JP2011225165A - 衝撃吸収材及び衝撃吸収材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】材料費や製造工数の増加を抑制しつつ、衝突初期における衝撃吸収材の大きな割れや飛散を抑制する。
【解決手段】硬質ポリウレタンフォームからなる立体構造とされ、衝突体12の衝突時の衝撃を受ける衝突面14と、衝突方向Hにおいて衝突面14の反対側に位置する底面16と、衝突面14と底面16とを連結する側面18と、該側面18に形成され、衝突方向Hと交差する方向に延在する階段状の段差部20と、を有している。衝突体12の衝突面14への衝突時に、側面18の段差部20を起点とする比較的小さな割れ78を発生させる。
【選択図】図8
【解決手段】硬質ポリウレタンフォームからなる立体構造とされ、衝突体12の衝突時の衝撃を受ける衝突面14と、衝突方向Hにおいて衝突面14の反対側に位置する底面16と、衝突面14と底面16とを連結する側面18と、該側面18に形成され、衝突方向Hと交差する方向に延在する階段状の段差部20と、を有している。衝突体12の衝突面14への衝突時に、側面18の段差部20を起点とする比較的小さな割れ78を発生させる。
【選択図】図8
Description
本発明は、衝撃吸収材に係り、特に車両の衝突時等に車室内の乗員の体に加えられる衝撃エネルギーを吸収し、該乗員の傷害値を低減するための衝撃吸収材及び衝撃吸収材の製造方法に関する。
従来、車両の衝突時等において、乗員の体が車室の内装材(インストルメントパネル、ドアトリム、天井等)に衝突した際の衝撃を吸収して該乗員を保護するために、車室の内装材と車体との間に、衝撃吸収材を設けることが行われている。
この衝撃吸収材として、硬質ポリウレタンフォーム製のものが開示されている(特許文献1参照)。この衝撃吸収材は、硬質ポリウレタンフォームと、サポータ層とが一体とされたものであり、硬質ポリウレタンフォームが割れた場合でも、サポータ層によって硬質ポリウレタンフォームが繋がってバラバラにならない。この結果、硬質ポリウレタンフォームが衝突初期において飛散せず所定の場所に位置するため、設計通り、エネルギー吸収特性が十分に発揮されるようになっている。
しかしながら、上記した従来例では、サポータ層を設けることによる材料費や製造工数の増加が発生するため、この点において改良が求められている。
本発明は、上記事実を考慮して、材料費や製造工数の増加を抑制しつつ、衝突初期における衝撃吸収材の大きな割れや飛散を抑制することを目的とする。
請求項1の発明は、硬質ポリウレタンフォームからなる立体構造とされ、衝突体の衝突時の衝撃を受ける衝突面と、衝突方向において前記衝突面の反対側に位置する底面と、前記衝突面と前記底面とを連結する側面と、前記側面に形成され、前記衝突方向と交差する方向に延在する階段状の段差部と、を有している。
請求項1に記載の衝撃吸収材では、側面に階段状の段差部が形成されているので、衝突体の衝突面への衝突時に、側面の段差部を起点として、該段差部を有しない従来構造と比較して小さな割れ(破壊)が発生する。このような比較的小さな割れを発生させることで、材料費や製造工数の増加を抑制しつつ、衝突体が衝突面に衝突した際の衝突初期における、衝撃吸収材の大きな割れや飛散を抑制することができる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の衝撃吸収材において、前記衝突面は、前記底面より小さく、該衝突面の真上から見て、該衝突面の輪郭が前記底面の輪郭の内側にある。
請求項2に記載の衝撃吸収材では、衝突面が底面より小さく、該衝突面の真上から見て、該衝突面の輪郭が底面の輪郭の内側にあるため、衝撃吸収材の衝突方向に対して斜め方向から衝撃が加わった場合にも、衝突初期から衝突末期まで、衝撃吸収材が、衝突面から底面に向かって軸圧縮変形する。このため、衝突初期から衝突末期まで、衝撃エネルギーを安定して吸収することができる。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の衝撃吸収材において、各々の前記段差部について、前記衝突方向における高さをhとし、幅をwとすると、縦横比h/wが2〜20である。
ここで、縦横比h/wの上限を20としたのは、これを上回ると、衝突体の衝突面への衝突時に、衝撃吸収材の側面に比較的小さな割れを発生させることができなくなるからである。また縦横比h/wの下限を2としたのは、これを下回ると、衝撃吸収材の体積の減少により、吸収可能な衝突エネルギーが少なくなるからである。
