JP2011232485A - 定着装置及びこれを搭載した画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】構造の簡略化を図りつつ、非通紙域の過昇温防止と昇温特性の向上との両立を達成できる定着装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に画像を定着するための定着装置(14)であって、磁界の電磁誘導によって発熱する発熱層を有するとともに、搬送される記録媒体の幅方向に延びた軸線周りに回転し、記録媒体上のトナー画像を加熱してこの記録媒体に定着させる発熱回転体(45)と、発熱回転体の内面にて巻き回されて発熱層を誘導加熱するための磁束を発生させるコイル(52)を備えた電磁誘導加熱ユニット(50)と、発熱回転体の外側であって、この発熱回転体を挟んでコイルに対向する位置に配置されており、発熱層を貫通した磁束を通過させる非磁性の磁束抑制部材(60)とを具備する。
【選択図】図3

Description

本発明は、トナー画像を担持した記録媒体を加熱ベルトと加圧ローラとのニップ間に通しながら、未定着トナーを加熱溶融させて記録媒体に定着させる定着装置及びこれを搭載した画像形成装置に関するものである。
この種の画像形成装置においては近年、定着装置でのウォームアップタイムの短縮や省エネルギー等の要望から、熱容量を少なく設定できるベルト方式が注目されている。また、近年、急速加熱や高効率加熱の可能性をもった電磁誘導加熱方式(IH)が注目されており、カラー画像を定着させる際の省エネルギー化の観点から、電磁誘導加熱をベルト方式と組み合わせたものが多数製品化されている。
詳しくは、この電磁誘導加熱方式においては、ベルトの外側に電磁誘導のための磁界を発生させるコイルを配置した構造(いわゆる外包IH)があり、また、定着装置の省スペース化を図る点を鑑み、発熱ローラの内側にコイルを配置した構造(いわゆる内包IH)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−42450号公報
しかしながら、上記従来の技術では、定着装置の構造が複雑になるという問題がある。なぜならば、当該技術の発熱ローラの内部には、コイルの他、発熱ローラの端部(非通紙域)の過昇温防止を図る磁束抑制層も配置されているからである。
また、この磁束抑制層は、その機能を発揮するために所定の厚みが必要であるにも拘わらず、発熱ローラの内部構成の制約を受けて設計しなければならない。
さらに、当該技術の磁束抑制層は、電磁誘導によって発熱する発熱層に接しており、発熱ローラの昇温特性はこの磁束抑制層の厚みの影響を受ける。つまり、その機能を発揮するための肉厚の磁束抑制層を設けると、発熱ローラの昇温特性が低下するのである。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、構造の簡略化を図りつつ、非通紙域の過昇温防止と昇温特性の向上との両立を達成できる定着装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するための第1の発明は、記録媒体に画像を定着するための定着装置であって、磁界の電磁誘導によって発熱する発熱層を有するとともに、搬送される記録媒体の幅方向に延びた軸線周りに回転し、記録媒体上のトナー画像を加熱してこの記録媒体に定着させる発熱回転体と、発熱回転体の内側に配置され、巻き回されて発熱層を誘導加熱するための磁束を発生させるコイルを備えた電磁誘導加熱ユニットと、発熱回転体の外側であって、この発熱回転体を挟んでコイルに対向する位置に配置されており、発熱層を貫通した磁束を通過させる非磁性の磁束抑制部材とを具備する。
第1の発明によれば、コイルで発生させた磁束により発熱回転体を誘導加熱してトナー画像の加熱溶融を行う方式(内包IH)を採用する。
ここで、発熱回転体では、その発熱層の厚み方向を貫通して発熱回転体の外側に向かう貫通磁束が発生するが、この発熱回転体の外側には、非磁性の磁束抑制部材が配置されている。
つまり、この貫通磁束が磁束抑制部材の内側の面に略垂直な一方向に通過すると、磁束抑制部材の周方向に誘導電流が発生し、そこから貫通磁束と逆向きの反磁束を発生させる。この反磁束と上記貫通磁束とが打ち消し合ってキャンセルされることで、磁束抑制部材は磁束を遮蔽できる(磁束抑制効果)。よって、発熱回転体の軸線方向長さよりも小さい幅の記録媒体の連続搬送によって発熱回転体の軸線方向の両端部分(非通紙域)の温度が上昇しても、この非通紙域では発熱量が抑えられ、発熱回転体の過昇温を防止できる。
