JP2023013838A - ポリフェニレンエーテル、硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品 - Google Patents

ポリフェニレンエーテル、硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品 Download PDF

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Kota Oshiro
翔也 関口
Shoya Sekiguchi
翔子 三島
Shoko Mishima
信広 石川
Nobuhiro Ishikawa
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Abstract

【課題】 新規なポリフェニレンエーテルを提供する。【解決手段】 式1で示す構造からなる官能基を有するポリフェニレンエーテル。(式1)JPEG2023013838000056.jpg1267(式1中、nは、2以上4以下の整数を示し、RAは下記式2で示す構造、カルボキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、2個の水酸基で置換された炭素数2~4のアルキル基、又は、炭素数6~10のアルキル基のいずれかを示す。)(式2)JPEG2023013838000057.jpg12115(式2中、mは1以上4以下の整数を示し、Rx、Ry、Rzは、相互に独立して、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。)【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリフェニレンエーテルに関し、さらに当該ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品に関する。
近年、第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信や自動車のADAS(先進運転システム)向けミリ波レーダー等の普及により、電子機器の信号の高周波化が進んでいる。
このような電子機器に内蔵される配線板には、絶縁材料としてエポキシ樹脂等を主成分とした硬化性樹脂組成物が用いられていた。しかしながら、かかる組成物からなる硬化物は、比誘電率(Dk)や誘電正接(Df)が高く、高周波数帯の信号に対して伝送損失が増大し、信号の減衰や発熱等の問題が生じていた。そのため、低誘電特性に優れるポリフェニレンエーテルが注目されてきた。
非特許文献1には、ポリフェニレンエーテルの分子内にアリル基を導入させて、熱硬化性樹脂とすることで、耐熱性を向上させたポリフェニレンエーテルが提案されている。
また、従来、このような樹脂について、使用方法や用途に応じて、分子構造の一部に機能性の官能基を導入する検討が進められている。
例えば、特許文献1には、アリル基を有するフェノール化合物を原料に用いて、側鎖に反応性基を導入したポリフェニレンエーテルが開示されており、特許文献2には、アルコール性水酸基を有するフェノール置換体を製造し、用いることでポリマーアロイの相溶化剤として有用なポリフェニレンエーテルが得られることが開示されている。
特開昭58―27719号公報 特開平5―85977号公報
J. Nunoshige, H. Akahoshi, Y. Shibasaki, M. Ueda, J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2008, 46, 5278-3223.
しかしながら、ポリフェニレンエーテルの要求特性は多岐にわたり、従来にない機能を奏する新規なポリフェニレンエーテルが求められている。
そこで本発明は、新規なポリフェニレンエーテルの提供を第1の課題とする。
また、特に電子機器に内蔵される配線板へポリフェニレンエーテルを適用する場合、ポリフェニレンエーテルには銅に対する高い密着性が求められる。
そこで本発明は、銅に対して高い密着性を有するポリフェニレンエーテルの提供を第2の課題とする。
本発明者らは、特定の構造を有するポリフェニレンエーテルを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
本発明は、
下記式1で示す構造からなる官能基を有することを特徴とする、ポリフェニレンエーテルである。
(式1)
Figure 2023013838000001
(式1中、
nは、2以上4以下の整数を示し、Rは下記式2で示す構造、カルボキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、2個の水酸基で置換された炭素数2~4のアルキル基、又は、炭素数6~10のアルキル基のいずれかを示す。)
(式2)
Figure 2023013838000002
(式2中、
mは1以上4以下の整数を示し、
、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。)
前記ポリフェニレンエーテルが分岐構造を有していてもよい。
前記式1で示す構造からなる官能基が、アリル基とチオール化合物との付加体からなる官能基であってもよい。
本発明は、前記ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物であってもよい。
本発明は、前記硬化性組成物からなる樹脂層を有するドライフィルムであってもよい。
本発明は、前記硬化性組成物又は前記樹脂層からなる硬化物であってもよい。
本発明は、前記硬化物を有する電子部品であってもよい。
本発明によれば、新規なポリフェニレンエーテルが提供される。
更に、本発明によれば、銅に対して高い密着性を有するポリフェニレンエーテルを提供することもできる。
以下、本発明のポリフェニレンエーテル及び当該ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物について説明するが、本発明は以下には何ら限定されない。
説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
本発明において、「不飽和炭素結合」は、特に断らない限り、エチレン性またはアセチレン性の炭素間多重結合(二重結合または三重結合)を示す。
本発明において、不飽和炭素結合を有する官能基としては、特に限定されないが、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基)、又は、(メタ)アクリルロイル基であることが好ましく、硬化性に優れる観点からビニル基、アリル基、(メタ)アクリルロイル基であることがより好ましく、低誘電特性に優れる観点からアリル基であることが更に好ましい。なお、これらの不飽和炭素結合を有する官能基は、炭素数を、例えば15以下、10以下、8以下、5以下、3以下等とすることができる。
本発明において、ポリフェニレンエーテル(PPE)の原料として用いられ、ポリフェニレンエーテルの構成単位になり得るフェノール類を総称して、「原料フェノール類」とする。
本発明において、原料フェノール類の説明を行う際に「オルト位」や「パラ位」等と表現した場合、特に断りがない限り、フェノール性水酸基の位置を基準(イプソ位)とする。
本発明において、単に「オルト位」等と表現した場合、「オルト位の少なくとも一方」等を示す。従って、特に矛盾が生じない限り、単に「オルト位」とした場合、オルト位のどちらか一方を示すと解釈してもよいし、オルト位の両方を示すと解釈してもよい。
本明細書において、原料フェノール類としては主に1価のフェノール類を開示しているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、原料フェノール類として多価のフェノール類を使用してもよい。
本明細書において、「樹脂組成物」を「硬化性組成物」の意味で使用することがある。
本明細書において、数値範囲の上限値と下限値とが別々に記載されている場合、矛盾しない範囲で、各下限値と各上限値との全ての組み合わせが実質的に記載されているものとする。
<<<<本実施形態に係るポリフェニレンエーテル>>>>
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、下記式1で示す構造からなる官能基を有する。
(式1)
Figure 2023013838000003
(式1中、
nは、2以上4以下の整数を示し、Rは下記式2で示す構造、カルボキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、2個の水酸基で置換された炭素数2~4のアルキル基、又は、炭素数6~10のアルキル基のいずれかを示す。)
(式2)
Figure 2023013838000004
(式2中、
mは1以上4以下の整数を示し、
、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。)
なお、式1中、Rは、式2で示される構造であることが好ましい。
ここで、式1で示す構造からなる官能基は、後述するように、不飽和炭素結合を有する官能基(特に、アリル基)とチオール基とのエンチオール反応を利用して、ポリフェニレンエーテルの骨格中に導入することも可能である。換言すれば、式1で示す構造からなる官能基が、アリル基とチオール化合物との付加体からなる官能基であってもよい。
式1で示す構造からなる官能基は、ポリフェニレンエーテル1分子中のいずれの箇所に設けられていてもよい。また、ポリフェニレンエーテル1分子中の式1で示す構造の数(当量)も特に限定されず、用途に応じて適宜変更できる。
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、式1で示す構造からなる官能基を有するという点で、従来のポリフェニレンエーテルとは異なる。本実施施形態に係るポリフェニレンエーテルは、式1で示す構造からなる官能基を有することで、銅等の金属やガラスに対する密着性の向上、溶媒に対する溶解性の向上、他の成分に対する反応性や相溶性の付与、調性等、従来のポリフェニレンエーテルとは異なる機能(式1で示す構造由来の機能)を奏することができる。
後述する方法を参照すれば、従来のポリフェニレンエーテルと同様に、本実施形態に係るポリフェニレンエーテルを容易に製造することができる。
ここで、本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、式1で示す構造を有し、且つ、分岐構造を有するポリフェニレンエーテル(分岐ポリフェニレンエーテル)であってもよい。このような分岐ポリフェニレンエーテルは、溶解性や相溶性に優れることから、式1で示す構造によって付与される機能を、より向上する効果が期待できる。
ここで、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルとは、より具体的には、その構造の一部が、少なくともイプソ位、オルト位、パラ位の3か所がエーテル結合されたベンゼン環により分岐しているポリフェニレンエーテルである。
以下、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルのことを、分岐ポリフェニレンエーテルとし、分岐構造を有しないポリフェニレンエーテルのことを、非分岐ポリフェニレンエーテルとする。
分岐ポリフェニレンエーテルは、例えば、骨格中に少なくとも式10Aで示されるような分岐構造を有するポリフェニレンエーテル化合物である。
(式10A)
Figure 2023013838000005
式10A中、R~Rは、相互に独立に、水素原子、又は、任意の置換基である。
また、分岐ポリフェニレンエーテルは、骨格中に、下記式10Bで示される構造(非分岐部位)を有していてもよい。
(式10B)
Figure 2023013838000006
式10B中、R~Rは、相互に独立に、水素原子、又は、任意の置換基である。
このような分岐ポリフェニレンエーテルは、少なくとも下記条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得ることができる。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
