JP7369580B2 - ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物、ドライフィルム、プリプレグ、硬化物、積層板、および電子部品 - Google Patents

ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物、ドライフィルム、プリプレグ、硬化物、積層板、および電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリフェニレンエーテルに関し、さらに当該ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物、ドライフィルム、プリプレグ、硬化物、積層板、および電子部品に関する。
第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信や自動車のADAS(先進運転システム)向けミリ波レーダー等などの普及により、通信機器の信号の高周波化が進んできた。
しかし、配線板材料としてエポキシ樹脂などを使用した場合、比誘電率(Dk)や誘電正接(Df)が十分に低くないために、周波数が高くなるほど誘電損失に由来する伝送損失の増大が起こり、信号の減衰や発熱などの問題が生じていた。そのため、低誘電特性にすぐれたポリフェニレンエーテルが使用されてきた。
また、非特許文献1には、ポリフェニレンエーテルの分子内にアリル基を導入させて、熱硬化性樹脂とすることで、耐熱性を向上させたポリフェニレンエーテルが提案されている。
J. Nunoshige, H. Akahoshi, Y. Shibasaki, M. Ueda, J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2008, 46, 5278-5282.
しかしながら、ポリフェニレンエーテルは可溶な溶媒が限られており、非特許文献1の手法で得られたポリフェニレンエーテルも、クロロホルムやトルエン等の非常に毒性が高い溶媒にしか溶解しない。そのため、樹脂ワニスの取り扱いや、配線板用途のような塗膜化して硬化させる工程における溶媒暴露の管理が難しいという問題があった。
さらに、電子部品用の絶縁膜では、銅張積層板(CCL)を廃した基板のコアレス化や基板自体の軽薄短小化に伴う、クラックや剥離等の不具合を防止する観点から、物理的、熱的な応力に耐え得る優れた機械強度、熱変化に対する寸法安定性(低線膨張性)、等が求められる。
そこで本発明の目的は、低誘電特性を維持しつつも、種々の溶媒(毒性の高い有機溶媒以外の有機溶媒、例えばシクロヘキサノン)に可溶であり、硬化して得られた膜が優れた機械強度や低線膨張性を有する硬化性組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した結果、特定のポリフェニレンエーテルと、特定の化合物とを含む硬化性組成物により、上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
本発明(1)は、
少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られ、コンフォメーションプロットで算出された傾きが0.6未満であり、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルと、
1分子中に少なくとも1つのマレイミド基を含有する化合物と
を含む硬化性組成物である。
前記硬化性組成物は、トリアルケニルイソシアヌレートを含んでいてもよい。
本発明(2)は、
前記発明(1)の硬化性組成物を基材に塗布して得られることを特徴とするドライフィルムまたはプリプレグである。
本発明(3)は、
前記発明(1)の硬化性組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化物である。
本発明(4)は、
前記発明(3)の硬化物を含むことを特徴とする積層板である。
本発明(5)は、
前記発明(3)の硬化物を有することを特徴とする電子部品である。
本発明によれば、低誘電特性を維持しつつも、種々の溶媒(毒性の高い有機溶媒以外の有機溶媒、例えばシクロヘキサノン)に可溶であり、硬化して得られた膜が優れた機械強度や低線膨張性を有する硬化性組成物を提供することが可能となる。
以下、ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物について説明するが、本発明は以下には何ら限定されない。
説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
本発明において、「不飽和炭素結合」は、特に断らない限り、エチレン性またはアセチレン性の炭素間多重結合(二重結合または三重結合)を示す。
本発明において、不飽和炭素結合を有する官能基としては、特に限定されないが、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基)、又は、(メタ)アクリルロイル基であることが好ましく、硬化性に優れる観点からビニル基、アリル基、(メタ)アクリルロイル基であることがより好ましく、低誘電特性に優れる観点からアリル基であることが更に好ましい。なお、これらの不飽和炭素結合を有する官能基は、炭素数を、例えば15以下、10以下、8以下、5以下、3以下等とすることができる。
本発明において、ポリフェニレンエーテル(PPE)の原料として用いられ、ポリフェニレンエーテルの構成単位になり得るフェノール類を総称して、「原料フェノール類」とする。
本発明において、原料フェノール類の説明を行う際に「オルト位」や「パラ位」等と表現した場合、特に断りがない限り、フェノール性水酸基の位置を基準(イプソ位)とする。
本発明において、単に「オルト位」等と表現した場合、「オルト位の少なくとも一方」等を示す。従って、特に矛盾が生じない限り、単に「オルト位」とした場合、オルト位のどちらか一方を示すと解釈してもよいし、オルト位の両方を示すと解釈してもよい。
本発明において、ポリフェニレンエーテルが有する一部または全ての官能基(例えば、水酸基)が変性されたポリフェニレンエーテルを、単に「ポリフェニレンエーテル」と表現する場合がある。従って、「ポリフェニレンエーテル」と表現された場合、特に矛盾が生じない限り、未変性のポリフェニレンエーテルおよび変性されたポリフェニレンエーテルの両方を含む。
本明細書において、原料フェノール類としては主に1価のフェノール類を開示しているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、原料フェノール類として多価のフェノール類を使用してもよい。
本明細書において、「樹脂組成物」を「硬化性組成物」の意味で使用することがある。
本明細書において、数値範囲の上限値と下限値とが別々に記載されている場合、矛盾しない範囲で、各下限値と各上限値との全ての組み合わせが実質的に記載されているものとする。
<<<<硬化性組成物>>>>
硬化性組成物は、ポリフェニレンエーテルと、1分子中に少なくとも1つのマレイミド基を含有する化合物(マレイミド化合物、マレイミド樹脂等と表記する。)と、を含む。また、硬化性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。以下、それぞれの成分について説明する。
<<<ポリフェニレンエーテル>>>
ポリフェニレンエーテルは、少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られ、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルである。このようなポリフェニレンエーテルを、所定ポリフェニレンエーテルとする。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
条件1を満たすフェノール類{例えば、後述するフェノール類(A)およびフェノール類(B)}は、オルト位に水素原子を有するため、フェノール類と酸化重合される際に、イプソ位、パラ位のみならず、オルト位においてもエーテル結合が形成され得るため、分岐鎖状の構造を形成することが可能となる。
このように、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを、分岐ポリフェニレンエーテルと表現する場合がある。
条件1を満たさないフェノール類{例えば、後述するフェノール類(C)およびフェノール類(D)}は、酸化重合される際には、イプソ位およびパラ位においてエーテル結合が形成され、直鎖状に重合されていく。
このように、所定ポリフェニレンエーテルは、その構造の一部が、少なくともイプソ位、オルト位、パラ位の3か所がエーテル結合されたベンゼン環により分岐することとなる。ポリフェニレンエーテルは、例えば、骨格中に少なくとも式(i)で示されるような分岐構造を有するポリフェニレンエーテルである化合物と考えられる。
Figure 0007369580000001
式(i)中、R~Rは、水素原子、または炭素数1~15(好ましくは、炭素数1~12)の炭化水素基である。
本発明の効果を阻害しない範囲内で、原料フェノール類は、条件1を満たさないその他のフェノール類を含んでいてもよい。
その他のフェノール類としては、例えば、後述するフェノール類(C)およびフェノール類(D)、パラ位に水素原子を有しないフェノール類が挙げられる。ポリフェニレンエーテルの高分子量化のために、原料フェノール類として、フェノール類(C)およびフェノール類(D)をさらに含むことが好ましい。
ここで、所定ポリフェニレンエーテルは、不飽和炭素結合を含む官能基を有する。ポリフェニレンエーテルに不飽和炭素結合を含む官能基を含有させる方法としては特に限定されないが、次の[方法1]または[方法2]であることが好ましい。
[方法1]
方法1は、
原料フェノール類として、
少なくとも下記条件1および下記条件2をいずれも満たすフェノール類(A)を含ませる、または、
少なくとも下記条件1を満たし下記条件2を満たさないフェノール類(B)と下記条件1を満たさず下記条件2を満たすフェノール類(C)の混合物を含ませる方法である。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
(条件2)
パラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有する
方法1によれば、原料フェノール類由来の不飽和炭素結合を含む官能基を有する所定ポリフェニレンエーテルを得ることができる。
[方法2]
方法2は、
分岐ポリフェニレンエーテルの末端水酸基を、不飽和炭素結合を含む官能基に変性させ、末端変性ポリフェニレンエーテルとする方法である。
方法2によれば、原料フェノール類が不飽和炭素結合を含む官能基を有しない場合でも、不飽和炭素結合を含む官能基が導入された所定ポリフェニレンエーテルを得ることができる。
[方法1]と[方法2]とは、同時に実施されてもよい。
以下、[方法1]によって得られる所定ポリフェニレンエーテル、および、[方法2]によって得られる所定ポリフェニレンエーテル、について其々詳述する。
<<方法1によって得られる所定ポリフェニレンエーテル>>
方法1によって得られる所定ポリフェニレンエーテルは、
(形態1)少なくとも、下記条件1および下記条件2をいずれも満たすフェノール類(A)を必須成分として含む原料フェノール類、または、
(形態2)少なくとも、下記条件1を満たし下記条件2を満たさないフェノール類(B)と下記条件1を満たさず下記条件2を満たすフェノール類(C)との混合物を必須成分として含む原料フェノール類、
を重合させて得られるものである。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
(条件2)
パラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有する
条件2を満たすフェノール類{例えば、フェノール類(A)およびフェノール類(C)}は、少なくとも不飽和炭素結合を含む炭化水素基を有する。従って、条件2を満たすフェノール類を原料として合成されるポリフェニレンエーテルは、不飽和炭素結合を含む炭化水素基を官能基として有することで、架橋性を有することとなる。更には、ポリフェニレンエーテルがこのような不飽和炭素結合を含む炭化水素基を有する場合、後述する側鎖エポキシ化ポリフェニレンエーテルへの変性を実施することが可能である。
方法1によって得られる所定ポリフェニレンエーテルは、その構造の一部が、少なくともイプソ位、オルト位、パラ位の3か所がエーテル結合されたベンゼン環により分岐することとなる。ポリフェニレンエーテルは、例えば、骨格中に少なくとも式(i)で示されるような分岐構造を有するポリフェニレンエーテルであり、少なくとも一つの不飽和炭素結合を含む炭化水素基を官能基として有する化合物と考えられる。すなわち、上記式(i)中のR~Rの少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。
次に、上記形態1は、原料フェノール類として、さらにフェノール類(B)および/またはフェノール類(C)を含む形態であってもよい。また、上記形態2は、原料フェノール類として、さらにフェノール類(A)を含む形態であってもよい。
また、本発明の効果を阻害しない範囲内で、原料フェノール類は、その他のフェノール類を含んでいてもよい。
その他のフェノール類としては、例えば、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であるフェノール類(D)が挙げられる。
上記形態1および上記形態2のいずれにおいても、ポリフェニレンエーテルの高分子量化のために、原料フェノール類として、フェノール類(D)をさらに含むことが好ましい。
ポリフェニレンエーテルは、上記形態2において、原料フェノール類として、フェノール類(D)をさらに含む形態であることがもっとも好ましい。
さらに、上記形態2においては、工業的・経済的な観点から、フェノール類(B)が、o-クレゾール、2-フェニルフェノール、2-ドデシルフェノールおよびフェノールの少なくともいずれか1種であり、フェノール類(C)が、2-アリル-6-メチルフェノールであることが好ましい。
以下、フェノール類(A)~(D)に関してより詳細に説明する。
フェノール類(A)は、上述のように、条件1および条件2のいずれも満たすフェノール類、即ち、オルト位およびパラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類であり、好ましくは下記式(1)で示されるフェノール類(a)である。
Figure 0007369580000002
式(1)中、R~Rは、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~Rの少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
式(1)で示されるフェノール類(a)としては、o-ビニルフェノール、m-ビニルフェノール、o-アリルフェノール、m-アリルフェノール、3-ビニル-6-メチルフェノール、3-ビニル-6-エチルフェノール、3-ビニル-5-メチルフェノール、3-ビニル-5-エチルフェノール、3-アリル-6-メチルフェノール、3-アリル-6-エチルフェノール、3-アリル-5-メチルフェノール、3-アリル-5-エチルフェノール等が例示できる。式(1)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
フェノール類(B)は、上述のように、条件1を満たし、条件2を満たさないフェノール類、即ち、オルト位およびパラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であり、好ましくは下記式(2)で示されるフェノール類(b)である。
Figure 0007369580000003
式(2)中、R~Rは、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~Rは、不飽和炭素結合を有しない。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
式(2)で示されるフェノール類(b)としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、o-tert-ブチルフェノール、m-tert-ブチルフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、2-ドデシルフェノール、等が例示できる。式(2)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
フェノール類(C)は、上述のように、条件1を満たさず、条件2を満たすフェノール類、即ち、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類であり、好ましくは下記式(3)で示されるフェノール類(c)である。
Figure 0007369580000004
式(3)中、RおよびR10は、炭素数1~15の炭化水素基であり、RおよびRは、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~R10の少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
式(3)で示されるフェノール類(c)としては、2-アリル-6-メチルフェノール、2-アリル-6-エチルフェノール、2-アリル-6-フェニルフェノール、2-アリル-6-スチリルフェノール、2,6-ジビニルフェノール、2,6-ジアリルフェノール、2,6-ジイソプロペニルフェノール、2,6-ジブテニルフェノール、2,6-ジイソブテニルフェノール、2,6-ジイソペンテニルフェノール、2-メチル-6-スチリルフェノール、2-ビニル-6-メチルフェノール、2-ビニル-6-エチルフェノール等が例示できる。式(3)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
フェノール類(D)は、上述のように、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であり、好ましくは下記式(4)で示されるフェノール類(d)である。
Figure 0007369580000005
式(4)中、R11およびR14は、不飽和炭素結合を有しない炭素数1~15の炭化水素基であり、R12およびR13は、水素原子、または不飽和炭素結合を有しない炭素数1~15の炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
式(4)で示されるフェノール類(d)としては、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジトリルフェノール等が例示できる。式(4)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
ここで、本発明において、炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、アルケニル基である。不飽和炭素結合を有する炭化水素基としては、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。なお、これらの炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
さらに、その他のフェノール類として、パラ位に水素原子を有しないフェノール類等を含んでいてもよい。
原料フェノール類の合計に対する条件1を満たすフェノール類の割合が、1~50mol%であることが好ましい。
条件2を満たすフェノール類を使用しなくてもよいが、使用する場合、原料フェノール類の合計に対する条件2を満たすフェノール類の割合が0.5~99mol%であることが好ましく、1~99mol%であることがより好ましい。
<<方法2によって得られる所定ポリフェニレンエーテル>>
方法2によって得られる所定ポリフェニレンエーテルは、末端変性分岐ポリフェニレンエーテルである。
末端変性分岐ポリフェニレンエーテルは、分岐構造を有し、かつ末端水酸基が変性されているため、種々の溶媒に可溶でありつつも、低誘電特性を更に低減した硬化物が得られる。また、末端変性分岐ポリフェニレンエーテルは、変性用化合物由来の不飽和炭素結合を有する官能基を含むため、架橋性を有する。
