JP2011236316A - プリント配線板用熱硬化性樹脂組成物並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板 - Google Patents

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Abstract

【課題】高周波帯域での良好な誘電特性とその優れた低吸湿依存特性を備え、伝送損失を有意に低減可能であり、また吸湿耐熱性、熱膨張特性に優れ、しかも金属箔との間の引き剥がし強さを満足させるプリント配線板を製造可能な熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】未硬化のセミIPN型複合体と表面処理された無機充填剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、該複合体が(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤から形成されるプレポリマーと、が相容化した未硬化のセミIPN型複合体であり、該無機充填剤を処理する表面処理剤が特定のケイ素系化合物の群から選ばれる一種である熱硬化性樹脂組成物並びにそれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリント配線板用樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関し、特に特定のシラン系又はシリコーン系表面処理剤で表面処理された無機充填剤を更に含有する熱硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、動作周波数が1GHzを超える高周波域を利用する電子機器に好適な新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリント配線板用樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー及びルーター等のネットワーク関連電子機器、並びに大型コンピュータ等では、大容量の情報の伝送・処理を、低損失かつ高速で行なうことが要求されている。大容量の情報の伝送・処理は、電気信号が高周波数であればより高速化できる。ところが、電気信号は、基本的に高周波であるほど減衰しやすくなる、すなわちより短い伝送距離で出力が弱くなりやすく、損失が大きくなりやすい性質を有する。したがって、低損失かつ高速という上述の要求を満たすためには、伝送・処理を司る、機器搭載のプリント配線板自体の特性において、伝送損失、特に高周波帯域での伝送損失を一層低くする必要がある。
このような低伝送損失のプリント配線板を得るために、従来、比誘電率及び誘電正接の低いフッ素系樹脂を使用した基板材料が使用されてきた。しかしながら、フッ素系樹脂は一般に溶融温度及び溶融粘度が高く、その流動性が比較的低いため、プレス成形条件が時に高温高圧となるという問題点がある。しかも、上述の用途、通信機器、ネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等に使用される高多層のプリント配線板用途に使用するには、加工性、寸法安定性及び金属めっきとの接着性が充分ではないという問題点もある。
そのため、フッ素系樹脂に替わる、高周波用途に対応するためのプリント配線板用樹脂材料が研究されている。ポリフェニレンエーテルは、耐熱性ポリマーの中で最も誘電特性が優れる樹脂の1つとして知られ、これを使用することが注目されている。しかし、ポリフェニレンエーテルは、フッ素系樹脂と同様に溶融温度及び溶融粘度が高い熱可塑性樹脂である。そのため、従来からプリント配線板用途には、溶融温度及び溶融粘度を低くさせ、プレス成形時に温度圧力条件を低く設定させるため、或いは、ポリフェニレンエーテルの溶融温度(230〜250℃)以上での耐熱性を付与する目的で、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性樹脂とを併用した樹脂組成物が用いられてきた。
例えば、エポキシ樹脂を併用した樹脂組成物(特許文献1参照)、ビスマレイミドを併用した樹脂組成物(特許文献2参照)、シアネートエステルを併用した樹脂組成物(特許文献3参照)、スチレン−ブタジエン共重合体又はポリスチレンと、トリアリルシアヌレート又はトリアリルイソシアヌレートとを併用した樹脂組成物(特許文献4〜5参照)、ポリブタジエンを併用した樹脂組成物(特許文献6及び特許文献7参照)、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基等の官能基を有する変性ポリブタジエンとビスマレイミド及び/又はシアネートエステルとを予備反応させた樹脂組成物(特許文献8参照)、不飽和二重結合基を有する化合物を付与又はグラフトさせたポリフェニレンエーテルに上記トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートや上記ポリブタジエン等を併用した樹脂組成物(特許文献9及び特許文献10参照)、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物との反応生成物と上記ビスマレイミド等を併用した樹脂組成物(特許文献11参照)、末端に不飽和二重結合基を有し、かつ低分子量(オリゴマー)タイプのポリフェニレンエーテルオリゴマーにポリブタジエン又はスチレン−ブタジエン共重合体を併用した樹脂組成物(特許文献12参照)が提案されている。
これらの文献には、ポリフェニレンエーテルの低伝送損失性を保ちつつ、上述したプレス成形時に高温高圧条件を必要とする熱可塑性樹脂組成物の欠点を改善するには、硬化後の熱可塑性樹脂組成物中に極性基が多くないことが好ましいことが開示されている。
しかし、誘電率を高め、誘電正接を低減するような誘電特性の改善を目的として、誘電体粉末を含有させることが提案されている。そして、誘電体粉末の表面の接着性を制御するために表面処理を行うことが検討されており、アミノ及び/又はアクリル系シランカップリング剤のような特定のシランカップリング剤については、誘電特性のドリフトが抑えられるとともに、耐熱性及び寸法安定性が得られることが公知である(特許文献13参照)。また、ビニル基含有シランカップリング剤は、金属箔との間の引き剥がし強さを高くできることが公知である(特許文献15)。
無機誘電体粉末を含有する系としては、ポリフェニレンオキサイド系樹脂組成物(特許文献13参照)及びポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(特許文献14参照)等が提案されている。
特開昭58−69046号公報 特開昭56−133355号公報 特公昭61−18937号公報 特開昭61−286130号公報 特開平3−275760号公報 特開昭62−148512号公報 特開昭59−193929号公報 特開昭58−164638号公報 特開平2−208355号公報 特開平6−184213号公報 特開平6−179734号公報 特開2005−105061号公報 特開平6−52716号公報 特開2005−105062号公報 特開2008−133414号公報
本発明者らは、特許文献1〜15に記載されたものを始めとする、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性樹脂とを併用した樹脂組成物など、そのプリント配線板用積層板用途への適用性について詳細に検討した。
その結果、特許文献1、特許文献2及び特許文献11に示されている樹脂組成物では、極性の高いエポキシ樹脂及びビスマレイミドの影響により、硬化後の誘電特性が悪化するため、高周波用途には不適であった。
特許文献3に示されているシアネートエステルを併用した組成物では、誘電特性は優れるものの、吸湿後の耐熱性が低下した。
特許文献4〜5、特許文献9及び特許文献10に示されているトリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを併用した組成物では、比誘電率がやや高いことに加え、誘電特性の吸湿に伴うドリフトが大きいという傾向が見られた。
特許文献4〜7及び特許文献10に示されているポリブタジエンを併用した樹脂組成物では、誘電特性は優れるものの、樹脂自体の強度が低いことや熱膨張係数が高いという問題があるため、高多層用のプリント配線板用途には不適切であった。
特許文献8は、金属、ガラス基材との接着性を改善する目的で、変性ポリブタジエンを併用した樹脂組成物である。しかし、変性されていないポリブタジエンを用いた場合に比べて誘電特性が、特に1GHz以上の高周波領域において大幅に悪化するという問題があった。
特許文献11に示されているポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物との反応生成物を用いた組成物では、極性の高い不飽和カルボン酸や不飽和酸無水物の影響により通常のポリフェニレンエーテルを用いた場合よりも誘電特性が悪化する。
特許文献12に示されている末端に不飽和二重結合基を有し、かつ低分子量(オリゴマー)タイプのポリフェニレンエーテルオリゴマーにポリブタジエン等の熱硬化性樹脂を併用した組成物では、硬化性ポリフェニレンエーテルオリゴマー自体が、通常のポリフェニレンエーテルに対してのみならず、ポリブタジエン単独樹脂硬化物と比べても誘電特性が悪く、ポリフェニレンエーテルとしての良好な誘電特性が損なわれているため、通常のポリフェニレンエーテルを用いた場合よりも硬化組成物の誘電特性が悪化する。これに加えて、この硬化性ポリフェニレンエーテルオリゴマーは通常のポリフェニレンエーテルよりも大幅にコスト高となる。
一方、特許文献13及び特許文献14に示されているように、ポリフェニレンエーテルや特許文献12の硬化性ポリフェニレンエーテルオリゴマーに、上記トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリブタジエン等を併用した樹脂系に、アクリル系及び/又はアミノ系のシランカップリング剤で処理した無機充填剤を配合した組成物では、所望の無機充填剤の併用により比誘電率の制御や耐熱性の向上が期待され、かつ上記シランカップリング剤の添加により樹脂と無機充填剤との接着性は確保される。
しかし、これらシランカップリング剤はアミノ基やアクリル基の極性が高いため、1GHzを超える高周波帯域において、誘電特性(特に吸湿後)が悪化するという問題を本発明者らは見出した。そして、ビニル基含有シランカップリング剤についても、誘電特性(特に吸湿後)が悪化するという問題を本発明者らは見出した。同様に、特許文献15記載の樹脂組成物は前述した熱可塑性の欠点が改善され、かつ誘電特性にも優れたポリフェニレンエーテルを含有する熱硬化性樹脂組成物であるが、本発明者らの検討ではこの樹脂組成物は上記吸湿ドリフトの要求に対して充分ではないことを見出した。
また、吸湿ドリフトについては、携帯電話基地局アンテナなどの用途では、85℃85%RH程度の穏やかな条件で吸湿を行い、吸湿後の誘電率や誘電正接の変化(吸湿ドリフト)が一定レベル以下でなければならないという要求がある。例えば、通常、配線板はある特定の周波数帯で電気信号が共振するようにパターン設計される。電気信号の共振を、縦軸に信号強度、横軸に周波数をとって、ある周波数ωのところに信号強度のピークとして捉えた時、誘電率Dkが変動するとピークが左右にずれるので、ωのところでは利得が減少する。また、誘電正接Dfが変動するとピークの幅が広がるので、エネルギー保存則にしたがってピークの高さは低くなる。すなわち、吸湿によってDkが変わると共振の大きさが低下し、受信できる信号レベルが低下する。Dfが変わると同様に共振の大きさが低下し、受信できる信号レベルが低下し、更に共振の信号ピークが広がり、電気信号の減衰が大きくなる。このように吸湿により伝送損失は増大する。
しかし、携帯電話基地局アンテナなどのような屋外で使用する場合は吸湿が避けられないため、上記の吸湿によるDk及びDfの変動(ΔDk及びΔDf)は大きな問題になると考えられる。
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するため、特に高周波帯域での良好な誘電特性を備え、かつ吸湿時での誘電特性の変化(ΔDk及びΔDf)が小さく、伝送損失を有意に低減することができ、また、吸湿耐熱性、熱膨張特性に優れ、しかも金属箔との間の引き剥がし強さを満足させるプリント配線板を製造することができる熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板を提供することを目的とする。これらの特性は、屋外使用において特に重要である。
本発明者らは、ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物について、上記課題を解決できるよう鋭意研究を重ねた結果、ポリフェニレンエーテルと化学変性されていないブタジエンポリマー及び架橋剤のプレポリマーが相容化した未硬化のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーから形成されるセミIPN型複合体と、耐吸湿性に優れた特定のシラン系表面処理剤又はシリコーン系表面処理剤で表面処理した無機充填剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物を見出した。
そして、本発明者らは、この樹脂組成物をプリント配線板用途に用いる場合、高周波帯域での良好な誘電特性と低吸湿依存特性のため、伝送損失の低減に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)
未硬化のセミIPN型複合体と表面処理された無機充填剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤から形成されるプレポリマーと、が相容化した未硬化のセミIPN型複合体であり、
表面処理された無機充填剤を処理する表面処理剤が、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、トリス(トリアルキルシロキシ)シラン、式(D−1):
(式中、R及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

