JP2011246318A - セラミックス体、金属層付きセラミックス部材、およびセラミックス体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い電圧が印加された場合であっても、過大電流が発生し難いセラミックス体を提供する。
【解決手段】AlおよびOを含むセラミックス体であって、第3遷移元素(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)および第4遷移元素(Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd)から選ばれた少なくとも1種以上の特定遷移元素の酸化物を含有し、体積固有抵抗値が1.0×1013〜1.0×1015Ω・cmであり、かつ、表面の少なくとも一部において、表面抵抗率が1010〜1015Ωであるセラミックス体。
【選択図】図1
【解決手段】AlおよびOを含むセラミックス体であって、第3遷移元素(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)および第4遷移元素(Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd)から選ばれた少なくとも1種以上の特定遷移元素の酸化物を含有し、体積固有抵抗値が1.0×1013〜1.0×1015Ω・cmであり、かつ、表面の少なくとも一部において、表面抵抗率が1010〜1015Ωであるセラミックス体。
【選択図】図1
Description
本発明は、セラミックス体、金属層付きセラミックス部材、およびセラミックス体の製造方法に関する。
例えば静電偏向器等には、セラミックス体の表面に複数の電極が設けられた、金属層付きセラミックス部材が用いられている。かかる金属層付きセラミックス部材では、金属層に電圧が印加された際、金属層間で起こる電荷の蓄積(チャージアップ)が必要以上に大きくなると、蓄積した電荷が一気に流れ出す電子雪崩によって大電流が発生し、偏向器自体の動作不良や損傷に繋がる虞もある。例えば下記特許文献1には、静電偏向器用途に適した金属層付きセラミックス部材として、適度な導電性を有する(半導電性を有する)セラミック体を用いた、金属層付きセラミックス部材を提案している。特許文献1では、静電偏向器に適したセラミックス部材として、酸化アルミニウム(Al2O3)にTiを含有させてなる、体積固有抵抗値が104〜1010Ω・m程度の半導電性のセラミックス体を提案している。特許文献1では、具体的には、チタン酸アルミニウム粉末をアルミナ粉末に含めたものを成形、焼成することで、アルミナ粒界にαアルミナとの反応生成物であるAl2TiO5が均一に分散して固溶した状態とし、この均一に分散されたAl2TiO5の一部を、還元雰囲気で焼成して酸素欠乏チタン酸化物とすることで、104〜1010Ω・mの体積固有抵抗を有する半導電性のセラミックス体を得ている。
静電偏向器用途に限らず、金属層付きセラミックス部材は、例えば電子源用加速管の電圧端子、X線管用絶縁碍子など、より高い電圧が印加される部材にも適用されている。特許文献1の半導電性セラミックス体では、静電偏向器用途以上に高い電圧が印加される場合、セラミックス体自体に定常的に流れる電流が、比較的大きくなり過ぎる課題があった。また、特許文献1記載のように酸素欠乏チタン酸化物が表面に表れているセラミックス体では、表面における抵抗率が比較的小さく、高い電圧が印加された際に、セラミックス体の表面部分に選択的にリーク電流が発生し易いといった課題もある。本願発明は、かかる課題を解決するためになされたものである。
本願発明は、AlおよびOを含むセラミックス体であって、第3遷移元素(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)および第4遷移元素(Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd)から選ばれた少なくとも1種以上の特定遷移元素の酸化物を含有し、体積固有抵抗値が1×1013〜1×1015Ω・cmであり、表面抵抗率が1×1010〜1×1015Ωである第1領域を表面に有することを特徴とするセラミックス体を提供する。
また、上述のセラミックス体と、前記セラミックス体の表面に配置された複数の金属層と、を有する金属層付きセラミックス部材であって、前記領域が、前記金属層の間隙に配置されていることを特徴とする配置されていることを特徴とする金属層付きセラミックス
部材を、併せて提供する。
部材を、併せて提供する。