また、末端変性分岐ポリフェニレンエーテルは、不飽和炭素結合を末端の位置に配した結果、反応性が極めて良好となり、得られる硬化物の緒性能はより良好となる。
変性用化合物により末端水酸基を変性する場合、通常、末端水酸基と変性用化合物とでエーテル結合またはエステル結合を形成する。
ここで、変性用化合物としては、不飽和炭素結合を有する官能基を含み、触媒の存在下または非存在下で、フェノール性の水酸基と反応可能な限りにおいて特に限定されない。
変性用化合物の好適例としては、下記式(11)で示される有機化合物が挙げられる。
Figure 0007369580000006
式(11)中、R、R、Rは、各々独立して、水素または、炭素数1~9の炭化水素基であり、Rは、炭素数1~9の炭化水素基であり、Xは、F、Cl、Br、IまたはCN等のフェノール性水酸基と反応可能な基である。
また、別の観点では、変性用化合物の好適例としては、下記式(11-1)で示される有機化合物が挙げられる。
Figure 0007369580000007
式(11-1)中、Rは、ビニル基、アリル基、又は、(メタ)アクリルロイル基であり、Xは、F、Cl、Br、I等のフェノール性水酸基と反応可能な基である。
分岐ポリフェニレンエーテルの末端水酸基が変性されたことは、分岐ポリフェニレンエーテルと末端変性分岐ポリフェニレンエーテルとの水酸基価を比較することで確認することができる。なお、末端変性分岐ポリフェニレンエーテルは、一部が未変性の水酸基のままであってもよい。
変性に際しての反応温度、反応時間、触媒の有無および触媒の種類等については、適宜設計可能である。変性用化合物として2種類以上の化合物を使用してもよい。
方法2によって所定ポリフェニレンエーテルを得る場合、変性前の分岐ポリフェニレンエーテルは、不飽和炭素結合含有の分岐ポリフェニレンエーテル(上述した方法1によって得られる所定ポリフェニレンエーテル)であってもよいし、不飽和炭素結合非含有の分岐ポリフェニレンエーテルであってもよい。
不飽和炭素結合非含有の分岐ポリフェニレンエーテルは、少なくとも下記条件1を満たすフェノール類を含み、下記条件Zを満たすフェノール類を含まない原料フェノール類から得られるポリフェニレンエーテルであってもよい。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
(条件Z)
不飽和炭素結合を有する官能基を含む
このように、不飽和炭素結合非含有の分岐ポリフェニレンエーテルは、条件1を満たし、且つ、条件Zを満たさないフェノール類{例えば、フェノール類(B)}を必須成分とする。
不飽和炭素結合非含有の分岐ポリフェニレンエーテルは、更なる原料フェノール類として、条件Zを満たさないその他のフェノール類を含んでいてもよい。
条件Zを満たさないその他のフェノール類としては、例えば、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であるフェノール類(D)、パラ位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルの高分子量化のために、不飽和炭素結合非含有の所定ポリフェニレンエーテルにおける原料フェノール類として、フェノール類(D)をさらに含むことが好ましい。
不飽和炭素結合非含有の分岐ポリフェニレンエーテルを原料とする場合、原料フェノール類として上記条件Zを満たすフェノール類を含まないため、側鎖には不飽和炭素結合が導入されない。原料フェノール類の酸化重合によって得られたポリフェニレンエーテルの末端水酸基の一部又は全部を、不飽和炭素結合を有する官能基に変性することで、硬化性が付与される。その結果、末端水酸基による低誘電特性、耐光性、耐環境性の悪化が抑制され、かつ、末端部位の不飽和炭素結合が優れた反応性を有することで、後述の架橋型硬化剤との硬化物として、高強度と優れた耐クラック性が得られる。
分岐ポリフェニレンエーテルが不飽和炭素結合非含有である場合、原料フェノール類の合計に対する条件1を満たし条件Zを満たさないフェノール類の割合は、例えば、10mol%以上である。
ここで、不飽和炭素結合を有する官能基を含まない炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられる。なお、これらの炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
なお、このような所定ポリフェニレンエーテルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
<<所定ポリフェニレンエーテルの含有量>>
硬化性組成物中、所定ポリフェニレンエーテルの含有量は、典型的には、組成物の固形分全量基準で、5~30質量%または10~20質量%である。また、別の観点では、硬化性組成物中の所定ポリフェニレンエーテルの含有量は、組成物の固形分全量基準で、20~60質量%である。
なお、硬化性組成物中の固形分とは、溶媒(特に有機溶媒)以外の組成物を構成する成分、またはその質量や体積を意味する。
<<所定ポリフェニレンエーテルの物性および性質>>
<分岐度>
所定ポリフェニレンエーテルの分岐構造(分岐の度合い)は、以下の分析手順に基づいて確認することができる。
(分析手順)
ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液を、0.1、0.15、0.2、0.25mg/mLの間隔で調製後、0.5mL/minで送液しながら屈折率差と濃度のグラフを作成し、傾きから屈折率増分dn/dcを計算する。次に、下記装置運転条件にて、絶対分子量を測定する。RI検出器のクロマトグラムとMALS検出器のクロマトグラムを参考に、分子量と回転半径の対数グラフ(コンフォメーションプロット)から、最小二乗法による回帰直線を求め、その傾きを算出する。
(測定条件)
装置名 :HLC8320GPC
移動相 :クロロホルム
カラム :TOSOH TSKguardcolumnHHR-H
+TSKgelGMHHR-H(2本)
+TSKgelG2500HHR
流速 :0.6mL/min.
検出器 :DAWN HELEOS(MALS検出器)
+Optilab rEX(RI検出器、波長254nm)
試料濃度 :0.5mg/mL
試料溶媒 :移動相と同じ。試料5mgを移動相10mLで溶解
注入量 :200μL
フィルター :0.45μm
STD試薬 :標準ポリスチレン Mw 37,900
STD濃度 :1.5mg/mL
STD溶媒 :移動相と同じ。試料15mgを移動相10mLで溶解
分析時間 :100min
絶対分子量が同じ樹脂において、高分子鎖の分岐が進行しているものほど重心から各セグメントまでの距離(回転半径)は小さくなる。そのため、GPC-MALSにより得られる絶対分子量と回転半径の対数プロットの傾きは、分岐の程度を示し、傾きが小さいほど分岐が進行していることを意味する。本発明においては、上記コンフォメーションプロットで算出された傾きが小さいほどポリフェニレンエーテルの分岐が多いことを示し、この傾きが大きいほどポリフェニレンエーテルの分岐が少ないことを示す。
ポリフェニレンエーテルにおいて、上記傾きは、例えば、0.6未満であり、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、又は、0.35以下であることが好ましい。上記傾きがこの範囲である場合、ポリフェニレンエーテルが十分な分岐を有していると考えられる。なお、上記傾きの下限としては特に限定されないが、例えば、0.05以上、0.10以上、0.15以上、又は、0.20以上である。
なお、コンフォメーションプロットの傾きは、ポリフェニレンエーテルの合成の際の、温度、触媒量、攪拌速度、反応時間、酸素供給量、溶媒量を変更することで調整可能である。より具体的には、温度を高める、触媒量を増やす、攪拌速度を速める、反応時間を長くする、酸素供給量を増やす、及び/又は、溶媒量を少なくすることで、コンフォメーションプロットの傾きが低くなる(ポリフェニレンエーテルがより分岐し易くなる)傾向となる。
<分子量>
所定ポリフェニレンエーテルは、数平均分子量が2,000~30,000であることが好ましく、5,000~30,000であることがより好ましく、8,000~30,000であることが更に好ましく、8,000~25,000であることが特に好ましい。分子量をこのような範囲とすることで、溶剤への溶解性を維持しつつも、硬化性樹脂組成物の製膜性を向上させることができる。さらに、ポリフェニレンエーテルは、多分散指数(PDI:重量平均分子量/数平均分子量)が、1.5~20であることが好ましい。
本発明において、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
<水酸基価>
ポリフェニレンエーテルの水酸基価は、数平均分子量(Mn)が10,000以上の場合、7.0以上であってもよい。言い換えると、数平均分子量(Mn)が5,000以上の場合、14.0以上であってもよく、数平均分子量(Mn)が20,000以上の場合、ポリフェニレンエーテルの水酸基価は3.5以上であってもよい。
なお、所定ポリフェニレンエーテルが方法2によって得られた所定ポリフェニレンエーテルである場合等、水酸基価が上記した数値より低いものとなる場合がある。
<溶剤溶解性>
所定ポリフェニレンエーテル1gは、25℃で、好ましくは100gのシクロヘキサノンに対して(より好ましくは、100gの、シクロヘキサノン、DMFおよびPMAに対して)可溶である。なお、ポリフェニレンエーテル1gが100gの溶剤(例えば、シクロヘキサノン)に対して可溶とは、ポリフェニレンエーテル1gと溶剤100gとを混合したときに、濁りおよび沈殿が目視で確認できないことを示す。所定ポリフェニレンエーテルは、25℃で、100gのシクロヘキサノンに対して、1g以上可溶であることがより好ましい。
所定ポリフェニレンエーテルは、分岐構造を有することで種々の溶剤への溶解性、組成物中の成分(マレイミド化合物やその他の成分)との相溶性が向上する。このため組成物の各成分が均一に溶解または分散し、均一な硬化物を得ることが可能となる。この結果、この硬化物は機械的特性等が極めて優れている。特に、所定ポリフェニレンエーテルは、相互に架橋し、またはマレイミド化合物と架橋することができる。この結果、得られる硬化物の機械的特性や低熱膨張性等はより良好となる。