また、非磁性の磁束抑制部材を発熱回転体の外側に配置すれば、従来の如く磁束抑制層を発熱ローラの内側に配置した場合に比して、発熱ローラの内部の制約を受けずに設計できるし、発熱ローラの内部の構造が複雑にならず、簡単な構成の定着装置が得られ、その製造コストの低廉化を図ることができる。
さらに、発熱回転体は、コイルからの磁束が貫通する薄さで構成されるため、厚肉の発熱ローラで構成する場合に比して熱容量が少なくなり、ウォームアップタイムの削減及び省エネルギー化に寄与する。
これらの結果、構造の簡略化を図りつつ、非通紙域の過昇温防止とウォームアップタイムの削減との両立を達成できる。
第2の発明は、第1の発明の構成において、発熱回転体の内側に設けられ、この発熱回転体の外面に接触する加圧回転体との間にニップを形成させる定着部材を備え、この定着部材は、非磁性・非導電性の基材と、この基材の外側に、発熱部材の内面に接触する断熱性を有した弾性層とを有することを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、発熱回転体は定着部材で支持され、この定着部材は断熱性を有した弾性層を有している。したがって、この断熱性によって発熱回転体から定着部材への熱移動量が減り、発熱回転体の昇温に要する期間のさらなる短縮化を確実に達成できる。また、この弾性によって発熱回転体の耐久性が向上するし、この発熱回転体の搬送性向上や記録媒体の分離性向上を図ることができる。
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、磁束抑制部材は、発熱回転体の外面に沿って湾曲した平面視板状で形成されていることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、磁束抑制部材は、発熱回転体の全周に亘って配置されておらず、磁界の強い方向に配置すれば足りるため、その機能を発揮するための設計が容易であり、この点も製造コストの低廉化に寄与する。
第4の発明は、第1から第3の定着装置を搭載し、これを用いて画像形成部で形成されたトナー画像を記録媒体に定着させる画像形成装置であることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、少ない定着熱容量で済み、また、記録媒体の搬送されない領域の過昇温を防止して良好なトナー画像が形成される結果、画像形成装置の信頼性が向上する。
本発明によれば、磁束抑制部材が発熱回転体の外側に配置されており、構造の簡略化を図りつつ、非通紙域の過昇温防止及び昇温特性の向上の双方の両立を達成できる定着装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供することができる。
一実施形態の画像形成装置の構成を示した概略図である。 定着ユニットの外観斜視図である。 定着ユニットの構造例を示す縦断面図である。 発熱回転体及び磁束抑制部材の軸方向の説明図である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、一実施形態の画像形成装置1の構成を示した概略図である。画像形成装置1は、例えば外部から入力された画像情報に基づいて記録媒体の一例としての用紙の表面にトナー画像を転写して印刷を行うプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、それらの機能を併せ持つ複合機等としての形態をとることができる。また、以下の実施形態では、記録媒体は用紙に限らず、用紙以外の記録媒体(OHPシートなど)であっても実施可能である。
図1に示される画像形成装置1は、例えばタンデム型のカラープリンタである。この画像形成装置1は、内部で用紙にカラー画像を形成(プリント)する四角箱状の装置本体2を備え、この装置本体2の上面部には、カラー画像が印刷された用紙を排出するための排出トレイ3が設けられている。
装置本体2内において、その下部には、用紙を収納する給紙カセット5が配設されている。また、装置本体2内の中央部には、給紙カセット5に収容していない種類の用紙を装置本体2へ供給するスタックトレイ6が配設されている。そして、装置本体2の上部には画像形成部7が設けられており、この画像形成部7は、画像形成装置1と接続されたPC等の上位装置から送信される文字や絵柄などの画像データに基づいて用紙に画像を形成する。