本発明のセラミックス体は、高い電圧が印加された場合であっても、過大電流が発生し難い。また、高い電圧が印加された場合であっても、セラミックス体の表面部分における過度なリーク電流の発生が抑制される。
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の金属−セラミックス接合体の一実施形態である碍子10の概略斜視図、図1(b)は碍子10の一主面に垂直な方向に切断した断面の一部を拡大して表す概略図である。
本実施形態の碍子10は、AlおよびOを含むセラミックス体12と、セラミックス体12の表面に設けられた金属層18と、金属層18を介してセラミックス体12と接合し
た電極(金属体)14a、14bと、を備えて構成されている。なお、碍子10は、セラミックス体12と電極14aおよび電極14bとを連通する貫通孔が設けられている。
た電極(金属体)14a、14bと、を備えて構成されている。なお、碍子10は、セラミックス体12と電極14aおよび電極14bとを連通する貫通孔が設けられている。
セラミックス体12は、体積固有抵抗値が1×1013〜1×1015Ω・cmと比較的高く、かつ、表面全体の表面抵抗率が1×1010〜1×1015Ω/cm2とされている。より好ましくは、セラミックス体12の表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ωとされている。セラミックス体12は、比較的高い体積固有抵抗を有し、電極14aと電極14bとの間に比較的高い電圧を印加した場合であっても、電子雪崩にともなって発生する絶縁破壊のような、セラミックス体12内部を流れるリーク電流の発生は抑制されている。また、表面抵抗率も比較的高くされており、電極14aと電極14bとの間に比較的高い電圧を印加した場合であっても、セラミックス体12の表面を流れるリーク電流についても抑制されている。
本実施形態のセラミックス体12は、AlをAl2O3換算で68〜98質量%含有し、かつTiを酸化物換算で2〜32質量%含有している。
セラミックス体12は、酸化アルミニウムを主成分とする結晶相12a(酸化アルミニ
ウムの結晶相12a)、およびチタン酸アルミニウムを主成分とする結晶相12b(チタン酸アルミニウムの結晶相12b)、をそれぞれ含んで構成されている。ここで、チタン酸アルミニウム又は酸化チタンに含まれるチタンは、平均の原子価が4未満であることが好ましい。
ウムの結晶相12a)、およびチタン酸アルミニウムを主成分とする結晶相12b(チタン酸アルミニウムの結晶相12b)、をそれぞれ含んで構成されている。ここで、チタン酸アルミニウム又は酸化チタンに含まれるチタンは、平均の原子価が4未満であることが好ましい。
チタン酸アルミニウムおよび酸化チタンは、完全に酸化された状態、例えば化学式でAl2TiO5、TiO2からなる場合は、通常絶縁体であるが、チタンの原子価が4未満であると電気抵抗が低下する。好ましくは、セラミックス体12において、Al2TiO5−x又はTiO2−xであり、xは0より大きく通常1以下である、これらの半導電性結晶が含有されており、セラミックス体12の全体や表面の一部は半導電性とされている。
また、セラミックス体12は、α−アルミナ(酸化アルミニウムをアルミナともいう)を主成分とし、半導電性結晶としてチタン酸アルミウムAl2TiO5−xを含むことがさらに好ましい。この場合には、特に高い電圧に対する耐破壊性に優れたα−アルミナを主成分とするので、セラミックス体12がより絶縁破壊しにくくなる。ここで、耐絶縁性を向上するには、セラミックス体12に含まれるα−アルミナは70〜85質量%、チタン酸アルミニウムAl2TiO5−xが15〜30質量%であることが好ましい。
かかるセラミックス体12は、例えば以下のように製造することができる。まず、例えば、高純度のアルミナ粉末68〜99質量%と、酸化チタン粉末1〜32質量%とを秤量し、水とともにボールミルにて混合、粉砕する。アルミナ粉末は、純度99質量%以上で、平均粒径が0.3〜1μmのアルミナ粉末を用いることが好ましい。得られたスラリーに有機バインダーを添加し、噴霧乾燥して顆粒を作製する。得られた顆粒をプレス成形、CIP(冷間等方加圧)成形などの公知の方法で成形して円筒状の生成形体を作製する。成形圧は最大で80〜200MPaの範囲内であることが好ましい。
続いて、加工した生成形体を最高温度1400〜1600℃で焼成してセラミック焼結体を作製する。このセラミック焼結体は、アルミナの結晶相とチタン酸アルミニウムの結晶相とを含んでいる。この焼成では、生成形体が収縮を開始する温度から最高温度までの昇温速度と、最高温度から結晶の粒成長が止まるまでの降温速度とを制御し、アルミナ結晶の粒界にチタン酸アルミニウム結晶を分散させることが好ましい。このようにして得られた焼結体は、遷移元素であるTiが、内部に比べて表面により多く分布している。このようにして得られた焼結体を機械研磨して、セラミックス体12を得ることができる。機械研磨としては、平面研削板を用いた研削装置、ラップ研磨装置など、公知の研削装置を用いることができる。