分岐構造を有する本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、換言すれば、少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られ、式1に示す構造を有する分岐ポリフェニレンエーテルである。
<<<本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの具体例>>>
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルとしては、例えば、下記式3に示す構造を有するポリフェニレンエーテルが挙げられる。
(式3)
Figure 2023013838000007
(式中、
101は、水素原子、不飽和炭素結合を有しない炭素数1~3の炭化水素基、又は、置換基を有していてもよいフェノキシ基であり、
102及びR103は、相互に独立して、水素原子、又は、不飽和炭素結合を有しない炭素数1~3の炭化水素基であり、
104は、-(CH-S-Rを示し、nは、2以上4以下の整数であり、
は、下記式2の構造、カルボキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、2個の水酸基で置換された炭素数2~4のアルキル基、又は、炭素数6~10のアルキル基のいずれかを示す。
(式2)
Figure 2023013838000008
(式2中、
mは1以上4以下の整数を示し、
、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。)
当該ポリフェニレンエーテルは、分岐構造を有していてもよい。例えば、当該ポリフェニレンエーテルは、条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られ、式1に示す構造を有するポリフェニレンエーテルと表現されてもよい。
なお、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルでは、一例として、R101が置換基を有していてもよいフェノキシ基であり、R101が式1の構造を置換基とするフェノキシ基であることを示す。換言すれば、当該R101において、ポリフェニレンエーテルの分岐が生じている状態を意味する。
また、当該ポリフェニレンエーテルは、分岐構造を有しなくともよい。
ここで、ポリフェニレンエーテルは、上記式3で示される構造と、下記式4で示される構造とを含んでいてもよい。別の表現によれば、ポリフェニレンエーテルは、式3で示される構造と式4で示される構造とからなる骨格を有してもよい。
(式4)
Figure 2023013838000009
(式4中、
105は、水素原子、炭素数1~4の炭化水素基、又は、置換基を有していてもよいフェノキシ基であり、
106~R108は、相互に独立して、水素原子、又は、炭素数1~3の炭化水素基、である。)
105は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基であってもよい。
ここで、式3のR101及び式4のR105は、各々、式3又は式4で示される構造であってもよい。
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの具体的な構造として、例えば、上記式3が以下の構造になるポリフェニレンエーテルA-Dが挙げられる。
<<ポリフェニレンエーテルA>>
ポリフェニレンエーテルAは、上記式3が、下記式3Aで示されるポリフェニレンエーテルである。
(式3A)
Figure 2023013838000010
(式中、
101は、水素原子又はメチル基であり、
102及びR103は、水素原子であり、
104は、-(CH-S-Rを示し、nは、3又は4の整数であり、
は、下記式2の構造を示す。)
(式2)
Figure 2023013838000011
(式中、
mは3又は4の整数を示し、
、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~2のアルキル基、又は、炭素数1~2のアルコキシ基を示す。)
上記式中、
101は、好ましくは水素原子であり、
nは好ましくは3であり、
mは好ましくは3であり、
、R、Rは、1つ以上が炭素数1~2のアルコキシ基であることが好ましく、2つ以上が炭素数1~2のアルコキシ基であることが好ましい。
より具体的には、ポリフェニレンエーテルAは、下記式で示す構造のいずれかを有することが好ましい。下記式の構造中、オルト位は分岐構造になっていてもよい。
(式3A-1)
Figure 2023013838000012
(式3A-2)
Figure 2023013838000013
(式3A-3)
Figure 2023013838000014
<<ポリフェニレンエーテルB>>
ポリフェニレンエーテルBは、上記式3が、下記式3Bで示されるポリフェニレンエーテルである。
(式3B)
Figure 2023013838000015
(式中、
101は、水素原子又はメチル基であり、
102及びR103は、水素原子であり、
104は、-(CH-S-Rを示し、nは、3又は4の整数であり、
は、カルボキシル基で置換された炭素数2のアルキル基を示す。
上記式中、
101は、好ましくは水素原子であり、
nは好ましくは3である。
より具体的には、ポリフェニレンエーテルBは、下記式で示す構造のいずれかを有することが好ましい。下記式の構造中、オルト位は分岐構造になっていてもよい。
(式3B-1)
Figure 2023013838000016
(式3B-2)
Figure 2023013838000017
<<ポリフェニレンエーテルC>>
ポリフェニレンエーテルCは、上記式3が、下記式3Cで示されるポリフェニレンエーテルである。
(式3C)
Figure 2023013838000018
(式中、
101は、水素原子又はメチル基であり、
102及びR103は、水素原子であり、
104は、-(CH-S-Rを示し、nは、3又は4の整数であり、
は、2個の水酸基で置換された炭素数3のアルキル基を示す。
上記式中、
101は、好ましくは水素原子であり、
nは好ましくは3である。
より具体的には、ポリフェニレンエーテルCは、下記式で示す構造を有することが好ましい。下記式の構造中、オルト位は分岐構造になっていてもよい。
(式3C-1)
Figure 2023013838000019
<<ポリフェニレンエーテルD>>
ポリフェニレンエーテルDは、上記式3が、下記式3Dで示されるポリフェニレンエーテルである。
(式3D)
Figure 2023013838000020
(式中、
101は、水素原子又はメチル基であり、
102及びR103は、水素原子であり、
104は、-(CH-S-Rを示し、nは、3又は4の整数であり、
は、炭素数7~9のアルキル基を示す。
上記式中、
101は、好ましくは水素原子であり、
は、炭素数8のアルキル基であることが好ましい。
より具体的には、ポリフェニレンエーテルDは、下記式で示す構造を有することが好ましい。下記式の構造中、オルト位は分岐構造になっていてもよい。
(式3D-1)
Figure 2023013838000021
<<<<本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの製造方法>>>>
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、以下の方法によって製造することができる。
(方法1)
[-(CH-S-R](式1)で示される構造を含まないポリフェニレンエーテルを合成し、当該ポリフェニレンエーテルの一部を変性する。
(方法2)
[-(CH-S-R](式1)で示される構造を含む化合物をモノマーとしてポリフェニレンエーテルを合成する。
以下、方法1及び方法2について詳述する。
<<<方法1による本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの製造方法>>>
方法1による本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの製造方法の具体例として、不飽和炭素結合を含む官能基(特に、アリル基)を有するポリフェニレンエーテルを合成した後に、当該不飽和炭素結合と、[-R]で示される官能基を含むチオール化合物と、をエンチオール反応させる方法が挙げられる。
<<不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテル>>
不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルに関して、分岐ポリフェニレンエーテルと非分岐ポリフェニレンエーテルに分けて説明する。
<不飽和炭素結合を含む官能基を有する分岐ポリフェニレンエーテル>
不飽和炭素結合を含む官能基を有する分岐ポリフェニレンエーテルを合成する方法としては、特に限定されないが、例えば、
原料フェノール類として、
少なくとも下記条件1および下記条件2をいずれも満たすフェノール類(A)を含ませる方法(形態1)、または、少なくとも下記条件1を満たし下記条件2を満たさないフェノール類(B)と下記条件1を満たさず下記条件2を満たすフェノール類(C)の混合物を含ませる方法(形態2)が挙げられる。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
(条件2)
パラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有する
前記方法によって得られる分岐ポリフェニレンエーテルは、条件2を満たすフェノール類{例えば、フェノール類(A)およびフェノール類(C)のいずれか}を少なくともフェノール原料として用いているので、少なくとも不飽和炭素結合を含む炭化水素基を有することとなる。
すなわち、前記方法によって得られる分岐ポリフェニレンエーテルは、例えば、骨格中に少なくとも式(i)で示されるような分岐構造を有するポリフェニレンエーテルであり、かつ少なくとも一つの不飽和炭素結合を含む炭化水素基を官能基として有する化合物と考えられる。具体的には、式(i)中のR~Rの少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である化合物と考えられる。
特に、上記形態2において、工業的・経済的な観点から、フェノール類(B)が、o-クレゾール、2-フェニルフェノール、2-ドデシルフェノールおよびフェノールの少なくともいずれか1種であり、フェノール類(C)が、2-アリル-6-メチルフェノールであることが好ましい。
<不飽和炭素結合を含む官能基を有する非分岐ポリフェニレンエーテル>
不飽和炭素結合を含む官能基を有する非分岐ポリフェニレンエーテルを合成する方法としては、特に限定されないが、例えば、
原料フェノール類として、
条件1を満たすフェノール類を使用せず、且つ、条件2を満たすフェノール類を使用する方法が挙げられる。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
(条件2)
パラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有する
例えば、原料フェノール類として、フェノール類(C)のみを使用する、又は、フェノール類(C)及びフェノール類(D)のみを使用する方法によって、不飽和炭素結合を含む官能基を有する非分岐ポリフェニレンエーテルを合成することができる。
<原料フェノール類>
以下、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルの合成原料として有用な、フェノール類(A)~(D)に関してより詳細に説明する。
フェノール類(A)は、上述のように、条件1および条件2のいずれも満たすフェノール類、即ち、オルト位およびパラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類であり、好ましくは下記式で示されるフェノール類(a)である。
(式11)
Figure 2023013838000022