請求項3に記載の衝撃吸収材では、段差部の縦横比h/wを適切に設定しているので、衝突体が衝突面に衝突した際の衝突初期における、衝撃吸収材の大きな割れや飛散を抑制しつつ、より多くの衝突エネルギーを吸収することができる。
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の衝撃吸収材において、前記段差部は、前記衝突面から前記底面までの前記側面に3段以上形成されている。
ここで、衝突面から底面までの側面における段差部の段数を3段以上としたのは、これを下回ると、衝突体の衝突面への衝突時における、比較的小さな割れの発生箇所が少なくなり、衝撃吸収材の大きな割れや飛散を抑制することが難しくなるからである。
請求項4に記載の衝撃吸収材では、段差部の段数を適切に設定しているので、側面に比較的小さな割れを均等に発生させることができる。このため、衝突初期における衝撃吸収材の大きな割れや飛散を、より一層抑制することができる。
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の衝撃吸収材の製造方法であって、離型フィルムを予め真空成形して、前記衝突面、前記側面及び前記段差部に対応する形状を有する凹部を形成しておき、前記離型フィルムの前記凹部を下型内に設置し、前記下型に上型を接合することで前記離型フィルムの前記凹部と前記上型との間にキャビティを形成し、該キャビティ内に硬質ポリウレタンの発泡原料を注入し、発泡及び膨張させ、該膨張が終了してから前記上型を開き、成形品となった前記衝撃吸収材を前記離型フィルムから剥離させて取り出す衝撃吸収材の製造方法である。
請求項5に記載の衝撃吸収材の製造方法では、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の衝撃吸収材を製造するに際し、離型フィルムを予め真空成形して、衝突面、側面及び段差部に対応する形状を有する凹部を形成しておき、該離型フィルムの凹部を下型内に設置し、該凹部と上型との間に形成されるキャビティ内で硬質ポリウレタンの発泡原料を発泡及び膨張させるので、段差部による脱型の困難性を容易に回避できる。また必ずしも段差部に対応する形状を下型に形成しておく必要がない。段差部に対応する形状を離型フィルムに形成することは容易であり、このため、金型の加工コストを低減することができる。
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の衝撃吸収材によれば、材料費や製造工数の増加を抑制しつつ、衝突初期における衝撃吸収材の大きな割れや飛散を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
請求項2に記載の衝撃吸収材によれば、衝突初期から衝突末期まで、衝撃エネルギーを安定して吸収することができる、という優れた効果が得られる。
請求項3に記載の衝撃吸収材によれば、衝突体が衝突面に衝突した際の衝突初期における、衝撃吸収材の大きな割れや飛散を抑制しつつ、より多くの衝突エネルギーを吸収することができる、という優れた効果が得られる。
請求項4に記載の衝撃吸収材によれば、衝突初期における衝撃吸収材の大きな割れや飛散を、より一層抑制することができる、という優れた効果が得られる。
請求項5に記載の衝撃吸収材の製造方法によれば、段差部に対応する形状を離型フィルムに容易に形成して、衝撃吸収材の製造時における脱型のし難さを回避することができる、という優れた効果が得られる。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る衝撃吸収材10は、硬質ポリウレタンフォームからなる立体構造とされ、衝突体12(図8)の衝突方向をHとし、該衝突方向と交差する方向を幅方向Wとしている。この衝撃吸収材10は、衝突面14と、底面16と、側面18と、段差部20とを有している。硬質ポリウレタンフォームは、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを主成分とし、これらを発泡・膨張させることで成形される。
衝突面14は、衝突体12において、衝突時の衝撃を受ける、例えば矩形の面である。底面16は、衝撃吸収材10の衝突方向Hにおいて衝突面14の反対側に位置する、例えば矩形の面である。衝突面14は、底面16より小さく、該衝突面14の真上から見て、該衝突面14の輪郭が底面16の輪郭の内側にあるように設定されている。
側面18は、衝突面14と底面16とを連結し、衝撃吸収材10の幅方向Wにおいて互いに反対側に位置するように対に形成され、衝撃吸収材10に複数対設けられている。図示の例では、側面18は2対、即ち4面設けられている。
