JP2011222472A - リチウムイオン二次電池用炭素材、リチウムイオン二次電池用負極材およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】充電容量、放電容量の高いリチウムイオン電池を提供できる炭素材を提供する
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材は、広角X線回折法により求まる(002)面の平均面間隔dが3.40Å以上、3.90Å以下であり、c軸方向の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下となる非晶質構造を有し、かつ(002)面の面間隔dが3.25Å以上、3.40Å未満となる黒鉛構造を有するリチウムイオン二次電池用炭素材である。
【選択図】 図2
Description
このような炭素材料には黒鉛などの結晶性の高い材料と、ハードカーボンと呼ばれる非晶質炭素材料がある。黒鉛などの結晶性の高い材料は、不可逆容量が小さく、充放電効率が高いという長所がある反面、充電容量、放電容量に限界があり、高容量化が困難であるという課題があり、一方、非晶質炭素材料では、充電容量、放電容量が高いものの、不可逆容量が大きく、充放電効率が低いという課題があるため、これまで、結晶性と非晶性の両方の性質を具備する材料が検討されてきた。
たとえば、特許文献1では、汎用の広角X線回折装置を使用して測定した回折ピークで面間隔を評価し、さらにはラマンスペクトルで炭素材料における炭素の六角網面(すなわち結晶部分)の積層構造と、非晶質炭素成分等の比率を評価した技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、広角X線回折により非晶質材料に含まれる黒鉛の結晶構造は見出せず、また、本発明の高い充電容量、放電容量と、優れた充放電効率を並立し得る、非晶質/結晶質が並存するための技術は開示されていない。
(A)光源:シンクロトロン放射光
(B)大型デバイシェラーカメラ、カメラ半径:286.48mm
(C)ビームサイズ:縦0.3mm×横3.0mm
(D)検出器:イメージングプレート(50μm=0.01°)
(E)入射X線:波長1.0Å(12.4keV)
窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が15m2/g以下、1m2/g以上であるリチウムイオン二次電池用炭素材。
炭素原子を95wt%以上含み、かつ、炭素原子以外の元素として、窒素原子を0.5wt%以上、5wt%以下含むものであるリチウムイオン二次電池用炭素材。
(リチウムイオン二次電池用炭素材)
はじめに、本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材(以下、炭素材という場合もある)の概要について説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材は、
以下の条件(A)〜(E)のもと、広角X線回折法により求まる(002)面の平均面間隔dが3.40Å以上、3.90Å以下であり、c軸方向の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下となる非晶質構造を有し、かつ(002)面の面間隔dが3.25Å以上、3.40Å未満となる黒鉛構造を有するリチウムイオン二次電池用炭素材。
(A)光源:シンクロトロン放射光
(B)大型デバイシェラーカメラ、カメラ半径:286.48mm
(C)ビームサイズ:縦0.3mm×横3.0mm
(D)検出器:イメージングプレート(50μm=0.01°)
(E)入射X線:波長1.0Å(12.4keV)
リチウムイオン二次電池用炭素材に用いられる原料あるいは前駆体は特に限定されるものではないが、エチレン製造時に副生する石油系のタールおよびピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分やピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチのような石油系又は石炭系のタール若しくはピッチ、さらには前記タール、ピッチ等を架橋処理したものや、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂または樹脂組成物を炭化処理することにより得られるものが好適であり、特に後述する樹脂あるいは、樹脂組成物が好ましい。ただし、前記石油、石炭等から得られるタール、ピッチ、あるいはそれらの架橋処理を行ったものも、本発明では広義の樹脂あるいは樹脂組成物に含まれ、これらは単独あるいは二種類以上を併用することができる。
