粒子径(体積)が1.0μm以下であるほうが、消化管吸収性の向上に寄与しやすいことが示された。
[実施例3]
実施例1において、卵黄リゾリン脂質0.125g、混合脂肪酸0.0625gに置き換え、大豆油で全量が2.5gとなるよう調整した以外は実施例1と同様にして、クルクミンを含有する本発明の経口摂取用組成物を得た。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は67%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が0.5部、組成物全量に対するリゾリン脂質含有量は5%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.07部である。
実施例3で得られた経口摂取用組成物について、試験例1の方法に準じ、人工胃液で100倍希釈して得られた水中油型乳化物の平均粒子径(体積)を測定したところ、573nmであった。
[実施例4]
実施例1において、卵黄リゾリン脂質0.25g、混合脂肪酸0.125g、に置き換え、大豆油で全量が2.5gとなるように調整した以外は実施例1と同様にして、クルクミンを含有する本発明の経口摂取用組成物を得た。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は67%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が0.5部、組成物全量に対するリゾリン脂質含有量は10%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.16部である。
実施例4で得られた経口摂取用組成物について、試験例1の方法に準じ、人工胃液で100倍希釈して得られた水中油型乳化物の平均粒子径(体積)を測定したところ、367nmであった。
[実施例5]
実施例1において、卵黄リゾリン脂質を大豆リゾリン脂質(リゾホスファチジルコリン含有量40%)に置き換えた以外は、実施例と同様にして、クルクミンを含有する本発明の経口摂取用組成物を得た。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は67%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が0.5部、組成物全量に対するリゾリン脂質含有量は2.5%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.03部である。
実施例5で得られた経口摂取用組成物について、試験例1の方法に準じ、人工胃液で100倍希釈して得られた水中油型乳化物の平均粒子径(体積)を測定したところ、1069nmであった。
[実施例6]
実施例1において、卵黄リゾリン脂質をリゾホスファチジルコリン含有量が99%であるものに変更した上で、卵黄リゾリン脂質量を0.6g、混合脂肪酸量を0.03gに変更し、大豆油で全量が2.5gとなるように調整した以外は実施例1と同様にして、クルクミンを含有する本発明の経口摂取用組成物を得た。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は95%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が0.05部、組成物全量に対するリゾリン脂質含有量は24%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.46部である。
実施例6で得られた経口摂取用組成物について、試験例1の方法に準じ、人工胃液で100倍希釈して得られた水中油型乳化物の平均粒子径(体積)を測定したところ、421nmであった。
[比較例2]
実施例1において、混合脂肪酸を0.37gに変更し、大豆油で全量が2.5gとなるように調整した以外は実施例1と同様にして、クルクミンを含有する経口摂取用組成物を得た。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は14%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が6部、組成物全量に対するリゾリン脂質含有量は2.5%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.04部である。
得られた経口摂取用組成物は、安定性に乏しく、人工胃液と接液した際に乳化して水中油型乳化物を生じる性質を維持できなかった。また、脂肪酸が多すぎると油脂が分離し、人工胃液で100倍に希釈した際に水中油型乳化物を生じない状態となることも示唆された。
[実施例7]
難溶性物質として、コエンザイムQ10(CoQ10)を62.5mg用い、難溶性物質の増分は大豆油を減じて全量が2.5gとなるよう調整した以外は実施例1と同様にして、本発明の経口摂取用組成物を得た。
乳化剤全量に対するリゾリン脂質の割合は67%、リゾリン脂質と脂肪酸の割合は、リゾリン脂質1部に対し脂肪酸が0.5部、組成物全量に対するリゾリン脂質含有量は2.5%、油脂1部に対するリゾリン脂質含有量は0.03部である。
得られた組成物を人工胃液で100倍希釈して得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積)は試験例1と同様の方法により測定し、CoQ10の消化管吸収性は以下の方法により測定した。
<経口投与>
CoQ10原末、実施例7の組成物を、15時間絶食させたWistar系雄性ラット(7〜9週齢)に胃ゾンデ管を用いて胃内投与した。投与量は、CoQ10原末の場合、体重1kgあたり100mg、実施例1及び比較例1は体重1kgあたり25mgとした。
<血液サンプルの調製>
麻酔後、解剖台に固定したラットの頚部を一部切開し、頸静脈を露出させた。その後、投与から経時的に血液を300μgずつ採取した。採取した血液は直ちに微量のヘパリンナトリウムと混和し、750g、4℃で10分間遠心分離して、上澄みを100μL分取しこれを血漿とした。
<血中薬物濃度のHPLC測定用サンプル調整>
