JP2011225525A - 安定化医薬組成物、安定化医薬組成物溶液製剤、フィルム状製剤及びフィルム状製剤の製造方法 - Google Patents

安定化医薬組成物、安定化医薬組成物溶液製剤、フィルム状製剤及びフィルム状製剤の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】花粉症等のアレルギー性疾患の予防又は治療剤として有用な減感作療法用製剤を可能とし、アレルゲンタンパク質の安定性に優れ、貯蔵及び伝達の為に有用である安定化医薬組成物を提供すること。
【解決手段】アレルゲンタンパク質と、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の安定化剤とを含有する安定化医薬組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、花粉症等の予防又は治療剤として有用な減感作療法に適した安定化医薬組成物に関する。特に本発明は、スギ花粉アレルゲンタンパク質の安定性に優れ、貯蔵及び取り扱い等の利便性に優れた安定化医薬組成物に関するものである。
近年、生活様式や生活環境の変化によるアレルギー疾患を有する患者が増加しており、特に、花粉アレルギー等のアレルギー性疾患を有する患者が急増している。
このようなアレルギー性疾患に対するバイオ医薬品では、その製剤化において、医薬品として使用されるタンパク質を安定に保存させること、すなわち、生物学的活性の損失を最小限に抑制することが必須である。
しかしながら、従来のバイオ医薬品の製剤化に用いられる医薬組成物においては、医薬品として使用されるタンパク質を安定に長期間保存することは困難であった。
また、花粉アレルギー等のアレルギー性疾患に対する治療としては、現状、抗ヒスタミン剤を用いる対処療法がそのほとんどであるが、近年、アレルギー性疾患を根治可能な治療方法として減感作療法が注目を集めている。
減感作療法は、一般的に2〜3年程度の長期間投与が必要であるため、介護者及び患者のQOL(quality of life)をより向上させるような剤型が必要であると考えられている。
現在、特異的減感作療法に用いられている剤型は、皮下注射を目的とした注射剤がほとんどである。
しかしながら、皮下注射による特異的減感作療法では、アナフェラキシーショックの危険性、医療従事者による投与の必要性、長期間にわたる頻繁な通院の必要性、注射による痛み、冷蔵保管である等の問題点があった。
これに対して、近年、欧米では舌下投与を目的とした液剤及び錠剤が市販され、その副作用の少なさと簡便さとから注目を集めている。
しかしながら、液剤の舌下投与による特異的減感作療法では、投与量の不正確さ、冷蔵保管である等の問題があった。
また、錠剤の舌下投与による特異的減感作療法では、誤飲、投与量の調整が難しい、携帯性が悪い、残渣による口腔内への違和感等の問題があった。
また、近年、特異的減感作療法に用いられる剤型として、口腔内で即溶性を示すフィルム製剤が注目されている。
このような剤型の製剤として、例えば、特許文献1には、マトリックスと少なくとも1種のアレルゲンとを含む速分散性非圧縮固体剤形が提案されている。
しかしながら、当該文献には、D−マンニトールを含むフィルム状製剤は開示も示唆もされておらず、また、水を7重量%以上含む安定化組成物は開示されていない。
また、例えば、特許文献2、特許文献3、及び、特許文献4には、アレルゲン及び糖又は糖アルコールを含むフィルム状製剤が開示されている。
しかしながら、安定化剤としての糖又は糖アルコールの使用は開示されていない。
更に、このようなアレルゲンを含有する従来のフィルム状製剤は、何らかの水溶性ポリマー中に活性薬物を分散又は溶解させたものであり、非還元糖及び糖アルコールを配合しているものも報告されている。
しかしながら、それらは溶媒に水又はその混液を用いたものであり、糖及び糖アルコールが溶解又は再結晶した状態のものである。その結果、従来のアレルゲン含有フィルム状製剤は、充分なフィルム強度、口腔内における水溶性ポリマー依存のネバネバ感の低減、指で触った際の触感等において、満足いくものではなかった。
特表2006−513269号公報 特表2005−511522号公報 特表2007−500252号公報 特表2009−507854号公報
本発明は、上記現状に鑑み、花粉症等のアレルギー性疾患の予防又は治療剤として有用な減感作療法用製剤を可能とし、アレルゲンタンパク質の安定性に優れ、貯蔵及び伝達の為に有用である安定化医薬組成物、該安定化医薬組成物を用いてなる、安定化医薬組成物溶液製剤、及び、フィルム状製剤、並びに、該フィルム状製剤の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、驚くべきことに、糖、糖アルコール及び糖脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種の安定化剤を、例えば、スギ花粉アレルゲン等のアレルゲンタンパク質を含む医薬組成物に添加することにより、アレルゲンタンパク質を安定に保存させることができ、従来と比較してより優れた貯蔵及び伝達を可能とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
そして、このような安定化された医薬組成物(安定化医薬組成物)について更に鋭意検討した結果、該安定化医薬組成物を用いて溶液製剤、フィルム状製剤を調製する場合、該安定化医薬組成物中の水分量を所定の条件に制御するとともに、所定の安定化剤を選択して用いることで、アレルゲンタンパク質の安定化に効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本明細書において、安定化医薬組成物における「安定化」とは、製造後ある時間(例えば、製造後1〜2週間)にわたり保存した後に、或いは、フィルム状製剤としたときの加熱処理後に、安定化剤を添加しない場合よりもよりアレルゲンの活性が大きい(すなわち100%より大きい)ことを意味し、好ましくは120%以上であることを意味する。
すなわち、本発明は、アレルゲンタンパク質と、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の安定化剤とを含有する安定化医薬組成物である。