また、後述するように、樹脂組成物は、上記樹脂を主成分とするとともに、硬化剤、添加剤などを併せて含有することができる。
そして、熱硬化性樹脂の中でも、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、及び、アニリン樹脂、およびこれらの変性物から選ばれるものであることが好ましい。これにより、炭素材の設計の自由度が広がり、低価格で製造することができる。
ここで用いられる硬化剤としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合はヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂、ポリアセタール、パラホルムなどを用いることができる。また、エポキシ樹脂の場合は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどのポリアミン化合物、酸無水物、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、ノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノール型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂など、エポキシ樹脂にて公知の硬化剤を用いることができる。
なお、通常は所定量の硬化剤を併用する熱硬化性樹脂であっても、本発明で用いられる樹脂組成物においては、通常よりも少ない量を用いたり、あるいは硬化剤を併用しないで用いたりすることもできる。
ここで用いられる添加剤としては特に限定されないが、例えば、200〜800℃にて炭化処理した炭素材前駆体、有機酸、無機酸、含窒素化合物、含酸素化合物、芳香族化合物、及び、非鉄金属元素などを挙げることができる。
上記添加剤は、用いる樹脂の種類や性状などにより、単独あるいは二種類以上を併用することができる。
熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、シアネート樹脂、ウレタン樹脂のほか、アミンなどの含窒素成分で変性されたフェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタルアミドなどが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
上記含窒素化合物としては、主成分樹脂に含窒素樹脂類を含む場合であっても含まない場合であっても、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
このような樹脂組成物あるいは樹脂の炭化処理を行うことにより、最終的に得られる炭素材中の炭素原子含有量が95wt%以上であり、窒素原子含有量が0.5〜5wt%であることが好ましい。
このように窒素原子を0.5wt%以上、特に1.0wt%以上含有することで、窒素の有する電気陰性度により、炭素材に好適な電気的特性を付与することができる。これにより、リチウムイオンの吸蔵・放出を促進させ、高い充放電特性を付与することができる。
たとえば、上述したような窒素含有量である炭素材を得る方法としては、樹脂組成物あるいは樹脂中の窒素含有量を所定値として、これを炭化処理する際の条件、特に、最終温度を調整する方法があげられる。
本方法は、測定試料を、燃焼法を用いて単純なガス(CO2、H2O、及びN2)に変換した後に、ガス化した試料を均質化した上でカラムを通過させるものである。これにより、これらのガスが段階的に分離され、それぞれの熱伝導率から、炭素、水素、及び窒素の含有量を測定することができる。
なお、本発明では、パーキンエルマー社製・元素分析測定装置「PE2400」を用いて実施した。
(A)光源:シンクロトロン放射光
(B)大型デバイシェラーカメラ、カメラ半径:286.48mm
(C)ビームサイズ:縦0.3mm×横3.0mm
(D)検出器:イメージングプレート(50μm=0.01°)
(E)入射X線:波長1.0Å(12.4keV)
なお、(002)面の面間隔dは、回折角(スペクトルの反射角度)θを、放物線近似法、すなわちピークトップ近傍の任意の数点を通る放物線を最小二乗法にて導出し、その頂点をピークトップとする方法にて決定し、下記Bragg式を用いて算出する。
λ=2dhklsinθ Bragg式 (dhkl=d002)
λ:入射X線波長
θ:スペクトルの反射角度