のうちのいずれかであり、aは、1以上の整数であり、nは、1以上の整数である)
で表されるシリコーンオリゴマー、式(D−2):

(式中、R、R、a及びnは、上記と同義であり、
、R、R、R、R及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

のうちのいずれかである)
で表されるシリコーンオイル、及び式(D−3):

(式中、R、R、R、R、R、R、a及びnは、上記と同義であり、
及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

のうちのいずれかであり、bは、1以上の整数であり、cは、1以上の整数であり、dは、1以上の整数である)
で表されるシリコーンコーティング剤からなる群より選択される少なくとも一種の表面処理剤である、熱硬化性樹脂組成物。
(2)
未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)ブタジエンポリマー及び(C)架橋剤がラジカル重合したラジカル重合性重合体と、からなり、
(B)が、−〔CH−CH=CH−CH〕−単位(j)及び−〔CH−CH(CH=CH)〕−単位(k)からなる化学変性されていないブタジエンポリマーであり、j:kの比が60〜5:40〜95であり、
(C)が、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である、(1)の熱硬化性樹脂組成物。
(3)
未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤を予備反応させて得られる、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーである、(1)の熱硬化性樹脂組成物。
(4)
未硬化のセミIPN型複合体を、(C)成分の転化率が5〜100%の範囲となるように予備反応させて得る、(3)記載の熱硬化性樹脂組成物。
(5)
(D)表面処理された無機充填剤に用いられる無機充填剤が、酸化アルミニウム、酸化チタン、マイカ、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一種の無機充填剤である、(1)〜(4)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(6)
無機充填剤が平均粒子径0.01〜30μmの球形酸化ケイ素である、(1)〜(5)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(7)
(D)成分に用いられる表面処理剤が、C〜C15アルキルトリアルコキシシラン、C〜C15アルキルジアルコキシシラン、C〜C15アルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、トリス(トリアルキルシロキシ)シラン、(1)の式(D−1)で表されるシリコーンオリゴマー、(1)の式(D−2)で表されるシリコーンオイル、及び(1)の式(D−3)で表されるシリコーンコーティング剤からなる群より選択される少なくとも一種である、(1)〜(6)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(8)
(D)成分に用いられる表面処理剤が、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、(1)の式(D−1)で表されるシリコーンオリゴマー、(1)の式(D−2)で表されるシリコーンオイル、及び(1)の式(D−3)で表されるシリコーンコーティング剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む、(1)〜(6)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(9)
(D)成分に用いられる表面処理剤を、無機充填剤重量の0.01〜20質量%で用いる、(1)〜(6)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(10)
(C)成分として、一般式(C−1):