式中、R~Rは、相互に独立して、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~Rの少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましく、炭素数1~3であることがより好ましい。
上記式で示されるフェノール類(a)としては、o-ビニルフェノール、m-ビニルフェノール、o-アリルフェノール、m-アリルフェノール、3-ビニル-6-メチルフェノール、3-ビニル-6-エチルフェノール、3-ビニル-5-メチルフェノール、3-ビニル-5-エチルフェノール、3-アリル-6-メチルフェノール、3-アリル-6-エチルフェノール、3-アリル-5-メチルフェノール、3-アリル-5-エチルフェノール等が例示できる。上記式で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
フェノール類(B)は、上述のように、条件1を満たし、条件2を満たさないフェノール類、即ち、オルト位およびパラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であり、好ましくは下記式で示されるフェノール類(b)である。
(式12)
Figure 2023013838000023
式中、R~Rは、相互に独立して、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~Rは、不飽和炭素結合を有しない。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましく、炭素数1~3であることがより好ましい。
上記式で示されるフェノール類(b)としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、o-tert-ブチルフェノール、m-tert-ブチルフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、2-ドデシルフェノール、等が例示できる。上記式で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
フェノール類(C)は、上述のように、条件1を満たさず、条件2を満たすフェノール類、即ち、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類であり、好ましくは下記式で示されるフェノール類(c)である。
(式13)
Figure 2023013838000024
式中、RおよびR10は、相互に独立に、炭素数1~15の炭化水素基であり、RおよびRは、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~R10の少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましく、炭素数1~3であることがより好ましい。
上記式で示されるフェノール類(c)としては、2-アリル-6-メチルフェノール、2-アリル-6-エチルフェノール、2-アリル-6-フェニルフェノール、2-アリル-6-スチリルフェノール、2,6-ジビニルフェノール、2,6-ジアリルフェノール、2,6-ジイソプロペニルフェノール、2,6-ジブテニルフェノール、2,6-ジイソブテニルフェノール、2,6-ジイソペンテニルフェノール、2-メチル-6-スチリルフェノール、2-ビニル-6-メチルフェノール、2-ビニル-6-エチルフェノール等が例示できる。上記式で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
フェノール類(D)は、上述のように、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であり、好ましくは下記式で示されるフェノール類(d)である。
(式14)
Figure 2023013838000025
式中、R11およびR14は、相互に独立して、不飽和炭素結合を有しない炭素数1~15の炭化水素基であり、R12およびR13は、相互に独立して、水素原子、または不飽和炭素結合を有しない炭素数1~15の炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましく、炭素数1~3であることがより好ましい。
上記式で示されるフェノール類(d)としては、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジトリルフェノール等が例示できる。上記式で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
ここで、本実施形態において、炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、アルケニル基である。不飽和炭素結合を有する炭化水素基としては、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。なお、これらの炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
<<不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルの合成方法>>
前述したように、原料フェノール類として条件1を満たすフェノール類を使用することで分岐ポリフェニレンエーテルとすることができ、原料フェノール類として条件1を満たすフェノール類を使用しないことで非分岐ポリフェニレンエーテルとすることができる。
また、原料フェノール類として、条件2を満たすフェノール類を使用することで不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルとすることができる。
このように、合成原料を変更して、ポリフェニレンエーテルの分岐/非分岐や不飽和炭素結合を含む官能基の量を調整すること以外は、従来公知のポリフェニレンエーテルの合成方法(重合条件、触媒の有無および触媒の種類等)を適用して合成することが可能である。
次に、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルの合成方法の一例について説明する。
不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルは、例えば、原料フェノール類、触媒および溶媒を含む重合溶液を調製すること(重合溶液調製工程)、少なくとも前記溶媒に酸素を通気させること(酸素供給工程)、酸素を含む前記重合溶液内で、フェノール類を酸化重合させること(重合工程)で合成することができる。
以下、重合溶液調製工程、酸素供給工程および重合工程について説明する。なお、各工程を連続的に実施してもよいし、ある工程の一部または全部と、別の工程の一部または全部と、を同時に実施してもよいし、ある工程を中断し、その間に別の工程を実施してもよい。例えば、重合溶液調製工程中や重合工程中に酸素供給工程を実施してもよい。また、このポリフェニレンエーテルの合成方法は、必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、重合工程により得られるポリフェニレンエーテルを抽出する工程(例えば、再沈殿、ろ過および乾燥を行う工程)、上述した変性工程等が挙げられる。
<重合溶液調製工程>
重合溶液調製工程は、後述する重合工程において重合されるフェノール類を含む各原料を混合し、重合溶液を調製する工程である。重合溶液の原料としては、原料フェノール類、触媒、溶媒が挙げられる。
(触媒)
触媒は特に限定されず、ポリフェニレンエーテルの酸化重合において使用される適宜の触媒とすればよい。
触媒としては、例えば、アミン化合物や、銅、マンガン、コバルト等の重金属化合物とテトラメチルエチレンジアミンなどのアミン化合物とからなる金属アミン化合物が挙げられ、特に、十分な分子量の共重合体を得るためには、アミン化合物に銅化合物を配位させた銅-アミン化合物を用いることが好ましい。触媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
触媒の含有量は特に限定されないが、重合溶液中、原料フェノール類の合計に対し0.1~0.6mol%等とすればよい。
このような触媒は、予め適宜の溶媒に溶解させてもよい。
(溶媒)
溶媒は特に限定されず、ポリフェニレンエーテルの酸化重合において使用される適宜の溶媒とすればよい。溶媒は、フェノール性化合物および触媒を溶解または分散可能なものを用いることが好ましい。
溶媒としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CA)等が挙げられる。溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
なお、溶媒として、水や水と相溶可能な溶媒等を含んでいてもよい。
重合溶液中の溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調整すればよい。
(その他の原料)
重合溶液は、本実施形態の効果を阻害しない範囲でその他の原料を含んでいてもよい。
<酸素供給工程>
酸素供給工程は、重合溶液中に酸素含有ガスを通気させる工程である。
酸素ガスの通気時間や使用する酸素含有ガス中の酸素濃度は、気圧や気温等に応じて適宜変更可能である。
<重合工程>
重合工程は、重合溶液中に酸素が供給された状況下、重合溶液中のフェノール類を酸化重合させる工程である。
具体的な重合の条件としては特に限定されないが、例えば、25~100℃、2~24時間の条件で攪拌すればよい。
<<チオール化合物>>
チオール化合物としては、下記式5で示される化合物を使用できる。
(式5)
Figure 2023013838000026
式中、
は、下記式2の構造、2個の水酸基で置換された炭素数2~4のアルキル基、カルボキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数6~10のアルキル基のいずれかを示す。
(式2)
Figure 2023013838000027
式中、
mは1以上4以下の整数を示し、
、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。
<<エンチオール反応>>
不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルと、チオール化合物とを公知の方法に従ってエンチオール反応させる。
より具体的には、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルの不飽和炭素結合と、式5で示されるチオール化合物のチオール基とを反応させることで、チオール化合物由来の式1で示される構造が、スルフィド基を介してポリフェニレンエーテルに導入される。
エンチオール反応においては、炭素間二重結合とチオール基とを1対1で付加反応させる。より具体的には、エンチオール反応は、チオールに熱ラジカル発生剤を加えて加熱することや、エネルギー線照射を行うことにより、チイルラジカルが発生し、当該ラジカルによりチオール基が炭素間二重結合に付加する反応が生じる。エンチオール反応においてはチイルラジカルが連鎖的に反応するため、本発明に係るフェノール化合物を高効率で合成することができる。
不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルと反応させるチオール化合物の配合量は、後述する硬化性組成物における架橋型硬化剤との反応を考慮し、不飽和炭素結合を含む官能基が残存するように調整できる。
エネルギー線照射の条件、配合する開始剤の種類及び量、使用する溶媒、溶媒中の各化合物の濃度、反応条件(反応温度、反応時間、攪拌条件、雰囲気)等は、使用する原料等に応じて適宜設定すればよく、限定されない。
以上説明したように、本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、少なくとも以下の製造方法によって得ることができる。
(工程1)前述した製造工程を経るポリフェニレンエーテルの製造に際して、原料フェノール類の種類を特定のものとすることで、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルを得る。
