JP6089615B2 - 熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板 Download PDF

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本発明は、ポリフェニレンエーテルの存在下で、特定のブタジエンポリマーと架橋剤とを反応させて得られ、セミIPN構造を形成しているポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーを含有する熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリント配線板用樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板に関する。
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器や大型コンピュータなどでは、低損失かつ高速で、大容量の情報を伝送及び処理することが要求されている。大容量の情報を伝送及び処理する場合、電気信号が高周波数の方が高速に伝送及び処理できる。
ところが、電気信号は、基本的に高周波になればなるほど減衰しやすくなる、すなわちより短い伝送距離で出力が弱くなりやすく、損失が大きくなりやすい性質を有する。したがって、上述の低損失かつ高速との要求を満たすためには、機器に搭載された伝送及び処理を行うプリント配線板自体の特性において、伝送損失、特に高周波帯域での伝送損失を一層低くする必要がある。
低伝送損失のプリント配線板を得るために、従来、比誘電率及び誘電正接の低いフッ素系樹脂を使用した基板材料が使用されてきた。
しかしながら、フッ素系樹脂は一般に溶融温度及び溶融粘度が高く、その流動性が比較的低いため、プレス成形時に高温高圧条件を設定する必要があるという問題点がある。
しかも、上記の通信機器、ネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等に使用される高多層のプリント配線板用途として使用するには、加工性、寸法安定性及び金属めっきとの接着性が不充分であるという問題点がある。
そこで、フッ素系樹脂に替わる、高周波用途に対応するためのプリント配線板用樹脂材料が研究されている。そのうち、耐熱性ポリマーの中で特に誘電特性が優れる樹脂の1つとして知られるポリフェニレンエーテルを使用することが注目されている。
しかし、ポリフェニレンエーテルは、上記フッ素系樹脂同様に溶融温度及び溶融粘度が高い熱可塑性樹脂である。
そのため、従来からプリント配線板用途には、溶融温度及び溶融粘度を低くさせ、プレス成形時に温度圧力条件を低く設定させるため又はポリフェニレンエーテルの溶融温度(230〜250℃)以上の耐熱性を付与する目的で、ポリフェニレンエーテルと、熱硬化性樹脂とを併用した樹脂組成物として用いられてきた。
例えば、エポキシ樹脂を併用した樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、ビスマレイミドを併用した樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、シアネートエステルを併用した樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)、スチレン−ブタジエン共重合体又はポリスチレンと、トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを併用した樹脂組成物(例えば、特許文献4〜5参照)、ポリブタジエンを併用した樹脂組成物(例えば、特許文献6及び特許文献7参照)等が提案されている。
また、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基等の官能基を有する変性ポリブタジエンとビスマレイミド及び/又はシアネートエステルを予備反応させた樹脂組成物(例えば、特許文献8参照)、不飽和二重結合基を有する化合物を付与又はグラフトさせたポリフェニレンエーテルに上記トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートや上記ポリブタジエン等を併用した樹脂組成物(例えば、特許文献9及び特許文献10参照)等が提案されている。
さらには、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物との反応生成物と上記ビスマレイミド等を併用した樹脂組成物(例えば、特許文献11参照)などが提案されている。これらの文献によれば、ポリフェニレンエーテルの低伝送損失性を保ちつつ、上述した熱可塑性樹脂の欠点を改善するには、硬化後の樹脂が極性基を多く有していないことが好ましいと開示されている。
特開昭58−069046号公報 特開昭56−133355号公報 特公昭61−018937号公報 特開昭61−286130号公報 特開平03−275760号公報 特開昭62−148512号公報 特開昭59−193929号公報 特開昭58−164638号公報 特開平02−208355号公報 特開平06−184213号公報 特開平06−179734号公報
本発明者らは、特許文献1〜11に記載されたものを始めとする、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性樹脂を併用した樹脂組成物など、そのプリント配線板用積層板用途への適用性について詳細に検討した。
その結果、特許文献1、特許文献2及び特許文献11に示されている樹脂組成物では、極性の高いエポキシ樹脂やビスマレイミドの影響によって硬化後の誘電特性が悪化し、高周波用途への適用は困難であった。
特許文献3に示されるシアネートエステルを併用した組成物では、誘電特性は優れるものの、吸湿後の耐熱性に懸念が残った。
特許文献4〜5、特許文献9及び特許文献10に示されているトリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを併用した組成物では、比誘電率がやや高いことに加え、吸湿に伴う誘電特性のドリフトが大きいという傾向が見られた。
また、特許文献4〜7及び特許文献10に示されているポリブタジエンを併用した樹脂組成物では、誘電特性は優れるものの、樹脂自体の強度が低いことや熱膨張係数が高いという問題があるため、高多層用のプリント配線板用途には適用が困難であった。
また、特許文献8は、金属、ガラス基材との接着性を改善するために、変性ポリブタジエンを併用した樹脂組成物であり、変性されてないポリブタジエンを用いた場合に比べ、1GHz以上の高周波領域における誘電特性に懸念があった。
さらに、特許文献11に示されているポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物との反応生成物を用いた組成物では、極性の高い不飽和カルボン酸や不飽和酸無水物の影響により通常のポリフェニレンエーテルを用いた場合よりも誘電特性に懸念が残る。
そのため、上述した熱可塑性樹脂の欠点が改善され、かつ誘電特性にも優れた、ポリフェニレンエーテルを含有する熱硬化性樹脂組成物に対する需要があると考えられる。
また、本発明者らは、誘電特性、特に、伝送損失の低減という点に注目して、研究を行ったところ、低誘電率、低誘電正接の樹脂を用いるのみでは、近年の電気信号の更なる高周波化への対応として不充分であることを見出した。
電気信号の伝送損失は、絶縁層に起因する損失(誘電体損失)と導体層に起因する損失(導体損失)に分類されるため、低誘電率、低誘電正接の樹脂を用いる場合、誘電体損失のみが低減される。さらに伝送損失を低減させるためには、導体損失をも低減することが必要である。
この導体損失の低減を図る方法として、導体層と絶縁層との接着面である粗化処理面(以下、「M面」という。)側の表面凹凸が小さい金属箔、具体的には、M面の表面粗さ(十点平均粗さ;Rz)が5μm以下の金属箔(以下、「ロープロファイル箔」という。)を用いた金属張積層板を採用する方法等を用いることができる。
そこで、本発明者らは、高周波用途のプリント配線板用材料として、低誘電率、低誘電正接である熱硬化性樹脂を用い、かつ金属箔にはロープロファイル箔を用いることについて検討した。
ところが、本発明者らが研究した結果、特許文献1〜11に記載された樹脂組成物を用いて、ロープロファイル箔により積層板とした場合、絶縁(樹脂)層と導体(金属箔)層間の接着力(接合力)が弱くなり、金属箔との間で要求される引き剥がし強さを確保できないことが分かった。これは、樹脂の極性が低く、しかも金属箔のM面の凹凸に起因するアンカー効果が低下するためと考えられる。
また、これらの積層板における吸湿後の耐熱性試験では、樹脂と金属箔との間に剥離が生じるという不具合が発生した。これは、樹脂と金属箔との接着力が低いためと考えられる。このような結果から、本発明者らはこれらの特許文献1〜11に記載された樹脂組成物は、先に示した問題に加えて、ロープロファイル箔のような表面粗さの小さい金属箔で適用することが難しいという問題を見出した。
特に、ポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマーの系では、以下のことが顕著であった。これらの樹脂は本来、互いに非相溶であり、均一な樹脂とすることが困難である。そのため、これらを含有する樹脂組成物をそのまま用いた場合、未硬化の状態では、ブタジエンホモポリマー系の欠点であるタック(粘着性)の問題があるため、外観が均一で、かつ取り扱い性の良好なプリプレグを得ることが非常に困難である。
また、このプリプレグと金属箔とを用いて金属張積層板とした場合は、樹脂が不均一な状態(マクロな相分離状態)で硬化されてしまうために、外観上の問題に加えて、吸湿時の耐熱性が低下し、さらにはブタジエンホモポリマー系の欠点が強調されてしまい、破壊強度が低いことや熱膨張係数が大きいこと等の様々な不具合を生じる。
また、スルーホール接続信頼性の観点から、無機充填剤を高充填させる必要がある。しかし、無機充填剤を高充填させることによって、無機充填剤の凝集及びそれに伴う無機充填剤の沈降が顕著になり、無機充填剤の分散性が悪化する。そのワニスを用いて金属張積層板とした場合、無機充填剤が十分に分散されていない箇所での耐熱性の低下などの不具合が発生している。そのため、プリント配線板用途に要求される水準を満たす、ポリフェニレンエーテルとブタジエンホモポリマー系に無機充填剤を含有させた樹脂組成物は見出されていなかった。