例えばアルミナのみからなるセラミックス体では、内部ではAl2O3の結晶構造が比較的高い規則性を有し、Al原子およびO原子の結合手は、それぞれ特定の位置関係にある原子の結合手と結びついている。一方、表層部分ではAl原子は結晶構造が乱れており、表面抵抗率は比較的低くなってしまうと考えられる。
一方、セラミックス体12は、遷移元素であるTiが含有されている。遷移元素は、内殻のd軌道に安定な不対電子をもつことが可能であり、複数の酸化数をとることが容易である。セラミックス体12では、セラミックス体12の表層部分において、表層部分のAl原子が遷移元素であるTiと結合することで結晶状態が安定に保たれている。また、焼成時、表層部分において、Al原子、Ti原子、O原子が、それぞれ安定した結合状態を作るように再組織化される。このため、焼成直後の状態では、表面抵抗率はより低くなっている。本実施形態では、焼結体全体の最表層部分を研磨し、自己組織化によって必要以上に抵抗率が上昇した最表層部分は除去し、1×1010〜1×1015Ωの表面抵抗率
を有するセラミックス体12を得ている。
を有するセラミックス体12を得ている。
例えば、セラミックス体12の表面の所望部分の抵抗率を1×1010〜1×1013Ωとする場合、チタン酸アルミニウム粉末の添加量(割合)をTiO2換算で1〜32質量%とし、所望の領域における研磨量を約0.30mm〜0.40mmとすればよい。
なお、セラミックス体は、酸化チタンの代わりに、第3遷移元素(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)および第4遷移元素(Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd)から選ばれた少なくとも1種以上の特定遷移元素の酸化物を含有していてもよい。
図1(b)を参照し、金属層18aの構成について説明しておく。なお、金属層18bの構成は、金属層18aと同様の構成となっている。
図1(b)を参照し、金属層18aの構成について説明しておく。なお、金属層18bの構成は、金属層18aと同様の構成となっている。
金属層18aは、第1の層22、第2の層24、第3の層26、第4の層28、を有して構成されている。
第1の層22はTiを含有し、セラミックス体12の表面に接合している。この第1の層22の表面には、Ag、Cu、およびTiとを含む第2の層24が接合されて配置されている。この第1の層22におけるTiの含有割合は、第2の層24のTiの含有割合に比べて高くされている。
なお、本実施形態では、第1の層22にはセラミックス体12に含有される特定遷移元素であるTiが含有されているが、この第1の層にはセラミックス体12に含有される上記特定遷移元素を主成分として含んでいればよい。また、本実施形態では、第2の層に、セラミックス体12に含有される特定遷移元素とは別に、AgおよびCuが含有されているが、第2の層に含有される元素としてはこれらに限定されず、例えばAg、Au、Pt、Cu、Pd、V、Hf、Vのうち少なくとも1種と上記特定遷移元素とを含んでいればよい。
第1の層22および第2の層24は、例えば、従来周知の厚膜ペースト法を用いて形成することができる。具体的には、例えば、Agの粉末とCuの粉末とTiの粉末とを所定量計量し、エチルセルロースなどのバインダーをテルピネオールなどの有機溶剤で溶剤したビヒクルと、上記の各粉末とをミキサーで混合し、ペーストを作成する。作成したこのペーストを、スクリーン印刷などでセラミックス体12の端面に塗布し、真空雰囲気で焼成して、第1の層22および第2の層24を形成すればよい。ペーストにおけるAg粉末とCu粉末とTi粉末の配合割合は、(50〜90)質量%Ag−(10〜50)質量%Cu−(3.0〜9.0)質量%Tiとすることが望ましい。
第1の層22および第2の層24を形成するためのAg−Cu−Tiロウ材は、融点が800〜850℃と比較的低く、第1の層22および第2の層24を形成する際の温度を比較的低く抑えることができる。第1の層22および第2の層24を、Ag−Cu―Tiロウ材を用いて形成した場合、セラミックス体12の焼成温度に対し、十分に低い温度でロウ材層を形成することが可能であり、セラミックス体12の機械的強度や導電性が、層の形成工程において変動することが抑制される。
