JP2011220295A - 圧縮機 - Google Patents

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Abstract


【課題】圧縮機の油の本質的な交換の周期、すなわち適正な油の耐用時間(寿命)を導出し、その導出された油の耐用時間(寿命)に基づいて適正に油の交換を行える圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明に係る圧縮機は、油の供給される部位と、前記油の温度を直接検出する、または、当該油の温度を推定するために用いられる他のプロセス値(例えば吐出空気温度)を検出する検出手段(例えば吐出空気温度計24)と、前記検出手段にて検出された、前記油の温度または他のプロセス値が入力される制御器20とを備え、前記制御器20が、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定された油の温度に基づいて、前記油の耐用時間を導出するものであることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は圧縮機、特に、圧縮機本体等に潤滑、シールおよび冷却等のために油を供給するように構成された圧縮機、例えば油冷式圧縮機に関する。
圧縮機は、潤滑、シール(軸封など)および冷却等のために、圧縮機本体等に、油の供給されるべき部位を多く備えている。例えば、油冷式スクリュー圧縮機においては、雌雄のスクリューロータを噛み合わせてケーシング内に収容して構成されてなる圧縮空間、軸受け、軸封部等の油の供給されるべき部位を多く備えている。そのような油の供給されるべき部位に、十分且つ清浄な油を安定的に供給することが、圧縮機、特に油冷式圧縮機において、重要である。
ところで、粘度等の油の特性は、その油の使用される環境、時間に応じて劣化する。特に、油が高温に晒される油冷式圧縮機においては、その劣化の程度は顕著である。
従って、油を使用し始めてから、ある程度の時間が経過した後には、油の交換作業が必要となる。下記特許文献1には、油の交換時間を短くするとともに、油交換要員の確保を不要とし、かつ油抜き取り時の残油量を少なくすることを可能とした油冷式圧縮機およびその使用方法が開示されている。
特開平06−066284号公報
従来、圧縮機の油の交換の周期については、一定の時間に設定されている場合が殆どであった。その一方、圧縮機の油の本質的な交換の周期、すなわち「耐用時間」(寿命)は、その油の使用の状況に応じて変化することが知られている。前記のように、圧縮機の油の交換の周期を一定の時間に設定すると、その一定の時間と油の本来の「耐用時間」(寿命)との齟齬が大きくなってしまう。その結果、必要以上の頻度で油の交換を行うなどのメンテナンス上の無駄を生じる虞がある。また、本来の「耐用時間」(寿命)を超えて油を使用し、軸受けの焼付けなどの重大な不具合を生じる虞もある。
そこで、本発明の目的は、圧縮機の油の本質的な交換の周期、すなわち適正な「耐用時間」(寿命)を導出し、その導出された油の「耐用時間」(寿命)に基づいて適正に油の交換を行える圧縮機を提供することにある。
前記の目的を達成するため、本発明に係る圧縮機は、
油の供給される部位と、
前記油の温度を直接検出する、または、当該油の温度を推定するために用いられる他のプロセス値を検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出された、前記油の温度または他のプロセス値が入力される制御器とを備え、
前記制御器が、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定された油の温度に基づいて、前記油の耐用時間を導出するものであることを特徴とする。
この構成からなる圧縮機によって、圧縮機の油の本質的な交換の周期、すなわち適正な「耐用時間」(寿命)を導出し、その導出された油の「耐用時間」(寿命)に基づいて適正に油を交換することが可能となる。
なお、前記制御器には予め、前記油の温度に応じて決定される油の劣化度(ここに、「油の劣化度」とは、標準使用温度における油の劣化の程度を基準として相対的に表示した値である。)についてのデータが入力されるとともに、前記標準使用温度における前記油の耐用時間(以下、「標準耐用時間」という。)が記憶され、