本発明の炭素材は、(002)面の平均面間隔dが3.40Å以上、3.90Å以下であり、c軸方向の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下となる、となる非晶質構造を有し、かつ(002)面の面間隔dが3.25Å以上、3.40Å未満となる黒鉛構造を有する、という特徴を有する材料であることで、リチウムが出入りしやすいサイズの平均面間隔を有する非晶質構造をしているため、充電容量および放電容量を高めることができ、かつ非晶質構造中に黒鉛構造を持つことで、リチウムイオンの吸蔵・脱離が円滑に行われるため、高い充電容量および放電容量を持ちながら充放電効率を高めることができる。
広角X線回折法は炭素材料の構造を解析する技術として周知のものであるが、本発明における、高輝度光科学研究センターのSPring−8によるシンクロトロン放射光を使用した広角X線回折法では、極めて高い分解能を有する測定方法を使用することで、従来わからなかった、非晶質炭素中に存在する、黒鉛構造を特定することができたものであり、本発明者らはこの技術に基づき、本発明の主眼である、充放電効率が高く、かつ、高い充電容量、放電容量を実現し得る材料の開発に到達し得たものである。
一方で、前記(002)面の平均面間隔dが、特に3.80Å以下である場合にはリチウムイオンの吸蔵・脱離が円滑に行われ、充放電効率の低下をより抑制できるので好ましい。
さらに、本発明の炭素材は、c軸方向((002)面直交方向)の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下であることが好ましい。
Lcを8Å以上、特に9Å以上とすることでリチウムイオンを吸蔵・脱離することができる炭素層間スペースが形成され、十分な充放電容量が得られるという効果があり、50Å以下、特に15Å以下とすることでリチウムイオンの吸蔵・脱離による炭素積層構造の崩壊や、電解液の還元分解を抑制し、充放電効率と充放電サイクル性の低下を抑制できるという効果がある。
Lcは以下のようにして算出される。
広角X線回折測定から求められるスペクトルにおける非晶質構造の(002)面ピークの半値幅と回折角(スペクトルの反射角度)から次のScherrerの式を用いて決定した。
Lc=0.94 λ /(βcosθ) ( Scherrerの式)
Lc:結晶子の大きさ
λ:入射X線波長
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:スペクトルの反射角度
窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が15m2/g以下であることで、炭素材と電解液との反応を抑制できる。
また、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積を1m2/g以上とすることで電解液の炭素材への適切な浸透性が得られるという効果がある。
比表面積の算出方法は以下の通りである。
下記(1)式より単分子吸着量Wmを算出し、下記(2)式より総表面積Stotalを算出し、下記(3)式より比表面積Sを求めた。
1/[W(Po/P−1)=(C−1)/WmC(P/Po)/WmC・・(1)
式(1)中、P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、Po:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧、W:吸着平衡圧Pにおける吸着量、Wm:単分子層吸着量、C:固体表面と吸着質との相互作用の大きさに関する定数(C=exp{(E1−E2)RT})[E1:第一層の吸着熱(kJ/mol)、E2:吸着質の測定温度における液化熱(kJ/mol)]
Stotal=(WmNAcs)M・・・・・・・・・(2)
式(2)中、N:アボガドロ数、M:分子量、Acs:吸着断面積
S=Stotal/w・・・・・・(3)
式(3)中、w:サンプル重量(g)
はじめに、炭化処理すべき、樹脂あるいは、樹脂組成物を製造する。
樹脂組成物の調製のための装置としては特に限定されないが、例えば、溶融混合を行う場合には、混練ロール、単軸あるいは二軸ニーダーなどの混練装置を用いることができる。また、溶解混合を行う場合は、ヘンシェルミキサー、ディスパーザなどの混合装置を用いることができる。そして、粉砕混合を行う場合には、例えば、ハンマーミル、ジェットミルなどの装置を用いることができる。
このようにして得られた樹脂組成物は、複数種類の成分を物理的に混合しただけのものであってもよいし、樹脂組成物の調製時、混合(攪拌、混練など)に際して付与される機械的エネルギーおよびこれが変換された熱エネルギーにより、その一部を化学的に反応させたものであってもよい。具体的には、機械的エネルギーによるメカノケミカル的反応、熱エネルギーによる化学反応をさせてもよい。