本発明は、無機充填剤と高分子成分とを高充填及び高分散可能な熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリント配線板用樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決できるよう鋭意研究を重ねた結果、ポリフェニレンエーテルの存在下で、特定のブタジエンポリマーと架橋剤とを反応させて得られ、セミIPN構造を形成しているポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーに、特定の無機充填剤及び分散剤を組み合わせた熱硬化性樹脂組成物は、無機充填剤と高分子成分とが高分散されていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1](A)ポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有するブタジエンポリマーと(C)架橋剤とを反応させて得られ、セミIPN構造を形成しているポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーと、(D)無機充填剤と、該(D)成分を分散させる(E)分散剤と、を含有する熱硬化性樹脂組成物、
[2](B)成分が、−[CH2−CH=CH−CH2]−単位(j)及び−[CH2−CH(CH=CH2)]−単位(k)からなる化学変性されていないブタジエンポリマーであり、j:kの比が60:40〜5:95であり、前記(C)成分が、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、かつ、前記(E)成分が、アクリル系樹脂の共重合体からなる上記[1]の熱硬化性樹脂組成物、
[3]前記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを、前記(C)成分の転化率が5〜100%の範囲になるように予備反応させて得られる上記[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物、
[4]前記(C)成分が、下記一般式(1)で表されるマレイミド化合物を含む上記[1]〜[3]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
(式中、R1は、m価の脂肪族性又は芳香族性の有機基であり、Xa及びXbは、水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、mは1以上の整数を示す。)
[5]前記(C)成分が、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種のマレイミド化合物である、上記[1]〜[3]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[6]前記(C)成分が、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンである、上記[1]〜[3]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[7]前記(C)成分が、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンである、上記[1]〜[3]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[8]前記(C)成分が、ジビニルビフェニルを含有するビニル化合物である、上記[1]〜[7]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[9]前記(A)成分の配合割合が、前記(B)成分と前記(C)成分との合計量100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲であり、前記(C)成分の配合割合が、前記(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、かつ、(D)成分の配合割合が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して1〜1,000質量部の範囲である上記[1]〜[8]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[10]前記(A)成分の配合割合が、前記(B)成分と前記(C)成分との合計量100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲であり、前記(C)成分の配合割合が、前記(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、かつ、(E)成分の配合割合が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲である、上記[1]〜[9]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[11]さらに、(F)シランカップリング剤を含有してなる、上記[1]〜[10]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[12]さらに、(G)ラジカル反応開始剤を含有してなる、上記[1]〜[11]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[13]さらに、(H)未硬化のセミIPN構造を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する、架橋性モノマー又は架橋性ポリマーを含有してなる、上記[1]〜[12]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[14]前記(H)成分が、化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン性不飽和二重結合基を含有する、架橋性モノマー又は架橋性ポリマーである、上記[13]の熱硬化性樹脂組成物、
[15]さらに、(I)臭素系難燃剤又はリン系難燃剤を含有してなる、上記[1]〜[14]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[16]さらに、(J)飽和型熱可塑性エラストマーを含有してなる、上記[1]〜[15]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物、
[17]前記飽和型熱可塑性エラストマーが、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含む飽和型熱可塑性エラストマーである、上記[16]の熱硬化性樹脂組成物、
[18]前記スチレン−エチレン−ブチレン共重合体が、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部分の二重結合基に水素添加して得られる、上記[17]の熱硬化性樹脂組成物、
[19]上記[1]〜[18]のいずれかの熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて得られるプリント配線板用樹脂ワニス、
[20]上記[19]のプリント配線板用樹脂ワニスを基材に塗工して得られるプリプレグ、
[21]上記[20]のプリプレグを1枚以上重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱加圧して得られる金属張積層板、
[22]上記[21]の金属張積層板に配線形成して得られるプリント配線板、
に関する。
本発明によれば、無機充填剤と高分子成分とを高充填及び高分散可能な熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリント配線板用樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板を提供できる。
未硬化の状態でセミIPN構造を形成する熱硬化性樹脂組成物を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態として熱硬化性樹脂組成物を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の未硬化状態におけるセミIPN構造を説明する模式図である。IPN(Interpenetrating polymer network(相互侵入高分子網目))構造とは、異種の高分子成分が相互に侵入し合った状態で架橋されてできた高分子網目構造である。IPN構造のうち、一方の成分が直鎖状ポリマーで他方の成分が高分子網目構造のポリマーである系をセミIPN構造という。
本発明に係る新規なセミIPN構造を形成する熱硬化性樹脂組成物が、上述の目的を達成できる要因は、現在のところ詳細には明らかになっていない。本発明者らは以下のように推測しているが、他の要素の関わりを除外するものではない。
本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有するブタジエンポリマーと、(C)架橋剤とを反応させて得られ、セミIPN構造を形成しているポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーと、(D)無機充填剤と、該(D)成分を分散させる(E)分散剤と、を含有する。
本発明では、誘電特性が良好な熱可塑性樹脂であるポリフェニレンエーテル((A)成分)と、硬化後、最も優れた誘電特性を発現する熱硬化性樹脂の一つとして知られる化学変性されていないブタジエンポリマー((B)成分)とを必須成分として含有することにより、誘電特性を向上させることができる。上述のように、ポリフェニレンエーテルと化学変性されていないブタジエンポリマーとは本来、互いに非相溶であり、均一な樹脂とすることが困難であった。ところが、本発明の予備反応を用いる手法により、均一に相容化した新規な構成の樹脂を得ることができる。
本発明において、予備反応とは、反応温度、例えば60〜170℃でラジカルを発生させて、(B)成分と(C)成分とを反応させることであり、(B)成分中の所定量が架橋し、(C)成分の所定量が転化する。すなわち、予備反応によって得られるこの状態はゲル化には至っていない未硬化状態であり、セミIPN構造が形成されている。この予備反応の前の、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の混合液と、予備反応の後に形成されるセミIPN構造を形成するポリマー(セミIPNポリマーと記す)とは、粘度、濁度、液体クロマトグラフィー等の特性ピークの変化により容易に区別することができる。なお、通常の硬化反応とは、熱プレス又は溶剤揮発温度以上でラジカルを発生させて硬化させることであり、本発明における予備反応との違いは明白である。
