JP5952634B2 - 医薬組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アレルギー症の予防又は治療剤として有用な医薬組成物に関する。特に本発明は、アレルゲンの安定性に優れ、貯蔵及び取り扱い等の利便性に優れた医薬組成物及びその製造方法に関するものである。
花粉アレルギー等のアレルギー性疾患に対する治療としては、現状、抗ヒスタミン剤を用いる対処療法がそのほとんどであるが、近年、アレルギー性疾患を根治可能な治療方法として減感作療法が注目を集めている。
減感作療法は、一般的に2〜3年程度の長期間投与が必要であり、当観点から介護者及び患者のQOL(quality of life)をより向上させるような剤型が必要であると考えられている。
現在、特異的減感作療法用製剤は、皮下注射を目的とした注射剤がほとんどである。
しかしながら、皮下注射による特異的減感作療法では、アナフィラキシーショックの危険性、医療従事者による投与の必要性、長期間にわたる頻繁な通院の必要性、注射による痛み、冷蔵保管である等の問題点があった。
これに対して、近年、欧米では舌下投与を目的とした液剤及び錠剤が市販され、その副作用の少なさと簡便さから注目を集めている。
しかしながら、液剤の舌下投与による特異的減感作療法では、投与量の不正確さ、冷蔵保管である等の問題があった。
また、錠剤の舌下投与による特異的減感作療法では、誤飲、投与量の調整が難しい、携帯性が悪い、残渣による口腔内への違和感等の問題があった。
また、アレルゲンの製剤化においては、アレルゲンを安定に保存させること、すなわち、生物学的活性の損失を最小限に抑制する事が必須である。
このようなアレルゲンの製剤化技術として、安定化剤や賦形剤を添加した凍結乾燥剤を用いる方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、安定化剤として、ゼラチン及びマンニトール若しくはデンプン及びマンニトールを含む溶液を凍結乾燥することにより、チモシー芝花粉アレルゲンを安定化した医薬組成物が提案されている。
また、例えば、特許文献2には、安定化剤として、マンニトール及びpH調節剤としてリン酸ナトリウムを含む溶液を凍結乾燥することにより、スギ花粉アレルゲン由来ペプチドを安定化した医薬組成物が提案されている。
また、例えば、特許文献3には、安定化剤としてマンニトール及びpH調節剤として酢酸を含む溶液を凍結乾燥することにより、スギ花粉主要アレルゲンの遺伝子組み換えタンパク質を安定化した医薬組成物も提案されている。その他、マクロゴール4000、ポリソルベート80及びスクロースを含む溶液を凍結乾燥することにより、ダニ主要アレルゲンの遺伝子組み換えタンパク質を安定化した医薬組成物が提案されている。
しかしながら、アレルゲンは熱安定性が悪く、従来のアレルゲンの製剤化技術では、アレルゲンを安定的に貯蔵及び伝達することが困難であった。
特表2006−513269号公報 特許第4179422号 特許第3932272号
本発明は、上記現状に鑑み、熱安定性が悪いアレルゲンを安定的に貯蔵及び伝達することのできる医薬組成物、並びに、該医薬組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、安定化剤としてゼラチン及び有機酸塩を用いることで、熱安定性の悪いアレルゲンであっても安定的に貯蔵及び伝達させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アレルゲン、ゼラチン及び有機酸塩を含み、上記有機酸塩は、乳酸塩類、酒石酸塩類、クエン酸塩類、リンゴ酸塩類、コハク酸塩類、グルコン酸塩類、L−アスコルビン酸塩類、L−アスパラギン酸塩類、及び、グリチルリチン酸塩類からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記アレルゲンは、スギ花粉アレルゲンタンパク質であることを特徴とする医薬組成物である。
本発明の医薬組成物は、水を含まないことが好ましい
また、本発明は、アレルゲン、ゼラチン及び有機酸塩を水に溶解させたアレルゲン含有ゼラチン水溶液を得る工程、上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液を、凍結乾燥させる工程を含み、上記有機酸塩は、乳酸塩類、酒石酸塩類、クエン酸塩類、リンゴ酸塩類、コハク酸塩類、グルコン酸塩類、L−アスコルビン酸塩類、L−アスパラギン酸塩類、及び、グリチルリチン酸塩類からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記アレルゲンは、スギ花粉アレルゲンタンパク質であることを特徴とする医薬組成物の製造方法でもある。
本発明の医薬組成物の製造方法において、上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液のpHが5.0〜9.0の範囲内にあることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の医薬組成物は、アレルゲン、ゼラチン及び有機酸塩を含むものである。
本発明の医薬組成物において、上記有機酸塩は、アレルゲンの安定性を向上させる働きをする材料である。
このような有機酸塩としては、例えば、アミノ酸塩類、アジピン酸塩類、クエン酸塩類、リンゴ酸塩類、酢酸塩類、コハク酸塩類、プロピオン酸塩類、酪酸塩類、マロン酸塩類、グルタル酸塩類、マレイン酸塩類、グリコール酸塩類、乳酸塩類、グルコン酸塩類、フマル酸塩類、酒石酸塩類、グリチルリチン酸塩類、ピメリン酸塩類、L−アスコルビン酸塩類、L−アスパラギン酸塩類等が挙げられる。これらの有機酸塩は、単独で用いられてもよく、任意の組み合わせの2種以上が併用されてもよい。