碍子10では、第2の層24のTiの含有割合に比べて、この第1の層22におけるTiの含有割合が高い。第1の層22は、セラミックス体12の表面に設けたペースト中のTi成分と、セラミックス体12に含まれるTi成分が、セラミックス体12とペーストとの境界部分に集中して形成された層である。このTiを主成分とする第1の層は、セラミックス体12との接合強度が高い。Tiが含有されたこの第1の層22によって、セラ
ミックス体12と金属体14との接合強度が高くされている。第2の層24は、第1の層22と同時焼成されて形成された層であり、ペースト中のTi成分が第1の層22に偏析することで、Ti成分の含有割合は比較的少なくされている。
ミックス体12と金属体14との接合強度が高くされている。第2の層24は、第1の層22と同時焼成されて形成された層であり、ペースト中のTi成分が第1の層22に偏析することで、Ti成分の含有割合は比較的少なくされている。
本実施形態のセラミックス体12は、チタン酸アルミニウムを主成分とする結晶相12b(チタン酸アルミニウムの結晶相12b)を含んでいる。このチタン酸アルミニウムの結晶相12bは、セラミックス体12の表面にも露出している。すなわち、セラミックス体12と第1の層22との境界面においても露出している。第1の層22に多く含まれるTi成分は、Tiを含有するチタン酸アルミニウム結晶相12bと結合する。碍子10では、セラミックス体12表面のチタン酸アルミニウム結晶相12bと、第1層22のTiと、が良好に結合するので、セラミックス体12と第1の層22とが強固に接合される。
かかる第1の層22では、Tiの含有割合が、6質量%〜12質量%となっている。なお、Tiの含有割合(質量%)は、例えば走査型電子顕微鏡装置を用いて行う、従来公知のEDS(エネルギー分散型X線分析法)によって求めることができる。例えば、EDAX社製PHOENIXを用い、加速電圧15kVで各原子に対応するスペクトルを求め、各原子に対応するスペクトル強度から算出することができる。ここで、Tiの含有量を1〜18質量%の範囲で1〜2質量%おきに変化させたAg−Cu−Tiロウ材(AgとCuの含有比率は一定)を作製し、ロウ材のTiのスペクトル強度とTiの含有量(質量%)の関係を示す検量線を作成しておく。Tiの含有割合(質量%)は、この検量線と測定対象物のTiのスペクトル強度から求めることができる。
第3の層26は、例えばNiメッキを主成分として構成されている。Tiなどの遷移金属は反応性に富み、NiやAuやCuといったメッキ材料と反応して化合物を形成する。第2の層26の表面にNiメッキを施すことで、第1の層に含有される特定遷移元素(本実施形態ではTi)が、第3の層26にも含有されるとともに、第2の層24と第3の層26との界面部分でTi化合物を主成分とする結合層を構成する。第3の層26は、第2の層24と比較的強固に接合している。 第3の層を形成するには、Niメッキのみに限
らず、Auメッキ、Cuメッキ等を用いてもよい。第3の層はNi、Cu、Auのうち少なくとも1種と、セラミックス体に含まれる上記特定遷移元素とを含んでいればよい。
らず、Auメッキ、Cuメッキ等を用いてもよい。第3の層はNi、Cu、Auのうち少なくとも1種と、セラミックス体に含まれる上記特定遷移元素とを含んでいればよい。
第4の層28は、例えば、Agを50〜90質量%、Cuを10〜50質量%、Tiを3〜9質量%含有するロウ材層で構成されている。碍子10では、第4の層28と電極14aとが当接してロウ付け接合されている。また、第3の層28に含まれるNiは、第4の層28に含まれる特定遷移元素であるTiとも反応して化合物を形成し、第3の層26と第4の層28とが強固に接合されている。
また、第4の層28を構成するAg−Cu−Tiロウ材は、融点が800〜850℃と比較的低く、第4の層28を形成する際の温度を比較的低く抑えることができる。第4の層28としてAg−Cu―Tiロウ材を用いた場合、セラミックス体12の焼成温度に対し、十分に低い温度でロウ材層を形成することが可能であり、セラミックス体12の機械的強度や導電性が、ロウ付け工程において変動することが抑制される。なお、第4の層を構成するロウ材は、上記Ag-Cu-Tiロウ材のみに限定されず、例えば、Ag−Cuロウ、Cuロウ、Ag−Pdロウ、Au-Cuロウ、Au−Pdロウ、Pt−Cuロウ、P
t−Pdロウ、Alロウ、Au−Snロウ、Ag−Cu−Inロウ、Cu−Tiロウ、Ag−Pd−Tiロウ、Pt−Cu−Tiロウ、Pt−Pd−Tiロウ、などを用いてもよい。
t−Pdロウ、Alロウ、Au−Snロウ、Ag−Cu−Inロウ、Cu−Tiロウ、Ag−Pd−Tiロウ、Pt−Cu−Tiロウ、Pt−Pd−Tiロウ、などを用いてもよい。