(式中、R10は、m価の脂肪族性又は芳香族性の有機基であり、X及びXは、水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、そしてmは、1以上の整数を示す。)で表される一種以上のマレイミド化合物を含有する、(1)〜(9)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(11)
(C)成分が、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミドからなる群より選択される一種以上のマレイミド化合物(I)、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを含有する一種以上のマレイミド化合物(II)、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを含有する一種以上のマレイミド化合物(III)、又はジビニルビフェニルを含有する一種以上のビニル化合物である、(1)〜(10)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(12)
(A)成分の配合割合が、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、(D)成分の配合割合が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して1〜1000質量部の範囲である、(1)〜(11)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(13)
さらに(E)ラジカル反応開始剤、(F)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマー、(G)臭素系難燃剤及びリン系難燃剤から選択される一種以上、及び/或いは(H)飽和型熱可塑性エラストマを含有する、(1)〜(12)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(14)
(F)成分が、化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選択される一種以上のエチレン性不飽和二重結合基含有の架橋性モノマー又は架橋性ポリマーである、(1)〜(13)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
(15)
(H)飽和型熱可塑性エラストマが、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部分の不飽和二重結合基を水素添加して得られる飽和型熱可塑性エラストマを含む一種以上である、(13)又は(14)記載の熱硬化性樹脂組成物。
(16)
(1)〜(15)のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて得られるプリント配線板用樹脂ワニス。
(17)
(16)記載のプリント配線板用樹脂ワニスを基材に含浸させた後、60〜200℃で乾燥させて得られるプリプレグ。
(18)
(D)成分の含有比率、又は基材が無機基材である場合には(D)成分及び基材を合わせた無機成分の含有比率が、プリプレグ体積の50体積%未満である(17)記載のプリプレグ。
(19)
(17)又は(18)に記載のプリプレグを1枚以上重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱加圧して得られる金属張積層板に関する。
本発明によれば、本発明の樹脂組成物を用いたプリント配線板は、優れた高周波特性、良好な耐熱性(特に吸湿耐熱性)及び低熱膨張特性、良好な引き剥がし強さという基本的特性を満足しつつ、更に良好な低吸湿依存特性を有するため、電子機器の材料として用いられた場合、低損失かつ高速な電子機器を達成できる。
また、金属箔との間の引き剥がし強さを充分に高いレベルで達成させる樹脂組成物並びにそれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板を提供することができる。したがって、本発明の樹脂組成物等は、1GHz以上の高周波信号を扱う移動体通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等の各種電気・電子機器に使用されるプリント配線板の部材・部品用途として有用である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物が上述の目的を達成できることの理由は、現在のところ詳細には明らかになっていない。本発明者らは以下のように推測しているが、他の要素の関わりを除外するものではない。
本発明では、誘電特性が良好な熱可塑性樹脂であるポリフェニレンエーテルと、硬化後に最も優れた誘電特性を発現する熱硬化性樹脂の一つとして知られる化学変性されていないブタジエンポリマーと、を必須成分として含有することにより、誘電特性を格段に向上させることを目的としている。
上述のように、ポリフェニレンエーテルと化学変性されていないブタジエンポリマーとは本来、互いに非相溶であり、均一な樹脂とすることが困難であった。ところが、本発明の予備反応を用いる手法により、均一に相容化した新規な構成の樹脂を得ることができる。
本発明において、予備反応とは、反応温度、例えば60〜170℃でラジカルを発生させて、(B)成分と(C)成分とを反応させることであり、(B)成分中の所定量が架橋し、(C)成分の所定量が転化する。すなわち、この状態はゲル化には至っていない未硬化状態のことである。この予備反応の前後の、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の混合液と、セミIPNポリマーとは、粘度、濁度、液体クロマトグラフィー等の特性ピークの変化により容易に区別することができる。
なお、一般に言われる硬化反応とは、熱プレス又は溶剤揮発温度以上でラジカルを発生させて硬化させることであり、本発明における予備反応との違いは明白である。
本発明では、(A)成分であるポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)成分の、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマーと、(C)成分の架橋剤とを、(C)成分を適正な転化率(反応率)で予備反応させることにより、完全に硬化させる前の未硬化状態で、一旦、一方のリニアポリマー成分(ここでは、下図の実線部分で示される(A)成分)と、もう片方の架橋性成分(ここでは、下図の点線部分で示される(B)及び(C)成分)との間に、いわゆる“セミIPN”を形成させたポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを形成して均一な樹脂組成物を得ている(未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物;下図参照)。
この際の均一化(相容化)は、(A)成分とそれ以外の成分((B)成分と(C)成分との部分架橋物)とが化学的結合を形成するのではなく、(A)成分とそれ以外の成分との分子鎖同士が互いに、部分的かつ物理的に絡み合いながらオリゴマー化するためミクロ相分離構造を形成し、見かけ上均一化(相容化)できるものと考えられる。
このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを含有する樹脂組成物(未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物)は、外観が見かけ上均一な外観を有する樹脂膜が得られる。
従来知られているようなポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーやポリフェニレンエーテルとポリブタジエンとの単なる混合物は、セミIPNを形成しておらず、また、構成成分が相容化していないため、いわば相分離した状態である。そのために、本願発明の組成物とは異なり、従来のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーやポリフェニレンエーテルとポリブタジエンとの単なる混合物は見かけ上不均一なマクロ相分離を起こす。
本願発明のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを含有する樹脂組成物(未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物)を用いて製造されるプリプレグは、外観が均一であり、かつ、ある程度架橋したブタジエンプレポリマーと元々タックのないポリフェニレンエーテルが分子レベルで相容化しているためにタックの問題が解消される。
更に、このプリプレグを用いて製造される金属張積層板は、プリプレグと同様に外観上の問題もなく、また、分子鎖同士が部分的かつ物理的に絡み合いながら硬化するため、不均一状態の樹脂組成物を硬化させた場合よりも疑似的に架橋密度が高くなるため、弾性率が向上して熱膨張係数が低くなる。
更に、弾性率の向上と均一なミクロ相分離構造の形成により、樹脂の破壊強度や耐熱性(特に吸湿時)を大幅に高めることができる。
更に、(C)成分として、硬化物とした時の樹脂強度や靭性を高める、或いは分子運動を拘束させる等の特徴を持たせるような特定の架橋剤を選択することにより、金属箔引き剥がし強さ及び熱膨張特性のレベルを向上できることを見出している。
また、この本願発明のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーに、(D)成分としての特定の表面処理剤で表面処理した無機充填剤を併用することで、一般的に言われている無機充填剤配合に基づく低熱膨張率化、更なる耐熱性向上及び所望の比誘電率制御に加え、誘電特性の悪化を抑えつつ、かつ誘電特性の吸湿時の変化率を小さくできること(低吸湿依存特性)を見出した。
通常、樹脂材料に無機充填剤を配合する際、分散性向上や樹脂との密着力向上を目的にカップリング剤を併用する場合が多い。しかし、本願発明のように、極めて良好な誘電特性を有する樹脂系に対して添加剤(ここでは、カップリング剤)を併用する場合、微量な添加量でもカップリング剤のような添加剤が誘電特性(特に高周波帯及び吸湿時)に及ぼす影響は小さくない。
しかし、本発明に用いられる特定の表面処理剤(シラン系表面処理剤又はシリコーン系表面処理剤)で表面処理した無機充填剤を併用すると、上記の通常の効果に加え、従来用いられているカップリング剤系よりも低極性であるため誘電特性(特に1GHzを超える高周波帯域において)を低下させることがない。更に、シラン系処理剤又はシリコーン系表面処理剤は、低吸湿性に優れているため、誘電特性(特に1GHzを超える高周波帯域において)の優れた低吸湿依存特性を発現できる。
本発明の新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物は、未硬化のセミIPN型複合体と表面処理された無機充填剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤から形成されるプレポリマーと、が相容化した未硬化のセミIPN型複合体であり、表面処理された無機充填剤を処理する表面処理剤が、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、トリス(トリアルキルシロキシ)シラン、式(D−1)のシリコーンオリゴマー、式(D−2)のシリコーンオイル、及び式(D−3)のシリコーンコーティング剤のうちの少なくとも一種を含む。
以下、樹脂組成物の各成分、並びにポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー及び樹脂組成物の好適な製造方法について説明する。
本発明の新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(A)成分は、例えば、2,6−ジメチルフェノールや2,3,6,−トリメチルフェノールの単独重合で得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルやポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテルや2,6−ジメチルフェノールと2,3,6,−トリメチルフェノールとの共重合体等が挙げられる。
また、これらとポリスチレンやスチレン−ブタジエンコポリマー等とのアロイ化ポリマー等、いわゆる変性ポリフェニレンエーテルも用いることができるが、この場合はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分及び2,6−ジメチルフェノールと2,3,6,−トリメチルフェノールとの共重合体成分を50%以上含有するポリマーであることがより好ましい。
また、(A)成分の分子量については、特に限定されないが、プリント配線板とした時の誘電特性や耐熱性と、プリプレグとした時の樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、数平均分子量で7000〜30000の範囲であることが好ましい。なお、ここでいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
本発明において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(B)成分は、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマーであれば、特に限定されるものではなく、分子中の側鎖1,2−ビニル基や末端の両方又は片方を、エポキシ化、グリコール化、フェノール化、マレイン化、(メタ)アクリル化及びウレタン化等の化学変性された変性ポリブタジエンではなく、化学変性されていない未変性のブタジエンポリマーである。変性ポリブタジエンを用いると、誘電特性、耐湿性及び吸湿後の耐熱性が悪化するため望ましくない。
(B)成分の分子中の側鎖1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位の含有量は、樹脂組成物の硬化性を考慮すると、50%以上がより好ましく、65%以上が更に好ましい。
また、(B)成分の分子量は特に限定されないが、樹脂組成物の硬化性や硬化物とした時の誘電特性と、プリプレグとした時の樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、数平均分子量が500〜10000の範囲であることが好ましく、700〜8000の範囲であることがより好ましく、1000〜5000の範囲であることが更に好ましい。なお、数平均分子量とは、(A)成分における数平均分子量の定義と同様である。
(B)成分として、−〔CH−CH=CH−CH〕−単位(j)及び−〔CH−CH(CH=CH)〕−単位(k)からなる化学変性されていないブタジエンポリマーであり、j:kの比が60〜5:40〜95であるものを用いることができる。
本発明において好適に用いられる(B)成分の具体例としては、日本曹達社製の商品名:B−1000、B−2000、B−3000、新日本石油化学社製の商品名:B−1000、B−2000、B−3000、SARTOMER社製の商品名:Ricon142、Ricon150、Ricon152、Ricon153、Ricon154等を商業的に入手することができる。
本発明において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(C)成分は、分子中に(B)成分との反応性を有する官能基を有する化合物であり、例えば分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマーが挙げられる。
(C)成分としては、具体的には、ビニル化合物、マレイミド化合物、ジアリルフタレート、(メタ)アクリロイル化合物、不飽和ポリエステル等が挙げられる。この中でも好適に用いられる(C)成分としては、一種以上のマレイミド化合物、或いは一種以上のビニル化合物を含有すると、(B)成分との共架橋性に優れるため、樹脂組成物とした時の硬化性や保存安定性が良好であることや、プリント配線板とした時の成形性、誘電特性、吸湿後の誘電特性、熱膨張特性、金属箔引き剥がし強さ、Tg、吸湿時の耐熱性及び難燃性等のトータルバランスが優れるという観点から望ましい。
本発明の(C)成分として好適に用いられるマレイミド化合物は、下記一般式(C−1):