図1で視て装置本体2の左部には、給紙カセット5から繰り出された用紙を後述の二次転写部23に搬送する第1の搬送路9が配設されており、装置本体2の右部から左部にかけては、スタックトレイ6から繰り出された用紙を二次転写部23に搬送する第2の搬送路10が配設されている。また、装置本体2内の左上部には、二次転写部23で画像が形成された用紙に対して定着処理を行う定着ユニット(定着装置)14と、定着処理の行われた用紙を排出トレイ3に搬送する第3の搬送路11とが配設されている。
給紙カセット5は、装置本体2の外部(例えば図1の手前側)に引き出すことにより用紙の補充を可能にする。この給紙カセット5は収納部16を備えており、この収納部16には、給紙方向のサイズが異なる少なくとも2種類の用紙を選択的に収納可能である。なお、収納部16に収納されている用紙は、給紙ローラ17及び捌きローラ対18により1枚ずつ第1の搬送路9側に繰り出される。
スタックトレイ6は、装置本体2の外面にて開閉可能であり、その手差し部19には用紙が1枚ずつ載置されるか、又は複数枚が積載される。なお、手差し部19に載置された用紙はピックアップローラ20及び捌きローラ対21により1枚ずつ第2の搬送路10側に繰り出される。
第1の搬送路9と第2の搬送路10とはレジストローラ対22の手前で合流しており、レジストローラ対22に到達した用紙はここで一旦待機し、スキュー調整とタイミング調整を行った後、二次転写部23に向けて送出される。送出された用紙には、二次転写部23で中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー画像が用紙に二次転写される。この後、定着ユニット14でトナー画像が定着された用紙は、必要に応じて第4の搬送路12で反転され、最初とは反対側の面にも二次転写部23でフルカラーのトナー画像が二次転写される。そして、反対面のトナー画像が定着ユニット14で定着された後、第3の搬送路11を通って排出ローラ対24により排出トレイ3に排出される。
画像形成部7は、ブラック(B)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)の各トナー画像を形成する4つの画像形成ユニット26〜29を備える他、これら画像形成ユニット26〜29で形成した各色別のトナー画像を重畳して担持する中間転写部30を備えている。
各画像形成ユニット26〜29は、感光体ドラム32と、感光体ドラム32の周面に対向して配設された帯電部33と、帯電部33の感光体ドラム32の回転方向下流側であって感光体ドラム32の周面上の特定位置にレーザビームを照射するレーザ走査ユニット34と、レーザ走査ユニット34からのレーザビーム照射位置の感光体ドラム32の回転方向下流側であって感光体ドラム32の周面に対向して配設された現像部35と、現像部35の感光体ドラム32の回転方向下流側であって感光体ドラム32の周面に対向して配設されたクリーニング部36とを備えている。
なお、各画像形成ユニット26〜29の感光体ドラム32は、図示しない駆動モータにより図中の反時計回り方向に回転する。また、各画像形成ユニット26〜29の現像部35には、各現像装置51にブラックトナー、イエロートナー、シアントナー及びマゼンタトナーをそれぞれ含む二成分現像剤がそれぞれ収納されている。
中間転写部30は、画像形成ユニット26の近傍位置に配設された後ローラ38と、画像形成ユニット29の近傍位置に配設された前ローラ39と、画像形成ユニット28の上方に配置されたテンションローラ42と、後ローラ38と前ローラ39とテンションローラ42とに跨って配設された中間転写ベルト40と、各画像形成ユニット26〜29の感光体ドラム32における現像部35の感光体ドラム32の回転方向下流側の位置に中間転写ベルト40を介して感光体ドラム32に圧接可能に配設された4つの一次転写ローラ41とを備えている。なお、テンションローラ42は中間転写ベルト40に適切な張力を付与する。
この中間転写部30では、各画像形成ユニット26〜29の一次転写ローラ41の位置で、中間転写ベルト40上に各色別のトナー画像がそれぞれ重ね合わせて転写されて、最後にはフルカラーのトナー画像となる。
第1の搬送路9や第2の搬送路10は、給紙カセット5やスタックトレイ6から繰り出されてきた用紙を二次転写部23側に搬送するものであり、装置本体2内で所定の位置に配設された複数の搬送ローラ対43と、二次転写部23の手前に配設され、画像形成部7における画像形成動作と用紙の搬送動作とのタイミングを取るためのレジストローラ対22とを備えている。
定着ユニット14は、画像形成部7でトナー画像が転写された用紙を加熱及び加圧することにより、未定着トナー画像を用紙に定着させる処理を行うものである。定着ユニット14は、加圧ローラ(加圧回転体)44と可撓性を有した加熱ベルト(発熱回転体)45とを備え、このうち加圧ローラ44が金属製の芯金と弾性体の表層及び離型層を有するものであり、加熱ベルト45が金属製の基材と弾性体の表層及び離型層を有するものである。なお、定着ユニット14の詳細な構造についてはさらに後述する。
