上記特許文献1に開示された旋回フレームでは、作業アタッチメントによる掘削時に掛かる荷重に対する強度及び剛性を確保しながら、軽量化及び材料コストの削減を図ることが困難である。
すなわち、上記旋回フレームでは、作業アタッチメントによる掘削時に、ブーム取付用ブラケットに前方斜め上へ向かう引っ張り力が掛かるとともにシリンダ取付用ブラケットに後方斜め下へ向かう押圧力が掛かる。上記旋回フレームの各側部構造体では、大面積を有する前記2枚の縦板、前記1枚の縦板の前端近傍の部分、前記底板及び前記上板によって構成された構造で前記掘削時に掛かる力に対する強度及び剛性を確保しようとしている。しかし、前記の側部構造体では、2枚の縦板が後端に向かうにつれて互いに漸次接近し、その後端同士が互いに溶接されたYの字のような構造となっている。すなわち、この構造では、前後方向の掘削荷重に対して縦板が斜めに配置された部分が存在し、剛性面で不利である。従って、このような構造で一定の剛性を確保しようとすれば、縦板の厚みを大きくすることが必要となり、縦板の厚みを大きくすればその重量が大幅に増加する。換言すれば、上記旋回フレームの構造では、重量のわりに高い剛性が得られにくいということになる。
また、前記の各側部構造体が旋回ベアリングの後側部分と交差する位置では、前記1枚の縦板が底板上に溶接されているが、前記ブーム取付用ブラケットに掛かる前方斜め上への引っ張り荷重や、悪路走行時に後部カウンタウェイトから各側部構造体に掛かる揺動荷重は、この1枚の縦板と旋回ベアリングとの交差位置で分散されることなく当該交差位置における縦板と底板との溶接部に集中的に掛かることになる。従って、この構成では、前後方向に延びる縦板がその長手方向に沿って底板に溶接されていて当該縦板と底板との溶接面積が大きいわりに前記掘削時に旋回フレームに掛かる荷重に対抗するために必要な縦板と底板の溶接強度が得られにくい。すなわち、上記旋回フレームでは、広い領域に亘って溶接することに起因して溶接作業に手間が掛かるわりには、必要な縦板と底板の溶接強度が得られにくいと言える。
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、低重量ながら作業アタッチメントによる掘削時に掛かる荷重を十分に支持できる強度及び剛性を持ち、かつ、溶接作業にかかる作業負担を軽減しながら側部構造体と底板との必要な溶接強度が得られるショベルの旋回フレームを提供することである。
上記目的を達成するために、本発明によるショベルの旋回フレームは、下部走行体上に旋回ベアリングを介して縦軸回りに旋回可能に設けられ、掘削を行うための作業アタッチメントのブームを起伏自在に支持するとともに、前記ブームを起伏させるためのシリンダを支持するショベルの旋回フレームであって、前記旋回ベアリング上に配設され、前記ブーム及び前記シリンダを支持する前側フレーム部と、前記前側フレーム部の後側に接続され、その後部において前記ショベルに搭載されるカウンタウェイトを下から支持する後側フレーム部とを備え、前記前側フレーム部は、前記旋回ベアリングを上から覆うようにその旋回ベアリング上に固定される前側底板と、その前側底板上において前記旋回フレームの幅方向に互いに間隔を置いて設けられ、前記ブーム及び前記シリンダを支持する左右の前側側部構造体とを有し、前記各前側側部構造体は、一方向に延びる管材からなり、その一方の端部が前記前側底板の上面に溶接されていてその溶接部分の少なくとも一部が上から見て前記旋回ベアリングの前側部分の配設領域内に位置し、他方の端部が一方の端部よりも後方でかつ上方に位置する第1支持部材と、一方向に延びる管材からなり、その一方の端部が前記第1支持部材の前記一方の端部の後方で前記前側底板の上面に溶接されていてその溶接部分の少なくとも一部が上から見て前記旋回ベアリングの後側部分の配設領域内に位置し、他方の端部が一方の端部よりも前方でかつ上方の位置において前記第1支持部材の前記他方の端部に溶接されている第2支持部材と、前記作業アタッチメントによる掘削時に前記シリンダから作用するそのシリンダの軸方向の押圧力が前記旋回ベアリングの前側部分に伝達されるように前記シリンダと前記第1支持部材の前記一方の端部とを連結するシリンダ連結部と、前記作業アタッチメントによる掘削時に前記ブームから作用する引っ張り力が前記第1支持部材の前記他方の端部と前記第2支持部材を介して前記旋回ベアリングの後側部分に伝達されるように前記ブームと前記第1支持部材の前記他方の端部とを連結するブーム連結部とをそれぞれ有する。
なお、本発明において、旋回フレームにおける「前後」、「左右」とは、作業アタッチメントがショベルの前部に位置するとともにカウンタウェイトがショベルの後部に位置するように旋回フレームが下部走行体に対して配置された状態におけるショベルの「前後」、「左右」を意味する。
作業アタッチメントによる掘削時には、ブームを起伏させるシリンダからその軸方向の押圧力がシリンダ連結部に作用するとともに、ブームから引っ張り力がブーム連結部に作用する。この時、この旋回フレームでは、シリンダからシリンダ連結部に作用する押圧力をシリンダ連結部から第1支持部材の下端部を介して旋回ベアリングの前側部分に伝達することができるとともに、ブームからブーム連結部に作用する引っ張り力をブーム連結部から第1支持部材の上端部及び第2支持部材を介して旋回ベアリングの後側部分に伝達することができる。このため、作業アタッチメントによる掘削時に旋回フレームに掛かる荷重を前側側部構造体において支えることができる。その結果、この旋回フレームでは、作業アタッチメントによる掘削時に掛かる荷重に対する強度及び剛性を確保することができる。
そして、本願発明者は、鋭意検討した結果、作業アタッチメントによる掘削時には、旋回フレームの前側側部構造体のうち、旋回ベアリングの前側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から後方斜め上へ延びるとともにブーム連結部及びシリンダ連結部と繋がる領域と、旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から前方斜め上へ延びてブーム連結部へ至る領域とに大きな荷重が掛かるが、それ以外の領域にはあまり荷重が掛からないことを見出した。本願発明者は、この知見に基づいて、上記のように、一方向に延びる管材からなる第1支持部材を、一方の端部が前側底板の上面に溶接されてその溶接部分の少なくとも一部が上から見て旋回ベアリングの前側部分の配設領域内に位置し、他方の端部が一方の端部よりも後方でかつ上方に位置するように設け、一方向に延びる管材からなる第2支持部材を、一方の端部が第1支持部材の前記一方の端部の後方で前側底板の上面に溶接されてその溶接部分の少なくとも一部が上から見て旋回ベアリングの後側部分の配設領域内に位置し、他方の端部が一方の端部よりも前方でかつ上方の位置において第1支持部材の前記他方の端部に溶接されるように設けた前側側部構造体を有する旋回フレームを発明した。