(式中、R10はm価の脂肪族性、脂環式、芳香族性、複素環式のいずれかである一価又は多価の有機基であり、X及びXは水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、mは1以上の整数を示す。)で表される分子中に1個以上のマレイミド基を含有する化合物であれば特に限定されない。
モノマレイミド化合物や下記の一般式(C−2):

(式中、R11は、−C(X−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、又は連結する結合であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい、Xは炭素数1〜4のアルキル基、−CF、−OCH、−NH、ハロゲン原子又は水素原子を示し、それぞれ同一又は異なっていてもよく、それぞれベンゼン環の置換位置は相互に独立であり、n及びpは、0〜10の整数を示す)で表されるポリマレイミド化合物が好適に使用できる。
上述のモノマレイミド化合物の具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
一般式(C−2)で表されるポリマレイミド化合物の具体例としては、1,2−ジマレイミドエタン、1,3−ジマレイミドプロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,7−ジマレイミドフルオレン、N,N′−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N′−(1,3−(4−メチルフェニレン))ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)エ−テル、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4′−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(2−(3−マレイミドフェニル)プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル)−1−プロピル)ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2、2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(マレイミドフェニル)チオフェン、下記の一般式(C−3):

(式中、qは平均値で0〜10である。)
及び下記の一般式(C−4):

(式中、rは平均値で0〜10である。)
のような脂肪族性、脂環式、芳香族性及び複素環式のポリマレイミド等(ただし、各々異性体を含む)が挙げられる。
プリント配線板とした時の耐湿性、耐熱性、破壊強度、金属箔引き剥がし強さ及び低熱膨張特性の観点からは、芳香族性のポリマレイミドが好ましく、その中でも、特に熱膨張係数を更に低める点では、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを用いることがより好ましく、破壊強度及び金属箔引き剥がし強さを更に高める点では、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを用いることがより好ましい。
また、プリプレグとした時の成形性を高める点では、緩やかな硬化反応となるモノマレイミドが好ましく、その中でもコストの点でN−フェニルマレイミドを用いることがより好ましい。
そして、上記マレイミド化合物は単独でも、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、又はこれら一種以上のマレイミド化合物と上記に示した架橋剤を一種以上とを併用して用いてもよい。
(C)成分において、マレイミド化合物とその他の架橋剤とを併用して用いる場合は、(C)成分中のマレイミド化合物の割合を50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは100質量%、すなわち(C)成分が全てマレイミド化合物である場合である。
(C)成分として好適に用いられるビニル化合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ジビニルビフェニルが挙げられる。中でも、ジビニルビフェニルが好ましい。
本発明において好適に用いられる(C)成分の具体例としては、新日鐵化学社製のジビニルビフェニルが商業的に入手可能である。
本発明の新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、好ましくは媒体中に展開させた(A)成分の存在下で、(B)成分と(C)成分とをゲル化しない程度に予備反応させることにより製造することができる。
これにより、本来非相溶系である(A)成分と(B)成分及び(C)成分との間に、分子鎖同士が互いに物理的に絡み合ったセミIPNポリマーが形成され、完全に硬化させる前段階の未硬化の状態で、見かけ上均一化(相容化)したプレポリマーが得られる。
本発明によれば、例えば、(A)成分を溶媒に溶解させる等により媒体中に展開させた後、この溶液中に(B)成分及び(C)成分を溶解又は分散させて、60〜170℃で、0.1〜20時間、加熱・撹拌させることにより製造することができる。溶液中でポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造する場合、溶液中の固形分(不揮発分)濃度が通常5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましい。
そして、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造した後は、濃縮等により溶媒を完全に除去して無溶媒の樹脂組成物としてもよく、又はそのまま溶媒に溶解又は分散させたポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液としてもよい。
また、溶液とする場合においても、濃縮等により固形分(不揮発分)濃度を高くした溶液としてもよい。
本発明の樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合は、(A)成分の配合割合が、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して2〜200質量部の範囲とするのが好ましく、10〜100質量部とすることがより好ましく、15〜50質量部とすることが更に好ましい。
(A)成分の配合割合は、熱膨張係数、誘電特性と樹脂ワニスの粘度に起因する塗工作業性及びプリプレグとした時の溶融粘度に起因するプリント配線板とした時の成形性とのバランスを考慮して、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して配合することが好ましい。
また、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲とするのが好ましく、5〜100質量部とすることがより好ましく、10〜75質量部とすることが更に好ましい。
(C)成分の配合割合は、熱膨張係数、Tg及び金属箔引き剥がし強さと誘電特性とのバランスを考慮して、(B)成分100質量部に対して配合することが好ましい。本発明のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、その製造の際に、(C)成分の転化率(反応率)が5〜100%の範囲となるように予備反応させて得られる。
より好ましい範囲としては、上記(B)成分及び(C)成分の配合割合によって異なり、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜10質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)が10〜100%の範囲とするのがより好ましく、10〜100質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)が7〜90%の範囲とするのがより好ましく、100〜200質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)が5〜80%の範囲とするのがより好ましい。
(C)成分の転化率(反応率)は、樹脂組成物やプリプレグで外観が均一でかつタックなしであること、プリント配線板で、吸湿時の耐熱性や金属箔引き剥がし強さ、熱膨張係数を考慮すると、5%以上であることが好ましい。
なお、本発明におけるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとは、(C)成分が100%転化した状態を含む。また、(C)成分の転化が100%未満であり、反応しない、未転化の(C)成分が残存する状態も含む。
(C)成分の転化率(反応率)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー中の(C)成分の残存量と予め作成した(C)成分の検量線とから換算したものである。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の(D)成分は、特定の表面処理剤(シラン系表面処理剤又はシリコーン系表面処理剤)で表面処理した無機充填剤であり、これに用いられる無機充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、酸化アルミニウム、酸化チタン、マイカ、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が用いられる。これらの無機充填剤は単独で用いてもよいし、二種類以上併用してもよい。また、無機充填剤の形状及び粒径についても特に制限はないが、粒径0.01〜30μm、好ましくは0.1〜15μmのものが好適に用いられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、(D)成分に用いられる特定の表面処理剤としては、極性の低いシラン系表面処理剤又はシリコーン系表面処理剤である。具体例としては、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなど炭素数が6以上のアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどの芳香族トリアルコキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどのアルキルジアルコキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シランなどのトリス(トリアルキルシロキシ)シラン、アルコキシシリコーンオリゴマーなどのシリコーンオリゴマー、長鎖アルキル変性非反応性シリコーンオイル又は長鎖アルキル・アラルキル変性非反応性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル、シリコーンコーティング剤が挙げられる。例えば、式(D−1):