上記の有機酸塩としては、なかでも、医薬品添加物として実績があり、水に溶解させた時にアレルゲンを含有する医薬組成物の最適pH領域(5.0〜9.0)を逸脱しないものが好ましい。具体的には、例えば、乳酸カルシウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、コハク酸二ナトリウム、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、リンゴ酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム及びL−アスパラギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。
特に、アレルゲンの安定化効果の観点から、乳酸カルシウム、グリチルリチン酸二カリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、コハク酸二ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸ナトリウムが好ましい。
本発明の医薬組成物において、上記有機酸塩の含有量は、好ましくは0.01〜80重量%、より好ましくは0.1〜50重量%である。0.01重量%未満であると、アレルゲン安定化効果がほとんど見られない可能性があり、一方、80重量%を超えると、添加した添加剤により医薬組成物の物性の制御が困難になる恐れがある。また、有機酸塩の多くは特異な味を有するものが多く、本発明の医薬組成物を用いた製剤が経口投与であることを考慮すると、使用上問題が生じることがある。
更に、本発明の医薬組成物は、その製造過程で凍結乾燥を行なう直前のアレルゲン含有ゼラチン水溶液における上記有機酸塩の含有量が、上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液の全重量に基づいて、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。0.01重量%未満であると、アレルゲン安定化効果がほとんど見られない可能性があり、一方、20重量%を超えると、添加した添加剤により医薬組成物の物性の制御が困難になる恐れがある。また、有機酸塩の多くは特異な味を有するものが多く、本発明の医薬組成物を用いた製剤が経口投与であることを考慮すると、使用上問題が生じることがある。
また、上記アレルゲンとは、アレルギー疾患を持っている人の抗体として特異的に反応する抗原を意味し、典型的にはタンパク質である。
具体的には、樹木類の花粉に由来するアレルゲン(アカシア、ハンノキ、ビロードアオダイモ、セイヨウブナ、白樺、カエデ、山スギ、赤スギ、ハコヤナギ、ヒノキ、アメリカニレ、アキニレ、トガサワラ、ゴムの木、ユーカリの木、エノキ、ヒッコリー、アメリカシナノキ、サトウカエデ、メスキート、カジノキ、コナラ属、オリーブ、ペカン、コショウ、マツ、イボタツキ、ロシアオリーブ、アメリカスズカケ、ニワウルシ、クロクルミ、クロヤナギ等)、草木類の花粉に由来するアレルゲン(ワタ、ギョウギシバ、ナガハグサ、スズメノチャヒキ、トウモロコシ、ヒロハウシノケグサ、セイバンモロコシ、カラスムギ、カモガヤ、コヌカグサ、ホソムギ、コメ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ヒユ、アカザ、オナモミ、ギシギシ、セイタカアワダチソウ、イソホウキ、シロザ、キンセンカ、イラクサ、アオビエ、ヘラオオバコ、オオブタクサ、ブタクサ、ブタクサモドキ、ノハラヒジキ、ヤマヨモギ、エニシダ、ヒメスイバ等)、虫由来のアレルゲン(カイコ、ダニ、ミツバチ、スズメバチ、アリ、ゴキブリ等)、菌由来のアレルゲン(アルテルナリア、アスペルギルス、ボツリヌス、カンジダ、セファロスポリウム、カーブラリア属、エピコッカム菌、表皮菌、フザリウム属、ヘルミントスポリウム属、連鎖クラドスポリウム、ケカビ、ペニシュリウム、ファーマ属、プルラリアプルランス、クモノスカビ等)、動物の体毛由来のアレルゲン(犬、猫、鳥等)、ハウスダスト由来のアレルゲンタンパク質、食物由来のアレルゲン等が挙げられ、アレルギー疾患を持っている人の抗体と特異的に反応する抗原であれば特に限定されない。
ここで、現在、患者の多いスギ花粉アレルギー症の減感作療法が望まれている。
このため、本発明の医薬組成物において、上記アレルゲンとしては、スギ花粉アレルゲンタンパク質であることが好ましい。
上記スギ花粉アレルゲンタンパク質とは、スギ花粉より抽出されたアレルギー疾患を持っている人の抗体と特異的に反応する抗原性を有するタンパク質、該タンパク質とアミノ酸レベルで相同性の高いタンパク質を有効成分としてなる群より選ばれる1種類以上を含むものが挙げられる。
上記スギ花粉より抽出された抗原性を有するタンパク質としては、スギ花粉特異的IgE抗体の産生を誘導できるような、スギ花粉中に含まれるタンパク質が挙げられる。このスギ花粉中に含まれるタンパク質は、メジャースギ花粉アレルゲンタンパク質とマイナースギ花粉アレルゲンタンパク質とからなる。
なお、花粉に含まれるいくつかのスギ花粉エキスの内で、大多数の患者が強く感作されている成分をメジャースギ花粉アレルゲンタンパク質といい、一部の患者のみが感作されている成分をマイナースギ花粉アレルゲンタンパク質という。