本発明では、(A)成分であるポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)成分の、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有する化学変性されていないブタジエンポリマーと、(C)成分の架橋剤とを、(C)成分を適正な転化率(反応率)で予備反応させることにより、完全に硬化させる前の未硬化状態で、一旦、一方の直鎖状ポリマー成分(図1に示す実線部分であり、(A)成分に相当する)と、もう片方の架橋性成分(図1に示す点線部分であり、(B)成分及び(C)成分に相当する)とが、セミIPN構造を形成するポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを形成することで均一な樹脂組成物を得ている。
この際の均一化(相容化)は、(A)成分とそれ以外の成分((B)成分と(C)成分との部分架橋物)とが化学的結合を形成するのではなく、(A)成分とそれ以外の成分との分子鎖同士が互いに、部分的かつ物理的に絡み合いながらオリゴマー化している。このため、ミクロ相分離構造を形成し、見かけ上、均一化(相容化)しているものと考えられる。
このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを含有する樹脂組成物(すなわち、未硬化のセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物)を用いると、外観が均一な樹脂膜が得られる。従来知られているポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、セミIPN構造を形成しておらず、また構成成分が相容化していないため、マクロ相分離した状態である。そのために、従来のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、本発明の樹脂組成物とは異なり、見かけ上、不均一になっている。
これに対して、本発明に係るポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを含有する樹脂組成物を用いて製造されるプリプレグ、すなわち、未硬化のセミIPN構造を形成する熱硬化性樹脂組成物を用いて製造されるプリプレグは、外観が均一であり、かつ、ある程度架橋したブタジエンプレポリマーと元々タックのないポリフェニレンエーテルが分子レベルで相容化しているためにタックの問題が解消される。
また、このプリプレグを用いて製造される金属張積層板は、プリプレグ同様に外観上の問題もなく、また、分子鎖同士が部分的かつ物理的に絡み合いながら硬化する。このため、不均一状態の樹脂組成物を硬化させた場合よりも疑似的に架橋密度が高くなるため、弾性率が向上し、熱膨張係数が低くなる。
また、このプリプレグを用いて製造される金属張積層板は、熱硬化性樹脂組成物が均一なミクロ相分離構造を形成することから、弾性率の向上とともに、破壊強度や耐熱性(特に吸湿時)を大幅に高めることができる。
また、このプリプレグを用いて製造される金属張積層板は、熱硬化性樹脂組成物の破壊強度が向上することから、ロープロファイル箔を適用できるレベルまでの高い金属箔引き剥がし強さを発現し得る。
また、(C)成分として、硬化物としたときの樹脂強度や靭性を高める又は分子運動を拘束させる等の特徴を持たせるような特定の架橋剤を選択することにより、金属箔引き剥がし強さ及び熱膨張特性のレベルを向上できることを見出している。
さらに、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物では、分散剤(E)としては、アクリル系樹脂の共重合体からなる分散剤であることが好ましい。なお、本実施形態における分散剤には、いわゆる分散補助剤、分散助剤とよばれるものも含む。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、セミIPN構造を形成するポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーを含むことにより、無機充填剤を添加した際の無機充填剤の沈降を抑制できる。また、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーのセミIPN構造との相乗効果により、無機充填剤が高分子成分中に高分散できることが認められた。
本発明に係るセミIPN構造を形成する熱硬化性樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテルの存在下で、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有するブタジエンホモポリマーと(C)架橋剤とを予備反応させて得られるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーに、(D)無機充填剤、及び(E)分散剤を含有する熱硬化性樹脂組成物である。以下、熱硬化性樹脂組成物の各成分及びポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの好適な製造方法について説明する。
本発明に係るセミIPN構造を形成する熱硬化性樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(A)成分は、例えば、2,6−ジメチルフェノールや2,3,6−トリメチルフェノールの単独重合で得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルやポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテルや2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が挙げられる。
また、これらとポリスチレン、スチレン−ブタジエンコポリマー等とのアロイ化ポリマーなど、いわゆる変性ポリフェニレンエーテルも用いることができる。この場合はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分及び2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体成分を50%以上含有するポリマーであることが好ましい。
また、(A)成分の分子量については、特に制限はないが、プリント配線板としたときの誘電特性や耐熱性と、プリプレグとしたときの樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、数平均分子量で7,000〜30,000の範囲であることが好ましい。なお、ここでいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
本発明において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(B)成分は、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有する化学変性されていないブタジエンポリマーであれば、特に制限はなく、分子中の側鎖1,2−ビニル基や末端の両方又は片方を、エポキシ化、グリコール化、フェノール化、マレイン化、(メタ)アクリル化、ウレタン化等の化学変性された変性ポリブタジエンではなく、未変性のブタジエンポリマーであることが必須である。変性ポリブタジエンを用いると、誘電特性、耐湿性及び吸湿後の耐熱性が悪化するため望ましくない。
(B)成分の分子中の側鎖1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位の含有量は、樹脂組成物の硬化性を考慮すると、50%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましい。
また、(B)成分の数平均分子量は、500〜10,000の範囲であることが好ましい。10,000を超えるとプリプレグとしたときに樹脂の流動性が劣るので好ましくない。500未満であると樹脂組成物の硬化性や硬化物としたときの誘電特性が劣るので好ましくない。
樹脂組成物の硬化性や硬化物としたときの誘電特性と、プリプレグとしたときの樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、700〜8,000の範囲であることがより好ましく、1,000〜5,000の範囲であることがさらに好ましい。なお、数平均分子量とは、(A)成分における数平均分子量の定義記載と同様である。
(B)成分として、−[CH2−CH=CH−CH2]−単位(j)及び−[CH2−CH(CH=CH2)]−単位(k)からなる化学変性されていないブタジエンポリマーであり、j:kの比が60:40〜5:95であるものを用いることができる。
本発明において好適に用いられる(B)成分の具体例としては、B−1000、B−2000、B−3000(日本曹達(株)製、商品名)、B−1000、B−2000、B−3000(新日本石油化学(株)製、商品名)、Ricon142、Ricon150、Ricon152、Ricon153、Ricon154(SARTOMER社製、商品名)等を商業的に入手可能である。
本発明において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(C)成分は、分子中に(B)成分との反応性を有する官能基を有する化合物であり、例えば、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー、又は分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性ポリマーが挙げられる。(C)成分としては、具体的には、ビニル化合物、マレイミド化合物、ジアリルフタレート、(メタ)アクリロイル化合物、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
この中でも好適に用いられる(C)成分としては、少なくとも一種のマレイミド化合物又は少なくとも一種のビニル化合物を含有すると、(B)成分との共架橋性に優れるため樹脂組成物としたときの硬化性や保存安定性が良好であることや、プリント配線板としたときの成形性、誘電特性、吸湿後の誘電特性、熱膨張特性、金属箔引き剥がし強さ、Tg、吸湿時の耐熱性及び難燃性等のトータルバランスが優れるという観点から望ましい。
本発明の(C)成分として好適に用いられるマレイミド化合物は、下記一般式(1)で表される分子中に1個以上のマレイミド基を含有する化合物であれば特に限定されない。