<<所定ポリフェニレンエーテルの製造方法>>
所定ポリフェニレンエーテルは、原料フェノール類として特定のものを使用すること以外は、従来公知のポリフェニレンエーテルの合成方法(重合条件、触媒の有無および触媒の種類等)を適用して製造することが可能である。
次に、所定ポリフェニレンエーテルの製造方法の一例について説明する。
所定ポリフェニレンエーテルは、例えば、特定のフェノール類、触媒および溶媒を含む重合溶液を調製すること(重合溶液調製工程)、少なくとも前記溶媒に酸素を通気させること(酸素供給工程)、酸素を含む前記重合溶液内で、フェノール類を酸化重合させること(重合工程)で製造可能である。
以下、重合溶液調製工程、酸素供給工程および重合工程について説明する。なお、各工程を連続的に実施してもよいし、ある工程の一部または全部と、別の工程の一部または全部と、を同時に実施してもよいし、ある工程を中断し、その間に別の工程を実施してもよい。例えば、重合溶液調製工程中や重合工程中に酸素供給工程を実施してもよい。また、本発明のポリフェニレンエーテルの製造方法は、必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、重合工程により得られるポリフェニレンエーテルを抽出する工程(例えば、再沈殿、ろ過および乾燥を行う工程)、上述した変性工程等が挙げられる。
<重合溶液調製工程>
重合溶液調製工程は、重合工程において重合されるフェノール類を含む各原料を混合し、重合溶液を調製する工程である。重合溶液の原料としては、原料フェノール類、触媒、溶媒が挙げられる。
(触媒)
触媒は特に限定されず、ポリフェニレンエーテルの酸化重合において使用される適宜の触媒とすればよい。
触媒としては、例えば、アミン化合物や、銅、マンガン、コバルト等の重金属化合物とテトラメチルエチレンジアミンなどのアミン化合物とからなる金属アミン化合物が挙げられ、特に、十分な分子量の共重合体を得るためには、アミン化合物に銅化合物を配位させた銅-アミン化合物を用いることが好ましい。触媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
触媒の含有量は特に限定されないが、重合溶液中、原料フェノール類の合計に対し0.1~0.6mol%等とすればよい。
このような触媒は、予め適宜の溶媒に溶解させてもよい。
(溶媒)
溶媒は特に限定されず、ポリフェニレンエーテルの酸化重合において使用される適宜の溶媒とすればよい。溶媒は、フェノール性化合物および触媒を溶解または分散可能なものを用いることが好ましい。
溶媒としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CA)等が挙げられる。溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
なお、溶媒として、水や水と相溶可能な溶媒等を含んでいてもよい。
重合溶液中の溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調整すればよい。
(その他の原料)
重合溶液は、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の原料を含んでいてもよい。
<酸素供給工程>
酸素供給工程は、重合溶液中に酸素含有ガスを通気させる工程である。
酸素ガスの通気時間や使用する酸素含有ガス中の酸素濃度は、気圧や気温等に応じて適宜変更可能である。
<重合工程>
重合工程は、重合溶液中に酸素が供給された状況下、重合溶液中のフェノール類を酸化重合させる工程である。
具体的な重合の条件としては特に限定されないが、例えば、25~100℃、2~24時間の条件で攪拌すればよい。
所定ポリフェニレンエーテルの製造に際しては、上述した方法1や方法2を参照することで、分岐ポリフェニレンエーテルに不飽和炭素結合を含む官能基を導入する具体的な方法を理解できる。即ち、原料フェノール類の種類を特定のものとするか、または、重合工程後に末端水酸基を変性する工程(変性工程)を更に設けること等で、所定ポリフェニレンエーテルを得ることができる。
<<<マレイミド化合物>>>
マレイミド化合物は、1分子中に少なくとも1つのマレイミド基を含有する限り特に限定されない。
マレイミド化合物としては、
(1)単官能脂肪族/脂環族マレイミド、
(2)単官能芳香族マレイミド、
(3)多官能脂肪族/脂環族マレイミド、
(4)多官能芳香族マレイミド、
を挙げることができる。
<<(1)単官能脂肪族/脂環族マレイミド>>
単官能脂肪族/脂環族マレイミド(1)としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、特開平11-302278号に開示されているマレイミドカルボン酸とテトラヒドロフルフリルアルコールとの反応物等を挙げることができる。
<<(2)単官能芳香族マレイミド>>
単官能芳香族マレイミド(2)としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド等を挙げることができる。
<<(3)多官能脂肪族/脂環族マレイミド>>
多官能脂肪族/脂環族マレイミド(3)としては、例えば、N,N’-メチレンビスマレイミド、N,N’-エチレンビスマレイミド、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸とを脱水エステル化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、トリス(カーバメートヘキシル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドアルコールとをウレタン化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドウレタン化合物等のイソシアヌル骨格ポリマレイミド類、イソホロンビスウレタンビス(N-エチルマレイミド)、トリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリオールとを脱水エステル化し、又は脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸エステルと各種脂肪族/脂環族ポリオールとをエステル交換反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類、脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類、脂肪族/脂環族マレイミドアルコールと各種脂肪族/脂環族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドウレタン化合物類等を挙げることができる。
具体的には、炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは直鎖状アルキル基を有するマレイミドアルキルカルボン酸又はマレイミドアルキルカルボン酸エステルと、数平均分子量100~1000のポリエチレングリコール及び/又は数平均分子量100~1000のポリプロピレングリコール及び/又は数平均分子量100~1000のポリテトラメチレングリコールとを、脱水エステル化反応又はエステル交換反応して得られる下記一般式(X1)及び一般式(X2)で表される脂肪族ビスマレイミド化合物等を挙げることができる。
Figure 0007369580000008
(式中、mは1~6の整数、nは2~23の値、R1は水素原子又はメチル基を表す。)
Figure 0007369580000009
(式中、mは1~6の整数、pは2~14の値を表す。)
<<(4)多官能芳香族マレイミド>>
多官能芳香族マレイミド(4)としては、例えば、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2’-ビス-(4-(4-マレイミドフェノキシ)プロパン、N,N’-(4,4’-ジフェニルオキシ)ビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-2,4-トリレンビスマレイミド、N,N’-2,6-トリレンビスマレイミド、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリオールとを脱水エステル化し、又はマレイミドカルボン酸エステルと各種芳香族ポリオールとをエステル交換反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、マレイミドアルコールと各種芳香族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる芳香族ポリマレイミドウレタン化合物類等を挙げることができる。
これらの中でも、マレイミド化合物は、多官能であることが好ましい。マレイミド化合物は、ビスマレイミド骨格を有することが好ましい。マレイミド化合物は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
マレイミド化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、100以上、200以上、500以上、750以上、1,000以上、2000以上、または、100,000以下、50,000以下、10,000以下、5,000以下、4,000以下、3,500以下とすることができる。
<<マレイミド化合物の含有量>>
マレイミド化合物の含有量は、典型的には、硬化性組成物中、固形分全量基準で、0.5~50質量%、1~40質量%または1.5~30質量%とすることができる。また、別の観点では、硬化性組成物中、所定ポリフェニレンエーテルとマレイミド化合物との配合比率は、固形分比として、9:91~99:1、17:83~:95:5、または、25:75~90:10とすることができる。
<<<その他の成分>>>
その他の成分としては、公知の成分、例えば、シリカ、難燃性向上剤(リン系化合物等)、セルロースナノファイバー、シアネートエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノ-ルノボラック樹脂、エラストマー、分散剤、過酸化物、架橋型硬化剤、熱硬化触媒、溶媒等の成分を含んでもよい。その他の成分としては、シリカ、リン系化合物、エラストマー、過酸化物、架橋型硬化剤を含むことが好ましい。これらは、1種のみが使用されてもよいし、2種以上が使用されてもよい。硬化性組成物は、各原料を適宜混合することにより得られる。