すなわち、従来の旋回フレームでは、荷重の伝達経路に関係なく、均一な厚みの縦板を底板上に立設しているため、重量のわりに高い強度及び剛性が得られにくい。これに対して、本発明では、作業アタッチメントによる掘削時にシリンダ及びブームに作用する力を高強度の旋回ベアリングに効率良く伝えるべく、その力の伝達経路に対応した形状で一方向に延びる中空の管材からなる第1支持部材と第2支持部材を組み合わせることで、低重量ながら前記シリンダ及びブームに作用する力を十分に支持できる強度及び剛性を持つ旋回フレームを構築できる。
また、従来の旋回フレームでは、側部構造体が旋回ベアリングの後側部分と交差する位置では、その側部構造体の1枚の縦板が底板上に溶接されていて、ブームから側部構造体に前方斜め上へ向かう引っ張り荷重が掛かった場合にその荷重が1枚の縦板から底板のうち当該縦板と旋回ベアリングの交差部位に位置する部分に集中的に荷重伝達されるのに対し、本発明では、第1支持部材及び第2支持部材が管材からなることに起因して、それら第1及び第2支持部材の管状の端部から前側底板へ荷重を分散しながら伝達することができる。その結果、本発明では、第1及び第2支持部材の端部と前側底板との溶接部に作用する応力を低減することができる。また、従来の旋回フレームでは、一定の厚みを有する縦板を前後方向に延びる領域に亘って底板に均一に溶接しているが、縦板と底板の溶接面積が大きいわりに必要な溶接強度が得られにくい。これに対して、本発明では、管材からなる第1支持部材の一方の端部が前側底板の上面に溶接されていてその溶接部分の少なくとも一部が上から見て旋回ベアリングの前側部分の配設領域内に位置するとともに、管材からなる第2支持部材の一方の端部が前側底板の上面に溶接されていてその溶接部分の少なくとも一部が上から見て旋回ベアリングの後側部分の配設領域内に位置するため、荷重の掛かる部分に溶接面積を集中することができる。その結果、本発明の旋回フレームでは、従来の旋回フレームに比べて側部構造体と底板との溶接面積が小さいわりに側部構造体と底板との必要な溶接強度を得ることができる。従って、本発明の旋回フレームでは、溶接作業にかかる作業負担を軽減しながら側部構造体と底板との必要な溶接強度を得ることができる。
以上のことから、本発明の旋回フレームでは、低重量ながら作業アタッチメントによる掘削時に掛かる荷重を十分に支持できる強度及び剛性を持ち、かつ、溶接作業にかかる作業負担を軽減しながら側部構造体と底板との必要な溶接強度が得られる。
また、上記従来の旋回フレームでは、強度及び剛性を確保するために前記2枚の縦板の板厚を大きくすると、それら縦板と底板の溶接強度を確保するために各縦板の下端部の外縁と内縁の両方を底板に溶接する必要が生じ、その内縁の溶接作業は2枚の縦板間の狭いスペースで行うこととなる。これに対して、本発明では、管材からなる第1支持部材及び第2支持部材の一端部の外縁を前側底板の上面に溶接するだけでよいので、その溶接作業は簡易な作業で済む。すなわち、本発明では、簡易な溶接作業で前側側部構造体と底板との溶接強度を確保できる。
上記ショベルの旋回フレームにおいて、前記後側フレーム部は、前記旋回フレームの幅方向に互いに間隔を置いて設けられ、前記左右の前側側部構造体のうち対応するものと接続された左右の後側側部構造体と、その左右の後側側部構造体を連結する連結材とを有し、前記各後側側部構造体は、前後方向に延びる管材からなり、前記第2支持部材の下端部に溶接された前端部とその前端部の後方で前記カウンタウェイトを下から支持するウェイト支持部とを有する第3支持部材と、一方向に延びる管材からなり、一方の端部が前記ウェイト支持部の前側の近傍の位置で前記第3支持部材に溶接され、他方の端部が一方の端部よりも前方でかつ上方の位置において前記第2支持部材の上端部に溶接されている第4支持部材とをそれぞれ有することが好ましい。
本願発明者は、鋭意検討した結果、旋回フレームにおいて後側フレーム部の後部上にカウンタウェイトを積載した場合、側部構造体のうち、カウンタウェイトを支持する部位から旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で底板に溶接された部位に亘る領域と、カウンタウェイトを支持する部位からブーム連結部へ向かって前方斜め上へ延びる領域と、旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から前方斜め上へ延びる領域と、旋回ベアリングの前側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から後方斜め上へ延び、カウンタウェイトの支持部位からブーム連結部へ向かって延びる領域と旋回ベアリングの後側部分の配設領域上から前方斜め上へ延びる領域との交点に繋がる領域とに大きな荷重が掛かるが、それ以外の領域にはあまり荷重が掛からないことを見出した。本願発明者は、この知見に基づいて、上記のように、前後方向に延びる管材からなる第3支持部材が、第2支持部材の下端部に溶接された前端部と、その前端部の後方でカウンタウェイトを下から支持するウェイト支持部とを有し、一方向に延びる管材からなる第4支持部材の一方の端部がウェイト支持部の前側の近傍の位置で第3支持部材に溶接され、その第4支持部材の他方の端部が一方の端部よりも前方でかつ上方の位置において第2支持部材の上端部に溶接されている左右の後側側部構造体を備えた旋回フレームを発明した。
この構成によれば、前記ウェイト支持部上にカウンタウェイトを積載した時に、側部構造体のうちウェイト支持部から旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で前側底板に溶接された部位に亘る領域に掛かる大きな荷重は、第3支持部材及び第2支持部材の下端部によって支えることができる。また、カウンタウェイトの積載により側部構造体のうちウェイト支持部からブーム連結部へ向かって延びる領域に掛かる大きな荷重は、第4支持部材によって支えることができる。また、カウンタウェイトの積載により側部構造体のうち旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で前側底板の上面に溶接された部位から前方斜め上へ延びる領域に掛かる大きな荷重は、前記第2支持部材によって支えることができる。また、カウンタウェイトの積載により、側部構造体のうち、旋回ベアリングの前側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から後方斜め上へ延び、ウェイト支持部からブーム連結部へ向かって延びる領域と旋回ベアリングの後側部分の配設領域上から前方斜め上へ延びる領域との交点に繋がる領域に掛かる大きな荷重は、前記第1支持部材によって支えることができる。従って、この構成によれば、カウンタウェイトによって付加される荷重に対する旋回フレームの強度及び剛性を確保することができる。