モノマレイミド化合物や下記の一般式(2)で表されるポリマレイミド化合物が好適に使用できる。
(式中、R1は、m価の脂肪族性又は芳香族性の有機基であり、Xa及びXbは、水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、mは1以上の整数を示す。)
(式中、R2は、−C(Xc2−、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、又は連結する結合であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい、Xcは炭素数1〜4のアルキル基、−CF3、−OCH3、−NH2、ハロゲン原子又は水素原子を示し、それぞれ同一又は異なっていてもよい、それぞれベンゼン環の置換位置は相互に独立であり、n及びpは、0〜10の整数を示す)
上述のモノマレイミド化合物の具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
一般式(2)で表されるポリマレイミド化合物、及びその他の具体例としては、1,2−ジマレイミドエタン、1,3−ジマレイミドプロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,7−ジマレイミドフルオレン、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,3−(4−メチルフェニレン))ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)エ−テル、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(2−(3−マレイミドフェニル)プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル)−1−プロピル)ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(マレイミドフェニル)チオフェン等が挙げられる。また、下記の一般式(3)及び一般式(4)のような脂肪族性、脂環式、芳香族性及び複素環式のポリマレイミド、並びにこれらの異性体等が挙げられる。
プリント配線板としたときの耐湿性、耐熱性、破壊強度、金属箔引き剥がし強さ及び低熱膨張特性の観点からは、芳香族性のポリマレイミドが好ましく、その中でも、特に熱膨張係数をさらに低める点では、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを用いることがより好ましく、破壊強度及び金属箔引き剥がし強さをさらに高める点では、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを用いることがより好ましい。
また、プレプリグとしたときの成形性を高める点では、緩やかな硬化反応となるモノマレイミドが好ましく、その中でもコストの点でN−フェニルマレイミドを用いることがより好ましい。そして、上記マレイミド化合物は単独でも、二種類以上を組み合わせて用いてもよく又はこれら少なくとも一種以上のマレイミド化合物と上記に示した架橋剤を一種以上とを併用して用いてもよい。
(C)成分において、マレイミド化合物とその他の架橋剤とを併用して用いる場合は、(C)成分中のマレイミド化合物の割合が50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であるが、他の架橋剤と併用して用いるよりも、マレイミド化合物を単独で用いるほうがより好ましい。
(式中、qは平均値で0〜10である。)
(式中、rは平均値で0〜10である。)
(C)成分として好適に用いられるビニル化合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ジビニルビフェニルが挙げられ、ジビニルビフェニルが好ましい。本発明において好適に用いられる(C)成分の具体例としては、ジビニルビフェニル(新日鐵化学(株)製)が商業的に入手可能である。
本発明に係る新規なセミIPN型複合体の熱硬化性樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、媒体中に展開させた(A)成分の存在下で、(B)成分と、(C)成分とをゲル化しない程度に予備反応させることにより製造される。これにより、本来非相溶系である(A)成分と(B)成分及び(C)成分との間に、分子鎖同士が互いに物理的に絡み合ったセミIPNポリマーが形成され、完全に硬化させる前段階状態(未硬化の状態)で、見かけ上均一化(相容化)したプレポリマーが得られる。
本発明によれば、例えば、(A)成分を溶媒に溶解させるなどにより媒体中に展開させた後、この溶液中に(B)成分及び(C)成分を溶解又は分散させて、60〜170℃で、0.1〜20時間、加熱しながら撹拌することにより製造することができる。溶液中でポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造する場合、溶液中の固形分(不揮発分)濃度が通常5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましい。
そして、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造した後は、濃縮などにより溶媒を完全に除去して無溶媒の樹脂組成物としてもよく又はそのまま溶媒に溶解若しくは分散させたポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液としてもよい。
また、溶液とする場合においても、濃縮等により固形分(不揮発分)濃度を高くした溶液としてもよい。
本発明に係る樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられる(A)成分の配合割合は、熱膨張係数、誘電特性と樹脂ワニスの粘度に起因する塗工作業性及びプリプレグの溶融粘度に起因するプリント配線板としたときの成形性とのバランスを考慮して、(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して、0.2〜20質量部の範囲とするのが好ましく、0.2〜10質量部とすることがより好ましく、0.2〜5質量部とすることがさらに好ましい。
また、(C)成分の配合割合は、熱膨張係数、Tg及び金属箔引き剥がし強さと誘電特性とのバランスを考慮して、(B)成分100質量部に対して、2〜200質量部の範囲とするのが好ましく、5〜100質量部とすることがより好ましく、10〜75質量部とすることがさらに好ましい。
本発明のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーは、その製造の際に、(C)成分の転化率(反応率)が5〜100%の範囲となるように予備反応させて得ることが好ましい。より好ましい範囲としては、上記(B)成分及び(C)成分の配合割合によって異なり、(C)成分の配合割合が、(B)成分100質量部に対して2〜10質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)を10〜100%の範囲とするのがより好ましく、10超〜100質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)を7〜90%の範囲とするのがより好ましく、100超〜200質量部の範囲の場合は、(C)成分の転化率(反応率)を5〜80%の範囲とするのがより好ましい。
(C)成分の転化率(反応率)は、樹脂組成物やプリプレグで外観が均一でかつタックなしであること、プリント配線板で、吸湿時の耐熱性や金属箔引き剥がし強さ、熱膨張係数を考慮すると、5%以上であることが好ましい。
なお、本発明におけるポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとは、(C)成分が100%転化した状態を含む。また、(C)成分の転化が100%未満であり、反応しない、未転化の(C)成分が残存する状態も含む。
(C)成分の転化率(反応率)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー中の(C)成分の残存量と予め作成した(C)成分の検量線とから換算したものである。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物において、(D)無機充填剤としては、特に制限はないが、具体的には、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化チタン、マイカ、シリカ(酸化ケイ素)、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が用いられる。これらの無機充填剤は単独で用いてもよく、二種類以上併用してもよい。また、無機充填剤の形状及び粒径についても特に制限はなく、通常、粒径0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmのものが好適に用いられる。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物において、(D)成分の配合割合は、特に制限はないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(F)成分の合計量100質量部に対して、1〜1,000質量部が好ましく、5〜500質量部がより好ましい。
本発明において用いられる(E)分散剤としては、アクリル系樹脂が好ましい。
アクリル系樹脂の粘度は、30cP以上であることが望ましい。また、アクリル系樹脂の比重は、0.5〜1.5であることが望ましい。
アクリル系樹脂は、極性の低いオレフィン部位と極性の高いカルボニル基とを有していることから、ブタジエンポリマーと無機充填剤の両者と相溶性が高いと考えられる。このため、アクリル系樹脂を用いることによって、ブタジエンポリマー及び無機充填剤の分散性が向上し、沈降や沈殿を生じにくくすることができる。
分散剤の市販品としては、日本モンサント株式会社製の商品名「モダフロー」、「モダフローパウダーIII」、「モダフローパウダー2000」が挙げられる。
BASF株式会社製の商品名「アクロナール4F」、「アクロナールLS8820」が挙げられる。
また、Henkel AG&Co.KGaA製の商品名「ペレノールF3」、「ペレノールF40」、「ペレノールF45」、「ペレノールF30PMOD」、「ペレノールF50」が挙げられる。