(式中、R及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

のうちのいずれかであり、aは、1以上の整数であり、nは、1以上の整数である)
で表されるシリコーンオリゴマー、式(D−2):

(式中、R、R、a及びnは、上記と同義であり、
、R、R、R、R及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

のうちのいずれかである)
で表されるシリコーンオイル、及び式(D−3):

(式中、R、R、R、R、R、R、a及びnは、上記と同義であり、
及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

のうちのいずれかであり、bは、1以上の整数であり、cは、1以上の整数であり、dは、1以上の整数である)
で表されるシリコーンコーティング剤である。
これらのうち、特にヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、シリコーンオリゴマー、長鎖アルキル変性非反応性シリコーンオイル、シリコーンコーティング剤が好ましい。
これらの特定の表面処理剤(シラン系表面処理剤又はシリコーン系表面処理剤)は単独で用いてもよいし、二種類以上併用してもよい。表面処理剤としては、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン(KBM−3063、信越化学工業社製)、デシルトリメトキシシラン(KBM−3103、信越化学工業社製)、メチルトリメトキシシラン(KBM−13、信越化学工業社製)、フェニルトリメトキシシラン(KBM−103、信越化学工業社製)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMS−112、信越化学工業社製)、トリス(トリメチルシロキシ)シラン(S−1003TS、信越化学工業社製)、シリコーンオリゴマー(KR−2000、信越化学工業社製)、アルコキシシリコーンオリゴマー(X−40−9225、信越化学工業社製)、長鎖アルキル変性非反応性シリコーンオイル(KF−4917、信越化学工業社製)、長鎖アルキル・アラルキル変性非反応性シリコーンオイル(X−22−1877、信越化学工業社製)、シリコーンコーティング剤(KPN−3504、信越化学工業社製)が挙げられる。
また,無機充填剤への表面処理剤の付着量は、特に制限はないが,無機充填剤の樹脂材料への分散性や硬化物とした時の耐熱性を考慮して、無機充填剤質量の0.01〜20質量%が好適であり,好ましくは0.05〜10質量%,より好ましくは0.1〜7質量%である。
本発明の樹脂組成物における(D)成分の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、5〜500質量部がより好ましく、10〜350質量部が更に好ましく、所望の比誘電率制御、耐熱性向上及びプリプレグの成形性を考慮した配合量を適宜決定できる。
また、(D)成分は、予め湿式法や乾式法で表面処理剤により表面処理したものを用いてもよく、又はポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー中に、表面処理剤と無機充填剤を配合・混合して表面処理して用いてもよい。
湿式法の場合は、有機溶媒等(分散媒)に表面処理剤と無機充填剤を分散させて表面処理したスラリーとして用いることができ、乾式法で表面処理する場合は、表面処理後に有機溶媒等に分散させてスラリーとして用いることができる。なお、表面処理する際の時間、温度等の処理条件は特に制限されない。
本発明の樹脂組成物には、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に(B)成分と(C)成分との予備反応を開始又は促進させる目的と、金属張積層板や多層プリント配線板を製造する際に樹脂組成物の硬化反応を開始又は促進させる目的として、(E)ラジカル反応開始剤を含有していることが好ましい。
(E)成分の具体例としては、ジクミルペルオキサイド、t−ブチルクミルペルオキサイド、ベンゾイルペルオキサイド、クメンハイドロペルオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロペルオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルペルオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、イソブチリルペルオキサイド、ジ(トリメチルシリル)ペルオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルペルオキサイド等の過酸化物や2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、(E)成分は、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー製造時の予備反応を開始又は促進させる目的で用いるものと、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造後に硬化反応を開始又は促進させる目的で用いるものとを、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造前後で分けて配合するのが好ましい。その場合、それぞれの目的で配合する(E)成分は、同種のものを用いても、異なる種類のものを用いてよく、それぞれ一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
本発明の樹脂組成物における上記(E)成分の配合割合は、(B)成分及び(C)成分の配合割合に応じて決定することができ、(B)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内で(E)成分のラジカル反応開始剤を配合すると、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造する際の予備反応において適切な反応速度が得られ、金属張積層板や多層プリント配線板を製造する際の硬化反応において、良好な硬化性が得られる。
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて(F)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマー、(G)臭素系難燃剤及び/又はリン系難燃剤、(H)飽和型熱可塑性エラストマ及び各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、各種添加剤を、プリント配線板とした時の誘電特性、耐熱性、接着性(金属箔引き剥がし強さ、ガラス等の基材との接着性等)、耐湿性、Tg、熱膨張特性等の特性を悪化させない範囲の配合量で、更に配合してもよい。
上記(F)成分の未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマーとしては、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造後に配合されるものであり、特に限定されない。
(F)成分は、具体的には化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選択される。
(F)成分はまた、上記(B)成分及び上記(C)成分として挙げられた化合物を用いることができる。また、化学変性されていないブタジエンポリマーとして、数平均分子量が10000を超える化学変性されていないブタジエンポリマーも挙げられる。これらの化合物は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
上記の(B)成分及び(C)成分として例示されたものと同じ化合物を(F)成分として配合する場合は、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー製造時に用いたものと、それぞれ同種のものを用いても、異なる種類のものを用いてもよい。この場合、未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物(ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー)の製造後に配合されるため、その場合の(F)成分の配合量は、(B)成分及び(C)成分の配合量とは区別され、下記に好ましい配合量が別途記述される。
上記(F)成分として、数平均分子量が10000を超える化学変性されていないブタジエンポリマーを配合する場合、液状タイプでも固形タイプでも用いることができ、1,2−ビニル結合比率及び1,4−結合比率についても特に制限されない。
本発明の樹脂組成物における上記(F)成分の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、2〜100質量部とすることが好ましく、2〜80質量部とすることがより好ましく、2〜60質量部とすることが更に好ましい。
上記(G)成分の難燃剤としては、特に限定されないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適に用いられる。より具体的には、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート及び臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤等が挙げられる。
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤を例示でき、金属水酸化物難燃剤としては水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が例示される。また、上述の難燃剤は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物における(G)成分の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、5〜200質量部とすることが好ましく、5〜150質量部とすることがより好ましく、5〜100質量部とすることが更に好ましい。
難燃剤の配合割合が5質量部未満では耐燃性が不充分となる傾向があり、200質量部を超えるとプリント配線板とした時の耐熱性や金属箔引き剥がし強さが低下する傾向にある。
上記(H)成分は、飽和型熱可塑性エラストマであれば特に限定されるものではないが、(A)成分との相溶性の良いスチレン系飽和型熱可塑性エラストマが望ましい。本発明において好適に用いられる(H)成分の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体が挙げられ、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエンブロックの不飽和二重結合部分を水素添加する方法等により得ることができる。
また、スチレン系飽和型熱可塑性エラストマを用いる場合、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとの相溶性と、樹脂組成物を硬化させた場合の熱膨張特性とのバランスから、スチレンブロックの含有比率が20〜70%であることが好ましい。
更に、(H)成分は、分子中にエポキシ基、水酸基、カロボキシル基、アミノ基、酸無水物等の官能基を付与した化学変性飽和型熱可塑性エラストマを用いることもできる。また、(H)成分は単独でも、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、スチレン系飽和型熱可塑性エラストマを用いる場合、スチレン含有量の異なる二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(H)成分の飽和型熱可塑性エラストマは、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造後に配合してもよいし、例えば、溶媒等の媒体中に展開させた(A)成分と(H)成分の存在下で、(B)成分と、(C)成分とをゲル化しない程度に予備反応させることにより製造される飽和型熱可塑性エラストマ併用ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとして用いてもよい。