また、従来の旋回フレームでは、側部構造体が旋回ベアリングの後側部分と交差する位置において、その側部構造体の1枚の縦板が底板上に溶接されていて、悪路走行時に後部カウンタウェイトから側部構造体に揺動荷重が掛かった場合にその荷重が1枚の縦板から底板のうち当該縦板と旋回ベアリングの交差部位に位置する部分に集中的に荷重伝達されるのに対し、本構成では、カウンタウェイトによって付加される荷重が第3及び第4支持部材から管材である第1及び第2支持部材を通じて前側底板のうち側部構造体と旋回ベアリングとの交差部位に位置する部分に伝達される。従って、本構成では、カウンタウェイトによって付加される荷重を第1及び第2支持部材の管状の端部から前側底板のうち側部構造体と旋回ベアリングとの交差部位に位置する部分に分散しながら伝達することができる。その結果、本構成では、カウンタウェイトによる荷重が第3支持部材に掛かった場合でも、その荷重に起因して第1及び第2支持部材の端部と前側底板との溶接部に作用する応力を低減することができる。
また、従来の旋回フレームでは、カウンタウェイトによって付加される荷重の伝達経路に関係なく、均一な厚みの縦板を底板上に立設しているため、重量のわりにカウンタウェイトによる荷重に対する高い強度及び剛性が得られにくい。これに対して、本構成では、カウンタウェイトによって付加される荷重を高強度の旋回ベアリングに効率良く伝えるべく、その荷重の伝達経路に対応した形状で一方向に延びる中空の管材からなる第1〜第4支持部材を組み合わせることで、低重量ながらカウンタウェイトによる荷重を十分に支持できる強度及び剛性を持つ旋回フレームを構築できる。
また、従来の旋回フレームのように、側部構造体の2枚の縦板の後部領域から1枚の縦板の後端までに亘ってそれらの縦板の上縁に上板を溶接することにより、カウンタウェイトの積載によってウェイト支持部からブーム連結部側へ向かって延びる領域に掛かる荷重を支える構成では、上板を長大な範囲に亘って縦板の上縁に溶接する必要があり、その溶接作業にかかる作業負担が大きい。これに対して、本構成では、一方向に延びる管材からなる第4支持部材の一方の端部がウェイト支持部の前側の近傍において第3支持部材に溶接されるとともにその第4支持部材の他方の端部が第2支持部材の上端部に溶接されていて、この第4支持部材により、カウンタウェイトの積載によって側部構造体のうちウェイト支持部からブーム連結部へ向かって延びる領域に掛かる荷重を支えるようになっている。このため、第4支持部材を設置するために、管状の第4支持部材の一方の端部の外縁を第3支持部材に溶接するとともに他方の端部の外縁を第2支持部材の上部に溶接する作業を行うだけでよい。従って、本構成では、溶接作業にかかる作業負担を軽減しながら、カウンタウェイトの積載によって側部構造体のうちウェイト支持部からブーム連結部側へ延びる領域に掛かる荷重に対する強度及び剛性を確保することができる。
上記ショベルの旋回フレームにおいて、前記前側底板と前記旋回ベアリングの後側部分とは、ボルトで締結され、前記第2支持部材の前記一方の端部は、前記前側底板のうち前記旋回ベアリングの後側部分とボルトで締結される部位の周りを囲むようにその前側底板の上面に溶接されていることが好ましい。
例えば、側部構造体を構成する1枚の縦板の下端部が、底板のうち旋回ベアリングの後側部分に対する2箇所のボルト締結部間の領域の上面に溶接されている場合には、前記掘削時にブーム連結部に掛かる引っ張り力が縦板を介して底板のボルト締結部間に位置する部位に伝達され、この部位に亀裂等の損傷が生じる虞がある。これに対して、本構成では、一方向に延びる管材からなる第2支持部材の一方の端部が前側底板のうち旋回ベアリングの後側部分とボルトで締結される部位の周りを囲むようにその前側底板の上面に溶接されているため、上記の場合に比べて、前記掘削時に第2支持部材を通じて伝達される引っ張り力を底板のうち旋回ベアリングの後側部分に対する締結部の周りで分散することができる。このため、前記掘削時に掛かる荷重によって、前側底板のうち旋回ベアリングの後側部分に対する締結部の周りで前側側部構造体と溶接された部位に亀裂等の損傷が生じるのを抑制することができる。
また、本構成では、管材からなる第2支持部材の一方の端部の内側に複数のボルトが位置するとともにその一方の端部を挟んで両外側に2本のボルトが分かれて位置するように、前側底板と旋回ベアリングの後側部分とを締結するボルトを配設することが可能であり、この場合には、第2支持部材の一方の端部の内側に位置する各ボルトと外側に位置する各ボルトとによって前側底板から旋回ベアリングの後側部分への荷重伝達がなされ、各ボルトに掛かる負荷及び底板のうち各ボルトによって締結される各部位に掛かる負荷を小さくすることができる。
上記ショベルの旋回フレームにおいて、前記第1支持部材は、平面状の後面を有し、前記第2支持部材の前記他方の端部は、前記第1支持部材の前記他方の端部の後面に溶接されていることが好ましい。
第1支持部材の後面が曲面であって、その後面に第2支持部材の端部が溶接される場合には、第1支持部材の後面の曲面形状に沿って第2支持部材の端部の溶接作業を行う必要があり、その溶接作業が煩雑なものとなる。これに対して、本構成のように第1支持部材が平面状の後面を有していて、第2支持部材の前記他方の端部がこの第1支持部材の前記他方の端部の後面に溶接される場合には、第2支持部材の端部を平面に沿って溶接できるため、その溶接作業を容易に行うことができる。
上記各後側側部構造体が第3支持部材と第4支持部材を有する構成において、前記第2支持部材は、平面状の後面を有し、前記第3支持部材の前記前端部は、前記第2支持部材の前記一方の端部の後面に溶接されており、前記第4支持部材の前記他方の端部は、前記第2支持部材の前記他方の端部の後面に溶接されていることが好ましい。
第2支持部材の後面が曲面であって、その後面に第3支持部材の端部と第4支持部材の端部を溶接する場合には、第2支持部材の後面の曲面形状に沿って第3支持部材及び第4支持部材の端部の溶接作業を行う必要があり、その溶接作業が煩雑なものとなる。これに対して、本構成のように第2支持部材が平面状の後面を有していて、第3支持部材及び第4支持部材の端部がこの第2支持部材の後面に溶接される場合には、第3支持部材及び第4支持部材の端部を平面に沿って溶接できるため、その溶接作業を容易に行うことができる。
上記各後側側部構造体が第3支持部材を有する構成において、前記連結材は、前記左右の後側側部構造体の下側に配置されるとともに前記前側底板から後方へ延び、前記左右の後側側部構造体の下端部同士を連結する後側底板を含み、前記第3支持部材は、前記後側底板の上面に接触する平面状の下面と、その下面に対して略垂直な側面とを有し、その側面の下縁部が長手方向に沿って前記後側底板の上面に溶接されていることが好ましい。
第3支持部材の下面が曲面であって、その下面を第3支持部材の長手方向に沿って後側底板の上面に溶接する場合には、溶接不良が生じないように確実に溶接を行うことが難しくなる。これに対して、本構成では、第3支持部材が、後側底板に接触する平面状の下面と、その下面に略垂直な側面とを有しており、その側面の下縁部が長手方向に沿って後側底板の上面に溶接されるので、第3支持部材の側面が後側底板の上面に対して略垂直な状態でその側面の下縁部を長手方向に沿って後側底板の上面に溶接することができる。このため、本構成では、第3支持部材の下面が曲面状である場合に比べて、容易に第3支持部材を後側底板の上面に対して溶接不良が生じないように溶接することができる。