また、ビックケミー社製の商品名「BYK−330」、「BYK−354」、「BYK−358」、「BYK−361」、「BYK−360P」、「BYK−363P」、「BYK−364P」、「BYK−365P」が挙げられる。
また、共栄社化学株式会社製の商品名「ポリフローNo.75」、「ポリフローNo.85」、「ポリフローNo.90」、「ポリフローNo.95」、「ポリフローS」が挙げられる。
また、楠本化成株式会社製の商品名「ディスパロンPL−525」、「ディスパロンPL−540」、「ディスパロンPL−550」、「ディスパロンPL−555」、「ディスパロンL−1982−50」、「ディスパロンP−425」、「ディスパロンOX−740」、「ディスパロンOX−881」が挙げられる。
さらに、宇部興産株式会社製の商品名「DDA」が挙げられる。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物において(E)成分の配合割合は、誘電特性と無機充填剤の沈降性のバランスを考慮して、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲とすることが好ましく、0.5〜20質量部の範囲とすることがより好ましく、1〜20質量部とすることがさらに好ましい。
熱硬化性樹脂組成物には、その他の成分として、(F)シランカップリング剤、(G)ラジカル反応開始剤、(H)未硬化のセミIPN構造を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー、又は未硬化のセミIPN構造を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性ポリマー、(I)臭素系難燃剤又はリン系難燃剤、(J)飽和型熱可塑性エラストマーを含有していることが好ましい。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物において用いられる(F)シランカップリング剤としては、アミノ系シランカップリング剤と尿素系シランカップリング剤とを併用して用いることが好ましい。アミノ系シランカップリング剤の具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等が好適に用いられる。
また、尿素系シランカップリング剤としては3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが好適に用いられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよく、アミノ系シランカップリング剤と尿素系シランカップリング剤とをそれぞれ少なくとも一種類以上を含有していれば他のシランカップリング剤を一種類以上併用してもよい。
本発明に係る樹脂組成物において(F)成分の配合割合は、金属箔引き剥がし強さと誘電特性とのバランスを考慮して、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲とすることが好ましく、0.01〜5質量部の範囲とすることがより好ましく、0.01〜2質量部とすることがさらに好ましい。
上記(F)成分におけるアミノ系シランカップリング剤と尿素系シランカップリング剤との併用割合は、アミノ系シランカップリング剤/尿素系シランカップリング剤(質量%)=10:90〜90:10の範囲であることが好ましく、30:70〜70:30の範囲であることがより好ましく、それぞれが同量(50:50)であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物には、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に(B)成分と(C)成分との予備反応を開始又は促進させる目的と、金属張積層板や多層プリント配線板を製造する際に樹脂組成物の硬化反応を開始又は促進させる目的として、(G)ラジカル反応開始剤を含有していることが好ましい。
(G)成分の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物や2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート等が挙げられるが、これらに制限されない。
また、(G)成分は、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー製造時の予備反応を開始又は促進させる目的で用いるものと、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造後に硬化反応を開始又は促進させる目的で用いるものとを、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造前後で分けて配合するのが好ましい。その場合、それぞれの目的で配合する(G)成分は、同種のものを用いても、異なる種類のものを用いてよく、それぞれ一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
本発明に係る樹脂組成物における上記(G)成分の配合割合は、(B)成分及び(C)成分の配合割合に応じて決定することができ、(B)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内で(G)成分のラジカル反応開始剤を配合すると、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造する際の予備反応において適切な反応速度が得られ、金属張積層板や多層プリント配線板を製造する際の硬化反応において、良好な硬化性が得られる。
また、本発明に係る樹脂組成物には、(H)未硬化のセミIPN構造を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー、又は未硬化のセミIPN構造を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性ポリマーをプリント配線板としたときの誘電特性、耐熱性、接着性(金属箔引き剥がし強さ、ガラス等の基材との接着性など)、耐湿性、Tg、熱膨張特性等の特性のバランスを考えた配合量で、さらに配合することができる。
上記(H)成分の未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する、架橋性モノマー又は架橋性ポリマーとしては、具体的には、化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー、又は化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性ポリマーが挙げられる。上記(B)成分及び上記(C)成分として挙げられた化合物を、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造後に用いることができる。
また、化学変性されていないブタジエンポリマーとして、数平均分子量が10,000を超える化学変性されていないブタジエンポリマーも挙げられる。これらの化合物は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
上記の(B)成分及び(C)成分として例示されたものと同じ化合物を(H)成分として配合する場合は、未硬化のセミIPN型複合体(ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー)の製造後に配合し、その場合の(H)成分の配合量は、(B)成分及び(C)成分の配合量とは区別され、下記に好ましい配合量が別途記述される。
上記の(B)成分及び(C)成分として例示されたものと同じ化合物を(H)成分として配合する場合は、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造時に用いたものと、それぞれ同種のものを用いても、異なる種類のものを用いてもよい。
上記(H)成分として、数平均分子量が10,000を超える化学変性されていないブタジエンポリマーを配合する場合、液状タイプでも固形タイプでも用いることができ、1,2−ビニル結合比率及び1,4−結合比率についても特に制限はない。
本発明に係る樹脂組成物における上記(H)成分の配合割合は、特に制限はないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、2〜100質量部とすることが好ましく、2〜80質量部とすることがより好ましく、2〜60質量部とすることがさらに好ましい。
また、本発明に係る樹脂組成物には、(I)臭素系難燃剤又はリン系難燃剤をプリント配線板としたときの誘電特性、耐熱性、接着性(金属箔引き剥がし強さ、ガラス等の基材との接着性など)、耐湿性、Tg、熱膨張特性等の特性のバランスを考えた配合量で、さらに配合することができる。
上記(I)成分の難燃剤としては、特に制限はないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適に用いられる。より具体的には、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤などが挙げられる。
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物、赤リン等のリン系難燃剤を例示でき、金属水酸化物難燃剤としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が例示される。また上述の難燃剤は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物における(I)成分の配合割合は、特に制限はないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(F)成分の合計量100質量部に対して、5〜200質量部とすることが好ましく、5〜150質量部とすることがより好ましく、5〜100質量部とすることがさらに好ましい。難燃剤の配合割合が5質量部以上とすることにより十分な耐燃性が得られ、200質量部以下とすることによりプリント配線板としたときの耐熱性や金属箔引き剥がし強さが得られる。
また、本発明に係る樹脂組成物には、(J)飽和型熱可塑性エラストマーをプリント配線板としたときの誘電特性、耐熱性、接着性(金属箔引き剥がし強さ、ガラス等の基材との接着性など)、耐湿性、Tg、熱膨張特性等の特性のバランスを考えた配合量で、さらに配合することができる。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物において用いられる(J)成分は、飽和型の熱可塑性エラストマーであれば、特に限定されるものではない。(A)成分との相溶性のよいスチレン系飽和型熱可塑性エラストマーが望ましい。