(工程2)このようにして得られた、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルに、前述したエンチオール反応による変性(チオール化合物由来の官能基の導入)を実施することで、本実施形態に係るポリフェニレンエーテルを製造することができる。
工程1において、原料フェノール類の種類を適宜選択することで、ポリフェニレンエーテルの分岐/非分岐を調整することができる。
ポリフェニレンエーテルを分岐ポリフェニレンエーテルとする場合、分岐ポリフェニレンエーテル合成時に用いられる原料フェノール類の合計に対する条件1を満たすフェノール類の割合は、1~50mol%であることが好ましい。
また、上記条件2を満たすフェノール類を使用する場合には、原料フェノール類の合計に対する条件2を満たすフェノール類の割合は、0.5~99mol%であることが好ましく、1~99mol%であることがより好ましい。
<<方法1による本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの別の製造方法>>
方法1による本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの製造方法として、不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテルと、[-R]で示される官能基を有するチオール化合物とを用いて、エンチオール反応により[-R]で示される官能基をポリフェニレンエーテルに導入する方法について説明したが、これには限定されない。例えば、末端チオール基を有するポリフェニレンエーテルと、不飽和炭素結合を含む官能基及び[-R]で示される官能基を有する化合物とをエンチオール反応させる方法であってもよい。
<<<方法2による本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの製造方法>>>
方法2による本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの製造方法としては、前記[-(CH-S-R]で示される官能基を含むフェノール類をモノマーとしてポリフェニレンエーテルを合成する方法が挙げられる。
具体的には、前記原料フェノール類のうち、条件2を満たすフェノール類(即ち、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類)と、前記したチオール化合物(前記[-R]で示される官能基を有するチオール化合物)とをエンチオール反応させることで、[-(CH-S-R]で示される官能基を含むフェノール類を得ることができる。
このように、前記[-(CH-S-R]で示される官能基を含むフェノール類を使用する以外は、前述した方法1におけるポリフェニレンエーテルの合成方法を適用することで、前記[-(CH-S-R]で示される官能基が導入されたポリフェニレンエーテルを製造することができる。
ポリフェニレンエーテルを分岐ポリフェニレンエーテルとする場合、分岐ポリフェニレンエーテル合成時に用いられる原料フェノール類の合計に対する条件1を満たすフェノール類の割合は、1~50mol%であることが好ましい。
また、本方法2において、原料フェノール類の合計に対する前記[-(CH-S-R]で示される官能基を含むフェノール類の割合は、0.5~99mol%であることが好ましく、1~99mol%であることがより好ましい。
さらにまた、後述する硬化性組成物にて、架橋型硬化剤を用いる場合には、合成するポリフェニレンエーテルに不飽和炭素結合を含む官能基が残存することが好ましいことから、原料フェノール類に、前記[-(CH-S-R]で示される官能基を含むフェノール類と、前記条件2を満たすフェノール類(即ち、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類)を使用することが好ましい。
方法2において使用可能な、前記[-(CH-S-R]で示される官能基を含むフェノール類としては、例えば、下記式200に示す構造を有するフェノール類が挙げられる。
(式200)
Figure 2023013838000028
式200中、
a1~Ra4は、相互に独立して、H又は炭素数3以下のアルキル基を示し、
a5は、-(CH-S-Rを示し、nは、2以上4以下(好ましくは、3以上4以下)の整数を示し、
は、下記式201の構造;カルボキシル基で置換された炭素数1~3(好ましくは、炭素数2)のアルキル基;2個の水酸基で置換された炭素数2~4(好ましくは、炭素数3)のアルキル基;炭素数6~10(好ましくは炭素数7~9、より好ましくは炭素数8)のアルキル基;のいずれかを示す。
(式201)
Figure 2023013838000029
式201中、
mは、1以上4以下(好ましくは、3以上4以下)の整数を示し、
、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~3(好ましくは炭素数1~2)のアルキル基、又は、炭素数1~3(好ましくは炭素数1~2)のアルコキシ基を示す。
式200において、Ra1は、水素又はメチル基であることが好ましく、Ra2~Ra4は、水素であることが好ましい。
式201において、R、R、Rは、1つ以上が炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましく、2つ以上が炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましい。
カルボキシル基で置換されたアルキル基とする場合、アルキル基のいずれの箇所がカルボキシル基で置換されていてもよい。同様に、水酸基で置換されたアルキル基とする場合、アルキル基のいずれの箇所が水酸基で置換されていてもよい。
このように、方法2で使用可能なフェノール類は、スルフィド結合を有する各種有機基が結合した構造を有する。
<<方法2で使用可能なフェノール化合物の具体例>>
<フェノール化合物A>
フェノール化合物Aは、式200において、Rが式201の構造で示される化合物である。
フェノール化合物Aは、式Aで示される化合物であることが好ましい。
(式A)
Figure 2023013838000030
式A中、
a1は、H又はメチル基であり、
nは、3又は4の整数であり、
mは、3又は4の整数であり、
、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~2のアルキル基、又は、炭素数1~2のアルコキシ基を示す。
式A中、Ra1は、Hであることが好ましい。
式A中、nは、3であることが好ましい。
式A中、mは、3であることが好ましい。
式A中、R、R、Rは、1つ以上が炭素数1~2のアルコキシ基であることが好ましく、2つ以上が炭素数1~2のアルコキシ基であることが好ましい。
フェノール化合物Aの具体例としては、下記式A1-A3に示す化合物が挙げられる。
(式A1)
Figure 2023013838000031
(式A2)
Figure 2023013838000032
(式A3)
Figure 2023013838000033
<フェノール化合物B>
フェノール化合物Bは、上記式200において、Rがカルボキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基である化合物である。
フェノール化合物Bは、式Bで示される化合物であることが好ましい。
(式B)
Figure 2023013838000034
式B中、
a1は、H又はメチル基であり、
nは、3又は4の整数であり、
は、カルボキシル基で置換された炭素数2のアルキル基を示す。
式B中、Ra1は、Hであることが好ましい。
式B中、nは、3であることが好ましい。
フェノール化合物Bの具体例としては、下記式B1-B2に示す化合物が挙げられる。
(式B1)
Figure 2023013838000035
(式B2)
Figure 2023013838000036
<フェノール化合物C>
フェノール化合物Cは、上記式200において、Rが2個の水酸基で置換された炭素数2~4のアルキル基である化合物である。
フェノール化合物Cは、式Cで示される化合物であることが好ましい。
(式C)
Figure 2023013838000037
式C中、
a1は、H又はメチル基であり、
nは、3又は4の整数であり、
は、2個の水酸基で置換された炭素数3のアルキル基を示す。
式C中、Ra1は、Hであることが好ましい。
式C中、nは、3であることが好ましい。
フェノール化合物Cの具体例としては、下記式C1に示す化合物が挙げられる。
(式C1)
Figure 2023013838000038
<フェノール化合物D>
フェノール化合物Dは、上記式200において、Rが炭素数6~10のアルキル基である構造である。
フェノール化合物Dは、式Dで示される化合物であることが好ましい。
(式D)
Figure 2023013838000039
式D中、
a1は、H又はメチル基であり、
nは、3又は4の整数であり、
は、炭素数7~9のアルキル基を示す。
式D中、Ra1は、Hであることが好ましい。
式D中、nは、3であることが好ましい。
式D中、Rは、炭素数8のアルキル基であることが好ましい。
フェノール化合物Dの具体例としては、下記式D1に示す化合物が挙げられる。
(式D1)
Figure 2023013838000040
<フェノール類の合成方法>
このようなフェノール類は、前述したように、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類と、末端チオール基及び[-(CH-S-R]で示される官能基を有する化合物(チオール化合物)とをエンチオール反応させることにより合成可能である。
例えば、前記式200で示される構造を有するフェノール類を合成する場合、下記式202で示されるフェノール類と、下記式203で示されるチオール化合物とをエンチオール反応させればよい。
(式202)
Figure 2023013838000041
式202中、
~Rは、相互に独立して、H又は炭素数3以下のアルキル基を示し、
pは0以上2以下の整数を示す。
(式203)
Figure 2023013838000042
式ii中、
は、下記式204の構造、2個の水酸基で置換された炭素数2~4のアルキル基、カルボキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数6~10のアルキル基のいずれかを示す。
(式204)
Figure 2023013838000043
式204中、
mは1以上4以下の整数を示し、
、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。
ここで、[-(CH-S-R]で示される官能基を含むフェノール類は、末端チオール基を有するフェノール類と、不飽和炭素結合を有する官能基及び[-(CH-S-R]で示される官能基を有する化合物と、をエンチオール反応させることによっても合成可能である。
<<<<本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの物性および性質>>>>
<<<分岐度>>>
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルが分岐ポリフェニレンエーテルである場合、その分岐構造(分岐の度合い)は、以下の分析手順に基づいて確認することができる。
(分析手順)
ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液を、0.1、0.15、0.2、0.25mg/mLの間隔で調製後、0.5mL/minで送液しながら屈折率差と濃度のグラフを作成し、傾きから屈折率増分dn/dcを計算する。次に、下記装置運転条件にて、絶対分子量を測定する。RI検出器のクロマトグラムとMALS検出器のクロマトグラムを参考に、分子量と回転半径の対数グラフ(コンフォメーションプロット)から、最小二乗法による回帰直線を求め、その傾きを算出する。
(測定条件)
装置名 :HLC8320GPC
移動相 :クロロホルム
カラム :TOSOH TSKguardcolumnHHR-H
+TSKgelGMHHR-H(2本)
+TSKgelG2500HHR
流速 :0.6mL/min.