なお、飽和型熱可塑性エラストマ併用ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造する際、各成分における好ましい具体例及び配合量並びに(C)成分の転化率(反応率)等の製造方法については、前記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー製造の際の記載が適用される。
本発明の樹脂組成物における(H)成分の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、2〜50質量部とすることがより好ましく、5〜30質量部とすることが更に好ましい。(H)成分の配合割合が1質量部未満では誘電特性の向上効果が不充分となる傾向があり、100質量部を超えると硬化物の熱膨張特性が悪化する傾向にある。
本発明における溶媒としては、特に限定するものではないが、具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類等の溶媒が挙げられる。
また、これらの溶媒は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類や、芳香族炭化水素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類との混合溶媒がより好ましい。
これらの溶媒のうち、芳香族炭化水素類及びケトン類を混合溶媒として用いる場合のそれらの配合割合は、芳香族炭化水素類100質量部に対してケトン類を5〜100質量部であると好ましく、10〜80質量部であるとより好ましく、15〜60質量部であると更に好ましい。
なお、(D)成分として、有機溶媒中で表面処理した無機充填剤スラリーを用いる場合も、上記に示した溶媒等が使用できる。これらの溶媒は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に用いられる溶媒と同種のものでも、異なる種類の溶媒を用いてもよい。
また、本発明の樹脂組成物において、必要に応じて配合される各種熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、具体例としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられ、これらの硬化剤や硬化促進剤等を用いることができる。
また、必要に応じて配合される各種熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−ペンテン)等のポリオレフィン類及びその誘導体、ポリエステル類及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、(メタ)アクリル酸エステル共重合体類、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体類、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール類、ポリビニルアルコール類、ポリブタジエンの完全水素添加物類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリアミドイミド、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー等が挙げられる。
各種添加剤としては、特に限定されないが、具体例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等が挙げられる。
また、これらの熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物の1つの製造方法としては、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分とで得られるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー、(D)成分、(E)ラジカル反応開始剤、必要に応じて配合される(F)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマー、(G)難燃剤、(H)飽和型熱可塑性エラストマ及び各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、各種添加剤を、公知の方法で配合、撹拌・混合することにより製造することができる。
上述した本発明の樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させることにより、本発明の樹脂ワニスを得ることができる。また、溶液中でポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造した場合は、一旦、溶媒を除去して無溶媒のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーと、上述のその他の配合剤とを溶媒に溶解又は分散させて樹脂ワニスとしてもよく、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液に、(D)成分又は(D)成分を溶剤に分散させたスラリー、(E)成分及び必要に応じて(F)成分、(G)成分、(H)成分、上述のその他の配合剤と、必要に応じて追加の溶媒を更に配合して樹脂ワニスとしてもよい。
上述の樹脂組成物をワニス化する際に用いられる溶媒は、特に限定するものではないが、好ましい溶媒の具体例としては、上記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー又は飽和型熱可塑性エラストマ併用ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に用いられる溶媒について記載したものを用いることができ、これらは一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類や、芳香族炭化水素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類との混合溶媒がより好ましい。
なお、ワニス化する際の溶媒は、上記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に用いられる溶媒と同種のものでも、異なる種類の溶媒を用いてもよい。また、ワニス化する際は、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度が、5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましいが、本発明の樹脂ワニスを用いてプリプレグ等の製造する際、溶媒量を調節することにより、塗工作業に最適な(例えば、良好な外観及び適正な樹脂付着量となるように)固形分(不揮発分)濃度やワニス粘度に調製することができる。
上述した本発明の樹脂組成物及び樹脂ワニスを用いて、公知の方法により、本発明のプリプレグ及び金属張積層板を製造することができる。例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物及び樹脂ワニスを、ガラス繊維及び有機繊維等の強化繊維基材に含浸させた後、乾燥炉中等で通常、60〜200℃、好ましくは80〜170℃の温度で、2〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥させることによってプリプレグが得られる。
次いで、このプリプレグ1枚又は複数枚重ねたその片面又は両面に金属箔を配置し、所定の条件で加熱及び/又は加圧することにより両面又は片面の金属張積層板が得られる。
この場合の加熱は、好ましくは100℃〜250℃の温度範囲で実施することができ、加圧は、好ましくは0.5〜10.0MPaの圧力範囲で実施することができる。加熱及び加圧は真空プレス等を用いて同時に行うことが好ましく、この場合、これらの処理を30分〜10時間実施することが好ましい。
また、上述のようにして製造されたプリプレグ及び金属張積層板を用いて、公知の方法によって、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔をエッチング等による回路形成加工及び多層化接着加工を行うことによって、片面、両面又は多層プリント配線板が得られる。
本発明は、上記の形態、態様に限定されず、その発明の目的から逸脱しない範囲内において、任意の変更、改変を行うことができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
樹脂ワニス(樹脂組成物)の調製
調製例1
温度計、還流冷却器、減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、トルエン333質量部と、成分(A)としてのポリフェニレンエーテル(S202A、旭化成ケミカルズ社製、Mn:16000)13質量部とを投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。次いで、成分(B)としての化学変性されていないブタジエンポリマー(B−3000、日本曹達社製、Mn:3000、1,2−ビニル構造:90%)100質量部と、成分(C)としてのN−フェニルマレイミド(イミレックス−P、日本触媒社製)16質量部とを投入し、撹拌を続けた。これらが溶解又は均一分散したことを確認した。その後、液温を110℃に上昇させた。温度110℃を保ったまま、反応開始剤として、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサTMH、日本油脂社製)0.5質量部を配合した。
配合した物を撹拌しながら約1時間予備反応させて、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)化学変性されていないブタジエンポリマーと、(C)架橋剤と、が相容化したポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液を得た。このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のビス(4−マレイミドフェニル)メタンの転化率をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したところ、転化率は30%であった。ここで転化率とは、100からN−フェニルマレイミドの未転化分(測定値)を引いた値である。次いで、フラスコ内の液温を80℃に設定した。その後、撹拌しながら溶液の固形分濃度が60質量%となるように減圧濃縮した。次に、溶液を室温まで冷却した。
次いで、成分(D)として、予め溶剤中でヘキシルトリメトキシシラン(KBM−3063、信越化学工業社製)を処理量2質量%で表面処理した球形酸化ケイ素(球形シリカ:SO−25R、平均粒径:0.5μm、アドマテックス社製)のスラリー(固形分:70質量%、溶剤:MIBK)315質量部(固形分:220質量部)を配合した。次いで、成分(H)の飽和型熱可塑性エラストマとしてスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物2種(タフテックH1043及びタフテックH1051、旭化成ケミカルズ社製)の24.5%トルエン溶液を155質量部(固形分:各19質量部)配合した。次いで、成分(F)としてのビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−5100、大和化成工業社製)4質量部を配合した。次いで、成分(G)としてのエチレンビス(ペンタブロモフェニル)(SAYTEX8010、アルベマール社製)50質量部を配合した。次いで、成分(E)としてα,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製)3質量部を添加した。次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)を配合して、調製例1の樹脂ワニス(固形分濃度約50質量%)を調製した。