本発明では、(A)ポリフェニレンエーテルの存在下、又は(A)成分及び(J)成分である飽和型熱可塑性エラストマーの存在下で、(B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有する化学変性されていないブタジエンポリマーと、(C)架橋剤とを、(C)成分を適正な転化率(反応率)で予備反応させることにより、(A)成分と、(B)成分及び(C)成分とが、セミIPN構造を形成するポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを形成することができる。
本発明において好適に用いられる(J)成分の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含む飽和型熱可塑性エラストマーが挙げられる。スチレン−エチレン−ブチレン共重合体としては、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエンブロックの不飽和二重結合部分を水素添加する方法等により得られるものが好ましい。
また、スチレン系飽和型熱可塑性エラストマーを用いる場合、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとの相溶性と、樹脂組成物を硬化させた場合の熱膨張特性とのバランスから、スチレンブロックの含有比率が20〜70%であることが好ましい。
さらに、(J)成分は、分子中にエポキシ基、水酸基、カロボキシル基、アミノ基、酸無水物等の官能基を付与した化学変性飽和型熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
また、(J)成分は単独種類でも、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、スチレン系飽和型熱可塑性エラストマーを用いる場合、スチレン含有量の異なる二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物における(J)飽和型熱可塑性エラストマーは、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造後に配合してもよく、例えば、溶媒などの媒体中に展開させた(A)成分と(J)成分の存在下で、(B)成分と、(C)成分とをゲル化しない程度に予備反応させることにより製造される飽和型熱可塑性エラストマー併用ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーとして用いてもよい。
なお、飽和型熱可塑性エラストマー併用ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造する際、各成分における好ましい具体例及び配合量並びに(C)成分の転化率(反応率)などの製造方法については、前記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー製造の際の記載が適用される。
本発明に係る樹脂組成物において、(J)成分の配合割合は、特に制限はないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、2〜50質量部とすることがより好ましく、10〜40質量部とすることがさらに好ましい。(J)成分の配合割合が1質量部未満では誘電特性の向上効果が不充分となる傾向があり、100質量部を超えると硬化物の熱膨張特性が悪化する傾向がある。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、調製に際し、溶媒を用いることができる。溶媒としては、特に制限はないが、具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類等の溶媒が挙げられる。
また、これらは一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類や、芳香族炭化水素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類との混合溶媒がより好ましい。これらの溶媒のうち、芳香族炭化水素類及びケトン類を混合溶媒として用いる場合のそれらの配合割合は、芳香族炭化水素類100質量部に対してケトン類を50〜500質量部であることが好ましく、100〜300質量部であることがより好ましく、100〜200量部であることがさらに好ましい。ケトン類の配合割合を芳香族炭化水素類100質量部に対して100〜200質量部にすることで、無機充填剤の沈降がより抑制できる。
また、本発明に係る樹脂組成物には、各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、各種添加剤をプリント配線板としたときの誘電特性、耐熱性、接着性(金属箔引き剥がし強さ、ガラス等の基材との接着性など)、耐湿性、Tg、熱膨張特性等の特性のバランスを考えた配合量で、必要に応じて配合することができる。
必要に応じて配合される各種熱硬化性樹脂としては、特に制限はないが、具体例としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられ、これらの硬化剤や硬化促進剤などを用いてもよい。
また、必要に応じて配合される各種熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−ペンテン)等のポリオレフィン類及びその誘導体、ポリエステル類及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、(メタ)アクリル酸エステル共重合体類、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体類、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール類、ポリビニルアルコール類、ポリブタジエンの完全水素添加物類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリアミドイミド、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー等が挙げられる。
各種添加剤としては、特に制限はないが、具体例としては、チタネートカップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等が挙げられる。
またこれら各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂及び各種添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、上述した(A)成分の存在下で、(B)成分と(C)成分とを反応させて得られ、セミIPN構造を形成しているポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーと、(D)成分と、(E)成分とを用いて、好ましくは、(F)シランカップリング剤、(G)ラジカル反応開始剤、(H)未硬化のセミIPN型複合体を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマー、(I)難燃剤、(J)飽和型熱可塑性エラストマーを用いて、さらに必要に応じて各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、各種添加剤を、公知の方法で配合、撹拌・混合することにより製造することができる。
上述した本発明に係る熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させることにより、本発明に係る樹脂ワニスを得ることができる。
また、溶液中でポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造した場合は、一旦、溶媒を除去して無溶媒のポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーと、上述のその他の配合剤とを溶媒に溶解又は分散させて樹脂ワニスとしてもよく、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液に、(D)成分、(E)成分を配合して、さらに、(F)成分、(G)成分、(H)成分、(I)成分、上述のその他の配合剤と、必要に応じて追加の溶媒を配合して樹脂ワニスとしてもよい。
上述の樹脂組成物をワニス化する際に用いられる溶媒は、特に限定するものではないが、具体例や好ましい溶媒の例としては、上記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に用いられる溶媒について記載したものを用いることができ、これらは一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよく、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類や、芳香族炭化素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類との混合溶媒がより好ましい。なお、ワニス化する際の溶媒は、上記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造の際に用いられる溶媒と同種のものでも、異なる種類の溶媒を用いてもよい。
また、ワニス化する際は、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度が、5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましいが、本発明の樹脂ワニスを用いてプリプレグ等を製造する際、溶媒量を調節することにより、塗工作業に最適な(例えば、良好な外観及び適正な樹脂付着量となるように)固形分(不揮発分)濃度やワニス粘度に調製することができる。
上述した本発明に係る樹脂組成物及び樹脂ワニスを用いて、公知の方法により、本発明に係るプリプレグや金属張積層板を製造することができる。例えば、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物及び樹脂ワニスを、ガラス繊維、有機繊維等の強化繊維基材に含浸させた後、乾燥炉中等で通常、60〜200℃、好ましくは80〜170℃の温度で、2〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥させることによってプリプレグが得られる。