本発明の安定化医薬組成物は、更に水を含み、かつ、安定化剤が、D−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ラフィノース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、本発明の安定化医薬組成物は、実質的に水を含まず、安定化剤が、D−マンニトールを含むものであることが好ましい。
また、上記アレルゲンタンパク質は、スギ花粉アレルゲンタンパク質を含むものであることが好ましい。
また、本発明は、アレルゲンタンパク質と、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の安定化剤とを含有し、更に水を含み、かつ、上記安定化剤が、D−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である安定化医薬組成物を用いてなる安定化医薬組成物溶液製剤である。
また、本発明は、アレルゲンタンパク質と、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の安定化剤とを含有し、実質的に水を含まず、上記安定化剤が、D−マンニトールを含むものであり、更に、多糖類を含有する安定化医薬組成物を用いてなるフィルム状製剤である。
上記多糖類は、ヒドロキシプロピルセルロースを含むことが好ましい。
また、本発明は、アレルゲンタンパク質、ヒドロキシプロピルセルロース、D−マンニトール及び極性有機溶媒を含有する分散液を調製し、前記分散液の薄層を形成して該薄層を乾燥させるフィルム状製剤の製造方法である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の安定化医薬組成物は、アレルゲンタンパク質と、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種の安定化剤とを含有するものである。
上記アレルゲンタンパク質は、アレルギー疾患を持っている人の抗体と特異的に反応する抗原を意味する。
上記アレルゲンタンパク質としては、具体的には、例えば、樹木類の花粉アレルゲン(アカシア、ハンノキ、ビロードアオダイモ、セイヨウブナ、白樺、カエデ、山スギ、赤スギ、ハコヤナギ、ヒノキ、アメリカニレ、アキニレ、トガサワラ、ゴムの木、ユーカリの木、エノキ、ヒッコリー、アメリカシナノキ、サトウカエデ、メスキート、カジノキ、コナラ属、オリーブ、ペカン、コショウ、マツ、イボタツキ、ロシアオリーブ、アメリカスズカケ、ニワウルシ、クロクルミ、クロヤナギ等)、草木類の花粉アレルゲン(ワタ、ギョウギシバ、ナガハグサ、スズメノチャヒキ、トウモロコシ、ヒロハウシノケグサ、セイバンモロコシ、カラスムギ、カモガヤ、コヌカグサ、ホソムギ、コメ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ヒユ、アカザ、オナモミ、ギシギシ、セイタカアワダチソウ、イソホウキ、シロザ、キンセンカ、イラクサ、アオビエ、ヘラオオバコ、オオブタクサ、ブタクサ、ブタクサモドキ、ノハラヒジキ、ヤマヨモギ、エニシダ、ヒメスイバ等)、虫由来のアレルゲン(カイコ、ダニ、ミツバチ、スズメバチ、アリ、ゴキブリ等)、菌由来アレルゲン(アルテルナリア、アスペルギルス、ボツリヌス、カンジダ、セファロスポリウム、カーブラリア属、エピコッカム菌、表皮菌、フザリウム属、ヘルミントスポリウム属、連鎖クラドスポリウム、ケカビ、ペニシュリウム、ファーマ属、プルラリアプルランス、クモノスカビ等)、動物の体毛由来のアレルゲン(犬、猫、鳥等)、ハウスダスト由来アレルゲン、食物由来アレルゲン等が挙げられ、アレルギー疾患を持っている人の抗体と特異的に反応する抗原であれば特に制限はない。
本発明の効果を充分奏するためには、植物花粉アレルゲンタンパク質、例えば、スギ又はヒノキアレルゲンタンパク質が好ましく、スギグループ1及びグループ2アレルゲン、例えばcry j 1、cry j 2がより好ましく、cry j 1が更に好ましい。
上記アレルゲンタンパク質の含有量としては、その性質等によっても異なるが、本発明の安定化医薬組成物の全重量中、通常、1×10−10〜60重量%であることが好ましい。1×10−10重量%未満であると、本発明の安定化医薬組成物を用いてなる製剤が、減感作療法に適さないものとなることがあり、60重量%を超えると、例えば、本発明の安定化医薬組成物をフィルム状製剤に適用した場合、フィルム強度を著しく低下させ、フィルムの保型性に問題が生じる可能性がある。
本発明の安定化医薬組成物において、上記安定化剤は、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種である。
上記糖及び糖アルコールとしては、例えば、単糖、二糖、三〜六糖及びそれらの糖アルコールが挙げられる。
単糖類としては、例えば、エリスロース、スレオース等のアルドテトロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキソース、エリスルロース等のケトテトロース、キシルロース、リブロース等のケトペントース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース等のα−ジグルコシド、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース等のβ−ジグルコシド、ネオトレハロース等のα,β−ジグルコシドの他、ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース)、スクラロース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、ラフィノース等が挙げられる。三糖〜六糖のオリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、デキスロリン、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖等が挙げられる。