以上説明したように、本発明によれば、低重量ながら作業アタッチメントによる掘削時に掛かる荷重を十分に支持できる強度及び剛性を持ち、かつ、溶接作業にかかる作業負担を軽減しながら側部構造体と底板との必要な溶接強度が得られるショベルの旋回フレームを提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による旋回フレームが適用されるショベルの全体構成について説明する。
このショベルは、下部走行体102と、上部旋回体104とを備えている。
下部走行体102は、いわゆるクローラ式の走行体である。この下部走行体102は、下部フレーム102a(図2参照)と、左右のクローラフレーム102bと、左右のクローラ102cとを有する。下部フレーム102aの左右両側にクローラフレーム102bが取り付けられており、その各クローラフレーム102bの周りにクローラ102cがそれぞれ取り付けられている。そして、この下部走行体102では、左右のクローラ102cを周回移動させることによって走行を行う。
上部旋回体104は、旋回ベアリング105を介して下部走行体102上に搭載されている。この上部旋回体104は、縦軸回りに旋回可能となっている。上部旋回体104は、旋回フレーム2、図略の旋回モータ、作業アタッチメント106、ブーム起伏用シリンダ108、アーム駆動用シリンダ110、バケット駆動用シリンダ112、その他のショベルの構成部材を有している。
旋回フレーム2は、上部旋回体104のベースとなるフレームであり、上部旋回体104の下部に配設されている。この旋回フレーム2は、図略の旋回モータにより上部旋回体104に対して縦軸回りに旋回させられるように構成されている。
作業アタッチメント106は、地盤等の掘削を行うためのものである。この作業アタッチメント106は、ブーム106a、アーム106b及びバケット106cを有している。ブーム106aは、その基端部を中心として起伏自在に設けられる。アーム106bは、ブーム106aの先端に取り付けられており、バケット106cは、アーム106bの先端に取り付けられている。ブーム106aは、ブーム起伏用シリンダ108によって起伏動作させられる。アーム106bは、アーム駆動用シリンダ110によって駆動され、ブーム106aの先端部に対して揺動する。バケット106cは、バケット駆動用シリンダ112によって駆動され、アーム106bの先端部に対して揺動する。これら各シリンダ108,110,112の駆動により、ブーム106a、アーム106b及びバケット106cがそれぞれ動作し、それによってバケット106cにより掘削が行われる。
上部旋回体104の後部には、作業アタッチメント106による掘削時等の動作時に上部旋回体104に掛かる荷重に対してバランスを取るためのカウンタウェイト114が搭載されている。
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態による旋回フレーム2の詳細な構成について説明する。
本実施形態による旋回フレーム2は、上記したように上部旋回体104のベースとなるものであり、図2に示すように、下部走行体102の下部フレーム102a上に旋回ベアリング105を介して縦軸回りに旋回可能に設けられている。この旋回フレーム2は、前記作業アタッチメント106のブーム106aを起伏自在に支持するとともに、ブーム起伏用シリンダ108を支持する。
具体的には、旋回フレーム2は、前側フレーム部4と、後側フレーム部6とを有する。
前側フレーム部4は、旋回ベアリング105上に配設される部分であり、前記ブーム106a及び前記ブーム起伏用シリンダ108を支持する。この前側フレーム部4は、前側底板12と、左右の前側側部構造体14とを有する。
前側底板12は、平板状に形成されており、旋回ベアリング105を上から覆うようにその旋回ベアリング105上に固定される。具体的には、前側底板12は、図略の複数のボルトによって旋回ベアリング105の外輪部105aに締結されている。すなわち、前側底板12のうち旋回ベアリング105の外輪部105aの配設領域上には、その旋回ベアリング105の周方向に沿って複数の螺子穴12a(図4参照)が所定間隔で形成されている。この各螺子穴12aに対して下側から旋回ベアリング105を締結するための図略のボルトがそれぞれ螺合されるとともにその各ボルトが締め込まれることにより、前側底板12の下面と旋回ベアリング105の外輪部105aの上面とが接触した状態で前側底板12と旋回ベアリング105の外輪部105aが互いに締結される。
この前側底板12には、前記図略の旋回モータが搭載される。この旋回モータは、左右の前側側部構造体14の間の位置で前側底板12の後部領域にその駆動軸が当該前側底板12に対して垂直に配置されるように取り付けられる。旋回モータの駆動軸は、前側底板12の下方へ延び、その先端部に外歯歯車が設けられている。この外歯歯車は、旋回ベアリング105の内輪部105bの内周に配置された内歯歯車と噛み合うようになっている。旋回ベアリング105の内輪部105bは、下部走行体102の下部フレーム102a上に設けられている。そして、旋回モータが駆動することにより外歯歯車が内歯歯車に噛み合いながら回転し、それによって、旋回フレーム2及び旋回ベアリング105の外輪部105aが旋回ベアリング105の内輪部105b、換言すれば下部フレーム102aに対して旋回するようになっている。
左右の前側側部構造体14は、前記ブーム106a及び前記ブーム起伏用シリンダ108を支持する部分である。この左右の前側側部構造体14は、前側底板12上において旋回フレーム2の幅方向に互いに間隔を置いて設けられている。そして、左右の前側側部構造体14は、旋回フレーム2の幅方向の中心に対して互いに左右対称となるように構成されている。各前側側部構造体14は、第1支持部材16と、第2支持部材18と、シリンダ連結部20と、ブーム連結部22とを有する。
第1支持部材16は、一方向に延びる管材からなる。この管材は、本実施形態では、引抜き成形等によって一体的に形成された角形(正方形もしくは長方形)の断面を有する鋼管である。
第1支持部材16の一方の端部(下端部)は、前側底板12の上面に溶接されている。この第1支持部材16の下端部は、その外縁が前側底板12の上面に溶接されている。この溶接部分は、その全部が上から見て旋回ベアリング105の前側部分の配設領域内に位置している。なお、この溶接部分は、その少なくとも一部が上から見て旋回ベアリング105の前側部分の配設領域内に位置していればよい。この場合、当該溶接部分の中心位置が旋回ベアリング105の径方向における当該旋回ベアリング105の前側部分の幅の中心線上に位置することが、荷重を有効に支えるという観点からは好ましいが、当該溶接部分はそのような位置から前後方向もしくは旋回フレーム2の幅方向外側又は幅方向内側へ多少ずれた位置に配置されていてもよい。
また、第1支持部材16の他方の端部(上端部)は、前記下端部よりも後方でかつ上方に位置している。すなわち、第1支持部材16は、前側底板12に対する下端部の溶接部分から後方斜め上へ向かって直線的に延びている。この第1支持部材16の傾斜角度は、当該第1支持部材16に取り付けられるシリンダ連結部20とブーム連結部22の位置関係がシリンダ連結部20の後方でかつ上方にブーム連結部22が位置するような位置関係となるように設定されている。すなわち、第1支持部材16の傾斜角度は、ブーム起伏用シリンダ108とブーム106aの相対的な位置関係に従って設定されている。