次いで、このプリプレグを1枚又は複数枚重ねた、その片面又は両面に金属箔を配置し、所定の条件で加熱及び/又は加圧することにより両面又は片面の金属張積層板が得られる。この場合の加熱は、好ましくは100℃〜250℃の温度範囲で実施することができ、加圧は、好ましくは0.5〜10.0MPaの圧力範囲で実施することができる。加熱及び加圧は真空プレスなどを用いて同時に行うことが好ましく、この場合、これらの処理を30分〜10時間実施することが好ましい。
また、上述のようにして製造されたプリプレグや金属張積層板を用いて、公知の方法によって、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔をエッチングなどによる回路形成加工及び多層化接着加工を行うことによって、片面、両面又は多層プリント配線板が得られる。
本発明は、上記の形態に限定されず、その発明の目的から逸脱しない範囲内において、任意の変更、改変を行うことができる。
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
[ワニス(樹脂組成物)の調製]
<調製例1>
温度計、還流冷却器、減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、トルエン325質量部及び(A)成分としてポリフェニレンエーテル(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名S202A、Mn:16000)7質量部を投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。
次いで、(B)成分として化学変性されていないブタジエンポリマー(日本曹達(株)製、商品名B−3000、Mn:3000、1,2−ビニル構造:90%)100質量部、(C)成分としてN−フェニルマレイミド(日本触媒(株)製、商品名イミレックス−P)19質量部投入し、撹拌を続け、これらが溶解又は均一分散したことを確認した。
その後、液温を110℃に上昇させ、その温度を保ったまま、G成分の反応開始剤として、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサC)0.4質量部を配合し、撹拌しながら2時間予備反応させて、(A)成分としてポリフェニレンエーテル、(B)成分として化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)成分として架橋剤とが相容化したポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液を得た。
このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のN−フェニルマレイミドの転化率を分光光度計により測定したところ、転化率50%であった。転化率は、100からN−フェニルマレイミドの未転化分(測定値)を引いた値である。
次いで、フラスコ内の液温を80℃に設定後、攪拌しながら溶液の固形分濃度が60質量%になるように減圧濃縮した。次に、溶液を室温まで冷却した後、(E)成分としてアクリル系共重合樹脂1(日本モンサント社製、モダフロー)2質量部、(F)成分として3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM−903)0.6質量部及び3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM−585)0.6質量部、(G)成分としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油(株)製、パーブチルP)、(H)成分としてビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(大和化成工業(株)製、BMI−5100)11質量部と2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(大和化成工業(株)製、BMI−4000)26質量部、(I)成分としてエチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール日本(株)製、SAYTEX8010)52質量部、(D)成分として球形シリカ((株)アドマテックス製、SO−25R)165質量部、成分(J)としてスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名タフテックH1051)45質量部、トルエン115質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)91質量部を配合した後、メチルエチルケトン(MEK)を配合して、調製例1のワニス(固形分濃度約54質量%)を調製した。
<調製例2>
調製例1において、(E)成分としてアクリル系共重合樹脂1(日本モンサント社製、モダフロー)の配合量を3.3質量部にしたこと以外は、調製例1と同様にして調製例2のワニス(固形分濃度約54%)を調製した。
<調製例3>
調製例1において、(E)成分としてアクリル系共重合樹脂1(日本モンサント社製、モダフロー)の配合量を5質量部にしたこと以外は、調製例1と同様にして調製例3のワニス(固形分濃度約54%)を調製した。
<調製例4>
調製例1において、(E)成分としてアクリル系共重合樹脂1(日本モンサント社製、モダフロー)の配合量を7質量部にしたこと以外は、調製例1と同様にして調製例4のワニス(固形分濃度約54%)を調製した。
<調製例5>
調製例4において、(E)成分としてアクリル系共重合樹脂1(日本モンサント社製、モダフロー)の代わりに、アクリル系共重合樹脂2(BASF社製、アクロナール4F)7質量部を用いたこと以外は、調製例4と同様にして調製例5のワニス(固形分濃度約54%)を調製した。
<調製例6>
調製例4において、(E)成分としてアクリル系共重合樹脂1(日本モンサント社製、モダフロー)の代わりに、アクリル系共重合樹脂3(ビックケミー社製、BYK−354)7質量部を用いたこと以外は、調製例4と同様にして調製例5のワニス(固形分濃度約54%)を調製した。
<調製例7>
調製例4において、(D)成分として球形シリカ((株)アドマテックス製、SO−25R)の配合量を235質量部、トルエンの配合量を82質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)の配合量を195質量部にしたこと以外は、調製例4と同様にして調製例5のワニス(固形分濃度約54%)を調製した。
<比較調製例1>
温度計、還流冷却器、減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、トルエン325質量部及び(A)成分としてポリフェニレンエーテル(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名S202A、Mn:16000)7質量部を投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。
次いで、(B)成分として化学変性されていないブタジエンポリマー(日本曹達(株)製、商品名B−3000、Mn:3000、1,2−ビニル構造:90%)100質量部、(C)成分としてN−フェニルマレイミド(日本触媒(株)製、商品名イミレックス−P)19質量部投入し、撹拌を続け、これらが溶解又は均一分散したことを確認した。
その後、液温を110℃に上昇させ、その温度を保ったまま、反応開始剤として、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサC)0.4質量部を配合し、撹拌しながら2時間予備反応させて、(A)ポリフェニレンエーテル、(B)化学変性されていないブタジエンポリマー及び(C)架橋剤とが相容化したポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液を得た。
このポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液中のN−フェニルマレイミドの転化率を分光光度計により測定したところ、転化率50%であった。転化率は、100からN−フェニルマレイミドの未転化分(測定値)を引いた値である。
次いで、フラスコ内の液温を80℃に設定後、攪拌しながら溶液の固形分濃度が60質量%になるように減圧濃縮した。次に、溶液を室温まで冷却した後、(F)成分として3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM−903)0.6質量部及び3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM−585)0.6質量部、(G)成分としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油(株)製、パーブチルP)、(H)成分としてビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(大和化成工業(株)製、BMI−5100)11質量部と2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(大和化成工業(株)製、BMI−4000)26質量部、(I)成分としてエチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール日本(株)製、SAYTEX8010)52質量部、(D)成分として球形シリカ((株)アドマテックス製、SO−25R)165質量部、(J)成分としてスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名タフテックH1051)45質量部、トルエン115質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)91質量部を配合した後、メチルエチルケトン(MEK)を配合して、比較調製例1のワニス(固形分濃度約54質量%)を調製した。
<比較調製例2>
比較調製例1において、(D)成分として球形シリカ((株)アドマテックス製、SO−25R)の配合量を235質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)152質量部にしたこと以外は、比較調製例1と同様にして比較調製例2のワニス(固形分濃度約54%)を調製した。
<比較調製例3>
調製例7において、(E)成分の配合量を0質量部にしたこと以外は,調製例7と同様にして比較調製例3のワニス(固形分濃度約54%)を調製した。