調製例2
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにデシルトリメトキシシラン(KBM−3103、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例2の樹脂ワニスを調製した。
調製例3
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにメチルトリメトキシシラン(KBM−13、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例3の樹脂ワニスを調製した。
調製例4
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにフェニルトリメトキシシラン(KBM−103、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例4の樹脂ワニスを調製した。
調製例5
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMS−112、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例5の樹脂ワニスを調製した。
調製例6
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにトリス(トリメチルシロキシ)シラン(S−1003TS、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例6の樹脂ワニスを調製した。
調製例7
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにシリコーンオリゴマー(KR−2000、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例7の樹脂ワニスを調製した。
調製例8
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにアルコキシシリコーンオリゴマー(X−40−9225、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例8の樹脂ワニスを調製した。
調製例9
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりに長鎖アルキル変性非反応性シリコーンオイル(KF−4917、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例9の樹脂ワニスを調製した。
調製例10
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりに長鎖アルキル・アラルキル変性非反応性シリコーンオイル(X−22−1877、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例10の樹脂ワニスを調製した。
調製例11
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにシリコーンコーティング剤(KPN−3504、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、調製例11の樹脂ワニスを調製した。
調製例12
調製例1において、球形シリカ(SO−25R)の代わりにチタン酸ストロンチウム(SL250、平均粒径:0.85μm、富士チタン工業社製)を1000質量部用いたこと以外は同様にして調製例12の樹脂ワニスを調製した。
調製例13
調製例1において、球形シリカ(SO−25R)の代わりにチタン酸カルシウム(平均粒径2μm、商品名CT−D50、製造メーカー;富士チタン工業(株)社製)を1000質量部用いたこと以外は同様にして調製例13の樹脂ワニスを調製した。
比較調製例1
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにビニルトリメトキシシラン(KBM−1003、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、比較調製例1の樹脂ワニスを調製した。
比較調製例2
調製例1において、ヘキシルトリメトキシシランの代わりにスチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして、比較調製例2の樹脂ワニスを調製した。
調製例1〜13及び比較調製例1〜2の樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)の調製に用いた各原材料の使用量を表1−1、表1−2にまとめて示す。
樹脂板の作製
調製例1〜13及び比較調製例1〜2で得られた樹脂ワニスを、ガラス板上に0.3mmのギャップで塗工した。次いで、110℃で10分間加熱乾燥して、Bステージの樹脂を得た。これをテフロン(R)の型枠に所定量入れ、両面に厚さ18μmのロープロファイル銅箔(F3−WS、M面Rz:3μm、古河電気工業社製)を光沢面が接するように配置し、185℃、2MPa、90分のプレス条件で加熱加圧成形して、樹脂板(厚さ:0.1mm)を作製した。
プリプレグの作製
調製例1〜13及び比較調製例1〜2で得られた樹脂ワニスを、厚さ0.1mmのガラス布(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した。次いで、100℃で6分間加熱乾燥して、樹脂含有割合56〜57質量%のプリプレグを作製した。
両面銅張積層板の作製
上述のプリプレグ6枚を重ねてなる基材の両面に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(F3−WS、M面Rz:3μm、古河電気工業社製)をM面が接するように配置し、185℃、4MPa、80分のプレス条件で真空加熱加圧成形して、両面銅張積層板(厚さ:0.7mm)を作製した。銅張積層板は、評価のために銅を過硫酸アンモニウム水溶液で全面エッチングした。
上述の樹脂板及びエッチングした銅張積層板について、10GHzでの誘電特性、吸水率、吸湿耐熱性を評価した。また、銅張積層板について、熱膨張特性及び引き剥がし強さを評価した。
特性評価方法は以下の通りである。
誘電特性の測定:
誘電特性は、空洞共振器法により測定した。更に、誘電特性(比誘電率、誘電正接)は、恒温恒湿槽(条件:85℃、85%RH)中に500時間保持した後のもの(略称:C−500/85/85)について測定した。常態と吸湿後の誘電率の差をΔDk、誘電正接の差をΔDfとした。なお、測定条件は常態の場合と同様とした。
吸水率の測定:
吸水率は、吸湿前後の質量変化から求めた。吸湿処理は上記C−500/85/85の条件で行った。吸湿前の樹脂板及びエッチングした銅張積層板(MCL)の質量をWd、吸湿後の質量をWwとし、((Ww/Wd)−1)*100の値(%)を吸水率とした。
吸湿耐熱性の測定:
全面エッチングしたMCLをプレッシャークッカー処理(121℃−2atm)して吸湿させ、288℃に加熱したはんだ浴中に20秒間沈めた。
はんだ浴に沈めた後、視認によりふくれやミーズリングが生じなかったものを合格とした。
熱膨張特性の測定:
全面エッチングしたMCLについて、熱膨張率α及びガラス転移温度Tgを、熱機械分析機(TMA Q−400、TAインスツルメンツ)を用いて測定した。
測定条件は、1st runが250℃、2nd runが260℃までの10℃/分の昇温速度、荷重は0.05Nで行った。2nd runの線膨張曲線の屈曲点をTgとした。
引き剥がし強さの測定:
JIS−C−6481に準拠して測定した。
特性評価結果:
誘電特性及び吸水率については、樹脂板の結果を表2に、エッチングしたMCLの結果を表3に示す。
吸湿耐熱性(PCT−5h処理後)は、いずれも良好であった。
熱膨張特性については、表4に示す。
引き剥がし強さは、いずれも良好であった。
表2、表3に示す結果から、ΔDkが小さいと、吸湿時の信号レベルの低下を抑制できる。また、ΔDfが小さいと、共振の信号ピークの鋭さを表すQ値を保つことができ、ΔDkの場合と同様に吸湿時の電気信号レベルの低下を抑制できる。さらにDfが大きくならないことで、回路基板上での電気信号の減衰量を抑制できる。
表2において樹脂板を85℃85%RHに500時間おいたときの誘電率変化量ΔDkを見ると、比較例1及び2のビニル基含有シランカップリング剤では平均値が0.037であるのに対し、実施例では平均値が0.031程度と小さく、約15%の減少を示している。特許文献15によると比較例のビニル基含有シランカップリング剤を使用した樹脂系は誘電特性に優れており吸湿後の誘電率変化も小さいが、本発明の表面処理剤群を使用すると、それよりも誘電率変化量が小さく、更に優れていることが分かる。誘電正接変化量ΔDfも比較例の平均値0.00195程度と比べ、実施例では平均値が0.00125程度と小さく、約35%の減少を示しており、こちらも本発明の表面処理剤のほうが優れていることが分かる。吸水率(C−500/85/85)も同様に、比較例の平均値0.195%程度に対し、実施例では平均値が0.12%程度と、約40%少なく、耐吸湿性に優れている。
次に、表3においてエッチングした銅張積層板のΔDkを見ると、比較例の平均値0.0375程度に対し実施例では平均値が0.032程度と小さく、樹脂板同様誘電率の吸湿依存性が約15%小さいことが分かる。ΔDfについても比較例の平均値0.05765程度に対し、実施例では平均値が0.00115程度と良く、約55%の減少を示している。吸水率も比較例の平均値0.24%程度に対し、実施例では平均値が0.17%程度と少なく、約30%の減少を示し、同等以上の耐吸湿性を持っていることが分かる。
以上より、本発明の範囲の表面処理剤は、誘電特性における吸湿依存性が低く(低吸湿依存性)、特許文献15のビニル基含有シランカップリング剤と比較して、低吸湿依存特性に優れているといえる。そして、本発明の実施例では、吸湿耐熱性、熱膨張特性、引き剥がし強さにも優れていた。
本発明の樹脂組成物は、相容化した未硬化のセミIPN型複合体に特定の表面処理剤で表面処理した無機充填剤を組み合わせた熱硬化性樹脂組成物という新規な構成を有し、本発明の樹脂組成物を用いたプリント配線板は、高周波での良好な誘電特性、伝送損失を低減する特性、低熱膨張特性を達成しつつも、金属箔との間の引き剥がし強さを充分なレベルまで高くさせることができる。また、無機充填剤を併用する際に得られる耐熱性向上、所望の比誘電率制御及び更なる低熱膨張率化に加え、本発明では吸湿による誘電特性の変化率を小さく抑えることができる。更に本発明の樹脂組成物を用いた樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板は、誘電特性の向上による誘電体損失低減と表面粗さの小さい金属箔の適用による導体損失低減の両面からアプローチするために、高周波帯域での伝送損失を充分な程度までに低減することができ、高周波分野で使用されるプリント配線板の製造に好適に用いることができる。したがって、本発明は、高周波帯域、例えば1GHz以上の高周波信号を扱う移動体通信機器及びその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等の各種電気・電子機器に使用されるプリント配線板の部材・部品用途として有用である。