ここで炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、常温から1〜200℃/時間で昇温で0.1〜50時間、好ましくは0.5〜10時間保持して行うことができる。炭化処理時の雰囲気としては窒素、ヘリウムガスなどの不活性雰囲気下、もしくは不活性ガス中に微量の酸素が存在するような、実質的に不活性な雰囲気下、または還元ガス雰囲気下で行うことが好ましい。このようにすることで、樹脂の熱分解(酸化分解)を抑制し、所望の炭素材を得ることができる。
このような炭化処理時の温度、時間等の条件は、炭素材の特性を最適なものにするため適宜調整することができる。
ここでプレ炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、200〜600℃で1〜10時間行うことができる。このように、炭化処理前にプレ炭化処理を行うことで、樹脂組成物あるいは樹脂を不融化させ、炭化処理工程前に樹脂組成物あるいは樹脂の粉砕処理を行った場合でも、粉砕後の樹脂組成物あるいは樹脂が炭化処理時に再融着するのを防ぎ、所望とする炭素材を効率的に得ることができるようになる。
このとき、本発明の(002)面の平均面間隔dが3.40Å以上、3.90Å以下であり、c軸方向の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下となる非晶質構造を有し、かつ(002)面の面間隔dが3.25Å以上、3.40Å未満となる黒鉛構造を有するリチウムイオン二次電池用炭素材を得るための方法の一例としては、還元ガス、不活性ガスが存在しない状態で、プレ炭化処理を行うことがあげられる。
硬化処理方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物に硬化反応が可能な熱量を与えて熱硬化する方法、あるいは、樹脂と硬化剤とを併用する方法などにより行うことができる。これにより、プレ炭化処理を実質的に固相でできるため、樹脂の構造をある程度維持した状態で炭化処理またはプレ炭化処理を行うことができ、炭素材の構造や特性を制御することができるようになる。
さらに、本発明の(002)面の平均面間隔dが3.40Å以上、3.90Å以下であり、c軸方向の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下となる非晶質構造を有し、かつ(002)面の面間隔dが3.25Å以上、3.40Å未満となる黒鉛構造を有するリチウムイオン二次電池用炭素材を得るために、還元ガスまたは不活性ガスの存在下で、800〜500℃まで自然放冷(冷却)し、その後、200℃以下、好ましくは100℃以下となるまで20℃/時間以上、500℃/時間以下で冷却する。
前記範囲内の条件で冷却すれば、自然放冷よりも冷却速度が速くなり、非晶質構造に黒鉛構造を適切に含む特異な構造を形成し、本発明の炭素材を得ることができると推測される。
次に、本発明の二次電池用負極材(以下、単に「負極材」という)の実施形態およびこれを用いた実施形態であるリチウム二次電池(以下、単に「二次電池」という)について説明する。
二次電池10は、負極材12および負極集電体14により構成される負極13と、正極材20および正極集電体22により構成される正極21と、ならびに電解液16と、セパレータ18とを含むものである。
上記炭素材100重量部に対して、有機高分子結着剤(ポリエチレン、ポリプロピレンなどを含むフッ素系高分子、ブチルゴム、ブタジエンゴムなどのゴム状高分子など)1〜30重量部、および適量の粘度調整用溶剤(N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)を添加して混練して、ペースト状にした混合物を圧縮成形、ロール成形などによりシート状、ペレット状などに成形して、負極材12を得ることができる。
そして、負極集電体14と積層することにより、負極13を製造することができる。
この非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類などの混合物などを用いることができる。
電解質としては、LiClO4、LiPF6などのリチウム金属塩、テトラアルキルアンモニウム塩などを用いることができる。また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルなどに混合し、固体電解質として用いることもできる。
正極集電体22としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。
そして、本実施形態における正極21は、既知の正極の製造方法により製造することができる。
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