本実施形態の碍子10では、セラミックス体12と電極14a、14bとが、比較的高い接合強度で接合されている。
以上のようにして得られた碍子10は、例えば、荷電粒子線装置において使用される。図2は、荷電粒子線装置の構成例を示す図である。図2に示すように、荷電粒子線装置100は、荷電粒子を放出する荷電粒子線源101と、放出された荷電粒子を荷電粒子線源101から絶縁する碍子であって、該荷電粒子が通過する貫通孔を有する碍子10とを有する。また、荷電粒子線源101の少なくとも一部および碍子10は、容器103の内部に配置される。容器103は、例えば、真空チャンバであり、容器103の内部には、荷電粒子が到達する位置に対象物Pが配置される。対象物Pは、例えばステージS上に配置されてもよい。
碍子10は、一対の電極14a,14bと、一対の電極14a,14b間に設けられたセラミックス体12とを有する。セラミックス体12は、少なくとも貫通孔に接する内表面が半導電性であることが好ましい。または、碍子10の内側の面には金属導体層を形成しても良い。また、荷電粒子線装置100は、一対の電極14a,14bに電圧を印加する電源装置106を有する。荷電粒子源101は、電子銃であり、碍子10は、電極14a,14bを偏向電極とした加速器として作用する。荷電粒子線装置100では、電極14aと14bとの間に、比較的高い電圧が印加され、この電圧によって放出する荷電粒子の軌道を制御する。
半導電性のセラミックス体12は、比較的高い体積固有抵抗を有し、電極14aと電極14bとの間に比較的高い電圧を印加した場合であっても、電子雪崩にともなって発生する絶縁破壊のような、セラミックス体12内部を流れるリーク電流の発生は抑制されている。また、表面抵抗率が適度な大きさ(例えば表面全体の表面抵抗率が1×1010〜1×1015Ω/cm2)を有する。このため、電極14aと電極14bとの間に比較的高い電圧を印加した場合であっても、セラミックス体12の表面を流れるリーク電流についても抑制されているとともに、セラミックス体12の表面を微小な電流が流れることで、セラミックス体12の表面の帯電を抑制することができ、いわゆるチャージアップが抑制される。かかるセラミックス体12を備える荷電粒子線装置100では、チャージアップにともなって発生する過大電流や、表面の漏れ電流にともなう、動作不良が比較的少ない。碍子10では、少なくとも内表面部分において、体積固有抵抗値が1×1013〜1×1015Ω・cm、かつ表面抵抗率が1×1010〜1×1015Ωとされている。体積固有抵抗値が1×1013〜1×1015Ω・cm、かつ表面抵抗率が1×1010〜1×1015Ωとされた表面領域の、セラミックス体における位置は特に限定されず、表面全体が上記値を有していてもよい。体積固有抵抗値が1×1013〜1×1015Ω・cm、かつ表面抵抗率が1×1010〜1×1015Ωとされる表面領域は、セラミックス体が利用される部材において高い電圧が印加される領域に配置すればよい。
かかる荷電粒子線装置100は、例えば電子顕微鏡における電子銃や、電子ビーム露光装置における電子銃などとして用いることができる。また、本発明の金属層付きセラミックス部材は、X線管用の絶縁碍子、TEM加速管用SEMレンズユニット、いわゆる真空スイッチ用途にと、比較的高電圧が印加される用途に用いられた場合でも、絶縁破壊し難く、適用した装置の動作信頼性を高くすることができる。
以下、本実施形態の碍子10の製造方法の一例について説明しておく。まず、セラミックス体12を作製する。例えば、高純度のアルミナ粉末を、含まれるAlがAl2O3換算で68〜99質量%、チタン酸アルミニウム粉末を、含まれるTiがTiO2換算で1〜32質量%となるように秤量し、水とともにボールミルにて混合、粉砕する。アルミナ粉末は、純度99質量%以上で、平均粒径が0.3〜1μmのアルミナ粉末を用いることが好ましい。得られたスラリーに有機バインダーを添加し、噴霧乾燥して顆粒を作製する。得られた顆粒をプレス成形、CIP(冷間等方加圧)成形などの公知の方法で成形して
円筒状の生成形体を作製する。成形圧は最大で80〜200MPaの範囲内であることが好ましい。
円筒状の生成形体を作製する。成形圧は最大で80〜200MPaの範囲内であることが好ましい。
加工した生成形体を最高温度1400〜1600℃で焼成してセラミック焼結体を作製する。このセラミック焼結体は、アルミナの結晶相とチタン酸アルミニウムの結晶相とを含んでいる。この焼成では、生成形体が収縮を開始する温度から最高温度までの昇温速度と、最高温度から結晶の粒成長が止まるまでの降温速度とを条件となるように制御し、アルミナ結晶の粒界にチタン酸アルミニウム結晶を分散させることが好ましい。