表1中、略号は以下の意味を有する。
*1:アクリル系共重合樹脂1(日本モンサント株式会社製、商品名「モダフロー」)
*2:アクリル系共重合樹脂2(BASF株式会社製、商品名「アクロナール4F」)
*3:アクリル系共重合樹脂3(ビックケミー社製、商品名「BYK−354」
*4:球状シリカ((株)アドマテックス製、商品名「SO−25R」)
*5:メチルイソブチルケトン
[評価方法]
<沈降性の評価>
調製例1〜7及び比較調製例1〜3で得られたワニスを、スクリュー管に所定量投入し、配合当日、配合1日後、配合3日後のワニス状態を確認した。
<樹脂硬化物の走査電子顕微鏡観察>
調製例1〜7及び比較調製例1〜3で得られたワニスを、アプリケータを用いてガラス板上に塗布して,110℃で10min乾燥した後,金属製ヘラで削ぎ落として得た未硬化(Bステージ)樹脂を成形サイズのテフロンスペーサに所定量いれ,過熱加圧成形して、実施例1〜7及び比較例1〜3の樹脂硬化物を作製した。実施例1〜7及び比較例1〜3の樹脂硬化物について、走査電子顕微鏡観察を行った。走査電子顕微鏡観察では、樹脂硬化物を注型後、研磨してサンプルとした。得られたサンプルの表面にイオンスパッタ装置を用いてPtを蒸着する導電処理を施した。この後、サンプルの断面を観察した。
[評価結果]
沈降性の評価結果を表2に示す。なお、表中の数字はワニス全体の体積に対する浮いた溶剤の体積を意味する。樹脂硬化物の走査電子顕微鏡観察の結果を表3に示す。
表2及び表3の比較例1と実施例1〜4から分かるように、分散剤を添加することによって無機充填剤の沈降及び凝集が抑制できることが明らかである。また、分散剤の配合量を増量することによって、無機充填剤の沈降及び凝集がより抑制される。
実施例4〜6は分散剤の種類が異なる系である。実施例4〜実施例6を比較すると、アクリル系の共重合樹脂であれば、その沈降抑制能は変わらないことが明らかである。
実施例4と実施例7は無機充填剤の配合量が異なる系である。実施例4と実施例7を比較すると、無機充填剤の配合量が増量することで、沈降が大きくなり、凝集物も大きくなっている。これは、系中に無機充填剤が高充填されているため、より凝集しやすくなっているためだと考えられる。
実施例7と比較例2は配合するトルエン及びメチルイソブチルケトンの配合量が異なる系である。実施例7と比較例2を比較すると、トルエンの配合量を減量し、メチルイソブチルケトン(MIBK)の配合量を増量することで、無機充填剤の沈降及び凝集が抑制されることが明らかである。これは、極性の高い無機充填剤が極性の低いトルエンよりも、より極性の高いメチルイソブチルケトン(MIBK)との相溶性が高いため、凝集しにくくなったと考えられる。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、無機充填剤を高充填、高分散することが可能となる。これにより、伝送損失を有意に低減可能であるという電気特性に優れ、優れた高周波特性を達成できる。このため、良好な耐熱性(特に吸湿耐熱性)及び低熱膨張特性を達成できる。したがって、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、1GHz以上の高周波信号を扱う移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器、及び大型コンピュータ等の各種電気・電子機器に使用されるプリント配線板の部材・部品用途として有用である。

Claims (22)

  1. (A)ポリフェニレンエーテルの存在下で、
    (B)側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有するブタジエンポリマーと(C)架橋剤とを反応させて得られ、セミIPN構造を形成しているポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーと、
    (D)無機充填剤と、
    該ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンポリマーと該(D)成分を分散させる(E)分散剤としてのアクリル系樹脂と、
    を含有する熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記(B)成分が、−[CH−CH=CH−CH]−単位(j)及び−[CH−CH(CH=CH)]−単位(k)からなる化学変性されていないブタジエンポリマーであり、j:kの比が60:40〜5:95であり、
    前記(C)成分が、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを、前記(C)成分の転化率が5〜100%の範囲になるように予備反応させて得られる請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記(C)成分が、下記一般式(1)で表されるマレイミド化合物を含む請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。

    (式中、Rは、m価の脂肪族性又は芳香族性の有機基であり、X及びXは、水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、mは1以上の整数を示す。)
  5. 前記(C)成分が、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種のマレイミド化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記(C)成分が、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンである、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 前記(C)成分が、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンである、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 前記(C)成分が、ジビニルビフェニルを含有するビニル化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 前記(A)成分の配合割合が、前記(B)成分と前記(C)成分との合計量100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲であり、
    前記(C)成分の配合割合が、前記(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、かつ、
    (D)成分の配合割合が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して1〜1,000質量部の範囲である請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. 前記(A)成分の配合割合が、前記(B)成分と前記(C)成分との合計量100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲であり、
    前記(C)成分の配合割合が、前記(B)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲であり、かつ、
    (E)成分の配合割合が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲である請求項1〜9のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. さらに(F)シランカップリング剤を含有してなる請求項1〜10のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  12. さらに(G)ラジカル反応開始剤を含有してなる請求項1〜11のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  13. さらに(H)未硬化のセミIPN構造を構成しない、分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する、架橋性モノマー又は架橋性ポリマーを含有してなる請求項1〜12のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  14. 前記(H)成分が、化学変性されていないブタジエンポリマー及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン性不飽和二重結合基を含有する、架橋性モノマー又は架橋性ポリマーである、請求項13記載の熱硬化性樹脂組成物。
  15. さらに(I)臭素系難燃剤又はリン系難燃剤を含有してなる請求項1〜14のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  16. さらに(J)飽和型熱可塑性エラストマーを含有してなる請求項1〜15のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  17. 前記飽和型熱可塑性エラストマーが、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含む飽和型熱可塑性エラストマーである請求項16に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  18. 前記スチレン−エチレン−ブチレン共重合体が、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部分の二重結合基に水素添加して得られる請求項17に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  19. 請求項1〜18のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて得られるプリント配線板用樹脂ワニス。
  20. 請求項19に記載のプリント配線板用樹脂ワニスを基材に塗工して得られるプリプレグ。
  21. 請求項20に記載のプリプレグを1枚以上重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱加圧して得られる金属張積層板。
  22. 請求項21に記載の金属張積層板に配線形成して得られるプリント配線板。
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