検出器 :DAWN HELEOS(MALS検出器)
+Optilab rEX(RI検出器、波長254nm)
試料濃度 :0.5mg/mL
試料溶媒 :移動相と同じ。試料5mgを移動相10mLで溶解
注入量 :200μL
フィルター :0.45μm
STD試薬 :標準ポリスチレン Mw 37,900
STD濃度 :1.5mg/mL
STD溶媒 :移動相と同じ。試料15mgを移動相10mLで溶解
分析時間 :100min
絶対分子量が同じ樹脂において、高分子鎖の分岐が進行しているものほど重心から各セグメントまでの距離(回転半径)は小さくなる。そのため、GPC-MALSにより得られる絶対分子量と回転半径の対数プロットの傾きは、分岐の程度を示し、傾きが小さいほど分岐が進行していることを意味する。本実施形態においては、上記コンフォメーションプロットで算出された傾きが小さいほどポリフェニレンエーテルの分岐が多いことを示し、この傾きが大きいほどポリフェニレンエーテルの分岐が少ないことを示す。
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルが分岐ポリフェニレンエーテルである場合、上記傾きは、0.6未満であり、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、又は、0.35以下であることが好ましい。上記傾きがこの範囲である場合、ポリフェニレンエーテルが十分な分岐を有していると考えられる。なお、上記傾きの下限としては特に限定されないが、例えば、0.05以上、0.10以上、0.15以上、又は、0.20以上である。
なお、コンフォメーションプロットの傾きは、ポリフェニレンエーテルの合成の際の、温度、触媒量、攪拌速度、反応時間、酸素供給量、溶媒量を変更することで調整可能である。より具体的には、温度を高める、触媒量を増やす、攪拌速度を速める、反応時間を長くする、酸素供給量を増やす、及び/又は、溶媒量を少なくすることで、コンフォメーションプロットの傾きが低くなる(ポリフェニレンエーテルがより分岐し易くなる)傾向となる。
<<<本実施形態に係るポリフェニレンエーテルの分子量>>>
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、数平均分子量が2,000~30,000であることが好ましく、5,000~30,000であることがより好ましく、8,000~30,000であることが更に好ましく、8,000~25,000であることが特に好ましい。分子量をこのような範囲とすることで、溶媒への溶解性を維持しつつ、硬化性組成物の製膜性を向上させることができる。
さらに、本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、多分散指数(PDI:重量平均分子量/数平均分子量)が、1.5~20であることが好ましい。
本実施形態において、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
<<<実施形態に係るポリフェニレンエーテルの溶媒溶解性>>>
実施形態に係るポリフェニレンエーテル1gは、25℃で、好ましくは100gのシクロヘキサノンに対して(より好ましくは、100gの、シクロヘキサノン、DMFおよびPMAに対して)可溶である。なお、ポリフェニレンエーテル1gが100gの溶媒(例えば、シクロヘキサノン)に対して可溶とは、ポリフェニレンエーテル1gと溶媒100gとを混合したときに、濁りおよび沈殿が目視で確認できないことを示す。このポリフェニレンエーテルは、25℃で、100gのシクロヘキサノンに対して、1g以上可溶であることがより好ましい。
実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、分岐構造を有することで種々の溶媒への溶解性、組成物中の成分(架橋型硬化剤その他の成分)同士の分散性や相溶性が向上する。このため組成物の各成分が均一に溶解または分散し、均一な硬化物を得ることが可能となる。この結果、この硬化物は機械的特性等が極めて優れている。特に、実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、相互に架橋し、または架橋型硬化剤と架橋することができる。この結果、得られる硬化物の機械的特性や低熱膨張性等はより良好となる。
このようなポリフェニレンエーテルは、硬化性組成物の成分として用いる場合、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
<<<実施形態に係るポリフェニレンエーテルのガラス転移温度(Tg)>>>
実施形態に係るポリフェニレンエーテルのガラス転移温度(Tg)は、150℃~200℃であることが好ましく、155℃~195℃であることがより好ましく、160℃~190℃であることが特に好ましい。ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度(Tg)は、側鎖アルキル鎖の炭素数を増やす程、低くすることができる。
なお、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。
<<<<硬化性組成物>>>>
本実施形態に係るポリフェニレンエーテルは、公知の成分と組み合わせて、硬化性組成物とすることができる。
公知の成分としては、例えば、シリカ、過酸化物、架橋型硬化剤、マレイミド化合物、エラストマー等が挙げられる。また、その他の公知の成分として、難燃性向上剤(リン系化合物等)、セルロースナノファイバー、ポリマー成分(シアネートエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノ-ルノボラック樹脂等の樹脂成分、ポリイミド、ポリアミド等の有機ポリマー)、分散剤、熱硬化触媒、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、防錆剤、密着性付与剤、溶媒等が挙げられる。
これらは、1種のみが使用されてもよいし、2種以上が使用されてもよい。
<<<シリカ>>>
硬化性組成物は、シリカを含んでもよい。組成物がシリカを含有することで、組成物の製膜性を向上させることができる。さらには得られる硬化物に難燃性を付与することができる。より詳細には、組成物にシリカを配合することで、硬化物の自己消火性と低誘電正接化を高いレベルで実現することができる。
シリカの平均粒径は、好ましくは0.01~10μm、より好ましくは0.1~3μmである。ここで平均粒径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折・散乱法による粒度分布の測定値から、累積分布によるメディアン径(d50、体積基準)として求めることができる。
異なる平均粒径のシリカを併用することも可能である。シリカの高充填化を図りたい場合には、例えば平均粒径1μm以上のシリカとともに、平均粒径1μm未満のナノオーダーの微小のシリカを併用してもよい。
シリカはカップリング剤により表面処理が施されていてもよい。表面をシランカップリング剤で処理することで、ポリフェニレンエーテルとの分散性を向上させることができる。また有機溶媒との親和性も向上させることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤などを用いることができる。エポキシシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどを用いることができる。メルカプトシランカップリング剤としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを用いることができる。ビニルシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシランなどを用いることができる。
シランカップリング剤の使用量は、例えば、シリカ100質量部に対して0.1~5質量部、0.5~3質量部としてもよい。
シリカの含有量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して50~400質量部または100~400質量部としてもよい。あるいは、シリカの含有量は、組成物の固形分全量基準で、10~30質量%としてもよい。
<<<過酸化物>>>
上述した実施形態に係るポリフェニレンエーテルが不飽和炭素結合を含む官能基を有する場合、硬化性組成物は過酸化物を含むことが好ましい。
過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ブテン、アセチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチレンパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、等があげられる。過酸化物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
過酸化物としては、これらの中でも、取り扱いの容易さと反応性の観点から、1分間半減期温度が130℃から180℃のものが望ましい。このような過酸化物は、反応開始温度が比較的に高いため、乾燥時など硬化が必要でない時点での硬化を促進し難く、ポリフェニレンエーテルを含有した硬化性組成物の保存性を貶めず、また、揮発性が低いため乾燥時や保存時に揮発せず、安定性が良好である。
過酸化物の硬化性組成物中の含有量は、過酸化物の総量で、硬化性組成物中の全固形分に対し、0.01~20質量%とするのが好ましく、0.05~10質量%とするのがより好ましく、0.1~10質量%とするのが特に好ましい。過酸化物の総量をこの範囲とすることで、低温での効果を十分なものとしつつ、塗膜化した際の膜質の劣化を防止することができる。
また、必要に応じてアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物やジクミル、2,3-ジフェニルブタン等のラジカル開始剤を含有してもよい。
<<<架橋型硬化剤>>>