このようにして得られた焼結体は、遷移元素であるTiが、内部に比べて表面により多く分布している。このようにして得られた焼結体を機械研磨して、セラミックス体12を得ることができる。
例えば、セラミックス体12の表面の所望部分の抵抗率を1×1010〜1×1013Ωとする場合、チタン酸アルミニウム粉末の添加量(割合)を2〜32質量%とし、所望の領域における研磨量を約0.30mm〜0.40mmとすればよい。
なお、セラミックス体は、チタンの酸化物の代わりに、第3遷移元素(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)および第4遷移元素(Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd)から選ばれた少なくとも1種以上の特定遷移元素の酸化物を含有していてもよい。このような遷移元素は、上述のように複数の酸化数をとることが容易であり、セラミックス体12の表面抵抗率を低減させる。
また、研磨後のセラミックス体12の表面には、上記チタン酸アルミニウムの結晶相12bが露出した状態となっている。
次に、セラミックス体12の表面に第1の層22および第2の層24を形成する。第1の層22および第2の層は、従来周知の厚膜ペースト法を利用したメタライズ処理によって形成することができる。このメタライズ処理では、例えば、Agの粉末とCuの粉末とTiの粉末とを所定量計量し、エチルセルロースなどのバインダーをテルピネオールなどの有機溶剤で溶解したビヒクルと上記粉体をミキサーで混合し、ペーストを作成する。次に、スクリーン印刷法など公知の方法をもって、このペーストをセラミックス体12の両端面に塗布する。その後、真空雰囲気で焼成して、第1の層22を形成する。より具体的には、約1.0×10−5Paの真空雰囲気で、819〜840℃まで加熱する。この熱処理によって、セラミックス体12とペーストとの境界部分にTi元素が偏析し、Tiを主成分とする第1の層22と、第1の層に比べてTiの含有割合が低い第2の層24とが形成される。
第1の層22と第2の層24と、を形成する際にペーストに含有させるTi粉末の質量%は、上記各粉末の全重量に対し、例えば3.0質量%以上かつ9.0質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、Ti粉末の質量%は、上記各粉末の全質量に対し、例えば5.0質量%以上かつ7.0質量%以下であることが好ましい。
第1の層22に多く含まれるTi成分は、Tiを含有するチタン酸アルミニウム結晶相12bと結合する。碍子10では、セラミックス体12表面のチタン酸アルミニウム結晶相12bと、第1層22のTiと、が良好に結合するので、セラミックス体12と第1の層22とが強固に接合される。
第1の層にセラミックス体と同一の遷移元素が含まれていることで、第1の層の特定遷移元素が、セラミックス体の表面に露出した、この特定遷移元素の酸化物の結晶相と強固
に結合する。第1の層には、セラミックス体に含有される遷移元素と同一の元素(特定遷移元素)が含まれていればよい。
に結合する。第1の層には、セラミックス体に含有される遷移元素と同一の元素(特定遷移元素)が含まれていればよい。
Ti粉末の質量%が、上記各粉末の全重量に対し、例えば3.0質量%以上かつ9.0質量%以下である場合、第1の層22とセラミックス体24との接合強度は比較的高くなる。さらに、Ti粉末の質量%が、上記各粉末の全重量に対し、例えば5.0質量%以上かつ7.0質量%以下である場合、第1の層22とセラミックス体24との接合強度はより高くできる。
次に、第2の層24の表面に、第3の層26を形成する。第3の層26は、従来公知の方法のNiメッキ法によって形成することができる。その後、Ag−Cu−Tiロウ材を用いて第4の層28を形成するとともに、セラミックス体12と電極14aとを接合する。例えば、厚みが50〜100μm程度のAg−Cu―Ti箔を金属膜14の上に配置し、その上にFe−Ni−Co合金からなる電極14を配置し、例えばカーボンからなる治具で固定する。このように治具で固定した状態で、例えば約1.0×10−5Paの真空雰囲気で、900〜1100℃で30分熱処理を行い、金属層18(第1層22、第2層24、第3層26、第4層28)を介して電極26が接合された碍子10を得る。
次に、本発明の実施例を示しておく。