前記制御器は、所定時間毎に、前記油の劣化度についてのデータと、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定される油の温度とに基づいて、当該直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定される油の温度に対応する油の劣化度を導出し、
さらに、前記記憶されている標準耐用時間から、前記所定時間と導出された前記油の劣化度との積を減じたものを、新たな標準耐用時間として導出し、当該新たな標準耐用時間を、前記記憶されている標準耐用時間と置き換えて更新するものであっても良い。
この構成からなる圧縮機によって、より適正な「耐用時間」(寿命)の導出、その導出された油の「耐用時間」(寿命)に基づく、より適正な油の交換が可能となる。
なお、前記油の劣化度の導出が、前記所定時間の間における、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定される油の温度;の平均値に基づいて行われるものであっても良い。
あるいは、前記油の劣化度の導出が、前記所定時間の間における、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定される油の温度;の最高値に基づいて行われるものであっても良い。
さらに、前記導出された新たな標準耐用時間が、前記所定時間以下もしくはマイナスの値になった場合には、操作者に油の交換を促す旨の警報、または油の交換を行う旨の警報を発するものであっても良い。
本発明によれば、圧縮機の油の本質的な交換の周期、すなわち適正な「耐用時間」(寿命)を導出し、その導出された油の「耐用時間」(寿命)に基づいて適正に油を交換することが可能となる。
本発明の実施形態に係る圧縮機の概略構成を示すフロー図である。 本発明の実施形態に係る圧縮機の制御器に予め入力される「油の劣化度データ」を示すグラフ図である。 予想吐出温度Td’と、吐出圧力との関係を概略的に示すグラフ図である。 本発明の実施形態に係る圧縮機の制御器に予め入力される、他の「油の劣化度データ」を示すグラフ図である。
以下、本発明を実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る圧縮機の概略構成を示す図である。
この圧縮機は、図示しない雌雄一対のスクリューロータをロータケーシングに内蔵してなる圧縮機本体1を備えている。前記スクリューロータの一方(通常は、雄ロータである。)の軸には、図示しないカップリングを介して、インバータ15により回転数が制御される電動モータ2の出力軸が接続されている。前記圧縮機本体1の吸込口3には吸込流路10が接続されている。この吸込流路10には、吸込ガスである吸込空気に含まれているごみ等の異物を除去する吸込フィルタ11が介装されている。
また、前記圧縮機本体1の吐出口4には、吐出ガス供給先である圧縮空気供給先に連通する吐出流路12が接続されている。この吐出流路12には、油分離回収器5が介装されている。この油分離回収器5の内部上方には圧縮機本体1から吐出される油分を含む吐出空気から油を分離する油分離エレメント6が配設されると共に、内部下方にはこの油分離エレメント6で分離された油を溜める油溜まり部7が形成されている。そして、油分離エレメント6を通過して油分が除去された圧縮空気が、吐出流路12を通して圧縮空気供給先に供給されるように構成されている。
また、前記油分離回収器5の油溜まり部7から圧縮機本体1には、油流路13が連通している。この油流路13には、冷却ファン14を具備する油クーラ8が介装されると共に、油フィルタ9が介装されている。すなわち、油溜まり部7に溜められた油は、油クーラ8で冷却され、さらに油フィルタ9にてスラッジ等を除去されて、圧縮機本体1に供給される。なお、油の供給される部位は、圧縮機本体1の図示しない圧縮空間、軸封部、軸受等である。
吸込流路10には、その吸込流路10を流れる吸込空気の温度を測定する吸込空気温度計21が設けられている。また、吐出流路12には、油分離エレメント4を通過して油分が除去された供給空気の圧力を測定する供給空気圧力計23が設けられている。また、油分離回収器5には、この油分離回収器5内の吐出空気の圧力および温度を測定する吐出空気圧力計22、吐出空気温度計24が設けられている。また、電動モータ2には、その電動モータ2の温度を検出するモータ温度計25が設けられている。さらに、油流路13の油クーラ8の上流側には、この油流路を流れる油の温度を測定する給油温度計26が設けられている。