また、第1支持部材16は、前後方向に傾斜しているとともに旋回フレーム2の幅方向に平行に配置された平面状の前面及び後面を有しているとともに、その前面及び後面と前側底板12の上面に対して垂直に配置された平面状の左右の両側面を有している。このため、第1支持部材16の前面及び後面を構成する2つの板状の部分の下端部が前側底板12に溶接された部分は、左右方向に延びている。これにより、当該第1支持部材16の前面及び後面を構成する2つの板状の部分は、前側底板12に左右方向についての曲げ荷重が掛かった場合にその荷重に対する前側底板12の強度及び剛性を向上させるための一種のリブとしての機能を有する。また、第1支持部材16の左右の両側面を構成する2つの板状の部分の下端部が前側底板12に溶接された部分は、前後方向に延びている。このため、当該第1支持部材16の左右の両側面を構成する2つの板状の部分は、前側底板12に前後方向についての曲げ荷重が掛かった場合にその荷重に対する前側底板12の強度及び剛性を向上させるための一種のリブとしての機能を有する。
第2支持部材18は、前記第1支持部材16と同様の一方向に延びる角形断面の鋼管からなる。この第2支持部材18の一方の端部(下端部)は、前記第1支持部材16の下端部の後方で前側底板12の上面に溶接されている。この第2支持部材18の下端部は、その外縁が前側底板12の上面に溶接されている。この溶接部分は、その全部が上から見て旋回ベアリング105の後側部分の配設領域内に位置している。なお、この溶接部分は、その少なくとも一部が上から見て旋回ベアリング105の後側部分の配設領域内に位置していればよい。この場合、当該溶接部分の中心位置が旋回ベアリング105の径方向における当該旋回ベアリング105の後側部分の幅の中心線上に位置することが、荷重を有効に支えるという観点からは好ましいが、当該溶接部分はそのような位置から前後方向もしくは旋回フレーム2の幅方向外側又は幅方向内側へ多少ずれた位置に配置されていてもよい。
そして、第2支持部材18の下端部は、前側底板12のうち旋回ベアリング105の後側部分と前記図略のボルトで締結される部位の周りを囲むように前側底板12の上面に溶接されている。具体的には、図4に示すように、第2支持部材18の下端部は、前側底板12のうち旋回ベアリング105の後側部分の上に配置された領域の隣り合う2つの螺子穴12aが上方から見て当該下端部の溶接部分の内側に入るように前側底板12の上面に溶接されている。
また、第2支持部材18の他方の端部(上端部)は、当該第2支持部材18の下端部よりも前方でかつ上方に位置している。すなわち、第2支持部材18は、前側底板12に対する下端部の溶接部分から前方斜め上へ向かって直線的に延びている。前側底板12の上面に対する第2支持部材18の傾斜角度と、前側底板12の上面に対する第1支持部材16の傾斜角度とは、図5に示すように、等しくなっている。そして、第2支持部材18の上端部は、第1支持部材16の上端部の後面に対して溶接されている。すなわち、第1支持部材16、第2支持部材18及び前側底板12は、側方から見て略二等辺三角形を構成するように配設されており、両支持部材16,18と前側底板12で囲まれた領域は、支持部材が設けられていない空間となっている。また、第2支持部材18の傾斜角度は、ブーム106aから後述するブーム連結部22に付加される力が当該第2支持部材18を介して旋回ベアリング105の後側部分へ伝達可能となる適切な角度に設定されている。
また、第2支持部材18は、前後方向において傾斜しているとともに旋回フレーム2の幅方向に平行に配置された平面状の前面及び後面を有しているとともに、その前面及び後面と前側底板12の上面に対して垂直に配置された平面状の左右の両側面を有している。このため、第2支持部材18の前面及び後面を構成する2つの板状の部分の下端部が前側底板12に溶接された部分は、左右方向に延びている。これにより、当該第2支持部材18の前面及び後面を構成する2つの板状の部分は、前側底板12に左右方向についての曲げ荷重が掛かった場合にその荷重に対する前側底板12の強度及び剛性を向上させるための一種のリブとしての機能を有する。また、第2支持部材18の左右の両側面を構成する2つの板状の部分の下端部が前側底板12に溶接された部分は、前後方向に延びている。このため、当該第2支持部材18の左右の両側面を構成する2つの板状の部分は、前側底板12に前後方向についての曲げ荷重が掛かった場合にその荷重に対する前側底板12の強度及び剛性を向上させるための一種のリブとしての機能を有する。
前記図略の旋回モータの駆動時には、その旋回トルクによって旋回モータの旋回軸がぶれを生じるような曲げ荷重が前側底板12に作用する。この際、左右の第1支持部材16及び第2支持部材18が上記のように前後方向及び左右方向についての曲げ荷重に対する前側底板12の剛性を向上させるリブとして機能することで、前記旋回トルクによる前側底板12の前後左右方向についての曲げ変形が抑制される。その結果、本実施形態では、側部構造体のうち底板の上面に溶接される部分が前後方向に延びる縦板のみによって形成されている旋回フレームに比べて、旋回モータの軸ぶれを抑制することができ、前側底板12に対するその旋回軸の垂直位置からのずれ角度を抑えることができる。
シリンダ連結部20は、前記ブーム起伏用シリンダ108の基端部と第1支持部材16の下端部とを連結するものである。このシリンダ連結部20は、作業アタッチメント106による掘削時にブーム起伏用シリンダ108から当該シリンダ連結部20に作用するそのシリンダ108の軸方向の押圧力が旋回ベアリング105の前側部分に伝達されるようにブーム起伏用シリンダ108の基端部と第1支持部材16の下端部とを連結する。
具体的には、シリンダ連結部20は、図3に示すように2枚の連結板20aからなる。2枚の連結板20aは、第1支持部材16のうち下端部から少し上側にかけての領域の前面に溶接されている。両連結板20aは、旋回フレーム2の幅方向に互いに間隔を置いて配置されており、第1支持部材16の前面に対して垂直に設けられている。両連結板20aには、同じ位置に孔部20bが形成されている。この両連結板20a間にブーム起伏用シリンダ108(図1参照)の基端部に設けられた図略の取付部が配置され、その状態で、両連結板20aの孔部20b及びシリンダ108の取付部の孔部に旋回フレーム2の幅方向に延びる図略のシリンダ取付ピンが挿嵌されることによって、シリンダ連結部20にブーム起伏用シリンダ108が結合される。
シリンダ連結部20の両連結板20aには、作業アタッチメント106による地面等の掘削時に、ブーム起伏用シリンダ108から前記図略のシリンダ取付ピンを介してブーム起伏用シリンダ108の軸方向に沿った後方斜め下へ向かう押圧力(図5参照)が作用する。この押圧力は、両連結板20aから第1支持部材16の下端部及び前側底板12のうち第1支持部材16の下端部が溶接された部位を介して、旋回ベアリング105の前側部分に伝達される。