<<シリカ>>
硬化性組成物は、シリカを含んでもよい。組成物がシリカを含有することで、組成物の製膜性を向上させることができる。さらには得られる硬化物に難燃性を付与することができる。より詳細には、組成物にシリカを配合することで、硬化物の自己消火性と低誘電正接化を高いレベルで実現することができる。
シリカの平均粒径は、好ましくは0.02~10μm、より好ましくは0.02~3μmである。ここで平均粒径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折・散乱法による粒度分布の測定値から、累積分布によるメディアン径(d50、体積基準)として求めることができる。
異なる平均粒径のシリカを併用することも可能である。シリカの高充填化を図る観点から、例えば平均粒径1μm以上のシリカとともに、平均粒径1μm未満のナノオーダーの微小のシリカを併用してもよい。
シリカはカップリング剤により表面処理が施されていてもよい。表面をシランカップリング剤で処理することで、ポリフェニレンエーテルとの分散性を向上させることができる。また有機溶媒との親和性も向上させることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤などを用いることができる。エポキシシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどを用いることができる。メルカプトシランカップリング剤としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを用いることができる。ビニルシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシランなどを用いることができる。
シランカップリング剤の使用量は、例えば、シリカ100質量部に対して0.1~5質量部、0.5~3質量部としてもよい。
シリカの含有量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して50~400質量部または100~400質量部としてもよい。あるいは、シリカの含有量は、組成物の固形分全量基準で、10~30質量%としてもよい。
また、別の観点では、シリカの配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して200~600質量部としてもよい。言い換えると、シリカの配合量は、組成物の固形分全量基準で、40~80質量%としてもよい。
<<リン系化合物>>
硬化性組成物は、リン系化合物を含んでいてもよい。本発明において好適なリン系化合物は、その機能および性質(配合の目的)等に応じて、リン含有難燃剤および所定のリン化合物が挙げられる。なお、リン含有難燃剤および所定のリン化合物は、その機能や性質等により特定しているものであるため、1つのリン系化合物が、所定のリン化合物およびリン含有難燃剤の両方に該当してもよいし、どちらか一方のみに該当してもよい。
<リン含有難燃剤>
硬化性組成物は、リン含有難燃剤を含んでもよい。組成物にリン含有難燃剤を配合することで、組成物を硬化して得られる硬化物の自己消火性を向上させることができる。
リン含有難燃剤としては、例えば、リン酸またはそのエステル、亜リン酸またはそのエステルが挙げられる。あるいはこれらの縮合物が挙げられる。
リン含有難燃剤は、シリカと併用されることが好ましい。そのため、リン含有難燃剤は、シリカの高充填の観点からポリフェニレンエーテルと相溶するものが好ましい。一方で、リン含有難燃剤がブリードアウトするというリスクもあった。
ブリードアウトのリスクを低減するための好ましい実施形態では、リン含有難燃剤は分子構造内に1以上の不飽和炭素結合を有している。不飽和炭素結合を有するリン含有難燃剤は、組成物が硬化する際に、ポリフェニレンエーテルの有する不飽和炭素結合と反応して一体化することができる。この結果、リン含有難燃剤がブリードアウトするリスクが低減される。
好ましいリン含有難燃剤は、リン含有難燃剤の分子構造内に複数の不飽和炭素結合を有している。これら複数の不飽和炭素結合を有するリン含有難燃剤は、後述する架橋型硬化剤としても機能することができる。ポリフェニレンエーテルの架橋に寄与する観点から、複数の不飽和炭素結合を有するリン含有難燃剤は、リン含有架橋型硬化剤やリン含有架橋助剤とも表現できる。
リン酸またはそのエステルとしては、下式(6)で表される化合物である。
Figure 0007369580000010
式(6)中、R61~R63は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15(好ましくは1~12)の炭化水素基を表す。炭化水素基は、不飽和炭素結合を有していてもよい。また炭化水素基は1個または複数個の酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を含んでもよい。ただしこれらヘテロ原子を含むと極性が高くなり誘電特性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、炭化水素基はヘテロ原子を含まないことが好ましい。このような炭化水素基としては、典型的には、メチル基、エチル基、オクチル基、フェニル基、クレジル基、ブトキシエチル基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール-ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェートが挙げられる。
分子構造内に不飽和炭素結合を有するリン酸エステルとしては、トリビニルホスフェート、トリアリルホスフェート、トリアクリロイルホスフェート、トリメタクリロイルホスフェート、トリスアクリロイルオキシエチルホスフェート、トリスメタクリロイルオキシエチルホスフェートが挙げられる。
亜リン酸またはそのエステルとしては、下式(7)で表される化合物である。
Figure 0007369580000011
式(7)中、R71~R73は、式(6)のR61~R63の説明が適用される。
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリブトキシエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、クレジルジフェニルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジイソプロピルフェニルホスファイト、トリキシレニルホスファイト、トリス(イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリナフチルホスファイト、ビスフェノールAビスホスファイト、ヒドロキノンビスホスファイト、レゾルシンビスホスファイト、レゾルシノール-ジフェニルホスファイト、トリオキシベンゼントリホスファイトが挙げられる。
分子構造内に不飽和炭素結合を有する亜リン酸エステルとしては、トリビニルホスファイト、トリアリルホスファイト、トリアクリロイルホスファイト、トリメタクリロイルホスファイトが挙げられる。
リン含有難燃剤の含有量は、組成物の固形分全量基準でリン量として1~5質量%としてもよい。前記範囲内であれば、組成物を硬化して得られる硬化物の自己消火性、耐熱性、誘電特性を高いレベルでバランスよく達成できる。
<所定のリン化合物>
硬化性組成物は、所定のリン化合物を含有することで組成物を硬化して得られる硬化物の難燃性を効率よく向上させることができる。
所定のリン化合物とは、分子構造内に1又は複数のリン元素を含む化合物であって、上述した分岐ポリフェニレンエーテルと相溶しない性質を有する化合物を意味する。
リン化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスフィン酸化合物、リン含有フェノール化合物が挙げられる。
リン酸エステル化合物としては、下記式(6)で表される化合物である。
Figure 0007369580000012
式(6)中、R61~R63は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15(好ましくは1~12)の直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、無置換のアリール基または置換基としてアルキル基、アルケニル基を有するアリール基が好ましい。このような炭化水素基としては、典型的には、メチル基、エチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、ビニルフェニル基が挙げられる。
リン酸エステル化合物としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、1,3-フェニレン-テスラキス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)、1,4-フェニレン-テトラキス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)、4,4’-ビフェニレン-テスラキス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)が挙げられる。
ホスフィン酸化合物としては、下記式(8)で表されるホスフィン酸金属塩化合物が好ましい。
Figure 0007369580000013
式(8)中、R81およびR82は、独立して、水素原子または直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の炭化水素基である。炭化水素基は、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、炭素数1~6の直鎖状もしくは分枝状のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはトリル基が好ましい。炭化水素基は、炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。