用紙の搬送方向で視て、定着ユニット14の上流側及び下流側にはそれぞれ搬送路47が設けられており(図1)、二次転写部23を通って搬送されてきた用紙は上流側の搬送路47を通じて加圧ローラ44と加熱ベルト45との間のニップに導入される。そして、加圧ローラ44及び加熱ベルト45間のニップを通過した用紙は下流側の搬送路47を通じて第3の搬送路11に案内される。
第3の搬送路11は、定着ユニット14で定着処理の行われた用紙を排出トレイ3に搬送する。このため第3の搬送路11には、適宜位置に搬送ローラ対49が配設されるとともに、その出口には上記の排出ローラ対24が配設されている。
〔定着ユニットの詳細〕
次に、本実施形態の画像形成装置1に適用された定着ユニット14の詳細について説明する。
図2は、定着ユニット14の外観斜視図であり、図3は、この定着ユニット14の構造例を示す縦断面図である。なお、これら図2,3では、画像形成装置1に実装した状態から向きを約90°反時計回りに転回させて示している。したがって、図1中で視て下方から上方への用紙搬送方向は、図2,3でみると右方から左方となる。つまり、図3の用紙Pは定着ユニット14に搬送される直前の状態である。なお、装置本体2がより大型(複合機等)である場合、図3に示される向きで実装されることもある。また、この他のレイアウトとして、図3に示される状態から左右いずれかに傾斜した姿勢で定着ユニット14が画像形成装置1内に配置される場合もある。
本実施例の定着ユニット14は、上記のように加圧ローラ44及び加熱ベルト45を備えている。加圧ローラ44は、金属製(SUS)の芯金上に厚み2〜5mm程度のシリコンゴム層を形成し、さらにPFAチューブを被せた直径30mm程度のローラとしている。なお、加圧ローラ44の内側にはハロゲンヒータが設けられていてもよい。
〔発熱回転体〕
加熱ベルト45は、その基材の厚みが40μm(1μm=1×10−6m)の整磁材料(Fe−Ni合金など)であり、発熱層として機能する。そして、その表層に厚み300μm程度の薄膜の弾性層(シリコンゴム)が形成され、その外面には離型層(PFA)が形成されており、その発熱温度を150〜200℃の範囲に調整される直径50mm程度の無端状の薄肉ベルトである。
この加熱ベルト45の表面温度は、加熱ベルト45の径方向外側に所定距離をおいて配置された非接触タイプの赤外線温度検出装置80で測定される。
また、図2に示されるように、加圧ローラ44にはステッピングモータ66が装備されており、加圧ローラ44はこのモータ66からの動力により、搬送される用紙の幅方向に延びた軸線回りに回転する。この加圧ローラ44の回転駆動(図3でみて反時計回り)に伴い、加熱ベルト45が従動回転(図3でみて時計回り)し、加熱ベルト45と加圧ローラ44との間にはニップが形成される。
〔定着部材〕
詳しくは、本実施例の加熱ベルト45は定着ローラ(定着部材)46に巻回されている。この定着ローラ46は、非磁性・非導電性(セラミックス製:厚さ1mm、直径40mm程度)のローラ基材(基材)46a上に、厚み5mm程度の断熱性を有したシリコンスポンジによる弾性層46bが形成された直径50mm程度のローラである。そして、定着ローラ46の弾性層46bが加熱ベルト45の内面に接触し、加熱ベルト45は軸線方向に亘って加圧ローラ44からの押圧力を受ける。これにより、加熱ベルト45と加圧ローラ44との間にはトナー画像を用紙に定着させる略フラットなニップが形成される。
〔電磁誘導加熱ユニット〕
この他に定着ユニット14は、加熱ベルト45の内側にIHコイルユニット(電磁誘導加熱ユニット)50を備えている(図1には示されていない)。IHコイルユニット50は、細い線材を束ねたリッツ線(線径0.15mmの線材、縒り数114本)である誘導加熱コイル52や、誘導加熱コイル52の周囲にて磁路を形成するべく、フェライト等の強磁性体で構成されたコア部54から構成されている。
〔コイル〕
誘導加熱コイル52は、加熱ベルト45を誘導加熱するための磁界(磁束)を発生させる。そのため、誘導加熱コイル52は加熱ベルト45の内面に沿って配置される。実際には、加熱ベルト45の内側にはコイルボビン53が配置されており(図3)、このコイルボビン53上に誘導加熱コイル52が巻線状に配置される構成である。