そして、この圧縮機は制御器20を備えている。制御器20には、前記の吸込空気温度計21、吐出空気圧力計22、供給空気圧力計23、吐出空気温度計24、モータ温度計25、給油温度計26からの検出値が入力される。また、制御器20は、図示しない入力手段(キーボード、タッチパネル等)によって、操作者が所望する吐出空気の圧力(または供給空気の圧力)を設定圧力値として入力可能に構成されている。
制御器20は、前記設定圧力値に吐出空気圧力計22から入力される吐出空気(または供給空気圧力計23から入力される供給空気)の圧力の検知値が略同一となるような回転数をPID演算等によって算出する。そして、制御器20は、その算出された回転数で以って電動モータ2を回転すべく、インバータ15に対し信号を出力する。すなわち、制御器20はいわゆる吐出圧力(供給圧力)の圧力一定制御を司るものである。また、この制御器20は、冷却ファン14の回転を制御するための信号も出力する。
また、この圧縮機は、図示しない油供給源と、油分離回収器5とを連通する油供給路30を備えている。そして、油供給路30には、制御器20からの信号によって開閉制御可能な電磁弁31が介装されている。さらに、この圧縮機は、図示しない油排出先と、油分離回収器5の内部下方とを連通する油排出路32を備えている。そして、油排出路32には、制御器20からの信号によって開閉制御可能な電磁弁33が介装されている。通常の運転時(油の交換時以外)には、電磁弁31、33は閉じられている。
以下では、本発明の実施の形態に係る圧縮機における、油の耐用時間(寿命)の導出・更新の詳細について説明する。
制御器20はRAM、ROM等の記憶手段を内蔵している。そして、制御器20には図示しない入力手段(キーボード、タッチパネル等)によって、油の標準使用温度T_spと、耐用時間(寿命)の仕様値L_spが予め入力され、記憶されている。ここでいう、油の標準使用温度T_spと耐用時間(寿命)の仕様値L_spは固定値であり、油の仕様(スペック)に基づいて決定される。そして、油の耐用時間(寿命)の仕様値L_spは、その油を標準使用温度T_spで以って使用し続けた際の耐用時間(寿命)(以下、「標準耐用時間」ともいう。)として定められる。この油の耐用時間(寿命)の仕様値L_spは油の標準耐用時間として制御器20に予め入力される「初期値」でもある。
また、制御器20には、「油の劣化度データ」が予め入力される。この「油の劣化度データ」は、図2のような、縦軸y、横軸xのグラフで表すことができる。そして、縦軸yには「油の劣化度」が、横軸xには「油の温度から『油の標準使用温度T_sp』を減じた値」が設定されている。換言すれば、この「油の劣化度データ」は、油の温度に応じて決定される油の劣化度についてのデータである。
油の耐用時間(寿命)は、その油の温度によって伸縮する。おおまかに言えば、油の耐用時間(寿命)はその油の温度が高くなれば短くなり、その油の温度が低くなれば長くなる。例えば、使用頻度の高い温度の領域においては、油の温度が10度上昇すると、油の劣化、特に酸化に起因する油の劣化が2倍程度の速さに促進され、一方、油の温度が10度低下すると、油の劣化が1/2程度の速さに抑制される。このような油の特性に応じて、「油の温度から『油の標準使用温度T_sp』を減じた値」に対する「油の劣化度」が予め設定される。以下では、「油の劣化度」であるyが「油の温度から『油の標準使用温度T_sp』を減じた値」であるxの関数であるとして、下記式1と表すこととする。
y=f(x) ・・・(式1)
また、油の温度と『油の標準使用温度T_sp』の相違が10℃以内であれば、油の劣化の程度は標準使用温度T_spで使用された場合の劣化の程度とほぼ同じとみなしている。したがって、この場合の「油の劣化度」を1.0と設定している。
そして、油の温度から『油の標準使用温度T_sp』を減じた値が−10℃より小さく、−20℃以上であれば、油の劣化の程度は標準使用温度T_spで使用された場合の劣化の程度(1.0)より小さいとみなしている。したがって、この場合の「油の劣化度」を0.5に設定している。