(財)高輝度光科学研究センター(JASRI)大型放射光施設SPring−8、BL19B2にて、以下の(A)〜(E)の条件で広角X線回折を行い、求められるスペクトルから以下の手順で面間隔d(002)、およびc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)を評価した。なお、回折角(スペクトルの反射角度)θは、放物線近似法、すなわちスペクトルのピークトップ近傍の任意の数点を通る放物線を最小二乗法にて導出し、その頂点をピークトップとする方法にて決定した。
(A)光源:シンクロトロン放射光
(B)大型デバイシェラーカメラ、カメラ半径:286.48mm
(C)ビームサイズ:縦0.3mm×横3.0mm
(D)検出器:イメージングプレート(50μm=0.01°)
(E)入射X線:波長1.0Å(12.4keV)
○(002)面の面間隔d
λ=2dhklsinθ Bragg式 (dhkl=d002)
λ:入射X線波長
θ:スペクトルの反射角度
○c軸方向の結晶子の大きさLc
広角X線回折測定から求められるスペクトルにおける非晶質構造の(002)面ピークの半値幅と回折角(スペクトルの反射角度)θから次のScherrerの式を用いて決定した。
Lc=0.94λ /(βcosθ) ( Scherrerの式)
Lc:結晶子の大きさ
λ:入射X線波長
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:スペクトルの反射角度
島津製作所製・X線回折装置「XRD−7000」(入射X線波長CuKα1.54Å)を使用して(002)面の面間隔dを測定した。
RENISHAW製InViaReflexラマンマイクロスコープを用い、試料を20倍の対物レンズで拡大し、波長532nm、2.5mWのYAGレーザー光を試料に照射し、ラマン散乱光を積算回数5回、測定範囲100〜2000cm−1、露光時間100秒で測定した。得られたスペクトルに1本のベースラインを引き、このベースラインからラマン分光スペクトルの1300〜1400cm−1の範囲にあるDバンドの強度IDと1560〜1650cm−1の範囲にあるGバンドの強度IGの強度比であるR値(ID/IG)を求めた。
ユアサ社製のNova−1200装置を使用して窒素吸着におけるBET3点法により測定した。具体的な算出方法は、前記実施形態で述べた通りである。
パーキンエルマー社製・元素分析測定装置「PE2400」を用いて測定した。測定試料を、燃焼法を用いてCO2、H2O、及びN2に変換した後に、ガス化した試料を均質化した上でカラムを通過させる。これにより、これらのガスが段階的に分離され、それぞれの熱伝導率から、炭素、水素、及び窒素の含有量を測定した。
ア)炭素含有率
得られた炭素材を、110℃/真空中、3時間乾燥処理後、元素分析測定装置を用いて炭素組成比を測定した。
イ)窒素含有率
得られた炭素材を、110℃/真空中、3時間乾燥処理後、元素分析測定装置を用いて窒素組成比を測定した。
(1)二次電池評価用二極式コインセルの製造
各実施例、比較例で得られた炭素材100部に対して、結合剤としてポリフッ化ビニリデン10部、希釈溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを適量加え混合し、スラリー状の負極混合物を調製した。調製した負極スラリー状混合物を18μmの銅箔の両面に塗布し、その後、110℃で1時間真空乾燥した。真空乾燥後、ロールプレスによって電極を加圧成形した。これを直径16.156mmの円形として切り出し負極を作製した。
正極はリチウム金属を用いて二極式コインセルにて評価を行った。電解液として体積比が1:1のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合液に過塩素酸リチウムを1モル/リットル溶解させたものを用いた。
充電条件は電流25mA/gの定電流で1mVになるまで充電した後、1mV保持で1.25mA/gまで電流が減衰したところを充電終止とした。また、放電条件のカットオフ電位は 1.5Vとした。
上記(2)で得られた値をもとに、下記式により算出した。
充放電効率(%)=[放電容量/充電容量]×100
樹脂組成物として、フェノール樹脂PR−217(住友ベークライト(株)製)を以下の工程(a)〜(f)の順で処理を行い、炭素材を得た。
(a)還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無し
で、室温から500℃まで、100℃/時間で昇温
(b)還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無し
で、500℃で2時間脱脂処理後、冷却
(c)振動ボールミルで微粉砕
(d)不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1200℃まで、100℃/時
間で昇温