段差部20は、少なくとも一対の側面18に階段状に形成されており、本実施形態では二対の側面18(すべての側面18)に形成されている。また段差部20は、衝突面14から底面16までの各側面18の例えば全面にわたって、3段以上形成され、図示の例では5段形成されている。各段差部20は、側面18の全周にわたって連続的に形成されている。ここで、衝突面14から底面16までの側面18の全面における段差部20の段数を3段以上としたのは、これを下回ると、衝突体12の衝突面14への衝突時における、比較的小さな割れの発生箇所が少なくなり、衝撃吸収材10の大きな割れや飛散を抑制することが難しくなるからである。また段差部20の段数は、3段/cm以下とすることが望ましい。これを上回ると、成形性が阻害されるからである。なお、段差部20の隅部21は割れの起点となることから、該隅部の半径はなるべく小さく、例えば0.5mm程度とすることが望ましい。
図2において、各々の段差部20についての衝突方向Hにおける高さをhとし幅方向Wにおける幅をwとすると、縦横比h/wは、2〜20である。ここで、縦横比h/wの上限を20としたのは、これを上回ると、衝突体12の衝突面14への衝突時に、衝撃吸収材10の側面18に比較的小さな割れを発生させることができなくなるからである。また縦横比h/wの下限を2としたのは、これを下回ると、衝撃吸収材10の体積の減少により、吸収可能な衝突エネルギーが少なくなるからである。
なお衝撃吸収材10の全体形状は、図示される四角錘台形に限られるものではなく、円錐台形や円筒形等であってもよい。従って、衝突面14及び底面16は矩形に限られず、矩形以外の多角形の他、円形や楕円形であってもよい。また側面18も平面上のものに限られず、曲面であってもよい。幅方向に互いに反対側に位置する側面18が複数対ある場合には、少なくとも一対の側面18に溝20を形成することが、効率的にエネルギー吸収する観点から好ましい。
(衝撃吸収材の第1製造方法)
図3,図4において、本実施形態に係る衝撃吸収材の第1製造方法では、金型22における例えば下型24のキャビティ26に、衝撃吸収材10の衝突面14に対応する形状34と、該衝撃吸収材10の側面18に対応する形状38と、該衝撃吸収材10の段差部20に対応する形状40とを夫々形成しておく。下型24の底部には、箱状の空気室30が設けられている。この空気室30には、圧力調整バルブ32を介装するエアー管36の一端が接続され、該エアー管36の他端は圧縮空気供給源42と連結されている。この空気室30と下型24のキャビティ26とは、複数のエアー連通孔(空気穴)44によって連通している。
図3,図4において、本実施形態に係る衝撃吸収材の第1製造方法では、金型22における例えば下型24のキャビティ26に、衝撃吸収材10の衝突面14に対応する形状34と、該衝撃吸収材10の側面18に対応する形状38と、該衝撃吸収材10の段差部20に対応する形状40とを夫々形成しておく。下型24の底部には、箱状の空気室30が設けられている。この空気室30には、圧力調整バルブ32を介装するエアー管36の一端が接続され、該エアー管36の他端は圧縮空気供給源42と連結されている。この空気室30と下型24のキャビティ26とは、複数のエアー連通孔(空気穴)44によって連通している。
衝撃吸収材10を製造する際には、図3に示されるように、下型24上に上型28を接合して、予め離型剤(図示せず)が塗布されたキャビティ26内に硬質ポリウレタンの発泡原料(図示せず)を注入し、発泡及び膨張させる。発泡原料の膨張が終了してから上型28を開き、圧力調整バルブ32を開き、圧縮空気供給源42から空気室30内に圧縮空気を供給し、該空気室30からエアー連通孔44を通じてキャビティ26内に矢印A方向に圧縮空気を供給する。成形品となった衝撃吸収材10は、この圧縮空気の圧力により矢印B方向に押し出され、脱型される。
なお、エアー連通孔44から圧縮空気を噴出する代わりに、イジェクターピン等の押出し用部材(図示せず)を用いて、成形品となった衝撃吸収材10を金型22から脱型するようにしてもよい。また圧縮空気と押出し用部材を併用してもよい。
下型24における、衝撃吸収材10の側面18に対応する形状38には、型抜き性を高めるための抜き勾配を、例えば3〜5°設けることが望ましい。
(衝撃吸収材の第2製造方法)