硬化性組成物は、上述した実施形態に係るポリフェニレンエーテルが不飽和炭素結合を含む官能基を有する場合、架橋型硬化剤を含むことができ、低誘電特性や耐熱性を高めることができる。架橋型硬化剤としては、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンやジビニルビフェニルなどの多官能ビニル化合物;フェノールとビニルベンジルクロライドの反応から合成されるビニルベンジルエーテル系化合物;ジアリルフタレートやジアリルイソフタレートなどのスチレンモノマー,フェノールとアリルクロライドの反応から合成されるアリルエーテル系化合物;さらにトリアリルイソシアヌレート(以下、TAIC(登録商標))やトリアリルシアヌレート(以下TAC)などのトリアルケニルイソシアヌレートなどが挙げられる。中でも、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が特に良好なトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレートが好ましい。架橋型硬化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
<<<マレイミド化合物>>>
マレイミド化合物は、1分子中に少なくとも1つのマレイミド基を含有する限り特に限定されない。
マレイミド化合物としては、
(1)単官能脂肪族/脂環族マレイミド、
(2)単官能芳香族マレイミド、
(3)多官能脂肪族/脂環族マレイミド、
(4)多官能芳香族マレイミド、
を挙げることができる。
<(1)単官能脂肪族/脂環族マレイミド>
単官能脂肪族/脂環族マレイミド(1)としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、特開平11-302278号に開示されているマレイミドカルボン酸とテトラヒドロフルフリルアルコールとの反応物等を挙げることができる。
<<(2)単官能芳香族マレイミド>>
単官能芳香族マレイミド(2)としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド等を挙げることができる。
<(3)多官能脂肪族/脂環族マレイミド>
多官能脂肪族/脂環族マレイミド(3)としては、例えば、N,N’-メチレンビスマレイミド、N,N’-エチレンビスマレイミド、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸とを脱水エステル化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、トリス(カーバメートヘキシル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドアルコールとをウレタン化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドウレタン化合物等のイソシアヌル骨格ポリマレイミド類、イソホロンビスウレタンビス(N-エチルマレイミド)、トリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリオールとを脱水エステル化し、又は脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸エステルと各種脂肪族/脂環族ポリオールとをエステル交換反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類、脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類、脂肪族/脂環族マレイミドアルコールと各種脂肪族/脂環族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドウレタン化合物類等を挙げることができる。
具体的には、炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは直鎖状アルキル基を有するマレイミドアルキルカルボン酸又はマレイミドアルキルカルボン酸エステルと、数平均分子量100~1000のポリエチレングリコール及び/又は数平均分子量100~1000のポリプロピレングリコール及び/又は数平均分子量100~1000のポリテトラメチレングリコールとを、脱水エステル化反応又はエステル交換反応して得られる下記一般式(X1)及び一般式(X2)で表される脂肪族ビスマレイミド化合物等を挙げることができる。
Figure 2023013838000044
(式中、mは1~6の整数、nは2~23の値、R1は水素原子又はメチル基を表す。)
Figure 2023013838000045
(式中、mは1~6の整数、pは2~14の値を表す。)
<(4)多官能芳香族マレイミド>
多官能芳香族マレイミド(4)としては、例えば、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2’-ビス-(4-(4-マレイミドフェノキシ)プロパン、N,N’-(4,4’-ジフェニルオキシ)ビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-2,4-トリレンビスマレイミド、N,N’-2,6-トリレンビスマレイミド、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリオールとを脱水エステル化し、又はマレイミドカルボン酸エステルと各種芳香族ポリオールとをエステル交換反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、マレイミドアルコールと各種芳香族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる芳香族ポリマレイミドウレタン化合物類等を挙げることができる。
これらの中でも、マレイミド化合物は、多官能であることが好ましい。マレイミド化合物は、ビスマレイミド骨格を有することが好ましい。マレイミド化合物は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
マレイミド化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、100以上、200以上、500以上、750以上、1,000以上、2000以上、または、100,000以下、50,000以下、10,000以下、5,000以下、4,000以下、3,500以下とすることができる。
マレイミド化合物の含有量は、典型的には、硬化性組成物中、固形分全量基準で、0.5~50質量%、1~40質量%または1.5~30質量%とすることができる。
また、別の観点では、硬化性組成物中、ポリフェニレンエーテルとマレイミド化合物との配合比率は、固形分比として、9:91~99:1、17:83~:95:5、または、25:75~90:10とすることができる。
また、硬化性組成物がマレイミド化合物と架橋型硬化剤とを含む場合、マレイミド化合物と架橋型硬化剤との配合比率は、固形分比(マレイミド化合物:架橋型硬化剤)として、80:20~10:90とすることが好ましく、70:30~20:80とすることがより好ましい。このような範囲とすることで、誘電特性と耐熱性に優れる硬化物が得られる。
<<<エラストマー>>>
エラストマーは、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン-プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、天然ゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルとの相溶性および誘電特性の観点から、エラストマーの少なくとも一部はスチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-ブタジエン共重合体;スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-イソプレン共重合体;スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、等が挙げられる。得られる硬化物の誘電特性が特に良好であることから、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー等の不飽和炭素結合を有しないスチレン系エラストマーが好ましい。
スチレン系エラストマーにおけるスチレンブロックの含有比率は、10~70質量%、30~60質量%、または40~50質量%であることが好ましい。スチレンブロックの含有比率は、H-NMRにより測定されたスペクトルの積分比から求めることができる。
ここでスチレン系エラストマーの原料モノマーとしては、スチレンだけでなく、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体が含まれる。
エラストマー100重量%に占めるスチレン系エラストマーの含有割合は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%としてもよい。
エラストマーは他の成分と反応する官能基(結合を含む)を有していても良い。
例えば、反応性官能基として不飽和炭素結合を有していても良い。エラストマーをこのように構成することで、不飽和炭素結合(例えば、ポリフェニレンエーテルが有する不飽和炭素結合)に架橋することができ、ブリードアウトのリスクを低減するなどの効果がある。
エラストマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、これらの無水物もしくはエステルなどを使用して変性されていてもよい。また、さらにジエン系エラストマーの残存不飽和結合に水添加して得られたものであってもよい。
エラストマーの数平均分子量は、1,000~150,000としてもよい。数平均分子量が前記下限値以上であると低熱膨張性に優れ、前記上限値以下であると他の成分との相溶性に優れる。
エラストマーの含有量は、硬化性組成物中、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10~300質量部としてもよい。あるいは、エラストマーの含有量は、硬化性組成物中の固形分全量基準で、3~65質量%としてもよい。上記範囲内の場合、良好な引張特性、密着性、耐熱性をバランスよく実現できる。