ブーム連結部22は、前記ブーム106aの基端部と第1支持部材16の上端部とを連結するものである。このブーム連結部22は、作業アタッチメント106による掘削時にブーム106aから当該ブーム連結部22に作用する引っ張り力が第1支持部材16の上端部と第2支持部材18を介して旋回ベアリング105の後側部分に伝達するようにブーム106aの基端部と第1支持部材16の上端部とを連結する。
具体的には、ブーム連結部22は、図3に示すように、1枚の連結板22aからなる。この連結板22aは、第1支持部材16のうち上端部から当該第1支持部材16の長手方向の中央部近傍に亘る領域の前面に溶接されている。連結板22aは、第1支持部材16の前面のうち旋回フレーム2の幅方向において外縁近傍の位置に溶接されており、第1支持部材16の前面に対して垂直に設けられている。この連結板22aには、孔部22bが形成されている。孔部22bは、その中心が側方から見て第2支持部材18の中心線(第2支持部材18の長手方向に延びる中心線)の延長線上に位置するように配設されている。そして、左右の前側側部構造体14の連結板22a間にブーム106a(図1参照)の基端部に設けられた図略の取付部が配置され、その状態で、左右の連結板22aの孔部22b及びブーム106aの取付部の孔部に旋回フレーム2の幅方向に延びる図略のブーム取付ピンが挿嵌されることによって、左右のブーム連結部22にブーム106aが結合される。
ブーム連結部22の連結板22aには、作業アタッチメント106による地面等の掘削時に、前記図略のブーム取付ピンを介してブーム106aから前方斜め上へ向かう引っ張り力(図5参照)が作用する。この引っ張り力は、連結板22aから第1支持部材16の上端部、第2支持部材18及び前側底板12のうち第2支持部材18の下端部が溶接された部位を介して、旋回ベアリング105の後側部分に伝達される。また、この引張り力の向かう方向の傾斜角度が第2支持部材18の傾斜角度よりも小さい場合には、第1支持部材16に対してその長手方向で下方へ向かう力が作用する。
後側フレーム部6(図3参照)は、前側フレーム部4の後側に接続されている。この後側フレーム部6は、その後部においてカウンタウェイト114を下から支持する。また、後側フレーム部6には、カウンタウェイト114以外の他の構成部材が種々搭載される。後側フレーム部6は、左右の後側側部構造体34と、連結材35とを有する。
左右の後側側部構造体34は、旋回フレーム2の幅方向に互いに間隔を置いて設けられている。各後側側部構造体34は、左右の前側側部構造体14の対応するものと溶接されて一体となっている。そして、左右の後側側部構造体34は、旋回フレーム2の幅方向の中心に対して互いに対称となるように構成されている。各後側側部構造体34は、第3支持部材40と、第4支持部材42とを有する。
第3支持部材40は、前後方向に延びる管材からなる。本実施形態では、この第3支持部材40を構成する管材は、角形(長方形又は正方形)の断面を有する鋼管である。第3支持部材40は、第2支持部材18の下端部の後面に溶接された前端部を有する。また、第3支持部材40は、前端部の後方でカウンタウェイト114を下から支持するウェイト支持部40bを有する。このウェイト支持部40bは、第3支持部材40のうち後端部近傍の部分からなる。第3支持部材40は、連結材35の後述する後側底板32の上面に接触する平面状の下面を有する。当該第3支持部材40の上面及び下面は、後述する後側底板32の上面に平行な平面であり、当該第3支持部材40の左右の両側面は、当該第3支持部材40の上下面及び後述する後側底板32の上面に対して垂直な平面である。
第4支持部材42は、一方向に延びる管材からなる。本実施形態では、この第4支持部材42を構成する管材は、角形(長方形又は正方形)の断面を有する鋼管である。そして、第4支持部材42の一方の端部は、ウェイト支持部40bの前側の近傍の位置で第3支持部材40の上面に溶接されている。この一方の端部は、その外縁が第3支持部材40の上面に溶接されている。また、第4支持部材42の他方の端部は、一方の端部よりも前方でかつ上方の位置において第2支持部材18の上端部の後面に溶接されている。すなわち、第4支持部材42は、第3支持部材40に対する溶接部分から前方斜め上へ向かって直線的に延びている。また、第4支持部材18は、前後方向において傾斜しているとともに旋回フレーム2の幅方向に平行に配置された平面状の上面及び下面を有しているとともに、その上下面及び後述する後側底板36の上面に対して垂直に配置された平面状の左右の両側面を有している。
連結材35は、左右の後側側部構造体34を連結するものである。この連結材35は、後側底板36と、立設部37とを有する。
後側底板36は、左右の後側側部構造体34の下側に配置されており、前側底板12の後端から後方へ延びる平板である。この後側底板36は、左右の後側側部構造体34の下端部同士を連結している。具体的には、左右の後側側部構造体34の第3支持部材40が後側底板36上に載置された状態で溶接されている。各後側側部構造体34の第3支持部材40のうち旋回フレーム2の幅方向内側に位置する側面の下縁が、その長手方向(前後方向)に沿って後側底板36の上面に溶接されている。
立設部37は、図3に示すように、後側底板36上に立設されているとともに、左右の第3支持部材40のウェイト支持部40b同士を連結している。この立設部37は、平板からなり、左右の第3支持部材40の間で旋回フレーム2の幅方向に延びるとともに後側底板32の上面に対して垂直に配置されている。そして、立設部37の左右の端部は、左右の第3支持部材40の対向する側面のうち対応する側面に溶接されている。また、立設部37の下端部は、その長手方向に沿って後側底板36の上面に溶接されている。
次に、本実施形態によるショベルの旋回フレーム2の効果を調べるために行った各種シミュレーションについて説明する。
まず、作業アタッチメントによる掘削時とショベルがカウンタウェイトを積載した状態でラフロード走行を行った時とにそれぞれ旋回フレームの側部構造体にどのような荷重が作用するかについて調べるためのシミュレーションを行った。このシミュレーションは、側部構造体が側方から見てそのほぼ全面をカバーするように配置された1枚の縦板を有する旋回フレームを対象として行った。図6には、作業アタッチメントによる掘削時についてのシミュレーション結果が示されており、図7には、カウンタウェイトを積載した状態でラフロード走行を行った時についてのシミュレーション結果が示されている。なお、図6において、二点鎖線で囲まれた比較的色の濃い領域Aが大きな荷重が作用する領域であり、その領域A以外の領域はあまり荷重が作用しない領域である。図7においても同様に、二点鎖線で囲まれた比較的色の濃い領域Bが大きな荷重が作用する領域であり、その領域B以外の領域はあまり荷重が作用しない領域である。
図6の結果から、作業アタッチメントによる掘削時には、側部構造体のうち、旋回ベアリングの前側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から後方斜め上へ延びるとともにブーム連結部及びシリンダ連結部と繋がる領域と、旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から前方斜め上へ延びてブーム連結部へ至る領域とに大きな荷重が作用するが、それ以外の領域にはあまり荷重が作用しないことが判る。