図5,図6において、本実施形態に係る衝撃吸収材の第2製造方法では、離型フィルムの一例たるポリプロピレンのフィルム46を予め真空成形して、衝突面14に対応する形状34と、該衝撃吸収材10の側面18に対応する形状38と、該衝撃吸収材10の段差部20に対応する形状40とを有する凹部48を形成しておく。ポリプロピレンは、硬質ポリウレタンフォームや金型22に対する離型性に優れ、かつ繰り返し使用できるので、フィルム46の材料として好適である。真空成形法は公知の方法を採用し得る。本実施形態の場合、ポリプロピレンのフィルム46を180〜200℃、15〜20秒間程度加熱したものを真空成形することが好ましい。
図5,図6において、本実施形態に係る衝撃吸収材の第2製造方法では、離型フィルムの一例たるポリプロピレンのフィルム46を予め真空成形して、衝突面14に対応する形状34と、該衝撃吸収材10の側面18に対応する形状38と、該衝撃吸収材10の段差部20に対応する形状40とを有する凹部48を形成しておく。ポリプロピレンは、硬質ポリウレタンフォームや金型22に対する離型性に優れ、かつ繰り返し使用できるので、フィルム46の材料として好適である。真空成形法は公知の方法を採用し得る。本実施形態の場合、ポリプロピレンのフィルム46を180〜200℃、15〜20秒間程度加熱したものを真空成形することが好ましい。
このフィルム46の厚さは、0.3〜1.0mm、特に0.3〜0.6mmであることが好適である。0.3mmよりも薄いと十分な強度が維持できず、成形時にフィルム46が破損する場合がある。一方、1.0mmよりも厚くなると、製品寸法誤差が大きくなり、金型22を大きめに作らざるを得ない問題が生じ、脱型時のフィルム46の変形が起こり難くなり、また、成形品の形状によって複雑なものはフィルム46と硬質ポリウレタンとが分離し難くなる場合が起きる。
本製造方法では、フィルム46の凹部48を下型24内に設置し、下型24に上型28を接合することでフィルム46の凹部48と上型28との間にキャビティ56を形成する。下型24は、硬質ポリウレタンの発泡時にフィルム46の変形を抑制するように凹部48を支持可能な形状であればよい。この下型24の底部には、箱状の空気室30が設けられている。この空気室30には、圧力調整バルブ32を介装するエアー管36の一端が接続され、該エアー管36の他端は圧縮空気導入・吸引装置52と連結されている。この空気室30と下型24内とは、複数のエアー連通孔(空気穴)44によって連通している。
衝撃吸収材10を製造する際には、図5に示されるように、キャビティ56内に硬質ポリウレタンの発泡原料(図示せず)を注入し、発泡及び膨張させる。発泡原料の膨張が終了してから上型28を開き、圧縮空気導入・吸引装置52から空気室30内に圧縮空気を供給し、該空気室30からエアー連通孔44を通じて下型24内に矢印A方向に圧縮空気を供給する。フィルム46が該圧縮空気の圧力により矢印B方向に押し出されて反転することで、成形品となった衝撃吸収材10が該フィルム46から剥離して脱型される。
脱型後、圧縮空気導入・吸引装置52により下型24内の空気を吸引することで、フィルム46の凹部48が下型24内に再配置される。従って、1つのフィルム46を繰り返し用いて、衝撃吸収材10を次々と製造することができる。
本製造方法によれば、ポリプロピレンのフィルム46を予め真空成形して、衝突面14に対応する形状34と、該衝撃吸収材10の側面18に対応する形状38と、該衝撃吸収材10の段差部20に対応する形状40とを有する凹部48を形成しておくことで、第1製造方法と異なり、必ずしもこれらの形状を下型24に形成しておく必要がない。また段差部20による脱型の困難性を容易に回避できる。この段差部20に対応する形状をフィルム46に形成することは容易であり、このため、金型22の加工コストを低減することができる。
なお、成形品となった衝撃吸収材10の脱型時にフィルム46が反転するので、衝撃吸収材10の側面18に対応する形状38に、型抜き性を高めるための抜き勾配を設けないようにしてもよい。
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図7において、本実施形態に係る衝撃吸収材10は、例えば車両60の座席62に着座した乗員64の膝部66に対応して、該膝部66の車両前方に位置するインストルメントパネル68の内側(車室内側と反対側)に配置される。
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図7において、本実施形態に係る衝撃吸収材10は、例えば車両60の座席62に着座した乗員64の膝部66に対応して、該膝部66の車両前方に位置するインストルメントパネル68の内側(車室内側と反対側)に配置される。