<<<<ドライフィルム>>>>
ドライフィルムは、上述した硬化性組成物を基材に塗布して得られるものである。
ここで基材とは、銅箔等の金属箔、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のフィルム、ガラスクロス、アラミド繊維等の繊維が挙げられる。
ドライフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に硬化性組成物を塗布乾燥させた樹脂層を形成し、必要に応じてポリプロピレンフィルムを積層することにより得られる。
<<<<硬化物>>>>
硬化物は、前述したドライフィルムの樹脂層を硬化することで得られる。
硬化性組成物から硬化物を得るための方法は、特に限定されるものではなく、硬化性組成物の組成に応じて適宜変更可能である。一例として、上述したような基材上に硬化性組成物の塗工(例えば、アプリケーター等による塗工)を行う工程を実施した後、必要に応じて硬化性組成物を乾燥させる乾燥工程を実施し、加熱(例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、真空オーブン、真空プレス機等による加熱)によりポリフェニレンエーテルを熱架橋させる熱硬化工程を実施すればよい。なお、各工程における実施の条件(例えば、塗工厚、乾燥温度および時間、加熱温度および時間等)は、硬化性組成物の組成や用途等に応じて適宜変更すればよい。
<<<<電子部品>>>>
電子部品は、前述した本実施形態の硬化物を有するものであり、優れた誘電特性や耐熱性を有することから、種々の用途に使用可能である。
その用途は特に限定されないが、好ましくは、第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信や自動車のADAS(先進運転システム)向けミリ波レーダー等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例により、本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下には何ら限定されない。
なお、以下において、PPEの数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。GPCにおいては、Shodex K-805Lをカラムとして使用し、カラム温度を40℃、流量を1mL/min、溶離液をクロロホルム、標準物質をポリスチレンとした。
<<<<アリル基含有分岐PPEの合成>>>>
<<<アリル基含有分岐PPE1>>>
4Lのセパラブルフラスコに、2,6-ジメチルフェノール89.1gと2-アリルフェノール10.9gを加え、トルエン874gで溶解させた。さらにジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)0.751g、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.675gを加えて攪拌翼にて攪拌し、反応液中に乾燥空気を吹込みながら40℃で16時間反応させた。反応終了後、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)を濾過にて取り除き、メタノール5.4L:濃塩酸18mL、H2O122mLの混合液で再沈殿させて減圧濾過にて取り出し、メタノールで洗浄後、80℃で24時間乾燥させ、分岐PPE1を得た。
分岐PPEの数平均分子量は20,000、重量平均分子量は60,000であった。また、当該分岐PPE1のコンフォメーションプロットの傾きは0.31であった。
なお、分岐PPE1の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。GPCにおいては、Shodex K-805Lをカラムとして使用し、カラム温度を40℃、流量を1mL/min、溶離液をクロロホルム、標準物質をポリスチレンとした。
<<<<アリル基含有分岐PPE1の変性>>>>
<<<ポリフェニレンエーテルA-I>>>
上述した分岐PPE1を3g、チオールモノマーとして(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランを3.93g(2.0×10-2mol)を、トルエンに分岐PPE1とモノマーの合計濃度が30wt%となるように添加し、窒素雰囲気下にて攪拌、60℃に昇温した後に、チオールモノマーのモル量に対して1.7mol%となるようにAIBN(アゾ重合開始剤)を0.057g添加した。次いで、60℃、窒素雰囲気下にて10時間撹拌をした後に、反応液をメタノールに滴下し、減圧濾過、減圧乾燥後にポリマーを得た。
以上のようにして、下記式100A-1で示す構造を有するPPEを得た。下記式の構造において、オルト位は分岐している場合と分岐していない場合とがある。
1H-NMR [d/ppm] (400MHZ, Chloroform-d)、0.7(-CH2-Si-)、1.7 (-CH2-CH2-Si-)、1.9 (-S-CH2-CH2-CH2-Ar)、2.1 (Ar-CH3)、2.5 (-S-CH2-)、2.7 (Ar-CH2-)、3.1 (Ar-CH2-CH-)、3.5 (-O-CH3)、4.8 (-CH=CH2)、6.2~7.2 (Ar-H)
(式100A-1)
Figure 2023013838000046
このPPEは、Mnが26000、Mwが132000、DSCにて測定したTgが182℃であった。
<<<ポリフェニレンエーテルA-II>>>
上述した分岐PPE1を3g、チオールモノマーとして(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシランを4.77g(2.0×10-2mol)とし、分岐PPE1とチオールモノマーの合計濃度が30wt%となるようにトルエンに添加し、窒素雰囲気下にて攪拌、60℃に昇温後、チオールモノマーのモル量に対して1.7mol%となるようにAIBN(アゾ重合開始剤)を0.057g添加した。次いで、60℃、窒素雰囲気下にて10時間撹拌し、反応液をメタノールに滴下し、減圧濾過、減圧乾燥後にポリマーを得た。
以上のようにして、下記式100A-2で示す構造を有するPPEを得た。下記式の構造において、オルト位は分岐している場合と分岐していない場合とがある。
1H-NMR [d/ppm] (400MHZ, Chloroform-d)、0.7 (-CH2-Si-)、1.2 (-CH2-CH3)、1.7 (-CH2-CH2-Si-)、1.9 (-S-CH2-CH2-CH2-Ar)、2.5 (-S-CH2-)、2.8 (Ar-CH2-)、3.8 (-O-CH2-)、6.2~7.2 (Ar-H)
(式100A-2)
Figure 2023013838000047
このPPEは、Mnが18000、Mwが800000、Tgが157℃であった。
<<<ポリフェニレンエーテルA-III>>>
上述した分岐PPE1を3g、チオールモノマーとして3-メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシランを3.61g(2.0×10-2mol)とし、分岐PPE1とチオールモノマーの合計濃度が30wt%となるようにトルエンに添加し、窒素雰囲気下にて攪拌、60℃に昇温後、チオールモノマーのモル量に対して1.7mol%となるようにAIBN(アゾ重合開始剤)を0.057g添加した。次いで、60℃、窒素雰囲気下にて10時間撹拌し、反応液をメタノールに滴下し、減圧濾過、減圧乾燥後にポリマーを得た。
以上のようにして、下記式100A-3で示す構造を有するPPEを得た。下記式の構造において、オルト位は分岐している場合と分岐していない場合とがある。
1H-NMR [d/ppm] (400MHZ, Chloroform-d)、0.06 (-Si-CH3)、0.7 (-CH2-Si-)、1.6 (-CH2-CH2-Si-)、1.9 (-S-CH2-CH2-CH2-Ar)、2.1 (Ar-CH3)、2.5 (-S-CH2-)、2.7 (Ar-CH2-)、3.1 (Ar-CH2-CH-)、3.4 (-O-CH3)、6.2~7.2 (Ar-H)
(式100A-3)
Figure 2023013838000048
このPPEは、Mnが16000、Mwが80000、Tgが156℃であった。
<<<ポリフェニレンエーテルB-I>>>
上述した分岐PPE1を3g、チオールモノマーとして3-メルカプトプロピオン酸を2.12g(2.0×10-2mol)とし、分岐PPE1とチオールモノマーの合計濃度が30wt%となるようにトルエンに添加し、窒素雰囲気下にて攪拌、60℃に昇温後、チオールモノマーのモル量に対して1.7mol%となるようにAIBN(アゾ重合開始剤)を0.057g添加した。次いで、60℃、窒素雰囲気下にて10時間撹拌し、反応液をメタノールに滴下し、減圧濾過、減圧乾燥後にポリマーを得た。
以上のようにして、下記式100B-1で示す構造を有するPPEを得た。下記式の構造において、オルト位は分岐している場合と分岐していない場合とがある。
1H-NMR [d/ppm] (400MHZ, Chloroform-d)、1.9 (-CH2-CH2-CH2-)、2.1 (Ar-CH3)、2.6 (-CH2-)、2.7 (-CH2-)、2.8 (-CH2-)、3.1 (Ar-CH2-CH-)、4.8 (-CH=CH2)、6.27~7.24 (Ar-H)、10 (s, 1H, -COOH)
(式100B-1)
Figure 2023013838000049
このPPEは、Mnが11000、Mwが45000、Tgが178℃であった。
<<<ポリフェニレンエーテルB-II>>>
上述した分岐PPE1を3g、チオールモノマーとしてチオ乳酸を2.12g(2.0×10-2mol)とし、分岐PPE1とチオールモノマーの合計濃度が30wt%となるようにトルエンに添加し、窒素雰囲気下にて攪拌、60℃に昇温後、チオールモノマーのモル量に対して1.7mol%となるようにAIBN(アゾ重合開始剤)を0.057g添加した。次いで、60℃、窒素雰囲気下にて10時間撹拌し、反応液をメタノールに滴下し、減圧濾過、減圧乾燥後にポリマーを得た。