上記スギ花粉アレルゲンタンパク質は、それらを含む液状であってもよく、固体であってもよい。ここで、液状のものをスギ花粉エキスと呼び、液状のスギ花粉エキスの場合、本発明の医薬組成物をそのまま注射剤又は経口液剤として使用してもよく、本発明の医薬組成物をゲル化して経口固形製剤としてもよい。
上記スギ花粉エキスとしては、なかでも、メジャースギ花粉アレルゲンタンパク質であるCryj1及びCryj2及びそれらの混合物がスギ花粉エキスとして好ましく、該Cryj1及びCryj2のみならずマイナースギ花粉アレルゲンタンパク質も含んだスギ花粉抽出液であるスギ花粉エキスそのまま、若しくは、希釈したもの、又は、凍結乾燥させた固形のものも好ましい。
上記アレルゲンの配合量としては、その性質などによっても異なるが、本発明の医薬組成物の全量に対して、通常1×10−10〜60重量%であることが好ましい。1×10−10重量%未満であると、減感作療法に適さないものとなることがあり、60重量%を超えると、本発明の医薬組成物を用いた製剤の強度が著しく低下し、保型性に問題が生じる可能性がある。
また、上記ゼラチンは、可食性高分子であり、本発明の医薬組成物において、基材として機能する材料である。
このようなゼラチンとしては、動物の皮や骨に含まれるタンパク質を酵素によって分解抽出したものが挙げられ、例えば、豚、牛及び魚由来のものを酸処理又はアルカリ処理したいずれのものでも使用できる。
また、アレルゲンの保管時安定性の観点から、上記ゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチンが好ましいが、その溶解性の観点からは水溶性ゼラチンが好ましい。
また、近年のBSE問題の観点から、上記ゼラチンとしては、魚由来及び豚由来のゼラチンが望ましい。
本発明の医薬組成物において、上記ゼラチンの含有量は、その製造過程で凍結乾燥を行なう直前のアレルゲン含有ゼラチン水溶液の全重量に基づいて、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜20重量%である。0.1重量%未満であると、凍結乾燥後に医薬品として充分な剤形が形成されない可能性があり、一方、40重量%を超えると、製剤溶液の粘性が非常に高くなり、製造上問題となる恐れがある。
本発明の医薬組成物は、上記ゼラチンに加えて、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、水にのみ可溶である可食性高分子又は水にも有機溶媒にも溶解しない可食性高分子(以下、これらをまとめて、その他の可食性高分子ともいう)を適量組み合わせて用いることもできる。
上記その他の可食性高分子の配合量は、本発明の医薬組成物の全重量基準で、好ましくは0.1〜10重量%である。
また、本発明の医薬組成物は、その製造過程で凍結乾燥を行なう直前のアレルゲン含有ゼラチン水溶液のpHが5.0〜9.0であることが好ましい。pHがこの範囲にあることで、アレルゲンの物理化学的安定性が顕著に減少することを防止、安全性を確保することができる。より好ましくはpHが6.0〜8.0である。
上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液のpHを上記範囲とするため、本発明の医薬組成物は、pH調節剤を含有することが好ましい。
上記pH調節剤としては特に限定されないが、医薬品添加剤として実績がある、アジピン酸、アンモニア水、塩酸、炭酸ナトリウム、希塩酸、クエン酸水和物、グリシン、グルコノ−δ−ラクトン、グルコン酸、結晶リン酸二水素ナトリウム、コハク酸、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム水和物、ジイソプロパノールアミン、酒石酸、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム液、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂、マレイン酸、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メグルミン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、硫酸、硫酸アルミニウムカリウム水和物、DL−リンゴ酸、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。これらのpH調節剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記pH調節剤は、例えば、有機酸と、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等との組み合わせのように、医薬組成物中で上記pH調節剤として例示した有機酸塩と同等の有機酸塩となる組み合わせが用いられてもよい。
また、製造上の観点から、上記pH調節剤は、少量でpHの調節が可能なものが好ましい。このようなpH調節剤としては、例えば、塩酸、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム等が挙げられる。