具体的には、インストルメントパネル68は、車室70に設けられた座席62の車両前方に配設されている。インストルメントパネル68内には、インパネリインフォースメント72が設けられている。このインパネリインフォースメント72は、例えば高張力鋼を用いた高強度かつ高剛性のパイプ状部材とされており、車体の左右の取付け部(図示せず)に夫々固定され、車幅方向に沿って配置されている。
インパネリインフォースメント72には、ブラケット74が、例えば溶接により固定されている。このブラケット74は、例えば高張力鋼を用いた高強度かつ高剛性の棒材等により構成されている。またブラケット74は、インパネリインフォースメント72から、インストルメントパネル68のうち乗員64の膝部66の車両前方に位置する部位に向けて延びている。なお、この膝部66が衝突するインストルメントパネル68の部位は、衝突実験用のダミー人形を基準にして定められる。
ブラケット74の後端には、例えば高張力鋼を用いた高強度かつ高剛性の取付け板76が接合されている。この取付け板76は、ブラケット74の延在方向に対して例えば垂直に接合されている。衝撃吸収材10は、該取付け板76の車両後方面に接着等により取り付けられている。そして衝撃吸収材10の衝突面14は、インストルメントパネル68の内面に当接又は近接して配置されている。
従って、車両60が前面衝突し、座席62に着座している乗員64が、二点鎖線で示されるように慣性により車両前方に移動して、該乗員64の膝部66がインストルメントパネル68に衝突すると、該インストルメントパネル68を介して衝撃吸収材10の衝突面14に衝突荷重(衝撃)が入力される。
図8は、上記した膝部66及びインストルメントパネル68を衝突体12として一般化し、該衝突体12が衝撃吸収材10の衝突面14に衝突し、側面16に段差部20の隅部21を起点とした小さな割れ78が生じた状態を示す断面図である。このように、衝撃吸収材10には、少なくとも一対の側面18に階段状の段差部20が形成されているので、衝突体12の衝突面14への衝突時に、該段差部20の隅部21を起点として、該段差部20を有しない従来構造と比較して小さな割れ78(破壊)が発生する。
このような比較的小さな割れを発生させることで、材料費や製造工数の増加を抑制しつつ、衝突体12が衝突面14に衝突した際の衝突初期における、衝撃吸収材10の大きな割れや飛散を抑制できる。そして該衝撃吸収材10が衝突方向Hに軸圧縮変形することで、より多くの衝突エネルギーを吸収して、乗員64の傷害値を低減することができる。また、図2において、段差部20の縦横比h/wを適切に設定し、かつ段差部20の段数を適切に設定しているので、より割れ78を安定して発生させると共に、該割れ78が過大となることを抑制できる。
更に衝撃吸収材10では、衝突面14が底面16より小さく、該衝突面14の真上から見て、該衝突面14の輪郭が底面16の輪郭の内側にあるため、衝撃吸収材10の衝突方向Hに対して斜め方向から衝撃が加わった場合にも、衝突初期から衝突末期まで、衝撃吸収材10が、衝突面14から底面16に向かって、より安定的に軸圧縮変形する。このため、衝突初期から衝突末期まで、衝撃エネルギーを安定して吸収することができる。
なお、図7では、衝撃吸収材10が乗員64の膝部66に対応してインストルメントパネル68内に配設されるものとしたが、衝撃吸収材10の用途は膝部66用には限られず、乗員64の頭部80の保護用として、車両60のルーフ82内に設けたり、側面衝突を考慮して、サイドドア等の車両側部内に設けたりすることも可能である。
(試験例)
図9は、段差部を有する本発明の実施例と、該段差部を有しない従来例についての、衝撃吸収材の軸圧縮変形時の変位と荷重との関係を比較した線図である。各々の線と横軸とで囲まれた領域の面積が、衝突エネルギーの吸収量を意味している。図9の線図に係る試験条件は、次の通りである。
図9は、段差部を有する本発明の実施例と、該段差部を有しない従来例についての、衝撃吸収材の軸圧縮変形時の変位と荷重との関係を比較した線図である。各々の線と横軸とで囲まれた領域の面積が、衝突エネルギーの吸収量を意味している。図9の線図に係る試験条件は、次の通りである。
直径100mm(半径50mm)のアルミニウムの半球を衝突体として用い、該衝突体の外周面を衝撃吸収材の衝突面に対して、6.7m/sの速度で衝突させ、該衝撃吸収材が軸圧縮変形した際の変位と荷重の関係を測定した。衝撃吸収材における衝突面及び底面の形状は何れも矩形であり、衝撃吸収材の幅方向において互いに反対側に位置する側面は2対となっている。また該衝撃吸収材において、底面は70mm×120mmの縦長形状であり、衝突方向の高さ(衝突面から底面までの距離)は110mm、段差部の高さhは10mm、幅wは1mm(縦横比h/wが10)、そして段差部の段数は11である。この段差部は、2対の側面、即ちすべての側面に形成されている。従来品と実施例とは、底面と衝突面の面積、及び両者の位置関係が同じで、略同一体積である。