《実験例1》金属層付きセラミックス部材の一例について断面を観察した。図3は、Tiの含有割合が5質量%であるサンプルの断面SEM写真である。図4のSEM写真は、Ti元素を白くマッピングして示している。図4からわかるように、Tiの含有割合が5質量%であるペーストを用いて作製されたサンプルでは、第2の層24に比べてTiに含有割合がより大きい、Tiを主成分とする第1の層22が、セラミックス体12の表面部分に形成されている。また、この第1の層22が、セラミックス体12に含まれる、チタン酸アルミニウムを主成分とする結晶相12bと結合しているのがわかる。この結合は、セラミックス体と金属層との接合強度の向上に寄与し、比較的高い接合強度が実現されている。本実施形態の碍子10は、半導電性を有するセラミック基板12と金属体14aおよび14bとが比較的強固に接合されている。
《実験例2》チタン酸アルミニウムの添加量がそれぞれ異なる複数のセラミックス体について、体積固有抵抗値と表面抵抗率とを測定した。また加えて、各セラミックス体の表面を研磨した状態での体積固有抵抗値と表面抵抗率とを、研磨量を変更した複数の状態で測定した。
まず、高純度のアルミナ粉末を、含まれるAlがAl2O3換算で100−X質量%、チタン酸アルミニウム粉末を、含まれるTiがTiO2換算でX質量%となるように秤量し、水とともにボールミルにて混合、粉砕した。アルミナ粉末は、純度99質量%以上で、平均粒径が0.3〜1μmのアルミナ粉末を用いた。得られたスラリーに有機バインダーを添加し、噴霧乾燥して顆粒を作製した。得られた顆粒をプレス成形で成形して、円板状の生成形体を作製した。チタン酸アルミニウム粉末の質量%の値(X)は、各サンプル毎に以下のように設定した。サンプルNo.1:6質量%、サンプルNo.2:12質量%、サンプルNo.3:18質量%、サンプルNo.4:19質量%、サンプルNo.5:20質量%、サンプルNo.6:21質量%とした。各サンプルNoの試料はそれぞれ4個用意した。加工した各サンプルの生成形体を最高温度1600℃で焼成して、各サンプルNo毎に4個ずつのセラミック焼結体の試料を作製した。セラミック焼結体は、直径が約60mm、厚さが約3mmの円板状とした。各試料それぞれについて、焼結体全体を平面研磨板を用いて研磨し、各サンプル毎に、研磨量の異なる複数の試料を用意した。各
サンプルNo毎に、表面の研磨量が0.05mm、0.20mm、0.35mm、0.50mm、とした複数の試料を用意した。用意した各試料に、図4に示す電極を形成した。図4(a)は、測定する試料の断面図、図4(b)は試料の上面図である。図4における各部分の長さは、それぞれA1=22mm、A2=31mm、A3=35mm、A4=44mmとした。電極はCr薄膜jからなり、セラミックス体12の上面にスパッタリング法によって電極パターン102aおよび102bを形成するとともに、セラミックス体12の裏面にスパッタリング法によって電極パターン102cを形成した。得られた各試料について、Agilent製ハイレジスタンスメータであるAgilent 4339B
を用い、各端子を電極102aと102bとに接触させた状態で、JIS K6271に
準拠した二重リング電極法によって、各試料の体積固有抵抗値、表面抵抗率を測定した。
サンプルNo毎に、表面の研磨量が0.05mm、0.20mm、0.35mm、0.50mm、とした複数の試料を用意した。用意した各試料に、図4に示す電極を形成した。図4(a)は、測定する試料の断面図、図4(b)は試料の上面図である。図4における各部分の長さは、それぞれA1=22mm、A2=31mm、A3=35mm、A4=44mmとした。電極はCr薄膜jからなり、セラミックス体12の上面にスパッタリング法によって電極パターン102aおよび102bを形成するとともに、セラミックス体12の裏面にスパッタリング法によって電極パターン102cを形成した。得られた各試料について、Agilent製ハイレジスタンスメータであるAgilent 4339B
を用い、各端子を電極102aと102bとに接触させた状態で、JIS K6271に
準拠した二重リング電極法によって、各試料の体積固有抵抗値、表面抵抗率を測定した。
図5は各試料について測定した体積固有抵抗値を示すグラフであり、図6は各試料について測定した表面抵抗率を示すグラフである。図5に示すように、各試料とも体積固有抵抗値が1.0×1013〜1.0×1015Ω・cmの値が得られ、研磨量の違いによる体積固有抵抗値の変化は小さかった。また、表面抵抗率は1.0×1010〜1.0×1015Ωであった。サンプルNo.1〜6のそれぞれについて、表面の研磨量にともなって表面抵抗率が変化した。研磨量がごく少ない(例えば0.05mm)段階では、焼成によって自己組織化された部分が最表面に表れており、表面抵抗率が比較的高くなっていると考えられる。表面を更に研磨した状態では、この自己組織化された部分が削除され、Tiによって結晶構造が安定した領域が表面に表れ、表面抵抗率はある程度低くなっている。更に研磨が進むと、Tiの含有割合が比較的少なくなり、表面がAl2O3表面で終端された状態となり、表面抵抗率が比較的大きくなっていると考えられる。所望の領域における研磨量を調整することで、セラミックス体12の表面の所望部分の抵抗率を、例えば1.0×1010〜1.0×1013Ω程度に調整することができる。