また、油の温度から『油の標準使用温度T_sp』を減じた値が−20℃より小さければ、「油の劣化度」を前記0.5より更に小さい0.25に設定している。
一方、油の温度から『油の標準使用温度T_sp』を減じた値が20℃より大きければ、「油の劣化度」を前記2.0より更に大きい4.0に設定している。
油の標準使用温度T_spにおける、残りの耐用時間(標準耐用時間)は、「所定時間z」毎に、油を実際に使用した時間とその時間における油の温度に基づいて導出される。そして、油の標準耐用時間は、「初期値」としての仕様値L_spから、「所定時間z」毎に更新される。
上記「油の温度」としては、油の温度が直接検知できる場合はその検出値を用いれば良いが、そうでない場合は、この油の温度を推定するために用いられる他のプロセス値として、例えば、吐出空気温度計24にて検出された吐出温度Td(油分離回収器5内の吐出空気の温度)を利用することができる。吐出温度Tdは油の温度そのものではないが、油の温度とほぼ同等のものとみなす(推定する)ことができる。
制御器20には吐出温度Tdが入力される。そして、制御器20は、圧縮機の運転が開始されてからの時間、すなわち、油の使用が開始されてからの時間を記憶し、その間の吐出温度Tdを記憶する。制御器20は、油の使用が開始されてから「所定時間z」が経過すると、その「所定時間z」が経過するまでに記憶された吐出温度Tdの平均の吐出温度Td_aveを導出する。そして、制御器20は、平均の吐出温度Td_aveから『油の標準使用温度T_sp』を減じた値を導出する。ここではその値をΔTとする。すなわち、ΔTは下記式2で表される。
ΔT=Td_ave−T_sp ・・・(式2)
制御器20は、予め入力されている「油の劣化度データ」とΔTに基づいて、現時点での「油の劣化度」を導出する。なお、ΔTは、油の温度(ここでは、吐出温度Td)に関連する値である。それゆえ、制御器20は、所定時間z毎に、予め入力されている「油の劣化度データ」と前記検出値に基づいて、現時点での「油の劣化度」を導出するものであるとも言える。
制御器20は、xにΔTを導入し、そのxに対応するyを現時点での「油の劣化度」として導出する。
すなわち、制御器20は、下記式3により、xにΔTを導入する。
x=ΔT ・・・(式3)
そして、制御器20は、そのxの値に対応するyの値を、上記式1(図2に示されている「油の劣化度データ」)を用いて、下記式4により現時点での「油の劣化度」を導出する。
y=f(ΔT) ・・・(式4)
そして、制御器20は、導出された現時点での「油の劣化度」と「所定時間z」から、現時点での油の標準耐用時間Lを導出する。具体的には、下記式5式より、油の標準耐用時間Lを導出する。
L=L_sp−z×y=L_sp−z×f(ΔT)・・・(式5)
そして、上記式5で導出されたLの値を、油の新たな標準耐用時間としてL_spに置き換えて記憶する(すなわち、更新する)。
この油の標準耐用時間Lの導出および更新が、「所定時間z」毎に行われる。n回目(nは正の整数)に導出および更新された油の標準耐用時間をL、そのLの導出に利用される平均の吐出温度をTd_ave、平均の吐出温度Td_aveから『油の標準使用温度T_sp』を減じた値をΔTとすると、Lは以下のように表される。
=Ln−1−z×f(ΔT)=Ln−1−z×f(Td_ave−T_sp)・・・(式6)
なお、上記式6におけるL、すなわちLの「初期値」は仕様値L_spである。
すなわち、制御器20は、その制御器20に内蔵されているRAM等に記憶されている、直前の「油の標準耐用時間」(上記式6における「Ln−1」)から、「所定時間z」と導出された油の劣化度(上式におけるf(ΔT))との積を減じたもの(上式における「Ln−1−z×f(ΔT)」)を、新たに導出された油の標準耐用時間(上式における「L」)として導出する。新たに導出された油の標準耐用時間は、制御器20に内蔵されているRAM等に記憶される(油の標準耐用時間が更新される)。
以下、具体的な数値を用いて説明する。「所定時間z」を1000時間とし、油の標準使用温度T_spを110℃とし、油の標準使用温度における耐用時間(寿命)の仕様値(すなわち、標準耐用時間の初期値)L_spを6000時間として説明する。