また、上記pH調節剤は、タンパク質の変性や凝集を抑制する効果のある有機酸及び有機酸塩も好適である。このようなpH調節剤としては、例えば、クエン酸水和物、グリシン、グリシン、グルコノ−δ−ラクトン、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、乳酸、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、マレイン酸、無水クエン酸、リンゴ酸等が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、物理的安定性を向上させるために、賦形剤や結合剤等が用いられてもよい。これら賦形剤や結合剤としては、医薬品使用実績のあるものであれば特に限定されないが、多糖類からなるプルラン、デキストラン、マルトデキストリン、結晶セルロース等は、ゼラチンを主基材とする本発明の医薬組成物の物性向上に非常に効果を持つ。
また、本発明の医薬組成物は、物性及び溶解性を向上させる添加剤、例えば、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含んでもよい。
上記糖としては、例えば、以下に示すような単糖、二糖、三〜六糖が挙げられる。
単糖類としては、例えば、エリスロース、スレオース等のアルドテトロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキソース、エリスルロース等のケトテトロース、キシルロース、リブロース等のケトペントース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース等のα−ジグルコシド、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース糖のβ−ジグルコシド、ネオトレハロース等のα,β−ジグルコシドの他、ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース)等が挙げられる。三糖類としては、例えば、ラフィノース等が挙げられる。三糖〜六糖のオリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、デキストリン、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖等が挙げられる。
また、単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール等のテトリトール、D−アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D−イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D−グルシトール(ソルビトール)、マンニトール等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられ、オリゴ糖のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
本発明の医薬組成物において、上記糖又は糖アルコールは、置換されていてもよく、また、1種で又は2種以上混合して用いることもできる。
上記糖又は糖アルコールは、本発明の医薬組成物が口腔内で容易に溶解する観点、また、製造工程において大きく溶液の粘性を変化させないという観点から、単糖類〜三糖類又はこれらの糖アルコールであることが好ましい。
また、上記糖脂肪酸としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステル等が挙げられる。
これらの糖脂肪酸は、タンパク質やペプチドの安定化剤としての効果以外に、消泡剤としても役立つため、大変都合がよい。
本発明の医薬組成物において、上述した添加剤の量は、本発明の医薬組成物の全重量に基づき、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜70重量%である。1重量%未満であると、使用上充分な物性を担保できない可能性があり、一方、80重量%を超えると、添加した添加剤により医薬組成物の物性の制御が困難になる恐れがある。
更に、本発明の医薬組成物は、基材を構成する成分として、上述した材料以外に、所望により香料、嬌味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、他の安定化剤、界面活性剤等を適宜使用してもよい。これらの材料としては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。
また、本発明の医薬組成物は、水を含まないことが好ましい。
本発明の医薬組成物が水を含まないことで、例えば、医薬組成物を用いてなる一般的なゼリー状製剤では必要な滅菌工程や防腐剤の添加が不必要となり、製造コスト面でのメリットがあり、また、水分制限が必要な患者のための栄養補助食へ適用する場合にも適している。
なお、本明細書において「水を含まない」は、実質的に水を含まない場合を含み、例えば、本発明の医薬組成物の全重量基準で、水の含有量が5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。
本発明を用いて、経口固形製剤を調製することが可能であり、上述した材料以外に、所望により、賦形剤、結合剤、香料、矯味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤等を適宜使用してもよい。これらの材料としては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。
ここで上記経口固形製剤には、錠剤、コーティング錠、散剤、顆粒剤、細粒剤、口腔内崩壊錠、口腔内貼付剤、ゼリー剤、フィルム剤が含まれ、経口、舌下、口腔に投与する固形状のものであれば特に限定されない。