また、単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール等のテトリトール、D−アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D−イジノール、ガラクチトール(ダルシトール)、D−グルシトール(ソルビトール)、マンニトール等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられ、オリゴ糖としては、ペンタエリスリトール、還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
本発明の安定化医薬組成物において、上記糖又は糖アルコールは、置換されていてもよく、かつ、1種で又は2種以上混合して用いることもできる。
また、上記糖脂肪酸としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、本発明の安定化医薬組成物が水を更に含む場合、上記安定化剤としては、D−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ラフィノース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。本発明の安定化医薬組成物が水を含む場合、安定化剤としてD−ソルビトール等を用いることで、冷蔵保存下での保管期間の延長、及び、室温保存が可能となる顕著な効果を有し、また、製造時の溶液状態におけるアレルゲンタンパク質を安定化させることができ、製造を容易化することができる。
ここで、上記「水が含まれる」とは、本発明の安定化医薬組成物の組成によって変化し得るが、好ましくは本発明の安定化医薬組成物の全重量に対して、水分が7.0重量%以上、より好ましくは10.0重量%以上である場合を意味する。
本発明の安定化医薬組成物が水を含み、上記安定化剤としてD−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、注射剤及び経口液剤のような安定化医薬組成物溶液製剤へ好適に応用できる。
このような安定化医薬組成物溶液製剤、すなわち、アレルゲンタンパク質と、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の安定化剤とを含有し、更に水を含み、かつ、上記安定化剤が、D−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ラフィノース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む安定化医薬組成物を含有する安定化医薬組成物溶液製剤もまた、本発明の一つである。
本発明の安定化医薬組成物溶液製剤において、上記安定化剤であるD−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ラフィノース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の含有量としては、安定化医薬組成物溶液製剤の全重量中、1〜80重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、アレルゲンタンパク質の安定性が劣ることがあり、80重量%を超えると、医薬組成物溶液製剤の物性に与える影響が大きくなり、実用上問題となる可能性がある。
より好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は60重量%である。
また、本発明の安定化医薬組成物溶液製剤は、上述のとおり水が含まれるものであるが、水分含量が上述した条件を満たすものであれば、後述する極性有機溶媒等の有機溶媒を含有するものであってもよい。
このような本発明の安定化医薬組成物溶液製剤は、例えば、所定量の水(又は水と有機溶媒との混合溶媒)に、予め粉砕、造粒、分級装置等で粒子径を調整したD−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ラフィノース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の安定化剤、及び、アレルゲンタンパク質を混合、撹拌することで製造することができる。
また、本発明の安定化医薬組成物が、実質的に水を含まない場合、上記安定化剤としては、D−マンニトールを含むことが好ましい。本発明の安定化医薬組成物が実質的に水を含まない場合、安定化剤としてD−マンニトールを含むと、冷蔵保存下での保管期間の延長、及び、室温保存が可能となるだけでなく、製造工程中に暴露され得る高温に対してもアレルゲンタンパク質の変性を抑制することが可能となり、上記アレルゲンタンパク質の安定化効果が優れたものとなる。
ここで、上記「実質的に水が含まれない」とは、本発明の安定化医薬組成物が完全に水を含まない場合の他、空中湿度又は製造工程に由来する、組成物の安定化特性に影響が充分小さい量の水を含むことを許容する意味である。そのような水分含量は、本発明の安定化医薬組成物の組成によって変化し得るが、本発明の安定化医薬組成物の全重量に対して、7.0重量%未満である場合を意味する。
本発明の安定化医薬組成物が実質的に水を含まず、上記安定化剤がD−マンニトールを含む場合、本発明の安定化医薬組成物は、崩壊錠剤、フィルム状剤のような固形製剤への応用が可能である。
また、本発明の安定化医薬組成物が実質的に水を含まず、上記安定化剤がD−マンニトールを含む場合、多糖類を更に含有することが好ましい。上記多糖類を更に含有することで、実質的に水を含まない本発明の安定化医薬組成物を用いて、安定なフィルム状製剤を好適に調製できる。
このような多糖類を含有し実質的に水を含まない本発明の安定化医薬組成物を用いてなるフィルム状製剤、すなわち、アレルゲンタンパク質と、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の安定化剤とを含有し、実質的に水を含まず、上記安定化剤が、D−マンニトールを含むものであり、更に、多糖類を含有する安定化医薬組成物を用いてなるフィルム状製剤もまた、本発明の一つである。