式(8)中、Mはn価の金属イオンを表す。金属イオンMは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、NaおよびKからなる群の少なくとも1種の金属のイオンであり、その少なくとも一部がAlイオンであることが好ましい。
ホスフィン酸金属塩化合物としては、例えば、ジエチルホスフィン酸アルミニウムが挙げられる。
ホスフィン酸金属塩化合物はカップリング剤により有機基を有するように表面処理が施されていてもよい。表面をシランカップリング剤で処理することで、有機溶媒との親和性も向上させることができる。またビニル基などの不飽和炭素結合やエポキシ基などの環状エーテル結合を有すれば、硬化の際に他の成分と架橋することが可能となり、耐熱性の向上やブリードアウトの防止などに繋がる。
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤などを用いることができる。エポキシシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどを用いることができる。メルカプトシランカップリング剤としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを用いることができる。ビニルシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシランなどを用いることができる。
リン含有フェノール化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオールが挙げられる。
所定のリン化合物としては、分子あたりのリン含有率が高いことから、分岐ポリフェニレンエーテルに対して相溶性を有しないホスフィン酸金属塩化合物が特に好ましい。
本発明において、リン化合物が分岐ポリフェニレンエーテルと相溶するか否かは以下の試験に基づいて判定する。
分岐ポリフェニレンエーテルは、通常、シクロヘキサノンに可溶である。つまり、リン化合物もシクロヘキサノンに可溶であれば、分岐ポリフェニレンエーテルおよびリン化合物の混合物が均一に相溶するといえる。これに基づき、シクロヘキサノンに対するリン化合物の溶解度を確認することで、リン化合物が分岐ポリフェニレンエーテルと相溶するか否かを判断する。
具体的には、200mLのサンプル瓶にリン化合物10gとシクロヘキサノン100gを入れ、攪拌子を入れて25℃で10分間攪拌した後、25℃で10分間放置する。溶解度が0.1(10g/100g)未満のリン化合物については、分岐ポリフェニレンエーテルと非相溶であると判断し、溶解度が0.1(10g/100g)以上のリン化合物については、分岐ポリフェニレンエーテルと相溶すると判断する。
なお、リン化合物の上記溶解度は、0.08(8g/100g)未満または0.06(6g/100g)未満としてもよい。
分岐ポリフェニレンエーテルと、分岐ポリフェニレンエーテルと相溶する難燃剤と、を併用した場合、分岐ポリフェニレンエーテルと難燃剤とが相溶しすぎる結果、得られる硬化物の耐熱性が低下してしまう場合がある、という問題が見出された。分岐ポリフェニレンエーテルと相溶しない難燃剤を使用することで、このような問題を解決することが可能である。
リン化合物の含有量は、組成物の固形分全量基準で1~10質量%、2~8質量%、3~6質量%としてもよい。前記範囲内であれば、組成物を硬化して得られる硬化物の難燃性、耐熱性、誘電特性を高いレベルでバランスよく達成できる。
<<エラストマー>>
硬化性組成物は、エラストマーを含んでもよい。エラストマーを含むことで製膜性が向上する。引張強度や密着性の向上効果は従来のポリフェニレンエーテル(非分岐ポリフェニレンエーテル)とエラストマーの組み合わせよりも優れる。これは、分岐ポリフェニレンエーテルとエラストマーとが相溶性に優れるため均一な硬化膜を得られることが理由と考えられる。
エラストマーとしては、所定ポリフェニレンエーテルや側鎖エポキシ化ポリフェニレンエーテルに対する十分な相溶性を有していることが好ましい。
エラストマーは、熱硬化性エラストマーと熱可塑性エラストマーとに大別される。いずれも製膜性を向上させることができるため使用可能であるが、硬化物の引張特性を向上させることができるため熱可塑性エラストマーがより好ましい。
硬化性組成物は、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。組成物に熱可塑性エラストマーを配合することで、硬化物の引張特性を向上させることができる。本発明に用いるポリフェニンエーテルの硬化物は、破断伸び率が低く脆くなりやすい場合もあるが、熱可塑性エラストマーを併用することにより、誘電特性を維持しつつ、破断伸び率を向上させることができる。熱可塑性エラストマーは、シリカと併用されることが好ましい。
熱硬化性エラストマーとしては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン-プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、および天然ゴム等を挙げることができる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマーが挙げられる。ポリフェニレンエーテルとの相溶性および誘電特性の高さから、特にエラストマーの少なくとも一部がスチレン系エラストマーであることが好ましい。
エラストマー100重量%に占めるスチレン系エラストマーの含有割合は、例えば、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、100重量%としてもよい。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-ブタジエン共重合体;スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-イソプレン共重合体;スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーなどが挙げられる。加えて、これらの共重合体の水添物が挙げられる。得られる硬化物の誘電特性が特に良好であることから、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー等の不飽和炭素結合を有しないスチレン系エラストマーが好ましい。
スチレン系エラストマーにおけるスチレンブロックの含有比率は、20~70mol%であることが好ましい。若しくは、スチレン系エラストマーにおけるスチレンブロックの含有比率は、10~70質量%、30~60質量%、または40~50質量%であることが好ましい。スチレンブロックの含有比率は、1H-NMRにより測定されたスペクトルの積分比から求めることができる。
ここでスチレン系エラストマーの原料モノマーとしては、スチレンだけでなく、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体が含まれる。
エラストマーの重量平均分子量は、1,000~300,000または2,000~150,000としてもよい。重量平均分子量が前記下限値以上であると低熱膨張性に優れ、前記上限値以下であると他の成分との相溶性に優れる。
特に、熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、1,000~300,000または2,000~150,000としてもよい。重量平均分子量が前記下限値以上であると低熱膨張性に優れ、前記上限値以下であると他の成分との相溶性に優れる。
エラストマーの重量平均分子量は、GPCにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
エラストマーの配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して50~200質量部としてもよい。言い換えると、エラストマーの配合量は、組成物の固形分全量基準で、30~70質量%としてもよい。上記範囲内の場合、良好な硬化性、成形性、耐薬品性をバランスよく実現できる。
特に、熱可塑性エラストマーの配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して30~100質量部としてもよい。言い換えると、熱可塑性エラストマーの配合量は、組成物の固形分全量基準で、3~20質量%としてもよい。上記範囲内の場合、良好な硬化性、成形性、耐薬品性をバランスよく実現できる。
エラストマーは他の成分と反応する官能基(結合を含む)を有していても良い。
例えば、反応性官能基として不飽和炭素結合を有していても良い。この実施態様では、本発明に係る好ましい分岐ポリフェニレンエーテルが有する不飽和炭素結合に架橋することができ、ブリードアウトのリスクを低減するなどの効果がある。
<<過酸化物>>
過酸化物は、ポリフェニレンエーテルに含まれる不飽和炭素結合を開き、架橋反応を促進する作用を有する。
過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ブテン、アセチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチレンパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、等があげられる。過酸化物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
過酸化物としては、これらの中でも、取り扱いの容易さと反応性の観点から、1分間半減期温度が130℃から180℃のものが望ましい。このような過酸化物は、反応開始温度が比較的に高いため、乾燥時など硬化が必要でない時点での硬化を促進し難く、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の保存性を貶めず、また、揮発性が低いため乾燥時や保存時に揮発せず、安定性が良好である。
過酸化物の添加量は、過酸化物の総量で、硬化性組成物の固形分100質量部に対し、0.01~20質量部とするのが好ましく、0.05~10質量部とするのがより好ましく、0.1~10質量部とするのが特に好ましい。過酸化物の総量をこの範囲とすることで、低温での効果を十分なものとしつつ、塗膜化した際の膜質の劣化を防止することができる。