このような本発明の医薬組成物は、感作時間の制御が必要な口腔内減感作療法用に好適に用いられ、特に舌下減感作療法に適したものである。また、本発明の医薬組成物は、ゼラチンと、特定の安定化剤とを含有するため、アレルゲン、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができる。
また、本発明の医薬組成物は、ケークと呼ばれる多孔性固形であり、凍結乾燥法によって、アレルゲンを含有する水溶液の溶媒である水分を昇華させることで形成され凍結乾燥製剤である。
本発明の医薬組成物である凍結乾燥製剤は、常温〜60℃程度では物理的に安定である。また、主基材がゼラチンであるため、本発明の医薬組成物は、口腔内の体温程度の温度と水分量で容易に溶解させることができ、特定の添加剤とを含有することで、有意に使用上の物性を向上させることが可能である。
また、アレルゲンタンパク質を、特にスギ花粉アレルゲンタンパク質を安定に維持することができる。
本発明の医薬組成物は、もちろんそのままの状態で嚥下してもよいし、口腔内で即座に溶解させて嚥下してもよい。更に、口腔内での溶解時間を制御し、口腔粘膜や舌下粘膜からの吸収を期待することも可能である。
更に、本発明の医薬組成物は、体温程度の温度で全て溶解させることができるため、残渣感がないという観点、また、物理的に安定で、患者及び介護者も指で持ちやすいという観点から、患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることができる。
本発明の医薬組成物の物理的強度については特に限定されないが、例えば、包装、貯蔵、輸送及び患者による製剤の取り扱い時に、割れ・欠け等物理的な崩壊が見られない程度が好ましい。また、手で持った場合、体温程度の接触では製剤の溶解、性状悪化は一切見られない。
更に、本発明の医薬組成物を用いて得られる製剤は、物理的安定性を持つ一方、水分の共存下では速やかに崩壊し、例えば口の中で唾液との接触に際して速やかに崩壊することが必要となる。好ましくは90秒以内、より好ましくは60秒以内に口腔内で崩壊することである。
また、本発明の医薬組成物のサイズとしては特に限定されないが、平面面積が0.5〜6.0cmの範囲内にあることが好ましい。0.5cm未満であると、本発明の医薬組成物を用いて得られた製剤を摘まんで投与する際に取り扱いが難しくなる恐れがあり、6.0cmを超えると口腔内、特に舌下へ完全に入れることができない恐れがある。
上述した本発明の医薬組成物は、例えば、アレルゲン、ゼラチン及び有機酸塩を水に溶解させたアレルゲン含有ゼラチン水溶液を得る工程、上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液を、凍結乾燥させる工程を含む方法により製造することができる。
このような本発明の医薬組成物の製造方法もまた、本発明の一つである。
上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液を得る工程で得られたアレルゲン含有ゼラチン水溶液は、pHが5.0〜9.0の範囲内にあることが好ましい。上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液のpHが上記範囲内にあることで、アレルゲンの物理化学的安定性が顕著に減少することを防止、安全性を確保することができる。
また、本工程では、必要に応じて、その他の成分、例えば、pH調節剤や添加剤等を添加してもよい。
また、上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液を凍結乾燥させる工程では、例えば、上記アレルゲン含有ゼラチン水溶液の所定量を、28℃〜35℃の温度下で希望するサイズの凍結乾燥用ブリスター内に分注し、分注後即座に凍結乾燥させることが好ましい。
また、得られた医薬組成物は、必要により密封包装し、製品とすることが好ましい。
上記の方法で得られた本発明の医薬組成物は、上述のように凍結乾燥製剤であり、経口固形製剤として好適であるが、凍結乾燥後の使用適性、注射用水に対する溶解性が良好で、かつ、長期に亘ってアレルゲンの安定性を持続できるので、注射剤としてあるいは経粘膜投与(経鼻、経口、舌下)される製剤として用いることも可能である。
本発明の医薬組成物は、アレルゲンに加えてゼラチン及び有機酸塩を含むため、該アレルゲンの貯蔵及び伝達の際に保管安定性に優れたものとなる。
また、本発明の製造方法によれば、非常に熱安定性が悪いことが知られているアレルゲンを製造中においても安定的に維持することができ、更に、得られた医薬組成物においても保管安定性に優れたものとすることができる。
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実験例1〜4)
860重量部の精製水に、水溶性ゼラチン(魚)(CSF、ニッピ社製)10重量部を加え、30〜40℃の温度で溶解させた。溶解後は室温に戻し、ゲル化していないことを確認した。別途20重量部の精製水にスギ花粉抽出物乾燥粉末(LSL社製)0.1重量部を加え、室温で溶解させた。そして先ほどのゼラチン溶液に全量加え、速やかに混合し、再びゲル化していないことを確認した。
pH調整剤(水酸化ナトリウム)を用いて、表1に示したpHに調整し、更に精製水を加えて全量を1000重量部としアレルゲン含有ゼラチン水溶液を得た。得られたアレルゲン含有ゼラチン水溶液を35℃のシェイカーにセットして撹拌を行い、30分経過後と、60分経過後のアレルゲン活性を以下の方法で測定した。