なお、本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の知見を得て本発明のフィルム状製剤を完成するに至ったのである。
すなわち、D−マンニトールを安定化剤として用いたフィルム状製剤の調製において、溶媒として有機溶媒ではなく精製水又は精製水と極性有機溶媒の混液を使用すると、添加したD−マンニトールの粒子は溶解し、フィルム物性に大きく影響を与える。これを解決するためには、D−マンニトールの配合量を減少させなければならないが、この方法では後述する多糖類の全体における配合比が増加し、結果として口腔内溶解性、フィルム触感、口腔内における食感等の必要な特性が低減される可能性がある。
そこで、有機溶媒にも可溶である多糖類を用い、上記安定化剤として、D−マンニトール微粒子を用い、有機溶媒下で調製することにより、D−マンニトールが微粒子のままで分散したフィルム状製剤を作製し、その特性が従来品と比較して明らかに向上していることを見出した。
上述した本発明の安定化医薬組成物の好ましい実施態様である、本発明のフィルム状製剤は、以下の効果を奏するものである。
すなわち、本発明のフィルム状製剤は、D−マンニトールが粒子の状態で分散されており、口腔内、特に舌下における制御可能な溶解プロファイル、充分なフィルム強度、口腔内における多糖類依存のネバネバ感の低減、指で触った際の触感等、その特性が従来品と比較して明らかに向上している。
また、D−マンニトールを粒子の状態でフィルム内に均一分散させることにより、製造に関して必要な引張強度、剛軟度といったフィルム物性を損なうことなく、口腔内溶解性、フィルム触感、口腔内における食感等の服用上必要な特性のみを明らかに向上させることが可能である。
また、製造時に沸点が低い有機溶媒を用いることで、熱に弱いアレルゲンタンパク質へ影響を与えることなく、フィルム状製剤の調製が可能である。
図1は、本発明のフィルム状製剤の形態の一例を示す模式図である。
図1に示すように、本発明のフィルム状製剤は、平均粒子径が0.1〜100μmのD−マンニトール粒子1aが、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子、アレルゲンタンパク質及び多糖類を含む基材1b中に均一分散している。
本発明のフィルム状製剤の厚みとしては特に限定されないが、30〜500μmであることが好ましい。30μm未満であると、フィルム強度及び製品の取り扱い性の観点から問題となる可能性があり、500μmを超えると、口腔内で可食性高分子由来のネバネバ感が強くなり、口腔内で違和感を覚える恐れがある。
また、本発明のフィルム状製剤の平面形状は特に限定されず、例えば、長方形、正方形、円形、楕円形等、任意の形状が挙げられる。
本発明のフィルム状製剤は、上述のようにD−マンニトールを含むものであるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の糖又は糖アルコール粒子を含有していてもよい。
上記その他の糖又は糖アルコールとしては、例えば、上記本発明の安定化医薬組成物において説明した単糖〜六糖又はその糖アルコールが挙げられる。
なかでも、本発明のフィルム状製剤が口腔内で容易に溶解する観点から、単糖〜三糖又はその糖アルコールが好ましい。また、還元性がある糖では上記アレルゲンタンパク質とのメイラード反応により抗原性が著しく低下する可能性が考えられるため、非還元性の糖又は糖アルコールであることが好ましい。更に好ましくは吸湿性が低いトレハロース、キシリトール、エリスリトール、イソマルトである。
本発明のフィルム状製剤において、上記D−マンニトールの平均粒子径としては、0.1〜100μmであることが好ましい。100μmを超えると、実用的な厚さのフィルム製剤において、柔軟性が部位により不均一となる可能性があり、また、粒子径のばらつきが大きくなる傾向にあるので、フィルム状製剤の強度が低下する(脆くなる)傾向にある。一方、上記平均粒子径が0.1μm未満であると、上記D−マンニトールが凝集する可能性があり、同様に、フィルム状製剤の柔軟性が部位により不均一となる可能性がある。上記D−マンニトールの平均粒子径は、より好ましくは0.1〜30μmである。当該範囲内にあることで、実用的な製造工程時間の間、D−マンニトールが均一に分散した溶液を調製することが容易である。
なお、本明細書において、上記平均粒子径とは、レーザー散乱式粒度分布測定装置で求めた50%平均粒子径を意味する。
また、上記D−マンニトールは、上記平均粒子径の範囲内にある固形物、文脈的に適切な場合にはその集合物であれば、形状は問わない。かかるD−マンニトールは、上記平均粒子径が上記範囲となるように整粒された市販品を用いることができ、また、市販品を平均粒子径が上記範囲となるように整粒して用いることもできる。なお、上記平均粒子径の調整は、粉砕、乾式造粒法、湿式造粒法等による造粒、篩や分級機等を用いた分級等により行うことができる。上記平均粒子径の範囲内にある固形物を容易に得るために、上記D−マンニトールは、一旦溶解されて再結晶されたものではないものが好ましい。
上記D−マンニトールの配合量は、本発明のフィルム状製剤の全重量中、1〜80重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、実用的なフィルム状製剤の厚みにおいて口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度、口腔内における可食性高分子依存のネバネバ感、指で触った際の触感において明らかな向上は見られないことがあり、80重量%を超えると、D−マンニトールの粒子径をかなり小さくしない限り、製品の保型性等の問題が出てくる可能性がある。上記D−マンニトールの配合量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は60重量%である。当該範囲内にあることで、製造上、実用的な粒子径で、口腔内における迅速な溶解プロファイル、充分なフィルム強度、口腔内における後述する可食性高分子依存のネバネバ感、指で触った際の触感の向上が可能である。