また、図7の結果から、ショベルがカウンタウェイトを積載した状態でラフロード走行を行う時には、側部構造体のうち、カウンタウェイトの支持部から側部構造体の下縁に沿って旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位に亘る領域と、カウンタウェイトの支持部からブーム連結部側へ向かって延びる領域と、旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から前方斜め上へ延びる領域と、旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で底板の上面に溶接された部位から後方斜め上へ延び、カウンタウェイトの支持部からブーム連結部側へ延びる領域と旋回ベアリングの後側部分の配設領域上から前方斜め上へ延びる領域との交点に繋がる領域とに大きな荷重が作用するが、それ以外の領域にはあまり荷重が作用しないことが判った。
そして、図6のシミュレーション結果と図7のシミュレーション結果とを合成した結果が図8に示されている。側部構造体のうち当該図8に示す二点鎖線又は破線で囲まれた比較的色の濃い領域には、作業アタッチメントによる掘削とカウンタウェイトの積載のいずれかに起因して大きな荷重が作用する一方、それ以外の領域には、それらの両方の要因による荷重があまり作用しない。本願発明者は、この結果に基づいて、作業アタッチメントによる掘削によって作用する荷重とカウンタウェイトの積載によって作用する荷重とを支え得るように前記第1〜第4支持部材16,18,40,42を配置した上記実施形態の旋回フレーム2を構成した。すなわち、作業アタッチメントによる掘削時にかかる荷重とカウンタウェイトによって付加される荷重を高強度の旋回ベアリングに効率良く伝達できるように、その荷重の伝達経路に対応した形状で上記したように第1〜第4支持部材16,18,40,42を組み合わせた。
また、側方から見て側部構造体のほぼ全面をカバーするように設けられた縦板とその縦板の上縁に垂直となるように溶接された上板とを有する比較例の旋回フレームと、上記実施形態と同様の構成の旋回フレームとについて、前記掘削時に掛かる荷重に起因して旋回フレームに生じる応力にどのような差異が生じるかを調べるためのシミュレーションを行った。このシミュレーションの結果のうち前記比較例についての結果が図9に示されており、本実施形態についての結果が図10に示されている。
図9に示す比較例による旋回フレームでは、底板のうち旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で側部構造体の縦板と溶接されている部位の近傍の領域Cに大きな応力が生じることが判った。これに対して、図10に示す上記実施形態にかかる旋回フレームでは、底板のうち旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で前側側部構造体の第2支持部材の下端部と溶接されている部位の近傍の領域に応力は生じるものの、その応力の値は、図9の比較例の対応する領域Cに生じる応力の値に対してほぼ半減していることが判った。これは、上記実施形態では、第2支持部材が管材からなっていることに起因して、旋回ベアリングの後側部分の配設領域上において前側底板の上面に溶接される第2支持部材の端部の溶接面積は、比較例の旋回フレームのように旋回ベアリングの後側部分の配設領域上を横切る縦板の下端部が前記配設領域上で底板の上面に溶接された溶接面積に比べて、大きくなり、その結果、当該溶接部分において上記実施形態では比較例に比べて荷重の分散が図られたためと考えられる。この結果から、上記実施形態の旋回フレームによれば、底板のうち旋回ベアリングの後側部分の配設領域上で第2支持部材の下端部と溶接された部位の近傍において、前記掘削時に掛かる荷重に起因して亀裂等の損傷が生じるのを抑制可能であることが判明した。
以上説明したように、本実施形態によるショベルの旋回フレーム2では、作業アタッチメント106による掘削時に、ブーム起伏用シリンダ108からシリンダ連結部20に作用する押圧力をシリンダ連結部20から第1支持部材16の下端部を介して旋回ベアリング105の前側部分に伝達することができるとともに、ブーム106aからブーム連結部22に作用する引っ張り力をブーム連結部22から第1支持部材16の上端部及び第2支持部材18を介して旋回ベアリング105の後側部分に伝達することができる。このため、作業アタッチメント106による掘削時に旋回フレーム2に掛かる荷重を前側側部構造体14において支えることができる。その結果、本実施形態の旋回フレーム2では、作業アタッチメント106による掘削時に掛かる荷重に対する強度及び剛性を確保することができる。
また、本実施形態の旋回フレーム2では、作業アタッチメント106による掘削時にブーム起伏用シリンダ108及びブーム106aに作用する力(荷重)を高強度の旋回ベアリング105に効率良く伝えるべく、その力の伝達経路に対応した形状で一方向に延びる中空の管材からなる第1支持部材16と第2支持部材18を組み合わせているため、低重量ながらブーム起伏用シリンダ108及びブーム106aに作用する力を十分に支持できる強度及び剛性を持つ旋回フレーム2となる。また、本実施形態では、前側側部構造体14のうち前記掘削時にあまり荷重が掛からない領域には支持部材が配置されていないので、材料コストの削減を図ることができる。
また、本実施形態では、第1支持部材16及び第2支持部材18が管材からなることに起因して、それら両支持部材16,18の管状の端部から前側底板12へ荷重を分散しながら伝達することができる。その結果、本実施形態では、ブーム106aから前側側部構造体14に前方斜め上へ向かう引っ張り荷重が掛かった場合や、ショベルが悪路を走行する時等に後側側部構造体34にカウンタウェイト114から上下の揺動荷重が掛かった場合に、それらの荷重に起因して第1支持部材16及び第2支持部材18の端部と前側底板12との溶接部に作用する応力を低減することができる。
また、本実施形態では、一方向に延びる管材からなる第1支持部材16及び第2支持部材18の一方の端部が前側底板12の上面に溶接されていて、その第1支持部材16の溶接部分の少なくとも一部が上から見て旋回ベアリング105の前側部分の配設領域内に位置するとともに、その第2支持部材18の溶接部分の少なくとも一部が上から見て旋回ベアリング105の後側部分の配設領域内に位置するため、荷重のかかる部分に溶接面積を集中することができる。その結果、本実施形態では、前側側部構造体14と前側底板12との溶接面積が小さいわりに前側側部構造体14と前側底板12との必要な溶接強度を得ることができる。すなわち、本実施形態では、溶接作業にかかる作業負担を軽減しながら、前側側部構造体14と前側底板12との必要な溶接強度を得ることができる。
また、本実施形態では、管状の両支持部材16,18の一方の端部をその外縁に沿って前側底板12の上面に容易に溶接することができ、簡易な溶接作業で両支持部材16,18の前側底板12に対する溶接強度を確保できる。