続いて、アレルゲン含有ゼラチン水溶液を室温に戻し、ゲル化していないことを確認後、速やかに凍結乾燥用バイアルに1.0gずつ分注し、凍結乾燥させ、医薬含有組成物を得た。得られた医薬含有組成物の保管安定性試験として、40±2℃で14日間保管し、7日経過後と14日経過後のアレルゲン活性を以下の方法で測定した。結果を表2に示した。
(実験例5〜12)
実験例1〜4と同様の手順で凍結乾燥させた医薬含有組成物を得た。なお、実験例5〜8では豚骨ゼラチン(AEP、ニッピ社製)、実験例9〜12ではアルカリ処理牛ゼラチン(AD4、ニッピ社製)を用いた。pHはそれぞれ適切なpH調製剤を用いて、表1に示した値に調整した。また、実験例1〜4と同様にアレルゲン含有ゼラチン水溶液及び保管安定性試験後のアレルゲン活性を測定した。
(比較実験例1〜6)
実験例1〜4と同様の手順で凍結乾燥させた医薬含有組成物を得た。なお、比較実験例1〜2では水溶性ゼラチン(魚)(CSF、ニッピ社製)、比較実験例3〜4では豚骨ゼラチン(AEP、ニッピ社製)、比較実験例5〜6ではアルカリ処理牛ゼラチン(AD4、ニッピ社製)を用いた。pHはそれぞれ適切なpH調製剤を用いて、表1に示した値に調製した。また、実験例1〜4と同様にアレルゲン含有ゼラチン水溶液及び保管安定性試験後のアレルゲン活性を測定した。
Figure 0005952634
(アレルゲン活性評価方法)
スギ花粉抗原ELISA「Cryj1」(生化学バイオビジネス社製)を用い、スギ花粉の主要アレルゲンの1つであるCryj1のアレルゲン活性を測定した。当該測定キットは日本スギ(Cryptomeria japonica)花粉抗原の1つであるCryj1に特異的なモノクロナール抗体(013、053)を利用したサンドイッチELISA法を原理としており、Cryj1を特異的に測定することが可能である。
キット付属の反応緩衝液100μLに標準溶液又はサンプル20μLを添加し、常温で60分間一時反応を行った後、HRP標識抗体溶液100μLを加え60分間二次反応を行った。ここに酵素基質溶液100μLを加え、常温遮光下で30分間反応を行い、最後に反応停止溶液100μLを加えた。その後、450nmの紫外吸収強度を測定した。各Cryj1濃度の標準溶液における吸収強度を元に検量線を求め、これに従い各サンプルのCryj1アレルゲン活性(ng/mL)を測定した。
保管安定性試験のサンプリング後(7日経過後、14日経過後)、及び、製造直後(30分経過後、60分経過後)のCryj1アレルゲン活性%を求めた。当該Cryj1アレルゲン活性%を下記の通りスコア化することにより評価を行った。
5:90%以上、105%未満
4:75%以上、90%未満
3:60%以上、75%未満
2:45%以上、60%未満
1:30%以上、45%未満
0:30%未満
Figure 0005952634
表2に示したように、スギ花粉アレルゲンの最適pH領域として、5.0〜9.0、より好ましくは6.0〜8.0であることが示された。
また、pHが4.0以下、又は、10.0以上の場合、速やかにスギ花粉アレルゲンが失活することが示唆された。また、いずれのサンプル溶液も凍結乾燥製剤化した場合、40℃、14日間保管では著しいアレルゲン含量の減少が見られなかった。
(実験例13)
860重量部の精製水に、水溶性ゼラチン(魚)(CSF、ニッピ社製)10重量部を加え、30〜40℃の温度で溶解させた。溶解後は室温に戻し、ゲル化していないことを確認した。別途20重量部の精製水にスギ花粉抽出物乾燥粉末(LSL社製)0.1重量部を加え、室温で溶解させた。そして先ほどのゼラチン溶液に全量加え、速やかに混合し、再びゲル化していないことを確認した。pH調整剤(水酸化ナトリウム)を用いて、pH=7.0に調整し、更に精製水を加えて全量を1000重量部とした。その後、速やかに凍結乾燥用バイアルに1.0gずつ分注し、凍結乾燥し医薬含有組成物を得た。得られた医薬含有組成物を40±2℃で保管し、7日経過後、14日経過後、30日経過後及び120日経過後のアレルゲン活性を上述した方法で測定した。結果を表4に示した。
(実験例14〜20)
表3に示したように、実験例13と同様の手順で医薬含有組成物を得た。なお実験例14では魚ゼラチン(FGS−230、ニッピ社製)、実験例15では水溶性ゼラチン(豚)(CS、ニッピ社製)、実験例16では、酸処理豚ゼラチン(AP−200F、ニッピ社製)、実験例17ではアルカリ処理豚ゼラチン(BP−200F、ニッピ社製)、実験例18では豚骨ゼラチン(AEP、ニッピ社製)、実験例19では牛ゼラチン(CP−1045、ゼライス社製)、実験例20ではアルカリ処理牛ゼラチン(AD4、ニッピ社製)を用いた。
(比較実験例7)
890重量部の精製水に、スギ花粉抽出物乾燥粉末(LSL社製)0.1重量部を加え、室温で溶解させた。pH調整剤(水酸化ナトリウム)を用いて、pH=7.0に調整し、更に精製水を加えて全量を1000重量部とした。その後、速やかに凍結乾燥用バイアルに1.0gずつ分注し、凍結乾燥し医薬含有組成物を得た。得られた医薬含有組成物を40±2℃で保管し、7日経過後、14日経過後、30日経過後及び120日経過後のアレルゲン活性を上述した方法で測定した。結果を表4に示した。
(比較実験例8)
860重量部の精製水に、ポリエチレングリコール4000(PEG4000、和光純薬工業社製)10重量部を加え、超音波処理等を行なって溶解させた。溶解後は室温に戻した。別途20重量部の精製水にスギ花粉抽出物乾燥粉末(LSL社製)0.1重量部を加え、室温で溶解させた。そして先ほどの溶液に全量加え、速やかに混合した。pH調整剤(水酸化ナトリウム)を用いて、pH=7.0に調整し、更に精製水を加えて全量を1000重量部とした。その後、速やかに凍結乾燥用バイアルに1.0gずつ分注し、凍結乾燥し医薬含有組成物を得た。得られた医薬含有組成物を40±2℃で保管し、7日経過後、14日経過後、30日経過後及び120日経過後のアレルゲン活性を上述した方法で測定した。結果を表4に示した。