なお、糖類は甘味を有するものが多く、口腔内で容易に溶解するフィルム状製剤にとって都合がよい。無論所望により可塑剤を加えることは差支えない。
更に、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、上記D−マンニトール以外の上述した安定化剤を添加してもよい。
本発明のフィルム状製剤に含有される多糖類としては、水及び極性有機溶媒双方に可溶性である可食性高分子であることが好ましい。
上記可食性高分子としては、フィルム形成能を有し、可食性であり、上記D−マンニトールが溶解しない極性有機溶媒に溶解するものであれば特に限定されない。
なお、本明細書において、「可食性」とは、経口的に投与可能であり、製剤学的に許容されるものであることを意味する。
上記可食性高分子としては、具体的には、ポリビニルピロリドン(以下“PVP”と記す)、ヒドロキシプロピルセルロース(以下“HPC”と記す)が好適に用いられる。
これらの可食性高分子は、水及び極性有機溶媒に充分に可溶であるという点が、口腔内において迅速に溶解するということと、本発明のフィルム状製剤の製造時に極性有機溶媒を用いることが可能であるいうこととの双方の条件を満たし、それにより極性有機溶媒に溶解しない上記D−マンニトールを粒子状態でフィルム状製剤の中に均一分散担持させることが可能となる。
上記可食性高分子としては、HPCであることが更に好ましい。相対湿度に対する吸湿性が、PVPと比較してHPCの方が低く、実用上の観点から好ましいと考えられるからである。これらの物質は単独で用いられてもよく、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
本発明のフィルム状製剤は、その厚さを制御することで口腔内溶解時間を制御することができるが、上記PVPやHPC等の可食性高分子の分子量を適宜調整することでも、口腔内溶解時間を任意にかつ容易に制御することができる。
上記PVPの分子量は、好ましくは2500〜300万であり、より好ましくは2500〜120万である。2500未満であると、安定性及び吸湿性が悪くなる恐れがあり、逆に300万を超えると、溶解性が悪くなる恐れがある。
上記HPCの分子量は、好ましくは1万〜115万であり、より好ましくは1万〜37万である。1万未満であると、吸湿性及び安定性が悪くなる恐れがあり、115万を超えると、溶解性が悪くなる恐れがある。
なお、本明細書において、上記分子量とは重量平均分子量を意味し、ゲル浸透クロマトグラフ分析により得られる。
上記HPCのヒドロキシプロポキシ基の置換度は、好ましくは50.0%以上である。50.0%未満であると、水及び有機溶媒への溶解性が悪くなる恐れがある。ここで、上記ヒドロキシプロポキシ基の置換度の測定方法は、第十五改正日本薬局法・医薬品化各条・ヒドロキシプロピルセルロース・定量法に従う。上記ヒドロキシプロポキシ基の置換度は、より好ましくは53.4%以上である。
本発明のフィルム状製剤において、上記可食性高分子の配合量は、該フィルム状製剤の重量全体に対して1〜80重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、本発明のフィルム状製剤が脆くなり、充分な強度を示さないことがあり、80重量%を超えると、口腔内における可食性高分子由来のネバネバ感を生じる傾向にある。上記可食性高分子の配合量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は70重量%である。
上記水及び極性有機溶媒双方に可溶性である可食性高分子に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、水にのみ可溶である可食性高分子又は水にも有機溶媒にも溶解しない可食性高分子(以下、これらをまとめて、その他の可食性高分子ともいう)を適量組み合わせて用いることもできる。
上記その他の可食性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム等の合成高分子化合物、アルギン酸ソーダ、デキストラン、カゼイン、プルラン、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、トラガンカントガム、アカシアガム、アラビアガム、ジェランガム、澱粉等の天然物より得られる高分子化合物等が挙げられる。
本明細書において、水又は極性有機溶媒に対する溶解性に関して、20℃において1gの溶質を溶かすのに水又は極性有機溶媒の量が100mL以上必要であれば、その溶媒に「溶解しない」という表現を用い、1gの溶質を溶かすのに水又は極性有機溶媒の量が5mL未満であれば「可溶性である」という表現を用いている。また、1gの溶質を溶かすのに水又は極性有機溶媒の量が3mL未満であれば「易溶性である」という表現を用いる。なお、本発明において使用する上記D−マンニトール粒子は、極性有機溶媒の温度が高いほど溶解性が減少することが知られており、これを利用し、更に上記D−マンニトール粒子の溶解性を下げ、微粒子状態の安定化を図ることは可能である。
本発明のフィルム状製剤は、該フィルム状製剤の基材を構成する成分として、上記の物質以外に、所望により香料、嬌味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、上記D−マンニトール以外のその他の安定化剤、界面活性剤、可塑剤(ポリエチレングリコール(PEG)等)等を適宜使用してもよい。
上記構成からなる本発明のフィルム状製剤は、患者が自己投与可能であり、注射による痛みもなく、分割する事で投与量の調整も可能であり、携帯性にも優れ、残渣感もなく、錠剤との剤形差別化による誤飲防止にも優れ、介護者が投与し易い等、患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることが可能であると考えられる。
また、極性有機溶媒を溶媒として用いることにより、低温によりフィルム状製剤を乾燥させることが可能であり、高温に弱いアレルゲンを含有させるのに都合がよい。
本発明のフィルム状製剤は、例えば、次の方法によって製造することができる。