制御器20は、圧縮機の運転が開始されてから、すなわち、油の使用が開始されてから、最初の「所定時間z」の1000時間が経過すると、その1000時間における平均の吐出温度であるTd_aveを導出する。
〔ケース1〕
まず、その平均の吐出温度であるTd_aveが98℃、つまり、ΔT=Td_ave−T_sp=98−110=−12℃であった場合を考える。その際の「油の劣化度」y=f(x)=f(ΔT)は、図2に基づき、0.5と導出される。「油の劣化度」が0.5であることを換言すれば、この時点では、吐出温度が標準使用温度の110℃程度であった場合に比して、50%しか油の劣化が進んでいないということになる。したがって、油の新たな標準耐用時間は、吐出温度が標準使用温度の110℃程度であった場合に比して長くなる。具体的には、吐出温度が標準使用温度の110℃程度であった場合には油の残りの標準耐用時間が6000−1000=5000時間であるのに対し、このケースでの油の残りの標準耐用時間は6000−1000×(0.5)=5500時間となり、500時間だけ長くなる。
〔ケース2〕
続いて、平均の吐出温度のTd_aveが115℃、つまり、ΔT=Td_ave−T_sp=115−110=15℃であった場合を考える。その際の「油の劣化度」y=f(x)=f(ΔT)は、図2に基づき、2.0と導出される。「油の劣化度」が2.0であることを換言すれば、この時点では、吐出温度が標準使用温度の110℃程度であった場合に比して、2倍も油の劣化が進んでいるということになる。したがって、油の新たな標準耐用時間は、吐出温度が標準使用温度の110℃程度であった場合に比して短くなる。具体的には、吐出温度が標準使用温度の110℃程度であった場合には油の残りの標準耐用時間が6000−1000=5000時間であるのに対し、このケースでの油の残りの標準耐用時間は6000−1000×(2.0)=4000時間となり、1000時間だけ短くなる。
次に、上記ケース1において、更に次の所定時間1000時間が経過した場合の油の標準耐用時間の導出および更新について説明する。
〔ケース1−1〕
上記ケース1において、その次の所定時間1000時間の平均の吐出温度のTd_aveが87℃、つまり、ΔT=Td_ave−T_sp=87−110=−23℃であった場合を考える。その際の「油の劣化度」y=f(x)=f(ΔT)は、図2に基づき、0.25と導出される。したがって、油の新たな標準耐用時間は、5500−1000×(0.25)=5250時間となる。
〔ケース1−2〕
また、上記ケース1において、その次の所定時間1000時間の平均の吐出温度のTd_aveが132℃、つまり、ΔT=Td_ave−T_sp=132−110=22℃であった場合を考える。その際の「油の劣化度」y=f(x)=f(ΔT)は、図2に基づき、4.0と導出される。したがって、油の新たな標準耐用時間は、5500−1000×(4.0)=1500時間となる。
上記のようにして導出および更新された油の新たな標準耐用時間が、「所定時間z」以下もしくはマイナスの値になった場合には、図示しない表示装置等によって、「油の交換」を操作者に促す旨の警報が発せられる。警報は、図示しない表示装置等に「油の交換を行ってください。承認キーを押すと、圧縮機の運転を停止し、油の交換作業を開始します。」等の表示を行うことによってなされる。そして、操作者が図示しない表示装置等に付設されている承認キーを押すと、制御器20はそれを認知し、図示しない表示装置等に「圧縮機の運転を停止します。油の交換中です。」という旨の表示を行う。
続いて、制御器20は、圧縮機の運転を停止し(インバータ15に対し停止信号を出力し)、その後、電磁弁33を開放して、油排出路32を介して、図示しない油排出先に向けて、油分離回収器5から油を排出する。なお、その油の排出の際に、油分離回収器5の内部の圧力を急低下させると、油のフォーミング現象(発砲現象)によって、油分離エレメント6が油に過多に浸され、油分離回収器5の油分離の機能の低下を惹起することがある。したがって、電磁弁33を開放する際には、その開度を適宜調整する等して、油分離回収器5の内部の圧力を急低下させないようにすることが望ましい。
その後、制御器20は、電磁弁33を閉じ、電磁弁31を開放して、油供給路30を介して、図示しない油供給源に向けて、油分離回収器5に新しい油を供給するように指令を発する。そして、所定量の新しい油の供給が終了したら、制御器20は、電磁弁31を閉じ、図示しない表示装置等に「油の交換が終了しました。承認キーを押し、圧縮機を再起動してください。」という旨の表示を行う。