(比較実験例9〜11)
比較実験例8と同様の手順で医薬含有組成物を得た。比較実験例9ではポリエチレングリコール6000(PEG6000、和光純薬工業社製)、比較実験例10ではポリエチレングリコール20000(PEG20000、和光純薬工業社製)、比較実験例11ではマンニトール(ロケット社製)を用いた。
Figure 0005952634
Figure 0005952634
表4に示したように、医薬含有組成物の基材としてゼラチンを用いた実験例に係る医薬含有組成物は、アレルゲンの活性低下が余りみられなかった。また、どのゼラチンを用いてもスギ花粉アレルゲンを安定化できることが示された。なお、有機酸塩を含まないため、長期間(120日)経過すると若干アレルゲンの活性が低下した。
一方、他のアレルゲンやワクチン等を安定化できるとの報告があるポリエチレングリコールやマンニトールを基材として用いた医薬含有組成物は、スギ花粉アレルゲンに対して必ずしも有効でないことが示された。
(実験例21)
960重量部の精製水に、乳酸カルシウム(乳酸カルシウム水和物(顆粒)、太平化学産業社製)10重量部を加え、室温で溶解させた。別途20重量部の精製水にスギ花粉抽出物乾燥粉末(LSL社製)0.1重量部を加え、室温で溶解させた。そして、先ほどの溶液に全量加え、速やかに混合し医薬含有水溶液を得た。得られた医薬含有水溶液のpHを測定した。そして、当該医薬含有水溶液を凍結乾燥用バイアルに1.0gずつ分注し、凍結乾燥し医薬含有組成物を得た。得られた医薬含有組成物を40±2℃で保管し、7日経過後及び14日経過後のアレルゲン活性を測定した。結果を表6に示した。
(実験例22〜31、比較実験例12、13)
表5に示したように、実験例21と同様の手順で医薬含有組成物を得た。添加剤は、それぞれグリチルリチン酸二カリウム(和光純薬工業社製)、クエン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、リンゴ酸ナトリウム(DL−りんご酸二ナトリウムn水和物、和光純薬工業社製)、グルコン酸カルシウム(和光純薬工業社製)、コハク酸二ナトリウム(和光純薬工業社製)、酒石酸ナトリウムカリウム(酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、和光純薬工業社製)、酒石酸ナトリウム(L−酒石酸ナトリウム、和光純薬工業社製)、L−アスコルビン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(扶桑化学工業社製)、L−アスパラギン酸ナトリウム(協和発酵バイオ社製)、酒石酸水素カリウム(L−酒石酸水素カリウム、小松屋社製)、フマル酸一ナトリウム(モノフマール、日本触媒社製)を用いた。
Figure 0005952634
Figure 0005952634
表6に示したように、pH=5.0〜9.0(1重量%濃度の医薬含有水溶液)を示す有機酸塩が、高いアレルゲン安定性を示すことがわかった。その中でも乳酸カルシウム、グリチルリチン酸二カリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム及びL−アスパラギン酸ナトリウムが、高いアレルゲン安定性を示すことを見出した。
なお、スギ花粉アレルゲンの最も好ましいpH領域は6〜8であるが、高い安定性を示した有機酸塩が必ずしも最適pH領域でないことや、ほぼ同じpHであるにも関わらず、安定性が異なるものがあることがわかった。
以上のことから、有機酸塩のアレルゲン安定化効果は必ずしも水溶液のpHに依存するものではないことが示唆された。
(実施例1)
850重量部の精製水に、水溶性ゼラチン(魚)(CSF、ニッピ社製)10重量部及び乳酸カルシウム(乳酸カルシウム水和物(顆粒)、太平化学産業社製)5重量部を加え、30〜40℃の温度で溶解させゼラチン溶液を得た。溶解後は室温に戻し、ゲル化していないことを確認した。別途20重量部の精製水にスギ花粉抽出物乾燥粉末(LSL社製)0.1重量部を加え、室温で溶解させた。そして先ほどのゼラチン溶液に全量加え、速やかに混合し、再びゲル化していないことを確認した。pH調整剤(水酸化ナトリウム)を用いて、pH=7.0に調整し、更に精製水を加えて全量を1000重量部としアレルゲン含有ゼラチン水溶液を得た。その後、速やかに凍結乾燥用バイアルに1.0gずつ分注し、凍結乾燥し医薬組成物を得た。得られた医薬組成物を摘まんで使用上の適性を評価した。次に、5℃、25℃若しくは30℃の精製水を5.0g加え、医薬組成物の溶解する様子を室温で観察し、以下の基準で評価した。また別途、医薬組成物を40±2℃で保管し、30日経過後、60日経過後、90日経過後及び120日経過後のアレルゲン活性を測定した。結果を表8、9に示した。
◎:30秒以内に完全に溶解した
○:30秒〜1分程度で完全に溶解した
△:完全に溶解するまでに1分以上を要した
(実施例2〜11)