《実験例3》次に、上記実験例1と同様の製造方法を経て作製された試料について、絶縁耐圧の測定試験を行った。実験例2では、それぞれ厚さが異なる円板状の試料を複数用意し、各試料の表裏に電極を当接させて、JISC2141−1992に準拠した測定方法で、各試料の絶縁耐圧を測定した。各試料におけるTiの含有割合は、TiO2換算で7質量%とした。電圧は、50kV電圧幅で60kHzの交流を印加した。測定の際、電圧を印加した端子は、円板上の試料の主面に垂直な直線状に並ぶように配置した。各試料とも面内の5箇所において絶縁耐圧値を測定し、その平均値を算出した。図7は、測定された絶縁耐圧の値(平均値)である。本例では、厚さ3mmの試料において、絶縁耐圧が12kV/mmと、比較的大きな値が得られている。なお、厚さの増加に従って絶縁耐圧が低下するのは、電極を印加する部分の長さ(厚さ)が増加するほど、内部における格子欠陥等、電子雪崩のきっかけとなる欠陥部分の個数が増加するためであると考えられる。
以上、本発明のセラミックス体、金属層付きセラミックス部材、セラミックス体の製造方法について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
10 碍子
12 セラミックス体
14a、14b 電極
18a、18b 金属層
22 第1の層
24 第2の層
26 第3の層
28 第4の層
12 セラミックス体
14a、14b 電極
18a、18b 金属層
22 第1の層
24 第2の層
26 第3の層
28 第4の層
Claims (8)
- AlおよびOを含むセラミックス体であって、
第3遷移元素(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)および第4遷移元素(Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd)から選ばれた少なくとも1種以上の特定遷移元素の酸化物を含有し、
体積固有抵抗値が1×1013〜1×1015Ω・cmであり、表面抵抗率が1×1010〜1×1015Ωである領域を表面に有することを特徴とするセラミックス体。 - 前記領域の表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ωであることを特徴とする請求項1記載のセラミックス体。
- AlをAl2O3換算で68〜98質量%含有し、かつ前記特定遷移元素を酸化物換算で2〜32質量%含有することを特徴とする請求項1または2記載のセラミックス体。
- 前記セラミックス体は、酸化アルミニウムの結晶相、およびアルミニウムと前記特定遷移元素との酸化物からなる結晶相、をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス体。
- 前記特定遷移元素がTiであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス体。
- 前記セラミックス体の表面の前記領域は、機械研磨されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックス体。
- 請求項1〜6記載のセラミックス体と、前記セラミックス体の表面に配置された複数の金属層と、を有する金属層付きセラミックス部材であって、
前記セラミックス体の表面の前記領域が、前記金属層の間隙に配置されていることを特徴とする配置されていることを特徴とする金属層付きセラミックス部材。 - セラミックス体の製造方法であって、
Alの酸化物を主成分とする粉末と、第3遷移元素(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn)および第4遷移元素(Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd)から選ばれた少なくとも1種以上の特定遷移元素の酸化物を主成分とする粉末と、の混合物を成形して得られた成形体を1200℃〜1600℃で焼成した後、
得られた焼成体の表面を0.05〜0.50mmの厚さだけ研磨して、体積固有抵抗値が1×1013〜1×1015Ω・cm、かつ、表面抵抗率が1×1010〜1×1015Ωである領域を有するセラミックス体を得ることを特徴とするセラミックス体の製造方法。
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