なお、導出および更新された油の新たな標準耐用時間が、「所定時間z」以下もしくはマイナスの値になった場合に、操作者の承認キーの押し込み等によらず、制御器20が自動的に電磁弁31、33の開閉制御等を行い、自動的に油の交換作業がなされるよう構成しても良い。その場合には、図示しない表示装置等によって、「油の耐用時間に達しました。油の交換を行います(行っています)」等の「油の交換」を行う旨の警報が発せられる。
本発明の実施形態に係る圧縮機によれば、上記のようにして、圧縮機の油の本質的な交換の周期、すなわち適正な「標準耐用時間」を導出することができる。したがって、その導出された、油の適正な「標準耐用時間」に基づいて油の交換を適正に行うことが可能となる。
上記実施形態では、油の温度を推定するために用いられる他のプロセス値として、吐出空気温度計24にて検出された吐出温度Tdを用いたが、これに替えて、吸込空気温度計21にて検知された吸込空気の温度、および、吐出空気圧力計22(もしくは供給空気圧力計23)にて検知された吐出空気の圧力(もしくは供給空気の圧力)を用いても良い。すなわち、これら吸込空気の温度および圧力に基づいて、予想される吐出温度Td’(以下、「予想吐出温度」という。)を導出することができる。したがって、油の劣化度、油の標準耐用時間の導出に、吐出空気温度計24にて検出された吐出温度Tdに替えて、予想吐出温度Td’を利用しても良い。具体的には以下のとおりである。
圧縮機の吐出温度は、吐出空気の圧力の増加に伴って増加するほか、吸込空気の温度の増加にも伴って増加する。したがって、予想吐出温度Td’と、吐出圧力との関係を概略的に示すと、図3のようになる。なお、同図において、線(1)乃至線(5)の相違は、吸込空気の温度の相違に拠るものである。なお、線(1)より線(2)、線(2)より線(5)というように、その番号が大きくなるほど、吸込空気の温度が高くなることを意味している。
制御器20には上記の線(1)乃至線(5)等に相当する「複数の『吸込空気の温度』」毎の「予想吐出温度Td’と吐出圧力との関係を示すデータ」を入力しておく。そして、制御器20は、吸込空気温度計21から入力される吸込空気の温度の検出値に基づき、前記「複数の『吸込空気の温度』」の中で前記検出値にもっとも近似する『吸込空気の温度』を選択し、その『吸込空気の温度』における「予想吐出温度Td’と吐出圧力との関係を示すデータ」を選択する。
そして、更に、制御器20は、選択した「予想吐出温度Td’と吐出圧力との関係を示すデータ」と、吐出空気圧力計22から入力される吐出空気の圧力の検出値に基づいて、予想吐出温度Td’を導出する。その後、制御器20は、吐出温度Tdに替えて、導出された予想吐出温度Td’を利用して、上記と同様にして、油の新たな標準耐用時間の導出および更新を行う。これによれば、給油温度計26、吐出空気温度計24など、油の温度やそれに準じる温度(吐出温度Td等)を検出する温度計が圧縮機に備えられていなくとも、油の適正な標準耐用時間の導出および更新が可能となる。
なお、「複数の吸込圧力」毎の「予想吐出温度Td’と吐出圧力との関係を示すデータ」に替えて、下記式7に示すような関数を制御器20に入力しておいても良い。
Td’=g(Ts,Pd)・・・(式7)
この場合、Tsに吸込空気温度計21から制御器20に入力される吸込空気の温度の検出値を、Pdに吐出空気圧力計22(または供給空気圧力計23)から制御器20に入力される吐出空気の圧力(または供給空気の圧力)の検出値を導入することで、予想吐出温度Td’を導出することができる。
また、「油の温度から『油の標準使用温度T_sp』を減じた値」に応じて「油の劣化度」が不連続的(例えば段階状)に変化する形態の「油の劣化度データ」を図2で示した。ただし、「油の劣化度データ」はこのような形態のものに限られない。例えば、図4に示すように、「油の温度から『油の標準使用温度T_sp』を減じた値」に応じて、「油の劣化度」が連続的に変化する形態の「油の劣化度データ」であっても良い。このような連続的に変化する「油の劣化度データ」が精緻な実験等により得られ、その「油の劣化度データ」が油の標準耐用時間の導出および更新に利用されることで、より適正な油の標準耐用時間の導出が可能となる。