表7に示したように、実施例1と同様の手順で医薬組成物を得た。有機酸塩は、それぞれグリチルリチン酸二カリウム(和光純薬工業社製)、クエン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、リンゴ酸ナトリウム(DL−りんご酸二ナトリウムn水和物、和光純薬工業社製)、グルコン酸カルシウム(和光純薬工業社製)、コハク酸二ナトリウム(和光純薬工業社製)、酒石酸ナトリウムカリウム(酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、和光純薬工業社製)、酒石酸ナトリウム(L−酒石酸ナトリウム、和光純薬工業社製)、L−アスコルビン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(扶桑化学工業社製)、L−アスパラギン酸ナトリウム(協和発酵バイオ社製)を用いた。実施例1と同様の評価を行った。
(実施例12〜22)
表7に示したように、実施例1と同様の手順で医薬組成物を得た。ゼラチンは豚骨ゼラチン(AEP、ニッピ社製)、有機酸塩は、それぞれ乳酸カルシウム(乳酸カルシウム水和物(顆粒)、太平化学産業社製)、グリチルリチン酸二カリウム(和光純薬工業社製)、クエン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、リンゴ酸ナトリウム(DL−りんご酸二ナトリウムn水和物、和光純薬工業社製)、グルコン酸カルシウム(和光純薬工業社製)、コハク酸二ナトリウム(和光純薬工業社製)、酒石酸ナトリウムカリウム(酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、和光純薬工業社製)、酒石酸ナトリウム(L−酒石酸ナトリウム、和光純薬工業社製)、L−アスコルビン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(扶桑化学工業社製)、L−アスパラギン酸ナトリウム(協和発酵バイオ社製)を用いた。得られ医薬組成物について、実施例1と同様の評価を行った。なお、実施例14においては、pH調節剤として塩酸を用いてpHの調節を行った。
(比較例1)
869重量部の精製水に、水溶性ゼラチン(魚)(CSF、ニッピ社製)1重量部を加え、30〜40℃の温度で溶解させゼラチン溶液を得た。溶解後は室温に戻し、ゲル化していないことを確認した。別途20重量部の精製水にスギ花粉抽出物乾燥粉末(LSL社製)0.1重量部を加え、室温で溶解させた。そして先ほどのゼラチン溶液に全量加え、速やかに混合し、再びゲル化していないことを確認した。pH調整剤(水酸化ナトリウム)を用いて、pH=7.0に調整し、更に精製水を加えて全量を1000重量部としアレルゲン含有ゼラチン水溶液を得た。その後、速やかに凍結乾燥用バイアルに1.0gずつ分注し、凍結乾燥して医薬含有組成物を得た。得られた医薬含有組成物を摘まんで使用上の適性を評価した。結果を表8に示した。
(比較例2)
表7に示したように、比較例1と同様の手順で医薬含有組成物を得た。ゼラチンは豚骨ゼラチン(AEP、ニッピ社製)を用いた。得られた医薬含有組成物について、比較例1と同様の評価を行った。
Figure 0005952634
Figure 0005952634
Figure 0005952634
表8、9に示したように、実施例で得られた医薬組成物は、いずれも問題なく摘むことができ、使用上問題のないものであった。一方、比較例で得られた医薬組成物は非常に薄くて脆く使用上問題があった。なお、比較例で得られた医薬組成物は、製剤として使用することができないため、水への溶解性及び残存アレルゲン活性の評価は行なわなかった。
また、実施例で得られた医薬組成物の水への溶解性に関して、水を添加した場合は即座に医薬組成物が崩壊し、原型を留めなかった。5℃の水では医薬組成物が完全に溶解するまでに1分以上を要した。25℃の水では30秒〜1分程度で完全に溶解した。30℃の水では30秒以内に完全に溶解した。
また、保管安定性の結果、40℃で120日間保管した場合、アレルゲン含量が全く低下していなかった。
本発明の医薬組成物は、アレルゲンに加えてゼラチン及び有機酸塩を含むため、該アレルゲンの貯蔵及び伝達の際に保管安定性に優れたものとなる。
また、本発明の製造方法によれば、非常に熱安定性が悪いことが知られているアレルゲンを製造中においても安定的に維持することができ、更に、得られた医薬組成物においても保管安定性に優れたものとすることができる。

Claims (4)

  1. アレルゲン、ゼラチン及び有機酸塩を含み、
    前記有機酸塩は、乳酸塩類、酒石酸塩類、クエン酸塩類、リンゴ酸塩類、コハク酸塩類、グルコン酸塩類、L−アスコルビン酸塩類、L−アスパラギン酸塩類、及び、グリチルリチン酸塩類からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記アレルゲンは、スギ花粉アレルゲンタンパク質である
    ことを特徴とする医薬組成物。
  2. 水を含まないことを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
  3. アレルゲン、ゼラチン及び有機酸塩を水に溶解させたアレルゲン含有ゼラチン水溶液を得る工程、
    前記アレルゲン含有ゼラチン水溶液を、凍結乾燥させる工程を含み、
    前記有機酸塩は、乳酸塩類、酒石酸塩類、クエン酸塩類、リンゴ酸塩類、コハク酸塩類、グルコン酸塩類、L−アスコルビン酸塩類、L−アスパラギン酸塩類、及び、グリチルリチン酸塩類からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記アレルゲンは、スギ花粉アレルゲンタンパク質である
    ことを特徴とする医薬組成物の製造方法。
  4. アレルゲン含有ゼラチン水溶液のpHが5.0〜9.0の範囲内にある請求項記載の医薬組成物の製造方法。
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