すなわち、まず、所定量の極性有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、アセトン等)、予め粉砕、造粒、分級装置等で粒子径を調整したD−マンニトール粒子及びアレルゲンタンパク質を含有する粒子分散液を調製する。次いで、得られた粒子分散液を公知の剥離フィルム上に適当量展延して薄膜を形成し、該薄膜を乾燥することで製造することができる。更に、得られた薄膜を所望の大きさに裁断し、必要により密封包装し、製品とすることが好ましい。
このようなフィルム状製剤の製造方法もまた、本発明の一つである。
上記粒子分散液の調製時に、該粒子分散液中に泡が発生した場合は、一夜放置とか真空脱泡を行うとよい。
上記粒子分散液調製に当って用いられる極性有機溶媒としては、上記D−マンニトールは溶解しないが、可食性高分子は溶解するものであればよい。また、単一溶媒を用いても、組み合せ溶媒を用いてもよい。具体的にはエタノール、プロパノール、アセトンが主であり、更に好ましくはエタノールであり、D−マンニトール粒子を溶解させない量であれば精製水を加えることもできる。
本発明によれば、花粉症等のアレルギー性疾患の予防又は治療剤として有用な減感作療法用製剤(安定化医薬組成物溶液製剤、フィルム状製剤)の製造を可能とし、アレルゲンタンパク質の安定性に優れ、貯蔵及び伝達のために有用である安定化医薬組成物を提供することができる。
本発明の安定化医薬組成物を用いてなる安定化医薬組成物溶液製剤は、アレルゲンタンパク質の安定性を一般的に知られている溶液製剤組成のものよりも向上させることが可能である。これにより、製造工程中に暴露され得る高温に対してもアレルゲンタンパク質の変性の抑制、冷蔵保存下での保管期間の延長、及び、室温保存が可能となる。
特に、水を含む安定化医薬組成物に係る本発明の一実施態様では、冷蔵保存下での保管期間の延長、及び、室温保存が可能となる顕著な効果を有する。
また、実質的に水を含まない安定化医薬組成物に係る本発明の一実施態様では、冷蔵保存下での保管期間の延長、及び、室温保存が可能となるだけでなく、製造工程中に暴露され得る高温に対してもアレルゲンタンパク質の変性を抑制することが可能となる顕著な効果を有する。
また、本発明の安定化医薬組成物を用いてなる本発明のフィルム状製剤は、注射による痛みもなく、患者がアレルゲンを自己投与することが可能である。また、分割することで投与量の調整も可能であり、携帯性にも優れ、残渣感もなく、錠剤との剤形差別化による誤飲防止にも優れ、介護者が投与し易い等、患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることが可能である。
また、本発明のフィルム状製剤は、多糖類及びD−マンニトールを含有するものであり、該多糖類として、水及び極性有機溶媒に可溶性である可食性高分子を用いることで、口腔内、特に舌下における溶解時間を任意に制御することができる。好ましい実施態様では、溶解時間を2〜300秒に制御可能であることから、本発明のフィルム状製剤は、アレルゲンによる患者の減感作療法に特に適する。
また、上記D−マンニトール粒子は、極性有機溶媒に溶解しないものである。本発明のフィルム状製剤は、極性有機溶媒を溶媒として用いて製造するため、製造時に上記D−マンニトール粒子が溶解することがなく、上記D−マンニトール粒子を粒子状態でフィルム状製剤の基材の中に均一分散担持したものとすることができる。
そして、本発明のフィルム状製剤は、上記D−マンニトール粒子とヒドロキシプロピルセルロースとを含むことで、充分なフィルム強度を有するだけでなく、口腔内における上記可食性高分子由来のネバネバ感を低減させることができ、また、指で触った際の触感を向上させることができ、高いフィルム強度を得ることができる。
加えて、本発明のフィルム状製剤の製造方法では、上記極性有機溶媒を溶媒として用いることにより、低温によりフィルム状製剤を乾燥させることが可能であり、高温に弱いアレルゲンタンパク質であっても、これに悪影響を低減しつつ、フィルム状製剤を製造することができる。
本発明のフィルム状製剤の形態の一例を示す模式図である。
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
D−ソルビトール100.0重量部に標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mL(鳥居薬品製)55.0重量部を加えて攪拌溶解させ、水分含量が17.7重量%の安定化医薬組成物を調製した。なお、標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mLには、50重量%の水が含まれている。
この安定化医薬組成物を30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表10に示した。
(実施例2〜4)
表1に示した組成とした以外は、実施例1と同様の手順で安定化医薬組成物を調製した。得られた安定化医薬組成物を30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表10に示した。
(実験例1)
エリスリトール100.0重量部に標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mL(鳥居薬品製)55.0重量部を加えて攪拌溶解させて、水分含量が17.7重量%の医薬組成物を調製した。
この医薬組成物を30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表10に示した。
(実験例2〜5)
表1に示した組成とした以外は、実験例1と同様の手順で医薬組成物を調製した。
得られた医薬組成物を30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表10に示した。
Figure 2011225525
(実施例5)
ショ糖ステアリン酸エステル100.0重量部に標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mL(鳥居薬品製)55.0重量部を加えて攪拌溶解させて、水分含量17.7重量%の安定化医薬組成物を調製した。