(e)不活性ガス(窒素)流通下、1200℃で8時間炭化処理
(f)不活性ガス(窒素)流通下、600℃まで自然放冷後、600℃から100℃ま
で、100℃/時間で冷却
実施例1においてフェノール樹脂にかえて、アニリン樹脂(以下の方法で合成したもの)を用いた。
アニリン100部と37% ホルムアルデヒド水溶液697部、蓚酸2部を攪拌装置及び冷却管を備えた3つ口フラスコに入れ、100℃で3時間反応後、脱水し、アニリン樹脂110部を得た。得られたアニリン樹脂の重量平均分子量は約800であった。
以上のようにして得られたアニリン樹脂100部とヘキサメチレンテトラミン10部を粉砕混合し得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の工程で処理を行い、炭素材を得た。
黒鉛(メソフェーズカーボンマイクロビーズ)から構成される炭素材を用意した。
実施例1においてフェノール樹脂にかえて、コールタールピッチ(JFE商事(株)製)にかえ、(d)、(e)、(f)の工程を以下のように変更した以外は実施例1と同様な工程で処理を行い、炭素材を得た。
(d)不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1100℃まで、100℃/
時間で昇温
(e)不活性ガス(窒素)流通下、1100℃で4時間炭化処理
(f)不活性ガス(窒素)流通下、100℃まで自然放冷
実施例1において、(d)、(e)、(f)の工程を以下のように変更した以外は実施例1と同様な工程で処理を行い、炭素材を得た。
(d)不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1000℃まで、100℃/
時間で昇温
(e)不活性ガス(窒素)流通下、1000℃で8時間炭化処理
(f)不活性ガス(窒素)流通下、100℃まで自然放冷
非晶質構造に基づくアモルファスハロパターンを持たない比較例1では効率が高いものの、充電容量、放電容量ともに低い値となった。また、本発明のシンクロトロン放射光による広角X線回折法において非晶質構造に基づくアモルファスハロパターンのみで黒鉛構造の(002)面ピークを持たない比較例2では充電容量、放電容量は高いが効率が低くなり、比較例3では、放電容量、効率が実施例に比べ低下している。
また、従来のラボスケールの装置を使用した広角X線回折では、実施例における3.25Å以上、3.40Å未満となる黒鉛構造の面間隔dは検出されなかった。
さらに非晶質構造を基本とする実施例1、2、比較例2、3のラマンスペクトルはいずれも大差のない結果であり、ラマンスペクトルでは、本発明の材料の特徴である、非晶質炭素中に存在する、黒鉛由来の結晶構造を特定することはできなかった
12 負極材
14 負極集電体
13 負極
20 正極材
22 正極集電体
21 正極
16 電解液
18 セパレータ
Claims (5)
- 以下の条件(A)〜(E)のもと、広角X線回折法により求まる(002)面の平均面間隔dが3.40Å以上、3.90Å以下であり、c軸方向の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下となる非晶質構造を有し、かつ(002)面の面間隔dが3.25Å以上、3.40Å未満となる黒鉛構造を有するリチウムイオン二次電池用炭素材。
(A)光源:シンクロトロン放射光
(B)大型デバイシェラーカメラ、カメラ半径:286.48mm
(C)ビームサイズ:縦0.3mm×横3.0mm
(D)検出器:イメージングプレート(50μm=0.01°)
(E)入射X線:波長1.0Å(12.4keV) - 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材において、
窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が15m2/g以下、1m2/g以上であるリチウムイオン二次電池用炭素材。 - 請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材において、
炭素原子を95wt%以上含み、かつ、炭素原子以外の元素として、窒素原子を0.5wt%以上、5wt%以下含むものであるリチウムイオン二次電池用炭素材。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用炭素材を含むリチウムイオン二次電池用負極材。
- 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を含むリチウムイオン二次電池。
Priority Applications (1)
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