コイルボビン53は、加熱ベルト45の内面に沿う円筒状に成形され(外径約34mm、厚さ約2mm)、加熱ベルト45の回転軸線方向(長手方向)に沿って延びている。そして、本実施例のコイル52は、液晶ポリマー製のコイルボビン53の外周面にて当該長手方向に交差する方向、つまり、ラジアル方向に巻き回されており、コイルボビン53は上記長手方向に沿って螺旋状に巻回されたコイル52を保持する。
このコイル52のラジアル巻きは、加熱ベルト45と誘導加熱コイル52との間には、上述したセラミックス製のローラ基材46a及びシリコンスポンジの弾性層46bが介在し、加熱ベルト45と誘導加熱コイル52とが離れて磁気結合度が低下傾向にある点を考慮し、これらの磁気結合度を上げて加熱ベルト45の発熱効率を高く保つために採用されたものである。なお、仮に、定着ローラが金属製の芯金に弾性層を有していた場合など、加熱ベルト45と誘導加熱コイル52との磁気結合度が低下傾向にないときには、ラジアル巻き以外の巻き方を採ってもよい。
〔発熱層〕
一方、上述した加熱ベルト45の発熱層は、当該コイル52からの磁束によって発熱する。詳しくは、この発熱層は、整磁材料(Fe−Ni合金など)であるため、常温では磁性を有するのに対し、この発熱層が所定の温度(キュリー温度)以上になると磁性が消失して非磁性(常磁性)になる性質を有しており、自己温度制御可能に構成されている。
〔磁束抑制部材〕
ところで、図3にも示される如く、本実施例では、加熱ベルト45の上方には空間が形成されており、この空間に磁束抑制部材60が配置される。
具体的には、磁束抑制部材60は、加熱ベルト45の外面に沿って円弧状に湾曲した平面視板状で形成され、非磁性・良導電性の材料(アルミニウム製)で構成されている。換言すれば、磁束抑制部材60は、コイル52の巻き方向に部分的に対向し、加熱ベルト45の全周に亘って形成されていない。磁束抑制部材60の両端は、定着ローラ46と同様に定着ユニット14の図示しないカバー等に支持されている。なお、装置本体2に支持されていてもよい。
そして、本実施例の磁束抑制部材60は、加熱ベルト45を挟んでIHコイルユニット50に対向する位置、より詳しくは、加熱ベルト45の外側であって、その外面からやや離れた位置に設けられ、この加熱ベルト45の発熱層が上述した所定の温度以上になっても発熱し続けるのを抑制する機能を有している。
これら磁束抑制部材60と加熱ベルト45との距離Lは短いほど、磁束抑制部材60による磁束抑制効果が高くなり、例えば3mm以下(1mm以下が最も好適である)に設定される。
上記の如く構成された定着ユニット14では、不図示の高周波電源からコイル52に高周波電流が供給されると、コイル52には磁束が発生する。この磁束はコイルボビン53の径方向外側に向かって進み、加熱ベルト45に到達して発熱させる。
具体的には、この加熱ベルト45の発熱層では渦電流が発生し、その材料の持つ固有抵抗によりジュール熱が生じ、そのキュリー温度に達するまで発熱し続け、用紙P上のトナー画像は加熱ベルト45と加圧ローラ44とのニップで溶融定着される。
一方、加熱ベルト45の発熱層は、その温度がキュリー温度に達すると非磁性になる。例えば図4に示される如く、仮に幅の狭い用紙Pを連続して通過させると、上記長手方向(図4の左右方向)に延びた加熱ベルト45のうち通紙領域よりも外側部分(非通紙域)70,70の温度は上昇して当該キュリー温度を超える。この結果、発熱層は非磁性となり、磁束は加熱ベルト45を貫通して磁束抑制部材60に到達する。
この磁束抑制部材60に対し、その内側の面を垂直方向(一方向)に貫通する貫通磁束(錯交磁束)が通過すると、非通紙域70に相当する磁束抑制部材60で視て通紙領域の外側部分にはその周方向に誘導電流が生じる。これにより、電磁誘導によって貫通磁束とは逆向きの磁束(反磁束)が発生するので、これらが互いに打ち消しあってキャンセルする(磁束抑制効果)。このように本実施例では、この磁束のキャンセル効果を用いてコイル52からの磁束を遮蔽し、非通紙域70における加熱ベルト45の過昇温を防止する。
以上のように、本実施例によれば、コイル52で発生した磁束により加熱ベルト45を誘導加熱してトナー画像の加熱溶融を行う方式(内包IH)を採用する。この内包IHの構成によって、外包IHに比して定着ユニット14に要するスペースが少なくて済む。また、コイル52が加熱ベルト45の回転軸線に交差する方向、つまり、ラジアル方向にてコイルボビン53の周面に巻き回されているため、加熱ベルト45の周方向全域を加熱でき、定着の高速化を図ることができる。
ここで、加熱ベルト45では、その発熱層の厚み方向を貫通して加熱ベルト45の外側に向かう貫通磁束が発生するが、この加熱ベルト45の外側には、非磁性・良導電性の磁束抑制部材60が配置されている。