この溶液を30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表11に示した。
(実施例6〜9)
表2に示した組成とした以外は、実施例5と同様の手順で安定化医薬組成物を調製した。得られた安定化医薬組成物を30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表11に示した。
(実験例6)
トレハロース100.0重量部に標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mL(鳥居薬品製)55.0重量部を加えて攪拌溶解させて、水分含量17.7重量%の医薬組成物を調製した。
この医薬組成物を30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表11に示した。
(実験例7)
表2に示した組成とした以外は、実験例6と同様の手順で医薬組成物を調製した。
この医薬組成物を30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表11に示した。
(比較例1)
標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mL(鳥居薬品製)55.0重量部をとり、30±2℃で2週間保管し、1週間後と2週間後のアレルゲン活性を測定した。結果を表11に示した。
Figure 2011225525
以下の実施例等で用いた糖及び糖アルコールの中で微粒子と記載されたものに関しては、ジェットミルにより粒子径を調整したものである。また、レーザー散乱式粒度分布測定装置で50%平均粒子径を測定し、各微粒子の粒子径の指標として用いた。表3に用いた糖及び糖アルコールの50%平均粒子径を示す。
微粒子と記載されていないものに関しては、医薬品添加剤そのままを用いた。またイソマルトAは、6−0−α−D−Glucopyranosyl−D−sorbitol(1,6−GPS)と、1−0−α−D−Glucopyranosyl−D−mannitol dehydrate(1,1−GPM)が1:1(質量比)で含まれているもの(ベネオ・パラチニット製、galenIQ800)であり、イソマルトBは、1,6−GPSと1、1−GPMとが3:1(質量比)で含まれているもの(ベネオ・パラチニット製、galenIQ801)である。
Figure 2011225525
(実施例10)
エタノール105.5重量部に、ポリエチレングリコール1.0重量部、D−マンニトール微粒子43.0重量部を加えて超音波分散した。ここに分子量約3万であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度が53.4〜77.5%であるHPC(HPC−SSL、日本曹達製)50.0重量部を加えて攪拌溶解した。更に標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mL(鳥居薬品製)11.0重量部を加えてローリングミキサーで攪拌混合して、水分含量2.6重量%の安定化医薬組成物を調製した。
この安定化医薬組成物を充分に脱泡後、ポリエステル剥離フィルム上に延伸し、常温で5分間乾燥した後、60℃で6分間加熱乾燥を行い、厚さ約100μmのフィルムを製造した。得られたフィルムを5cmの長方形に裁断し、フィルム状製剤を得た。
(実験例8)
エタノール105.5重量部に、ポリエチレングリコール1.0重量部、イソマルトA微粒子43.0重量部を加えて超音波分散した。ここに分子量約3万であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度が53.4〜77.5%であるHPC(HPC−SSL、日本曹達製)50.0重量部を加えて攪拌溶解した。更に標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mL(鳥居薬品製)11.0重量部を加えてローリングミキサーで攪拌混合して、水分含量2.6重量%の医薬組成物を調製した。
この医薬組成物を充分に脱泡後、ポリエステル剥離フィルム上に延伸し、常温で5分間乾燥した後、60℃で6分間加熱乾燥を行い、厚さ約100μmのフィルムを製造した。得られたフィルムを5cmの長方形に裁断し、フィルム状製剤を得た。
(実験例9、10)
表4に示した組成とした以外は、実験例8と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
(比較例2)
エタノール105.5重量部に、ポリエチレングリコール1.0重量部及び分子量約3万であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度が53.4〜77.5%であるHPC(HPC−SSL、日本曹達製)93.0重量部を加えて攪拌溶解した。更に標準化アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉2000JAU/mL(鳥居薬品製)11.0重量部を加えてローリングミキサーで攪拌混合して、水分含量2.6重量%の医薬組成物を調製した。この医薬組成物を充分に脱泡後、ポリエステル剥離フィルム上に延伸し、常温で5分間乾燥した後、60℃で6分間加熱乾燥を行い、厚さ約100μmのフィルムを製造した。得られたフィルムを5cmの長方形に裁断し、フィルム状製剤を得た。
Figure 2011225525
(実施例11)
表5に示した組成及び乾燥条件とした以外は、実施例10と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
(実験例11〜13)
表5に示した組成及び乾燥条件とした以外は、実験例8と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
(比較例3)
表5に示した組成及び乾燥条件とした以外は、比較例2と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
Figure 2011225525
(実施例12)