また、必要に応じてアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物やジクミル、2,3-ジフェニルブタン等のラジカル開始剤を含有してもよい。
<<架橋型硬化剤>>
架橋型硬化剤は、ポリフェニレンエーテルに含まれる不飽和炭素結合と反応し、3次元架橋を形成するものである。
架橋型硬化剤としては、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が良好なものが用いられるが、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンやジビニルビフェニルなどの多官能ビニル化合物;フェノールとビニルベンジルクロライドの反応から合成されるビニルベンジルエーテル系化合物;スチレンモノマー,フェノールとアリルクロライドの反応から合成されるアリルエーテル系化合物;さらにトリアルケニルイソシアヌレートなどが良好である。架橋型硬化剤としては、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が特に良好なトリアルケニルイソシアヌレートが好ましく、なかでも具体的にはトリアリルイソシアヌレート(以下、TAIC(登録商標))やトリアリルシアヌレート(以下TAC)が好ましい。これらは、低誘電特性を示し、かつ耐熱性を高めることができる。特にTAIC(登録商標)は、ポリフェニレンエーテルとの相溶性に優れるので好ましい。
また、架橋型硬化剤としては、(メタ)アクリレート化合物(メタクリレート化合物およびアクリレート化合物)を用いてもよい。特に、3~5官能の(メタ)アクリレート化合物を使用するのが好ましい。3~5官能のメタクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を用いることができ、一方、3~5官能のアクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート等を用いることができる。これらの架橋剤を用いると耐熱性を高めることができる。架橋型硬化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
所定ポリフェニレンエーテルは不飽和炭素結合を有する炭化水素基を含むので、特に架橋型硬化剤と硬化させることにより誘電特性に優れた硬化物を得ることができる。
硬化性組成物中、所定ポリフェニレンエーテルと架橋型硬化剤(例えば、トリアルケニルイソシアヌレート)との配合比率は、固形分比(所定ポリフェニレンエーテル:架橋型硬化剤)として、20:80~90:10とすることが好ましく、30:70~90:10とすることがより好ましい。また、所定マレイミド化合物と架橋型硬化剤との配合比率は、固形分比(所定マレイミド化合物:架橋型硬化剤)として、80:20~10:90とすることが好ましく、70:30~20:80とすることがより好ましい。このような範囲とすることで、低誘電特性と耐熱性に優れる硬化物が得られる。
<<溶媒>>
硬化性組成物は、通常、ポリフェニレンエーテルが溶媒(溶剤)に溶解した状態で提供または使用される。本発明のポリフェニレンエーテルは、従来のポリフェニレンエーテルに比べて溶剤に対する溶解性が高いため、硬化性組成物の用途に応じて、使用する溶剤の選択肢を幅広いものとすることができる。
本発明の硬化性組成物に使用可能な溶剤の一例としては、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン等の従来使用可能な溶媒の他、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CA)、メチルエチルケトン、酢酸エチル、等の比較的安全性の高い溶媒等が挙げられる。なお、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)であってもよい。溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
硬化性組成物中の溶媒の含有量は特に限定されず、硬化性組成物の用途に応じて適宜調整可能である。
<<<<硬化物>>>>
硬化物は、上述した硬化性組成物を硬化することで得られる。
硬化性組成物から硬化物を得るための方法は、特に限定されるものではなく、硬化性組成物の組成に応じて適宜変更可能である。一例として、上述したような基材上に硬化性組成物の塗工(例えば、アプリケーター等による塗工)を行う工程を実施した後、必要に応じて硬化性組成物を乾燥させる乾燥工程を実施し、加熱(例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、真空オーブン、真空プレス機等による加熱)によりポリフェニレンエーテルを熱架橋させる熱硬化工程を実施すればよい。なお、各工程における実施の条件(例えば、塗工厚、乾燥温度および時間、加熱温度および時間等)は、硬化性組成物の組成や用途等に応じて適宜変更すればよい。
<<<<ドライフィルム、プリプレグ>>>>
本発明のドライフィルムまたはプリプレグは、上述した硬化性組成物を基材に塗布又は含浸して得られるものである。
ここで基材とは、銅箔等の金属箔、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のフィルム、ガラスクロス、アラミド繊維等の繊維が挙げられる。
ドライフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に硬化性組成物を塗布乾燥させ、必要に応じてポリプロピレンフィルムを積層することにより得られる。
プリプレグは、例えば、ガラスクロスに硬化性組成物を含浸乾燥させることにより得られる。
<<<<積層板>>>>
本発明においては、上述のプリプレグを用いて積層板を作製することができる。
詳しく説明すると、本発明のプリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面または片面に銅箔等の金属箔を重ねて、その積層体を加熱加圧成形することにより、積層一体化された両面に金属箔または片面に金属箔を有する積層板を作製することができる。
<<<<電子部品>>>>
このような硬化物は、優れた誘電特性や耐熱性を有するため、電子部品用等に使用可能である。
硬化物を有する電子部品としては、特に限定されないが、好ましくは、第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信や自動車のADAS(先進運転システム)向けミリ波レーダー等が挙げられる。

次に、実施例および比較例により、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
<<<組成物の作製>>>
以下に各組成物(実施例1~8、および比較例1~3の組成物)の作製手順を説明する。
<<PPE樹脂の合成>>
<分岐PPE樹脂-1(熱硬化側鎖タイプ):方法1>
3Lの二つ口ナスフラスコに、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)2.6gと、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)3.18mLを加えて十分に溶解させ、10ml/minにて酸素を供給した。原料フェノール類である2,6-ジメチルフェノール105gと2-アリルフェノール13gとをトルエン1.5Lに溶解させ原料溶液を調製した。この原料溶液をフラスコに滴下し、600rpmの回転速度で攪拌しながら40℃で6時間反応させた。反応終了後、メタノール20L:濃塩酸22mLの混合液で再沈殿させてろ過にて取り出し、80℃で24時間乾燥させ分岐PPE樹脂-1を得た。
分岐PPE樹脂-1の数平均分子量は20,000、重量平均分子量は60,000であった。
分岐PPE樹脂-1のコンフォメーションプロットの傾きは0.31であった。
<分岐PPE樹脂-2(熱硬化末端タイプ):方法2>
3Lの二つ口ナスフラスコに、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)2.6gと、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)3.18mLを加えて十分に溶解させ、10ml/minにて酸素を供給した。原料フェノール類である2,6-ジメチルフェノール105gとオルトクレゾール4.89gとをトルエン1.5Lに溶解させ原料溶液を調製した。この原料溶液をフラスコに滴下し、600rpmの回転速度で攪拌しながら40℃で6時間反応させた。反応終了後、メタノール20L:濃塩酸22mLの混合液で再沈殿させてろ過にて取り出し、80℃で24時間乾燥させ分岐PPE樹脂を得た。
滴下漏斗を備えた1Lの二つ口ナスフラスコに、50gの分岐PPE樹脂、変性用化合物としてアリルブロミド4.8g、NMP300mLを加え、60℃で攪拌した。その溶液に5MのNaOH水溶液5mLを滴下した。その後、さらに60℃で5時間攪拌した。次に、塩酸で反応溶液を中和した後、メタノール5L中に再沈殿させて濾過にて取り出し、メタノールと水との質量比が80:20の混合液で3回洗浄後、80℃で24時間乾燥させ分岐PPE樹脂-2を得た。
分岐PPE樹脂-2の数平均分子量は19,000、重量平均分子量は66,500であった。
分岐PPE樹脂-2のコンフォメーションプロットの傾きは0.33であった。
<非分岐PPE樹脂A>
原料フェノール類である2-アリル-6-メチルフェノール7.6g、2,6-ジメチルフェノール34gをトルエン0.23Lに溶解させた原料溶液に水を34mL添加した以外は分岐PPE樹脂-1と同様の合成方法に基づき非分岐PPE樹脂Aを得た。
非分岐PPE樹脂Aは、シクロヘキサノンに可溶ではなく、クロロホルムには可溶であった。
非分岐PPE樹脂Aの数平均分子量は1,000、重量平均分子量は2,000であった。
非分岐PPE樹脂Aのコンフォメーションプロットの傾きは測定不能であった。
<非分岐PPE樹脂B>
原料フェノール類である2-アリル-6-メチルフェノール13.8g、2,6-ジメチルフェノール103gをトルエン0.38Lに溶解させた原料溶液を使用した以外は分岐PPE樹脂-1と同様の合成方法に基づき非分岐PPE樹脂Bを得た。