ラットから採取した血液サンプル300μLを4℃、750×gで10分間遠心分離を行い、血漿100μLを採取した。ここに400μLのメタノールを添加し、ボルテックスミキサーで30秒間激しく混合した後、2mLのヘキサンを添加し、ボルテックスミキサーで30秒間激しく撹拌した。混合後の溶液は20℃、3000rpmで10分間遠心分離を行い、上清1.8mLを採取して40℃で30分間溶媒を蒸発させた。得られた残留物には、メタノール‐エタノール混合溶液(混合比35:65(v/v))100μLを添加し、ボルテックスミキサーで10秒間激しく混合し、HPLCサンプルとした。
<HPLC測定条件>
カラム:Inertsil ODS-4(シリカゲル粒子径3μm、内径3mm、長さ150mm、GLサイエンス社製)
移動相:メタノール‐エタノール(35:65(v/v))混合溶液
波長:275nm
流速:0.4mL/min
カラム温度:40℃
注入量:40μL
実施例7の経口摂取用組成物を人工胃液で100倍希釈して得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積)は、675nmであった。
また、消化管吸収性を測定した結果、CoQ10原末を投与した場合の最大血中濃度Cmaxが6.4±7.1ng/mLであったのに対し、CoQ10を含有する実施例7の組成物を投与した場合の最大血中濃度Cmaxは145.0±38.1ng/mLであり、難溶性物質であるCoQ10の消化管吸収性が大幅に改善されていた。

Claims (13)

  1. 難溶性物質を含有する経口摂取用組成物であって、
    油脂、多価アルコール及び乳化剤を含有し、
    乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量が15%以上であり、
    リゾリン脂質1部に対し脂肪酸を0.01部以上5部以下(質量比)含有する、
    経口摂取用組成物。
  2. 請求項1に記載の経口摂取用組成物において、
    前記組成物と人工胃液とを質量比で1:100の割合で混合した際に得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積換算)が1.0μm以下である、
    経口摂取用組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の経口摂取用有組成物において、
    前記リゾリン脂質の構成脂肪酸の8割以上が飽和型である、
    経口摂取用組成物。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の経口摂取用組成物において、
    前記組成物全量に対するリゾリン脂質含有量が1%以上である、
    経口摂取用組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の経口摂取用組成物において、
    前記油脂1部に対し前記リゾリン脂質を0.001部以上2部以下(質量比)含有する、
    経口摂取用組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の経口摂取用組成物において、
    前記リゾリン脂質に対するリゾホスファチジルコリン含有量が50%以上である、
    経口摂取用組成物。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の経口摂取用組成物において、
    前記リゾリン脂質が卵黄由来である、
    経口摂取用組成物。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の経口摂取用組成物において、
    前記多価アルコールとしてグリセリン又はポリエチレングリコールのいずれか1種以上を含有する、
    経口摂取用組成物。
  9. 難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法であって、
    難溶性物質、油脂、多価アルコール及び乳化剤を含有し、
    乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量が15%以上であり、
    リゾリン脂質1部に対し脂肪酸を0.01部以上5部以下(質量比)含有する組成物を経口摂取する、
    難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法。
  10. 請求項9に記載の方法において、
    前記組成物と人工胃液とを質量比で1:100の割合で混合した際に得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積換算)が1.0μm以下となる、
    難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法。
  11. 請求項9又は10に記載の方法において、
    前記難溶性物質を油脂に分散させて前記組成物の調製に用いる、
    難溶性物質の消化管吸収性を向上させる方法。
  12. 難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法であって、
    難溶性物質、油脂、多価アルコール及び乳化剤を含有し、
    乳化剤全量に対するリゾリン脂質含有量が15%以上であり、
    リゾリン脂質1部に対し脂肪酸を0.01部以上5部以下(質量比)含有する組成物を経口摂取し、
    体内で水中油型乳化物を調製する、
    難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法。
  13. 請求項12に記載の方法において、
    前記組成物と人工胃液とを質量比で1:100の割合で混合した際に得られる水中油型乳化物の平均粒子径(体積換算)が1.0μm以下となる、
    難溶性物質を含有する水中油型乳化物の胃内での乳化安定化方法。
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