以上のようにして、下記式100B-2で示す構造を有するPPEを得た。下記式の構造において、オルト位は分岐している場合と分岐していない場合とがある。
1H-NMR [d/ppm] (400MHZ, Chloroform-d)、1.4 (-CH3)、1.9 (-CH2-CH2-CH2-)、2.1 (Ar-CH3)、2.7 (Ar-CH2-)、2.8 (-S-CH2-)、3.1 (Ar-CH2-CH-)、3.4 (-CH-)、4.8 (-CH=CH2)、6.27~7.24 (Ar-H)、10 (s, 1H, -COOH)、
(式100B-2)
Figure 2023013838000050
このPPEは、Mnが12000、Mwが49000、Tgが177℃であった。
<<<ポリフェニレンエーテルC-I>>>
上述した分岐PPE1を3g、チオールモノマーとしてα-チオグリセロールを2.28g(2.0×10-2mol)とし、分岐PPE1とチオールモノマーの合計濃度が30wt%となるようにトルエンに添加し、窒素雰囲気下にて攪拌、60℃に昇温後、チオールモノマーのモル量に対して1.7mol%となるようにAIBN(アゾ重合開始剤)を0.057g添加した。次いで、60℃、窒素雰囲気下にて10時間撹拌し、反応液をメタノールに滴下し、減圧濾過、減圧乾燥後にポリマーを得た。
以上のようにして、下記式100C-1で示す構造を有するPPEを得た。下記式の構造において、オルト位は分岐している場合と分岐していない場合とがある。
1H-NMR [d/ppm] (400MHZ, Chloroform-d)、1.9 (-CH2-CH2-CH2-)、2.5-2.6 (m, 6H, Ar-CH2-, -S-CH2-CH2-, -CH2-OH)、2.7 (Ar-CH2-)、3.1 (Ar-CH2-CH-)、3.5 (-CH-)、3.6 (-S-CH2-CH2-)、3.7 (-CH2-OH)、3.8 (-CH-OH)、4.8 (-CH=CH2)、6.27~7.24 (Ar-H)
(式100C-1)
Figure 2023013838000051
このPPEは、Mnが14000、Mwが54000、Tgが187℃であった。
<<<ポリフェニレンエーテルD-I>>>
上述した分岐PPE1を3g、チオールモノマーとして2-エチル-1-ヘキサンチオールを2.93g(2.0×10-2mol)とし、分岐PPE1とチオールモノマーの合計濃度が30wt%となるようにトルエンに添加し、窒素雰囲気下にて攪拌、60℃に昇温後、チオールモノマーのモル量に対して1.7mol%となるようにAIBN(アゾ重合開始剤)を0.057添加した。次いで、60℃、窒素雰囲気下にて10時間撹拌し、反応液をメタノールに滴下し、減圧濾過、減圧乾燥後にポリマーを得た。
以上のようにして、下記式100D-1で示す構造を有するPPEを得た。下記式の構造において、オルト位は分岐している場合と分岐していない場合とがある。
1H-NMR [d/ppm] (400MHZ, Chloroform-d)、0.86 (-CH3)、0.89 (-CH3)、1.3-1.4 (-CH-CH2-CH2-CH2-CH3, -CH2-CH3)、1.9 (-S-CH2-CH2-)、2.1 (Ar-CH3)、2.5 (-S-CH2-CH-)、2.7 (Ar-CH2-)、3.1 (Ar-CH2-CH-)、4.8 (-CH=CH2)、6.27~7.24 (Ar-H)
(式100D-1)
Figure 2023013838000052
このPPEは、Mnが16000、Mwが65000、Tgが164℃であった。
<<<<PPEの評価>>>>
合成したPPEの内、ポリフェニレンエーテルA-I、ポリフェニレンエーテルB-I、ポリフェニレンエーテルC-Iを含む硬化性組成物を調製し、各PPEの性能を評価した。
<<<硬化性組成物の調製>>>
<<実施例1>>
ポリフェニレンエーテルA-Iを12.6質量部(固形分)と、架橋型硬化剤としてTAIC(三菱ケミカル株式会社製)7.6質量部(固形分)、エラストマーとして、タフテックH1051(旭化成社製)6.2質量部(固形分)、マレイミド樹脂として、BMI-3000J(Designer Molecules社製)2.1質量部(固形分)、シクロヘキサノン100質量部とを加えて攪拌し、さらに無機充填剤として球状シリカ(アドマテックス株式会社製:商品名「SC2500-SVJ」)71質量部(固形分)を加え、撹拌した後、三本ロールミルで均一に分散させた。
最後に、過酸化物であるα,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(日本油脂株式会社製:商品名「パーブチルP」)を0.4質量部(固形分)配合し、攪拌することで、実施例1の硬化性組成物のワニスを作製した。
<<実施例2~3及び参考例1>>
各成分と含有量を表に示す数値とした以外は実施例1と同様にして、実施例2~3及び参考例1に係る硬化性組成物のワニスを得た。
<<<評価>>>
各硬化性組成物及び各硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
<<<ドライフィルムの作製>>>
実施例及び参考例の各硬化性組成物を、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製:商品名「TN-200」)上に、乾燥後の樹脂層の厚さが50μmとなるように、アプリケーターにて塗布、90℃5分間乾燥し、実施例及び参考例の各硬化性組成物からなる樹脂層を備える各ドライフィルムを作製した。
<<<硬化物の作製>>>
上記した各ドライフィルムを低粗度銅箔(FV-WS(古河電機社製):Rz=1.2μm)の光沢面に真空ラミネーターにてラミネートした。次いで、PETフィルムを剥離した後、イナートオーブンを用いて窒素を完全に充満させて200℃まで昇温後60分硬化、実施例及び比較例の各硬化膜を得た。
<<ガラス転移温度(Tg)>>
硬化膜を長さ30mm、幅5mmに切り出し、DMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)にてガラス転移温度(Tg)の測定を行った。温度範囲は30~280℃、昇温速度は5℃/min、周波数は1Hz、歪振幅7μm、最小張力50mN、つかみ具間距離は10mmで行った。
ガラス転移温度(Tg)はtanδが極大を示す温度とした。
<<ヤング率、破断点応力及び破断ひずみ>>
硬化膜を長さ8cm、幅0.5cmに切り出し、ヤング率及び破断ひずみを下記条件にて測定した。なお、ヤング率は、得られた応力ひずみ線図の応力が5MPaから10MPaにおけるひずみの傾きにより求めた。
[測定条件]
試験機:引張試験機EZ-SX(株式会社島津製作所製)
チャック間距離:50mm
試験速度:1mm/min
伸び計算:(引張移動量/チャック間距離)×100
<<誘電特性>>
厚さ18μm銅箔のシャイン面に、各硬化性組成物を塗布し、熱風式循環式乾燥炉で90℃30分乾燥した。次いで、イナートオーブンで200℃、1h硬化した後、銅箔をエッチングすることで各組成物からなる硬化物(硬化膜)を得た。
作製した硬化膜を長さ80mm、幅45mmに切断したものを試験片として、SPDR(Split Post Dielectric Resonator)共振器法により比誘電率Dkおよび誘電正接Df測定した。測定器には、キーサイトテクノロジー合同会社製のベクトル型ネットワークアナライザE5071C、SPDR共振器、計算プログラムはQWED社製のものを用いた。条件は、周波数10GHz、測定温度25℃とした。
<<銅箔密着強度>>
銅ベタ(全面銅箔)の銅張積層板の表面をメック社製CZ-8100によって前処理した。次いで、上述した実施例及び参考例のドライフィルムの樹脂層と前記処理面が接するように真空ラミネーターにて貼り合せた。その後、PETフィルムを剥離し、露出した樹脂層上に低粗度銅箔(FV-WS(古河電機社製):Rz=1.2μm)の粗面が接するように真空ラミネーターにて貼り合せた後、イナートオーブンを用いて窒素を完全に充満させて200℃まで昇温後60分硬化して、ピール強度評価用基板を作製した。
上述したピール強度評価用基板の低粗度銅箔部に、幅10mm、長さ100mmの切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、下記条件にて90°ピール強度測定を行った。
[測定条件]
試験機:引張試験機EZ-SX(株式会社島津製作所製)
試験速度:1mm/min
Figure 2023013838000053

Claims (7)

  1. 下記式1で示す構造からなる官能基を有することを特徴とする、ポリフェニレンエーテル。
    (式1)
    Figure 2023013838000054
    (式1中、
    nは、2以上4以下の整数を示し、Rは下記式2で示す構造、カルボキシル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、2個の水酸基で置換された炭素数2~4のアルキル基、又は、炭素数6~10のアルキル基のいずれかを示す。)
    (式2)
    Figure 2023013838000055
    (式2中、
    mは1以上4以下の整数を示し、
    、R、Rは、相互に独立して、炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。)
  2. 前記ポリフェニレンエーテルが分岐構造を有する、請求項1のポリフェニレンエーテル。
  3. 前記式1で示す構造からなる官能基が、アリル基とチオール化合物との付加体からなる官能基である、請求項1又は2のポリフェニレンエーテル。
  4. 請求項1~3のいずれか一項記載のポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物。
  5. 請求項4記載の硬化性組成物からなる樹脂層を有するドライフィルム。
  6. 請求項4に記載の硬化性組成物又は請求項5に記載の樹脂層からなる硬化物。
  7. 請求項6に記載の硬化物を有する電子部品。

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