この図によれば、変位が約0.045〜0.105mの範囲において、実施例の荷重が従来例を上回り、かつピーク荷重は従来例よりも低くなっている。従って、実施例では、軸圧縮変形の過程において、比較的高い荷重を維持して、衝突エネルギーを効率的に吸収でき、かつ底付き等による荷重の急激な上昇を抑制できることがわかる。
次に、図10は、衝撃吸収材における変位と荷重との関係を、段差部の幅の大小(1mmと10mm)で比較して示す線図である。図10の線図に係る試験条件は、次の通りである。
直径200mm(半径100mm)、高さが140mmのアルミニウムの半円柱体を衝突体として用い、該衝突体の外周面を衝撃吸収材の衝突面に対して、6.0m/sの速度で衝突させ、該衝撃吸収材が軸圧縮変形した際の変位と荷重の関係を測定した。衝撃吸収材における衝突面及び底面の形状は何れも矩形であり、衝撃吸収材の幅方向において互いに反対側に位置する側面は2対となっている。また該衝撃吸収材において、衝突面の面積は130cm2(114mm×114mm)、底面の面積は144cm2(120mm×120mm)であり、衝突方向の高さ(衝突面から底面までの距離)は70mm、段差部の高さhは10mm、幅wは1mmと10mm(縦横比h/wが10のタイプと1のタイプ)の2種類、そして段差部の段数は7である。この段差部は、2対の側面、即ちすべての側面(4面)に形成されている。段差部の幅wが異なる2種類の衝撃吸収材において、底面と衝突面の面積、及び両者の位置関係は同じで、略同一体積である。
この図によれば、衝撃吸収材の高さ、底面の面積及び段差部の段数を一定とした場合、軸圧縮変形の過程における荷重が小さくなり、変位のストロークが大きくなり、更にピーク荷重が大きくなっている。これは、段差部の幅が大きい(10mm)と衝突面の面積が少なくなってしまうためと考えられる。これに対し、段差部の幅を適正(1mm)とした場合には、軸圧縮変形の過程において比較的高い荷重を維持して、衝突エネルギーを効率的に吸収でき、かつ底付き等による荷重の急激な上昇を抑制できることがわかる。
10 衝撃吸収材
12 衝突体
14 衝突面
16 底面
18 側面
20 段差部
22 金型
24 下型
28 上型
34 衝突面に対応する形状
38 側面に対応する形状
40 段差部に対応する形状
46 フィルム(離型フィルム)
48 凹部
56 キャビティ
H 衝突方向
W 幅方向
12 衝突体
14 衝突面
16 底面
18 側面
20 段差部
22 金型
24 下型
28 上型
34 衝突面に対応する形状
38 側面に対応する形状
40 段差部に対応する形状
46 フィルム(離型フィルム)
48 凹部
56 キャビティ
H 衝突方向
W 幅方向
Claims (5)
- 硬質ポリウレタンフォームからなる立体構造とされ、
衝突体の衝突時の衝撃を受ける衝突面と、
衝突方向において前記衝突面の反対側に位置する底面と、
前記衝突面と前記底面とを連結する側面と、
前記側面に形成され、前記衝突方向と交差する方向に延在する階段状の段差部と、
を有する衝撃吸収材。 - 前記衝突面は、前記底面より小さく、該衝突面の真上から見て、該衝突面の輪郭が前記底面の輪郭の内側にある請求項1に記載の衝撃吸収材。
- 各々の前記段差部について、前記衝突方向における高さをhとし、幅をwとすると、縦横比h/wが2〜20である請求項1又は請求項2に記載の衝撃吸収材。
- 前記段差部は、前記衝突面から前記底面までの前記側面に3段以上形成されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の衝撃吸収材。
- 請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の衝撃吸収材の製造方法であって、
離型フィルムを予め真空成形して、前記衝突面、前記側面及び前記段差部に対応する形状を有する凹部を形成しておき、
前記離型フィルムの前記凹部を下型内に設置し、前記下型に上型を接合することで前記離型フィルムの前記凹部と前記上型との間にキャビティを形成し、
該キャビティ内に硬質ポリウレタンの発泡原料を注入し、発泡及び膨張させ、
該膨張が終了してから前記上型を開き、成形品となった前記衝撃吸収材を前記離型フィルムから剥離させて取り出す衝撃吸収材の製造方法。
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