また、本実施形態では、ウェイト支持部40b上にカウンタウェイト114を積載した時に、側部構造体34,14のうちウェイト支持部40bから旋回ベアリング105の後側部分の配設領域上で前側底板12に溶接された部位に亘る領域に掛かる大きな荷重は、第3支持部材40と第2支持部材18の下端部とによって支えることができる。また、カウンタウェイト114により側部構造体34,14のうちウェイト支持部40bからブーム連結部22へ向かって延びる領域に掛かる大きな荷重は、第4支持部材42によって支えることができる。また、カウンタウェイト114の積載により側部構造体34,14のうち旋回ベアリング105の後側部分の配設領域上で前側底板12の上面に溶接された部位から前方斜め上へ延びる領域に掛かる大きな荷重は、第2支持部材18によって支えることができる。また、カウンタウェイト114の積載により、前側側部構造体14のうち、旋回ベアリング105の前側部分の配設領域上で前側底板12の上面に溶接された部位から後方斜め上へ延び、ウェイト支持部40bからブーム連結部22へ向かって延びる領域と旋回ベアリング105の後側部分の配設領域上から前方斜め上へ延びる領域との交点に繋がる領域に掛かる大きな荷重は、第1支持部材16によって支えることができる。従って、本実施形態では、カウンタウェイト114の積載によって掛かる荷重に対する旋回フレーム2の強度及び剛性を確保することができる。
そして、本実施形態では、カウンタウェイト114によって付加される荷重を高強度の旋回ベアリング105に効率良く伝えるべく、その荷重の伝達経路に対応した形状で一方向に延びる中空の管材からなる各各支持部材16,18,40,42が組み合わされているため、低重量ながらカウンタウェイト114による荷重を十分に支持できる強度及び剛性を持つ旋回フレーム2となる。また、本実施形態では、カウンタウェイト114による荷重があまり作用しない領域には支持部材が配置されていないため、材料コストの削減を図ることができる。
また、本実施形態では、一方向に延びる管材からなる第4支持部材42の一方の端部がウェイト支持部40bの前側の近傍の位置において第3支持部材40に溶接されるとともにその第4支持部材42の他方の端部が第2支持部材18の上端部に溶接されていて、この第4支持部材42により、カウンタウェイト114の積載によって側部構造体34,14のうちウェイト支持部40bからブーム連結部22へ向かって延びる領域に掛かる荷重を支えるようになっている。このため、本実施形態では、第4支持部材42を設置するために、管状の第4支持部材42の一方の端部の外縁を第3支持部材40に溶接するとともに他方の端部の外縁を第2支持部材18の上部に溶接する作業を行うだけでよい。従って、本実施形態では、溶接作業にかかる作業負担を軽減しながら、カウンタウェイト114の積載によって側部構造体34,14のうちウェイト支持部40bからブーム連結部22側へ延びる領域に掛かる荷重に対する強度及び剛性を確保することができる。
また、本実施形態では、一方向に延びる管材からなる第2支持部材18の一方の端部が前側底板12のうち旋回ベアリング105の後側部分とボルトで締結される部位の周りを囲むようにその前側底板12の上面に溶接されているため、前記掘削時に第2支持部材18を通じて伝達される引張り力を前側底板12のうち旋回ベアリング105の後側部分に対する締結部の周りで分散することができる。このため、前記掘削時に掛かる荷重によって、前側底板12のうち旋回ベアリング105の後側部分に対する締結部の周りで前側側部構造体14と溶接された部位に亀裂等の損傷が生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、管材からなる第2支持部材18の一方の端部の内側に2本のボルトが位置するとともにその第2支持部材18の一方の端部を挟んで両外側に2本のボルトが分かれて位置するように、前側底板12と旋回ベアリング105の後側部分とを締結するボルトを配設することが可能である(図4参照)。このため、第2支持部材18の一方の端部の内側に位置する各ボルトと外側に位置する各ボルトとによって前側底板12から旋回ベアリング105の後側部分への荷重伝達がなされ、各ボルトに掛かる負荷及び前側底板12のうち各ボルトによって締結される各部位に掛かる負荷を小さくすることができる。
また、本実施形態では、第1支持部材16が平面状の後面を有していて、第2支持部材18の上端部が第1支持部材16の上端部の後面に溶接されるため、第2支持部材18の上端部を平面に沿って溶接できる。このため、その溶接作業を容易に行うことができる。
また、本実施形態では、第2支持部材18が平面状の後面を有していて、第3支持部材40及び第4支持部材42の端部がこの第2支持部材18の後面に溶接されるため、第3支持部材40及び第4支持部材42の端部を平面に沿って溶接できる。このため、その溶接作業を容易に行うことができる。
また、本実施形態では、第3支持部材40が後側底板32の上面に接触する平面状の下面とその下面に略垂直な両側面とを有しており、当該第3支持部材40のうち旋回フレーム2の幅方向内側に位置する側面の下縁が長手方向に沿って後側底板32の上面に溶接されるので、第3支持部材の側面が後側底板の上面に対して略垂直な状態でその側面の下縁部を長手方向に沿って後側底板の上面に溶接することができる。このため、本構成では、第3支持部材の下面が曲面状である場合に比べて、容易に第3支持部材を後側底板の上面に対して溶接不良が生じないように溶接することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、旋回フレーム2のうち後側側部構造体34のみを上記実施形態で示した構造以外の構造としてもよい。具体的には、従来の旋回フレームのような縦板を前側側部構造体14の第2支持部材18の後ろに取り付けてもよい。また、それ以外の種々の構造の後側側部構造体を設けてもよい。
また、第1〜第4支持部材を構成する管材は、角形の鋼管に限定されない。例えば、第1〜第4支持部材を構成する管材は、円形の断面を有する管材や、その他の断面形状を有する管材であってもよい。
また、第1〜第4支持部材に用いられる管材は、一体成形された管材に限定されない。例えば、図11に示すように、C形鋼の開口部を形成する両端縁に平板状の鋼板をあてがってそのC形鋼の両端縁の外側と対応する鋼板の端部とをそれぞれ溶接することにより角形断面を有する管材を形成し、その管材を第1〜第4支持部材に用いてもよい。この場合には、C形鋼の肉厚と鋼板の厚みとを互いに異ならせることができる。また、図12に示すように、2つのL形鋼を互いに組み合わせて溶接することにより角形断面を有する管材を形成し、その管材を第1〜第4支持部材に用いてもよい。この場合には、一方のL形鋼の肉厚と他方のL形鋼の肉厚を互いに異ならせることができる。そして、これらのような構成では、1つの支持部材を構成する板状の部分のうち、大きな荷重を受ける板状の部分に一定の肉厚を確保するとともに、それ以外のあまり荷重を受けない部分の肉厚を小さくすることができる。その結果、さらなる軽量化を図りつつ、強度及び剛性を確保することが可能となる。