そして、磁束抑制部材60の磁束抑制効果により、加熱ベルト45の軸線方向長さよりも小さい幅の用紙Pの連続搬送によって加熱ベルト45の非通紙域70の温度が上昇しても、この非通紙域70では発熱量が抑えられ、加熱ベルト45の過昇温を防止できる。
また、非磁性・良導電性の磁束抑制部材60を加熱ベルト45の外側に配置すれば、従来の如く磁束抑制層を発熱ローラの内側に配置した場合に比して、発熱ローラの内部の制約を受けずに設計できるし、発熱ローラの内部の構造が複雑にならず、簡単な構成の定着ユニット14が得られ、その製造コストの低廉化を図ることができる。
さらに、加熱ベルト45は、コイル52からの磁束が貫通する薄さで構成されるため、厚肉の発熱ローラで構成する場合に比して熱容量が少なくなり、ウォームアップタイムの削減及び省エネルギー化に寄与する。
これらの結果、構造の簡略化を図りつつ、非通紙域70の過昇温防止と加熱ベルト45のウォームアップタイムの削減との両立を達成できる。
さらにまた、加熱ベルト45は定着ローラ46で支持され、この定着ローラ46は断熱性を有した弾性層46bを有している。したがって、この断熱性によって加熱ベルト45から定着ローラ46への熱移動量が減り、加熱ベルト45の昇温に要する期間のさらなる短縮化を確実に達成できる。また、この弾性によって加熱ベルト45の耐久性が向上するし、この加熱ベルト45の搬送性向上や用紙Pの分離性向上を図ることができる。
また、磁束抑制部材60は、加熱ベルト45の全周に亘って配置されておらず、磁界の強い方向に配置すれば足りるため、その機能を発揮するための設計が容易であり、この点も製造コストの低廉化に寄与する。
さらに、少ない定着熱容量で済み、また、加熱ベルト45における用紙Pの非通紙域70の過昇温を防止して良好なトナー画像が形成される結果、画像形成装置1の信頼性が向上する。
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施可能である。
例えば、本発明の発熱回転体は発熱層を有する限り、薄肉の加熱ベルト45に替えて、例えば0.5mm以下の厚みで構成された定着ローラであっても良い。
また、本実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているものの、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、構造の簡略化を図りつつ、非通紙域の過昇温防止と昇温特性の向上との両立を達成できるとの効果を奏する。
1 プリンタ(画像形成装置)
7 画像形成部
14 定着ユニット(定着装置)
44 加圧ローラ(加圧回転体)
45 加熱ベルト(発熱回転体)
46 定着ローラ(定着部材)
46a ローラ基材(基材)
46b 弾性層
50 IHコイルユニット(電磁誘導加熱ユニット)
52 誘導加熱コイル(コイル)
60 磁束抑制部材

Claims (4)

  1. 記録媒体に画像を定着するための定着装置であって、
    磁界の電磁誘導によって発熱する発熱層を有するとともに、搬送される前記記録媒体の幅方向に延びた軸線周りに回転し、前記記録媒体上のトナー画像を加熱してこの記録媒体に定着させる発熱回転体と、
    前記発熱回転体の内側に配置され、巻き回されて前記発熱層を誘導加熱するための磁束を発生させるコイルを備えた電磁誘導加熱ユニットと、
    前記発熱回転体の外側であって、この発熱回転体を挟んで前記コイルに対向する位置に配置されており、前記発熱層を貫通した磁束を通過させる非磁性の磁束抑制部材と
    を具備することを特徴とする定着装置。
  2. 請求項1に記載の定着装置であって、
    前記発熱回転体の内側に設けられ、この発熱回転体の外面に接触する加圧回転体との間にニップを形成させる定着部材を備え、
    この定着部材は、非磁性・非導電性の基材と、この基材の外側に、前記発熱部材の内面に接触する断熱性を有した弾性層とを有することを特徴とする定着装置。
  3. 請求項1又は2に記載の定着装置であって、
    前記磁束抑制部材は、前記発熱回転体の外面に沿って湾曲した平面視板状で形成されていることを特徴とする定着装置。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の定着装置を搭載し、これを用いて画像形成部で形成されたトナー画像を前記記録媒体に定着させることを特徴とする画像形成装置。
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