Claims (19)

  1. 未硬化のセミIPN型複合体と表面処理された無機充填剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
    未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤から形成されるプレポリマーと、が相容化した未硬化のセミIPN型複合体であり、
    表面処理された無機充填剤を処理する表面処理剤が、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、トリス(トリアルキルシロキシ)シラン、式(D−1):

    (式中、R及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

    のうちのいずれかであり、a及びnは、1以上の整数である)
    で表されるシリコーンオリゴマー、式(D−2):

    (式中、R、R、a及びnは、上記と同義であり、
    、R、R、R、R及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

    のうちのいずれかである)
    で表されるシリコーンオイル、及び式(D−3):

    (式中、R、R、R、R、R、R、a及びnは、上記と同義であり、
    及びRは、H、CH3、C65、Ca2a+1、C24CF3、又は

    のうちのいずれかであり、b、c及びdは、1以上の整数である)
    で表されるシリコーンコーティング剤からなる群より選択される少なくとも一種の表面処理剤である、熱硬化性樹脂組成物。
  2. 未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)ブタジエンポリマー及び(C)架橋剤がラジカル重合したラジカル重合性重合体と、からなり、
    (B)が、−〔CH−CH=CH−CH〕−単位(j)及び−〔CH−CH(CH=CH)〕−単位(k)からなる化学変性されていないブタジエンポリマーであり、j:kの比が60〜5:40〜95であり、
    (C)が、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である、請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 未硬化のセミIPN型複合体が、(A)ポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有し、かつ化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤を予備反応させて得られる、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーである、請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 未硬化のセミIPN型複合体を、(C)成分の転化率が5〜100%の範囲となるように予備反応させて得る、請求項3記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. (D)表面処理された無機充填剤に用いられる無機充填剤が、酸化アルミニウム、酸化チタン、マイカ、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一種の無機充填剤である、請求項1〜4のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 無機充填剤が、平均粒子径0.01〜30μmの球形の酸化ケイ素である、請求項1〜5のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. (D)成分に用いられる表面処理剤が、C〜C30アルキルトリアルコキシシラン、C〜C30アルキルジアルコキシシラン、C〜C30アルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、トリス(トリアルキルシロキシ)シラン、請求項1の式(D−1)で表されるシリコーンオリゴマー、請求項1の式(D−2)で表されるシリコーンオイル、及び請求項1の式(D−3)で表されるシリコーンコーティング剤からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜6のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. (D)成分に用いられる表面処理剤が、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、請求項1の式(D−1)で表されるシリコーンオリゴマー、請求項1の式(D−2)で表されるシリコーンオイル、及び請求項1の式(D−3)で表されるシリコーンコーティング剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. (D)成分に用いられる表面処理剤を、無機充填剤質量の0.01〜20質量%で用いる、請求項1〜8のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. (C)成分として、一般式(C−1):

    (式中、R10は、m価の脂肪族性又は芳香族性の有機基であり、X及びXは、水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、そしてmは、1以上の整数を示す。)で表される一種以上のマレイミド化合物を含有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. (C)成分が、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミドからなる群より選択される一種以上のマレイミド化合物(I)、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを含有する一種以上のマレイミド化合物(II)、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを含有する一種以上のマレイミド化合物(III)、又はジビニルビフェニルを含有する一種以上のビニル化合物である、請求項1〜10のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  12. (A)成分の配合割合が、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、(D)成分の配合割合が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して1〜1000質量部の範囲である、請求項1〜11のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  13. さらに(E)ラジカル反応開始剤、(F)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマー、(G)臭素系難燃剤及びリン系難燃剤から選択される一種以上、及び/或いは(H)飽和型熱可塑性エラストマを含有する、請求項1〜12のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  14. (F)成分が、化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選択される一種以上のエチレン性不飽和二重結合基含有の架橋性モノマー又は架橋性ポリマーである、請求項13記載の熱硬化性樹脂組成物。
  15. (H)飽和型熱可塑性エラストマが、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部分の不飽和二重結合基を水素添加して得られる飽和型熱可塑性エラストマを含む一種以上である、請求項13又は14記載の熱硬化性樹脂組成物。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて得られるプリント配線板用樹脂ワニス。
  17. 請求項16記載のプリント配線板用樹脂ワニスを基材に含浸させた後、60〜200℃で乾燥させて得られるプリプレグ。
  18. (D)成分の含有比率、又は基材が無機基材である場合には(D)成分及び基材を合わせた無機成分の含有比率が、プリプレグ体積の50体積%未満である請求項17記載のプリプレグ。
  19. 請求項17又は請求項18に記載のプリプレグを1枚以上重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱加圧して得られる金属張積層板。
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