非分岐PPE樹脂Bの数平均分子量は19,000、重量平均分子量は39,900であった。
非分岐PPE樹脂Bのコンフォメーションプロットの傾きは0.61であった。
なお、各PPE樹脂の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。GPCにおいては、Shodex K-805Lをカラムとして使用し、カラム温度を40℃、流量を1mL/min、溶離液をクロロホルム、標準物質をポリスチレンとした。
<PPE樹脂の溶剤溶解性>
各PPE樹脂の溶剤溶解性を確認した。
分岐PPE樹脂-1、2は、シクロヘキサノンに可溶であった。
非分岐PPE樹脂A、Bは、シクロヘキサノンに可溶ではなく、クロロホルムには可溶であった。
<<樹脂組成物の調製>>
以下のようにして、各実施例及び各比較例に係る樹脂組成物のワニスを得た。
<実施例1>
分岐PPE樹脂-1:17.4質量部およびスチレンエラストマー(旭化成株式会社:商品名「H1051」):5.7質量部に、溶剤としてシクロヘキサノン:60質量部を加えて40℃にて30分混合、攪拌して完全に溶解させた。
これによって得たPPE樹脂溶液に、架橋型硬化剤としてTAIC(三菱ケミカル株式会社製):11.6質量部、球状シリカ(アドマテックス株式会社製:商品名「SC2500-SVJ」):94.4質量部、難燃剤としてOP935(クラリアントケミカルズ社製):11.1質量部、マレイミド樹脂(Designer Molecules社製:商品名「DMI-7005」、Mw=49,000、固形分25質量%):23.2質量部、を添加してこれを混合した後、三本ロールミルで分散させた。
最後に、過酸化物であるα,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(日本油脂株式会社製:商品名「パーブチルP」)を0.58質量部配合し、マグネチックスターラーにて攪拌した。
以上のようにして、実施例1の樹脂組成物のワニスを得た。
<実施例2-8、比較例1-3>
表1に示すように、使用するPPE樹脂、マレイミド樹脂およびその含有量を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2-8及び比較例1-3に係る樹脂組成物のワニスを得た。
表1に示されたマレイミド樹脂は以下の通りである。
BMI-689 :Designer Molecules社製、Mw=689
BMI-3000J:Designer Molecules社製、Mw=3,000
BMI-1500 :Designer Molecules社製、Mw=1,500
BMI-4000 :大和化成工業株式会社製、Mw=570
各樹脂組成物のワニスの有機溶剤については、シクロヘキサノンに可溶な分岐PPE樹脂-1、2を使用する場合にはシクロヘキサノンを使用し、シクロヘキサノンに可溶ではない非分岐PPE樹脂A、Bを使用する場合にはクロロホルムを使用した。
<<評価>>
各実施例及び各比較例に係る樹脂組成物のワニスについて、以下の評価を行った。
<硬化膜の作製>
厚さ18μm銅箔のシャイン面に、得られた樹脂組成物のワニスを、硬化物の厚みが50μmになるようにアプリケーターで塗布する。
次に、熱風式循環式乾燥炉で90℃30分乾燥させる。
その後、イナートオーブンを用いて窒素を完全に充満させて200℃まで昇温後、60分硬化させる。
その後、銅箔をエッチングし硬化物(硬化膜)を得る。
なお、比較例3に係る樹脂組成物では、硬化膜を作製することができなかった。
<環境対応>
溶剤としてシクロヘキサノンが用いられたワニスを「〇」、溶剤としてクロロホルムが用いられたワニスを「×」とした。上述の通り、非分岐PPE樹脂はシクロヘキサノンに溶解しないが、分岐PPE樹脂はシクロヘキサノンに可溶である。
<誘電特性>
誘電特性である比誘電率Dkおよび誘電正接Dfは、以下の方法に従って測定した。
硬化膜を長さ80mm、幅45mm、厚み50μmに切断したものを試験片としてSPDR(Split Post Dielectric Resonator)共振器法により測定した。測定器には、キーサイトテクノロジー合同会社製のベクトル型ネットワークアナライザE5071C、SPDR共振器、計算プログラムはQWED社製のものを用いた。条件は、周波数10GHz、測定温度25℃とした。
(評価基準)
Dkが3.2未満、Dfが0.0016以下のものを「◎」、Dkが3.2未満、Dfが0.0016超0.003未満のものを「○」、Dkが3.2以上、又は、Dfが0.003以上のものを「×」とした。
<熱膨張率>
作製した硬化膜を長さ3cm、幅0.3cm、厚み50μmに切り出し、ティー・エイ・インスツルメント社製TMA(Thermomechanical Analysis)Q400を用いて、引張モードで、チャック間16mm、荷重30mN、窒素雰囲気下、20~250℃まで5℃/分で昇温し、次いで、250~20℃まで5℃/分で降温して測定した。降温時における100℃から50℃の平均熱膨張率を求めた。
(評価基準)
CTE(α1)が30ppm未満のものを「○」、CTE(α1)が30ppm以上40ppm未満のものを「△」、CTE(α1)が40ppm以上のものを「×」と評価した。
<耐熱性>
作製した硬化膜を長さ30mm、幅5mm、厚み50μmに切り出し、DMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)にてガラス転移温度(Tg)の測定を行った。温度範囲は30~280℃、昇温速度は5℃/min、周波数は1Hz、歪振幅7μm、最小張力50mN、つかみ具間距離は10mmで行った。ガラス転移温度(Tg)はtanδが極大を示す温度とした。
(評価基準)
ガラス転移温度(Tg)が205℃以上のものを「◎」、200℃以上205℃未満のものを「〇」、200℃未満のものを「×」と評価した。
<破断伸びおよび引張強度>
作製した硬化膜を長さ8cm、幅0.5cm、厚み50μmに切り出し、引張破断伸びおよび引張強度(引張破断強度)を下記条件にて測定した。
[測定条件]
試験機:引張試験機EZ-SX(株式会社島津製作所製)
チャック間距離:50mm
試験速度:1mm/min
伸び計算:(引張移動量/チャック間距離)×100
(評価基準)
引張破断伸びが1.4%以上であり、引張強度が40MPa以上のものを「◎」、引張破断伸びが1.0%以上1.4%未満であり、引張強度が35MPa以上40MPa未満のものを「○」、引張破断伸びが1.0%未満、又は、引張強度が35MPa未満のものを「×」と評価した。
<自己消火性>
硬化物の厚みが300μmになるようにアプリケーターで塗布する以外は、上述した硬化膜の作製を同様の方法にて硬化膜を得た。作製した厚み300μmの硬化膜を長さ125mm、幅12.5mmに切り出し、この自己消火性試験用のテストピースの下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させ、接炎終了後からテストピースが消炎するまでの燃焼持続時間を測定した。具体的には、5個のテストピースを試験し、その合計の燃焼持続時間を算出した。
(評価基準)
燃焼持続時間の合計時間が40秒未満のものを「◎」、40秒以上50秒未満のものを「〇」、50秒以上のものを「×」とした。
<吸水性>
硬化物の厚みが200μmになるようにアプリケーターで塗布する以外は、上述した硬化膜の作製を同様の方法にて硬化膜を得た。作製した200μmの硬化膜を長さ50mm、幅50mmに切り出し、吸水性試験用のテストピースとした。このテストピースの重量を電子天秤にて精秤(吸水前の重量)した後、23.5℃に設定したウォーターバスに24時間浸漬した。その後、浸漬したテストピースを取り出し、乾いた布にて水滴を除去した後、重量を電子天秤にて精秤(吸水後の重量)した。吸水前後のテストピースの重量より、下記式にて吸水率を算出した。
吸水率=((吸水後の重量-吸水前の重量)/吸水後の重量)×100
(評価基準)
吸水率が0.06以下のものを「◎」、吸水率が0.06超0.1以下のものを「○」、吸水率が0.1超のものを「×」と評価した。
Figure 0007369580000014

Claims (6)

  1. 少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られ、コンフォメーションプロットで算出された傾きが0.6未満であり、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルと、
    1分子中に少なくとも1つのマレイミド基を含有する化合物と
    を含み、
    前記少なくとも条件(1)を満たすフェノール類が下記式(1)で示されるフェノール類(A)および/または下記一般式(2)で表されるフェノール類(B)からなることを特徴とする、硬化性組成物。
    (条件1)
    オルト位およびパラ位に水素原子を有する
    Figure 0007369580000015
    (ただし、式(1)中、R ~R は、水素原子または炭素数1~15の炭化水素基であり、前記炭化水素基がアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である。ただし、R ~R の少なくとも1つがアルケニル基またはアルキニル基である)
    Figure 0007369580000016
    (ただし、式(2)中、R ~R は、水素原子または炭素数1~15のアルキル基である)
  2. トリアルケニルイソシアヌレートを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の硬化性組成物を基材に塗布して得られることを特徴とするドライフィルムまたはプリプレグ。
  4. 請求項1又は2に記載の硬化性組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
  5. 請求項4に記載の硬化物を含むことを特徴とする積層板。
  6. 請求項4に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
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