表6に示した組成及び乾燥条件とした以外は、実施例10と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
(実験例14〜16)
表6に示した組成及び乾燥条件とした以外は、実験例8と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
(比較例4)
表6に示した組成及び乾燥条件とした以外は、比較例2と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
Figure 2011225525
(実験例17〜26)
表7に示した組成及び乾燥条件とした以外は、実験例8と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
Figure 2011225525
(実施例13〜22)
表8に示した組成及び乾燥条件とした以外は、実施例10と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
Figure 2011225525
(実施例23〜33)
表9に示した組成及び乾燥条件とした以外は、実施例10と同様の手順でフィルム状製剤を得た。
Figure 2011225525
実施例10〜33、実験例8〜26及び比較例2〜4について、以下の評価を行った。
(試験方法)
スギ花粉のアレルゲンタンパク質であるCryj1のアレルゲン活性を測定することにより、各種医薬組成がCryj1タンパク質の安定性(特に熱安定性)に関して寄与するかどうかを評価した。評価方法を次にしめす。
(アレルゲン活性評価方法)
スギ花粉抗原ELISA Kit「Cryj1」(生化学バイオビジネス製)を用い、スギ花粉の主要アレルゲンの1つであるCryj1のアレルゲン活性を測定した。当該測定キットは日本スギ(Cryptomeria japonica)花粉抗原の1つであるCryj1に特異的なモノクロナール抗体(013、053)を利用したサンドイッチELISA法を原理としており、Cryj1を特異的に測定することが可能である。キット付属の反応緩衝液100μLに標準溶液又はサンプル20μLを添加し、常温で60分間一次反応を行った後、HRP標識抗体溶液100μLを加え60分間二次反応を行った。ここに酵素基質溶液100μLを加え、常温遮光下で30分間反応を行い、最後に反応停止溶液100μLを加えた。その後、450nmの紫外吸収強度を測定した。各Cryj1濃度の標準溶液における吸収強度を元に検量線を求め、これに従い各サンプルのCryj1アレルゲン活性(ng/mL)を測定した。
安定性試験及び加熱試験においては、各サンプルへのCryj1の添加量の初期値を100%とし、サンプリング後、又は、加熱乾燥後の残存Cryj1アレルゲン活性%として評価した。
結果を表12〜17に示した。
Figure 2011225525
Figure 2011225525
Figure 2011225525
Figure 2011225525
Figure 2011225525
Figure 2011225525
Figure 2011225525
Figure 2011225525
表10、11に示したように、水を含み、安定化剤として、D−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ラフィノース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を用いた実施例に係る安定化医薬組成物は、いずれも1週間後の残存アレルゲン活性が高い状態を維持していた。
一方、安定化剤を含有しない比較例に係る医薬組成物、及び、水を含むが、安定化剤として、D−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ラフィノース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を用いていない実験例に係る医薬組成物は、いずれも1週間後における残存アレルゲン活性が実施例と比較して劣るものであった。
また、表12〜17に示したように、実質的に水を含まず、安定化剤が、D−マンニトールである実施例に係るフィルム状製剤は、いずれも残存アレルゲン活性が高い状態を維持していた。
一方、安定化剤を含有しない比較例に係るフィルム状製剤、及び、実質的に水を含まないが、安定化剤としてD−マンニトールを用いていない実験例に係るフィルム状製剤は、いずれも残存アレルゲン活性が実施例よりも劣るものであった。
本発明の安定化医薬組成物は、花粉症等のアレルギー性疾患の予防又は治療剤として有用な減感作療法用製剤(安定化医薬組成物溶液製剤、フィルム状製剤)の製造を可能とし、アレルゲンタンパク質の安定性に優れ、貯蔵及び伝達のために有用である。
1a D−マンニトール粒子
1b 基材

Claims (7)

  1. アレルゲンタンパク質と、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の安定化剤とを含有することを特徴とする安定化医薬組成物。
  2. 更に水を含み、かつ、安定化剤が、D−ソルビトール、イソマルト、スクロース、ラフィノース、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1記載の安定化医薬組成物。
  3. 実質的に水を含まず、安定化剤が、D−マンニトールを含む請求項1記載の安定化医薬組成物。
  4. 請求項2記載の安定化医薬組成物を用いてなることを特徴とする安定化医薬組成物溶液製剤。
  5. 多糖類を更に含有する請求項3記載の安定化医薬組成物を用いてなることを特徴とするフィルム状製剤。
  6. 多糖類は、ヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項5記載のフィルム状製剤。
  7. アレルゲンタンパク質、ヒドロキシプロピルセルロース、D−マンニトール及び極性有機溶媒を含有する分散液を調製し、前記分散液の薄層を形成して該薄層を乾燥させる
    ことを特徴とするフィルム状製剤の製造方法。
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