また上記の例では、「所定時間z」が経過するまでに記憶された吐出温度Tdの平均の吐出温度Td_aveを導出し、その平均の吐出温度Td_aveを用いて油の劣化度を導出し、油の標準耐用時間を導出していた。この平均の吐出温度Td_aveに替えて、「所定時間z」の間における吐出温度Tdの最高値である吐出温度Td_maxを利用してもよい。この場合、「所定時間z」が経過するまでに吐出温度Tdを全て記憶しておく必要はなく、最高の吐出温度Td_maxを随時更新し、記憶しておくだけでよいため、制御器20に大容量の記憶機能が不要となり、装置の構成を簡単化できる。
また、制御器20に記憶されている油の標準耐用時間が、上述の表示装置等によって、随時、表示可能なように構成されていることが望ましい。なお、図示しない入力手段によって、操作者が任意に「所定時間z」を設定できるように構成しておくことが望ましい。
また、上記のようにして導出および更新された油の新たな標準耐用時間が、「所定時間z」以下もしくはマイナスの値になった場合には、図示しない表示装置等によって、「油の交換」を操作者に促す旨の警報が発せられる場合にあっては、電磁弁31、33に替えて、手動の開閉弁を備えても良い。
1…圧縮機本体
2…電動モータ
3…吸込口
4…吐出口
5…油分離回収器
6…油分離エレメント
7…油溜まり部
8…油クーラ
9…油フィルタ
10…吸込流路
11…吸込フィルタ
12…吐出流路
13…油流路
14…冷却ファン
15…インバータ
20…制御器
21…吸込空気温度計
22…吐出空気圧力計
23…供給空気圧力計
24…吐出空気温度計
25…モータ温度計
26…給油温度計
30…油供給路
31…電磁弁
32…油排出路
33…電磁弁

Claims (5)

  1. 油の供給される部位と、
    前記油の温度を直接検出する、または、当該油の温度を推定するために用いられる他のプロセス値を検出する検出手段と、
    前記検出手段にて検出された、前記油の温度または他のプロセス値が入力される制御器とを備え、
    前記制御器が、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定された油の温度に基づいて、前記油の耐用時間を導出するものであることを特徴とする圧縮機。
  2. 前記制御器には予め、前記油の温度に応じて決定される油の劣化度(ここに、「油の劣化度」とは、標準使用温度における油の劣化の程度を基準として相対的に表示した値である。)についてのデータが入力されるとともに、前記標準使用温度における前記油の耐用時間(以下、「標準耐用時間」という。)が記憶され、
    前記制御器は、所定時間毎に、前記油の劣化度についてのデータと、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定される油の温度とに基づいて、当該直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定される油の温度に対応する油の劣化度を導出し、
    さらに、前記記憶されている標準耐用時間から、前記所定時間と導出された前記油の劣化度との積を減じたものを、新たな標準耐用時間として導出し、当該新たな標準耐用時間を、前記記憶されている標準耐用時間と置き換えて更新するものである請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記油の劣化度の導出が、前記所定時間の間における、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定される油の温度;の平均値に基づいて行われるものである請求項2に記載の圧縮機。
  4. 前記油の劣化度の導出が、前記所定時間の間における、前記直接検出された油の温度、または、前記他のプロセス値から推定される油の温度;の最高値に基づいて行われるものである請求項2に記載の圧縮機。
  5. 前記導出された新たな標準耐用時間が、前記所定時間以下もしくはマイナスの値になった場合には、操作者に油の交換を促す旨の警報、または油の交換を行う旨の警報を発するものである請求項1乃至4のいずれかに記載の圧縮機。
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